「おはよう、シンちゃん!」
ぶんぶんと手を振ってコテージから出てきたシンジに挨拶をするレイ。
この辺が未だお子様なところなのだが、本人は良い気分なので問題無いであろう。
「おはよう。」
シンジも手を振って答える。
「さぁ〜〜メシやメシ〜。」
既に朝食の事しか頭に無いトウジ。
ケンスケは相変わらず何を考えているのか不明だが、妙に爽やかな表情をしている。
ゾロゾロと近寄ってきた女の子達に挨拶をする3人。
「綾波とセンセの親御さんはどうしたんや?」
「先に行って席を取ってるって。カフェテリアにいるから揃ったら来るようにって言ってたわ。」
「ほうか……昨日と同じトコやな。」
そう言うとさっさと歩き出す。
「もう、鈴原ったら相変わらず食べる事ばっかり考えているんだから……。」
ブツブツ言いながらさっと近寄っていくヒカリ。
随分積極的になったものである。
「ほらっ鈴原!ジャージずれてるわよ!」
などと言う声が聞こえ、トウジが謝っている声も聞こえる。
「…何か洞木さんと鈴原君、お似合いですね……。」
その姿を見てポツリと呟くマユミ。
「うーん、そうねぇ……。あのヒカリがこんなに積極的に動くとは予想外ね。」
横を歩いていたマナも同意見のようだ。
「……でもあっちには敵いませんよね……。」
マユミが視線を向けた先には、がっちりとシンジの腕をホールドして密着しているレイの姿が……。
「そりゃそうよ。私達は恥だとか照れだとかを持っているけど、レイってそういうの無いもん。」
何気にかなり失礼な事を言っているが、マユミも特に反論しないところを見ると同じように思っているらしい。
『な、何で俺だけ会話に入れないんだ〜〜!!』
一人だけ何故か会話に参加できないケンスケは心の中で叫んでいた。
だから自業自得だって言ってるだろう………。
カメラ持たなければいいんだよ、ケンスケ。
「「あっ!?」」
「「あれ!?何でこんな所で……?」」
カフェテリアの前までゾロゾロとやって来た一同が入ろうとしたとき、偶々やって来たもう一つのグループと2箇所で声が上がる。
4人の大学生らしきグループの中で、黒髪で妙に童顔だが美しい女性とやや痩せ型でロンゲの男がビックリしたような顔をしている。
一方、シンジ達のグループはマナとシンジがやはり驚いた表情で立ち竦んでいる。
「伊吹さん、こんな所で会うなんて奇遇ですね。」
「マナちゃんこそ、いつから来ているの?」
近寄り嬉しそうに話すマナとマヤ。
「青葉さん、どうしたんです?青葉さんってスキーもやるんでしたっけ?」
首を傾げながら尋ねるシンジ。
「そりゃあ俺だってスキーぐらいやるさ。それよりシンジ君、隣の娘は例の彼女かい?」
親しげに答えるロンゲの青葉。
えぇ、と頷いているシンジの腕をクイクイと引っ張るレイ。
どういう知り合いなのかと尋ねているのだ。
「あぁゴメン、レイちゃん。僕が以前いたところで同じ道場に通っていた青葉さん。ぼくの同門に当たる人なんだ。」
「初めまして、青葉シゲルだ。君の事はシンジ君からよく聞かされていたよ。可愛い子だって惚気ていたけど、こりゃあ確かに可愛いな。」
にこやかに自己紹介をする青葉。
「あっ!あの……綾波レイです。初めまして。」
シンジの道場関係の知り合いとわかり慌ててペコリとお辞儀をするレイ。
そんな姿も妙に可愛い。
シンジが自分の事を可愛い彼女と紹介していたと聞き、嬉しいのだ。
「ところで青葉さん、あっちで霧島さんと親しそうに話している方はどなたです?」
話しが弾んでいるマナ達の方に視線を向けて尋ねるシンジ。
「あぁ、同じ大学で同期の伊吹マヤさんだ。どうやら君達の連れと知り合いだったようだな。」
「シゲル、俺達も紹介してくれよ。」
ツンツン頭で眼鏡をかけた大人しそうな青年が近寄ってくる。
「すまん、すまん、こんな所で知り合いに会ったから忘れてたよ。こっちは俺と同じ学部の日向マコト、隣の女性は鈴木園子さんだ。」
「やぁ、僕は日向マコトだ。よろしくな。」
「私は鈴木園子、よろしくね。」
「初めまして、碇シンジです。宜しくお願いします。」
「綾波レイです。初めまして……。」
お互い挨拶を交わすが、レイはちょっと緊張気味だった。
完全に置いてきぼりにされていたヒカリ達だったが、マヤとの話を終えたマナが一同を引き合わせる。
「初めまして、霧島マナです。伊吹さんのアパートの近くに住んでいて親しくさせてもらってます。もう碇君達とは紹介が終わった
みたいなので、こちらが友人の洞木ヒカリさん、山岸マユミさん、鈴原君、相田君です。」
一人一人紹介していくマナ。
大学生達も改めて自己紹介をする。
「これから朝食かい?」
青葉がシンジに尋ねる。
「えぇ。あっ!そういえば母さんとレイちゃんのご両親が待ってるんだった!」
そう言ってカフェテリアへと入っていく一同。
