Re: いつまでも / なお。 ( No.1 ) |
- 日時: 2005/01/19 21:46
- 名前: tamb <tamb@cube-web.net>
- これはいいね。何がどうって話じゃないんだけど、こういうのは幸せだと思う。添い
寝してるのくらい気づけって気はするけど(笑)。 「あ〜、いっけないんだ〜。おじいちゃん、おばあちゃんなかしちゃったー」はどん なミスリードだと思ったけど、そうじゃなかったんだな。孫だって子供には違いない し。
片親なのは寂しいかもしれないけど、元気にやってください。
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Re: いつまでも / なお。 ( No.2 ) |
- 日時: 2005/01/24 23:59
- 名前: なお。
- ■tambさん
気に入って頂けたようでなによりです。 きっと、まだ至らない部分も多いのでしょうが、私の実力を踏まえた上でお誉め頂いたと思っております。 こうなると、次からは中途半端な物は書けないなぁ。まさしくアメとムチ(爆)
ここからは、後書きみたいなものです。 ネタバレもありますので、これから本作を読んで頂けるのであれば、これ以降を読まない事をお薦めします。
メインとしたお題は・シンジとレイが結婚した後の日常のエピソード、です。
冒頭部分を書き始めた当初、新婚もしくは幼い子供がいる設定にしようかと考えていました。 ですが冒頭部分を書き進めているうちに、多分このお題を使うであろう殆どの方が同じような設定にするのでは? と思い、急遽変更となった次第です。 結局、私以外ではtambさんだけだったのですが(爆)
老後だって、立派な結婚後ですよねw
そうなるとそれを伏せておいた方が面白そうだと、少々イタズラ心を出してしまいました。 あやきちさんには「だまされた」と言われましたが、してやったり、ですw
子供(孫)に、シンジとレイに似たベタな名前を付けたのは、そんな理由からです。 そんな事もあったので母親の名前は、あえてシンジとレイには結びつかない名前としました。 娘が子供の名前をシンジとレイから取った事で、尊敬出来る父母(シンジ、レイ)なのだと思って頂けたら幸いです。
初稿の段階では無かったのですが文中のシンジのセリフ「よっこらしょ」は後に付け加えました。 さすがにそのままでは意地悪すぎるので、ちょっと年をとっていると気づかせるための加筆です。 それでも設定上50代半ばから後半といった所です。
先日チャットでtambさんが地味だと仰っていました。それはまさしく狙った所です。 tambさんもそれに気が付いた上で、そう仰ったのだと思います。 あくまでも日常ですので、あまりドタバタベタベタさせず日常感を出した結果です。 それでもベタベタしてますけどw
まあ、それが祟って今回の企画のテーマである「萌え」がスポイルされてしまった事は確かでした。 それに関してはあやきちさんからアドバイスを頂いてレミにオーバーオールを着せることで萌え要素を追加しました。 文章力が足りないせいか、自分ではイマイチ感が否めなかったのですが、リテイクしてあやきちさんの感想を伺った所、悪くはないとなったのでそのままにしておきました。 元々かなり短かったのでそれはそれで良かったのですが、蛇足のような気もしています。 私にもっと文章力があればそうは思わないのでしょうが、今はこれで精一杯です。
結果として狙い打ちは成功だったようですがw
もう1つあやきちさんにアドバイスを頂いたのは寝起きのレイのセリフ。 当初は「…どうして起こしてくれなかったの?」と、していました。 このセリフを分割する事でシンジの「えっ?」が引き立ちました。 重ねがさねあやきちさんには感謝しております。m(_ _)m
最後に娘家族が母子家庭だと判明します。 ただ預けていただけで最後に夫婦そろって迎えに来させても良かったのですが、父親は出さない事にしました。 亡くなったのか、別れたのかは定かではありません。 これは、出来ればオリジナルキャラクターを作りたくないといった所もあります。
人生山あり谷あり。シンヤとレミには可哀想な気もしますが人生ってこんなものだと思います。 そんな笑いあり涙ありの日常の中で、ささやかな幸せを表現したかったのです。
それを感じて頂けたなら、幸いです。
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Re: いつまでも / なお。 ( No.3 ) |
- 日時: 2005/01/27 16:15
- 名前: のの
- ずいぶん子供っぽいおばあちゃんだけど、理想だよなと思ったりもするよこういう老夫婦(笑)
INNOCENT RED EYESにちょっとだけ老後の二人が出てくる(メインはEOEからレイが帰ってくるところ) 話があって、さりげない話なのにちょっと泣けるくらいいい話なんだけど、あの二人もこんな感じだろうなー、 と思ったが、これではSSの感想になってない気がした(汗) つまりいい話でした。こういうの好きです。
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Re: いつまでも / なお。 ( No.4 ) |
- 日時: 2005/01/29 23:30
- 名前: なお。
- ののさん、感想ありがとうございます。
>つまりいい話でした。こういうの好きです。
これだけでも、じゅうぶんです。 そう仰って頂けると本当に嬉しいものです。 自分でも、この「いつまでも」は、よく書けたと思います。
ですが、今になって読み返すと文章の流れがギクシャクしてるように思えます。
流れるような…。
いつか、そうできるといいんですがねw
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Re: いつまでも / なお。 ( No.5 ) |
- 日時: 2005/01/30 02:27
- 名前: tama
- 福の(さきはひ)の いかなる人か 黒髪の
白くなるまで 妹(いも)の声を聞く
万葉集だったと思うけれど、すごく好きな歌です。 学生の方が多いので、古文は説明するまでもないでしょうが、妹は恋人とか愛しい人とかの意。 そんなわけでこの歌は、好きな人と年をとるまで長くともにいることがいかに幸せかを歌ったもの。 大昔からみんなそう思ってたんだなって、思います。 2人にたくさん一緒に幸せでいてほしい、としみじみ思いました☆
PS ラストの手紙の部分に多分脱字が。 「げんき」なのかなと思ったけど、どうでしょう;;
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Re: いつまでも / なお。 ( No.6 ) |
- 日時: 2005/01/30 02:31
- 名前: あやきち <ayaten@infoseek.jp>
- 参照: http://www12.ocn.ne.jp/~tengoku/index.html
- ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ
あれれ? 直したはずなんだけど・・・ 直してない方をアップしちゃったのかな? すぐ修正します〜〜〜
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Re: いつまでも / なお。 ( No.7 ) |
