春休みにこの街に越してきたレミは、その明るい性格で、既に街の人気者になっている
「お!レミちゃん。今から御登校かい?遅刻しない事を祈ってやるよ」
笑いつつ、自転車からおじさんがレミに声を掛ける
「だったら自転車貸して?」
走りながら笑って答えるレミに
「駄目だ、これはおじさんの大事な商売道具だからな」
と答えるおじさん
「もう、ケチ」
器用にも舌を突き出し、走りながらアッカンベーをしてみせるレミ
「おー、レミちゃんは元気だな!はっはっは」
そんなレミに怒るでもなく、楽しそうに答えると、おじさんはとっとと先に行ってしまった
「まったく、か弱い女の子が苦しんでるのに、手を貸さないなんて」
怒っている口ぶりながらも、顔は笑っているレミ
曲がり角に差し掛かったとき、レミは走るスピードを緩めた
が・・・・・
角から人影が現れ・・・・・
どっし〜ん!!
二人はぶつかってしまう
「あたたたた・・・・・」
後頭部を抑えつつ、身を起こした少女は、自分のスカートが捲れている事に気付き、慌てて裾を押さえる
ぶつかったであろう人が居る方向に顔を向けるレミ
そこには、レミと同じように、頭を抑えて唸っている少年の姿が・・・・・
「あ、だ、大丈夫ですか?」
レミは慌てて立ち上がると、少年の元に駆け寄る
「御免なさい、急いでたもんだから」
そう言いつつ、少年の体を起こすレミ
「い、いや、こっちこそ御免ね、僕の方こそ急いでていきなり飛び出しちゃったから・・・・・」
そう言って少年は顔をあげ、レミに笑顔を見せる
その瞬間、レミの脳裏に浮かぶ、目の前の少年と似た少年の優しげな笑顔・・・・・
脳裏に浮かぶ少年の笑顔を見た瞬間・・・・・
ズキリ!
レミの胸に痛みが走る
切なく、苦しい痛み
失ってはならない物を失くしてしまったかのような痛み
不意にレミの頬に涙が伝う
そんなレミに驚いた少年が
「あ、だ、大丈夫?何処か痛いの?お医者さんに行く?」
必死になってレミに問いかけてくる
その少年の態度がおかしくて、何故だか懐かしくて・・・・・
クスリ
レミは小さく笑ってしまう
「え?え?え?な、何?何なの?」
当然少年は事態が把握できずうろたえるのみ
そんな少年に
クスクスクス・・・・・
レミは笑いを抑えきることが出来なかった・・・・・
「第二新東京市から引っ越して来ました、川上 レミです。宜しくお願いします」
レミは元気良く挨拶をすると、ピョコンと頭を下げた
うおぉおおぉおぉぉぉ!!
湧き上がるクラスの男子達
当然だろう、今度の転入生はトビッキリの美少女だったのだから
だが、一人の少年だけは呆然としていた
そう、今朝、レミにぶつかった少年碇 リョウジだけは・・・・・
「では川上さんは・・・・・ふむ・・・・・碇君の隣が空いてますね、それでは碇君、手を挙げて」
担任の指名にオズオズと手を挙げるリョウジ
その少年を確認して
「あ〜、貴方は今朝の!?」
と、驚きの声を上げるレミ
「おや?お知り合いですか?それでは手間が省けますね、碇君、宜しく」
なんだか、逃げたような感じに取れる発言をして、教室を出て行く教師
暫く呆然としていたレミだったが、リョウジの隣の席まで移動すると
「宜しく」
と、手を差し出す
「あ、こ、こちらこそ」
リョウジは差し出された手を握ると、握手しながらそう答えた
そして、レミが席に座った瞬間、ワッとレミの席に押しかけてくるクラスメート達
次から次へと、矢継ぎ早に質問される
もみくちゃにされるレミ
と、誰かが勢い余って押してしまったのだろうか、レミを取り囲んでいた輪が唐突に崩れた
押しつぶされるレミ
それを見た瞬間
「綾波!!」
そう叫んで、クラスメートを掻き分け、レミを助け出すリョウジ
リョウジはレミを抱え上げると、保健室へと急いだ・・・・・
「大丈夫、ちょっと頭を打っただけみたいだから、もうすぐ目覚めると思うわ」
カーテン越しにそんな言葉が聞こえてくる
シャッ!
そんな音と共に、リョウジが心配そうな表情をしながら顔を出す
「・・・あ・・・碇君」
リョウジを確認し、声を出すレミ
レミが目覚めた事に安心して、表情を緩めるリョウジ
「良かった、川上さんが無事で」
柔らかい笑顔を浮かべながらリョウジはそう言うと、レミの横に腰を掛ける
「・・・碇君が助けてくれたの?」
なんと無しに訊ねるレミ
「う、うん。なんだか川上さんが危険になったとき、覚えのない蒼い髪の女の子とダブっちゃって・・・・・助けなきゃいけない!って気分になったんだ」
照れくさそうに頬を掻きつつ、そう言うリョウジに
「有難う」
と答えるレミ
「い、いや、お礼なんて良いんだ。さっき言ったように、そんな気分になったから助けたんだし」
レミにお礼を言われ、更に焦り、なんとか取り繕おうとするリョウジ
「うん、だから余計に嬉しかったの・・・・・」
そう言って笑ったレミの笑顔に、突然、蒼い髪の少女の笑顔が被さる
「あ、綾波・・・・・?」
ポツリと漏らしたリョウジの言葉を、レミはしっかりと聞き取る
そして・・・・・
「・・・・・碇君?」
二人の目の前には月が・・・・・
傍らには、うつ伏せになっている巨大なロボットと、片膝をついている巨大なロボット
走馬灯のように流れる、前世の記憶
いつしか、二人は涙を流す
「・・・また・・・逢えたのね」
そう呟くレミを
コクっと頷き、抱きしめるリョウジ
「レイ、いや、レミ・・・・・僕達はずっと、一緒だよ」
レミの耳元にそっとリョウジが呟く
「・・・嬉しい・・・碇君」
リョウジの背に手を回し、抱きしめ返すレミ
二人はお互いにみつめあうと・・・・・
そっと唇を重ねた
「う、ううん!」
保健医の先生の咳払いに、パッと離れるリョウジとレミ
「まったく。今日逢ったばかりなのに、最近の若い子は・・・・・」
そう言って苦笑して見せる保健医
二人はバツが悪そうにお互い顔を見合わせると、真っ赤になって俯いてしまった
後書き
って事で、生まれ変わった彼らを書いてみました(笑
題名的には「二人は永遠の愛情という絆で結ばれている」って感じなのですが
如何でしたでしょうか?
それではまた、リニューアルで
タッチでした