待ちくたびれた感じのユイ達が手を振っている。
「遅かったわねシンジ。何かあったの?」
朝はバイキング形式であるため、既に料理を皿に並べて待っていたユイが尋ねる。
「ごめんよ母さん。外でばったり知り合いの人と会ったんで話しこんじゃった。」
「あらそうなの。それでお会いしたのはどなた?」
「あっちの大学生のグループの人なんだけど、同じ道場で一緒に練習していた青葉さんだよ。後の人達は初対面だけど、
その内の一人を霧島さんが知っているみたいだよ。何でも近くに住んでいるんだって。」
「多分……私達も近いんでしょうね。」
シンジに付いて来たレイが呟く。
「へぇ……凄い偶然ねぇ。後でゆっくり挨拶をするとして、貴方達も早く食べちゃいなさい。」
そう言われて皿に料理を盛っていくシンジとレイ。
レイは野菜やフルーツ中心だが、シンジはそれ相応のボリュームを盛り付けている。
「シンちゃん、昨日も思ったけど結構食べるのね。」
ジュースを注いだレイが驚いたように言う。
「そうかな…?今日もずっとスキーをするからこれぐらい食べないとへばっちゃうからね。」
「じゃあ私ももっと食べたほうがいいのかな?」
「うん、そう思うけどいつもと違って沢山食べるとお腹を壊すかもしれないからね。普段よりちょっと多めに食べればいいと思うよ。」
そう言われてレイはいつもは1個のパンを2個にした。
フルーツも少し多めにする。
シンジとレイがテーブルについたときには、すでにみんな食べ始めていた。
トウジが我慢できなかったのだろう。
シンジもさっさと食べていく。
『…マナって何であんなに食べても太らないのかしら?』
斜め前で結構な量を食べていくマナを見て素直にそう思うレイ。
『やっぱり日頃運動しているからかなぁ……。』
それはその通りだよ、レイちゃん。
『まぁいいや。早く食べないとね。』
そう考えて食事を再開するレイだったが、ガツガツ食べる筈もなくそのスピードは緩やかだ。
結局レイが食べ終わったのはマナとほとんど同時だった。
量的にはかなり差があったから、単純に食べ始めた時間の問題だろう。
レイが周りを見まわすと未だ食べているのはトウジだけだった。
「鈴原……いつまで食べてるのよ!」
小声でヒカリが文句を言う。
「いいやないか、せっかくのバイキングやで。腹いっぱい食べなバチが当たるわ。」
そう言ってシンジの2倍の量を腹に収める。
ユイ達もコーヒーを飲みながら呆れたようにその姿を見ていた。
ようやく全員が朝食を食べ終わり、レイカが少し大きな声で話し始めた。
「今日は午前中、比較的緩やかな斜面を選んでみんなで滑ります。午後からは各自自由に好きなところで滑っていいわよ。
じゃあ9時半に昨日集まったレストラン前のゲレンデに集合よ。」
その話しが終わると子供達はゾロゾロと席を立ち、それぞれのコテージへと向かう。
だがマナとシンジ、レイはそれぞれマヤと青葉の所へと向かった。何故かユイも付いてくる。
大学生グループも朝食を食べ終わり、ボンヤリと外を眺めたり話をしたりしている。
「青葉さん、今日はこの後どうやって滑るんですか?」
「別に決めてはいないよ。午前中は足慣らしに緩斜面を滑って、午後からはマコトと一緒にガンガン攻めようかと思ってる。」
「僕達も午後からバラバラに滑りますから、一度青葉さんの滑りを見せてくださいよ。」
「いいよ。俺もシンジ君の滑りを見てみたいからな。いいだろ、マコト。」
「僕は構わないよ。」
「じゃあ昼飯を食ったら……そうだな、1時半に第1リフトの所で落ち合おう。」
「わかりました。レイちゃんも一緒に来る?2日目だから思いっきり滑りたいんじゃない?」
「私は当然行くわ。シンちゃんが行くんだったら絶対付いて行くもん!」
来るなと言われても絶対付いて行くレイからしてみれば、この答えは当然のものだった。
何しろ相手のメンバーには年上の女子大生が二人もいる。
彼女達がシンジを誘惑しないとも限らない。
「彼女は大丈夫なのか?」
スキーの腕前の事を尋ねた青葉だったが、予想外の答えを返される。
「大丈夫も何もレイちゃんは僕よりずっと上手いですからね。彼女が滑れないところなら僕も無理です。」
「へぇ〜それは楽しみだな。じゃあ午後にまた会おう。」
そう言って立ち上がった青葉の前にスッとユイが現れる。
「碇シンジの母の碇ユイです。いつも息子がお世話になっております。」
見た目30歳前半と言っても通じるユイに挨拶をされ驚く青葉。
いくら何でも高校生のシンジの母親にしては若すぎると思ったのだ。
「あっ!不和道場で息子さんと一緒に学んでいた青葉です。初めまして。」
慌てて挨拶を返すが、未だに心の中は整理されていない。
「これからも息子の事を宜しくお願いしますね、青葉さん。」
ニッコリと微笑みを浮かべながらそう言って去っていくユイを呆然と見送る青葉。
