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[765] 素材提供
日時: 2026/07/29 20:17
名前: 黒狼武者 ID:eSd4Sxzo

>>1

第一話

隕石
太平洋の中央には小大陸〔エルピスコロニア〕と呼称される辺境の絶島が存在する。此処は自然が豊富であり大勢の原住民達が安住したのである。世界暦五千七百二十一年六月中旬の時期…。小大陸エルピスコロニアでの出来事である。島内の中心部に聳え立つ最高峰ギガントロックの頂上にて一人の青年が広大無辺の青空を眺望する。
『やっぱり此処は長閑だな…』
地上は大戦争によって世界各地の彼方此方が荒廃化したのである。世界全体は空前絶後の大混乱期であったが…。文明やら科学技術とは無縁のエルピスコロニアだけは平和だったのである。
『宇宙の彼方には何が存在するのかな?』
青年の名前は【ストレイダス】…。体格は男性としては比較的小柄であり頭髪が黒髪なのが特徴的である。年齢は二十九歳であるが…。常日頃から自由自在に広大無辺の大空を浮遊したいと夢見る。
『俺も鳥類みたいに大空を飛行したいな…』
ストレイダスは村落一番の力自慢であり力仕事のみなら彼に拮抗する人物は存在しない。上記の理由により次期村長候補に任命されるのだが彼自身は非常に大雑把であり面倒に感じる。
『北方地帯に戻らないと村長の野郎が口煩いからな…』
生真面目の村長とは性格が不一致であり落胆したのである。
「はぁ…」
ストレイダスが一息した直後…。
「ん?」
突如として頭上から轟音が響き渡る。
『轟音か?』
ストレイダスは恐る恐る上空を直視したのである。
「えっ…」
上空の光景に絶句…。脳内が白色化したのである。
『一体何が!?』
上空には三十センチメートルサイズの隕石が超高速で急接近…。対するストレイダスは目前の光景に絶句する。
『隕石なのか!?』
上空の物体が小型の隕石であると認識した直後…。小型の隕石はギガントロックの頂上へと落下したのである。小型隕石の爆発音は近辺の村落は勿論…。エルピスコロニア全域へと響き渡ったのである。
「うわっ!」
ストレイダスの現在地は小型隕石の落下地点から数メートル程度の近距離とされ…。爆風と衝撃波が彼を強襲したのである。ストレイダスは隕石の落下地点から十数メートル程度吹っ飛ばされ…。
「ぐっ!」
全身が地面に激突する。
「ぐっ…」
『畜生が…』
ストレイダスは地面の激突により全身を骨折したのである。
『身動き出来ないか…』
全身の苦痛により身動き出来なくなる。
「はぁ…」
すると目前の視界が黒化し始め…。
『俺は…こんな場所で死んじまうのか?』
次第に意識が遠退き始める。
『正直…もう少しだけ…』
ストレイダスは自身の最期を覚悟したのである。
『もう少しだけでも…長生きしたかったな…』
数秒間が経過…。ストレイダスの意識が消失したのである。

第二話

治癒
最高峰ギガントロックの頂上へと落下した小型の隕石はエルピスコロニア全域へと響き渡る。
「一体何が…」
「轟音は…頂上からだったよな?」
登山中の二人の村民達は畏怖するも頂上へと移動したのである。
「うわっ…」
「クレーターか…一体如何してこんな状態に?」
頂上の光景に驚愕する。頂上には直径二十メートル前後のクレーターが形作られ…。クレーターの中心部には三十センチメートルサイズの岩石が確認出来る。
「此奴は隕石なのか?」
「ん!?誰だ!?」
クレーターの近辺にて地面に横たわった状態の怪我人を発見する。
「怪我人だぞ!大丈夫か!?」
怪我人は小柄の成人男性だったのである。上半身は血塗れ…。全身の衣服はボロボロであり瀕死の状態だったのである。
「隕石で吹っ飛ばされたのか?」
「不運だったな…こんな状態では…」
生存は絶望的であり二人は瀕死の成人男性を気の毒に感じる。すると直後…。
「えっ…」
「現実なのか?」
成人男性は瀕死の状態であったが突如として全身の外傷が治癒し始める。外傷は数秒間で完治…。成人男性は目覚めたのである。
「うっ!俺は…死んじまったのか?此処は天国なのか?」
成人男性は記憶が曖昧なのか周囲をキョロキョロさせる。
「誰かと思いきや…あんたは力自慢のストレイダス!?」
「大丈夫なのかよ!?」
成人男性は誰であろう力自慢のストレイダスだったのである。
「えっ?大丈夫そうだが…」
ストレイダスは自身の全身を確認すると絶句し始める。
『衣服がボロボロだな…上着は血塗れだし…』
鮮血により白色の上着が赤化したのである。
「戻って入浴しないと…」
ストレイダスが歩行する直前…。
「ストレイダス?歩いて大丈夫なのか?」
「血塗れだし…」
二人の村民達はストレイダスを心配する。
「大丈夫だよ…外傷は無さそうだし手足はピンピンに動けるからさ…」
ストレイダスはピンピンした様子であり下山したのである。
「ストレイダス…本当に元気だな…」
「彼奴は不死身なのか?」
小柄の村民が恐る恐る…。
「先程のストレイダスの治癒力…異常だったよな?全身血塗れの状態だったのに…数秒間で治癒するなんて…」
すると大柄の村民も小声で発言する。
「ストレイダスは人一倍元気だけど…普通は失血死しても可笑しくないよ…彼奴は如何しちまったのやら…ストレイダスは本当に不死身だったのか?」
ストレイダスは幼少期から免疫力は人一倍根強く怪我も一日で治癒したのである。二人の村民達はストレイダスの様子に愕然とする。

第三話

次期村長候補
同日の夕方…。ストレイダスは自宅でゴロゴロする。
「はぁ…」
『今日は草臥れたぜ…隕石で吹っ飛ばされるなんて予想外だな…』
すると誰かがコンコンッと自宅のドアをノックしたのである。
「ん?こんな時間帯に誰だろう?」
ストレイダスは玄関へと移動するとドアを開放させる。
「ストレイダスよ…体調は如何なのだ?」
「えっ…村長!?」
訪問者は村長のウィルフィールドでありストレイダスは驚愕する。
「村民達の噂話では隕石で吹っ飛ばされたとか…其方は大丈夫なのか?」
ウィルフィールドはストレイダスの状態を心配したのである。
「俺なら大丈夫ですよ♪俺は肉体だけなら人一倍頑丈なので石ころなんかで死にませんよ!村長は心配性ですね♪」
ストレイダスは自負する。
「ストレイダスが元気なのは周知の事実だが…無理するなよ…何たって其方は次期村長候補なのだからな…」
「えっ?はぁ…」
ストレイダスは次期村長候補の発言に苦笑いしたのである。
『やっぱり村長の口癖は面倒臭いな…次期村長なんて御免だよ…』
彼にとってウィルフィールドの口癖はストレスに感じる。するとウィルフィールドは小声で…。
「偶然にも…天空世界から隕石が落下するとは…恐らく今後…世界各地で天変地異が発生するかも知れないな…」
「天変地異ですって?」
ストレイダスはウィルフィールドの小声に反応したのである。
「近頃…感じるのだよ…」
時たまであるが…。ウィルフィールドは未来を予知出来る。契機としては幼少期の海水浴で事故に遭遇…。海中に溺れ掛けるも両親に救助されたのである。事故から数日後…。未来の出来事を予見出来る能力が発現したのである。
「村長?一体…世界では何が発生するのですか?」
ストレイダスは恐る恐る問い掛ける。
「非常に曖昧かも知れないが…世界各地に怪物らしき巨体が暴れ回り…各国は停戦するだろう…」
「えっ…停戦ですって!?」
今現在世界各国は経済の不景気により戦争中である。世界各地の彼方此方が戦争の影響で荒廃化…。戦争による被害は拡大化する。
「怪物を相手に奮闘中の戦士らしき存在も認識出来たのだ…ひょっとして世界の救世主だろうか?」
「怪物と…戦士ですって?」
ウィルフィールドの表現は非常に曖昧であり現実味は皆無である。
『本当に曖昧だな…怪物とか戦士って何だろう?』
一方のストレイダスは内心珍粉漢粉であり苦笑いする。
「少なくとも世界全体で異変が発生するのは事実だろう…」
数秒間が経過するとウィルフィールドは自宅へと戻ったのである。
「世界全体で天変地異なんて…」
『本当に発生するのかな?巨体の怪物とか…世界の救世主とか…古代の神話みたいな内容だよな…』
先程のウィルフィールドの発言は非現実的であり大昔の神話みたいに感じられる。

第四話

停戦
隕石事故から半年後の十二月中旬の時期である。世界各国は依然として戦争中であったが…。十二月が経過した時期から海中より正体不明の移動物体の目撃情報が世界各地に伝播したのである。同年の十二月十三日…。とある大国の大型潜水艦が正体不明の巨大移動物体と衝突する大事故が発生したのである。大型潜水艦は沈没こそ免れたが…。艦体は大破したのである。正体不明の巨大移動物体による大型潜水艦の衝突事故から二日後…。今度は別の国軍の艦隊が作戦行動中に正体不明の巨大移動物体と遭遇する。魚類らしき背鰭と尾鰭が確認出来…。正体不明の巨大移動物体は全長数十メートル規模の魚類であると判明したのである。艦隊は回避行動を開始するのだが…。一隻のミサイル艦が魚類らしき移動物体と衝突したのである。巨大移動物体と衝突した影響によりミサイル艦は沈没…。艦隊は即座に対潜戦闘を開始するのだが巨大移動物体は想像以上に高速であり行方を見失ったのである。以後も各海域で各種船舶が魚類らしき巨大移動物体と遭遇…。場合によっては衝突する事故が多発したのである。一連の超常現象から月日が経過…。世界暦五千七百二十二年五月七日未明の出来事である。午前八時半…。
「各国の停戦って本当なのかよ!?」
「えっ…長期化した戦闘がこんなにもピタッと停戦するなんて…」
各国間の停戦の情報は辺境のエルピスコロニア全域にも知れ渡ったのである。エルピスコロニアは各国の停戦の動向により各村落が騒然とする。
「開戦から七年以上経過したけれど…各国が停戦するとは何が契機で?」
各村落は突然の朗報により騒然としたものの…。大勢の村民達は各国の停戦にホッとしたのである。すると一人の村民が恐る恐る…。
「各国が停戦した理由だけど…如何やら規格外の怪物が戦場に出現したらしいぞ…」
「えっ!?規格外の怪物だって!?」
周囲の者達は怪物の一言に反応する。
「世界各地の戦場で巨体の怪物が何体も出現したらしいぞ…」
各国が戦争中に規格外の巨大不明生物の出現で各国軍の損害が増大化したのである。対する各国軍も通常兵器で巨大不明生物に応戦するのだが…。巨大不明生物には各国軍の如何なる兵器も通用しなかったのである。各国の首脳陣は巨大不明生物の出現により停戦を決行…。各国軍は巨大不明生物の排除を優先したのである。
「非現実的だな…怪物の出現なんて本当なのかよ?」
「怪物の出現で終戦なんて皮肉だよな…」
「本当に怪物が出現するなんて…村落に出現しないか心配だよ…」
「やっぱりウィルフィールド村長の未来予知は本当だったのか…」
大半の者達がウィルフィールドの予言を単なる妄言程度の認識であったが…。今回の超常現象から怪物の存在を確信したのである。
『怪物か…やっぱり村長の予言は本当だったな…』
村道を通り掛かったストレイダスは村民達の噂話を盗み聞きする。
『村長の予言では地球上に救世主が出現するらしいけれど…一体誰なのかな?』
ストレイダスは救世主の存在が何者なのか気になったのである。

第五話

恐竜型
全世界各国の停戦表明から五日後の深夜帯…。エルピスコロニア北方地帯での出来事である。村民達はスヤスヤと睡眠中だったのだが…。突如として北方の海岸から爆発音と猛獣らしき咆哮が北方地帯全域に響き渡ったのである。
「うわっ!」
一方のストレイダスは自宅の寝室にて熟睡中であったが…。突然の爆発音と猛獣らしき轟音により飛び起きたのである。
『一体何が!?』
今度は大勢の村民達の悲鳴が響き渡る。気になったストレイダスは恐る恐る外部へと移動したのである。大勢の村民達が村道を逃走…。反対方向から弓矢を装備した義勇兵達が総動員で海岸へと急行中だったのである。
「えっ…」
ストレイダスは外部の光景に愕然とする。
『前代未聞の光景だな…』
ストレイダスは村道へと移動…。義勇兵達に追尾したのである。移動中…。再度爆発音と猛獣らしき咆哮が響き渡る。
『咆哮だ…海岸には何が出撃したのかな?』
義勇兵達を追尾してより数分後…。ストレイダスは海岸へと到達したのである。
「なっ!?」
ストレイダスは海岸の光景に驚愕…。現実の出来事なのか理解出来なくなる。
『此奴は…恐竜なのか!?』
海岸の砂浜には体高十二メートル前後の恐竜らしき怪物が直立…。全身が凸凹の岩石らしき皮膚が特徴的である。
「狼狽えるな!此処で怪物を仕留めろ!」
義勇兵の部隊長が攻撃を指示…。数十本もの毒矢が発射されたのである。多数の毒矢が怪物の皮膚に命中するのだが…。
「畜生…ビクともしないな…」
怪物の皮膚は岩石みたいに硬質であり毒矢は非力だったのである。
「部隊長殿…駄目です…」
「こんな装備では…」
周囲の義勇兵達は毒矢が通用しない怪物に畏怖し始め…。絶望する。現実問題としてエルピスコロニアは外界の科学技術とは無縁の排他的社会である。当然として科学技術は未発達であり外界では主流とされる近代的装備は皆無…。武器は時代錯誤の棍棒やら弓矢が関の山だったのである。
「駄目だ!此処で怪物を仕留めなければ村落が壊滅するのだぞ!」
部隊長は怒号するのだが…。
「怪物が!?」
直後である。恐竜型の怪物が口部を開口し始め…。口内から高熱の火球を放射したのである。
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
火球は義勇兵達に直撃…。彼等の肉片が一瞬で炭化したのである。海岸の砂浜には炭化した義勇兵達の肉片が彼方此方に散乱する。
「えっ…」
ストレイダスは彼等の惨劇に恐怖したのである。一方恐竜型の怪物がストレイダスの方向を直視し始め…。ギロリと睥睨したのである。
「ひっ!」
ストレイダスは極度の恐怖心により身動き出来なくなる。
『畜生…逃げたいのに逃げられない…』
すると恐竜型の怪物は再度口部を開口…。ストレイダスを標的に口内から高熱の火球を放射したのである。
「はぁ…」
『今日が…俺の命日か…』
ストレイダスは自身の最期を覚悟する。

第六話

協力者
ストレイダスは火球に直撃…。意識が消失したのである。火球が直撃してより時間が経過…。
「ん?えっ…此処は?」
ストレイダスはとある密室にて目覚める。
『俺は恐竜みたいな怪物に遭遇してから殺されて…此処は死後の世界なのか?』
ストレイダスは周囲をキョロキョロさせる。すると目前のドアが開放され…。背広姿の男性が入室する。
「目覚められましたか…ストレイダス様…」
背広姿の男性は頭髪が金髪…。瞳孔は碧眼であり大柄の白人男性だったのである。
「えっ…はぁ…」
ストレイダスは状況が理解出来ず返答に困惑する。
『誰だろう?天使なのか?姿形だけなら人間みたいだな…』
目前の白人男性が天使なのか思考したのである。
「私の名前は【フィルドルク】です♪突然の出来事なので貴方が理解出来ないのは当然でしょう♪」
フィルドルクと名乗る白人男性は満面の笑顔で発言する。一方のストレイダスは恐る恐る問い掛ける。
「俺は怪物に殺されて…此処は死後の世界の天国ですか?貴方は天使ですか?」
フィルドルクはストレイダスの問い掛けにクスクスと微笑し始める。
「こんなにも連続的に超自然的現象と遭遇すれば混乱するでしょうね♪此処は潜水艇の内部ですよ♪天国とは無縁の世界です♪」
「潜水艇の…内部?」
「貴方は正真正銘完全なる生者なのですから♪」
「えっ…俺が…生者ですって!?」
『俺は怪物の火球で吹っ飛ばされたのに…命拾い出来たのか!?』
ストレイダスは自身が生者である事実に驚愕し始め…。再度混乱したのである。
「貴方は地上の怪物と遭遇してから…」
ストレイダスは先程の恐竜型の怪物に攻撃され…。海面上へと吹っ飛ばされたのである。一方のフィルドルクは潜水艇で航行中…。暗闇の海中にてストレイダスを発見したのである。
「俺は貴方に救助されたのですね…感謝します…」
ストレイダスは命拾い出来…。フィルドルクに感謝したのである。
「私の正体は民間の宇宙開発企業の社長とでも♪当然として貴方の協力者なのは断言出来ますが♪」
「えっ…宇宙?開発企業の…社長?」
『俺の協力者だって?失礼かも知れないけれど…』
ストレイダスはフィルドルクに警戒する。
『正直胡散臭い雰囲気だな…』
フィルドルクは見ず知らずの人物であり内心胡散臭いと感じる。
「貴方が俺を此処に移送したのですか?」
「無論ですね♪」
フィルドルクはストレイダスの問い掛けに満面の笑顔で返答する。
「貴方は唯一無二の地球の救世主なのですから♪ストレイダス様が死去されたら一体誰が地球を守護されるのでしょうか?」
「俺が…地球の救世主ですって?」
「貴方は去年の六月頃…隕石で大怪我されたでしょう?私は後日…隕石の落下地点で落下した隕石と…貴方の血液を入手したのですよ♪」
去年の六月…。隕石の落下を察知したフィルドルクは単独調査を目的にエルピスコロニアへと上陸したのである。最高峰のギガントロック頂上にて隕石とストレイダスの血液を入手…。独自で隕石の詳細とストレイダスの血液を調査したのである。
「調査の結果…世紀の大発見ですよ♪人類の歴史が変化するでしょうね♪」
フィルドルクは大喜びする。
「えっ…はぁ…」
ストレイダスは珍粉漢粉であり再度苦笑いしたのである。
「ギガントロックに落下した隕石はペストロと命名される深宇宙の特殊性物質なのですよ♪」
「ペストロ?」
ストレイダスは専門用語に困惑する。
「ペストロは惑星の爆発によって発生する物質なのですよ♪恐らく辺境の宙域で惑星が爆発したのでしょう…」
特定の惑星の爆発によってペストロと呼称される特殊性の物質が発生…。隕石として地球上に落下したのである。
「ですがペストロって物質と落下地点の血液が如何したのですか?」
ストレイダスは恐る恐る問い掛ける。
「隕石の落下地点の血液を調査した結果…ペストロの物質が検出されたのです…今現在のストレイダス様の血液と一致したのですよ…」
フィルドルクはストレイダスの身体髪膚を検査した結果…。ストレイダスの血液がギガントロックで発見した血液と一致したのである。
「えっ…」
ストレイダスは絶句する。
「今現在の貴方の肉体は常人とは比較出来ない領域へと進化したのです…」
ストレイダスは隕石の影響から全身がペストロの細胞へと変異したのである。
「えっ…進化?」
「貴方は隕石の影響により…細胞レベルで変異したのでしょう…」
ストレイダスは恐る恐る全身の皮膚に接触し始める。皮膚に接触すると筋肉が金属類みたいに硬質だったのである。
「実際ストレイダス様は怪物に攻撃されても死にませんでした…貴方の生命力が超越的だと証明されたのです♪」
フィルドルクは満面の笑顔で銀色の密着性の全身スーツ…。携帯型の電子機器を手渡したのである。
「全身タイツと…小箱みたいな小道具ですね…一体何でしょうか?」
エルピスコロニアでは文明社会の電子機器が出回らずストレイダスは携帯型の電子機器に興味深くなる。
「本日より貴方はペストロの超人…【ペストロマン】なのです♪」
フィルドルクはストレイダスをペストロマンと命名する。
「ペストロマン!?」
「今現在の貴方であれば先程の怪物と互角以上に接戦出来るでしょう♪貴方は地球上で最強の戦士なのですから♪」
ストレイダスはフィルドルクの発言に動揺し始める。
「フィルドルクさん!無茶ですよ!先程の恐竜みたいな怪物に…真正面から接戦なんて正気ですか!?」
「ストレイダス様は心配性ですね♪」
対するフィルドルクは動揺し続けるストレイダスに断言する。
「心配しなくてもストレイダス様のデータを計算した結果…今現在の貴方はペストロの効果によって常人の三百人分のパワーは発揮出来ましょう♪」
「三百人分って…」
『大袈裟だし…胡散臭いな…』
フィルドルクの発言が信用出来なかったのである。
「先程貴方に手渡した必須アイテムですが…一つ目はペストロマンが着用するので〔ペストロスーツ〕とでも命名しましょうか♪」
ペストロスーツは宇宙で発見された特殊繊維で製造…。密着性の全身スーツである。本来は宇宙空間での活用を目的に製造された代物とされ…。太陽型の恒星内部でも活動出来るとされる。
「二つ目のアイテムは怪物を発見するのに必須の〔ハイパーセンサー〕です♪」
ハイパーセンサーとは近年発生した巨大未確認不明生物の出現に対応する目的で開発された代物である。地球上であれば巨大未確認不明生物があらゆる場所に出現しても生体反応を正確にキャッチ出来…。瞬時に出現地点を特定出来る。
「当然としてペストロスーツとハイパーセンサーは無料で提供しますからね♪」
すると直後…。ハイパーセンサーの中心部のレンズが点滅したのである。
「うわっ!中心の硝子が点滅した!?」
ストレイダスは突然のハイパーセンサーの点滅に驚愕する。
「如何やらハイパーセンサーが怪物の生体の居場所をキャッチしたみたいですね♪」
「一体如何すれば…」
ストレイダスは困惑したのである。
「貴方が出動する以外に選択肢は存在しません…早速ストレイダス様は怪物を退治するべきかと…」
フィルドルクは携帯型のホログラム装置を作動させる。
「えっ…一体何が!?」
ストレイダスはホログラム装置に反応したのである。するとホログラム装置の上部にて立体化された恐竜型の怪物が映写される。
「怪物だ…」
恐竜型の怪物は村里を襲撃…。大勢の村民達が逃亡する光景がホログラム装置から鮮明に確認出来る。
「ストレイダス様…此処で長居し続ければ村落の被害が拡大する一方ですよ…」
ストレイダスは両目を瞑目し始め…。沈黙したのである。
『一か八かだな…』
一息する。
「承知しました…俺は…怪物を退治しますよ…」
ストレイダスは決意したのである。
「ストレイダス様♪決断されたのですね♪」
フィルドルクはストレイダスの決意に大喜びする。一方のストレイダスはペストロスーツを凝視し続ける。
『神話の…英雄みたいな衣装だけど…』
ペストロスーツの着用には抵抗を感じるのだが…。
『止むを得ないな…』
ストレイダスはペストロスーツを着用したのである。数分後…。
「少しだけチクチクしますが…やっぱり動き易いですね…」
ペストロスーツは全身にフィット…。全体的に動き易いと感じる。
「ですがやっぱりストレイダス様は屈強の体格ですね…」
ストレイダスは全体的に筋肉質であり余計に屈強さが際立ったのである。
「実際俺は村里では一番の力自慢ですからね…」
「であれば怪物相手でも大丈夫でしょう♪」
ストレイダスは恐る恐る…。
「早速此処から脱出したいのですが…一体如何すれば?」
「心配しなくても大丈夫ですよ♪ストレイダス様♪」
フィルドルクはストレイダスをとある密室へと案内したのである。
「床下の装置は…何ですか?」
床下には円形の装置が確認出来る。
「床下の装置は最新型のテレポート装置ですよ♪円内であればあらゆる物体を目的地にワープさせられます♪」
密室の装置はオーバーテクノロジーによって開発されたテレポート装置である。円形の内部に特定の物体を設置…。目的地を設定すると数秒間で物体をワープさせられる。

第七話

開戦
ストレイダスはテレポート装置によって海岸の砂浜へとワープする。
『此処は海岸の砂浜だな…』
先程の出来事を想起…。
『フィルドルクさんもだけど…』
先程の数多くの未来的道具に愕然とする。
『やっぱり外界の文明レベルは桁違いだな…』
すると直後…。頭部がズキズキする。
「うっ…」
『何だろう?遠方から気配を感じる…』
何故なのかは不明だが…。村落から気配を察知出来たのである。
『ひょっとするとペストロって隕石の影響なのかな?』
ストレイダスは自身の肉体の異変を自覚し始める。
『先程の怪物…仕留められるのかな?』
正直不安であったが…。村落へと急行したのである。移動中…。爆発音やら大勢の村民達の悲鳴が響き渡る。
『物凄い騒音だ…やっぱり怪物は村落に進攻したみたいだな…』
移動してより数分後…。
「えっ…」
北方地帯の彼方此方が火炎の地獄であり各家屋が炎上したのである。
『北方地帯が…』
ストレイダスは非日常的光景に絶句…。真夜中の深夜帯なのに火災の影響で北方地帯全域が赤色に染色する。
『怪物を発見し次第仕留めないと…』
すると近辺の山奥より…。怪物の咆哮が響き渡る。
『怪物か…』
ストレイダスは山奥へと急行する。急行してより数分後…。山道にて先程の恐竜型の怪物を発見したのである。
「怪物だ!」
一方の恐竜型の怪物は反応し始め…。背後のストレイダスを凝視したのである。怪物は殺気立った形相でギロリと睥睨する。
「うっ…」
『こんな怪物…本当に俺だけで仕留められるのか?』
ストレイダスは恐怖…。全身がプルプルと身震いしたのである。すると携帯式のハイパーセンサーがピピッと作動し始める。
「ん?ハイパーセンサーか?」
恐る恐るハイパーセンサーを起動…。
「何だろう?」
すると画面より怪物の名称と危険度が表示されたのである。
「【ギガントサウルス】?危険度は…中度?」
恐竜型の怪物は高熱恐竜ギガントサウルスと表示され…。危険度は中度と表示されたのである。
『怪物はギガントサウルスって名前なのか…』
メンテ

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桜花姫シリーズ ( No.1 )
日時: 2021/06/30 21:14
名前: 月影桜花姫

ジャンル
純和風ホラーファンタジー

世界観
純和風異世界

登場人物
【月影桜花姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3992年4月7日
星座:牡羊座
実年齢:28歳
人間換算:14歳
種族:妖女※最上級妖女
性別:女性
身分:町民
職業:不寝番※無報酬
身長:154cm
人魚形態:253cm
胸囲:102cm
胴囲:62cm
腰囲:92cm
体重:58kg
血液型:A型
一人称:私
性格:食いしん坊、強欲、短気、無鉄砲、合理主義、温厚篤実
好物:桜餅、飴玉、餡蜜、小倉汁粉、和菓子全般、麦茶
苦手:酢物全般、酒類全般、煮物、人参、大根、冬瓜
趣味:悪霊征伐、匪賊征伐、四六時中間食、昼寝、温泉巡り

【小猫姫】
出身地:南方国
誕生日:天地暦3886年4月30日
星座:牡牛座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:150cm
妖獣形態:230cm
胸囲:98cm
胴囲:58cm
腰囲:88cm
体重:54kg
血液型:A型
一人称:私
性格:人懐っこい、甘えん坊、純情可憐、大雑把
好物:白身魚、煮魚、寿司、苺大福
苦手:唐辛子、野菜類全般
趣味:隠れん坊、手まり、人形遊び、鬼ごっこ

【氷麗姫】
出身地:北方国
誕生日:天地暦3990年12月25日
星座:山羊座
実年齢:30歳
人間換算:15歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職〜花魁
身長:159cm
胸囲:107cm
胴囲:67cm
腰囲:97cm
体重:63kg
血液型:O型
一人称:私
性格:疑心暗鬼、攻撃的、腹黒、自意識過剰
好物:氷菓子、かき氷、梅酒
苦手:鍋物、唐辛子、牡蠣、燗酒
趣味:晩酌、雪合戦
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.27 )
日時: 2021/06/30 19:00
名前: 月影桜花姫

【三蔵郎】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3970年8月15日
星座:獅子座
年齢:50歳
種族:人間
性別:男性
身分:僧侶
職業:住職
身長:168cm
体重:68kg
血液型:B型
一人称:私
性格:穏和、生真面目、心配性、助平
好物:鍋物、天丼、鰻丼、緑茶、和菓子
苦手:玉葱、生魚、生肉
趣味:山登り、料理、仏像彫刻、野宿

【蛇骨鬼】
出身地:南方国
誕生日:不明
星座:不明
実年齢:不明
人間換算:90歳以上
種族:神族
性別:女性
身分:町民
職業:薬屋
身長:97cm
体重:22kg
血液型:B型
一人称:私
性格:母性的、自由奔放
好物:ゆで卵、酒類全般、山菜味噌汁、松茸、納豆、沢庵
苦手:蒟蒻、獣肉全般
趣味:薬品集め、栽培

【月影夜真魚子】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3966年6月25日
没年月日:天地暦4004年8月13日
星座:蟹座
享年:32歳
人間換算:16歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:151cm
人魚形態:250cm
胸囲:99cm
胴囲:59cm
腰囲:89cm
体重:55kg
血液型:A型
一人称:私
性格:過保護、心配性
好物:水飴、蜜柑、赤飯、餡蜜、牡丹餅
苦手:納豆、大根、豆腐
趣味:温泉巡り、子育て

【月影六五郎】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3965年2月20日
没年月日:天地暦3992年4月6日
星座:魚座
享年:27歳
種族:人間
性別:男性
身分:武士
職業:夜番警備隊
身長:167cm
体重:67kg
血液型:B型
一人称:私
性格:厳格、完璧主義、几帳面
好物:焼酎、白酒、猪肉、鹿肉
苦手:甘酒、小豆、甘物全般
趣味:狩猟、釣魚、武器集め
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.28 )
日時: 2021/06/30 19:02
名前: 月影桜花姫

【桃子姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦2992年4月7日
没年月日:天地暦3010年5月30日
星座:牡羊座
享年:18歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:152cm
胸囲:100cm
胴囲:60cm
腰囲:90cm
体重:56kg
血液型:A型
一人称:私
性格:鈍感、無頓着、のんびり屋、気長、無欲、頑固
好物:桜餅、柏餅、三色団子、白桃、麦茶
苦手:煮物、酒類全般、寿司
趣味:温泉巡り、昼寝、森林浴

【胡桃姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦2995年5月5日
没年月日:天地暦3010年5月29日
星座:牡牛座
享年:15歳
種族:人間
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:149cm
胸囲:97cm
胴囲:57cm
腰囲:87cm
体重:53kg
血液型:O型
一人称:私
性格:心配性、神経質、執拗
好物:白桃、海老天、牡丹餅、寿司、麦飯
苦手:唐辛子、牛蒡
趣味:人間観察、足任せ、勉学

【姫百合黄泉夜叉丸】
出身地:東方国
誕生日:天地暦2990年8月15日
星座:獅子座
年齢:20歳
種族:人間
性別:男性
身分:武士
職業:兵卒
身長:169cm
体重:69kg
血液型:B型
一人称:私
性格:正義感、生真面目、穏和、助平
好物:軍鶏鍋、鴨鍋、鯨肉、肉饂飩
苦手:人参、大根、冬瓜
趣味:山登り、肝試し、百物語、野宿

【小梅姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3010年5月30日
星座:双子座
実年齢:30歳※出産日から30年後
人間換算:15歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:158cm
妖獣形態:238cm
胸囲:106cm
胴囲:66cm
腰囲:96cm
体重:62kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:純粋、穏和、無邪気、天真爛漫
好物:桜餅、白桃、蓬餅、山菜味噌汁、薩摩芋
苦手:白身魚、煮魚
趣味:栽培、手まり、けん玉
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.29 )
日時: 2021/06/30 19:05
名前: 月影桜花姫

【鬼殺丸】
出身地:北方国
誕生日:天地暦2978年7月16日
没年月日:天地暦3008年9月2日
星座:蟹座
享年:30歳
種族:人間〜悪霊※死後
性別:男性
身分:武士
職業:兵卒
身長:170cm
体重:70kg
血液型:AB型
一人称:私、俺
性格:冷酷、無慈悲、負けず嫌い、執念深い
好物:猪肉、鶏肉
苦手:黒糖、甘酢、甘酒
趣味:戦闘、人殺し、殺戮

【アプセラス】
出身地:アクアユートピア
誕生日:天地暦3992年4月26日
星座:牡牛座
実年齢:28歳
人間換算:14歳
種族:人魚
性別:女性
身分:平民
職業:無職
身長:156cm
人魚形態:255cm
胸囲:104cm
胴囲:64cm
腰囲:94cm
体重:60kg
血液型:A型
一人称:私
性格:ビビり、気弱、ヘタレ、ネガティブ、依存的、小心者
好物:メロンパン、ショートケーキ、ミックスジュース、バニラアイス、ハンバーグステーキ
苦手:南瓜、真蛸、海鼠、昆虫食、葡萄酒
趣味:入浴、宝石集め

【ウェンディーネ】
出身地:アクアユートピア
誕生日:天地暦3996年10月22日
星座:天秤座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:人魚
性別:女性
身分:平民
職業:無職
身長:157cm
人魚形態:256cm
胸囲:103cm
胴囲:63cm
腰囲:93cm
体重:61kg
血液型:O型
一人称:私
性格:好奇心旺盛、ポジティブ
好物:炭酸飲料水、チョコレートケーキ、コーヒーゼリー、海藻サラダ、ハヤシライス
苦手:ボロネーゼ、ローストチキン、チキングラタン、生ビール
趣味:異国の歴史学、異国巡り
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.30 )
日時: 2021/06/30 19:08
名前: 月影桜花姫

【スキュラン】
出身地:ネクロデストピア
誕生日:天地暦3888年8月8日
星座:獅子座
実年齢:132歳
人間換算:22歳
種族:魔女
職業:無職
性別:女性
身分:無国籍
身長:190cm
体重:90kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:陰湿、過激
好物:ロブスター、甘海老
苦手:磯巾着
趣味:魔法の研究

【山茶花姫】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3996年11月18日
星座:蠍座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:忍者
身長:153cm
胸囲:101cm
胴囲:61cm
腰囲:91cm
体重:57kg
血液型:B型
一人称:私
性格:生真面目、強がり、負けず嫌い
好物:鰹節、鰻丼
苦手:椎茸
趣味:剣術修行

【冥王鬼】
出身地:神国
誕生日:不明
星座:不明
実年齢:不明
人間換算:20歳前後
種族:神族
性別:女性
身分:非人
職業:無職
身長:155cm
胸囲:103cm
胴囲:63cm
腰囲:93cm
体重:59kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:執念深い、野心的
好物:外郎、水餅
苦手:天ぷら、海鮮丼
趣味:長旅
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.31 )
日時: 2021/06/30 19:10
名前: 月影桜花姫

【霊魂巨神木】
種族:世界樹
身長:30m
体重:600t

【死霊餓狼】
種族:悪霊
身長:220cm
体重:220kg

【食人餓鬼】
種族:悪霊
身長:90cm〜120cm
体重:20kg〜30kg

【骸骨荒武者】
種族:悪霊
身長:240cm
体重:240kg

【大生首】
種族:悪霊
身長:130cm〜140cm
体重:30kg〜40kg

【亡霊女房】
種族:悪霊
身長:152cm
体重:56kg

【亡霊新婦】
種族:悪霊
身長:158cm
体重:62kg

【小面蜘蛛】
種族:悪霊
体長:160cm
体重:60kg

【百鬼食人餓鬼】
種族:悪霊
身長:170cm〜180cm
体重:70kg〜80kg

【椿女郎】
種族:悪霊
身長:154cm
体重:58kg

【天空輪入道】
種族:悪霊
身長:400cm
体重:400kg

【朧戦車】
種族:悪霊
身長:200cm
体重:200kg

【ネクロシーワーム】
種族:アンデッド
全長:50m
体重:500t

【ダークフィッシュ】
種族:アンデッド
全長:60cm〜80cm
体重:30kg〜40kg

【ネクロマーメイド】
種族:アンデッド
全長:240kg〜250cm
体重:40kg〜50kg

【アクアラーミアン】
種族:アンデッド
全長:40m
体重:800kg

【魍魎姫】
種族:人工妖女
身長:150cm
体重:54kg

【分裂体】
種族:人工妖女
身長:150cm
体重:54kg

【羅刹獣】
種族:魔獣
身長:5km
体重:測定不能

登場国家
『日倭浄土国』
総人口:500万人

『アクアユートピア』
別名:人魚王国
総人口:300人

作中用語
『天道眼』瞳術
『日輪光』秘術
『天霊山』温泉郷
『牢固石』鉄鉱石
『霊斬刀』名刀
『アクアクリスタル』魔法石
『ネクロデストピア』失楽園
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.2 )
日時: 2021/07/15 21:16
名前: 月影桜花姫

ジャンル
純和風ホラーファンタジー

世界観
純和風異世界

登場人物
【月影桜花姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3992年4月7日
星座:牡羊座
実年齢:28歳
人間換算:14歳
種族:妖女※最上級妖女
性別:女性
身分:町民
職業:不寝番※無報酬
身長:154cm
人魚形態:253cm
胸囲:102cm
胴囲:62cm
腰囲:92cm
体重:58kg
血液型:A型
一人称:私
性格:食いしん坊、強欲、短気、無鉄砲、合理主義、温厚篤実
好物:桜餅、飴玉、餡蜜、小倉汁粉、和菓子全般、麦茶
苦手:酢物全般、酒類全般、煮物、人参、大根、冬瓜
趣味:悪霊征伐、匪賊征伐、四六時中間食、昼寝、温泉巡り、夜遊び

【小猫姫】
出身地:南方国
誕生日:天地暦3886年4月30日
星座:牡牛座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:150cm
妖獣形態:230cm
胸囲:98cm
胴囲:58cm
腰囲:88cm
体重:54kg
血液型:A型
一人称:私
性格:人懐っこい、甘えん坊、純情可憐、大雑把
好物:白身魚、煮魚、寿司、いくら丼、苺大福
苦手:唐辛子、野菜類全般
趣味:隠れん坊、手まり、人形遊び、鬼ごっこ

【氷麗姫】
出身地:北方国
誕生日:天地暦3990年12月25日
星座:山羊座
実年齢:30歳
人間換算:15歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職〜花魁
身長:159cm
胸囲:107cm
胴囲:67cm
腰囲:97cm
体重:63kg
血液型:O型
一人称:私
性格:疑心暗鬼、攻撃的、腹黒、自意識過剰
好物:氷菓子、かき氷、梅酒
苦手:鍋物、唐辛子、牡蠣、燗酒
趣味:晩酌、雪合戦、夜遊び

【三蔵郎】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3970年8月15日
星座:獅子座
年齢:50歳
種族:人間
性別:男性
身分:僧侶
職業:住職
身長:168cm
体重:68kg
血液型:B型
一人称:私
性格:穏和、生真面目、心配性、助平
好物:鍋物、天丼、鰻丼、緑茶、和菓子
苦手:玉葱、生魚、生肉
趣味:山登り、料理、仏像彫刻、野宿

【蛇骨鬼】
出身地:南方国
誕生日:不明
星座:不明
実年齢:不明
人間換算:90歳以上
種族:神族
性別:女性
身分:町民
職業:薬屋
身長:97cm
体重:22kg
血液型:B型
一人称:私
性格:母性的、自由奔放
好物:ゆで卵、酒類全般、山菜味噌汁、松茸、納豆、沢庵
苦手:蒟蒻、獣肉全般
趣味:薬品集め、栽培

【月影夜真魚子】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3966年6月25日
没年月日:天地暦4004年8月13日
星座:蟹座
享年:32歳
人間換算:16歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:151cm
人魚形態:250cm
胸囲:99cm
胴囲:59cm
腰囲:89cm
体重:55kg
血液型:A型
一人称:私
性格:過保護、心配性
好物:水飴、蜜柑、赤飯、餡蜜、牡丹餅
苦手:納豆、大根、豆腐
趣味:温泉巡り、子育て

【月影崇徳丸】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3965年2月20日
没年月日:天地暦3992年4月6日
星座:魚座
享年:27歳
種族:人間
性別:男性
身分:武士
職業:夜番警備隊
身長:167cm
体重:67kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:厳格、完璧主義、几帳面
好物:焼酎、白酒、猪肉、鹿肉
苦手:甘酒、小豆、甘物全般
趣味:狩猟、釣魚、武器集め

【桃子姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦2992年4月7日
没年月日:天地暦3010年5月30日
星座:牡羊座
享年:18歳
種族:人間〜妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:152cm
胸囲:100cm
胴囲:60cm
腰囲:90cm
体重:56kg
血液型:A型
一人称:私
性格:鈍感、無頓着、のんびり屋、気長、無欲、頑固
好物:桜餅、柏餅、三色団子、白桃、麦茶
苦手:煮物、酒類全般、寿司
趣味:温泉巡り、昼寝、森林浴

【胡桃姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦2995年5月5日
没年月日:天地暦3010年5月29日
星座:牡牛座
享年:15歳
種族:人間
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:149cm
胸囲:97cm
胴囲:57cm
腰囲:87cm
体重:53kg
血液型:O型
一人称:私
性格:心配性、神経質、執拗
好物:白桃、海老天、牡丹餅、寿司、麦飯
苦手:唐辛子、牛蒡
趣味:人間観察、足任せ、勉学

【姫百合黄泉夜叉丸】
出身地:東方国
誕生日:天地暦2990年8月15日
星座:獅子座
年齢:20歳
種族:人間
性別:男性
身分:武士
職業:兵卒
身長:169cm
体重:69kg
血液型:B型
一人称:私
性格:正義感、生真面目、穏和、助平
好物:軍鶏鍋、鴨鍋、鯨肉、肉饂飩
苦手:人参、大根、冬瓜
趣味:山登り、肝試し、百物語、野宿

【小梅姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3010年5月30日
星座:双子座
実年齢:30歳※出産日から30年後
人間換算:15歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:158cm
妖獣形態:238cm
胸囲:106cm
胴囲:66cm
腰囲:96cm
体重:62kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:正義感、純粋、穏和、無邪気、天真爛漫
好物:桜餅、白桃、蓬餅、山菜味噌汁、薩摩芋
苦手:白身魚、煮魚
趣味:栽培、手まり、けん玉

【鬼殺丸】
出身地:北方国
誕生日:天地暦2978年7月16日
没年月日:天地暦3008年9月2日
星座:蟹座
享年:30歳
種族:人間〜悪霊※死後
性別:男性
身分:武士
職業:兵卒
身長:170cm
体重:70kg
血液型:AB型
一人称:私、俺
性格:冷酷、無慈悲、負けず嫌い、執念深い
好物:猪肉、鶏肉
苦手:黒糖、甘酢、甘酒
趣味:戦闘、人殺し、殺戮

【アクアヴィーナス】
出身地:アクアユートピア
誕生日:天地暦3992年4月26日
星座:牡牛座
実年齢:28歳
人間換算:14歳
種族:人魚
性別:女性
身分:平民
職業:無職
身長:156cm
人魚形態:255cm
胸囲:104cm
胴囲:64cm
腰囲:94cm
体重:60kg
血液型:A型
一人称:私
性格:ビビり、気弱、ヘタレ、ネガティブ、依存的、小心者
好物:メロンパン、ショートケーキ、ミックスジュース、バニラアイス、ハンバーグステーキ
苦手:南瓜、真蛸、海鼠、イカ墨、昆虫食、葡萄酒
趣味:入浴、宝石集め

【ウェンディーネ】
出身地:アクアユートピア
誕生日:天地暦3972年10月22日
星座:天秤座
実年齢:48歳
人間換算:24歳
種族:人魚
性別:女性
身分:平民
職業:無職
身長:157cm
人魚形態:256cm
胸囲:103cm
胴囲:63cm
腰囲:93cm
体重:61kg
血液型:O型
一人称:私
性格:好奇心旺盛、ポジティブ
好物:炭酸飲料水、チョコレートケーキ、コーヒーゼリー、海藻サラダ、ハヤシライス
苦手:ボロネーゼ、ローストチキン、チキングラタン、生ビール
趣味:異国の歴史学、異国巡り

【スキュラン】
出身地:ネクロデストピア
誕生日:天地暦3888年8月8日
星座:獅子座
実年齢:132歳
人間換算:22歳
種族:魔女
職業:無職
性別:女性
身分:無国籍
身長:190cm
体重:90kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:陰湿、過激
好物:ロブスター、甘海老
苦手:磯巾着
趣味:魔法の研究、魔法医薬品の研究

【山茶花姫】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3996年11月18日
星座:蠍座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:忍者
身長:153cm
胸囲:101cm
胴囲:61cm
腰囲:91cm
体重:57kg
血液型:B型
一人称:私
性格:生真面目、強がり、負けず嫌い
好物:鰹節、鰻丼
苦手:椎茸
趣味:剣術修行

【冥王鬼】
出身地:神国
誕生日:不明
星座:不明
実年齢:不明
人間換算:20歳前後
種族:神族
性別:女性
身分:非人
職業:無職
身長:155cm
胸囲:103cm
胴囲:63cm
腰囲:93cm
体重:59kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:執念深い、野心的
好物:外郎、水餅
苦手:天ぷら、海鮮丼
趣味:長旅、散歩

【霊魂巨神木】
種族:世界樹
身長:30m
体重:600t

【死霊餓狼】
種族:悪霊
身長:220cm
体重:920kg

【食人餓鬼】
種族:悪霊
身長:90cm〜120cm
体重:20kg〜30kg

【骸骨荒武者】
種族:悪霊
身長:240cm
体重:840kg

【大生首】
種族:悪霊
身長:130cm〜140cm
体重:30kg〜40kg

【亡霊女房】
種族:悪霊
身長:152cm
体重:56kg

【亡霊新婦】
種族:悪霊
身長:158cm
体重:62kg

【小面蜘蛛】
種族:悪霊
体長:160cm
体重:60kg

【百鬼食人餓鬼】
種族:悪霊
身長:170cm〜180cm
体重:70kg〜80kg

【椿女郎】
種族:悪霊
身長:154cm
体重:58kg

【天空輪入道】
種族:悪霊
身長:4m
体重:4t

【朧戦車】
種族:悪霊
身長:2m
体重:2t

【ネクロシーワーム】
種族:アンデッド
全長:50m
体重:500t

【ダークフィッシュ】
種族:アンデッド
全長:60cm〜80cm
体重:30kg〜40kg

【ネクロマーメイド】
種族:アンデッド
全長:250cm〜260cm
体重:50kg〜60kg

【アクアラーミアン】
種族:アンデッド
全長:30m
体重:600kg

【魍魎姫】
種族:人工妖女
身長:150cm
体重:54kg

【分裂体】
種族:人工妖女
身長:150cm
体重:54kg

【羅刹獣】
種族:魔獣
身長:5km
体重:測定不能

登場国家
『日倭浄土国』
別名:イーストユートピア
総人口:300万人

『アクアユートピア』
別名:人魚王国
総人口:700人

作中用語
『天道眼』瞳術
『日輪光』秘術
『天霊山』温泉郷
『牢固石』鉄鉱石
『霊斬刀』名刀
『アクアクリスタル』魔法石
『ネクロデストピア』失楽園
メンテ
宇宙大動乱 ( No.3 )
日時: 2021/08/03 19:58
名前: 月影桜花姫

第一話

艦隊戦闘
太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢三十歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。大銀河帝国軍にも宇宙用の偵察型ドローンは使用されるが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊
第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で見物しませんか?」
「承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させられますよ♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは十二月二十五日戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『ヘブンスター』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!ヘブンスターから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるヘブンスターから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でヘブンスターの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は十二月二十五日戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪ヘブンスターの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと!?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星メタリックアイに接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「小規模艦隊だな…」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備部隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備部隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させるとヘブンスターから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備部隊は所属不明の宇宙艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙艦隊は交戦の意思は皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はヘブンスターでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ避難民達は無事に保護される。

第三話

奇襲大作戦
宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるヘブンスターに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵軍を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

猛反撃開始
ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十五日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。

反帝国主義
宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星ヘブンスターを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派のルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの残存艦隊の一部が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残党勢力が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
メンテ
桜花姫 ( No.4 )
日時: 2021/08/13 18:17
名前: 月影桜花姫

