Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.1 ) |
- 日時: 2011/01/16 20:05
- 名前: 何処
- 【少女愚考】
私は思う
何故人間は一年中発情期なのだろうか。
これでは諸々のトラブルが絶えないのも当たり前だし、雄の方は出費も嵩む。
ましてや雌…私もそうだが…においては更に大変だ。 独占欲と嫉妬心、羞恥心と見栄が渦巻く女心は意味不明に出費を強い時間を食い潰す。 はしたない女と見られたくない心理、彼に可愛い私を見て貰いたい心理が雌たる私を飾り立てさせる。 化粧、服装、アクセサリー、靴、ダイエットサプリ…
正直ゼミのコンパで「一番の彼氏へのプレゼントったらそら裸エプロン」と言って赤木助教授に殴られた葛城助教授の台詞が一番真実だとは思う。 大体好きな相手としたいのは雄も雌も大差無い。最も雄と違って雌は中々軽々しく物申せない内容だが…
「…イ…」
私の彼氏は巨乳好きだと確信している。好きだと顔に書いてあるもの。 彼が好きなアイドルは金髪碧眼のドイツ系クォーター。彼女のグラビアは女の私から見ても羨ま…いや、魅力的だ。 こっそり彼のコレクションを拝借して半ば嫉妬半分羨望しながら見たが…溜め息しか出ない。
基本的に体の構造から違うんじゃないだろうか?先ず足の長さが違う。スリーサイズに至っては…
「…レ…」
ま、まぁ胸に限って言えば私もそれなりには在る。公称サイズからすれば彼女も私も同じ位な筈だが…アンダーが細い分恐らくブラのカップは私より少し大き…ご免なさい。見栄張りました。
…日本人体型は不利よね… こほん!それはともかく。
何しろ身体的リスクが雌には高い。 それにメンタルが影響する女の感覚は中々説明しにくくて…
「…イってば…」
気持ちが乗らない時は鬱陶しいだけの行為を只嫌われまいとする為だけに行う時など我ながら演技上手いなぁと思う。 男と女のクロスロードは交差すらせず交錯しているだけなのではないだろうか。
「レイってば!」
思索…と言うより妄想に浸った私を同居人の声が現世に引き戻した。
「…あ!?ご、ご免なさい、又ちょっと考え事してて…で、何?」
「肉が足りない!」
食卓に私達は向かい合って座っている…お茶碗とお箸を持って。 どうやら私の作った食事内容にルームシェア相手のマナは声を上げた様だ。
…?…
「マナ…貴女の目の前にあるお皿に乗ってるのは何?」
「レイ特製豆腐ハンバーグよ。」
「…それ半分は挽き肉なんだけど…」
「違う!肉違う!私の求める純粋且つ単純且つ明快な動物性タンパク質と違う!」
…マナが食事に不満を言う時は、大抵彼女のガールフレンド絡みだ。 彼女の特殊な趣味は私には理解し難い点はあるが、私に彼氏が居ると知ってから言い寄られた事は無い。 何でも『お手付きはパス』だそうで…
…は、恥ずかしい…
「…今度は何?」
「李の阿呆が又付き合ってくれって迫って来た所目撃されたのよ…」
見た目とても愛らしい彼女は男女通じて非常にモテる。その特殊な性癖を知ってもアタックをかける男性は多いが…。
「李君もマメね…幼なじみなんでしょ?」
「そ。もーいい加減諦めてくれないかなぁー…あーもー!お陰であの娘はどうにも元気がなくて私もタバコは不味いし食欲は無いし…」
「…ご飯お代わりしないの?」
いつの間にか空になっている彼女のお茶碗を眺め私は聞いた。
「…はぁ、気分転換にナンパして可愛い女の子に声掛けても駄目だったし、そんな傷心のあたしに『お代わりしないの?』だなんて、レイは冷たいわぁ。これだから男がいる女はもう…」
「…そう言いながら空のお茶碗寄越すのね…」
…だからと言って寄越されたお茶碗にご飯を盛る私もどうかと思う…
「もう今日はそんな最悪な感じで仕方ないから家に帰ろうと歩いてると何故か足元に配置してあったのよ…」
「?何が?」
「バナナの皮…まんまと踏んでそれはもう見事にすっ転んでしまいましたわよ!衆人環視の中!」
「あらぁ…」
「腰は強かに打ち付けるわパンツは丸出しだわ恥ずかしいったらありゃしなかったわよ全く!」
パンツ…嫌だ、あたしと彼の出逢い思い出しちゃう… 文字通り出逢い頭の衝突で彼にパンツ見られて… お、思い出す度に、は、恥ずかしい…
「レイってば!」
再び妄想に浸っていた私を彼女の声が現世に引き戻した。
「…あ!?ご、ご免なさい、又あたし…で、何?」
「はぁ、そんな哀しみに打ちひしがれた私を癒してくれる筈のレイは例によって例の如く色ボケ真っ最中だし」
「…何を言うのよ…」
「その赤い顔が色ボケだっちゅうのよ!おまけに私の絶望を癒す筈の食事が何で和風豆腐ハンバーグとおろし大根シラス合えと大根サラダに大根の味噌汁なのよお!何か!?大根の祟りか?それとも大根祭りか今日は!?」
「大根…安かったから…バイト代入るのは来週だし…」
「ううう…経済的状況には勝てぬ…みんな李と貧乏が悪い…ククク…」
…マジ泣きしながらシラスおろしをご飯に掛ける彼女…やれやれ…
「…仕方ないわね…魚肉ソーセージ炒めたのでいい?」
「良い良い良いっ!おー肉!おー肉!おー肉!」
「クスクス…」
私は買い置きの魚肉ソーセージを炒めるべく台所に向かう。背中から彼女の声が聞こえた。
「ねーレイ、あんた必ず魚肉ソーセージ用意してあるけど…ひょっとして彼氏の好物な訳?」
「いいえ…私が彼に最初に作った料理がお味噌汁と魚肉ソーセージ入り野菜炒めだったの。そうしたら二回に一回はリクエストに魚肉ソーセージ入り野菜炒めが…」
「…へーへー、聞いたあたしが馬鹿でしたわぁっと。何その甘甘っぷり。けっ!胸焼けするわこん畜生め!」
「…食べたくないの?」
「ごめんなさいレイ様あたしが悪く在りましただからお願いご飯だけわぁ…」
「「…プッ!クスクスクスクス…」」
私は笑いながら斜に切った魚肉ソーセージを胡麻油で炒め出した。
…碇君に又作ってあげよ… 良い炒め物の匂いと彼の笑顔の思い出が私を高揚させる。思わず鼻歌混じりで料理。
「はい、お待たせ」
「万歳!魚肉万歳!動物性タンパク質万歳!アミノ酸イノシン酸万歳!」
…ふふっ、作り甲斐があるわ… そして私達は笑顔で食事を再開した。
…明日彼にお弁当持って行ってあげよう。魚肉ソーセージ入り野菜炒め入りの。
【おわり】
「あれ?珍しい雑誌が…あ?アスカじゃんこのグラビア。」
「え?知ってるのマナ?」
「うん。幼なじみ。施設の頃からの。?レイ、顔色が変よ?赤くなったり青くなったり…」
…おーまいがっ…
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.2 ) |
- 日時: 2011/01/24 01:20
- 名前: クロミツ
- 【草食系男子は如何にして肉食女子を育むべきや?】
「綾波、お弁当持ってきたよ」 「いらない」 「…そ、そんな剛速球で断らなくても…」 「いらないわ。だってそれ、お肉が入っているでしょ」 「いやそのぅ…そうだけど、中も見ないでなんでわかるの?」 「碇くんの考えることなんてお見通しよ。前も嫌がる私にムリヤリ食べさせようとしたくせに」 「ムリヤリじゃないよ。…でも、今度はロールキャベツにしたから、食べられると思うよ。 ひき肉を少なめにしたし、食感はほとんどキャベツから違和感ないって」 「しつこいわね。イヤなものは、イヤ。絶対食べないから」 「どうして、そんなに嫌がるのさ?」 「他のものは食べてあげてるでしょ。魚だって、少しは食べるようになったし」 「でも綾波は、食が細いというか、あんまり食べないし…その、たくさん食べられないのは しかたないけど、やっぱり肉が足りないと強い身体が作れないし、病弱になっちゃうよ」 「要するにタンパク質やビタミンBを定期的に摂取すればいいんでしょ。 そんなのサプリメントで補給したほうが、お肉を食べるよりずっと効率的だわ」 「サプリメントを飲むのと食事は違うよ。だいいち、そんなのおいしくないし」 「碇くん、さっき栄養のことで話してなかった?美味かどうかなんて、論点をずらさないで」 「う、そうかもしれないけど…」 「それに、お生憎さま。私にはサプリメントの方が、ずっと美味しいわ」 「ちょっと!その言葉は酷いよ、薬の方が美味しいだなんて…」 「でも事実だから」 「傷つくなぁ…。綾波に美味しいって云ってもらえるよう、頑張って作ったのに…」 「碇くん、サプリメント食べたこと無いの?だから美味しさが分からないのね」 「だって、あんなの味がしないじゃないか」 「食べたことがないのに決め付けるのは良くないわ。私の持っているこれ、試してみる?」 「……いいよ」 「じゃあ、食べさせてあげる」 「…え?」 「目を閉じて…」
