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イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T
日時: 2005/01/19 10:33
名前: レスカ

はじめまして、レスカでございます。
感想を書かせていただきます。


読んでいる間、ビューティフルドリーマーという単語が頭をちらついておりました。
あの映画の内容は知らないので、このお話と似ているのかどうかはわからないのですけど(笑)
単語からくるイメージみたいなものでしょうか。

>そのまま一生会えないんじゃないかと思わせる消え方だった。

うーん、これには参りました。私には一生書けない文章だ。
こういう感性が私にはないので少しうらやましいです(*/∇\*)キャ

ではでは。
メンテ

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Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.1 )
日時: 2005/01/19 21:43
名前: tamb  <tamb@cube-web.net>

これまたわけがわからん(爆)。でも不思議と違和感はなかったりする。文章は手馴れ
た感じで、根府川先生の授業を受けている夢は本当に夢なのか、葛城先生に頭を叩か
れてからあとは本当に現実なのかを疑わせる。

「なんでかシンジだけは本編設定の優等生なのよ」とか「根府川が苗字で、先生が名
前よね?」とかは、この話と本編のみならず、今私がこうしてこの文章を書いている
現実とのクロスすら窺わせる。夢と現実に区別はない。ラストで眠った彼女はどこに
行き、そして目覚めたときはどこにいるのだろうか。

「軽く頭を叩かれた。目を開ける。」の前に目を閉じるシーンがあると良かったかも。

>「いらないなら私に頂戴」とアスカが言った。「ハンバーグ」

こういう「」の使い方は真似したいんだけど、なかなか上手くいきません。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.2 )
日時: 2005/01/19 22:51
名前: D・T  <dogura-magura@maia.eonet.ne.jp>
参照: http://www.eonet.ne.jp/~dogura-magura/index2.htm

レス。

■レスカさん
はじめまして。D・Tです。
D・Tも「ビューティフル・ドリーマ」という映画を見たことがありません。
でも、素敵な題名ですね。今度借りてみるのも良いかもしれない。
読んで頂いてどうもありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。

■tambさん
>これまたわけがわからん(爆)。

いろいろと言い訳はあるのですが、みっともないので割愛(笑)。

>「軽く頭を叩かれた。目を開ける。」の前に目を閉じるシーンがあると良かったかも。

うあぁ……。思いつかなかったぁ……。
たしかに、そうした方が良いなぁ。しまったなぁ。

>こういう「」の使い方は真似したいんだけど、なかなか上手くいきません。

こういう「」の使い方は、村上春樹のマネをして覚えました。上手くいっているかどうかはわかりません。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーラ ( No.3 )
日時: 2005/01/22 03:29
名前: なお。

夢、訳の分からない非現実的な事も許容できる不思議な世界。
たま〜に、こりゃおかしいだろうって目が覚める事もあるけど、
目が覚めて始めて、ああ、夢だったんだ、って気が付く場合が多い。

この話のレイも非現実的な夢を観ている。
明らかに非現実的な世界、これは夢で片付く。
そして目が覚めた後の昼食時、アスカとヒカリが言った訳の分からない話。
訳の分からない、としておきながら甘んじてそれを受け入れている。
そしてカヲルの「さよなら」とそのまま一生会えないんじゃないかと思わせる消え方。
これが2つの接点であり、両方とも夢なんじゃないかと思わせる。
そうなると、夢の中で夢を観ている訳だ。器用なw

>「でも、眠るわけにはいかないの」と私は言った。
>「どうして?」
>「さよならを言われるのが怖いから」と私は答えた。
>「そう」と碇くんは言った。「じゃあ、がんばって起きとかないとね」
>「うん、がんばる」

この「うん、がんばる」がかわいい。
ここも夢っぽいですね。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.4 )
日時: 2005/01/24 21:51
名前: tamb  <tamb@cube-web.net>