第一部

第一話

闇夜

太古の大昔の出来事である。天地歴二百六十二年四月八日…。極東に位置する青海原の島嶼では俗界の理想郷とも呼称される多神教の小規模民国『太平神国』が誕生する。太平神国は原生林の島国地帯であるものの…。国内では武力による戦乱が各地で頻発したのである。弱肉強食の戦乱時代が終焉してより千年後…。共存共栄の安穏時代は非常に安穏であり毎日の日常生活が退屈にも感じられる。天地歴四千二十年三月下旬…。近頃は度重なる神隠しやら無数の亡者達による超常現象が各農村地帯で頻発したのである。同年の五月上旬の真夜中…。赤色の着物姿の女性が一人で南方国の荒神山を視察する。彼女の名前は不寝番の【月影桜花姫】である。
「噂話の荒神山かしら?」
桜花姫とは表向きだけなら西方国の小町娘であるが…。悪霊退治屋を自称する無所属の不寝番である。彼女は強大なる妖術を駆使しては多種多様の超常現象は勿論…。無数の亡者達による怪異事件を解決させた数多くの快挙により国全体の有名人である。外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
「目的地の荒神山に到着したわね…」
こんなにも人間的雰囲気の桜花姫であるが…。彼女自身は人間の血族とは無縁の超自然的生命体であり妖女の母親と人間の父親の混血である。両目の瞳孔が半透明の血紅色である理由も純血の妖女である母親の血統が影響する。妖女とは摩訶不思議なる超常現象やら妖術を多用する女性達の総称化である。肉体の天寿には束縛されるものの…。半永久的に不老長寿の肉体を保持する。一握りの最上級妖女であれば通常の妖女よりも妖力が桁違いであり長命であると予測される。桜花姫は正真正銘最上級に位置する妖女である。桜花姫は悪霊相手には容赦せず…。基本的に人間には手出ししない不殺生の判官贔屓であり余程の難局に遭遇しなければ人間達には手出ししない。
(村人達は大袈裟なのよね…)
「こんなにも他愛無い超常現象なのに村人達は戦慄し過ぎなのよ…」
彼女自身性格的には温厚篤実であるものの…。肉体的には非常に愚鈍であり人一倍ひ弱である。神出鬼没の不吉なる超常現象に遭遇しても戦慄しないものの…。非常に無鉄砲で無計画であり悪戦苦闘の場面も頻繁である。
「私は平気だけど…荒神山って普通の人間であれば誰でも戦慄しそうな雰囲気だわ…」
桜花姫は娯楽の感覚で暗闇に覆い包まれた荒神山の天辺へと到達する。周囲は非常に物静かであり僅少の風音が山道に響き渡る程度である。
「頂上は物静かね…」
(悪霊が出現するかしら?)
悪霊とは亡者達の怨念が実体化した存在であり生者を敵対視する。戦乱時代以前の古来より悪霊は存在するが…。大勢の人間達が殺し合った戦乱時代から悪霊の出現頻度が増加したのである。神出鬼没であり各地に出現…。村人を襲撃したのである。すると直後…。
「えっ?」
(人気だわ…)
天辺から人気を感じる。天辺の中心地より小柄の人影らしき気配を察知…。
「こんな真夜中に誰かしら?」
彼女は非常に警戒した様子で恐る恐る荒神山頂上の中心地に近寄る。
「一体何者よ?」
頂上の人影とは小柄の体格の僧侶だったのである。
(誰かと思いきや…)
「ひょっとしてあんたは人間の僧侶かしら?」
僧侶は非常に物静かな雰囲気であり無表情であるものの…。
「大変失礼しましたね…私は僧侶の【三蔵郎】ですよ…」
三蔵郎と名乗る僧侶は紳士的に謝罪したのである。
「あんたは人間の僧侶だったのね…一瞬悪霊と勘違いしちゃったわよ…」
「戦慄されたのであれば失礼でしたね…」
「別に戦慄しないわよ…」
すると三蔵郎は恐る恐る…。
「大変失礼なのですが…ひょっとすると貴女様は花魁の娘さんでしょうか?」
桜花姫は三蔵郎と名乗る僧侶の花魁発言に苛立つなり…。
「なっ!?誰が花魁ですって…勘違いしないでよね!私は小町娘よ!」
桜花姫に怒号された三蔵郎は即座に謝罪する。
「大変失礼しました…ですが貴女様みたいな容姿端麗の娘さんがこんなにも不吉の荒神山で一体何を?」
(私が容姿端麗ですって♪)
三蔵郎の容姿端麗の発言に桜花姫は内心大喜びしたのである。
「あんたは三蔵郎様だったかしら♪私が容姿端麗なんて三蔵郎様は非常に大袈裟ね♪」
彼女は三蔵郎の質問に即答する。
「私は神出鬼没の悪霊退治屋の妖女だからね♪今回は荒神山で頻発する超常現象を追跡中だったのよ♪」
「貴女様は妖女だったのですか…」
近頃南方国に聳え立つ荒神山では不吉なる超常現象が合計十四件も発生したのである。荒神山は不吉の名称であるが荒神山の天辺から眺望出来る南方国の村里の景色は非常に絶景であり観光地としては勿論…。大勢の旅人達が野営目的に荒神山で野宿したのである。今現在では荒神山は平穏の観光地として有名であるが大昔の戦乱時代…。荒神山は千年以上前の戦乱時代では各戦場で戦死した戦死者達やら飢饉によって餓死した領民達の火葬場として利用されたのである。戦乱時代に成仏出来なかった神出鬼没の亡者達の目撃情報が噂話として南方国全域に出回る。太平神国を実行支配する東方国武士団に荒神山に出没した悪霊征伐の依頼が殺到したものの東方国の武士団は勿論…。各地方の武士団も静観状態であり実質悪霊関連の問題には放置状態だったのである。
「荒神山で発生した超常現象を追跡中だったのですね…」
「近頃は国全体で超常現象が頻発したからね♪」
「近頃は大変物騒ですからね…」
一時期は沈静化した状態であったが…。最近では悪霊による怪異事件が各地で多発化し始める。三蔵郎は地面の無数の石ころに土鍋を設置させる。土鍋に多種多様の野菜類やら鹿肉は勿論…。貴重品である鯨肉で料理する。
「貴女様も如何でしょうか?味見するだけでも…」
炬火によって土鍋の食材を煮付ける。
(味噌汁だわ♪美味しそうね…)
土鍋の味噌汁を凝視し続けると桜花姫も三蔵郎の調理する味噌汁を頬張りたくなる。
「三蔵郎様の夕食かしら?」
桜花姫は無我夢中に土鍋の味噌汁を凝視し続けたのである。
「炭火の鶏肉も如何でしょうか?麦飯も用意しますよ…」
「私にも!?」
一瞬困惑するものの…。
(大変美味そうだからね♪)
「空腹だから私にも食事させてね♪御免あそばせ♪」
食いしん坊の桜花姫は手渡された味噌汁を即座に平らげる。
「一瞬で平らげるなんて…娘さんは相当空腹だったのですね…」
三蔵郎は味噌汁を一瞬で平らげた桜花姫を直視するなり苦笑いする。
「非常に美味だったわ♪」
満足気に炭火の鶏肉を頬張る。
「飲料水は如何でしょうか?」
三蔵郎は恐る恐る瓢箪を桜花姫に手渡したのである。
「ひょっとして梅酒かしら?私は酒類が人一倍大嫌いなのよね…」
桜花姫は酒類が人一倍苦手であり微量でも摂取すると気味悪くなる。
「大丈夫ですよ…緑茶ですから一安心しなされ…」
「緑茶なら一安心だわ♪」
すると三蔵郎は恐る恐る質問したのである。
「大変失礼なのですが…娘さんの名前は何ですか?」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私の名前は桜花姫…月影桜花姫よ♪」
「えっ!?月影桜花姫様ですと!?」
三蔵郎は大変驚愕したのである。
「ひょっとして貴女様が多種多様の超常現象を解決させた伝説の最上級妖女…月影桜花姫様でしたか…」
「勿論よ♪」
「ですがこんなにも不吉の荒神山で最上級妖女である月影桜花姫様と対面出来るなんて…大変光栄ですな♪」
「大袈裟ね♪」
すると桜花姫も三蔵郎に問い掛ける。
「三蔵郎様はこんなにも暗闇の荒神山で一体何を?」
三蔵郎は暗闇の夜空を眺望するなり…。
「私にとっての道楽ですかね…」
「道楽ですって?」
「私にとって自然界での食卓こそが醍醐味なのですよ♪春夏秋冬の季節の変化…常日頃から森林浴の音色…川水の風音は精神的にも肉体的にも非常に沈静化されましょう…こんなにも殺伐とした雰囲気の荒神山でも…」
「如何にも聖職者っぽい主義主張だわ…」
(三蔵郎様は典型的に堅苦しい人間みたいね…)
桜花姫は内心三蔵郎の思考を堅苦しく感じる。
「想像力は十人十色多種多様ですからね…」
三蔵郎は無表情で広大無辺の夜空を眺望したのである。
「無数の星月夜が認識出来る森羅万象とは非常に広大無辺ですな…摩訶不思議の森羅万象には圧倒されますよ…」
(三蔵郎様…残念だけれども…私には何が何やら全然理解出来ないわ…)
三蔵郎の発言に桜花姫は困惑する。
「広大無辺の森羅万象とは非常に興味深い超常現象ですな…」
(三蔵郎様は一体何を発言したいのかしら?)
桜花姫は三蔵郎の発言に困惑し続けるものの…。彼女は無言で首肯したのである。すると三蔵郎から意味深の発言を拝聴する。
「近頃…私の寺院近隣の墓場から不吉の気配を察知しましてね…」
無表情だった三蔵郎の表情が一瞬険悪化したのである。
「不吉の気配ですって?一体何かしら?」
「近頃…悪運にも大勢の村人達が息絶えたのでしょうね…死去した彼等の怨恨なのでしょうか?」
(大勢の村人達が息絶えた?)
「ひょっとすると悪霊の仕業かも知れないわね…」
(先程から悪霊の気配が…)
桜花姫は不吉の霊力を感じる。
「非常に戦慄だわ…」
「桜花姫様?悪霊の追跡は如何されるのですか?」
「勿論継続するわよ!神出鬼没の悪霊と遭遇したとしても最上級の妖女である私が問答無用で征伐しちゃうからね♪」
「最上級妖女である桜花姫様が悪霊を征伐されるのであれば一安心ですな…」
桜花姫は荒神山の天辺で三蔵郎と対談し続けても無意味であると判断するなり…。
「三蔵郎様…御免あそばせ♪」
「如何されましたか?桜花姫様…」
「私は常日頃から悪霊征伐で大忙しだからね…即刻今回の超常現象の主要因を追跡しないと…」
「私は是非とも桜花姫様の上首尾を見届けましょう…」
桜花姫は即座に超常現象を追跡したのである。桜花姫の周辺は自然林であるものの…。
「悪霊の魔窟みたいだわ…」
普段は観光地として有名であるが真夜中の荒神山は闇夜の魔窟であり極度の不吉さと殺伐さを感じさせる。すると背後より無数の気配が接近するのを察知…。恐る恐る背後を確認する。
「突然胸騒ぎが…」
桜花姫は極度の胸騒ぎを感じるなり背後からの襲撃に警戒したのである。
「一体何事かしら?」
恐る恐る背後からの襲撃を警戒するものの…。
「人間の気配は感じられないわね…」
周辺の自然林は暗闇であり背後には何も確認出来ない。
「ひょっとして私の勘違いだったのかしら?」
桜花姫の誤認識かと思いきや…。
「えっ!?」
何やら背後の地面より無数の殺気を感じる。
「何かしら…」
(地面からだわ…)
背後の地面より小柄の人影が無数に出現したのである。
「此奴は悪霊!?」
無数の人影は真夜中の暗闇によって姿形の認識が非常に困難であるものの…。極度の腐敗と悪臭により悪霊であると再認識する。全身が血塗れの状態であり皮膚の腐敗が原因なのか両目からは眼球と下腹からは体内の臓物が噴出した醜悪なる姿形…。全体的に皮膚と人骨のみの肉体であり非常にどす黒い醜悪なる風貌である。
「死滅した人間達の末路だわ…」
体格的には女性よりも一回り小柄であり初生児の体格であるものの…。姿形による老若男女の区別は出来ない。身動きは非常に鈍足であり発語も支離滅裂である。
(悪臭から判断して…)
「悪霊の【食人餓鬼】かしら…」
食人餓鬼とは大昔の戦乱時代…。再起不能の疫病やら飢饉による衰弱死から悪霊へと変貌した醜悪なる亡者達の総称化である。埋葬されなかった悪影響により未来永劫成仏出来ないらしく今現在も俗界にて半永久的に徘徊し続ける。彼等は非常に強欲であり極度の空腹からか生者と遭遇すると即刻敵対視…。新鮮なる人間の血肉を無我夢中に捕食する。新鮮なる人間の血肉こそ食人餓鬼にとっての嗜好品であり捕食こそが彼等の共通性である。南方国の地方では別名として疫病神とも呼称される。
「即刻面白くなったわね♪」
食人餓鬼の大群は人海戦術により無抵抗の桜花姫へと殺到する。
「私に大勢で真剣勝負なんて軽佻浮薄だわ♪」
普通の人間であれば極度に戦慄する場面であるものの…。桜花姫は無数の悪霊との遭遇を娯楽的に感じられる。
「悪霊は悪霊でも雑魚が相手なら楽勝ね♪」
桜花姫は咄嗟に妖術を発動…。血紅色であった両目の瞳孔が半透明化した瑠璃色の碧眼へと変化したのである。
「瞳術…」
(『天道眼』…)
天道眼とは自然界を翻弄出来る屈指の瞳術であり多種多様の超常現象を発動出来る。天道眼を開眼した妖女は念力の妖術やら超常現象は勿論…。応用出来れば現存する多種多様の超自然を自由自在に発揮出来る。天道眼から発動される妖術は非常に怪力乱神であり噂話では広大無辺の森羅万象をも翻弄させる超自然的現象を実現化させるとも…。存命中の妖女でさえも天道眼の秘密は不明瞭であり誰一人として明確化出来なかったのである。特定の地方では別名万能眼とも呼称される。
「私も人気者だわ♪」
彼等が桜花姫の近辺へと到達する寸前…。天道眼の発動によって殺到する食人餓鬼の皮膚が超高温の火炎の妖術により焼殺されたのである。
「醜悪なる亡者達…成仏しなさい♪」
食人餓鬼の肉体は高熱の発火現象によって一瞬で黒焦げに焼殺される。
「楽勝だったわ♪」
桜花姫の佇立する地面周辺には黒焦げに焼殺された食人餓鬼の焼死体が無数に埋没したのである。
「悪霊でも微弱の食人餓鬼程度なら火炎の妖術だけでも容易に仕留められちゃうわね♪」
すると彼女の背後から無数の霊力を感じる。
「えっ?今度は何かしら?」
背後の地面より無数の食人餓鬼が出現したのである。
「鬱陶しい奴等ね…」
背後から無数の食人餓鬼が桜花姫に殺到する。
「あんた達は命知らずだわ♪氷結しなさい♪」
桜花姫の妖力によって彼等の肉体が一瞬で凍結化したのである。氷結の妖術により無数の食人餓鬼は身動き出来なくなる。数秒後…。
「あんた達も成仏するのね♪」
(念力の妖術…発動!)
桜花姫は念力の妖術によって凍結化した食人餓鬼の肉体を粉砕させる。凍結化した彼等の肉体は一瞬で崩れ落ちたのである。
「えっ?」
今度は食人餓鬼とは別物の霊力を感じる。
「今度は何かしら…食人餓鬼とは別物みたいだわ…」
すると眼前の地面より戦乱時代の甲冑を装備した人骨が出現する。甲冑の人骨は非常に巨体であり背丈は成人男性を一回り上回る。
(鎧兜の人骨…)
「ひょっとして戦死者達の悪霊…【骸骨荒武者】かしら?」
骸骨荒武者とは戦乱時代に息絶えた戦死者達の無念の集合体であり生者を敵対視する。
「埋葬されなかった戦死者達の亡霊が出現するなんて…」
骸骨荒武者は右手の刀剣で桜花姫に斬撃するものの…。骸骨荒武者の身動きは非常に鈍足であり人一倍身体能力が愚鈍の桜花姫でも容易に回避出来る。
「危機一髪だったわ…」
桜花姫は恐る恐る後退りするなり…。
「戦乱時代の戦死者達…成仏するのね…」
(砂金に変化しなさい!)
砂金の妖術を発動した影響により骸骨荒武者の肉体を砂金に変化させる。砂金に変化した骸骨荒武者の肉体は一瞬で崩れ落ちる。
「他愛無いわね♪」
骸骨荒武者を仕留めた桜花姫は一安心するが…。暗闇の背後より複数の霊力を感じる。
「えっ?霊力かしら?」
警戒した桜花姫は恐る恐る背後を確認する。すると彼女の背後には三体の骸骨荒武者が出現したのである。
「骸骨荒武者だわ…三体も出現するなんて…」
悪霊を仕留めるのは余裕であるが鬱陶しく感じる。
「鬱陶しい奴等ね…」
桜花姫は体内の妖力を収縮…。両手に高熱の火球を形成したのである。
「成仏しなさい♪」
形成した高熱の火球で一体の骸骨荒武者を粉砕する。
「二体とも仕留めましょう♪」
二体の骸骨荒武者を仕留める直前…。背後から何者かによる火縄銃の銃撃で背中を狙撃されたのである。
「ぐっ!」
火縄銃で狙撃された桜花姫は地面に横たわる。背中の傷口からは大量の鮮血が流れ出る。
(迂闊だったわ…一体誰が…)
暗闇の自然林より火縄銃を武装した一体の骸骨荒武者が出現する。暗闇の自然林より桜花姫の背後から彼女を狙撃したのである。骸骨荒武者は鈍足で横たわった桜花姫に近寄る。
(私を如何するのかしら?)
二体の骸骨荒武者も横たわった桜花姫に近寄るなり刀剣を抜刀する。
(殺されちゃうわね…兎にも角にも一か八か…)
桜花姫は分身の妖術を発動…。血塗れの肉体が白煙により消滅する。突然消滅した桜花姫に動揺したのか三体の骸骨荒武者は周囲を警戒したのである。暗闇の自然林から桜花姫の本体が出現…。
「残念だったわね♪あんた達が攻撃したのは私の分身体よ♪」
桜花姫は両手より高熱の雷撃の妖術を発動したのである。雷撃の妖術によって三体の骸骨荒武者は撃破される。すると荒神山の無数の悪霊を全滅させた影響からか突如として荒神山から感じられた重苦しい霊力が感じられなくなる。
「如何やら荒神山に蔓延る骸骨荒武者と食人餓鬼は全滅したみたいね…」
一安心した桜花姫は恐る恐る荒神山から脱出したのである。
「荒神山の超常現象は無事解決だわ♪」
とある獣道にて小柄の老婆と小柄の美少女に遭遇する。
「こんな真夜中の夜道に何者かしら?」
彼女達は非常に小柄の体格である。
「あんた達は薬屋の【蛇骨鬼】婆ちゃんと孫娘の【小猫姫】かしら!?」
「桜花姫姉ちゃん!?」
小猫姫は純血の山猫の妖女であり外見的には人間の美少女とも間違えられる。蛇骨鬼の愛娘であり桜花姫にとっては妹分である。小猫姫は桜花姫との遭遇に大喜びする。
「蛇骨鬼婆ちゃん♪桜花姫姉ちゃんだよ♪」
「こんな真夜中の夜道に誰かと思いきや…あんたは最上級妖女の月影桜花姫ちゃんだね?久方振りだね…桜花姫ちゃん♪」
「あんた達こそ♪」
久方振りの蛇骨鬼と小猫姫との再会に桜花姫は大喜びしたのである。
「こんなにも暗闇の荒神山で桜花姫ちゃんと出くわしちゃうなんて非常に奇遇だね…」
蛇骨鬼は神族と命名される人外種族の一員であり異名は蛇神と呼称される。外見のみなら小柄の人間の老婆であり村里の村人達からは人間の老婆とも間違えられる。神族とは太古の大昔より世界各地に君臨した人外少数民族である。神族は多種多様の姿形に変化が可能であり蛇骨鬼は基本的に小柄の老婆の姿形で活動する。古代の世界では大勢の神族が世界各地で活動中であったが…。今現在では絶滅状態であり蛇神の蛇骨鬼を除外する神族は皆無である。唯一純血の神族の一員と断定出来るのは太平神国出身者の蛇骨鬼…。彼女のみである。蛇骨鬼の同行者である小猫姫は蛇骨鬼にとって孫娘であり唯一の家族であるが…。小猫姫は正真正銘の純血の妖女であり孤児である。
「あんた達はこんなにも暗闇で物騒なのに大丈夫なのかしら?」
「私は大丈夫だよ♪真夜中の夜道は面白いもん♪」
小猫姫は真夜中でも平気なのか笑顔で断言する。
「桜花姫ちゃん…あんたみたいな人一倍容姿端麗の小娘が真夜中の夜道を単独で出歩くなんて…」
「こんな私が容姿端麗なんて♪蛇骨鬼婆ちゃんは大袈裟ね♪」
(私が容姿端麗ですって♪)
蛇骨鬼に大袈裟と発言するが内心では大喜びしたのである。
「私は毎日が任務で大忙しだからね…」
「桜花姫姉ちゃんの任務って?」
小猫姫は不思議そうな表情で問い掛ける。
「私の任務はね…夜遊びよ♪」
桜花姫は笑顔で夜遊びと返答したのである。
「夜遊びって面白いのかな?」
(桜花姫ちゃんは…)
夜遊びと発言する桜花姫に蛇骨鬼は苦笑いする。
「悪霊征伐かね?こんなにも不吉の真夜中にあんたも勇猛果敢だね…」
「別に…私自身悪霊征伐は面白いから大丈夫なのよ♪内心私にとって悪霊征伐なんて常日頃の道楽だからね♪」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「あんたが悪霊征伐の悪影響で過労死しちゃったら大変だからね…私の傷薬でも必要不可欠かな?」
「残念だったわね♪私には凡庸の傷薬なんて不必要なのよ…何よりも私にとっての傷薬は私自身の妖力だから♪私の妖力は万能薬なのよ♪」
桜花姫は自身の妖力の強大さを自慢する。
「蛇骨鬼婆ちゃんこそ常日頃の薬品の研究なんかで過労死しないでよ♪」
「私は過労死しないよ…最上級妖女の桜花姫ちゃんには私の傷薬は不必要みたいだね…」
(桜花姫ちゃんには不必要だったか…)
蛇骨鬼は内心残念がる。
「達者でね♪桜花姫姉ちゃん♪」
「あんた達こそ達者でね♪」
すると蛇骨鬼と小猫姫は荒神山より退去する。
「私も即刻西方国に戻ろうかしら…」
桜花姫は祖国である西方国の家屋敷へと無事に戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.5 )
日時: 2021/08/13 19:26
名前: 月影桜花姫

第二話

天神山

西方国の領内には天神山と命名される小山が存在する。荒神山での亡者達との戦闘から三日後の真夜中…。小山である天神山から複数の霊力を感じる。
「霊力だわ…一体何かしら?」
(場所は…天神山ね…)
天神山は太古の大昔に天空の女神が降臨した伝説から天神山と命名される。十数年前は天神山に七軒の集落家屋が建築され村人達が住居したものの…。今現在では廃屋のみが残存した状態であり住居者達の行方は不明であり今現在でも家族の消息は確認出来ない現状である。悪霊に食い殺されたのではと噂話が西方国全域に出回る。気になった桜花姫は即座に天神山へと直行する。桜花姫の自宅から天神山への距離は三町程度であり比較的近辺だったのである。数分後…。天神山に到達する。
(胸騒ぎだわ…)
天神山に近寄ると極度の胸騒ぎを感じる。桜花姫は警戒するも天神山の天辺へと移動する。山道を移動中…。周辺の天然林より蛍光色の無数の鬼火が飛来する。
「鬼火だわ…」
無数の鬼火は天神山の天辺に移動したのである。
(天神山の天辺に無数の鬼火…気になるわね…)
数分間が経過すると桜花姫は天神山の天辺に到達したのである。天辺には廃神社と鳥居が確認出来る。
「廃神社だわ…」
桜花姫は恐る恐る鳥居を潜り抜ける。
「不吉の霊力を感じるわね…」
鳥居を潜り抜けると不吉の霊力を感じる。
(一体何が出現するかしら?)
恐る恐る周辺を警戒するのだが…。彼女の周囲は蛍光色の鬼火ばかりで悪霊らしき物体は何一つ確認出来ない。
「霊力は感じられるけれど…」
直後…。
「えっ?」
(何かしら?)
背後より極度の悪寒戦慄が桜花姫の全身を膠着させる。桜花姫は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「霊力の正体はあんただったのね…」
桜花姫の背後に出現したのは空中を浮遊する女性の頭部らしき巨体の生首であり全頭高は推定五尺程度である。
「悪霊の【大生首】だったかしら…」
大生首とは肉体が頭首のみの悪霊であり戦乱時代の最中匪賊達に犯され…。最終的に斬首された女性と子供達の無念の集合体である。大生首は色白の女性の生首であるが…。本体は規格外に巨大であり不吉の大目玉が桜花姫を直視すると不吉の笑顔で微笑む。
「気味悪いわね…」
すると今度は赤子らしき産声が天神山の頂上全域に響き渡る。
「今度は子供の産声かしら?」
暗闇の天然林より浮遊する赤子らしき巨大生首が三体も出現したのである。
「今度は子供の大生首かしら?」
桜花姫は合計四体の大生首に包囲される。
(天神山の集落で村人達が行方不明なのは大生首の仕業っぽいわね…)
天神山の行方不明事件は大生首の仕業であると予想する。すると四体の大生首は口先を開口すると周囲の鬼火を吸収したのである。
(鬼火を吸収したわ…)
四体の大生首が周辺の鬼火を吸収すると先程よりも霊力が強大化する。
「先程よりも霊力が増幅されたみたいね…」
桜花姫は両目を瞑目するなり体内の妖力を増大化…。
(天道眼…発動!)
瞳術の天道眼を発動させる。
「天道眼さえ発動しちゃえば数多の妖術を使用出来るのよね♪」
天道眼は伝説の瞳術であり天道眼を開眼した妖女は数多の妖術を発動出来る。
「鬱陶しいから成仏しなさい♪」
桜花姫は火炎の妖術を発動…。両手から火球を発射したのである。発射された火球は真正面に対峙する女性の大生首に直撃…。爆散したのである。無数の血肉が地面に散乱する。
「楽勝だわ♪他愛無いわね…」
女性の大生首を仕留めたかと思いきや…。
「えっ?」
大生首の血肉から猛毒の黒煙が発生する。
「なっ!?」
(ひょっとして瘴気かしら?)
大生首の血肉から発生した猛毒の瘴気は地面を溶解させたのである。
(大生首は仕留められた直後に霊能力を発動するのね…)
「多少の瘴気なら大丈夫だけれど…」
桜花姫は妖女と人間の混血であり多少の瘴気であれば平気であるものの…。肉体的には脆弱であり純血の妖女を下回る。
(私自身は勿論…西方国全体が瘴気で汚染されるわね…)
地面の草木が猛毒の瘴気で枯死する。すると桜花姫も息苦しくなる。
「ぐっ!」
最早毒死するのは時間の問題である。
(瘴気に対抗するなら…)
桜花姫は一か八か浄化の妖術を発動する。
「浄化の妖術…発動!」
浄化の涼風を生成するなり大生首の血肉から発生した猛毒の瘴気を浄化したのである。同時に浄化の涼風に感触した三体の赤子の大生首が笑顔で消滅…。成仏したのである。
「彼等は成仏したみたいね♪一件落着だわ♪」
桜花姫は一安心する。すると先程火炎の妖術で粉砕された女性の大生首は土壌へと戻ったのである。猛毒の瘴気で汚染された地面の草木が元通りに生成される。
「自然も元通りに戻ったわ♪」
天神山に蔓延る不吉の霊力も消滅する。
「無事に事件も解決出来たし…戻りましょう♪」
無事に事件を解決した桜花姫は自宅へと戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.6 )
日時: 2021/08/14 19:50
名前: 月影桜花姫

第三話

死闘

天神山での重苦しい闇夜から三日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東方国の中心街へと出掛ける。東方国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町…。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな餡蜜と桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に和菓子を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは三日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東方国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
桜花姫は恐る恐る…。
「ん?」
三蔵郎は桜花姫の存在に気付いたのである。
「誰かと思いきや…貴女様は最上級妖女の月影桜花姫様でしたか!?南方国の荒神山から無事に戻られたのですね♪」
「本当に三蔵郎様だったのね♪」
「ですがこんな茶店で桜花姫様と再会出来るなんて非常に奇遇ですな♪」
三蔵郎は桜花姫と再会するなり大喜びする。
「如何して三蔵郎様は和菓子屋に?」
「茶店で満喫するのは私にとって道楽ですからね♪」
「奇遇だわ…勿論私もね♪」
桜花姫は無我夢中に和菓子を頬張ったのである。
「ひょっとして桜花姫様も和菓子が大好きなのですか?」
桜花姫は即答する。
「勿論よ♪三蔵郎様も?」
三蔵郎も笑顔で返答したのである。
「勿論私も和菓子は大好きですよ♪和菓子屋は私にとって醍醐味ですからね♪」
すると三蔵郎は突発的に顔色を変化させる。
「桜花姫様?」
「何よ?三蔵郎様?」
「桜花姫様は悪霊退治屋として粉骨砕身されたと各村落の村人達から拝聴しました…近頃の噂話なのですが…」
桜花姫は即座に三蔵郎からの噂話を拝聴する。
「噂話ですって?」
「近頃…北方国では各村落の赤子の神隠しが頻発しましてね…」
近頃北方国では幼子の行方不明事件が頻発したのである。村人達は必死に行方不明の子供達を捜索するのだが…。子供達は誰一人として発見出来ない。依然として子供達は誰一人発見されず悪霊による神隠しか匪賊達による人攫いであると予測する。
「神隠しですって?興味深いわね♪」
「村人達の噂話では一昨日の出来事ですかね?神隠しが匪賊達による悪逆無道なのか…神出鬼没の悪霊の仕業なのかは不明瞭とされますが…」
「一昨日の出来事ね…」
(非常に面白そうだわ♪私の出番が到来したかしら♪)
桜花姫は突発的に闘争心が充溢したのである。
「三蔵郎様!如何やら今回の事件は私の出番みたいね♪」
「ひょっとして桜花姫様…」
桜花姫は笑顔で即答する。
「勿論征伐するわよ!即刻悪霊を仕留めないとね♪」
「ですが桜花姫様…現段階では今回の神隠しの主原因が悪霊の仕業なのか如何なのかは不明瞭ですよ…匪賊達による人攫いかも知れませんし…」
三蔵郎は極度の心配性なのか非常に不安視したのである。
「村人達の噂話では桜花姫様は敵対者が極悪非道だったとしても人間には手出しされないみたいですが…敵対者が極悪非道の匪賊達であれば如何されるのですか?」
桜花姫は極度に不安視する三蔵郎に即答する。
「無論人一倍温厚篤実の私でも…極悪非道の匪賊達であれば即刻仕留めちゃうからね♪相手が人間だからって手加減しないから大丈夫よ♪」
普段は温厚篤実の桜花姫であるが残虐非道の匪賊達には滅法無慈悲である。
「一安心ですね!桜花姫様は極楽浄土の女神様を連想しますからね♪相手が人間の匪賊達であれば困惑されるのではと私自身心配しちゃいましたよ♪」
「私が極楽浄土の女神様ですって♪私が極楽浄土の女神様なんて三蔵郎様も大袈裟ね♪」
極楽浄土の女神様と同一視された桜花姫は内心では大喜びする。
「私に手出し出来る人間がこんな島国の太平神国に実在するのかしら♪最上級妖女の私に手出し出来るのであれば是非とも対面したいわね♪」
莫大なる妖力を保有する最上級妖女の桜花姫にとって多人数による人海戦術は無意味である。桜花姫が単独であったとしても戦力的には全国各地の武士団全勢力に匹敵するのではと各村落の領主達が独自で推測…。村人達には間違っても最上級妖女の桜花姫だけには手出しするなとこっ酷く忠告したのである。
「ですが今回の神隠しの敵対者が極悪非道の匪賊でも油断大敵ですよ!桜花姫様の多用される妖術は天下無双かも知れませんが…油断すれば絶体絶命へと直結するでしょう…」
(三蔵郎様は極度の心配性だわ…)
彼女自身内心では口喧しいと感じるものの三蔵郎に感謝する。
「助言感謝するわね…三蔵郎様…」
桜花姫は即座に北方国へと出掛けたのである。
「彼女は電光石火ですね…」
三蔵郎は城下町から疾走する桜花姫を見届ける。一時間後…。桜花姫は東方国と北方国の国境に位置する田舎村へと到達する。北方国の村里は非常に殺風景であり過疎化した麦畑ばかりである。
「北方国って随分と殺風景の田舎町なのね…」
不可解にも国境の村里には村人が誰一人として確認出来ない。
「無人地帯だわ…」
適当に麦畑を眺望し続けるなり赤子を抱き抱えた白装束の長髪の女性が村里にて佇立したのである。
「えっ?村里の親子かしら?」
桜花姫は恐る恐る赤子を抱き抱える女性へと近寄るなり…。
「母親は大怪我したのね…」
母親の白装束は血塗れであり皮膚の表面には無数の外傷が確認出来る。
「一体彼女に何が?」
桜花姫は一瞬戦慄するものの…。
「大丈夫かしら?」
恐る恐る女性の安否を確認する。母親は無表情であったものの…。恐る恐る近寄る桜花姫を凝視するなり無言の様子で彼女を睥睨したのである。母親に睥睨された桜花姫は母親に腹立たしくなる。
「何よ?」
(腹立たしいわね…)
桜花姫も母親に睥睨し返したのである。すると数秒後…。母親は無言で一目散に逃走したのである。
「如何して母親は私から逃走しちゃったのかしら?」
桜花姫は即座に逃走中の母親を追跡する。
「彼女って…俗界の人間だったのかしら?」
母親は墓場へと潜入したのである。
「墓場だわ…」
桜花姫は母親を追尾するなり恐る恐る墓場へと潜入する。
「先程の母親は一体何者だったのかしら?」
(彼女からは霊力らしい霊力は感じられなかったけれども…)
赤子を抱き抱える母親らしき人物が俗界の人間なのか如何なのかを疑問視したのである。
「雰囲気と姿形から判断して…」
(ひょっとすると彼女の正体って俗界とは無縁の化身なのかも知れないわね…悪霊なのかしら?)
桜花姫は母親の正体が悪霊であると推測する。すると先程の母親らしき女性と再度遭遇したのである。即刻近寄ろうかと思いきや…。
「えっ!?如何して全裸なのよ!?」
母親は白装束を脱衣した状態であり全裸である。
(恥知らずだわ…)
彼女は赤子を抱き抱えた状態から母乳と赤子の前頭部を密着させる。
「何するのよ!?」
処女の桜花姫にとって非常に不愉快であり一瞬膠着化する。桜花姫は恐る恐る墓石から母親の様子を観察したのである。
(母親は一体何を!?)
すると赤子の肉体が液体化するなり赤子の肉体諸共母親の体内へと一瞬で捕食…。
「ひっ!赤子の肉体を吸収するなんて…」
予想外の出来事により桜花姫は愕然とする。
「人間の血肉を吸収出来る特質…」
母親は桜花姫を凝視…。不吉の表情微笑んだのである。
「ひょっとして神隠しの真犯人は悪霊の【亡霊女房】だったのね…」
亡霊女房とは人間の赤子を捕食する母親の悪霊であり姿形のみなら人間の女性である。亡霊女房は戦乱時代に頻発する戦乱やら疫病によって赤子が死去した母親達の無念の集合体…。人間の赤子を体内へと吸収する性行為も赤子への執着と愛情表現である。桜花姫は咄嗟に亡霊女房の近辺へと接近する。
「私が母親達の霊魂であるあんたを成仏させるわ!」
桜花姫は妖力を蓄積させるなり落雷の妖術を発動…。入道雲を天空全域へと凝縮させたのである。
「亡霊女房…覚悟するのね!」
天空全域が入道雲に覆い包まれたかと思いきや…。入道雲から落雷攻撃を発動させる。落雷は亡霊女房の頭頂部へと落下したのである。
「直撃したわね…」
強烈なる落雷攻撃によって桜花姫は一瞬両目を閉眼させる。落雷の破壊力は地面を容易く陥没させたのである。
「瞬殺だったわ♪」
亡霊女房は肉体が非常に脆弱であり無数の血肉やら手足の肉片は勿論…。体内の臓物が地面に散乱する。
「彼女を仕留めたかしら?」
桜花姫は恐る恐る両目を見開くなり亡霊女房を仕留めたか如何なのかを再確認したのである。
「如何やら亡霊女房を仕留めたみたいね♪」
叫喚地獄の場面であるものの…。
「無防備の状態で落雷が直撃しちゃえば誰だって死滅するわよね♪」
桜花姫は今度こそ手応えを感じる。
「亡霊女房を無事征伐したから私は戻りましょうかね…」
桜花姫は一安心したのか西方国へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ!?」
背後から極度の胸騒ぎを感じる。
(胸騒ぎだわ…)
「何かしら!?」
背後より微弱の霊力を察知したのである。彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「此奴…鬱陶しいわね…」
肉体を粉砕された亡霊女房の血肉が融合化したのである。亡霊女房の肉体は数秒間で元通りに復活する。
「粉砕された肉体が一瞬で元通りなんて…亡霊女房は不死身の肉体ね…」
(生命力と治癒力だけなら規格外だわ…)
亡霊女房は桜花姫の愕然とした表情を凝視するなり不吉の表情で微笑む。亡霊女房は口辺から猛毒の溶解液を噴射したのである。
「毒液!?」
桜花姫は咄嗟に妖力で半透明の防壁を形作るなり…。危機一髪溶解液から本体を防備したのである。半透明の防壁周辺の地面は亡霊女房が噴射した猛毒の溶解液によって液状化する。
「如何やら危機一髪ね…」
(妖力の防壁を発動しなかったら大怪我だったわ…)
桜花姫は一安心するものの…。彼女の表情が険悪化したのである。
「私は亡霊女房の霊力を見縊り過ぎたわね…」
体内の妖力を蓄積させるなり念力の妖術を発動…。すると亡霊女房の肉体が肥大化したのである。
「破裂するのね♪」
皮膚の表面からどす黒い大量の血液が流れ出るなり…。超常現象によって体内から肉体を破裂させる。地面には無数の肉片やら血肉が散乱する。
「亡霊女房は再復活するかしら?」
先程発動した念力の妖術は様子見であり亡霊女房の肉体が再生能力によって元通りに復活するのか如何なのかを再確認したかったのである。亡霊女房の肉体は一瞬で破裂したものの…。破裂した無数の肉片が再度融合化するなり亡霊女房の肉体は元通りに戻ったのである。
「本当に再復活したわね…」
(私にもこんな再生能力が…)
桜花姫は内心亡霊女房の再生能力を羨望する。
「亡霊女房の再生能力の攻略法は?」
即座に透視能力を発揮出来る天眼の妖術を発動させる。
(亡霊女房の弱点は何かしら?)
天眼の妖術の透視能力によって亡霊女房の腹部中心部より水晶玉を発見する。
「えっ?亡霊女房の体内から水晶玉だわ…」
(気になるわね…ひょっとして水晶玉は亡霊女房の本体なのかしら?)
桜花姫は念力の妖術を再発動…。体内より亡霊女房の腹部を破裂させる。亡霊女房の腹部が破裂した直後…。亡霊女房の破裂した体内より本体である水晶玉を摘出したのである。
「水晶玉だわ♪」
水晶玉が地面へと落下したかと思いきや…。
「ん?」
水晶玉は蛍光色へと発光したのである。すると周辺の地面に散乱した無数の血肉が水晶玉へと密着するなり…。
「如何やら体内の水晶玉こそが亡霊女房の本体っぽいわね…」
数秒間で亡霊女房の肉体は元通りに復活したのである。
「弱点さえ見破れちゃったら楽勝だわ♪」
亡霊女房の弱点を見破った桜花姫は念力の妖術によって水晶玉を粉砕…。体内の水晶玉が粉砕されると亡霊女房の再生能力が発動しなくなる。
「亡霊女房…完全消滅しなさい…」
即座に火炎の妖術を発動…。
「今度こそ亡霊女房を仕留めたわね…」
粉砕された亡霊女房の肉体諸共体内の水晶玉の破片を焼失させる。
「母親達の霊魂…成仏するのね…」
桜花姫は周辺を恐る恐る警戒するなり西方国へと無事戻ったのである。
(彼女は…)
「亡霊女房は予想外に手強かったわね…」
無事に家屋敷へと戻った桜花姫は一息するなり…。寝転んだのである。
「随分派手に妖術を連発しちゃったからかしら…」
妖力を余分に連発した結果…。
「極度に息苦しいのよね…」
体内の妖力を過剰に消耗したのである。
「亡霊女房は私より格下だけれども…」
(最上級妖女である私が格下の悪霊を相手に消耗戦なんてね…)
今回の出来事から自分自身の傲慢さと力不足を痛感したのである。
「今回は完全に軽率だったわね…」
メンテ
桜花姫 ( No.7 )
日時: 2021/08/14 20:07
名前: 月影桜花姫

第四話

雪国

亡霊女房との血みどろの戦闘から二週間後の早朝である。三人の匪賊達が北方国の過疎化した廃村へと侵入する。
「無人の廃村みたいですぜ♪頭領♪」
大柄の匪賊が周辺を眺望したのである。
「過疎地か…人気は無さそうだな…」
「無人の廃村なら俺達の潜窟として利用出来ますぜ♪」
小柄の匪賊が笑顔で発言する。
「であれば廃村を占拠するか…」
廃村は無人であり潜窟として利用するのであれば好都合であると判断する。すると中柄の匪賊が小声で恐る恐る…。
「頭領!頭領!」
「何事だ?」
「村娘です…村娘を発見しました…」
「ん?村娘だと?」
中柄の匪賊は仲間の二人を案内したのである。廃村の中心地にはとある祭壇が設置され…。祭壇の近辺には小柄の女性が徘徊する。素顔は不明だが黒髪の長髪であり白装束の着物姿である。三人の匪賊達は近辺の民家から恐る恐る白装束の女性を観察する。
「本当だな…」
「彼女は一体何を?」
すると小柄の匪賊が赤面するなり…。
「可愛らしい雰囲気ですね♪胸部の谷間とか♪」
「えっ…」
「此奴…」
赤面する小柄の匪賊に二人は苦笑いしたのである。
「如何してこんな場所に村娘が一人で?」
中柄の匪賊が身震いした様子で発言する。
「ひょっとして彼女…悪霊とか?」
中柄の匪賊の発言に二人は困惑したのである。
「はっ?」
「貴様は馬鹿か?村娘は人間だろう…所詮悪霊なんて単なる子供騙しだな…」
二人の匪賊は全否定するのだが…。
「ですがこんなにも人気の無さそうな廃村で村娘が一人で行動するなんて可笑しいですよ!不自然だ…」
「大袈裟だな…」
すると小柄の匪賊が恐る恐る…。
「えっ?彼女は?」
「ん?」
先程祭壇の近辺で徘徊中だった村娘を見失ったのである。
「村娘は雲隠れしたか?」
中柄の匪賊が畏怖した様子で…。
「恐らく彼女は廃村の地縛霊ですよ…即刻廃村から逃げましょう…」
畏怖する中柄の匪賊に匪賊の頭領が怒号する。
「何が悪霊だ!大体村娘が悪霊だって証拠が存在するのか!?」
怒号した直後…。背後より極度の悪寒戦慄と気配を感じる。
「えっ…」
彼等は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「ひっ!」
彼等の背後には先程祭壇の近辺で徘徊中だった白装束の女性が三人の背後に佇立したのである。
(此奴…一瞬で移動したのか…)
彼女は美的の容姿であるが青色の口紅…。両目の瞳孔は血紅色であり人間の女性とは無縁の雰囲気だったのである。匪賊の頭領は恐る恐る…。
「貴様…本物の悪霊なのか?」
すると白装束の女性は笑顔の表情で匪賊の頭領に接触したのである。
「ん?一体何を?」
直後…。
「なっ!?」
匪賊の頭領は一瞬で全身が氷結され肉体が崩れ落ちる。
「ひっ!此奴は悪霊だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
二人の匪賊は極度の恐怖心からか一目散に逃走したのである。二人は廃村の郊外にて一休みする。
「はぁ…はぁ…」
「俺達…廃村で本物の悪霊と遭遇しちまうなんて…」
「最悪だな…頭領は殺されちまうし…」
直後である。
「えっ?」
再度極度の寒気を感じる。
「ひょっとして…」
すると小柄の匪賊の左側真横より先程の白装束の女性が笑顔で凝視する。
「ひっ!悪霊!?」
彼等は落涙するなり一目散に逃走…。全力で疾走したのである。同日の真昼…。太平神国全域にて猛吹雪による寒風が各農村地帯で頻発したのである。突如として頻発した猛吹雪は農村の村人達を衰弱死させる。僧侶の三蔵郎はとある蔵屋敷の窓際から恐る恐る外部の雪景色を眺望したのである。
(近頃は暴風雪が頻発しますね…)
「ひょっとして今回も悪霊が出現した悪影響でしょうか?」
三蔵郎は頻発する猛吹雪を超常現象の悪影響であると認識する。
「超常現象による天変地異ですかね?」
同時刻…。桜花姫は自宅にて無我夢中に大好きな小倉汁粉を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
単独での間食であるものの…。人一倍食いしん坊の桜花姫は一瞬で小倉汁粉を平らげる。
「近頃寒風が頻発するわね…」
極度の胸騒ぎを感じる。
(こんなにも猛吹雪が頻発するなんて不吉だわ…)
桜花姫は気になったのか天道眼を発動したのである。すると北方国の廃村より珍妙なる妖力を察知する。
「えっ?北方国の廃村から妖力を感じるわ…」
(ひょっとして今回は妖女の仕業かしら…)
即座に北方国の廃村へと出向いたのである。
「今回の相手は誰かしら?」
亡霊女房での悪戦苦闘により極度の胸騒ぎを感じる。移動を開始してより一時間後…。目的地の廃村へと到着する。
「目的地の廃村だけれども…正真正銘雪国なのね…」
廃村全域が雪景色であり村人は誰一人として確認出来ない。
「如何やら人間の気配は無さそうだわ…」
乱層雲と極度の猛吹雪の悪影響により妖力を感じられなくなる。
「暴風雪の悪影響かしら?超常現象を特定化出来ないわね…」
適当に歩行した直後…。
「人肉の悪臭だわ…一体何かしら?」
積雪より大勢の凍結化した村人達が確認出来る。
「村人達は凍結化で息絶えたのね…」
彼女は天道眼を発動するなり…。
「なっ!?」
突発的に胸騒ぎが彼女の身体髪膚を膠着化させる。
「妖力を感じるわ…」
(如何やら今回の相手は妖女みたいね…)
桜花姫の背後から莫大なる妖力の気配を察知したのである。
「私の背後かしら…ん?」
桜花姫は恐る恐る背後を凝視する。
「女性だわ…一体誰かしら?」
白装束の長髪の女性が桜花姫の隣接へと急接近するなり…。
「きゃっ!」
白装束の女性は口移しにより桜花姫に接吻したのである。接吻された桜花姫は白装束の女性を非常に気味悪がる。
「突然何するのよ!変態女!見ず知らずの女性に口移しなんて不潔だわ…」
女性の破廉恥さから桜花姫は恐る恐る後退りする。
「あんたの感触…ひょっとして氷水かしら?」
先程の口移しにより女性から極度の悪寒戦慄を感じる。
「ぐっ!体内の妖力が…」
氷麗姫による接吻の悪影響からか桜花姫の妖力が微量に消耗する。
「誰かと思いきや…あんたは粉雪妖女の【氷麗姫】だったのね…」
粉雪妖女の氷麗姫とは純血の妖女であり氷雪系統の妖術を多用する妖女である。恐る恐る後退りする桜花姫に氷麗姫は不吉の表情で微笑む。
「今回の猛吹雪の主要因は氷麗姫…あんたの仕業だったのね…」
桜花姫は氷麗姫に火炎の妖術を発動させる。超高温の火炎攻撃によって氷麗姫の肉体が一瞬で崩れ落ちたのである。
「仕留めたかしら?えっ!?」
すると桜花姫の周辺の積雪から無数の女体が形作られる。
「氷麗姫の分身体かしら?」
氷麗姫は冷風を放出するものの…。桜花姫は咄嗟に妖力の防壁を発動するなり氷麗姫の放出する冷風から本体を防備したのである。
「分身なんて面倒臭いわね…」
本体の判別は困難であるものの…。
「氷麗姫にとって私は相性的に最悪だったわね♪」
桜花姫にとって火炎系統の妖術は得意中の得意妖術であり氷雪系統の妖術を多用する氷麗姫を相手に桜花姫は余裕の様子である。
「凡庸の妖女が最上級妖女の私に真剣勝負なんて無謀なのよ♪」
氷雪系統の妖術を多用する氷麗姫にとって桜花姫は最悪の天敵であり桜花姫は微笑むなり…。
「あんたは喋れなくても恐怖心は感じられるのね♪」
氷麗姫は微笑する桜花姫に戦慄したのである。
「覚悟しなさい…氷麗姫ちゃん♪」
桜花姫は天道眼を発動するなり…。
「本体諸共死滅しなさいね♪氷麗姫♪」
天空より無数の火球を廃村全域に落下させたのである。猛烈なる火球の猛攻撃によって氷麗姫の無数の分身体を焼失させる。火球の破壊力は非常に強力であり猛攻撃による超高温の火炎攻撃が氷麗姫本体を一瞬で焼失させたのである。氷麗姫の悲痛の阿鼻叫喚が廃村全域へと響き渡る。
「氷麗姫は死滅したかしら…」
氷麗姫を仕留めた影響により猛吹雪が沈静化する。
「氷麗姫を仕留めた影響かしら?」
寒風も感じられなくなる。
「天変地異は無事解決ね♪即刻戻ろうかしら…」
天変地異が終息するなり…。桜花姫は無事に西方国へと戻ったのである。
「今回は楽勝だったわね♪」
一安心した彼女は家屋敷にて寝転ぶものの…。直後である。左耳より極度の悪寒戦慄を感じる。
「きゃっ!」
悪寒戦慄に身震いした桜花姫は恐る恐る左辺を直視するなり…。先程焼殺した氷麗姫が寝転んだ状態で桜花姫を凝視する。
「えっ!?あんたは!?」
突然の出来事により桜花姫は驚愕したのである。氷麗姫は桜花姫を凝視するなり微笑む。すると氷麗姫は不吉の笑顔で…。
「あんたは人一倍容姿端麗の妖女だわ♪」
氷麗姫は人間の口言葉で発言したのである。
(えっ!?氷麗姫って喋れるの!?)
桜花姫は人間界の公用語で発語する氷麗姫に愕然とする。
「あんたは最上級妖女の月影桜花姫だったわね♪」
すると氷麗姫は桜花姫に接触したのである。直後…。
「ぎゃっ!」
桜花姫は氷麗姫の金縛りの妖術によって身動き出来なくなる。
(金縛りの妖術かしら?身動き出来なくなるなんて…)
「残念だったわね♪あんたが雪国で死滅させたのは私の分身体なのよ♪私は分身体からでも復活出来るから本体が焼殺されても大丈夫だからね♪油断大敵よ…月影桜花姫ちゃん♪」
氷麗姫は粉雪分身の妖術で形作った分身体の欠片のみでも残存すれば本体が死滅したとしても容易に復活出来る。先程は雪国にて氷雪の欠片を桜花姫の着物に密着させた状態で…。桜花姫の家屋敷に潜入出来たのである。
(復活ですって!?)
氷麗姫は桜花姫に密着するなり…。
「私はね…あんたみたいな妖女の小娘が人一倍大好きなのよ♪あんたみたいな小娘とこんな小部屋で二人だけだと接吻したくなっちゃうわ♪」
氷麗姫は表情が赤面すると桜花姫に口移ししたのである。氷麗姫によって無理矢理に口移しされた直後…。体内の妖力が氷麗姫の吸収能力によって吸収される。
「ぐっ!」
(体内の妖力が…)
妖力の消耗によって衰弱死するかと思いきや…。桜花姫の肉体が白煙により一瞬で消滅したのである。
「えっ!?桜花姫は?」
氷麗姫の背後より何者かが背中に接触する。
「きゃっ!」
「残念だったわね♪あんたが口移ししたのは私の分身体よ♪」
「桜花姫!?」
桜花姫は氷麗姫に接吻される直前に分身の妖術を発動…。氷麗姫の吸収能力の無力化に成功する。氷麗姫の口移しによって吸収された妖力は微量だったのである。
「分身体で欺瞞するなんて…悪知恵だけは一人前だわ…」
「悪因悪果よ♪今度こそ死滅するのね…氷麗姫♪」
桜花姫は変化の妖術を発動する。変化の妖術とはあらゆる物体を別の物体に変化させる変幻自在の妖術である。
「桜餅に変化しなさい♪」
すると氷麗姫の肉体が桜花姫の大好きな桜餅に変化させる。
「美味しそうだわ♪」
桜花姫は変化の妖術によって桜餅に変化した氷麗姫を食い殺したのである。
「美味だわ♪」
桜餅に変化させた氷麗姫を捕食すると吸収された妖力が回復する。変化の妖術で食べ物に変化させた対象物を食べれば消耗した妖力も回復させられる。
「彼女に吸収されちゃった妖力も戻ったし♪一石二鳥ね♪」
桜花姫は再度寝転んだのである。
メンテ
桜花姫 ( No.8 )
日時: 2021/08/14 21:55
名前: 月影桜花姫

第五話

幻術
氷麗姫との死闘から四日後の真夜中…。南方国の村里では若齢の村娘達が衰弱化する不吉の超常現象が頻発したのである。噂話を聴取した桜花姫は欣喜雀躍の気分で南方国の村里へと直行する。
「今度も悪霊事件っぽいわね♪今度は一体何が出現したのかしら♪」
一時間後…。南方国の村里に到達したのである。
「今回は悪霊の仕業かしら♪ひょっとして今度も妖女の仕業かしら♪」
桜花姫は村里に到達するものの…。村里は非常に物静かであり誰一人として村人は確認出来ない。村里全体が重苦しい空気からか極度の息苦しさを感じさせる。
「過疎地だからかしら?人気は感じられないわね…」
すると直後…。各家屋敷から無数の物音が響き渡る。
「えっ?何かしら?」
各家屋敷より出刃包丁を所持した老若男女が同時に外出する。
「村人達!?」
(様子が可笑しいわね…)
彼等は無表情であり精気を感じられない。
「村人達は如何しちゃったのかしら?」
村人達は無表情で桜花姫を直視した直後…。
「何よ?」
彼女に殺到したのである。
「人間の分際で私に手出しするなんて無謀なのよ♪」
桜花姫は即座に念力の妖術を発動…。
「あんた達は熟睡しちゃいなさい♪」
念力の妖術により殺到する村人達を気絶させたのである。
「他愛無いわね♪」
桜花姫は恐る恐る一人の村人に接触する。
「不自然だったわね…村人達は誰かに操作された様子だったわ…」
直後…。
「きゃっ!」
近辺の路地裏から女性らしき悲鳴が響き渡る。
(えっ?女性の悲鳴だわ…)
「一体何事かしら?」
同時刻…。村道の路地裏では一人の若齢の村娘が花魁らしき色白の女性に捕捉されたのである。
「私からは逃げられないわよ♪お嬢ちゃん♪好い加減観念しなさい♪」
「きゃっ!誰か!誰か!」
村娘は必死に抵抗するものの…。花魁らしき色白の女性は外見とは裏腹に非常に力強く村娘の力量では抵抗すら出来ない。
「村里で無事なのはお嬢ちゃんだけよ♪あんたの清心を頂戴するわね♪」
色白の女性は赤面した表情で無理矢理に接吻…。
「ぐっ!」
色白の女性に口移しされた直後である。村娘は全身が脱力するなり…。意識が喪失した状態で地面に横たわる。色白の女性は満足気に…。
「美味しいわね♪女子の清心は純真無垢だから非常に美味だわ♪」
清心を完食した女性は即座に退散するものの…。直後である。
「如何やら今回の事件はあんたの仕業だったみたいね♪」
色白の女性は背後の桜花姫を直視する。
「誰かと思いきや…あんたは最上級の妖女…月影桜花姫だったかしら♪」
「あんたは悪霊の【亡霊新婦】だったわね♪悪霊なのに喋れるなんて…」
亡霊新婦とは亭主に殺害された令夫人の亡霊である。姿形こそ色白で赤色の着物姿の女性であるが正真正銘悪霊であり人間界の公用語で会話出来る。接吻によって人間の清心を吸収する女性の悪霊であり純真無垢の女子の清心こそ彼女にとって最高の嗜好品である。
「悪霊の分際なのにひ弱の女の子を相手に接吻なんて…あんたは余程の悪趣味みたいね♪」
桜花姫に挑発された亡霊新婦であるが彼女は笑顔で返答する。
「口喧しいお嬢ちゃん…あんたの清心も吸収しちゃおうかしら♪」
「出来るかしら♪私は其処等の女の子みたいに簡単には接吻出来ないわよ♪」
桜花姫は亡霊新婦に挑発したのである。
「月影桜花姫…無論あんたは妖女だから手加減しないわよ…」
亡霊新婦は笑顔の表情から険悪化した表情に一変する。
「えっ?」
亡霊新婦は幻術を発動すると地面より半透明の触手が無数に出現…。半透明の無数の触手が桜花姫の全身を拘束したのである。
「きゃっ!」
(ひょっとして幻術かしら…)
桜花姫は半透明の触手によって身動き出来なくなる。亡霊新婦は一歩ずつ膠着状態の桜花姫に近寄る。
「暇潰しにあんたの清心も頂戴するわね♪」
亡霊新婦は表情が赤面するなり…。
「私に遭遇したのが不運だったのよ…月影桜花姫♪覚悟出来たかしら♪」
亡霊新婦は身動き出来なくなった桜花姫に口移ししたのである。
「ぐっ!」
(体内の妖力が…吸収されちゃうわ…)
亡霊新婦の口移しにより体内の妖力が吸収される。
「あんたの清心も美味だわ♪」
(衰弱死するのね…)
大喜びした直後…。
「ん!?ぎゃっ!」
亡霊新婦は気味悪くなったのか突如として吐血したのである。
(えっ!?一体何が…如何して亡霊新婦は吐血したの?)
吐血した亡霊新婦は恐る恐る後退りするなり…。
「ぐっ…あんたは純真無垢の清心とは程遠いわ…」
膠着状態の桜花姫を睥睨したのである。
「如何してあんたの心情は人一倍どす黒く下劣なのかしら…あんたみたいな不潔と遭遇したのは久方振りね…」
亡霊新婦の発言に苛立ったのか腹立たしくなる。
「なっ!誰よりも温厚篤実の女神様である私に不潔ですって!?」
亡霊新婦に怒号した桜花姫は即座に天道眼を発動…。亡霊新婦の幻術を無力化したのである。桜花姫の全身に密着する半透明の触手も消滅する。
「私の幻術を自力で解除するなんて…」
亡霊新婦は自力で幻術を解除させた桜花姫に驚愕したのである。
「残念だったわね♪亡霊新婦♪天道眼を発動しちゃえば幻術だって無力化出来るのよ♪」
「天道眼ですって?」
「今度は私の出番みたいね♪」
桜花姫は変化の妖術を発動…。
「女神様の私に不潔って失言した天罰よ♪飴玉に変化しちゃいなさい♪」
変化の妖術により亡霊新婦の肉体を大好きな飴玉に変化させる。
「亡霊新婦は飴玉に変化したわね♪成仏しなさい♪」
桜花姫は即座に飴玉に変化した亡霊新婦を頬張る。
「美味だわ♪」
すると直後…。先程亡霊新婦に清心を吸収された村娘が恐る恐る目覚めたのである。
「えっ?私は一体何を…」
村娘の様子に桜花姫は一安心する。
「如何やら亡霊新婦に吸収された村人達の清心が無事に戻ったみたいね♪一件落着かしら♪」
事件が解決すると桜花姫は即刻西方国へと戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.9 )
日時: 2021/08/14 21:57
名前: 月影桜花姫