- 日時: 2005/01/30 23:28
- 名前: なお。
- tamaさん、いい詠ですね。
月朧 我思い出すのは キミの笑み ここに座るも あの頃のキミ
シンジが詠うとこんなかな。
俳句なんて、高校以来w
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Re: いつまでも / なお。 ( No.8 ) |
- 日時: 2005/02/12 18:13
- 名前: なお。
「ラッシャイ!」
暖簾をくぐるとすぐさま、聞き慣れた威勢のよい声がした。もうピークは過ぎたようで、店の中は空席がちらちらと見える。それでも、さっきまで満席だったのであろう、テーブルの上には片付けられていない食器が所狭しと載っていた。
一番奥にある座敷にあがり、壁の角に僕、隣にレミ、正面にはレイ、その隣にシンヤ、といった順で席に付く。 奥の壁側は寄り掛かれるので気に入っている場所だ。この店に来たときには空いていればいつもここに座る。テレビも見やすい特等席なのだ。 並び順は家で食事をする時と一緒だった。無意識に同じ並びで席に付くのはおもしろいなと思う。
「マンガ、持ってきていい?」
シンヤがレイに聞く。
「もうちょっと待ちなさい、注文が終わってからにしなさい」 「え〜っ」
そこで僕が助け舟を出す。
「いいよ、チャーシューメンでいいんだろ、たのんでおくよ」 「うん」
そう言うと、シンヤは靴の代わりに置いてあったスリッパを履き勢いよく本棚に向かった。
「あなた」 「まあ、いいじゃないか」
レイは軽く溜息を吐き、諦めの表情を浮かべた。言っても聞かないとでも思っているのだろう。 僕はあんがいガンコで、そういう性格はレミに引き継がれたのだとレイは言う。僕から見れば、レミはレイそっくりだと思ってるんだけど…。
そのレミは今、僕にじゃれついてきている、頭を僕の胸に押し付けて。 レミがこんな時は眠いときだ。きっと遊び疲れているのだろう。
厨房に入っていたおかみさんが注文をとりにきた。
「こんばんは碇君、レイさん。それにおちびさん達も」
そう言ってお冷やの入ったグラスを置き、手際良くテーブルの上を片付けていく。
「ごめんなさい、さっきまで忙しくて」 「いいのよ、ヒカリさん」 「まあ、土曜日だしね。注文、いいかな?」 「はい、どうぞ」
いい笑顔だ、トウジのやつが惹かれたのも無理はない。それに商売向けだね。小さいながらも繁盛してるみたいだし。
「じゃあ、チャーシューメンと、餃子とモツ炒めにビールを瓶で」 「わたしは…いつものやつ」
そこで、いままで眠たそうにしていたレミが間髪入れずに言った。
「いつもの!」 「「へ?」」
その一言には僕だけじゃなくレイもあっけにとられた。でもヒカリさんだけはわかったようだった。
「すぐできるからちょっと待っててね」
ヒカリさんはレミに向かって微笑んでから厨房に消えていった。
「いったい、何が出てくるのかしら?」 「さあ?」
僕達には想像もつかなかった。
「ねえ、まだぁ〜」
あれから1分と経っていないうちにレミが痺れを切らした。ダダをこねはじめるのはやはり眠いからだろう。
「いくらなんでも、そんなに早くできないよ、もう少し待ってな」 「だって、すぐできるっていったもん」 「そんな、我が侭な悪い子はこうしてやる」
コチョコチョとレミをくすぐる。
「キャー、キャハハ、やめてー」 「どうだ、おとなしく待ってるか?」 「こうさん。こうさんするから、ヤメテー!」
それからは、僕とレミでくすぐりあいになった。先程最後の客も帰り、迷惑にもならないので僕もけっこう楽しんでいた。
「もう、やめて。見てるこっちまでくすぐったくなってくるわ」
僕はずうっとレミの膝頭を攻めていた。弱いところはレイとまったく一緒で、こんなところも似ているといえば似ている。 それに、それを見ていたレイが時折顔をしかめていたのも気づいていた。レミと遊んでいたけどレイの反応を窺うのも案外楽しんでいた。 そんな表情を見ていたらレイの事もくすぐってみたくなった。最近やってなかったから、あとで寝る前にちょっとくすぐってみよう。
そうこうしているうちに、まず1つ目の品が届いた。
「はい、おまちどうさま」
ヒカリさんが出したのは、チャーシューが乗っていない普通のラーメンのように見える。だからシンヤの品ではないのはわかる。
「これ、わたしの?」
レイがラーメンを指差しヒカリさんに聞いた。
「違うわよ、レミちゃんのよ」
普通のラメーンとはちょっと違うようだ。かすかにニンニクの香りが漂っている。
「ああっ、ニンニクラーメンチャーシュー抜きかあ!」
僕は感心した。レミはまだ一度しかこの店に連れてきていない。その時レイが注文したのがこの品だった。 レイがこれを頼んだのは久しぶりの事だったので僕も忘れていたんだけど。レミはこれが気に入ったようで自分で頼んだチャーハンには手を付けず、レイのラーメンを半分、いやスープを残して殆ど全部食べたんだっけ。ヒカリさんはよく憶えていたなあ!
「うん、レミちゃん向けにニンニクは少ししか入れてないけどね」
僕はお椀に麺とスープを移し、冷ましてからレミに渡して食べさせた。
「いただきま〜す」
ズルズルっと小気味良い音が聞こえる。この後「おいしー」って声があがるのを予想した。 レミは気に入った物ならまず一口目に必ず「おいしー」って言うから。 しかし、レミが発したのは予想に反した言葉だった。
「これちがうよ」
はて、レミが食べたかったのはこれではなかったのだろうか?
「ちょっと貸してみて」
レイは僕の手から蓮華を取ってスープを掬うと一口飲み込み味を確かめるように目を瞑った。 そして、厨房に向かって呼び掛ける。
「ヒカリさーん、摺りニンニク持ってきて貰えないかしら!」
レイは味見をして加減をしながらスープの中にニンニクを溶かし込んでいった。 その量はレイのニンニク好きを知っている僕から見てもかなりの量に思える。これじゃあレミには辛くって食べられないんじゃないだろうか。 隣で見ているヒカリさんも心配そうに顛末を見守っている。
レイは最後の味見をすると、これだと言わんばかりに頷いた。
「これでどうかしら?」
再度レミがラーメンをすする。すると「おいしー」と満足そうな声。 どうやらニンニクラーメンには料理好きな僕や商売をしているヒカリさんよりレイに分があるようだ。 僕とヒカリさんは思わず顔を見合わせて苦笑いを浮かべていた。
「おいヒカリー、何しとんや! とっととこれ運んだってやー!」 「あっ、は、はい!」
どうやら騒ぎのうちに料理がすべて出来上がったようだ。
「おまちどうさま」
テーブルの上に料理が出揃った。香しい香りが鼻孔をくすぐる。普段より2時間ほど遅い夕食なので、みんなお腹がペコペコだ。 マンガを読んでいたシンヤもレミが最初に食べ始めたのを見てからはそわそわとしだしていたが、それまで我慢をしていたのはさすがお兄ちゃんといったところだ。 最近はとくに良い傾向がみられるので、今度何か御褒美でもあげようかと思う。 レイが注文した「いつもの」は野菜炒めにニンニクがたっぷりと入ったやつだ。一応肉も入っている。昔と違って今では肉も食べられるようになったのだ。 子供を躾けるのに自分に好き嫌いがあったのでは手本にもならないと努力をして克服した結果だった。でもやはり肉は苦手なようで、好んで箸を進めようとはしない。 ヒカリさんもそれがわかっているので、レイの野菜炒めには細かくした肉をちょっぴり入れるようにと厨房で腕を振るうトウジに伝えているのだ。 それが「いつもの」の正体だった。