……ちゅ……
「…んっ」
……ちゅぷ…… ……ぴちょ……
「…はぁ」 「……ふぅ…」
「……ね、どうだった?」 「え?」 「わたしの味、どうだった?」 「……あ、あやなみの…あ、あじふらい……?」 「美味しくなかった?」 「ええっ!?いや、そ、そんなっ、そんなことないよっ!!」 「よかった…ごめんなさい、少し口紅がついちゃったかも」 「あぁ、だいじょうぶ、うん、ぜんっぜん、だいじょうぶだよっ」 「ね、こっちの方が余計な味が混ざらなくていいでしょ?100%、わたしの味だけ」 「は、はい、まことに結構といいますかなんというかまぁそのぅ……」 「じゃあ、今度は碇くんが食べさせて」 「えっ!……ぼ、ぼくがっ!!」 「いいでしょ、わたしも碇くんの料理、味わいたいの」 「料理…って、云っていいんだろうか…」 「イヤ?」 「ぜーんぜんおっけーです!」 「おねがい…」 「よぉし……じゃ、じゃあ、いくよ」
……ちゅ…… ……ちゅう…… ……ちゅうう……
「…んっ」
……くちゅ……
「……んんっ」
……ぴちゃ…… ……ぴちゃ……
「……んふっ」 「……あんっ」
……じゅる…… ……………… ……………
「……ぷはっ」 「………くふぅっ」
「……く、苦しかった……」 「…ケホッケホッ…」 「あ、あやなみっ大丈夫?」 「はぁ…ちょっと…はぁ…長すぎた……かも…」 「ゴ……ゴメン」 「碇くんが…むりやり押し込むから……少し、むせちゃった…」 「ごめんよ、思ったより難しいっていうか…綾波みたいにうまく舌が使えなくて…」 「ふふ…でも、窒息しちゃいそうなくらい…すごかった」 「…いやもう、あたまが真っ白になって、何がなんだか…」 「やっぱり、直接飲むのが美味しい。いかりくんの…」 「ぼぼぼぼぼくのっ、何っっ!?」 「どう、わたしが正しかったでしょ?」 「た、正しいというか…むしろいけないことの部類に属するのではないかと…」 「だめ?もうしちゃいけない?二度としない?」 「いや正しいっ!!間違いなく正義です!!」 「…よかった。この食事にも欠点があるの。サプリメントだけじゃ、なかなかお腹がふくれなくて」 「……え?」 「まだわたし、お腹がすいてるの」 「……えええええ!?」 「でもほら、薬はまだこんなにあるから心配いらないわ」 「は、はぁ…こりゃまたずいぶん買いだめを…」
「たくさん…食べさせて…」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 新年早々しょうもないネタですみません 「こんなの綾波さんじゃないやいっ!」という苦情は受け付けます
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.3 ) |
- 日時: 2011/01/25 05:48
- 名前: tamb
- ■少女愚考/何処
( No.1 )
盛り沢山だ(笑)。 確かに出費がかさむのは雄だけじゃないわな。
ちなみにボツになったお題を出す前に既にボツになってた案ってのがあって、それは「いき なり『やらない?』と言うと引っぱたかれるので『お茶でも飲みませんか』などと回りくどい ことを言わなければならない」というものなんですが、いかがなものでしょうか。いかがと言 われても困ると思いますが(笑)、というのも、
> 気持ちが乗らない時は鬱陶しいだけの行為を
このあたり、いかに気持ちを乗せるのかは雄の役目かなという感じもありまして、それが上 記の回りくどいセリフに繋がるのかなと思うと、ちょっと戦慄したんですよね。いやマジで。
で、李君て誰よ(笑)。
■草食系男子は如何にして肉食女子を育むべきや?/クロミツ ( No.2 )
サプリメント!
> 「ぼぼぼぼぼくのっ、何っっ!?」
何!?
このネタでギリギリお下劣にならないのはさすが。シンジ君の「まことに結構」とか「間違 いなく正義です!!」とかのセリフが素晴らしい。 いろいろ思うことというか妄想は展開するけど、お下劣にならずに書くのは困難なので省略 させていただきます 。おもろかったっす。
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.4 ) |
- 日時: 2011/02/11 17:57
- 名前: JUN
好きだと顔に書いてある/ Written By JUN
外には雪が降っていた。段々と薄暗くなっていく窓の景色は、なんとも心を綻ばせてくれる。窓が 曇っているのが、外と中との温度差を感じさせ、今の自分の幸福を実感できた。目の前に注がれたホ ットココアが眠気を誘発する。普通のココアではなく、ネットを介して注文した高級品なのだと、こ れを購入した人間はどこか誇らしげに語っていた。 文字通り遺物となっていたコタツは再び役目を得て、長い憂さを晴らすように煌々と利用者の足を 暖めていた。 その恩恵を享受する人間が二人。向かい合って脚を伸ばして座る彼らの表情は、決して笑顔な訳で はない。しかしそこから醸し出す温かい雰囲気は、無言の空間に似つかわしくない。それでいて、ど こまでも似つかわしかった。
「ね、綾波」 「なに……?」
穏やかな表情は、今となっては全ての戦いを終えたことを端的に表していた。常に氷のような鋭さ を放っていた彼女の眸も、今は柔らかく温かい光を湛えていた。 「今日は、泊まってく?」 「うん」 「じゃあ、布団しくよ」 シンジはもぞもぞと立ち上がって、自分の部屋に向かった。レイはさながら親についていくアヒル のように、その後をついてゆく。その初々しさたるや、クラスメートが見れば驚愕するだろう。 「結構頻繁に来てるから、そろそろお客さん用じゃなくて綾波専用の布団買わなきゃね」 「私は、別に……」 「だめだよ」 不意に遮ったシンジに、レイは首を傾げる。 「どうして?」 「綾波が寝た布団で他の誰かが寝るなんて、僕、耐えられないよ」 「……ばか」
シンジが動く前に、レイはシンジの胸にしがみついた。シンジは狼狽したが、それが紅くなった顔 を隠すためだということを悟った瞬間、シンジは悪戯っぽく微笑んで、 「明日にでも行こうか」 「…………うん」 弱々しい声。恥らうようなその態度に、シンジはたまらなく愛しい気分になった。前髪をかきあげ、 額に優しいキスをすると、レイは瞬時身を固くしていたが、その内シンジの頬に唇を寄せた。 「ミサトさんとかがいないと、楽でいいね」 本人がいれば著しく機嫌を損ねるに違いない台詞に、レイはくすくすと笑みをこぼした。実は結構 毒舌、そんなことも最近知った。想いを告げたその日から、シンジは自分の知らない様々な面を見せ てくれる。当然その中には多少黒い部分もあるものの、幻滅するようなことはなかった。幻滅させて くれなかった、と言う方が適当かもしれない。彼の優しさの前では、そして彼と乗り越えてきた日々 を思えば、好きになるなという方が、無理な注文に思えた。 告白しようと決めた日は、この上なく緊張した。あの緊張に比べれば、ヤシマ作戦の方がまだまし だと思うくらいに。
校舎の裏だった。今思えば大胆だったと思う。急に呼び出したレイに、シンジは少し不安げな表情 だった。ちょうどNERVがサードインパクトの事後処理でごたついていた時だったので、何かあった と思ったのかもしれない。 でも、それはかえってよかったのかもしれない。呼び出すときに不要なクラスメートの視線を浴び ずに済んだから。 「どうしたの?綾波」 ややもすると女性のそれと聞き違えてしまいそうなほど柔らかく、高めの声。本人はもう少し男ら しい声になりたいらしいが、それがシンジらしいとレイは思う。 「あの――」
想いを告げている間、シンジはじっと黙っていた。普段沈黙に気まずい表情を見せるのは彼のはず なのに、その時沈黙を辛く感じているのは間違いなく自分だった。 何か言って欲しい。肯定か、あるいはそうでなくとも、シンジの答えを聞かなくては、胸が張り裂 けてしまいそうだった。 断られる可能性は十分に理解していた筈だった。しかしいざその段になってみると、それはとても 耐えられそうになく、今すぐ逃げ出してしまいたかった。
これ以上の沈黙には耐えられない、そう思った時、シンジは重々しく口を開いた。 「ごめん、綾波……」 申し訳なさそうなその声を聞いた瞬間、息が止まった。喉の奥が焼け付くように痛くなり、涙が溢 れそうになるのをぐっとこらえる。優しい彼に、これ以上の負担をかけてはいけない、最近やっと覚 えた笑顔で、このまま踵を返して――そう思った時だった。
