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ロールプレイ
投稿日 | : 2022/03/01 01:05 |
投稿者 | : みれあ |
参照先 | : https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17097210 |
件名 | : Re: ロールプレイ |
投稿日 | : 2022/03/20 04:10 |
投稿者 | : みれあ |
参照先 | : |
■tambさん
ありがとうございます。正直なところ、こんなに暖かい感想をいただけるとは思っていませんでした。tambさんの琴線に触れるところがあったのなら嬉しい限りです。
改めて読み返しても今作は作者(ぼく)の願望であるのだなと思うのです。二次創作なんてだいたいそうなのですが。本編の、とくに終盤での過酷な有りようを乗り越えて、若者らしく可能性と未来のある時代を前向きに生きていてほしい。そして、本編であったことを悪しき過去として封印するのではなくて、乗り越えた上でコミュニケーションのタネにできるくらいにはポジティブな思い出、過去であってほしい。碇くんのことは特別であってほしいけど、アスカとはそれとまた違う特別な仲を築いていてほしい。今作は読み切りなので何がどうなったらこういう状況になったのかという過程は放り出しているわけですが、そういう結果に到達していてほしいという願いなのだなと思いました。
>そしてこの世界にもインスタはあると思われる(笑)。
間違いないでしょう(笑)。インスタはエヴァとタイアップしてくれなさそうだし、フィクション世界特有の微妙に名前の違う何かがきっとあるはずw
ありがとうございます。正直なところ、こんなに暖かい感想をいただけるとは思っていませんでした。tambさんの琴線に触れるところがあったのなら嬉しい限りです。
改めて読み返しても今作は作者(ぼく)の願望であるのだなと思うのです。二次創作なんてだいたいそうなのですが。本編の、とくに終盤での過酷な有りようを乗り越えて、若者らしく可能性と未来のある時代を前向きに生きていてほしい。そして、本編であったことを悪しき過去として封印するのではなくて、乗り越えた上でコミュニケーションのタネにできるくらいにはポジティブな思い出、過去であってほしい。碇くんのことは特別であってほしいけど、アスカとはそれとまた違う特別な仲を築いていてほしい。今作は読み切りなので何がどうなったらこういう状況になったのかという過程は放り出しているわけですが、そういう結果に到達していてほしいという願いなのだなと思いました。
>そしてこの世界にもインスタはあると思われる(笑)。
間違いないでしょう(笑)。インスタはエヴァとタイアップしてくれなさそうだし、フィクション世界特有の微妙に名前の違う何かがきっとあるはずw
件名 | : Re: ロールプレイ |
投稿日 | : 2022/03/15 15:56 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
最近忘れがちなので最初に書いておきたいが、これは素晴らしい作品である。
かつてのアスカは周囲からの期待に過剰に適応し、ある意味では期待される姿を演じてきた。そして壊れた。
その事情はレイにしても大きな違いはないと言える。自分は何かということを考えることもなく、ただ無を指向し続けた。そこには周囲からの期待しかなく、他には何もなかった。自分というものを含めて。
この作品は、その過去を乗り越え、なりたい自分になろうとしている二人を描いている。自分探し的な出口の無い迷宮を乗り越え、あるいは突き抜け、自分のあるべき姿、ありたい姿に向けて自分の過去を脱構築している。
だからこそ、お約束のロールプレイでじゃれ合うこともできる。今は軽々しく口にできる言葉ではないけれど、やはり戦友なのだろうと感じる。
「よかった、そう言いかけたのを飲み込んで「ええ」とだけ返す。」
この「よかった」があまりに沁みる。
レイの一人称で語られるこの話には、例えば「わたしはそっと見ないふりをした」の「わたし」の入れ方とか、「彼女の話の尻尾は捕まえたけど、このままではパフェを取り逃がしてしまう。」、「危険すぎるボリューム」とか、上の「よかった」もそうだし、いいフレーズ、言葉の使い方がたくさんある。いかにも一歩踏み出したレイが言いそうだし、それを自然に引き出せるのはすごい。脱帽するしかない。
