贈り物に気持ちを込めて

〜綾波レイの幸せシリーズvol.13〜

’05ホワイトデーSS



喫茶店『希望』

大学生になった聖夜は今、ヒカリが経営するこの喫茶店でアルバイトをしている

勿論ヒカリとトウジの愛娘、奈々が目当てだっりするのは公然の秘密なのだが・・・

「で、何をお返しにあげれば良いんだろう?」

二限目までで帰って来てアルバイトに出ていた聖夜に一人の少年がそう問いかけた

「何をって・・・・・何が良いんだろうな?」

聖夜は少年の質問に律儀に考え込み始めた

この辺りは父親譲りなのかも知れない

「ただね、ウチの両親が両親だからね〜、愛も余り金の掛かった物は好きじゃないと思うよ

 ただ、君の両親ならそれこそ何か豪華な物を!なんて言うかも知れないけどね」

聖夜がそう言って笑うと、少年も苦笑して返した

「そうだね、ウチの親なら下手したら指輪贈れなんて言い出しそうだね」

少年の答えにお互い顔を見合わせると大きな声で笑い出した

「指輪は流石に無い!って言いたいけど、アスカおばさんやカヲルおじさんなら言いそうで怖いよね?」

「っていうか、ウチの父さんと母さん、どうにも愛と僕をくっつけたいみたいで・・・・・」

少年がため息を吐きつつ聖夜にそうこぼした

「おや?ウチの愛じゃ何かご不満でも?」

チシャ猫のような笑みを浮かべつつ聖夜がそう言うと少年は驚いたように否定する

「べ、別に不満だなんて言ってないじゃないか!?」

少年の答えに満足したかのようにウンウンと頷く聖夜

「で、聖夜君はウチの奈々をどう思ってくれてるのかな?」

そこに思わぬ一言が

「ヒ、ヒカリさん!?」

「あ、僕も知りたいな」

ヒカリを援護するような少年の一言に聖夜は少年を恨めしげな目で睨む

「で、如何なのかな?」

ニコニコ顔のヒカリ、ソレは聖夜にとてつもないプレッシャーを与え

「う・・・そ・・・その・・・す・・・好きです・・・」

聖夜は顔を真っ赤にして俯くと白状をした

「そう、良かった」

心底ホッとしたような、晴れやかな笑顔でヒカリはそう言うと

「聖夜君がウチの奈々に何をお返ししてくれるのか楽しみ!あ、でも、指輪はまだダメよ?」

そう言ってカウンターの中に戻っていった

「ゆ、指輪って・・・・・」

一気に疲れの出る聖夜と

「ま、そのうちアノ人がお義母さんになるんだから」

と意味不明な励ましをする少年

「奈々がそう思ってくれるならね・・・・・」

聖夜の呟きは、誰にも聞こえなかった・・・





「で、アンタは愛に何をあげるつもりなのよ?」

アスカが、先程喫茶店に居た少年にそう問いかけた

「べ、別になんでも良いだろ!」

少年はアスカにそう叫ぶと顔を真っ赤にして俯ける

「はっは〜ん、アンタ、指輪でもあげるつもりなんでしょ?」

アスカがにやにやと笑いながらそう言うと

「何でそうなるんだよ!?」

少年がアスカに噛み付いた

「あ〜ら、違うの?顔を真っ赤にして俯くからそうなのかと思っちゃったじゃない」

にやにやを引っ込めずにそういうアスカ

「も、もう!何でも良いだろ!?部屋から出てってよ、母さん!」

我慢の限界にきた少年はこれ以上からかわれ無いようにアスカを部屋から追い出した





「聖夜は奈々君に何を返すつもりだ?」

ゲンドウが聖夜の部屋を訪ね、そう訊いた

「何を贈れば良いのかまだ悩んでるんだ

 奈々が僕のことどう思ってるのかわからないし・・・」

聖夜の答えにゲンドウは思わず苦笑してしまった

この、自分やシンジに似た女性の気持ちに対する鈍感さはやはり遺伝なのだろうかと・・・

