聖夜

クリスマスSS


窓から入る暖かな日差し

何処からかTVの声が聞こえてくる

多くの人が行き来する足音が聞こえ

賑やかさを醸し出している

しかし、そんな廻りの雰囲気にそぐわない感じのする、白を基調としてはいるが薄暗く味気ない病室

そこに一つポツンと置かれたベッド

廻りに人気がまったく無い

寂しさだけが募る部屋

今、レイはそんな場所で一人、苦痛と戦っていた

今日は12/24日、世の中はクリスマスイヴで盛り上がっていた

夜ともなれば色とりどりのイルミネーションが街を幻想的な雰囲気に飾る日

常夏の国と化した日本だが、その風習は変わらない

レイは寂しさを感じる

何時も、自分が辛い時には傍に居てくれるシンジが今日は居ない

シンジは何やら用事があるらしい

時折感じる鈍痛に、レイは柳眉を顰める

そんな中、レイは思い出す

「君が絆を欲しいと言うのなら、僕が家族と言う新しい絆をあげる。僕は君を護り続けたい」

そう言った、シンジの言葉を

レイは堪らなく嬉しく思った

ヒトではない自分に家族と言う絆が出来ることが

望んでも手に入らないだろうと思っていたものを手に入れることができる事が

今も尚、その言葉を思い出すだけで幸福感に包まれるレイ

だからこそ、レイは今の状況を寂しいと思った





使徒戦役から既に十年の月日が流れていた

結局サードインパクトは未然に防がれた

国連の公開組織に変わったネルフ

ゲンドウはそのまま司令を続けている

冬月は引退して、その代わりにユイが副司令の任に着いた

平和になったせいなのだろうか?

シンジを取り合ってアスカとレイは熾烈な争いを演じた

結局シンジが選んだのはレイだった

妹のような、儚く弱々しかった彼女が見せたシンジへの強い想い

それがシンジの心を動かしたのだ

アスカも最後には負けを認めた

皆に祝福されて結婚したのは、今から1年前の話であった





その夜、レイの容体が急変した

手術室に運び込まれるレイ

程なくして、シンジが病院に掛け込んで来る

シンジは手術室に入れる格好になると、静かに、急いでレイの傍に行く

シンジの存在に笑顔になるレイ

シンジはそんなレイの手を優しくそれでいて強く握る

レイと苦痛の戦いはいつまでも続く様にシンジには思えた

何も出来ない自分をふがいなく思うシンジ

だから、一生懸命に祈る

母子が共に無事である事を

握った手に願いを込めて

日付が変わろうとするまさにその瞬間

手術室に、待合室に、子供の泣き声が木霊した

新しい息吹の、新しい絆の誕生

それを喜び合うシンジとレイ

生まれたのは元気な男の赤ちゃんだった

シンジとレイはその男の子に名前を付ける

神と星々に祝福されたこの夜に生まれたこの子に

精一杯の感謝と愛情を込めて

「聖夜(セイヤ)」



後書き


クリスマスSS 「聖夜」です

お気づきと思いますが、祝三万ヒットSSの前の話です

書いていて気づきました(爆

いかがでしたでしょうか?

タッチでした




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