>>「さよならを言われるのが怖いから」と私は答えた。
>>「そう」と碇くんは言った。「じゃあ、がんばって起きとかないとね」
>>「うん、がんばる」

>この「うん、がんばる」がかわいい。

でも、

> 机の上に腕を組んで、頭を乗せた。もう眠たすぎる。
>
>「おやすみ、碇くん」と私は言った。
>「え、あ、うん。おやすみ」と碇くんは言った。
>
> 戸惑った言い方がすごく可愛かった。

で寝ちゃうんだよな。そう考えるとシンジの戸惑いはシュールかもしれない。
ここで眠って見る夢は現実なのかもしれないですね。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.5 )
日時: 2005/01/24 22:09
名前: あやきち  <ayaten@infoseek.jp>
参照: http://www12.ocn.ne.jp/~tengoku/index.html

実はD・T氏ことデーちゃんの作品を読むのは初めてな私(爆)

面白い。
文体とか不思議な感じがして、まさにイリュージョンって感じw
でも好き。
ただし、24kb以上の分量になったら読まない可能性大w

最後、レイはおやすみと言って寝てしまいますが、
放課後なんちゃう?w
これが夢の中だとしたら、目が覚めるような感じだし、現実だとしたら・・・誰か起こせよw
って話だw

tambさんのコメント見て思ったのは
比較的有名な「夢の中の蝶の話」です。
中国の誰立ったかは忘れたケドw
蝶になる夢をみるんだけど、だからといって
今ここに居る自分が蝶のみている夢ではないとはいいきれない
そんな内容だった気が・・・違ってる可能性大w

ま、そんだけ〜w

メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーラ ( No.6 )
日時: 2005/01/25 01:29
名前: なお。

実は昨日、綾天チャットでD・Tさんが即興で、
『イリュージョン・ハッピーライフ=トゥルー』
なるものを書いてらっしゃったのです。

私はリアルタイムで読まさせていただいたのですが、もしかすると他にもどなたか読まれた方もいらっしゃるかもしれません。
本当にラッキーでした。
もしそれがこの話と繋がっているとすれば全てが夢の可能性が高いような気がします。

その中の一節

>そして次の夢に目覚める。

もう1つ

>そして、最後の夢を見るために目を閉じ、そして開いた。

そう思ったのはここからなんだけど、それにしても次の夢に目覚めるなんて表現なかなか思いつかないです。

御本人の承諾がありませんので全文の掲載は控えさせていただきます。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.7 )
日時: 2005/01/25 22:30
名前: toMo

>ペンペンが首から下げた時計を見せてくれる。

不思議の国のアリスで時計持った執事みたいなウサギ、出てきませんでしたか?なんだかそれが思い出されました。

う〜ん、

>ああ、もう駄目。おやすみなさい。

>「……ぐぅ」

と、ここまで現実の導入で、後は全部夢だったんじゃないかなと。そんな印象を受けました。
何て言うか、こうぶわぁっと広がっていく感じで。

>夢の中は世界が軽い。きっと重力が弱いのだろう。

と、たしかにずっとふわふわとしたイメージが続いていたような気がします。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.8 )
日時: 2005/01/26 22:19
名前: tamb

>『イリュージョン・ハッピーライフ=トゥルー』
>なるものを書いてらっしゃったのです。
――中略――
>御本人の承諾がありませんので全文の掲載は控えさせていただきます。

激しく投下を希望でございます。投稿あるいは自サイト掲載でもOK。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.9 )
日時: 2005/01/26 23:26
名前: D・T  <dogura-magura@maia.eonet.ne.jp>
参照: http://www.eonet.ne.jp/~dogura-magura/index2.htm

『イリュージョン・ハッピーライフ=トゥルー』


 さざ波の音に目を開く。濡れている頬。
 遠くの砂浜。小さな人影。
 遠くなのか、近くなのか。距離感が無い。たよりない意識。
 まるで片目をつむって見ているよう。
 手を伸ばせば届くかもしれないと思う。私の腕はどこにもない。
 風に乗って聞こえる嗚咽。遠くの子供が泣いているのだろうか。
 ただただ片目を開いて砂浜にいる二人を見ている。紅い髪。黒い髪。
 遠い。近い。
 黒い空。紅い虹。白い砂。
 私は片目で笑っている。
 どうして笑っているのだろう。そして目が覚めた。


