She is she

Written by JUN 



 ――覚えてないの?
 ――いいえ、知らないの。多分、私は・・・・・・





 シンジは部屋に閉じこもり途方にくれていた。いつからこうしているのか、いつまでこうしている
のか、もはや分からなかった。
 どうしてなんだろう。どうして僕の守りたいものはみんな、この手のひらからこぼれていってしま
うのだろう。アスカ、カヲル君、トウジ、綾波――
 アスカは生きている。だけど僕が守りたいアスカはあんなアスカじゃない。いつも僕のことを馬鹿
にして、「バカシンジ!」と怒鳴ってたアスカはもう居ない。今のアスカは抜け殻でしかない。そん
なアスカを僕は穢してしまった。もう僕にアスカの側にいる資格は無い。
 綾波も生きてはいる。だけど、水槽の中で無数に漂う綾波を見ていると、もう何がなんだか分から
なくなってしまった。綾波は僕とは違う。そう頭では理解しても実感がわくことは無かった。
 だけど、綾波は変わってしまった。何者をも近づけない氷のような雰囲気・・・・・・
 双子山の山頂で綺麗な笑顔を見せてくれた綾波、「何を言うのよ・・・」と頬を赤らめていた綾波、
赤くなりながらも「ありがと・・・」と言ってくれた綾波――そんな彼女も失われてしまった。
 色々な綾波が、僕の中で浮かんでは消えていった。
 そこまで考えてやっと、僕が彼女を愛していたことに気づいた。
 綾波の体がかりそめであるという事実、それ自体には僕は関心が無かった。僕が辛いのはそんなこ
とじゃなかった。綾波が、前と――二人目と――違うかもしれないという事実が、僕を怯えさせた。
出会った頃のような、何者をも寄せ付けないような雰囲気・・・・・・それによってまた傷ついてしまうの
が怖かった。
 もう何度目になるかも分からなくなったため息をつくと、束の間でも現実から目をそむけるために、
僕はベッドにもぐりこんだ。




 レイは考えていた。あの少年のことを。三人目としてこの世に再び生を受けた自分。碇司令の望み
を果たし無へと還る、その使命を果たすためだけに生まれてきた。自分に未来など無く、自分の周り
の人間も、使命を果たすまでの束の間の間柄に過ぎなかった。
 だけど――レイは思う。
 あの少年を見た瞬間、不意に柔らかで暖かいものがこみ上げてくるのを感じた。知識としては知っ
ている。サードチルドレン、碇シンジ、碇司令の息子。だけどそんな知識以上のものを彼からは感じ
た。そう、頭ではなく心が、彼と出逢えたことに喜びを感じていた。まだこの世に生まれて間もない
自分にとって、その感覚は奇妙なものでしかなかった。・・・・・・だから、ああ言うしかなかった。それ
を聞いた瞬間、彼はひどく傷ついた表情を見せた。またそれを目の当たりにした瞬間、自分の中にも
ちくりとした痛みが走るのを感じた。全く知らない感情、いや、正確には『今の』私が知らない感情。
   
 私は戸惑い、赤木博士が呼びに来てくれたことに安心感すら覚えた。このままあの少年の顔を見て
いると、この心の底からわきあがってくる何ともいえない感情に、押し流されてしまいそうだったか
ら。
 しかし今こうしていても、心に残る引っ掛かりを取り払うことは出来なかった。今この瞬間にも、
心の中で自分が、彼に会うことを望んでいる。少し気を抜けば、押し流されてしまいそうなほどに。
 自分には課せられた使命がある。そのためには感情は不要だった。そう、分からないふりをすれば
いい。この感情にも気づかないようにして、生きていけばいい。どうせ最後の使徒も殲滅されたのだ。
約束の時間はすぐにやってくる。その時まで、心を閉ざしてしまえばいい・・・・・・
 レイはそう結論付け、ベッドにもぐりこんだ。ほんの少しのためらいを残して。




 


 「あ、綾波!」
 NERV本部の廊下で、見慣れた蒼銀の髪を見つけたシンジは意を決して話しかけた。
 やはりそう簡単には諦められない。自分でも驚くほど、自分のレイへの想いは強かった。どんなこ
とでもいい、前の――二人目の――彼女の面影がほしかった。
 「何?」レイはそっけなく答えた。しかしその言葉に少しの揺らぎが隠されていたことにシンジは
気づいた。それはほんのわずかな声の変化であったが、シンジを勇気付けるのには大きな効果があっ
た。
 「あ、あの、一緒に、帰ろうと思って・・・・・」
 それでも内に潜む不安のせいかどうしても言葉が小さくなってしまう。シンジは寿命の縮む思いで、
レイの回答を待った。
 「構わないわ」意外にあっけなく、言葉が返ってきた。思わず小さく息が漏れる。見れば目の前の
彼女はもう歩き始めている。シンジは慌ててその後ろを追いかけた。
 




