クリスマスパーティー

〜綾波レイの幸せシリーズvol.11〜



「いない、いない、ばぁ〜〜〜」

大きな手によって隠されていたゲンドウの顔が手が退く事で出てきた瞬間

「きゃ〜っ」

大きな声で笑いながら椅子の影に隠れる聖夜

聖夜が椅子の陰に隠れた事で少し傷つくゲンドウ

「やはりヒゲが悪いのか?」

などと呟いていると

「ばぁ〜」

と言って聖夜が笑顔で椅子の陰から顔を出した

そんな聖夜に

ニヤリと笑ってみせるゲンドウ

ゲンドウと聖夜で

「いない、いない、ばぁ〜」

「ばぁ〜」

と繰り返していると

ピンポ〜ン

チャイムが鳴った

「は〜い」

ユイが玄関に向かいドアを開けると、そこにはアスカが

「こんにちは〜」

「あら、いらっしゃいアスカちゃん」

ユイはアスカの為にスリッパを用意し、招き入れる

「おじゃましま〜す」

アスカはユイに元気に挨拶をすると、用意されたスリッパを履き、リヴィングに

向かおうとしたが、アスカは止まり、にやりと笑うと

「おばさま、コレを預かっていていただけますか?」

と、今日のパーティーの為に持ってきたプレゼントの入ったバッグをユイに差し出した

アスカの言葉にリヴィングの方に目を向けると

いつの間にか廊下とリヴィングを隔てるようにドアが閉まっている

ユイはソレを確認すると

「ええ、分かったわ」

と笑顔でアスカからバッグを受け取った

アスカはゆっくりとリヴィングに向かい、ドアを開けると

そこには聖夜が

少し前屈みになった状態で、笑顔で立っていた

ゲンドウとしてはもう少し聖夜と遊びたかったのだが、聖夜自身が選択した事

そう思うとゲンドウは

「・・・・・フ・・・・・問題ない」

と寂しそうに笑った

一方、聖夜はアスカの姿を確認した途端、更に笑顔になると

「きゃ〜〜〜〜っ!」

そう言って笑顔のままアスカと逆方向に走り始めた

アスカも心得た物で

「待て聖夜〜〜!待て待て待て〜〜〜〜」

そう言って、つかず離れずな、それでいて何かあってもすぐに支えられる距離を保って追いかける

「きゃっきゃ、きゃっきゃ」

本当に楽しそうに逃げる聖夜

アスカもまた、楽しそうに追いかける

が、まだ歩き始めて間もない子供が何時までも走り続ける事が出来るはずも無く

途中でフラッとよろけた

その瞬間、聖夜をすっと抱き上げるアスカ

聖夜はアスカに微笑むと、アスカの髪を弄り始め

そんな聖夜を、ゲンドウは寂しそうにみつめていた





聖夜とアスカが戯れていると

ピンポ〜ン

再び鳴るチャイム

ユイが玄関に向かい、ドアを開けると

「メリークリスマス」

そう言ってカヲルが花束を持って現れた

「いらっしゃい、カヲル君、早かったわね」

ユイが笑顔でそう言うと

「パーティーは良いですからね。友人との仲を更に深めてくれますから」

そう言って笑顔で返す

「玄関で立ち話もなんだから、お入りなさい」

そう言いつつユイはスリッパを用意し

「お邪魔します」

カヲルはスリッパを履いてユイと談笑しつつリヴィングに向かった

カヲルがリヴィングに着くと

「いらっしゃい、カヲル君」

シンジがにこやかにカヲルに声を掛けた

すると、カヲルはシンジに笑顔を見せながら接近し

「やあ、シンジ君。僕からのクリスマスプレゼント受け取ってくれるかい?」

そう言ってバラの花束を差し出した

そんなカヲルに冷や汗を垂らすシンジ

「い、いや、気持ちはありがたいけど・・・・・僕・・・・・男だし」

後に引きながらシンジがそう言うと

「フフフ、大丈夫だよ、シンジ君。僕にとって男と女は等価値だから」

と妖しげな笑みを浮かべてシンジににじり寄るカヲル

その妖しさに

(何が大丈夫なのさ!?)

と思いながら座ったまま、じりじりと後退するシンジ

が、そのうちシンジの身体は壁によって後退を阻まれ・・・・・

「さあ、シンジ君!僕からの熱いベーゼを!」

とカヲルの唇がシンジの唇目掛けて突進しようとした瞬間

「何やってんのよ!?」

というアスカの言葉と共に、カヲルの頭頂部にアスカの踵が落ちた

シンジの懐に気絶しながら飛び込もうとするカヲルに、容赦なく浴びせられるレイの横蹴り

そのまま、カヲルはシンジの横に仰向けに倒れこみ・・・・・

アスカとレイの二人にストンピングを喰らっている

その二人の間に小さな影、聖夜が混ざっているのはご愛嬌か?