気付くと、私は碇くんの腕の中にいた。
「僕が先に、言ってあげなきゃだめだったのにね…………」
安堵と、そしてこの上ない嬉しさ。そして先ほどの発言が彼の悪戯心だったことを悟った私がやっ と口に出せた言葉は、たった一言だけだった。
「ばか……」
このことを最初に伝えたのはアスカだった。驚いてくれるだろうと胸躍らせていたのだが、いざ報 告すると案外素っ気無かった。不満に思って理由を尋ねると、 「アンタばかぁ?そんなのアンタ以外全員知ってたわよ。好きって顔に書いてあったわ。アンタも、シンジもね」 「碇くんも?」 「そーよ。あのバカ包丁は乱れるし、意識は携帯ばっかりに行ってるし、アタシが発破かけてもでも でもって動かないし、もう鬱陶しいったらなかったわよ」 少し言いすぎだ。そう思ったとき、アスカは不意に優しく笑った。 「おめでと、レイ。あのバカ優柔不断だけど、優しいのは確かよ。大事にしてもらいなさい。もし襲 いかかってくるようなことがあったら蹴り上げてやるといいわ」 「何を?」 「言わせないでよ」 アスカは言って、そのまま会話を中断してしまった。どうやら深追いしてはいけないらしい。それ 以来、レイは何かあるとアスカに相談するようになった。無二の親友である。
うとうとと舟を漕ぎ始めたレイを、シンジは布団に寝かせた。干したばかりなので、ふかふかと柔 らかい。眠りの渦に引き込まれんとするレイの眺めながら、シンジも自分の布団に入った。 アスカもミサトもいない時、二人はこうして同じ部屋で眠る。布団の裾からレイが手を伸ばすと、 シンジはそれをそっと握った。 「……あったかい」 「アスカに見つかったら踏み潰されちゃうよ、きっとね」 レイはぷっと吹き出した。笑顔がすぐに出てくるようになったのは、ひとえにシンジの功績と言え る。もっともその貴重な笑顔を鑑賞できるのは、シンジを初めとしたレイの身の回りにいるごくごく 僅かな人数ではあったが。 「でも、アスカだってきっと渚君に同じことしてもらってるわ」 「アスカが?イメージ湧かないな、それ」 「二人きりの時は、色々話すもの。渚君のこととか、洞木さんのこととか……」 レイの声が小さくなる。眠いのだろう。 「私から渚君のこと話すと、少しふて腐れるの。特にアスカが知らないようなこと話すと」 「……きっと、綾波はアスカが僕のこと話すとふて腐れるんだろうね」 「……少し」 「なんか嬉しいな、それって。嫉妬とかされると、この人は僕のこと好きなんだな、って思うよ」 「……碇くんは、渚君が私のこと喋ったらふて腐れてくれる?」 「まあ、喋らないと思うけどね。けどまあそうかな。あんまり僕の知らない綾波のこと喋られたら、 気分よくはないね」 「……嬉しい」 また笑う。本当によく笑うようになったと、シンジは思った。この笑顔を教えたのは自分だという 自負も多少はあったが、それでもきっと、自然に笑顔が出るようになったのはアスカやミサトや、大 勢によるところもあるのだろう。 この笑顔を自分は護る。そう決めた。その決意は揺るいだことはないし、これからもないだろう。 天井から垂れた紐を引くと、部屋の中が暗くなった。レイの手を握り直そうとすると、その手は不 意に強く引かる。手のそれとは違う温かい感触が手の甲を走る。すぐにそれが、レイの吐息だと気が ついた。 「今日は、こうしていて」 首筋の辺りにシンジの手をかき抱きながら、レイは呟くように言った。シンジは暗闇の中にっこり と微笑む。 「物足りないよ、こんなんじゃ」 シンジが虚を衝いてその細い身体を胸元に抱き寄せると、レイの身体はびくりとわなないた。 「あっ……」 「この方があったかいよ。違う?」 「違わない、けど……」 耳まで紅くなっていることが、暗闇でもはっきりと分かる。少し前までの凛とした彼女も好きだが、 今のレイが、シンジは好きだ。愛しいと思う。 「朝まで、このまま?」 「嫌?」 「ううん。嬉しい……」
きっと明日はアスカの罵倒で起こされるのだろう。ミサトにはからかわれ、言い訳をするシンジの 側で、レイはきっとほんのり頬を染めるのだ。そんな当たり前の、しかしありふれていない日々を、 自分は護りたい。 「おやすみ、綾波……」
辛いことばかりだった彼女を、精一杯幸せにするために――
Fin…
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.5 ) |
- 日時: 2011/02/16 06:28
- 名前: tamb
- ■好きだと顔に書いてある/JUN
( No.4 )
実際にどうかというのはともかくとして、久し振りに問答無用なような気がする。このサイ ズで途中で視点や人称が変わるのはどうなのかとかそういう細かい部分はあるけど、こういう 読んでてほっとするような話はいいな。 しかしあれだ。この二人は布団を並べて寝るんだな。 そしてだ。わななく(笑)。どこでこんな言葉を覚えたのか問い詰めたい(笑)。
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.6 ) |
- 日時: 2011/02/25 21:29
- 名前: JUN ID:SBqaAAj8D4Y
- 縦の糸はあなた……
横の糸はわたし…… 織り成す布はいつか誰かを……
「暖め得るかも、しれない……」
私の口から無意識にこぼれたその言葉は、図らずも碇くんの耳に届いたらしい。座布団に腰かける 私の後ろから、晩ご飯を作る碇くんの声がかかった。
「何か言った?綾波」 「あ、ごめんなさい……うるさかった?」 「ん、そんなことないよ。でもそのDAT、だいぶ古くなったから買い換えた方がいいよ」 「いいの。これで」 「そう?」 買い換える必要などない。このDATは私と碇くんを結ぶ絆だから。LCLに浸かり、第十使徒に取 り込まれてもなお、このDATは再び音楽を奏でるようになった。赤木博士は少なからず驚いていた ように思う。 台所から流れてくる何ともいえない芳しい香りに、私のお腹がくう、と小さな音を立てた。碇くん の料理は、あの頃と変わらず、あの頃以上に美味しい。一緒に住むようになってから、交代でご飯は 作るようにしているが、やはり碇くんの方が見た目も味も遥かに上だった。 「はい、綾波」 「ありがとう。……いただきます」 今日のおかずは八宝菜にチンジャオロース、マーボー豆腐。中華なメニューに、胡麻油のいい香り が鼻腔をつついた。肉は今でもあまり好きではないけれど、碇くんが作ったものなら食べられる。我 ながら単純だと思うが、碇くんが作ったというだけで、何でも美味しい。 イアホンを外して、手を合わせる。その間に碇くんは烏龍茶を注いでいた。普段は麦茶だが、飲み 物までこだわるのが碇くん流なのだ。 「美味しい?」 「すごく」 「……よかった」
そんな簡潔な感想一つで、碇くんはとても暖かい笑顔をしてくれる。そんな顔を見ると、私も碇く んと一緒にいられる幸せを感じることが出来る。NERVから私たちにあてがわれたこの部屋は、私の 唯一にして最大の財産。部屋に価値はない。碇くんといるこの部屋こそに価値がある。 「さっき、何聞いてたの?」 「……これ」 「あ、僕も好きだよ。この曲。でも、結構古いよね?」 「ええ。でも好きなの」 「綾波らしいね」
幾分昔の曲だ。しかし一度聴いた時に、その歌詞に心を射抜かれた。碇くんという糸。そのかけが えの無さ。
碇くんは食器を持って、台所へ歩いていった。私はまたイアホンをはめる。あまり行儀のいい行為 ではないが、碇くんもよく似たことをしているので、お互い様だと思う。実際私は、多分碇くんも、 それをしていることを不快に思ったことは無い。
なぜ生きてゆくのかを迷った日の跡のささくれ…… 夢追いかけ走って転んだ日の跡のささくれ……
ささくれ立った私という糸。人でないという重い宿命を背負い、一度は世界と共に消えようとした。 価値は無いと思ったから。私という存在が、この世にある必要はないと。私という存在は疎まれこそ すれ、誰かに何かを与える存在にはなり得ない。それならば碇くんの望みを叶えて消えたい。心のど こかで、生きることを、人として生きることを望みながら。碇くんと一緒になりたいと望みながら。
こんな糸が何になるの…… 心許なくて震えてた風の中……