 だんだん日が暮れ始めた道を、一人の少年と一人の少女が歩く。構図だけ見れば恋人同士のようと
いえなくもないが、二人の間に漂う雰囲気は恋人の醸すそれとは程遠いものだった。
 ――さっきから、何も話していない・・・・・
 どこか張り詰めた空気の中、シンジは思った。勇気を出して話しかけたまでは良かった。だが実際
に一緒に歩き出してみれば、それは耐え難い沈黙だった。この雰囲気は会ったばかりの頃のレイが醸
すそれと同じだった。
 しかし、それは必ずしもマイナスではなかった。以前のレイと同じものを、この側にいる彼女は持
っている。ならばまだ希望はある、珍しくプラス方向に考え、シンジは自らを後押しした。
 なけなしの勇気を出して話しかける。
 「あ、あのさ綾波、僕のこと、覚えてる?」
 「えぇ。知ってるわ」
 ――知ってる?
 その物言いに少し引っかかりを覚えたが、シンジは続けた。
 「どんな風に?」
 「サードチルドレン、碇シンジ、碇司令の息子」

 そのにべもない答えは少なからずシンジを落胆させた。その口調には事務的な知識以上のものは感
じられない。もしかしたら・・・・・・・と思っていただけに、辛かった。

 



 「でも」
 シンジが俯いていると、唐突にレイが続けた。
 「あなたを見ていると、不思議な気持ちになる。私の中の何かが、あなたを、覚えてる。もう一人
の私が、私の中の私が、あなたを、覚えてる」
 驚いた表情でシンジが顔を上げ食い入るようにレイを見つめる。その真紅の双眸を覗き込む。見る
ものを虜にさせ、射止めるレイの眸。その眸がわずかに揺れていた。
 普段何気なくレイのことを見ているものが見ればいつも通りの無表情に見えただろう。しかし、レ
イのことをいつも見ていたシンジにはその表情に隠された動揺が分かった。目の前の彼女も戸惑って
いるのだ。自分の中に湧き上がってくる感情に。
 「どうして?」
 今度はレイが問いかけた。
 「え?」
 「どうしてあなたは私のことを気にかけるの?あなたはダミープラントを見た。私の正体を。それ
なのにどうして?」
 それを聞いてシンジの表情にかげりが生まれる。ダミープラントの一件はシンジの心に深い傷をつ
けた。それはレイの正体に対する傷ではなく、目の前で崩壊したレイに、それを目の前で見た自分に
対する傷だった。
 「・・・・・・・わからないよ、僕にも。けど、綾波に近づきたい。そう思ってる僕が居るんだ。綾波に
僕のことを見てほしいと思ってる僕が」
 「あなたは・・・・・・」
 レイにしては珍しく言葉に詰まり、一瞬の間をおいて続ける。
 「あなたは私が怖くないの?人でもない、借り物の体を持った私のことを、怖いと思わないの?」
 その言葉は拒絶とも取れた。現にシンジはそう受け止めた。しかし、ここまで来れば、本音を話そ
う。この機会を逃せば、二度とレイに近づくことが出来ない。何故だかシンジはそう思わずにいられ
なかった。
 「・・・・・正直、怖くないわけじゃないよ。でも、僕には分からないんだ、綾波。綾波は自分のこと
を三人目って言う、だけど、僕には分からない。綾波の体が借り物と言われても、どうして僕らと違
うのか、どんな体でも、綾波は綾波じゃないの?」
 その言葉に今度はレイが驚いた。表情には出ないが、自分の正体を知ってなお、こんなことを言う
碇シンジという存在に動揺を隠せなかった。データでは、彼は内罰的で気が弱く、こんなことを言え
る人間ではないはずなのに。何故彼はこうまで自分に構うのか。それを思うと、ふいに浮かぶ温かな
心にもまた、戸惑いを隠せなかった。
 「今の私は」
 その戸惑いを覆い隠そうとするかのように、努めて冷たい口調でレイは切り出した。
 「私であって私でない。私は私に課せられた使命を果たすためだけにここに居る。私の周りに居る
人達も、その間だけの関わりにすぎないから」
 「え?」
 これまでのレイとのやり取りにかすかな希望を感じ始めていたシンジは思わず聞き返していた。ど
うしてそんなことを言うのか。
 「だから私は、あなたと生きることはできない。私と居ると、あなたは不幸になる。私に未来はな
い」
 「な、何言ってるんだよ、綾波」
 その言葉の中に確かな拒絶を見たシンジは慌てた。
 「あなたは私と生きていくことは出来ない。私も・・・・・・」
 一瞬躊躇うように間をおき、レイは続けた。
 「あなたと生きていくつもりはない」
 「あ、綾波――」
 「さよなら」
 レイはそう言うと、心持ち焦るように歩みを強めてシンジを置いて去っていった。すぐに手を伸ば
せば届く距離のはずだった。だがシンジはその手を伸ばすことが出来なかった。あの時以来、シンジ
の前では決して口にすることのなかったその言葉。それは自分とレイの間にある確かな溝を何よりも
感じさせてしまうものだったから。手を伸ばせば傷つけられそうで、これ以上傷つくのが怖くて、最
後の最後でレイを拒絶してしまった。
 後にはただ、暗澹とした表情で立ち尽くすシンジと、言いようのない悲しみだけが残された。










