――青……蒼……あお……そんな言葉じゃ言い表すことの出来ない、ある晴れた日――
黒い……暗い……悲しみの色。
私の心は、今、曇り空。
独りでいる部屋は、無機質で、彩りもない。
寂しい。
何故?どうして?………わからない。
ただただ感じる、寂しさという感情。
どうしてかはわからないけど、心はそう訴える。
What color is your sky ?
Written by. C.Angel
初めて感じたのは、第七使徒のとき。
あの日を境に、みるみる上達していく二人のダンスを見てから。
みるみる近づく、二人の心を感じてから。
『必要のないコト』そう思った一方で、それを否定したもう一人の私がいた。
『私の入る隙間はもうない』、それを必死に否定したのも、紛れもなく私だった。
心に覆いを被せて、見ない振りをした。
第七使徒との決戦。ほぼ完璧なユニゾンで使徒を撃退。
歓声が上がる発令所。明るく、嬉しそうな声。
私の心とは対照的だった。
不謹慎……………そう思ったのは一瞬で、私は発令所を後にした。
次の日、部屋で独り。寝そべりながら、なにも考えず、なにもしない。いえ、したくない。
Piriririri
家の電話が鳴る。
葛城一尉が置いていったもの。
気だるいのを振り払い、起き上がって電話に向かう。
電話がかかってくる当てはない。今日は実験も無いはず。どうして?
ディスプレイに表示されている番号は碇くんのものだった。
理由はわからないけど、心臓がはねる。震える手をゆっくり伸ばすがなかなか掴めない。
そうこうしてるうちに留守電機能が作動した。
『あ、綾波?きょ、今日からさ、アスカが一緒に暮らすことになったんだ。』
!!……私は手を止める。
『でさ、ケンスケがパーティしようって言ってさ、ミサトさんの昇進祝いも兼ねて。』
ミサトさん……葛城一尉の昇進は聞いていた。でも……
『ミサトさんが、綾波もパーティに呼べって、言ったんだけど、いないみたいだし。また、電話するよ……』
電話はそこで切れた。
独りで佇む。胸がきゅうっと締め付けられた。
碇くんが誘ってくれたのは、命令だから?
しばらくしてもう一度電話が鳴る。
私は出ようともせず、床に腰を下ろしていた。
再び作動する留守電機能。
『あ、綾波?用事があるんだったら無理しなくてもいいんだけどさ。』
碇くんの声が聞こえてくる。それでも私は動かない。
『5時から始める事になったから……じゃぁ。』
そうして電話は切れた。部屋に訪れるのは沈黙。
時間だけがただ、過ぎていく。
4時45分。今、家を出れば約束の時間に間に合う。
でも私はベッドの上にうつ伏せになっていた。
碇くんと二号機パイロット。行けば二人の絆を見せ付けられるような気がして。
結局、一日中そうしていて、そのまま眠りについた。
立ち込めるのは霧。周りは見えない。
立っている私。独りで歩く………俯きながら。
『怖い』そう叫ぶ私の心。それを必死に隠すもう一つの私の心。矛盾した………心。
顔を上げる。目の前には………
「碇く……………」
幻。
独りになる私。
『怖い』……………目覚めた私の枕元は少し、濡れていた。
それからというもの、学校でもあの二人が目に入る。その周りに集う、彼らの友人と呼ばれる人たち。
無理矢理に文庫本へと目をやる。
読んでいる振りをするだけで、ページは全く進まない。
私の心で降り始めた雨。しとしとと、次第に強く。
『必要ない』何度目かもわからないほど、自分に言い聞かせてきた。
日々はただ流れる。認めたくない現実。
私の心では、雪が降っていた。一面の凍える世界。
何度か碇くんと目が合ったこともあったけど、私は目を逸らしてしまう。
そんなとき、彼は少し寂しそうだった。
声をかけようとも思ったけど、碇くんはいつも弐号機パイロットの近くにいた。
どうして?
この嫌な気持ちは何?
