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[682] 突発短編集(予定)《掌話的小話》
日時: 2014/01/28 13:02
名前: 何処

脈絡無く只思い付いたり
何となくダラダラ書き残したり
勢いで書きなぐった代物

そんな何かの残渣を置いてく為のスレッドです。

見逃しておくれ
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Re: 突発的短編集《掌話的小話》 ( No.1 )
日時: 2014/01/28 13:03
名前: 何処 ID:ODU56s9wjxk

【でいあふたーつもろー】


碇君に謝った。

「貧乳でごめんなさい」

碇君に怒られた。

「綾波よりおっぱゑの小さい人に失礼だ。」

碇君が続けて言った。

「綾波は小さくない。」

私は疑問に思った。

「でも葛城一佐や赤木博士には敵わない。」

碇君は呆れた様子でこう言った。

「較べる対象が悪い。」

続けて言った。

「綾波の大きさは丁度良いサイズだ。」

私の胸の大きさを丁度良いサイズと評価する碇君の価値観を今一つ理解出来ない私は碇君に聞いた。

「男の人は大きな胸が好きなんでしょ?」

碇君は頭を抱えながら私の問いに答えた。

「そんなの人それぞれだよ、僕は綾波が好きだし綾波の胸も好きだけど別に大きさに不満は無いから。」

…私の小さい胸に不満が無いと言う碇君の答えに取り敢えず安心しながら、ふと私はある可能性に思い当たり、沸き上がる新たな疑問を碇君に投げかけた。

「碇君…ひょっとして…ロリコン?」

派手に転倒し、暫く床で震えていた碇君は、無事を確認しようとした私の目前で急に飛び起き、驚いて尻餅をついた私の正面に座り真っ直ぐ私の目を見詰めてこう言った。

「…な訳無いだろ…て言うか…だ…誰が一体きき巨乳だのろろロリコンだのそんないらん事綾波に教えたの?」

「アス」「あああああっっっ!やっぱアスカかあああああああっっっ!」

猛烈な勢いでパジャマのまま室外へ駆け出す碇君。
そのまま屋外へ出たのだろう、窓から聞こえる遠ざかる靴音に私はポカンとしながら呟いた

「…巨乳なんて私言ったかしら?」


―――


「…と言う事がありまして…」

報告する私の前では不思議な光景が繰り広げられていた。

膝から崩れ落ち下を向き肩を震わせる葛城一佐

ゆっくりと頭を左右に振る赤木博士

後ろを向き震えているオペレーター達

頭を抱えた副司令

只一人何時も通りの司令が口を開いた。

「…判った。警察からの身元引き受けはこちらが行う。又シンジとレイ、アスカ、三名の一切の責任は不問にする。」

「了解しました。」

ふと時計を見れば既に日付は変わっている。

あの後暫く待っていたが碇君はなかなか帰って来なかった。
流石に下着一枚は寒いので脱ぎかけのパジャマを羽織り布団に入ると、急に睡魔がやって来て私の意識を奪っていった。
熟眠する私は慌てた様子の葛城一佐に文字どおり叩き起こされてここに連れてこられ、居並ぶ皆に説明を求められたのだ。

こうして碇君と私の新婚初日は終わった。


《お前の嫁だろ、なんとかしろ!》
http://www.youtube.com/watch?v=ODU56s9wjxk&sns=em

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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.2 )
日時: 2014/01/30 23:10
名前: 史燕

新作投下、お疲れ様です。
>「碇君…ひょっとして…ロリコン?」

これには私もおもわず噴いてしまいました。
ミサトさんたちを笑えない……

次回作も楽しみにしております。
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小 ( No.3 )
日時: 2014/02/02 15:46
名前: 何処 ID:96IgvoGTHmw

【おこたみかんの日】

蜜柑を剥いている時、僕は無心になる

チェロを弾く時もそうだけど、何て言うか…
集中すると、時間の感覚とか無くなってひたすら没頭しちゃうんだ。

不思議な事に、それも何時もじゃなくて何かの拍子にそんな事が起こる。

今だってそうだ。
普段なら蜜柑の皮を剥いてそのまま袋ごと食べちゃうのに、ふと筋を取り出したら…あ、もう三つ目の蜜柑だ。

「…器用ね…」

「へ?」

不意に掛けられた言葉に不意を衝かれ、目を向ければ炬燵に両手まで入れた綾波が半纏にくるまって顎を天板に載せて…ミサトさんもアスカも同じ格好になる所から女の子は皆様こうなるのかも知れない…僕の手元をじっと眺めていたりする。

「司令もそうだけど、蜜柑の筋全部剥くのね?」

「あ、いや、別にそんな訳じゃ…」

「?」

「…食べる?」

「…(コックリ)」

「じゃ、これあげる。」

綾波は目の前に押しやられた皮の上に鎮座した筋を剥かれツルツルになった蜜柑をじっと見つめる。

「…食べないの?」

「…食べたい…」

「…食べれば?」

「…動きたくない…」

「…」「…」

…ミサトさんもアスカもリツコさんも綾波も、何でみんな僕の前だとこう…

「…食べたい?」

「…(コックリ)」

「…はぁ。」

手元の筋を剥き終わった蜜柑を割り、袋を一つ取って皮を剥く。


「綾波、口開けて。」

「?」

一瞬きょとんとした綾波の顔がだんだん赤くなって目が下を向く。

「?食べないの?」


「………食べる…」

「?はい、あーんして。」
「…あ、あーん…」


―――


「…」

蜜柑二個を食べた綾波が何やらもぞもぞし始めた。

「?…!」

…アスカと同じ反応だ。これは…

「ケーブル排除!」

「!?碇くん何を?」

「炬燵電力切断確認!」

「な…何で…」

「目標、お勝手の蜜柑と急須、碇シンジ、行きます!」

そう宣言して僕はお勝手へ向けて席を立った。

背後から綾波のか細い声が聞こえる。

「…綾波レイ、行きます…」

ゆっくり立ち上がった綾波が廊下の向こうに消える。

お茶を入れ電気ポットに水を足し、盆に蜜柑と湯飲みを二つ載せた所で綾波が廊下の向こうから帰って来た。

「…電源挿入…稼働確認…綾波レイ、寝ます…」

「寝ちゃうのぉ!?」

振り向けば、もう綾波は横になって寝息を立てていて

…取り残された僕。

「…やれやれ…」

盆を炬燵に起き、綾波に続いてトイレに行き、炬燵に横になる。
綾波の寝息に僕の瞼も重くなる。

僕らの日曜はこうして過ぎていった。


【そう言えば忘れてた】
http://www.youtube.com/watch?v=96IgvoGTHmw&sns=em
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.4 )
日時: 2014/02/16 01:33
名前: tamb