「「「「いただきます」」」」
みんなそろって食べはじめる。なぜか既に食べていたレミまで挨拶をしたのがおかしくて僕は少しの間、食事に手を付けられなかった。
ふうっ、まずレイにお酌をしてもらったビールを一杯飲み干し一息付ける。そしてモツ炒めを一つ摘んで口に放り込む。 すごく柔らかく濃厚な味が口いっぱいに広がる。この味付けだけはマネしようと思って何度も家で試したが無理だった。 トウジに作り方を教わろうとしたけど「アカン、企業秘密や」の一点張りで教えて貰えなかった。「そうよ教えられないわ」とヒカリさんもクスクスと笑っていた。 きっと2人で試行錯誤して作り出した味なんだろう。意地悪ではなく2人にとって、それほど大切な物なんだね。それだけの価値はあるよ、トウジ。
僕はもう一口摘んではその味をよく噛み締めた。
「ここ、ええか?」
さっきまで忙しそうに厨房の奥で見え隠れしていたトウジが返事も聞かず座敷きの縁に腰をかけた。 今は代わりにヒカリさんが洗い物をしている。
「まっ、一杯どや?」
トウジは持ってきたビール瓶を僕に差し出す。 今日は一本でやめておこうと思っていたけど、ここは御相伴に預かろう。
「やっぱりこのモツ炒めは最高だよ。いつかはきっとマネしてみせるよ」 「おう、出来るもんならやってみいや」
トウジはガハハと笑い出す。
「そうや、シンヤ。おま、ウチのボンズが虐められとうの庇うてくれとんやて?」
シンヤはそれに答えようとしない。
「まあ、ええわ。おおきにな」
トウジはそう言ってシンヤの頭を撫でて腰を上げるとジュースを2本持ってきてシンヤとレミの前に置いた。
「これは、オッチャンからの奢りや」 「「うん、ありがとう」」 「おう、レミ。お礼なら兄ちゃんに言わんと」 「ありがとう、おにいちゃん」 「悪いねトウジ」 「ええて、世話なっとるさかい。それにしてもウチのボンズも弱々しいやっちゃな、誰に似たんやろか」
トウジは手で目を被って天井を見上げる。するといままで黙っていたシンヤが口を開いた。
「おじさん!」 「なんや?」 「弱くなんかないよ、だって向こうはいつも3人がかりなんだもん!」 「ホンマか! そいつは卑怯やな!」 「だから負けても仕方がないんだ。だからそんなこと言っちゃダメだよ!」 「そか、オッチャンが悪かった。かんにんしてや」 「僕に謝ってもだめだよ!」
慌ててレイがシンヤを止める。
「こら、シンヤ。やめなさい!」 「ええんや、ええんや。こりゃ一本取られたわ」
気にもせず豪快にガハハと笑う。
「シンヤ、おまんの言うとおりや。また頼むな」 「うん、まかせて!」
トウジとシンヤはビールとジュースのグラスをカチンと合わせてそれを飲み干した。
「悪いトウジ」 「そう思うとるんやら、もう一杯付き合えや」
断る訳もなく、僕はトウジにもう一杯付き合った。
「ごちそうさま」 「ごちそうさまでした」 「おう、また来てや」 「また、いらしてね」
あれからすぐに暖簾をしまったトウジと話しが弾んで、つい長居してしまった。その間、レイもヒカリさんと親し気に話をしていた。マンガを読んでいたシンヤはいつの間にか寝てしまっていたので僕が背負っている。レミももちろんとっくに寝てしまっていたので、そちらはレイの背中に。
「なつかしいね」 「何が?」 「こうやって子供を背負って夜道を歩くのがさ」 「そうね、あの頃はあなたがカレンを背負ってわたしが隣を歩いて…」 「この子達も大きくなるんだろうね」 「さみしくなるわ…」 「僕じゃダメかい?」 「そんなことない」
レイが僕に近付く。だけどレミを背負っているので肩が触れ合うだけしか出来ない。僕は片手だけでシンヤを背負い空いた手でレイの肩に手を置く。
「いつまでも一緒にいようね」 「うん、あなたとずっと一緒にいたい、この肉体が滅びようと、例え世界が終わっても」 「レイ…」 「あなた…」
子供達を背負ったまま無理な姿勢でキスを交わす。長い、長いキスを。 どれだけそうしていたのかなんて気にもしなかった、まるで時間が止まったかのように僕達の間には空間というものが存在していなかった。
それから時がようやく動き出したのはレミの寝言のせいだった。
「ううん、ママ〜ぁ」
いつも僕達の前ではそうやってグズる事はないんだけど、やはり淋しいのだろう。 シンヤだっておとなしくしているけれど、やっぱりカレンに会いたいのだろう。
「あの子、早く帰ってくるといいわね」 「そうだね」 「それまでは、淋しくならないように私達が甘えさせてあげないと」 「レイはいつだって甘いじゃないか」 「そうかしら」 「そうだよ」 「あなたの方が甘いと思うわ」 「どちらかって言うと僕は放任主義かも」 「そうでもないわ」 「そうかな」 「そうよ」
近くの街灯が切れ掛かっているのかチカチカと目に焼き付く。痴話げんかはよそでやれと言わんばかりに。
「そろそろ行こうか」 「そうね」
再び家路を歩く。
「きっと大丈夫だよ」 「何が?」 「この子達が大きくなっても、その子供達が生まれてくる。淋しくなんかさいさ」 「ええ、そうね。そうなったらわたしはひいおばあちゃんで、あなたはひいおじいちゃん」 「そのときも僕達はいっしょだよね」 「もちろん」
影が長く伸びる、月明かりに照らされて。 その影は昔と何ら変わらず、そして未来に2人が作る影もきっと変わらないであろう。 いつまでも2人いっしょに肩を並べて手を取り合って。
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Re: いつまでも / なお。 ( No.9 ) |
- 日時: 2005/02/12 23:31
- 名前: toMo
- オーバーオールに萌えを感じることは出来なかったんですけど(笑)
良いお話でした。
おばあちゃんにしては何だか随分幼い印象ですね。 かといって老後の綾波レイってのも想像しづらいんですが、 なによりミサトやリツコが施設に入るあたりが予想外でした(笑)
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Re: いつまでも / なお。 ( No.10 ) |
- 日時: 2005/02/17 23:44
- 名前: なお。
- >オーバーオールに萌えを感じることは出来なかったんですけど(笑)
そこは、本人がいちばんわかってたりしますw
>おばあちゃんにしては何だか随分幼い印象ですね。
まあ、50代なので、まだまだ現役ですよ(何がw)
>ミサトやリツコが施設に入るあたりが予想外でした(笑)
リッコばあちゃんもミサばあちゃんも70代ですからねw ひとり暮らしは辛いんですよ。
リツコもミサトも結婚できんかったのさぁ。 いい人はいたけど、最愛の人を忘れられなかったみたい。 今、思いついたんだけど(爆)
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ゲリラ投稿 ( No.11 ) |
- 日時: 2005/07/21 22:39
- 名前: なお。
- もう誰も見てないだろうからコッソリ投稿。
実は上のレスのやつに手を加えたもので、こと綾に投稿しようと思ってたやつ。 正直に言うとあやきちさんとやりとりしててテンパっちゃって投げたのです(爆) 根性無しです。
てなわけで未完成と言わざるを得ません。 気が付いても何も言わずにスルーする!
