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 さてと、今日はあの子は来てるかな〜?っと
 最近はこれだけが楽しみで生きてるようなもんだからな〜
 軍艦や女の子の写真もいいけど、今はこれに勝てないよな。
 頼むから今日も来ててね!メグミちゃん!
 おお、今日も沢山来てるな〜この時間で6人か、みんなメグミちゃん目当てなんだろうな
 でも、フフフフフ、彼女は俺のアップしてる写真を見に来てくれてるんだぜ
 おっと、今日もいる〜メっグミちゃぁ〜ん!
 少年の眼鏡が怪しく光る。


 ある夕暮れの一時だった。





綾波天国17777ヒット記念SS
チャット
Written by 綾吉






 別段何の変哲もない部屋、とはどうにも言い難い部屋だった。
 部屋を飾るのは戦闘機や軍艦の模型や写真。
 そしてカメラが幾つかとカメラの為の器具が一式。
 カレンダーも世界各国の戦闘機のデザインである。
 そして、ベッドとタンス。
 パソコンだけが乗っている机。
 それだけである。
 わかりやすい、趣味丸出しの部屋だ。
 多少一般受けはしない趣味ではあるが。
 しかも、丸出しというよりどっぷりと深いところに嵌っているといったほうが正しい気もする・・・・


 しかし、少し目を凝らして部屋を飾るオブジェの一つ一つを見てみれば、それがいかに大事に扱われているのかが手にとるようにわかる筈だ。模型にも、写真にも、カメラにも惜しみない愛情が込められているのがわかる。きっと一つ一つに想い出が込められているのであろう。模型は綺麗にディスプレイされ、写真もきちんと額に入れ飾られている。カメラも念入りに手入れされており、窓から差し込む光を反射して鈍く輝いている。毎日のようにこまめに正しく整備をしないとこうはならないだろう。手入れに関してだけならプロのカメラマンと較べても遜色ないといっても差し支えない。そして、そのカメラで撮られた写真もプロ顔負けの出来映えで、部屋を飾っている。そう、この部屋にある写真は全て部屋の主である眼鏡の少年が自分で撮影して現像したものである。流石にポスターやカレンダーは市販のものだが普通では手に入らないレアものである。

 そんな部屋の持ち主はというと、楽しげな表情で鼻歌を歌いながらパソコンに向かっている。毎日学校に持ち込んでいるデジカメをパソコンにつないで編集中のようだ。彼は昔ながらのアナログカメラ、現在流行のデジタルカメラの両方を撮る目的に応じて使い分けていた。よくよく注意して観察してみると他にもどのような用途で使うのかわからない特殊な形状をしたカメラだとか、ハンドサイズのデジタルビデオなどがクローゼットの中にひっそりと −無論ばっちり手入れされて− 置かれていた。

 現在編集中のデータは学校での日常のヒトコマだ。デジカメのメモリーが一杯になるまで撮影して、帰ってから編集するのが彼の日課であり楽しみでもあった。このデータは学校がある日や、友人と過ごした日のは必ず更新されているが、彼の運営するホームページでは非公開の −いや存在すら誰にも知られていない− 彼だけの秘密だった。勿論、何故か美少女に言い寄られながらも全く気付く素振りを見せない鈍感少年やいつも黒いジャージしか着ない関西弁の友人にも言っていない。

 それが終わるとまた次のデータの編集に取り掛かる。今度も学校のようだが、さっきと少し違うのは女子生徒しかフレームの中に納まっていないことだろうか? これこそが彼の副業であり、趣味を支える大事な収入源であった。中学入学時からコツコツと地道に苦労を重ね人気のある女子を隠し撮りする傍ら、販売網を広げてゆき、今では他の中学や高校、果ては大学からも注文が来るまでになっていた。それでも彼の中のモラルとして18禁なモノや公開されて人権を侵害するものは取り扱っていなかった。肖像権を無視してはいるのだが・・・・

 そして、彼女募集中の14歳な彼は気付いて・・・・・・・・いるのかも知れないが、この商売が彼に彼女が出来ない理由1位にランクインされていた。因みに2位はオタク、3位は妖しいとなっている。普通、学校の女子の写真を勝手に男子に売っていればそれだけで彼女どころか、嫌われて迫害される可能性のほうが高いのだろうが、そこは彼のキャラクターと普段撮影している真面目なほうの写真を女子には無料でプレゼントしている為ギリギリのところで助かっている。実際、何かの行事の際にはプロのカメラマンが写真を撮るものだが、彼の写真の方が断然人気があり、普段からカメラを持って歩く彼に撮影を頼む者も少なくなかった。

 技術的にはプロの方が上なのだが、毎日撮っている為か、自分自身も学生な為か学校での写真だけは不思議とプロよりも良いモノが出来るのである。誰もが喜ぶ瞬間、みんなが自然に笑ってしまう一瞬を逃さないのだ。出来上がった写真を見たカメラマンが苦笑しながら言ったものである。「きっと、本当に被写体のことを好きで熟知してるんだろうね。毎日一緒に過ごしているんだもんな。これに関してだけは彼に敵わないよ」と降参宣言。そしてそれが縁で現在は彼と友人として付き合っているが、これは余談である。