■でいあふたーつもろー
 貧乳だからどうだこうだとかいう問題は結婚する前に解決しておくべきだと思うのだが(笑)。
 しかしあれだ。綾波の立場というかポジション的に考えて、サードインパクトから帰還する時に胸の大きさなんて自由自在なのではないかという話があったけど(何処さんだっけ?)、あれは実際の所どうなんだろうか?

■おこたみかんの日
 こたつという文化は、様々な問題を内包しているとしても失ってはならない日本の伝統だと私は主張したい。
 こたつで寝ると疲れる。朝まで寝てしまうと布団に入って眠り直すことになる。時間が異常に無駄である。
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小 ( No.5 )
日時: 2014/03/30 15:37
名前: 何処 ID:BInHyClrnkU

【桜華抄】


…又、この季節が来る。

季節の消えた世界でもその残渣は未だに生き残り、稀にその姿を現す。
ここ、松代には僅かではあるが山間には未だに桜が生き残り、その枝に薄く紅を載せた白い花弁を綻ばせている。

研究所の長い廊下を一人歩く。
ふと足を停め柔らかな日差しの差し込む窓を向いて、私は外の風景に目をやった。
何故かは知らない、只の気紛れだろう、何の考えも期待も無く私は日差しの向こうに視線を向けていた。
だが視界に飛び込んできたその光景は私の予想を裏切っていた。

いつか見た景色の幻がそこに在った。

私は遠景の山腹に僅かに挿す幾つかの白い標から目を離す事が出来ず、唯一人立ち尽くしていた。


「…どうしました?ああ、桜ですか。」

「…」


不意に横から若い女の声が聞こえる。
返事もせず横目で観遣るが、気にも留めぬ様子の女は笑顔で私を見上げていた。

その声の主は書類の束を持った未だ若い研究員だった。
眼鏡を外しているせいかも知れない、私がネルフの総司令だと知ってか知らずか、その研究員は白衣の裾を翻して私と同じように窓の外を眺める。


「ほら、あそこのあの桜、神社の境内に咲いてるんです。
あそこは門前まで車で行けるんで時間があったら見て来るといいですよ。とっても綺麗ですから!」

「…良く知っているな。」

「そりゃあ地元ですから!
割と穴場なんで、この時期あそこは散策するのに最高なんです、人も少ないし綺麗ですよー。」


屈託無い笑顔の眩しさに間が挿したのだろう、私の口も未だ少女さの残る彼女に向け開いていた。


「…桜は好きか?」

「はい。でも…何か儚いですよね。」

「…儚いか…」

「ええ。咲いても風で直ぐ舞い散ってしまうし、可憐な分可哀想って言うか儚いような…」


改めて窓の外に視線を遣る。


「もう群生は北海道や高山…此処等だと美ヶ原や上高地ぐらいしか残ってないんですよね…」

「…」

「…もう、私の小さい時に見たあの凄い花吹雪は観れないのかなと思うと…」


ふと、妻の横顔が脳裏を過る


「桜はな…再生の証だ。」

「え?」

「冬に耐え、春に花咲き、散って葉にその場を譲り、夏繁った葉は秋に散り桜は冬の眠りを待つ。
春に咲き夏に繁り秋に散って冬に枯れ、又春に咲く…言わば輪廻転生の写し身だ。
命在る限り、再生は為り希望は残る。喩え一輪の花でもそれは再生と…希望の証。」

「希望の…」


私の口からかつて妻が語った台詞が溢れる。


「今、生きている…ならばどんな物にも可能性…希望がある。」

「そう…でしょうか…」

「そうだ。」

「…」

「絶望とは容易い、故に人は諦める。希望とは願望では無い、故に人はその道程に絶望する…
望み、目指し、己の手で狭き門を開け初めて希望は姿を現す。
今、君がここに居る理由は何だ?絶望したくなかったからではないか?」


研究員は頷いて台詞を継いだ。


「そう…ですね、その為のネルフでしたね…」

「ああ。その為のネルフだ…」


窓の外、山腹に浮かぶ白い標を私と研究員は言葉も無く見続けている。


…次はレイを連れてこよう…





何処かから微かにユイとシンジの笑い声が聞こえた。


《The Material World》
http://www.youtube.com/watch?v=BInHyClrnkU&sns=em
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.6 )
日時: 2014/03/30 16:03
名前: 史燕

げ、ゲンドウがめちゃくちゃかっこいい
渋いですねえ、大人ですねえ

>「春に咲き夏に繁り秋に散って冬に枯れ、又春に咲く…輪廻転生の繰り返しだ。
>命在る限り、再生は為り希望は残る。喩え一輪の花でもそれは再生と…希望の証。」

こういうセリフ回し、大好きです
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小 ( No.7 )
日時: 2014/03/30 16:39
名前: 何処

史燕様

いつもご感想下さり有難う御座います。
貴重なご意見にいつも感謝しております。


折角お誉め頂いた箇所ですが“輪廻転生”と“繰り返し”が重なる部分がどうにも気になって修正しました。
修正前の方とどちらが良かったかご感想下されば幸いです。


因みに敢えて作中に書きませんでしたがこの作品のゲンドウは桜の神社を既に知っている設定です(ユイと一緒に見て廻っていた)。
では改めまして
ご感想有難う御座いました、史燕様も創作頑張って下さい。
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.8 )
日時: 2014/03/30 17:03
名前: 史燕

