注)この作品はエヴァに取り憑かれし心…その容れ物にtambさんが投稿されている
「会いに行くよ」を一度ご覧になってからお読みください





再会と約束







僕とレイは4年前に結婚して
こないだ……遂にレイが妊娠した……





「レイ、動物園に行こうか」





リツコさんからさんざん注意されていた、レイがうまく妊娠できない危険性について……
だから僕はレイに子供が欲しいって言わなかった
レイもそれがわかっていたからレイも僕に子供を作ろうって言わなかった



でもそんな中……いや、もっと前からレイは戦っていた



レイは大学で生物工学を専攻していた
僕が当時レイから生物工学を専攻すると聞いたときは正直エヴァの呪いだと思っていた
僕らはエヴァという呪いから逃げることができないと勘違いしていた




『赤ちゃん……作りましょう……』




レイは自分の運命と戦うために生物工学を専攻したのだった
自分がそう生まれてきたのならその中でどうやって幸せになるか?
その方法をずっと模索していた
そしてリツコさんたちと協力して運命を切り開いたんだ……





「しんじ、元気にしてるかしら?」

「きっと元気にしてるさ」




大分前の話だけど、僕らは象を拾ったことがある
名前は”しんじ”
僕はまぎらわしいって言ったんだけど
レイはひらがなにすれば間違えないって言ってこの名前になった





「レイ、お腹大丈夫?」

「ええ、ちょっと重たいけど、まだ平気……」




レイのお腹は結構ふくらんできていた
レイを動物園に誘ったはいいけれど
僕が休暇を取るのに手間取って、気がつくと大分ふくらんでしまった

僕は今フォースインパクトを防ぐために世界を飛び回っている
サードインパクトは落ち着いて僕らは普通の生活を送っているのだけれど
世界には相変わらず心の補完を望む人たちがたくさんいて
ネルフやゼーレのデータを裏で入手してはフォースインパクトを起こそうとしている
規模の方もまちまちだ
サードインパクト並の世界規模で起こそうとしている人たちもいれば
愛する人とだけLCLに溶けることを望んでいる小規模なものもある
僕はサードインパクト経験者として壇上で一般人向けに論弁したり
あるいは、組織として組織同士で話し合ったりしている
僕としてはこんな仕事が一日も早くなくなることを祈っている
こんな仕事をしているってことは
ひとりぼっちのつらさを抱えている人間がごまんといるってことだから……





「「お久しぶりです」」

「あ、シンジさん、レイさん!」




僕らが象舎に着くとそこに田中さんがいた
昔しんじを引き取りに来たのがこの人
今も相変わらずこの仕事を続けていてくれていた





「おふたりとも、いい時に来ましたね」

「何かあったんですか?」

「ええ、しんじがパパになるんですよ!」

「「!!」」

「こないだ妊娠したのがわかったんです
 象が動物園で妊娠するのは非常に珍しいので、本当によかったですよ!」





満面の笑みで”しんじ”のことを語る田中さん
僕はとても嬉しかった





「田中さん、実は私もなんです」

「え?」

「私のお腹の中にも……シンジの子供がいるんです」

「どっひゃー!」




古いな……
田中さんの驚き方に僕は思わず笑ってしまった





「するってーとー、おふたりは結婚されてたんですか?」

「ええ、結婚したのは4年も前です
 ただ、赤ちゃんには恵まれなくって」

「へー、それじゃあしんじと一緒ですな」

「一緒?」

「ええ、さっきも言いましたが象が動物園で妊娠するのは非常に珍しいんです
 それに人間なら十月十日ですが象は一年十ヶ月、約二年もかかります」

「そ、そんなに……」

「あの巨体ですからね、人間なんかよりよっぽど大変ですよ」






人間……なんかより……






「それに嫁さんの方がなかなか動物園に馴染めなくって……
 今はしんじと一緒に歩き回ってくれますが
 来た当時は小屋でずっとうずくまって出てこなかったり、エサも食べなかったり……
 しんじとの間に子供ができて本当に嬉しかったですよ
 ……そうそう、しんじの嫁さんの名前、何だと思います?」

「名前、ですか?」

「これ聞いたら驚きますよ?
 いいですね?」

「「……」」

「れい……です」

「「!!」」

「私も初めは耳を疑いました
 他の動物園から移ってきたんですが、まさかこんな名前とは……」

「「……」」

「運命ってやつは面白いですよね」





僕らはしばらく田中さんと話して、それからしんじとれいを眺めていた






「驚いたね、まさかしんじがパパになってたなんて」

「ええ、私も負けてられないわ」





笑みながらそう言うレイ
この笑顔、この台詞の裏にはたくさんの涙と多大な努力があるのを僕は知ってる






「あ、しんじたちが気がついた」






(シンジお兄ちゃん、レイお姉ちゃん!
 聞いてよ、僕今度パパになるんだよ!)

『ええ、田中さんから聞いたわ』

(それにね、僕のお嫁さんの名前……)

『れい……って言うんでしょ?』

(うん!
 ほら、れい、挨拶して!)

(は、はじめまして……)

『はじめまして』

(私……れいって言います
 おふたりのことはしんじから何度も伺ってます)

『ありがと』

(私……ママになるんです
 でも、不安で不安で……)

『そうね、私もママになるからよくわかるわ』

(私なんかがママになっていいんでしょうか?
 どうしよう……流産とかしちゃったら……)

『田中さんたちもいるからきっと大丈夫』

(でも、でも……)

『れい、あなたはひとりじゃないわ
 しんじがいて、田中さんがいて、仲間がいて……
 それに私たちもいるわ』

(は、はい……)

『不安になったらみんなのこと思い出して
 必ずうまく行くわ』

(あ……ありがとうございます……)

『また今度会いましょう
 そのときは私も赤ちゃん連れてくるから』

(はい……では私たちも赤ちゃんと一緒にお待ちしてます)

『約束よ』

(はい、約束……)





しんじたちと”会話”した後、”しんじ”と”れい”をバックに写真を撮ってから動物園を後にした




end





はじめまして、whiteと申します
この話の原作は言わずもがな、『会いに行くよ』です、昔何度も読ませていただきました
さて、象の妊娠ですが作中にもある通り、約2年かかります
インターネットで検索してみるとその過程が掲載されているページがありまして
私不覚にも少し涙ぐんでしまいました
24時間体制はもちろんのこと陣痛促進剤を打ち込んだり色々大変なようです
レイはDNAがDNAなので妊娠には苦労してもらいましたが
象の妊娠を調べてみるとやはり『命』というものはそれだけ大変なようです
苦労してるのはレイだけではなかった、、、
作者の感想としてはこの作品を書くことでそのことを知ることができたのが非常に嬉しかったです
みなさんにもそんな嬉しさを感じていただければこの作品は成功です
どうもありがとうございました!



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