全てが終わって、あれから8年が経って・・・


サードインパンクト

全ての人々が溶け合った世界で私と碇君も一つになった。
そして、碇君は世界の再生を望んだ。
その結果、戻ってきた人もいたし、戻ってこなかった人もいた。
碇司令、ユイさん、弐号機パイロットの母親などは戻ってこなかった。

私はサードインパクトが終わると“人間”になっていた。
これもきっと碇君が望んでくれたから。

行くあてのない私を引き取ってくれたのは、戻ってきた赤木博士だった。

大人たちは罪を償うと言い、世界のために働きだした。
数年が経ちゼーレは消え、世界は平和に向かって歩みだした。
その流れの中で、私とリツコさんの仲ではいろいろなことが起こった。
私は碇君の助けもあり、感情を手に入れる中で、リツコさんを母親として愛するようになった。
勿論、リツコさんも私を愛してくれた。

でも、リツコ母さんはどれだけ時が経ってもその心の中にある罪の意識を消すことは出来なかった。
それは私たちの距離が縮まるほどにリツコ母さんの心を傷つけた。
そして、ある日リツコ母さんはいなくなった。
私はサードインパクトの後、初めて泣いた・・・










レイの結婚シリーズ〜明日への道〜


Written by 綾吉





6.16.11:00とある教会の花嫁用控え室。

ここにまた新たなる一歩を踏み出そうとする女性がいた。
その表情からは幸せ96%、不安3%、緊張1%が読み取れる。
といっても緊張と不安に関してはごくわずかな、限られた人にしか読み取ることは出来なかったが・・・









トウジ・ケンスケ・ヒカリの場合


「おめでとうレイさん。とっても綺麗、羨ましいわ」
「おめでとさん綾波、っと式が終われば碇やな」
「(パシャ)おめでとう綾波。とってもいい顔してる!最高の被写体だよ」
「ありがとう鈴原君、相田君、洞木さん」
「ふふ、レイさん本当に幸せそうな表情してるわ」
「そうだなファインダー越しに見ても伝わってくるよ(ん?今のは?気のせいか)。今日は記念だからな俺が余さず記録するから安心してくれ」
「相田君、お願いね」
「ああ、任せてくれ。俺もお前たちの結婚式の撮影できるのが本当に嬉しいよ」
「・・・ありがとう」
「気にするなよ。俺がやりたいからやってることでもあるんだしな。むしろこっちが感謝してるぐらいさ」
「そや!今こうして此処に居られるのも綾波たちのおかげやさかいにな」
「(グスッ)そうよ、レイさんたちのおかげで私達があるのだもの。ごめんなさい・・・私ずっと謝りたかったの、私達の為にレイさんたちばかりに辛い思いをさせてしまって・・・私・・・」
「洞木さん・・・あなたのせいじゃないわ。確かに辛いこともあったけど、悪いことばかりではなかったわ・・・だって、碇君に出逢えたんだもの(ニコッ)。それにみんなにめぐり合えたわ」
「レイ・・さん・・ありが・・とう」
「ううん、お礼を言うのは私。私が困っている時、辛い時あなたたちが助けてくれた。だからこうして私も幸せになることが出来るの」
「・・・綾波、自分やシンジが幸せやと、わしらも嬉しいわ。これからも何かあったら遠慮のう言ってくれや」
「そうだな、綾波とシンジはある意味俺たちの象徴だからな。しっかり幸せになってもらわないとな。さて、そろそろ式場に行くか」
「そうね、レイさん式場で待ってるわ」
「ほな、また後で」







マナ&マユミの場合


「ヤッホー、レイちゃ〜ん、おめでとう」
「綾波さん、おめでとうございます」
「・・ありがとう」
「綺麗ですね、綾波さん」
「うん、とっても綺麗〜いいな〜」
「(クスッ)マナさんたら」
「でも、レイちゃんがシンジと結婚か〜。仕方ないか、何となくこうなる気がしてたんだよね。まあ、おかげであたしもあたしのことだけ見てくれる奴に気づいたしね」
「マナ・・・」
「私も、私が幸せになれるのは碇君じゃなかったみたいです」
「山岸さん・・・」
「綾波さん、これからは私のこと名前で呼んで貰えませんか?」
「ええ、マユミ・・・さん?」
「ありがとう・・・レイさん(クスッ)何かおかしいですねこういうの」
「(クスッ)そうね」
「そういえばレイさん、セカンドインパクト以前は“ジューンブライド”と言って、6月の花嫁は幸せになれるって言う言い伝えがあったんですよ」
「ジューンブライド?」
「JUNEというのは英語で6月という意味なんですが、語源は女神様の名前なんです。その女神は女性の味方で結婚を守護しているんです。だから、6月の花嫁は幸せになるんだそうです。きっと、レイさんも幸せになりますよ」
「さってと、行きましょうか」
「そうですね、きっとまだまだみんなレイさんに会いに来るでしょうから」
「また、後で」