単にパフェが美味しそうという事実を、美味しそう、という言葉を使わずに表現し切るという筆力。そしてこの世界にもインスタはあると思われる(笑)。
レイも、アスカとなら「わたしも、もうやらない」とか、「命令なら、そうするわ」とか、際どい会話ができる。でも「今のわたしでも碇くんとはこんな話はしない」のがとてつもなく良い。アスカも笑顔で返せる。「命令ね」と言える。ラストの二人は、とても素敵な笑顔だったのだろう。もう一度書くが、それはロールプレイでじゃれあう姿なのかもしれないが、同時に過去を乗り越えてこそ、乗り越えつつあるからこその笑顔なのだ。
これは傑作として後年に語り継がれる性質の作品ではないかもしれないが、こういう二人を描いた作品があったと、いつまでも記憶の中に残り続けるだろう。
本当に良い作品でした。ありがとう。柳井ミレアという作家が今ここにいることが、本当に嬉しい。それを言語化するのにこれだけの時間がかかってしまった。それは笑って許して欲しい。
最後に、”前後の多少の飛躍”は全く気にならなかったことを付記しておきます。
かつてのアスカは周囲からの期待に過剰に適応し、ある意味では期待される姿を演じてきた。そして壊れた。
その事情はレイにしても大きな違いはないと言える。自分は何かということを考えることもなく、ただ無を指向し続けた。そこには周囲からの期待しかなく、他には何もなかった。自分というものを含めて。
この作品は、その過去を乗り越え、なりたい自分になろうとしている二人を描いている。自分探し的な出口の無い迷宮を乗り越え、あるいは突き抜け、自分のあるべき姿、ありたい姿に向けて自分の過去を脱構築している。
だからこそ、お約束のロールプレイでじゃれ合うこともできる。今は軽々しく口にできる言葉ではないけれど、やはり戦友なのだろうと感じる。
「よかった、そう言いかけたのを飲み込んで「ええ」とだけ返す。」
この「よかった」があまりに沁みる。
レイの一人称で語られるこの話には、例えば「わたしはそっと見ないふりをした」の「わたし」の入れ方とか、「彼女の話の尻尾は捕まえたけど、このままではパフェを取り逃がしてしまう。」、「危険すぎるボリューム」とか、上の「よかった」もそうだし、いいフレーズ、言葉の使い方がたくさんある。いかにも一歩踏み出したレイが言いそうだし、それを自然に引き出せるのはすごい。脱帽するしかない。
単にパフェが美味しそうという事実を、美味しそう、という言葉を使わずに表現し切るという筆力。そしてこの世界にもインスタはあると思われる(笑)。
レイも、アスカとなら「わたしも、もうやらない」とか、「命令なら、そうするわ」とか、際どい会話ができる。でも「今のわたしでも碇くんとはこんな話はしない」のがとてつもなく良い。アスカも笑顔で返せる。「命令ね」と言える。ラストの二人は、とても素敵な笑顔だったのだろう。もう一度書くが、それはロールプレイでじゃれあう姿なのかもしれないが、同時に過去を乗り越えてこそ、乗り越えつつあるからこその笑顔なのだ。
これは傑作として後年に語り継がれる性質の作品ではないかもしれないが、こういう二人を描いた作品があったと、いつまでも記憶の中に残り続けるだろう。
本当に良い作品でした。ありがとう。柳井ミレアという作家が今ここにいることが、本当に嬉しい。それを言語化するのにこれだけの時間がかかってしまった。それは笑って許して欲しい。
最後に、”前後の多少の飛躍”は全く気にならなかったことを付記しておきます。
件名 | : Re: ロールプレイ |
投稿日 | : 2022/03/01 01:14 |
投稿者 | : みれあ |
参照先 | : |
初出は pixiv です。
急に思い立って書いた割には書けたので普段の自分の腰の重さに思いを馳せたり、而してあとから読み返すともっと詰められるところもたくさんあったなと思ったり。
アスカの帰国に際してアスカとレイが話すこと、零号機の自爆を絡めて際どいやりとりをすること、というのがネタ帳にあった元のネタなのですが、最終的にそこがあまり本筋にならなかったのは(でてきた作品の良し悪しとは別の次元で)筆のコントロールが下手だなあと思った話題でもあります。結果的にはこのオチに落とせたのには満足している。