そんなじゃれあい(?)が続く中、三度響く、チャイムの音

やってきたのはトウジ、ヒカリ、ケンスケ

と、またチャイムが鳴り

ミサト達、ネルフの面々が

全員が揃った所で、アスカとレイもカヲルの殲滅をやめ

ユイ、リツコ、シンジ、レイはキッチンに向かい

料理や飲み物を持ってリヴィングに帰ってきた

レイはいまだにカヲルにストンピングをかましている聖夜を抱き上げると、シンジの隣に腰を下ろし

他のメンバーも次々にテーブルに着く

やっと聖夜から解放されたカヲルもテーブルに着き・・・・・

「それでは、あなた、お願いします」

と言うユイの一言に

「ウム」

とゲンドウが大仰に頷くと

「・・・・・merry Christmas」

そう言って杯を掲げた

「merry christmas!」

パーティー参加者もゲンドウの発声に唱和し

カチン・カチン

あちこちから聞こえてくるグラスを合わせる音

こうして宴が始まった

沢山の食べ物や飲み物

ミサトは料理には殆ど目もくれずにビールを飲み

トウジは片っ端から料理に手をつけていく

ゲンドウとユイはお酒を注しつ注されつしながら料理を楽しみ

レイとアスカは先を争ってシンジにお酒を注いだり、料理を口に運んだりしている

それにカヲルも参加しようとするが、敢え無く二人に殲滅され、聖夜のおもちゃと化す

ヒカリはトウジの為に料理を出来るだけ集め

ケンスケは飲むのも食べるのもそっちのけでカメラを回す

ある程度それぞれが満足した所で

宴会は新たな展開になる

トウジの身体をはったギャグや

ケンスケのトランプマジックなど

趣向を凝らしたそれぞれの出し物が次々と披露されり

冬月がこぶしを利かせて演歌を歌えば

アスカとキョウコ親子で最近のデュオアイドルの歌をデュエットしたり

ユイとゲンドウが「男と女のラブゲーム」を歌ったりと

(その時、ゲンドウは顔を真っ赤にしていて、パーティーの参加者が笑いを堪えるのに必死だったらしい)

飲めや歌えの大騒ぎが続く

そんな狂乱を、レイは聖夜に哺乳瓶でミルクを与えながら微笑ましそうに見ている

昔は人の集まる所に行くのが嫌だった

嫌でも自分はヒトではないと感じてしまうから

でも、今は違う

シンジと言う愛しい男性と結婚をし

聖夜と言う可愛い子供を授かった

その事が、自分はヒトなのだと教えてくれたから

だから今は、家族や仲間達と楽しい時間を共有できる事が嬉しいとさえ思える

レイは家族や仲間を眺めながらそんな事を思う

そして

自分は今、凄く幸せなのだ

とも

やがて宴はプレゼント交換へと移る

自分が考えて買ったものを貰った人が喜んでくれる

それもこの宴がくれる幸せ





宴が終わり、片づけをしていると

「レイ、こっちにおいで。月が綺麗だよ」

シンジが自分を呼ぶ声が聞こえた

その声に反応して、シンジの姿を探すと、ベランダにその姿が

レイはシンジの言葉に従い、シンジの隣へ並ぶ

見上げれば、雲ひとつ無い夜空に煌々と輝く青白い月が

「綺麗だろ?」

シンジの言葉に頷くレイ

「騒がしいのも楽しくて良いけど、僕はやっぱり落ち着いた雰囲気が好きだから」

そう言ってシンジはじっと月を見ている

「そう」

レイがそう答えると

「このまま綺麗な月をずっと見ていたいな」

穏やかな顔でそう言うシンジ

「・・・・・そう」

レイはそう答えながら自分の視線を月に移す

と、その時、目の前にネックレスが・・・・・

「メリークリスマス、レイ」

シンジの方に視線を戻すと、シンジはそう言いながら微笑み、ネックレスを差し出してきた

「あ、ありがとう」

レイが頬を染めながら礼を言うと

「その宝石はムーンストーンって言うんだ。月の様な君に似合うと思って」

そう言って顔を紅くするシンジ

そんなシンジの様子に、レイはさっきまでのセリフは自分の事だったのだと気が付いた

途端に先程までより、更に紅くなるレイ

そしてレイは

シンジの肩に頭をもたれかけさせながらもう一度月に視線を戻す

そんなレイに一番の笑顔を見せるシンジ

二人は寄り添いながらずっと月を眺めていた






後書き

ども、タッチです

今年ヴァージョンのクリスマスSS完成しました

シンジとレイの二人っきりの甘甘も良いのですが、偶にはこんな仲間達とってのも良いかなと

ま、結局最後には二人でラヴラヴになってるんですが(爆

如何でしたでしょうか?

それでは



ぜひあなたの感想をタッチさんまでお送りください >[touch_an007@ksj.biglobe.ne.jp]


【「綾波レイの幸せシリーズ」目次】   【投稿作品の目次】   【HOME】