後ろで伊吹マヤがちょっと怖い顔をしているのにも気が付いていない。
「シンジ君、あの人本当に君のお母さんなのか?若過ぎないか?」
ひょとして後妻かなんかじゃないかとまで考えている青葉。
「正真証明、僕の産みの母ですよ。実際はもう40歳を超えてますから……。」
小声でユイに聞こえないように教えるシンジ。
「なっ!何だって!?本当に40歳を超えているのか、シンジ君?」
「本当ですって。だって僕が16歳で、24歳の時に産んだとしても40歳でしょう?」
そう言われてみれば当たり前の事だった
「うーむ……加持師範に何も言わずに紹介すれば口説きそうだな……。」
そんな青葉の言葉を聞いて考え込むシンジ。
確かにあの加持師範ならやるかもしれない。
だがそんなシンジの考え事は長くは続かなかった。
仲間外れにされたレイが我慢できなくなってシンジの服の裾を引っ張ったのだ。
これは単に自分が構ってもらえない事に拗ねただけで、シンジの話し相手が男性である事からシンジが即座に相手をすればすぐに機嫌が直る程度の事である。
その事をよくわかっているシンジは、同時に早く用意をしなければいけない事を思い出す。
「じゃあ青葉さん、1時半に第1リフトで。」
そう言うとシンジはレイと一緒にカフェテリアを出ていった。
無論レイのご機嫌をとりながらなのは言うまでも無い。
マヤと話していたマナもその後に続く。
シンジ達の後姿を見送った青葉はやれやれといった風に首を振った。
「いやぁ……やっぱり女性は魔物だなぁ……。加持師範の凄さが改めて実感できるよ……。」
心の底から、といった感じの青葉の呟きはマヤの聞くところとなる。
「青葉君、どうやら人妻にご執心のようね……。」
マヤの口から放たれたのは限りなく冷たい言葉だった。
「はぁ?どういうことだい、伊吹さん?」
振り向いた青葉はマヤの表情が能面のように無表情なのを見て青ざめる。
「さっき挨拶された時にデレデレしてたじゃない。」
耳が凍りつきそうなマヤの台詞。
だが明らかに勘違いだった。
「い、伊吹さん。き、君は勘違いをしている。」
口から出た言葉はなぜか震えていた。
「あら、どんな勘違いなの?教えてくれる?」
「勿論だとも!俺があの時驚いたのはシンジ君の母親にしては若すぎるように思ったからだ。だから彼も苦労しているんだな、と思って聞い
てみたら何と40歳を超えていると教えられてね。女性の外見と言うのはよくわからないと実感していたのさ。」
「えっ!?さっきの女性って碇君の母親よね?本当のお母さんなの?」
「あぁ、彼がそう言っていた。そう言えばもう一人いた女性も誰かの母親なのかな?似ているといえばシンジ君の彼女のレイちゃんだが……
そんな馬鹿な!と言いたいけどやっぱりそうなんだろうなぁ………。」
青葉が言いながら考え込んでしまったのを見て、マヤも考え込む。
そう言えばマナからシンジの母親とレイの両親が保護者役だと聞いた。
そうであれば、あの挨拶をした女性がシンジの母親(実母)であるなら、もう一組の大人はレイの両親となる。
レイの母親もシンジの母親と同じ位の年齢に見えた。
ということはレイの母親も本当の母親で、すでに40歳を超えているのだ。
「……う、嘘でしょ!?」
いきなり大きな声を出すマヤ。
「そうか……同性の伊吹さんが見てもそうは見えなかったのか………。な、俺が驚くのも無理無いだろ?」
青葉の言葉にコクコクと頷くマヤ。
朝から信じられないものを見て(知って)しまった二人だった。
訳を知らない日向と園子はそんな二人に首を捻るばかりだったという……。
「でもあのグループに僕の知り合いと霧島さんの知り合いがいたのには驚いたな。」
スキー板を履きながら横にいるマナに話しかけるシンジ。
「私もよ。まさか伊吹さんの仲間が碇君の道場の関係者だとはねぇ……。世の中案外狭いわね。」
マナも板を雪面に置きながら答える。
「私達は午後からシンちゃんの知り合いの人と滑ることにしたけど、マナはどうするの?」
こちらは既に準備万端のレイがシンジを通して反対側にいるマナに尋ねる。
「伊吹さんはそんなにスキーが得意じゃないから……。でも午後からは一緒に滑ることにしたわ。マユミともう一人の人と一緒にね。」
「ふうん、そう言えば母さん達はどうするのかな?」
そんなことを話しているうちに全員の準備が完了する。
「さあ、行くわよ。途中で逸れないように友達がいるかどうかチェックしながら上に上ってね。」
ユイの号令でまず手近な初級者コースのリフトに乗る一同。
ダウンヒルに出るには、このリフトで上に登り、コース途中の中級者コースのリフトに乗り継がなければならない。
さらにそのリフトの終点に隣接しているリフトに乗ると一番高い所へと到着するのだ。
「うわぁ………綺麗ですね……。」