 終結が、近づいていた。NERVは戦自に今にも征服されようとしていた。ジオフロントにはエヴァ量
産機が降臨し、アスカ操る二号機はそれを倒すのに躍起になっていた。その声を聞いても、シンジの
心は冷え切っていた。
 



 ミサトさんまで、死んでしまった・・・・・・生きてる価値なんて無い、僕なんかを守るために。でも、
僕はもうエヴァには乗れない。そんな資格なんて無い。シンジは心を閉ざし、思考の闇へと沈んでい
こうとしていた。その時――
 「こんなところで何をしているんだい?碇シンジくん?」
 
 シンジは顔を上げた。聞こえるはずの無い声が聞こえたからだ。
 「カヲル・・・・・・君?」
 「そうだよ、シンジくん」
 「どうして?キミは――」
 僕が殺したのに・・・・・・
 「そう、確かにあの時僕は死んだ。だけど、量産機を動かしているダミープラグのパーソナルデー
タは僕のものだからね。思念体だけここに来ることもできるのさ」
 あの見るものを虜にする笑顔で、さも当然のように彼は言う。
 自らが犯した事への後ろめたさ故か、いっそう表情を暗くしながらシンジが言う。
 「カヲル君、ごめんよ、僕は、許されないことを――」
 「僕はそんなことを言いに来たんじゃないんだよ」
 シンジの言葉を遮り、カヲルが言う。
 「シンジくん。確かに君は許されないことをしたかもしれない。でもだからってここで塞ぎこんで
いたって何も解決しない、そうは思わないかい?」
 「だけど・・・僕にそんな資格は無いよ。僕はずるくて、卑怯で、臆病で――」
 「それは今からでも変えられる、そうだろう?」
 「でも、僕はアスカを・・・」
 「その彼女も今必死に戦っている。だけど、それも時間の問題だろう。量産機はS2機関を持って
いて復活することが出来る。彼女も奮戦しているが、量産機はあのロンギヌスの槍のレプリカまで持
っているから、恐らく勝ち目は無いだろうね」
 「そんな・・・」
 「だけど、今君が行けば変えられるかもしれない。彼女の前にある絶望の未来を変えられるかもし
れない」
 「だけど、僕は・・・・・・」
 言って俯いたシンジにカヲルは珍しく厳しげな口調で、
 「このままだと、また誰も守れないまま終わってしまう。それでもいいのかい?」
 その中に含むわずかな怒気に驚いたシンジが、再び顔をあげる。
 「シンジくん、君がもう一度初号機に乗って戦えば、彼女を助けることができるかもしれない。量
産機のダミープラグには僕が居る。君が僕らを倒せるよう、僕が僕ら自身を押さえ込もう。シンジく
ん、君がその気になれば全てを変えられるんだ」
 そこで一度言葉を切る。
 「もちろん、ここでただ滅びの運命を待っていてもいい、それこそ彼らの望みのままだ。シンジ君
がそれを望むのならそれでもいい。けどそれじゃ、アスカ君を助けられない」
 「アスカ・・・・・・」
 「それに、レイ君を助けられるのは君だけなんだ」
 「綾波?」
 「彼女は今、碇司令のところにいる。彼はレイ君を使って、自らの補完をするつもりだ。碇ユイに
もう一度会うためにね」
 「母さんに?」
 「そう、それこそが彼の望みだ。そしてレイ君は、そのための道具にされようとしている。心の中
では、迷いを感じながらね」
 「迷い?」
 「そう、彼女は自分の生を望む心に対して戸惑いを覚えている。自分の使命と、生きたいという自
分の心の間で、どうしていいか迷っている。そんな彼女を助けてあげられるのも、君しかいないんだ」
 「でも、綾波は――」
 「三人目だ、とでも?」
 シンジの言葉をさえぎりカヲルが言う。
 「シンジ君、君は本当は分かっているんじゃないのかい?彼女が君と同じであることに。確かに今
君と彼女の間には心の隔たりがあるかもしれない。だけど君が彼女に触れるのを躊躇っている理由は
そんなことじゃないだろう?彼女に拒絶されて傷つくのが怖い。だから彼女から距離を置いて、自分
を守ろうとしている。そうだろう?でもそれでは、彼女も失う。間違いなくね」
 「綾波・・・・・・」
 「シンジ君、僕はもうこれ以上ここにはいられない。僕が出来るだけ彼らを押さえ込むから、それ
までに決断してくれ。今の話を聞いて、それで君が決断したことなら、それは君の自由だ。好きにす
ればいい。君が自分の意思で決めたことなら、僕は歓迎するよ」
 そしてまた、あの優しい笑顔を浮かべ、少し寂しそうに言った。
 「さよなら、シンジ君。もう一度言う。決めるのは、君だよ」
 「カヲルく――」
 その瞬間、まるで煙のように、カヲルが消えた。幻覚と言われれば信じたかもしれない。それほど
までにあっけないものだった。
 だが、分かっていた。今のは幻覚ではない。紛れもなくカヲル自身だ。そしてカヲルの言ったこと
もまた紛れのない真実であることも直感的に理解していた。
 