えと、修正なんかは作者さんの好みですので私が何か言っていいものかと思うのですが、せっかくですので僭越ながら……

>輪廻転生の繰り返し
これ自体は「輪廻転生」という事象を桜に代表された生命が「繰り返し」ていると解釈したので別段気にかかりませんでした

>輪廻転生の写し身だ
こちらだと、桜であることがより強調されますね
その分生命全体を表すという意味での抽象性が薄れますが

私としてはどちらもありだと思うのですが、今回のテーマが「桜」であることを鑑みるなら修正されたものの方がよりふさわしいのではないかと感じました。

若輩者の差し出口で申し訳ありませんが、どちらがよかったかというご質問に対する解答としては以上のようになります
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.9 )
日時: 2014/03/31 17:35
名前: 何処

史燕様

態々のご返答有難うございます、貴重なご意見今後の参考にさせて頂きます。

−お詫び−

変換ミスでお名前間違ってました、平にご容赦ご勘弁下さいませ。
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.10 )
日時: 2014/03/31 18:43
名前: 史燕

何処様

こちらこそ、いつもお世話になっております。

名前の件は、そもそも私のPCも未だに誤変換するので、気にしないでください。

次回作も楽しみにしております。
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.11 )
日時: 2014/04/06 03:10
名前: tamb

 史燕さんと被るけど、ゲンドウ渋い。それだけで成立してるような話。
 こういうセリフを喋れる奴は現実にはまずいないと思うけど、極少数はいる。ゲンドウはその極少数の一人であろう、と信じられるような作品です。こういう言葉でユイを口説いたのかとすら思いますな(笑)。

> “輪廻転生”と“繰り返し”が重なる部分が

 確かにちょっと微妙な感じですが、解脱という概念があるので厳密には重なってないのかもしれません。でも書いてて気になってしまえばアウトなんで、修正して正解かと思います。
 修正前後に関しては史燕さんの意見に同意します。
 ただ、「それは輪廻転生の繰り返しだ」と「それは」を付けると「繰り返し」でもいいかなという感じになるんですよね。この感覚はちょっと説明しにくいんですが。
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小 ( No.12 )
日時: 2014/06/08 11:59
名前: 何処 ID:TT_sWZCeVwQ


【親父こーふく論】


「?」


碇が今朝から様子がおかしい。

否、考えてみればここ最近妙だ。

時計を気にしたり、不意に手帳を眺め何やら書きこんだり、貧乏揺すりをしたり…

その癖は嫁に止められたのではなか…あ。

そうか…

その理由に思い当たった私は碇の前に立ち、こう切り出した。


「なぁ碇…」

「何だ冬月。」

「今日明日のスケジュールだがそれ程立て込んではおらんよな?」

「ああ、責任者が居れば済む話ばかりだ。」

「梅雨が近いせいか、どうも最近腰痛が出てな。
整体へ行くのに明日休もうかと思うのだが大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ、問題無い。」

「で、碇。見た所お前もそろそろ腰痛が出る年だ。痛める前に整体へ行ったらどうだ?」

「必要無い。」

「いや、皆そう思って痛めてから後悔するのだ。行ける時に行っておけ。
おお、そう言えば今日は儂一人おれば済む話だけだったな。
善は急げだ、今地図を書いてやるからもう休んで行ってこい。」

「冬月…」

「あー、ここが駅だろ、そしてここに花屋、通りの反対側に玩具屋がある。そしてここが本屋でこっちが老舗の洋菓子店、で、更に進んでこの角の看板の右三軒目の二階だ。」

「…」

「どうした?何なら届けは儂が出しておこう。ほれ早く行かんか。」

「…そうだな。では試しに行ってみよう。」

「ああ、それが良い。」

「…では冬月先生、後を頼みます。」

「おお。シンジ君とユイ君に宜しくな。」


そそくさと席を立ち荷物を纏め出口へ向かう碇の背中を見送る。


「“可愛い所”か…成る程…」


流石に奴も自分の息子の誕生日は大切か。
可愛い盛りの二歳児なら尚更だな。しかし…


「クックッ…」


つい玩具屋で真剣に幼児向けの玩具を選ぶ碇の姿を想像してしまい、私は暫く含み笑いを止められなかった。





※このスレはアヤナミストに監視されています※

ドーモ・何処-サン-デス。
問題無イ繋ガリデ貼ッテオク。
(意味ハ無イ。慈悲ハ無イ。自費モ無イ。俳句ヲ読メ。アィエェェー!?)
http://www.youtube.com/watch?v=TT_sWZCeVwQ&sns=em
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.13 )
日時: 2014/06/08 14:55
名前: 史燕

ゲンドウのそわそわする様子が頭に浮かんで、思わずクスリ、と笑ってしまいました

冬月じゃなくても、ほほえましく思ってしまいますね

ゲンドウの”可愛いところ”を目の当たりにするとは思いませんでした
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.14 )
日時: 2014/06/08 20:48
名前: tamb

アマゾンとかで物色、という手もあるかとは思うが(笑)、やっぱ嫁さんと相談せにゃあな。二歳とかなら特に。特にでもないか(爆)。
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小 ( No.15 )
日時: 2014/06/14 20:29
名前: 何処 ID:L5zeM-zxBTE

【夕立後記】

碇君が私の膝の上で寝息を立てている。

夕立後の縁側を緩やかに風が流れる。
駿雨名残の雨垂れが地を叩く不規則に規則的なリズム、風にたなびく蚊取り線香の煙、涼しげに鳴る風鈴、汗をかいたグラスの中、琥珀に溶ける氷の軽やかに澄んだ音。