本当は上のやつは消したいのだけれどパス入れてなかったので断念。
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これからも 1 ( No.12 ) |
- 日時: 2005/07/21 22:41
- 名前: なお。
- これからも
なお。
はじまったばかりの夜はまだ人工の光りに押されぎみで、星の輝きも多少くすんで見える。ただ、まん丸い月だけはその力を誇示するかのように溢れんばかりの光りを自らの周りの闇に滲ませて、その姿をひと回り大きく強く見せていた。 そんな夜だから歩くには灯がなくともじゅうぶん明るくて、夜闇を怖がるレミでさえ、このちょっとした夜の散歩を楽しんでいるようだった。遠くから幾つか連鎖して聞こえる犬の遠吠えを真似するシンヤと一緒になって「わおー」なんて吠えていた。
家を出て橋を渡り5分といったところ、このあたりは寂れた商店街近くの古い住宅街で、低い軒並みが窮屈そうに隙間なく肩を並べている。 新婚当初から今の家を建てるまで僕達はこのあたりに住んでいた。夏場なんか窓を開けていても家が密集していて風通しが悪く、おまけに家の中の会話が隣に丸聞こえとなるので環境は最悪だった。 いや、聞こえるより聞こえたの方が多かったかもしれない。隣に住んでいたおばさんの声は大きくてよく響いたから、それにしょっちゅう夫婦喧嘩ばかりしてたし。
「あのおばさん元気かな?」
懐かしくなって正面を見たまま隣を歩くレイに聞いてみた。
「誰?」 「ほら、あの声の大きい…」 「…思い出した。わたし、あの人嫌いだから…」 「そう、そういえばそうだったね。じゃ、いいや」
そういえばそうだった。まだ赤ん坊だったカレンがようやく寝付いた頃になるとどういうわけか、たいした用でもないのにいつも大声をあげて家に来るってレイは迷惑がっていたんだっけ。仕事から帰った僕にそんな愚痴をよく言っていたものだ。悪い人じゃないんだけど、レイから見るとはた迷惑な人って印象しか残ってないんだろう。
こうやって歩いていると、立て替えたのだろう比較的新しい家の姿が多いのに気づく。元々古い建物が多かった地区だから時代が変わればそれも当たり前なんだろうけど、新婚の頃の思い出が削られていくようでなんとも言えない侘しさを感じる。 そんな感傷的になっていた僕のところに、その新しい家の塀の向こうからテレビの音に楽しそうに笑う家族の声が漏れてきた。ちょっと遅い夕食を作っている家からはおいしそうな匂いが漂ってきた。そんな所は昔のままで、どうでもいい事なのになぜかほっとした。
「おなかすいたね」
匂いに誘われたのか、手を繋いでいたレミが僕を見上げて言った。
「そうだね、じいじもお腹ペコペコだよ」
レミに合わせてお腹を摩って戯けてみせた。
視線を正面に戻すと、目的の店の「いちばん食堂」という筆で乱暴に書き殴ったような書体の特徴ある看板がちょうど目に入った。この店は姿も昔のまま残していた。
「ラッシャイ!」
暖簾をくぐるとすぐさま、聞き慣れた威勢のよい声がした。一目で見渡せる店の中はもうピークが過ぎたようで、空席がちらちらと見える。それでもさっきまで満席だったのであろう、テーブルの上には片付けられていない食器が所狭しと載っていた。 立ったままいつもの席を探すとそこは空いていた。奥にある座敷の角、僕の特等席だ。壁側に僕、隣にレミ、正面にはレイ、その隣にシンヤ、といった順で席に着く。角にあるこの席はちょっと狭いけど、他の客の煩わしさもなく寄り掛かれるので割と気に入っている。それにこんな隅っこでもテレビも見やすかったりとの理由もあって、空いていればいつもここに座っていた。 並び順は家で食事をする時と一緒だった。たまたま僕の座る位置が一緒だったとはいえ、みんなが同じ並びで席に着くのはおもしろいなと思う。
「ねえ、マンガもってきていい?」
席に着くやいなや、さっそくシンヤはレイに尋ねた。いつもの事なのでわかってはいたけど、ここで食事をするとなると喜ぶシンヤには食事もさることながらこっちも楽しみの一つなんだろう。
「もうちょっと待ちなさい、注文が終わってから」 「え〜っ」
やはりレイは、うんとは言わなかった。するべき事を終えるまで我慢をさせるのも躾けだというのが彼女なりの考えだから。だけどシンヤは家を出る時に食べたいものをまっ先に言っていたから、今回は僕らが代わりに注文しといてやれば問題もなかろう。
「いいよ、チャーシューメンでいいんだろ、たのんでおくよ」 「うん」
シンヤは靴を履くのももどかしそうに勢いよく本棚に向かって走っていった。
「靴はちゃんと履きなさい!」 「はは、あんなに慌てなくてもいいのにな」 「あなた」 「まあ、いいじゃないか」
レイは軽く溜息を吐き、諦めの表情を浮かべた。どうせ言っても聞かないとでも思っているのだろう。 僕はあんがいガンコで、そういう性格はレミに引き継がれたのだとレイは言う。僕から見れば、レミはレイそっくりだと思ってるんだけど…。 そのレミは今、僕にじゃれついてきている。頭を僕の胸に押し付けて甘えている。レミがこんな時は眠いときだ。昼間さんざん遊んで疲れているのだろう。
それからそこそこ待たされて、厨房に入っていたおかみさんがやっと注文をとりにきた。みんなお腹が空いているだろうから早くして欲しいところだったけど、だからといって怒るつもりはない。夫婦2人で切り盛りしている店だからこれくらい待たされるのは仕方がない。 それに…この店は親友が経営している店だから。
「こんばんは碇君、レイさん。それにおちびさん達も」
おかみさんがテーブルの上を片付てゆく。ようやくすっきりとしたテーブルをサッサと拭くと、表面に水滴が付いたグラスを素早くそれでいて丁寧に並べた。口を動かしていても手付きには無駄がなく手際良い。
「ごめんなさい、さっきまで忙しくて」 「いいのよ、ヒカリさん」 「まあ、土曜日だしね。注文、いいかな?」 「はい、どうぞ」
額を滲む汗でテカテカと光らせるヒカリさんは疲れた様子も見せずニコリと笑う。もちろんヒカリさんとはここのおかみさんの事だ。 彼女はちょっと白髪混じりで小皺も目立ち、同い年のレイよりもずっと老けて見える。だけど、その笑顔にはどこか安心できてこっちも釣られて微笑んでしまうような魅力があった。おおらかな感じがする「おかあさん」いや「おっかさん」って形容がピッタリの女性だ。 彼女とはこの店の主人のトウジと共に古い付き合いだ。怒ると恐くて少し潔癖性な感じはいただけないが、それと比較してもほんとうにいい笑顔をする。トウジのやつが惹かれたのも無理もない。この笑顔には作った感じがなく自然な感じで誰もが好感を持つだろう。ほんと商売向けだ。 この店はハッキリ言ってしまうと小さくて小汚い。彼女の性格からして清潔にはしているけれど、くたびれた使用感はどうしても出てしまっている。ニ人が結婚して間もなく建てた店で一度も改装をしていないからそれも仕方が無いのだが、それでもこうやって繁盛してるのはこの笑顔あってのものかもしれない。もちろん味の方も僕が保証する。
「じゃあ、チャーシューメンと、餃子とモツ炒めにビールを瓶で」 「わたしは…いつものやつ」
そこで、いままで眠たそうにしていたレミが間髪入れずに言った。
「いつもの!」 「「えっ?」」
ねえ、レミさん。あなた、いつの間にこの店の常連になったの?