碇くんが紅茶を出してくれた。私はまたイアホンを外す。こんな何も無い時間が、私は何より好き だった。デートをしたり、ベッドで抱かれている瞬間も、それぞれ幸せを感じることが出来るが、そ れよりも碇くんの顔を真正面から好きなだけ眺めることが出来るこの時間の方が好きだった。その空 間は、私の心に刻まれた傷を確実に癒してくれた。 「僕も聴いていい?」 「ええ」 碇くんが立ち上がって私の隣に腰を下ろすと、碇くんの匂いがした。アスカに“匂いフェチ”と笑 われてしまっても、文句は言えない。碇くんの匂いが大好きだから。 一本のイアホンを二人で使う。いつもより密着して、頭を碇くんの肩に預ける。碇くんは手を添え て、そっと抱き寄せてくれる。人の温もりがどれだけ私にとって大切か、碇くんはよく知っているか ら。
縦の糸はあなた…… 横の糸はわたし…… 織り成す布はいつか誰かの傷を庇うかもしれない……
「私は……」 「ん?」 「私は碇くんの糸に、なれてる……?」 「…………」 碇くんは何も言わないまま、私の髪をかきあげて、耳の辺りに柔らかいキスをした。それが全てだ った。今さら言葉で安心を求めようとしてしまう自分の浅さを感じ、少し頬が熱くなる。 碇くんは私のことを好きと言ってくれた。周りの人に言うと意外がられるが、告白してくれたのは 彼だった。それならきっと、私は碇くんにとっての横の糸になれている。 互いに温めあって、互いの傷を庇いあう。私という単体では何の役にも立たない糸も、碇くんとい う糸に出会い、一枚の布になった。誰かを温めることも、誰かの傷を庇うことも出来る。それは紅い 海に消えようとしていた私では、決して出来なかったこと。今の私は、何にでもなれる。それは、私 という糸と、碇くんという糸が、交われたおかげ。碇くんに出逢えたおかげ。
肩に添えられた手は、いつまで経っても暖かかった。イアホンからは美しい、力のある声で、私の 一番好きな歌詞が流れていた。
縦の糸はあなた…… 横の糸はわたし…… 逢うべき糸に出逢えることを…… 人は「仕合わせ」と呼びます……
FIN
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.7 ) |
- 日時: 2011/02/25 21:31
- 名前: JUN
- お題はクロスロードです。一応
正しくはきっと“cross road”でしょうが、ここでは“cloth road”ということで。無性にこのネタで書きたくなったものですから。
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.8 ) |
- 日時: 2011/03/10 06:15
- 名前: tamb
- ■タイトルなし/JUN
( No.6 )
中島みゆきの「糸」です。 「仕合わせ」については前にもどこかで書いたような気がする。互いに仕え合うことのでき る幸せ。 曲を聴きながら読んでいたのだけれど、あっと思ったのは「いつか誰かの傷を庇うかもしれ ない」というフレーズ。布は傷をかばうかもしれないけれど、決して癒すわけではない。それ は自分自身で行わなければならない。これの意味するところは重要なのではないだろうか。
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.9 ) |
- 日時: 2011/03/31 01:55
- 名前: calu
「……遅いわ」
はらはらと黒い澱が雪のように沈殿をはじめた。それを薄めるように切っ先を入れる陽射しだけが光源 となっている。そんな茫漠とした空間で、独りごちた少女の髪は煌めきを放つプラチナブルー。 今、少女はどこかで見たローバックチェアに深く腰をかけ、前傾姿勢を保ったたおやかな身体を机上に ついた両肘で支え、両手の指を深海の鍵のように組んでいた。寛ぎとは程遠い環境の中で、先の呟きに具 現化されているように、少女の機嫌はよろしくはない。
「……案ずるには及ばん。直にやって来る」スポットが当てられたように幽玄とした姿を現したのは司令 の碇ゲンドウだ。樹海のような陰鬱さを隠すことも無く、コツコツとレイに歩を進めた。
「……レイ」 「……何でしょうか?」 「……おまえが座ってる椅子だが」 「…………」 「私の椅子なのだが――」 「あまりいい椅子ではない、と思います」 「そう…いや、そうでは無い」 「…………」 「長年私が――」 「碇くん、遅いわ」 「……そうか」
そのコメントとは裏腹に、さほど悪い椅子ではない、とレイは思った。体重を絶妙のバランスで受け止 めるスタンダードな形状ながら、長時間ゲンドウフォームを続けても、腰に負担が掛らない精妙な作りな のだ。わざわざドイツから取り寄せたワーキングチェアだけのことはある、と思った。だが、何かが足り ない、足りないのだ。そうだ、オットマンだ。ワーキングチェアだから百歩譲ってセダスのワークアシス トか。でも、ふんぞり返るには不安が残る。となれば、やはりハイバックがベストチョイス、というのが レイの最終結論だった。 こうした試行錯誤を怠る者のお尻が肥えることはないのだ。絶えざる熟慮が究極の結論へのトビラを開 放するのだ。
沈思黙考に沈むレイ。副司令の定位置でバケツを持たされた少年のように屹立するゲンドウは鬱陶しい が、今は腰を上げる気にはなれない。せめて、その到着を心待ちにしている少年が来るまでは。司令も健 康のためには、偶には立ちっぱなしもいいものだ。筋力の増強により基礎代謝はその時計の針を逆行させ ることもある。健康は爪に火を灯すような地道な努力でのみ涵養されるものなのだ。
「おはようございまーす!」 「遅くなってごめん! 間に合ったかしら!?」 「いやー悪い。ご婦人方の身支度に時間が掛っちまって」 「おっはよー。あれ? シンジまだ来てないの?」
ディラックの海でたっぷんたっぷん小舟に揺られていたレイの意識は、総司令室に突如としてなだれ込 んだ闖入者達によって強制的にサルベージされた。まるで夕立に降りしだかれた騒然さに支配されたエア ロックドア周辺に微塵の感情も見えない目を向けた。 ハッキリ言って、煩い葛城ミサトに長門マキ。相も変わらず加持リョウジに纏わりつく惣流・アスカ・ ラングレーはお約束のツンデレ一直線だ。闖入者達の名を指でなぞる様に呟いたレイは、妙な既視感に囚 われた。更には不吉なさきぶれにも。ちょっと待って、このパターンは…。
「アスカ、碇くん、見なかった?」 「見なかったも何も、アイツ、先に家を出たわよ」 「…そう」
また忘れ物でもして購買部で油を売ってるのだろう、とぼそりと呟いたゲンドウは、レイの紅い視線に 睨み据えられるや、雑巾を絞られるように器用に背筋を伸ばした。
(…このパターンは)
飛び出しナイフを抜くような切れ味で懐から携帯を取り出したレイに何故か激しく反応しているゲンド ウを尻目に、躊躇無く守秘回線を使い、レイは目的の相手を呼び出した。
「赤木博士。碇くんが行方不明、です。二課の杉一尉に確認を依頼してください」 ――レイ。心配には及ばないわ。今、シンジ君は購買部よ。 「…こうばいぶ、ですか?」 ――そう、こうばいぶ、よ。
だから言ったではないか、と不敵に言い放ったゲンドウをATフィールドで黙らせる。
「購買部に何か、あるのでしょうか?」 ――あるわ、当然だわ、と、リツコは言った。
だからそれを何だと聞きたいのだ、という言葉をグッと堪えて、いつもの抑揚の無い口調でレイは質問 を重ねた。
――決ってるわ。ネルフ購買部と言えば『物産展』よ、と、やけに大仰な抑揚をつけてリツコは言った。 「ぶっさんてん?」と、うろ覚えの呪文を唱えるようにレイは言った。 ――そう、ぶっさんてん、よ。そこの催事コーナーにシンジ君はいるわ。
チリと嫌な予感が、レイのこめかみを焼いた。いつの世も、二度あることは三度あるものだ。
「……また、たこ焼きでも焼いているのでしょうか?」 ――今回は大阪からの出展は、無いわ。だからたこ焼きもない。だから、シンジ君がたこ焼きを焼くこ ともないの。 「そお…ですか」
何がそうなのかよく解らないが、表情を緩め少し可愛らしい笑顔を浮かべたレイに、ここぞとばかりに ケンスケがシャッターを切っている。いつからいたんだ。
――あと、マキの妹も一緒よ、と、リツコは言った。
レイの携帯電話がメキリと嫌な音を立てた。あの女はダメだ。前科がある。珍しく絶句しているレイの 耳に、また余計なタイミングでフッと鼻で笑ったゲンドウの声が刺さった。特別にATフィールドをハリ セン状に展開し、思い切りその髭面をしばき倒した。誰の顕性遺伝だと思っているのだ。シーツを変える ように浮気をする男によって、どれだけの女が泣かされているか解っているのか?