未だ明るい空もじきに透明な群青へ溶けていくだろう。

そっと目を閉じる

静かな音、硬質な音、音、音、音…

世界は音に充ちている。

その音の一つ、規則的な、低い、静かな、音に、ゆっくり、ゆっくりと、私の、鼓動が


「う…ん…」

「起きた?」


2人閉じていた瞼が開き、私は自分が微笑んでいる事を何故か不思議にも思わずに碇君にそう問い掛けていた。

明日も暑くなるだろう。
夕立も降るかも知れない。
又、碇君の膝枕を出来るだろうか。

見下ろす膝の上、見上げる碇君。

碇君と私、二人暫し互いを見詰め合う。



碇君が 笑う



膝の上、碇君の頭は乗ったまま。

息を吸い込みながら空を見上げる



…空は群青に溶け始めていた…




《黒猫》
http://www.youtube.com/watch?v=L5zeM-zxBTE&sns=em
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.16 )
日時: 2014/06/15 03:14
名前: tamb

膝枕をする幸せ、に思いを馳せてみる。
というか、最初に膝枕をした奴、させた奴ってのは天才だな。マジで。
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.17 )
日時: 2014/06/21 10:56
名前: 何処 ID:fa_H3wnUbfE

【綾波さん・かっとばす】


こんにちは

綾波レイです。

ただいま私、碇君の後ろに立っています。

暫く立っていますが気付いた様子はありません。

…正確にはもう10分30秒を過ぎてます。

何故碇君の背後に立っているのかと言えば…



『弐号機パイロット』

『ヒッ!?な、な、何だエコヒイキか、いきなり背後から声掛けないでよビックリするじゃない!』

『…さっきから呼んでたわ。あなたが碇君との話に気を取られていただけ。』

『あれは口論って言うのよ!大体馬鹿シンジが』
『碇君は馬鹿じゃ無い。』

『あんた存在感無い癖に何でそんな威圧的なのよ!』
『…存在感?』

『そーよ!さてはあんた実は霊からニンジャソウルを伝承してニンジャの力を授かったオンナニンジャね!
さっきのだって気配を殺して敵の背後を取ってハイクを読ませて殺す練習でしょ!
普段はネオサイタマやニューシズオカでイビルニンジャやソーカイヤと戦ったりシンジュク地下ダンジョンでヤクザソルジャーやメカスモートリ相手にスモークグレネードやシュ…シュ…シュレケンだか何だかってスローイングナイフ投げつけてクリティカルで首はねたりしてんでしょ!
あたし相手にそんな練習しないでよ!』

『…弐号機パイロット、貴女の最近の読書傾向は大体把握したわ。…でもあれフィクションよ。』

『…』

『…』

『…わ、わ、判ってるわよそんな事!なな何冗談真に受けてんのよバッカじゃない!』

『…冗談なの?』

『とと当然じゃない!それよりあんたその存在感の無さどうにかしなさいよ!』

『どうにか?』

『そーよ、あんたの存在感の薄さだとドンカンウスラボケなナナヒカリ『碇君をナナヒカリと呼ぶのは間違っている。』』

『ハイハイ言い直します!シンジならなんかあんたに真後ろに立たれてもコッチから声掛けなきゃいつまでも気付かないでしょーね!』

『いつまでも?』

『あーもーメンドクサイオンナねあんた!比喩よ例えよコトバのアヤよ!…でもま、30分は気付かないんじゃない?』

『…』



…と言う訳で実際どの程度気付かれないでいられるかか実証実験中…



『弐号機パイロット』

『ヒッ!?な、なな、何だエコヒイキか、前にも言ったけど背後から声掛けないでよビックリするじゃない!』

『…さっきから呼んでたわ。あなたが洞木さんとの話に気を取られていただけ。』

『う!う、うるさいわねぇ全く…で、何の用?』

『碇君相手に実証実験をしたの。』

『実証実験?』

『私の存在感の薄さだとドンカンウスラボケなナナヒカリなんか後ろに立たれてもこちらから声掛けないといつまでも気付かない…貴女の発言を追証してみたの。』

『あんた馬鹿ぁ!?存在感無い癖に何でそんな行動的なのよ!』

『…結論から言うわ、二時間彼の背後に居たけど一度も振り返らずに彼はいたわ…トイレに入った彼が出て来て私を見て『あ、綾波居たの!?』ですって。』

『…』『…』



―――



『あれ?どったのみんな?』

『…見た方が早いわ。』

『?…何あれ?』

『何って…見ての通りですよ。』

『…さっきからレイちゃんがシンジ君の後をくっついて歩いてんすよ。』

『何か背後霊と言うかカルガモの雛みたいに…』

『…何で?』『『『『さぁ?』』』』



『(…振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だ振り返っちゃ駄目だぁぁぁっっ!)』



http://www.youtube.com/watch?v=fa_H3wnUbfE&sns=em
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.18 )
日時: 2014/06/22 06:42
名前: tamb

かっとばしてますな(笑)。
存在感が薄いというか、足音がしないんですな。体重的に異様に軽いのだろうか。靴がそういう靴とか。あ、A.T.フィールド……。


> 貴女の最近の読書傾向は大体把握したわ。

大変興味があるというか追体験したいので、ネタ元があったら教えて下さい(笑)。
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.19 )
日時: 2014/06/22 23:36
名前: 何処 ID:_D6YLsGd1bU

ドーモ・何処-サン・デス。

tamb様

ご質問の件賜りました。

詳しくはこちらを御覧下さい
http://www.youtube.com/watch?v=_D6YLsGd1bU&sns=em

続編はこちら
http://www.youtube.com/watch?v=qBEsDPHcucc&sns=em
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.20 )
日時: 2014/06/28 02:16
名前: tamb

ありがとうございます。見てみました。背景も含めて面白そうです。
図書館にはないだろうなぁ……。
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小 ( No.21 )
日時: 2014/08/03 21:50
名前: 何処 ID:qtcvZ9kwJzQ

【碇ユイさんから二次創作者の皆様への伝言】

※( )内は各々で補完して下さい



『この描き尽くされた世界で、この子( )は生きて行くのか…』

『大丈夫、紙と筆がある限り、どこだって生きていれば書く事は出来るわ。
だって、生きているんですもの。』



『…』



『…』



『…なあユイ。』

『何?あなた。』

『…似た台詞を聞いた覚えがある。
 確か中華の詩家だ…否、日本の武将も似た事を…ローマの芸術家だったか中世魔女狩りの頃の科学者だったか…
…駄目だ、思い出せない…誰だったかな?』

『漫画の神様よ。』



『…』



『…』



《クワガタにチョップしたらタイムスリップした》
http://www.youtube.com/watch?v=qtcvZ9kwJzQ&sns=em
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.22 )
日時: 2014/08/09 01:43
名前: tamb

手塚さんですか?
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小 ( No.23 )
日時: 2014/08/13 13:54
名前: 何処 ID:qx-Prxsst_I

tamb様

>手塚さん?

