TOP
> 記事閲覧
プロポーズの日記念作品
件名 | : Re: プロポーズの日記念作品 |
投稿日 | : 2021/06/08 22:34 |
投稿者 | : 史燕 |
参照先 | : |
〇tambさん
ご感想ありがとうございます。
>誕生石とかまるで興味がないので、他の日の誕生日にどのような意味合いがあるのか全く知らないのだけれど、ムーンストーンにはこれまた全くそれらしい意味があったものだ。
調べてみて「これは!!」と思ったのです。
>ついでに言うとサブスクじゃなくてCDなのも良い。レイはどんな環境で音楽を聴くのだろうか。と言うか、最近の若者ってステレオだのコンポだのって持ってるの?
ほとんどスマホで済ますと思います。
私は若者ではないのでCD派です。
真面目にお返事すると、シンジ君は音楽が趣味ならCDなのかな、レイもそれに合わせるかな、と考えました。
>一つのプロジェクトが終わるというのはこういうもの、という認識ですが、
作者の経験が元になっていますので、一般的かどうかは自信がありません。
>死んだと思っていた加持が生きていた、なんてことになるとチャンドラーですな。
レノックスのその部分まで踏まえていなかったです。(間抜けめ)
そっか、そうですよね、死んでなかったんですもんね。
>加持さんのポケットにはホテルのキーが入ってるわけですね。大人って大変ですね。
そのようです。大変ですね。
ご感想ありがとうございます。
>誕生石とかまるで興味がないので、他の日の誕生日にどのような意味合いがあるのか全く知らないのだけれど、ムーンストーンにはこれまた全くそれらしい意味があったものだ。
調べてみて「これは!!」と思ったのです。
>ついでに言うとサブスクじゃなくてCDなのも良い。レイはどんな環境で音楽を聴くのだろうか。と言うか、最近の若者ってステレオだのコンポだのって持ってるの?
ほとんどスマホで済ますと思います。
私は若者ではないのでCD派です。
真面目にお返事すると、シンジ君は音楽が趣味ならCDなのかな、レイもそれに合わせるかな、と考えました。
>一つのプロジェクトが終わるというのはこういうもの、という認識ですが、
作者の経験が元になっていますので、一般的かどうかは自信がありません。
>死んだと思っていた加持が生きていた、なんてことになるとチャンドラーですな。
レノックスのその部分まで踏まえていなかったです。(間抜けめ)
そっか、そうですよね、死んでなかったんですもんね。
>加持さんのポケットにはホテルのキーが入ってるわけですね。大人って大変ですね。
そのようです。大変ですね。
件名 | : Re: プロポーズの日記念作品 |
投稿日 | : 2021/06/08 22:21 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
ムーンストーンをあなたへ
誕生石とかまるで興味がないので、他の日の誕生日にどのような意味合いがあるのか全く知らないのだけれど、ムーンストーンにはこれまた全くそれらしい意味があったものだ。
マスターがケーキを用意してるのもいいけど、シンジの誕生日にレイが「私を、月に連れて行ってくれる?」とおねだりするのが良いね。初々しくて良いデートです。
ついでに言うとサブスクじゃなくてCDなのも良い。レイはどんな環境で音楽を聴くのだろうか。と言うか、最近の若者ってステレオだのコンポだのって持ってるの? だいぶ前にはiPodぶっ刺すステレオみたいなのがあったけど。Bluetoothで飛ばすのかな?
