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flyby
件名 | : Re: flyby |
投稿日 | : 2021/11/24 00:20 |
投稿者 | : aba-m.a-kkv |
参照先 | : |
赦されたようだ!
ののさんに嬉しいと言ってもらえたので、このお話を紡ぎ出せて良かったと思います。
そして、こんなことも出来るのだという四人目の気軽さと楽しさの実例にもなったならと思います。
みなさん、お気軽に、ぜひぜひ。
ののさんに嬉しいと言ってもらえたので、このお話を紡ぎ出せて良かったと思います。
そして、こんなことも出来るのだという四人目の気軽さと楽しさの実例にもなったならと思います。
みなさん、お気軽に、ぜひぜひ。
件名 | : Re: flyby |
投稿日 | : 2021/11/18 11:46 |
投稿者 | : のの |
参照先 | : |
幸せ者だなあ、おれは。
読み返してしみじみ思いました。
aba-m.a-kkvさん、本当にどうもありがとうございます。
超嬉しいです。
>反省はしている、けれど、後悔はしていない、たぶん。
>でも、企画で三次創作のハードルを下げたのはののさんだし、アンサーソングの起点もののさんだったから許してくれないかなあ。
(´ε`;)ウーン…許す!
なんてね。
ほんとに嬉しいです。
>そして「arrows」を聞いていたら「flyby」が流れるんだもの。
分かりすぎる!笑
>忘れてもかまわない、忘れないから。
>応答ねがう、ずっと、応答ねがう。
がね、健気で切なくて、人間!(VOYAGERなのに)て感じします。
>貞シンレイの話題にも関わりますが、どうも私の中では私独特なベクトルに変換されてしまうので、なかなかオリジナルに近づけないというのがあります。
これも……長年ごにょごにょやってる癖がついちゃったなーってよく思います。
その中では、多少今回は(オリジナルキャラクターという異物を入れたことで)原作をかなり忠実な人物設計にしやすかったなとは思いました。
>>>「このやろーと思ってさ、捨てようかと思ったけど、やっぱ捨てらんなかった。なんか、なんとなく、その……まあ、思い出の記念ってことで」
>「その」のあとのこの「……」、この三点リーダーが凄まじい!
>この文字ですらない、記号二つだけでカナメの心情を表すすさまじさ、もうなんと言ったらいんでしょう、脱帽です。
>そしてこの三点リーダーがflybyを書こうと思った三つ目の要因になりました。
いやこれ、書いた時に結構いじって最後に「……」だけ足したんですよ、実は。
カナメちゃんの照れくささとか嬉しさとか、気持ちを表に出すことの戸惑いとか、レイへの何かしらの思いとか、色んな逡巡を込めたつもりです。
受け取ってもらえてうれしい!!
◇ここがすごいよ、やられたよ。
>だから、なにか言い訳をしようとして、私はその言葉を失った。
>私を見て嬉しそうに笑う彼女に。
>空の金属の箱からあの夏が零れだす。
反復しつつ更新していく、2人の関係性そのもの。
最高です。
■tambさん
>そして、行き詰ったら別の話を書く、という手法も思い出させてくれました。
わかる。。。
■史燕さん
>>だから、なにか言い訳をしようとして、私はその言葉を失った。
>>私を見て嬉しそうに笑う彼女に。
>>空の金属の箱からあの夏が零れだす。
ここ、最高ですよね。
さすがすぎる。
読み返してしみじみ思いました。
aba-m.a-kkvさん、本当にどうもありがとうございます。
超嬉しいです。
>反省はしている、けれど、後悔はしていない、たぶん。
>でも、企画で三次創作のハードルを下げたのはののさんだし、アンサーソングの起点もののさんだったから許してくれないかなあ。
(´ε`;)ウーン…許す!
なんてね。
ほんとに嬉しいです。
>そして「arrows」を聞いていたら「flyby」が流れるんだもの。
分かりすぎる!笑
>忘れてもかまわない、忘れないから。
>応答ねがう、ずっと、応答ねがう。
がね、健気で切なくて、人間!(VOYAGERなのに)て感じします。
>貞シンレイの話題にも関わりますが、どうも私の中では私独特なベクトルに変換されてしまうので、なかなかオリジナルに近づけないというのがあります。
これも……長年ごにょごにょやってる癖がついちゃったなーってよく思います。
その中では、多少今回は(オリジナルキャラクターという異物を入れたことで)原作をかなり忠実な人物設計にしやすかったなとは思いました。
>>>「このやろーと思ってさ、捨てようかと思ったけど、やっぱ捨てらんなかった。なんか、なんとなく、その……まあ、思い出の記念ってことで」
>「その」のあとのこの「……」、この三点リーダーが凄まじい!