「綾波、HR終わったよ」と碇君が起こしてくれた。
 寝ぼけたふりをして、碇君の頬をなでた。夢で見た、紅い髪の女の子の真似をした。
「どうしたの、綾波」と碇君が言った。仮面を貼り付けたみたいにぴったりとした笑顔だった。
 私は寝ぼけたふりをして碇君の頬をなで続けた。
「やめてよ、綾波」と碇君はずっと同じ笑顔で淡々と言った。「君の首も絞めちゃうよ」と言った。
 どうして笑っているのだろう。そして次の夢に目覚める。


 昔。
 私を絞め殺して飛び降りた人がいた。
 それを見ている子供の私は笑っていた。
 大人の女の人みたいな笑い方だった。
 現実に落ちる。


 最後に目覚めたここはどこだろう?
『現実なんてどこにもない』と誰かが言っていた。
『現実とは何か、と考えるときにだけ思考に現れるただの幻想だ』と言っていた。
 そして、最後の夢を見るために目を閉じ、そして開いた。

  終



やあ、みんな。元気かい?
D・Tは超元気だよ。ひゃっほう。
オフラインでやらなきゃいけないことが溜まりまくってるので反応はちょっと待ってね。レスとかね。
今出せるのは、上に出てる奴くらいだ。
清書する時間も無いよ。ガチで。
あ、怖いのが苦手な人は、シンジ君が出てくるシーンは飛ばした方が無難だよ。めっちゃ怖いで〜。
そんじゃね。チャオ。

                 D・T拝

 あ、それと、最後の
『現実とは何か、と考えるときにだけ思考に〜』
 っていうのは、昔読んだ小説のパクリです。清書のときにはセリフ変えます。
 パクリって言葉が嫌な人は、引用、と読み替えてもグー。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーラ ( No.10 )
日時: 2005/01/27 01:50
名前: tamb

>夢に目覚める。

こりゃすげぇぞ。ちょっと興奮してます。
この感覚はすごい。
ひとつのフレーズに震えることって、私はあんまりないんだけどな。

メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーラ ( No.11 )
日時: 2005/01/27 02:28
名前: なお。

でしょでしょ、わたしもそう感じたのよん。

チャットで次ぎはどうなるのか、って待っててこれですからね。

まさにイリュージョンw
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.12 )
日時: 2005/01/27 16:11
名前: のの

夢のあやふやさと面白さとあぶなっかしさが現れてると思います。
「陳腐でチープ」という表現がいい。今度使わせてもらおう(笑)
「根府川先生」っていう呼び方がそもそも夢っぽい。だって名字じゃないもんな。

っていうふうに表現や呼び方を疑っていくと、どうもてっぺんからつま先まで夢ではないかと思える。
作者の意図は「こっからここまでは現実で、こっからが〜」というふうにきちんと分けられてるのかもしれないけれど、あまりそういう感じはしない。
もしかしたら補完計画が発動した世界かなという疑い方すら可能だ。
夢は現実のつづき、現実は夢の終わり。
じゃあこれは現実か?夢か?

夢を題材に扱ったSSはそれほど多くないけれど、Kame氏の「夢祭」のレイ視点の話に似ている。
いや、内容は似てないけれども「夢」という素材をていねいに扱っているという点で。

面白かったです。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.13 )
日時: 2005/01/27 16:29
名前: のの

おっと、「トゥルー」アップされてたか。
なんかあながち補完計画云々てのが間違ってないのではと思える。
こりゃすごいっすね。まじで。言葉の妙にやられてしまう。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.14 )
日時: 2005/01/28 00:53
名前: aba-m.a-kkv

読んでて、さすがD・Tさんだ!って思いました。
ほのぼのから、少し悲しげなところから、不思議なところから、いろいろな夢が混じって、D・Tさんらしい、とても面白いSSでした。
それぞれの場面が頭の中の映像のなかに散らばってそれぞれ見れて、不思議な浮遊感を感じさせるものでした。
この感覚が素晴らしい。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.15 )
日時: 2005/01/28 19:39
名前: tamb

