人々はサードインパクトで一旦はLCLへと還り一つとなった
が
シンジの願いにより再びATフィールドで分かたれた個として存在するようになっていた
ズレていた地軸も元通りとなり、日本には再び四季が戻ってきていて
此処ジオフロントでも(何故か)ご多分に漏れず、桜が咲いていたが
それが今回の悲劇(喜劇?)をもたらす原因となった・・・・・
酒徒襲来
〜お花見SS〜
サードインパクト後、蓄積されてきたオーヴァーテクノロジーを世界へと流布する為に、ネルフは今、学術機関へと姿を変えていた
還ってくる事が出来るのかと危ぶまれていた三賢者や加持も無事で、其処此処で涙の再会が行われたのは五年ほど前の話
シンジ達は高校を卒業後、NERVに就職していた
そして、今年もNERV恒例の「お花見宴会」が行われる・・・・・
「此処なんかどうかな?」
シンジの言葉に、同じく場所取りに来ていたレイが
「問題ないわ」
と答える
シンジはレイの言葉に頷くと、持参していたビニールシートを広げる
その中央にはシンジとユイの親子謹製お花見お重が鎮座ましまし、今や遅しと参加者を待ち受けていた
そんな中
「碇君・・・・・眠い・・・・・」
穏やかな風に眠気を誘われたのか、レイはシンジの肩に頭を預けてそう呟く
シンジはレイの方を向いて微笑むと
「それじゃ、皆が来るまで寝てたら良いよ。集まったら起こしてあげるから」
と囁く
そんなシンジに
「このままで良い?」
肩に頭を預けたまま、上目遣いで訊ねるレイ
シンジは
「うん」
そう答えると、レイの髪を優しく梳いてあげるのだった
「お待たせ〜♪」
ミサトの底抜けに明るい声がシンジの耳に届く
シンジはミサトの方に向くと、ミサトを先頭に、ユイ、キョウコ、ナオコ、リツコ、マヤ、マコト、加持、青葉が自分の方に来るのが見えた
口に人差し指を持って行き、静かにといったジェスチャーをする
そんなシンジの仕草に首を傾げるミサト
が、近付くにつれシンジの肩にレイの頭が乗っている事が判り
その顔はニヤリとしたものに変わる
「あっら〜!シ〜ンちゃ〜ん?」
おもちゃを見つけた!そんな表情へと変わったミサトがシンジをからかう前に
「シンジ!ちょっとそっちに行って」
ユイがシンジの肩からレイの頭を起こさないように持ち上げるとそう言って、シンジをお尻で押して二人の間に身体をこじ入れ、レイを膝枕する
そんなユイにシンジが抗議しようとした時
「ユイ〜、シンジ君が可哀想じゃない、レイちゃんを取り上げちゃうなんて」
キョウコの声が聞こえると共に後ろから腕が伸びてきて首に軽く巻きつく
「キョ、キョウコさん!?」
突然の事に驚くシンジ
振り返るとニコニコとしているキョウコの顔がすぐ間近にあった
シンジがその事に顔を赤くして俯くと
「あらシンジ、浮気?」
ユイがシンジの方に振り返り、からかう
「な、何言ってるんだよ母さん!?」
シンジが慌てて抗議すると
「あら〜シンジ君、やっぱりこんなおばさんじゃダメなの?」
と回した腕に少し力を込めて胸をシンジの背中に押し付けるキョウコ
背中から感じる柔らかさと暖かさに
「あうあう・・・・・」
何も言えなくなるシンジ
其処に
「ちょっとママ!いいトシしてシンジに何ちょっかい出してンのよ!」
怒れる大魔神と化したアスカが現れた
アスカの後ろにはカヲル・トウジ・ケンスケ・ヒカリの姿が
「アンタも!こんなおばさんに抱きつかれたからってデレデレしてンじゃ無いわよ!」
シンジに噛み付くアスカ
「ご、御免」
ついつい謝ってしまうシンジに
「まったく!」
とブツブツとまだ文句を言いながらもユイと反対側のシンジの隣に腰を下ろすアスカ
アスカの隣にはカヲル
そんなアスカの姿にトウジやケンスケ、ヒカリは苦笑しつつ、適当な所に腰をおろす