XYZ
こちらは大人ですな(笑)。
一つのプロジェクトが終わるというのはこういうもの、という認識ですが、私はいわゆる社内プロジェクト的なものはまともにやった事がないのでよく分からないのであった。ミサトくらいのポジションにいる人物が書類の山を見なくて良くなるとなると、とか考えたりしましたが作戦部ってのが書類が多すぎたのかな。
チャンドラーはまともに通ってないので意図から外してるかもですが、死んだと思っていた加持が生きていた、なんてことになるとチャンドラーですな。
そしてここまで明示してあるので外してないと思いますが、加持さんのポケットにはホテルのキーが入ってるわけですね。大人って大変ですね。
誕生石とかまるで興味がないので、他の日の誕生日にどのような意味合いがあるのか全く知らないのだけれど、ムーンストーンにはこれまた全くそれらしい意味があったものだ。
マスターがケーキを用意してるのもいいけど、シンジの誕生日にレイが「私を、月に連れて行ってくれる?」とおねだりするのが良いね。初々しくて良いデートです。
ついでに言うとサブスクじゃなくてCDなのも良い。レイはどんな環境で音楽を聴くのだろうか。と言うか、最近の若者ってステレオだのコンポだのって持ってるの? だいぶ前にはiPodぶっ刺すステレオみたいなのがあったけど。Bluetoothで飛ばすのかな?
XYZ
こちらは大人ですな(笑)。
一つのプロジェクトが終わるというのはこういうもの、という認識ですが、私はいわゆる社内プロジェクト的なものはまともにやった事がないのでよく分からないのであった。ミサトくらいのポジションにいる人物が書類の山を見なくて良くなるとなると、とか考えたりしましたが作戦部ってのが書類が多すぎたのかな。
チャンドラーはまともに通ってないので意図から外してるかもですが、死んだと思っていた加持が生きていた、なんてことになるとチャンドラーですな。
そしてここまで明示してあるので外してないと思いますが、加持さんのポケットにはホテルのキーが入ってるわけですね。大人って大変ですね。
件名 | : Re: プロポーズの日記念作品 |
投稿日 | : 2021/06/06 01:59 |
投稿者 | : 史燕 |
参照先 | : |
並行投稿許可、ありがとうございます。
こちらにも、ふさわしい作品は投稿を続けますので、今後ともよろしくお願いいたします。
>それからメタルシンジ君とブルース綾波さんというネタが浮かんだというか思い出しましたがそれは封印します(笑)。
10周年カウントダウン企画!
懐かしいネタですね。(当時は読むだけの人)
こちらにも、ふさわしい作品は投稿を続けますので、今後ともよろしくお願いいたします。
>それからメタルシンジ君とブルース綾波さんというネタが浮かんだというか思い出しましたがそれは封印します(笑)。
10周年カウントダウン企画!
懐かしいネタですね。(当時は読むだけの人)
件名 | : Re: プロポーズの日記念作品 |
投稿日 | : 2021/06/06 01:18 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
えーとまず多重投稿のアレですが、全く問題ないです。読者層が完全に一致してるわけでもないですし。一時期の多重投稿問題ってのは、サイト巡回しててどこ行っても同じ作品が上がってるのは如何なものかという話だと思うんですけど、まあそういう時代でもないでしょう。サイトは消えることもあります。ここも私が死んだら消えますし(一般的にいう寿命はまだ先ですが、事故死とかは一定の確率であります)、大手サイトでもまさかのサービス終了は過去いくつかの事例があります。
というわけで、こちらとしては何でもOKです。許可とかも必要かないです。先方に規約があればアレですのでそれには従わないとアレですが、まあ大丈夫でしょう。見たことないけど(笑)。
それからメタルシンジ君とブルース綾波さんというネタが浮かんだというか思い出しましたがそれは封印します(笑)。
そして今色々アレなので感想はちょいと待たれたし。
というような文章はここにしか書けないのであるのです(笑)。
そんなこんなで臆してる方もびびらずどうぞ。感想に対する感想的なものは向こうでは難しいかなという側面もあるかと思うので、その辺はその時その時のお好みに合わせて何でも好きなようにその時のノリで良いと思います。つまり何でもいいんですよ(笑)。
というわけで、こちらとしては何でもOKです。許可とかも必要かないです。先方に規約があればアレですのでそれには従わないとアレですが、まあ大丈夫でしょう。見たことないけど(笑)。
それからメタルシンジ君とブルース綾波さんというネタが浮かんだというか思い出しましたがそれは封印します(笑)。
そして今色々アレなので感想はちょいと待たれたし。
というような文章はここにしか書けないのであるのです(笑)。
そんなこんなで臆してる方もびびらずどうぞ。感想に対する感想的なものは向こうでは難しいかなという側面もあるかと思うので、その辺はその時その時のお好みに合わせて何でも好きなようにその時のノリで良いと思います。つまり何でもいいんですよ(笑)。
件名 | : Re: プロポーズの日記念作品 |
投稿日 | : 2021/06/06 01:12 |
投稿者 | : 史燕 |
参照先 | : |
蛇足ですが、XYZのほうで登場したカクテルについて解説を載せます。
登場したセリフなどは完全に作者の趣味です。
本文中に入れなかったのは、雰囲気を壊してしまうから。
・「ギムレットには早すぎる」
カクテルをたしなむ人もそうでない人も一度は言ってみたいセリフではないでしょうか?
