第三新東京市。夕暮れが迫る、マンションの一室。
 橙色に染まった今日最後の陽の光が、薄いレースのカーテン越しに入り込み、穏やかな
暖かさとぼんやりとした明るさを残す。
 時が止まったような静かな部屋に置かれたベッドの上で、シンジとレイは穏やかなまど
ろみの中にいた。



午後のまどろみ

written by toromike  


 二人は、ソファに並んですわり、何をするでもなく、ゆったりと午後の時間を過ごして
いた。辛いときを二人で乗り越え、ようやく手に入れた穏やかな時間。時折、静かに会話
ともいえない会話をぽつりぽつりと交わしながら、お互いの手をとり、ゆっくりと愛撫す
るように指を絡めたり、手のひらでお互いの手を包み込んだり、ふれあいを楽しんでいた。
何も話していなくても、視線を交わすだけで心が穏やかになる。ゆっくりと微笑を交わし
合う。
 見上げたシンジの優しい眼差しに包まれて、レイの心がドキンとひとつ高鳴った。だん
だんと頬が上気するのを感じ、レイは思わず二人のつながれた手の方に、恥じらうように
目を伏せて、下唇を噛む。その愛らしいしぐさに、シンジの心もドキンとひとつ高鳴った。
誘われるように、レイのほうに身体を寄せると、シンジはつながれていない右手をそっと
レイの左の頬に伸ばす。温かい手のひらに頬を包まれて、うっとりと顔を上げるレイ。ほ
んのり桜色に染まった白磁の頬。少し潤んだように揺れる深紅の瞳。いつもより少し赤み
を増したぷっくりとした唇。しっとりと濡れて、やわらかそうなその唇に目を奪われたシ
ンジは、ゆっくりと顔を近づけると、そっと自らの唇を重ねた。

 触れるだけのキス。でもやわらかな唇と唇はしっとりと重なって、それだけでも穏やか
な快感が二人の身体を包む。
 耐え切れないように身体を震わせ、レイはそっと唇を離すとまた恥ずかしそうに目を伏
せ、シンジの左胸に頭を持たせかけて、甘えるように顔をうずめた。シンジは、レイの頬
を包んでいた右手をレイの頭に添えて、銀糸のようなやわらかな髪をなでる。髪を愛撫す
るシンジの手を堪能するようにじっと目を閉じるレイ。
 シンジはレイの髪を優しくなで続ける。ゆっくりと時間が過ぎていく。やがて髪をなで
る手はそのままに、おずおずとシンジが声をかけた。

「…えっと、綾波、あのさ。よかったら、ちょっと眠らない?」
「…ん?」
 レイが甘えたような小さな声で聞き返す。

「ちょっとだけさ、ベッドで横になろうよ。まだ午後は長いし。お昼寝しない?」
「…」
「…だめかな?」
「…ダメじゃない。…いいわ」
 レイは少し考えて小さく頷くと、また少し頬を染めて頭を上げ、深紅の瞳をシンジに向
ける。
「じゃ、いこう?」
 その潤んだ瞳から、はにかんだように目を逸らしながら、シンジはレイを立たせると、
手をしっかりとつないだまま、そっとソファからベッドへとレイをいざなった。



 今日は休日。どこにも出かける予定のなかった二人は、着心地の良い部屋着姿。シンジ
は若草色の半袖のTシャツに膝丈のショートパンツ。レイは淡いグレーのパフスリーブの
ワンピースを着ていた。少し胸元の開いた丸首で、胸の中央にボタンが縦に5つ並んだヘ
ンリーネック風のデザイン。生地はTシャツ地で柔らかく、このまま横になっても皺にな
る心配もない。
 つないだ手はそのままにベッドの上に乗り、レイの腰に手を回すと、シンジは後ろから
包み込むようにレイを胸に抱き寄せ、ゆっくりと二人、ベッドに横たわった。

『…碇君の腕の中。あたたかい』

 レイは安心したように目を閉じる。シンジは、レイの頭を胸に抱き、甘やかな香りの髪
にキスをするように顔をうずめている。二人とも先ほど味わった穏やかな快感によって高
まった体温はそのままだったが、ぴったりと触れ合っていても、興奮が高まるというより、
眠気を誘うような安心感に包まれていた。

