天の川に願いを

〜綾波レイの幸せシリーズ〜


窓から吹き込む風は夏の夜気を纏ってか、生温い

それでもベランダに飾った短冊付の笹のサラサラと鳴る葉ズレの音が涼感を運んでくる

私の腕の中には聖夜が、親指を咥えながら眠り

膝の上にはシンジが頭を乗せて寝入っている

腕の中と膝の上から感じる暖かさにしばし幸せを感じる私

そして、空の上の彦星と織姫に想いを馳せる

年に一回しか逢うことの出来ない恋人同士

今は年中真夏の日本

そうそう雲で空が覆われることは無い

でも、セカンドインパクト以前の日本はこの時期、梅雨と呼ばれ一日中雨が降り頻っていたらしい

当然そうなると空はずっと雲に覆われているわけで、この日曇っていると二人は逢えないと言い伝えられていたと聞いた

それはとても悲しい事

愛する人と一日しか逢えないのに、その日の天気によっては逢えなかったなんて

私には今、シンジも居れば、聖夜も居る

どちらもが平等に大切で、平等に愛しい

そんな二人から引き離されて、年に一回しか逢えないなんて考えると・・・・・

心が凍りつく

それほど二人の存在は私の中で大きいのだ





聖夜をそっと降ろし、シンジの頭の下から膝を抜くと、私はベランダにでた

空を見上げると天の川が目に入る

この空の川を挟んで彦星となるワシ座のアルタイルと織姫となる琴座のベガ

二つの星が逢えた事を喜び、輝いているように見える

ふと横に視線を移せば、願い事が書かれた短冊

そこには

「何時までも平和でありますように」

と書かれたシンジのものと

「この幸せがずっと続きますように」

と書いた私のものが寄り添い風に靡いている

私は思う

私が何時まで生きていられるのか分からない

今はそうでもないけれど、昔は定期的に検査を受けなければ生きていけない体だった

それがシンジ達と共に暮らすようになり、栄養を考えた食事をするようになってからかなり改善された

今では普通の人と変わらないぐらいになっている

でも、使徒と人の間の存在である私は、直ぐに死んでしまうのかもしれない

それならまだ良いのかもしれない

二人を残して逝くのは寂しく思うけど・・・・・

だけど

もし私が他の使徒と同じように永遠に生きていける存在になっていたら・・・・・

私は一人取り残される

それだけは絶対に嫌

シンジや聖夜の温もりを感じられなくなる瞬間を考えるだけで身の毛もよだつ

だから私は、願う

この幸せがずっと続くように・・・・・と





また空に視線を移して眺めていると

フワッ

私の肩にカーディガンが掛けられた

振り仰げばそこにはシンジの優しい笑顔

「幾ら年中真夏の日本とはいっても夜に薄着で外に出てたら風邪をひくよ」

そう言って私を抱きしめる

「で、レイは何を見てたの?」

そう聞いてくるシンジに私は微笑むと

「織姫様と彦星様よ」

と答えた

シンジの温もりに包まれながらもう一度空を見上げると

そこには織姫と彦星が幸せそうに寄り添っているのが見えた気がした


後書き


かなり久しぶりな綾波レイの幸せシリーズです

今回は聖夜君も登場です(笑

本当は五月五日にもシリーズを公開しようと思っていたのですが、生憎と仕事が忙しくて無理でした

今回はなんとか間に合いましたが、如何でしたでしょうか?

それでは今度はリニューアルで

タッチでした




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