確かそうだったと。

どうしたら漫画が描けますか、どんな物が必要ですかって質問に紙と鉛筆が有れば云々と仰有られたって話を記憶しとりましてそれが元ネタですはい。


ではここで脈絡無く小話を一つ



【綾波さん、かっとばすV】


こんにちは

綾波レイです。


「碇くん」

「あれ?どうしたの綾波?」

「聞きたい事があるの」

「?何、聞きたい事って?」

「碇くんは貧乳派なの?」

「へ?」


「…」


「…(…今綾波何て言った?確か貧乳派って…貧乳派?貧乳って貧しい乳って事だよな、派ってのは歯じゃないのは間違い無いし当然葉でも無い、刃な訳も無いしつまり波でもない、っておい波って何だよ波って。貧乳波?カメハ●波かよ波●拳みたいに手から出すのか?で、喰らうと貧乳になるのかな?じゃあミサトさん喰らったら貧乳になるのかな?最もあのサイズなら二三発じゃ小さくなりそうもないか。待てよ?なら男が喰らったらどうなるんだ?元々無いのに?って貧乳の人に当たったらどうなるんだろう?逆に巨乳になるのかな?アスカなら進んで当たりに行きそうだよな結構大きいのに。でももっと小さくなったらどうするんだろ。とばっちり間違いなく僕だろうし。でも本当に小さい人が当たったら大変だよな、もっと小さくなれば貧乳どころか無乳だし、って何考えてんだよ大体無乳って何だよ無乳って失礼な言い方だよなって考えたの僕か本当僕何考えてんだろ。
…あれ?で、何で無乳なんて考えたんだっけか…確か綾波が僕に聞きたい事があるって…貧乳派がどうとか…はは、何だ貧乳派か、は、はは、はははっ…
って誰が?僕が?
派って派閥の派だよね?貧乳の派って事は…って誰の事?
…誰がって…僕?僕が?
待て待て碇シンジ落ち着いて思い出せ落ち着いて、何か聞き間違えたのか何かの間違いかも…
確か綾波は言った、碇くんは貧乳派なの?って…え?)」

「碇くん?」

「?…え?え゙っ゙!?えぇぇっ!?!!あ、あ゙、ゔぇ゙えぇぇぇっっ!?!?」

「?」

「あ、あ、あ、綾波さん?なななな何でそそそのやうな事をばおおを伺いなのでせうかあ?」

「…葛城三佐と赤木博士が碇くんの女性に対する反応で論議になって葛城さんは貧乳派説を、赤木博士は足フェチ説を、何故かその場にいた加持監察官がマザコン説を、ひょっこり現れた伊吹二尉はホモ説を唱え…」

「ミサトさあん!リツコさあん!加持さあん!マヤさあん!」

ドタドタドタドタドンガラガッシャンガチャガチャガチャン…ガタガタごとっ…ドタバタドタドタドタドタドタバタ…


「あ、未だ答え聞いて無い…セカンドの説なら巨乳派なんだけど…」




http://www.youtube.com/watch?v=qx-Prxsst_I&sns=em
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.24 )
日時: 2014/08/17 20:40
名前: tamb

現れ方として、全くの無乳や常軌を逸した爆乳でなければもはや何でもいいと思うが、あえてどちらか選べと言われれば貧乳方向の方がいいかな。って誰も私の意見など聞いていない(爆)。
問題は、なぜレイがそれをシンジに聞いたかだ。聞いたからといってどうにかなるもんでもなし。ま、それを気にしてしまうのが乙女心か。シンジ君もここまで動揺することはないよな(笑)。
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小 ( No.25 )
日時: 2014/12/31 23:30
名前: 何処 ID:zkLJoFp2UAE

【暮れの元気なご挨拶】

碇君と炬燵で向き合いお蕎麦をたべている私。

昨日不意にやって来た碇司令が我が家の台所で捏ねて叩いて伸ばし刻んだ手打ち蕎麦だ。

何でも伝統の縁起物で年越し蕎麦と言うらしい。
それをさっき碇君が茹で、私が出汁を取って作った汁で今二人揃って頂いている。

私達は二人共に食事中は無言だ。だが恋人同士が一緒に食事しながら会話が無い事は人によっては『ありえない』程『不自然』且つ『不思議』で『不気味』な風景に見えるらしい。
偶然私達と一緒に食事をした大学の同級生にはそう言われた。

でも私は碇君と一緒に居て、一緒に食事を出来る事、碇君の仕草や癖を見、時折碇君と視線を交わす事に言い様の無い満足感を得ている。
そして碇君は食卓に会話の無い幼少期を過ごしたせいか、食事時には会話はおろかTVも見たく無いらしい。
そんな事をその同級生に話してみたが、鼻で笑いながら『お似合いの二人ね』と言う彼女の台詞は何故か刺々しかった。

最もその台詞自体は嬉しい内容だったので『ありがとう』と伝えたら彼女に舌打ちされてそのまま立ち去られたのが未だに謎だ。


「「ご馳走さま。」」


二人同時に蕎麦を食べ終わり、同時にご馳走さまをする。

ふと、碇君と目が合う。

はにかんで赤くなる碇君が照れ隠しに笑い、その笑顔に私の心拍数が跳ね上がり、私の血圧を押し上げ、結果私の顔は耳まで火照る。
思わず下を向いた私が気付けば炬燵の上、お蕎麦の乗っていた二つの蒸籠を乗り越えた碇君の上半身が有って

