Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.1 ) |
- 日時: 2010/11/02 20:32
- 名前: 何処 ID:T3XpslAXA8k
- 【ラブラブ仕様】
碇君がフィフスとキスをしていた。 夕暮れの教室で二人の影が重なる。その姿を見送り私は学校を出て部屋へ帰った。
日常。普段と何ら変わる所のない、普通の1日…
制服を脱ぎ、クローゼットに仕舞う。
空調は節電モードのまま。下着姿で過ごすには丁度良い。
宿題を解く。いつも通りテキストの簡易応用問題。 さして難しくはないが、果たしてこれにどれ程の意味があるのかは判らない。
いつも通りの食事、栄養強化ビスケットとミネラルウォーター。 規定量を食べ、行動維持カロリーを摂取する。
処方薬を飲めばミネラルウォーターは空。 その空瓶に水道水を入れカルキ抜き。セカンドから貰った金魚の泳ぐ水槽の隣に置く。
後はシャワーを浴び、睡眠を取るだけ… 替えの下着を持ち浴室へ。
歯を磨き、脱衣場で脱いだ下着を洗濯機に入れ、洗剤を規定量入れる。 電源を入れスイッチを入れ、作動を確認。
シャワーを浴びる。熱目の湯が肌を叩く刺激が心地良い。
水着の跡が最近気になる。赤木博士は遺伝子治療の効果だと説明していた。 通常の保護代謝反応なので気にする必要は余り無いと言ってくれたが、やはり気になると言うと赤木博士はUVカットクリームを処方してくれた。
“…貴女も女の子ね…” “?”
赤木博士の台詞に私は困惑した。遺伝子的に間違い無く私の性別は女だが…どう言う意味だったのだろう。
液体石鹸で体を洗う。皮膚の保護クリームを洗い落とすとさっぱりした気分だ。。
頭を洗う。シャンプーはリンスインタイプ。
碇司令の使っているトニックシャンプーの香りが好きでそれを買おうとしたら碇君に男性用だと指摘されたから、これにした。 コストも安い。だがセカンドには不評だった。
“女のたしなみって奴を持ちなさいよ!”と言っていたが…
そう言えばフィフスはシャンプーとリンスとトリートメントリキッドまで購入していた。
…ふと碇君とフィフスのキスシーンを思い出す。
…もやもやする。
少し頭を洗う時間が長かった様だ。浴室を出ると洗濯機は停止していた。
浴室に洗濯物を干し、換気扇を回す。
下着を着けていると携帯が鳴った。 表示は…
「…はい、綾波です。」
『…綾波、碇だけど…今時間大丈夫?』
冷蔵庫の上に置いた赤木博士に頂いた時計の針は漢字の八を描いている。
「…問題ないわ。」
『…あのさ、今から出られる?その…渡したい物があるんだけど…あ、いや急ぎじゃ無いから別に綾波が出れないなら又でも…』
「いいわ、どこに行けばいいの?」
…考えるより先に私は答えていた。
碇君の指定した場所は近くの公園。
通話を切り、ふと私は気付いた。
…急ぎの用じゃ無いと碇君は言っていた。 なら別に今夜じゃ無くても…
それより、私は何故行くと即答したのだろう。
…脈拍が早くなった気がする。ポカポカしてる。
クローゼットを開ける。伊吹さんから頂いたピンクのワンピースと葛城三佐から頂いたジーンズとデニムのジャンパー、学校の制服が並ぶ。
習慣で制服に手を掛け、ふと赤木博士の台詞を思い出す。
“制服はプライベートでは着ない方がいいわね。”
ジーンズを手に取り、伊吹さんの台詞を思い出す。
“男の子と会う時はスカートの方がいいかもね”
ピンクのワンピースを手にして、ふと私は気付いた。
…未だブラジャー着けて無い…
***
下着を身に付けながら頭の中を過る皆の台詞を反芻する。
“鏡くらい見なさいよね!” “リップなんか付けるといいわよ”
“髪に櫛通すぐらいはしなさい。身嗜みよ。”