 ――どうすればいいんだ・・・・・・
 カヲルの言ったように、ここでただ終わりを待つことも可能だ。しかし、それはもう出来ない。あ
の言葉を聞いてもなお、ここでただ何もせず座っていることは出来ないだろう。だがまだ、ここでじ
っとしていたい自分もいることは確かだった。しかし、ここで動かなければなにも変わらない、変え
られない。だが動けば、また拒絶されるかもしれない、アスカにも、レイにも・・・・・・
 レイの顔が浮かんだ瞬間、また心が揺れた。あの日の拒絶の言葉が心に浮かぶ。もうあんな思いは
したくなかった。もう傷つきたくなかった。もし今動いてあんなふうに傷つくなら、動かないほうが
ましだった。
 でも――・・・・・・あの日の綾波は変だった。そうシンジは思う。どこか怯えたような目をしていた。
僕に怯えているというより、自分自身に怯えているように見えた。最後の言葉の前には口数のない彼
女にしては珍しく、まくしたてるように言葉を紡いでいた。何かに焦っていた。そうしなければ自分
を見失ってしまうかのように・・・・・・



 ――やってみようか・・・・・・全てを変える事は出来なくても、せめて出来ることだけはしたい。どう
せもう失うものはないのだ。上からはアスカの怒声が聞こえる。そうだ、せめてアスカだけでも助け
よう。僕にそれが出来るのなら、変えられることだけでも変えたい。
 ――そう、逃げちゃダメだ。
 シンジはそう決意し、しっかりとした足取りでエントリープラグに向かった。





 アスカは苦戦していた。内部電源も残り少ない。目の前のこいつを倒さなければ、恐らく自分は死
ぬのだろう。エントリープラグの中が一番安全ということを理屈では知っているが、何故だかそれは
真実味をおびながった。
 内部電源は残り十数秒。最後の量産機にとどめをさす。終わった・・・・・そう思ったのも束の間、鋭
い殺気を感じ思わず振り向くと、量産機の太い無骨な武器が目の前に迫っていた。ATフィールドを展
開し防ぐ。今のアスカには余裕のはずだった。
 ――その瞬間
 「ロンギヌスの槍!?」
 その武器は鋭い血の色をした二股の槍へと姿を変え、瞬時にATフィールドを貫き、目の前へと迫っ
た。状況が飲み込めない中、アスカはとっさに目を閉じ、死を覚悟した。



 「アスカ!!」
 聞きなれた声が聞こえ、ゆっくりと目を開くと、弐号機に突き刺さる寸前でロンギヌスの槍をつか
んだ初号機が立っていた。
 「バカシンジ!?」
 「アスカ、大丈夫か!?」
 「アンタ、どうしてここに・・・・・・」
 「ごめんよ、僕が弱虫だったから、皆を守れなくて。でも、僕はもう逃げない。もう手遅れかもし
れないけど、せめて、せめて変えられることだけでも変えてみせるから」
 シンジはそう言い残すと、量産機に踊りかかった。先ほどロンギヌスの槍を投げた量産機に飛びか
かり、首を折る。
 ――でも、これだけじゃだめだ、こいつらはまた復活する。どうすれば・・・・・・
 その時、どこからともなく声が聞こえた。心の声か、それとも目の前の量産機からの声か・・・・・・
 ――シンジ君、コアだ、僕らのコアを砕くんだ。
 それは紛れもなく彼の声だった。その声は一瞬シンジを躊躇わせたが、すぐに思い直し、量産機の
胸の中に初号機の手を突っ込んだ。
 軟らかい肉の質感の中に何か硬いものがあるのを、シンジは感じ取った。
 ――これか!
 「ごめんよ、カヲル君!」
 シンジはそう叫び、掌に感じる硬いものを握りつぶした。質より量を優先しているせいか、その硬
度は使徒とは比べ物にならず、はるかに脆かった。
 大きな爆発音をたて、視界がホワイトアウトする。一瞬眩暈を起こしたが、今はそれどこではなか
った。
 残りの量産機に向き直る。こちらに向かってくる量産機はまるで何かにとらわれているかのように
先ほどに比べ動きが鈍かった。
 ――ありがとう、カヲル君・・・・・・
 ――いいんだ、シンジ君、早く!