>この文字ですらない、記号二つだけでカナメの心情を表すすさまじさ、もうなんと言ったらいんでしょう、脱帽です。
>そしてこの三点リーダーがflybyを書こうと思った三つ目の要因になりました。
いやこれ、書いた時に結構いじって最後に「……」だけ足したんですよ、実は。
カナメちゃんの照れくささとか嬉しさとか、気持ちを表に出すことの戸惑いとか、レイへの何かしらの思いとか、色んな逡巡を込めたつもりです。
受け取ってもらえてうれしい!!
◇ここがすごいよ、やられたよ。
>だから、なにか言い訳をしようとして、私はその言葉を失った。
>私を見て嬉しそうに笑う彼女に。
>空の金属の箱からあの夏が零れだす。
反復しつつ更新していく、2人の関係性そのもの。
最高です。
■tambさん
>そして、行き詰ったら別の話を書く、という手法も思い出させてくれました。
わかる。。。
■史燕さん
>>だから、なにか言い訳をしようとして、私はその言葉を失った。
>>私を見て嬉しそうに笑う彼女に。
>>空の金属の箱からあの夏が零れだす。
ここ、最高ですよね。
さすがすぎる。
件名 | : Re: flyby |
投稿日 | : 2021/11/14 17:37 |
投稿者 | : aba-m.a-kkv |
参照先 | : |
ののさんのお話がめちゃくちゃ良かったので書いてしまいました。
「箱の名前」に完全に依存したお話です。
「箱の名前」を読まなければ成立しない未熟な物語です。
言葉も大分足りないと思います。
悩みましたが名前も出しませんでした。
でも、メインの「箱も名前」を読み返してもらえれば楽しんでいただけるのではないかと思うくらいには書いたつもり。
ののさんの反応を見ると、たぶん悪くなかったんじゃないかと思う。
>たぶんカナメちゃんと綾波はこのまま仲良くなるとかはないんだけど、彼女が教室に入ってきたら普通に挨拶くらい交わすと思います。
>そんで10年後に『久々に飲もうぜ』とかカナメちゃんから誘われて、そっから年1~2くらいで会う飲み仲間になるんだと思います。
>途中からそう思いながら書きました。
四人目のののさんの言葉を見たら浮かんできてしまったので書かないわけには行きませんでした。これが一つ目の要因。
本来はお酒なんだろうけれど、箱の名前に合わせるなら、やはり紅茶だろうと。
そして「arrows」を聞いていたら「flyby」が流れるんだもの。
フライバイには惑星を通過する意味とともに、スイングバイの意味もあるらしい。
星の重力アシストを使って方向を変換したり、より遠くの目標に向かうための加速度を得たりするための航法がスイングバイ。
レイもカナメも二人とも互いに会ったことで遠くに飛べたらいいなと。
そして歌詞。
心の裏側をぐるりと回り戻ってきた。
距離はそのままでも確かに側にいた。
忘れてもかまわない、忘れないから。
応答ねがう、ずっと、応答ねがう。
やばいですよね。
なんだか、レイとカナメの関係にしっくりはまってしまったのも、書かないわけにはいかない要因の二つ目になりました。
そして「箱の名前」に関わる「arrows」もとても良い曲です。
機会があれば聞いてから箱の名前を読むとまた感じるものがあると思います。
■tambさん
>最初の数行で、あ、カナメちゃんの話、と思った。
さすがです。
最初、どちらの視点で書こうかと考えたんですが、せっかくならカナメ視点のほうが新鮮かなと。
>そして、行き詰ったら別の話を書く、という手法も思い出させてくれました。
別の話にのめり込み過ぎてメインを落とすことになりかねない危険がありますけどね。笑
私は長編執筆中はなるべく他の話は読まない、書かないタイプですが、ののさんは別格ですからしようがない。
■史燕さん
>わずか1日で相川カナメという1人の少女のことをここまで読み込まれ
いやいや、私はオリキャラを理解するのは苦手でして。
長門マキさんでも苦労した上でうまく描けなかったくらいですから。
貞シンレイの話題にも関わりますが、どうも私の中では私独特なベクトルに変換されてしまうので、なかなかオリジナルに近づけないというのがあります。
自分のお話を書いている分には何の問題もないんですが、三次創作や貞シンレイ強化月間みたいな企画になると難しくなります。
>そうなんですね。大切にしてくれているんですね。
>彼女を、彼女との思い出を。
この部分、ののさんがうまいんですよね。
本編のカナメのセリフなんですが。
>「このやろーと思ってさ、捨てようかと思ったけど、やっぱ捨てらんなかった。なんか、なんとなく、その……まあ、思い出の記念ってことで」
「その」のあとのこの「……」、この三点リーダーが凄まじい!