 さて、そのデータの処理も済むとインターネットで巡回サイトを一通り廻った後に自分のサイトへアクセスするのも彼の日常であった。ここで漸く冒頭に繋がるのである。
 楽しげな表情はデレデレとしまりのない間抜け面に変わり、眼鏡が更に怪しく光っている。彼は自分のホームページに設置してあるチャットの参加者を確認すると喜び勇んで【入室】するのだった。
 現在参加者は彼を除き6人だが積極的に発言をしているのは、『メグミ』と『トウコ』の二人だけ。後は時折レスがつくだけで、恐らくチャットと並行して他の作業を行っているのだろう。よくある事だ。彼にとってもそっちの方が都合がいい。お目当ての『メグミ』と沢山話せるから。
 最近、チャットに出没する時間が加速的に増加している。それも全て『メグミ』の存在があればこそだ。彼のネット歴○○年の勘が彼女はネカマじゃないと告げていた。だから、IPを調べたり、ハッキングをかけたりなどはしていない。それは彼の道義であり、ルールであり、信念であり、また甘いところでもあった。まあ男なら仕方がないのかもしれない・・・

 





 同時刻 コンフォート17の1室

 「で、これがあのメガネオタクのホームページなわけ?」
 「うん、それにしても凄いよね〜開設して2年でもうこんなにアクセス数が伸びてるなんて」
 ケンスケのHPのトップページにあるアクセスカウンターは既に80万間際の数値を示している。因みに使われているカウンターはリロード不可の同一IPをカウントしないタイプのケンスケ自作カウンターだ。
 「どうせ、自分で一生懸命水増ししたのよ」
 「ひどいな〜アスカ」
 「何がよ? あいつならやりそうでしょ?」
 「うん、確かに、やってそうな気もするけどさ・・・でもHPの作りは凄いと思うよ。とても個人の趣味のサイトとは思えないよ」
 「確かに・・・内容もまともだしね。それは認めてあげるわ」
そう、意外にもケンスケのHPはまともな内容だった。コンテンツはケンスケの撮った風景写真と日記、BBSにチャットだけというシンプルなものだが細かく計算されよく作りこまれていた。しかし、アスカは、いやシンジも知らなかった。趣味のホームページには【キリ番】といってアクセス数増加の為のオプションとして、カウンターの数値がある一定の時にホームページを訪れた人に対して何かしらの特典があることが多い。そして、当然それはケンスケのホームページにも存在していた。そして、ケンスケのキリ番特典はというと、隠し撮りした街の女の子のデジカメデータなのである。その中にはアスカも含まれていた、というよりも断トツの一番人気として存在していてキリ番の報告をするときに大抵はアスカのデータを、とリクエストしてくるのだ。つまり、裏ページが存在するのだ。普段彼の写真を買ってくれる顧客にしかわからないようになっているが。
 「しかし、ケンスケって女の子やミリタリー関係以外の写真も撮ってたんだね」
 「意外にも好評だし・・・侮れないわね、メガネのクセして」
 表ページの掲示板にはケンスケの写真を誉める書き込みが多くあった。これはトウジしか知らないことだが、ケンスケは色々なコンテストに作品を応募していて賞を取ったことなどもあり、学生レベルの話ではあるが少しは有名なのである。良いことばかりが書き込んであるのも当然といえよう。もっとも、悪質な誹謗中傷、荒らしに対しては開設当初より徹底した対処をしてきたので存在しないようになったというのも事実である。そして、裏ページの掲示板にはケンスケを神の如く讃える信者たちの書き込みが溢れていた。
 「僕も掲示板に書き込んだり、チャットに参加したりしてるんだ」
 「へぇ〜、ってあんたね〜何よこのメグミっていうのは〜?」
 「いや、僕だとわからないほうがいいかな? と思って」
 「あたしが聞きたいのは何で女の名前なのよって事よ!あんたネカマなの!」
 「いや、そ、そんなつもりはないけどさ!」
 「大体ね〜IPとか調べればすぐにあんただってバレちゃうわよ!」
 「ええ〜っ? そうなのっ?」
 「あんたバカァ?」

 

 アスカのシンジへの追求はまだまだ続くようだ
 しかし、肝心のケンスケはというと・・・・

 「メグミちゃ〜ん!!」
 全く気付いていないようだった・・・・・



 そして、更に不幸なことにケンスケのホームページでチャットを利用している常連はトウジ、カヲル、青葉、日向、冬月など男ばかりだった・・・・・・・・・・・


 頑張れケンスケ! 来世があるさ!
 いや、多分、きっと、恐らく・・・・・・・・・・やっぱ無理か








後書き

 綾波天国17777ヒット記念リクエストSSでした。リクエスト内容は「チャット」だったんですが、「チャット」というよりも「ホームページ」になっちゃいました。すいません(T_T)
 しかし、毎度毎度ケンスケが憐れな気もしないではないですが、それがケンスケの運命なので諦めてもらいたいものです(爆)
 さて、リクエストしていただきました黒いハーピィさん、いかがでしたでしょうか?今後も綾波天国を宜しくお願いします!(^^)


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