 少しうとうととし始めた頃、レイは胸を優しく包まれる感覚に目を覚ました。自分のウ
エストを抱いていたシンジの右手が、いつのまにか、後ろからレイのふっくらと形良く膨
らんだ右の胸を包んでいた。シンジの繊細で長い指がそのまま優しく力を入れたり緩めた
りを繰り返す。手のひらでレイの乳房のやわらかさを味わうように。
「…いかりくん?」
 声をかけたが、シンジは答えない。レイの耳をくすぐるシンジの息遣いは、穏やかな寝
息のそれだ。シンジはうとうととしながら、無意識のうちにレイの胸に手を這わせていた
ようだ。そっと揉むような愛撫が続く。
「…ぅん…」
 知らず、レイは甘い声をもらしていた。シンジのあたたかい手の甘やかな刺激を受けて、
乳房のまんなかで、その先端がそっと頭をもたげてくる。ふと気づくとお尻のふくらみの
うしろにぴったりと重なっていたシンジの身体が、だんだんと熱を帯びてきていた。

「…ぅん…ぁ?」
 …と、寝ぼけたような声が後ろからもれる。
 同時に、愛撫の手が戸惑ったように止まった。

「…あ、あぁ、…あの、ゴメン…」

 シンジの手とレイの肌を隔てるものは、どちらも薄い、ワンピースとレース地の下着の
み。手のなかで次第に固さを増してきたレイの乳首の感触のためか、熱を帯びはじめた己
の身体のためか、まどろみにあったシンジが目を覚ましたようだ。だが、恥ずかしそうに
謝罪の言葉を口にしながらも、レイの胸を包み込んだ手はそのままだ。
「…ううん、ぃぃ…」
 掠れたような小さな声で答えるレイ。かすかに首を左右に振る。互いの頬が上気する。

「……あやなみ…」
 レイの声に誘われるように、シンジの手が再び動き出す。後ろからレイを抱きすくめた
まま、手のひらでこねるように、ゆっくりとゆっくりと胸を揉みはじめた。手の中で、胸
の先端がさらに固く膨らむ。
 シンジの指が生地の上から乳首を探りあて、指の間に挟むようにすると、そのまま強く
弱く刺激を加えつつ、手のひらで乳房全体を揉みこむ動きを続けていく。シンジの触れて
いない左の胸までが、先端を固く膨らませはじめ、シンジの手の動きにつれて動く下着の
レース地に刺激されて、疼くような快感が生まれていた。
「…ぁん…」
 思わずレイは声をもらした。
 シンジの身体の中でも、蕩けるような興奮が静かに高まってきていた。

 おもむろに手を止めると、シンジは顔を上げ、今までレイを愛撫していた手をレイの頬
に添えてそっと顔を上に向かせた。目を閉じてシンジの愛撫を感じていたレイのまぶたが
震えて開き、お互いの視線が絡み合う。
 シンジは真剣な眼差しでレイを見つめたまま、ゆっくりと顔を近づけてレイに唇を重ね
た。

「…んん」
 重ねただけの唇がどちらからともなく開き、次第に密着度が増してキスが深くなる。ゆ
っくりと時間をかけて、舌を触れ合わせ、絡ませ、お互いの舌を味わうようなキスになっ
ていく。
 レイは背中をシンジの身体に預けながら、いつの間にか、シンジの繊細な指が器用な動
きでレイのワンピースの胸のボタンを外し始めたのに気づく。その指の動きを止めるでも
なく、シンジの腕を白い華奢な手で愛撫するように優しくなでた。

「…あやなみ」
 唇を離し、シンジはレイに声をかけると、二人で横向きに重なった姿勢から、レイを優
しくベッドに上向きに横たわらせた。潤んだ二人の視線が絡み合う。シンジがボタンを外
したワンピースの胸元を開くと、白いレースに包まれた胸のふくらみが露わになった。少
し陽は傾きはじめていたが、午後の充分な光に満たされた部屋の中、白いレースよりなお
白いレイのきめ細やかな肌が、淡くピンクに染まって見える。

『…綺麗だ。それに…』
 薄いレース地を押し上げ、いつもよりピンク色を濃くして固く膨らんだ乳首が白いレー
スの合間に透けて見え、シンジの興奮を高める。切ないような、何かを待つような表情を
浮かべているレイに優しい眼差しを向けると、レース越しに左右の乳首にそっと口付けた。
「…あぁ、いかりくん…」
 蕩けるような快感にレイの身体がピクンと跳ね、小さく甘い声をあげる。
 その声に、シンジは唇を離すと、レイの下着のストラップを両肩から滑らせて、そっと
レースの下着を下げた。ぷるんっ。膨らんだ乳首が下着とともに動き、布地から開放され
ると、震えた乳房が揺れる。小振りではあったが、レイの乳房は重力に逆らうように形良
く盛り上がり、先端ではピンクの乳首が上向きにツンととがっている。