“ちょっちアクセサリーなんか付けると可愛いわよん”
…
服を持ち洗面所へ行き、鏡の前に立つ。 私の目前には青みがかる髪と赤い瞳の女が一人。 その女の行動を私は観察する。
もう一度歯を磨く。 髪をとかす。 顔に乳液を塗る。 服を着る。 チョーカーを着け、リップを塗る。 腕時計を巻き、服にブローチを付ける。 何かを確認する様に右を向き左を向き背を向け首だけ振り返りながら背中を見ている。
…彼女は一体何をしているのだろう。 鏡から目を反らし、私は碇君から貰った腕時計を見る…
…急がなきゃ…
靴を履こうとして、ふと思い立ち霧島さんが薦めてくれたミュールを靴箱から出す。
…靴下履き替えないと…
***
公園にはもう碇君がいた。 私は碇君を視認して足を早め…。
何故私は足を早めたのだろう。さして時間は変わらないのに。
「碇君お待たせ。待った?」
「あ、うん。」
碇君はジーンズにワイシャツ姿だった。ベンチから立ち上がり私の方へ体を向ける。 碇君は最近背が伸びてミュールを履いた私と視線が同じ位にある。
「…」
「…」
…碇君は何故か驚いた様な表情で私をじっと見ている。 私も碇君を見る。久々に視線の位置が同じ高さ。 …何故そんな事が嬉しいのだろう。良く判らない。
「…どうしたの?」
「え?あ!う、うんそのあの…」
口籠る碇君。
「な…何かその…せ、制服しか見た事なかったから…つ、つい見とれちゃって…」
「…何を言うのよ…」
…湯冷めしたのかしら?風邪を引いたみたい。何か熱っぽい。脈拍も上がっている。 暫く碇君は下を向いていた。だけれど私は風邪薬を帰って飲まなければいけない。要件を早く聞きたくて私は碇君に問い掛けた。
「…で、何の用?」
「え?あ!あ、そ、そうだ、そ、その…こ、これ…」
「…これは何?」
手にした二枚の紙片の一枚を私に渡した碇君に私は質問した。
「ゆ…遊園地のチケット。ら、来週の日曜日もも、もし良かったらいいい一緒にどどどどどうかなって、あ、あは、あははは…」
「…あ、有難う…」
熱い。身体中が熱い。
「じ、実はカヲル君にその…相談したらこれがいいって…」
「…そう…」
急に熱が消える。
「でも酷いんだカヲル君、してもいないコンタクトがずれたなんて言って『見てくれないかい』って…で見たら何故か洞木さんは『不潔よ!』って騒ぐしトウジとケンスケは挙動不審だしマリさんは『気持ち悪いけど…面白いから良い!』なんて意味不明な台詞吐くし脇で話聞いてた筈のアスカは爆笑してフォローしてくれないし全く…」
「…大変だったわね…」
…何だろう?胸につかえてた何かが消えた気分。
「これ有難う。じゃ、私これで帰るわ。」
風邪薬を帰って飲まなければ。熱っぽいし。
「え?あ、う、うん、そ、そうだね、も、もう時間も遅いし、し、仕方無いよね、うん。」
…何が仕方無いのだろう?もう用件は済んだ筈だ。
「じゃ、おやすみなさい碇君。」
「あ!そ、その綾波…あ、あの、じ、時間も遅いしお、お、おお送ってくよ!」 「…何故?」
「何故って…ほ、ほらもう遅い時間だし女の子一人は危ないしその…」
「そう…じゃ、送って。」
…おかしい。護衛が付いている私達はさほど危険は無いのに。
でも私はその疑問を口に出さず碇君の申し出を受け一緒に帰る事にした。 安全策ならば取るに越した事は無い。
…やっぱり風邪ね。ぽかぽかする。
…あら?碇君、右手と右足が同調して…左手と左足も…どうしたのかしら?
おかしいのは私もだ。何故かしら?顔が変。おかしな位置の筋肉が動いて表情が歪む。
不思議な事に私達は十分の道程を二十分も掛けて歩いていた。
***
…そんな事が昨日あった。どうやら風邪は引かずに済んだようだ。
…ならばもう少し碇君と話していても良かったとふと思う。
何故かしら?