「綾波、皆来たよ。綾波」
ユイに膝枕されているレイを起こすシンジ
シンジの声にレイが目を開けると
「さ〜て!司令と副司令はお仕事で遅れるそうだから始めちゃいましょ」
ユイはそう言って立ち上がり、シンジの隣をレイに譲る
レイはシンジに少し不満そうな視線を送るとユイに
「ありがとう・・・・・お母さん」
頬を染めながら礼を言う
五年経っても変わらないそんなレイの様子に
「御免ね、シンジから離しちゃって」
と笑顔で謝るユイ
そんなユイの言葉に、耳まで真っ赤になるレイ
二人の遣り取りにメンバー全員の胸に暖かいものが流れ込んでくる
が
そんな雰囲気をものともしない者もいるわけで・・・・・
「ほらほら、皆コップ持ってコップ」
ミサトが全員にビールを注いで回る
ミサトの行動に全員が呆れるものの、ビールが行き渡り
「それでは、乾杯!」
ミサトの音頭で乾杯が行われると、宴会が始まる
ぐい〜っと何杯も飲み干していくミサト
ミサト程でないにしても加持もリツコも結構なペースで飲んでいる
三賢者とマヤ、マコトは普通なペースで
シンジ達元チルドレンとケンスケ、ヒカリはチビチビと飲んでいる
いや・・・・・・
「カヲル〜、アタシの酒が飲めないって〜の?」
一人ハイペースで飲んでいたアスカがカヲルに絡んでいる
「ア、アスカ、落ち着いて」
ヒカリがアスカを押し止めようとするのだが
「ヒ〜カ〜リ〜!アンタ、アタシの邪魔をするって〜の?その煩い口塞いでやる」
アスカはそう言うと
ぐびっ!
口一杯にビールを含むと
「んぐ!んん〜!」
ヒカリの口を口で塞いで飲ませる
固まるシンジとレイ・カヲル、いや〜んなポーズをするケンスケ、トウジ
ぽん!
そんな音がしそうな感じでアスカが口を離すと、顔を赤らめ、ボ〜ッとした表情をしたヒカリの顔が現れた
トウジが慌ててヒカリの傍に駆け寄り、目の前で手をひらひらと振ってみても反応しない
「イインチョ、イインチョ」
呼びかけてみても反応しない
周りを見回して、意を決すると
「ヒカリ!」
と声を大きくして呼びかける
その声にはっ!とするヒカリ
が、すぐにトロンとした目になると
「トウジ〜」
とトウジに擦り寄り
ぐびっ!
とビールを含むと
ぶちゅ〜!
トウジの唇に唇を重ねる
「んが!」
トウジが驚き口を開けた瞬間、送られてくるビール
それを
ゴクッゴクッゴクッ
嚥下するトウジ
ちゅぽん!
そんな音がして二人が離れたかと思うと
再び
ぐびっ!ぶちゅ〜!ゴクゴク
を繰り返す
止まらなくなる二人
そんな二人を羨ましそうに見ていたレイが
クイックイッ
シンジの服の裾を引っ張る
「何?」
と振り返ったシンジに唇を重ね、服を引っ張る前に含んで置いたビールをシンジに送る
まさか自分までもがと思っていなかったシンジは驚きに固まる
ビールを送り終えたレイは唇を離すと
「美味しい?」
頬を赤らめながらシンジに聞いた
それにただ頷くだけのシンジ
「じゃあ、今度は碇君から・・・・・」
上目遣いでそうお願いしてくるレイに抗えず、コックリと頷くとシンジもビールを口に含み、レイに口移しで飲ませる
勿論、そんな事をしていれば黙っていない人物もいるわけで
「カヲル〜!アタシにも〜!」
アスカが負けん気を発揮してカヲルに迫る
そんなアスカに苦笑しつつ口移しで飲ませるカヲル
既に其処此処でラヴラヴフィールド全開である
そんな六人を見て
「平和だね〜」
そう言って涙を流しつつ、一人空を見上げるケンスケであった
「ほらほら、もっと飲みなさいよ、リツコ!」
グラスが開くたびにコップにビールを注ぐミサト
リツコも結構なハイペースなのだが、ミサトはリツコが一杯飲む間に二、三杯は空けている
その様子を呆れたように眺めるマヤ