オペレーター3人衆の場合


「おめでとうレイちゃん。とっても綺麗よ」
「おめでとうレイちゃん。今日はシンジ君とレイちゃんの為に作曲した曲を披露するから期待しててくれよな」
「おめでとうレイちゃん」
「青葉さん、マヤさん、日向さん忙しいのに・・・」
「どんなに急がしくても、君たちの結婚式だからね。何があろうと出席するさ」
「そうそう、何よりも君たちの結婚式が最優先さ」
「(クス)そんなこと言って、奥さんに怒られますよ」
「大丈夫よレイちゃん、私も同じ意見だから」
「マヤさん。皆さん、ありがとうございます」
「おいおい、お礼なんてよしてくれよ、そんな他人行儀な。俺たちが来たかったから来てるんだよ」
「来て貰えて嬉しい、だから『ありがとう』って言うの」
「みんな、レイちゃんとシンジ君が好きなのよ。だから、私たちも呼んでもらえて嬉しいわ。こちらこそ『ありがとう』よ。私たちにはそんな資格ないのに・・・」
「マヤさん・・・」
「子供たちを危険な目に遭わせてばかりで、私たち大人は何も出来なかった・・・」
「マヤ・・・それは君だけじゃなくみんな同じだよ」
「マヤさん、自分を責めないで・・・」
「もう少しで全てあなたたちのせいにしてしまうところだったのよ!自分たちが助かるために!」
「でも、そうはならなかったわ」
「それも先輩のおかげよ・・・。私たちはそれを見ていただけ・・・」
「お母さん・・・マヤさん、お母さんは今・・・」
「ごめんなさい。・・・でも先輩はきっと、レイちゃんの結婚を、幸せを喜んでいるわ。だってレイちゃんの幸せを誰より強く願っていたのは先輩だもの・・・。今もどこかでレイちゃんの幸せを祈っているはずよ」
「マヤさん、ありがとう、でも大丈夫。私も信じてるから」
「レイちゃん」







冬月副司令の場合


「しかし、本当に私でよかったのかね?花嫁のエスコート役とは、また大変光栄な役柄だが・・・こんな年寄りで?」
「はい、私にも、あの人にも血のつながった人はいません。だから、私たちにとってはネルフの人たちが身内なんです。今日は父親代わり、よろしくお願いします」
「レイ・・・ありがとう。嬉しいよそこまで思っていてくれていたとは・・・君たちの結婚式に参加できて、もう私は思い残すことは何もないよ。これで、いつでもユイ君と碇のところへ逝ける。ふふ、もっとも、碇の奴は嫌がるだろうがね。ユイ君と『二人きりの所を邪魔された』と言って」
「冬月先生、そんな悲しいことをおっしゃらないで下さい。私たちの子供は見てくれないのですか?」
「・・・そうだったな。君たちの子供か・・・孫の顔を見るまでは元気でいないとな。君たちの子供ならきっと優秀だろうからな、今から楽しみだよ」
「ええ、そうですよ。でも、甘やかさないでくださいね(ニコ)」
「ハッハッハ、親馬鹿じゃなくて爺馬鹿か。生まれる前からこれでは我ながら困ったものだ」
「・・・冬月先生・・・ありがとうございます・・・」
「いや、こちらこそ感謝するよ。・・・許されるならば私は残る人生、君たちを見ていたい」
「私たちを見守っていてくださいね。特に碇君が浮気なんかしないように(クスッ)」
「フフフ、そうだな(碇、ユイ君、まだまだ私はこちらに残ることになりそうだよ)」