碇君の息遣いが間近に有って

視線をこっそり上げたら碇君の顔が間近に有って

…結果。

今年最後の口づけは鰹出汁風味だった。

…まあ、悪く無いかも。


http://www.youtube.com/watch?v=zkLJoFp2UAE
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.26 )
日時: 2015/01/01 22:22
名前: 史燕

何処さん、今年もよろしくおねがいします。

昨年最後の口づけが蕎麦のかつおだし風味だったのなら新年最初の口づけは御雑煮だったのでしょうか。
それとも年が変わってすぐに初詣行ってお屠蘇の味だったのかも。
と色々と想像力を掻き立てられる作品でした。
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.27 )
日時: 2015/01/04 00:50
名前: tamb

> はにかんで赤くなる碇君が照れ隠しに笑い、その笑顔に私の心拍数が跳ね上がり、私の血圧を押し上げ、結果私の顔は耳まで火照る。

というような初々しさを残しまくった二人であるならば、口づけに至るまでに相当な時間がかかったことでありましょう。心臓の負担もかなりなものかと(笑)。
そして口づけの次に至るまでに何年かかるかと思うといい加減にしろと言いたくもなる(爆)。
がんばれシンジ君。レイちゃんも心臓鍛えて待ってるぞ。
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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.28 )
日時: 2016/11/06 16:16
名前: 何処 ID:PIMzY8y9or0

「ご馳走様」「…様」

「じゃあ、食器片付けるわ。あ、貴方は座ってていいから。」「ああ…」


朝食後、黙々と研究レポートを書き続けている彼…いや、昨日入籍は済ませたから“夫”だ。
勝手場に立ち、私は数枚の食器が乗った盆から皿と小皿、それに昨日買った夫婦茶碗を水屋に浸し、傍らの茶筒から急須へ茶葉を移し、空の盆へ急須とやはり昨日買ったばかりの夫婦湯飲みを乗せた。
茎茶も熱い湯で淹れれば美味しいものだと知って、良く伯父が家の茶を温いと文句を言っていた理由が解った。

足音を忍ばせ彼…夫の向かいへ座る。安普請の床が軋む音にも気付かずに夫は書類に没頭していた。

今や懐かしの魔法瓶から湯を急須へ移す。本当なら急須も湯呑みも湯で温めておきたいのだがその湯が勿体無い。
そんな発想すら想像もしなかっただろう昔の自分より、今の自分の方が満足している…満ち足りていると一体何人が信じてくれるだろう。
ふと笑みが溢れる。茶葉を蒸らし終わり、湯呑みへと濃緑の茶を淹れる。