「何故、碇くんは女の人と一緒なのでしょうか?」 ――あら、彼女はシンジ君のガードじゃない。 いや、だから…でも、そう。「でも…どうしてそんなに物産展が、頻繁にあるのでしょうか?」 ――総務局三課の楠三佐の嗜好に尽きるわ。購買主任もあの体格だから食べることについては協力を惜 しまないしね。 「…………」 ――まあもう少し待ってなさい、レイ。シンジ君、そこであなたの為になにか作ってるのよ、きっと。 本番前の腹ごしらえにって、ね。 「…わたしの為に、ですか?」 ――そうよ。あなたの為によ…たぶん。 「わたしだけの為に?」 ――そうよ……たぶんね。だから待てるわね。 「……はい」
ぽかぽかしながら電話を切ったレイに向かって、ふたたびケンスケが激しくシャッターを切っていた。 油断も隙もないが、まあいいわ、と大らかにやり過した。何といっても月より焦がれる少年が食べものを 拵えてくれてるというのだ…わたしの為に。繰り返された『…たぶん』は気にはならないといえば嘘にな るが、まあいい。女のガードと一緒というのも、今回は不問にしよう。恩赦、そう恩赦だ。いい響きでは ないか。
「ねえファースト、台本見せてよ」 「これ」 「えーとっ、タイトルは『伝えたいW』だったっけ? どんなプロットだったっけ? アタシの出番いつ?」 「知らない。まだ読んでないもの」 「はあー、相変わらずのぶっつけ本番ってヤツね……」 「作者が作者だもの」 「なんだか今回、あんたの出番、多そうね…」ぱらぱら台本を捲りながらアスカ様は少々不満なご様子。 「綾幸だもの」 「綾幸でも赤幸でもいーんだけど、次のクールもあんたがメインなのよね……。ま、いっけどさ。ところ で、バカシンジほんっとに遅いんだけど、購買部で何やってんのかしら?」
ふん、おおかた肉でも焼いてるのだろう、とぼそりと呟いたゲンドウは、三度目のATフィールドに身 体を震わせた。この男やはり基本的に打たれ強いのだ。
「え、お肉? だったらアタシ、脂だらけの霜降りよりガッツリ赤身がいい!」 「お肉の筈ない。碇くん、わたしが食べれないこと知っているもの」 「それにしても遅いな、シンジ君。カチンコまであと十分か……。間に合えばいいんだが」 「リツコも多分一緒ね」 「やっぱ碇、携帯に全然出ないや」 「携帯なんか鳴らさんでええ。いまシンジは、丹精込めて肉を焼いとんのやで。焼き過ぎたらどないすんねやー」 「ちょっとぉ、ドサクサに紛れてあんたら二バカが何でまた来てんのよ。今回なんて、ぜんっぜん出番無いじゃ ないのよ」 「じゃかあしゃあー、このアマぁ。ワイかてチルドレンや言うとんねんやろ。何回ゆうたら解んねん! ――と、 何やこのええ匂いは?」
「すいません、お待たせしました!」
エアロックの向こうから姿を現したのは、白衣のポケットに手を突っ込みながら悠然と闊歩するリツコ、 そしてその後ろには両手に大皿を抱えた長門ミキが従っている。
「待たせたかしら?」 「赤木博士」
コツリと革底を響かせ、睥睨するように辺りを見回したリツコに鋭い一瞥を向けたレイ。
「レイ、何?」 「碇くんは一緒では無かったのでしょうか?」 「シンジ君はもうじき姿を現すわ」 「そうなの、レイちゃん。それで先にこれを持って行ってって頼まれて、あたし」
何の予兆無くミキが手に持つ大皿からブワッとナプキンを取り除いたリツコ。その下から現れた中身を 見て、レイは卒倒しそうになった。にくニク肉。お肉でいっぱい。豪快に盛られたサイコロステーキから、 ガーリックとソースの芳香が三百年の封印を解かれた悪霊のように辺り一面に湧き出した。 瞬時に数メートルも飛び退いたレイに代わり、突撃してきたのは勿論トウジだ。すでに餓鬼憑きとなっ た顔と飛びかからんばかりの勢いに、ミキはドン引いた。 「これや、これやがなっ! ワイが待ってたんはああああ!」 「オッ、これは旨そうだな。絶妙な焼き加減は流石にシンジ君だな」 「そおなんです。物産コーナーで但馬牛が出展されてたんですけど、あたし主任さんに勧められるままに 挑戦したんですけど、焼き過ぎちゃって…見てられないって、シンジ君が交代してくれたんです」 「これはすごい霜降りだな。…おお、これは旨いじゃないか」 「はい副司令。塩はシンジ君秘蔵のバリ島の天然塩だそうです。みなさんもどうぞ。あれ? どうしたの、 レイちゃん?」
さっきまで隣にいたレイが、いつのまにか部屋の隅で何やら口を押さえている。どうしたの?