元ネタはレイモンド・チャンドラーの小説「Long Good Bye」から。
内容は、私があれこれ言うより原作を読まれたほうが絶対にいいです。
ギムレット自体は、ジンとライムジュースのカクテルですが、甘めになったりさっぱりしたりと、作る方によって少しレシピが変わるようです。
雑にまとめると、ギムレットを頼む=これでお別れ、ということです。
・「サイドカー」
レディキラーの代名詞(違う、そこじゃない)
サイドカーの名前の通り、バイクのサイドカーよろしく「いつも二人で」などといった意味です。
ブランデーベースのカクテルで、ホワイトキュラソー(オレンジのリキュール)とレモンジュースが入り、甘めで飲みやすいです。意中の女性を酔わせてお持ち帰りしようなどという不埒者が飲ませたりするのでレディキラーなんて呼ばれたりしています。実際に飲みやすくておいしいのです。
ぐいぐい3,4杯飲めたりします。
・「XYZ」
ラムをベースに、ホワイトキュラソーとレモンジュースで作るのですが、アレンジでいろいろと入ったりすることも。
意味は、アルファベットの最後3文字なので「最後の」「最高の」など。
そして、男女の間では「永遠にあなたのもの」なんて意味も加わったりします。
・「All You Need Is Love」
ビートルズの名曲ですね。以上、説明不要。
絶対全部お見通しのうえでのマスターのチョイス。
ピアノアレンジにしたのは、二人の雰囲気にはこちらのほうが合うと思ったのと、歌詞があるとそちらに気を取られて邪魔でしかないから、と申しております
登場したセリフなどは完全に作者の趣味です。
本文中に入れなかったのは、雰囲気を壊してしまうから。
・「ギムレットには早すぎる」
カクテルをたしなむ人もそうでない人も一度は言ってみたいセリフではないでしょうか?