「…あなやみ、綺麗だ…」
「…いかりくん」

 シンジは、ゴクンとのどを鳴らすと、身体を下にずらし、レイに覆いかぶさるようにゆ
っくりと乳房に顔を近づける。吐息がレイの肌をくすぐる。両の乳房を両手で下から揉み
上げるようにしながら、片方の乳首を口に含む。ざらついた舌先で固く膨らんだ乳首を転
がし、唇全体で包み込んで優しく吸う。ちゅ。んちゅ。
 たっぷりと時間をかけてレイの右の乳首を味わうと、今度は左の乳首を口に含み、唇と
舌で愛撫を始めた。左手は今まで口に含んでいた乳房全体を包み込むようにしながら、唾
液に濡れ、さらに敏感になった乳首をこねるように愛撫する。シンジは、時折甘噛みした
り、舌で転がしたりしながら、夢中で左右の乳首を吸い、乳房に愛撫を続けた。

「…あ、ん。…ぁ、…っん…」
 レイは甘い喘ぎをもらしながら、シンジの頭を両の手で抱き、髪の毛に細い指を絡ませ
る。時折、強い快感に目をつぶり、眉根を寄せながらも、その表情は柔らかく、慈愛に満
ちた聖母のような優しい瞳で、夢中で自分の乳を吸うわが子を愛でるようにシンジを見つ
めている。
 シンジもまたレイの白い肌に赤い吸い跡をつけながらも、母の愛を一身に受ける幼子の
ように、やわらかな乳房を、甘い乳首を時を忘れて味わい続けた。



 二人の身体がどんどんと熱さを増していく。知らぬ間に始まった、永遠とも思える時間
をかけた愛撫に、レイの中では、いつしか身体の中心で、痺れるような、身体が浮き上が
るような、心もとないような。表現のしようのない感覚が、我慢できないほどに膨れ上が
ってきていた。切ないその感覚に、無意識に脚をこすり合わせる。

 シンジのほうも、これ以上ないほど身体が高まっていた。どんどん熱がこもっていく高
まりが、解放を求めて熱く身体を疼かせる。一方で、このままレイの甘い乳房をいつまで
も味わっていたい気持ちも本当で、自分の唇が膨らんだ乳首を吸うのを、手のひらが、指
が、しっとりとまといつくような乳房の弾力を愉しむことを、止められないでいた。



 そうしている間に、シンジは重なったレイの身体の中心が、しっとりと熱を帯びている
のを急に意識した。乳房を味わいながらも、右手を乳房から離し、そこを目指して手を伸
ばす。すでに半ば脱がされていたワンピースのすそをくぐり、熱い雫で濡れた下着越しに、
途方もなく熱くなったレイの中心に指を這わせると、レイの身体がビクンと動くとともに、
ハッと息を呑むのが聞こえる。

「…あぁぁ」
 レイはそこに触れられて熱い吐息を漏らすと、抱きしめていたシンジの頭から手を離し、
シンジの身体へと手を伸ばす。シンジが身体を下にずらしていたので、しっかり触れるこ
とはできなかったが、レイの繊細な指先が、シンジの熱い先端に触れた。

「…っああ、あやなみ…」
 先端に触れたレイの指先から伝わった刺激が身体を駆け抜け、快感に思わず声を上げる
と、シンジはようやく乳房から顔を上げた。触れられることで、いかに自分が高まってい
たのかを強烈に意識する。そうして身体をやや起こすと、横たわるレイの身体に熱い視線
を這わせた。

 すでにレースの下着は外されており、自分自身の唾液に濡れ、自分の唇がつけた赤い跡
を白い肌に残した乳房が、レイの熱い吐息とともにふるふると震えながら上下している。
固く膨れ、濡れたピンクの乳首を見ていると、また口の中に唾液があふれる。ワンピース
はすでに片袖は脱げ、すそは小さなおへそのくぼみ辺りまでまくれて、レイの細いウエス
トの周りにまとわりついている。ただでさえ透ける白いレースのショーツは、先ほどシン
ジが触れたとき以上に、しっとりと濡れて透き通り、白い肌、淡いブルーの色と、ピンク
に染まったその場所の肌の色がはっきりと透けて見える。そこから伸びた眩しいほどに白
い脚は、これまでの愛撫で体温が高まり、うっすらと汗を浮かべている。あまりにも淫靡
に見えるはずのその肢体は、シンジにさらなる興奮をもたらしながらも、レイの持つ透明
な美しさは少しも損なわれず、その神々しいまでの美しさに、シンジの胸は苦しくなるほ
ど切なく疼く。

 レイは、シンジの熱く真剣な眼差しに全身をさらされ、さらに身体が熱く火照るのを感
じながら、半ば身体を起こしたシンジに目を向ける。すでにTシャツは脱いでおり、ほっ
そりとしながらもしっかりと筋肉がついた肩と広い胸に男性を感じ、胸が高鳴る。引き締
まった腹部に目をやると、ショートパンツを押し上げ、太く長く伸び上がって顔をのぞか
せたその先端が目に入り、先ほど指先を触れさせた感触を想い、カアッと顔が熱くなる。
レイは顔を上げ、熱く潤んだ深紅の瞳で、シンジの熱がこもった黒い瞳を見つめた。