「一体・・・・・葛城さんの何処にアレだけのビールが入ってるんでしょうか?」
思わず隣に座るユイに訊ねてしまう
「んっふふ〜!胸に決まってんじゃない!」
それに答えたのはミサト
自慢の胸を持ち上げて如何だ!と言わんばかりだ
そんなミサトを見て
「その分、アルコールが頭に行って脳が逝ってしまってるみたいね・・・・・」
ボソリと呟くリツコ
当然、それを聞き逃すようなミサトではなく
「あによ〜、リツコ」
と詰め寄る
「あら、別に私は何も言って無いわよ?アルコールの摂り過ぎで幻聴が聞こえたんじゃないかしら?」
ニヤリと笑いつつそう言うリツコに
「あ〜によ、本当に性格悪くなっちゃって!だから結婚できないのよ!」
と噛み付く
「あら、私は出来ないんじゃなくて、し・な・い・の・よ」
頬を引き攣らせながら笑顔でミサトに答えるリツコ
二人の間に火花が散る
が
「そうです!先輩はしないんです!葛城さんとは違います!」
マヤが酔った勢いか、二人の間に割ってはいる
すると
「あによあによ!マヤちゃんったらす〜ぐリツコの肩を持っちゃってさ〜」
ミサトが拗ねる
そんなミサトを見て
「ふ・・・・・無様ね」
と言うリツコと
「私は先輩の部下ですから」
と答えるマヤ
二人の息の合ったコンビプレイに
「ふんだ、ふ〜んだ!そんな事言ってるからマヤちゃんも結婚できないのよ!その内クモの巣張っちゃうんじゃない?」
ミサトはグビグビッとビールの大瓶を一本一気に飲み干すとそう言う
ミサトの言葉に
「クモの巣なんて張ってません!ね?先輩」
とリツコに振るマヤ
マヤの言葉に全員が引き、聞いてはならない事を聞いた
そんな表情で二人を見る
「な・・・・・何で私に振るの!?マヤ」
リツコが抗議するが、マヤからの反応はなく
その代わりに肩に重みが・・・・・
そう、マヤは眠ってしまっていた
「ちょっとマヤ、起きなさい」
肩を揺すってみるものの起きる気配はなく、それどころか
「うう〜ん」
そう言って身じろぐと、リツコの身体に腕を巻きつける
「せんぱ〜い、もう、だめですぅ」
と言う寝言と共に
「ちょっとリツコ〜?如何いうことか説明してよね〜」
ミサトの笑いを含んだ言葉に
「そうね、私も聞きたいわ」
と乗ってくるナオコ
助けを求めて周りを見回すと、全ての人が興味深そうにリツコの方を見ている
そんな状況に、近くにあったお酒のボトルを持つと
「やってられないわ!」
そう言って一気に呷る
「で、如何なのよ、リツコ」
ミサトがまだ聞き出そうとしたが
「ミサト、貴女、薬漬けになりたい?」
妖しくにやりとして眼鏡を煌かせながら何処からともなくアンプルを取り出すリツコ
「い、いや〜ねぇリツコ、ちょっとした冗談じゃない、冗談」
アハハと乾いた笑いを残して去っていくミサト
「そう、残念ね」
そんなリツコの呟きに流石のナオコも恐ろしかったと後に語った
大人側でおもちゃの居なくなったミサト
そのミサトの目がキランと光る
寝てしまったレイやアスカ、ヒカリを甲斐甲斐しく介抱するシンジの姿が目に入ったのだ
ケンスケは一人ブツブツと言いながら酒を呷っている
トウジはただ、ぼんやりとしているだけ
カヲルに至っては大人達の方に行って仲間入りしている
ミサトは振り返ると
「司令!構いませんね」
誰も居ない場所に向かってそう訊ねた
いや、誰も居ないはずだった
が
「構わん、奴((シンジ))を倒さん限り我々に幸せは無い」
何処からともなく現れたゲンドウが同じように何処からともなく現れた黒子達が設置した椅子に座り、同じく黒子が設置した机に肘を突いて何時ものポーズでそう答えた
その隣には当然のように冬月が
「良いのか?碇」
冬月の問いに
「フッ」
いつもの唇の端をちょっと持ち上げるだけの笑みで答えるゲンドウ
