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人類○○計画 その1
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「人類保温計画、ですか?」
「そう。地球は着実に氷河期に向かっているわ。温室効果ガスを使って地球全体を暖めるという方法もあるけど、でもそれでは環境そのものが破壊されてしまう。その意味で、20世紀の終わりからはじまった環境対策は間違いではなかったわ」
「はぁ」
「つまり地球全体を暖めるのではなく、人類そのものを暖めればいいの。でもそれに外部のエネルギーを使うのは間違っているわ。機械は必ず壊れる。その時のリスクを考えれば、体温を使うのがベストなの。冬山登山でアクティブな保温装置を用いた防寒服を使わないのと同じよ」
「……そうですか」
「そう。これが人類保温計画。人類を保温する。まさに言いえて妙ね」
「…」
「これがその計画の全貌よ」
「これは…キティちゃんの着ぐるみじゃ?」
「外見はそうね。プラグスーツの機能も併せ持っているの」
「……なんでキティちゃんなんですか」
「猫は嫌い?」
「いえ、好きですけど…」
「ならいいじゃない。それに、キティちゃんの日本でのオフィシャルな声は誰がやってるか、知ってる?」
「あんまり興味ないんですけど」
「そう。それは残念ね。まぁいいわ。明日からのシンクロテストはこれを使ってもらうから、そのつもりでいて頂戴」
「……」
「何か不満があるの?」
「いえ、特にないです」
「レイとアスカのきらきらした目をごらんなさい。ちょっとは見習うべきよ」
「…あきれてるように見えるんですけど」
「……」
「…」
「………」
「あの、帰ってもいいですか」
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人類○○計画 そのに
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「人類ホーン計画?」
「そう。現代のポピュラーミュージックにホーンセクションは必要不可欠。シンセサイザーで代用なんて邪道だわ」
「はぁ」
「ストリングスもいいけど、あなたたちには明日からホーンセクションを担当してもらうから。そのつもりでいて頂戴」
「…お先に失礼します」
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人類○○計画 そのさん
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「人類コーン計画……」
「そう、トウモロコシよ。美味しいわ」
「…」
「…」
「…」
「で?」
「なんでもないわ」
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人類○○計画 そのよん
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「シンジ君、待ちなさい。人類コンコン計画っていうのがあるの」
「キツネの着ぐるみですか」
「どうして分かったの?」
「ミサトさんがお腹すかして待ってるんで、失礼します」
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人類○○計画 その伍
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「シンジ君、人類多感計画っていうのを考えたんだけど」
「なんですか?」
「人間、歳をとると感性が損なわれるわ。でもそれは心が年老いたからじゃない。そう思い込んでいるだけ。自分の人生はこんなもんだって、自分で規定してしまうのは悲しい事だわ」
「そうですね」
「誰もがかつては14歳だった。その頃の事を思い出して、人生前向きに生きようというのが、この計画の骨子よ。どう?」
「……素晴らしいように思います」
「ありがとう」
「具体的にはどうするんですか」
「とりあえずあたしは、化粧を落として髪を黒に戻してお下げにでもしようかと思ってるんだけど」
「外見の問題ですか?」
「見た目から入るのも重要な方法よ」
「大人の女の人の魅力っていうのもあると思いますけど」
「そうかしら」
「もう挫折ですか」
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人類○○計画 その六
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「人類俯瞰計画」
「人生斜め上から見るんですか」
「シンジ君もだんだん分かってきたわね」
「僕、早く大人になりたいです」
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人類○○計画 その七
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「シンジ君、最近やけによそよそしいわね」
「…いえ、そんな事ないです」
「人類ミカン計画よ」
「前に人類コーン計画っていうのがありましたけど」
「似たようなものね」
「スイカじゃどうしてだめなんですか。加持さんも喜ぶと思うんですけど」
「語呂が悪いわ」
「どうでもいいんじゃないですか?」
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人類○○計画 その八
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「シンジ君、黙って聞きなさい。人類保険計画よ」
「……」
「反応しなさい」
「黙って聞けってリツコさんが」
「適宜反応しながら聞きなさい」
「はい」
「人類はいつか滅びる。長いスパンで見れば、それは間違いないわ。その時のために保険をかけておくのよ」
「はい」
「保険会社は乗ってくると思う?」
「って言うより、受取人は誰にするんですか」
「……考えてなかったわ」
「あ、綾波、待ってよ。一緒に帰ろう」
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人類○○計画 その九
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「人類ほかほか計画っていうのはどうかしら」
「どうかしらって言われても。あったかそうですよね」
「でしょ」
「……」
「……」
「それだけですか」
「そうよ。ダメかしら」
「仕事しなくていいんですか」
「ダメかも」
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人類○○計画 その十
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「人類ほかす計画」
「何するんですか?」
「美少女が人類をほかすの。下着をちらちらさせながら」
「売れ線狙いですね」
「分かる?」
「分かりますよ。で、何の意味があるんですか」
「殿方のリピドーを満たすためと、お金儲け」
「やって下さい。でもアスカも綾波も使えませんよ」
「あら、どうして」
「誰が説得するんですか」
「あなたよ」
「僕を殺す気ですか」
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人類○○計画 その11
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「人類果敢計画よ」
「人生に対して果敢にあれこれするんですね」
「そうよ」
「いいんじゃないですか?」
「なんか冷たいわね」
「人類と人生の違いについて説明して欲しいんですけど」
「嫌よ」
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人類○○計画 その12
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「ねー、シンジぃ」
「なんだよ。明日のお弁当の仕込みで忙しいんだけどな」
「そんなこと言わないで、ちょっと見てよ」
「もう。なん……」
「どお?」
「じ、人類コンコン計画……」
「そーよ。かわいいでしょ?」
「……」
「お気に召さないの?」
「い、いや、可愛いとは思うけど……」
「まぁいいわ。ファースト、出番よ」
「あ、綾波まで……」
「人類保温計画よ。ファーストっ、はいっ、どおぞっ!」
「はろー、あたし、キティ!」
「……」
「あたし、もうダメなの……」
「いや、ダメじゃないけど、綾波っていうキャラのイメージがね……」
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人類○○計画 その13
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「シンジ君、待ちなさい!」
「嫌ですよ」
「人類予感計画よ!」
「だからなんですか」
「とりあえず止まりなさい!」
「嫌です」
「話を聞きたくないの?」
「聞きたくないです」
「敵前逃亡は重罪よ」
「誰が敵なんですか」
「使徒に決まってるでしょ」
「どこにもいませんよ」
「……そうね」
「あれ、あきらめ早いですね」
「ひっかかったわね。離さないわよ」
「……分かりました。聞きます」
「人類予感計画よ」
「それは聞きました」
「……」
「中身を考えてなかったんですね」
「帰ってもいいわ。お疲れ様」
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人類○○計画 その14
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「シンジ君、人類補間計画の事なんだけど」
「はい」
「引っかかったわね。補完じゃないわ。補間。間を補うのよ」
「人類の間だって、なんですか」
「知らないわよ、そんな事。ミサトにでも聞いてみたら」
「そうします」