「……わたし、要らない」 「え? でもシンジ君が――」 「レイ、あなたがお肉を苦手なのはよく理解しているわ。でも、どうかしら、一度挑戦してみては?」 「……赤木博士、無理だと思います」 「でも、シンジ君は若しかしてあなたも食べてくれるんじゃないかって、気持ちを籠めて焼いたんだと思うの」 「…わたしのことを想って、ですか?」 「そうよ。あなたを想ってよ…たぶん」 「わたしだけを想って?」 「そうよ……たぶんね。だから挑戦できるわね?」 「…でも」 「それに、お肉、そう、動物性タンパク質を摂取すると、胸が大きくなるっていうわ。ねえ、ミキちゃん」
え? と顔をあげたレイの目の先で、タイミング良く、はあい、と振り返ったミキの胸がぶるるんと 果実のように弾んだ。
「食べます。赤木博士」
一連のやり取りを後方で観察しながら肉を咀嚼していたゲンドウの口の端が上がった。今まさにレイは 肉汁滴る但馬牛をその小さな口に近づけている。歴史的瞬間でもあるのだ。
「…………」 「どお、美味しいでしょ? レイ?」 「…………」 「レイ?」 「…………」 「…頑張って飲みこむのよ」
お肉を飲み込むため、眉根を寄せなぜか下腹部を押さえながら身を捩らせるレイは例えようもなく艶め かしい。後方ではパシャリパシャリとシャッターを切る音が水面を跳ねる水鳥のように舞っている。
「……赤木…博士」 「レイ?」 「………変身、しそうです」 「あら、じゃあ、もう一つどう? これで左右バランスが取れるわね」
思わずシャックリが出た。つまり、たった今、死ぬ思いで飲みこんだのは、左胸のぶんで、次のが右胸 のぶんとでも言うのだろうか? えらい事になってきた。しかし、それでもレイは健気に思うのだ。胸が 大きくがなれば、きっとシンジだって喜んでくれるにちがいない、なにより他の女に目が行くことなど無 くなるんだ、と。そしてその為には、目のまえの但馬牛――脂のてらてら輝く、この肉を、何としてでも 征服する必要があるのだ……何としてでも、わたしは――。
「すいません。遅くなりました!」
まるで効果音のような派手なエアの音を従え姿を見せたのは、紛うこと無き碇シンジだった。必死に走っ てきたのか、切れ切れの息を波打たせた体で整えている。
「……いかり…くん」 「…あ、綾波?」 「…わ、わたし」 「ど、どうしたの、綾波!?」
じわりと紅い瞳を潤ませたレイを前に、慌てふためくシンジ。よくよく見れば、目のまえの少女はその 指先にサイコロステーキの刺さった楊枝を、べそをかいた幼女が風船を持つように、いかにも心細げに持 っていた。
「…もう…もう」 「だ、ダメだよ。綾波はお肉は食べれないじゃないか!」 「…で、でも…お肉が足りないから……胸が…」 「無理をしちゃ、ダメだよ。綾波には、これを作ってきたんだ」
はい、とシンジが差し出したトレーからふわりとナプキンを取り除くと、そこには見栄え良く盛られた 料理が微かな湯気と芳しい匂いと共に顔を出した。碇くんは、やっぱり魔法使い。
「綾波のために特別に作ったんだ。丹波産夏野菜のエスカリバーダだよ」 「…………」 「…好きじゃなかったかなぁ」 「…そんなこと、ない」
ホッとした表情を浮かべたシンジは、ポケットからナプキンに包んだ銀のカトラリを手品のように取り だした。
「よかったら少しでも食べてよ。その、綾波のことを考えながら作ったんだ…」 「…………て」 「へ?」 「食べさせ…て」 「へぇ、えええ!?」 「……だめ?」 「は、恥ずかしいし、みんな見てるよ…あ、綾波」 「もう、カチンコが鳴るわ」 「…で、でも」 「……そう」
消え入りそうな声を洩らして顔を俯かせたレイに、シンジは冬眠明けの熊に出会ったように大いに慌てた。 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃ――。 「…ひ、ひとくち位なら」 「いかり…くん」
ふたたび顔をあげたレイの花びらを開いたような微笑に危うく頭をショートさせそうになったシンジだが、 頭を振ってスプーンに美味しそうな焦げ目のついた茄子を掬って、レイの口もとにそろそろと近付けた。
「……ど、どう?」 「おいしい。碇くん」
……よ、よかった…美味しいって言ってくれた……たった一口だけど。それでもよかった……綾波。
「これで…おあいこ」 へ?「おあいこ…って何?」 「…何でも、ない」じきに解るもの「それで…碇くん」
シンジの胸に顔を埋めるように体をすり寄せたレイに全身を硬直させたシンジ。
「どどどうしたの? あ綾波?」 「弐号機パイロットに試すように言われたの…」 「なな何を?」 「…浮気防止のおまじない、だと思う」 「う浮気防止って?」 「け・り・あ・げ・る」
へ? とシンジが漏らした声に、レイの鈴のように可愛い声が、えい、と続いた。 二階からコンクリートの地面に落とされたたこ焼きが潰れたような卑小な音に、大地の果てで迎えた 終局が如きシンジの叫び声が重なった。時を同じくして、小気味よく鳴ったカチンコとの相容れないユ ニゾンは、この上なくシュールな和音を世界中に響かせた。
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.10 ) |
- 日時: 2011/04/05 05:38
- 名前: tamb
- ■タイトル無し/calu
( No.9 )
「彷徨う虹」の外伝。この作品は、『彷徨う虹』の「伝えたい / I wish I could be with you」IVと併せて読むことを強くお勧めします。
A.T.フィールド乱用のレイがなかなか素敵。 ワーキングチェア、ほんと好きやね(笑)。 そして「伝えたい3」で出てきた「蹴り上げる」がここで試されたわけだ。
面白いけど、ぶち壊しな気も(笑)。
しかし腹減ったなw
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.11 ) |
- 日時: 2011/04/15 01:23
- 名前: calu
- tambさん
コメント有難うございました。
>A.T.フィールド乱用のレイがなかなか素敵。 ふと思ったのですが、ATフィールドを使って料理は出来ないものかと(笑)。 切ったり焼いたり刻んだり(爆)。ハリセンにもなるんですもの。
>ワーキングチェア、ほんと好きやね(笑)。 最近とみに腰が痛くて(笑)。ホントに欲しいっす。
>そして「伝えたい3」で出てきた「蹴り上げる」がここで試されたわけだ。 >面白いけど、ぶち壊しな気も(笑)。 恩赦は無かったようです、と言いますか乙女心は複雑なようです(笑)。
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Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.12 ) |
- 日時: 2011/04/17 11:58
- 名前: 何処
- 「いただきます」
私は目の前で音を発てながら鋳鉄製の皿上に転がる肉塊に躊躇無くフォークとナイフを突き立てた。
【美容と健康の為その一、健全な食生活】
一口大に切り分けた肉を口に運び、咀嚼し、飲み込む。
…ミディアムレアにすれば良かったわね…余熱で焼けるのを計算してなかった…
そんな事を考えながら、私は二口目を切り分け…
「…何?」
目の前でポカンと口を空けた碇君と、その隣で同じ表情で座るアスカ。
「…冷めるわよ…お肉…」 二人に告げる。
碇君の前にはメンチカツとチキンソテーが一つの皿に乗っている。 アスカの前にはチーズハンバーグ…何故か爪楊枝にドイツの国旗が付いた物が刺さっている…が湯気を立てている。
「綾波…お肉嫌いじゃなかった?」
「ええ、嫌い。でも食べられない訳では無いわ。」
おずおずと聞く碇君に答え、私はフォークに刺さったままの二口目を口にする。
「…たまには外食でもって誘ったのは僕だけどさ…」
「…注文に驚いたわよ。“フィレステーキ180gミディアム、パン抜き、ミニサラダ、食後にコーヒーと焼きプリン”なんて」 「…予想外だ…」
咀嚼した肉を飲み込む。
「正しい食生活は適度なバランスを週単位トータルで取る事…」 「「はぁ」」
「私の食生活をマギに分析させたら、週二回の肉類摂取が必要と判断された…」
「あー、確かにあんた細いもんねー。」
「ま、まあ綾波がお肉も食べれるって解って安心したようん。」
「菜食でも健康と成長は守れる…だけど…」
「「けど?」」
「冷めるわよ…二人共。」
「あ!いっけない!折角ミサトから食事代GETしたのに冷めちゃう!」「い、いただきます!」
食事を開始した二人を見遣り、私は内心胸を撫で下ろしていた。
…この理由は言えない…
サラダのレタスを一口かじり、私は思いを巡らす。
…葛城三佐と赤木博士、あの二人は別格として…
付け合わせの温野菜を噛みながら、碇君の隣に座る金髪少女の服の下で揺れる肉塊をこっそり眺める。
「…」
続いて自分の胸元を…
「…」
…やっぱり私には肉が足りない…
私は三口目を切り分け、口に運んだ。
http://www.youtube.com/watch?v=cnfyFHlDEMA&sns=em
「司令…マギの使用許可レイに又出しましたね?」
「ああ。」
「…何か、豊胸体操とか矯正下着カタログとかのデータが入ってるんですが…」
「…ふっ…」
「…年頃ですわね…」
「ああ…」
◇◇◇
「碇、この書類だが…何をほのぼのしとるんだ?」
◇◇◇
「…先輩、何笑ってるんです?」
◇◇◇
「ちょっと加持、もう直ぐシンちゃん達帰って…ぁん!」
…皆様ごめんなさい。
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.13 ) |
- 日時: 2011/04/17 23:58
- 名前: tamb
- ■caluさん
> ふと思ったのですが、ATフィールドを使って料理は出来ないものかと(笑)。
きっと出来る(笑)。書いてちょ。 A.T.フィールドを使って料理を作るってのではないけど、ネタが浮かんだ。リレー小説みた くなってるゲロ甘で書けるかな?