今回は pixiv の改ページ機能を使う前提で段落を切りました。改ページをめくるという操作が挟まれば前後の多少の飛躍を許してもらえるのではないか、という甘えが出ている気もする。
急に思い立って書いた割には書けたので普段の自分の腰の重さに思いを馳せたり、而してあとから読み返すともっと詰められるところもたくさんあったなと思ったり。
アスカの帰国に際してアスカとレイが話すこと、零号機の自爆を絡めて際どいやりとりをすること、というのがネタ帳にあった元のネタなのですが、最終的にそこがあまり本筋にならなかったのは(でてきた作品の良し悪しとは別の次元で)筆のコントロールが下手だなあと思った話題でもあります。結果的にはこのオチに落とせたのには満足している。
今回は pixiv の改ページ機能を使う前提で段落を切りました。改ページをめくるという操作が挟まれば前後の多少の飛躍を許してもらえるのではないか、という甘えが出ている気もする。
けど、今日の彼女は少しだけいつもと様子が違うようにも見えた。信号待ちで立ち止まった時に手を握ったり開いたりするのを横目で見た。何か言い出しそうな顔でこちらを一瞬見てやめるのが視界の隅に入った。わたし相手に遠慮なんてしそうもない彼女が言い淀むのは珍しい。どうしたの、なんて口に出しそうになったけど、多分そうしてしまうと彼女は躊躇いを捨ててしまいそうで、わたしはそっと見ないふりをした。
駅までの最後の信号待ちでまた足止めされる。信号が変わるまでの残り時間が減っていくのをぼうっと見ている。5秒おきに変わる数字が10まで減ったところで、視界の隅の彼女が手をぐっと握るのが見えた。
「ねえ」
「なに」
「アタシ、コーヒー飲みたい」
「そう」
「そう、じゃないでしょ」
「自動販売機ならあっちに」
「そうじゃないでしょ」
ついどうでもいいやりとりを始めてしまう。わたしは気の利かない能面女の天然ボケ役で、彼女は我が儘だけど常識のあるツッコミ役。お互いそんな単純ではないことなんて分かりきっていたけど、特に二人きりのときはこのロールプレイをするのが半ばお約束だった。
横断歩道の手前でじゃれ合うわたしたちを他の生徒達が追い抜いていく。青に変わったはずの信号は気付けばもう点滅して、まだ今なら渡れるかもしれないとわたし達を急かす。ロールプレイの顔から一瞬だけ真顔に戻った彼女がくるりと信号に背を向ける。
「アンタもどうせヒマでしょ? ちょっと付き合いなさいよ」
よかった、そう言いかけたのを飲み込んで「ええ」とだけ返す。
* * *
「お待たせしました。フルーツパフェ大盛りスペシャルデラックスです」
彼女は確かにコーヒーが飲みたいと言っていたはずだったけど、気付けばわたし達の間には巨大なパフェが鎮座していた。キラキラした瞳でパフェを眺めながら彼女が言う。
「ここのパフェの一番大きいの、いっぺん見てみたかったのよね」
確かに、クラスメイトから噂に聞くことはあっても現物を見るのはわたしも初めてだった。特大のパフェグラスを色とりどりのフルーツがきらびやかに彩る様子は圧巻だったし、華の女子高生が一人で食べるには流石に危険すぎるボリュームなのは明らかだった。彼女が二人分のスプーンをもらっていたのはそういうことだろう、と目の前のスプーンを見て思う。
写真をひととおり撮り終えた彼女がスプーンをパフェに伸ばしかける。このままだと本当にパフェを二人でシェアして終わってしまいそうで、慌てて「ねえ」と呼び止める。
「なに? アンタも写真撮るの?」
そうじゃなくて。続きを言葉にするか少し迷う。いつものわたしなら彼女に任せるだろう。だけど。自分の違和感を止められなくて、そして今なら彼女も答えてくれそうで、わたしは能面を剥がした。
「話、あるんじゃないの」
瞳のキラキラを収めた彼女が大きな溜息をつく。彼女がわたしのことをじっと見つめ返して、自分が彼女をそんなに見つめていたかと気付く。
「アンタに気を遣われるなんて、今日のアタシは不調ね」
「そうかも」
5秒、10秒。じっと見つめ合ったところで、彼女の方が降参、と音を上げた。
「そうよ。アンタに話がしたかったの。気を遣わせて悪かったわね」
