電波・・・届いた?

 

夏の終わり

余りにも短い夏で

何もできなかった夏


「お父さん、お母さんはどこいったん?」

純粋に僕に問い掛ける声に

何かしなくちゃいけない気がして

余りにも星がきれいな夜だったから

「レイちゃんのお父さんとお母さんはね
遠いお空へお仕事に行ってしまったんだよ
だけどね、いつまでも、いつまでも
レイちゃんに心配しないで、だから笑って
って、愛情電波送ってくれてるんだよ」

「・・・うぅ・・・こない」

「違うよ、それはまだレイちゃんがそれを認めてないんだよ」

「・・・」

「さぁ手をかざして大きく、私は元気に頑張るって思いながら」

そう、かっこつけなどこかのはなしできいたような言葉を並べて
慰めると言うよりも
・・・やっぱかっこつけてたのかもしれない
だけど・・・

「電波・・・きたの」

そう言った少女は僕にしがみつき

「うぅ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

おおきくあめをふらした
それにぼくは、これで・・・よかったよね
と、自己満足させていた

 


夏のあと先

この前の晴れ間が嘘のように
天気予報はずしの雨が降り
参列者は皆、これは一人残された少女の涙と歌っていた
だけど、ぼくは・・・なんとなく、違う気がしていた

 

「それでだけど、この子の今後のことだけど・・・」

雨のせいで蒸し暑かった葬儀も終わり
親戚の間で交わされる話は
一人残った少女のこと
まぁTVドラマのようにたらいまわしにするような親戚どもではなかったし
それに、彼女の両親がのこした生命保険もあるから
まぁどこに行くかでのことはあっても、どこにもいけないということはないとおもってたんだけど・・・

「ねぇシンジ、レイちゃん、うちで預かろうと思うんだけど
もう、シンジも手が離れたし・・・」

「まぁ、ぼくはかまわないけど・・・」

で、このまま少女は僕の妹ということで実家に預かられるとおもってた

「レイちゃん、レイちゃん、おばちゃんとこ来る?」

けど・・・

フルフルフルフル

ギュッ

僕の背広の袖をぎゅっと握り締めながら
体中で訴える少女

「どうしましょ・・・」

困る母と親戚一同
ぼくはなんか・・・なんかわかるっていうか、伝わるみたいなものがあって

「うち・・・くる?」

そういう僕に少女は小さい声で

「・・・うん・・・」

と、うなずいた・・・

まぁ、独り立ちもして
まぁけっこうな収入の仕事にもつくことができたし
たいして金をつかう趣味を持つわけでもなく
一人くらいだったら養ってもいけたし・・・
だけど

ぎゅっって僕の袖を握る少女に対して
責任というか、そういう風なものを感じていたのかもしれない

「(決してぼくはロリコンじゃない、ロリコンじゃない)」

と、心に反芻させながら


夏の終わり、秋の始まり
赤いもみじが川に流れ星になるころ
少女と僕の奇妙な生活が始まった

あっ、少女と僕と・・・変な同居人との・・・かな?

 


「ただいま、レイ」

あれから・・・ってまだ、ほんの数日だけど

「今日はカレーだよ」

日を共に過ごしていくうち

「いただきまーす」

ほんの少しずつだけど
うちとけて・・・

「・・・」

・・・きえるのかな?ははっ
レイはご飯を食べるとなにもいわずすぐに

「ねぇ、イブ今日カレーだったの」

「ホウ、ソリャ良カッタナ」

「でも、お肉入ってたの」

「レイハ、肉キライダカラナ」

「うん」

「デモ肉食ワネェト、大キクナラネェゾ」

「うぅ・・・でも、嫌い・・・」


・・・奇妙な同居人との奇妙な会話
あの日、そうはじめて我が家にやってきた日のこと
レイに買って上げた一人の人形
買ってあげた次の日かな
うちに帰ると、レイはイブとなずけた人形に話し掛けていた
話し掛けて、動かして、まるで会話してるみたいに・・・