奈々が聖夜の事をどう思っているかなど、傍から見ていればすぐにわかる

それなのに孫は気付いていないらしい

「聖夜、相手の気持ちを思いやるのも良い事だが、偶には自分の気持ちをきちんと伝えるのも大切な事だぞ?」

だから、ゲンドウは聖夜にそう言った

自分もきちんと気持ちを伝える事が出来なくて多くの後悔をしてきたから・・・

「でも、迷惑じゃないかな?」

ゲンドウの言葉にもまだ踏ん切りのつかない聖夜

「偶には迷惑を掛けてみるのも良いもんだぞ?」

ゲンドウはそう言ってにやりと笑うと

「まあ、後悔だけはせんようにな」

そう言って聖夜の部屋を出て行った





― 3/14 WD当日 ―

「あ、奈々、ちょっと良いかな?」

アルバイトしていた聖夜が、帰宅してきた奈々に声を掛けた

「何?」

奈々は何処か期待に満ちた表情で聖夜に問いかけると、近付いていった

そんな二人を興味津々と言った表情で見ているリツコ、ミサト、マヤ、レイ、アスカ、ヒカリ

六人の視線が痛かったのか、恥ずかしかったのか

「何でこっちを見てるんだよ!?」

と顔を真っ赤にして抗議する聖夜

が、そんなものがこの六人に通用するわけもなく

「あっら〜ん、だ〜って〜、聖夜君が奈々ちゃんに何を返すのかおばさん、興味があるんだもん」

とからかうミサトを筆頭に、ニヤニヤ顔で視線を逸らしもしない

「あ〜、もう!」

聖夜は諦めたのかそう言うと

「はい、奈々」

綺麗にラッピングされた小箱のようなものを差し出した

「開けても良いかな?」

嬉しそうに受け取り、問いかける奈々

「うん」

聖夜は恥ずかしそうに鼻の頭を掻きつつそう答える

奈々が綺麗にラッピングを解いていくと、中から出てきたものは細長い真っ白な小箱だった

ゆっくりと小箱を開ける奈々

小箱から出て来たのは・・・・・

ネックレスだった

「わあ、可愛い、ありがとう!」

本当に嬉しそうな顔でお礼を言う奈々

「うん、喜んでもらえて僕も嬉しいよ」

聖夜も笑顔でそう答えると

「奈々が好きだから、一生懸命選んだんだ・・・・・」

顔を真っ赤にして、俯きながらそう言った

「え?」

身体を硬直させて聞き返す奈々

「だ、だから、奈々が好きだって言ったんだ!」

思わず大声でもう一度告白する聖夜

「お〜!」

五人からどよめきの声が上がる

「あ、あの、その、あ、ありがとう・・・・・

 それでね、あの、わ、私も聖夜君が好き」

恥ずかしそうに礼を言い、返事を返す奈々

再びどよめきの声が上がる中、レイとヒカリは嬉しそうに聖夜と奈々をみつめていた





「あ、お母さん、見て見て、シンジ君から貰っちゃった!」

帰宅したレイが愛に見せてもらったもの

それはスカーフだった

可愛いデザインのそれは愛に似合っていて

「良かったわね、愛」

レイは微笑んで愛にそう言った

「うん!」

本当に嬉しそうな表情で答える愛

アスカとカヲルの息子「シンジ」と自分の娘「愛」の本当の色恋沙汰はまだまだ先の事だろう

それでも、確実にお互いを意識し始めている

ソレが嬉しくて、でも、不安があって

レイはそんな二人を優しく見守って行く事を心に決めたのだった






後書き

ども、タッチです

今回は聖夜と奈々をくっつけてみました

シンジと愛はもうしばらく先ですかね?(笑

今回、ゲンドウが少しシリアス入ってます(爆

このくらいにまで聖夜達が育っててまで「じ〜じでしゅよ〜」なんて馬鹿なことは無いと思いますから(笑

次はどうしようかな?

それでは



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