この文字ですらない、記号二つだけでカナメの心情を表すすさまじさ、もうなんと言ったらいんでしょう、脱帽です。
そしてこの三点リーダーがflybyを書こうと思った三つ目の要因になりました。
「箱の名前」に完全に依存したお話です。
「箱の名前」を読まなければ成立しない未熟な物語です。
言葉も大分足りないと思います。
悩みましたが名前も出しませんでした。
でも、メインの「箱も名前」を読み返してもらえれば楽しんでいただけるのではないかと思うくらいには書いたつもり。
ののさんの反応を見ると、たぶん悪くなかったんじゃないかと思う。
>たぶんカナメちゃんと綾波はこのまま仲良くなるとかはないんだけど、彼女が教室に入ってきたら普通に挨拶くらい交わすと思います。
>そんで10年後に『久々に飲もうぜ』とかカナメちゃんから誘われて、そっから年1~2くらいで会う飲み仲間になるんだと思います。
>途中からそう思いながら書きました。
四人目のののさんの言葉を見たら浮かんできてしまったので書かないわけには行きませんでした。これが一つ目の要因。
本来はお酒なんだろうけれど、箱の名前に合わせるなら、やはり紅茶だろうと。
そして「arrows」を聞いていたら「flyby」が流れるんだもの。
フライバイには惑星を通過する意味とともに、スイングバイの意味もあるらしい。
星の重力アシストを使って方向を変換したり、より遠くの目標に向かうための加速度を得たりするための航法がスイングバイ。
レイもカナメも二人とも互いに会ったことで遠くに飛べたらいいなと。
そして歌詞。
心の裏側をぐるりと回り戻ってきた。
距離はそのままでも確かに側にいた。
忘れてもかまわない、忘れないから。
応答ねがう、ずっと、応答ねがう。
やばいですよね。
なんだか、レイとカナメの関係にしっくりはまってしまったのも、書かないわけにはいかない要因の二つ目になりました。
そして「箱の名前」に関わる「arrows」もとても良い曲です。
機会があれば聞いてから箱の名前を読むとまた感じるものがあると思います。
■tambさん
>最初の数行で、あ、カナメちゃんの話、と思った。
さすがです。
最初、どちらの視点で書こうかと考えたんですが、せっかくならカナメ視点のほうが新鮮かなと。
>そして、行き詰ったら別の話を書く、という手法も思い出させてくれました。
別の話にのめり込み過ぎてメインを落とすことになりかねない危険がありますけどね。笑
私は長編執筆中はなるべく他の話は読まない、書かないタイプですが、ののさんは別格ですからしようがない。
■史燕さん
>わずか1日で相川カナメという1人の少女のことをここまで読み込まれ
いやいや、私はオリキャラを理解するのは苦手でして。
長門マキさんでも苦労した上でうまく描けなかったくらいですから。
貞シンレイの話題にも関わりますが、どうも私の中では私独特なベクトルに変換されてしまうので、なかなかオリジナルに近づけないというのがあります。
自分のお話を書いている分には何の問題もないんですが、三次創作や貞シンレイ強化月間みたいな企画になると難しくなります。
>そうなんですね。大切にしてくれているんですね。
>彼女を、彼女との思い出を。
この部分、ののさんがうまいんですよね。
本編のカナメのセリフなんですが。
>「このやろーと思ってさ、捨てようかと思ったけど、やっぱ捨てらんなかった。なんか、なんとなく、その……まあ、思い出の記念ってことで」
「その」のあとのこの「……」、この三点リーダーが凄まじい!