カレンダーの上に赤いマジックで印をつけながら私はそんな事を思っていた。
…でも何故だろう、今日私はほぼ五分間隔でカレンダーを眺めている。
良く判らないが私はカレンダーを見る度胸がポカポカする。
カレンダーの上、来週の日曜日の上に自分で書いた赤くて丸い印。
何度も見直し、印を指でなぞり、又暫くすると同じ事を繰り返す。
長期予報で来週の日曜日の天気予報を確認する。
電車の時間を確認する
チケットの通し番号を確認する。
部屋の中一人歩き回る。 そして又カレンダーを見る。近づいて赤い印を指でなぞり、又私はポカポカしながら同じ行為を繰り返す。
時間の進み方がやたらと長く感じる。
碇君の携帯に電話をかけようとして、話す事が無い事に気付く。
ベッドに横になる。 目を瞑る。 何故か碇君の顔を思い浮かべる。 寝返りをうつ。 時計の秒針の歩む音がする。
…眠れない…
時計を見れば未だ五分も経っていない。又起き出してチケットを…
そんな日曜日。 そんな日曜日。 私はどうしたのだろう。 私はどうしたのだろう。 私は…
…少し人間に近付いたのだろうか?
睡眠を取る必要を感じ、睡眠導入剤を手にして私はそんな事を考える。
明日は碇君に改めてお礼を言おう…そう思い私は錠剤を飲み下した。
…
あ、ご飯食べてな…
***
『あ、どうも。』
『…あなた誰?』
『こんにちは、使徒です。いつもお世話になっております。』
『…は?』
『あ、今晩はでしたね、失敬〃。いやぁこの度は私のペルソナが…あ、いやタブリスがご迷惑おかけしまして。』
『?…良く判らない…』
『あ、お分かりにならない。そうですか、いやそれは失礼しましたな、いきなり人様の夢に入り込んで』
『待って…貴方“使徒”と名乗ったわね?』
『ええ、私使徒です。仮にミカエルとでも名乗りましょうか…どうも口調が固いな、砕けて話していいかしら?』
『?ええ、構わないけど…』 『はあ、助かるわ〜、固い台詞は駄目なのよね〜、あ、説明しなきゃあかんね。使徒っちゅうのは単一存在にして不滅なもんで魂の記憶が永遠に積もるんですわ。ま、それだと記憶容量が大変なんで肉体得る毎にペルソナ作りましてな、その仮想人格に記憶の管理させとるんですわ。』
『はぁ…』
『で、私はその統括管理ペルソナのミカエルと申します。いや、統括と言っても只の図書館司書ですがね。お蔭で記憶も曖昧で言葉使いも色々まじってますが、ま、笑って許してくださいな、あはははは…』
『…で、その司書が私に何故謝るの?』
『いや、貴女と融合しかけた記憶から貴女が碇シンジと言う存在に抱く感情をあのダブリスが』 『待って…ではダブリスはセカンドの心を覗いたあの使徒の記憶も…』
『はあ、一緒に弐号機もですが。ですんでそちらに伺った時同調など簡単に出来た訳で。おまけに何やあの嬢ちゃんに何やえらい肩入れしてもうて、こら当分他のペルソナ出る幕ありませんな、あはははは。』
『…そう…』
『あ、いかんもう朝やな、じゃこの辺でおいとましますよって。』
『いえ…なんのお構いもせず…』
『あんた…ええ娘やな。そや、一つ教えてあげまひょ、昨日のあんたさん、うちのダブさんに嫉妬しとったんや。』
『嫉妬…あれが…嫉妬…』
『で、今日のあんたさんは、好きな相手に誘われて浮かれとったと。ま、所謂“ラブラブ仕様”つーか“恋愛ボケ”やな。』
『…何を言うのよ…』
『さて、これで消えますけん、又うちのダブさんアホやりますけどま、一つおっきな心で見守ってくんなまし、ほいでは失礼〜』
『さよなら…』
***
ピピピピピピピピ…
朝…
今の…夢?
変な夢…
だけど…
夢が本当なら私…
「ふふっ…うふふっ…」
私、ちゃんと感情有るのね…人間の…
そう…これが『嬉しい』って事なのね…
…危うく遅刻しそうになったけど、私は一日笑みが止まらなかった。
そう、私、人の心があるんだ…
使徒さん、教えてくれてありがとう。
ED【恋するボーカロイド】初音ミク ライブ映像 http://www.youtube.com/watch?v=T3XpslAXA8k&sns=em
『わてミカエルでっせ〜…ってあらいやだわ又口調が変ね』
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