■美容と健康の為その一、健全な食生活/何処 ( No.12 )
これ、いい(笑)。こういう話は大好き。挿入かに歌われているごとく、私も単純です(呆)。 ラストもいい(爆)。その一ってことはその二もあるはずなのでそれにも期待。
しかしこれのたこルカ(だよな?)もそうなんだけど、腕が胸に食い込んでるというか突き 刺さってるのは何とかならんのだろうか。
ちなみに今さらですが、レイに肉を食わすというのは当サイトの記念すべき第一回企画でも やってまして、私も書いてます。未読の方はぜひ。と宣伝。
> …皆様ごめんなさい。
許す(爆)。
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Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.14 ) |
- 日時: 2011/04/19 14:54
- 名前: 何処 ID:WEvhf6HUIdk
- 「…どうしたの皆?」
私は目の前で音を発てながら転がる女子一同に問い掛けた。
【美容と健康の為その一、健全な食生活0,5】
http://www.youtube.com/watch?v=5db9llZKLKU&sns=em 《連打ボタン》重音テト
「ど…」「どうしたのって…」「…痛い…」「あ、あんたねぇ〜…」
机ごと転がる女子一同に私は問い掛けた。
「何?」
私の問いに転がる椅子と机の間からアスカが答えた。
「何って…この惨状見て気付かない?」
改めて皆の様子を観察…
「…アスカが、今日は縞柄…」
いつものレース付き白と違うピンクの縞柄…霧島さんは緑の縞柄ね…
ガタガタガタタタタタッ!
?
私は又机ごと転がる女子一同に問い掛けた。
「…どうしたの皆?」
ガタガタと倒れた…と言うより倒した…椅子と机を直しながら彼女らは口々に何やら呟きつつ立ち上がり…
…雨後の筍…成る程…
…私は昼休みの間、アスカのお説教を正座で聞かされ続けた…
◇◆◇
次の日…
「ふーん、そぉんな事があったんだぁ。」
シンクロ試験の後、私はオペレートルームで赤木博士と葛城三佐に昨日の報告をしていた。 私の後ろではオペレーターの三人がデータの整理をしている。
「…で、一体原因は何?」
紙コップの珈琲片手に問い掛ける赤木博士に私は答える。 男性向け雑誌に写る女性達を見た感想だ。
「男の人は何故おっぱいが好きなのかしら?って聞いたのですが…」
「「ブハッ!?」」
ガタガタガタタタタタッ!
「…大丈夫ですか?」
後ろの騒音に振り向いた私は、床に椅子ごと転がるオペレーター達に問い掛けた。
「だ…」「大丈夫だよ…多分…」「わ…私は駄目かも…」
「?」
ふと振り向くと、赤木博士は珈琲を溢しながら下を向いて肩を震わせ、葛城三佐は何かを堪える様な表情を真っ赤な顔で…あ、自分の足踏んでる…
笑いを堪えているのかしら?
…アスカは一般的には女性の胸部授乳器官を乳房と呼ばずおっぱいと呼称すると教えてくれた…それは間違い無い筈…では何か他に私はおかしい事を発言したのだろうか?
「え…N2爆弾並の破壊力ね…久々に効いたわ…」
「ど…」「同感…」「先輩…それはあまりに…ぷぷっ!」
「?私は間違ってますか?…男の人はおっぱい嫌いなんですか?」
「「「!ぷぷぷっっっ!」」」
「い、いえま、間違いないと思うわ…ぷっ!」
「あ、あのねレ…ぷっ…レ、レイ、そ、それシ…ぷぷっ!シンジ君にき…ぷっ!…き、聞いたの?…ぷぷっ…ぷっ!」
「…アスカに止められました…」
「よ…良かったわ…ぷっ!」
「リ、リツコ笑っちゃ…ぷっ!」
「?」
…何やらお互いの足を踏み合い、片手で口元を押さえ真っ赤な顔であらぬ方向を見上げる二人の様子に、私は只戸惑い立ち尽くした。
◇◆◇
…少女がオペレートルームを出てきっかり30秒後、完全防音の室内は爆笑に包まれた。
◇◆◇
…理由は兎も角、男の人がおっぱいが好きだと言うのは本当の様だ。 アスカは私に言った…このままでは碇君に嫌われると…
碇君は…
『綾波はそのままで良いんだよ。』って…
…碇君も稀におかしな事を言う。私は私、変わりようが無い。 …けれど肉体の成長により外見…つまり体型は変化する…増して私は今成長期…
…体型を男性の好みに成長させれば…
…碇君は私の胸を掴んだ時、真っ赤な顔をした…
…碇君も男…男はおっぱいが好き…
男性向け雑誌の写真に写る女性達はおっぱいとお尻の発育が素晴らしい。 ならば私もおっぱいとお尻を発育させ…させ…
…
どうやって?
…碇君は赤木博士や伊吹さんは常識擦れてるし、葛城三佐は非常識だと言った。アスカや霧島さんは、行動と発言が擦れているらしいし…
参考になるとすれば…
…
…
…そうだ、マギで検索解析してみよう…
私はマギの使用許可を得る為に碇司令のいる筈の司令室へ向かった。
◇◆◇
プシュッ!
「失礼します。」
「レイか…何の用だ?」
「マギの使用許可を頂きたいのですが。」
「…理由は?」
「自分の身体成長に必要かつ適正な栄養摂取量及び適正運動、ホルモンバランスを保つ為の薬剤等について調べたいのです。」
「…バイタルチェック及び健康管理は適正に行われている。必要は無い。」
「しかし私の成長は一部において明らかに周囲の同世代より遅れています。その理由を知りたいのです。」
「…一部とは?」
「胸部及び臀部における体脂肪蓄積率です。」
「…」
「…」
「…何故その部分の成長を気にする。」
「男の人はおっぱいが好きだと聞いたからです。」
「…」
「…」
「「…」」
プシュッ!
「おい碇、今市議会から陳情書が来てな…ん?レイか、どうした?」
「あの…」
「冬月、陳情書を見せろ。レイ、マギの使用を許可する。本日1800から1930までだ。」
「?」「はい。有り難うございます。」
プシュッ!
「…碇、何かあったのか?」
「いや…問題無い…」
◇◆◇
副司令と陳情書について話し合いが終わり、男は唯一人司令室内にいた。 ゆっくりと席を立ち、通信回線を留守電へ。続いて室内を極秘会議モードへ切り替える。
扉がロックされ、窓はマジックミラーモードへ、遮音空調と電波妨害発信が開始される。
一連の作動状況を確認した男はゆっくりと席に戻り、いつもの姿勢を取る…
…十二年振りの男の爆笑を、セフィロトの木のレリーフだけが聞いていた。
◇◆◇
マギにしては珍しく検索と解析には数分間かかった。 検索解析結果を印刷し、私はその情報を元に行動を開始する事にして端末を切った… …何故か端末を切る寸前、画面に『Good Luck!!!』と表示が出た…
…何の事だろうか?
◇◆◇
「…現在のサイズ、ほぼ標準の値…アンダーがマイナス?何の事かしら…改善点、私の食生活…週二回の肉類摂取が必要と判断…他に豊乳体操と特製野菜ジュースレシピ…形が大事?補正下着一覧と…パットは不要?睡眠時間は…」
…お肉…か…
葛城三佐と赤木博士の豊かな胸と立派なお尻を思う…
「…」
続いて自分の胸元を見る…
「…」
…掴んでみる。
「…」
…それなりには存在を主張している…
目を瞑り、もう一度葛城三佐と赤木博士の豊かな胸と立派なお尻を思う…
「…」
目を開け、再び自分の胸を見…
…やっぱり私には肉が足りない…
「…好き嫌いはいけない…嫌いでもアレルギーが無いならば必要量の摂取は最低限必要…」
…私は行動を開始した。
◇◆◇
夕食をいつも取るネルフ食堂…
…今日のA定食は…見た目肉が判り辛いひき肉のカレーか…これにしよう…
食券を自動販売機で購入、セルフの盆に皿を載せて会計する。
…さて…
席に着き、私は勇気を出して目の前のカレー…
に付いて来たサラダの向こうが透けるハムから…
から…
から…
…
…食べてみた。
…やっぱり美味しくはない…けど、まあ食べられない事は…
…
多分無い…筈。
◇◆◇
数日後…
「だから綾波に妙な事吹き込むの止めろって言っただろ!」
「妙な事ですってえ!?あんたがあんまりだらしないから面倒見てやってるんじゃないの!」
「何だと!」「何よ!」
ガラリ!