元ネタはレイモンド・チャンドラーの小説「Long Good Bye」から。
内容は、私があれこれ言うより原作を読まれたほうが絶対にいいです。
ギムレット自体は、ジンとライムジュースのカクテルですが、甘めになったりさっぱりしたりと、作る方によって少しレシピが変わるようです。
雑にまとめると、ギムレットを頼む=これでお別れ、ということです。
・「サイドカー」
レディキラーの代名詞(違う、そこじゃない)
サイドカーの名前の通り、バイクのサイドカーよろしく「いつも二人で」などといった意味です。
ブランデーベースのカクテルで、ホワイトキュラソー(オレンジのリキュール)とレモンジュースが入り、甘めで飲みやすいです。意中の女性を酔わせてお持ち帰りしようなどという不埒者が飲ませたりするのでレディキラーなんて呼ばれたりしています。実際に飲みやすくておいしいのです。
ぐいぐい3,4杯飲めたりします。
・「XYZ」
ラムをベースに、ホワイトキュラソーとレモンジュースで作るのですが、アレンジでいろいろと入ったりすることも。
意味は、アルファベットの最後3文字なので「最後の」「最高の」など。
そして、男女の間では「永遠にあなたのもの」なんて意味も加わったりします。
・「All You Need Is Love」
ビートルズの名曲ですね。以上、説明不要。
絶対全部お見通しのうえでのマスターのチョイス。
ピアノアレンジにしたのは、二人の雰囲気にはこちらのほうが合うと思ったのと、歌詞があるとそちらに気を取られて邪魔でしかないから、と申しております
件名 | : Re: プロポーズの日記念作品 |
投稿日 | : 2021/06/06 00:05 |
投稿者 | : 史燕 |
参照先 | : |
表題の通り、2021年6月6日はシンジ君の誕生日兼プロポーズの日とのことですので、記念作品二本を投稿いたしました。
あと今まできちんと許可を取らずにやっていましたが、今作からPixivでも並行して投稿させていただきます。
一本目はLRS、二本目は加持さんとミサトさん。
いかがでしたでしょうか?
あと今まできちんと許可を取らずにやっていましたが、今作からPixivでも並行して投稿させていただきます。
一本目はLRS、二本目は加持さんとミサトさん。
いかがでしたでしょうか?
件名 | : Re: プロポーズの日記念作品 |
投稿日 | : 2021/06/06 00:04 |
投稿者 | : 史燕 |
参照先 | : |
XYZ
Written by 史燕
「これで、晴れて作戦部も解散だな」
「ええ、やっと書類の山を見なくて済むの」
「葛城は、昔っからデスクワークは苦手だものな」
俺のグラスにはバーボン、葛城のグラスにはカルヴァドスがそれぞれロックで入っている。
お互いにゆっくりとグラスを傾ける。
程よく溶けた氷が、特徴的な香りに丸みを帯びさせている。
ロックでしか味わえない、独特の味わいだ。
酒の席の会話の内容など、たわいもない。
「シンジ君たちが独り立ちしたようで寂しい」などと泣き言を言っている風を装っているが、実際には彼とレイちゃんが二人で成長しているのを、一番楽しみにしているのだ。
俺のほうは、アスカが以前のように恋と憧れを勘違いしていたのが懐かしくなる。
本当に好きな相手を見つけられたのだから、ゆっくりと大人になってくれればいい。
葛城のグラスが空になる頃合いを見計らって、カウンターの向こうにいるマスターに声をかける。
「そろそろ、最後の1杯にするよ」
「あら、ギムレットには早すぎるんじゃない」
「いや、ま、この後に用事が入る予定があってね」
葛城が、有名な小説の一節を引いてからかう。
もちろん、俺がマーロウとレノックスのようにほんとうにギムレットを注文すると思っているわけではない。
「マスター、彼女にサイドカーを」
「あんた、まだこんな気障ったらしいことをいろんな女の子にしてるの?」
「いや、俺がサイドカーをおごるのは、今にも先にも葛城だけさ」