実際、D・Tさんはヤバイ。
あとは長さだよな(笑)。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.16 )
日時: 2005/01/28 23:48
名前: D・T  <dogura-magura@maia.eonet.ne.jp>
参照: http://www.eonet.ne.jp/~dogura-magura/index2.htm

>あとは長さだよな(笑)。

ぎゃふん。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.17 )
日時: 2005/02/03 22:48
名前: D・T  <dogura-magura@maia.eonet.ne.jp>
参照: http://www.eonet.ne.jp/~dogura-magura/index2.htm

Re:Re:

 どこまでが現実で、どこからが夢なのか。
 実は何も決めていないと言ったら、君は失望するだろうか。
 違うんだ、と私は言い訳をしようとする。決めてないんじゃない、決める必要が無いからだ。と言い訳をする。
 今のこの私達が、君の見ている夢ではないと誰が言い切れるって言うんだ。
 現実なんてどこにも無い。それはあやふやな幻だ。現実ではなく、幻実(げんじつ)。
 いいかい、この世界は全部、君の幻想なんだよ。



 というのがテーマです。さっきそういう設定にしました(笑)。


■あやきちさん
>実はD・T氏ことデーちゃんの作品を読むのは初めてな私(爆)

 今すぐ綾幸に行って全部読んできなさい(笑)。
 大丈夫、全部短いから(笑)。

>最後、レイはおやすみと言って寝てしまいますが、
>放課後なんちゃう?w

 ちゃいます。
 授業中です。根府川先生の。
 あやきちさんの感想を読んだ後で『イリュージョン(略・誰だよ、こんな長い題名付けた馬鹿は)』を読み直してみたのだけれど、確かにそう読めます。これは私のミスです。申し訳ない。
 綾波レイは、授業中に眠ったのです。


■toMoさん
>不思議の国のアリスで時計持った執事みたいなウサギ、出てきませんでしたか?なんだかそれが思い出されました。

 ズバリそれです。
 時計に針が無いのはD・Tのオリジナルですが、ペンペンに時計を持たせたのはルイス・キャロルのパクリです。オマージュと読み替えてもグー。


■なお。さん
 いつぞやは『トゥルー』にお付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。
 あのときたしか、「即興ですか?」とお聞きになりましたよね。そして「いつものように即興です」と答えました。
 いつも即興なのです。プロットを作って物語を書いたことがありません。


■tambさん
>あとは長さだよな(笑)。

 プロットを作らないから、長い物語を書こうとすると、どうにもならなくなって展開が破綻するんだと思います。
 破綻を避けるために、もはや宿命的に物語は短くなる。
 では、これからプロットを作って物語を書くようになるか、というと、作らないで今のままのスタイルで書く、ということになるでしょう。
 このスタイルのまま長い物語が書けるようになったとき、そのときD・Tはさらに一段上のステージに登ることになるのでしょう。
 ただ単にプロット作るのが面倒くさいとかそういうことでは(略)。


■ののさん
>「陳腐でチープ」という表現がいい。今度使わせてもらおう(笑)

 パクってばかりのD・Tが珍しく自分で考えた言葉の組み合わせです。これに目をつけるとはお目が高い(笑)。 
 ジャンジャン使ってください。

 あと全然関係無いんですけど、kameさんのFFでは「シャツとメルヘン」が好きです。本当に関係無いや。


■aba-m.a-kkvさん
>不思議な浮遊感を感じさせるものでした。
>この感覚が素晴らしい。

 その浮遊感はD・Tが作り出したものではありません。
 空を飛ぶには翼が必要だ、みたいなことを作中で渚カヲル君は言っていましたが、浮遊するためには読者の想像力が必要なのだと思います。
 D・Tはaba-m.a-kkvさんの、その想像力が素晴らしいのだと思います。
 何だか愛の告白みたいなセリフで非常に照れますが。