「あーもー!あんたらあたしのきちょーな睡眠時間を奪うの止めなさい!
「ミサト…」「…もうお昼ですよ…」
「ぅつっさいわね〜、あたしゃ夜勤明けなの!大体そんな大声で怒鳴り合えば…あり?ペンペンは?」
「あ、今洞木さんとこ」「ノゾミちゃんがペンペン大好きなのよねー。」
「…んじゃ二人でペンペン引き取って来てね…あたしゃも少し寝るわ…起こされたら堪らんから三時間は帰って来ないでね…ふわわわゎぁ〜…」
「そ、そんなぁ…」「ミサト昼ご飯は?」
「パースー…」
「「ミサト(さん)の事じゃなくて私(僕)達の分!」」
「…チッ、最近知恵が付いて扱い辛いったら…はい!一枚おっきーの!」
「やりぃ!ラッキー!」「うわぁ!?ミサトさん太っ腹ぁ」「さっすがミサトビールっ腹ぁ!」
「とっとと出ていけこの馬鹿ガキ共ぉ!」
「「うわわわわわわっっっ!い、行って来まーす!!」」
◇◆◇
「…っかしーわねー、何でミサトあんなに怒ったのかしら?」
「…本気でそう思うんだ…」
「え?」
「…多分アスカのビールっ腹発言が不味かったんじゃないかな…」
「?太っ腹ってビールっ腹の事でしょ?」
「うわ…アスカマジボケ…」
「?…ねえ、それよりこれからどうする?」
「…ほとぼり冷めるまで暫く時間潰すしかないかなぁ…」
「…ホトボリ?」
「あれ?綾波!」
「あ、碇君。」
「め、珍しいね、こ、こんな時間に…」
「え、ええ…」
「…」「…」
「(ホトボリ…変な日本語よね…でも意味知らないなんてシンジに言いたく無いし…)」
「そ、そうだ、よ、良ければ皆で一緒に食事でもど、どうかな?」
「え…いいの?」
「う、うん!当然じゃないか!ねぇアスカ!?」
「(ホトボリ…穂と堀?)」
「?」「ね、ねえアスカ、アスカ?」
「…へ?うぇっ!な、何でいつの間にレイがこここ此処にいる訳!?」
「?」「何言ってるのアスカ?今会った処じゃないか?」
「え?あ、ああそ、そう言えばそ、そうだったわね!あ、それよりあんた今暇?」
「え、ええ。」
「じゃあ皆で豪華昼食でも食べに行きましょ!奢りよ奢り!」
「い、いやアスカ綾波は今僕が」「さ!行くわよ二人共!」「了解…」「ア、アスカぁ!?あ、綾波ぃ?ま、待ってよぉ〜…」
◇◆◇
「よっ、葛城…って何だぁその格好?」
「…何だ加持か…」
「随分ご機嫌斜めじゃないか…何かあったのか?」
「べぇぇぇっぅぅにぃぃぃ〜〜。たぁだ睡眠不足なだけでぇっすよぉぉっだ!プシッ!ゴッゴッゴッゴッ…ぷわっっっふぅうっっあぁぁぁー!」
「こりゃ大荒れだな…」
「はっ、ピッッチピチ女子高生から見ればどおおっっせ三十路のビールっ腹なオバサンでぇすよをぉぉぉっっつ!せーいぜい三時間の自由を満喫させて貰うわよー―っだ!」
「?そうか?その割には随分と魅力的な格好で…」
「は?」
「いやいや、タンクトップにショーツと言う刺激的な格好が良くお似合いで…ひょっとして誘ってる?」
「!?ち、ち、ちょい待ち加持!ああああんたなな何か、か、考えてるの!」
「いやいや、据え膳喰わぬは何とやらってね…三時間ありゃ充分かなと…」
「や!止めなさいって馬鹿加持!」
「男と車は急には止まらないんだぜ葛城。じゃ、頂きます。」
「じ、冗談ムグッ!?ば、馬鹿な事ムムムムムムッッ!?!!」
「!」「!」「…!」「…!」「…」「…」
「…」
「…馬鹿…」「…仰せの通りで…」
http://www.youtube.com/watch?v=3Ws26LNmFzE&sns=em 《脱げばいいってモンじゃない》初音ミク
◇◆◇
「お冷やどうぞー、ご注文はお決まりになりましたかぁ?」
「ええと…僕はこのグリル…メンチカツとチキンソテーの方で。」
「あ!あたしこのチーズハンバーグセット!ドイツの国旗が刺さっている奴!」
「…」
「あ、綾波は決まった?」
「…フィレステーキ180gミディアム、パン抜き、ミニサラダ、食後にコーヒーと焼きプリン…」
「「は!?」」
《貧乳クエスト》 http://www.youtube.com/watch?v=ZS_i9z4eKsY&sns=em
…いいのかなぁ…
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.15 ) |
- 日時: 2011/05/12 19:04
- 名前: tamb
- ■美容と健康の為その一、健全な食生活0,5/何処
( No.14 )
No12の「美容と健康の為その一、健全な食生活」の前段にあたる話。 作者的には本意ではないかもしれないが、この話の私的なハイライトは画面に
『Good Luck!!!』
と表示するマギである。マギかわいいよマギ。 検索と解析に時間がかかったのは、科学者・母・女の葛藤や論争があったためであろうか。 男はなぜおっぱいが好きなのかという点については、デズモンド・モリスという有名な動物 学者の仮説がある。検索すると出てくる「お尻の代わり説」と、記憶が曖昧だけど、とてもこ こには書けないような説を提唱してたような気がする。私は穏健左派なのであんまりでかくな い方がいいけど、まあでかくてもかまわん。つか、私の好みはどうでもいいんだよなw
◇脱げばいいってモンじゃない》初音ミク こういうサウンドは嫌いじゃない。詞がというか男がバカすぎて笑える。引用したいけどそ れは避けよう(笑)。
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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.16 ) |
- 日時: 2011/06/25 07:04
- 名前: tamb
***** Traveling *****
あの時、わたしは十字路に立っていた。 今にして思えば、わたしはあの時、悪魔に出会っていたのだ。
悪魔は人間の魂を欲している。理由はわからない。 そして、悪魔はわたしの魂に目をつけた。ずっと気づかなかったけれど、つまり悪魔はわた しを人間だと思ったということになる。何を根拠にそう思ったのだろうか。
悪魔が魂を奪うための手口は実に緻密で用意周到、まさに悪魔的としか言いようのないもの だった。
わたしが部屋に鍵を掛ける習慣のないことを調べあげ、シャワーを浴びているタイミングを 見計らって勝手に部屋に上がり込み、わたしの裸体をじっくりと観察したあげく不自然に転ん で押し倒す。 わたしを怒らせ、平手打ちにさせる。 笑顔を見せ、手を差し伸べる。 美味しいご飯を食べさせる。 さりげない一言で動揺させる。
悪魔はそれと悟られないように、じっくりとわたしを絡め取っていった。
そして最後に、強引な言葉でわたしを導いた。
その時にはもう他に選択肢などなかった。
わたしは悪魔の差し伸べた手をつかみ、魂を売り渡した。私を虜にした、優しくて、誰より も素敵な悪魔に。
今日もわたしは十字路に立っている。悪魔と待ち合わせで、十字路に立っている。 神様、わたしを助けて。 でもやって来たのは、やっぱり悪魔だった。わたしをきゅんとさせる笑顔を浮かべた悪魔。
「碇くん、それはなに?」
手に持った包みを見てわたしが言う。
「フルーチェ。レモン味だよ。帰ってきたら食べよう」
今すぐ食べたい。学校なんか休んでしまいたい。 やっぱりわたしは悪魔に魂を奪われているのだ。 ならば、悪魔の魂も奪ってしまおう。それがおあいこというものだ。
わたしは眼を閉じ、軽く口唇を閉じて少しだけ上を向いた。
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