絵に描いたり空に思い浮かべるようなこと
Written By NONO
ずっとそこにいた。
とても長い間そうしていたんだ。
誰かが指さして笑う。「絵空事だ」
「通りすがる人」の夢を見た。
ちゃんと会えよ、夢の中くらいはと自分を笑った。笑えない冗談を笑う。
しまいには夢が現実の続きを見せそうだ。それは怖い。
「そこにいるんですか」
僕が問う。君はいないから答えられない。
笑ってる姿をほとんど見られなかったのは反省点。
けれど、僕以外の人は笑顔すら知らない。
「呼吸をしてる」
習得できたことは幾つもない。
確かにここにいるという保証書と、一切れの気力か。
これを元手に何をつくれるかな、君ならどうする?
「僕らは行くよ」
君と歩いた道を通って。
月を見上げて、ちょくちょく思い出しながら。
笑おうと思う、僕らしく。さよならとか、はじまりの時にも。
君はずっとそこにいた。
僕もずっとそこにいたいんだが。
僕が僕を指さして笑った。「絵空事だ」
「雲をつかむような話」
こうして暮らしているけど、わかっていました。
ごめんなさい、会いに行きたいけど。それはもう絵空事。
もう、声は思い出せない。
了
あとがき
「雲をつかめ」と同じ匂いのする、詩なのか短編なのかわからないもの。
最後の一節の一部に「雲をつかめ」のセリフから引用。
なんでこんな暗い終わらせ方をするんだろうか、われながらどうかと思う。
アフターEOEものを書くときに何が面倒かって、
「その後の世界を説明すること」です。僕にとっては。
こういう形式は端的にシンジの心を現せられるからいい。