第六話

悪戦苦闘

亡霊新婦との死闘から六日後の真夜中…。東方国と西方国の国境の山道にて五人の匪賊達が一休みする。
「今日は大量でしたね♪米俵を二石も入手出来るなんて♪」
小柄の匪賊が笑顔で発言したのである。
「明日は如何しますかい?」
中肉中背の匪賊が問い掛ける。すると小柄の匪賊が笑顔で…。
「明日は西方国なんて如何かな!?西方国は田舎村だし食糧品を分捕るには最適だぜ♪」
小柄の匪賊の発言に大柄の匪賊が身震いしたのである。
「貴様は馬鹿か!?」
「えっ!誰が馬鹿だって!?」
大柄の匪賊の馬鹿発言に小柄の匪賊は腹立たしくなる。
「喧嘩したいのか!?」
大柄の匪賊は恐る恐る…。
「貴様は知らないのか?月影桜花姫の存在を…」
「月影桜花姫だって?誰だよ?」
周囲の者達は小柄の匪賊に呆れ果てる。
「貴様は本当に世間知らずだな…西方国には最上級妖女の月影桜花姫が居住する土地だぞ…」
今度は中肉中背の匪賊が発言する。
「西方国の村里なんか襲撃すれば…俺達みたいな凡人なんて桜花姫に瞬殺されちまうだろうな…」
「桜花姫って妖女は最強なのか?」
小柄の匪賊が問い掛けると大柄の匪賊が即答したのである。
「勿論最強だぞ…桜花姫は其処等の妖女とは別格に最強らしいし…俺達みたいな人間にも容赦しないだろうな…」
桜花姫は悪霊が出現しなければ時たま匪賊を征伐する。すると今度は別の小柄の匪賊が赤面した表情で…。
「桜花姫って…噂話では絶世の美女らしいな♪俺は遭遇したいぜ♪」
「貴様は物好きだな…絶世の美女だとしても桜花姫は妖女だからな…所詮妖女なんて悪霊と一緒だろう…」
大柄の匪賊は揶揄したのである。
「兎にも角にも…明日は西方国以外の人気の少なそうな村里を襲撃するか?」
「決定だな…」
すると直後…。
「うっ…」
突如として中肉中背の匪賊が極度の寒気により凍え始める。
「ん?」
「大丈夫か?」
「突然寒気が…」
極度の寒気からか全身が身震いしたのである。すると今度は大柄の匪賊が突然の寒気により凍え始める。
「俺も…」
「大丈夫かよ!?風邪か?」
直後…。周囲より気配を感じる。
「ん!?」
「気配だ…」
「人気か?」
突然の気配に匪賊達は警戒したのである。中肉中背の匪賊は恐る恐る…。
「人気なのか?」
「人気では…無さそうだな…」
「山犬か?」
匪賊達は恐る恐る護身用の刀剣を抜刀したのである。
「何が出現するか?」
目前の樹海より人影を確認…。匪賊達に接近する。
「人影だ…」
数秒後…。樹海より全身の皮膚が腐敗した小柄の怪物が出現したのである。
「ひっ!此奴は…」
「食人餓鬼って悪霊だったか?」
「此奴なら子供でも殺せるぜ♪打っ殺しちまえ!」
小柄の匪賊は食人餓鬼に近寄るなり頭部を斬首…。仕留めたのである。周囲の匪賊達は身動きしなくなった食人餓鬼に恐る恐る近寄る。
「身動きしなくなったぞ…」
「此奴は本当に雑魚みたいだな…」
食人餓鬼は非常に脆弱の悪霊であり頑張れば人間の子供でも仕留められる程度である。
「如何してこんな場所に悪霊が…」
「悪霊は神出鬼没だからな…」
「兎にも角にも…悪霊は仕留めたからな…一休みしないか?」
彼等は再度一休みするのだが…。再度寒気を感じる。
「今度も寒気を感じるぞ…」
「ひょっとして今度も悪霊が出現したか?」
彼等は再度警戒…。刀剣を抜刀したのである。
「今度は何が出現する?」
直後…。周辺の樹海より数十体もの食人餓鬼が出現したのである。
「今度は悪霊が大量に出現したぞ…如何する?」
「相手するか?」
すると大柄の匪賊が恐る恐る…。
「多勢に無勢だぜ…」
食人餓鬼は子供でも仕留められる程度の悪霊だが多勢に無勢であり圧倒的に不利である。
「逃げないか?」
「止むを得ないな…」
不本意であるが彼等は逃走を決意したのである。逃走する寸前…。
「ん?」
突如として食人餓鬼の大群は身動きしなくなる。
「えっ!?一体何が?」
身動きしなくなった食人餓鬼に匪賊達は何が発生したのか不思議がる。食人餓鬼は恐る恐る後退り…。鈍足の身動きで逃亡したのである。
「命拾いしたぜ…」
「奴等…如何して奴等逃げやがった?」
彼等は命拾いに安堵するのだが…。背後より気配を感じる。
「えっ…」
五人の匪賊達は恐る恐る背後を直視するなり…。
「ひっ!」
「蜘蛛の怪物だ!」
背後には正体不明の巨大蜘蛛らしき怪物が出現する。
「食い殺されちまう!逃げろ!」
彼等は一目散に逃走したのである。翌日の真昼…。西方国に隣接する廃村の地面より野犬に咀嚼された大量の血肉やら人骨が無数に発見されたのである。近隣の村人達からは無間地獄の亡者達が出没したとの噂話が国全体に出回る。同時刻…。東方国近辺の辺境地より食人餓鬼の大群が隣接する各地に出没したのである。村人達の噂話が気になった桜花姫は即刻問題の廃村へと直行する。
「廃村の無数の人骨と肉片…東方国に出没した食人餓鬼の大群…」
(無数の悪霊が出現した因果関係は一体何かしら?)
西方国から非常に近辺なのか数分間で到着する近距離である。桜花姫は恐る恐る廃村の様子を眺望する。
「随分殺風景ね…」
誰一人として村人が定住しない魔窟であり廃村から無数の霊力を察知したのである。
「廃村から無数の霊力を感じるわ…」
人気は皆無であり廃村の雰囲気から黄泉の国を連想させる。
「気味悪いわね…」
(空気も息苦しいし…)
廃村は非常に息苦しい場所であり普通の人間であれば卒倒しそうな雰囲気である。
「今回の超常現象では何が出現するのかしら?」
(亡霊新婦は勿論…亡霊女房よりも面倒臭いかも知れないわね…)
廃村の重苦しい空気からか気味悪くなる。廃村の雰囲気から無気力化するものの…。
「廃村中心部の楼閣が非常に不吉だわ…」
廃村中心地の楼閣から非常に重苦しい無数の霊力を察知したのである。
「妖力を消耗するのも面倒臭いからね…力任せで突破しちゃうわよ!」
彼女は鈍足であるものの真正面から廃村へと突入する。
「何かしら?」
すると周辺の地面より無数の食人餓鬼が出現…。大勢で道中を通行する桜花姫に殺到したのである。
「彼等なりの挨拶かしら?」
(食人餓鬼にとって私は嗜好品みたいね…)
桜花姫は即座に瞳術の天道眼を発動…。半透明の妖力の防壁を発動したのである。防壁の表面より半透明化した血紅色の魔手を無数に出現させる。
「鬱陶しい奴等だわ…」
妖力によって出現した無数の魔手は彼女に殺到する無数の食人餓鬼の猛攻撃から本体を防備…。血紅色の魔手は桜花姫に殺到する食人餓鬼を縦横無尽に蹴散らせる。
「人気者も災難だわ♪」
桜花姫は泰然自若とした様子であり無謀にも殺到し続ける食人餓鬼の大群を容易に死滅させたのである。桜花姫の発動した魔手に接触した食人餓鬼は一瞬で肉体が粉砕される。桜花姫が通過した直後…。桜花姫の通過した地面には食人餓鬼の無数の肉片やら血肉が彼女の路傍に散乱したのである。桜花姫は一直線に驀進するなり廃村中心部の楼閣へと到達する。
「楼閣から霊力を感じるわね…」
楼閣の最上階から不吉の霊力が感じられる。桜花姫は一息するなり…。恐る恐る楼閣へと潜入したのである。居室には異国風の調度品が散乱した状態であり居住者は誰一人として確認出来ない。
「如何やら大昔は富裕層の居住地だったのかしら…」
楼閣は全面的に洋式風の雰囲気である。
「室内の雰囲気は異国を意識したのかしら?異世界みたいだわ…」
洋式風の調度品ばかりであり異世界みたいに感じられる。階段にて最上層へと到達する。
「博物館みたいだわ…」
楼閣の最上層は骨董品の貯蔵庫であり桜花姫は無尽蔵の異国風の骨董品に魅了されたのである。
「楼閣の骨董品を競売しちゃえば私も富裕層かしら♪」
すると貯蔵庫の中心部には摩訶不思議なる骨董品が非常に気になる。
「何かしら?ひょっとして能面?」
桜花姫が気になった代物とは精巧に形作られた能面であるものの…。
「表情が気味悪いわね…」
能面は非常に不自然であり等身大の人間と同程度の巨大さである。
「非常に悪趣味だわ…能面って外見的にも不吉なのよね…」
桜花姫は巨大能面を直視すると鳥肌が立つのか非常に気味悪くなる。
「私には所有者の感受性が理解出来ないわね…能面なんて気味悪いだけなのよ…私は大嫌いだわ…」
迂闊にも巨大能面に近寄るなり…。恐る恐る接触したのである。
「普通の能面よりも随分特大なのね…単なる装飾品なのかしら?」
先程から疑問視したのか桜花姫が楼閣へと潜入した直後に室内の霊力が完全消失する。
「霊力が感じられなくなったわ…」
霊力が皆無であると察知するなり桜花姫は恐る恐る庭園へと戻ろうかと思いきや…。背後から物音が響き渡る。彼女は即座に背後を警戒するなり…。
「えっ?一体何事!?」
巨大能面の両目部分が蛍光色へと変色した状態であり無数の人間の細腕らしき脚部が形作られる。姿形は巨大化した巨大人面蜘蛛であり中心部の胴体部分が巨大能面である。
「ひょっとしてあんたは器物の悪霊…【小面蜘蛛】かしら!?」
(厄介なのが出現したわね…)
小面蜘蛛とは器物である巨大能面へと憑霊した憑依系統の悪霊であり南方国では別名巨大能面の付喪神とも命名される。器物に憑霊出来る呪術により天道眼を保有する桜花姫をも錯覚させる。小面蜘蛛の胴体部分である巨大能面の両目が桜花姫を凝視するなり微笑する。
「気味悪いわね…」
微笑する小面蜘蛛に桜花姫は気味悪くなる。すると巨大能面の口先より白色の蜘蛛糸を噴出したのである。
「きゃっ!」
小面蜘蛛の蜘蛛糸が彼女の皮膚に接触した直後…。
「ぐっ!」
(何かしら?妖力が消耗するなんて…)
体内の妖力が格段に消耗したのである。体内の妖力が一瞬で半減したのか肉体の身動きすらも負担に感じられる。
(迂闊だったわ…能面の正体が悪霊の小面蜘蛛だったなんて…如何して今迄気付かなかったのかしら?)
小面蜘蛛の蜘蛛糸に接触すると莫大なる妖力を一瞬で消耗する。大量の妖力を駆使する攻撃法では小面蜘蛛を仕留めるのは非常に困難である。莫大なる妖力と天道眼による多種多様の妖術を保有化…。自由自在に扱える桜花姫にとって小面蜘蛛は相性的にも最悪の天敵である。
(私は小面蜘蛛の餌食に…)
桜花姫は莫大なる妖力の消耗によって力尽きたのか横たわる。横たわった彼女の隣接に小面蜘蛛が急接近する。
「小面蜘蛛…」
(私を食い殺したければ食い殺しなさいよ…)
桜花姫は捕食されるのを覚悟したのである。
(最上級妖女の私が…悪霊を相手に圧倒されるなんて…)
彼女は僅少の妖力によって時空間停止の妖術の使用を決意する。
(一か八か…)
時空間停止の妖術を発動したのである。直後…。小面蜘蛛は一時的に身動きしなくなる。時空間停止の妖術は数分間のみ周囲の時間と空間を停止させられる妖術…。自身は身動き出来るが周囲の空間は何もかもが停止状態だったのである。
「今度は…」
瞬身の妖術を発動する。瞬身の妖術とは所謂瞬間移動であり瞬時に安全地帯に移動出来る。桜花姫は瞬身の妖術の使用により楼閣から無事脱出…。近辺の山道へと移動したのである。
(危機一髪だったわ…)
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒…。無事に楼閣から脱出出来たのである。
「脱出には成功したみたいね…」
妖力の消耗によって妖術の使用は不可能であり一時的に退却を余儀無くさせられる。
(時空間停止の妖術は解除されたし…即刻戻らないと…)
大量の妖力消耗によって妖術が使用出来なくなり一時的に退却しなくては悪霊征伐が出来なくなる。
(こんなにも妖力を消耗した状態では妖術を使用出来ないわね…)
桜花姫は西方国へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
周囲の地面より数体の食人餓鬼が出現する。彼等は地面に横たわった桜花姫へと殺到したのである。
「今度は食人餓鬼!?」
最早桜花姫は妖力を消耗した満身創痍の状態であり数体の食人餓鬼さえも仕留められなくなる。
(本調子の私だったら食人餓鬼なんて片手間で片付けられちゃうのに…)
本調子の彼女にとって食人餓鬼の大群相手は片手間であるものの…。大量の妖力を消耗した状態では複数の食人餓鬼さえも仕留められなくなる。彼等は無我夢中に横たわった桜花姫に殺到したのである。
「きゃっ!」
桜花姫は戦慄するなり恐る恐る後退りする。
(私は食人餓鬼に食い殺されちゃうのね…)
数体の食人餓鬼が彼女の肉体に接触する直前…。
「えっ!?」
食人餓鬼は突発的に身動きしなくなる。
「如何して身動きしなくなったの?」
恐る恐る地面を注視するなり…。
「きゃっ!蜘蛛糸だわ…」
小面蜘蛛の白色の蜘蛛糸を確認する。
「ひょっとして小面蜘蛛かしら?」
彼等の背後には標的である桜花姫を追撃する小面蜘蛛が近寄る。
「小面蜘蛛!?」
(今度こそ私は小面蜘蛛に食い殺されちゃうわ…)
小面蜘蛛に戦慄した桜花姫は全身が膠着したのである。金縛りの妖術によって楼閣から危機一髪脱出出来たものの…。小面蜘蛛は桜花姫の妖力を目印に彼女の居場所を察知する。必死に逃走する桜花姫を見逃さなかったのである。小面蜘蛛は体内から噴出させた蜘蛛糸によって身動き出来なくなった数体の食人餓鬼を捕食する。
「悪霊が悪霊を共食いするなんて…」
桜花姫は悪霊が悪霊を食い殺す残虐非道の場面に気味悪くなる。食い殺される食人餓鬼みたいに自分自身も小面蜘蛛に食い殺されるのではと想像すると自害したくなる。小面蜘蛛は横たわった桜花姫に近寄るなり…。小面蜘蛛の鋭利の脚部が桜花姫の腹部を抉り抜いたのである。
「ぎゃっ!」
急所を抉り抜かれた直後…。
「ぐっ!」
吐血したのである。地面は桜花姫の大量の出血によって血紅色に変色する。
(結局私は小面蜘蛛に捕食されちゃうのね…)
致命傷であり失血死寸前の瀕死状態である。最早全身の無感覚によって痛覚すらも感じられなくなる。身動き出来なくなった桜花姫は今度こそ最期を覚悟したのである。すると直後…。
「きゃっ!」
両目を瞑目すると耳元より爆発音が響き渡る。
(えっ!?爆発音?)
恐る恐る両目を見開くなり…。肉体を粉砕された小面蜘蛛の血肉が散乱した状態であり死滅した小面蜘蛛の背後には携帯式の榴弾砲を武装した僧侶服の何者かが地面に横たわった桜花姫に恐る恐る近寄る。
(誰かしら?)
僧侶服の人物とは僧侶の三蔵郎であり精神的にも肉体的にも衰弱化した桜花姫にとって三蔵郎は守護神にも感じられる。
「危機一髪でしたね…桜花姫様…」
「ひょっとして三蔵郎様?」
「桜花姫様…大丈夫ですか?」
三蔵郎は桜花姫の抉り抜かれた胸背の外傷を直視するなり…。
「桜花姫様…」
(致命傷ですね…)
桜花姫の外傷を直視した三蔵郎は絶句する。
「私なら大丈夫よ…外傷なら自力で治癒出来るから…」
「自力で治癒ですと?」
すると桜花姫の傷口は体内の妖力によって治癒されたのである。
「致命的外傷も一瞬で元通りなんて桜花姫様の妖力は正真正銘万能薬ですね…」
(ですが桜花姫様は出血多量の悪影響によって衰弱化された状態ですが…)
桜花姫は多量の出血により肉体的にも精神的にも疲弊した状態である。
「如何して人間の三蔵郎様が悪霊の小面蜘蛛を仕留められたのかしら?小面蜘蛛って悪霊でも段違いに強敵なのよ…」
「小面蜘蛛は妖力を無力化させる悪霊ですよね?妖力を多用すれば悪戦苦闘は必須でしょうが妖力が未利用の攻撃法によって撃退出来るのでしょうね…今回の悪霊は莫大なる妖力を保有する妖女では最悪の天敵かと…」
三蔵郎は妖力を利用しない攻撃法こそが小面蜘蛛にとって唯一の弱点であると推測する。小面蜘蛛は摩訶不思議の妖力を多用する妖女では相性的にも最悪であるものの…。武装化した人間には滅法脆弱である。
「ですが一安心ですね♪桜花姫様が無事なのが何よりですから…」
「三蔵郎様…」
桜花姫は涙腺から大粒の涙が零れ落ちるなり落涙する。
「三蔵郎様!」
桜花姫は三蔵郎の腹部に力一杯密着したのである。
「桜花姫様!?」
三蔵郎にとって彼女の様子は幼女であり純情可憐に感じられる。
「桜花姫様…」
(余程辛かったのでしょうね…)
疲弊した桜花姫を直視するなり…。三蔵郎は人一倍病弱だった愛娘を想起したのである。
(私の愛娘は一昨年…疫病によって…)
三蔵郎は一昨年伝染病で死去した愛娘を追想するなり内心極度の悲痛さを感じる。数分後…。
「桜花姫様?空腹なのでは?」
三蔵郎は空腹の彼女に麦飯を手渡したのである。
「御免あそばせ…こんな貴重品を私なんかに大丈夫なのかしら?」
「桜花姫様が空腹なのは一目瞭然ですし…桜花姫様が無事なのが何よりですから…桜花姫様は気になさらなくても大丈夫ですよ♪」
「三蔵郎様…」
桜花姫は三蔵郎の雰囲気が一瞬父親との距離感を想像したのである。すると感情が高揚したのか彼女の両目から大粒の涙が零れ落ちる。
(父親との距離感って…こんな雰囲気なのかしら…)
彼女は力一杯麦飯を平らげる。一瞬で麦飯を完食したのである。
「桜花姫様は相当空腹だったのですね…」
「小面蜘蛛の蜘蛛糸で体内の妖力を消耗させられちゃったからね…」
すると桜花姫は恐る恐る三蔵郎に告白する。
「私…一瞬三蔵郎様が私の父親だったらって…妄想しちゃったわ…」
「私が桜花姫様の父親ですと…」
桜花姫の発言に一瞬驚愕するものの…。
(私が桜花姫様の父親ですか♪)
三蔵郎は想像するなり内心大喜びしたのである。
「三蔵郎様?」
「如何されましたか?桜花姫様?」
桜花姫は叫喚地獄だった幼少期の出来事から悪霊退治屋として活動し始めた経緯を三蔵郎に一部始終追憶する。
「大昔の私はね…」
桜花姫の血筋は名門の武家一族…。月影一族の一人娘であり彼女の家系は分家に分類される。父親は東方国武士団所属の最上級武士【月影夜叉丸】であり母親は人魚妖女の【月影美海姫】…。人間の夜叉丸と純血の妖女である美海姫の混血が愛娘の桜花姫である。父親の夜叉丸は天地歴三千九百九十二年四月七日の桜花姫の出産日前日にて死去…。母親の美海姫と一緒に生活したのである。東方国武士団の最上級武士であった夜叉丸の財産によって毎日が暖衣飽食の生活であり非常に裕福であったものの…。桜花姫は春風駘蕩の毎日が非常に退屈であり武陵桃源の暖衣飽食に極度の倦怠感を感じる。憂鬱であった幼少期であるが彼女に人生最大の変化が到来したのである。不運にも十二歳の誕生日後日…。断崖絶壁の落石に直面する。不運にも桜花姫は落石によって背中を損傷したのである。
「私は落石で絶体絶命だったのよ…」
落石の事故後…。桜花姫は半死半生の状態であったものの背中の外傷が一瞬で自然治癒したのである。落石による外傷が全治した直後…。血紅色であった半透明の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光したのである。突如として体内の妖力が通常の妖女よりも桁違いに増大化…。規格外の妖力の覚醒により日に日に強大化した彼女は体内で蓄積された妖力を自力で抑制出来なくなる。
「当時子供だった私は妖力を自由自在に扱えなかったのよ…」
妖力を抑制出来なくなった桜花姫は不本意にも妖力の暴走によって唯一の肉親である母親の美海姫を殺害…。
(温厚篤実の桜花姫様が母君様を殺害ですと!?)
「桜花姫様が母君様を殺害されたのは事実なのでしょうか?」
「私が母様を殺したのは事実なのよね…」
三蔵郎は驚愕する。
「私は正真正銘残虐非道の殺人鬼なのよ…」
残虐非道の殺人鬼として明断された桜花姫は東方国武士団の看守達により隔離される。監獄にて武士団の看守達から一晩中拷問されたものの…。桜花姫の規格外の生命力に戦慄したのである。看守達は桜花姫の常人をも超越した生命力に戦慄…。武士団の看守達は彼女を監獄から釈放させる。人間達にとって害悪である悪霊から村人達を防備する不寝番としての活動を必須要件として多種多様の悪霊やら大勢の匪賊達を問答無用に征伐したのである。妖力の順応化は非常に困難であったものの日に日に妖力を多用し続けた結果…。十八歳の中頃には伝説の秘術として伝承される瞳術の天道眼を開眼させたのである。
「桜花姫様が悪霊退治屋として活動された理由とは…不本意にも母君様を殺害された自分自身の罪悪感だったのですね…」
「内心忘却したい黒歴史なのよね…」
「ですが桜花姫様は人一倍勇猛果敢の女神様ですよ…勿論誰よりも♪」
桜花姫は三蔵郎の女神様発言に返答する。
「私が女神様なんて…三蔵郎様は随分表現が大袈裟ね…」
「桜花姫様は不本意にも幼少期に母君様を殺害されたのは事実なのかも知れません…ですが何よりも桜花姫様は罪滅ぼしとして無数の悪霊は勿論…極悪非道の匪賊達から村人達を守護する悪霊退治屋として粉骨砕身されたのも事実ですからね…」
「三蔵郎様…」
桜花姫の顔色が変化したのである。
「所詮妖女も生命体なのです…森羅万象に実在する生命体とは善悪の集合体であり非常に複雑ですからね…勿論こんな私自身にも悪心は存在しますよ♪」
三蔵郎の鼓舞激励によって微弱であるものの…。
「三蔵郎様♪三蔵郎様には大変感謝するわ…」
桜花姫に笑顔が戻ったのである。
「私自身桜花姫様に役立てただけでも恐悦至極に感じられますよ♪」
「三蔵郎様♪」
桜花姫は三蔵郎の鼓舞激励に一安心する。
「桜花姫様…今後は如何されますか?」
「無数の霊力が国全体に分散しちゃったみたいだからね…」
(亡者達が国全体に徘徊し続けると非常に大変だわ…)
突如として莫大なる無数の食人餓鬼の気配を察知したのである。
「国全体に霊力ですと!?一大事ですね…即刻悪霊を撃退しなければ…」
「食人餓鬼が増大化した悪影響ね…」
「ですがこんなにも突発的に食人餓鬼の大群が出現するなんて…」
「如何してこんなにも食人餓鬼の大群が出現しちゃったのかしら?」
すると桜花姫は三蔵郎に協力を要望する。
「三蔵郎様?」
「如何されましたか?桜花姫様?」
「今回ばかりは三蔵郎様の協力が必要不可欠なのよ…正直今回の悪霊征伐は私だけで解決するのは心細いのよね…」
正直今回も単独で悪霊事件を解決させたかったが先程の予想外の悪戦苦闘によって桜花姫は極度に心細くなる。
「勿論ですとも♪私は是非とも桜花姫様に協力しますよ♪」
桜花姫の要望に三蔵郎は大喜びで承諾したのである。
「三蔵郎様と一緒なら心強いわ♪」
メンテ
桜花姫 ( No.10 )
日時: 2021/08/14 22:00
名前: 月影桜花姫

第七話

敗走

桜花姫と三蔵郎は増大化した無数の霊力を感じる東方国へと到達…。城下町の中心街に潜入したのである。東方国の絶景は全域が主戦場であり城下町の地面には腐敗した無数の血肉は勿論…。散乱した血塗れの臓器やら血肉が無数に確認出来る。先程遭遇した食人餓鬼の大群が無数に出現…。逃走中の村人達に殺到するなり人間の血肉を無我夢中に捕食したのである。
「本物の地獄絵ですね…東方国では一体何が…」
「彼等にとって人間の血肉は嗜好品だからね…」
徘徊中の無数の食人餓鬼が移動中の桜花姫と三蔵郎に殺到するなり…。大勢で襲撃するものの桜花姫が念力の妖術を発動すると彼等は瞬殺される。
「鬱陶しい悪霊だわ…」
桜花姫と三蔵郎の地面周辺には食人餓鬼の血肉やら体内の臓器が無数に散乱する。
(直接手出ししなくとも確実に殺害出来るなんて…)
三蔵郎は桜花姫の天道眼の効力に驚愕したのである。
「桜花姫様の妖力を肉眼で拝見しましたが…こんなにも天下無双とは非常に心強いですな…」
「私にとって片手間よ♪」
「片手間ですと!?」
(ですが桜花姫様の妖力がこんなにも強力であれば私の協力なんて無意味なのでは?)
内心桜花姫には同行者の協力は不必要なのではと感じる。
「鬱陶しい奴等ね…」
桜花姫は苛立った様子であり村人達の血肉を無我夢中に捕食し続ける食人餓鬼の大群に猛反撃したのである。無数の食人餓鬼の頭部を念力によって破裂させる。頭部が破裂した食人餓鬼は身動き出来なくなる。
「相手が微弱の食人餓鬼であれば…桜花姫様の妖力は天下無敵ですね♪」
「私にとって食人餓鬼なんて問題外よ…」
桜花姫にとって悪霊やら通常の妖女であれば滅法天下無双であるものの…。
(食人餓鬼が問題外でも妖力の消耗戦で私自身疲弊状態なのよね…)
先程の予想外の悪戦苦闘により妖力の消耗戦が影響したのか息苦しい深呼吸が目立ったのである。
「桜花姫様?」
「何かしら…三蔵郎様?」
「大丈夫ですか?何やら桜花姫様の顔色が…」
三蔵郎は息苦しそうに深呼吸する桜花姫を心配する。
「別に…私なら大丈夫よ…」
「ですが桜花姫様の顔色が…」
「三蔵郎様は人一倍心配性なのね…三蔵郎様が気にしなくても私は大丈夫だからね…」
城下町の中心地区域内へと到達するものの…。東方国の村人達は誰一人として確認出来ない。
「無人地帯だわ…村人達の居場所は?」
「東方国の村人達は武士団の本拠地である根城へと避難されました…最早東方国全域が亡者達によって占拠されたのでしょうね…」
すると三蔵郎は桜花姫に助言する。
「桜花姫様の妖力は変幻自在かも知れませんが…先程の小面蜘蛛みたいな最上級の悪霊にでも遭遇すれば確実に苦戦するでしょう…護身用の装備品が必要不可欠かと…油断大敵ですよ…」
「護身用の装備品ですって?」
「武士団の駐屯地で装備品を確保しましょう…私が道案内しますよ…」
三蔵郎は桜花姫を道案内するなり一緒に駐屯地へと移動したのである。数分後…。桜花姫と三蔵郎は武士団の駐屯地に到達する。
「廃屋っぽいわね…」
「武士団の駐屯地も食人餓鬼の大群に占拠されましたからね…」
二人は恐る恐る駐屯地へと潜入したのである。駐屯地は無人化した廃屋であり武士団の守備隊は食人餓鬼の猛攻撃によって危機一髪撤退…。本拠地である根城へと退却したのである。
「常備軍は撤退しちゃったのかしら?」
通路は血塗れの刀剣やら甲冑が散乱した状態である。
「何しろ相手は神出鬼没の悪霊ですし武士団の守備隊が少数精鋭であったとしても無数の悪霊を撲滅させるなんて夢物語でしょう…ですが彼等が撤退した恩恵によって容易に潜入出来ましたからね…」
最早守備隊の駐屯地は無防備の状態であり非武装の村人達でも容易に潜入出来る。
「先程は私も駐屯地の武器庫で榴弾砲を確保しましたからね…」
桜花姫と三蔵郎は恐る恐る武器庫へと入室する。武器庫には多種多様の火縄銃やら手榴弾は勿論…。異国で購入された最新式の散弾銃やら携帯式の迫撃砲が無尽蔵に確認出来る。
「連発銃なんて如何でしょうか?連発銃であれば誰でも手軽に扱えるでしょう…」
三蔵郎は軽量化された携帯式の連発銃を桜花姫に手渡したものの…。
「三蔵郎様…残念だけど私には連発銃は相応しくないわね…」
桜花姫は連発銃の使用を拒絶する。
(私自身砲術は未経験だからね…連発銃なんて代物は私には扱えないわ…)
基本的に荒唐無稽の妖術を駆使する桜花姫にとって自身の肉体を行使する砲術やら武術は不向きであり連発銃の使用法は滅法専門外の領域である。
「短刀の懐刀だったら愚鈍の私でも…」
桜花姫は体術やら武術を多用する兵法は不向きであるものの…。比較的誰でも扱えそうな短刀の懐刀を護身用に所持する。
「三蔵郎様…即刻武器庫から脱出しましょう…」
「承知しました…」
すると通路より物音が響き渡る。
「通路から物音だわ…食人餓鬼かしら?」
通路より無数の霊力を察知したのである。
(無数の霊力が密集した状態だわ…何かしら!?)
桜花姫は恐る恐る武器庫から脱出するなり…。
「怪物!?」
通路に佇立する怪物とは無数の食人餓鬼が融合化した肉団子の悪霊である。
「食人餓鬼とは別物だわ…悪霊の変異体かしら?」
姿形のみなら肉団子を連想させる巨体の肉塊人間であるものの…。全身の皮膚の表面には醜悪なる食人餓鬼の顔面が無数に確認出来る。
「先程から感じる無数の霊力って…肉団子の怪物だったのね…」
三蔵郎も恐る恐る武器庫から退室する。
「ひょっとして悪霊の【百鬼食人餓鬼】では?」
「百鬼食人餓鬼ですって?」
「食人餓鬼の集合体ですよ…」
「食人餓鬼の集合体?」
三蔵郎は桜花姫に解説したのである。
「征伐された彼等の…無数の食人餓鬼の怨恨が具現化した悪霊の親玉でしょうね…」
「無数の食人餓鬼の怨恨が具現化ですって…」
図体は等身大の人間と同程度であり一匹一匹の食人餓鬼の霊力は非常に微弱であるものの…。
「傍迷惑なのが出現したわね…」
食人餓鬼の大群が無数に融合化した影響によって最上級の妖女である桜花姫も恐る恐る後退りする。
(私が万全の状態であれば…食人餓鬼の集合体なんて片手間だけれども…)
妖力の消耗戦により百鬼食人餓鬼との徹底抗戦は非常に難局である。
(迂闊にも小面蜘蛛から大量の妖力を消耗させられちゃったからね…)
すると百鬼食人餓鬼の全体像から確認出来る表面の食人餓鬼の口辺より超高温の熱風を放射する。桜花姫は咄嗟に霊力の防壁を発動…。同行者である三蔵郎にも妖力の防壁を発動するなり危機一髪彼を熱風から防備する。
「三蔵郎様…命拾いしたわね♪」
「感謝します桜花姫様…即刻ですが桜花姫様の妖術で百鬼食人餓鬼に猛反撃しちゃいましょう♪桜花姫様が天下無敵の妖術を駆使しちゃえば集合体の百鬼食人餓鬼だって撃退出来るでしょう!」
「三蔵郎様…」
桜花姫は苦笑いしたのである。
「桜花姫様…如何されたのですか?」
苦笑いする桜花姫に恐る恐る問い掛ける。
(先程の妖力の防壁で空っぽの状態なのよね…)
妖力が空っぽの状態であり百鬼食人餓鬼と応戦しても敗戦は確実であると判断した桜花姫は苦し紛れに…。
「三蔵郎様!即刻駐屯地から一か八か脱出しましょう…」
三蔵郎に逃走を合図したのである。
「えっ?脱出ですと?」
三蔵郎は一瞬困惑するが…。
(桜花姫様…)
桜花姫の表情から三蔵郎は咄嗟に掌握する。
「承知しました!桜花姫様…」
桜花姫と三蔵郎は全力疾走により駐屯地から無事脱出したのである。桜花姫は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「三蔵郎様…危機一髪だったわね♪」
「ですが如何して桜花姫様は逃走を判断されたのですか?桜花姫様らしくないですね…」
三蔵郎は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「桜花姫様が天下無敵の妖術を駆使すれば食人餓鬼の集合体である百鬼食人餓鬼と交戦したとしても容易に撃退出来るのでは?」
「度重なる消耗戦で妖術が発動出来なくなったのよ…こんな空っぽの状態で百鬼食人餓鬼と徹底抗戦なんて無謀だわ…」
度重なる妖力の消耗戦によって桜花姫は満身創痍の状態であり妖力を消耗した状態では食人餓鬼の集合体である百鬼食人餓鬼は勿論…。相手が食人餓鬼の大群だったとしても絶体絶命である。
「人間の三蔵郎様は勿論…最上級妖女の私だって確実に瞬殺されるでしょうね…」
「えっ…最上級妖女の桜花姫様が悪霊を相手に瞬殺されるなんて…」
三蔵郎は桜花姫が非常に弱気であると感じるも…。桜花姫は息苦しく深呼吸したのである。
(桜花姫様…本当に重苦しい様子ですね…)
三蔵郎は恐る恐る…。
「如何やら妖力が消耗されたのは本当みたいですね…桜花姫様…」
「御免なさいね…三蔵郎様…」
桜花姫は謝罪したのである。
「妖力を消耗した状態では食人餓鬼の大群を相手するのも正直悲痛なのよね…『天霊山』の露天風呂にでも入浴出来れば…」
「天霊山の露天風呂ですか?」
天霊山とは西方国の丘陵地であり俗界の温泉郷と命名される。妖女にとって天霊山の露天風呂は消耗した妖力を回復させられる正真正銘の妖力補給所であり極楽浄土である。
「西方国の露天風呂なら思う存分妖力を回復させられるのよね…」
「西方国は俗界の温泉郷ですからね…」
西方国は太平神国唯一の温泉郷であるものの…。不運にも東方国から田舎村の西方国は遠距離である。
「距離的にも西方国は遠距離なのよね…」
困惑し続ける桜花姫と三蔵郎であるが二人の背後より百鬼食人餓鬼が接近する。
「桜花姫様!?百鬼食人餓鬼ですよ!」
「私達を追尾したのね…」
(如何やら私達に選択肢は皆無みたいだわ…)
桜花姫と三蔵郎は一目散に逃走したのである。
「三蔵郎様…超特急で西方国に戻りましょう…」
桜花姫は一時的に撤収を決意する。
「承知しました!」
二人は恐る恐る悪霊の襲撃を警戒するなり獣道にて西方国へと全力疾走したのである。親玉の百鬼食人餓鬼は勿論…。食人餓鬼の身動きは非常に鈍足であり彼等から追尾されなかったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.11 )
日時: 2021/08/14 22:03
名前: 月影桜花姫

第八話

反撃

同時刻…。北方国のとある山道では旅先にて蛇神の蛇骨鬼と山猫妖女の小猫姫が食人餓鬼の大群に追尾されたのである。
「ぐっ!」
「蛇骨鬼婆ちゃん!大丈夫!?」
蛇骨鬼は北方国の山奥にて食人餓鬼の大群から逃走中…。極度の腰痛により身動き出来なくなる。獣道にて蛇骨鬼は横たわる。
「畜生…」
(こんな状況下で腰痛なんて…)
すると彼女達の背後より無数の食人餓鬼が急接近したのである。
(私の命日かね…)
「本日で神族も全滅かも知れないね…」
蛇骨鬼は覚悟する。すると小猫姫は無表情で…。
「蛇骨鬼婆ちゃん…私…」
「小猫姫?」
小猫姫の体内より強大化した妖力を感じる。
「小猫姫!?」
(小猫姫から妖力を感じる…)
小猫姫の皮膚から蛍光色の秘められた妖力が表面化する。
「小柄の小猫姫に…こんなにも潜在的妖力が…」
(ひょっとすると小猫姫は妖力だけなら幼少期の桜花姫ちゃんに匹敵するかも知れないね…)
蛇骨鬼は小猫姫の潜在的妖力に驚愕したのである。すると小柄の小猫姫は肉体が変化するなり…。伝説の妖獣へと変化したのである。
「ひょっとして伝説の…妖獣!?」
(子供の小猫姫が…伝説の妖獣に変化出来るなんて…)
小猫姫の潜在能力に蛇骨鬼は勿論…。悪霊の食人餓鬼でさえも伝説の妖獣へと変化した小猫姫を直視するなり一瞬後退りしたのである。
「あんた達!蛇骨鬼婆ちゃんには…手出しさせないからね!覚悟しなよ!」
伝説の妖獣に変化した小猫姫は食人餓鬼の大群へと突進…。真正面に位置する数体の食人餓鬼を撃退する。極度に腐敗した食人餓鬼の肉体は非常に脆弱であり伝説の妖獣に変化した小猫姫が力一杯突進すると容易に粉砕されたのである。食人餓鬼の大群が再度小猫姫に殺到するものの…。小猫姫は口先を開口すると体内の妖力を凝縮させる。すると直後…。口先から高熱の雷球を射出したのである。高熱の雷球により獣道は焦土化…。一瞬で食人餓鬼の大群を消滅させ獣道の推定二町の界隈が焦土化したのである。圧倒的妖力により食人餓鬼の大群を消滅させた小猫姫であるが…。莫大なる妖力の消耗により小猫姫は元通りの姿形に戻ったのである。
「はぁ…はぁ…」
彼女は精神的にも肉体的にも疲弊したのか地面に横たわる。
「小猫姫!?大丈夫かい!?」
すると小猫姫は疲れ果てた表情で返答する。
「蛇骨鬼婆ちゃん…私なら大丈夫だよ…疲れ果てただけだから…」
「小猫姫…」
小猫姫の様子に蛇骨鬼は一安心したのである。
「桜花姫姉ちゃんは…大丈夫かな?」
彼女は桜花姫が大丈夫なのか非常に気になる。
「桜花姫ちゃんなら小猫姫が心配しなくても大丈夫だよ♪桜花姫ちゃんの場合妖女は妖女でも最上級の妖女だからね♪彼女の妖力は其処等の妖女とは別格だよ…」
蛇骨鬼は笑顔で断言する。
「桜花姫姉ちゃんなら…大丈夫だよね♪」
「桜花姫ちゃん…彼女なら今頃は…」
同時刻…。桜花姫と三蔵郎は無事に西方国へと到達する。
「如何やら西方国に到達したみたいですね♪桜花姫様の祖国ですか?」
「勿論よ♪無事に西方国に戻れたから一安心だわ…」
時間帯は真夜中であり物静かな暗闇の夜空を眺望すると桜花姫と三蔵郎は一安心したのである。
「夜空だわ…」
桜花姫は物静かな夜空を眺望したのである。すると三蔵郎が笑顔で…。
「田舎村の西方国へは食人餓鬼の襲撃は皆無だったみたいですね♪桜花姫様の祖国が無事なので一安心ですよ♪」
「油断大敵だけれどね…西方国は正真正銘武陵桃源だったみたいだわ…」
過疎地である西方国は総人口も比較的少人数であり神出鬼没の食人餓鬼の大群も襲撃しなかったのである。桜花姫と三蔵郎は桜花姫の自宅の近辺に隣接する天霊山へと直行する。
「目的地の天霊山よ…」
「天霊山とは…こんなにも低山だったのですね…」
三蔵郎は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「ですが天霊山の露天風呂なんかで…消耗された妖力を回復させられるのですか?」
「天霊山の露天風呂は私達妖女にとって極楽浄土だからね♪天霊山の露天風呂なら消耗しちゃった妖力だって回復させられるわ♪」
天霊山は非常に物静かであるが桜花姫は極度に周囲を警戒…。恐る恐る天霊山の天辺へと到達したのである。天霊山の天辺中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「天霊山の露天風呂…本物の幻想郷みたいですね♪」
「天霊山は神秘の場所よ♪私にとって天霊山の露天風呂で入浴するのが毎晩の醍醐味だからね♪」
桜花姫は毎晩天霊山の露天風呂で入浴する。
「自然界での入浴とは非常に健康的ですからね♪」
すると彼女は人前であるものの…。特段気にならなかった様子であり突如として着物を脱衣したのである。
「なっ!?桜花姫様!?」
三蔵郎は公明正大に着物を脱衣する桜花姫に驚愕する。
「何かしら?三蔵郎様…」
桜花姫は無表情で返答したのである。
「桜花姫様…人前で何を!?」
彼女は平気そうな表情で…。
「何って…入浴するから着物を脱衣しただけよ…」
桜花姫は全裸の状態であり三蔵郎の表情が赤面する。すると赤面した三蔵郎の反応に桜花姫は笑顔で…。
「三蔵郎様は大袈裟ね♪」
桜花姫は赤面する三蔵郎の様子に微笑ましくなる。
(生真面目の三蔵郎様も悩殺しちゃったわね♪)
三蔵郎は人前で脱衣しても平常心である桜花姫に愕然とする。
「私にとって三蔵郎様は特別だから大丈夫なのよ♪別に全裸だからって私は気にしないから…」
「気にしないって…桜花姫様は正真正銘女性なのですよ…」
桜花姫は全裸の状態であろうとも平常心の様子である。
「私自身全裸でも気にならないのよね♪人前で全裸だからって何よ?三蔵郎様は大袈裟ね♪」
「妖女とは…」
(妖女って私達人間とは感覚が別次元なのでしょうね…)
三蔵郎は摩訶不思議の妖女が人間とは異質的であると再認識する。
「変化の儀式を発動するわよ…」
「変化の儀式ですと?」
すると桜花姫の全身の皮膚が虹色に変化したかと思いきや…。
「桜花姫様!?」
三蔵郎は強烈なる無数の発光体によって両目を瞑目させる。すると桜花姫の血紅色であった両目が瑠璃色へと変化したのである。直後…。彼女の下半身が銀鱗の大魚へと変化するなり人間の女性から美貌を感じさせる人魚の肉体へと変化したのである。黒毛の頭髪が銀髪へと変色する。
(えっ…桜花姫様が…)
「人魚に!?」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられるが自分自身の肉体をあらゆる動植物にも変化させられる。雰囲気の変化した彼女に三蔵郎は驚愕の様子であり…。内心人魚に変化した桜花姫に見惚れる。
「三蔵郎様♪如何かしら♪」
人魚に変化した桜花姫は普段の体格を一回り上回る巨体であり人魚の状態で入浴したのである。
(桜花姫様が人魚に変化出来る理由とは天道眼の効力なのでしょうか?)
「桜花姫様は人魚にも変化出来るのですね…」
「私の母様が人魚の血筋だからね♪」
彼女の母親である美海姫は純血の人魚であり桜花姫も美海姫の血筋により人魚に変化出来る。
「折角だし三蔵郎様も私と一緒に混浴しないかしら?適度の湯加減だし♪」
「えっ!?私が桜花姫様と混浴ですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。桜花姫に笑顔で歓迎されるものの…。今回ばかりは拒否したのである。
「桜花姫様…生憎ですが今回ばかりは私は遠慮しますよ…私は無事超常現象が解決してから桜花姫様と一緒に混浴でも♪」
三蔵郎は赤面する。
「三蔵郎様は遠慮深いのね♪」
桜花姫は満足気の様子であり度重なる悪戦苦闘によって消耗した妖力が体内に蓄積…。万全の状態へと戻ったのである。
(如何やら桜花姫様の妖力が回復したみたいですね…)
三蔵郎は露天風呂で水遊びする桜花姫を見守るものの…。
(今更なのですが…私も桜花姫様と一緒に混浴したかったな…如何して私は遠慮しちゃったのか…)
三蔵郎は後悔したのか無我夢中に水遊びする桜花姫の様子を注視し続けると内心彼女と混浴したくなる。
「天霊山の露天風呂は極楽浄土だわ…先程の悪戦苦闘が悪夢だったって感じられるのよね…」
桜花姫は真夜中の夜空を眺望する。
「ですが桜花姫様は今後如何されるのですか?食人餓鬼の大群は勿論ですが…百鬼食人餓鬼の暴走を黙殺し続ければ国全体が彼等に占拠されましょう…」
「体力と妖力を回復させたら即刻猛反撃するからね♪私が全身全霊で食人餓鬼の大群と百鬼食人餓鬼の大群を蹴散らしちゃうわよ!」
数分後…。露天風呂の効力によって桜花姫の妖力が完全に回復したのである。入浴終了後…。桜花姫は人魚の状態から人間の姿形へと元通りに戻ったのである。桜花姫は即座に脱衣した着物を着衣する。
「三蔵郎様…妖力は万全よ!万全の状態なら食人餓鬼の大群は勿論…百鬼食人餓鬼が襲撃したとしても撃退出来るわ!」
「如何やら本調子が戻ったみたいですね♪桜花姫様♪」
すると三蔵郎は突発的に彼女に提案したのである。
「桜花姫様?突発的なのですが別行動は如何でしょうか?」
「別行動ですって?」
「桜花姫様は東方国の城下町に出現した食人餓鬼の大群と親玉の百鬼食人餓鬼の征伐に全身全霊を…私は彼等の大群が出現した主要因を徹底的に探索します…」
「百鬼食人餓鬼は勿論…東方国の城下町には神出鬼没の食人餓鬼の大群が徘徊中なのよ…人間の三蔵郎様が単独で出歩くのは自害するのと一緒だわ…」
桜花姫は非常に危惧するものの三蔵郎は大丈夫であると断言する。
「私は先程武器庫で無尽蔵の弾薬と護身用の連発銃を確保しましたからね♪私なら大丈夫ですよ…」
「悪霊が大群であれば即座に避難するのよ…三蔵郎様…」
「承知しました…桜花姫様…」
桜花姫の心配事を把握するなり三蔵郎は恐る恐る東方国の城下町へと戻ったのである。桜花姫と三蔵郎は本格的に別行動を開始する。
「三蔵郎様は単独で大丈夫かしら…」
桜花姫は三蔵郎が単独で大丈夫なのか不安視したのである。桜花姫は天道眼を発動…。東方国の中心街を徘徊する百鬼食人餓鬼の居場所を察知する。
「百鬼食人餓鬼の気配を感じるわ…」
百鬼食人餓鬼の霊力は規格外であり周辺には無数の食人餓鬼が徘徊中であるものの…。容易に居場所を特定化出来る。
「百鬼食人餓鬼だけは規格外だからね…霊力が目立ち過ぎだわ…」
(霊力が強力だから容易に居場所を特定化出来るのよね♪)
桜花姫は即座に東方国へと直行する。獣道にて徘徊中の無数の食人餓鬼に遭遇するものの即座に念力の妖術を発動…。容易に彼等を蹴散らせる。
「周辺の妨害者達が鬱陶しいわね…」
無数の食人餓鬼が大勢で殺到するものの…。彼女の本体に接触する直前に彼等の肉体が念力の妖術によって粉砕されたのである。露天風呂の効力からか先程よりも桜花姫の妖力が増強化する。数分後…。
「百鬼食人餓鬼は中心街で徘徊中ね…」
桜花姫は東方国の中心街へと到達する。
(百鬼食人餓鬼は私が仕留めるからね♪)
「覚悟しなさいよ…」
桜花姫は恐る恐る東方国の中心街へと潜入したのである。
「村人達だわ…」
(非常に心苦しいわね…)
農村地帯は食人餓鬼の襲撃によって惨殺された村人達の血肉やら無数の肉片が散乱する。
「彼等は食人餓鬼の襲撃によって惨殺されたのね…」
すると横たわった村人達が突発的に身動きし始めたのである。彼等は通行中の桜花姫に殺到する。
「きゃっ!」
桜花姫は咄嗟に念力の妖術を発動…。
「死滅しなさい!」
殺到する村人達の腹部を念力の妖術で粉砕したのである。村人達を仕留めたかと思いきや…。
「えっ!?」
上半身のみで身動きするなり桜花姫に急接近する。
(上半身のみで身動き出来るなんて…)
即座に念力の妖術を再活用するなり食人餓鬼へと変化した村人達の頭部を粉砕…。すると頭部を粉砕された影響からか村人達は身動きしなくなる。
「脳味噌を粉砕しちゃえば身動き出来なくなるみたいね…」
如何して食人餓鬼によって殺害された村人達が突発的に身動きしたのか疑問視する。
「如何して食人餓鬼に食い殺された村人達が身動きしたのかしら…」
(ひょっとすると食人餓鬼に食い殺された人間も食人餓鬼として復活するのかしら?疫病みたいだわ…)
通常の食人餓鬼は捕食されても食人餓鬼には変化しなかったが今回の天災地変で出現した食人餓鬼は今迄に出現した食人餓鬼とは別物であり捕食…。殺害された人間も食人餓鬼として復活するのである。
「食人餓鬼に襲撃された人間達が食人餓鬼として復活するのであれば相当厄介だわ…」
最早祖国存亡の瀬戸際であり最悪の場合…。食人餓鬼の増大化による太平神国の滅亡が危惧される。
「東方国は勿論…最悪太平神国が滅亡するかも知れないわね…」
すると突発的に胸騒ぎを感じる。
「霊力かしら!?」
彼女の背後には無数の人面が融合化した百鬼食人餓鬼が佇立する。
「百鬼食人餓鬼だわ…」
百鬼食人餓鬼の無数の人面が桜花姫を睥睨の眼力で凝視するなり超高温の熱風を放射したのである。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。超高温の熱風から本体を防備したのである。
「危機一髪ね♪」
天道眼の効力により百鬼食人餓鬼の頭頂部から雷撃の妖術を発動する。
「死滅しなさい!百鬼食人餓鬼…」
すると高熱の落雷によって地面は陥没…。百鬼食人餓鬼の肉体が粉砕される。
「仕留めたかしら?」
落雷で粉砕された無数の肉片が小柄の人間体を形作るなり無数の食人餓鬼へと分裂したのである。
(粉砕された肉片が食人餓鬼に分裂したのね…)
桜花姫は超高温の火炎の妖術を発動…。分裂した食人餓鬼の大群を火炎の妖術で焼殺する。
「亡者達…成仏しなさい…」
火炎の妖術により数秒間で食人餓鬼の大群は完全焼失したのである。
「焼失したわね…楽勝だったわ♪」
桜花姫は手応えを感じる。
「三蔵郎様は大丈夫かしら?」
桜花姫は三蔵郎が無事なのか如何なのか非常に気になる。
メンテ
桜花姫 ( No.12 )
日時: 2021/08/14 22:05
名前: 月影桜花姫