「あら、それはうれしいわね」
「意味、わかるだろ?」
時に“レディキラー”などと揶揄されるカクテル、サイドカー。
これを贈られる本当の意味を、葛城なら間違いなく理解しているはずだ。
シンジ君にもアスカにも大人の男性だなんて勘違いされているが、何のことはない。
酒の力を借りなければ肝心の一歩が踏み出せない、弱い男のままだ。
「ふーん、『サイドカー』ねえ」
葛城は、マスターから渡されたグラスをしげしげと眺め、ためらいなく口をつけた。
舌の上でゆっくりと転がしているのだろう、その一口は、いつもの数倍長く味わっていた。
その間は、店内に流されている「All You Need Is Love」のピアノアレンジが、不思議と耳に残った。
「それじゃ、私から加持くんに返杯を」
「お、何を飲ませてくれるんだ」
「スピリタス、ストレート」
「おいおい、そんなもの出されたら死んじまうよ」
「べっつにー、あたしは飲まないもの」
「勘弁してくれよ」
たわむれながら、葛城はグラスを二度、三度と傾ける。
いよいよ本題だ。
顔が熱くなり、胸の鼓動が大きく聞こえるのは、なにもアルコールのせいだけじゃない。
「マスター、XYZを、加持くんに」
「『XYZ』そいつは……」
「もちろん、意味は、わかるわよね」
XYZ、シンプルながら至高の、あるいは最後のカクテルと言われる、定番中の定番。
それを男女で贈る時に込められる本当の意味。
「参ったな、顔から火が出そうだ」
「しっかりしなさいよね、この後、用事があるんだから」
そう言う葛城の顔も真っ赤に染まっているのを、月の光が照らしていた。
Written by 史燕
「これで、晴れて作戦部も解散だな」
「ええ、やっと書類の山を見なくて済むの」
「葛城は、昔っからデスクワークは苦手だものな」
俺のグラスにはバーボン、葛城のグラスにはカルヴァドスがそれぞれロックで入っている。
お互いにゆっくりとグラスを傾ける。
程よく溶けた氷が、特徴的な香りに丸みを帯びさせている。
ロックでしか味わえない、独特の味わいだ。
酒の席の会話の内容など、たわいもない。
「シンジ君たちが独り立ちしたようで寂しい」などと泣き言を言っている風を装っているが、実際には彼とレイちゃんが二人で成長しているのを、一番楽しみにしているのだ。
俺のほうは、アスカが以前のように恋と憧れを勘違いしていたのが懐かしくなる。
本当に好きな相手を見つけられたのだから、ゆっくりと大人になってくれればいい。
葛城のグラスが空になる頃合いを見計らって、カウンターの向こうにいるマスターに声をかける。
「そろそろ、最後の1杯にするよ」
「あら、ギムレットには早すぎるんじゃない」
「いや、ま、この後に用事が入る予定があってね」
葛城が、有名な小説の一節を引いてからかう。
もちろん、俺がマーロウとレノックスのようにほんとうにギムレットを注文すると思っているわけではない。
「マスター、彼女にサイドカーを」
「あんた、まだこんな気障ったらしいことをいろんな女の子にしてるの?」
「いや、俺がサイドカーをおごるのは、今にも先にも葛城だけさ」
「あら、それはうれしいわね」
「意味、わかるだろ?」
時に“レディキラー”などと揶揄されるカクテル、サイドカー。
これを贈られる本当の意味を、葛城なら間違いなく理解しているはずだ。
シンジ君にもアスカにも大人の男性だなんて勘違いされているが、何のことはない。
酒の力を借りなければ肝心の一歩が踏み出せない、弱い男のままだ。
「ふーん、『サイドカー』ねえ」
葛城は、マスターから渡されたグラスをしげしげと眺め、ためらいなく口をつけた。
舌の上でゆっくりと転がしているのだろう、その一口は、いつもの数倍長く味わっていた。
その間は、店内に流されている「All You Need Is Love」のピアノアレンジが、不思議と耳に残った。
「それじゃ、私から加持くんに返杯を」
「お、何を飲ませてくれるんだ」
「スピリタス、ストレート」
