願い叶いて・・・



「・・でも・・・また他人の恐怖が始まるのよ・・」

「・・うん・・いいんだ・・」

「・・・・・」

「もう一度会いたいんだ・・この気持ちは本当だから」

「・・碇君・・・・・わかったわ・・」

「ありがとう・・・綾波」
















「・・ンジ・・シンジ・・バカシンジ! 起きなさい!」

 赤い長髪をひるがえし少女が叫んだ。

「・・ん・・アスカ・・」

 少年はまだ寝ぼけているようでぼんやりと少女を見つめた。

「ちょっと! シンジ何泣いてんの!?」
「泣いてる? 誰が?」
「あんたよ! 情けないわね、恐い夢でも見たんじゃ無いの?」
「覚えてないんだ・・でも大切な夢だと思う・・」

 少年は深刻そうに俯いた。

「そんな事はどうでもいいわ! 早く起きないと遅刻するわよ!」
「あ、うん・・」
「早く着替えて来なさいよね、下で待ってるから」

 ・・ガチャ・・

「行ってきます! おばさま!」
「・・行ってきます・・」

 ・・バタン・・タッタッタッ・・

「ちょっとシンジ! あんたのせいで遅れそうよ!」
「・・・・・」

 シンジは走ってはいるが思考の方は何処か別の所にあるようだった。

「聞いてんの!?」
「・・ん・・ごめん」
「あんた、なんか変よ!?」
「なんでもないよ・・」
















「あーん!遅刻!遅刻!」

「初日から遅刻じゃかなりやばいって感じだよねー」

 蒼い髪の少女がパンをくわえながら走っていた。

 ・・たったったっ・・

 そしてちょうど角に差し掛かった時。

 ・・ごつ・・

「痛ったーい」

 蒼い髪の少女は頭を抱えてうずくまった。

「痛たた・・」

 シンジは額を押さえ涙目になりながら周りを見渡した、

 そこには蒼い髪。

(・・蒼い髪?・・どこかで見たことが・・)

 ・・バシィ・・

「いつまで見てんのよ! スケベ!」
「見てるって・・何を?」

 シンジは叩かれた頭をさすりながら聞いた。

 突然うずくまっていた少女が立ち上がった。

「ごめん! ちょっと急ぐんだ!」

 少女はそう言うと振り向かずに走り出した。
















「で! シンジはその女のパンツを見たんなやな?」

 ジャージに関西弁というよく判らない組み合わせの少年が問い詰めた。

「別に見たつもりはないんだけど・・」
「で! 何色だったんだ? 素直に白状しろ!」

 今度は眼鏡を掛け片手にデジカメといういかにも近代的?な装備をした少年が問い詰める。

「だから見たわけじゃ・・」
「いーや隠しても無駄や! 白状せい!」
「シンジ! その子可愛かったか!?」

 ・・バァン!・・

 アスカは鞄を机に叩き付けた

「あーもう静かにしなさい!」
「なんや惣流! お前には関係ないやろ!」
「うっさいわね! このジャージ! 静かにしろっていったでしょう!」
「なんやと! ジャージはわしのポリシーや! バカにすんな!」
「問題はそこじゃなーい!」

 ・・ブォン・・ブォン・・

 ・・キキー・・

 青いルノーが爆音を響かせ、

 物凄いドリフトをかましながら駐車場に滑り込んだ。

「おお! ミサトセンセーや!」

 ・・バタン・・

 車のドアの間からすらりと長い足が伸びた、

 そして長い黒髪が現れた。

「やっぱいいなあ、ミサト先生は」

 ケンスケは手に持っているカメラで撮りまくっている。

「・・・・」

 シンジはその光景をぼっーと見つめていた。

「おい!シンジ、ミサト先生が来たで!」
「・・・・」
「シンジ? 聞いとんのか?」

 トウジはシンジの目の前に手をかざした。

「・・・・」

 シンジはぼっーとするのみ。
















「喜べ男子! 今日は待ちに待った転校生の紹介だ! し・か・も・今回は超上玉だぞーー」

 ・・ガラ・・

「・・・・」

 生徒は言葉を失った。

 そこには、澄んだ青空を連想させる蒼銀の髪、

 透けるような白い肌、

 見る者全て虜にする紅い瞳。

「おはよー綾波レイでぇっーす、みんなよろしくね♪」

「かっ可愛い・・」

「あー僕は君の瞳に吸い込まれそうだよ」

「僕は君と出会う為に生まれてきたんだよ」

 ・・パン・・パン・・

「はーいみんな静かにして、今日は一時間目を潰して質問ターイム」

「おおー−!」

「あぁー!」

 レイはビシッと効果音が出るくらいの速度でシンジを指差した。

「今朝のパンツのぞき魔!」

 ・・ガタン・・

「何よ! あんたが勝手に見せたんでしょ!」

 アスカが勢いよく立ち上がり、レイを睨み付け叫んだ。

「ふーん・・あんた達できてんの?」
「な! 私達はただの幼なじみよ!」

 アスカは顔を真っ赤にして否定した。

「ほらシンジもなんかいいなさい!」
「・・・・・」

 シンジはさっきからレイにぼっーとみとれていた。
















「パンツ覗き魔、これからよろしく♪」

 シンジの視界に突然レイが現れた。

「・・パンツ覗き魔はやめてよ・・」
「じゃあ名前教えてよ。」
「名前・・・碇シンジだけど・・」
「じゃあ碇君ね!」
「うんそれでいいよ綾波さん」
「だーめ、呼び捨てで呼んで!」
「えっーと・・綾波でいいの?」
「おーけー!おーけー!上出来!上出来!」

 レイは極上の笑みを浮かべた。
















「碇君、一緒に帰ろ♪」

















「今度碇君の家行っていい?」

















「どっか連れてってよ碇君!」
















「今度・・・家来ない?」
















「・・ねえ・・碇君・・キス・・しよっか・・・・」

















・・チガウ・・

















「どうしたの?」

 レイはシンジの腕に抱き着きながら言った。

「・・・綾波は本当に綾波?」

「何言ってるの? 私は綾波レイだよ?」

「・・・・・違う・・・・違う!」
















突然周りの景色が歪む・・
















全て消えていく・・
















気付くとそこは紅い海・・
















「・・・どうして?」

 そこには一糸纏わぬレイの姿。

「・・・どうして?あのまま夢を見つづけていれば・・・」

 レイは寂しげに言った・・・

「・・あの世界は違う・・違うんだ・・」

「・・・・」

「トウジもケンスケもアスカだって・・EVAさえ無ければ普通に暮らせたんだ・・・」

「・・・・」

「でも・・綾波は違う・・・あれは別人だ・・」

「・・私は・・・」

「僕の知ってる綾波はもっと不器用だった・・もっと傷ついていた・・・」

「・・・でも私は人じゃ無い・・・・碇君とは生きれない・・・」

「でも綾波は綾波だろ?」

「・・・・」

「僕にとっては関係無いよ・・・」

「でも・・・」

「・・・綾波・・・」

 シンジはレイをきつく抱き締めた・・・

 レイの瞳が見開かれる・・・

「・・・僕は綾波と生きたい・・他に何も要らない・・・」

「碇君・・・」

「綾波・・・僕と生きよう・・」

「・・・(コク)・・・」

 レイは涙を流しながら頷いた・・・

 その姿はまるで・・

 美の女神のようだった・・


作:プログレッシヴ

【投稿作品の目次】【HOME】