第九話

仙女

同時刻…。三蔵郎は無事に東方国へと到達したのである。各家屋敷の路地裏を通行中…。とある血塗れの女性と遭遇したのである。三蔵郎は恐る恐る…。
「大丈夫ですか?」
女性は無表情であり三蔵郎を凝視し続けるだけである。
「如何されましたか?」
(不吉ですね…)
女性の様子に三蔵郎は非常に気味悪くなる。すると数秒後…。無表情の女性は突発的に卒倒したのである。
「うわっ!」
驚愕した三蔵郎は恐る恐る横たわった彼女の皮膚に接触するなり…。
「如何やら失血死したみたいですね…」
(悪霊によって殺害されたのでしょうか…無念です…)
数秒後に失血死した女性が佇立したのである。すると数秒後…。女性の肉体が一瞬で腐敗したのである。
「肉体が一瞬で腐敗するなんて…」
三蔵郎は気味悪がる。横たわった女性の肉体が腐敗したかと思いきや…。
「此奴は食人餓鬼!?」
腐敗した彼女の体内から小柄の食人餓鬼が出現したのである。
(ひょっとして食人餓鬼によって殺害された人間は食人餓鬼として復活するのでしょうか?)
突如として女性の体内から出現した食人餓鬼が三蔵郎に近寄るものの…。三蔵郎は即座に護身用の連発銃で食人餓鬼の頭部を狙撃したのである。すると頭部を狙撃された直後に食人餓鬼は身動きしなくなる。
「疫病みたいですね…」
すると背後に無数の殺気を感じる。
(殺気!?)
恐る恐る背後を警戒するなり…。
「食人餓鬼と…村人達でしょうか?」
無数の食人餓鬼と血塗れの村人達が大勢で山奥へと移動する。
「彼等の目的地は一体?」
彼等の行動が気になった三蔵郎は彼等の背後から恐る恐る追尾したのである。数分後…。三蔵郎は日和山と命名される低山へと到達したのである。日和山の天辺には虹色に発光する摩訶不思議の広葉樹が確認出来る。
「摩訶不思議の広葉樹ですな…」
すると無数の食人餓鬼と血塗れの村人達が虹色に発光する広葉樹の表面へと殺到したのである。すると広葉樹の表面から無数の触手が出現するなり…。樹木の表面に密着する食人餓鬼と血塗れの村人達は広葉樹から出現した触手によって肉体諸共捕食されたのである。
「広葉樹が食人餓鬼と村人達を捕食するなんて…樹木の悪霊でしょうか…」
数秒後…。広葉樹の表面より無数の食人餓鬼の集合体である百鬼食人餓鬼が二体も出現したのである。
「百鬼食人餓鬼!?」
(悪霊の親玉が二体も出現するなんて…)
三蔵郎は気味悪がるなり恐る恐る後退りしたのである。すると突然…。金縛りによって身動き出来なくなる。
「ぐっ!」
(一体何が!?身動き出来なくなるなんて…)
三蔵郎は身動き出来なくなった状態から突発的に衰弱化したのである。
(突然眠気が…桜花姫様…)
同時刻…。三蔵郎の気配を感じられなくなった桜花姫は即座に東方国近辺に位置する日和山へと急行する。
「突然三蔵郎様の気配が感じられなくなったわ…三蔵郎様は一体何に遭遇しちゃったのかしら?」
低山の日和山から食人餓鬼の無数の霊力とは別物の神通力を感じる。
「食人餓鬼の霊力なら感じるけれども…」
(中心部から百鬼食人餓鬼を上回る霊力?神通力を感じるわ…神通力の正体は何かしら?)
すると桜花姫の背後より無数の食人餓鬼は勿論…。二体の百鬼食人餓鬼が出現したのである。
「百鬼食人餓鬼が二体も出現するなんて…」
食人餓鬼の大群と二体の百鬼食人餓鬼が桜花姫に殺到する。
「鬱陶しい奴等だわ…多勢に無勢なら♪」
こんなにも絶体絶命であるものの…。桜花姫は平常心の様子である。
「あんた達…桜餅に変化しなさい♪」
桜花姫は変化の妖術を発動するなり無数の食人餓鬼は勿論…。二体の百鬼食人餓鬼を自身の大好物である桜餅に変化させる。
「美味しそうだわ♪消耗しちゃった妖力を回復させられるわね♪」
桜花姫は無尽蔵の桜餅を頬張る。
「美味しいわね♪」
無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「三蔵郎様の安否を確認しないと!」
すると彼女の背後より四人の匪賊達が近寄る。
「よっ♪花魁の姉ちゃんよ♪」
「あんた達は…何者よ?私は十中八九普通の小町娘だからね…花魁なんかと勘違いしないでよね…」
接触する匪賊達に苛立ったのである。
(面倒臭いわね…ひょっとして匪賊達かしら?こんな場所で匪賊と遭遇するなんて私も不運だわ…)
彼等の装備品は刀剣やら携帯式の連発銃であり桜花姫は警戒するなり恐る恐る後退りする。
「不用意に警戒しなくても大丈夫だよ♪大人しく金品を手渡しちゃえば小町娘の姉ちゃんには手出ししないからよ♪」
「俺達は誰よりも温厚篤実の若侍だからな♪」
「あんた達が温厚篤実の若侍ね…」
(匪賊の分際で何が若侍よ…)
桜花姫は彼等を軽蔑するなり…。無表情で反論する。
「私はあんた達みたいな田舎侍とは大違いで常日頃から大忙しなの…殺されたくなければあんた達こそ逃走するのね…」
「はっ?殺されたくなかったらって…」
「俺達を田舎侍って軽蔑するなんて片腹痛いぜ♪小町娘の姉ちゃんよ♪」
「小町娘の姉ちゃんは余程の命知らずみたいだな♪」
彼等は桜花姫の発言に苛立ったのである。
「命知らずなのはあんた達でしょう?こんな天災地変なのよ…あんた達だって悪霊に食い殺されるかも知れないのに…」
桜花姫は無表情で反論する。
「如何やら本当に打っ殺されたいらしいな…」
「相手は所詮小娘!力尽くでも金品を強奪しちまえ!」
匪賊達は桜花姫に殺到したのである。
「鬱陶しい奴等だわ…」
桜花姫は即座に天道眼を発動…。
(雨蛙に変身しちゃえ♪)
変化の妖術によって巨漢の匪賊を微弱の雨蛙に変化させる。すると三人の匪賊達は桜花姫の妖術で雨蛙に変化させられた匪賊を恐る恐る凝視するなり…。驚愕したのである。
「ひっ!如何して人間が雨蛙に!?」
「妖術なのか…」
すると小柄の匪賊が恐る恐る…。
「ひょっとして貴様は…」
「私が誰かって?」
桜花姫は笑顔の表情で名前を名乗る。
「私は悪霊退治屋の桜花姫…月影桜花姫よ♪」
笑顔で名前を名乗る桜花姫に彼等は驚愕したのか恐る恐る後退りしたのである。
「なっ!?月影桜花姫って冗談だろ…」
「貴様が最上級妖女って噂話の…月影桜花姫なのか!?」
「本物かよ…」
匪賊達は後退りするものの…。中肉中背の匪賊が恐る恐る連発銃に弾丸を装填させる。
「狼狽えるな!桜花姫が最上級の妖女だとしても所詮は単なる小娘!連発銃で狙撃しちまえば最上級の妖女だって打っ殺せるさ…」
「如何やらあんたは余程の命知らずみたいね♪」
桜花姫は失笑する。
「桜花姫!覚悟しやがれ!」
匪賊は連発銃から弾丸を発砲したのである。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。妖力の防壁によって発砲された弾丸を無力化したのである。
「畜生が…此奴は妖術で弾丸を無力化しやがったか…」
桜花姫は不本意であるものの…。
(禁断の妖術…発動しちゃおうかしら♪)
匪賊の一人に禁断の妖術を発動する。
(飴玉に変化しちゃえ…)
すると連発銃を武装した匪賊が桜花姫の禁断の妖術によって彼女の大好きな飴玉に変化したのである。
「うわっ!人間が妖術で飴玉に変化したぞ…」
桜花姫は無表情で発言する。
「私に殺されたいのは誰かしら?」
彼等は桜花姫に戦慄する。
「ひっ!打っ殺されちまうよ!逃げろ!」
匪賊達は極度の恐怖心により一目散に逃走したのである。
「鬱陶しい奴等だったわ…」
匪賊達を撃退した桜花姫は摩訶不思議の神通力を目印に目的地の日和山へと到達したのである。
「虹色の広葉樹だわ…えっ?三蔵郎様!?」
天辺の中心部には虹色に発光した広葉樹と地面に横たわった三蔵郎らしき人物が確認出来る。桜花姫は警戒した様子で恐る恐る横たわった三蔵郎に近寄るものの…。
「三蔵郎様だよね…」
普段の温柔敦厚の三蔵郎とは別人であり非常に薄気味悪い雰囲気だったのである。不吉にも人間である三蔵郎の肉体から摩訶不思議の神通力を感じる。
「三蔵郎様の肉体から神通力を感じるわ…」
すると横たわった三蔵郎が恐る恐る目覚める。
「三蔵郎様!?大丈夫なの?」
三蔵郎は無表情で桜花姫を凝視するなり…。
「三蔵郎だと?人違いであるな…」
「えっ?」
三蔵郎の返答に桜花姫は困惑したのである。
(姿形は三蔵郎様でも…別人みたいだわ…)
地上界の聖人である三蔵郎であるが雰囲気の変化に桜花姫は後退りする。すると三蔵郎らしき人物は睥睨した表情で…。
「私は【霊魂巨神木】である…」
三蔵郎らしき人物は自身を霊魂巨神木と名乗る。
「霊魂巨神木ですって!?」
「僧侶の肉体に憑霊した…」
(霊魂巨神木って…大昔の伝承では世界樹だったかしら?)
霊魂巨神木とは森羅万象の造物主であり太古の古代人達の伝承では森羅万象の世界樹として認識される。
(こんな小山みたいな日和山に本物の世界樹と遭遇しちゃうなんてね…)
霊魂巨神木は太古の大昔に存在した樹木であり死滅した神族の鮮血を養分として誕生したのである。古代人達から森羅万象の創造主やら世界樹として神格化されたものの…。戦乱時代末期の出来事である。とある田舎村の病弱だった村娘が霊魂巨神木の果実を菜食…。人間の女性であった彼女は超自然の妖女へと覚醒するなり摩訶不思議の妖力を入手したのである。霊魂巨神木の果実を菜食した彼女こそが事実上妖女の元祖であり今現在では昔話として伝承される。
「造物主である私と対峙して正気を維持出来るとは…妖女は妖女でも貴様は最上級の妖女であるな…」
桜花姫は三蔵郎の肉体に憑霊した霊魂巨神木を睥睨するなり…。
「霊魂巨神木…三蔵郎様を元通りに戻しなさい!」
桜花姫は勇往邁進の気構えで断言する。
「妖女の小娘よ…僧侶の肉体を元通りに戻したければ私に協力しろ…」
「協力ですって?何よ?」
霊魂巨神木は一息したのである。
「貴様の妖術で…全世界の人間達を殲滅せよ…」
「はっ?」
霊魂巨神木の発言に桜花姫は呆れ果てる。
「貴様の妖力は非常に強力である…最上級妖女の貴様であれば一日に一国の人間達を全滅させられるだろう…」
桜花姫は苛立った表情で睥睨する。
「面倒臭いわね…誰があんたの協力なんて…人間達を殲滅したいのであればあんたが一人で実行すれば?」
「であれば貴様の僧侶は一生涯元通りには戻れない…」
「卑劣だわ…あんた…」
「貴様だって一緒だろ…」
桜花姫の卑劣の一言に霊魂巨神木は反論したのである。すると桜花姫は睥睨した表情で問い掛ける。
「如何してこんなにも無数の悪霊が俗界に出現したのよ?世界樹のあんただったら天災地変の主要因を特定出来るわよね?」
すると問い掛けられた霊魂巨神木は断言する。
「今回大勢の亡者達を俗界に口寄せしたのは私自身の神通力である…」
(霊魂巨神木が…)
「神通力って…あんたが黒幕だったのね!」
桜花姫は突如として表情が強張ったのである。
「今回私が大勢の亡者達を口寄せさせた主原因とは…所詮人間達の自業自得であるからな…」
「人間達の自業自得ですって?」
「愚劣なる人間達は戦乱時代以前の太古の大昔から同族同士で殺し合い…自然界の多種多様の動植物を殺戮し続けたからな…」
戦乱時代以前からも人間達は同族で紛争し合い…。殺し合ったのである。
「私は彼等の野蛮さと傲慢さにより愚劣なる俗界の人間達を見限ったのだ…」
表情が強張った桜花姫であるものの霊魂巨神木の発言に意気投合…。否定しなかったのである。
「霊魂巨神木…あんたの主義主張も理解出来るかも知れないわ…内心私自身も人間達は大嫌いよ…私自身も幼少期は周囲の村人達に妖女だからって迫害されたのよね…人間達って野蛮で強欲よね?」
今現在でこそ桜花姫は悪霊退治屋として各地方で活躍するが…。幼少期は一部の村人達から疫病神と嫌悪され迫害されたのである。
「私自身も人間なんて誰一人として信頼出来なかったわ…」
桜花姫は幼少期に一部の村人達による偏見…。迫害から人間達を憎悪したのである。
「無論である…人間とは醜悪なる生命体であるからな…」
霊魂巨神木は即答する。
「結局人間は誰も信頼出来なかったけれどね…」
「ん?貴様は何を発言したいのであるか?」
数秒後…。
「三蔵郎様…彼だけは私の唯一の理解者であり…私にとって唯一信頼出来る人間だったのよ…」
「僧侶が唯一の貴様の理解者であると?」
「私にとって三蔵郎様は家族同然なのよ!私の家族である三蔵郎様に手出しするなら言語道断!あんたが世界樹だからって手加減しないからね!」
「であれば折角の機会である…私と真剣勝負でも如何かな?最上級妖女の小娘よ…」
霊魂巨神木が真剣勝負を提案する。
「私があんたと真剣勝負ですって?」
「無論小娘が私に敗戦したならば…貴様の寿命を収縮させる…貴様が家族であると豪語する僧侶も未来永劫呪詛し続ける…」
すると桜花姫は恐る恐る霊魂巨神木に質問したのである。
「反対に私が…あんたとの真剣勝負に勝利出来たら如何するのよ?」
「小娘が私に勝利したならば貴様の寿命を収縮させないし…貴様が家族であると豪語する僧侶も呪詛から無条件に解放する…無数の悪霊による天災地変も無事終息させるぞ…」
桜花姫は一瞬度重なる悪戦苦闘により困惑するものの…。霊魂巨神木の提案を承諾したのである。
「私は全身全霊であんたを仕留めるからね!」
すると三蔵郎の肉体は脱力により横たわる。三蔵郎に憑霊した霊魂巨神木の神通力が本体である広葉樹に戻ったのである。
「如何やら手加減しなくても大丈夫みたいね♪」
桜花姫は即座に天道眼を発動…。
(火球の妖術で…)
火球の妖術を発動すると手首より超高温の発光体を形成したのである。
「死滅しなさい!」
発射された発光体は非常に特大であり霊魂巨神木の表面に直撃…。爆散したのである。
「直撃♪」
仕留めたかと思いきや…。霊魂巨神木は神通力の防壁によって直撃した超高温の発光体を無力化したのである。
(私の妖力を無力化するなんて…)
霊魂巨神木は無数の人魂を口寄せするなり融合化…。特大の鬼火を形作る。
「鬼火かしら…」
(死滅した人魂の集合体である…死滅せよ!)
霊魂巨神木の発動した鬼火は死滅した人魂の集合体であり桜花姫に放射したのである。桜花姫は即座に寒風を発動…。霊魂巨神木の鬼火を消失させる。
(寒風で私の鬼火を無力化するとは…)
周辺の地面より半透明の触手を無数に出現…。
「触手!?」
桜花姫は咄嗟に妖力の防壁を発動したのである。妖力の防壁を発動すると半透明の触手の無力化に成功する。
「危機一髪ね♪」
霊魂巨神木は精神感応により桜花姫の脳裏に伝達したのである。
(天道眼の防壁で私の神通力を無力化するとは…)
「霊魂巨神木!?精神感応かしら?」
(太古の大昔から数多くの妖女が伝説の瞳術である天道眼を保有したが…貴様に匹敵する妖女は誰一人として皆無であった…)
桜花姫も精神感応で返答する。
(勿論私は最上級の妖女だからね♪其処等の妖女とは別格なのよ♪)
(無論貴様は屈強の最上級妖女であるが…所詮肉体はか弱き小娘…森羅万象の造物主である私には勝利出来ないであろう…)
(私が勝利出来ないかは…)
両手より雷光の光線を発動…。霊魂巨神木の樹木に直撃させる。
(絶大なる雷撃であるが…)
桜花姫の発動した雷光の光線を吸収したのである。
(私には貴様程度の妖術は通用しないぞ…)
「一筋縄ではあんたは仕留められないわね…」
霊魂巨神木は金縛りにより桜花姫の身動きを封殺したのである。
「ぐっ!」
(ひょっとして金縛りかしら?)
桜花姫は霊魂巨神木の金縛りによって身動き出来なくなる。
(妖女の小娘よ…貴様の妖力を頂戴するぞ…)
地面より半透明の無数の触手が出現…。桜花姫の全身に接触する。
「きゃっ!」
(私の妖力が…)
半透明の触手によって身動き出来なくなった桜花姫は霊魂巨神木の吸収能力により体内の妖力が一瞬で消耗させられる。
「妖力が…」
(吸収されちゃうわ…衰弱死しちゃうかも…)
覚悟した直後である。周囲の自然林から一匹の白猫が出現…。
「えっ…」
(白猫!?)
白猫の目力により衝撃波を発生させたのである。直後…。無数の触手を消滅させる。
「きゃっ!」
衝撃波の発生に桜花姫は地面に横たわる。白猫の体内から妖力を感じる。
(白猫の体内から妖力を感じるわね…ひょっとして白猫の正体は妖女かしら?)
白猫が人間の少女の姿形へと変化する。
「ひょっとしてあんたの正体は…」
「桜花姫姉ちゃん…大丈夫?」
「あんたは山猫妖女の小猫姫!?」
白猫の正体は山猫妖女の小猫姫だったのである。小猫姫は変化の妖術によって白猫にも変化出来る。すると横たわった桜花姫の背後より大神族の蛇骨鬼が恐る恐る近寄る。
「桜花姫ちゃんよ…大丈夫かね?」
「蛇神の蛇骨鬼婆ちゃんも?」
「最上級妖女の桜花姫ちゃんがこんなにも衰弱化しちゃうなんてね…」
蛇骨鬼は特殊能力によって左手を白蛇に変化…。恐る恐る桜花姫の背中に接触したのである。
「妖力が戻ったわ…」
桜花姫の消耗した妖力を回復させる。
「命拾いしたね…桜花姫ちゃん…」
「感謝するわ…蛇骨鬼婆ちゃん♪小猫姫♪」
蛇骨鬼の特殊能力によって桜花姫の消耗した妖力は回復したのである。蛇骨鬼は恐る恐る霊魂巨神木を凝視するなり…。
(今回の相手は世界樹の霊魂巨神木だね…)
「こんな荒唐無稽の造物主を相手に真正面から真剣勝負なんてね…普通の妖女なら暴虎馮河だよ…」
「私は三蔵郎様を元通りに戻したかったのよ…」
「三蔵郎様だって?三蔵郎とは誰かね?」
「三蔵郎様は…」
蛇骨鬼は桜花姫の背後に横たわる三蔵郎を直視する。
「誰かと思いきや…男前の僧侶だね♪」
「私にとって三蔵郎様は人間では唯一の理解者だから…」
(彼が桜花姫ちゃんの理解者とはね…こんな世の中でも温柔敦厚の人間が実在するなんて…)
蛇骨鬼は微笑むなり…。
「人間を人一倍毛嫌いした桜花姫ちゃんが本心から一人の人間を救済したいなんてね♪小猫姫よ♪」
「何よ?蛇骨鬼婆ちゃん?」
「桜花姫ちゃんに協力しな♪」
小猫姫は大喜びで承諾する。
「勿論だよ♪私は桜花姫姉ちゃんに協力するよ♪」
小猫姫は体内の妖力を増強化させるなり伝説の妖獣へと変化したのである。伝説の妖獣に変化した小猫姫を凝視するなり桜花姫は驚愕する。
「小猫姫が伝説の妖獣に!?」
「私も変化出来るのよ♪桜花姫姉ちゃん!私と精一杯共闘しましょう!」
(小猫姫が伝説の妖獣に変化出来るなんてね…非常に心強いわ!)
「勿論よ♪小猫姫♪」
桜花姫と小猫姫の一枚岩に危惧したのか霊魂巨神木の神通力が先程よりも増大化したのである。
(天道眼の小娘は勿論…妖獣の小娘も出現するとは…)
天空全体が黒雲により覆い包まれる。
「先程よりも霊魂巨神木の神通力が増大化したわ…」
桜花姫は一瞬身震いしたのである。
「油断大敵よ…小猫姫…」
「桜花姫姉ちゃんこそ油断大敵だからね♪」
直後…。
「えっ!?雷撃だわ!」
すると強烈なる落雷攻撃が彼女達の直上より落下する。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。霊魂巨神木の落雷攻撃を無力化したのである。小猫姫も雷光の防壁により霊魂巨神木の落雷を無力化する。
「死滅しろ!」
小猫姫は妖力を凝縮させるなり口先から高熱の雷球を発射したのである。小猫姫の高熱の雷球は霊魂巨神木の樹木表面に直撃するものの…。霊魂巨神木の吸収能力によって小猫姫の発射した高熱の雷球は無力化されたのである。
「私の妖力が吸収されちゃった…此奴は容易には仕留められないね!桜花姫姉ちゃん!」
「霊魂巨神木は本物の世界樹だからね…此奴には妖術は通用しないみたいよ…」
(私と小猫姫は妖力だけなら確実に霊魂巨神木を上回ったけれども…霊魂巨神木の吸収能力には妖術は無力化されるし…一体如何すれば霊魂巨神木を仕留められるのかしら?)
通常の妖術では無力化される霊魂巨神木に彼女達は困惑する。
「私にも此奴に対抗出来る神通力が扱えるなら…」
すると地獄耳の蛇骨鬼は桜花姫が口走った神通力の一言を傾聴するなり…。
「えっ?神通力だって?」
蛇骨鬼は頭陀袋からとある木材の破片を桜花姫に手渡したのである。
「えっ?何かしら?」
「何って…小面蜘蛛の肉片だよ♪」
蛇骨鬼は笑顔で木材の破片が小面蜘蛛の肉片であると即答する。
「げっ!小面蜘蛛の肉片ですって!?」
木材の破片が小面蜘蛛の肉片である事実に桜花姫は一瞬気味悪がる。
「桜花姫ちゃんよ…あんたも神通力を入手したかったら小面蜘蛛の肉片を頬張りな♪本来小面蜘蛛は霊魂巨神木の皮膚から形作られた能面だからね♪」
小面蜘蛛が誕生した経緯は不明であるが…。一説では古代の人間達によって迫害された神族の怨念が能面に憑霊した悪霊であるとも解釈される。
「小面蜘蛛の肉片を食べちゃえばあんたの天道眼を覚醒させられるかも知れないよ…」
「天道眼の覚醒ですって…」
(こんな老婆が小面蜘蛛の肉片を入手したとは…)
霊魂巨神木も小面蜘蛛の肉片を察知する。小面蜘蛛の肉片を手渡された桜花姫であったものの…。非常に困惑したのである。
(こんな代物…食いしん坊の私でも頬張りたくないわね…如何しましょう?)
生理的に小面蜘蛛の肉片を捕食したくない桜花姫であるものの…。
(一か八か…)
「桜餅に変化しなさい!」
変化の妖術を発動すると小面蜘蛛の肉片は桜花姫の大好きな桜餅に変化したのである。
「小面蜘蛛の肉片を…あんたの大好きな桜餅に変化させるなんてね…」
蛇骨鬼は苦笑いする。
「桜餅に変化しちゃえば小面蜘蛛の肉片だって吟味出来るからね♪」
桜花姫は変化の妖術で桜餅に変化した小面蜘蛛の肉片を一口で平らげる。
(所詮妖女の小娘が私の肉体の欠片である小面蜘蛛の肉片を捕食したとしても扱える神通力は微量…造物主の私には程遠い!)
霊魂巨神木は桜花姫を脆弱であると判断する。
「えっ?」
突如として桜花姫の肉体が粒子状の虹色の発光体に覆い包まれる。
「桜花姫ちゃん!?」
「桜花姫姉ちゃん!?」
蛇骨鬼と小猫姫は強烈なる虹色の発光体により瞑目したのである。すると数秒後…。無数の発光体の中心部より大日如来を連想させる巫女装束の女神が出現する。
「女神様かな?」
「えっ?あんたは仙女かね?」
巫女装束の女神の頭部には金無垢の金冠…。背中には大日如来を連想させる黄金色の輪光体が形作られる。蛇骨鬼と小猫姫は恐る恐る…。
「ひょっとしてあんたは…桜花姫ちゃんなのかい?」
「桜花姫姉ちゃんだよね?」
すると巫女装束の女神は背後の小猫姫と蛇骨鬼を直視するなり…。
「私よ…桜花姫よ♪」
蛇骨鬼は仙女へと覚醒した桜花姫に驚愕したのである。
「えっ…」
(桜花姫ちゃんが容姿端麗の仙女に覚醒するなんて…)
小猫姫は仙女の桜花姫に見惚れる。
「本物の女神様みたいだね♪桜花姫姉ちゃん♪」
「私が女神様なんて…小猫姫は大袈裟ね♪」
(私が女神様♪)
内心大喜びしたのである。
「私…普段よりも妖力が増強化したのかしら…」
霊魂巨神木は返答する。
(天道眼の覚醒によって小娘の体内の妖力が神通力に変化したが…貴様の体内の神通力は私よりも数段階下回る!所詮貴様はか弱き小娘…貴様程度の微弱の肉体では扱える神通力も微量である!造物主の私には程遠いぞ…)
「現段階の私だったら…圧倒的に劣勢かも知れないわね♪」
「えっ?桜花姫姉ちゃん?」
彼女は笑顔で背後の小猫姫を凝視するなり…。
「小猫姫♪」
「何よ?桜花姫姉ちゃん?」
「小猫姫…あんたの妖力を私に♪」
小猫姫は変化の妖術を解除するなり伝説の妖獣から本来の美少女の姿形へと戻ったのである。恐る恐る桜花姫の背中に接触する。すると桜花姫の吸収能力により小猫姫の莫大なる妖力が一瞬で消耗したのである。
「ぐっ!妖力が一瞬で…」
「御免あそばせ♪小猫姫…」
(小猫姫…あんたの妖力を頂戴するわね…此奴を仕留めるにはあんたの妖力が必要なのよ…)
桜花姫は謝罪する。小猫姫は非常に息苦しくなるものの…。
「私なら大丈夫だから…気にしないで…桜花姫姉ちゃん♪」
小猫姫は笑顔で返答したのである。
「感謝するわね♪小猫姫♪」
桜花姫に吸収された小猫姫の妖力は彼女の体内にて神通力へと変化する。すると桜花姫の神通力は先程よりも数段階増大化したのである。
(微弱であった小娘の神通力が造物主である私に匹敵?上回るなんて…)
急速に神通力が増大する桜花姫に霊魂巨神木は驚愕する。小猫姫の妖力によって桜花姫の神通力が霊魂巨神木を数段階上回ったのである。
「桜花姫ちゃんが天道眼の覚醒と小猫姫の妖力によって造物主である霊魂巨神木の神通力を上回るなんてね…」
(ひょっとすると彼女は…桜花姫ちゃんは正真正銘戦乱時代に実在した元祖妖女の再来なのかも知れないね…)
蛇骨鬼は桜花姫を見守るなり大昔の伝説を連想…。桜花姫が大昔に実在した元祖妖女の再来なのではと推測する。
「霊魂巨神木…あんたの本体から戦乱時代の無念の亡者達の霊力を感じるわ…」
桜花姫は瞑目するなり…。
「私があんたの本体に憑霊する亡者達を成仏させるわ…」
(仙術…『日輪光』!)
虹色の神通力を諸手に凝縮させるなり…。両手より虹色の発光体を射出する。桜花姫が発動させた虹色の日輪光は霊魂巨神木に直撃したのである。
(こんな微弱の小娘が…仙術である日輪光を発動させるとは…)
霊魂巨神木は咄嗟に神通力の防壁にて樹木本体を防備するものの…。仙女へと覚醒した桜花姫の日輪光は霊魂巨神木の神通力の防壁を容易に無力化する。防壁を無力化した日輪光は霊魂巨神木の表面に直撃したのである。すると樹木に憑霊した無数の亡者達の阿鼻叫喚が国全体へと響き渡る。
「ぐっ!」
「きゃっ!」
「小猫姫!?蛇骨鬼婆ちゃん!?」
霊魂巨神木の樹木本体に憑霊した無数の亡者達の阿鼻叫喚は蛇骨鬼と小猫姫は勿論…。各地の村人達をも卒倒させたのである。
(戦乱時代の亡者達は一筋縄では成仏出来ぬ!所詮小娘の貴様では…)
「沈黙するのね!」
桜花姫は即答する。桜花姫は全身全霊の神通力を発動…。
「戦乱時代の亡者達!好い加減成仏しなさい!」
全身全霊の神通力によって無念の亡者達の阿鼻叫喚を沈黙させたのである。数秒後…。
「はぁ…はぁ…」
神通力の消耗戦によって桜花姫は力尽きるなり地面に横たわる。桜花姫は仙女の状態から元通りの彼女に戻ったのである。霊魂巨神木からは醜悪なる亡者達の霊力は感じられない。すると霊魂巨神木は半透明の触手を発動…。
「霊魂巨神木…私を…如何するのよ…」
霊魂巨神木の触手が疲れ果てた桜花姫の皮膚に接触するなり消耗した妖力を回復させる。
(妖力が戻ったわ…)
「如何して私に妖力を…」
すると直後…。霊魂巨神木が樹木の状態から桜色の着物姿の女性に変化したのである。
「えっ!?あんたは樹木に憑霊する精霊かしら?」
(ひょっとして霊魂巨神木の正体は女体の精霊だったの?)
霊魂巨神木は桜花姫の質問に即答する。
(私の本来の姿形である…今迄は大勢の醜悪なる亡者達に憑霊されてより…本来の姿形には戻れなかった…)
霊魂巨神木の精霊は一息するなり…。
(貴様は戦乱時代の亡者達を無事に成仏させたからな…私は天道眼の所有者に無念の亡者達を成仏させたかった…)
「戦乱時代の亡者達…」
(大勢の成仏出来ぬ亡者達が私の体内に密集したからな…)
「ひょっとして今回の天災地変は…意図的に私の天道眼を覚醒させる魂胆だったのね…」
霊魂巨神木の精霊は恐る恐る返答する。
(人間達には傍迷惑だったかも知れないが…)
桜花姫は沈黙する。
(貴様にとって彼が…人間の僧侶が唯一の理解者なのか…)
桜花姫は地面に横たわった三蔵郎を凝視するなり即答したのである。
「勿論よ…あんたの神通力で三蔵郎様を元通りに戻しなさい…」
霊魂巨神木の精霊は返答する。
(貴様の僧侶を元通りに戻そう…貴様の神通力が…私の体内で忘却された戦乱時代の亡者達を無事成仏させられたからな…是非とも貴様には感謝しなければ…)
直後である。暗闇であった天空の黒雲も消失…。村里にて徘徊中だった食人餓鬼と百鬼食人餓鬼も霊魂巨神木の精霊の神通力によって白砂へと変化するなり成仏する。
(貴様の僧侶の肉体を無事元通りに戻した…太平神国の天災地変も終息させたからな…)
霊魂巨神木の精神感応が響き渡る。
(小娘よ…貴様の名前は?)
桜花姫は即答する。
「私は桜花姫…月影桜花姫よ…」
(月影桜花姫と名乗る妖女よ…貴様は天道眼を所有する唯一の妖女…天寿によって貴様の肉体が死滅したとしても極楽浄土の守護神として覚醒する…月影桜花姫とやら…太古の妖女は戦乱で荒廃化した太平神国に安寧秩序を樹立させた…貴様の神通力であれば一天四海全域の安寧秩序を樹立させられるかも知れないな…)
「私が極楽浄土の守護神?一天四海の安寧秩序ですって?」
(貴様は彼女の後継者に相応しいからな…月影桜花姫よ…)
直後…。霊魂巨神木の精霊が無数の粒子状へと変化するなり天空にて消滅したのである。
「霊魂巨神木が…」
(神通力が感じられなくなったわ…霊魂巨神木が消滅するなんてね…)
すると地面に横たわった三蔵郎は勿論…。卒倒した蛇骨鬼と小猫姫が目覚める。
「えっ?私は一体何を?」
「桜花姫ちゃん?」
「桜花姫姉ちゃん?」
「三蔵郎様!」
桜花姫は力一杯三蔵郎に密着する。
「ぐっ!桜花姫様!?突然如何されたのですか!?」
突然の出来事に三蔵郎は困惑したのである。
「桜花姫姉ちゃん!私にも♪」
小猫姫は桜花姫の胸元に力一杯密着する。
「小猫姫…妹分のあんたでもおっぱいに密着されちゃったら…私…」
桜花姫は赤面したのである。
「最上級妖女でも人間の混血である桜花姫ちゃんが…造物主の霊魂巨神木を仕留めるなんてね…」
桜花姫は一瞬困惑するものの…。恐る恐る返答する。
「仕留めたわよ…」
(桜花姫ちゃん…)
蛇骨鬼は桜花姫の様子から察知する。桜花姫は恐る恐る蛇骨鬼に問い掛けたのである。
「如何して蛇骨鬼婆ちゃんが小面蜘蛛の破片を?」
「西方国の廃村で確保したのさ♪本来なら傷薬の原料品として役立てたかったけどね…」
「傷薬って…」
桜花姫は苦笑いする。
「私が神通力を扱えたのは小面蜘蛛の肉片を捕食したからなのよね♪小面蜘蛛の肉片を吟味しなかったら今頃私達は霊魂巨神木の悪霊に敗北したでしょうね…」
「こんな老婆の私でも桜花姫ちゃんに役立てたみたいだね♪」
蛇骨鬼は微笑む。すると小猫姫も桜花姫に密着した状態で…。
「私だって桜花姫姉ちゃんに協力したよ!私も役立てたでしょう!?桜花姫姉ちゃん!?」
「勿論小猫姫もね♪」
桜花姫は瞑目するなり恐る恐る小猫姫に接吻する。
「桜花姫様!?」
「桜花姫ちゃん!?」
三蔵郎と蛇骨鬼は驚愕したのである。桜花姫に接吻された小猫姫は無言で赤面するなり…。
「えっ!?」
(桜花姫姉ちゃん…)
彼女の身体髪膚が膠着化したのである。すると三蔵郎が恐る恐る…。
「談笑中に大変失礼なのですが…」
「何よ…三蔵郎様?」
「先日なのですが…私の隣人から良質の白米たっぷりの米俵と猪肉を提供されましてね♪是非とも今晩は私の寺院で食事しませんか?」
蛇骨鬼と小猫姫が反応する。
「食事だって♪私達も大丈夫かい♪」
「猪肉♪私も食事したいよ♪」
「勿論ですとも♪是非とも蛇骨鬼様も小猫姫様も一緒に食事しましょう!」
蛇骨鬼と小猫姫は大喜びしたのである。
「勿論…桜花姫様も一緒に食事しましょう♪」
「私も食事させてね♪」
桜花姫は一息するなり恐る恐る三蔵郎に近寄る。
「桜花姫様?如何されましたか?」
すると三蔵郎の耳元で…。
「私はね…人間では誰よりも三蔵郎様が大好きなの♪」
(桜花姫様…)
三蔵郎は一瞬驚愕するものの笑顔で返答する。
「私にとって桜花姫様は愛娘同然ですからね♪」
「精一杯長生きしてよね…三蔵郎様♪」
「勿論ですとも!桜花姫様も精一杯長生きするのですよ…」
桜花姫と三蔵郎は握手したのである。
(私は長生きするからね…)
桜花姫は精一杯長生きしなければと決心する。
メンテ
桜花姫 ( No.13 )
日時: 2021/08/14 22:07
名前: 月影桜花姫

