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投稿日 | : 2022/07/16 07:04 |
投稿者 | : 黒狼武者 |
参照先 | : http://ayasachi.sweet-tone.net/cgi-bin/bbs4d/patio.cgi?edit=847&no=0 |
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- WEB PATIO -
http://darkten.pa.land.to/cgi-bin/patio20130216/patio10.cgi?mode=view&no=4130
桜花姫
http://darkten.pa.land.to/cgi-bin/patio2/patio10.cgi?mode=view&no=3142
ネルフ本部指揮所
「なんともまぁ…だな…」
「知恵の実を持たぬ使徒でも学習する。力だけではない。」
指揮所は緊迫感に支配されている。使徒が出現すれば緊迫感に支配されるのは当たり前のことであるのだが、今回は度が違う。これまでの使徒はバケモノ感が強い個性的な姿をしていた。しかし、今回出現したのは…。
「プリズム状の使徒。外殻を変形することでATフィールドを自由自在に展開し、攻撃にも転用する。全方位に対応できるように進化しているわね。」
そう、今回の使徒はプリズム状、正八面体の形状をしている。しかも、透明状の結晶のような形状である。結晶なら簡単に粉砕出来そうに思われるが、これは違う。外殻への攻撃は全てATフィールドで阻まれている。その外殻を使徒は展開することで、防御形態をとったり、多種多様な攻撃形態をとることで攻守を両立している。
「使徒に砲台の攻撃が無意味なことは分かっていましたが、ここまでとは…」
「どうしますか?無人砲台は次々と蒸発していますよ。」
相模方面から侵攻してくる使徒は激烈な砲台の攻撃を無効化して、カウンターとして高エネルギーの熱線を放射している。砲台は特殊装甲を使用しているが、使徒の攻撃を無効化出来る程度に頑丈ではない。カウンターを貰っては蒸発を繰り返している。
「構わん、どうせ無人砲台は捨て駒に過ぎん。我々の本命は福音戦士だ…」
「戦自(戦略自衛隊)の戦車大隊が勝手に攻撃していますが、そちらは?」
基本的に使徒対策はネルフ本部に全権があるが、これを嫌がるのは戦略自衛隊及び政府である。他国との戦争を本業とする戦略自衛隊にとって、仕事を奪取されるのは許容出来ない。しかしながら、戦略自衛隊の戦力では使徒を殲滅することは実質的に不可能である。やはり使徒に対抗出来るのは福音戦士でなければ無理な話だ。だが、そんな不都合な事実はどうでもいい。メンツの問題で政府や戦自の上官達は勝手に行動していた。
当然ネルフとしては「勝手に行動するな」という話だが、無視していた。むしろ、「勝手に動いた以上は、勝手に自爆して行って下さい」と思考している。無慈悲にも聞こえるが、完全に自業自得である。
「奴等は自由にさせておけばよい。まったく、無駄なことをする。福音戦士に踏みつぶされても文句は言わせんよ。」
「了解しました…」
使徒の侵攻を止めるべくネルフも戦自も頑張っているが、やはり通常兵器では全く歯が立たない。これまでの使徒と異なり全方位のATフィールドに加え、圧倒的な火力を持つ高エネルギー熱線よって防御ラインは次々に蒸発されていく。その悲報が重なるが、冬月は冷静だった。幸い、相模方面には幾重もの防御ラインと物理的に侵入を防ぐ防壁を展開してある。数はたっぷりと揃えているから、福音戦士の出撃の時間を稼ぐことは十分可能だ。
「福音戦士初号機の発進を急げ!」
「碇、零号機は出さないのか?」
「あぁ。レイはまだ動けない…」
今現在、出撃可能なのは福音戦士初号機と零号機だ。しかし、パイロットで出撃出来るのはサードチルドレンだけだった。厳密にはファーストチルドレンも出撃出来るが、実験での負傷が完全に癒えていなかった。満足には動けなくても、普通に動けるぐらいには回復していた。しかし、碇ゲンドウは出撃を許可しなかった。ここでもファーストチルドレンを優先するのか。
ケージでは福音戦士初号機の出撃が急がれていた。二度の使徒戦での経験と徹底した機械化による効率化で出撃までの時間はおよそ三十パーセント短縮されていた。これが功を奏して、かなり早い段階での出撃を可能にした。
