ふと気づいた君の微笑み

いつもの君が見せる微笑みじゃなくて

僕の前でしか見せたことのない微笑み

はじめてみたのはあの満月の夜の下

みんなは知らない微笑み





微笑み
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 一度は閉ざした心も時が経つごとに徐々に開花していった

 自分に心なんかないと思っていた彼女

 暫くは「貴方がくれた心」と、そういってたけど、最近は「貴方が気づかせてくれた心」といってくれるようになった

 彼女も徐々に気づきはじめたみたいだ

 もともと持っている心の存在に

 自分の心に



 最初はやはり少しづつ少しづつという感じだった

 先ずは相手に心を開くことから、そして必要な大切なことを一つ一つ学んでいくこと

 そうやって決めていった

 人に会ったら挨拶をすることとか、なるべく自分の意見を言うようにするとか

 まあ、性格、彼女本来の気質かもしれないけれど、自分の意見を言うことはけっこう後になってからだったけど

 彼女がもっとも早く身につけた相手に心を開く手段

 それは言葉、ではなかった

 なんていうか、彼女らしい、最初に心を表したのは笑顔だった

 普段、僕に見せる彼女の笑顔は雰囲気の微笑みだった

 だから、最初の頃は僕にしかわからない

 彼女の表情を見て、そのかすかな動きの中に微笑みがあった

 それを見るといつも嬉しくなる

 彼女の微笑みは綺麗だ

 周りの人たちが彼女の笑顔をはじめてみたときの顔は今でも覚えてる

 みんな吸い込まれるような、間近でそれを見た赤髪の少女にいたっては顔を紅潮させたほどだった

 彼女はよく笑うようになった

 いまだ言葉数は少ないし、感情の表し方もみんなよりは薄い感じを持たせるけど

 彼女はよく笑うようになった

 とてもいいことだと思う

 中学をなんとか卒業して、高校へ、大学へと向かっても彼女の雰囲気はあまり変わらない

 もちろん彼女の心はずっと成長した

 でも、落ち着いた感じの彼女の雰囲気は変わらない

 いつも静かに、落ち着いた感じを持っていたけれど、彼女の周りにはたくさんの人がいた

 あの戦争中からの付き合いで彼女のことをよく知っている昔のメンバーだけじゃなくて、彼女はたくさんの友人をつくっていった

 友人たちに見せる笑顔

 誰もがその微笑に心を溶かされていったのかもしれない

 彼女の周りに居るときには誰もがのどかで心地いい時間をすごしていた



 高校、大学は授業も遊びも充実してたけど、彼女と二人という時間はそんなに多くなかった

 そんな二人だったけど、大学を卒業してから、共に過ごす時間、一緒に生活する時間が増えた

 仕事が忙しいこともある

 だれか友人たちに誘われてけっこうな人数で遊びにいったりもする

 それでも、お昼寝とか散歩とか買い物とか

 連休など時間が空いたときには二人きりで旅行とか

 彼女と僕だけという空間のなかで過ごすことも多い

 彼女は僕との間でも言葉は少ない

 というか、僕だって会話が得意っていうわけじゃないからしょうがないんだけど

 でも、お互いにぬくもりを感じあったり、笑いあったりする



 そんななか気づいたことがある

 昔は気づかなかったのは、やはり今ほど一緒に歩いていなかったからかもしれないけど

 僕に向ける微笑みはどこか違うことに気づいた

 最初は少し違和感を感じてたくらいだった

 明確に気づかされたのはこの前の休日、古い友人たちに久しぶりに呼び出されたときだった

 それまでの期間、仕事もそれほど忙しいわけじゃなかったから、二人でいる時間が長かった

 それで気づいたんだろう

 友人たちに向ける笑顔と、二人でいるときに僕に向けられる微笑みが違うってことに

 あれ?って思ったけどその場は何も言わなかったし、帰ってからも何も聞かなかった

 いつも二人でいるときに見せてくれる彼女の笑顔に僕は注意を払うようになった

 僕はこの微笑みを知ってる…

 いつも見せてくれる笑顔だ、そういうことじゃなくて

 なにか、大切な思い出に関わってくるような、そんなふうに感じていた

 記憶があやふやでなかなか思い出せない

 こういうときはきっかけを待つしかない



   案外キーワードってものは身近にあるものだ

 僕がその答えを、記憶の断片を見つけ出すためのキーワードは月に一度必ず現れるものだった