『イリュージョン・ハッピーライフ=デス&リバース』

 をここに書こうと思って一生懸命あるいは一所懸命パタパタとキィボードを叩いていたのですが全然書き上がりませんしそもそもFFを書いている時間なんて本当は無かったことを思い出しましたので『イリュージョン・ハッピーライフ=デス&リバース』は次の機会にしましょうと思い用意してあったレスを貼り付けました所存。

 またね。チャオ。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーラ ( No.18 )
日時: 2005/07/29 02:25
名前: なお。

で「デス&リバース」は、どうなった?w
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.19 )
日時: 2005/07/29 22:07
名前: D・T  <dogura-magura@maia.eonet.ne.jp>
参照: http://www.eonet.ne.jp/~dogura-magura/index2.htm

正直メンドクセw
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.20 )
日時: 2005/08/03 22:21
名前: D・T  <dogura-magura@maia.eonet.ne.jp>
参照: http://www.eonet.ne.jp/~dogura-magura/index2.htm

2015年までにはなんとか。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーラ ( No.21 )
日時: 2005/08/04 02:16
名前: なお。

うわ、よく見てたなあ!
さりげなくレスも上げとかなかったのに(爆)

降参ですw
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.22 )
日時: 2005/09/01 14:47
名前: tamb

この掲示板、まだ動いてたんだなぁ(笑)。
メンテ
Re: 幻想・幸福人生=夢/D・T ( No.23 )
日時: 2005/11/22 15:48
名前: CNG

「デス&リバース」楽しみにしています。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.24 )
日時: 2010/12/06 19:42
名前: D・T

2015年が、もう、すぐそこまで来ているのを実感するために、久しぶりにこの掲示板へやってまいりました。
もう5年も前なのか。恐ろしい。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.25 )
日時: 2022/06/01 01:42
名前: デーテ

カラフルモノトーン





 砂浜を模した市民プールの、その波打ち際でたそがれている。
 そろそろ帰る時間になってしまった事にレイは気付いた。夕焼けのぼんやりとした明かりの真ん中で、流れる雲を見ていた。
 ちゃぷちゃぷと足下で跳ねるプールの浅瀬を、複雑な水面のプリズムを、ゆっくりと放物線を描くビーチボールの軌道を、夜に向かって飛ぶ鳥の影を。
 目に映るそれらを黒と橙色に塗り分ける光の中にレイは居た。曖昧に滲んで輪郭がぶれるような色の中に居た。

「なんだか、これは。……この気持ちは、」とレイは小さな声で呟いた。

 燃えるような空を横切る鳥の黒い点々。微かに輝き出す青白い星々。風が少し出てきて、忘れていた体温が甦った。

「なにポエってんのよ」アスカが隣に並んで言った。「帰るわよ」

 夕陽に燃える濡れた長い髪が幾筋か、アスカの白く細い肩に張り付いているのが見えた。橙色に反射する水滴の煌めきが髪飾りのように見えて、まるで星空のようだった。

「やだ」とレイは駄々をこねてみた。

 長い髪が羨ましいような、手入れが大変そうなので短いままの方が良いような、夕陽に照らされた時の気持ちで意味の無い言葉を口にする。
 帰りたくない気持ちと、お腹がすいたので帰りたい気持ちと、この後の花火が楽しみな気持ちと、この曖昧な色合いが永遠に続けば良いのにという願望とが混ざって途方に暮れていた。

「しゃらい! あたしはすぐにでもご飯食べて花火やってアイスクリーム食べたいの! 帰る、わ、よ!」

 アスカはレイの手首を掴んだ。丁寧に磨かれた爪がチカチカと瞬き、グイグイと力強く、しかし性急では無い配慮のある掌握がレイを動かした。

 ぱしゃぱしゃと波を蹴りながら夕暮れを進む。昼じゃなくって、夜じゃないこの時間と場所を。波打ち際を。黄昏を。

「私も」とレイはアスカに言った。「アイス食べる」





 吐いた息が白くなるのが面白くて、レイは呼吸を意識した。
 ふーっ、ではなくて、は〜、が良い。

 肩から下げた毛糸のポシェットに、お使い用のがま口とメモが入っている。いつもは母に手を引かれて通る道を今は一人で歩いている。
 小学生にもなると、これはもう立派なレディなのでそれ相応の扱いをするように、とレイは両親に求めた。アニメの主人公の真似をして言った。