この文字ですらない、記号二つだけでカナメの心情を表すすさまじさ、もうなんと言ったらいんでしょう、脱帽です。
そしてこの三点リーダーがflybyを書こうと思った三つ目の要因になりました。
件名 | : Re: flyby |
投稿日 | : 2021/11/14 13:57 |
投稿者 | : 史燕 |
参照先 | : |
わずか1日で相川カナメという1人の少女のことをここまで読み込まれ、形になさるとは。
その難しさが想像できるだけに、感服いたしました。尊敬いたします。
読了直後から今に至るまで、感想がまとまらず、散らかった文章になりますがご寛恕ください。
>だから、私はいまでも紅茶を淹れている。
>そして、あの日から十年になる今に至るまで、私は空の金属の箱を持ち続け
ている。
そうなんですね。大切にしてくれているんですね。
彼女を、彼女との思い出を。
「ありがとう、相川さん」と部外者なのに思ってしまいました。
>だから、なにか言い訳をしようとして、私はその言葉を失った。
>私を見て嬉しそうに笑う彼女に。
>空の金属の箱からあの夏が零れだす。
カナメさんにとっても大切で、同じくレイさんにとっても大切で。
大切なものを、思い出を分かち合える彼女たち二人が、とてもまぶしく、愛おしい。
とてもとても美しい、素晴らしいお話でした。
その難しさが想像できるだけに、感服いたしました。尊敬いたします。
読了直後から今に至るまで、感想がまとまらず、散らかった文章になりますがご寛恕ください。
>だから、私はいまでも紅茶を淹れている。
>そして、あの日から十年になる今に至るまで、私は空の金属の箱を持ち続け
ている。
そうなんですね。大切にしてくれているんですね。
彼女を、彼女との思い出を。
「ありがとう、相川さん」と部外者なのに思ってしまいました。
>だから、なにか言い訳をしようとして、私はその言葉を失った。
>私を見て嬉しそうに笑う彼女に。
>空の金属の箱からあの夏が零れだす。
カナメさんにとっても大切で、同じくレイさんにとっても大切で。
大切なものを、思い出を分かち合える彼女たち二人が、とてもまぶしく、愛おしい。
とてもとても美しい、素晴らしいお話でした。
件名 | : Re: flyby |
投稿日 | : 2021/11/14 01:36 |
投稿者 | : のの |
参照先 | : |
あーもうだめだこれ、これはだめです。
けしからん、けしからんよ、いただけません、実にいただけません。
いや……泣くやろ、こんなん……。
けしからん、けしからんよ、いただけません、実にいただけません。
いや……泣くやろ、こんなん……。
件名 | : Re: flyby |
投稿日 | : 2021/11/13 23:58 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
最初の数行で、あ、カナメちゃんの話、と思った。
十年という年月は、長くもあり短くもある。だから、というわけではないけれど、変わってしまったり忘れてしまうこともある。
でも、不思議と覚えていることも、ある。それが重要な出来事だったり大切な思い出だったりとはとても思えない、些細な風景の一コマに過ぎないのに、忘れられないこと。
でも忘れられない。だからたぶん、きっとそれは、大切なこと。
それを誰かと共有して笑いあえることができたなら、それはとても幸せなこと。
とても素敵なお話しでした。まるで星を通過する衛星のように。
そして、行き詰ったら別の話を書く、という手法も思い出させてくれました。それは、とてもとても大切なこと(これはやや微妙)。
ありがとう。
十年という年月は、長くもあり短くもある。だから、というわけではないけれど、変わってしまったり忘れてしまうこともある。
でも、不思議と覚えていることも、ある。それが重要な出来事だったり大切な思い出だったりとはとても思えない、些細な風景の一コマに過ぎないのに、忘れられないこと。
でも忘れられない。だからたぶん、きっとそれは、大切なこと。
それを誰かと共有して笑いあえることができたなら、それはとても幸せなこと。
とても素敵なお話しでした。まるで星を通過する衛星のように。
そして、行き詰ったら別の話を書く、という手法も思い出させてくれました。それは、とてもとても大切なこと(これはやや微妙)。
ありがとう。