 一度決意するように立ち止まり、残りの量産機に飛びかかった。
 カヲルによって動きを縛られた量産機は脆かった。全てのコアを破壊して、もはや内部電源が尽き
た弐号機に向き直る。
 「アスカ・・・・・・」
 「し、シンジ、アンタ、どうして・・・・・・」
 「ごめん、今は話している時間はないんだ。綾波を助けなきゃ!」
 「ファースト?あの子がどうしたの?」
 敵対していた人間の顔が浮かび、声に曇りが混じる。
 「このままじゃ、綾波は綾波じゃなくなってしまう。それだけは・・・・・・!」
 そう言い残すと初号機は大きく跳躍し、ターミナルドグマへと向かった。

 「どういうことよ・・・・・・」
 あとには唖然とするアスカと弐号機が残された。
 


 ――赤木博士・・・・・・・
 この人もこれから人生を終えようとしている。それ以上何の感慨も抱かないまま、銃を構える碇司
令と、どこか嬉しそうに微笑を浮かべる赤木博士を見ている。
 司令が銃を持つ手に力を込める。
 ――その瞬間・・・・・・!

    ドン!
 
 「がっ・・・・・・!」
 声にならないうめき声を上げてその場に膝をついたのは、碇司令の方だった。
 「・・・・・・ミサト!?」
 驚きの声を上げて赤木博士が顔を向けた先には、鋭い眼差しで銃を構える葛城三佐が立っていた。


 



 「生きていたか・・・・・・」
 「俺のお陰でね」
 そう言って悪戯っぽく笑いながら出てきたのは、加持リョウジだった。
 「あなた・・・・・・生きて・・・?」
 赤木博士が信じられないような声を上げた。
 「ああ、どうにかな。倒れてる葛城に手当てをして、安全なところへ行こうと言ったら、必死の形
相でターミナルドグマに行くと言われてね。全く、大変だったよ」
 そう言って笑いながら無精ひげを撫でた。
 「ふ・・・・・・これは一本とられたようだな」
 自嘲めいた笑みを浮かべながら碇司令がつぶやいた。
 「・・・・・・だが!」
 そう言うと急に起き上がり、私の胸に右手を突っ込んだ。スライムのように私の体の表面が一瞬波
うち、そのまま司令の手を受け入れた。
 「なっ!?」
 葛城三佐が驚きの声を上げる。そして司令の手は素早く下がり、私の中のある一点に触れた。
 ――その時


     どくんっ!
 
 私の中で『何か』が蠢いた。その『何か』はみるみる内に私の中で大きくなり。あっという間に、
私は意識を失った。最後の瞬間に浮かんだのは、何故だかあの少年の顔だった。







 何が起こっているのか、すぐには理解できなかった。リツコさん、死んだはずのミサトさん、あれ
は・・・加持さん?生きて・・・・・・?血を流し、ニヤリと笑みを浮かべながら腕を押さえている父さん、
そしてその前でうずくまっている綾波。間に合わなかった――?
 思わず叫んでいた。


 「父さん!」
 「シンジか・・・」
 「何を――」

   ごうっ
 
 

 そう問いかけた瞬間、とてつもない圧力を感じた。エヴァに乗っていてもなお感じる圧力。その圧
力の先には――
 「綾波――!?」
 視線の先には、綾波がいた。だが、『何か』が違う。そうそれはちょうど、カヲル君がATフィール
ドを展開したとき感じたのと同じ感覚だった。

 うずくまった綾波から、その表情を読み取ることはできない。しかしその異様な雰囲気に圧され、
僕もミサトさんもリツコさんも加持さんも動くことが出来ない。ただ一人父さんだけが、満足そうな
笑みを浮かべていた。


 綾波の背から、何かが生えてきた。それはみるみるうちに形を変え、一対の羽を形作った。こんな
時であるのに、その姿は息を呑むほどに美しかった。だが僕はその姿を見て、言いようのない恐怖を
感じ、誰よりも先に叫んでいた。


 「綾波!!」

 ぴくり、とその羽が動き『綾波』は顔をこちらに向けた。初めてこちらを見た。その顔を見て思わ
ずつぶやいていた。
 



 「母さん・・・・・・?」

 


 そう、それは紛れもなく母さんだった。顔以外が人間の形をしていなく、記憶にほとんど残ってい
なくても瞬時に見分けがつくほどに、その姿は母さんだった。抜けるように白い肌をして、髪はもは
や青くなく、赤みがかった茶色へとその色を変え、そしてどんなに年月を経ても忘れることのない優
しい眼差し――
 


 「シンジ・・・・・・」
 こんなときでなければ、思わずエントリープラグを降りて、駆け寄って抱きつきすがりつきたいほ
どの懐かしい声だった。だが、このとき僕は言いようのない違和感を覚えた。なんなのか、言葉では
説明しようもないが。だから僕は動くことが出来なかった。