最終話

匪賊征伐

霊魂巨神木と無数の亡者達による天災地変から三週間後の早朝である。悪霊事件が解決してより太平神国に安寧秩序が戻ったものの…。南方国の荒神山は極悪非道の匪賊達により牛耳られたのである。近頃匪賊達による悪巧みの噂話が国全体に出回る。噂話が気になった桜花姫は即座に南方国の荒神山へと潜入したのである。
(荒神山では極悪非道の匪賊達が潜伏中みたいね…)
先日より桜花姫が荒神山に出没した悪霊の大群を仕留めて以降荒神山は元通りの観光地に戻ったものの…。近日では十数人の匪賊達により荒神山は完全占拠されたのである。桜花姫は南方国の荒神山に到達するなり…。
「何かしら?」
周辺の自然林より無数の人間達の殺気を感じる。
「人間達の殺気を感じるわ…」
登山中に一瞬身震いするものの…。
「手出しするなら相手が人間でも私は手加減しないわよ!」
桜花姫は警戒した様子で荒神山の天辺へと突入したのである。
「天道眼…」
桜花姫は瞳術の天道眼を発動…。半透明の血紅色だった両目の瞳孔が瑠璃色の碧眼へと発光する。
「天道眼を発動するのは久方振りね…」
霊魂巨神木に憑霊した無数の亡者達よる悪霊事件が解決してからは毎日が平穏の日常であり摩訶不思議の超常現象も悪霊も出現しなかったのである。平穏の日常は桜花姫にとって極度の憂鬱であったものの…。
「退屈中だったし…私にとって今回の大騒ぎは絶好機なのよね♪」
彼女にとって匪賊達の征伐は久方振りの道楽であり内心大喜びしたのである。すると突然…。周辺の自然林より人間達の殺気を感じる。
「人間達の殺気だわ…」
突如として周辺より無数の火縄銃の弾丸が乱射される。
(敵襲かしら!?)
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。火縄銃の弾丸を無力化したのである。近辺の地面には無数の弾丸が散乱する。
「陣地の見張り役は数人かしら?」
自然林から桜花姫を狙撃した見張り役の匪賊達は弾丸を無力化した彼女に戦慄したのである。
「畜生が…弾丸を無力化するなんて…」
「ひょっとして妖術で弾丸を無力化しやがったのか!?」
「如何やら侵入者は妖女みたいだな…」
匪賊達は恐る恐る後退りする。
「即刻本拠地に戻ろう…火縄銃では妖女は仕留められまい…」
天辺の本拠地に戻ろうかと思いきや…。
「ぎゃっ!」
突如として小柄の見張り役の頭部が肥大化したのである。周囲の匪賊達は肥大化した頭部を直視するなり戦慄する。
「頭部が…」
数秒後…。肥大化した頭部が破裂したのである。
「ひっ!」
「頭部が破裂しやがった!」
地面には無数の血肉やら脳味噌が散乱する。
「如何してこんな…」
「妖術で破裂させたのか!?」
戦慄した見張り役達は一目散に逃走したのである。数秒後…。桜花姫が自然林へと潜入する。
「如何やら見張り役は逃走しちゃったみたいね…えっ?」
地面に散乱した血肉やら脳味噌を直視するなり…。
(気味悪いわね…)
「桜餅に変化させちゃおうかしら♪」
桜花姫は変化の妖術によって散乱した見張り役の血肉を大好きな桜餅に変化させたのである。
「消耗しちゃった妖力を回復させなくちゃね♪」
散乱した桜餅を頬張るなり消耗した妖力を回復させる。
「妖力も万全だし♪本拠地に潜伏中の匪賊達を蹴散らせないと…」
桜花姫は荒神山天辺の本拠地へと進行したのである。すると背後より…。
「雑魚の分際で鬱陶しいわね…」
異国の洋弓銃を装備した匪賊が出現する。
「侵入者は毒死しやがれ!」
洋弓銃から猛毒の毒矢を発射するなり…。桜花姫に射撃したのである。
(毒矢かしら?)
即座に妖力の防壁を発動…。毒矢を無力化する。
「雨蛙に変化しなさい♪」
すると匪賊は変化の妖術によって雨蛙に変化したのである。
「私は常日頃から大忙しなのよ♪」
獣道を通行中…。獣道の道端で一休みしたのである。
「私だけで匪賊達を全滅させるのは片手間だけれども…」
一息するなり…。
「禁断の妖術…発動しちゃおうかしら♪」
神通力による禁断の妖術を発動したくなる。地面の石ころを直視する。
「口寄せの妖術…発動!」
すると数秒後…。地面の石ころが蛍光体に変化したのである。蛍光体の石ころが等身大の女体を形作るなり…。白装束の女性が地面に横たわったのである。白装束の女性が恐る恐る目覚める。
「えっ?私は…」
白装束の女性は寝惚けた様子であったものの…。
「えっ?誰かしら…」
女性は桜花姫と目線が合致する。
「ひっ!あんたは!?」
白装束の女性が桜花姫に気付いたかと思いきや…。桜花姫を直視すると彼女は極度に戦慄する。
「戦慄しなくても大丈夫よ♪私よ…桜花姫よ♪」
「あんたは…月影桜花姫!?」
「久方振りね…氷麗姫♪元気そうで安心したわ♪」
口寄せの妖術によって俗界に口寄せされたのは数週間前の戦闘で桜花姫の変化の妖術により食い殺された粉雪妖女の氷麗姫だったのである。
「如何してあんたが!?私は桜花姫に捕食されて…食い殺されたのよ…」
「口寄せの妖術であんたを俗界に再臨させたのよ♪」
口寄せの妖術とは伝説の瞳術である天道眼と造物主の神通力を保有する妖女のみが使用出来る前代未聞の禁断の妖術…。所謂時空間妖術の一種であり黄泉の国の死没者でさえも元通りに復活させられる。
「捕食された私を復活させるなんて…あんたは本物の女神様だね…」
氷麗姫は苦笑いしたのである。
「私が女神様なんて…氷麗姫は大袈裟ね♪」
氷麗姫の女神様発言に桜花姫は内心大喜びする。
(黄泉の国から死没者を簡単に復活させちゃうなんて…桜花姫は末恐ろしくなるわね…)
黄泉の国の死没者でさえも元通りに復活させた桜花姫を氷麗姫は戦慄したのである。
「如何してあんたみたいな小娘がこんなにも夢物語みたいな妖術が扱えるのよ?口寄せの妖術って禁断の妖術だったわよね?」
氷麗姫の質問に桜花姫は経緯を洗い浚い告白する。
「あんたが森羅万象の造物主である霊魂巨神木を仕留めちゃったの!?霊魂巨神木って世界樹だったわよね?」
桜花姫は笑顔で返答したのである。
「無論ね♪霊魂巨神木は仕留められたけれど私一人では断然勝利出来なかったわよ…妹分の小猫姫と一緒に共闘したのだけれどね♪」
「仲間と共闘したとしても結果的にあんたみたいな小娘が森羅万象の造物主に勝利しちゃったみたいだからね…私みたいな凡庸の妖女では到達したくても到達出来ない領域だわ…」
氷麗姫にとって今現在の桜花姫は異次元の存在であり自身が低次元の微生物であると感じる。すると桜花姫は一息するなり…。
「口寄せの妖術は莫大の妖力を消耗しちゃうわね♪普通の妖女なら過労死するかも知れないわ…」
口寄せの妖術は通常の妖術とは桁違いの妖力が必要不可欠であり唯一瞳術の天道眼と造物主の神通力を扱える妖女のみが使用出来る。大量の妖力を所持した妖女を復活させるのであれば莫大なる妖力を消耗…。場合によっては術者の過労死も否定出来ない。桜花姫は口寄せの妖術を駆使した影響により大量の妖力を消耗する。
「普通の人間とか悪霊なら極小の妖力でも復活出来るけどね♪死滅した妖女を元通りに復活させるのは最上級妖女の私でも一苦労だわ…」
(人間と悪霊なら極小の妖力で復活出来るの!?)
桜花姫の発言に絶句する。
(ひょっとして桜花姫は天道の化身かしら?)
氷麗姫は桜花姫の正体が天道の化身なのではと連想したのである。すると桜花姫は氷麗姫に問い掛ける。
「如何して氷麗姫は西方国の廃村で村人達を氷結させちゃったのよ?」
氷麗姫は一瞬困惑するものの恐る恐る…。
「私の宿六が…不倫したからよ…」
「宿六の不倫ですって?」
「宿六の不倫に苛立って無関係の村人達を氷結させたの…」
「あんたは人騒がせな人妻ね…」
(完全に八つ当たりだわ…)
桜花姫は呆れ果てる。
「金輪際夫婦間の八つ当たりで無関係の人間には手出ししないのよ…」
桜花姫の警告に氷麗姫は恐る恐る承諾したのである。
「勿論よ…」
「苛立って無関係の誰かに手出しすれば今度こそ私が征伐するからね♪」
桜花姫は笑顔で断言する。不吉の笑顔で微笑む桜花姫に戦慄した氷麗姫であるが内心気恥ずかしくなったのか沈黙したのである。
「即刻本拠地に潜入しましょう♪」
「本拠地ですって?」
「荒神山を牛耳る匪賊達を徹底的に征伐するのよ♪勿論あんたも私に協力するわよね?」
氷麗姫は笑顔の桜花姫に戦慄する。
「勿論…私も協力するわよ…」
(折角元通りに復活出来たのに…桜花姫に協力しなかったら今回も食い殺されちゃうかも知れないからね…)
氷麗姫は折角第二の人生を満喫出来るのに殺されては元も子もないと感じる。氷麗姫は笑顔の桜花姫に身震いしたのである。
「勿論♪今回私が傍若無人のあんたを復活させたのは私自身の気紛れだからね♪」
桜花姫の傍若無人の一言に一瞬腹立たしくなる。
(傍若無人なのはあんただって一緒でしょうが!桜花姫!)
苛立った氷麗姫であるが堪忍する。
「先程の口寄せの妖術で私は空腹だし敵対視するのであれば即刻あんたを桜餅に変化させて食い殺しちゃうかも知れないわよ♪」
笑顔で発言する桜花姫に苛立つものの…。不本意であるが氷麗姫は桜花姫に服従したのである。
「別に敵対視しないわよ…裏切れば食い殺されるのは明白だし…」
「交渉成立ね♪」
桜花姫と氷麗姫は一致団結…。匪賊達の本拠地へと移動したのである。数分後…。彼女達は荒神山の天辺へと到達する。
「到達したわね♪」
「荒神山の天辺だわ…」
天辺の中心部には楼閣らしき家屋敷が確認出来る。
「家屋敷だわ…奴等の本拠地っぽいわね…」
「表門の門番は二人ね…」
家屋敷の表門には二人組の門番が見張り役として表門を警護する。
「門番を突破しちゃえば楽勝ね♪」
「如何するのよ?桜花姫?」
「勿論正面突破で門番達を仕留めるわよ♪」
「あんたらしいわね♪桜花姫♪」
彼女達は家屋敷の表門へと近寄る。すると桜花姫は笑顔で挨拶する。
「御免あそばせ♪」
「なっ!?貴様達は一体何者であるか!?」
表門の門番達は警戒するなり即座に抜刀したのである。
「花魁かと思いきや…貴様は妖女であるな!?」
「先程の妖女の噂話とやらは事実であったか!」
桜花姫は笑顔で発言する。
「あんた達…私に殺されたくなければ即刻表門を開放しなさい♪」
「何を!小娘の分際で!」
「斬首されたいか!?小娘!?」
桜花姫の発言に苛立った門番達は桜花姫に殺到したのである。
「地上界の女神様のである私に小娘なんて…あんた達は余程の命知らずなのね♪」
即座に念力の妖術を発動…。門番達の肉体を破裂させる。
「ぐっ!」
「ぎゃっ!」
表門には彼等の血肉やら肉片が散乱する。
「桜花姫…あんたは相手が人間でも手加減しないのね…」
人間相手に手加減しない桜花姫に氷麗姫は気味悪がる。
「手加減するも何も…敵対者が人間だったとしても確実に仕留めるのが私だからね♪無論無抵抗の人間なら相手が匪賊だったとしても手出ししないから安心しなさい♪」
気味悪がる氷麗姫であるが…。桜花姫は笑顔で反論する。
「あんただって数週間前は八つ当たりで村人達を殺戮したでしょう♪私は八つ当たりでは相手が誰でも人間は殺さないからね♪」
桜花姫の反論に氷麗姫は沈黙したのである。
「一休みしましょう♪私は空腹なので♪」
桜花姫は変化の妖術を発動するなり…。散乱した門番達の血肉を無数の桜餅に変化させたのである。
「えっ!?人間の血肉が桜餅に!?」
(半年前は私自身も桜花姫の変化の妖術で桜餅に変化させられて食い殺されたのよね…)
氷麗姫は数週間前の出来事を想起するなり身震いする。
「消耗した妖力を回復させないと♪」
桜花姫は極度の空腹であり散乱する桜餅を無我夢中に頬張る。
「桜餅でも本来は人間の血肉なのよ…笑顔で頬張れるなんて…」
桜花姫の悪食に氷麗姫は気味悪くなる。
「人間の血肉でも妖術で変化させれば気にならないから大丈夫よ♪折角だから氷麗姫も一緒に味見しない?」
「私は味見したくないわ!」
(人間の血肉なんて桜餅でも食べたくないわね…)
氷麗姫は断然拒否する。数分後…。
「美味だわ♪」
桜花姫は表門に散乱した無数の桜餅を平らげたのである。
「数分間で無数の桜餅を平らげるなんて…」
数分間で無数の桜餅を桜花姫に氷麗姫は苦笑いする。
「妖力も回復出来たし♪」
「匪賊達を蹴散らせるのよね?」
「今回は普通に蹴散らせるのは面白くないから…」
「如何するのよ?」
桜花姫は地面の石ころを凝視するなり…。
(口寄せの妖術…発動!)
桜花姫は口寄せの妖術を再発動する。口寄せの妖術を発動すると地面の石ころが蛍光体へと変化したかと思いきや…。一瞬で人間の姿形を形成したのである。数秒後…。先程念力の妖術で仕留めた門番の一人を元通りの姿形に復活させたのである。
「えっ!?先程仕留めた人間の門番だわ!ひょっとして彼も口寄せの妖術で復活させたの!?」
問い掛ける氷麗姫に桜花姫は笑顔で即答する。
「勿論よ♪彼も私が口寄せの妖術で復活させたのよ♪口寄せの妖術は普通の人間は当然♪普通の悪霊程度なら微量の妖力で復活させられるから非常に便利でしょう♪」
口寄せの妖術は同種の妖女を復活させた場合妖力の消耗は通常の妖術よりも桁外れであるが人間は勿論…。通常の悪霊を復活させるには微量の妖力のみで復活させられる。
(こんな荒唐無稽の小娘が夢物語みたいな非人道的妖術を自由自在に扱えるなんて…)
黄泉の国からの死没者さえ元通りに復活させる口寄せの妖術に氷麗姫は再度末恐ろしくなる。
「えっ?如何しちゃったのかしら?門番は喋らないし無反応だわ…」
元通りに復活させた門番であるが…。沈黙した様子であり何一つとして身動きしない。
「身動きしないわよ…無表情の雛人形みたいね…」
「勿論♪身動き出来ないし彼自身は単なる傀儡人形だからね…」
本来口寄せの妖術で復活させた対象者は妖術を発動した使用者の傀儡人形として扱われる。無論対象者の自我は妖術の使用者に掌握…。妖術の使用者が掌握を軽減化させなければ復活した対象者は単なる手駒であり姿形が生身の傀儡人形同然である。
「あんたが意思表示を表現出来るのは私が掌握を軽減化しただけだからね♪本来なら口寄せの妖術で復活させた氷麗姫だって私の傀儡人形なのよ♪」
復活させた門番は微量の妖力で形作られた不良品であり姿形は元通りでも自我は皆無であり彼自身は自己の意思表示は出来ない。すると桜花姫は復活した門番に問い掛けたのである。
「あんた達の家屋敷では何人の匪賊達が潜伏中なのかしら?」
桜花姫の質問に門番は的確に即答する。
「本拠地には守備隊が十三人…地下壕の牢獄には六人の見張り役が四人の村娘達を監禁中である…」
「村娘ですって?」
村娘の一言が気になったのか桜花姫は門番に再質問したのである。
「村娘って何よ?」
「南方国の各村落から四人の村娘達を連行した…」
「如何してあんた達は村娘を四人も連行したのよ?」
門番は一瞬沈黙するなり…。
「連行した村娘達は異国に身売りされるからな…」
「身売りですって…」
門番の発言に彼女達は一瞬絶句する。
「ひ弱の女性を異国なんかに身売りさせるなんて極悪非道だわ…」
「今時身売りなんて完全に時代錯誤ね…」
桜花姫は勿論…。氷麗姫さえも腹立たしくなる。
「桜花姫…即刻彼女達を救出しましょう!」
「勿論よ!今回ばかりは地上界の女神様である私でも腹立たしくなったわ!」
(無慈悲のあんたが地上界の女神様って自称しちゃうなんて…)
氷麗姫は自分自身を地上界の女神様と自称する桜花姫に一瞬苦笑いしたのである。すると桜花姫は門番に接触するなり…。
「あんたは即刻本拠地に潜伏しなさい♪無事に潜伏出来たら匪賊の親玉諸共本拠地で自爆するのよ♪」
「えっ!?折角復活させたのに彼を自爆させるの!?」
桜花姫の自爆発言に氷麗姫は驚愕したのである。
「所詮門番は自爆要員だからね♪彼自身の自我は私が掌握したから意思表示も反論も出来ないわよ…」
桜花姫は再度門番に命令する。
「即刻あんたは本拠地に戻って親玉と部下の奴等諸共爆殺しなさい…勿論親玉には二人の妖女を仕留めたってちゃんと報告するのよ♪」
「承知した…」
桜花姫の命令を承諾した門番は表門から家屋敷へと入室…。家屋敷最上階の本拠地に戻ったのである。
「桜花姫…あんたも人一倍鬼畜ね…」
氷麗姫の発言に桜花姫は笑顔で即答する。
「無論私は敵対者には手加減しないからね♪手段が残虐非道でも敵対者は確実に仕留めるのが私だから…」
「あんたらしいわね♪桜花姫…」
氷麗姫は一瞬身震いするが笑顔で返答したのである。
「即刻監禁された女性達を救出しましょう♪」
彼女達は表門から恐る恐る家屋敷へと潜入する。
「屋敷内では人間達の気配は感じられないわね…」
周辺からは人間の気配も殺気も感じられない。
「門番の情報では連行された四人の村娘達の居場所は地下豪だったわね…」
すると通路の右側片隅に地下室への直階段を確認する。
「直階段だわ♪地下豪に潜入出来そうよ♪」
すると突然…。
「えっ!?」
(殺気かしら!?)
背後より殺気を感じる。
「桜花姫!敵襲よ!」
彼女達の背後には火縄銃を武装した匪賊が出現…。
「妖女!死滅しやがれ!」
桜花姫は背中を狙撃される。
「ぎゃっ!」
火縄銃で狙撃された桜花姫は多量の出血により横たわったのである。
「桜花姫!?大丈夫!?」
「氷麗姫…私…」
突発的出来事により氷麗姫は狼狽える。
「油断大敵ね…迂闊だったわ…ぐっ!」
桜花姫は吐血したのである。
「桜花姫!?」
(私は如何すれば…)
すると匪賊が狼狽える氷麗姫に近寄る。
「白装束の姉ちゃんよ♪即刻あんたも打っ殺すから覚悟しな♪」
氷麗姫は無表情で匪賊を睥睨するなり…。
「死滅するのはあんたよ…」
「はっ?」
氷麗姫は妖力により匪賊の肉体を一瞬で氷結させる。
「死滅しなさい!」
「なっ!?」
数秒後…。氷結された匪賊の肉体は一瞬で崩れ落ちる。
「桜花姫…大丈夫?」
氷麗姫は恐る恐る横たわった桜花姫に接触すると戦慄する。
「ひゃっ!」
(低体温だわ…)
桜花姫の肉体は非常に低体温であり氷麗姫は絶望したのである。
(最上級妖女の桜花姫が殺されちゃうなんて…)
絶望した直後…。突如として横たわった桜花姫の肉体から白煙が発生すると一瞬で消滅したのである。
「桜花姫!?」
突然消滅した桜花姫に氷麗姫は驚愕する。
「えっ?桜花姫の肉体は?」
すると背後より何者かが氷麗姫の背中に接触したのである。
「きゃっ!」
背中を接触された氷麗姫は驚愕する。
「氷麗姫♪」
「桜花姫!吃驚するじゃない!」
吃驚した氷麗姫は桜花姫に怒号したのである。
「御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「分身体だから大丈夫よ♪」
「分身体だったのね…」
先程狙撃された肉体が妖力によって形作られた桜花姫の分身体であり氷麗姫は一安心したのである。
「冷や冷やさせないでよ…一瞬あんたが本当に殺されちゃったのかと…」
「私に接吻したあんたが私を心配するなんてね♪感謝するわね♪」
すると氷麗姫は赤面した表情で否定する。
「勘違いしないで!私は別に…誰があんたの心配なんか…」
赤面した氷麗姫であるが…。彼女は無理矢理に表情を強張らせる。
(氷麗姫…表情を強張らせなくても…)
桜花姫は無理矢理に表情を強張らせる氷麗姫に苦笑いする。
「悪者はあんたが仕留めたみたいだから…即刻地下壕に潜入するわよ♪」
同時刻…。桜花姫の口寄せの妖術によって復活させられた門番は最上階の本拠地へと到達したのである。最上階には十三人の匪賊達と中心部には親玉らしき巨漢の無頼漢が集結する。
「ん?貴様は門番だな…何事かな?」
「二人組の妖女が出現してから随分大騒ぎみたいだが…通路は大丈夫なのかよ?」
門番は無表情で巨漢の無頼漢に報告したのである。
「親玉…」
「ん?」
門番は一息するなり…。
「噂話の二人組の妖女なら先程…俺が確実に仕留めたから安心しな…」
「妖女を確実に仕留めたって?」
匪賊達は門番が桜花姫と氷麗姫を本当に仕留めたのか疑問視する。
「貴様が二人組の妖女とやらを仕留めたのは事実であるか?」
「本当に妖女を仕留めたのかよ?」
「勿論…」
すると数秒後…。門番の体内から超高温の熱気が凝縮される。
「なっ!?此奴の体内から熱気だぞ…」
「一体何が!?」
直後…。門番の肉体が爆散したのである。
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
門番の自爆によって周辺の匪賊達も爆殺される。家屋敷全域に爆発音が響き渡ったのである。同時刻…。地下豪では本拠地から響き渡った爆発音により六人の見張り役達が狼狽える。
「爆発音だと!?」
「最上階からだったよな…」
「如何して最上階から爆発音が…一体何が発生した!?」
連行された四人の村娘達も先程の爆発音に戦慄したのである。
「一体何かしら?」
「火薬の爆発音みたいね…」
「私達…こんな牢獄で殺されちゃうのかな…」
「私…こんな牢獄で死にたくないよ…」
彼女達は極度の戦慄により涙腺から涙が零れ落ちる。すると地下豪の鉄扉から二人組の妖女が潜入する。
「御免あそばせ♪」
笑顔で挨拶する桜花姫に見張り役達は戦慄したのである。
「うわっ!貴様達は!?」
「誰かと思いきや…貴様達は噂話の二人組の妖女だな…」
「如何して妖女が地下豪に潜入出来た!?」
「門番の奴等…警備をすっぽかしやがったのかよ!」
「結局俺達が尻拭いとは…」
桜花姫は笑顔で断言する。
「如何やらあんた達の門番が私達に寝返っちゃったみたいよ♪今頃仲間内で内輪揉めでしょうね♪」
「内輪揉めだって!?」
「門番が裏切りやがったのか!?」
問い掛けられた桜花姫であるが彼女は笑顔で…。
「さあね♪」
見張り役達は桜花姫の態度に苛立ったのである。
「此奴…」
「貴様出鱈目を…打っ殺されたいか!?」
桜花姫の返答に腹立たしくなった巨漢の見張り役が護身用の連発銃で桜花姫を狙撃…。
「桜花姫!?」
氷麗姫は畏怖したのである。狙撃された桜花姫であるものの…。危機一髪妖力の防壁を発動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
妖力の防壁により連発銃の弾丸を無力化…。氷麗姫は一安心する。
「あんたは本当に人騒がせね…」
「心配しなくても大丈夫よ♪氷麗姫♪」
見張り役達は恐る恐る後退りしたのである。
「畜生が…妖女の小娘は妖術で弾丸を無力化しやがったか…」
「弾丸では私は殺せないわよ♪私に手出ししたあんたは即刻招き猫に変化しなさいの♪」
桜花姫は変化の妖術を発動…。巨漢の見張り役を精巧に形作られた招き猫に変化させる。
「うわっ!人間が招き猫に!?」
見張り役達は勿論…。牢獄の村娘達も桜花姫の変化の妖術によって招き猫に変化させられた見張り役に驚愕したのである。
「人間が招き猫に変化するなんて…」
「妖術かしら?」
四人の村娘達は恐る恐る桜花姫に注目するなり…。
「えっ?ひょっとして彼女は…」
「西方国の月影桜花姫様かしら?」
「月影桜花姫だって!?冗談だろ…」
小柄の見張り役は身震いするなり戦慄したのである。
「狼狽えるな!西方国の月影桜花姫とて所詮は小娘!打っ殺しちまえ!」
見張り役達は連発銃で桜花姫に総攻撃するものの…。妖力の防壁によって連発銃の弾丸を無力化される。
「鬱陶しい奴等だわ…」
(飴玉に変化しなさい♪)
連発銃で狙撃した見張り役達を大好きな飴玉に変化させたのである。
「ひっ!」
唯一無抵抗だった小柄の匪賊が極度の恐怖心により落涙する。
「無事なのはあんただけね♪あんたは如何するかしら♪」
すると小柄の匪賊は恐る恐る…。
「俺は…降参するよ…」
匪賊は極度の戦慄により身震いしたのである。
「金輪際悪さしないから…今回は見逃して…」
身震いした様子で一歩ずつ後退りする。
「別に…私は誰よりも温厚篤実の女神様だからね♪匪賊でも無抵抗の人間には手出ししないから安心しなさい♪」
即座に匪賊の装備品を飴玉に変化させる。
「狙撃したくても出来なくなったわね♪」
桜花姫は牢獄を直視するなり…。
「即刻彼女達を救出しないと♪」
すると氷麗姫が牢獄の鉄格子に接触する。
「えっ?氷麗姫?如何するのよ?」
「桜花姫…私にも役立たせてよ…」
(彼女なりの罪滅ぼしかしら♪如何やら彼女も役立ちたいみたいね♪)
「承知したわ♪氷麗姫…思う存分役立ちなさい♪」
桜花姫は笑顔で承諾したのである。氷麗姫は四人の村娘達に警告する。
「あんた達…村里に戻りたかったら鉄格子には接触しないのよ…」
「承知しました…」
彼女達は恐る恐る後退りしたのである。すると氷麗姫は鉄格子に接触するなり…。一瞬で氷結させたのである。
「鉄格子が…」
「氷結するなんて…」
四人の村娘達は驚愕する。すると数秒後…。妖術で氷結させた鉄格子が一瞬で崩れ落ちる。
「鉄格子が崩れ落ちたわ…」
「私達…村里に戻れるのね♪」
解放された四人の村娘達は大喜びしたのである。
「桜花姫様と…誰でしたっけ?」
「私は氷麗姫よ…」
「氷麗姫様♪」
「大変感謝します♪桜花姫様と氷麗姫様が参上されなかったら私達は今頃異国に身売りされたかも知れません…」
桜花姫は笑顔で断言する。
「別に…あんた達が無事なのが何よりよ♪匪賊達を征伐するのも案外面白かったし♪」
「えっ?面白かったのかな?」
氷麗姫は笑顔で発言する桜花姫に苦笑いしたのである。
「あんた達…即刻地下壕から脱出しましょう♪」
すると氷麗姫が警戒した表情で…。
「油断大敵だよ…桜花姫…匪賊の残党が屋敷内に潜伏中かも知れないし…」
桜花姫は笑顔で即答する。
「心配しなくても大丈夫よ♪氷麗姫♪匪賊の残党が襲撃したとしても私が即刻仕留めちゃうから♪」
彼女達は警戒した様子で恐る恐る地下壕から脱出する。無事に匪賊達の家屋敷から脱出したのである。
「私達…戻れたのね…」
「無事に戻れるなんて…」
四人の村娘達は涙腺から涙が零れ落ちる。
「桜花姫様…氷麗姫様…貴女達には大変感謝します…」
「私達…貴女達に何も謝礼が出来なくて御免なさいね…」
彼女達は桜花姫と氷麗姫に謝罪する。
「別に謝礼なんて…」
謝罪された桜花姫は困惑するものの…。
「別に気にしないの♪私にとって匪賊征伐は道楽だから♪所詮夜遊びと一緒だからね♪あんた達は気にしなくても大丈夫なのよ♪」
事実桜花姫にとって悪霊征伐も匪賊征伐も娯楽であり報酬は不要である。匪賊征伐を夜遊びと断言する桜花姫に氷麗姫は苦笑いする。
(匪賊達を征伐するのが道楽って…桜花姫は人一倍異端者だわ…)
桜花姫は異端者であると感じる。
「あんた達…無事に戻りなさいね♪」
「承知しました♪」
「達者でね♪」
「桜花姫様と氷麗姫様も♪」
四人の村娘達は恐る恐る南方国の村里へと戻ったのである。桜花姫は背後の氷麗姫を直視するなり…。
「氷麗姫…あんたは今後如何するのよ?」
「桜花姫…私は…」
氷麗姫は一瞬沈黙するも笑顔で返答する。
「今回あんたと一緒に行動してから…私もあんたみたいに悪霊とか匪賊を征伐したくなったわ♪」
笑顔で発言した氷麗姫に桜花姫は微笑む。
「氷麗姫♪あんたの妖力でも匪賊程度なら確実に仕留められるでしょうね♪精一杯頑張りなさい♪」
「私も…八つ当たりで大勢の人間達を殺しちゃったからね…精一杯贖罪しないと!」
「反省したのね♪氷麗姫…」
改心した氷麗姫に感心する。
「桜花姫♪今回はあんたの気紛れかも知れないけれどね…感謝するわね♪」
「氷麗姫…」
(本来なら口寄せの妖術は非人道的妖術かも知れないけれど…結果的に悪くなかったのかも知れないわね♪)
数週間前は敵対者だった氷麗姫の変貌に一瞬驚愕するものの…。口寄せの妖術で復活させられたのは怪我の功名であると氷麗姫は感じる。
「私は第二の人生…精一杯長生きするからね…桜花姫♪」
断言する氷麗姫に桜花姫も笑顔で返答する。
「私もね♪」
数分後…。
「私は北方国に帰郷するわね…」
「達者でね♪」
彼女達は解散したのである。帰宅中…。
(久し振りに東方国の三蔵郎様に挨拶しましょうかね♪)
桜花姫は久方振りに東方国の三蔵郎の寺院へと訪問する。二時間後…。桜花姫は東方国の寺院に到達したのである。寺院の玄関にて桜花姫は笑顔で…。
「三蔵郎様♪」
桜花姫の美声に反応したのか三蔵郎は超特急で玄関口へと移動する。
「誰かと思いきや…月影桜花姫様でしたか♪久方振りですな♪」
三蔵郎は桜花姫との再会に大喜びしたのである。
「三蔵郎様♪元気そうで安心したわ♪」
「桜花姫様こそ元気そうで何よりですよ♪折角ですし…茶話会でも如何でしょうか♪」
三蔵郎は桜花姫を客室に案内するなり麦茶と牡丹餅を用意したのである。
「牡丹餅だわ♪美味そうね♪」
桜花姫は牡丹餅に大喜びする。
「桜花姫様が大喜びの様子なので一安心ですよ♪本来であれば桜花姫様の大好きな桜餅を用意したかったのですが…生憎桜餅は和菓子屋でも完売しちゃったみたいですね…」
恐る恐る謝罪する三蔵郎に桜花姫は笑顔で…。
「気にしないで三蔵郎様♪桜餅なら先程腹一杯平らげたから♪」
「頬張ったのですね…桜餅を頬張ったのであれば一安心です♪」
桜花姫は先程の出来事を三蔵郎に洗い浚い告白する。
「荒神山で匪賊達を征伐しに出掛けられたのですか!?連行された村里の女性達を無事に救出されたのですね…」
「面白かったわよ♪」
「ですが私も桜花姫様と一緒に行動したかったですよ…今回は非常に残念ですね…」
三蔵郎は非常に残念であると感じる。
「今回ばかりは敵対者が匪賊だったとしても相手は普通の人間だからね…正直聖職者の三蔵郎様は呼び辛かったのよ♪三蔵郎様は人一倍温柔敦厚で心配性だから悪霊は征伐出来ても人殺しなんて出来ないでしょう?」
桜花姫は笑顔で発言する。
「桜花姫様…」
(彼女は正真正銘…太平神国の女神様ですね♪)
桜花姫と三蔵郎は談笑し合ったのである。真夜中の出来事である。大騒ぎが鎮静化した真夜中の荒神山では蛇神の蛇骨鬼と山猫妖女の小猫姫が天辺へと到達する。
「なっ!?荒神山の天辺中心部にこんな家屋敷が築造されたなんて…」
「誰の家屋敷かな?」
すると家屋敷の表門に小柄の匪賊が横たわる。
「えっ?誰だろう?」
「ん?ひょっとして家屋敷の宿主かね?」
「大丈夫かな?」
蛇骨鬼は恐る恐る横たわる匪賊の若者に近寄る。匪賊の背中に接触するなり…。
「若者よ…大丈夫かね?」
接触しても匪賊は無反応である。
「如何やら気絶したみたいだね…」
「如何して表門で気絶しちゃったのかな?」
「私にも何が何やらさっぱりだね…」
すると数秒後…。気絶した匪賊が恐る恐る目覚める。
「ん?俺は…」
「目覚めたかね?若者よ…」
「大丈夫かな?」
匪賊は寝惚けた様子であったものの蛇骨鬼と小猫姫を直視した直後…。突如として身震いしたのである。
「ひっ!俺を食い殺さないで!」
彼女達を直視するなり非常に戦慄する。戦慄する匪賊に蛇骨鬼と小猫姫は驚愕したのである。
「如何しちゃったのかね?別に私達はあんたを食い殺したりしないよ…」
「心配しなくても私達は手出ししないから大丈夫だよ…」
蛇骨鬼は近寄るものの…。
「ひっ!鬼婆…俺に近寄るな!近寄らないで!」
匪賊の鬼婆発言に小猫姫は一瞬失笑する。
「蛇神の蛇骨鬼婆ちゃんに鬼婆だって♪蛇骨鬼婆ちゃん♪」
匪賊に鬼婆と発言された蛇骨鬼は身震いするなり…。力強く睥睨した表情で匪賊に怒号したのである。
「誰が鬼婆だって!あんたは私に食い殺されたいのかい!?」
「ひっ!失礼しました…女神様…」
「蛇骨鬼婆ちゃんが女神様って♪」
匪賊の女神様発言に小猫姫は大笑いする。
「金輪際悪さしないから俺を食い殺さないで…」
匪賊は恐る恐る後退りするなり…。落涙した様子で一目散に荒神山から逃走したのである。
「妖女は懲り懲り!」
全力疾走する匪賊に蛇骨鬼と小猫姫は非常に困惑する。
「一体何事だったのかね?」
「如何して逃走しちゃったのかな?」
「私が精霊だからかね?私にも何が何やら…」
「蛇骨鬼婆ちゃんに鬼婆とか女神様って失言しちゃったのは大笑いしちゃったよ♪」
揶揄する小猫姫に蛇骨鬼は赤面したのである。
「小猫姫…今回の荒神山での出来事は私とあんただけの秘密だからね!絶対に誰かに喋ったら承知しないよ!」
蛇骨鬼は小猫姫に断言するものの…。
「今回の出来事を桜花姫姉ちゃんに喋っちゃおうかな♪面白かったし♪」
小猫姫の返答に蛇骨鬼は怒号する。
「小猫姫!桜花姫ちゃんに喋ったら承知しないからね!勿論私とあんたの二人だけの秘密だよ!」
すると小猫姫の腹部から腹鳴が響き渡る。
「えっ…」
「小猫姫♪空腹感かね…」
小猫姫は腹鳴により赤面する。
「戻って夕食だね♪小猫姫♪」
「勿論だよ♪蛇骨鬼婆ちゃん♪戻ろう♪戻ろう♪」
蛇骨鬼と小猫姫は西方国へと戻ったのである。
完結
メンテ
桜花姫 ( No.14 )
日時: 2021/08/14 22:10
名前: 月影桜花姫

特別編

第一話

武陵桃源

戦乱時代の出来事である。天地歴二千八百五十年の中頃より太平神国は東西南北の四国に分裂…。各陣営の領主達が全身全霊で国全体の主導権の争奪戦に尽力する。頻発する戦乱の悪影響からか各村落では神出鬼没の悪霊が出没するとの超状現象も日に日に頻発したのである。戦乱によって死去した亡者達は勿論…。動植物の亡霊も多数出現する。戦乱時代末期の出来事である。天地歴三千九年十一月中頃…。最大勢力である東方国よりとある若武者の美青年と家来が武陵桃源の西方国へと移動したのである。西方国へと到達すると家来が真夜中の田畑を眺望する。
「西方国に到着しましたよ!正真正銘武陵桃源ですな♪」
美青年の若武者も西方国の広大無辺の茶畑を眺望したのである。
「西方国が武陵桃源なのは事実だったのか…こんなにも戦乱が頻発する時代で…西方国だけは本当に桃源郷だな…」
若武者の名前は【夜桜崇徳丸】…。東方国出身の最上級武士であり名門の夜桜一族の長男である。家来は恐る恐る崇徳丸に問い掛ける。
「ですが崇徳丸様?如何して崇徳丸様はこんなにも田舎村の西方国なんかに視察されたかったのですか?」
理由を問い掛けられた崇徳丸は一息するなり…。無表情で返答する。
「私は…武陵桃源の西方国で定住したかったからな…」
崇徳丸の返答に家来は驚愕したのである。
「崇徳丸様!?突発的に何を!?西方国に定住されるなんて…本気なのですか?」
驚愕する家来に崇徳丸は即答する。
「勿論…私は本気だよ…」
「崇徳丸様…突然如何されたのですか?ひょっとして再起不能の疫病にでも?」
「疫病なんて…貴様は大袈裟だな…」
「崇徳丸様は名門の夜桜一族の最上級武士なのですよ!最上級武士の崇徳丸様がこんなにも田舎村の西方国なんかに移住されるなんて♪」
夜桜一族は名門の武家一族であり崇徳丸は最上級武士としては勿論…。東方国の軍神として大勢の敵兵達を斬撃する。崇徳丸は家来の発言に苛立ったのか表情が険悪化するなり家来を睥睨したのである。
「結局は貴様も…」
「えっ?」
崇徳丸の目力に家来は圧倒される。
「崇徳丸様…如何されたのですか?」
崇徳丸は一息するなり…。
「本日より私は東方国…武家一族の夜桜一族とは絶縁する…金輪際私は東方国へは戻らないからな…」
「絶縁ですと!?崇徳丸様は突然何を…」
家来は崇徳丸の突発的発言に混乱したのである。警戒した様子で恐る恐る崇徳丸に問い掛ける。
「絶縁なんて…崇徳丸様は本気なのですか!?」
「私は本気だよ…」
崇徳丸は即答したのである。
「是非とも貴様には感謝しなければ…こんな私なんかと一緒に田舎村の西方国に随伴して…」
「崇徳丸様?」
崇徳丸は即座に護身用の刀剣を抜刀するなり家来を威嚇したのである。
「なっ!?崇徳丸様!?一体何を!?」
崇徳丸の表情から本気の殺意を感じる。
「命拾いしたければ…即刻私から逃走しろ…」
「ひっ!」
家来は戦慄するなり闇夜の自然林へと一目散に逃走する。
「邪魔者は逃走したな…」
崇徳丸は恐る恐る西方国へと潜入したのである。田舎村の西方国は人口増の東方国とは桁違いの少人数であり崇徳丸は内心一安心する。
(西方国は極楽浄土を想念させる場所だな…)
すると西方国の天霊山と命名される低山から露天風呂の薫風が西方国全体に浸透化したのである。
「温泉郷の薫風っぽいな…」
気になった崇徳丸は薫風を目印に天霊山へと疾走する。数分間で天霊山の天辺へと到達…。天霊山の天辺中心部には神秘性を感じさせる石造りの露天風呂が確認出来る。
「正真正銘温泉郷だったとは…」
恐る恐る露天風呂を凝視し続けるなり…。
「ん?」
露天風呂には一人の女性らしき小柄の人影が確認出来る。
(誰かと思いきや…小柄の女性っぽいな…)
露天風呂の湯気によって誰が入浴中なのかは不明瞭であるものの…。小柄の人影は人間の女性であると認識出来る。驚愕した崇徳丸は胸騒ぎを感じるなり…。即座に岩陰にて入浴中の女性の様子を眺望する。
(入浴中みたいだが…彼女は一体何者なのか?人間なのかな?)
「本物の天女みたいだ…」
女性は非常に神秘的雰囲気であり崇徳丸は人間の女性なのか疑問視したのである。黒毛の長髪…。両目の瞳孔は半透明の血紅色であり非常に異質的である。何よりも気になったのは彼女の巨乳のおっぱいであり普段は人一倍生真面目の崇徳丸も女性のおっぱいに見惚れる。
「なっ!?」
(私は一体全体何を…私にとって本来の天敵とは私自身の下心なのかも知れないな…)
崇徳丸は極度の忍耐力により自分自身の性欲を抑圧するものの…。女性の様子が気になるのか赤面した様子で恐る恐る覗き見したのである。
(私は名門の武家一族…夜桜一族の最上級武士なのだぞ!)
すると崇徳丸の背後より…。突如として何者かが崇徳丸の後頭部を棍棒で力一杯打擲したのである。
「ぎゃっ!」
強烈なる打撃力により崇徳丸は地面に横たわる。
「助平!変態男!」
力一杯崇徳丸の後頭部を打擲したのは茶髪の小柄の女性であり地面に横たわった崇徳丸を凝視…。強烈なる目力で彼を睥睨する。
「ぐっ!貴様…突然何しやがる…」
腹立たしくなった崇徳丸も茶髪の女性に睥睨し返したのである。
「あんたは敵国の刺客ね!?私の【桃子姫】姉ちゃんに手出しするなら私は手加減しないからね!」
崇徳丸は強気の彼女に圧倒される。
「なっ!?私は…別に…何も…」
すると入浴中だった桃子姫が全裸の状態で恐る恐る岩陰へと近寄る。
「如何しちゃったの…【胡桃姫】?一体何事かしら?」
「桃子姫姉ちゃん!敵国の刺客よ!彼が入浴中の桃子姫姉ちゃんを覗き見したのよ…」
「えっ?覗き見ですって?誰が覗き見したの?」
桃子姫は極度の鈍感なのか危機感が皆無だったのである。
(桃子姫姉ちゃん…本当に鈍感だわ…)
桃子姫の様子に胡桃姫は苦笑いする。沈黙した崇徳丸であるが即座に反論したのである。
「別に覗き見なんて…私は敵国の刺客ではなく東方国出身の夜桜崇徳丸ですよ!一兵卒の身分ですが守護するべき女性には手出ししませんから…」
「東方国ですって?」
崇徳丸は彼女達に東方国から西方国に来訪した経緯を一部始終告白する。
「戦乱に嫌悪感がね…」
「ですが祖国と一族を絶縁するなんて…」
「何よりも私にとって祖国と一族は呪縛でしたからね…正直解放されたかったのですよ…」
すると崇徳丸は笑顔で…。
「ですが西方国が武陵桃源なのは事実みたいですね♪俗界の天国ですな…」
崇徳丸は満足気に発言する。
「夜桜崇徳丸様だったかしら?胡桃姫が勘違いしちゃったみたいで大変失礼しました…」
桃子姫は恐る恐る崇徳丸に謝罪したのである。謝罪する桃子姫に崇徳丸は笑顔で返答する。
「桃子姫様ですかね♪気になさらないで…私なら大丈夫ですから♪」
すると胡桃姫が笑顔で…。
「崇徳丸様が助平で変態男なのは事実よね♪」
揶揄する胡桃姫に崇徳丸は苦笑いする。
「私は別に…何も…」
すると桃子姫は崇徳丸を揶揄する胡桃姫に怒号したのである。
「胡桃姫!崇徳丸様に失礼でしょう!崇徳丸様に謝罪しなさい!」
「御免あそばせ♪夜桜崇徳丸様♪」
胡桃姫は笑顔で謝罪する。
「胡桃姫様…私なら気にしませんから大丈夫ですよ♪」
「崇徳丸様…」
胡桃姫は崇徳丸を人一倍温厚篤実であると感じる。
「私達は失礼しますね…」
桃子姫と胡桃姫は崇徳丸に黙礼するなり恐る恐る村里の家屋敷へと戻ったのである。すると胡桃姫は下山中に恐る恐る…。
「桃子姫姉ちゃん?」
「何よ…胡桃姫?」
「桃子姫姉ちゃんが赤面しちゃうなんてね♪ひょっとして桃子姫姉ちゃんは崇徳丸様に見惚れちゃったのかしら♪」
胡桃姫は桃子姫を揶揄する。
「胡桃姫!私は別に…崇徳丸様に恋心なんて…」
桃子姫は反論するものの…。
「崇徳丸様が誰よりも紳士的なのは事実かしらね…」
「崇徳丸様は助平で変態男だけどね♪」
「胡桃姫…彼に失礼よ…」
「御免あそばせ♪桃子姫姉ちゃん♪」
胡桃姫は笑顔で謝罪する。すると周辺の暗闇の自然林から無数の気配を感じる。
「えっ!?何かしら?」
「気配だわ…」
数秒後…。暗闇の自然林から四人の無頼漢達が出現するなり下山中の桃子姫と胡桃姫を包囲したのである。
「あんた達は一体何者よ!?」
「ひょっとして彼等は匪賊かしら?」
「匪賊なんて失礼だな…俺達は南方軍の最精鋭の最上級武士だぞ♪」
「姉ちゃん達よ♪殺されたくなったから大人しく俺達に金品を手渡しな…」
匪賊達は即座に刀剣を抜刀する。
「今回の相手は非武装の姉ちゃん達だからな♪俺達でも楽勝で打っ殺せるぜ♪」
胡桃姫は匪賊達に睥睨したのである。
「何が最精鋭の最上級武士よ!守護するべき女性に手出しするなんてあんた達は本当に最上級武士なの!?」
相手は屈強の無頼漢達であるものの…。胡桃姫は強烈なる目力により彼等に威嚇したのである。
「姉ちゃんよ…あんたは随分強気だな♪」
「俺達は南方軍の最上級武士だからな♪南方国の女子達だったら守備するぜ♪所詮姉ちゃん達は敵国の人間だから対象外なのさ♪」
匪賊達は失笑する。すると桃子姫は恐る恐る…。
「胡桃姫…私達殺されちゃうよ…」
桃子姫は極度の恐怖心により涙腺から涙が零れ落ちる。
「桃子姫姉ちゃん…」
(畜生…如何すれば…)
胡桃姫と桃子姫は戦慄したのか恐る恐る後退りしたのである。
「一安心しな♪姉ちゃん達は即刻安楽死させるからよ♪」
直後…。
「ぐっ!」
何者かによって投擲された石ころにより小柄の匪賊を気絶させる。
「なっ!?」
「一体誰が!?」
彼等は驚愕する。すると匪賊達の背後より…。
「貴様は一体何者だ!?」
匪賊達の背後には若齢の美青年が出現する。
「本来なら守備するべきか弱き女性を相手に…経世済民の武士達が多人数で手出しするとは言語道断だな!か弱き女性に手出しする愚人達は私が即刻征伐する…」
美青年の出現に桃子姫と胡桃姫は一安心したのである。
「ひょっとして夜桜崇徳丸様!?」
「あんただったのね♪」
すると匪賊達が恐る恐る崇徳丸に問い掛ける。
「夜桜崇徳丸って…貴様は東方国の軍神…夜桜崇徳丸なのか!?」
匪賊達の問い掛けに崇徳丸は即答したのである。
「無論!私が東方国の若武者…夜桜崇徳丸だからな…」
「誰かと思いきや…貴様が名門の武家一族…夜桜一族の夜桜崇徳丸だったとは…」
すると巨漢の無頼漢が崇徳丸に睥睨するなり…。
「今回は俺達にとって好都合だ!俺達南方軍の戦友達は東方軍の荒武者達によって大勢惨殺されちまったからな…復讐するには絶好機!」
巨漢の匪賊が崇徳丸に殺到する。
「敗残兵の分際で…」
崇徳丸は無表情で即座に刀剣を抜刀するなり…。
「ぐっ!」
一瞬の身動きによって巨漢の匪賊を瞬殺したのである。巨漢の匪賊は多量の出血により地面に横たわる。崇徳丸の超人的瞬発力と剣術に周囲の匪賊達は勿論…。桃子姫と胡桃姫も愕然とする。
(崇徳丸様って誰よりも勇猛果敢で男前だわ♪)
桃子姫は崇徳丸の瞬発力と剣術を直視するなり…。崇徳丸に見惚れたのである。
(如何やら私は勘違いしたみたいね…崇徳丸様は単なる変態男ではなく正真正銘剣客だったのね…桃子姫姉ちゃんが崇徳丸様に見惚れちゃうのも納得出来るわ♪)
胡桃姫も崇徳丸に魅了される。
「私に殺されたくなければ即刻逃走するのだな…」
「ひっ!打っ殺されちまう!逃げろ!」
匪賊達は崇徳丸に戦慄したのか一目散に逃走する。
「大丈夫でしたか?桃子姫様?胡桃姫様?」
桃子姫は笑顔で即答したのである。
「私達なら大丈夫よ♪感謝します…崇徳丸様…」
「か弱き女性を守護するのは当然の行為です…桃子姫様と胡桃姫様が無事なのが何よりですよ♪」
すると胡桃姫が笑顔で発言する。
「あんたって正真正銘剣客だったのね♪誰よりも男前だし♪」
「私が男前なんて…胡桃姫様は非常に大袈裟ですな♪」
(私が男前ですって♪)
崇徳丸は胡桃姫の男前発言に赤面するものの…。内心では大喜びしたのである。
「崇徳丸様?」
桃子姫は赤面するなり…。
「如何されましたか?桃子姫様?」
「私達の家屋敷で居候しない?」
「居候ですと!?私が…」
崇徳丸は驚愕する。
「西方国は全体的に独特で閉鎖的だからね…」
「こんな見ず知らずの私が桃子姫様と胡桃姫様の家屋敷に居候しても大丈夫なのですか?」
桃子姫は笑顔で即答したのである。
「崇徳丸様が居候するなら私は大喜びですよ♪」
すると胡桃姫も笑顔で発言する。
「私も桃子姫姉ちゃんと同意見よ♪崇徳丸様が変態男だけど勇猛果敢で温厚篤実で人一倍男前だし♪是非とも居候してね♪夜桜崇徳丸様♪」
「えっ…」
(変態男って…)
崇徳丸は胡桃姫の変態男発言に苦笑いするものの…。恐る恐る承諾したのである。
「承知しました♪」
困惑した崇徳丸であるが…。内心では一安心した様子だったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.15 )
日時: 2021/08/14 22:12
名前: 月影桜花姫

第二話

亡霊

桃子姫と胡桃姫との居候から一週間後…。安穏であった西方国では無数の悪霊による超常現象が頻発したのである。崇徳丸が昼寝中にて胡桃姫が大急ぎで…。
「崇徳丸様!大変よ!」
「うわっ!如何されましたか胡桃姫様!?」
大急ぎの彼女に崇徳丸は驚愕する。
「一体何事ですか?」
「村人が…村人が何者かによって殺されたの…」
「えっ!?村人が殺されたって?一体何が…」
崇徳丸は即刻胡桃姫と一緒に近隣の麦畑へと疾走したのである。麦畑には大勢の村人達が殺到する。
(何事でしょうか?)
崇徳丸と胡桃姫は恐る恐る麦畑へと潜入するなり…。崇徳丸と胡桃姫は身震いしたのである。
「一体何が…誰がこんな…」
麦畑の中心部には無数の肉片やら腐敗した血肉が散乱する。すると隣接する村人が恐る恐る発言したのである。
「野犬の悪霊の仕業だよ…」
「野犬の悪霊ですって?」
「先日の真夜中だったかな?俺は山奥の樹海で人間の血肉を咀嚼する野犬の悪霊を目撃しちまってよ…周辺は暗闇だったが確実に野犬の悪霊だって認識したよ…」
胡桃姫は恐る恐る隣接する村人に質問する。
「野犬の悪霊って何よ?」
「野犬の悪霊は別名【死霊餓狼】って命名される動植物の悪霊だよ…人間に殺されちまった怨恨で妖怪化しちまった野良犬の化身かな…」
「死霊餓狼ですか…」
死霊餓狼とは無数の動植物が妖怪化した悪霊であり非常に獰猛で肉食である。人間達によって惨殺された無数の動植物の怨恨が融合化した無念の集合体であり憎悪するべき人間が死霊餓狼に遭遇した場合…。遭遇した人間は即刻食い殺される。
「殺された村人は死霊餓狼によって惨殺されたのでしょうか…」
すると突然…。
「ん!?」
(胸騒ぎか!?)
崇徳丸は極度の胸騒ぎを感じる。
「崇徳丸様?大丈夫?」
警戒する崇徳丸に胡桃姫は非常に不安がる。
「胡桃姫様…戦慄させちゃいましたね…失礼しました♪」
崇徳丸は苦笑いするものの…。表情が険悪化したのである。
(私が感じるのは…ひょっとして殺気でしょうか!?)
険悪化した表情で恐る恐る胡桃姫を凝視するなり…。
「胡桃姫様…ひょっとすると一大事かも知れません…」
「一大事ですって?何が一大事なのよ?」
「先程から極度の胸騒ぎを感じるのです…胸騒ぎの正体が人間なのか悪霊なのかは断言出来ませんが…西方国に急接近中です…」
「ひょっとして死霊餓狼かしら…」
胡桃姫は恐る恐る返答する。
(死霊餓狼…)
「死霊餓狼の可能性は否定出来ませんね…」
崇徳丸は険悪化した表情で…。
「胡桃姫様…」
「何よ…崇徳丸様?」
「胡桃姫様は即刻家屋敷に戻りなされ…」
胡桃姫は崇徳丸の目力に圧倒される。
(普段は温厚篤実の大仏様みたいな崇徳丸様が…こんなにも仁王様みたいな表情なんて余程の一大事みたいね…)
胡桃姫は恐る恐る…。
「無理は禁物だからね…崇徳丸様…」
「勿論ですとも…胡桃姫様…」
胡桃姫は即刻自宅へと戻ったのである。
「胡桃姫様は自宅に戻られましたね…」
(私は即刻…)
崇徳丸は即座に殺気の感じる近辺の連山へと全力疾走する。連山の獣道を通過中…。先程よりも胸騒ぎの元凶が刻一刻と急接近するのである。
(殺気を感じる…)
「獣道では一体何が?」
すると背後より…。
「背後!?」
崇徳丸は即座に背後を警戒する。
「此奴は本物の怪物なのか…」
(こんなにも荒唐無稽の怪物が実在するなんて…)
崇徳丸の背後に出現したのは満身創痍の野犬の化身であり左脚と右側の前頭部は白骨化した状態である。
(ひょっとして此奴が…)
「野犬の悪霊…死霊餓狼だな…」
血塗れの腐敗した皮膚と極度の出血により極度の悪臭は勿論…。死霊餓狼の表情から極度の悲痛さを感じさせられる。
「此奴が悪霊なのは確実だな…」
崇徳丸は恐怖心からか身震いする。
(今回の敵対者は人間ではなく正真正銘悪霊だからな…私の『牢固石』の刀剣で仕留められるのか?)
牢固石とは南方国の金剛山で発掘された不朽性の鉄鉱石である。従来型の金剛石を傑出する金剛不壊さと半永久的に原物を持続し続けられる耐久性により名門の武家一族のみが保有を認許される。
「死霊餓狼よ…私が悪霊の貴様を成仏させる!」
強大なる悪霊相手の戦闘は前代未聞であるものの…。崇徳丸は即座に刀剣を抜刀する。死霊餓狼は崇徳丸を睥睨するなり超特急で突進したのである。
「即刻とは!」
崇徳丸は即座に死霊餓狼の突進を回避する。突進を回避した崇徳丸は即刻死霊餓狼に急接近するなり…。
「成仏せよ!」
死霊餓狼に斬撃したのである。
「なっ!?」
渾身の斬撃であったが寸前で回避される。
「私の斬撃を回避するなんて…」
すると死霊餓狼が全身を武者震いさせるなり…。
「ん?」
死霊餓狼は口先より超高温の火球を射出したのである。
「鬼火だと!?」
(ひょっとして妖術なのか!?)
崇徳丸は射出された火球を即座に一刀両断…。危機一髪死霊餓狼の火球を無力化したのである。寸前の一刀両断により火球は切断されたものの…。切断された火球は崇徳丸の背後にて爆散する。
(こんなにも規格外の破壊力とは…牢固石の刀剣ではなく凡庸の刀剣であれば確実に屈折したな…)
超高温の火球を切断した影響からか牢固石の刀剣が火球の熱量により灼熱したのである。
「死霊餓狼は予想外の強敵だが…」
(私が死霊餓狼に殺されれば十中八九桃子姫様と胡桃姫様が殺されるかも知れない…)
崇徳丸は如何するべきなのか混乱する。
(畜生…私は如何すれば…)
すると天空が黒雲により覆い包まれる。
「黒雲だと?」
死霊餓狼の霊力が先程よりも増大化したのである。
「死霊餓狼から極度の殺気を感じる…」
天空の黒雲を恐る恐る直視する。数秒後…。
「うわっ!」
落雷攻撃により黒雲から強烈なる稲光を落下させる。
(落雷なのか!?)
崇徳丸は即座に死霊餓狼の落雷攻撃を回避する。落雷には無事回避したものの…。落雷によって地面が半球型に陥没したのである。半球型に陥没した地面を直視するなり崇徳丸は戦慄する。
(こんなのが頭部にでも直撃すれば私は確実に絶体絶命だったな…)
死霊餓狼は背後から崇徳丸に突進するものの…。
(背後だと!?)
崇徳丸は即座に死霊餓狼の気配を察知する。背後から突進する死霊餓狼の左辺の前脚を斬撃…。左辺の前脚を切断された死霊餓狼は断末魔の悲鳴により横たわったのである。崇徳丸は恐る恐る横たわった死霊餓狼へと近寄る。
「悪霊…成仏しろ…」
斬撃する寸前…。
「畜生…」
死霊餓狼の悲憤慷慨の表情を直視すると非常に心苦しくなる。
(即座に死霊餓狼を仕留めなければ…西方国の村里は勿論…桃子姫様と胡桃姫様が殺されるかも知れないのに…)
すると突然…。
「愚劣なる人間よ…」
虫の息であった死霊餓狼が人間界の公用語で発語したのである。
「えっ?」
(死霊餓狼は喋れるのか!?)
崇徳丸は人語で発語した死霊餓狼に驚愕する。
「ひょっとして死霊餓狼は…喋れるのですか?」
驚愕した崇徳丸であるが恐る恐る死霊餓狼に問い掛けたのである。数秒後…。崇徳丸の問い掛けに死霊餓狼は即答したのである。
「無論である…」
普通なら驚愕する場面であるものの…。崇徳丸は人語の通じる相手に内心一安心したのである。死霊餓狼は崇徳丸を凝視するなり…。
「貴様は人間の…武士であるな…」
「如何して死霊餓狼は西方国の村人達を襲撃するのですか!?死霊餓狼にとって彼等は無関係なのでは…」
死霊餓狼は崇徳丸の発言に反論する。
「奴等が無関係であると?貴様達人間の殺し合いによって自然界は汚染された…私は人間達によって惨殺された動植物の霊魂の集合体である…」
「動植物の霊魂ですと…」
死霊餓狼とは人間達によって惨殺された多種多様の動植物の霊魂が融合化した悪霊の集合体であり各地で戦乱を頻発させる人間達を憎悪する。
「私自身も人間であり一兵卒の身分ですが…頻発する戦乱の世の中を毛嫌いするからこそ武陵桃源の西方国に移住したかったのです…悪霊の死霊餓狼も私達人間によって自然界を汚染されたかも知れませぬが…西方国の村人達には手出ししないと約束出来ないでしょうか?」
崇徳丸は死霊餓狼に哀願したのである。
「西方国は戦乱とは程遠い場所なのです…如何しても手出ししたいのであれば部外者である私のみで…」
死霊餓狼は崇徳丸の発言に影響されたのか霊力が弱体化する。
「貴様は武士の人間であるが非常に人格者であるな…是非とも勇猛果敢の貴様には呪詛しなければ…」
「呪詛ですと!?」
すると突然…。
「ぐっ!」
(全身から熱気が…)
体内より強烈なる熱気を感じる。
「人格者の貴様には私の呪力を分け与えた…戦乱を頻発させる大勢の極悪非道の人間達を呪殺するべし…」
「呪殺ですと?私に死霊餓狼の呪力で大勢の人間を殺せと…」
「勿論…貴様なら出来る…大勢の人間達を殺せ…」
返答した直後…。死霊餓狼は衰弱化するなり満身創痍の肉体が白骨化したのである。白骨化した死霊餓狼の死骸からは殺気は感じられない。
「死霊餓狼が…」
すると数秒後…。背後より桃子姫と胡桃姫が恐る恐る崇徳丸に近寄る。
「崇徳丸様!」
「崇徳丸様!?大丈夫ですか?」
「桃子姫様と胡桃姫様でしたか…」
桃子姫は力一杯崇徳丸に密着したのである。
「崇徳丸様が無事で…無事で何よりです…」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
(桃子姫様…こんな私を心配して…)
内心嬉しくなる。崇徳丸は桃子姫に笑顔で…。
「ですが私にとって桃子姫様と胡桃姫様が無事なのが何よりですよ♪」
「崇徳丸様…」
すると胡桃姫が背後の白骨化した死霊餓狼に気付いたのである。
「ひょっとして野犬の遺骨かしら?」
「死霊餓狼の死骸ですよ…」
「死霊餓狼の?白骨化した野犬みたいね…」
胡桃姫は恐る恐る白骨化した死霊餓狼の死骸に接触する。
「えっ?」
「一体如何されましたか?胡桃姫様?」
胡桃姫は白骨化した死霊餓狼の頭蓋骨より正体不明の金属類の破片を発見したのである。
「何かしら?えっ…」
「如何やら金属類の…破片ですね…」
胡桃姫は愕然とした表情で…。
「ひょっとして火縄銃の弾丸かしら…」
すると崇徳丸が発言する。
「ひょっとすると死霊餓狼の正体は人間達によって惨殺された野犬の亡霊だったのでしょう…」
「死霊餓狼の正体は人間に殺された野犬の亡霊だったのね…」
一同は戦乱の悲劇を痛感したのである。
「如何して人間達って殺し合うのかしら…」
桃子姫は無表情で発言する。
「桃子姫様…」
「桃子姫姉ちゃん…」
崇徳丸と胡桃姫は困惑するものの…。
「人間とは非常に強欲ですからね…結局は誰しもが強欲だからこそ大勢で殺し合うのでしょうね…こんな私も彼等の一員ですがね…」
気難しく発言するが数秒後に崇徳丸は笑顔で断言する。
「ですが西方国は正真正銘武陵桃源です!私自身出身地の東方国よりも武陵桃源の西方国が大好きですよ♪今回みたいに神出鬼没の無礼者が出現したとしても私は全身全霊で西方国を守護しますから…」
崇徳丸は天空を眺望するなり恐る恐る…。
「戻りませんか?」
すると胡桃姫が笑顔で発言する。
「戻りましょう♪祝賀会よ♪」
「祝賀会ですと?誰の祝賀会でしょうか?」
崇徳丸は恐る恐る問い掛ける。
「勿論崇徳丸様の祝賀会よ♪」
「えっ…私の祝賀会ですか?」
崇徳丸は動揺する。
「私達は崇徳丸様に守護されてばかりだし♪私達からも精一杯恩返ししないとね…」
崇徳丸は非常に困惑したのである。
「別に恩返しなんて…大袈裟ですな…」
「崇徳丸様は遠慮深いのね♪」
「遠慮しないで崇徳丸様♪」
「生憎ですが私は別に…何も…」
崇徳丸は気恥ずかしくなる。桃子姫は恐る恐る…。
「崇徳丸様は梅酒とか大丈夫?」
崇徳丸は即答する。
「生憎ですが…私は酒類が苦手なのです…」
「意外だね…」
すると突然…。
「ぐっ!」
突発的に息苦しくなり卒倒したのである。
「崇徳丸様!?」
「崇徳丸様!?大丈夫!?」
すると崇徳丸の全身より血紅色の発光体が無数に出現する。
「きゃっ!血紅色の発光体だわ…」
「何かしら…」
彼女達は恐る恐る血紅色の発光体に接触するものの平然とした様子である。数秒後…。崇徳丸は平常心の様子で目覚める。
「えっ?桃子姫様と胡桃姫様?如何されたのですか?」
「崇徳丸様…大丈夫ですか?突然卒倒されて…」
桃子姫は極度の心配性であり崇徳丸に気遣ったのである。
「私が卒倒ですと!?一体私に何が…」
崇徳丸は驚愕する。
「あんたが突然気絶しちゃったから…一瞬膠着しちゃったわ…」
胡桃姫は不機嫌そうに発言したのである。
「心配させちゃいましたね…大変失礼しました…」
崇徳丸は二人に謝罪する。
「別に謝罪しなくても…」
桃子姫は苦笑いしたのである。
「桃子姫様と胡桃姫様…即刻家屋敷に戻りましょう!悪霊は退治しましたから一先ずは安心ですよ♪」
崇徳丸は笑顔で先走る。無表情だった胡桃姫は崇徳丸の様子に身震いするなり恐る恐る問い掛ける。
「桃子姫姉ちゃん?」
「何よ…胡桃姫…」
「彼って…悪霊の死霊餓狼に呪詛されちゃったのかも知れないわね…」
胡桃姫は超常現象やら超自然関連の宗教学が人一倍大好きであり独力で勉学したのである。
「呪詛ですって?」
「桃子姫姉ちゃんも肉眼で認識したでしょう?血紅色の発光体を…」
「血紅色の発光体…」
「崇徳丸様は死霊餓狼の怨恨に憑霊されちゃったのよ…」
「崇徳丸様が死霊餓狼の怨恨に憑霊されたって?」
桃子姫は胡桃姫の発言に困惑する。
「現段階では断言は出来ないけれども…今後私達も彼に…崇徳丸様に殺されちゃうかも知れないわ…」
不安視する胡桃姫に桃子姫が猛反発したのである。
「胡桃姫!崇徳丸様に失礼よ…彼が…誰よりも温厚篤実の崇徳丸様が私達に手出しするなんて荒唐無稽だわ…」
「桃子姫姉ちゃん!大昔の伝承では自然界の悪霊を征伐した人間が悪霊に憑霊されて…大勢の村人達を殺戮したのよ…」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
「崇徳丸様は…」
「桃子姫姉ちゃん…」
胡桃姫は桃子姫に接触するなり…。
「現時点では大丈夫かも知れないけれども…金輪際崇徳丸様とは注意深く接触しましょう…崇徳丸様が私達に手出しするのか如何なのかは断言出来ないけれどね…」
「胡桃姫…」
メンテ
桜花姫 ( No.16 )
日時: 2021/08/14 22:13
名前: 月影桜花姫