 レディは一人でショッピングが出来る、という思想を根拠にレイはお使いに赴いている。
 田んぼの脇を通るあぜ道をじゃりじゃりと進む。
 どんよりとした曇り空と白い呼気が重なりあって、もしかしたら雲の中に入るとこんな感じなのかもしれないと想像した。

 お〜い、とレイを呼ぶしわがれた声がした。

 レイは辺りを見回す。背の低い家がまばらに建ち、広い灰色の空が見える。遠くの方まで視線が通り、山にぶつかって途切れる。畑や果樹が各家庭にある農村の風景だった。
 畑の横で座り込み、水筒を持って一服をしている老婆がいた。もんぺに手拭いというクラシカルなスタイルが周囲との調和を高めている。

「ばあさん」とレイは親しみを込めて応えた。

「あんたなにしょんと」と老婆は尋ねた。
「おつかい」と胸をはってレイは答えた。
「へぇ、ひとっこでがい。大変だなや」

 一人でおつかいに行けてすごいね、と言われてレイは嬉しくなった。芽生えたばかりの自尊心がミチミチとした。一人前のレディなので、と付け足す。

「れでぇか。そんりゃええねや」

 かっかっかっと笑って老婆は水筒の中身を飲んだ。

「なにのんでるの」とレイは聞いた。
「桃の汁じゃ。飲みや」と言って老婆は水筒の蓋を渡してくれた。

 それはほんのりと甘く、水に果汁を少し混ぜただけの物だった。
「あんまり美味しくない」
「うまいもんじゃねぇよ。口に含んで、目ん玉とじて味を探すもんじゃに」

 どうしてそんな事をするのだろう、とレイは思った。

「味を見とるし、あんまし濃いのは好かんのよ」と老婆は言った。「こっしの桃はへしょいまんずだ」

「夏にくれたみかんみたいなやつは美味しかった」
「だいだいやね。冬超えて甘くねるや」
「色えんぴつとか、クレヨンにだいだい色あった」
「ほんに。えしゃらってな」

 老婆はゆっくりと腰を上げて、近くに伸びている木の幹に手を当てた。

「こいがだいだい。もうしょっとで実がつく」

 レイはその木を見上げた。普通の木で、これがだいだいの木か、と思った。見分けはつかない。

「そう。わからない」とレイは言った。「もう行くね」

 老婆と手を振りあって別れた。

 だいだい色は、果物の色。寒ければ寒いほど甘くなるらしい。冬の空気には、甘くなる何かが混じっているのかもしれないとレイは思った。





 ツバメを抱っこしながら、彼女は腕の中の小さな命を、小さいのに重くて暖かい赤ん坊の事を思っていた。指を近づけると握り返してくる手も、細い髪も、耳や鼻も、全てが小さい。

 生きている。

 彼女に赤ん坊だった時期はなくて、だから不思議に思うのだろうか。だんだんと大きくなる事が。成長するという事が。

 彼女は、自分には過去も、そして未来も無いという事を知っている。形を失う瞬間が近づいているのを感じている。

 ツバメの小さな頬っぺたに自分の頬をくっつける。赤ん坊の高い体温が心地好く、生き物の臭いがする。汗や脂の力強い臭い。脈打つ鼓動のリズムや、皮膚をくすぐる吐息。

「土の匂い」

 ツバメは腕を振り回して、彼女の頬をぺたぺたと触って笑った。

「そっくりさん、ツバメを見ててくれてありがとう。代わるわ」

 外から戻ってきたヒカリが靴を脱ぎながら声をかけた。手を洗い、彼女からツバメを受けとる。

「行ってらっしゃい」とヒカリは微笑んだ。

「うん」と彼女は応えた。

 通いなれた経路を辿りながら彼女は彼の事を想う。深く傷付いて損なわれてしまった碇シンジの事を想う。

 もっと話が出来れば良かった。
 もっと沢山話しかけたかった。
 土の匂いや、ツバメの小さな掌、ぬかるんだ田んぼから脚を引き抜くときのコツ、雨合羽に当たる大きい雨粒の痛さ、日陰で感じる風の通り道、お腹の膨らんだネコ、太陽の光が眩しいこと、みんなでお風呂に入るときの作法、もっと、もっと沢山。沢山のおまじないの事も。

