愛の証 X−file
〜綾波レイの幸せシリーズvol.8 '04VDSS〜
ざわめく街
着飾った人々が目の前を流れていく
私はそんな人々を眺めつつ、人を待つ
そう、愛しいあの人を・・・・・
「レイ!!」
シンジが私の方に手を振りながら近付いてくる
「シンジ!!」
ソレに応えるように私も手を挙げる
「御免、待たせちゃった?」
額の汗をハンカチで拭きながら私に聞いてくるシンジに私は
「ううん、私も今来た所」
と微笑んで答える
「そう、良かった」
シンジはそう言って微笑むと
「それじゃ、行こうか」
と手を差し伸べてきた
「うん」
と頷いて手を取る私
私はシンジの温もりを感じながら人の流れの中に紛れていった
それはよくある甘い恋愛映画
まるでロミオとジュリエットのように運命に弄ばれ、引き離される二人
それでも二人の相手への想いは強く、やがて二人は幾多の苦難を乗り越え結ばれる
人ではなかった私
司令の計画の為だけに生きていた私
無に還る事が私の望みだった
それとは別にシンジと共に居たいという望みもあった
相反する二つの望みに翻弄された私
私はシンジの為にこの命を捨てようとした事もあった
代わりが居たから
シンジへの想いを抱えて・・・・・
でも、それはシンジを悲しませるだけの事だった
無事だった私に言ってくれたシンジの言葉
「もう二度と僕の前から消える事になるような、そんな事はしないで」
その言葉は暖かく
その気持ちを私に向けてくれる人を悲しませた己の行為を悔いた
だから私は何時もシンジの傍に居る
幾多の困難を乗り越えて結ばれた私達
だからだと思う・・・・・、何となくこの映画に共感したのは・・・・・
「・・・イ・・・レ・・・イ・・・レイ!」
どれだけ私は自分の考えに埋没していたのだろう?
そんなシンジの呼び声に現実に戻ってきた
「あ・・・な、何、シンジ?」
心配そうに私を見るシンジに問い掛けると
「何処か調子が悪いの?ボーっとしてたけど。デート、また今度にする?」
そんな言葉が返ってきた
いけない、シンジにかなり心配させちゃったみたい
だから私はシンジにニッコリと微笑むと
「ううん、大丈夫。ちょっと昔の事を思い出してただけだから」
と答えた
「昔の事?」
不思議そうに聞いてくるシンジに
「な・い・しょ」
顔を顰めて舌を出しつつ、そう答える私
「なんだよ〜、人が心配してるって言うのに」
私の態度に不満そうなシンジ
「良いの!さ、次に行きましょ」
そんなシンジの腕をとって、私が促すと
「ま、待ってよレイ!」
と言いながら歩き出すシンジ
私はシンジの横に移動すると、その腕にしがみ付いた
映画の後はショッピング
小物を見て回ったり服を見て回ったり・・・・・
下着売り場に連れて行ってみると、顔を真っ赤にしてその場から逃げようとする
まあ、当たり前だとは思うけど
ソレよりも不思議なのは、未だにシンジが私に手を出してこない事・・・・・
結婚したというのに・・・・・
私はそんなに魅力がないのだろうか?
そう思ってシンジの顔を見る
シンジは必死になって女性物の下着から目を背けてたのだけど、私の視線を感じたのか私の方に振り返る
そんなシンジに
「シンジ、これなんか如何?」
と、思い切り大胆な黒い下着を見せてみる
「ちょ、ちょっと、レイ!?」
慌てるシンジ
私はその狼狽振りに思わずクスクスと笑ってしまった
シンジがジト目になって
「・・・レイ・・・からかったね?」
そう言って来る
「・・・ご・・・御免なさい」
肩を震わせ、笑いながら謝る私
でも、事態は思わぬ方向へ・・・・・
「・・・良いんじゃない?買っておいでよ」
シンジと思えない言葉
私は思わずシンジを振り仰ぎ見る
そこには仕返しとばかりに意地悪そうな笑顔を浮かべているシンジの顔が・・・
だから
「・・・そうね」
そう言って私はその下着を持ってレジに向かった
「・・・え?・・・レ・・・レイ?」
慌てて追いかけてくるシンジ
「ね、ねぇ、本当に買うの?」
とか
「ご、御免、僕が悪かったから」
とか言って来るけど・・・・・
でも駄目なの
もう決めたの、これを買うって
だから、シンジの言葉を全て無視してレジでお金を払い、袋に入れられたソレを渡したの
固まるシンジ
私はそんなシンジの腕を引いて下着売り場を後にした
「カンパ〜イ」
チン
私とシンジはスパークリングワインの注がれたグラスを軽く触れ合わせると、軽く微笑みあう
今日は奮発して二人でフランス料理のフルコースを食べる事にした