それは日増しに強くなり・・・
いまではもう


「オマエハ根性ナシダカラ、苦手ナ算数モロクニデキヤシナインダ」

「うぅ・・・」

もう、一人の個として出来上がってしまうまでに成長していた
それも・・・

「オイシンジ、麦茶モッテコイ、ノド渇イタゾ!」

と、まぁご立派な性格になってしまっていて・・・

「オイ、レイノ分モ忘レルナヨナ」

「あうぅ、私は・・・いい」

「遠慮スンナ、オマエハソレダカラ、コク・・・ふがふがふが」

何か言おうとしたイブの口をレイは慌てて抑えた
ジタバタするイブ・・・とっても、器用・・・いや、奇妙だ

「プファー!ナニスンダレイ!死ヌカト思ッタゾ!」

死なない死なないって・・・

「秘密・・・」

「ダガナ!」

「秘密・・・」

「・・・ワ、ワカッタ、ダカラ暗黒電波ハヤメロ・・・ナ」

暗黒電波?
・・・と、ともかく二人のコント(?)はけっこう見てる分には面白く

「はい、イブ、レイ麦茶だよ」

「オウ、アリガトナ」

「・・・」

「ホラ、レイモ礼ヲ言ウンダ・・・ッテカ、キャハハハ」

「あう・・・さぶい・・・あいたっ」

「礼イエ礼!」

「あう・・・あ、ありがと・・・」

「どういたしまして」

まぁ、奇妙だけど
なんかほほえましくて・・・けっこう楽しい


そして夜を迎え
僕達は個々の寝室へ・・・だけど

ギュッ・・・

消灯してしばらく
寝付こうとする僕の布団の中に入り、パジャマの袖を握る存在
まぁここには二人しかいないんだから、誰かってのはすぐわかる

「寝付けないの?」

そう聞く僕にレイは何も言わずただ

ぎゅっ

っと、僕のパジャマの袖を強く握り締めた

そして眠りに入るレイと・・・

「(あぁ、あのベットむだになっちゃったなぁ・・・)」

と思い浮かべながら
胸の奥にある、ふしだらな感情を押さえ込んでいた・・・


そんな毎日・・・変だけど、楽しい日常


な、ある日

やるはずだった仕事が取引先の都合で延期になり
なんかやることがなくなってしまって、早く帰ることができたから
今日手の凝らしておいしいものでもと勇んで帰ったら

「レイ、ただいまー」

返事はなかった・・・
って、いつものことだけど

いつものことだと思ってリビングへそしてキッチン・・・
っていつもはリビングでイブとお話してるのに
へやかな?

トントン

「レイ、ただいまー」

とドアを開けると

・・・いない

かわりに・・・

「えっ・・・血?」

そして

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

レイの聞いたことない、切り裂くような声

狭い中走って声のする方へ
そこはバスルーム
そこからはシャワーのシャーという音と

「あう、あう・・イブ・・・イブ・・・」

レイのぼろぼろな声がして
ぼくは急いで扉を開けると

「・・・!」

服のままびしょぬれでへたり座るレイ
そして・・・レイのお知りの下から流れる一筋の赤い線

「血が・・・血が出るの・・・
お父さん、お母さんのように・・・血が出るの
車の前の窓から板が飛んできて・・・
お父さんとお母さんの首が首が・・・
はっ・・・はっ・・・あぁ・・・」

ぼくは何かしなくちゃ、何かしなくちゃって
だけど、どうしたらいいかわからなくて

「きゅ、救急車!」

と、思って電話のところまでかけようとしたら

「シンジ、オマエハレイにキスシロ」

「えっ・・・誰?」

「キスシロ!」

どこから聞こえるわけのわからぬ声に
動転していたぼくは言われるまま操られ
レイに口づけをしていた
レイに一滴の空気を与えぬように

そしてその数分後か数秒後かわからないけど
しばらくして救急車の音が鳴り響いた

 

「はぁ・・・そういうことでしたか・・・」

病院の中、ぼくは医師に事情を説明すると
その医師は納得し軽くうなずいた

「たぶん、そのご両親の事故とはじめての月経が重なって
パニックを起こし、それが過呼吸を引き起こしたんでしょう
まぁともかく、今日一日は様子見で入院しますが大丈夫ですよ」