そう、この五年ゲンドウはシンジ達にユイを取られているので寂しくてしょうがないのだ
(い・・・・・何時の間に・・・・・)
冷や汗を流しつつミサトはそう思うものの
「は!」
敬礼をしてシンジ達の方に振り返りなおすと
「シ〜ンちゃ〜ん!!」
そう言ってシンジ達の方へ歩を進めた
その途端
「パターンパープル!酒徒暴走です!!」
今まで寝ていたマヤが突然起き上がり、リツコのほうに振り向いてそう報告するとまた眠りに就いた
マヤの報告を聞いていた冬月が右手に持っていたコップの中の酒を呷ると
「言い得て妙だな」
そう言う
それに対して組んだ手の下に置いたコップからストローを使って飲んでいたゲンドウが
「ああ」
と返す
リツコは一つ頷くとミサトの方に視線をやり
「やっぱり無様ね、ミサト」
そう呟いた
シンジが一人ゴミを片づけていると
「シ〜ンちゃ〜ん!!」
背筋がゾゾゾっとするような猫なで声で自分を呼ぶミサトの声が
コメカミに伝う汗を感じながら振り返ると、そこにはチェシャ猫な笑みを浮かべているミサトの姿が
「な・・・なんですか?ミ、ミサトさん」
シンジがミサトにそう聞いた時
「じゃ〜ん!」
何処からともなく取り出されたビール
ミサトがそれを口に含んでる間
「逃げなきゃだめだ、逃げなきゃダメだ、逃げなきゃ駄目だ」
と右手を握ったり開いたりしつつ呟くシンジ
ミサトが口一杯にビールを含み、襲い掛かってきた瞬間
「フィールド全開!」
そう叫ぶ
「んがっ!」
ミサトに口を塞がれ
「うごっ!ごぼっ!げぼっ!」
口の中にビールが流し込まれてくる
それを全て飲み込み、倒れこむ
ケンスケ!
そう、シンジの言うフィールドとはケンスケの事だったのだ
嬉しそうな表情でビニールシートに沈んでいるケンスケ
が
再びミサトはビールを口に含み出す
フィールドの使えなくなったシンジは後退る
いや、もう一つフィールドがあることはある
が、それを使った後の恐怖を考えると使えないのだ
思考している間に詰め寄ってくるミサト
シンジが危険を感じたその時
ばっこ〜ん!
そんな音と共にビニールシートに沈むミサト
その後ろから姿を現したのは何故かハリセンを持ったユイだった
ユイはシンジに抱きつくと
「大丈夫?シンジ」
と訊ねる
そんなユイに頷いて返すシンジ
「そう、良かったわ」
ユイはそう言って微笑むと、元の位置に帰っていった
「パターンパープル消滅・・・・・酒徒、沈黙しました」
そんな青葉の報告に
「・・・・・負けたな」
とゲンドウに囁き、杯を空ける冬月
「ああ、葛城君には失望した」
ゲンドウはストローから口を離すとそう言って、再びストローを咥える
暫くボーッとしていたシンジだったが再起動を果たすと
片づけを再開し、大体片付け終わった所でレイ達の近くに腰を下ろし桜を眺める
と、今まで寝ていたはずのレイが起きだし、シンジの隣に来ると
「桜・・・・・綺麗・・・・・」
そう言ってシンジの脚を枕にまた寝始めた
そんなレイにシンジは苦笑すると
「そうだね」
と寝ているレイに返しつつ、髪を梳いてやっていた
後書き
ども、タッチです
綾吉さんから
カヲル、マナ、マユミ以外でのオールキャストによるお花見でハッピーコメディ物
レイ、リツコ、マヤ、ナオコ、ユイ、キョウコはシンジLOVEで
というリクエストを頂いたのでこんなの書いてみました
何処がレイ以外がシンジにラブラブなんだ?と思われるかも知れませんが
三賢者と師弟コンビはLIKEに変更で許可を得ました(笑
LOVEでは書けないので
なんだかなって感じなんですが、笑っていただける場面が一つでもあれば幸いです
それでは
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