第2話 『使徒対決』



 NERVに新しいパイロットが入ってきた。彼の名前は碇シンジ。なんとあの碇司令の実の息子らしい……でも気弱でおどおどした感じで、父親とは全然似てないぞ。

 発令所仲間の間では、これは遺伝子の神秘がなせる技だと言う噂でもちきりである。それほど性格の違う親子なのだ。

 昨日までエヴァンゲリオンの存在すら知らなかった彼だが、セカンドインパクト以降、全国の小・中学校に一斉に行われている血液調査の結果、並外れたエヴァとの相性の良さが認められ、突然NERVからサードチルドレンになるよう要請されたのだ。

 エヴァの事についてできる限り赤木博士から簡単な説明を受けるシンジ君。俺もエヴァのことはまだほとんど知らないので、一緒に話を聞くことにした。

 「未知の生物"使徒"と戦うために生み出された人の造りし究極の人型決戦兵器エヴァンゲリオン。これはその初号機。開発計画は極秘裏に行われたわ」

 「その"使徒"ってのは何者なんです?」

 「それが私達にもよくわからないのよ。はっきりしているのは、15年前のセカンドインパクトの本当の原因は隕石の落下じゃなくて、使徒の仕業だって事ね」

 セカンドインパクトの原因が隕石の落下じゃない……マ、マジかよ。歴史の教科書にも書いてあることなのに。

 「今年は使徒が15年ぶりに再来襲してくると言う話もあるわ。極端な話、明日使徒が攻めてきても何らおかしくないのよ。だからシンジ君、今から早速訓練に励んで貰うわよ」

 「はっ、はい」

 これは後になって知った事だが、彼を育てた『先生』、いわば義理の両親ともいえる人は碇司令からもらった養育費が目当てでシンジ君を預かっていたらしく、本当の愛情を何もしらずにシンジ君は育ったらしい。

 シンジ君には居場所がなかったのだ、そして今いる居場所さえもエヴァに乗らないと追い出されてしまうのだ。



 こうしてサードチルドレン碇シンジは誕生した。以後、始めは何も知らなかった少年少女達の1年間に渡る激動の戦いが繰り広げられる事になる。

 友情、恋、涙、トラウマ、後悔、贖罪、裏切り……戦いの中で様々な感情が交錯する。そし、常夏の日本にふさわしく熱い暑い日常になる。







 俺はレイと一緒に住もうかどうか迷いに迷った末……結局同居する事にした。3日前まで赤の他人だった14歳の少女と、22歳の男が同じ屋根の下で暮らす。世間からどんな疑いの目で見られるか想像はついたが、レイを変えるためにはやむをえない。

 一緒に買い物に行った時にわかったのだが、なんとレイは、持っている服が、制服とプラグスーツだけだったのである。

 俺とておしゃれにあまり関心がある方ではないが、いくらなんでも限度ってもんがあるだろうが! 

 同居……そう、これはレイの究極の非常識を少しでも改善するための最終手段なのである。生ぬるい方法ではアレを直すことはできやしないのだから。

 いいな、俺がロリコンだからじゃないぞ、わかってるよな読者の皆さん。

 「そういうわけで、今日から俺とレイは家族だ。よろしくなレイ」

 「……」

 「こら、何か返事しろ!」

 「了解しました」

 「おいおい、それは家族への挨拶じゃない! こういう時は例えば、『これからもよろしくお願いします』とか……もうちょっとまともな返事をしろ!」

 「……こちらこそよろしくお願いします」

 はぁっ〜、なんだかなぁ。コイツこれからも非常識な行動を連発するのは間違いないな。







 エヴァのパイロット、ファーストチルドレン綾波レイと出会ってから1週間が経ったところで、"サキエル"と名づけられた第3使徒が早くも日本に侵攻して来た。

 戦略自衛隊がこれを迎え撃ったが、通常兵器はおろか切り札のN2地雷投下も効果がなく、30名以上の死者を出す無残な惨敗となった。その惨状を見た国連は使徒に対する指揮権限をNERVへと移行した。

 人類が作り出した最新兵器が何も通じない巨大生物。これが使徒……レイが戦う事になる相手なのか。

 「ここは敗北を認めざるをえまい。だが君なら本当にあの化け物を倒せるのかね?」

 「ふっ、ご心配なく。そのためのNERVです」

 眼鏡を人差し指で整えながら自信満々に答える碇ゲンドウ。頼りがいがあると言うよりも、はっきり言って戦自への嫌味である。ただでさえ利害関係が対立して仲の悪い両組織なのに、これでは火に油をそそぐようなものだ。