   月に一晩だけ、夜空に煌々と輝く月

 その全ての姿を見せて、そしてその光で全てを包む満月


 頭の中に大切にしまいこまれていた記憶が呼び戻される

 空を支配する白い月を眺めながら、あのときの情景がいまの世界に重なる



 交差する光の激流

 高く聳え立つ二つの光柱

 二撃目への金属音

 向こうで聞こえる光の回転音

 山肌を滑り降りる音

 待ってくれない放たれる光の矢

 爆音

 光の奔流とその中に浮かぶ人形のシルエット

 咆哮と撃鉄音

 空気を突き破り相手を貫く光と爆音

 そして静寂




 相手がくず折れていくなか、僕は銃を捨て彼女のもとに向かった

 あの時何を感じて走ったのかは覚えていない

 ただ、身を引き裂かれるような思いと不安で駆け出してた

 焼け付くレバーをこじ開けて彼女に駆け寄った

 他人に関心を示さなかったはずの僕が本気で心配した

 やはり彼女だったからだろう

 あの頃から今の心が生まれてきたのかもしれない

 彼女がその瞼を開けたとき僕の心を締め付けていた心配が溶け出した

 それと共に溢れあがった気持ちが零れた

 彼女はそれが意味するものを知らなかったから疑問に思った

 僕が最初に彼女に教えたこと

 自分の気持ちを表すこと

 そして、彼女がしらなかったそれを表す方法を

 僕の差し出した手につかまった彼女が僕に見せてくれた

 あの微笑みだ

 僕を変え、そして彼女自身を変えた最初の微笑み

 その微笑みを彼女は今までずっと僕に向けてくれていたのだ

 つなぎあった記憶と彼女の微笑みと

 過去を思い巡ってみてもそうだった

 僕が彼女の天使のような微笑みに魅了されたのはいつも二人でいるときだった

 僕にとってあの微笑みは彼女との絆

 私には何もない、そういった彼女との最初に築いた絆だ

 彼女はどう思っているのだろう

 意識的にでさえ、無意識でさえ、その心に意味があるはずだ



 晴れた休みの日

 いつものように二人よりそってまどろんでいるとき、さりげなくこの話をしてみた

 別にさりげなくでなくてもよかったんだろうけど、なんか気恥ずかしかったんだろう

 でも、彼女は僕の真意にすぐに気がついたようだった

 あの笑顔は彼女が意識的に僕に向けてくれたものだったようだ

 彼女はその紅い純粋な眸で暫く僕を見つめていた

 それから視線を少しぼやかしてから小さく話してくれた


 「私の笑みは私の心そのもの

  あの日の笑みは私が心を開いた現われ

   私の心全てを預けるという証  

 私が貴方に見せる笑みは私が貴方を愛しているという絆なのよ」


 そういって彼女は微笑んだ

 あの日と変わらない

 いや、あの日よりずっと綺麗な微笑み





 ふと気づいた君の微笑み

 いつもの君が見せる微笑みじゃなくて

 僕の前でしか見せたことのない微笑み

 はじめてみたのはあの満月の夜の下

 僕だけに向けてくれる絆

 みんなは知らない微笑み

 二人しか知らない微笑み












 あとがき

 え〜まず、綾吉さん、HP開設おめでとうございます。(いまさらかい!→すいませんm(__)m)

 そして、30000ヒットおめでとうございます。

 短いですが、レイの微笑みをテーマに書いてみたSSです、楽しんでいただければ嬉しく思います。

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綾吉 :abaさん、ありがとうございました〜
レイ  :これって綾吉が強引に書かせたものよね?
綾吉 :失礼な言い方だな〜。僕は只、正式オープン前にサイトに来た人には漏れなくSSを投稿する義務と言うのをプレゼントしただけだぞ(爆)
レイ  :普通のサイトはそんなことしないわ
綾吉 :うちは普通のサイトじゃないんだろ?
レイ  :・・・・・・・・・駄目ね
綾吉 :いいじゃないか、おかげでこの作品でもラブラブじゃないか?
レイ  :ええ、それはとても素晴らしいこと・・・でも直接的な表現がないわ
綾吉 :我侭な・・・
レイ  :次回に期待だわ
綾吉 :てな訳で、皆さんabaさんに感想メールを出しましょう〜
レイ  :お願いするわ


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