 軽い傾斜の坂を上ってからふと気付く、この夕焼けを見たときの気持ちの事を。

 ずっと見ていたくなるこの不思議な色の事を。

 崩れかけた廃墟に到着して、彼の小さな後ろ姿を視界に収める。
 彼はいつか回復するかもしれないし、しないかもしれない。彼女は回復を待っているわけではない。

 ただ見ていたいから見ていて、側に居たいから側に居るだけだ。
 もし。いつか。彼が立ち上がろうとした時に、その時に側に居ることが出来れば良いなと、ただそれだけを想っているだけだ。

(彼が幸せになれば良いなって、私はきっと、何度だって同じことを想う)

 暮れる空を彼女は眺めている。彼も、瞳には映っているだろう。それで良い、と彼女は思った。





 膝の上に乗せられた頭の重みは感じなくて、それについては少し残念だなとレイは思った。
 ぼやけた視界と色彩の中で、くっきりと輪郭を保っているのは二人だけだった。
 ふわふわと漂う黒い髪を視線で追いながら、あるいは淡いブルーの髪がそよぐのを見つめながら、ぽつりぽつりと会話を交わす。

 悲しかった事や、辛かった事、大切に思っていた事、思いもよらなかった事。
 全てがあって、何も無いこの場所では。心の壁の無い補完された世界では、本当は会話をする必要は無い。けれども意味はあった。

 傷付けあって、傷付く世界を望むという事。

 希望なのよ、とレイは言った。あるいはもしかしたら、シンジが言った。

 満たされていた心から、どんどんと充足感が喪くなっていくのをレイの感覚は捉えた。喪ってしまうのはとても寂しかったけれど、欠けているから求めるのだと理解していた。

 だから、

「僕は、君と」とシンジは言った。

 起き上がったシンジと目を合わせる。シンジはそっと右手を差し出した。

「綾波、君と、」

 レイもゆっくりと手を伸ばす。レイの唇が微かな弧を描く。互いの考えている事はもう分からないけれど、思っていることはたぶん一緒だから。





 ふとレイは意識を覚醒させた。
 幻を見ていたような、夢から覚めて、もしかしたらこの『今』でさえも次の夢なのかもしれないと感じる唐突な覚醒だった。

 レイは初号機のエントリープラグの中にいた。実体は失っていたが確かにシートに座って操縦桿の上に手を置いている。
 時間の感覚は無いが、LCLにたなびく淡いブルーが時の流れを想起させる。脈絡もなく、夜空を横断する銀河が思い浮かぶ。

 呼ばれる。という強い実感がレイの中に沸き起こる。

「もう、乗らなくていいように、出来なかった……」

 後悔と悔恨と、そしてとめどない歓喜の心と後ろめたさが同時に蠢いている。

「……」

 幻想の世界で起こったかもしれない、いくつもの可能性がよぎる。そして、もしかしたらそれらが終わってしまうような気さえする。

 レイはプラグスーツに包まれた右手に視線を移した。力を込めると指はしっかりと動き、何かを掴むような形になる。

 きっと、掴んでいる。

「……さよならなんて、寂しい事を言わないで」と呟いてレイは微笑んだ。





メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.26 )
日時: 2022/06/01 01:43
名前: デーテ

デス&リバースお待ちどおさま。
メンテ
Re: イリュージョン・ハッピーライフ=ドリーム/D・T ( No.27 )
日時: 2022/12/19 00:31
名前: みれあ

これはすごいことですよ!
メンテ

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