 現在、零号機は先の事故のために凍結中のため、とりあえず出番はない。俺自身は発令所から様子を見守る他なかった。

 目標はなおも第3新東京市に向かって進行中だ。

 「シンジ君、準備はいいわね。出撃するわよ」

 「はい、ミサトさん」

 『エントリープラグ注入、主電源接続。全回路動力伝達、A10神経異常なし。進路クリア、オールグリーン』

 オペレーター3人組からエヴァ起動の結果が次々と報告される。初号機に異常なし。最終安全装置も解除。そして高速エレベーターに乗り地上へと送り出される。

 いよいよ始まる。使徒と人間、その互いの生き残りをかけた最初の激突が。

 俺が直接戦うわけではないのだが、それでも背筋に巨大な圧力を感じる。だからエヴァに乗っているシンジ君にとってはなおさらであろう。

 「シンジ君、まずは落ち着くために歩いてみて」

 「はっ、はい」

 まだエヴァを起動することが昨日ようやく可能になったばかりのシンジ君。だから、単純に『歩く』と言う動作をするだけでも一苦労なのである。

 「歩く、歩く、歩く、歩く、歩……く」

 それでも『歩く』と言う言葉を口に出しながら、エヴァを動かす事にはなんとか成功したが、今度はその歩みを止めることができなくなってしまった。

 軽いパニック状態に陥るシンジ君。結局最後には、止まるどころか敵に向かって走り使徒へ体当たりをしてしまった。しかも自分が前のめりになって倒れてしまっただけで、使徒は直立不動のままである。

 まずい、誰がどう考えても勝てそうにない。使徒が動けない初号機に対して、腕を振り下ろしてパンチ攻撃をする。攻撃はエヴァをまともに直撃する。シンジ君の苦痛の叫び声が発令所内に響き渡る。

 赤木博士によると、エヴァのフィードバック機能はシンクロ率が高ければ高いほど、まるで自分そのものであるかのようにエヴァを動かせるようになると言う利点があるが、それは同時にエヴァが傷つくとパイロットまでダメージを受けてしまうと言う欠点になってしまうらしい。

 連続攻撃で何も反撃できず一方的に殴られっぱなしの初号機。通常兵器で何とかシンジ君を援護しようとするが、弾道ミサイルは使徒にあたらず、なんと初号機に命中。事態をますます悪化させる事になってしまった。

 悔しそうに歯ぎしりしながら、葛城作戦部長が敗北を認める命令を出す。

 「仕方ない……。シンジ君、A−37地点から退却よ!」

 だが、今、シンジ君は逃げることすら出来ない状態だった。サキエルに赤ん坊をおんぶするような形で持ち上げられると、そこから一気に地上へと叩きつけられる。

 「うわわわわわわぁぁぁぁぁ〜〜〜〜」

 あまりの衝撃に口から血を吐き出すシンジ君。やばい、これでは勝つどころか彼の命が危ない。その残虐な光景を見た潔癖症のオペレーターマヤは気分が悪くなって画面から目をそらしうつむいてしまう。

 「司令、レイの出撃許可を!」

 そうだ、零号機は万全の状態には程遠いらしいが、もはやそんな贅沢は言ってられない。レイの事は心配で心配で仕方ないが、もうあいつを出すほかない。

 「ダメだ。それはできない」

 おいおい、状況がわかっているのか碇司令。おまけに今戦っているのは自分の息子なんだぞ。

 「しかし、司令」

 「不許可だ。このまま初号機だけで使徒を殲滅しろ」

 初号機だけで何をどうやって使徒を倒そうって言うんだ、あの男は。

 なんだ使徒が止まってうなり声を上げている。……もしかしてパワーをためているのか。げっ、体内に蓄えたATフィールドを一気に開放するつもりだ。

 「シンジ君、ATフィールドを張って!」

 エヴァもATフィールドを出して、敵のATフィールドと中和させようと言う葛城作戦部長のアイデアだったが、今のシンジ君にはまだそんな事をできる力はなかった。

 『ピカァァァァ〜〜〜ンンンン』

 モニターに眩しい閃光が映し出される。史上最強のバリアの開放……初号機は漫画でしかありえないようなスピードで50M以上も吹っ飛ばされる。

 「初号機パイロット意識不明。心音脈拍共に非常に危険な状態です」

 「なんですって。作戦中止、パイロットの保護を急いで」

 しかしエヴァは頭部破損、制御神経も次々と断線していき、MAGIからの命令も一切受け付ける事が出来ない状態であった。これではシンジ君の救出に行きたくても行けない。

 バカ親父、これじゃ零号機を出さないと、本当にシンジ君死んでしまうぞ。だが、その時エヴァの目が怪しく光った。そして不気味な雄たけび、なんと完全沈黙したはずの初号機が再起動したのだ。