第三話

世界樹

死霊餓狼の出現から数日後の出来事である。桃子姫は暇潰しに西方国の天霊山へと登山中…。摩訶不思議なる薫風と虹色に発光する広葉樹に魅了されたのである。
「何かしら…」
彼女は恐る恐る虹色の広葉樹へと近寄る。
「摩訶不思議の異世界みたいだわ…」
桃子姫は無我夢中に広葉樹の表面へと恐る恐る接触したのである。すると直後…。彼女は強烈なる睡魔によって熟睡したのである。同時刻…。家屋敷にて昼寝中だった崇徳丸は恐る恐る胡桃姫の自室へと入室する。
「胡桃姫様…失礼します…」
「崇徳丸様…何かしら?」
「胡桃姫様?桃子姫様は出掛けられたのですか?」
「桃子姫姉ちゃんなら暇潰しに登山中よ♪」
「桃子姫様は登山中でしたか…」
崇徳丸は桃子姫に対面したくなる。
「彼女が暇潰しであれば…私も暇潰しに…」
すると胡桃姫は険悪化した表情で…。
「崇徳丸様…桃子姫姉ちゃんには絶対に手出ししないでよ…」
「えっ…」
崇徳丸は赤面する。
「胡桃姫様!私は別に桃子姫様に手出しなんて…」
崇徳丸の返答に胡桃姫は赤面した表情で恐る恐る…。
「崇徳丸様は…人一倍変態男だから…」
「なっ!」
崇徳丸は胡桃姫の発言に気分が消沈したのである。
(私って…胡桃姫様にとって人一倍変態男なのかな…)
すると胡桃姫は身震いするなり恐る恐る問い掛ける。
「崇徳丸様?気分は大丈夫かしら?気味悪くない?」
「気味悪いって…別に私は何も気味悪くないですよ♪」
崇徳丸は笑顔で即答したのである。
「ですが突然如何されたのですか?胡桃姫様?ひょっとして心配事でも?」
「先日だけど崇徳丸様は…死霊餓狼を仕留めた直後に卒倒しちゃったから大丈夫かなって…正直不安だったのよ…」
(胡桃姫様♪こんな私なんかを心配して…)
心配する胡桃姫に崇徳丸は内心大喜びする。
「胡桃姫様は極度の心配性なのですね♪私なら胡桃姫様が気にされなくとも大丈夫ですよ♪意気衝天こそが私にとって唯一の美点ですから♪」
「意気衝天ね…」
断言する崇徳丸に胡桃姫は苦笑いしたのである。数秒後…。
「私は即刻出掛けますね…」
「崇徳丸様…」
崇徳丸は即座に出掛ける。
(桃子姫様の居場所は一体…)
すると突然…。
「えっ?天霊山の自然林から果実の薫風が…」
崇徳丸は果実の薫風を目印に天霊山へと直行したのである。すると天霊山の自然林より桃色の着物姿の女性が地面に横たわるのを発見する。
「えっ…女性!?」
崇徳丸は即座に横たわった女性に近寄る。
(彼女は…)
「桃子姫様!?」
横たわった女性は誰であろう桃子姫だったのである。崇徳丸は身震いした様子で桃子姫に接触したのである。
「桃子姫様!?大丈夫ですか!?桃子姫様!?」
数秒後…。桃子姫は横たわった状態から恐る恐る目覚める。
「えっ…崇徳丸様?何かしら?如何しちゃったの?」
「桃子姫様…一瞬驚愕しましたよ…大丈夫ですか?」
桃子姫の様子に一安心する。心配性の崇徳丸に桃子姫は微笑む。
「崇徳丸様は極度の心配性ね♪」
「桃子姫様…」
「崇徳丸様…汗水が…」
前額部から大量の汗水が流れ出るなり崇徳丸は赤面したのである。
「失礼しました…桃子姫様…」
すると桃子姫が恐る恐る背後を凝視するなり…。
「えっ…摩訶不思議の広葉樹は?」
「摩訶不思議の広葉樹ですと?」
「虹色の広葉樹…無くなったのかしら?ひょっとして私自身の幻覚だったのかしら?」
(虹色の広葉樹ですって?)
崇徳丸は恐る恐る発言する。
「先程…私が天霊山に到達出来たのは果実の薫風…ひょっとすると虹色の広葉樹とは世界樹の霊魂巨神木かも知れませんね…」
「霊魂巨神木ですって?」
崇徳丸は空覚えであるものの…。桃子姫に霊魂巨神木の伝承を説明したのである。
「霊魂巨神木とは森羅万象の造物主ですよ…大昔の伝承では世界樹として有名ですね…」
「森羅万象の造物主?」
「霊力やら神通力やら…摩訶不思議の広葉樹だと認識されますね…噂話では各村落の辺境地で出現するらしいのですが…桃子姫様が神出鬼没の霊魂巨神木に遭遇されたのは運命なのかも知れませんよ…」
「霊魂巨神木は本物の世界樹なのね…」
すると桃子姫は突発的に崇徳丸の腹部に力一杯密着する。
「桃子姫様!?」
力一杯密着する桃子姫に崇徳丸は驚愕する。恐る恐る彼女の表情を直視するなり…。
「桃子姫様…」
桃子姫の涙腺から涙が零れ落ちる。
「崇徳丸様?」
「何ですか?」
「崇徳丸様は…私と胡桃姫に手出ししないよね?殺さないよね?」
崇徳丸は桃子姫の突発的発言に困惑する。
「私が桃子姫様と胡桃姫様に手出しですって!?突然如何されたのですか?」
「胡桃姫がね…」
桃子姫は一部始終崇徳丸に告白したのである。
「死霊餓狼の呪力の悪影響で…私が桃子姫様と胡桃姫様に手出しするのではと心配されたのですね…」
(ひょっとして近頃胡桃姫様が極度に身震いされたのは…死霊餓狼の呪力が主要因だったのか…)
崇徳丸は納得する。崇徳丸は桃子姫に笑顔で断言したのである。
「桃子姫様♪不用意に危惧されなくても大丈夫ですよ!私が死霊餓狼の呪詛なんかで桃子姫様と胡桃姫様に手出ししませんよ♪最悪手出しするのなら私は私自身で自害する覚悟ですから!一安心しなされ♪」
笑顔で断言する崇徳丸に桃子姫は一安心する。
(崇徳丸様…)
すると桃子姫は笑顔で…。
「崇徳丸様♪」
「如何されましたか?桃子姫様…」
彼女は赤面する。
「私と一緒に…天辺の露天風呂で混浴しないかしら?」
(えっ!?私が桃子姫様と混浴ですって!?)
桃子姫の衝撃的発言に崇徳丸は困惑したのである。
「桃子姫様が私みたいな人間なんかと混浴しても大丈夫なのですか?」
崇徳丸は非常に困惑するものの…。桃子姫は笑顔で即答する。
「勿論私は大丈夫よ♪相手が崇徳丸様なら一緒に混浴しても…胡桃姫には内緒にするからね♪」
「ですが混浴する相手が私なんかで本当に大丈夫でしょうか?」
心配する崇徳丸に桃子姫は笑顔で断言する。
「崇徳丸様だからこそ一緒に混浴したいのよ…遠慮しないでね♪」
「桃子姫様が平気なら一安心ですね…」
一息した崇徳丸と桃子姫は天霊山の天辺へと到達するなり…。石造りの露天風呂にて混浴したのである。
(桃子姫様と混浴出来るなんて♪)
崇徳丸は内心大喜びする。桃子姫は恐る恐る崇徳丸に近寄るなり力一杯密着したのである。
「桃子姫様!?突然如何されたのですか!?」
彼女に密着された崇徳丸は気恥ずかしくなる。桃子姫は表情が赤面するなり…。
「崇徳丸様…私は…私は崇徳丸様が…」
桃子姫は一息した直後である。
「崇徳丸様が大好きなの…」
桃子姫の一心不乱の恋心に一瞬膠着化するものの…。
「私だって桃子姫様が大好きですよ♪」
崇徳丸は笑顔で返答する。
「崇徳丸様…」
桃子姫は大喜びの様子であり涙腺から涙が零れ落ちる。
(私は人一倍福運だったわ…私にとって崇徳丸様は運命の男性だったのかも知れないわね…)
大喜びした桃子姫であるが直後…。
「ぐっ!」
桃子姫は突発的に吐血したのである。
「桃子姫様!?大丈夫ですか!?」
桃子姫は悲痛の表情で恐る恐る崇徳丸を凝視する。
「桃子姫様…」
(今迄秘密にしたのに…)
「崇徳丸様…御免なさいね…私は…幼少期から…人一倍病弱だったのよ…」
「病弱ですと!?」
(如何して秘密に…)
崇徳丸は一瞬腹立たしくなるものの…。
(桃子姫様…)
桃子姫の表情を直視するなり沈黙したのである。
「私は疫病で…近頃吐血が増悪しちゃったのよね…」
「疫病ですか…胡桃姫様には相談されなかったのですか?」
「胡桃姫にも相談しなかったのよ…」
「如何して彼女に相談しなかったのですか?」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
「疫病神だって…胡桃姫に毛嫌いされたくなかったからよ…」
「ですが即刻胡桃姫様に相談しなければ!胡桃姫様が疫病を理由に桃子姫様を疫病神なんて毛嫌いしませんよ…」
「疫病神だって毛嫌いされるわよ…」
崇徳丸は必死に説得するものの…。桃子姫は納得しない。
(桃子姫様は人一倍頑固ですね…)
内心桃子姫を人一倍頑固であると感じる。
「私は長生き出来ないでしょうね…」
「桃子姫様…」
すると桃子姫は崇徳丸を凝視するなり…。
「私は赤ちゃんを出産したいのよ…」
「なっ!?出産ですって!?」
桃子姫の発言に驚愕する。
「こんなにも病弱なのに出産なんて桃子姫様は正気なのですか!?」
彼女は即答したのである。
「勿論私は正気よ…私自身長生き出来ないからね…」
「桃子姫様…」
崇徳丸は混乱するものの…。
「承知しました…桃子姫様♪」
笑顔で彼女の願望に承諾したのである。崇徳丸は笑顔で承諾したが内心では非常に心苦しくなる。
(桃子姫様が病弱だったなんて…)
崇徳丸は涙腺から涙が零れ落ちる。
メンテ
桜花姫 ( No.17 )
日時: 2021/08/16 20:08
名前: 月影桜花姫

第四話

襲撃

天地歴三千十年五月下旬の出来事である。真夜中…。南国の南軍侍大将と北国の北軍侍大将が武陵桃源の西国を視察するなり密談する。
「西国とは…殺風景の田舎村みたいですね…」
「こんなにも物静かな武陵桃源の西国で無尽蔵の牢固石が確保出来るのでしょうか…」
南国と北国は本来水と油の関係であり両勢力は敵対関係であったものの…。西国の地表に沈黙する無尽蔵の牢固石の確保と両勢力にとって共通の宿敵である東国の打倒を主目的に利害が一致する。
「西国総攻撃は本日の真夜中でしたね…」
「こんなにも田舎村ですからね…翌朝には西国の全域を占拠出来るでしょう…」
「面白くなりますな♪」
彼等は本国へと戻ったのである。同時刻…。妊娠により腹部が肥大化した桃子姫は非常に重苦しい様子であり自宅の居間で寝転ぶ。
「桃子姫姉ちゃん?大丈夫?」
胡桃姫は一日中重苦しく寝転ぶ桃子姫に恐る恐る近寄る。
「私なら大丈夫よ♪気にしなくても大丈夫だからね…胡桃姫…」
胡桃姫は笑顔で…。
「桃子姫姉ちゃん♪桃子姫姉ちゃんも…数日後には一児の母親なのね…」
「御免なさいね…胡桃姫…私は…正直足手纏いだよね?」
近頃の桃子姫は妊娠によって寝転ぶ状態が習慣化する。
「足手纏いなんて…気にしないで♪桃子姫姉ちゃん♪」
胡桃姫は笑顔で返答したのである。
「無事に赤ちゃんを出産出来たら…精一杯恩返しするから♪」
「桃子姫姉ちゃん…」
今現在でこそ胡桃姫は笑顔で接触するのだが桃子姫の妊娠が発覚した当初は猛反発…。当事者である崇徳丸に怒号したのである。数分後…。胡桃姫は家屋敷の庭園にて崇徳丸に接触する。
「崇徳丸様…」
「胡桃姫様…如何されましたか?」
二人は非常に気難しい雰囲気であったものの…。
「崇徳丸様…私は崇徳丸様に頭ごなしに怒号しちゃって御免なさいね…」
胡桃姫は恐る恐る崇徳丸に謝罪する。
「私は崇徳丸様に…崇徳丸様は何も悪くないのにね…」
(揉め事の発端である私が…何も悪くないのかな?)
崇徳丸は苦笑いしたのである。一息するなり…。
「胡桃姫様…私なら大丈夫ですよ♪私は気にしませんから…本来であれば今回の揉め事は胡桃姫様に秘密にした私こそが加害者であり…主原因なのですから…」
崇徳丸は笑顔で返答したのである。
「正直私は…私達は悪霊の死霊餓狼に呪詛された崇徳丸様に殺されるかも知れないって…毎日が息苦しい雰囲気だったのよね…」
「胡桃姫様…」
胡桃姫は一息するなり笑顔で…。
「崇徳丸様が悪霊を征伐してから毎日の生活が息苦しい雰囲気だったけどね♪助平だけど崇徳丸様は純粋に誰よりも人一倍温厚篤実で紳士的だったわ…私は不必要に悲観視し過ぎちゃったみたいね♪」
(助平なのは…)
胡桃姫の助平発言に苦笑いするものの…。崇徳丸は笑顔で返答したのである。
「別に私自身は気にしませんし♪最悪私が桃子姫様と胡桃姫様に手出ししそうになれば私は自害する覚悟ですからね♪」
「崇徳丸様…」
崇徳丸の様子に胡桃姫は一安心する。すると数秒後である。
「胡桃姫様…大変心苦しいのですが…」
何も喋れず数分間沈黙するのだが…。
「崇徳丸様?何が心苦しいの?」
「胡桃姫様…」
崇徳丸は突然涙腺から涙が溢れ出たのである。
「崇徳丸様!?突然如何しちゃったのよ?」
落涙する崇徳丸に胡桃姫は困惑する。
「胡桃姫様…桃子姫様の秘密なのですが…」
「えっ?桃子姫姉ちゃんの秘密ですって?」
崇徳丸は桃子姫が赤子を出産したかった本当の理由を告白したのである。
「えっ…桃子姫姉ちゃんが…不治の疫病に…」
胡桃姫は衝撃的事実に絶句するなり全身が膠着化する。
「桃子姫姉ちゃんは…不治の疫病と闘病中だったのね…」
数秒後…。胡桃姫は平常心に戻ったのである。
「胡桃姫様?」
「近頃…桃子姫姉ちゃんの顔色が病人みたいな様子だったから…」
彼女は涙腺から涙が零れ落ちるなり…。
「長生き出来ないのよね…桃子姫姉ちゃん…」
胡桃姫の発言に崇徳丸は小声で返答する。
「残念ですが…桃子姫様は…」
涙腺から涙が零れ落ちる胡桃姫であるものの彼女は笑顔で…。
「私達は精一杯桃子姫姉ちゃんに助力しないと…」
(胡桃姫様…)
胡桃姫の様子に崇徳丸は一安心したのである。
「勿論ですとも…胡桃姫様…」
胡桃姫と崇徳丸は約束する。同時刻…。南軍と北軍の軍勢が西国の山奥にて合流したのである。
「西国の国境に到達したぞ!総攻撃は本日の真夜中に決行する!」
「翌日の早朝には確実に西国全土を占拠するからな…全軍覚悟せよ!」
両陣営の侍大将が各兵卒達に伝播させる。
「翌日の早朝に西国全土を占拠出来るのか?」
「西国は過疎地だからな…遭遇するとすれば非武装の農民とか♪」
「相手が非武装の農民だったら楽勝だけどな♪」
「手前勝手の殺戮であるが…」
兵卒達は雑談したのである。
「南国の匪賊達の噂話だったかな?近頃何やら東国出身者の夜桜崇徳丸って若武者と遭遇しちまったらしいが…」
南国の匪賊達の噂話により両陣営の兵卒達は突如として戦慄する。
「夜桜崇徳丸だって!?本当なのか!?」
「夜桜崇徳丸って東軍の最上級武士だったよな!?如何して東国出身者の夜桜崇徳丸が過疎地の西国なんかに?」
崇徳丸は各勢力から危惧される剣客の有名人であり各勢力の武将達は勿論…。各勢力の領主達からも戦慄されたのである。
「所詮噂話であるからな…常識的にこんな過疎地に剣客の最上級武士が移住するなんて面白くない冗談だな…」
「戦慄させるなよ…」
両陣営の総大将達が兵卒達に怒号する。
「貴様達!沈黙せよ…」
兵卒達は即座に沈黙したのである。
「今回の総攻撃は非常に容易いが…楽観視するなよ!主戦場が過疎地だったとしても油断大敵であるからな…」
兵卒達が沈黙すると暗闇の森林浴から風音と川音が響き渡る。真夜中の出来事である。崇徳丸は家屋敷の庭園にて真夜中の夜空を眺望するなり極度の胸騒ぎを感じる。
「胸騒ぎかな…」
すると崇徳丸の背後より胡桃姫が恐る恐る近寄る。
「崇徳丸様?」
「うわっ!」
崇徳丸は驚愕する。
「誰かと思いきや…胡桃姫様でしたか…失礼しました…」
「大丈夫?」
「大丈夫って何が?」
「崇徳丸様の表情が非常に重苦しいから…」
崇徳丸は苦笑いするなり返答したのである。
「私の表情が重苦しかったですかね?失礼しました♪」
崇徳丸は苦笑いするものの…。表情が険悪化する。
「ですが胡桃姫様…私は先程から極度の胸騒ぎを感じるのです…」
「胸騒ぎですって?ひょっとして今回も悪霊の気配とか!?」
崇徳丸は一息するなり…。
「大勢の人間達の殺気でしょうか…悪霊の気配とは別物ですね…」
近辺の山奥より大勢の殺気を感じる。
「人間達の殺気?ひょっとしてこんな真夜中に夜戦とか?」
「断言は出来ませんが…」
「武陵桃源の西国で夜戦なんて傍迷惑だわ…」
すると崇徳丸は発言したのである。
「胡桃姫様…私達は即刻家屋敷から脱出しなければ…」
「脱出ですって!?」
胡桃姫は崇徳丸の発言に驚愕する。
「不穏の気配を感じるのです…ひょっとすると今回も一大事かも知れません!即刻家屋敷から脱出しましょう!」
「脱出って…桃子姫姉ちゃんは寝転んだ状態なのよ…突然家屋敷から脱出するなんて無茶よ…」
二人の背後より桃子姫は重苦しい表情で近寄る。
「私なら…大丈夫よ…」
「桃子姫姉ちゃん!?」
「徒歩だけなら自力で出来るわ…」
桃子姫は息苦しい様子であり出歩くのは非常に困難の状態である。
「桃子姫姉ちゃん…無理しないで!桃子姫姉ちゃんには…赤ちゃんが…」
「私は足手纏いだからこそ…徒歩だけでも…」
桃子姫は断言する。
「桃子姫様…」
崇徳丸は承諾したのである。
「即刻桃子姫様も私達と一緒に家屋敷から脱出しましょう…」
すると突然…。南方の山奥より無数の大砲の砲撃音と村人達の阿鼻叫喚が西国全域に響き渡る。
「爆薬かしら!?」
「一触即発ですね…桃子姫様!胡桃姫様!即刻家屋敷から脱出しましょう!」
崇徳丸は敵軍の刺客に警戒するなり恐る恐る自宅から脱出したのである。外部は村人達の鮮血やら肉片が散乱する。
「きゃっ!」
「流血だわ!」
大勢の村人達が一目散に逃走したのである。すると南方の山奥より大勢の鎧兜の兵卒達が西国の麦畑へと進撃する。
「敵襲です!桃子姫様!胡桃姫様!即刻天霊山に避難しましょう!」
「崇徳丸様は如何するのよ!?」
「敵軍は私が撃退しますから…桃子姫様と胡桃姫様は即刻避難を…」
「一人で敵軍を撃退するなんて無謀よ!崇徳丸様も私達と一緒に脱出しましょう!崇徳丸様が殺されちゃったら…私は…」
桃子姫は必死に説得するものの…。
「私なら大丈夫ですよ♪私は東国の軍神です…確実に戻れますから♪約束しましょう…」
胡桃姫は不本意であるものの承諾する。
「無理しないでね…崇徳丸様…」
「胡桃姫!?如何して…」
「桃子姫姉ちゃん…私と一緒に天霊山に逃げましょう…」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちるなり即刻天霊山へと逃走したのである。
(彼女達は…避難しましたね…)
崇徳丸は最前線の敵兵達を凝視すると武者震いする。
「敵軍は…南国と北国の軍勢だな…」
すると直後…。極度の熱気により殺意が芽生える。
(私自身…こんなにも殺意が…)
「ひょっとして死霊餓狼の呪力とやらの悪影響なのか…」
大勢の敵兵達が崇徳丸に気付いたのである。
「貴様は…東国の夜桜崇徳丸!?如何して貴様が西国に…」
「噂話は事実であったか…」
「理由は不明瞭だが…東軍の荒武者達によって大勢の戦友達が惨殺されちまったからな!今回は復讐する絶好機だぞ!」
崇徳丸の身体髪膚から無数の血紅色の発光体が出現したのである。
「ん!?」
「崇徳丸の肉体から…一体何が!?」
敵兵達は血紅色の発光体を凝視するなり…。
「ひっ!」
「崇徳丸は怪物なのか…」
彼等は豹変した崇徳丸に戦慄したのか恐る恐る後退りする。
「狼狽えるな!夜桜崇徳丸とて所詮は人間の若武者!斬殺しろ!」
大勢の敵兵達が崇徳丸に殺到した直後…。殺到した敵兵達の頭部が崇徳丸の眼力によって破裂したのである。
「ぎゃっ!」
地面には敵兵達の無数の肉片やら鮮血が散乱する。
「うわっ!」
「ひっ!怪物…」
崇徳丸本人も一瞬驚愕するものの…。平常心へと戻ったのである。
(死霊餓狼の呪力なのか…こんなにも絶大とは…)
敵兵達は崇徳丸に戦慄するものの…。
「鉄砲隊!夜桜崇徳丸を射殺しろ!」
鉄砲隊が最前線にて並列化するなり火縄銃で崇徳丸に狙撃する。崇徳丸は通常の人間をも上回る神速の身動きによって無数の火縄銃の弾丸を一刀両断…。斬撃により無数の弾丸を無力化したのである。崇徳丸は猛反撃するなり神速の身動きによって鉄砲隊に急接近…。鉄砲隊の数人を瞬殺する。
「ひっ!」
「撤退しろ!」
崇徳丸に戦慄した敵兵達は撤退したのである。
「敵軍は撃退したか…」
一安心した直後…。
「ぐっ!」
死霊餓狼の呪力によって右腕の皮膚が腐敗したのである。
(畜生が…死霊餓狼の呪力とやらの悪影響なのか…)
右腕は腐敗と出血により完全に麻痺する。
「右腕が麻痺するなんて…」
すると背後より…。敵軍の狙撃兵によって背中を狙撃されたのである。
「がっ!」
(迂闊だったか…畜生…)
狙撃された崇徳丸は横たわる。
(桃子姫様…胡桃姫様…無事に避難して…赤ちゃんを…)
呪力によって敵軍を撤退させた崇徳丸であるが…。死霊餓狼の呪力の悪影響と敵軍の狙撃により衰弱化したのである。
メンテ
桜花姫 ( No.18 )
日時: 2021/08/16 20:09
名前: 月影桜花姫

第五話

妖女

同時刻…。桃子姫と胡桃姫は全身全霊で天霊山へと逃走する。天霊山の天辺へと到達したのである。
「桃子姫姉ちゃん…大丈夫?」
「胡桃姫…私が足手纏いなばかりに…」
「桃子姫姉ちゃん…気にしないで…」
桃子姫は精神的にも肉体的にも疲弊した状態であり山道に横たわったのである。
「桃子姫姉ちゃん!?大丈夫!?」
胡桃姫は横たわる桃子姫に近寄る。
「胡桃姫…足手纏いだよね…私…」
桃子姫の涙腺から涙が零れ落ちる。
「桃子姫姉ちゃん…」
すると突然…。極度の陣痛を感じる。
「ぐっ!」
「桃子姫姉ちゃん!?」
胡桃姫は恐る恐る桃子姫の腹部に接触するなり…。
(ひょっとして出産かしら!?)
胡桃姫は困惑する。
「最悪だわ…」
(私は如何すれば…)
すると彼女達の背後より大勢の敵兵達が彼女達を追撃したのである。
「ん?貴様等は西国の女子達だな♪」
「こんなにも武陵桃源の田舎村に容姿端麗の女子達と出くわしちまうなんて俺達は福運だよな♪」
「如何するよ?正直打っ殺しちまうのが勿体無いよな♪」
火縄銃を武装する狙撃兵により桃子姫が狙撃される寸前…。
(桃子姫姉ちゃんが殺される!)
危惧した胡桃姫は咄嗟の判断により全力疾走したのである。危機一髪横たわった桃子姫を庇護した胡桃姫であるが…。
「ぐっ!」
胡桃姫は横たわる桃子姫の真正面にて敵兵の銃撃により狙撃されたのである。
(桃子姫姉ちゃん…)
胡桃姫は涙腺から涙が零れ落ちるなり地面に横たわる。地面は彼女の鮮血によって赤色に変色する。
「胡桃姫…胡桃姫!?」
桃子姫は力一杯横たわった胡桃姫に近寄る。
「胡桃姫…」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
「如何して…如何して私なんかを…胡桃姫…」
「桃子姫姉ちゃんが…無事で…何よりだわ…」
胡桃姫は衰弱化したのである。
「桃子姫姉ちゃん…死なないでね…無事に赤ちゃんを…出産してね…」
「胡桃姫…胡桃姫!?」
彼女は息絶える。
(胡桃姫が…死んじゃった…)
極度の無念と悲痛により無気力化するものの…。遠方の森林浴より無数の虹色の発光体を確認したのである。
「えっ…」
(虹色の発光体だわ…一体何かしら?)
桃子姫は精一杯虹色の発光体を目印に疾走する。
「小娘を追尾しろ…」
敵兵達は全力疾走する桃子姫を追撃したのである。彼女は虹色の発光体の居場所へと到達する。無数の発光体の中心部には虹色に発光する広葉樹が確認出来る。
(ひょっとして世界樹の…霊魂巨神木かしら…)
虹色に発光する広葉樹とは半年前に遭遇した世界樹の霊魂巨神木である。桃子姫は恐る恐る霊魂巨神木へと近寄るなり広葉樹の表面に接触する。
(私は…結局私は如何するべきだったの?本来なら私が殺されるべきだったのに…如何して胡桃姫が殺されたのよ?父様と母様だって如何して匪賊に殺されたのよ…)
桃子姫の両親は二十年前に匪賊によって惨殺されたのである。
(如何して私の家族は誰かに殺されるの?天罰なの?)
極度の悲哀と怒気が増大化する。すると霊魂巨神木の小枝から虹色に発光する果実を発見するなり…。
(虹色なんて…摩訶不思議の果実だわ…)
桃子姫は恐る恐る虹色の果実を確保する。確保した果実を無我夢中に菜食したのである。すると彼女は超常現象により全身から無数の血紅色の放射体が出現する。
「ん?一体何が?」
「小娘は妖怪化したのか…」
大勢の敵兵達が到達したものの彼女の雰囲気から恐る恐る後退りしたのである。
「狼狽えるな!妖怪化したとしても所詮は人間の小娘!大勢で小娘を根絶やしにせよ…」
桃子姫の血紅色であった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光する。
「沈黙しなさい…」
彼女が殺気立った眼力によって周囲の敵兵達を力強く睥睨した直後…。
「なっ!?ぎゃっ!」
突如として最前線の敵兵達の頭部が破裂する。地面に無数の血肉と彼等の脳味噌が散乱したのである。
「ひっ!」
「うわっ!何事であるか!?」
背面の敵兵達は超常現象により戦慄する。
「一体何が!?如何してこんな…」
「狼狽えるな!小娘を根絶やしにせよ!打っ殺せ!」
敵兵達は大勢で無防備の桃子姫に殺到するものの…。桃子姫は全身から血紅色の放射体を炸裂するなり半透明化した血紅色の防壁を形作る。防壁の表面より無数の魔手が出現したのである。
「魔手だと!?」
無数の魔手が出現しては殺到する敵兵達に接触するなり…。敵兵達の肉体諸共圧縮したのである。大勢の敵兵達が魔手によって全身を圧縮…。血肉やら体内の臓物が噴出したのである。
「即刻撤退しましょう!」
「止むを得ないな…」
敵兵達は一目散に桃子姫から逃走したのである。同時刻…。南軍と北軍の本拠地では両陣営の総大将達が談笑する。
「本日は福徳円満ですな♪早朝には西国は私達の勢力圏ですし…西国の地中には無尽蔵の牢固石が採掘出来ます♪何よりも難敵である東国は滅亡されましょう…」
「一石三鳥ですな♪難敵の東国を打倒出来れば正真正銘太平神国全域が私達の支配圏ですからね♪」
すると本拠地より血塗れの一兵卒が一目散に乱入したのである。
「総大将!大変です!」
「突然何事であるか!?」
「随分大慌ての様子だな…」
総大将達は血塗れの一兵卒に驚愕する。
「西国の天霊山より…妖女が…妖女が出現しました!」
「妖女だと?」
「妖女なんて面白くない冗談だな…」
「妖女なんて実在するのか♪」
「貴様の見間違いだろ…妖女が出現したのが事実であるなら遭遇したくなるな♪」
総大将達は疲弊する一兵卒の発言を揶揄する。
「妖女が出現したのは本当です!妖女の猛反撃によって大勢の足軽が殺害されました!即刻西国から全軍の撤退を…」
直後である。
「なっ!?」
一兵卒の頭部が肥大化するなり…。
「ぎゃっ!」
数秒後破裂したのである。
「うわっ!」
「げっ!如何して頭部が!?一体全体何が…」
突発的出来事により総大将達は戦慄する。
「如何して頭部が破裂した…」
「ひょっとして妖女とやらの仕業なのか!?」
「先程の内容は事実であったのか…荒唐無稽の妖術で足軽の頭部を破裂させたのか…」
すると本拠地より小柄の女性が潜入したのである。
「ひっ!」
「うわっ!貴様は何者であるか!?」
着物は血塗れであり亡霊みたいな雰囲気の女性に総大将達は恐る恐る後退りする。
「ひょっとして貴様は…村娘の悪霊なのか…」
すると女性が無表情で総大将達を凝視するなり…。
「私は西国の…桃子姫よ…あんた達ね…私の胡桃姫を殺させたのは…」
「胡桃姫とは?」
「一体何者であるか?」
桃子姫は険悪化した表情で即答する。
「胡桃姫は…私の…私の実妹よ!」
数秒後…。
「あんた達も…死滅するのね…」
総大将達の頭部が肥大化するなり…。
「ぎゃっ!」
「がっ!」
数秒後彼等の頭部が破裂したのである。両陣営の総大将達の落命によって南軍と北軍は総崩れ…。事実上妖怪化した桃子姫の猛反撃により西国に出兵した南軍と北軍は全滅したのである。摩訶不思議の妖力で敵軍を撃退した桃子姫であるものの…。直後である。
「ぐっ!」
(陣痛かしら…)
桃子姫は極度の陣痛により地面に横たわる。同時刻…。火縄銃の弾丸によって横たわった崇徳丸であるが目覚めたのである。敵襲を警戒するなり恐る恐る一歩ずつ歩行する。
「随分物静かだな…」
主戦場であった西国であるものの…。周囲の物静かな雰囲気に身震いしたのである。
「如何してこんなにも物静かなのか…」
死霊餓狼の呪力と大量の出血によって眼前が朦朧とする。
「ぐっ!」
(畜生が…私は失血死するかも知れないな…)
崇徳丸は虫の息であり歩行するだけでも息苦しくなる。
「桃子姫様と胡桃姫様は…無事に避難されたでしょうか?」
すると桃子姫と胡桃姫が逃走した天霊山へと到達すると獣道の地面には敵兵達の鎧兜は勿論…。鮮血やら無数の肉片が散乱する。
「敵軍の!?」
(誰がこんなにも敵兵達を殺害したのか…)
西国には若武者は勿論…。力自慢の農民すら少数派であり統率された南軍と北軍の兵卒達を撃退出来る該当者は皆無である。
「如何して敵軍の兵卒達がこんなにも殺害されたのか?」
誰が敵軍の兵卒達を殺害したのか非常に気になる。
「赤子の産声!?」
すると遠方の自然林より赤子の産声が響き渡る。
「ひょっとして桃子姫様!?」
(桃子姫様…無事だったのですね♪)
天霊山の自然林から響き渡る産声に崇徳丸は一安心したのである。獣道の遠方より血塗れの着物姿の女性と抱き抱えられた赤子が確認出来る。
(ひょっとして桃子姫様!?如何やら無事だったみたいですね♪)
崇徳丸は恐る恐る女性に近寄る。
「桃子姫様でしたか♪無事だったのですね♪」
血塗れの着物姿の女性は正真正銘桃子姫だったのである。
「桃子姫様♪無事に再会出来て一安心ですよ♪」
「崇徳丸様…」
「えっ?」
崇徳丸は赤子を凝視するなり大喜びする。
「無事に赤ちゃんを出産されたのですね♪桃子姫様♪」
「赤ちゃんは無事に出産出来たわ…私達の赤ちゃん…女の子よ…」
「女の子ですか♪容姿端麗ですね♪えっ?」
崇徳丸は恐る恐る無表情の桃子姫を直視すると一瞬戦慄したのである。
(桃子姫様の表情が無表情!?一体何が…)
「桃子姫様…一体如何されたのですか?」
崇徳丸は恐る恐る彼女に問い掛ける。
「胡桃姫が…胡桃姫がね…」
「胡桃姫様が…如何されたのですか?」
桃子姫の涙腺から涙が零れ落ちる。
「胡桃姫が敵軍の襲撃で…殺されちゃったのよ…」
「えっ!?胡桃姫様が敵軍に!?」
崇徳丸は驚愕した直後…。涙腺より涙が零れ落ちる。
(胡桃姫様が息絶えたなんて…)
桃子姫は先程の出来事を一部始終告白したのである。
「桃子姫様は霊魂巨神木の果実を!?」
「私が…摩訶不思議の神通力で敵軍を全滅させたのよ…」
(桃子姫様が敵軍を全滅させたって?先程から西国全域が物静かだったのは桃子姫様が霊魂巨神木の神通力で敵軍を全滅させたのか…)
崇徳丸は納得する。
「崇徳丸様は…こんなにも妖女みたいな私に戦慄しないの?」
桃子姫は崇徳丸に恐る恐る問い掛ける。
「私なら桃子姫様が人外の妖女でも戦慄しませんよ…桃子姫様が正真正銘妖女だったとしても桃子姫様は桃子姫様なのですから♪」
崇徳丸は笑顔で即答する。
「崇徳丸様…」
無表情だった桃子姫に笑顔が戻ったのである。
(桃子姫様♪)
笑顔が戻った桃子姫に崇徳丸は一安心する。
「崇徳丸様?」
「如何されましたか?桃子姫様?」
彼女は赤面した表情で瞑目するなり…。恐る恐る崇徳丸に接吻したのである。
「えっ…」
(桃子姫様!?)
桃子姫の接吻に驚愕するものの…。彼女の神通力による効力なのか外傷と呪力による体内の熱気が一瞬で浄化されたのである。
(体内の熱気と外傷が浄化されるなんて…ひょっとして桃子姫様の神通力とやらは治癒力は勿論…死霊餓狼の呪詛でさえも浄化出来るのか…)
すると突然…。
「ぐっ!」
桃子姫は吐血する。
「桃子姫様!?大丈夫ですか!?」
「崇徳丸様…」
桃子姫は恐る恐る崇徳丸に赤子を手渡したのである。
「崇徳丸様…私は…」
最早精神的にも肉体的にも疲弊した半死半生の状態であり深呼吸が非常に重苦しくなる。
「私にとって…崇徳丸様が居候してから…毎日が幸福だったのよ…」
桃子姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
(桃子姫様…)
「桃子姫様…私こそ…」
桃子姫は涙目で赤子を凝視するなり…。
「唯一の心残りなのは…無事に出産した赤ちゃんと…一緒に生活出来ないのが何よりも残念なのよね…」
すると彼女の肉体が血紅色の粒子状の発光体へと変化したのである。
「えっ?桃子姫様!?」
桃子姫は笑顔で密着するなり…。
「崇徳丸様…精一杯長生きしてね♪」
(私は未来永劫天国の胡桃姫と一緒に見守るからね♪)
無数の血紅色の発光体へと変化した彼女は天空にて消滅する。
(桃子姫様…勿論約束しますよ…)
崇徳丸は息絶えた桃子姫の安眠により一晩中落涙したのである。
(桃子姫様…私は如何すれば…)
後日の早朝…。東国から崇徳丸の家来が訪問する。
「西国では一体何が!?」
西国の農村地帯全域が血塗れであり武陵桃源とは程遠い地獄絵だったのである。
(崇徳丸様は無事なのでしょうか…)
家来は崇徳丸の安否が気になる。すると遠方の山間部より血塗れの武士が佇立するのを確認したのである。
「なっ!?何者でしょうか?」
家来は恐る恐る近寄るなり…。
「崇徳丸様!?崇徳丸様ですね!?」
崇徳丸は家来に気付いたのである。
「誰かと思いきや…貴様だったのか…如何して東国の貴様が西国なんかに?」
「敵国である南軍と北軍が西国に出兵するとの悪巧みを察知しましてね…私自身崇徳丸様の安否が気になったのですよ…」
「今更祖国を裏切った逆賊の安否を確認するなんて…貴様は馬鹿者だな…」
「祖国を裏切ったとしても崇徳丸様は正真正銘夜桜一族の最上級武士ですからね♪崇徳丸様が無事なのが何よりですよ♪」
家来は笑顔で発言する。
「えっ?崇徳丸様…誰の赤子なのでしょうか?」
家来は誰の赤子なのか気になったのである。
「誰のって…彼女は私の愛娘だよ…」
家来は驚愕する。
「えっ!?崇徳丸様の愛娘ですと!?」
家来は大喜びしたのである。
「ひょっとして崇徳丸様は西国で令夫人と婚姻されたのですね♪」
家来は大喜びするものの…。
「えっ?崇徳丸様?突然如何されたのですか?」
崇徳丸は涙腺から涙が零れ落ちる。
「私の女房は…」
崇徳丸は西国での出来事を一部始終告白したのである。
「崇徳丸様の令夫人は先程永眠されたのですね…」
崇徳丸は家来に要望する。
「所詮私は祖国を裏切った人間だからな…斬首刑は覚悟する…」
恐る恐る赤子を凝視するなり…。
「彼女を…私の愛娘を東国の村里で養育出来ないか?」
「何も斬首刑なんて…東軍の武士達には私が説得しますから!崇徳丸様の愛娘は是非とも東国で養育しますから♪彼女は正真正銘…夜桜崇徳丸様の愛娘なのですからね♪」
「感謝するよ…」
すると崇徳丸は断言したのである。
「本日より私は人殺しの武士ではなく…僧侶として活動したい…」
「なっ!?崇徳丸様が僧侶ですと!?突然如何されたのですか!?崇徳丸様らしくないですね…」
崇徳丸の発言に驚愕する。
「私は大勢の人間達を斬殺したからな…金輪際僧侶として私自身の悪逆非道を贖罪しなければ…」
「何も悪逆非道なんて…崇徳丸様は大勢の敵兵達を仕留められたかも知れませぬが…大勢の村人達は勿論…東国に粉骨砕身されたのも事実ですよ!」
「敵国の敵兵であっても所詮は人間…私が人殺しなのは事実であるからな…」
(崇徳丸様…)
崇徳丸の表情を直視するなり…。
「崇徳丸様が僧侶として活動されたいのであれば…私は尊重しますよ…」
家来は崇徳丸の意志を承諾したのである。
メンテ
桜花姫 ( No.19 )
日時: 2021/08/16 20:10
名前: 月影桜花姫

第六話

愛娘

天地歴三千十年六月一日より夜桜崇徳丸は僧侶として活動…。同年五月三十日に誕生した愛娘は東国の武家屋敷にて養育される。崇徳丸が僧侶として活動してからも各村落では局地戦が頻発したのである。大勢の武士達は勿論…。村人達が局地戦によって死去したのである。西国にて出兵した南軍と北軍は妖女へと覚醒した桃子姫の猛反撃によって領主達と数百人もの兵卒達を喪失…。総兵力喪失の悪影響からか両勢力は唐突に弱体化したのである。弱体化した南国と北国の両勢力は東国により本格的に属国化…。東国の東軍は太平神国の東国武士団として太平神国全域を牛耳ったのである。東国の天下統一により百年以上長期化した弱肉強食の戦乱時代は本格的に終息…。天地歴三千十一年一月一日より太平神国は共存共栄と安寧秩序の安穏時代へと突入したのである。弱肉強食の戦乱時代から共存共栄の安穏時代へと変化した数年後…。桃子姫は伝説の元祖妖女として国全体の村人達から認識される。桃子姫が死没してより十二年後の天地歴三千二十年五月三十日の真昼…。各村落にて僧侶として活動中の夜桜崇徳丸は久方振りに祖国である東国の武家屋敷へと訪問したのである。すると武家屋敷の玄関口より小柄の美少女が笑顔で崇徳丸に力一杯密着する。
「父様♪」
「【小梅姫】だったか♪元気そうだな♪」
小梅姫とは崇徳丸と桃子姫の愛娘である。崇徳丸は小梅姫との久方振りの再会に大喜びする。
「小梅姫は人一倍容姿端麗で美人さんだな♪」
「私が美人さんなんて…父様は大袈裟ね♪」
小梅姫は赤面するものの内心では大喜びしたのである。
「小梅姫…私は毎日が一晩中大忙しだから悪かったな…」
謝罪する崇徳丸に小梅姫は笑顔で返答する。
「父様…気にしないで♪私は大丈夫だから♪」
「小梅姫…」
すると突然…。何者かが崇徳丸の背中に接触する。
「えっ!?」
(誰かが私の背中を…)
崇徳丸は人気を感じるなり恐る恐る背後を凝視するものの…。
(誰かの気配は感じるのだが…)
すると小梅姫が笑顔で発言する。
「父様♪二人の女神様だよ♪」
「えっ?二人の女神様だって?」
(ひょっとして桃子姫様と胡桃姫様が…)
崇徳丸は涙腺から涙が溢れ出る。
「父様…大丈夫?」
小梅姫は落涙する崇徳丸を心配したのである。
「心配させちゃったね…小梅姫…私なら大丈夫だよ♪」
崇徳丸は笑顔で…。
「ひょっとすると女神様の正体は小梅姫の母さん達かも知れないよ♪」
「私の母様?」
「小梅姫?久方振りに母さん達の墓参りに出掛けないか?」
「母様達の墓参りに?」
「無理強いしないが…小梅姫が墓参りしたら天国の母さん達が大喜びするかも知れないよ♪小梅姫は私と桃子姫母さんの愛娘だからな♪」
彼女は一瞬困惑するものの…。笑顔で承諾する。
「母様の…墓参りしないとね♪父様♪」
「小梅姫♪」
崇徳丸は小梅姫と一緒に桃子姫と胡桃姫の墓参りに出掛ける。
メンテ
桜花姫 ( No.20 )
日時: 2021/08/16 20:12
名前: 月影桜花姫