「おいおい、そんなもの出されたら死んじまうよ」
「べっつにー、あたしは飲まないもの」
「勘弁してくれよ」
たわむれながら、葛城はグラスを二度、三度と傾ける。
いよいよ本題だ。
顔が熱くなり、胸の鼓動が大きく聞こえるのは、なにもアルコールのせいだけじゃない。
「マスター、XYZを、加持くんに」
「『XYZ』そいつは……」
「もちろん、意味は、わかるわよね」
XYZ、シンプルながら至高の、あるいは最後のカクテルと言われる、定番中の定番。
それを男女で贈る時に込められる本当の意味。
「参ったな、顔から火が出そうだ」
「しっかりしなさいよね、この後、用事があるんだから」
そう言う葛城の顔も真っ赤に染まっているのを、月の光が照らしていた。
Written by 史燕
6月6日、碇くんの誕生日。
「碇くんの誕生日プレゼント、ですか」
「ええ、どんなものを上げたらいいか、わからなくて」
「と言われましても、私もそういうのに詳しいわけではないのですよ」
おなじみの喫茶店で、こっそりとマスターに相談する。
いつもいつもマスターには申し訳ないとは思うけれど、平和になって初めて迎える彼の誕生日を、できる限りきちんと祝ってあげたい。
「ううん、誕生日、誕生日……」
一生懸命私が練習したコーヒーの成功品を片手に、眉間にしわを寄せて考えている。
「6月6日の誕生石は、ムーンストーンでしたね」
コーヒーのせいではない渋面を作り続けて10分余り、マスターは、はっ、と思い当たったことがあったのか、虚空をにらんでいた目線を私に合わせます。
「誕生石?」
「ええ、365日。それぞれ生まれた日に合わせた宝石があるのです」
「碇くんの場合は、ムーンストーン?」
「はい、間違いありません。ムーンストーンは……」
マスターから、誕生石のこと、プレゼントの選び方など、アドバイスを聞き取る。
専門外なのは明らかなのに、一度思い当たればするすると堰を切ったように知識があふれ出てくるあたり、私はこの人に一生敵わないのだと思う。
いよいよ、6月6日当日を迎えた。
今日は日曜、夕方までかかるNERVの用事のほかに予定はないのは確認済み。
ピンクのブラウスに黒いチェックのスカート。
赤いパンプスはちょっと背伸びをしてヒールは高め。
大丈夫、おかしなところは何もない。
集合時間の30分前、彼がやってくるのが待ち遠しい。
「あやなみっ」
彼が息を切らせながら駆け寄ってくる。
駅前の時計の下、ここがいつもの待ち合わせ場所。
「ごめん、待たせたみたいで」
「いいえ、今来たところよ」
これは嘘、もう10分以上は待っていた。
だけど、彼も早めに来てくれたから、これは私なりの強がり。
彼はTシャツにベージュのパンツと軽装だけど、NERVの後に急いできてくれたことを考えれば、これ以上は何もいらない。
「行きましょう」
「また、マスターのところ?」
「それは、あとで」
中学生二人の行先なんて、そう選択肢があるわけではない。
結果として、お決まりのコースになりがちだけど、今日は少しだけ、彼の趣味に合わせようと思う。
立ち寄ったのはCDショップ。
以前から気になっていたのは知っていたけれど、私に気を使って、ウインドウを眺めるだけで通り過ぎていた。
「碇くん、どんなCDが好き?」
「どんなって、いろいろ聴くけど。どうしたの、突然?」
「私も、聴いてみたいと思って」
これは本当。音楽というよりは、彼がどんなCDをいつも聴いているのか、純粋に興味があった。
「うーん、どんな楽器がいいかな?」
「チェロ」
「チェロ? またマイナーな楽器だね」
「だって、碇くん、チェロを弾くのでしょう?」
「え、どうしてそれを……」
「アスカが教えてくれたの」
「ああ、そういうこと」
まいったな、と後頭部をかきながら、彼はCDコーナーを物色し始めた。
オーケストラやピアノのCDは数あれど、チェロとなると、なかなか見つからない。
棚を眺めながら往復すること3度。
ようやく彼は納得のいくものを見つけたらしい。
