俺は猫だ。 名前はまだない。恐らくこれからもないだろう。 まぁ、そんなことはどうでも良い。 俺はいわゆる、子猫で捨て猫だ。 チャームポイントは雪の如く真っ白な毛皮と炎のように輝く深紅の瞳。 人間のいうところのアルビノってやつだな。 なんでそんなことを知っているかって? まぁ、とかくこの世は謎だらけってことさ。 唐突だが、俺は人間の子供が嫌いだ。 人間自体それ程好きじゃないが、子供って人種はそれに輪をかけて大嫌いだ。 自己満足と甘えだけで勝手にこっちに干渉してくるってのはかなり鬱陶しい。 (ん?…噂をすれば、って奴か? ) 突如、俺に背後から何かの影がかかる。 振り向いて見上げるてみると、予想通りそこには人間の子供が立っていた。 中肉中背。やや中性的な顔立ちに、黒い髪と黒い瞳。 普通って字が服を着て歩いてるような奴だな、と俺は思った。 「君、独りなの? 」 (はいはい。そうですよ) 奴は幾度尋ねられたであろう質問を俺に投げかけた。 もはや鬱陶しさすら感じるその台詞に俺は半ば投げやりな答えを返した。 まぁ、奴には『ニャー』としか聞こえないんだろうけどな。 「そっか…君も捨てられたんだね…」 どう受け取ったか知らんが妙に儚げな口調で奴はそう呟いた。 こいつ…過去になにかあったのか?(汗) (どうでも良いがその負の感情を込めまくった瞳と口調を何とかしてくれ…) 「ありがとう…慰めてくれるんだね」 さっきの思考はどうやら鳴き声となって口外に出ていたらしい。 「そうだよ…皆勝手過ぎるんだ…ふふふっ…そうだよ、皆死んじゃえば良いんだ…」 (………(汗)) 「ふふふふふっ♪ ……あ、いけない。夕食の準備しないと。…二人とも手伝わないくせに煩いしなぁ…」 (…なんか知らないが…苦労してるんだな、お前(泣)) 「じゃあね、今度はミルクかなんか持ってくるから!」 そういって奴は立ち去った。 どうやら人間の子供の中にも極稀に例外はいるらしい。 (ふぅ…) 俺は大きく溜息を吐いた。 だが緊張と疲労は解れるどころかむしろ憂鬱感とともに全身に広がっていく。 (なんか疲れたな…夕食でも捕りに行くか…) 俺は住処であるダンボールから這い出ると最寄のゴミ捨て場へと向った。 空はうっすらと紅に染まり、数羽の烏がそこを横切っていく。 てくてくと歩く俺に通り過ぎる人々が振返る。 まぁ、そうだろう。俺は自分の容姿にある程度自信がある。 それも子猫というのは古今東西、老若男女問わず大人気だ。 振返るな、というほうが無理というものだろう。 俺は立ち止まり、ニヒルに微笑を浮かべた。 そして俺が歩き出そうとしたその時、再び俺に何かの影がかかる。 (ん…なんだまたか?) 「わぁ、可愛いぃ〜♪ 」 (まぁ、見るのは無料だしな…じゃあ俺は夕食を捕りに行くから…って!) 俺の前に今度はロングの金髪に蒼い瞳をした少女が立っていた。 立ち去ろうとする俺を奴は無理やり抱き上げ頬擦りをした。 「ふかふかだぁ〜♪ 」 (どうでもいいが、もうちょっと他猫の話を聞けよ…) 「あんた、独りなの? 」 (どうでもいいからさっさと放せ!) 猫の話を聞かない態度に加え、まぁ言葉は通じないが… さっきの少年の時の疲労もあいまって俺はやや乱暴に答えを返した。 まぁ、奴にも『ニャー』としか聞こえないんだろうけどな。 「なによ! 人が心配してやってるのに生意気ね !」 俺の態度が気に入らなかったらしく、激しい口調で奴は言い放った。 