アペリティフとしてもってこいの食欲を刺激する柔らかい炭酸と辛さ
ワインを楽しんでいると、コースの最初の料理、アミューズグールが運ばれてきた
ワインも軽い白に変える
冷製オードブル・スープ・温製オードブル・魚のメイン料理・口直しと、食べ終わった端から次々と運ばれてくる
口直しのシャーベットを食べた所で、次はワインを重い赤に変える
ワインは『シャトー・カロン・セギュール・サンテステフ』
エチケットにハートマークが描かれているサンテステフ珠玉の赤ワイン
ヴィンテージは”2015”
丁度私達が出逢った年
このワインは瓶詰めされてから10〜20年たった位が飲み頃というから少し早いかもしれない
グラスに注がれたワインはまだ香りも固くすこし渋味が目立つけど、肉料理の脂っこさをさっと流してくれた
何でも、赤ワインのタンニン分が肉料理の脂分を洗い流してくれるらしい
最近、大分肉料理を食べられるようになったけど、今度はあの脂っこさが気になってたから、丁度良い
シンジはワインをゆっくりとスワリングさせ、一口含むと
「・・・レイ・・・これはボルドー地区のサンテステフという地方のワインなんだけどね」
と話し出す
「昔、この畑の持ち主、ド・セギュール候は他にも「ラトゥール」や「ラフィット」って有名な畑も持ってたんだ」
シンジが何を言いたいのか分からない
「でもね・・・どの畑を最も愛してるか聞かれた時、彼はこう答えたんだって」
恐らく、彼のその答えがシンジの言いたいことなんだろうと、私は直感した
「私の心はいつも『カロン』にある・・・・・って。それにちなんでエチケットにハートを描いたんだそうだけど・・・・・」
それってつまり・・・・・
「僕にとっての『カロン』は・・・・・君だね」
シンジが私に微笑む
ううん、微笑んでるんだと思う
何故なら、私の視界は滲んでて、シンジの顔が良く見えないから・・・・・
「レ、レイ!?」
驚いているシンジに
「有難う、シンジにそう言って貰えて・・・・・私・・・・・嬉しいの」
そう言って微笑む私
そして
「私の『カロン』は・・・・・貴方ね」
と答えた
私の言葉に微笑んでくれるシンジ
その後、サラダとデザートが運ばれてきたが既に味が分からなくなってしまっていた
余りに幸福感に私が浸ってしまった為に・・・・・
「・・・・・・・・・・シンジ」
間接照明に照らされた薄暗いホテルの一室で、シャワーを浴び終わった私はそう呼び掛ける
「おいで・・・・・」
ベッドの上に座っていたシンジがそう言って、私に手を差し出してくる
その言葉と行動に、私は頬を紅くしながらシンジの横に座る
「・・・レイ・・・」
そう言って私の肩を抱くと、頤を軽く掴んで自分の方に向かせるシンジ
そのまま顔が近付いてきて・・・・・
重なる二人の唇
突然、シンジの舌が私の口の中に分け入ってきた
でも、私は抵抗する事無く受け入れる
くちゅ・・・・・ぴちゃ・・・・・
淫らな音が聞こえてくる
私の口の中を蹂躙するシンジの舌
私はそんなシンジに応えるように一生懸命舌を動かす
すり合わせる舌と舌
そうかと思うと、いきなりシンジが私の舌を吸いだした
私が驚いてると、再び口を塞がれ歯茎の裏を舐められる
くすぐったいような、気持ち良いような感覚・・・・・
そんな感覚に身を委ねていると舌とは別に、手が私の体に触れてきた
優しく、羽で撫でるように
まるで何かの楽器を弾く様に・・・
だんだん息苦しくなる私
「ぷはっ」
耐え切れなくなった私はシンジの口撃から逃れる
二人の間には銀の架け橋が・・・・・
気がつけば羽織っていたバスローブの紐を解かれ、前をはだけられていた
「・・・・・これ・・・・・着けてたんだ・・・・・」
シンジの言ってるのは私の下着の事だろう
そう、今日買ったあの黒い下着を私は今、着けている
「・・・・・レイ・・・・・綺麗だよ・・・・・」
そう言いつつ、指を動かすシンジ
首筋や乳房、脇腹、お臍の辺り・・・・・
私の体の隅々に這い回る
その指の動きが気持ちよくて・・・・・
「ふ・・・・・あぅ・・・・・あっ・・・は・・・はぁ・・・・・」
私は声を出してしまう
やがてすべて脱がされ、生まれたままの姿にされる私
「良い?」
シンジの最後の確認に、コックリと頷く私
シンジが私の両脚の間に身体を入れて・・・・・
ゆっくりと腰を入れてくる
でも、入り口から少し入ったところで
ズリッ
私は無意識に上に逃げてしまう
「レイ?」
不安そうなシンジの顔
どうして?