「うん、これかな」
CDには「無伴奏チェロ曲/J.S.バッハ」そう書かれていた。
「僕が一番好きな曲なんだ」
少し照れくさそうに言う彼を見て、このCDを毎日聴こう。そう決めた。
それから、CDショップをああでもない、こうでもないと眺めて、いよいよマスターのもとへと赴く。
大丈夫、本命の小包はちゃんとバッグに入っている。
「いらっしゃいませ」
いつもと変わらない声で、マスターが出迎えてくれる。
相変わらず、満席には程遠い店内だけれど、私たちにとっては、そのほうが居心地がよかった。
マスターには、ちょっぴり申し訳ないとは思いつつだけど。
私たちが席に着いた時には「HAPPY BIRTHDAY 碇くん」そう書かれたショートケーキが運ばれてきた。
「あ、ありがとうございます」
碇くんは、驚いている。
「綾波さんが、先日教えてくれたんですよ」
いけしゃあしゃあとマスターは口にする。
私はまだ、きちんと口にできていないのに。
「さあ、アールグレイとどうぞ」
2つのカップを私たちの前に置いて、マスターは奥に引っ込んでしまう。
流れてきたレコードは“Fly me to the moon”。
「い、いかりくん」
「う、うん。どうしたの」
「これっ、プレゼント」
私は思いっきり叫ぶようにして、勢いよく小包を差し出した。
差し出すというよりは、押し付けるというほうが近かったかもしれない。
「あ、ありがとう、綾波」
碇くんも目を白黒させながらだけれど、マスターのおかげであらかじめ見当はついていたのか、あっさりと状況を受け入れてくれた。
「開けても、いいかな?」
「どうぞ」
おそるおそるといった様子で、碇くんが放送を開ける。
中に入っていたのは、小さな一つのペンダント。
銀色の質素なチェーンの先には、乳白色の中に青みがかった輝きが月明りのように差し込む丸い宝石がはめ込まれていた。
「これは、いったい?」
「ムーンストーン、碇くんの、誕生石」
そこまで言うのが限界だった。
気に入ってくれるか不安で、まともに碇くんと目を合わせられなかったから。
「ムーンストーンは『危険を知る』『進むべき道を示す』そんな意味があるそうですよ」
見かねたマスターが、横から助け舟を出してくれた。
二人で沈黙したままというのは、どうにもお互いにとってよくなかったから。
「ありがとう、綾波」
「喜んでもらえたのなら、うれしいわ」
緊張で顔から火が出そうだったけれど、何とか所定の任務目標を達成できた。
これで一安心、そう思って紅茶に手を付ける。
「あ、そうでした。もう一つムーンストーンは『愛と絆を深める』という意味もありますよ」
マスターが、この瞬間まで教えてくれなかったもう一つの重要な意味という特大のN2爆雷を投下するまでは。
「あ、愛!?」
ガチャリ、と音がして碇くんの持ったフォークが皿の上を転がった。
私は、何とか事なきを得たけど、手に持ったカップの震えが止まらなかった。
「あら、お二人ともご存じなかったのですか」
さも驚いたという風でマスターは言ってのけるが、私は知っている。
確信犯だということを。
「あ、綾波」
碇くんが、私のほうを向く。
先ほどよりも、さらに神妙な面持ちだ。
正直に言えば、このまま逃げ出したい、話を切り上げたいのだけれど、そういうわけにはいかなくて。
「なに、碇くん」
二人の沈黙を埋めるように、静かな店内に合わせて聞こえてくるのは、“Fly me to the moon”。
そのメロディを聞いてお互いに顔を見合わせる。
「ありがとう、改めて、そう言いたくて」
碇くんが、私に向けて微笑む。
私もきっと、口元が緩んでいるのだろう。
ああ、そういうことなの。
何も、心配することなんてなかったのね。
うんうんと頷きながら特等席でこちらを眺めているマスターには、あとで文句を言うことは決めたけれど。
今はこちらが最優先。
「私を、月に連れて行ってくれる?」
「喜んで。いつか、必ずね」
彼の手元では、ムーンストーンが、深い輝きを湛えていました。