その一言には僕だけじゃなくレイもあっけにとられていた。ぽかんと口を開けたままになってる。 だけど僕達の驚きを他所に、なぜだろうかヒカリさんだけにはそれが何かわかったようだ。
「すぐできるからちょっと待っててね」
ヒカリさんはレミに向かって微笑んでから厨房に消えていった。
「いったい、何が出てくるのかしら?」 「さあ?」
僕達には想像もつかなかった。
「ねえ、まだぁ〜」
あれから1分と経っていないうちにレミが痺れを切らした。ダダをこねはじめるのはやはり眠いからだろう。
「いくらなんでも、そんなに早くできないよ。もう少し待ってな」 「だって、すぐできるっていったもん」 「そんなわがままな悪い子はこうしてやる」
コチョコチョとレミをくすぐる。
「キャー、キャハハ、やめてー」 「どうだ、おとなしく待ってるか?」 「こーさん。こーさんするから、ヤメテー!」
それからは、僕とレミでくすぐり合いになった。先程最後の客も帰り、迷惑にもならないので僕もけっこう楽しんでいた。
「もう、やめて。見てるこっちまでくすぐったくなってくるわ」
僕はずっとレミの膝頭を攻めていた。弱いところはレイとまったく一緒で、こんなところも似ているといえば似ている。だから、それを見ていたレイが時折顔をしかめていたのは気づいていた。レミと遊びながらもレイの反応を窺うのも案外楽しんでいた。 そんな表情を見ていたらレイの事もくすぐってみたくなった。最近やってなかったから、あとで寝る前にちょっとくすぐってみようかなんて思っていたら。
「はい、おまちどうさま」
そうこうしているうちに、まず一つ目の品が届いた。ヒカリさんが出したのはチャーシューが乗っていない普通のラーメンのように見える。だからシンヤの品ではないのはわかるのだが。
「これ、わたしの?」
レイがラーメンを指差しヒカリさんに尋ねた。
「ううん、レミちゃんの」
普通のラーメンとはちょっと違うようで、かすかにニンニクの香りが漂っている。
「あっ、そうか! よく憶えてたね」 「うん、前にきてくれたとき、レミちゃん気に入ってくれたみたいだったから」
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これからも 2 ( No.13 ) |
- 日時: 2005/07/21 22:42
- 名前: なお。
- 僕は感心した。レミは幼い事もあり、この店には数えるほどしか連れてきていない。そして前回レイが注文したのがこの品だった。レイがこれを頼んだのは久しぶりだったので僕も忘れていたんだけど、レミは自分で頼んだチャーハンには手を付けず、レイのラーメンを半分、いやスープを半分だけ残してあとは殆ど全部食べたんだ。そのときヒカリさんがレミに「あら、全部食べたの、おりこうさんね」と言って頭を撫でていたのをやっと思い出した。
レミが憶えていたのも驚きだけど、そんな事をよく憶えていたなあヒカリさんは!
「レミちゃん向けにニンニクは少ししか入れてないけど」
お客の立場に立って、こんな気遣いをしてくれるのもさすがだ。ヒカリさんの笑顔、もちろん味に、こういった根本的で地味なサービスが客を呼ぶ秘訣なんだろう。
「まいったね」 「そうね、ちょっと悔しいかも」
僕達は顔を見合わせてクスッと笑い合った。
「いただきま〜す!」
おお、元気な声だ。さっきまで眠そうにしていたのに僕と遊んで眠気も覚め、美味しそうな匂いでお腹が空いていたのを思い出したのか。 レミは、お椀に移した麺をおぼつかない手付きで箸を使って小さな口に持っていき、ズルズルっと小気味良い音を立てた。僕はこの後「おいしー」って声があがるのを予想した。レミは気に入った物なら、まず一口目に必ず「おいしー」って言うから。 だけどレミが発したのは予想に反した言葉だった。
「これちがうよ」
はて、レミが食べたかったのはこれではなかったのだろうか? やっぱり大人の真似をしたかっただけなのだろうか?
「ちょっと貸してみて」
レイは僕の手から蓮華を取ってスープを掬うと口に含み、味を確かめるように目を瞑る。そして、厨房に向かって呼び掛けた。
「ヒカリさーん、悪いけどニンニク持ってきて貰えないかしら?」
レイは味見をして加減をしながらスープの中にニンニクを溶かし込んでいった。その量はレイのニンニク好きを知っている僕から見てもかなりの量に思える。これじゃあレミには辛くって食べられないんじゃないだろうか。隣で見ているヒカリさんも心配そうに顛末を見守っている。 レイは最後の味見をすると、これだと言わんばかりに頷いた。
「これでどうかしら?」
再度レミがラーメンを啜る。すると「おいしー」と満足そうな、さっき僕が予想したとおりの声。 どうやらニンニクラーメンには料理好きな僕や商売をしているヒカリさんよりレイに分があったようで、これには僕もヒカリさんも苦笑いを浮かべてしまう。 それにしても味の好みまでレイと同じだなんて、やっぱりレミはレイそっくりだ。
「おいヒカリー、何しとんや! とっととこれ運んだってやー!」 「あっ、は、はい!」
どうやら騒ぎのうちに料理がすべて出来上がったようだ。
「おまちどうさま」
テーブルの上に料理が出揃った。見ているだけでもおいしそうなのに、香辛料や調味料が引き出した食材の持つ香りが湯気に絡んで立ち昇り、それが鼻孔を刺激しなおさら食欲をそそらせる。しかも普段より2時間も遅くなった夕食なので、大人の僕でさえ、もう我慢の限界だ。 マンガを読んでいたシンヤもさっきレミが最初に食べ始めたのを見てからはソワソワとしだしていたが、それまで我慢をしていたのはさすがお兄ちゃん。最近はとくに良い傾向がみられるので、今度何か御褒美でもあげようかと思う。 レイが注文した「いつもの」は野菜炒めにニンニクがたっぷりと入ったやつで、ダメだった肉も一応だが入っている。昔と違って肉を食べられるようになったのはカレンがまだ幼かった頃、子供を躾けるのに自分に好き嫌いがあったのでは手本にもならない、と努力をして克服した結果だった。 その頃の吐き気を堪えなんとか食べようとする姿は、見守り応援する事しかできなかった僕にもすごく辛くて忘れられない思い出だ。でもやはり今でもレイは肉が苦手で、好んで箸を進めようとはしない。それでも子供達の前では我慢をして食べている。孫とはいえ躾けには手を抜かないのはレイらしい。ピーマンが苦手なシンヤに「がんばって食べてちょうだい」と、潤んだ瞳でお願いするのはレイも一緒に苦手な肉を食べているからだった。ヒカリさんもそれがわかっているので、レイの野菜炒めには細かくした肉をちょっぴり入れるようにと厨房で腕を振るうトウジに伝えているのだ。それが「いつもの」の正体だった。
「「「いただきます」」」 「いただきま〜す」
みんなそろって食べ始める。僕も一緒に、といきたいところだったけど、先に食べていたレミまでがシンヤが手を合わせたのを真似ながら、もう一度「いただきます」って言ったのがなんだか妙におかしくて、すぐに食べたい気持ちもあったけど笑いがおさまるまではしばらく料理の代わりにおあずけを喰らう形になった。