 「ユイ・・・」
 愛しげに目を細め、父さんが『母さん』に近づいていく。だがその声が聞こえているのかいないの
か『母さん』は僕のほうに近づいてくる。初めて父さんが狼狽した声を上げた。
 「ユイっ!」
 焦った様子で手を伸ばす。その白い肌に父さんの手が触れた瞬間――
 「ぐあっ」
 じゅうっ、と焼けるような音を立てて父さんの手が切れた。とっさに手を離したのか、
 中指、人差し指の第一関節だけが煙をあげている。
 「ユイ・・・・・・!?」
 何事もなかったかのように僕が操るエヴァ初号機に近づいてくる。体が動かない。LCLの中にいる
というのに、のどが渇いてひりひりした。
 「シンジ・・・・・・」
 先ほどと同じ優しい声で再び語りかけてくる。だが僕はその時既に確信していた。これは――!
 「お前は母さんじゃない、そうだろ!?」
 「・・・・・・何を言っているの、シンジ?」
 「母さんはそんな人じゃなかった、いつだって優しくて、人を傷つけるような人じゃなかった!」
 「いつだって私は、あなたを見守っていたわ、あなたを・・・・・・」
 そう言ってゆっくりと初号機の足に触れた。その瞬間・・・・・・
 ざわり
 全身があわ立つのを感じた。自分ではないものが体内に入ってくる感覚。表現し得ない感覚だった。
 「な・・・・・!?」
 「私と・・・一つになりましょう・・・・・・」
 「な、何言って・・・くうっ」
 痛みはない。むしろ心地いいからこそ、恐怖を覚えずにはいられなかった。このままこの心地よさ
に身を任せていれば、もう傷つくこともない――そんなことを考えてしまう自分がいることが信じら
れなかった。
 「やめなさい!」
 ドン!
 そう言って今まで硬直していたミサトさんが銃の引き金を引く。がしかし、銃弾がその体に命中す
る前に見慣れた壁によって軌道が阻まれた。それは――
 「ATフィールド!?」
 そう、紛れもなくATフィールドだった。ATフィールド、心の壁。
 また何事もなかったかのように、まだ天使のような優しい微笑を浮かべながら、さらに初号機に触
れる。
 「うっ、くっ、はっ」
 意識が飛びそうになる。抵抗する術を持たず、されるがままになっていた。初号機はどういうわけ
だか指一本動かない。まるで『母さん』によって動きを縛られているようだった。
 最後の意識を振り絞って叫ぶ。
 「い、いやだ、助けて、助けてよ。父さん、母さん、綾波――!」





 ――その瞬間、唐突に侵食が緩むのを感じた。初めて目の前の『母さん』が動揺した表情を浮かべ
ている。頭を抱え、何かに耐えるように『母さん』が呻く。
 「くうっ」
 そしてまた、焦るように侵食が再開された。だがさっきに比べて鈍い。その感覚で、僕の中にある
種の確信にも似た気持ちが生まれた。
 ――綾波はまだ、この中にいる・・・・・・そして今もまだ、迷っている・・・・・・
 そして僕は、出来るだけしっかりした声で叫んだ。
 「あ、綾波、聞こえてるんだろ、綾波!?応えてよ――!」

 その時、目の前の『母さん』の目が、見慣れた紅い双眸へと姿を変えた。
 そう、綾波へと姿を変えた。髪は青くないが、僕を見つめるその眸は、間違いなく『綾波』のもの
だった。
 「綾波!」
 「碇・・・・・・くん?」
  小刻みに震えながら、聞き慣れたあの声で綾波が応えた。
 「綾波!僕は、僕はもう迷わない!君がどんな存在でも受け入れるから、僕が君を守るから、君と
一緒に生きていきたいから、だから、だから、戻ってきて――!」
 「でも、私は、私であって、私でない・・・・・・だから私は――」
 「違う、綾波は綾波だ!だから・・・・・・!」
 ハッと、『綾波』が顔を上げる
 もう、迷いはなかった。あの時伸ばすことが出来なかった手を伸ばした、後一歩のところで拒絶し
てしまった手を伸ばした。あれほど動かなかった初号機も、今は驚くぐらいにすんなり動いた。
 「来い!」
 『綾波』もこちらに手を伸ばす。
 その手が、『綾波』に触れたその時――!

 『うああぁぁぁぁ!』

 どこから聞こえたかも分からない声が聞こえたその時、『綾波』の背に生えた羽が急激に人の形に
姿を変え、抜け落ちた。
 そこには、『母さん』がいた。
 しかしあの優しげな面影はもはやない。苦しげに顔を歪め、体は砂のように崩れ始めている。
 「あ――」
 ざあっ
 『母さん』が何か言う前にその体が崩れ去った。

 綾波の髪の毛はあの綺麗な蒼銀へとその色を変え、先ほどの違和感も無くなっていた。
 僕はエントリープラグを排出し、気絶している綾波を、裸だということもかまわず抱きしめた。そ
うせずにはいられなかった。

 ――終わったのだ。




 
 ――温かい・・・・・・
 まだ意識が覚醒せず、無意識の闇の中を漂う中、それだけを感じた。生まれて初めて心が満たされ
ていくような、そんな感覚を私は覚えていた。
 碇くんの声が聞こえた時、唐突に目の前に光が見えた。ちょうど深い海の底から引き上げられるよ
うな、そんな感覚だった。
 目を開くと、濡れたカッターシャツが見えた。LCLの匂いがする。