私はシンジと一つになりたいのに・・・・・
するとシンジが
「・・・・・今日は・・・・・これ以上は止めとこうか」
と呟いた
それは嫌!
私はシンジの首に縋りつく
「シンジ、お願い!私は一つになりたい!」
私の言葉に、シンジは不安そうな表情をしながらも、もう一度腰を入れてくる
逃げないようにシンジの首にかじりつく私
何か、異物が私の中に入ってくる
私の身体を引き裂きながら・・・・・
実際はそんな事は無いのだけど、そう感じる
その痛みに体が逃げてしまう
そんな私に
「・・・・・やっぱり・・・・・止めない?」
シンジが聞いてくる
「大丈夫!大丈夫だから!我慢できるから!お願い!」
私の必死の訴えに
「じゃあ、続けるけど・・・・・無理はしないで・・・・・僕はレイを傷つけたくないんだ」
シンジがそう言ってくれた
シンジの言葉に、優しさに、思わず涙を零してしまう
でも、シンジと一つになりたい
それは私の昔からの願い
だから
進んでくるシンジを受け入れようと力を抜くよう努力する
痛みは確かにある
でも、それ以上にシンジへの愛しさが勝り・・・・・
そして、二人は一つになる
私を労わる様にじっとしているシンジ
そんなシンジに
「・・・シンジ・・・私は大丈夫だから」
と声を掛ける
シンジは私の顔を覗きこむと、軽く頷き
ゆっくりと動き出す
「あぅ・・・・・くぅ・・・・・い・・・イタ・・・・・」
思わず苦痛の声を漏らす私
私を心配そうに見るシンジに何とか笑顔を返そうと努力をする
その内痛み以外の感覚も感じるようになってきて・・・・・
「あ・・・・・はぅ・・・・・くふん・・・・・はぁあ・・・・・あぁあ・・・・・」
さっきまでと比べ物にならないほどに声が漏れ始める
ジワジワと何かが満ちてくる
そうかと思えば身体に痺れに似たものが走る
何が何だか判らなくなってくる感覚
私は私を保つ為にシンジに一生懸命縋りつく
「シンジ・・・・・シンジ・・・シンジ!」
兎に角シンジの名前を呼ぶ私
そんな私に答えるように
「レイ・・・・・レイ・・・レイ!」
シンジも私の名前を呼ぶ
その事に高揚感を感じる私
身体を突き抜ける何かを感じた後
辺りが真っ白になり・・・・・
三ヵ月後・・・・・
「おめでとう」
リツコお義母さんの言葉に、私は微笑む
そう、私の中に新しい命が宿っていたから
シンジと私の愛の結晶
その事に、ユイお母さんも碇司令も喜んでくれた
でも、一番見たいのは・・・・・
「ただいま〜」
シンジが仕事から帰ってきた
私はゆっくりと玄関に出迎え
「・・・・・シンジ」
玄関でリツコお義母さんの言葉を伝える
「ホントに!?」
驚きと喜びの等分に入り混じった表情で聞いてくるシンジ
そんなシンジに頷いてみせる私
「やった〜」
歓び、私を抱き上げるシンジ
そう、この人のこの笑顔
「シンジ!レイちゃんに激しい衝撃を与えちゃ駄目よ」
ユイお母さんの言葉に
「あ、ご、御免」
そう言いながらゆっくりと私を降ろす
それでも笑顔は消えなくて・・・・・
私は血を流さない女だった
私は子供を産めないはずだった
でも、何時の間にか体の組成が変わっていて・・・・・
ううん、変わったのはあの時だと分かる
そして今、私は新しい命をこの身に宿している
新しい家族を迎えることが出来る
その事がとても嬉しくて
新しい絆が増える事が待ち遠しくて
私は、今の幸せを噛み締めた・・・・・
後書き
って事でご褒美SSです(爆
こんな所で如何でしょうか?
これだけ痛がると本当なら萎えるのでしょうが・・・・・
それをやるとまた別のシーンを書かないといけないし
下手したら連載しなきゃいけないんで済ませちゃいました(爆
それでは
タッチでした
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