第七話

野犬

天地歴三千五年八月中頃…。北国には【鬼殺丸】と名乗る最上級武士が北軍の強兵として各戦場で活躍する。鬼殺丸は年齢十五歳の青二才であるが…。外見のみなら好青年であり今迄の各戦場での功績から次期北軍の総大将に任命される。同年八月十五日の真昼の出来事である。鬼殺丸は久方振りの気分転換に南国の最高峰である荒神山の頂上より…。南国の絶景の景色を眺望する。
「南国はこんな時代に平穏だな…」
荒神山の頂上から眺望出来る景色は非常に絶妙であり空気も清涼である。荒神山全体は非常に物静かな雰囲気であり自然林からは僅少の風音が響き渡る。
「南国は荒武者の集合地帯って命名されるが…案外平和そうだな…」
南国は荒武者の集合地帯とも呼称され…。各国の領主達からは必要以上に畏怖される。領土の大半は農村地帯であり南軍の兵卒達も大半が農村の村人達である。
(長居し続けても無意味だな…)
「北国に戻ろうか…」
祖国の北国に戻ろうかと思いきや…。背後より気配を感じる。
(ん?)
「気配を感じるな…」
鬼殺丸は冷静の表情であるが…。警戒した様子で恐る恐る背後を直視する。すると鬼殺丸の背後には白色の野犬が一匹…。無表情で鬼殺丸を凝視したのである。
「此奴は…単なる野犬か…」
一安心するものの…。
「折角だ…」
鬼殺丸は護身用の拳銃を携帯したのである。
(異国の拳銃とやらが本当に役立つのか…)
「此奴で試射するか…」
鬼殺丸の性格は人一倍負けず嫌いな性格であるが非常に獰猛で野蛮であり戦場であれば相手が無抵抗の女性やら子供は勿論…。無力の老人であっても平気で殺害する残虐非道の荒武者である。場合によっては敵軍の攻撃で瀕死状態だった仲間も殺害…。自軍の将兵達からも畏怖されたのである。
「野犬よ…私に遭遇したのを後悔するのだな…」
鬼殺丸は拳銃を発砲…。野犬の前頭部に拳銃の銃弾が直撃したのである。銃撃された野犬は即死…。地面に横たわったのである。地面には野犬の鮮血により赤色に染色する。
「人間を打っ殺す場合でも…案外此奴は役立ちそうだな…」
鬼殺丸は祖国の北国へと戻ったのである。同年の九月一日…。北軍は東国が牛耳る金剛山への侵攻作戦を開始したのである。金剛山は東国の支配領域であるが金剛山を攻略出来れば無尽蔵の牢固石が確保出来…。東国への侵攻が容易くなる。北国の領主は即座に兵卒達を集結させ東国の金剛山侵攻作戦を開始させる。北国の根城より大勢の兵卒達が集結したのである。
「全軍覚悟せよ!」
北軍の侍大将が発言する。
「今回東国の金剛山を陥落させれば大量の牢固石も確保出来…大敵の東国を弱体化させられる絶好の機会である!総軍で奮闘すれば確実に勝利出来る戦闘であるぞ!」
直後…。北軍の兵卒達の士気が鼓舞したのである。
「金剛山を守備する東軍の総兵力は俺達よりも数倍上回るが…所詮奴等は烏合の衆である!相対する貴様達は歴戦の勇士なのだ!貴様達歴戦の精鋭達が奮闘すれば…確実に東軍の烏合の衆を容易に蹴散らせられる!」
今回集結した北軍の総兵力は推計三百人…。金剛山を守備する東国の総兵力は最低でも推計九百人であり兵力では圧倒的に不利であるものの…。今回の作戦に抜擢された北軍の兵卒達は歴戦の勇士達であり北軍最強の鬼神と呼称される鬼殺丸も抜擢されたのである。
「全軍!即刻進撃を開始するぞ!」
侍大将を先頭に北軍は東国の支配領域である金剛山への侵攻作戦を開始する。移動中…。二人の足軽が私語する。
「あんた…敵兵を何人殺せるか俺と競争しないか♪」
小柄の足軽が競争を提案するのだが…。大柄の足軽は嫌悪した様子で返答する。
「他人事氏の競争なんて…不謹慎だな…俺は即刻村里に戻りたいのに…」
足軽は農民が大半であり村里に戻りたい兵卒達も少なくない。大柄の足軽が返答すると小柄の足軽が…。
「あんたは巨漢なのに随分弱腰だよな♪敵兵を二百人以上打っ殺せば三石の米俵を獲得出来る絶好の機会なのに♪」
北国では敵国の兵卒を二百人以上殺害した場合は褒美として三石の米俵を譲渡される。敵軍の総大将…。強豪の強兵を斬首した場合は領主の側近として一生涯従事出来る。すると小柄の足軽は無口の鬼殺丸に競争を提案したのである。
「兄ちゃんよ♪あんたも敵兵を何人殺せるか俺と敵兵打っ殺し競争しないか?」
(此奴…命知らずだな…)
小柄の足軽に大柄の足軽が命知らずであると感じる。すると鬼殺丸が睥睨した表情で返答する。
「鬱陶しい…貴様は私に殺されたいか?」
「ひっ!」
鬼殺丸の威厳と目力に圧倒されたのか小柄の足軽は勿論…。周囲の兵卒達が鬼殺丸に畏怖したのである。鬼殺丸は北軍では最強の武人である反面…。味方であっても気に入らなければ殺害する。鬼殺丸が発言すると周囲は即座に沈黙したのである。北軍が進撃してより二時間後…。北国と東国の国境へと到達する。
「国境に到達したぞ!目的地の金剛山は間近だ!」
侍大将を先頭に北軍は再度金剛山へと直行したのである。金剛山の天辺には東軍の根城が増築され根城の表門には二人の番兵が警備する。真夜中であるが表門の番兵が無数の足音に気付いたのである。
「足音だ…味方の軍勢か?」
「こんな真夜中に味方の軍勢が行動するか?」
直後…。真正面の山道より大勢の武士達が天辺の根城へと突入する。
「なっ!敵襲だ!」
「北軍の奴等だな!」
旗印を直視すると敵軍は北軍であると認識…。根城内部の兵卒達が番兵の呼号に気付いたのである。
「敵襲だと!?」
守備隊の兵卒達は即座に抜刀する。すると進撃中の北軍は攻城兵器である破城槌で真正面の表門を破壊…。
「表門が破壊されたぞ!」
表門を突破した北軍は城内へと進撃したのである。
「全軍!東国の荒武者達を打っ殺せ!」
北軍の侍大将が命令したと同時に北軍の足軽…。武士達が東国の兵卒達に襲撃する。
「根城を守備しろ!敵軍を撃退するのだ!」
根城の城内は乱戦状態であり敵味方の鮮血…。肉片が城内に散乱したのである。北軍最強の鬼神…。鬼殺丸は神速の身動きと剣術を駆使しては接近する東国の兵卒達を瞬殺する。戦闘開始からの五分間で東国の兵卒達を十二人殺害したのである。
(雑魚ばかりか…)
鬼殺丸は根城の最上階へと直行する。同時刻…。根城の最上階には東国の総大将と側近が停留する。
「総大将…敵軍は北軍みたいです…」
「北国の奴等か…恐らく奴等は金剛山に埋没する牢固石を確保したいみたいだな…」
すると障子の奥側より見張り役達の悲鳴が響き渡る。
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
障子には赤色の血飛沫が飛散したのである。障子の血飛沫を直視すると総大将と側近は畏怖する。
「ひっ!」
「狼狽えるな…」
総大将は恐る恐る護身用の懐刀を抜刀したのである。すると障子が蹴破られる。
「貴様は一体…」
食人餓鬼を連想させる甲冑を装備した武士が出現したのである。右手には鮮血により赤色に染色した刀剣が確認出来る。
「私は…鬼殺丸…」
「鬼殺丸って…」
「貴様が北国最強の鬼神…鬼殺丸なのか!?」
鬼殺丸が名前を名乗ると総大将と側近は極度に畏怖するなり後退りする。
「貴様…城内の若武者達は?」
「今頃…撤退か…全滅しただろうな…」
総大将に問い掛けられた鬼殺丸は即答したのである。
「貴様…一体如何するのだ?」
恐る恐る問い掛ける総大将に鬼殺丸は再度即答する。
「如何するって…私は東国最強の軍神…夜桜崇徳丸みたいに相手が無抵抗でも手加減しない…」
直後…。鬼殺丸は神速の身動きにより総大将と側近の頭首を斬撃したのである。鬼殺丸は総大将の頭首を所持するなり…。最上階から脱出する。戦闘は継続中であり敵味方の兵卒達が乱戦したのである。鬼殺丸は一息するなり…。
「全員注目せよ!」
鬼殺丸の大声に敵味方の兵卒達が鬼殺丸に注目する。
「えっ?」
「一体何事だ?」
「鬼殺丸?」
鬼殺丸は東国総大将の頭首を敵味方に拝見させる。
「此奴を直視せよ!」
北軍は勿論…。東軍の兵卒達も愕然とした表情で東軍総大将の頭首を直視したのである。
「なっ!?総大将が…」
「斬首されたのか!?」
東軍の兵卒達は絶望したのか一目散に根城から逃走する。
「敵軍が撤退したぞ!俺達の大勝利だ!」
北軍の侍大将は勿論…。兵卒達は大喜びしたのである。侍大将は鬼殺丸に近寄るなり…。
「鬼殺丸♪見事だったぞ!今回で貴様は次期領主に確定したからな♪」
すると鬼殺丸は無表情で返答する。
「私には領主なんて不向きだ…」
「不向きだと?」
「私は徹底的に敵対者を斬首する…思う存分気に入らない人間を打っ殺せれば満足だ…」
鬼殺丸の発言に一瞬畏怖するも侍大将は笑顔で…。
「貴様らしい発言だな♪今後も思う存分大勢の敵兵を仕留めろよ…」
今回の戦闘で金剛山は北軍に襲撃され占拠されたのである。翌朝…。北軍は東軍の残存勢力殲滅を名目に金剛山の東側近辺に位置する村里への襲撃を実行したのである。村里を襲撃するものの…。東軍の残存勢力は皆無であり北軍の襲撃により数十人の村人が殺害される。
「畜生…結局東軍の残党は一目散に逃げやがったか…」
「ですが大量の米俵を入手出来ましたぜ♪」
東軍の残存勢力殲滅は達成出来なかったが…。大量の食糧を確保出来たのである。村里の中心地では兵卒達が飲酒するなり大声で談笑する。鬼殺丸は中心地のとある民家にて一人で焼酎を飲酒したのである。すると二人の兵卒達が民家に進入する。
「ん?あんたは鬼神の鬼殺丸か…」
大柄の兵卒が鬼殺丸に近寄る。
「あんたの昨日の活躍は絶大だったな♪」
「俺もあんたみたいに活躍したいぜ♪鬼殺丸みたいに活躍出来れば俺も今頃は北国の領主確定だな♪」
中柄の兵卒が発言する。すると鬼殺丸は無表情で…。
「私は単純に気に入らない人間を殺したいだけだ…私にとって地位も名誉も無価値であり不要…」
(此奴…無欲だな…)
二人とも鬼殺丸が無欲であると感じる。すると突然…。
「ん?誰だ?」
「村里の子供みたいだな…」
民家の板戸より血塗れの着物姿の少女が民家の玄関口へと進入したのである。少女の左手には出刃包丁が確認出来る。少女は鬼殺丸を睥睨するなり…。
「あんたが…あんたが私の父様と母様を殺した武士ね…」
少女は鬼神を連想させる表情で力一杯鬼殺丸を睥睨する。
「お嬢ちゃんよ…相手は北軍最強の武士だぜ♪お嬢ちゃんみたいな小娘なんて簡単に打っ殺されちまうぞ♪」
「此奴はお嬢ちゃんみたいな子供でも容赦しないからな♪死にたくなかったら即刻逃げちまいな♪」
鬼殺丸は無表情で少女に近寄る。すると少女は恐る恐る…。
「如何して…如何してあんたは私の父様と母様を殺したのよ…」
少女は目前で父親と母親が惨殺されたのである。少女の涙腺から涙が零れ落ちる。
「であればあんたも地獄で父ちゃんと母ちゃんに再会しな…」
「えっ?」
鬼殺丸は即座に抜刀すると少女の頭首を一刀両断…。室内には彼女の鮮血が飛散する。
「鬼殺丸…」
「此奴…本当に無慈悲だな…子供相手にも容赦しないとは…」
相手が子供でも容赦しない鬼殺丸に二人の兵卒達は畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。
「であれば今度は貴様達も小娘みたいに斬首されたいか?」
「ひっ!」
鬼殺丸に畏怖した二人の兵卒達は一目散に逃走する。
「所詮奴等も小心者だな…」
同時刻…。東国の中心地に位置する本拠地では北国の領土拡大により根城全体が大騒ぎする。
「北軍の領土拡大なんて本当なのかよ!?」
「如何やら本当らしい…金剛山の根城が奴等の少数精鋭の軍勢によって陥落したって…」
「金剛山の総大将も斬首されたらしいな…」
東軍の武士達は北軍の進撃に畏怖したのである。東国の領主達は即座に討伐部隊を編成する。一番に討伐部隊に抜擢されたのは東国の軍神と呼称される夜桜崇徳丸である。崇徳丸は鬼神を連想させる甲冑を装備…。愛刀である牢固石の刀剣を護身用に所持したのである。崇徳丸以外には推計八百人もの精鋭達が北軍討伐部隊として抜擢されたのである。東国中心地の根城より討伐部隊が集結する。
「俺達は即刻東国の領内に侵攻する北軍を撃退する!全員で奮闘すれば確実に撃退出来る戦闘であるぞ!」
東軍は侍大将を先頭に討伐部隊が追尾したのである。移動中…。崇徳丸に隣接する若齢の足軽が恐る恐る発言する。
「あんたは夜桜一族の夜桜崇徳丸様だよな?」
すると崇徳丸は即答したのである。
「勿論ですが…如何されましたか?」
「こんな場所で発言するのも不謹慎だが…正直あんたは自分の村里へは戻りたくないのか?俺は正直一目散に戻りたいよ…」
崇徳丸は一瞬沈黙するものの…。
「正直私は…祖国よりも西国に安住したいですね…」
崇徳丸の発言に足軽は一瞬驚愕する。
「西国に?意外だね…あんたは祖国に戻りたくないのか?」
崇徳丸は困惑した表情で…。
「正直東国の風習は堅苦しい…出来るなら私は少人数の武陵桃源の土地で安住したいですね…」
崇徳丸にとって東国の風習は堅苦しく苦痛だったのである。戦乱時代が終焉したら何者にも束縛されない場所に安住したいと思考する。
「武陵桃源か…」
すると足軽は笑顔で発言する。
「東国が無事に天下統一出来れば…西国で安住しなされ♪」
「感謝します♪私は貴方様の無事を切願しますよ♪」
「崇徳丸様♪勿論俺も崇徳丸様の無事を切願しますよ♪」
彼等は握手したのである。本拠地から移動してより二時間後…。周囲は非常に物静かであり清涼の風音が響き渡る。討伐部隊は金剛山の近辺に位置する村里の郊外へと到達するのだが…。
「なっ!?」
「村里では一体何が?」
彼等が直視したのは荒廃した村里である。人気は皆無であり腐敗した鮮血の悪臭が村里全体に蔓延する。
「襲撃されたみたいだな…」
崇徳丸は一瞬瞑目するなり…。
(無数の殺気を感じる…)
崇徳丸は幼少期から気配やら殺気を察知する感知能力が顕著であり人一倍敏感である。すると侍大将が恐る恐る崇徳丸に問い掛ける。
「崇徳丸?敵軍の兵力は何人か判別出来るか?」
問い掛けられた崇徳丸は即座に返答する。
「気配から判断して…敵軍の兵力は推定二百人前後かと…」
「二百人前後か…」
周囲の兵卒達は崇徳丸に驚愕したのである。
「崇徳丸はこんな場所からでも気配だけで敵軍の人数を判断出来るのか!?」
「本当に人間なのか?此奴は?」
侍大将が村里への突入を合図する。
「全軍…慎重に突入しろ…敵兵を発見すれば即座に仕留めよ…」
討伐部隊は侍大将の合図と同時に恐る恐る村里へと潜入したのである。村里に突入すると惨殺された村人達の遺体…。肉片やら鮮血が彼方此方に確認出来る。
「敵軍は村人達を殺したのか…」
すると移動中…。崇徳丸は腹部を斬撃された妊婦の遺体を発見する。
「奴等は妊婦にも手出ししたのか…」
崇徳丸は涙腺から涙が零れ落ちるなり…。恐る恐る両手で合掌したのである。先程一緒に談笑し合った足軽が恐る恐る崇徳丸に近寄る。
「あんたは敵兵からは極悪非道の悪鬼だって畏怖されるみたいだが…今現在のあんたは本当に仏様だよ…」
「こんな私が仏様か…」
足軽の一言に崇徳丸は内心嬉しくなる。
「俺達が頑張って殺し合いの世の中を終了させましょう!」
足軽の発言に…。
「勿論ですとも!」
彼等は再度村里の中心地へと直行する。討伐部隊は村里の中心地に到達したのである。村里の中心地には北軍の兵卒達が潜伏中であり東軍の彼等と対峙するなり…。
「奴等…東国の軍勢ですぜ…」
討伐部隊の総大将が恐る恐る北軍の兵卒達に問い掛ける。
「貴様達か!?村里を襲撃したのは…」
すると北軍の兵卒が即答する。
「勿論俺達だよ♪俺達にとって東国の領内に居住する奴等は全員殲滅の対象だからな!」
「俺達は相手が女人だろうと子供だろうと打っ殺すぜ♪服従するなら別だけどな♪」
討伐部隊の兵卒達が彼等の言動に腹立たしくなる。
「外道が…」
北軍の侍大将が刀剣を抜刀する。
「こんな場所に東軍の奴等が出向くとは…非常に好都合である♪」
北軍の侍大将は合図したのである。
「全軍!東国の奴等は憎悪すべき対象だ!皆殺しにせよ!」
侍大将の合図と同時に北軍の兵卒達が殺到する。
「奴等を討伐せよ!」
東軍の侍大将も反撃を合図したのである。北軍の軍勢と討伐部隊の軍勢が衝突…。乱戦状態へと発展する。同時刻…。大勢の将兵達の雄叫びが村里全域へと響き渡り移動中の崇徳丸と若齢の足軽が兵卒達の雄叫びに気付いたのである。
「如何やら中心地で戦闘が開始されたみたいですね…」
「俺達も参戦しましょう♪崇徳丸様!」
すると道中…。三人の北軍将兵と遭遇したのである。
「ん?貴様達は東軍の奴等か?」
三人の将兵達は即座に抜刀する。崇徳丸と若齢の足軽は警戒した様子で刀剣を抜刀したのである。
「如何やら北軍の敵兵みたいですね…」
「如何しますかい?崇徳丸様?」
「仕留めなければ私達が殺されます…」
すると北軍の兵卒が崇徳丸の名前を傾聴するなり…。
「貴様は東国の軍神…夜桜崇徳丸か?」
「貴様によって俺達の戦友は大勢殺されたのだ!復讐する!」
崇徳丸は今迄の戦闘で数十人もの敵兵を斬殺したのである。味方からは英雄として扱われるも…。敵軍からは憎悪すべき対象として認識されたのである。
「覚悟せよ!」
三人の兵卒達が崇徳丸に殺到するも…。崇徳丸は神速の身動きにより数秒間で三人の兵卒達を瞬殺したのである。
「ぎゃっ!」
「ぐっ!」
彼等は地面に横たわる。三人の敵兵を瞬殺した崇徳丸に若齢の足軽は愕然とする。
「一瞬で三人の敵兵を瞬殺するなんて…あんたは本当に軍神だな…」
「私は人間ですよ…」
返答する崇徳丸に若齢の足軽は苦笑いしたのである。
「私達は即刻討伐部隊に合流して…敵軍に反撃しなくては…」
移動する直前…。
「なっ!」
(殺気!?)
「今度の相手は私だ…」
鬼神を連想させる甲冑を装備した武士が左手に拳銃…。右手には刀剣を装備した状態で拳銃を崇徳丸に発砲する。
「崇徳丸様!」
若齢の足軽が崇徳丸を庇護…。胸部に拳銃の銃弾が命中する。
「ぐっ!」
若齢の足軽が地面に横たわる。
「大丈夫ですか!?」
すると若齢の足軽が…。
「崇徳丸様…無事で…何よりです…」
若齢の足軽は息絶える。
(如何して気付けなかった…畜生…)
崇徳丸の涙腺より涙が零れ落ちる。すると敵軍の武士が落涙する崇徳丸に近寄る。
「今度こそ貴様を仕留める…東国の軍神…夜桜崇徳丸…」
崇徳丸は強烈なる目力で敵軍の武士を睥睨するなり…。
「私を殺したいか?崇徳丸…」
敵軍の武士は無表情で名前を名乗る。
「私の名前は北国の鬼神…鬼殺丸だ…貴様も地獄で仲間と再会しな♪」
普段は無表情の鬼殺丸であるが…。一瞬微笑したのである。
「鬼殺丸?」
(此奴が北軍最強の武人か…)
鬼殺丸も東国…。南国の武士達から畏怖される一人である。
「覚悟しろ!崇徳丸!」
鬼殺丸は神速で崇徳丸に急接近…。
「鬼殺丸!」
崇徳丸も全身全霊で鬼殺丸に突撃する。両者が交差した直後…。
「ぐっ!」
鬼殺丸が胸部より出血したのである。
「崇徳丸…貴様…」
崇徳丸の背中を睥睨するなり…。地面に横たわる。
「鬼殺丸…所詮貴様では私を殺せない…」
「畜生が…」
崇徳丸は無表情で横たわる鬼殺丸に近寄る。
「貴様は今迄…大勢の村人達を惨殺したみたいだな…」
「村人達を…惨殺だと?」
横たわる鬼殺丸に断言する。
「今後は罪滅ぼしとして大勢の村人達を守護しろ…急所は無事だ…貴様なら遣り直せる…」
崇徳丸は即座に村里の中心地へと移動したのである。
(何が…)
「何が罪滅ぼしだ!崇徳丸!貴様だって大勢の足軽を打っ殺しただろ!」
普段は冷静であり無表情の鬼殺丸であるが…。今回ばかりは崇徳丸の発言に鬼殺丸の表情が鬼神の表情へと変化する。同時刻…。崇徳丸は村里の中心地へと移動すると殺到する敵兵を無我夢中に仕留める。最初は互角に交戦するが崇徳丸の参戦により北軍は兵力の半分以上を喪失…。北軍は後退したのである。
「畜生!東軍の奴等!」
すると血塗れの兵卒が北軍の侍大将に近寄るなり…。
「戦闘を継続し続ければ軍勢が全滅します!金剛山に撤退しましょう!」
「止むを得ないな…」
侍大将は決断する。
「全軍金剛山に撤退するぞ!」
侍大将の撤退の合図と同時に北軍の軍勢は一目散に金剛山へと撤退したのである。討伐部隊の侍大将が笑顔で崇徳丸に近寄る。
「今回も見事だったぞ♪崇徳丸♪貴様の活躍で敵軍を撃退出来たぞ!」
崇徳丸は落涙する。
「ですが今回の悲劇で…大勢の仲間達…無関係の村人達が殺されたのです…」
「崇徳丸…」
侍大将は沈黙したのである。崇徳丸は精神的にも肉体的にも疲弊したのか東側に位置するとある民家にて一休みするのだが…。
「えっ!?」
民家には両目を失明した少女が血塗れの状態で横たわる。
「北軍の奴等はこんな少女にも…」
横たわった状態の少女に崇徳丸は悲痛に感じる。すると直後…。少女が再度呼吸し始めたのである。
「なっ!?」
少女は失明した状態であるが…。恐る恐る一休みする崇徳丸に接触したのである。
「貴方様は…味方の…将兵ですか?敵兵ですか?」
瀕死の少女に問い掛けられた崇徳丸は落涙した様子で…。
「安心しなさい…私は…味方の将兵だよ…」
崇徳丸が返答すると少女は微笑む。
「貴方様は…味方の…将兵でしたか…」
直後…。瀕死の少女は息絶える。
(力尽きたか…)
崇徳丸は戦闘の悲惨さを痛感する。崇徳丸は即座に中心地へと戻ったのである。
「侍大将…」
「崇徳丸か…大丈夫なのか?」
問い掛けられた崇徳丸は即答する。
「大丈夫です!」
崇徳丸の様子に侍大将は一安心したのである。すると崇徳丸は侍大将に意見する。
「即刻…北軍の奴等から金剛山を奪還しましょう!」
崇徳丸の意見に侍大将は困惑したのである。
「金剛山を奪還出来るのであれば奪還したいが…将兵達は体力を消耗した状態だ…北軍から金剛山を奪還するなら明日の早朝からでも…」
「明日の早朝なんて悠長過ぎます!敵軍の増援が到達すれば何もかもが水の泡ですよ!」
すると周囲の兵卒達も崇徳丸の意見に賛同する。
「勿論ですよ!即刻奴等から金剛山を奪還しましょう!」
「俺達なら思う存分大暴れ出来ますよ♪」
「金剛山から敵軍を蹴散らしましょう!」
侍大将は彼等の闘志に圧倒される。
「貴様達…」
侍大将は一瞬瞑目するなり…。
「即刻金剛山を奪還するか!」
奪還作戦を決断した討伐部隊は即座に金剛山奪還作戦を開始する。金剛山は間近であり十数分で到達したのである。占拠された根城からは無数の火縄銃…。火矢が乱射され討伐部隊は百人以上の将兵達が死傷するも洗い浚い突破したのである。金剛山の根城へと到達した討伐部隊の将兵達は全身全霊で敵陣へと突入…。北軍を圧倒したのである。崇徳丸も十四人の敵兵を斬殺…。最上階へと単身で移動したのである。
「最上階だな…」
すると背後より火縄銃を発砲されるも感知能力により火縄銃の銃弾を一刀両断…。
「あんたが総大将だな…」
火縄銃で狙撃したのは北軍の侍大将である。
「此奴は東国の軍神…夜桜崇徳丸か…」
侍大将は再度弾丸を装填させる。
「今度こそ夜桜崇徳丸!貴様を仕留める…軍神の貴様を仕留められれば東軍全体は総崩れしたのも同然であるからな♪」
侍大将が再度火縄銃で崇徳丸を狙撃する直前…。崇徳丸は神速の身動きにより火縄銃を両断したのである。
「なっ!?」
「降参しろ…あんたでは私は仕留められない…」
崇徳丸は最上階へと戻ろうかと思いきや…。背後より北軍の侍大将は護身用の懐刀で斬撃しに接近する。
「死滅しろ!崇徳丸!」
崇徳丸は即座に殺気を察知すると即座に猛反撃…。侍大将の胸部を斬撃したのである。
「ぎゃっ!」
侍大将は胸部を斬撃され即死する。崇徳丸は無表情の様子で最上階へと戻ったのである。敵軍の敗残兵は北国へと撤退…。侍大将の戦死により金剛山奪還作戦は北軍討伐部隊の勝利に終結する。同日の真夜中…。崇徳丸との戦闘で胸部を斬撃された北軍敗残兵である鬼殺丸は血塗れの状態で東国のとある山奥の夜道を徘徊する。
「ぐっ!」
(崇徳丸…)
崇徳丸の発言を想起すると腹立たしくなる。
「誰が贖罪なんて…」
(今度こそ…私が彼奴に復讐する…)
すると直後である。周囲より胸騒ぎを感じる。
(胸騒ぎか…)
「一体何が?」
突然の胸騒ぎにより周囲を警戒したのである。恐る恐る背後を直視するのだが…。
「背後には何も…」
気配は感じるも背後には何も存在しない。疲労による誤認識かと思いきや…。
「なっ!?」
鬼殺丸の前面より一体の異形の化身が出現したのである。
「此奴は一体…」
異形の化身とは全身の皮膚が血塗れであり小柄の肉体…。両目の眼球が噴出した不吉の風貌である。
「ひょっとして近頃村人達が大騒ぎした…悪霊か?」
(名前は…食人餓鬼だったか?)
食人餓鬼はふら付いた身動きで鬼殺丸に近寄る。彼自身悪霊の存在は否定的であり実際に悪霊と遭遇する以前は子供騙しであると揶揄したが…。
「こんな悪霊が本当に実在するなんて…」
鬼殺丸は睥睨すると即座に抜刀する。
「私と勝負するか…悪霊!?」
神速の身動きにより接近する食人餓鬼の頭部を斬首…。瞬殺したのである。
「悪霊でも所詮は雑魚か…」
(こんな程度では其処等の子供でも打っ殺せるな…所詮悪霊なんて…)
すると周辺の地中より無数の食人餓鬼が出現する。
「私を食い殺したいか?悪霊?」
無数の食人餓鬼が鬼殺丸に殺到するも食人餓鬼は非常に貧弱であり簡単に仕留められる。二分間で地面には数十体以上の食人餓鬼の肉片…。血肉が散乱したのである。
「終了したか?」
(他愛無いな…)
直後…。背後より無数の食人餓鬼が融合した人型の肉塊が出現する。
「今度の相手は百鬼食人餓鬼か…」
百鬼食人餓鬼の体表の頭部が鬼殺丸を睥睨するなり…。高熱の火炎を放射したのである。
「火炎攻撃か!?」
鬼殺丸は神速の身動きで火炎攻撃を回避する。
(此奴が相手なら多少手応えを感じられそうだな…)
神速の身動きにより百鬼食人餓鬼に接近すると一刀両断…。百鬼食人餓鬼の肉体が無数の肉片へと分裂したのである。
「ん?」
分裂した肉体が融合化すると複数の食人餓鬼に変化する。
(今度も食人餓鬼か…鬱陶しい…)
鬱陶しいと感じるも複数の食人餓鬼を瞬殺したのである。
「面白くないな…」
背後から別物の気配を察知…。背後を警戒すると甲冑を装備した巨体の骸骨が出現したのである。
「此奴は骸骨荒武者?戦死者達の亡霊か…」
(悪霊でも手応えを感じられそうな相手が出現したか♪)
鬼殺丸は内心大喜びする。二体の骸骨荒武者は抜刀すると鈍足で鬼殺丸に殺到したのである。
「鈍間が…」
骸骨荒武者は刀剣で斬撃するも容易に回避される。
(こんな鈍間では私には通用しないぞ…)
鬼殺丸は急接近…。刀剣で一体の骸骨荒武者に腹部を斬撃するのだが骸骨荒武者の鎧兜は予想以上に硬質であり鬼殺丸の刀剣が屈折したのである。
「なっ!?」
(私の刀剣が…)
愕然とした鬼殺丸に骸骨荒武者は鬼殺丸の左腕を斬撃…。
「ぐっ!」
鬼殺丸は左腕を切断されたのである。
(北国の鬼神である私が…悪霊相手に左腕を…)
地面は赤色の血液により染色する。
「畜生が…」
(本調子であれば…こんな悪霊…簡単に…)
最早戦闘継続は不可能であると判断…。鬼殺丸は一目散に逃走したのである。逃走してより十数分後…。悪霊から逃走し続けた鬼殺丸であるが精神的にも肉体的にも疲弊したのか獣道の道中にて横たわる。
(今夜が…私の最期みたいだな…)
出血多量が影響したのか鬼殺丸は瀕死の状態であり肉体は刻一刻と衰弱化する。
(夜桜崇徳丸…彼奴を仕留められなかったのは…非常に心残りだな…)
崇徳丸の存在を想起したのである。数分後…。極度の死臭と強烈なる殺気を感じる。
(極度の死臭と殺気…今度は何が出現した?)
正体不明の不吉の気配は刻一刻と横たわる鬼殺丸に急接近する。数秒後…。全身が血塗れで規格外に巨体の野犬が出現したのである。
「野犬?」
(随分巨体だな…)
左側の前頭部が白骨化した状態であり巨体の野犬は正真正銘悪霊であると認識出来る。
(野犬の…悪霊なのか?)
口先には咀嚼された肉片らしき物体を確認…。何かを捕食したのであると推測する。
「野犬の悪霊…俺を…食い殺したいか?」
すると野犬の悪霊は人語で発言し始める。
「私は死霊餓狼…」
(死霊餓狼…此奴は悪霊の分際で喋れるのか…)
鬼殺丸は衰弱化した小声で問い掛ける。
「死霊餓狼だったか?貴様は一体何者だ?」
すると死霊餓狼は即答する。
「私は貴様によって殺された野犬の悪霊である…」
死霊餓狼の発言に鬼殺丸は想起したのである。
(此奴…南国の荒神山で私が打っ殺した…野犬の亡霊だったのか…)
死霊餓狼の前頭部を直視すると銃弾の傷跡が確認出来る。
「俺が打っ殺した野犬の亡霊が…地獄から復活するとは…」
すると鬼殺丸は恐る恐る…。
「俺を食い殺したいか?死霊餓狼…俺を食い殺したければ思う存分食い殺せよ…最早俺の肉体は虫の息だぜ…」
死霊餓狼は返答する。
「極悪非道の人間よ…貴様は無間地獄で無限の苦痛を体感せよ…」
死霊餓狼の発言に鬼殺丸は僅少であるが微笑したのである。
「地獄か…」
(私にとっては本望だ…)
直後…。
「極悪非道の人間よ…貴様の肉体を頂戴する…」
死霊餓狼は衰弱化した鬼殺丸の肉体を咀嚼したのである。
メンテ
桜花姫 ( No.21 )
日時: 2021/08/16 20:13
名前: 月影桜花姫

第八話

悪霊征伐

天地暦三千四十年六月十七日…。人間の崇徳丸と妖女の桃子姫の混血である小梅姫は悪霊征伐に尽力したのである。彼女は生真面目で熱血漢である父親の崇徳丸を人一倍憧憬…。村人達を襲撃する無数の悪霊を退治したのである。近頃は各地で悪霊が出現するのだが各国の武士団は勿論…。東国の武士団に悪霊退治の依頼が殺到するも何方も静観状態であり実質無関心だったのである。戦乱時代に疲弊した武士達は悪霊を征伐する気力が皆無であり東国唯一の妖女…。小梅姫が悪霊の征伐を決意する。
「目的地の恐山に到着したわね…」
恐山は西国に聳え立つ小山…。温泉郷である天霊山とは対照的であり滅多に誰も近寄らない場所だったのである。近年では恐山の近辺で生活する村人達が悪霊に襲撃される事件が多発…。噂話は各地に出回ったのである。
「今回も悪霊を退治するわよ…」
普段は人一倍穏和の小梅姫だが…。一度決定した物事は徹底的に完遂させる生真面目の性格である。十数分後…。小梅姫は恐山の頂上へと到達する。
「えっ!?」
すると頂上には小柄の人影らしき気配が確認出来る。小梅姫は恐る恐る人影に近寄る。
「貴方は一体何者なの?」
彼女は非常に警戒した様子であるものの…。人影の正体とは小柄の老婆だったのである。
「誰かと思いきや…貴方は老婦人でしたか?失礼しました…」
小梅姫は小柄の老婦人に謝罪する。すると老婦人は笑顔で…。
「こんな私が老婦人なんて♪あんたは上品だね♪」
すると老婦人は名前を名乗る。
「私は単なる通りすがりの薬屋…蛇骨鬼だよ♪」
「蛇骨鬼様ですか…こんなにも不吉の恐山で一体何を?」
問い掛けられた蛇骨鬼は即答する。
「暇潰しだよ♪こんな暗闇の場所で食事するのが私の趣味なのさ♪」
「趣味でしたか…」
小梅姫は苦笑いしたのである。蛇骨鬼は地面の土石に土鍋を慎重に設置…。土鍋に野菜やら新鮮そうな魚類を調理する。
「あんたも如何かな?」
「私は…別に…」
すると直後…。小梅姫の腹部から腹鳴が響き渡る。
「えっ…」
小梅姫は赤面する。
「肉体は正直だね♪空腹だろ…」
蛇骨鬼は小梅姫に小皿を手渡したのである。
「折角ですし…私も頂戴しますね…」
一瞬躊躇したものの食いしん坊の小梅姫は遠慮しなかったのか率直に味見する。
「美味ですね♪」
鍋物の料理を頬張る。今度は瓢箪を小梅姫に手渡したのである。
「焼酎ですか?私は正直酒類が苦手で…」
「安心しな…天然水だから…」
「であれば安心ですね♪」
すると蛇骨鬼は問い掛ける。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですか?」
小梅姫は自身の名前を名乗る。
「私は小梅姫です♪出身地は西国ですが…今現在の住居は東国です…」
「あんた…東国の人間だったのかい?」
人間の一言に反応したのか小梅姫は恐る恐る…。
「失礼なのですが…私…本当は人間とは無縁の…妖女なのです…」
妖女の一言に蛇骨鬼は反応する。
「えっ!?妖女だって!?」
彼女は幼少期から一際美人と評判であり東国の小町娘からは疫病神の化身と揶揄されたのである。今迄は気にしなかったが近頃普通の人間には不可能である摩訶不思議の妖術に自覚し始める。直接特定の物体と接触しなくとも特定の物体を浮遊…。相手を睡眠させる妖術が無意識的に発動され自身が普通の人間とは異質的存在である妖女と自覚し始めたのである。
「あんたは妖女の子供なのかい?」
蛇骨鬼に問い掛けられると小梅姫は返答する。
「無論です…」
「こんなにも暗闇の恐山で妖女の子供と遭遇するなんて…奇遇だね♪」
蛇骨鬼は笑顔で発言したのである。
「私の母親は…桃子姫って名前の女性なのです…勿論彼女も妖女ですよ…」
「桃子姫か…」
今現在では西国出身者である桃子姫の存在は元祖妖女と認識され…。各地の村里では伝説の一人として熟知される。すると蛇骨鬼は笑顔で…。
「初見からあんたは普通の人間とは無縁だと認識出来たよ♪」
「えっ?蛇骨鬼様…」
「あんたの雰囲気は普通の人間の雰囲気とは異質的だったからね♪」
笑顔で発言する蛇骨鬼であるが…。突如として蛇骨鬼の表情が無表情に変化する。
「蛇骨鬼様?如何されましたか?」
蛇骨鬼の表情の変化に小梅姫は一瞬不安がる。すると蛇骨鬼は小声で…。
「私も…本当は神族の一員だからね…」
「えっ!?神族ですって!?」
神族の一言に小梅姫は驚愕したのである。
「あんたは大袈裟だね♪別に私が神族だからって驚愕しなくても…」
「ですが神族って…伝承では大昔に全滅したって…」
神族とは数百万年前の地上界を支配した伝説の種族…。多種多様の生命体の姿形に変化が可能であり摩訶不思議の特殊能力を所持する摩訶不思議の種族だったのである。
「大昔に人間達との大戦争で私以外の神族は全滅しちゃったけれどね…」
数万年前の古代時代に勃発した大戦争で大勢の神族が殺害…。迫害されたのである。今現在生存が確認出来るのは南国の蛇骨鬼のみである。
「古代時代の大戦争ですか…ですが如何して摩訶不思議の特殊能力を所持する神族が無力の人間達を相手に敗北したのでしょうか?」
小梅姫の問い掛けに蛇骨鬼は即答する。
「人間達と大戦争する以前の出来事だけどね…地上界の大天災として認識される魔獣との死闘で大半の神族が殺されちゃったのが最大の主要因だね…」
数百万年前の太古の出来事である。地上界の大天災として認識される天空の魔獣の出現により地上界は荒廃化され…。大勢の神族が殺害されたのである。天空の魔獣は神族の神力で暗闇の深海底に封印されたが…。魔獣との死闘の悪影響により神族は弱体化したのである。
「今現在では私以外の神族は死滅しちゃったよ…」
「大変でしたね…神族も…」
「あんたは信用するかい?今時は昔話だって揶揄されるがね…」
「私は信用しますよ!」
問い掛けられた小梅姫は信用すると断言する。
「あんたは純粋だね♪」
すると突然である。蛇骨鬼の肉体が白煙に覆い包まれ…。白色の大蛇に変化したのである。
「えっ!?蛇骨鬼様が…白色の大蛇に!?」
「吃驚したかい♪白色の大蛇こそ私の本来の姿形だよ…」
蛇骨鬼の正体は白色の蛇神であり本来の姿形は白色の大蛇であるが…。普段は小柄の老婦人として生活する。
「私と蛇骨鬼様…似た者同士ですね…」
変化を解除すると大蛇の状態から人間の老婦人の姿形に戻ったのである。
「小梅姫だったかね?大変だろうが…あんたも頑張りな♪」
「勿論ですとも♪」
すると蛇骨鬼は恐る恐る…。
「あんたはこんなにも不吉の恐山で一体何を?」
問い掛けられた小梅姫は即答する。
「勿論悪霊征伐ですよ!近頃は恐山に無数の悪霊が出現するとの噂話を熟知しましてね…」
「悪霊征伐ね…大変だろうが頑張りなよ♪最近は悪霊事件が各地で頻発するからね♪戦乱時代の反動だろうが…」
戦乱時代にも悪霊は出現するが安穏時代に突入してからは悪霊が出現する頻度が増加したのである。
「私はあんたを見届けるよ…悪霊なんかに殺されないでよね♪」
「勿論ですよ!」
断言した小梅姫は即座に下山し始める。彼女の周囲は森林浴であるものの…。真夜中では暗闇の樹海同然である。すると彼女の背後から異様の気配を察知する。
「突然胸騒ぎが…」
(一体何事かしら?)
恐る恐る慎重に背後を警戒するのだが…。彼女の背後には何も存在しない。
「私の勘違いかしら?」
誤認識かと思いきや…。
「何よ…」
背後の土中から小柄の人影が無数に出現したのである。
「えっ…怨霊達!?」
無数の人影は暗闇によって姿形の認識が非常に困難であるものの遺体の死臭が近辺を充満させる。全身が血塗れの状態であり全身の皮膚の腐敗が原因なのか左右両方の眼球と腹部の内臓やら胃腸が噴出した醜悪なる容姿…。そして皮膚と人骨のみの肉体であり全身は鮮血によって赤色へと変色した悪霊である。
「死滅した人間達の末路かしら…」
体格的には人間の女性よりも一回り小柄であり乳児の体格であるものの…。外見による男女の区別は出来ない。動作は非常に鈍足であり発語も支離滅裂である。
「此奴は悪霊の食人餓鬼だわ…」
無数の食人餓鬼は生者である小梅姫に殺到する。
「恐山の霊力の原因は食人餓鬼だったのね…」
普通の人間であれば畏怖しても可笑しくない光景であるが…。小梅姫は畏怖しなかったのである。彼等が小梅姫の視界間近へと到達する寸前…。
「業火で浄化されなさい!」
業火の妖術を発動すると食人餓鬼の皮膚が高熱の自然発火により燃焼し始める。食人餓鬼の肉体は高熱の怪火によって瞬間的に炭化する。
「彼等は浄化されたみたいね…」
彼女の足場周辺には無数の焼死体が埋没したのである。
「一安心だわ…」
一安心した直後…。再度背後より霊力を感じる。
「霊力かしら?」
警戒するなり恐る恐る背後を直視すると数十体もの食人餓鬼がふら付いた身動きで小梅姫に近寄る。
「今度も食人餓鬼ね…」
今度は雷撃の妖術を発動する。
「成仏しなさい!」
両手より高熱の雷撃を放出…。殺到する無数の食人餓鬼を雷撃で仕留めたのである。
「悪霊は片付けたかしら…」
恐山に出現した悪霊を仕留めたのが影響したのか突如として恐山の霊力が感じられなくなる。
(霊力が感じられなくなったわ…)
「恐山の霊気は浄化されたみたいね…」
小梅姫は一安心する。
「事件は無事解決ね…」
小梅姫は祖国である東国の家屋敷へと無事戻ったのである。恐山での戦闘から三日後の真昼…。小梅姫は娯楽を主目的に中心街へと出掛けたのである。甘党の和菓子屋にて大好物の蓬餅を頬張る。
「美味だわ♪」
彼女は無我夢中に和菓子を頬張るものの…。隣席には小柄の老婦人らしき老女が訪問する。
「えっ?」
(誰かしら…)
小柄の老婦人とは三日前に恐山にて遭遇した神族の蛇骨鬼であり奇遇にも彼女と遭遇したのである。小梅姫は蛇骨鬼に気付いた瞬間…。
「ひょっとして蛇骨鬼様!?」
「誰かと思いきや…あんたは小梅姫だね♪こんな場所であんたと再会するなんて奇遇だね…」
蛇骨鬼は小梅姫との再会に大喜びする。
「本当よ…蛇骨鬼様が和菓子屋に?」
「偶然だよ♪一休みしたいだけさ♪あんたは和菓子屋が大好きなのかい?」
問い掛けられると小梅姫は笑顔で即答したのである。
「勿論ですよ♪私は和菓子が大好きです!」
すると蛇骨鬼は突発的に顔色を変化させる。
「あんたは悪霊退治屋として活躍中だったね…」
「勿論ですとも♪悪霊征伐は私の専門なので♪」
小梅姫は笑顔で断言する。蛇骨鬼は恐る恐る…。
「北国の村人達からの噂話だけどね…」
「えっ?北国の噂話ですって?」
小梅姫は一瞬動作を停止させる。
「近頃北国では村里の赤子が神隠しに遭遇するって…誘拐事件が頻発したみたいだよ…」
「神隠しですって?一体何事でしょうか?」
「村里の情報源では数週間前の出来事かな?神隠しの正体が人為的なのか…悪霊の仕業なのかは断言出来ないけど…」
「数週間前ですか…」
小梅姫は突発的に興奮し始める。
「一大事だわ!即刻北国に移動しないと!」
「小梅姫よ…今回は匪賊の可能性も否定出来ないよ…相手が極悪非道の匪賊だったら如何するの?」
蛇骨鬼の問い掛けに小梅姫は即答する。
「勿論私だって相手が人間の悪党であれば徹底的に征伐しますよ!弱者を救済するのが私の使命ですから…」
普段は温厚篤実の小梅姫であっても残虐非道の大悪党には手加減しない。
「こんな俗界でもあんたみたいな天女が存在するなんてね…」
「私が天女なんて…蛇骨鬼様は大袈裟ですね…」
(えっ♪私が天女ですって♪)
天女の一言に小梅姫は内心大喜びする。
「慢心は危険だからね…油断大敵だよ…」
「大丈夫ですよ…私は…」
(今迄だって沢山の悪霊を退治出来たし…)
今迄の戦闘では苦戦しても敗北は皆無だったのである。
「小梅姫の妖力は非常に絶大かも知れないが…妖力の慢心は絶体絶命にも直結するからね…」
(蛇骨鬼様は極度の心配性ね…)
正直口喧しいと感じるものの…。小梅姫は蛇骨鬼に感謝する。
「助言…感謝しますね…蛇骨鬼様♪」
小梅姫は即座に北国へと急行したのである。
(彼女は行動が神速だね…)
蛇骨鬼は和菓子屋から出歩く彼女を見届ける。小梅姫は一時間程度の徒歩によって北国の村里へと到着する。北国は全体的に殺風景であり農村地帯ばかりの過疎化した村里だったのである。
(北国は随分と田舎村なのね…)
不可解にも村人が誰一人として存在しない。
「無人地帯だわ…」
適当に田畑を散歩し続ければ赤子を抱き抱えた白装束の黒髪の女性を発見する。
「えっ?村里の親子かしら?」
小梅姫は即座に女性の視界間近へと接近すれば…。
(鮮血だわ…)
着物は全体的に血塗れであり皮膚の表面には無数の外傷が確認出来る。小梅姫は一瞬膠着したものの彼女の安否を確認する。
「大怪我されたのでしょうか…大丈夫ですか?」
母親は小梅姫の問い掛けに無言であり彼女を凝視…。睥睨し始める。
「何よ?」
睥睨された小梅姫は腹立たしくなったのか母親に睥睨し返したのである。
(彼女って本当に人間なのかしら?)
すると数秒後…。母親は一目散に逃走し始める。
「えっ!?」
小梅姫は即座に逃走中の母親を追跡する。
「如何して母親は私から逃亡したのかしら?」
母親は墓場へと潜入したのである。
「墓場だわ…」
小梅姫は恐る恐る慎重に墓場へと急行する。
「先程の母親は一体何者なのかしら?」
(彼女からは霊力らしい霊力は感じられなかったけれども…)
霊力は感じられないが…。赤子を抱き抱える母親らしき人物が俗界の人間なのか如何なのかは非常に疑問である。
「姿形から判断して…」
(恐らく彼女は現世とは無縁の存在なのは確実でしょうね…)
すると先程の女性らしき人物を発見する。早速近寄ろうかと思いきや…。
「えっ!?如何して全裸なのよ!?」
女性は着物を脱衣したのか全裸の状態である。彼女は赤子を抱き抱えた状態から生身の乳房と赤子の頭部を密着させる。
「あんた一体何を!?」
処女の彼女にとって非常に刺激的光景であり一瞬膠着する。小梅姫は墓石から母親の様子を観察したのである。
(母親は一体何を!?)
すると赤子の肉体が液体化したのか赤子の肉体諸共母親の体内へと瞬時に吸収する。
「赤子の肉体を吸収出来る霊能力…母親の正体って…」
(ひょっとして彼女の正体は悪霊の亡霊女房かしら?)
亡霊女房とは戦乱時代の戦乱は勿論…。天災やら疫病によって実子を亡くした母親達の無念の集合体である。赤子を体内へと吸収する性行為は実子に対する愛情表現である。小梅姫は咄嗟に亡霊女房の視界間近へと急行する。
「子供を誘拐する悪霊は私が成仏させるわ!覚悟しなさい…亡霊女房…」
小梅姫は体内の妖力を蓄積させるなり…。黒雲を天空全域へと発生させたのである。天空全域が黒雲に覆い包まれたかと思いきや…。黒雲から落雷を発生させる。落雷は亡霊女房の頭頂部直上へと落下したのである。
「直撃…」
視界間近が雷光によって両目を一瞬閉眼させる。落雷の破壊力は地面を容易く半球型に陥没させたのである。
「亡霊女房は?」
亡霊女房は肉体が非常に柔軟であり大量の鮮血やら手足の肉片は勿論…。体内の臓器やら胃腸が地面に散乱する。
「亡霊女房は仕留めたかしら?」
両目を開眼するなり再確認したのである。
「如何やら彼女を仕留めたわね…」
(生身の状態で落雷を直撃させれば即死よね?)
凄惨なる光景であるものの…。小梅姫は手応えを感じる。
「亡霊女房を討伐出来たし…退散しましょう…」
小梅姫は一安心したのか東国の武家屋敷へと戻ろうかと思いきや…。
(一体何かしら!?)
彼女の背後から僅少なる霊力の気配を瞬時に察知したのである。小梅姫は早速背後を凝視するなり…。
「厄介だわ…」
全身を粉砕された亡霊女房の血肉が融合し始める。粉砕された亡霊女房の肉体は数秒間で元通りに再生…。完全に復活したのである。
「粉砕された肉体が一瞬で元通りに復活するなんて…再生能力かしら?」
(亡霊女房って不死身なのかしら…)
亡霊女房は小梅姫の愕然とした表情を凝視するなり微笑み始める。亡霊女房は口先から猛毒の溶解液を噴射する。
「毒液!?」
小梅姫は咄嗟に妖力の防壁を発動…。妖力の防壁により溶解液から本体を守備したのである。防壁の周辺の地面は溶解液によって一瞬で液状化させる。
「如何やら危機一髪ね…」
(一歩間違えれば大怪我だったわね…)
小梅姫の表情が険悪化する。
「如何やら私は亡霊女房の霊能力を軽視し過ぎたのね…」
体内の妖力を蓄積…。今度は自爆の妖術を発動すると亡霊女房の肉体を内部から自爆させたのである。
「今度も復活するかしら?」
先程の自爆の妖術は試用であり亡霊女房の肉体が元通りに再生するのか如何なのかを再確認したかったのである。亡霊女房の肉体は自爆の妖術により破壊されたものの…。先程と同様に粉砕された肉体は元通りに再生する。
「見事に復活したわね…非常に厄介だわ…」
(彼女の弱点は何かしら?)
今度は天眼の妖術を発動したのである。天眼の妖術の透視化により亡霊女房の心臓内部から水晶玉らしき宝玉を発見する。
「えっ?水晶玉?」
(亡霊女房の魂魄かしら?)
小梅姫は再度自爆の妖術を発動…。見事に亡霊女房の肉体は自爆したのである。小梅姫は体内の心臓を発見するなり更なる自爆の妖術を再発動させる。すると亡霊女房の心臓が自爆の妖術により爆破されると心臓内部から水晶玉を摘出させたのである。
「水晶玉を発見したわ!」
水晶玉が地面に落下したかと思いきや…。水晶玉は浮遊すると蛍光色に点滅し始める。すると周辺に散乱した肉片が水晶玉へと接合したのである。
「如何やら水晶玉が亡霊女房の本体っぽいわね…」
亡霊女房の弱点を発見した小梅姫は念力の妖術を発動すると水晶玉を粉砕する。すると同時に亡霊女房の再生能力が発動しなくなったのである。業火の妖術によって粉砕された亡霊女房の肉体諸共水晶玉の破片を浄化させる。
「今度こそ浄化出来たみたいね…」
(亡霊女房は予想外に厄介だったわ…)
小梅姫は周辺を恐る恐る慎重に凝視するなり…。村里へと無事帰還する。自分自身の家屋へと無事帰宅すれば彼女は寝転び始める。
「随分派手に妖力を消耗した影響かしら…」
(極度に息苦しいのよね…)
妖力の消耗によって疲れ果てたのである。
(相手は実力的には私よりも脆弱だったけれども…妖女である私が悪霊を相手に苦戦しちゃうなんて…)
今回の出来事から自分自身の傲慢さと力不足を実感したのである。
メンテ
桜花姫 ( No.22 )
日時: 2021/08/16 20:14
名前: 月影桜花姫