 「碇・・・・・くん?」
 「綾波!」
 碇くんはそう叫んだかと思うと、強く私を抱きしめた。

 

 「綾波、綾波、綾波――!」
 私は信じられなかった。ここまで強く私を求めてくれることが。だから私は思わず口にしていた。
 「どうして・・・・・?」
 碇くんが私を見る。
 「どうしてあなたは、私を・・・・・・そこまで・・・・・」
 「わからない、わからないけど・・・・・・」
 碇くんが言う。
 「でも僕は、綾波と生きていきたいと本当に思った、から・・・・・」
 照れたように言う碇くんは涙を流していた。
 「なに、泣いてるの・・・・・」
 そう言ってもまだ碇くんは泣いていた。どうすればいいかわからなかった。だから私はこう言うし
かなかった。
 「ごめんなさい、こんな時、どんな顔すればいいか、分からないの・・・・・」
 彼の想いにちゃんと応えられないのが歯がゆかったが、こう言う以外の方法が分からなかった。
 
 とくんっ
 
 その言葉を口にした瞬間、私の心臓が急に強く脈打った。前にもこんなことがあった。大切な何か
を『思い』出しそうな気がする。それが何かは分からないけれど。
 碇くんが涙ぐんだまま微笑む。
 「笑えば、いいと、思うよ・・・・・」
 
 どくんっ

 その顔を見た瞬間、私の心の中で電撃のようなものが走りぬけた。
 ――『思い』出した・・・・・!

 本来私の記憶にないはずの出来事が、感情が、私の中を駆け抜けた。『私』が経験していないはず
の自爆のことまで。碇くんと一緒になりたいという私の想いまでもが、二人目の私の碇くんへの想い
まで、私の中を駆け抜けた。
 ――これが、恋・・・・・・
 そして、私は微笑んだ。あの時と同じように、彼という存在を初めて意識した、あの時と同じよう
に・・・
 ――碇くん!
 私も強く彼を抱きしめ返した。こうしたかったから。彼の温かさを全身で感じたかったから。やっ
と手に入れたこのかけがえのない絆を二度と離したくないと思ったから。




 「どうやら、私の負けか・・・・・・」
 今まで黙っていた父さんが言った。
 「私が求めていたユイも、幻想に過ぎなかった・・・・・結局、全てを失ってしまった・・・・・・」
 「そんなことはないわ、あなた」
 唐突に声を上げた方を向くと、そこには今度こそ紛れもない、母さんがいた。
 「ユイ・・・・・!?」
 「私は、初号機の中にいたのよ、還ってくるのは容易いことではなかったけど、それでも不可能で
はなかったわ。還る時期を見計らっていただけ。一人にしてごめんなさい、あなた」
 そう言って優しく微笑んだ。
 そして僕のほうに向き直り、
 「そして・・・・・シンジ」
 「母さん・・・・・」
 「ごめんなさい、つらい思いをさせてしまったわね。あなたは傷つきやすい子だから、エヴァの中
にいて守っていかなければならなかった。でも・・・・・」
 母さんはそこで一度言葉を切る。
 「あなたはもう、エヴァ以外の絆を見つけたのね」
 「うん・・・・・・」
 そこで今度はまだ僕の腕の中にいる綾波に優しい顔で、
 「レイちゃん?」
 「はっ、はい」
 少し放心した様子だった綾波が、驚いたように応える。
 「シンジを・・・頼むわ」
 「・・・はい」
 「シンジはとても弱い子だから。かまってあげないとすぐ寂しがっちゃうわよ。この人と同じで」
 そう言って少し面白そうに父さんに目を向けた。
 「な、何を言うのだユイ」
 珍しく父さんが顔を赤くしてうろたえている。少し怖い。
 「あら、私が研究所に詰めていた時、一時間おきに電話をかけてきたのを忘れたとは言わせないわ
よ」
 「ぐう・・・・・」
 父さんは言葉もない。目の前で展開されるそんな微笑ましいやり取りに、思わず頬が緩んだ。
 自分たちも、いつかこんなやり取りが出来るようになれるだろうか。


 「それから葛城君」
 急に声に威厳を含めて、父さんがミサトさんたちに向き直った。
 「すまなかった」
 深々と頭を下げている父さんに、僕は少なからず衝撃を受けた。
 「い、いえ、そんな・・・・・・」
 さすがのミサトさんも思わず面食らっている。
 「いや、本当に取り返しのつかないことをした。本当に済まなかった」
 そうして父さんは一人一人に頭を下げた。加持さん、そして、リツコさん・・・・・そして、僕と綾波
に。
 リツコさんはまだ複雑な表情を浮かべていたが、どうにか吹っ切れたようだった。