金属がぶつかり合う音。
紅茶の香り。
苦味、渋み。
冷たさと爽やかさ。
彼女の髪の色。
空の色。
中身のない無機質な金属の缶なのに、五感全てから来る記憶が蘇る。
flyby aba-m.a-kkv
思い出に浸るなんて私には似合わない。
モノに思い出を乗せて固執したり、モノを捨てられないタイプの人間でもない。
社交的じゃないわけでもないけれど、友人関係ではサバサバしていると言われるような人間だった。
小学校時代に仲が良かった人間の顔はほとんど思い出せないし、中学校時代でいまだに繋がっている友人も片手で足りるほどだ。
本来の性格もあるし、時代がそうさせたと言えなくもない。
中学二年のときに起きたサードインパクトに私は巻き込まれ、その後の避難生活で第三新東京市の自宅をしばらくの間離れた時期もあった。
持っていけるものは限られていたし、封鎖が解除されて自宅に戻った時、形を残しているものは限られていた。
だから、私の青春時代の思い出を語ることの出来るモノというのはほとんどない。
唯一の例外が、いま玄関でキートレー代わりになっている金属の箱だ。
中学時代に叔母のために買いに行った紅茶が入っていた。
紅茶好きと言っていたのに「これからはノンカフェインの時代だと」言われた衝撃や、それでも渡されたお小遣いがいつもより多かったことや、幾らかのティーバッグと共に押し付けられた空き缶の記憶は、それに至るまでの記憶に比べれば薄くなっている。
それよりも思い出すのは、教室の後ろに座っていた同級生のこと。
不思議な少女だった。
神秘的な容姿に、陽炎のような希薄な印象。
他人にだけでなく、自分自身にすら関心を持っていないような雰囲気さえあった。
学校生活で最低限のやり取りはあったものの、友人と呼べる関係とは程遠い。
そもそも、あの頃の私は他者を極力排除して過ごす空間を好んでいた。
だからこそ、今でも印象深く記憶に残っているのかもしれない。
あの日の出来事を。
その後、彼女とは挨拶を交わすようになった。
朝に学校で会えばおはようと言い、帰り際にはまた明日と手を振る。
とはいえ、それ以上の事、再び一緒に買い物にいったり、仲良く会話を交わしたりするようになる、なんて間柄にはならなかった。
でも、絶妙な距離感と二人だけで共有した校則違反はとても心地良く私の心に刻まれている。
彼女と紅茶を買いに行ったひと時の事を。
その翌日に酌み交わし合ったアイスティーの水筒のことを。
だからだろう、私はこの紅茶の空き缶を捨てられずにいる。
いな、この金属の箱は、もう捨てるようなものではないのだ。
サードインパクトで被災した自宅にようやく戻れた時、いろいろなものが色を失っている中で、この無機質な金属の箱だけが色を、音を、香りを、爽やかさを、そして懐かしい苦味を持っていた。
自分でも驚くほどに、その箱の中にはあの夏の日の空気が秘められている。
彼女と交わったあの刹那の機会は、ほんの小さな出来事だったけれど意味を持っている。
それは、星を通過する衛星のように。
近づきすぎることもなく、遠すぎることもない関係であり、ほんの少しだけ背中を押してもらう。
でも、長い長い年月を過ぎたときに、その存在は私がさらに先に進むための始まりの力になったことを知る。
今という私を形作っているなんて大それたことは思わない。
でも今の私を織り成す一つのきっかけになったのだとしたら、それは大切なものだと感じるんだ。
だから、私はいまでも紅茶を淹れている。
そして、あの日から十年になる今に至るまで、私は空の金属の箱を持ち続けている。
一人の同級生との思い出と共に。
インターホンが鳴る。
彼女の性格から予想するように約束の時間ぴったりだった。
玄関を開け迎え入れる。
お互いに長くなった髪が風に揺れた。
「いらっしゃい、迷わなかった?」
彼女は首を横に振り、「お邪魔します」と言って、そして、しばらく固まった。
微かに驚いたような彼女の紅い眸の先にあるもの。
キートレー代わりの金属の箱。
すぐに昔の記憶が結びつき、私の頬に朱が走る。
思い出に浸るなんて私には似合わない。
だから、なにか言い訳をしようとして、私はその言葉を失った。
私を見て嬉しそうに笑う彼女に。
空の金属の箱からあの夏が零れだす。
金属がぶつかり合う音。
紅茶の香り。
苦味、渋み。
冷たさと爽やかさ。
だから私も笑顔になる。
あの青空の下で笑いあった時のように。