アスカ&カヲルの場合


「レイ、おめでとう」
「レイ君おめでとう。とても綺麗だね」
「私だって、ウウェディングドレス着ればレイに負けないわよ!まあ今日のところは譲ってあげるわ。レイが主役だもんね」
「ふふ、ありがとう二人とも」
「お礼なんて必要ないさ。当然のことだよ」
「そうよ、あたしの結婚式には、今度はレイたちが来るんだからお互い様よ」
「ふふ、アスカはいつ結婚するの?」
「何言ってるのよ!まだ22よ!当分結婚なんてする気はないわ!」
「こんなこと言ってるけどどうするの?」
「その気になるまで待つさ」
「何でカヲルに聞くのよ?」
「いい加減、素直になればいいのに・・・」
「うるさいわね〜大きなお世話よ!しかし、本当に変わったわね、あんた。優等生だった頃が懐かしいわ」
「・・・そうね」
「(・・・レイ)自信もっていいわ!あんたとってもイイ女よ!」
「ありがとう、あなたの影響でもあるのよ」
「当たり前でしょ!このあたしが教育したんだから!・・・あんたはあたしの妹なんだから!」
「そうね、お姉さん。・・・本当にありがとう、今まで。私にも碇君にも家族がいないから・・・。あなたたちが私たちにとっての家族だったから・・・これからは碇君と新しい家族の絆を作っていくわ」
「!!」
「?アスカ?どうしたの?」
「何でもないわよ!」
「でも、」
「泣かないって言っていたのに・・・ほら、アスカ君も涙を拭いて」
「・・・アスカ」
「しょうがないじゃない!嬉しいんだから!だってレイとシンジの結婚式なのよ!世界中の誰より1番幸せになるべき二人の結婚式なのよ!・・・私達の家族なのよ」
「アスカ・・・ありがとう。私が幸せになれるのもアスカたちが居てくれたからよ」
「あの時、一つに溶け合った世界で初めてレイの心を知って・・・どんなに悲しい想いをしてきたのかわかったの・・・。その時気づいたのあたしだけじゃないんだなって、レイもシンジもあたしもみんな一緒なんだってことに・・・」
「アスカ」
「レイ、・・・いいわね?絶対幸せにならないと許さないんだからね!」
「ふふ、友情とはいいものだね、還ってきて良かったよ。リリンは時として本当に美しいものを見せてくれる」
「何言ってるのよ!あんたも人間でしょ!」
「嬉しいね。・・・僕にとってその言葉が一番嬉しいよ」
「カヲル・・・」
「どうやら、ブーケはヒカリさんとアスカで取り合いね(クスッ)」
「レイ、ふん、まあいいわ。それより、ミサトが二人っきりで話がしたいって言ってたからもう行くわね」
「レイ君、また後で」








そして・・・















「へっへーレイ、おめでとう!綺麗よ」
「ミサトさん、ありがとうございます」
「いいのよ、貴女達は幸せになる義務があるのよ。しっかり幸せになりなさい」
「ミサトさん・・・でも私、本当に幸せになってもいいんですか?」
「レイ、私は保護者としては何も出来なかったけれど、貴女達のことをずっと見てきたわ。その私が保証するわ貴女は幸せになってもいいのよ。いいえ、幸せになるべきだわ」
「・・・ミサトさん」
「大丈夫、貴女はとっても素敵な女性よ、自信を持ちなさい。・・・そうね、それでも不安ならこの人から保証をもらいなさいな」
「え?」

そう言って、ミサトの開けた扉の向こうには金髪の中年女性が立っていた

「・・・レイ」
「!!お母さんっ!・・・」
「ごめんなさい、レイ。本当なら顔を出せる義理じゃないけれど・・・どうしても・・・一目見たくて」
「お母さん、会いたかった、ずっと、ずっと会いたかった!」
「レイ、・・・私も会いたかったわ。けれど私は貴女に対して散々酷いことをしてきたわ・・・それはどうやっても償うことは出来ない・・・私は貴女に“お母さん”と呼ばれる資格は、ないわ・・・」
「・・・お母さん、いいの、もういいの。わたしもシンジさんも何とも思っていないわ。・・・わたしにとってお母さんはリツコさん一人だけ。・・・それより聞いて、わたしたち結婚するの(ニコッ)」
「(グスッ)レイ、おめでとう。とっても、綺麗よ」
「はい、お母さん。わたし、綾波レイは、今日、お嫁に行きます」
「レイ、幸せに・・・なるのよ、貴女ならなれるわ」
「はい、お母さん」
「レイ、貴女は可愛くて、優しくて強くて、どこに出しても恥ずかしくない立派なお嫁さんよ」
「お母さん、うっうう・・・」
「レイ、結婚式の日に花嫁が泣くものではなくてよ。シンジ君が困ってしまうわよ」
「でも、お母さん・・・わたし、わたし・・・」
「ほら、綺麗な顔が台無しよ」
「お母さん!!私、お母さんにたくさん言いたいことがあるの!伝えたい言葉がたくさんあるの!」
「レイ、私もあなたに伝えたいことがたくさんあるわ。でも、今はそのときではないわ、時間はこれからいくらでもあるわ」
「・・・お母さん、わたし、わたし、お母さんの娘になれて幸せでした・・・」
そこにあったのは笑顔。
それを見た者なら誰もが幸せになれる、そんな、結婚式にふさわしい微笑みだった。
「さあ、時間よ。シンジ君が待っているわよ」
「はい」