 「私たちはこれから、色々な後始末をしなければならないわ。そう簡単に済む問題ではないけれど、
それでも償いをしなければいけない。一生かけてね。そして全てが終わったら・・・・・・」
 嬉しそうに母さんが微笑んだ。
 「また、一緒に暮らしましょ?レイちゃんも一緒に」
 「うん、僕、待ってるから」
 心の底からそう言って、笑うことが出来た。
 「さ、あなた、行きましょ?」
 「ああ・・・・・・」
 二人は寄り添うように、その場から去っていった。
 しばらくは誰も口を利かず、黙りこくっていた。






 「それはそうと」
 沈黙を最初に破ったのは、意外にもミサトだった。
 「いつまで、そうやって抱きしめてるのかな〜、シンちゃん?」
 「え?あっ!」
 シンジはレイが裸だということを思い出し、体を離そうとした。しかし、
 「嫌・・・・・」
 レイが背中にしっかりと手を回していたため離れない。夢中で考えてる暇などなかったが、もちろ
んレイは全裸である。レイが腕に力を込めるほど、柔らかな胸の感触がLCLで濡れて張り付いたシン
ジのシャツを通して伝わる。シンジは顔を真っ赤にしてますますうろたえる。
 「え、あ、ちょっとちょっと、綾波!離してって!」
 「どうして?こうしていたいのに・・・・・・」
 「だってだって、綾波、裸・・・・・・」
 「碇くんは、もう私の裸、見てるもの・・・・・・」
 「うっ」
 「へえ〜、そうなの、シンちゃん?案外手が早いのかしらん?」
 「ちっ、違うんです、ミサトさん!あれはそんなつもりじゃなくて、その・・・・・・」
 「まあいいわ。今はそんなこと言ってる場合じゃないし、ほらほらレイ、離れなさい」
 「嫌です」
 躊躇うことなく、さらに腕に力を込めながらレイが応える。
 「あ、綾波・・・・・・・」
 シンジがまたうろたえる。
 「そんなこと言わないで、シンちゃんだって男の子なんだから、恥ずかしいでしょ?」
 「男の子は女の子に触りたいものだって、聞きましたけど」
 「そういうのはたまによ、たまに。あんまりそんなことばかりしてると、シンちゃんに嫌われるわ
よ?」
 『嫌われる』それを聞いた瞬間、レイがすぐに離れた。
 「ふふ、嫌われるっていうのが効いたみたいね。じゃあこれ、着てなさい」
 ミサトは自分が着ている上着を手渡すと、シンジに向き直り、急にまじめな顔に変わり、言った。
 「シンジ君、私たちもこれから後始末をしなければいけないわ。今までNERVがしてきたことはあま
りにも多いから。あなたたちにもしばらく不自由を強いることになると思うけど、辛抱してちょうだ
い。それが終わったら、NERVは責任もってあなたたちの生活を護るわ。せめて、それ位の償いはさせ
てくれる?」
 「は、はい」
 急に雰囲気が変わったミサトに戸惑いながら応える。
 「それから、レイ」
 「はい」
 「私たちがあなたにしたことは許されることではないわ。だから許してくれなんて虫のいいことは
言わない。ただ、これからもシンジ君と一緒に生きていってくれる?」
 「はい!」
 心底嬉しそうに、レイは応える。その喜びに満ち満ちた表情を見て、その場にいる大人たちは驚い
ていた。
 ――この娘も、普通の女の子なのよね・・・・・・
 やはりどこか目の前の少女を特別視していた自分に気づき、ミサトは思わず自嘲の笑みを浮かべた。
 



 「さあ、それじゃ戻りましょう、これから忙しくなるわ」
 「ああ、そうだな」
 努めて明るい口調で、ミサトと加持が切り出した。
 「そうですね。綾波、行こう」
 そう言ってシンジが伸ばした手を、自然な動きでレイが握り返す。シンジの手の温もりを感じなが
ら、レイはシンジと共に歩き出した。


 もちろんこれからの道は楽ではない。NERVはほぼ壊滅状態なのである。しかし今の彼らに、もはや
迷いはなかった。無論、シンジにも、そしてレイにも。

 





 レイは思う。私は、心を見つけることが出来た――皆がいて、碇くんがいて、私がいる。ほかの誰
でもない。
 そう、私は、私だもの――

 


 ね、碇くん・・・・・・

―FIN―




 〜あとがき〜
 JUNです。見てのとおり「綾波は綾波だ!」と「来い!」を言わせたくて書きました。「綾波を・・・
返せ!」は書けませんでしたが(泣)それ故に矛盾はかなりたくさんあると思います。ミサトとかユ
イさんとか、ゲンドウや加持さんとかアスカとかカヲルとか、突っ込みを入れていくときりがないほ
どにありえない話ではありますが、ご容赦ください(汗)
 特にゲンドウの補完計画については発動したら実際に何が起こるのか知らないので完全に憶測と都
合のいい妄想だけで書いてます。そういうわけなので「こんなわけねえじゃん」とか言われてしまう
と、「そのとおりです」としか言えませんが、その辺は勘弁です。
 それでは、またお会いしましょう。それまで忘れないでください(爆)JUNでした。


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