今日初めてこの場所に立ったマユミは、リフトを降りて広場のようになっているところから雄大な景色を見て感動していた。
「そうね。今日も天気が良いから眺めは最高よ。」
いつのまにか隣に来ていたユイが相槌を打つ。
「あ…あの…ありがとうございました。昨日ユイ叔母様に教わったおかげでここまで来ることが出来ましたから。」
そう言って嬉しそうに頭を下げるマユミ。
「あらあら、そんな事しなくていいのよマユミちゃん。私がお節介で教えたんだから。」
少しだけ照れているのを隠しながら顔の前で手を振るユイ。
『珍しいな……母さんが照れてる。』
無論それを見逃すシンジではない。
「そうだ、ここで記念写真を撮ろう。ケンスケ、カメラ持ってるよね?」
ユイの珍しい姿を見たシンジは、それに引っ掛けて記念写真を撮ろうと考えた。
「そうね……幸い全員いるもの。」
レイも良い考えだと言わんばかりに頷く。
「そうね。相田君、偶にはみんなに感謝される写真を撮りなさいよ。」
マナのキツイ言い方にちょっと凹んだケンスケだったが、ここはやはり本職の技を発揮しなければ、とデジカメを取り出す。
「バックに遠くの山々が入るようにしたいから、前の人はもう少し腰を低くして。後ろの人はそのままでいいよ。」
たちまち何枚かのショットを撮るケンスケ。
「相田君、今度は僕が撮るから君もこっちに入りなさい。」
ユウゴが列から抜け出してケンスケと交代する。
使い方をケンスケから聞いて、何枚か写すとそれぞれが再びスキーを履く。
「いつも写してばかりだと、自分が映っている写真が無いだろう?」
「そうですね、ありがとうございます。そう言えば今回の旅行で自分が写ったのはこれだけです。」
笑いながら言うユウゴに、珍しく自分も写ったショットの事を考えて礼を言うケンスケだった。
「さあ、行きましょう。」
ユイを先頭に、マユミ、マナ、ケンスケ、シンジ、レイ、レイカ、トウジ、ヒカリ、ユウゴの順に滑り始める。
昨日の練習の成果か、プルボながらもちゃんとユイに付いて行くマユミ。
これはユイがうまくスピードをコントロールして滑りやすいコース取りをしているからだ。
マナはマユミのスピードが遅い事はわかっているので、少し距離を置いて滑っている。
ケンスケ、シンジ、レイは当然スピードをコントロールしてユイに合わせる。
レイカはトウジがどちらかと言うとスピード制御が苦手で暴走しやすい事を前日に見てわかっていたので、第1陣の最後尾であるレイからかなり距離を置いて滑り始めた。
だが300m程滑るうちにトウジはレイカを抜き去って行く。
それに付いて行こうとするヒカリはかなり大変そうだった。
仕方が無いので、このままではバテそうなヒカリの事を勇吾に任せてトウジの後を追うレイカ。
もっともトウジに悪意は無く、単にスピードコントロールが出来ていないだけだ。
その分、危険とも言うのだが………。
500m程滑ったところで、コース上に少し広い場所を見つけて一度止まるユイ。
何とか頑張って付いて来たマユミが肩で息をしながら停止する。
ユイはそろそろマユミが疲れた頃だと思って止まったのだ。
マナ、ケンスケ、シンジ、レイが次々と雪煙を上げて止まる。
「どうしたんですか、ユイ叔母さん。」
マナがなぜ止まったのかわからず尋ねた。
「後ろと少し距離が開いてバラバラになりかけていたのと、マユミちゃんはまだ無茶できないから。」
ニコニコとして答えるユイに納得して頷くマナ。
「どうしたんや〜〜!?」
大声で叫びながら止まったトウジの後ろからレイカが追いつく。
「一旦休憩だよ。下手するとバラバラになるからね。」
マユミが恐縮しないように、シンジが理由の一つのみを上げて説明する。
「ほうか、そう言えばイインチョのヤツ遅いな……。」
そう言っているとヒカリがフラフラと滑りながら、ユウゴと一緒に到着した。
「お疲れ様、ヒカリ。」
レイが疲れた様子のヒカリに声をかける。
「ふぅ……みんな早いのね。私は自分のペースが崩れたんでちょっと辛かったわ。」
レイとヒカリが話していると、シンジがトウジの耳元で話しかけた。
「トウジ、もう少しスピードを制御しないと危ないよ。それに洞木さんの事を置いて行ったら駄目だよ。トウジに付いて行こうとして
洞木さんペースを乱したんだよ。」
「そうやったんか……ワシはそこまで考えんかったわ。イインチョに悪い事したなぁ……。」
何故ヒカリが疲れていたかわかり、ちょっと反省をするトウジ。
「駄目だよ、洞木さんをしっかりとエスコートしないとね。」
クスクスと笑いながら言うと、シンジはレイの方に移動していった。
5分ほど休んで再び滑り出す一行。
今度はトウジもヒカリを気遣ってゆっくりと滑っている。
スルスルと連なって滑っていくレイ達。