カタパルトに移送される途中で、シンジは葛城ミサトから指示を受けていた。これまでに色々とあった両者だが、お互いに(主にミサトが)頭を冷やしたので関係は険悪ではない。
「いい?シンジ君。今回の使徒はこれまでとは全く違う。今までの使徒戦の経験は通用しないかもしれない。よって、今回は福音戦士パイロットの現地判断を尊重します。大まかな動きには従ってもらうけど、あなたの判断で動くのを許可します。」
「はい…わかりました。」
初号機はカタパルトまで移送され、射出を待つ。使徒は依然として侵攻中で防壁を破壊しながら進撃する。現実では不可能とされていた無限エネルギー機関ことスーパーソレノイド機関の威力は非常に驚異的だ。一度の高エネルギーで超高層ビルを蒸発させるほどである。あれに直撃すれば福音戦士とて無事ではすまない。
初号機は近くの高山の裏手に出るようにしている。分厚く大きな高山なら使徒の高エネルギーでも全てを破壊することは不可能であり、威力は軽減出来る。高山から様子を見て、隙が生じたときに一気に肉薄しての格闘戦に移ることを思考している。使徒は遠距離・中距離で真価を発揮すると考えられる。外殻を変形させることが可能でも、近距離の格闘戦には対応出来ないだろう。懐に入り込めば十分対抗出来る。
「いいわね… 福音戦士初号機。発進!」
直後に福音戦士初号機はカタパルトで直上へと移送される。何度も体感し続けた重力の感覚は心地良く感じられる。シンジは良い意味でも悪い意味でも、福音戦士で戦うことが日常と化していた。
以前は緊張することが多かったが、それはもうない。福音戦士で戦ってこそ、自分なんだ。そう考えていた。だから、今日も使徒を倒す。それだけだ。
しかし…。
使徒は無慈悲の咆哮を向けようとしていた。
「使徒内部に高エネルギー反応!」
「先程までの砲撃とは比較にならないエネルギーです!」
「マズイわ!シンジ君!回避して!」
「うっ!」
初号機が裏山に射出された瞬間だった。使徒は見慣れない形に外殻を変形させ、中心部のコアを剥き出しにした。一見すれば隙を見せすぎる愚策であるが、それは破壊力に一辺倒の攻撃である。指揮所では使徒の内部に計測不能の高エネルギー反応を観測した。
そして、それは高山をターゲットにしていた。
不気味な高音と共に使徒の中心部から使徒による鉄槌が下されようとしている。
「防壁展開。全てだ。急げ!」
高山と使徒の間にある地点から続々と装甲ビル群がニョッキリと出てくる。高山があるからそう簡単に初号機を攻撃出来ないが、見たことも、聞いたことも、計測したこともないエネルギー反応が向けられている。それを鑑みて、防壁を展開する。
その直後にエゲツナイ威力の加粒子砲が発射された。それは馬鹿みたいな熱量と高エネルギーで防壁を一瞬で粉砕していく。展開した防壁は全てがドロドロに液状化する。そのまま高山に直撃する。人工ではなく、大自然により構築されたシールドは非常に頑丈だった。土砂から岩石まで例外なく焼失させているが、それなりに時間がかかっている。いくら使徒と言えど、流石に高山を一つ吹っ飛ばすには長時間が必要みたいだ。
「ボルトを全て爆破しろ。作戦は中止だ。」
「くっ…やむを得ないか!」
「初号機を強制回収します!」
通常の福音戦士の回収は相当の損傷でなければ基本的にエレベーターなどで回収する。しかし、今回のように緊急時の場合は、機構のボルトを全て爆破して、タワーオブテラー方式で急転降下させて回収する。これ以上の作戦の続行は不可能である。不可能というよりかは、著しく困難だと考えられる。使徒が総合的に進化していることは認識出来たが、その幅が恐ろしく大きい。近距離からの近接戦に持ち込むにしても、このように迎撃されては実質不可能だ。どれだけ隠密行動で射出しても迎撃される。ただの迎撃ならそれなりに可能だが、全てを焼失する咆哮が来る。これは非常に厳しい。
「あ、危なかった…」
初号機はコンマ秒遅れて降下していなかったら、加粒子砲が直撃したと思われる。今回は防壁と高山があったからこそ無事であったが、最悪、これがただの市街地であったら間違いなく、良くても大破、パイロットも重傷を負っていることは確実である。シンジは間一髪のタイミングで重傷を回避したと言える。
使徒は初号機が消えたことを確認すると通常形態に戻り、再び本部へと侵攻を開始した。