 「そ、そんなバカな。動けるはずがありません……ま、まさか暴走」

 なに〜、エヴァに暴走なんてものがあるのか。一体、初号機はどうなるんだ!? 暴走したエヴァは今まで不可能だった、ATフィールドを張り、位相空間なるものを中和することに成功したらしい。

 今までの3倍以上のスピードで使徒に向かっていく初号機。使徒の攻撃も鮮やかにばく転でかわすと、そのまま空中で一回転して、使徒の頭に向かってジャンピングキック。

 これが使徒にまともに命中する。敵はダメージが大きいのか仰向けになって倒れたままでピクリとしか動かない。形勢は完全に逆転、戦いはエヴァが圧倒的に優位に立った。

 その後は一方的にエヴァが使徒に攻撃を仕掛ける。なすすべもなくダメージが蓄積されていく使徒。だが、最後の抵抗とばかりにエヴァに必死に抱きつくような態勢をとる。

 「まずい、アレは自爆するつもりだわ」

 赤木博士が叫んだ直後に使徒はエヴァを完全に巻き込んで、自らを犠牲にした大爆発を起こす。その周囲には物凄い噴煙が巻き上がる。

 果たしてシンジ君はどうなってしまうのだろうか? 映像は真っ白な煙が映し出される他は何も見えない。

 「パイロットは?」

 「映像回復。神経再接続、グラフ正常位置。パイロット生存を確認、意識は失っていますが命に別状はない模様です」

 ふぅ〜、よかったぁ。……しかし、レイにもこんなに恐ろしい戦いが待っているのか。

 戦慄が俺の背筋を駆け抜けていった。



 今回はレイの出番はなかったが、こうして使徒と人間の壮絶な戦いの第一ラウンドは幕を閉じた。だが、俺達の真の試練はまだまだこれから来そうな予感がする。







 壮絶な戦いの緊張感を解かれて家に帰ってみると、今日の戦いについてふっと気になることを思い出した。碇司令が途中で零号機を出撃させなかった理由である。

 もしかしてアレは予め暴走を計算していたからああしたのだろうか?もしもそうなら、始めからシンジ君の操縦能力など期待せずにエヴァの本能(?)に頼っていたことになる。

 いろんな意味で恐ろしい事だ……。

 「レイ、司令ってどんな人だ?」

 隣にいた司令をよく知る少女に聞いてみた。

 「とても暖かい人」

 「……そっか。他には?」

 「特にないわ」

 碇司令あのサングラスの先にはどんな世界が見えているのだろうか?黒いレンズは俺達にその中を見せることを阻んでい……る。





後書き

 書けば書くほど、綾吉さんのサイトの趣旨に全然あってないよこの作品(汗) 俺が頭の中で描いている先の展開もあのレイちゃんに殺されそうな話です。あうあう、一体どうしよう?とにかく無理やりLRSにするぞ(爆)



次回予告 (声:綾波レイ)

 「世間を何もしらないレイに積極的に人と関係を持つように促す前原進。その成果が現れ、レイは徐々にその心を開いていく。ようやくここに碇君と私のLRSな関係が始まる。綾波育成計画、第3話『LRSの始まり』、次回も……見てください。感想メール送ると執筆速度が速くなるらしいわ」





綾吉 :トマトさんからの投稿作の2話でした
レイ  :碇君・・・・・・・
綾吉 :次からはLRSだってさ。良かったね
レイ  :碇君・・・ハッ、こうしてはいられないわ!お見舞いに行かないとっ!!そしてそこから二人の愛が始まるのよっ!!
綾吉 :行っちゃったよ。シンジここにいるのに・・・
シンジ :綾波も意外と気が短いから・・・
綾吉 :浮気なんかしたら殺されるな・・・
シンジ :シャレになってませんよ、ソレ・・・
綾吉 :次回からはLRSな展開になるそうなので、是非トマトさんにメールを送って続きを催促しましょう(笑)
シンジ :お願いしますっ(^^)


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