さらに500m程滑る度に広くなったところで休止しながら、一行は誰も転びもせずにダウンヒルコースを滑りきった。
「すごいわね、マユミ。ちゃんと最後まで降りて来れたじゃない。」
未だ肩で息をしているマユミを囲んで健闘を称えるマナ、レイ、ヒカリ。
「ハア、ハア、ハア………はい、何とか降りて来れました。これも昨日碇君のお母さんに教わったおかげです。」
答えるマユミも嬉しそうだ。
「凄いなシンジ、お前のお母さんって。あの曲がれなかった山岸がちゃんと付いて来れたんだからな。」
ケンスケが、少し離れてマユミ達に柔らかい視線を送っていたシンジに話しかける。
「うん、母さんは学生時代に1級を取って、さらに準指導員の資格も取ったんだって。だから本当にインストラクターができるんだよ。」
何でもない事のように言うシンジに驚くケンスケ。
「じゃあシンジもお母さんに教わったのか?」
「うん、小さい頃にね。最近は母さんとスキーに行くことなんて無かったから教わってなかったけどね。」
「じゃあ綾波のご両親は?」
「えーと……確か二人とも1級を持っているって言ってた。」
スキーに関しては密かに自信を持っていたケンスケだったが、どうやら役者が違うようだ。
「シンジだけじゃなく綾波や霧島も上手いんだモンなぁ………。」
狂ってしまった計画を思い起こしボヤくケンスケだった。
この後、さすがに連続して長距離はキツイだろうという事で初級者コースにてユイ、レイカのワンポイント・アドバイスが始まり、レイを含めて滑りのチェックを受けるはめになる。
そうこうしているうちにお昼になったため、一同はレストランへと向かった。
「よお〜〜シンジ君、ここだ〜。」
青葉がストックを上に振り上げている。
待ち合わせ場所のリフト前には既に青葉と日向の姿があった。
「お待たせしました。」
スキーを担いでシンジ、レイ、レイカがやって来た。
なぜレイカが一緒かというと、嫌がるレイを無視して付いて来てしまったのだ。
ユイは教え子であるマユミと一緒にマナ、伊吹マヤ、鈴木園子達と滑るようだ。
ケンスケはマナに睨まれたため、勇吾やトウジ達と一緒に滑るらしい。
「えーと……確かシンジ君のお母さんではないんですよね?」
自信無さそうに尋ねる青葉。
「あら、ごめんなさい。私はこっちにいる綾波レイの母親の綾波レイカです。」
サングラスを取ってニッコリと微笑むレイカ。
「失礼ですが、シンジ君のお母さんのユイさんとはご姉妹ですか?」
あまりにもそっくりなので思わず尋ねてしまった青葉だった。
「あら、やっぱりそう見えるのかしら?違うんですよ。ユイとは親戚ですけどかなり離れているんですよ。そうじゃなかったら家のレイ
とユイのところのシンジ君とのカップルなんて認められませんから。」
さらりと爆弾を投下するレイカ。
「シ、シンジ君……君達ってご両親公認なのかい?」
「えぇ、そうみたいです。家の両親もえらくレイちゃんを気に入っていて、早く結婚しろとか言うんで大変ですよ。僕達はまだ高校生なんですからねぇ。」
青葉の驚きを全く理解しておらず、こちらも悪気無く爆弾発言をするシンジ。
その二人の言葉を聞いて、レイはすでに頬を赤くして妄想に浸っている。
「そ、そうなのか……。シンジ君も大変、いや違うな……幸せなんだな………。」
一瞬言葉を選ぶために考えた青葉だったが、何と言って良いかわからず眼の上を押さえつつ無難な言葉を使った。
横に立っている日向は何と言っていいのかわからず呆けた笑みを浮かべている。
「さぁ、青葉さん、行きましょうか。」
シンジの一言で現世に復帰した一同は、さっそくリフトに乗って中級者コースを目指した。
シャッ、シャッ、シャア〜〜
小気味良い音を残して滑っていく青葉と日向。
二人とも慣れた感じで上手い。
シンジもこの二人とほとんど同じレベルだった。
3人ともかなり格好の良い部類に入るだろう。
中級者コースを危なげなく滑り降りてくるのだから、女性にもモテルはずだ。
だがそんな二人もレイの綺麗な滑りにまず驚き、続いてレイカの優雅な滑りに目を奪われる。
「へぇ〜〜、シンジ君の彼女も上手だけど、そのお母さんはもっと上手いな………。」
「いやぁ……何と言うか…美しい滑りだねぇ……。」
青葉と日向はコースを見上げながら感嘆の声を漏らす。
「えぇ、家の母さんも上手いですけど、レイカさんも上手いですよ。レイちゃんがあんなに上手いとは知りませんでしたけどね。」
既に実力を知っているシンジは事も無げに言い放つ。
「しかしシンジ君も大変だね。彼女の方が上手いんじゃスキーに行き難くないかい?」
日向が苦笑しながらシンジに話しかけた。
「いえ、別にそんな事は無いですよ。レイちゃんが上手い方が心配する必要が無くていいですから。」
そのシンジの言葉に、レイを大事に思っている事を知る日向。
