恋人の居る風景


ある日曜日の朝、一人の少年が駅前で佇んでいた

その少年が腕時計に一瞬視線を走らせる

途端に落ち着かない様子を見せ始める少年

腕時計に視線を走らせては改札口の方を窺い、恐らく待っているのであろう人影がなかったことにどこかしら安堵の含まれた失意の溜息を吐く

そんな少年の後ろに忍び寄る影

影は少年に抱きつくと

「誰を待ってるのかな〜、シンちゃん?」

悪戯が成功して満足しているような笑顔でそう問い掛ける

「レ・レイ!?」

抱きつかれ、シンちゃんと呼ばれた少年は慌てて振り返る

「えへへ〜♪」

振り返った先には印象的な蒼い髪と、紅の瞳を持った少女が人懐っこそうな笑顔を向けてきていた

「はぁ・・・・・」

思わず溜息を吐いてしまう少年

「あ〜!シンちゃん、今、溜息吐いたな!?そんな悪い子にはこうだ!」

そう言って、少年のわき腹を擽りだすレイと呼ばれた少女

少年はあまりのくすぐったさに身を捩りながら

「ご・ご免・・・あ、あはっ・・・わ・悪かったから・・・くすくす・・・や、やめてよ・・・うひゃひゃ・・・レイ・・・ははははは」

そう少女に懇願する

「そう言うなら止めてあげる」

少女は擽るのをやめると、少年の目の前に指を突き出し

「今度溜息なんか吐いたら、もっと酷い事するんだからね」

そう言いながら、少年の腕に己の腕を絡める

そんな少女の行動と、彼女の体温と柔らかさに顔を赤くして

「う、うん・・・・・」

と頷く少年

そんな少年の態度に満足したのか、少女は明るい笑顔を浮かべると

「行こ!シンちゃん!」

そう言って、少年の腕を引っ張った





「まだ時間あるね」

少年が腕時計を見て、少女に話し掛ける

「うん、そうだね」

少女も腕時計を見ると、そう答える

「じゃ、じゃあさ、そこに寄って行かない?」

そう言って少年が指差した先には、彼らがグループで遊びに出かける際によく待ち合わせ場所に使っていた喫茶店があった

少女は笑顔になると

「うん、寄って行こっか」

そう返す

カラララン・・・・・・

ドアに付けていたベルの音に振り向くマスター

入ってきた二人を見ると、ニヤッと笑って

「おや?今日は二人でデートかい?」

そうからかう

そんなマスターのからかいにも

「は、はい」

と、真っ赤になりながらも生真面目に答える少年と、まるで茹蛸のように真っ赤になる少女

そんな二人の様子におやおやといった表情になると

「そうか、それじゃこれは二人の初デートを祝して、俺からの驕りだ」

そう言って、少年にはカフェオレを、少女にはミルクティーを差し出すマスター

「え?い、良いんですか?」

少年はそんなマスターに驚いた顔を向ける

「俺に報告するために寄ってくれたんだろ?なら良いさ。まあ、ゆっくりしていってくれ」

ウィンクしながらそう言うマスターに

「「はい」」

そう答えると、席に腰を落ち着ける二人

二人が見せる初々しさに思わず眩しげに目を細めるマスター

そんなマスターの好意に甘えて、二人はここで時間になるまで過ごす事にした





「面白かったねー、シンちゃん!」

笑顔で振り返りながら少年に話し掛ける少女

そんな少女に

「うん」

と、笑顔で返す少年

少女は先ほど一緒に見た映画にかなり興奮しているのか、自分が感動した場面、自分が気に入った場面をいちいち挙げて少年に話し掛ける

それにもまた、いちいち笑顔で返したり、相槌を打つ少年

少女の話は、いつまで経っても終わらないかと思われるほどに続く

少女の話が一段落ついた所で少年が問う

「次はどうしようか?」



「遊園地行こ!遊園地!」

少年の問いにそう答える少女

「そうだね、それじゃ遊園地に行こうか」

そう言って、少女に自然に手を差し出す少年