コポコポコポコポ…

「…どうぞ…」

「…ん?あ!うん、有難う。」

「「…」」


私の淹れたお茶を前に、夫は出しかけた手をそのままに又黙りこくり、じっと湯呑みの中を眺めていた。



【私がおばあちゃんになっても】



「…冷めるわよ?」

「……だ…」

「え?」

微かに聞こえた台詞に思わず問い返す。

「…茶柱だよ、ユイ。」

「え?あら本当に。」

安アパートの一室、大家さんから頂いた年期の入った古い小さな卓袱台(ちゃぶだい)に身を乗り出し夫の湯呑みを覗くと、そこには確かに一本の茶柱が立っていた。

「あら本当。」

「…縁起がいい…」

夫の呟きについ吹き出す。

「…何だ?」

「だ…だって…ぷぷっ」

「…何がおかしい?」

その仏頂面に又可笑しくなる。
合理主義の塊の夫が稀に見せるこう言う意外と可愛い所が好き。

「…貴方の口から“縁起”とか聞いたら…ぷぷっ!」

「…意外か?」

「ええ、やっぱり貴方も日本人だなって…」

「…そうかな?」

「ええ、船大工の息子さん。」

「これはこれは、月の御子よりお墨付きを得られるとは光栄だな。
まあ、最も…」

何かを言いかけ、口をつぐんだ夫の言いたかったであろう台詞を私は口調を真似て続けた。

「“茎八分の茶葉に欠け急須で茶柱が出ない方が珍しい”ですか?」

「…未だ覚えてるのか…」

忘れる訳が無い。
そう、初めて此所に来た時、出された縁欠け湯呑みの中に立つ茶柱に感嘆する私に仏頂面で告げた台詞だ。

「ええ…でも、確かに縁起が良いわ。」

「…碇の本家を飛び出して、風呂なし便所共用の格安アパートでの御飯事生活がか?」

「ええ、おまま事なこの貧乏生活が。」

「…」

「貴方には悪いと思っているわ、節介私を通して碇本家に食い込むチャンスだったのに。」

「…仕方ない、何事にもイレギュラーは付き物だ。それに…」

「?」

「…君を売女呼ばわりした婚約者を殴ったのは私のミスだ。」

「“元”よ。それも大学院への跳び級前に向こうの素行不良で破談済みの。」

「…奴の言う通り、確かに君の家名と資産目当てだった事は認めよう。だが君への侮辱は許せなかった。」

「…嬉しかったわ。怖かったけど。」

「…すまん。」

「…まあ、この状態も悪く無いわ。綾波の軛から離れて、こうして貴方と過ごすのもね。」

「いざとなれば裏死海文書の解析でぼちぼち研究者として暮らすのも悪く無いか…」

「そうね、いずれセカンドインパクトまでの話ですものね…」

「…副議長には諦めて貰うしかないな。」

「あら駄目よ、生きているからには最後まで諦めちゃ。だって生きているんですもの。」

「…君には敵わないな、確かに狭き門は常に開いている。諦めるには未だ早いか…」

「そうよ、諦めるのは何時でも…あら?」

「どうした?」

「見て!私のにも茶柱!」

「…安物の茶器茶葉にも取り柄はあるな。」

「?」

「こうして下らない呪いめいた迷信を比較的高確率に見る事が出来る。」

「あら?さっきゲンを担いでいたのはどなた?それに安物なんてとんでもないわ。値段が安くてしかも縁起がいいなんて素晴らしいじゃない。」

「…全くこれだから君には敵わないな。」

ピンポーン「六分儀さーん、電報でーす!」

「?電報?六分儀?副議長は電報なぞ使わん筈だが…」

「?他の住民に六分儀なんて居ないし…あ、私が出るわ…はーい、只今ー。」

ガチャガチャ、パタパタパタパタ…ガラッ




ーーー




コポコポコポコポ…

「…どうぞ…」

「…あ、有難う。」

「「…」」


私の淹れたお茶を前に、夫は出しかけた手をそのままに又黙りこくり、じっと湯呑みの中を眺めていた。

「…冷めるわよ?」

「……だ…」

「え?」

微かに聞こえた台詞に思わず問い返す。

「…見て、茶柱だよ、レイ。」

「え?あら本当。」

郊外一軒家の一室、半年前骨董屋で購入した大分年期の入った古い小さな卓袱台へ身を乗り出し夫の湯呑みを覗くと、そこには確かに一本の茶柱が立っていた。

「…縁起がいいわね…」

思わず出た私の台詞を聞いた瞬間、夫が吹き出した。

「…何?」

「だ…だって…ぷぷっ」

「…何かおかしい?」

仏頂面になる自分を自覚しても表情の変化は止まらない、と言うか止める気も無い。
そんな私の様子が更に可笑しいようで、夫は未だ笑っている。

「だ、だって君の口から“縁起”とか聞いたら…ぷぷっ!」

「…意外かしら?」

「え、いや、て言うか君も変わったなあって…」

「…そうかしら?」

「うん、奥さん。昔からすれば嘘みたいだよ。」

「あなた、一緒にこれだけ暮らして変わらない訳無いでしょう?」

「まあ、お互い老けたのは…痛っ!」

「そう言う事じゃなくて…でも、確かに縁起が良いでしょ。」

「まあ、確かに…あいつ、元気でやってるかな?」

「ええ、今頃おまま事な新婚生活を楽しんでるでしょ?私達の時みたいに。」

「…だろうね…」

「…」

「…」

「…静かだね…」

「…そうね…」

「嘘みたいだよ…あんなに騒がしかったこの家がこんなに静かになるなんて。」

「…そうね…」

「なあ、君と結婚して、子供が出来た時の事覚えてる?」

「忘れる方が無理よ…奇跡だのオーセブンだの煩かったわ。」

「リツコさんだけだったね、“0では無い以上可能性はある”って言ったのは。」

「最も懐妊したと報告したら、やっぱりあの台詞をこっそり呟いてたわ。」

「あの台詞?…あ!」

「そう、あの台詞。」

「「有り得ないわ!?」」
「…実際懐妊したのだから、有り得たのにね。」

「全くだね。でも…」

「言わないで。」

「…皆の言う通り、ネルフに残った方が良かったかな。そうすればあの子も」

「あなた」

「…ごめん。」

「私達は今こうして生活しているわ。飼い殺しよりはマシだったんでしょ?」

「…結果はこれだけどね。」

「…まあ、この状態も悪く無いわ。こうして貴方と過ごすのも。」

「そうだね、こうして又僕らだけで暮らすのも悪く無いか…」

「じゃ、又“綾波”と“碇くん”から始める?」

「え?そりゃまた一体…考えただけでもどうにも何かくすぐったいなぁ。」

「「…クスクスクス…」」

「…結局あの子には言えなかったわね…」

「…うん、実はその事なんだけど…」

「?」

「…君には悪いと思ってる…。」

「!まさか伝えたの?」

「うん…全部話した。奇跡ってのは滅多に起こらないから奇跡なんだとは言えなかったけどね、でも確率は話した。」

「何で…でも…そうね、いずれ話さなければいけないのですもの…」

「…諦めて貰うしかないな。」

「何故?私達って言う成功例があるのに何故諦める必要が有るの?」

「う…」

「生きているからには最後まで諦める必要は無いわ。だって生きているんですもの。」


「…君には敵わないな、確かに狭き門は常に開いている。諦めるには未だ早いか…」

「そうよ、諦めるのは何時でも…あら?」

「どうした?」

「見て!私のにも茶柱!」

「…あ、本当だ。」

「…ねぇ、これでも奇跡は二度は無いって言える?」

「…全くこれだから君には敵わないな。」

ピンポーン「碇さーん、電報でーす!」

「?電報?」「何かしら?この時分に電報なんて珍しい…はーい、只今ー。」

ガチャガチャ、パタパタパタパタ…ガラッ




http://www.youtube.com/watch?v=PIMzY8y9or0

メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.29 )
日時: 2017/06/07 07:04
名前: 何処 ID:AWdCJPLDSog

「葛城二佐、二号機パイロットアスカ・ラングレー、相談があるの。」

「「相談〜?」」



【碇シンジ君誕生日おめでとうスペシャル・聞くのも恥だが役に立つ?編】



「「プレゼント〜?」」

コックリ

「「それも“貰う”んぢゃなくて“あげる”方〜?」」

コックリ

「「ででで何悩んでるの?」」

「…何がいいか聞いたら…その…“綾波がくれるなら何でも”って…」

「何何何その状況?シンちゃんに色々とおねだりされたりあーんな事こーんな事いやんな感じにあれやこれやどさくさ紛れにちょっち調子付いたシンちゃんがついに目覚めて野生な肉食的にエスカレートしてついついうっかり流されてもりもり色々美味しくされたりしたんじゃないのぉ?
おねーさん訳解んないわ?もチョッチ詳しく細かく微々細際と状況話してみそ!さささ今直ぐ速断即断即決速決してみそ!
だーいぢょぶ大丈夫大船に乗った感じでこのおねーさんに任せちゃって!
ささささ一切合切包み隠さずそーだんしなさいな言われなくても万事解決オールオッケー的に上手い事したげるからさぁ〜?
さささささ迷わず悩まず、も・余計な事でも何でも上から下までありとあらゆるあれやこれそれこそ何でもかんでも話して」

