真夏に白い贈り物

〜White Day’s Story〜

綾波レイの幸せシリーズ


使徒との戦いが終わってから、ネルフは公開組織へと変わり、ジオフロントも学術都市へと変遷した

この四月からシンジ、レイ、アスカは此処に新しく出来た大学に進学する予定になっている

使徒との戦いで少し勉強が遅れがちだったシンジだが、二人の少女が一緒に進学したいという思いで必死に教えたおかげであろうか、難関と言われたこの大学に見事に一発で合格した





レイは最近、暇を持て余している

季節が無くなって久しいというのに何故かある「春休み」

いつもならシンジの後をついて回るのだが、最近シンジは、昼間はネルフに用があるからといって構ってくれない

ついて行こうかと申し出たが、シンジに断られた為、仕方なく家で大人しくしている

更にシンジはネルフから帰ってくると、今度は近くの喫茶店にアルバイトに出掛けていく

つまり、今レイは夜以外シンジと話をする事も遊ぶ事も出来ないのだ

何がそんなに彼を駆り立てるのだろうと思い、一回訊ねてみたが、シンジはやんわりと笑ってはぐらかす

納得はいかないが、時期が来たら話すというシンジの言葉を信じて、レイは今我慢の時を過ごしていた





「なあ、シンジ君。君は今、ネルフでりっちゃんの実験に付き合ってるそうじゃないか。何をそんなに頑張ってるんだい?」

皿を洗っているシンジに話し掛ける、無精ひげの男、加持

死んでしまったと思われていたのだが、実は無事に生き延びていたこの男は今、のうのうとこんな所で喫茶店を営んでいた

それが分かったときのミサトの怒りようはいかほどのものだったか・・・・・

その時の話を振ると、皆一様に顔を青褪めさせ、震え出す事からご推測頂きたい

そんな男にシンジは、これまで黙っていた己の心の中をはにかみながら打ち明ける

「アスカとレイにお返ししたいんです。二人のおかげで無事に大学に合格する事が出来ましたからね」

そんなシンジの言葉に加持は意地の悪い笑みを浮かべると

「知ってるかい?シンジ君。ホワイトデーのお返しは三倍返しが基本だってことを」

そんな事をのたまう

「え?そ、そうなんですか?さ、三倍返しなんですか?」

シンジの慌てように加持は笑いながら

「やっぱりホワイトデーのお返しの為か」

と言った

加持にはめられた事を悟ったシンジは顔を茹蛸のように真っ赤にすると

「か、加持さん!本当に人が悪いんだから・・・・・」

そう抗議する

「ははは、悪い悪い。だが、三倍返しってのは本当だぞ。大変だなー、シンジ君も」

軽く笑い流しながらもしみじみと言う加持にシンジは何も言えなくなってしまった

そこに現れる救いの女神(?)

「どう?加持、シンちゃん。頑張ってる?」

そう言いながら入ってきたのは、葛城ミサト

最近、正式に加持の婚約者となった、シンジの姉代わりの女性

「加持、もうすぐホワイトデーよね?フフフ。楽しみにしてるわね」

そう言いながらカウンター席に腰掛ける

一気に顔が蒼くなる加持

何か嫌な思い出があるようだ

シンジは、そんな加持の肩に手を置くと、うんうんと頷いてみせる

それはシンジもその被害に遭った事があると言う証明

そんなシンジに涙を見せる加持

ミサトはそんな加持を、ビール片手に不思議そうに見ていた





遂にやってきた3/14、ホワイトデー

シンジは今までのバイト代で二人にプレゼントを買っていた

レイには白いつば広の帽子と白いワンピースを

アスカには赤いシャツと白いスカートを

二人が寝ている間にそれぞれの部屋の前におき、その中にカードを入れておくシンジ

そこに書かれていたのは

「二人で一緒にジオフロント内にある、何時もの公園に来て欲しい」

と言う、メッセージ

学術都市となってから作られたその公園に彼らはよく、昼食を採りに来ていた

ちょっとしたピクニック気分で

アスカとレイが目を覚まして起きだしてきた頃には既にシンジは出掛けていた

不審に思いながらも、シンジからのメッセージに胸をときめかせ、贈られた服に袖を通して出掛ける二人

その足取りは軽やかだった





公園にたどり着くと、そこには笑顔を浮かべているシンジが居た

「二人とも着て来てくれたんだ」

そう言いながら、二人を眺めるシンジ

「二人とも良く似合ってるよ」

恥ずかしそうに、しかし、はっきりと二人に感想を伝える

そんなシンジの言葉に二人は真っ赤になって俯く

二人を優しい眼差しで見つめていたシンジは、ふいに

「お願いします」

そう、空に向かって声を掛ける

シンジの行動に怪訝な顔をしながらも、同じように天を仰ぐ二人

その目に映ったものは、白き妖精

ゆっくりと舞い降りてくるそれは、常夏と化した日本では二度と見れなくなったもの

風にさらわれながら舞い踊るさまに、手に落ちては消える儚さに嘆息する二人

「母さん達が昔撮ったビデオに映ってた雪を見てたら、二人にもこの綺麗な雪を見て貰いたくなって、リツコさんに人工的に雪を降らせる機械を作ってくれって頼んだんだ」

照れながらそう言って頬を掻くシンジ

「まあ、そのせいでずっと、リツコさんの実験につき合わされたけどね」

と、苦笑いしながら付け加える

そんなシンジの腕に自分の腕を絡めるレイ

「とても綺麗だけど、ちょっと寒いから・・・・・」

頬を染めながら言うレイに、シンジも赤くなる

「それじゃ、アタシも」

そう言ってシンジの空いている腕に自分の腕を絡めるアスカ

「僕から二人への勉強のお礼とホワイトデーのお返し・・・・・。気に入ってもらえた?」

シンジの問いに、更に身体を寄せる事で答えるレイ

半身から伝わってくる暖かさに、レイは幸せを感じていた


後書き


ホワイトデーなんで、雪をプレゼントにしてみました(笑

年中夏だからこそ、こんなプレゼントも良いんじゃないかなと・・・・・

如何でしょうか?

タッチでした




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