『きみが欲しい…』
『あなたが欲しい…』

 二人の視線には、お互いを求める純粋な想いがこもっていた。それを声に出さずとも、
二人はともに感じ取った。互いに残された衣類をゆっくりと脱がしあう。もう恥ずかしさ
はない。そこにはあふれるほどの愛しさがあるだけ。くるおしいほどに求め合い、お互い
に互いの熱いところを愛撫しあう。痺れるような快感が身体を走る。熱い雫がこぼれる。
 二人は抱きしめ合い、熱く口付けながら、眼差しを交わし合った。それが合図であった
かのように、レイがそっと瞳を閉じる。シンジはゆっくりとレイの中に先端をうずめ、互
いの熱さを味わうように、時間をかけて少しずつお互いに身体を近づけあって、やがてぴ
ったりと隙間なく、奥深くまで重なり合った。


「…ああぁぁっ!」
「…うっくぅっ!」

 レイはシンジの熱い先端が、自分の壁をこすり、押し広げながら少しずつ進んでくるの
を目がくらむほどの悦びのなかで感じていた。シンジとひとつになっていく。その熱さと
圧倒的な存在感。快感に身体が震える。ゆっくりと時間をかけてようやく身体が隙間なく
重なったとき、その熱さに埋め尽くされ、自分の奥深くを突き上げられる感覚に、頭の中
まで痺れるような快感が走り、身体の中が収縮を繰り返すのを感じながら、全身をぶるぶ
ると震わせた。

 シンジは、目を閉じて自分を待つレイの愛しい顔を見つめながら、自分の先端をレイに
押し当てた。レイの中の熱さ、その狭さ。自分に甘く複雑な刺激を常に与え続ける襞に包
まれて、その壁を押し広げながら進む。レイとひとつになっていく。自分がレイの中に溶
けてしまいそうな快感に息を止めながら、少しでも長くこの感覚を味わいたくて、ゆっく
りした動きで身体を進めた。ぴったりと身体が重なったとき、先端がレイに突き当たる感
覚とともに、レイが震えながら一層きつく自分を包み込み収縮を繰り返す。あまりの快感
にはじけそうになり、喘ぎながら目を瞑り、歯を食いしばって耐えた。

 ぴったりと身体を重ねたまま、お互いに喘ぎながら、固く抱きしめ合う。あまりの悦び
に、あまりの愛おしさに目がくらむ。ひとしきり二人で身体を震わせ続けた。



 最初の波を乗り越えてから、お互いの目の中を覗き込み、どちらからともなく口づける。
お互いの舌を味わいながら、二人で身体を揺らし始める。
 二人がつながった場所が擦れて、鋭い快感を生む。レイの固く膨れた胸の先端がシンジ
の胸に擦られて、高鳴る胸の鼓動とともにそこにも痺れるような快感が生まれる。しかし、
身体の奥底ではもっと穏やかで、もっと大きな快感の波が徐々に高まってきていた。
 激しく動く必要はない。二人は今、ひとつになっている。二人同時に高波に飲まれそう
になると、互いにさらに固く抱き合い、その波を喘ぎながら耐える。何度も何度も高まる
波に飲まれかけ、身体を震わせながら、さらにお互いを感じあう。そのたびに、快感に溶
けそうになり、互いの愛しさに胸が苦しくなる。そうしてゆっくりと身体を重ね合わせて、
身体を揺らし合っているうちに、とうとう一番の奥底から、今までにない大きな大きな波
が二人を襲う。もう、耐えられない…!

「…ああっ、あやなみっ!」
「…っ、いかりくんっ!」

 二人、名前を呼び合った瞬間、すべてが弾けた。上下を見失うような快感。互いの中に
溶けてしまいそうな、痺れるような悦びの中で、二人で身体を震わせ、お互いの絶頂を深
く深く感じあっていた。





 いつしか、部屋の中は夕暮れの橙色に染まっていた。ようやく身体を少しだけ離して、
お互いの顔を見つめ合う。二人とも、いつの間にか、涙が頬を伝っていた。

『くるおしいほどに、愛おしい…』

 二人、同じ想いを抱きながら、互いの涙を唇ですくい、もう一度優しく、深く口付けを
交わす。


「あなたに会えてよかった」

「きみが傍にいてくれてよかった」

「「…ありがとう」」




 薄いレースのカーテンが揺れる。

 夕暮れが迫る、時が止まったような静かな部屋に置かれたベッドの上で、いつまでも抱
き合いながら、二人はしだいにまどろみの中に溶け込んでいった。



end.

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