それの理由──エヴァンゲリオン零号機、暴走

エヴァンゲリオン零号機起動実験
 そびえ立つ巨人
 それと魂と同じくする少女
 少女はただ、彼女の“絶対”の言うがままに
 命をも投げ出す
 しかし
 彼女自身がそれに不安を感じ始めた時
 僅かな波紋は心を乱し
 彼女は一つの壁に遭う


「パルス逆流! 中枢神経素子にも拒絶が始まっています!」


 拘束をほどき、自由を求める巨人
 しかしどこか苦悩し、自由を求めた腕は動かない


「コンタクト停止! 6番までの回路開いて!」
「神経拒絶、ダメです! 零号機、制御不能!」
「実験中止! 電源を落とせ!」
「零号機、予備電源に切り替わりました! 活動停止まで、後35秒!」


 巨人は背中の鎖から解き放たれ
 ついに残りの時間寸刻を惜しむかのように荒れ狂う
 拳を、中の少女にとっての“絶対”へと向ける
 しかし“絶対”は、避けようともしない


「司令、危険ですので下がってください!」
「オートイジェクション作動!」
「いかん!」


 突如巨人から排斥された魂の座
 それを追い、“絶対”は駆ける
 緩衝も無しにぶつかり、そして墜落した魂。


「レイッ!」
「ワイヤーケージ、特殊ベークライト急いで!!」


 オレンジの凝固液が射出され、高温の中“絶対”は少女を求め走る
 しかし少女には既に気付くきっかけを掴んでいた
 彼が本当に心配しているのは自分ではないと


「レイ! 大丈夫か、レイ!」
「はい……」
「そうか、よかった……」


 そう掛けられた安堵の声すら、自分に向けられてはいないことに

あとがき
これは本来、連載『Memories』のSTAGE.1になるべきだったもので、実際公開当初の数日間はこれが公開されていました。
しかしながら今回、「これじゃこの後続かないぞ」ということで曲折を経て大幅、というかほとんど書き直し。
もったいないので(汗)通常作品としての公開となりました。
そのため、内容的に被る点はご容赦を…

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新世紀エヴァンゲリオンは(株)GAINAXの作品です