「…それに、なんかあんたカラーリングがファーストに似てるわね…」 こいつ…ファーストって奴になにか恨みでもあるのか?(汗) (どうでも良いが、その親の仇でも見詰めるような瞳と口調はやめろ) 「ふふふ…そう、諦めがついたの? ファースト? …ふふふ…」 さっきの思考はどうやら鳴き声となって口外に出ていたらしい。 (しかもなんか変な風に解釈されてっ! ぅっ! ) 「ふふふふふふ♪ 」 (く、苦しい! 息が! 息がぁ!! ) 奴は何処か虚ろな眼で俺を見詰め、唐突に俺の首に掴みかかると躊躇なく首を締め上げた。 「ふふふふふふ♪ ……あ、いけない! 夕食の時間じゃない! …家事の事となると煩いのよねぇシンジは」 (げほっ! がほっ! (泣)) 「さぁてと! 夕食、夕食♪ 」 そういって奴は立ち去った。 どうやら人間の子供の中にも例外は多数いるらしい。 酷い目にあった…どうやら今日は厄日のようだ。 俺は夕食を諦め今日はさっさと寝てしまうことに決めた。 (…あぁ〜喉が痛い…) 俺は住処であるダンボールへと向った。 日は落ち、あたりはもうすっかり暗くなっている。 このあたりは街灯もあまりなく、廃墟のビルが乱立する寂しいところだ。 喧騒を好まない俺はここが割と気に入っている。 俺は立ち止まり、夜空に浮かぶ月を見上げた。どうやら今日は満月らしい。 夜風が俺の髭と耳を撫でて行く。俺は、暫し満月に見惚れていた。 その時、三度背後から俺に何かの影がかかる。 (こ、今度はなんだ!? ) 「………」 振り向くと今度はショートの蒼い髪に赤い瞳をした少女が立っていた。 学習能力優秀な俺の本能は無意識のうちに俺を数歩後退させる。 (や、やる気か! ) 俺は尻尾と全身の毛を逆立て、牙と爪を剥き、奴を威嚇した。 奴は構わずしゃがみ込むと、俺の瞳を覗き込むように見詰めた。 背に負う満月の月光が奴の髪にキラキラと幻想的に反射する。 奴は小首を傾げ、何処か憂いを帯びた瞳で俺の瞳を見詰め続ける。 「………」 (な、なんだ、なんだ! ) 「………あなたも独りなのね」 (だ、騙されないぞ! 俺はもう誰も信じないと決めたんだ! ) 今日一日の体験から俺はやや乱心気味に答えを返した。 まぁ…奴にも『ニャー』としか聞こえないんだろうけどな。 嗚呼だが、まるで母親に包まれているかのようなこの安らぎ… 傷ついた心が癒され、満たされていく感覚… 俺はやや潤んだ瞳でゆっくりと少女を見上げた。 「…おいしそう(ぽつり)」 うわああああああああああああん!!!(全速離脱) (裏切ったな! 俺の気持ちを裏切ったな!! あいつ等と同じように裏切ったんだぁあ!!!(号泣)) 「…冗談…なのに」 奴がなにか呟いていたが俺は構わずその場を後にした。 どうやら人間の子供というのは俺が思っていた以上にとんでもない生き物らしい。 Fin. カヲル 「…ありきたりだね」 刹那 「ぐはっ! (吐血)」 カヲル 「ところでなんで僕が後書きにいるんだい?」 刹那 「と、いいますと?」 カヲル 「ファーストチルドレンかセカンドチルドレンが務めるのが一般的だよ」 刹那 「まぁ個人的な理由さ」 カヲル 「それと、フォースチルドレンと僕の出番はないのかい? 」 刹那 「それは、機会とアイディアと反響があれば………或いは」 カヲル 「その程度の技量で投稿作を送りつけるなんて、僕にはわからないよ」 刹那 「(グサッ) で、では綾吉さん、サイト運営がんばって下さい!」 |