「そこがシンジ君の凄いところだよ。普通は男のプライドが邪魔をしてなかなかそうは言えないんだが……。」
シンジのことを良く知っている青葉も苦笑しながら言った。
「僕のプライドだけじゃレイちゃんを護れませんからね。」
そんな会話をしていると、降りてきたレイ達が目の前で止まる。
「お待たせ〜シンちゃん。」
相変わらずシンジしか見えていないレイ。
「待たせてしまったわね。ごめんなさいね。」
「い、いえ……そんなことは全然ありません。」
「えぇ…気になさらないで下さい。」
40歳以上だとわかっていても、その若若しさにどう対応していいかわからず口篭もる二人。
正に大人の女性というか美しい熟女という感じのレイカに圧倒されているのだ。
面白くてレイカはそんな青葉達をからかっている。
「フフフ……ごめんなさいね。こんなおばさんが一緒に来てしまって。」
「いえ、とてもこんな大きなお子さんがいる方には見えませんから……。」
「そうですよ。お若いですね。」
そう言われるのが嬉しいレイカであった。
「全くお母さんったら……他人に若いって言われるのが嬉しいからって……恥ずかしいったらありゃしない。」
小声でシンジに文句を言うレイ。
「いいじゃないかレイちゃん。それでレイカさんの機嫌が良くなるんだったら。誰も被害を受けないんだし。」
こうレイを諭すシンジの言葉は、家でゲンドウとユイのしょうもない喧嘩を仲裁しつづけたシンジならではだろう。
「まぁそうだけどね………。」
それでも不満そうなレイ。
「でもそうするとレイちゃんも大人になったら同じように若く見えるって事じゃない?」
「えっ!?そうか……そういう事だよね、シンちゃん。そうかぁ……私も若く見られるのね……。シンちゃんは私が若く見られると嬉しい?」
機嫌が直ったのか、笑顔で尋ねるレイ。
「そりゃあ自分の奥さんが若く見られるのは、旦那として嬉しいさ。でも浮気されるんじゃないかって不安もあるけどね。」
さらりと凄いことを言っているシンジ。
本人に自覚が無いところが恐ろしい。
「いやだ、シンちゃん……。私のこと奥さんだなんて………。大丈夫よ、私はシンちゃん一筋だもの。浮気なんてしないわ。」
誰も聞いていないのを良い事に、すでに惚気まくっている二人だった。
シンジ君、君もレイちゃんの妄想癖が感染したんじゃないのか……?
というか……二人とも結婚前提ですか………。
「ねぇマナちゃん、あの碇君って子、こういう所で見るとさらに格好良いじゃない。」
ペアリフトに乗っている最中、マヤがマナに話しかけた。
「そうなんですよ〜。碇君が私の彼氏じゃないのが悔しくって……。」
「でも綾波さんだったかしら、彼女もスキー上手いわね。」
「反則ですよね〜、他のスポーツはぜーんぜん駄目なのに……。おかげで私の見せ場が無いんです。」
ちょっと膨れっ面をするマナ。
マヤの前では素直に自分を出せるようだ。
「でも、私達みんな驚いたんだけど、碇君の母親も綾波さんの母親も若く見えるわね。悪いけど私、再婚した義理のお母さんだと
思っ
ちゃった……。園子と話してたんだけど、あれは反則よねぇ………。」
そう言って溜息をつく。
確かに女性にとってあの二人はかなり羨ましい存在だろう。
「そう言われるとそうですね……。」
少し考えるマナ。
「義理のお母さんがあんなに若く見えるんだと、結婚したら大変かもしれないわね。下手すると姉妹だと思われるかもしれないわよ?」
確かにユイやレイカならそう見られるかもしれない。
マヤもかなり童顔だからその可能性はある。
「そうですね……でも伊吹さんも童顔だからきっと同じように若く見られますよ。」
全く悪気などなく言ったマナの言葉にグサッと来ているマヤ。
彼女は自分の童顔をかなり気にしていたのだ。
だが考えて見れば、自分も歳を取ったらあの二人のように見られる可能性は高い。
そう思うと自分の童顔も悪くないかも、と考えてしまうマヤだった。
「それより伊吹さん………。ユイ叔母さんが青葉さんと話していたとき怖い顔していましたね。青葉さんが意中の人ですか?」
何気なく核心を突く質問をするマナ。
「マ、マ、マ、マ、マナちゃん!い、い、い一体……何を言うの?」
答えずともこの狼狽ぶりが全てを語っている。
「あ〜〜動揺してますね〜。やっぱり青葉さんなんだ、伊吹さんが想ってる人って………。」
クスクスと笑うマナ。
「ううぅぅぅ………高校生に見破られるなんて………私ってそんなにわかりやすいかしら…………。」
マナにからかわれ見破られた事にショックを受けているマヤ。
「そんな事無いですよ〜。でもユイ叔母さんと話しているときの青葉さんを見る態度でわかっちゃいました。」
「高校生にもわかってしまうのね…………。」
よよよよ……と泣き真似をするマヤ。
「でもきっと青葉さんも伊吹さんの気持ちをわかってるんじゃないですか?」