ようやく落ち着いたところでレイにお酌をしてもらったビールを一杯、一気に飲み干し一息付ける。フウッ、この一杯がたまらなくウマイ! そしてお気に入りのモツ炒めを一つ摘んで口に放り込む。うん、これまたウマイ! とても柔らかく、そして濃厚な味わいが口いっぱいに広がった。
この味付を盗んでやろうと出前までとって何度も試した事もある。近いところまでは再現できたけど完璧には一度も成功していない。 ついに降参してトウジに作り方を教わろうとしたら「アカン、企業秘密や」の一点張りで教えて貰えなかった。「そうよ教えられないわ」とヒカリさんもクスクスと笑っていた。 きっとニ人で試行錯誤して創り出した味なんだろう。意地悪ではなくニ人にとって、それほど大切な物なんだ。
僕はもう一つ摘んではその味をよく噛み締めた。うん、それだけの価値はあるよ、トウジ。
「ここ、ええか?」
さっきまで忙しそうに厨房の奥で見え隠れしていたトウジが、返事も聞かず座敷の縁に腰を掛けた。今は入れ代わりにヒカリさんが洗い物をしている。
「まっ、一杯どや?」
トウジは持参したビール瓶を僕に差し出す。今日は一本でやめておこうと思っていたけど、ここは御相伴に預かろう。
「やっぱりこのモツ炒めは最高だよ。いつかはきっと物にしてみせるからね」 「おう、出来るもんならやってみい。せやけどそう甘くはないで。そない簡単やったら商売あがったりや」 「はいはい、肝に命じておきます」
トウジはガハハと笑い出す。こんな男臭さがこの男の魅力だ。本当に気持ちの良いやつだ。でも、そんなやつだからこそなおさら憎い、僕にだって意地がある。 まあ、見てろよトウジ。いつかあっと言わせてやるから。笑うトウジを後目に僕はそんな事を思っていた。 その彼が急に真面目な顔をした。さっきの笑顔とは対照的で、何かと思えば僕にではなくシンヤに話しかけた。
「そうや、シンヤ。おま、ウチのボンズが虐められとうの庇うてくれとんやて?」
シンヤはそれに答えようとしない。黙って麺を啜っている。
「まあ、ええわ。おおきにな」
トウジはそう言ってシンヤの頭をポンポンと叩き腰を上げると、ジュースをニ本持ってきてシンヤとレミの前に置いた。
「これは、オッチャンの奢りや」 「「うん、ありがとう」」 「おう、レミ。お礼なら兄ちゃんに言わんと」 「ありがとう、おにいちゃん」 「悪いねトウジ」 「ええて、世話なっとるさかい。せやかてウチのボンズも弱々しいやっちゃな、誰に似たんやろか?」
トウジはいかにも嘆かわしいといった感じで大袈裟に目を被っては天井を見上げた。するといままで黙っていたシンヤがおもむろに口を開いた。
「おじさん!」 「ん、なんや、いきなり?!」 「フユキはよわくなんかないよ! だって、むこうはいつも3にんがかりなんだもん!」 「ホンマか! そりゃ卑怯やな!」 「だからまけてもしょうがないんだ。だからそんなこといっちゃカワイソウだよ!」 「そか、オッチャンが悪かった。かんにんしてや」 「ぼくにあやまってもだめだよ!」
慌ててレイがシンヤを止める。
「こら! シンヤ、やめなさい!」 「ええんや、ええんや。こりゃ一本取られたわ」
気にもせず豪快にガハハと笑う。
「シンヤ、おまんの言うとおりや、あとで謝っとく。せやからまた助太刀頼むな」 「うん、まかせて!」
シンヤは生意気にもトウジとグラスをカチンと合わせて一気にそれを飲み干した。
「悪い、トウジ」 「そう思うとるんやら、もう一杯付き合い」
断る訳もなく僕はトウジの酌を受け入れ、そして返杯した。
フユキはヒカリさんが長い間、根気強く不妊治療を行いやっと授かった子供だった。そのせいで2人には経済的負担もかなりあったようだ。だけど僕達を含め友人知人にはそんな辛さなどおくびにも出さず、いつも仲のよい夫婦にしか見えなかった。 トウジは苦労の甲斐あってヒカリさんが妊娠したのを知ると「お祝や、今日から一ヶ月全品タダや!」と言うくらいに喜んでいた。もちろんそれはヒカリさんに知られてこっぴどく叱られていたけれど、その時のトウジの喜びようといったらそれはもう凄いもので叱られ「カンニンや、カンニンや」と言いながらも顔がニヤついていたのを僕はよく憶えている。 結局トウジが言うお祝は実行されなかったけれど、代わりに子供の誕生日には必ず店を開いて「赤字覚悟の年に一度の半額デー」にしている。そして翌日を休みにして家族で誕生日を祝うそうだ。
トウジは僕達の事を「ホンマ変わらんやっちゃな〜、いっつもベタベタと」と言うけれど、それはお互い様だと言いたい。
「ごちそうさま」 「ごちそうさまでした」 「おう、また来てや」 「また、いらしてね」
もう日付けも変わる頃、トウジ達夫婦は店の玄関前でそろって僕達を見送ってくれた。僕達が店に入った後、やけにお客が来ないなと思っていたらすぐに暖簾をしまっていたそうで、トウジなりに僕達に気を使ってくれたらしい。何か悪い気もするけど、おかげでのんびりはできた。そのせいで彼とも話しが弾んでしまい、つい長居してしまった。レイもヒカリさんと楽しそうに時折笑い声を交え話し込んでいた。 マンガを読んでいたシンヤはいつの間にか寝てしまっていたので僕が背負っている。レミももちろんとっくに寝てしまっていたので、そちらはレイの背中に。
ちょっと遠回りをして川沿いの小道を歩いて帰る。行きの頃より月が明るく星も綺麗だった。 一定の距離を置いた夜の空気に鈴虫が羽を弾く音が聞こえる。それは砂利道から生まれたニつの雑音が近付くと夜の闇に溶けていった。また遠ざかると夜の闇から生まれ空気に溶ける。青く照らされた道の脇、草むらの中、同じサイクルでゆっくりと流れてゆく。 歩調は坦々と、それでいてのんびりと、輝く星の天井と眩しい月の天窓を眺めながら僕はレイに話しかけた。
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これからも 3 ( No.14 ) |
- 日時: 2005/07/21 22:43
- 名前: なお。
- 「懐かしいね」
「何が?」 「こうやって子供を背負って夜道を歩くのがさ」 「そうね、あの頃はあなたがカレンを背負ってわたしが隣を歩いて…」 「この子達も大きくなるんだろうね」 「淋しくなるわ…」 「僕じゃダメかい?」 「そんな事ない」
レイは僕にぴったりと寄り添ってきた。レミを背負っているので肩が触れ合うだけしか出来なかったが、それでも頭を僕の肩に預けて彼女は満足そうにしていた。歩きづらくなったがそれを補助できるように歩調を落とす。 肩に伝わる体温が心地よかった。背中に伝わる高いはずの子供の体温よりも暖かく、それが僕にはもどかしかった。今すぐ抱き締めたくなった。 でも、この状況ではそれも出来ない。だから片手だけでシンヤを背負い、空いた手を腰に回して引き寄せた。 振り向くレイ、そこで足も止まった。
「いつまでも一緒にいようね」 「うん、あなたとずっと一緒にいたい、この肉体が滅びようと、例え世界が終わっても」 「レイ…」 「あなた…」
キスを交わす。長い、長いキスを。唇を啄み、舌が触れ合うとそこは滑らかな柔らかさだけを感じ、残りの感触は心がくすぐられたと脳に伝わる。 子供達を背負ったまま無理な姿勢だったけど、どれだけそうしていたのかなんて気にもしなかった。まるで時間が止まったかのように僕達の間には空間というものが存在していなかった。