「レイ、幸せになりなさい」
その言葉はシャボン玉のように漂いながら、レイの出て行った扉に触れてはじけ飛んだ。
「・・・おめでとう、リツコ」
「ミサト!居たの?出て行ったんじゃ?・・・何、笑いながら泣いているのよ」
「あなたもよ、リツコ。ふふ、あなたたち母娘を一番近くで見てきたんだもの。そりゃ涙だって出るわ」
「・・・そう・・・」
「リツコおめでとう、これからは貴女も幸せにならないとね」
「ええ、そうね。あの娘が、私の娘になれて幸せだったって言ってくれた時ね、生まれて一番嬉しかったわ。生きてきて良かったって思えたわ。やっぱりヒトってロジックじゃないのね」
「そう、じゃあもう大丈夫ね。お互いもうなんでもかんでも背負い込もうとするのはやめにしましょう。そんな事をしても子供たちは喜ばないわ」
「あら、貴女に言われるなんて。昔は貴女の方が背負い込んでたのに。でもそうね、これからは明日のために生きていくわ」
「リツコ・・・しかし、シンジ君は私にとって“弟”なのに、レイはあなたにとって“娘”なのね」
「ミサト、何が言いたいのかしら?」
「べ〜つに何も!それより、行きましょうシンジ君とレイの晴れ姿を見にね!」
「(クスッ)そうね」



・・・正午を報せる鐘の音が鳴り響く・・・
・・・純白の衣装に身を包んだ蒼い髪の乙女が青年のもとへと歩いていく・・・
・・・柔らかな初夏の日差しが差し込むその場所には人々の幸せへの願いと祝福が満ち溢れていた・・・
・・・どうか明日へと歩く人々が幸せでありますように・・・


Fin.




「楽屋」

レイ・・・お疲れ様です
リツコ今回の話、短編にしては長いんじゃないの?
ミサト確かに、でもそれよりこの後の宴会シーンや肝心の結婚式はどうしたのよ!
作者 すいません、結婚式よりもレイちゃんとリツコさんの控え室での再会シーンが一番書きたくて。まあ、僕の場合、あまり詰め込みすぎると終わらなくなっちゃうし・・・宴会シーンはまた今度と言うことで
レイ 碇君と結婚(ポワ〜)
ミサト私も親友の幸せを願う、かっこいい役だったしまあいいわ
作者 どうも。でもやっぱり書きたいことを上手く伝えられてないなと反省しています。結婚式モノは多分これからも書くと思います。僕にとっての『綾波レイの幸せ』は“シンジと一緒に生きて行く事”だと思っていますから。まあ、雰囲気とかキャラとか似てる部分は出ちゃうんだろうけど・・・
リツコなるほど、レイはシンジ君とひとつになりたいと願っていたものね
作者 ええ、それでその時みんなに祝福されるレイの幸せな心と表情を想像するだけで感動しちゃって泣きながら書いていたりします
ミサトそれって、ちょっち危ないんじゃ・・・
リツコところで、中年女性ってどういうことかしら?
作者 ギク!そ、それは、いや、でも設定ではシンジ、レイが22歳なのでリツコさんは38歳なんですよね(アセアセ、改造?)
リツコそ・れ・で?
レイ 碇君との結婚、それはとてもとても素晴らしいの(ポ〜)
作者 ・・・
ミサト・・・
リツコ・・・



後書き
 初めまして、今回tambさんのご好意に甘えて投稿させてもらった綾吉です。というより、tambさんが優しいのをいいことに送りつけたって言うほうが正しいかも(苦笑)
いや〜やっぱり、「みんな幸せ」系のLRSを書いているときが一番楽しいですね。書いてるこっちも優しい気持ちになれます(とか言いながら加持とか、惣流=キョウコなど色々忘れてるキャラが居ますね)。ただ、技術をもっと磨かないと駄目ですね。自分でも何だこれはって思います。すいません。
僕が小説書くときはまずオープニング、それと何故かエンディングを思いつくんです。その間をつなぐものがなくて困ります。文章構成力がないんですね。取り敢えずこれからも書くので今後に期待してください。勿論、長い目でお願いしますね。
因みにこの作品のモトネタは映画『ステラ』です。と言ってもかなり昔(14,5年前かな)に見たので殆ど覚えていませんが。確か、母子家庭での仲のいい母子の物語なんですけど、娘の幸せの為に母親(ステラ)は娘を追い出してしまうんですよ。自分が娘の傍に居たら娘が幸せになれないと思って。そしてラストでは雨の中、ステラが娘の結婚式を教会の外から見てるんです。それも娘のウェディングドレス姿を一目見ただけでまた雨の中を歩いて去っていくんです。もう、めちゃくちゃ感動して涙が止まりませんでしたよ。そんな映画がイメージとして頭の中にありまして。ていうか、途中から気づいたんですけどね。あれ、これなんかイメージがダブるなと。
この作品を読んでくださって本当にありがとうございます。是非、作品に対するご意見・ご感想、誤字脱字など、何でも良いのでメール下さい。


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