でもそれはそれとしてパフェは食べるわよ、とスプーンを大袈裟に構えるポーズを取る彼女に、スプーンを手に取ることで返事をする。彼女の話の尻尾は捕まえたけど、このままではパフェを取り逃がしてしまう。
* * *
パフェを最初に見た瞬間はあんなに巨大に見えたけれど、二人がかりで挑んでしまえば存外あっけない最後だった。一切れしかないメロンを譲ってもらった代わりに最後のコーンフレークを引き受けることになって、彼女が頼んだはずのパフェの器はいまわたしの目の前にあった。
「この瞬間だけ切り取ってみると、アンタが一人でそのパフェ食べたみたいでおもしろいわね」
言い出しっぺがケタケタと笑いながらわたしの写真を撮る。アンタにもあげるわ、と送られてきた写真を見ると、たしかにわたしがひとりでモリモリとパフェを食べ終わろうとしている様子のように見えた。
「その写真、赤木博士には見せないで。多分怒られるから」
「リツコに送るって発想はなかったわ。それはいいわね」
「ちょっと」
最後の一口を食べ終わって、すっかり冷めてしまった紅茶を一口飲む。目標は完全に沈黙ね、なんてことを言って二人で少し笑う。わたし達の間にあったパフェの器を下げてもらって、今度こそ邪魔者なく向かい合う。彼女はちょっと照れくさそうな顔をしながら切り出した。
「大した話じゃないのよ。いつ言おうかタイミングを見計らってたら、だんだん言いにくくなってきちゃって」
彼女はそこで一度言葉を切って一度深呼吸をする。いつもの表情に戻った彼女は、いかにもいつものことのようにさらっと口にした。
「アタシ、来月ドイツに帰るから」
* * *
「弐号機をどうするかでずっと揉めてたのはアンタも知ってるでしょ。やっとケリがついたらしいの。ガイコー的判断で弐号機はドイツに引き渡し。アタシは弐号機ともどもソコクにガイセン、ってこと」
その話は確かに聞いたことがあったけど、いつまでも進展を聞かないものだからなくなったのだとばかり思っていた。口に僅かに残る紅茶の後味が、さっきまでと変わって急に苦く渋く感じられる。わたしは今どんな顔をしているだろう?
「どうしたのよ、黙っちゃって」
何を言えばよいのか分からなかった。分からなかったから「寂しい」とだけ返す。
「随分と直球ね」
いつもみたいに言葉を拾われて、ついいつもみたいに言葉を返してしまう。
「わたし、そういうキャラだから」
「それはナシなんじゃない? それに、ミサトも愛しのバカシンジ様もいるでしょ」
「それはそれ、これはこれ」
「別腹みたいな言い方するんじゃないわよ」
折角真面目に話をしたのに、なんて言いながら彼女はメロンソーダを啜る。わたしも真面目に受け止めたつもりだけど。お互いにどうでもいい会話に慣れすぎて、真面目な話の進め方を忘れてしまったみたいだった。
「とはいえ人気者は辛いわねー。本部からもドイツからも引っ張りだこ。ま、こっちのエヴァがバカシンジと初号機だけになると思うとミサト達が心配するのも分かるけど」
「わたしの零号機があれば違った?」
「逆でしょ。こっちにエヴァが3体もあったら1体くらい、って誰だって思うじゃない。アンタが零号機を吹っ飛ばしてなかったら、アタシはとっくの昔にドイツに戻ってたわよ」
「なら、自爆して良かったのかもしれない」
際どいボールに際どい返し。あの頃のわたし達には絶対できなかったし、今のわたしでも碇くんとはこんな話はしない。
それは分かんないけど。彼女がちょっとだけ真面目な顔に戻ってわたしに釘を刺す。流石にやり過ぎたみたい。
「次はないわよ」
「わたしも、もうやらない」
* * *
「随分遅くなったわね、そろそろにしましょうか」
あの後わたし達は結局いつも通りだった。彼女が喋りたい話をしゃべり続けて、わたしはそれを聞き続ける。飲み物の追加注文で随分分厚くなった伝票は何枚組になっただろう。
「そうね」
わたしが手に取ろうとした伝票をひょいっと掴み上げた彼女は、「今日はサービスしたげるわ」と席から立つ。
「ま、そういうことだから。あとちょっとだけどよろしくね」
彼女が話題を結論まで巻き戻す。ふと思い出して思いついて、表情をなるべく押し殺して、目の色を消して、平板な声で返す。
「命令なら、そうするわ」
2秒、沈黙。
先に笑ったのは彼女で、わたしもつられて笑う。こっそり伝票を彼女の手から奪い返そうと伸ばした手をはたき落とされる。
「いい度胸じゃない。じゃあ、命令ね」