それから時がようやく動き出したのはレミの寝言がきっかけだった。
「ううん、ママ〜ぁ」
いつも僕達の前ではそうやってグズる事はないんだけど、やはり淋しいのだろう。シンヤだっておとなしくしているけれど、やっぱりカレンに会いたいだろう。
「あの子、早く帰ってくるといいわね」 「そうだね」 「それまでは、淋しくならないように私達が甘えさせてあげないと」 「レイはいつだって甘いじゃないか」 「そうかしら」 「そうだよ」 「あなたの方が甘いと思うわ」 「どちらかって言うと僕は放任主義かも」 「そうでもないわ」 「そうかな」 「そうよ」 「でも、レイほどじゃないよ」 「わたしだって、あなたほどじゃない」
近くの街灯が切れ掛かっているのかチカチカと目に焼き付く。痴話げんかはよそでやれと言わんばかりに。
「そろそろ行こうか」 「そうね」
いつのまにか鈴虫の演奏に囲まれていた僕達は、再び家路を歩きだす。
「きっと大丈夫だよ」 「何が?」 「この子達が大きくなっても、その子供達が生まれてくる。淋しくなんかさいさ」 「ええ、そうね。子供や孫、それに曾孫(ひまご)にも囲まれて…。そうなったらわたしはひいおばあちゃんで、あなたはひいおじいちゃん」 「そのときも僕達は一緒だよね」 「玄孫(やしゃご)ができても…」
影が長く伸びる、月明かりに照らされて。 その影は昔と何ら変わらず、そして未来に作る影もきっと変わらないであろう。 いつまでもニ人一緒に肩を並べて手を取り合って。
ガラガラガラ「ただいま〜」 玄関の引き戸を開け挨拶をする。誰もいないのは知ってるけど、もう習慣だ。 レイも僕の後に「ただいま」と、言った。
居間に入るとレイはレミを背中から降ろし、正座をしてレミの小さな頭を膝に乗せた。よく寝ているみたいで部屋の灯に眩しがる事もない。 レイはレミの顔にかかった髪を丁寧に整えてから自分の肩をトントンと叩き始めた。まだ小さいとはいえ体の小さいレイにはレミはもう重いのだろう。あとで肩を揉んでやろう。
「先にシンヤを寝かし付けてくるから、レミはそのまま寝かせておいて」
僕はレイにそう言ってシンヤを子供部屋に運んだ。
手探りで電気をつけシンヤを降ろし布団をひいた。それからパジャマに着替えさせようと上着を脱がす。 そこで気が付いた、シンヤの肘の怪我に。もうかさぶたになりかけているけど、かなり大きな範囲の擦り傷で痛々しい。
「しょうがないな」
はぁ、と溜息が出る。帰ってきたときに気が付かなかった僕も悪いけど、どうして黙っていたのかね。これじゃ御褒美はなしだな。 ヨイショとシンヤを抱え居間に引き返す。こいつも重くなったよな。
「レイ、シンヤを看てくれないかな?」 「どうかしたの?」 「それが、今日、怪我をしてきたようなんだ」 「まあ!」 「ごめん、帰ってきたときには泥まみれだったから気が付かなかったんだ」
肩を揉んでいたレイは救急箱を取りに。僕はレミを子供部屋へ。 レミを寝かし付け居間に戻ると、レイがシンヤに治療をしながらお説教をしていたところだった。僕はその様子をちょっと離れて見守る事にした。
「…どうして黙っていたの?」 「ごめんなさい」 「擦り傷だって舐めてかかると恐いのよ…」
消毒薬が傷にしみるのか、怒られているからかシンヤは今にも泣きそうだった。後ろからなので顔は見えないがどんな気分なのかはだいたい想像が付く。
「今度はちゃんと言わなきゃ駄目だぞ」
後ろから近寄って頭を撫でてやった、言い聞かすように少し力を入れて。後ろに僕がいたのを知らなかったシンヤは驚いたようでビクッと体を震わせた。寝起きで感傷的になっているところに驚き気が抜けたからだろう、堪えていたであろう涙を流しヒクッ、ヒクッとしゃくりあげ大声をあげ泣き出した。
「ご、ごべんなぁ、ざい」 「わかったのなら、許してあげる」 「は、ばい、もう、しば、しまぜん」
レイは泣きじゃくるシンヤを抱き寄せ背中をそっと叩く。歌うように体を揺らしながら、優しく、優しく。 咽せび泣く声は次第におとなしくなっていった。しばらくはそうしていた。そして泣き疲れたシンヤはレイの腕の中、そのまま眠ってしまった。
たいしたものだ、こんな慰め方は男の僕にはできそうにない。昔、レイに「おかあさんって感じがする」って言った事があった。レイはその頃から母性を持ち合わせていたのかもしれない。 母性がもたらす安らぎ、か。僕には、いやレイにもそれは無縁の物だった。だからこそカレンを大事にしたし、この子達にも精一杯の愛情を与えたいと思っている。 さあ、ここからは僕の仕事。レイばかりにその役目を取られる訳にはいかない。重いシンヤを抱えて布団に放り込まなければ。
「おつかれさま」 「ええ、じゃあシンヤをお願いするわ。お風呂、先に頂いててもいいかしら?」 「うん、あとから行くから」
僕達の中では、その役割分担が無意識のうちに出来上がっている。だから言わずともレイは僕にシンヤを任せた。 それから僕はシンヤを寝かし付け風呂に入った。先に入っていたレイは体を洗い終え湯舟に浸かっていた。
「背中、流しましょうか?」 「お願いするよ」
背中を流してもらうたび、家族で入れるくらいの大きさで風呂場を造ってよかったなとつくづく思う。シンヤとレミの2人掛かりでそうしてもらう事もある。 こんな些細な幸の積み重ねが本当の幸せなんだろう。それ以上は無理に望まない、贅沢ってもんだ。僕は、僕達はきっとこれからもずっとこうして幸せでいられるさ。
「どうしたの?」
にやにやしていたのがわかったのだろう。
「なんでもないさ」
僕は肩越しにレイの手をそっと握った。
風呂から出ると、もう寝るだけだ。でも僕にはやらなければならない事がある。 さっきまで忘れていたけど、レイの手を握った瞬間に思い出したのだ。
「今日はレミを背負って疲れただろ、マッサージしてあげるよ」
寝ようと横になっていたレイを起こし背中を向けさせ肩を揉み始める。レイの肩はとても細く揉むのにはそれほど力はいらない。でもこうして揉んでみると疲れ具合がよくわかる。得に肩甲骨の周囲がカチコチになっていた。
「ありゃ、結構凝ってるね」 「…そう? あっ、そこ…きもちいい」 「ここ?」 「ううん、もっと下。あっ、そこ…」
艶っぽい声に興奮してしまいそうだ。でも今日は疲れてるだろうしガマンガマン。 平常心を保つよう心を落ち着かせ、肩を揉むのに集中する。
「…もういいわ、だいぶ楽になってきたから」 「遠慮なんかしなくても、まだ凝ってるのはわかるんだから」 「ごめんなさい、じゃあ、もう少しだけ…」 「了解」
こうやって肩を揉むのも僕には幸せにしか感じない。大切な人に喜んでもらえるってのはやっぱり嬉しいものだから。
「ん、痛っ」 「あっ、ごめん」 「んっ、いいの、きもちいいから…」
考え事をしていて力加減を間違えたかな? 揉むのには自信があったんだけど。それともちょっとの力加減で痛くなるくらいに凝ってるのか? それから僕は注意しながらレイの肩を揉み続けた、もちろん揉み返しがこない程度に優しく丁寧に。
よし、だいぶ解れてきたようだ、さっきまでカチコチだった背中は本来の柔らかさを取り戻したようだ。手に伝わる感触がふわふわと気持ちいい。 レイはさっきから気持ち良さそうに目を閉じている。もう寝てしまったのか?