実験の帰り、赤木博士の部屋を訪ねる。
「赤木博士、ちょっとお話が……」
私は全てを打ち明けた。
「そう………貴女もそんな事考えてるのね。」
博士の言葉は皮肉めいていたけど、その声色に棘はなかった。
「あなたは、シンジ君が好きなのね?」
「……………………わかりません。」
少しだけ考えて、こう答えた。
「じゃぁ、嫌いなの?」
「ちがいます。」
博士が言い終えるか否かのうちにの否定する。博士は驚いた顔をして、微笑んだ。
「ま、貴女次第よ?応援してるから。」
「私次第、ですか?」
「コレ読んでみなさい。」
そういって渡された一冊の本。
大きなハートマークの描かれた詩集だった。
何故だか、少しドキッとした
家に帰り、ベッドに腰をかける。
詩集を開いて読んでみる。時がたつのも忘れて。
何かわかったような、わからないような。
少し変われたような、そうでもないような。
ゆっくりと考えて、幾日か過ぎた。
それは単調な日々だった…………昨日までは。
放課後、弐号機パイロットが洞木さんを連れて飛び出していった。
鞄に荷物を詰め、教室を出る。
「綾波……」
帰り際に声をかけられた。久しぶり、私はそう思った。
「何?」
そんな反応しか出来ない私にも、彼は話を続けてくれた。
「きょ、今日、一緒に帰らない?」
少し困った表情で私を見る彼。
「……………かまわないわ。」
少し微笑んでそう答えた。
断る理由はないもの……いえ、嬉しかったのかもしれない。
「良かった。」
彼は安堵の表情をうかべた。
「どうして?」
「なんていうか、嫌われてるのかと思ったんだ。」
そうみえてたのかしら?少し心配になった。
「そんなこと………ない。」
弐号機パイロットが羨ましかっただけなのかもしれない。
これが「嫉妬」というものなのだろうか?
二人並んでの帰り道。会話はなかった、
でも、心地いい、私はそう感じていた。
横に顔を向けると、難しい顔の碇くん。
何か言いたそうな、そんな顔だった。
「…………碇くん?」
「うん?」
「何か………言いたいの?」
「え………あ……」
碇くんはさらに困った顔になって、俯いた。
私は歩みをとめる。碇くんも立ち止まった。
「綾波はさ………」
彼が切り出した。
「独りで暮らしてるんだよね?」
「ええ。」
「寂しくない?」
!………不安げに聞いてくる彼。どうしてわかったのだろう?
「どうして?」
「どうしてって……………いつも寂しそうだったから。」
「……………そうかもしれない。」
俯いてボソッと呟く。寂しくてたまらなかったはずなのに、少し強がってみる。
「ぼ、僕でよかったらさ、話とかできたらなって、思うんだ。」
「え?」
彼は、顔を上げる。私もそれに続く。
「綾波にも、笑ってて欲しいんだ。」
視線が絡んだ。
「僕たちは明日どうなってるかわからないけど、それでも綾波にはこれから色んな姿を見せて欲しいし。そりゃ、僕には君を強制する権利はないんだけど……」
一言一言、照れながら。
しかし、かみ締めるように喋る彼。私はその言葉に耳を傾けるだけ。
「悲しいことも嬉しいことも、一緒に感じれたらな、って思うんだ。」
彼に見つめられて、頬が熱くなるのを感じた。慌てて視線を逸らす。
「ど、どう言えばいいのかな?」
「いい。言いたいことは伝わったから………」
「そ、そう?」
「ええ。」
一遍の詩が脳裏に浮かぶ。
これからどうしたらいいのかは分からない。
けど、一つだけ分かった。
私はこの人が好きなんだ、と。
ハート印の詩集から見つけた、私なりの一つの答え。
それから私の家に着くまで会話はなかったけど、私は嬉しかった。
彼に「また明日」と言って、扉を開けて部屋に入る。無機質で何もない部屋。
……花でも買ってこようかな。
急にそんなことを思って再び部屋を出た。
自然と、頬が緩んだ。
心地のいい風が頬を撫でる。
ふと見上げた空は、澄み切った晴れ空だった。
私の心のように。
「碇くん………あなたの空は、何色ですか?」
後書き。
お初にお目にかかります。C.Angelです。お見知りおきを。
先日、と言いましてもかなり前なのですが、掲示板の方に投下したもののサルベージ?版でございます。tambさんをはじめ、製作にあたってご協力いただいた方々、ほんまにありがとうございました。どうでしょうか?合格もらえます?
初めはaikoさんの「青い光」という曲(知ってはる方います?)を聴いて書き上げたものだったんですが……完璧に別もんです(爆)
ちなみに、アドレスは公開しませんので、感想・叱責・その他諸々をくださるのならば、掲示板のほうでお願いします。
この作品の感想は、感想掲示板にお願いいたします。
【投稿作品の目次】
【HOME】