「そ・・・そうですか・・・」

よかった・・・ほんと、なにごともなくて・・・
そう、ほっと胸をなでおろしたぼくの心に一つの疑問が浮かんだ

「そういえば、救急車は誰が読んでくださったんですか?」

「え?救急センターからは自宅から電話があったと聞きましたが?
あなたじゃないんですか?」

「え"?」

謎を残したまま
一日は過ぎ
ぼくはレイを迎えに病院へ

「レイ、何事もなくてよかったね」

こくん

少しうつむいて僕の顔を見ようとしないレイに
ちょっと、なんか気まずさ感じながら
ぼくは、自宅へと車を走らせていた

「・・・イブ・・・は?」

「え?・・・あぁ、イブは家で待ってるよ」

イブ、あの時あの人形はなぜか電話の横でびしょぬれになって倒れていた
レイのいなかった昨日の夜、何もすることのなかった僕はイブを拾い、ドライヤーで乾かし、レイの部屋へレイの机の上に置いといた

「感謝・・・しなきゃ」

「感謝?」

「イブ、助け呼んでくれたの」

そんなまさか・・・そんなまさかをぼくは口の外へ出そうとしたんだけど
それを出すことはできなかった
レイを気にしてというのも合ったんだけど、でも、それよりも
イブがやったと考えるとすべてに納得できたし・・・何より

「かっこいいよね・・・」

こくん

なんか奇跡っぽくて・・・嫌いじゃなかった

「それに・・・」

「それに?」

ブンブンブン

「・・・なんでもないの」

・・・なんか、世の中って
まだまだ謎だらけです


我が家に帰宅した僕らは
とりあえず恩人の下へ

「ありがとう、イブ」

「テメェーハ今更終ワッタコトニクヨクヨシスギナンダヨ
レイハ一人ジャナインダ・・・ソウダヨナ、シンジ」

「あ・・・あぁ、そうだよ、レイ」

「うぅ・・・うぅー」

そう言って泣き出したレイは僕の腕の中へ

そしてその日の夜
いつものようにレイはぼくの布団の中で僕のパジャマのすそを

ギュッ

えっ・・・

背中に伝わる圧力と体温
そしてほんのり伝わるやわらかさと甘い香り

「だめだだめだだめだだめだ・・・・・・・・・・・・」


翌朝・・・

ろくに眠れませんでした・・・
で、そんな睡眠不足の状態で会社へ

「碇君、昨日はすまなかったね」

取引先との会話

「いやぁ〜、昨日うちの会社のパソコンにウイルスがでてね
もうてんてこまいさ」

「はぁ・・・たいへんだったんですね」

睡眠不足なぼくはすこし適当に返していた

「いや、もうディスプレイ一面人形姿ががあばれまくってね」

人形?
・・・ま、まさか・・・はは・・・


「レイ、恋ハ一日ニシテ成ラズダゾ!」

こくん

「男ッテノハナ、一発ヤッチマエバモウ虜ダ!」

こくこく

「コナイダハ事故トハイエカナリ進展シタシナ
今度ハモットシンテンサセルノダ」

・・・ぽっ・・・こくん

「デダナ、次ハ・・・」

 


秋の終わり
空を見上げ星に手をかざした

「帰る電波送信!・・・てね
なわけないか・・・はは」

なわけ・・・ないよね

「・・・!」

「ドウシタ、レイ?」

「お兄ちゃん帰ってくるの、いま帰る電波受信したの」

 


(御外道さん)後書き、ひっさしぶり
         で・・・これよんでぴんと来た人は来たかもしれませんが
          個々にでてくるイブという人形は・・・あの人形ですW
         というか、もう、アレですW
         なんか、俺かなり気に入っちゃってて、それでいつか使ってみたく
         ここでつかっちゃいましたW
         そだそだ、期待してる人がいるのかもしれませんが
         18禁Verが合ったりします、当然W
         まぁそれはおいらのHPにでも乗っけよかなと・・・

(シンジ)  ということなんだけど、結局あの人形はなんだったんだろう?
(レイ)    イブは宇宙から来た私の守り神なの、そう宇宙は神秘
        ・・・あっ電波が・・・ギュンギュン来たの
(シンジ)  な、なんて?
(レイ)    碇君、碇君はあと数時間後に死ぬわ・・・
(シンジ)  えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
(レイ)    でも大丈夫、私に任せて・・・
(アスカ)  ・・・
(シンジ)  ど・・・どうするの?
(レイ)    宇宙は言ってたは・・・、私と一つにな

パシィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!

(アスカ)  ど定番にさかってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!

(御外道さん)ちゃんちゃん・・・あぁ、これ連載向けのネタだったかも

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