「はぁ!?馬っ鹿じゃない!?ミサトなんかに相談なんかしたら本来簡単に解決する事だってやたらこんがらがって複雑化して余計なものまで混じっておまけに何の関係も無い連中まで介入して来て訳解んなくなってどーしよーも無い結末迎えた挙げ句何の解決にもなってなかったってオチになるの見え見えじゃない!
全くもー仕方ないわねー、しょうがない、渋々だけどこ!の!私がミサトの代わりに」

「…それ大半アスカがシンちゃんに言われた台詞よね…」

「…(あ、だからつっかえないで話せたのね)…成る程。」

「「何納得してんの?」」
「…何となく…」

「ふーん?ま、良いわ。そ・れ・よ・り!」

「…普通はおねだり“される”のアンタよね?おねだり“する”方の意見は…あ、馬鹿シンジが言うわけ無いか。」

「(…碇君は馬鹿じゃ無い…)」


ーーーー


「結果発表〜」「どんどんぱふぱふ〜」

「…(碇君が良く言う逃げたいって気持ち…少し判るかも…)」

「3位〜」「3位はぁ!」

「「裸エプロン〜!」」

「私的には一位でしたがどうですアスカさん?」

「はぁ、やはり“狙いすぎ”の一点に尽きるかと。やはりコレはフェミニズム的男女同権的見地から相手にも同じスタイルが要請出来るものではないかと。」

「…アスカ、貴女実はそーゆー方面だったの?」

「ち、違うわよ!何真面目な顔してんのよ!」

「…(コメントし辛い…)」
「あ〜、気を取り直して第二位〜」「逃げたねアスカ、はい第二位〜」

「第二位はなんと!」「なんとぉ〜」

「何時ものプラグスーツぅ!」「あー、これは盲点だったわ。」

「やっぱりと言うか意外と言うか、碇シンジのお父様、碇ゲンドウさんご推薦の」「ちょ、ちょっちマジ!?」

「…冗談以外の何だと…」「あ、ゴミン。つい。」

「それはさておき、シンジのプラグスーツ好きは半ば公認なのでは?ミサト解説員」
「そうですね、確かに碇シンジ君、プラグスーツ絡みだと年相応に反応してますしねぇ。」

「…(…ふむ…)」


「では注目の結果発表〜、第一位〜」「第一位〜うおーどんどんぱふぱふどんどんぱふぱふ」

「…(気持ち…逃げたいかも…)」

「発表〜、第一位〜」「第一位はぁ!ダダダダダ、ダン!」

「「じゃじゃ〜ん!ウェディングドレスぅっ!」」

「いやー、来ましたね第一位。どうですアスカさん?」

「ええ、やはり“王道”の貫禄でしたね。やはりコレもフェミニズム的男女同権的見地から相手にも同じスタイルが要請出来るものではないかと。」

「アスカ…やっぱりあんた…」「変な目で見るなぁっ!」

「…質問…」

「ん?」「何?質問て?」

「誕生日のプレゼントに何でウェディングドレス?」

「へ?」「何…だと…」

「…た…」「…た…」「「誕生日ぃぃ?」」

「はい。碇君の。」

「ちょ、ちょ、ちょっち待って、なら話は変わるわ。」
「そんな場合?!それより馬鹿シンジ何でそんな大事な事皆に言わない訳!大体私聞いてないわ!って何でミサトあんたがシンジの誕生日知らないのよ!」

「…ごみん、確かこっちに来た時の資料に書いてあった筈なんだけど…ええと、身元引き受けた時に…あ!確か6月6日…って!」

「今日!?た、大変!直ぐにパーティーの準備しなきゃ!」

「…ってレイは?」

「え?あれ?」

「いつの間に…」


ーーーー


「えー、て訳でぇ」「訳でぇ」「訳で」

「「「碇シンジ君誕生日おめでとーっ!」」」

「あ、ありがとうございます。」

「あ、あり?ちょっち予想と違う?」「なーんか反応薄いわねー。」「碇君…迷惑?」

「え?あ、い、いや決して迷惑じゃない!う、嬉しいよ、嬉しいけど…」

「「「けど?」」」


「ひ…一つ、その…き…聞きたいんだけどさ、その…
何で綾波、プラグスーツ着てるの?」


「…あ〜…」「…説明し辛いんだけど…」「…何となく…」

「そ、そうなんだ、な、何となくね、あ、あはは、な、何だか聞いて良いのかどうなのか迷ってたんだ。あ、あははは…」

「…何だったら碇君も着る?」

「へ?」

「(…アスカ、どーすんの?)」
「(アタシのせいじゃ無いわよ!)」
「(確実にあんたの影響よ。しかし裸エプロン3位で良かったわ。2位と逆なら今頃シンちゃん…)」
「(あんた馬鹿ぁ?!何言い出すのよ急に私そんな事知らないわよ!)」

「「?」」



http://www.youtube.com/watch?v=AWdCJPLDSog



て訳で碇シンジ君誕生日おめでとう。です。



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Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.30 )
日時: 2017/06/10 21:12
名前: 史燕

シンジ君、不憫な……。
そしてこのプレゼントランキングにどことなく納得してしまう自分がいて悲しいです。

何処さん、素敵な作品をありがとうございました。

追伸
このランキングに影響されて作品を書いてしまいました。
何処さん、お許しください。
メンテ
Re: 突発短編集(予定)《掌話的小話》 ( No.31 )
日時: 2021/05/15 21:00
名前: tamb

何処さんというのは実に捉え所の難しい方で、ネタと思って読んでいるととんでもなくシリアスで虚を突かれることになる。文章の外見というか作法に違いがないからだが、それはそれで良いと思う。

どれかひとつ選ぶのは難しい、というか何でもいいんだが(笑)、実際プラグスーツってどんな手触りなんだろう。触ることしか考えてない。はい、すいませんw
メンテ

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