「それはわからないわよ。青葉君って結構そう言うところ鈍いモン……。」
「大丈夫ですよ。伊吹さん美人なんだから自信持ってくださいよ〜。」
「ふふふ……マナちゃんに励まされるなんてあべこべね。」
そんな話をしているうちに終点に着くリフト。
二人は降りて先に待っているマユミ達の元へと急いだ。
「ハアハアハア………、青葉さん、さすがに速いですね……。」
「ハアハア………いやいや、シンジ君も速いじゃないか……。」
あれからポールで競争をしていたシンジと青葉はゴール地点で息を切らせていた。
既に4本滑っている。
今のところ成績は2勝2敗のイーブン。
「どうするんだいシンジ君?もう一本行くのか?」
タイムを計っていた日向が尋ねる。
「いえ、そろそろお姫様が飽きてくる頃ですから……。」
そう言って今ゴールに入ってこようとしているレイを顎で指すシンジ。
「うーむ、そうかもしれないな。しかしレイカさんだったっけ?速いなぁ………。」
さすがにスピード勝負になるとシンジとレイは殆ど良い勝負になる。
技術はレイの方が上だが、体力と筋力に優れるシンジの方がこの手の滑りには有利だった。
だがレイカは上手い上に速かった。
はっきり言ってシンジだろうが青葉だろうが、レイであっても敵わない。
日向は言わずもがな………。
全員で滑り始めたレイカを見ている。
「うーん、レイカさん上手いね、レイちゃん。」
顔はレイカの方を向いたまま話しかけるシンジ。
「そうね。悔しいけどまだお母さんの方が上手いみたい……。」
少し悔しそうに答えるレイだった。
「世の中には上がいるもんだよなぁ、マコト。」
「そうだな……少なくとも俺たちじゃ太刀打できんな……。」
上機嫌のレイカが戻ってきたところで一行は一休みする。
板を突き刺してストックを渡し、そこに寄っかかって二人して空を眺めているシンジとレイ。
「楽しいね、レイちゃん。」
「うん、たっぷり滑ったし、天気もいいから最高ね。でも私はシンちゃんとこうして一緒にいられればどこでも楽しいの。」
ちょっとはにかみながらシンジを見詰めて言うレイ。
「それは僕だって同じさ……。レイちゃんがこうして傍にいてくれるなら幸せなんだ……。」
サングラスをかけているためにお互い向き合っても瞳を見る事はできないが、完全に独自のピンク空間を作り上げている二人。
「でもさすがに少し疲れたんじゃない?レイちゃんは体力があまりある方じゃないから……。大丈夫?」
こんな時にも自分の事を心配してくれるシンジに感謝するレイ。
自分が愛されているのだと実感できる。
「大丈夫よ……。でも本当は少し足が張っているの。滑りすぎたかしら?」
心配をかけまいとする気持ちと甘えたいという気持ちがせめぎ合い、やや矛盾した答えを返す。
口調も微かに甘えた感じだ。
「そうかもしれないね。だったら今日はもう上がろうか?無理して怪我でもしたら大変だよ。」
「それは………でもシンちゃんはもっと滑りたいんじゃない?」
「そんな事は気にしなくて良いよ。レイちゃんが怪我なんかしたらそれどころじゃないだろ?」
そこまで自分の事を気遣ってくれるシンジに抱き付こうとする衝動を必死で押さえるレイ。
「……ありがとう、シンちゃん……。お言葉に甘えて上がらせて貰うわ。」
「うん。じゃあ僕はレイカさんや青葉さんにその事を言って来るから、戻る準備をしていてね。」
そう言うと身体を起こしたシンジは少し離れたところで休んでいるレイカ達の方に歩いていった。
『シンちゃんって優しいなぁ……。いっつも私の事を考えてくれるのね……。あれっ?そう言えば今戻ったらシンちゃんと二人きりかしら?』
ふと大事な事に気が付いたレイ。
見る見るうちに頬が赤くなる。
「お待たせレイちゃん。みんなにはことわってきたから戻ろうか。……うん?どうしたのレイちゃん?」
顔が赤いレイを心配して覗き込むシンジ。
「えっ!?あっ!シンちゃん。」
急に覗き込まれて間近に迫ったシンジの顔に気が付きドキドキするレイ。
「な、何でもないのよ。さぁ帰りましょ。」
そう言ってスキーを履いてストックを腕に通す。
「何かあの二人……すごくお似合いですね………。」
滑り始めた二人を見送りながら青葉がポツリと呟く。
「そうでしょう?私もユイもそう思っているの。」
「両家の親公認なんですか?」
興味深そうに尋ねる日向。
「えぇ。あの子達の気持ちが変わらなければ二人で幸せになって欲しいし、全面的に協力するつもりよ。」
「そうですか……。シンジ君、君は幸せなんだな。」
そんな3人の声を背景に、シンジとレイは楽しそうにコテージへと滑り降りていった。
「レイちゃん、寝てる?」
あれから戻ってきたシンジとレイはお風呂に入った後、管理棟のロビーでデッキチェアに横たわって休んでいた。