「レイ?」 「ん、なあに?」
起きていたみたいだ。良かった。さて、そろそろ実行に移すとするか。 その時の僕の顔は、きっと親父ばりにニヤリとした笑みを浮かべていただろう。
「今度は足を揉んであげるよ」 「うん」
さっきは遠慮していたのに今度はやけに素直だ。よっぽど気持ちが良かったのだろう。足の甲から揉み始め、足首を回したりふくらはぎを押したり叩くように揉んだりを繰り返す。それが終わると次ぎは膝の番だ。膝の回りと裏側を親指で押していき少しずつ力を抜き優しく撫でていく。レイの顔を窺うとほんのりと赤みが射し上気しているのがわかる。感じているのだ。
よし、これからが本番だ、それっ!
「あっ、あっ、そこはっ、ダメー!」 「ふっふっふっ、レイさん気持ちいいかな〜」 「いや〜、お願いだから、はうっ、ああっ!」 「そんなに大きな声を出すと子供が起きちゃうよ?」 「あ〜ん、ばかぁ〜、いかりくんのいじわる〜」
膝をくすぐられるのが弱いレイ。苦し紛れに「碇君」だって。うふふっ。 そう、僕はトウジの店で思った事を実行したのだ! 久しぶりに聞くレイの悲鳴はとてもカワイイ。癖になりそうだ。 レイはベッドに突っ伏してフウッ、ハアッと荒い呼吸を繰り返している。ちょっとやりすぎてしまったと反省。
「ごめんね〜レイ」
あははと笑いながら謝ってみた。だけどレイからの返事はなかった。
「あ、あの〜レイさん? 返事して、よ…」
返事の代わりにじーっと見つめる深紅の瞳は潤んでいる事も相まって、ナイトスタンドのぼんやりとした灯に照らされると宝石のようにキラキラと輝いてとても綺麗だった。だけどその表情は強張っていて美しさとは対極のところにある。それがその美しさを際立たせていたのかもしれない、が…。
ヤバイ、もしかして、怒らせてしまったか!
レイは無言で膝立ちになり僕にずり寄ってきた。思わず後ずさってしまう迫力が僕を押しつぶそうとする。ベッドの淵まで下がる。もう後がない。
「…覚悟はできているかしら?」
後ろ手を付いた僕にのしかかるレイ。もう逃げられない。ヒイッ! タラリと背中にいやな汗が伝う。こんな緊張を強いられるのはあの頃以来だ。無事、明日の朝日を拝めるだろうか…。
覚悟はできた、じっと制裁の時を待つ。レイは焦らすようにゆっくりとその白い手を近付けてくる。ゴクリと生つばを飲み込むと咽を伝わる嫌な感触が妙にはっきりとわかった。枕元ではコチリコチリと死刑執行までの時を確実にカウントダウンしている。 なぜか最後の時が近付くにつれ、僕は冷静になっていった。そろりそろりとにじり寄るレイの姿はまるで、かつてこの国でブームになったというホラー映画の髪の長い女の霊のようだった。 レイと霊、おもしろい。こんな事を考えられるのは余裕なのか、それとも開き直ったからなのか。
そして、とうとう僕とレイの距離は零となった。
「ウヒャヒャヒャ、あーっぶはあ、ゆ、ゆるしでーぇ、ギャー!」 「ダメ、許さない」
くふふっ、こちょこちょとこそばゆい。レイの柔らかい手でくすぐられると、あーダメ、死んじゃう。
トウジの店でレミがくすぐってきたのは定番の脇の下と足の裏、それがダメだとわかると僕の真似をして膝頭をくすぐってきた。それなら僕は耐えられる。だけどレイはレミと違って僕の弱点を知りつくしている。 そう、僕にも弱点はしっかりあった、脇腹だ。しかも、そこをくすぐられるのだけはレイ以上に弱い。 こんな事はまずないだろうけど、もし相手があかの他人なら暴れて無理矢理にでもやめさせるところだが、僕がレイに対してそんな事をできる訳もなく。そして、まずい事にレイの攻めの手は一向に止まりそうにない。 これは一大事だ。こうなったら逃れる手立てはただ一つ。
飛びそうになる意識の中、僕は手探りでレイの最大の弱点を探し出しくすぐった。
「キャッ、アアン! ずるいわ!」 「そういうレイっだって、ぶはっは、もうダメー!」
それからくすぐり合いは夜更けまで続き、絡み合う手の動きは自然と優しい愛撫へと変化してゆく。そして、いつのまにか僕達は互いに汗ばむ体を求め合っていた。
「レイ…」 「あなた…」 「「愛してる」」
居間の片隅、暗闇の中、ファクシミリの受信完了ランプが早く見つけてよと急かすようにチカチカと点滅を繰り返していた。
約2ヶ月後。
「…赤ちゃん」 「それが…?」 「…できちゃったみたい」ポッ 「ええ〜っ?!」
それマジっすか!
「…うれしい?」 「…も、もちろんだよ」 「…わたしも」
瞳を閉じて労るようにお腹を摩るレイは本当に嬉しそうだ。こんなに嬉しそうなレイを見るのは久しぶりで、僕もカレンが生まれた時の事を思い出した。 今も幸せだけどあの頃が一番幸せだったと思う。カレンがシンヤを生んでからずっとおばあちゃんだったレイは今再び、おかあさんに戻っていた。 あれから月日は流れ僕達は老け込んでしまったけれど、こんなに幸せそうなレイを見て、あの頃の気持ちを思い出すだけじゃなく、維持していく事の大切さを思い知った。
「でも、高齢出産になるけど大丈夫かな?」 「えっ、生んでもいいの?」 「はい?」 「もう年だからきっとこれが最後。だから妊娠しただけでも嬉しかった…。無理に生もうとは思ってなかった…。でも、あなたは望んでくれるのね」 「いや、その…」 「やっぱり…。生んじゃ、ダメ?」
ああ、そんなに切ない顔しないでよ。今見せていた君の笑顔をこれからもずっと見ていたいんだ!
「いいさ、いいに決まってるじゃないか。任せろ、子供の一人やニ人ドーンと来いっての!」
言っちまったぜ。ああ、みんなに何って言おう。カレン、喜んでくれるとは思うけど、やっぱり最初は怒るかな「年を考えなさい!」って。シンヤとレミにおじさんかおばさんができるんだもんな。ハハ…。
「ごめんなさい、わがまま言って…」 「そう思ってるんなら、元気な赤ちゃん生んでよね」 「…ええ」
まあ、いいか。こうやってこれからもレイの笑顔が見られるんだから。
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Re: いつまでも / なお。 ( No.15 ) |
- 日時: 2005/09/02 20:32
- 名前: tamb
- わりかし面白いんじゃないのかな。もうちょっと詰めればって感じはあるけど。
3のラストに持っていく感じがもうちょっと何とかなればって感じ。
> それからくすぐり合いは夜更けまで続き、絡み合う手の動きは自然と優しい愛撫へと変 >化してゆく。そして、いつのまにか僕達は互いに汗ばむ体を求め合っていた。
書いてみないとわかんないけど、私ならここにキスを入れる。で、レイがちょっとその 気になったらまたくすぐる(笑)。みたいなことをしばらくやって、それからそういう事に 移行すると。たぶんセリフはいらないと思う。
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