そんな少年の仕草に驚きながらも、顔を赤くしつつ手を重ねる少女

少年は少女の手を引くと、遊園地に向かって歩き出した





「シンちゃ〜ん!早く、早く〜!」

明るい笑顔で振り返りながら、手を振って先を駆けて行く少女を見て、妙に嬉しくなる少年

少女が見せるあどけなさがそうさせるのかもしれない

手を振り返しながら、ゆっくりと少女を追いかける

そんな少年に痺れを切らしたのか

「もう、シンちゃん!早く、早く!」

そう言って少年の元に返ってきて、腕を引っ張り出す少女

少年は苦笑すると、少女に引っ張られるがままに駆け出す

二人(少女?)がまず向かった先はお化け屋敷

「こ、ここに入るの?」

すでに及び腰になっている少年

「うん!」

逃げ腰になっている少年の腕を引いて建物の中に入っていく少女

当たり前だが、建物の中は真っ暗だった

恐々と進む二人

前方からは先に入ったのであろうカップルやらの悲鳴が聞こえてくる

そんな悲鳴や数々の仕掛けに、次第に少年の方に擦り寄っていく少女

少年はそんな少女を優しく抱きしめると

「大丈夫、僕がレイを護るから」

そう耳元で囁いた

そんな少年の言葉に嬉しくなる少女

少年に擦り寄ると、その頬にKissをする

「レ・レ・レ・レ・レ・レイ?」

少女の行動に慌てふためく少年

「うふふ、ありがと♪私のナイト様」

少年の慌てぶりを堪能しながらも、抱きつく力を強くする少女に、少年は真っ赤になりながらも出口までエスコートしていく

湧き上がる嬉しさを伴いながら





「シンちゃん!次はあれ乗ろ!」

少女は、少年の腕を抱きかかえていた両腕の片方を離すと、次の乗り物を指差す

その先にある乗り物とは、「メリーゴーランド」

少年の頬が少し引き攣る

「ね、ねぇ、レイ。別の物に乗らない?」

少女の機嫌を損ねないように、提案する少年だったが

「嫌!」

の一言で切り捨てられる

そんな少女の調子に、しぶしぶ付き合う少年

メリーゴーランドは空いていて、すぐに乗れる事になった

「シンちゃん、乗れない!手伝って!」

メリーゴーランドの馬に必死に乗ろうとするが乗れない少女は、少年に助けを頼む

「じゃあ、行くよ」

少年は、少女の折れそうなほどに細い腰を持つと、そう声を掛けて持ち上げる

だが、スカートが少し捲れてしまい

「や、やだ、シンちゃん!パ、パンツが見えちゃう」

そう言って少女が足をバタつかせた

そんな少女に

「大丈夫!僕にしか見えないようにするから」

そんな少年の言葉に顔を赤くする少女

少年も、自分が言った咄嗟の言葉に顔を赤くする

だが、そんな二人の耳に始動を告げるベルの音が届く

慌てた少年は、思わず少女と同じ馬に乗る

そのまま動き出すメリーゴーランド

二人は止まるまでずっと顔を赤くしたまま俯いていた





陽が西に傾き、空が赤く染まりだした頃

二人は遊園地の最後に決めていた観覧車に乗り込んだ

ゆっくりと上がっていくゴンドラに乗って、二人は今日一日の事を話す

中段に差し掛かった頃

「見て見て、シンちゃん!私たちの街がよく見えるよ!」

そう少女が少年に話を振る

「本当だ!」

少年も少女の言葉に外を眺める

二人で街並みを指しながら話をしていたとき

ふと、二人の視線が絡み合った

ゆっくりと近づく二人の唇

それを落日が暖かく見守っていた・・・・・





後書き

なんとか、競作作品書き上げました(笑

しかし、ラヴ2物は書けない(T_T)

読むのも実は苦手だったり(笑

でも、それなりにラヴ2に書けたのではと・・・・・

それでは

タッチでした


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