まだ時間が早いせいか他には誰もおらず、メンバーも帰ってきていない。
少し疲れた様子のレイを心配してジュースを買ってきたシンジが声をかけた。
「ちゃんと起きてるわ、シンちゃん。」
そう言って身体をシンジの方に向ける。
「はい、喉乾いたでしょう?」
「ありがとう。」
手を伸ばしてジュースを受け取ると、コクコクと飲み干す。
余程喉が渇いていたのだろう。
それを見てシンジも一気に飲み干した。
「でも今回は驚いたよ。レイちゃんがこんなにスキーが上手かったなんてね。こんな事ならもっと早く教えて貰えば良かった。」
「大丈夫よ、シンちゃんだって上手いじゃない。私なんて人に教えられる程上手くないもん。」
「そんなことはないさ。レイちゃんはもっと自分に自信を持ちなよ。容姿だって抜群だし、性格だって可愛いよ。それに得意なスポーツだって
あるんだから。僕は彼女であるレイちゃんの事が自慢なんだからね。」
シンジの眼は嘘を言っている眼ではなかった。
『私がシンちゃんの自慢?私ってシンちゃんが人に自慢できる彼女なの?』
自分以外の人からそう言われると何故か自信が湧いてくる。
「そうなんだ………。だったら私頑張るね。シンちゃんに相応しい彼女になるように頑張るから、置いていかないでね。」
「今でも充分だと思ってるよ。」
久しぶりに二人きりの時間を持てた事で少し大胆になった二人は抱き合い大人のキスを交わす。
今だけは親友だろうが親だろうがいて欲しくはない。
そう、二人だけの時間に無粋な存在は不要なのだ。
「………んっ……あん……シン…ちゃん………。」
「……な…に……レイ…ちゃん……。」
ようやく口がきける状態になった二人は喘ぎながら会話を始める。
夢中になりすぎて息が苦しくなったらしい。
「お願い……ギュッと抱き締めて………。」
潤んだ瞳でお強請りするレイの前に一瞬で陥落したシンジは腕を廻して力強く抱き締める。
時間が止まったかのような瞬間に身を委ねる二人の耳にパタパタという足音が聞こえた。
他人が来たと思いパッと離れる二人。
「パパぁ〜〜こっちで休めるよ〜。」
5歳ぐらいの子供が嬉しそうな顔をして走ってくる。
「こらっ、走ると転ぶだろう。」
少し遅れて両親と思われる二人が姿を現す。
そんな光景を柔和な表情で見守るシンジとレイ。
「「……いつかは僕ら(私達)もこうして………。」」
思わず同時に口にした未来に気が付き顔を見合わせて笑い出す。
「そろそろ戻ろうか、みんなが帰ってくるよ。」
「うん。」
そう言ってコテージに向かう二人の手はしっかりと繋がれていた。
他のメンバーが帰ってきた頃にはいつもの二人に戻っていたため、二人きりの時に何をしていたのか気にする人間はいなかった。
こうして無事にスキー旅行2日目が終了した。
残念な事に3日目は天候が崩れたためにスキーは出来なかったが、室内施設を使って暇を潰したために文句は出なかった。
かくして周囲に二人の強固な絆を知らしめたスキー旅行は無事終了したのだった。
(後書き)
本来は「続き書け」というメールが来たら公開する予定だった「リナレイちゃん−スキー編」のおまけです。
どなたからも要望がなかったのですが、このままお蔵入りも寂しいので公開する事にしました。
今スキーシーズンも終わった事だしね………。
ところで……キャラをこれ以上増やすと自らの首を絞める事になると言うのに、いきなりマヤ再登場、青葉、日向も初登場です。
まぁ、今後出てくる機会は無いと思いますが、私は何となく青葉シゲルというキャラ気に入っているんですよね。
名前しか登場しないアスカ嬢よりも、このシリーズでの扱いはいいかもしれません。
ユイ :は〜いユイお姉さんのスキー教室〜!(SE:ドンドンドンパフパフ〜)
綾吉 :あの〜ユイさん、「お姉さん」って・・・
ユイ :何か文句あんのっ!?
綾吉 :ありませんっ!!!!
ユイ :宜しい。では早速
綾吉 :あのユイさん、スキー教室よりも作品の感想などをお願いしたいのですが・・・
ユイ :そう? じゃあスキーは後でゆっくり教えてあげるわ(ハァト)
綾吉 :ハハ・・・そうですか(勘弁してつかぁさい)
ユイ :感想ね〜シンジもレイちゃんも初々しいと言うかまだるっこしいと言うか・・・
綾吉 :ええ、でもそれが良いのでは?
ユイ :私は早く孫の顔が見たいのっ!!
綾吉 :シンジとレイの子供ならきっと可愛いでしょうね〜
ユイ :『シンジとレイの子供』、じゃなくて『私、の孫』よ?
綾吉 :は、はい
ユイ :そういうわけで、NKさんには私に孫が出来るまで頑張ってもらわないとね!
綾吉 :そうですね。と言うわけでNKさん、期待してます〜(爆)
ユイ :NKさんの続きを読みたい方は感想メールを出すといいわ
綾吉 :皆さん、お願いしますね〜
ユイ :SeeYou!