第九話

強敵

亡霊女房が退治されてより三日後の真夜中…。北国に位置する山奥のとある洞窟では白装束の集団が集結する。
「全員終結したな…」
集団の人数は六人であり松明を所持する集団の頭領が五人の若者達の人数を確認したのである。
「頭領…こんな洞窟に私達を集合させるなんて…」
「今回は何事でしょうか…」
「不吉だな…村里に戻りたいよ…」
「早速私が道案内する…私に追尾せよ…」
頭領は洞窟の奥底へと移動する。数分後…。洞窟の奥底へと到達すると奥底の地面には一体の木乃伊が確認出来る。
「えっ!木乃伊ですか?」
彼等は木乃伊を直視すると一瞬畏怖する。木乃伊は野犬によって食い殺された状態であり老若男女の区別は不可能である。
「一体誰の誰なのでしょうか?」
集団の一人が頭首に問い掛ける。
「彼こそは私達北国の英雄…鬼殺丸様の遺体であるぞ!」
「木乃伊が鬼殺丸様ですか!?」
鬼殺丸とは戦乱時代に活躍した北国最強の武士である。生前は北軍の鬼神と呼称され各国の領主達は勿論…。大勢の武士達から畏怖されたのである。戦乱時代当時は北国最強の英雄として扱われるものの…。彼によって大勢の味方も殺され憎悪する者達により安穏時代では極悪非道の人物として扱われる。世間では極悪非道の大悪党と認識される反面…。一部の村里では今現在でも英雄として神格化される。
「鬼殺丸様は死去されたのですか?」
「残念であるが鬼殺丸が死去されたのは事実だ…鬼殺丸様は山中の野犬によって食い殺されたのかも知れない…」
今迄鬼殺丸の生死は不明であったが…。死因こそは不明瞭であるものの鬼殺丸は死亡したと判明する。
「勿論事実を熟知したのは私達だけだぞ…鬼殺丸様の遺体を発見したのは誰であろう私なのだからな…」
集団の頭首は十五年前の戦乱時代末期…。生前当時から鬼殺丸を神格化する一人であり奇遇にも鬼殺丸が死去した数日後に鬼殺丸の遺体を発見したのである。
「頭領は鬼殺丸様の遺体を如何されるのですか?」
頭領は一息するなり…。
「黄泉の国から鬼殺丸様を…生者として復活させる…」
「なっ!?」
彼等は頭領の発言に驚愕したのである。
「最早死没者である鬼殺丸様を…完全なる生者として復活させられるのですか?」
「死没者を復活させるなんて…実現出来るのでしょうか?」
問い掛けられた頭領は即答する。
「出来るとも…無論死没者を復活させるには犠牲が必要不可欠であるが…」
すると頭領は隠し持った拳銃を所持するなり…。
「えっ?拳銃ですか?」
「此奴は異国の拳銃だ…貴様達の生命を頂戴する…」
「ひっ!」
「殺される!逃げろ!」
五人の若者達は頭領の所持する拳銃に畏怖したのか即座に逃走する。
「安眠せよ…」
頭領は背後から四人の若者達に発砲…。
「ぎゃっ!」
「ぐっ!」
拳銃で四人を殺害したのである。最後の一人は畏怖した様子で全身が膠着化…。身動き出来ず地面に横たわる。
「頭領…俺を…俺を殺さないで…」
極度の恐怖心からか身震いした様子で涙腺からは涙が零れ落ちる。
「貴様が恐怖するのは勿論理解出来るが…本来死没者を復活させるには百人もの人身御供が必要不可欠なのだよ…」
戦乱時代以前の旧時代…。一人の死没者を復活させるのに百人の人間を人身御供として利用した儀式が各地で実行されたのである。当時は頻繁に実行されたが死没者が復活した事例は実質皆無であり非人道的理由から今現在の安穏時代は勿論…。弱肉強食の戦乱時代でさえも儀式は禁止される。
「私は今迄に九十五人の人間達を人身御供として殺害したが…今回で無事に達成出来そうだ…」
弾丸を装填させるなり…。
「南国の鬼神…鬼殺丸様を完全なる生者として復活させるには貴様の犠牲が必要不可欠なのだ…成仏せよ…」
銃弾が若者の頭部を貫通…。
「ぐっ!」
即死させたのである。
「鬼殺丸様を復活させるには…彼等の血液が必要だな…」
頭首は今迄に九十五人の人間達を殺害…。鬼殺丸の木乃伊に殺害した人間の血液を含有させたのである。
「今回で五人の血液を入手出来たぞ…」
(五人の血液を…)
殺害した五人の遺体から血液を指先に採取…。鬼殺丸の木乃伊に接触したのである。
「英雄…鬼殺丸様♪」
死没者である鬼殺丸の復活に期待する。
「黄泉の国から俗界に戻られよ…」
一分間が経過するのだが…。鬼殺丸の木乃伊は復活せず身動きしない。
「鬼殺丸様!?何故復活されない!?」
(ひょっとして儀式に不備が…)
直後である。突如として鬼殺丸の遺体が破裂…。洞窟内部に鬼殺丸の血肉が飛散する。
「ひっ!」
突然の超常現象に頭領は畏怖したのである。
「一体何が…なっ!?」
破裂した鬼殺丸の肉片に頭領は驚愕する。
「鬼殺丸様の…肉体が…」
(如何してこんな…こんな状態では鬼殺丸様は二度と復活出来ない…)
頭領は涙腺より涙が零れ落ちる。
「死没者を復活させる儀式とは…出鱈目だったのか…」
頭領は出鱈目の儀式に後悔したのである。
(結局…私は単なる人殺しだったのか…)
自身の行動が単なる殺人であると自覚した直後…。背後より不吉の胸騒ぎを感じる。
「えっ…」
恐る恐る背後を直視すると背後には不定形の黒雲が存在する。
「一体何が!?」
すると不定形の黒雲が人語で発言し始める。
「愚劣なる人間よ…一人の死没者を復活させるのに百人もの人間を惨殺するとは…人間とは非常に愚劣であり…醜悪であるな…」
頭領は恐る恐る…。
「貴方様は一体何者なのでしょうか?」
問い掛けられた不定形の黒雲は即答する。
「私は…大勢の亡者達の集合体だ…」
「亡者達の…集合体ですと?」
不定形の黒雲は自身を大勢の亡者達から誕生した集合体であると名乗る。
「貴様は…戦乱時代の鬼殺丸と名乗る…極悪非道の亡者を復活させたいみたいだな…」
問い掛けられた頭領は恐る恐る返答する。
「勿論ですとも…私にとって鬼殺丸様は未来永劫北国の英雄であり…北国の武神なのですから…」
「貴様の崇拝する鬼殺丸を復活させたいのであれば…貴様自身の生命を授与せよ…」
「私自身の生命ですと…」
「亡者を復活させるには生者の生身の肉体が必要不可欠だ…」
頭領は一瞬躊躇うものの…。
「承知しました…私自身の生命を授与しましょう…」
不本意であるが頭領は承諾したのである。
「であれば鬼殺丸を…悪霊として復活させる…」
直後…。
「なっ!?発火!?」
頭領の皮膚が突発的に発火したのである。高熱の火炎は一瞬で全身へと覆い包まれ…。頭領の肉体は黒焦げの焼死体へと変化したのである。すると焼死した頭領の肉体が瞬間的に再生…。全身が筋肉質で素肌が灰白色の美青年へと変化したのである。
「ぐっ!私は…一体…」
地面に横たわった美青年が恐る恐る目覚める。
「目覚めたか…鬼殺丸よ…」
鬼殺丸は素肌が灰白色であったが生前と同様の姿形に復活したのである。
「私は…野犬の亡霊に食い殺されて…」
「鬼殺丸…貴様は…」
不定形の黒雲が復活した経緯を説明する。
「私は黄泉の国から復活したのか…」
「悪霊の肉体であるが…今現在の貴様は生前よりも強力だ…其処等の悪霊とは別格の霊力であるぞ…」
普段は無表情の鬼殺丸であるが…。微笑したのである。
「悪霊の肉体なのは気に入らないが…彼奴に復讐出来るなら悪霊の肉体でも止むを得ないな♪」
「彼奴とは?」
鬼殺丸は即答する。
「東国の軍神…夜桜崇徳丸…私が唯一憎悪する人間だ…」
「貴様が夜桜崇徳丸と名乗る人間を殺したいのであれば思う存分殺せ…」
すると不定形の黒雲は復活した代償として条件を提示したのである。
「条件として…愚劣なる大勢の人間達を殲滅せよ…悪霊として復活した貴様であれば出来るよな?」
問い掛けられた鬼殺丸は一瞬沈黙するが…。
「折角復活したのであれば…貴様との約束は厳守するさ…」
交渉成立する。鬼殺丸は不定形の黒雲に問い掛ける。
「貴様は一体何者だ?人間達を憎悪するみたいだが…」
「私は亡者達の集合体とでも…」
問い掛けられた不定形の黒雲は自身を亡者達の集合体と名乗る。
「亡者達の集合体か…」
数秒後…。
「鬼殺丸よ…黄泉の国に戻りたくなければ思う存分人間達を殺せ…」
不定形の黒雲は消滅したのである。
「思う存分人間達を殺せとは…」
(亡者達の集合体に命令されるのは正直気に入らないが…悪霊の肉体でも折角復活出来たのだからな…)
心情より人間達への殺意が芽生える。
「近日中にでも…思う存分人間達を蹴散らせるか…」
六日後の早朝…。西国と東国の国境に位置する廃村から大量の人骨が発見されたのである。近隣の村里では地獄から出現した怨霊達の仕業であるとの噂話が国全体に出回る。同日の早朝には東国の連山から大量発生した食人餓鬼の大群が隣接する各農村にて出没したのである。気になった小梅姫は即刻問題の廃村へと出発する。
(村人達の行方不明事件と廃村の大量の人骨…そして食人餓鬼の大群…)
「今回の事件と無関係では無さそうだわ…」
東国からは非常に近辺なのか徒歩でも数分間で到着する短距離である。彼女は山岳地帯から貝塚村の様子を眺望するなり…。
(随分殺風景ね…)
村里の雰囲気から徘徊した無人の城下町であり中心地には廃城が確認出来る。
「悪霊が出現しても可笑しくない雰囲気ね…」
誰一人として人間が存在しない廃村であり無数の霊力が潜伏するのは察知出来る。時間帯は真昼であるものの…。廃村の雰囲気から夕方同然である。非常に重苦しい空気であり普通の人間であれば卒倒しても可笑しくない感覚である。
(恐らく今回は今迄の悪霊とは比較出来ない悪霊が出現しそうだわ…)
村里の雰囲気から気力が格段に低下したものの…。廃村の中心地に位置する廃城から強烈なる霊力を察知したのである。
(村里中心部の廃城が非常に奇怪だわ…)
「妖力を過剰に消耗するのも面倒臭いし…強行突破よ!」
彼女は鈍足であるものの廃村へと正面から進行し始める。すると周囲の土中から無数の食人餓鬼が出現…。
「食人餓鬼?」
無防備状態の小梅姫へと殺到する。
(彼等の招待状かしら?)
「大歓迎みたいね…」
小梅姫は即座に妖力の防壁を発生させたのである。今度は防壁を攻撃用に転用させた半透明の魔手を形成…。防壁の表面より無数の魔手が形作られる。魔手は外敵である食人餓鬼の猛攻から小梅姫本体を守備しては自動的に動作し続ける。
「鬱陶しいわね…」
魔手の発動によって殺到し続ける食人餓鬼の大群を容易に駆逐したのである。魔手に接触した食人餓鬼は只管全身が粉砕される。小梅姫が通過すれば大量の肉塊と鮮血が彼女の道端に散乱し続ける。一直線に進行し続ければ中心地の廃城へと到達する。
「廃城から霊力を感じるわね…」
恐る恐る廃城へと進入する。城内は家具が散乱した状態であり当然として住民は誰一人確認出来ない。
(戦乱時代で処分された根城かしら?)
全体的に純和風ではなく異国風の雰囲気である。
「異国の文化財だわ…」
(ひょっとして城主は異国愛好家かしらね…)
階段を利用しては最上階へと到達する。最上階には高価値の骨董品が発見されたのである。
(廃城の城主は異国の愛好家なのね…)
すると室内中心部にて摩訶不思議なる骨董品を発見する。
「一体何かしら?」
(ひょっとして能面?)
彼女が注目したのは内壁に装飾された能面であるものの…。能面は非常に不自然であり等身大の人間と同程度の巨大さである。
「えっ…悪趣味だわ…」
(正直能面とか般若の仮面って外見的にも不吉なのよね…私は大嫌いだわ…)
彼女は室内に装飾された巨大能面を気味悪がる。
「私には所有者の感受性が理解出来ないわね…」
迂闊にも巨大能面に接触する。
「普通の能面よりも随分特大なのね…」
(本当に能面なのかしら?単なる装飾品っぽいわね…)
先程から疑問であったのか彼女が廃城へと進入した途端に城内の霊力が一瞬で消失したのである。
「霊力が感じられないわ…」
霊力が皆無であると判断した小梅姫は即座に石庭へと戻ろうかと思いきや…。背後から物音が響き渡る。
「えっ…」
彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「一体何事かしら?」
背後の内壁に装飾された巨大能面の両目が蛍光色に発光した状態であり八本の蜘蛛脚が生成される。形状的には巨大蜘蛛であり中心部の胴体部分は巨大能面である。
「此奴はひょっとして…悪霊の小面蜘蛛かしら!?」
油断した小梅姫は愕然とする。内壁の巨大能面の正体とは器物の悪霊…。小面蜘蛛であり装飾品の巨大能面に憑依した悪霊である。特定の地方では付喪神とも呼称される。特定の道具への憑依が可能であり小梅姫をも油断させる。胴体の両目が小梅姫を凝視し始めるなり口先から白色の粘液を噴出する。粘液が彼女の皮膚に接触した瞬間…。体内の妖力が急速に消耗し始める。
(何かしら?妖力が消耗するなんて…)
妖力のみならず…。体力が半減したのか肉体の身動きすらも負担に感じられる。
「ぐっ…迂闊だったわ…」
(能面の正体が小面蜘蛛だったなんて…)
小面蜘蛛の体内から噴出される粘液は妖力を消耗させる効力を発揮出来る。妖力を多用する攻撃法では小面蜘蛛を攻略するのは非常に困難である。莫大なる妖力を所持…。自由自在に操作出来る小梅姫にとって小面蜘蛛を相手するのは圧倒的に不利である。
(私は小面蜘蛛の餌食に…)
小梅姫は莫大なる妖力によって力尽きたのか横たわる。寝転び始める彼女の視界間近に小面蜘蛛が急接近…。
「私を捕食したければ捕食しなさいよ…」
彼女は覚悟したものの…。
(妖女の私が…)
「こんな悪霊を相手に敗北するなんて…」
彼女は僅少の妖力によって時空間停止の妖術使用を決意する。
(一か八か…)
金縛りの妖術を発動すると一時的に小面蜘蛛は身動きしなくなる。金縛りの妖術は相手の身動きを長時間封殺出来る妖術である。
「今度は…」
瞬身の妖術を発動…。即座に安全地帯へと移動したのである。小梅姫は瞬身の妖術の使用により廃城から無事脱出…。近辺の山道へと移動したのである。
(危機一髪だったわね…)
「一瞬食い殺されるかと…」
小梅姫は恐る恐る周囲を警戒…。無事に廃城から脱出出来たのである。
「脱出には成功したみたいね…」
妖力の消耗によって妖術の使用は不可能であり一時的に退却を余儀無くさせられる。
(時空間停止の妖術は解除されたし…即刻戻らないと…)
東国の家屋敷へと戻ろうかと思いきや…。地面より数体の食人餓鬼が小梅姫の視界間近へと突発的に出現したのである。
「えっ!?今度は食人餓鬼!?」
最早小梅姫は妖力を消耗した満身創痍の状態であり本来ならば雑魚である複数の食人餓鬼ですらも攻略不可能である。
(本調子なら食人餓鬼なんて楽勝なのに…)
彼女にとって食人餓鬼程度は雑魚同然であるものの…。衰弱化した状態では非常に脅威である。
「きゃっ!」
大量の妖力を消耗した状態では食人餓鬼でさえも恐怖の対象であり小梅姫は一歩ずつ後退りする。
(私…食人餓鬼に捕食されるのね…)
食人餓鬼が彼女の視界間近へと殺到する寸前…。食人餓鬼は突発的に身動きしなくなる。
「えっ…」
(一体何が?)
彼等の足場を直視すれば白色の粘液を発見する。
「ひょっとして…」
彼等の背後には獲物である小梅姫を追撃する小面蜘蛛が急接近したのである。小面蜘蛛に畏怖した彼女は全身が膠着する。
「小面蜘蛛!?」
廃城からは危機一髪脱出したものの小面蜘蛛は彼女の妖力を目印に小梅姫の居場所を察知…。小梅姫の行方を見逃さなかったのである。小面蜘蛛は粘液によって捕獲した数体の食人餓鬼を捕食し始める。
(此奴…)
「仲間の食人餓鬼を食い殺すなんて…」
凄惨なる光景に小梅姫は恐怖したのである。最早自分自身も彼等と同様に捕食されるのかと思考すると自殺願望が芽生え始める。小面蜘蛛の鋭利なる脚部が小梅姫の胸部を貫通させる。
「ぐっ!」
心臓を貫通させられた直後…。彼女の胸部から大量の鮮血が流血し始める。流血により地面が赤色に染色したのである。
(私は今度こそ…小面蜘蛛に捕食されるのね…)
最早即死しても可笑しくない致命傷であるものの…。神経の麻痺によって苦痛すらも感じられなくなる。抵抗出来なくなった小梅姫は観念する。両目を瞑目したと同時に耳元から爆発音が響き渡る。
「えっ?」
(今度は何事かしら?)
恐る恐る両目を開眼すれば…。
(誰かしら?)
粉砕された小面蜘蛛の血肉が散乱した状態であり背後には焙烙火矢を装備した僧侶服の小柄の男性が横たわる小梅姫に近寄る。
「僧侶?」
「小梅姫…」
「貴方は…」
僧侶の正体とは父親の夜桜崇徳丸であり脆弱化した小梅姫にとって崇徳丸は救済の守護神同然である。
「ひょっとして父様なの…」
「大丈夫か?小梅姫…なっ!?」
小梅姫の胸部の外傷を直視すると身震いする。すると直後…。
「小梅姫…傷口が…」
小梅姫の腹部の外傷は妖力によって数秒間で治癒する。
「父様…私は大丈夫よ…外傷なら自力で治癒出来るから…」
「本当に大丈夫なのか?小梅姫…」
「私なら大丈夫よ…父様は心配性ね…」
(彼女は大丈夫そうだが…出血多量の影響で大分衰弱化した状態だな…)
小梅姫は肉体的にも精神的にも疲弊した様子である。
「父様…感謝するわね…私…もう少しで小面蜘蛛に食い殺されるかと…」
小梅姫は涙腺より涙が零れ落ちる。
「大丈夫だ…小梅姫…小梅姫が無事で何よりだ…」
「父様…」
すると小梅姫は恐る恐る…。
「如何して人間の父様が小面蜘蛛を簡単に仕留められたのよ?妖女の私がこんなにも苦戦した強敵なのに…」
「恐らく小面蜘蛛は妖力を使用しない方法によって退治出来る悪霊みたいだな…今回の相手は妖術を多用する妖女では最悪の天敵だろうよ…」
妖力を使用しない戦法こそが小面蜘蛛の弱点であると推測する。妖術を使用する妖女が相手では相性的にも最悪である反面…。武装した人間には滅法貧弱である。崇徳丸は彼女に麦飯を譲渡する。
「空腹だろ?」
「御免なさい…」
「小梅姫…一人で無茶するなよ…」
すると崇徳丸は笑顔で…。
「小梅姫は私の宝物だ♪悪霊なんかに殺されるなよ…」
「父様♪」
小梅姫は内心嬉しくなる。
「空腹だから食べろよ…」
小梅姫は麦飯を一瞬で頬張ったのである。
(相当空腹だったのか…)
麦飯を一瞬で頬張る小梅姫に崇徳丸は苦笑いする。小梅姫は極度の不安が解消したのか再活動を開始しなければと意気込み始める。
(こんな山道で長居し続ければ悪霊が村里全域に…)
「ん?小梅姫?」
「無数の霊力が国全体に蔓延したみたいなの…」
突如として莫大なる食人餓鬼の気配を瞬時に察知したのである。
「霊力だと?」
「恐らく食人餓鬼の仕業ね…」
「こんな短期間で国全体に蔓延するとは…」
「原因は不明なのよね…」
すると小梅姫は崇徳丸に依頼する。
「今回ばかりは父様の協力が必要なの…」
先程の戦闘によって彼女は余程自信を喪失したのである。
「勿論…私は小梅姫に協力するよ♪安心しろ♪」
「父様と一緒なら心強いわ♪」
二人は行動を開始する。強大なる無数の霊力の感じる東国へと急行したのである。
「えっ…」
「戦乱時代だな…」
東国は主戦場であり地面には赤色の鮮血…。散乱した臓器やら胃腸らしき肉塊が無数に確認出来る。先程遭遇した食人餓鬼の大群が爆発的に出現したらしく村人達に殺到しては村人達の人肉を咀嚼し始める。
「東国では一体何が…」
徘徊中である無数の食人餓鬼が移動中の小梅姫と崇徳丸に反応するなり…。二人に襲撃するものの小梅姫の火炎の妖術によって瞬殺される。地面には無数の焼死体が埋没する。
「浄化したわね…」
「小梅姫の妖術を肉眼で拝見したが…予想外に絶大だな…」
崇徳丸は小梅姫の摩訶不思議の妖術に驚愕したのである。小梅姫は只管村人達の遺体を捕食し続ける食人餓鬼の大群を相手に逆襲…。爆破の妖術により食人餓鬼を仕留めたのである。爆破の妖術で頭部を破壊された食人餓鬼は途端に身動きしなくなる。
「食人餓鬼が相手ならば…小梅姫の妖力は天下無敵だな…」
「天下無敵なんて大袈裟ね…」
(正直妖力の消耗で息苦しいのよね…)
彼女にとって通常の悪霊が相手ならば余裕であるものの…。先程の悪戦苦闘による妖力の消耗が影響したのか重苦しい深呼吸が目立ち始める。
「小梅姫?」
「何よ?」
「大丈夫か?先程から顔色が…」
崇徳丸は彼女の様子を心配する。
「別に…私なら大丈夫よ…」
「本当に大丈夫なのか?」
「私は大丈夫だよ…父様は極度の心配性なのね…」
城下町の中央区へと進行するものの生存者は誰一人として発見出来ない。
「無人地帯だわ…領民達は?」
「領民は根城に避難したみたいだな…最早東国は悪霊の巣窟だ…」
すると崇徳丸は彼女に助言する。
「妖力は非常に強力だが油断すれば食人餓鬼が相手でも苦戦するかも知れないからな…小梅姫も武器も装備するべきだ…」
「武器ですって?」
「私が武士団の駐屯地に案内する…」
崇徳丸は東国武士団の駐屯地へと案内したのである。
「廃屋だわ…」
「駐屯地も悪霊に襲撃されたからな…」
如何やら駐屯地は無人地帯であり駐屯地の守備隊は食人餓鬼の襲撃により撤退…。本拠地である都城へと移動したのである。
「鎮守府の守備隊は退却したのかしら?」
「今回の相手は悪霊の大群だからな…東国の武士達が屈強でも相手が大群では対抗出来ないよ…」
最早武器庫は警備が手薄状態であり無力の町民でも容易に潜入出来る。
「先程は私も武器庫で焙烙火矢を入手出来たからな…」
小梅姫は恐る恐る慎重に武器庫へと入室する。多種多様の刀剣やら弓矢は勿論…。火縄銃やら焙烙火矢が確認出来る。
「拳銃でも装備するか?此奴なら小梅姫でも扱えるよ…」
崇徳丸は比較的素人でも扱えそうな軽量の拳銃を小梅姫に手渡したのである。
「拳銃なんて物騒ね…」
小梅姫は武術が苦手であり拳銃の使用を拒否する。軽量の小刀を発見…。
「私は小刀を所持するわ…」
護身用に軽量の小刀を携帯したのである。
「小刀でも食人餓鬼なら仕留められるか…」
「駐屯地から脱出しましょう…父様…」
すると廊下から物音が響き渡る。
「ん?」
「物音だわ…一体何かしら?」
「物音は廊下からだな…」
(無数の霊力が一点に集中した状態だわ…今度は何が出現したのかしら?)
彼女は無数の霊力を瞬時に察知したのである。小梅姫と崇徳丸は警戒した四数で恐る恐る武器庫から脱出…。すると直後である。
「怪物!?」
(食人餓鬼とは別物だわ…此奴はひょっとして…)
小梅姫の視界間近に佇立する怪物とは無数の食人餓鬼が融合した人型の肉塊…。等身大の人間よりも一回り巨大であり廊下を牛歩する。すると小梅姫の背後より…。
「此奴は悪霊の百鬼食人餓鬼だな…」
「父様…厄介なのが出現したわね…」
体表の食人餓鬼の頭部が小梅姫と崇徳丸を睥睨したのである。
「私が万全の状態であれば食人餓鬼の集合体なんて楽勝に仕留められるでしょうけれども…」
すると百鬼食人餓鬼は全身の口先から高熱の熱風を放射し始める。小梅姫は咄嗟に妖力によって妖力の防壁を形成させたのである。無防備である崇徳丸にも防壁の形成によって守護する。
「父様…命拾いしたわね…」
「小梅姫…感謝する!」
(先程の同時結界で大半の妖力を消耗しちゃったのよね…)
百鬼食人餓鬼と交戦したとしても敗北は濃厚であると判断した小梅姫は崇徳丸に逃亡を合図したのである。
「父様!逃走しましょう…」
「逃走だと?」
小梅姫の様子を直視すると彼女は満身創痍の状態であると察知する。
(小梅姫…)
「承知した…」
小梅姫と崇徳丸は全力疾走により駐屯地から無事脱出したのである。
メンテ
桜花姫 ( No.23 )
日時: 2021/08/16 20:15
名前: 月影桜花姫

最終話

天女

無事に武士団の駐屯地から脱出した小梅姫と崇徳丸は東国の郊外に聳え立つ低山…。日和山に到達したのである。
「はぁ…はぁ…」
崇徳丸は恐る恐る…。
「百鬼食人餓鬼は小梅姫でも仕留められないのか?」
問い掛けられた小梅姫は即答する。
「本調子の私だったら百鬼食人餓鬼程度の悪霊なら十体以上出現しても簡単に仕留められるわ…」
百鬼食人餓鬼は所謂食人餓鬼の集合体であり人間が単独で仕留めるのは困難であるが…。摩訶不思議の妖術を駆使する妖女であれば容易に仕留められる程度の悪霊である。
「えっ…」
(本調子なら百鬼食人餓鬼を十体も仕留められるのか…)
小梅姫の発言に崇徳丸は絶句する。
「今現在の私の妖力は空っぽだからね…食人餓鬼も仕留められないわよ…」
「一休みするか…小梅姫?」
すると小梅姫は小声で発言する。
「天霊山の露天風呂にでも入浴出来れば…」
「ん?天霊山の露天風呂だと?」
崇徳丸は露天風呂の一言に反応したのである。
「天霊山って…西国の小山だったよな?」
「天霊山の露天風呂に入浴すれば消耗した妖力も回復させられるの…」
「即刻西国に移動するか…」
直後…。無数の霊力が日和山に接近するのを感じる。
「殺気か…」
「無数の霊力だわ…」
無数の霊力の正体とは百鬼食人餓鬼であり先程遭遇した百鬼食人餓鬼が日和山に出現したのである。
「此奴…」
「百鬼食人餓鬼だわ…私達を追尾したのね…」
すると崇徳丸は一息するなり…。
「久方振りに…此奴の出番だな…」
「えっ?父様?」
崇徳丸は牢固石の刀剣を抜刀したのである。
(父様…本物の武士みたいだわ…)
崇徳丸は身構える。
「悪霊との戦闘は三十年前以来だな…」
三十年前の死霊餓狼との死闘を想起したのである。
「成仏せよ…悪霊!」
百鬼食人餓鬼を睥睨するなり…。神速の身動きで百鬼食人餓鬼に接近したのである。
「瞬殺!?」
崇徳丸の斬撃で百鬼食人餓鬼は両断される。
(父様って…こんなに精強だったの!?)
小梅姫は崇徳丸の強大さに愕然とする。
「私は戦乱時代では東国の一兵卒だったからな…」
(父様…男前ね♪)
小梅姫は赤面…。崇徳丸に見惚れたのであり。すると両断された百鬼食人餓鬼が無数の肉片に分裂…。数十体もの食人餓鬼に変化したのである。
「此奴…食人餓鬼に分裂するとは…」
無数の食人餓鬼が崇徳丸に殺到する。
「父様!多勢に無勢だわ…逃げましょう!」
「食人餓鬼は私が仕留める…」
圧倒的に不利であるが崇徳丸は再度…。神速の身動きにより殺到する食人餓鬼を斬撃したのである。数分間で数十体の食人餓鬼を仕留める。
「此奴は意外と楽勝だったな…」
地面には無数の血肉が散乱したのである。小梅姫は沈黙する。
(父様が東国の軍神って噂話は本当だったのね…)
百鬼食人餓鬼との交戦で崇徳丸の精強さを再認識したのである。
「こんな程度の奴等なら私一人でも容易に仕留められそうだ…小梅姫は西国の天霊山で妖力を回復させろ…」
直後…。百鬼食人餓鬼をも上回る霊力を察知したのである。
「えっ!?何かしら!?」
(霊力だけど…今迄の悪霊とは桁違いだわ…一体何が出現したのかしら!?)
畏怖する小梅姫の様子に崇徳丸も極度の胸騒ぎを感じる。
(如何やら小梅姫も感じるみたいだな…)
すると背後の獣道より…。
「ん?なっ!?貴様は…」
崇徳丸は背後を直視すると身震いしたのである。
「えっ…誰なの!?」
獣道に出現したのは鬼神を連想させる甲冑を装備した武士…。崇徳丸を直視するなり睥睨したのである。
「父様?此奴は一体何者なの?」
(此奴の肉体から霊力を感じるわ…悪霊なのは確実だけど何者かしら?)
武士が悪霊なのは確実であり小梅姫は恐る恐る崇徳丸に問い掛ける。問い掛けられた崇徳丸は一瞬後退りする。
「此奴は…北国の鬼神…鬼殺丸だ…」
「鬼殺丸?」
すると鬼殺丸は発言し始める。
「久方振りだな…夜桜崇徳丸…戦乱時代では人殺しだった貴様が…今現在では僧侶の身分とは呆れ果てるな…」
小梅姫は崇徳丸を直視するなり…。
「父様!此奴は悪霊よ!肉体から霊力を感じるわ!」
「えっ…悪霊だと!?」
鬼殺丸が悪霊である事実に崇徳丸は驚愕したのである。
「鬼殺丸?貴様…戦死したのか?」
崇徳丸の問い掛けに即答する。
「俺は野犬の亡霊に食い殺された…今現在の俺は悪霊の肉体だ…」
「野犬の亡霊とは…」
(死霊餓狼か…)
野犬の亡霊が死霊餓狼であると推測したのである。
「俺は皮肉にも悪霊の集合体によって復活させられた悪霊だ…」
「悪霊の集合体だと?」
「人間達を全滅させるのが俺の仕事だからな…手始めに復讐の対象者である崇徳丸…貴様から片付ける!」
すると小梅姫が発言する。
「父様を殺さないで!」
「ん?誰だ…貴様は?」
鬼殺丸は小梅姫を睥睨したのである。
「小梅姫…逃げろ…此奴は私が阻止する…」
崇徳丸は再度抜刀する。
「えっ?父様!?」
「安心しろ…私は死なないよ♪」
崇徳丸は笑顔で断言したのである。
「如何やら小娘は貴様の愛娘みたいだな…」
「私の愛娘に手出しさせない…貴様の相手は私だ…」
「安心しろ…貴様を打っ殺してから貴様の愛娘も打っ殺すからよ…」
鬼殺丸は右手に霊力を収縮…。雷光の刀剣を形作ったのである。
「雷光の刀剣だと?」
「貴様を仕留めるには…此奴で事足りる!」
両者は睥睨するなり…。
「覚悟しろ!鬼殺丸!」
「貴様こそ!」
両者は神速の身動きで移動し始める。
(えっ!?)
両者の身動きは肉眼では視認出来ず小梅姫は何が発生したのか理解出来なかったのである。
(一体全体何が!?)
直後…。両者の刀剣が交差したのである。
「崇徳丸…貴様の刀剣は私の霊剣と互角とは…」
「私の刀剣は牢固石だ!貴様の雷光の刀剣でも簡単には屈折しないぞ…」
すると鬼殺丸は後退…。雷光の刀剣は消滅する。
「ん?」
崇徳丸は警戒したのである。
(鬼殺丸は一体何を?)
鬼殺丸は左手より霊力の火球を形作る。
「死滅せよ…崇徳丸…」
高熱の火球を発射したのである。
(火球か…)
崇徳丸は火球を一刀両断…。左右に両断された火球は崇徳丸の背後で爆散したのである。
「鬼殺丸…貴様は其処等の悪霊とは桁外れだな…」
「当然だ…悪霊は悪霊でも俺は其処等の悪霊とは別格だからな!最上級の悪霊とでも…」
自身を最上級の悪霊と豪語する。
「であれば鬼殺丸よ…本来の貴様は死没者であるからな…死没者である貴様を死後の世界に戻らせる…」
「最上級の悪霊である私を死後の世界に戻らせるか…であれば私は貴様を死後の世界である地獄に招待するだけだ…」
鬼殺丸は崇徳丸の両足を直視…。
「えっ?」
「父様の両足が…」
すると崇徳丸の両足は氷結したのである。
「なっ!?氷結だと!?鬼殺丸…貴様一体何を?」
「残念だったな…崇徳丸…私の霊力で貴様の身動きを封殺した…」
両腕と両足の氷結により崇徳丸は完全に身動き出来なくなる。
「ぐっ…」
(迂闊だった…)
鬼殺丸は再度雷光の刀剣を発動したのである。
「今度こそ貴様を地獄に招待する…覚悟せよ!崇徳丸…」
一歩ずつ崇徳丸に近寄る。普段は冷静であり無表情の鬼殺丸であるが…。
(今回で復讐を達成出来るぞ♪)
今回ばかりは微笑したのである。
「覚悟しろ!崇徳丸!」
(今日が私の命日か…)
崇徳丸は最期を覚悟する。頭首を斬首される寸前…。
「父様を殺さないで!」
「はっ?」
「小梅姫…」
鬼殺丸と崇徳丸は小梅姫を直視する。
「鬼殺丸…父様を殺さないで…」
小梅姫は泣訴したのである。落涙する小梅姫に鬼殺丸は無表情で…。
「安心しろ…小娘…此奴を打っ殺してから愛娘の貴様も打っ殺すからよ…」
すると小梅姫は鬼殺丸を睥睨したのである。
「如何しても父様を殺したいのであれば…」
「はっ?」
小梅姫の全身より血紅色の妖力が全身から溢れ出る。
「小梅姫…一体何が…」
「小娘…」
小梅姫の妖力は肉眼でも視認出来る。普段の温厚篤実の彼女とは別人であり今現在の彼女は鬼神だったのである。
(小梅姫なのか!?別人みたいだ…)
崇徳丸は彼女に戦慄する。すると数秒後である。妖力の覚醒からか彼女の全身から溢れ出た妖力が小梅姫の全身を覆い包み…。小梅姫は常人よりも一回り巨体の化け猫らしき妖獣へと変化したのである。
「小娘…妖怪化したのか…」
無表情であった鬼殺丸も恐る恐る後退りする。
「私を殺せるなら殺しなさい!」
小梅姫は力一杯鬼殺丸を睥睨したのである。
(小娘の正体は妖獣だったのか…)
「死滅しろ!妖獣!」
高熱の火球で攻撃する。
「小梅姫!」
小梅姫は雷撃の結界で鬼殺丸の火球を無力化したのである。
「俺の攻撃を無力化しやがったか…」
直後…。
「なっ!?」
突如として身動き出来なくなる。
(ぐっ…身動き出来ないだと…)
小梅姫は鬼殺丸に金縛りの妖術を発動したのである。
「逃げられないわよ…悪霊!」
口先より高熱の雷光を凝縮…。雷光の火球を形成させる。
「完全に成仏しなさい!」
雷光の火球を発射したのである。
「えっ…」
前方の地面は高熱により焦土化…。黒焦げに抉れたのである。
「予想外の威力だ…」
(小梅姫の妖力は私の想像以上だな…)
小梅姫の妖力に崇徳丸は圧倒される。
「鬼殺丸は…仕留めたかしら…」
すると背後より…。
「小梅姫!食人餓鬼だ!」
「えっ?」
小梅姫の背後に一体の食人餓鬼が出現したのである。
「食人餓鬼程度なら…」
攻撃する直前…。食人餓鬼の肉体から白煙が発生したのである。食人餓鬼は白煙に覆い包まれ…。
「えっ…」
「此奴は…」
先程仕留められた鬼殺丸が再度出現したのである。
「残念だったな…小娘よ…」
「如何して鬼殺丸が?貴様は小梅姫の攻撃で…」
すると鬼殺丸は説明する。
「俺の肉体は悪霊だ…実体としての肉体が破壊されたとしても霊体のみでも活動出来るぞ…」
鬼殺丸は小梅姫に攻撃される寸前…。近辺で徘徊する食人餓鬼に憑霊したのである。
「俺は肉体を何度破壊されても他者の肉体に憑霊すれば何度でも復活出来るからな!」
鬼殺丸は豪語するが…。
(畜生が…先程の攻撃で肉体のみならず…霊体の大半が浄化されちまったからな…)
先程の小梅姫の攻撃は肉体の殲滅は無論であるが浄化作用により霊体も浄化出来る。
(鬼殺丸の様子…食人餓鬼に憑霊したみたいだが大分弱体化した様子だな…)
崇徳丸は鬼殺丸の様子を観察すると一時的に弱体化したのではと察知したのである。
(ひょっとすると攻撃する絶好機かも知れないな…)
崇徳丸は小梅姫に合図する。
「小梅姫!鬼殺丸は弱体化したぞ!今度こそ鬼殺丸を仕留められる!」
(なっ!?)
普段は無表情の鬼殺丸であるが…。一瞬動揺する。
「此奴に攻撃したいけれど…」
小梅姫は妖力の消耗により妖獣の形態から元通りの少女の姿形に戻ったのである。
「えっ…小梅姫…」
(先程の威勢は一体…)
崇徳丸は沈黙する。一時的に妖力の覚醒で妖獣へと変化した小梅姫であるが小面蜘蛛との戦闘で大量の妖力を吸収され…。衰弱化した状態からの覚醒であり妖力の消耗が加速したのである。
(今度も攻撃されたら…俺は今度こそ地獄に逆戻りだったな…)
鬼殺丸は命拾いにより内心一安心する。小梅姫は妖力が空っぽ状態であり地面に横たわる。
「小梅姫!?」
鬼殺丸は横たわった小梅姫に近寄る。
「小娘…貴様は俺にとって復讐の対象者である崇徳丸の愛娘だからな…貴様も同罪だ…」
悪霊の鬼殺丸にとって小梅姫の存在は非常に厄介であり崇徳丸よりも脅威である。鬼殺丸は再度雷光の刀剣を形作る。
「鬼殺丸!貴様の復讐に彼女は無関係だぞ!復讐するなら私に復讐しろ!彼女に手出しするな!」
崇徳丸は必死に彼を制止するのだが…。
「俺にとって此奴は脅威だ…」
(折角俗界に戻れたのだ…二度も地獄に戻されるのは御免だからな…)
すると小梅姫は落涙した表情で崇徳丸を直視する。
「父様…」
「小梅姫…」
絶望的状況下であったが…。暗闇の黒雲で覆い包まれた天空であるが光り輝く発光体が降下したのである。
「発光体だわ…」
「今度は何が出現した…」
小梅姫と崇徳丸は勿論…。
「天空から発光体か?」
鬼殺丸も天空の発光体に注目する。発光体が日和山の頂上に着地したかと思いきや…。発光体の正体は巫女装束の女性だったのである。背丈は非常に小柄であり頭部には金冠…。背中には円形の光背が確認出来る。天女を連想させる女性に崇徳丸は愕然とする。
「えっ!?貴女様はひょっとして…」
天女は微笑むなり…。
「崇徳丸様♪久し振りね♪」
「勿論ですよ…桃子姫様…」
天女の正体とは三十年前に逝去した桃子姫だったのである。
(桃子姫って…私の母様…)
崇徳丸と小梅姫は桃子姫との再会に涙が零れ落ちる。すると鬼殺丸が桃子姫を睥睨するなり…。
「貴様は一体何者だ!?俺の復讐を邪魔するのであれば貴様を打っ殺す…」
鬼殺丸は威嚇するが桃子姫は無表情で返答する。
「私の家族には手出しさせないわよ…」
すると半透明の血紅色だった桃子姫の両目の瞳孔が半透明の瑠璃色に発光したのである。
「桃子姫様の両目が瑠璃色に発光した…」
崇徳丸は不思議がる。
「鬼殺丸だったかしら?貴方は死没者なのです!死後の住人である貴方は即刻黄泉の国に戻りなさい…」
直後である。
「なっ!?」
鬼殺丸は桃子姫の神通力によって身動き出来なくなったと同時に…。
「畜生が…」
(結局…地獄に逆戻りとは…)
肉体は虹色の粒子状の発光体へと変化したのである。無数の発光体へと変化した鬼殺丸は天空にて消滅する。
「鬼殺丸が…」
「消滅するなんて…」
小梅姫と崇徳丸は驚愕したのである。
「亡者達は全員浄化したわ♪」
桃子姫の神通力により各地で徘徊する食人餓鬼の大群と百鬼食人餓鬼は浄化され…。消滅したのである。
(霊力が消滅したわ…母様が一人で悪霊の大群を浄化したの?)
小梅姫は桃子姫の神通力の絶大さに愕然とする。
「一安心ですね♪桃子姫様♪」
すると小猫姫は恐る恐る…。
「貴女は本当に…私の母様なのね…」
「勿論よ♪私は貴女の母親よ♪」
桃子姫は笑顔で即答する。
「小梅姫…貴女は美人さんに成長したわね♪」
美人の一言に小梅姫は赤面したのである。
「私が美人さんなんて…母様は大袈裟よ…」
赤面するが…。内心では大喜びだったのである。
「母様こそ…太陽神っぽくって容姿端麗よ…」
容姿端麗の一言に桃子姫は赤面する。
「私が容姿端麗なんて♪小梅姫は大袈裟ね♪」
桃子姫も内心では大喜びしたのである。
「ですが桃子姫様…貴女の救済で命拾い出来ました…大変感謝します…」
崇徳丸は桃子姫に一礼する。
「気にしないで♪崇徳丸様…貴方達が無事なのが何よりだから♪」
(桃子姫様は本当に救済の女神様だな…)
直後…。桃子姫の肉体が半透明化したのである。
「如何やら時間みたいね…」
「えっ…桃子姫様…」
「母様…」
小梅姫の涙腺から一粒の涙が零れ落ちる。
「小梅姫♪心配しなくても大丈夫よ♪私は天国で小梅姫を見守るからね♪」
「母様…約束だからね♪」
小梅姫に笑顔が戻ったのである。
「約束するわ♪勿論崇徳丸様もね♪」
「桃子姫様♪」
すると桃子姫は消滅する寸前…。
「私達…来世で再会しましょうね♪」
数秒後に桃子姫は消滅したのである。
(来世か…)
小梅姫は恐る恐る崇徳丸に問い掛ける。
「父様?来世も私達…再会出来るかな?」
崇徳丸は一息するなり…。
「再会出来るさ♪」
笑顔で返答する。数分後…。
「解散するか?」
「解散しましょう…私も家屋敷に戻らないと女中達が心配するし…」
二人は解散したのである。今回の悪霊事件は桃子姫の化身により無事解決したが…。以後も小規模の悪霊事件は各地で頻発したのである。小梅姫は悪霊退治屋を自称…。多種多様の悪霊を征伐したのである。当初は差別的だった田舎村の村人達も妖女に対する認識も次第に変化し始める。悪霊征伐に専念した小梅姫は四年後の初春に東国出身者である領主の若殿と婚姻…。無事三人の子供を出産したのである。小梅姫が三人の妖女を出産して以後…。本格的に妖女の時代が到来する。
完結
メンテ
メガラニカ大事変 ( No.24 )
日時: 2021/08/17 09:02
名前: 月影桜花姫

第一話

開戦

世界暦五百二十二年五月十七日午前八時未明の出来事である。世界最終戦争唯一の戦勝国『アプセラス帝国』は戦前でこそ小規模国家であったが世界最終戦争の快進撃から勢力を拡大化…。戦後の疲弊した世界各国を牛耳れる超大国としての地位と資源を獲得したのである。世界最終戦争の大勝利によって全世界の秩序と覇権を獲得したアプセラス帝国であるが…。アプセラス帝国の存在に反対する一部の反政府勢力と敗戦国の各残党勢力が大南海に位置する孤島にて合流したのである。彼等によって大南海の孤島は自治領『メガラニカ自由区』と命名されアプセラス帝国の支配圏から逃亡した移民者達が亡命…。メガラニカ自由区樹立から一年が経過すると領内の総人口は推計五十万人規模に増大化したのである。メガラニカ自由区の勢力拡大を危惧したアプセラス帝国はメガラニカ自由区に宣戦布告…。翌日には大規模艦隊を派遣させ南方のメガラニカ自由区本土を攻撃目標に直進したのである。アプセラス帝国海軍主力艦隊旗艦…。戦闘航空母艦アスピドケロンにはアプセラス帝国国家元首である大総統【ブラッドフォード】が総司令官として乗艦する。
「大総統!徹底的にメガラニカ自由区を撃滅しましょう!」
「当然だ【ルーヴェルハルト】…新世界の統治国であるアプセラス帝国に反抗するのが最大の愚行であるか…奴等には徹底的に理解させなければ…」
ルーヴェルハルトは副総統であり大総統のブラッドフォードにとって最高の右腕である。今回は旗艦アスピドケロンの副艦長として抜擢される。今回のメガラニカ自由区本土攻略作戦ではアスピドケロン級大型戦闘航空母艦が五隻投入され…。護衛艦隊にはミサイル巡洋艦十六隻…。二十四隻の防空駆逐艦が出撃する。補助用の魚雷艇二十九隻と八百人以上の上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦十七隻が後方にて航行したのである。
「メガラニカ自由区の領海へは推定二時間で到達する予定です…」
「全軍を警戒態勢に移行させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは通信機にて各艦の乗組員達に警戒態勢を指示する。
「全軍…警戒態勢に移行せよ…」
すると各艦隊の戦闘要員達は戦闘配置に移動したのである。戦闘要員達が戦闘配置に移動してより三分後…。旗艦アスピドケロンの艦橋に設置された最新型スーパーレーダーが反応したのである。
「本艦のスーパーレーダーが反応しました!」
スーパーレーダーはアプセラス帝国海軍が開発した最新式の電波探知機であり地球全体を正確に索敵出来る。艦艇のみならず艦載機にも搭載され今現在アプセラス帝国海軍と互角に交戦出来る国家は存在しない。
「何事だ?」
ブラッドフォードは偵察員に問い掛ける。
「南方…三百キロメートルの遠海より艦隊らしき艦影を無数確認…総数は推計四十隻程度です…」
スーパーレーダーには推計四十個もの光点が点滅したのである。
「ステルス機能を搭載させた艦艇か…」
すると直後…。
「無数の飛翔体が味方艦隊に接近中です!」
四十個の対象物である光点から数百個もの微小の光点が超音速で飛来するのを確認する。
「此奴は対艦ミサイル攻撃だ…迎撃態勢に移行しろ!」
ブラッドフォードは即座に迎撃を命令したのである。数秒後…。二十キロメートルの長距離より数百発もの飛翔体が味方艦隊に接近するのを確認する。
「各艦艇!飛翔体を迎撃せよ!」
各艦艇の迎撃システムが作動したのである。近年アプセラス帝国海軍の各艦艇には対空戦闘用に開発された小型の全自動型パルスレーザー対空砲を設置…。超音速で飛来するミサイル迎撃に期待されたのである。数秒後各艦のパルスレーザー対空砲が炸裂…。蛍光色の光弾が各艦に接近する大型対艦ミサイルを迎撃したのである。全自動化によって大型対艦ミサイルは全弾迎撃…。敵艦から発射された大型対艦ミサイルは味方艦隊には一発も命中しなかったのである。通信兵が即座に報告する。
「通信です…敵軍の大型対艦ミサイルは全弾迎撃されました!味方艦隊への損害は皆無です!」
「最先端の科学技術の結晶であるアプセラス帝国海軍に旧型の対艦ミサイルで攻撃するとは…奴等は時代錯誤ですな♪」
ルーヴェルハルトは笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…所詮奴等は烏合の衆だ…」
総司令官のブラッドフォードも勝利を確信する。アプセラス帝国軍の大艦隊はメガラニカ自由区近海へと直進したのである。十数分後…。メガラニカ自由区の防衛艦隊と遭遇したのである。ルーヴェルハルトはブリッジ正面の窓側にて恐る恐る双眼鏡を所持…。真正面の敵軍の中規模艦隊を確認する。
「大総統…敵軍の防衛艦隊です…」
メガラニカ自由区の防衛艦隊はミサイル巡洋艦八隻…。十九隻のミサイル駆逐艦と三十二隻の魚雷艇が確認出来る。
「中規模艦隊か…総攻撃せよ…」
ブラッドフォードは即刻中規模艦隊に対する総攻撃を指示…。各艦の大型対艦ミサイルと機関砲が炸裂する。アプセラス帝国軍の先制攻撃によりメガラニカ防衛艦隊は二隻の大型ミサイル巡洋艦と六隻のミサイル駆逐艦が大型対艦ミサイルで撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。海面上には九百人以上の乗組員達が吹っ飛ばされる。
「味方艦隊の圧倒的優勢です!」
旗艦アスピドケロンのブリッジでは乗組員達が沈没する敵艦を眺望する。
「アプセラス帝国軍の圧勝は確実だな…」
「奴等は腐敗した国民主権勢力の残党だ…所詮メガラニカ自由区なんて…」
乗組員達はアプセラス帝国軍の優勢に安堵したのである。同時刻…。メガラニカ自由区防衛艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦リトルヴィーナス艦内では味方艦隊の劣勢に騒然とする。
「多勢に無勢だ…こんな状態では防衛艦隊は全滅するぞ!」
「畜生…防衛艦隊が全滅すれば…アプセラス帝国軍の本土上陸も時間の問題だ…」
乗組員達は騒然とするのだが…。艦長の【ウィンフィールド】は沈黙した様子であり冷静だったのである。乗組員の一人が恐る恐る…。
「ウィンフィールド艦長…如何されましょうか?こんなにも劣勢では味方の防衛艦隊は全滅しますよ…」
「狼狽えるな…」
ウィンフィールドは騒然とする周囲の乗組員達を制止させる。
「ですが艦長…今現在の戦況はメガラニカ防衛隊が圧倒的に不利ですよ…」
ウィンフィールドは沈黙した様子で腕時計を確認する。
「時間だな…」
周囲の乗組員達はハッとした表情で…。
「えっ…何が時間なのですか!?」
一人の乗組員が恐る恐るウィンフィールドに問い掛ける。
「作戦を開始する…」
ウィンフィールドは通信兵を直視するなり…。
「通信兵…即刻独立機動部隊に通信させるのだ…出撃の命令を…」
「はっ!」
周囲の者達はポカンとする。
「一体何を開始するのか?」
同時刻…。メガラニカ自由区西方地帯の軍港にて三隻の中型空母が出撃したのである。中型空母にはとある新型兵器が多数搭載される。西方地帯から独立機動部隊が出撃を開始してより五分後…。メガラニカ自由区南方地帯の防衛艦隊は壊滅状態であり撤退を余儀無くされる。壊滅寸前の防衛艦隊の光景にアプセラス帝国軍総司令官のブラッドフォードは航空部隊の出撃を命令する。
「航空部隊を出撃させろ…メガラニカ自由区の南方地帯全域を空爆せよ…非戦闘員への攻撃も許可する…徹底的に奴等を蹴散らせるのだ…」
「はっ!」
ブラッドフォードが命令すると五隻の大型戦闘航空母艦から推計三百機もの戦闘爆撃機が出撃したのである。航空部隊はメガラニカ自由区の南方地帯領空へと進入…。地上への空爆を開始したのである。南方地帯を防衛する地上部隊は必死にアプセラス帝国軍の航空部隊を迎撃するも…。相手は超音速で飛行する戦闘爆撃機であり対空砲は通用せず対空ミサイルで攻撃しても機体に搭載されたパルスレーザーで簡単に無力化されたのである。攻撃開始から三分間が経過すると南方地帯の地上部隊は九割が壊滅…。数千人もの民間人が死傷したのである。旗艦アスピドケロンではブリッジの乗組員達がモニターで戦況の映像を注視する。
「大総統♪アプセラス帝国軍の圧倒的優勢です♪南方地帯の守備隊は壊滅状態ですよ…」
副艦長のルーヴェルハルトが笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…」
ブラッドフォードは現状であれば上陸作戦が可能であると判断…。
「敵軍は相当疲弊した状態だ…味方の上陸部隊に伝播させろ!」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは即座に各輸送艦に伝達する。上陸作戦を開始する直前…。スーパーレーダーが反応したのである。
「スーパーレーダーが反応しました!」
特殊無線技士がブラッドフォードに報告する。
「今度は何事だ!?」
ブラッドフォードが特殊無線技士に問い掛ける。
「西方の海域より無数の移動物体が出現…超音速で此方に急接近中です…」
「移動物体だと?敵機か?」
ブラッドフォードはモニターを作動させる。するとモニターの画面には無数の飛行物体が映写される。
「此奴は…」
飛行物体は軍用機の形状だが従来型の航空機とは異質的であり新型機であると認識する。
「大総統…敵軍の新型機でしょうか?」
「ひょっとすると無人兵器の戦闘用ドローンかも知れないな…」
「戦闘用ドローンですと?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「敵部隊の航空攻撃に警戒せよ…再度迎撃態勢に移行しろ…作戦中の航空部隊にもドローンの迎撃を急行させるのだ…」
「承知しました…大総統…」
戦闘艦隊と各輸送艦隊は上陸作戦を一時中止させ対空戦闘に移行する。数百機ものドローンが肉眼でも視認出来る位置へと到達…。
「大総統…敵軍のドローンです…」
「ドローンを撃墜せよ!味方艦隊には接近させるな!」
ブラッドフォードの命令と同時に各艦艇は対空戦闘を開始する。対空ミサイルと対空パルスレーザーが西方の上空にて炸裂したのである。対空パルスレーザーがドローンに直撃するのだが…。ドローンの機体内部には高エネルギー兵器を無力化する電磁防壁発生装置により対空パルスレーザーが無力化されたのである。旗艦アスピドケロンのブリッジでは双眼鏡で副艦長のルーヴェルハルトが上空を直視する。
「なっ!?シールドでしょうか!?」
「シールドだと?」
「ドローンは高エネルギーのシールドで対空パルスレーザーを無力化しました…ひょっとして奴等…」
「電磁防壁だな…ドローンの機体に光学兵器を無力化するシールド装置を装備したのだな…」
電磁防壁発生装置とは高エネルギー兵器を無力化する補助装置である。近年ではアプセラス帝国軍にも同類の補助装置は保有するものの…。艦船用の大型装置であり小型航空機に搭載出来る小型の装置は開発中である。
「如何やら奴等…電磁防壁発生装置の小型化に成功したみたいだな…」
ドローン関連の科学技術ではメガラニカ自由区がアプセラス帝国よりも数段階上回る。人員不足であり少数精鋭のメガラニカ防衛隊にとって無人兵器のドローンは最大の戦力であり戦闘に特化されたドローン兵器が多数開発される。一方のアプセラス帝国軍にもドローン兵器は多数配備されるものの…。基本的に偵察用の警戒型ドローンであり戦闘に特化された戦闘用ドローンは試作機のみである。
「艦長…上空より敵機が接近中です!」
対空パルスレーザーの弾幕がアプセラス帝国軍の艦隊周囲に炸裂するのだが…。ドローンは機体のシールド装置でパルスレーザーを潜り抜け味方艦隊の上空間近へと到達する。ドローンは即座に低空飛行…。高速航空魚雷を投下したのである。副艦長のルーヴェルハルトはドローンの高速航空魚雷を投下した瞬間を直視する。
「大総統!敵機は航空魚雷を投下しました…」
「航空魚雷だと?大昔の大戦か?」
本来パルスレーザーはミサイルやら敵機の迎撃を想定して開発された高エネルギー兵器であり水中の魚雷を迎撃するのは不可能である。
「大昔の大戦だな…」
アプセラス帝国軍では魚雷は潜水艦と魚雷艇のみ搭載…。今現在航空魚雷は皆無である。
「艦長!右舷より魚雷が接近中です!」
特殊無線技士が報告する。
「即刻回避だ!」
ブラッドフォードは即座に回避を指示したのである。乗組員達の迅速の対応により旗艦アスピドケロンは敵機の魚雷攻撃を回避する。旗艦アスピドケロンの乗組員達はホッとするも…。直後である。対空戦闘中の一隻のミサイル巡洋艦と二隻の防空駆逐艦がドローンの魚雷攻撃により爆散…。轟沈したのである。
「大総統…戦闘中のミサイル巡洋艦ヘルフィッシュと二隻の防空駆逐艦が敵機の魚雷攻撃で撃沈されました…」
メガラニカ防衛隊のドローン兵器は潜水艦に搭載された大型魚雷であり大型艦をも撃沈出来る。今度は輸送艦五隻と魚雷艇八隻がドローンの魚雷攻撃で沈没…。輸送艦六隻と魚雷艇四隻が大破したのである。撃沈された輸送艦からは二千人以上の将兵が海面上に吹っ飛ばされる。作戦中だった航空部隊が味方艦隊上空に帰還…。ドローンを迎撃するもドローンの速度は戦闘爆撃機よりも高速であり反対に味方の戦闘爆撃機が反撃される。二分間の空戦で百八十機もの味方戦闘機が撃墜され…。百人以上のパイロットが戦死したのである。一方のドローンも艦艇と艦載機の対空ミサイルにより三十四機撃墜される。副総統のルーヴェルハルトは上空の光景を直視するなり…。
「大総統…アプセラス帝国軍の劣勢です…」
形勢は完全に逆転したのである。ブラッドフォードは沈黙した様子であるが…。自軍の劣勢に苛立ったのかピリピリし始める。すると直後…。主力の戦闘航空母艦にも被害が出始める。二隻の戦闘航空母艦はドローンの自爆攻撃によって飛行甲板が破壊され…。大破したのである。旗艦アスピドケロンの同型艦であるレヴィアタンはドローンの魚雷攻撃で艦内の弾薬庫に引火…。一瞬で爆沈する。
「同型艦のレヴィアタンが撃沈されました!」
同型艦のレヴィアタンが爆沈したと同時に艦内の四十八機の艦載機は勿論…。五百人以上の乗組員達が一瞬で吹っ飛ばされる。旗艦アスピドケロンの周辺海面上には無数の鉄屑やら乗組員達の死骸がプカプカと浮上する。艦隊の損害からルーヴェルハルトはブラッドフォードに撤退を要請したのである。
「大総統!現状ではアプセラス帝国軍が圧倒的に不利です!即刻撤退しなければ…味方の艦隊が全滅しますよ!」
撤退を要請するルーヴェルハルトにブラッドフォードはギロッと睥睨する。
「撤退だと?主力の戦闘航空母艦二隻は健在だ…ドローンは実弾の対空ミサイルで対応しろ…」
実際問題ドローンのシールド装置は対空パルスレーザーによる高エネルギー兵器は無力化出来る反面…。実弾兵器は無力化出来ない。
「ですが対空ミサイルのみでは…本数が…」
ドローンに実弾である対空ミサイルは通用するが…。ドローンに命中させるのは非常に困難であり発射された大半がドローンの機関砲で迎撃される。直後…。
「飛行甲板上空より敵機です!直上に急降下します!」
特殊無線技士が報告する。
「敵機だと?」
数秒後…。急降下したドローンは甲板の直上に対艦ミサイルを発射したのである。直後である。ドンッと艦内全体に爆発音が響き渡り…。旗艦アスピドケロンの艦体全体がグラッと揺れ動いたのである。
「ぐっ!」
艦体が揺れ動いた衝撃にブラッドフォードは横たわる。
「大総統!大丈夫ですか!?」
副艦長のルーヴェルハルトは横たわったブラッドフォードに近寄る。
「私は大丈夫だ…本艦の被害状況は?」
先程のドローンの攻撃により旗艦アスピドケロンの損傷は飛行甲板が大破…。艦内に収納された十八機の艦載機も破壊されたのである。反面…。飛行甲板以外の設備は健在だったのである。
「母艦としての機能は完全に阻害されたな…」
「飛行甲板は使用出来ませんが…旗艦としての機能は健在です…」
「であればダメージコントロールを急行せよ…」
乗組員達が飛行甲板を修理する最中…。三隻の大型輸送艦と六隻の防空駆逐艦がドローンと潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されたのである。予想外の大損害にブラッドフォードは撤退を余儀無くされる。
(戦闘を続行し続ければアプセラス帝国軍の大艦隊でも確実に全滅するな…)
味方艦隊の全滅を危惧したブラッドフォードは不本意であるが…。撤退を決断する。艦内の通信機を所持するなり…。
「全軍に伝播する…戦闘続行は不可能だ…撤退を開始せよ…」
ブラッドフォードの判断に誰しもが反対しなかったのである。撤退を開始したアプセラス帝国軍の艦隊にメガラニカ防衛隊のドローンは攻撃を停止…。本土へと戻ったのである。今回の大海戦でアプセラス帝国軍は大型艦の戦闘航空母艦一隻とミサイル巡洋艦一隻…。小型艦の防空駆逐艦八隻と魚雷艇十二隻が撃沈される。損傷では三隻の戦闘航空母艦と二隻のミサイル巡洋艦が大破…。防空駆逐艦四隻と魚雷艇五隻が大破する。陸軍の上陸部隊は大型輸送艦が八隻撃沈され…。七隻の輸送艦が大破したのである。航空部隊は二百十九機の戦闘爆撃機を喪失…。五十四機の機体が損傷する。人的損害では合計六千九百四十二人が戦死…。合計三千五百六十一人が負傷したのである。一方のメガラニカ防衛隊はミライル駆逐艦二隻とミサイル駆逐艦六隻が撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。陸軍の守備隊は五十八両の戦闘車両が破壊…。空軍は五十六機のドローンが撃墜される。人的被害では合計二千三百六十五人が戦死…。合計三千四百七十八人が負傷する。民間人への被害は合計三千五百八十九人が死亡…。合計四千七百三十二人が負傷したのである。今回の戦闘はメガラニカ南方海戦と命名される。今回の大敗北以降…。アプセラス帝国の権威が失墜したのである。

第二話

大艦巨砲主義

メガラニカ南方海戦の大敗北以降…。メガラニカ自由区の猛反撃が開始されたのである。メガラニカ防衛隊はドローン兵器の大量投入と国内の反政府勢力の協力によりアプセラス帝国の領土の約半分を攻略…。占領したのである。メガラニカ南方海戦から一週間後の五月二十四日…。各自治領の戦闘で推計九百万人もの民間人が死亡したのである。同日…。アプセラス帝国首都イーストサイドの大総統官邸会議室では大総統のブラッドフォードとルーヴェルハルトが対談する。
「大総統…一週間の短期間でアプセラス帝国の統治領の約半分がメガラニカ防衛隊の猛反撃により占拠されました…アプセラス帝国軍は劣勢の状態です…」
「一週間で領土の約半分が奴等に占拠させるなんて…ドローン兵器の威力を見縊らなければ…こんな状態には…」
ブラッドフォードは後悔したのである。後悔するブラッドフォードにルーヴェルハルトは前向きな姿勢で…。
「ですが大総統!今現在でこそ劣勢ですが…今迄の戦闘でメガラニカ自由区はアプセラス帝国以上に消耗した状態です!」
今現在のメガラニカ自由区とアプセラス帝国の国力は一対十八でありメガラニカ自由区は圧倒的に不利である。メガラニカ防衛隊はドローン兵器の有効活用から各地の戦場で圧倒的物量のアプセラス帝国軍を圧倒する。メガラニカ防衛隊の快進撃によりアプセラス帝国は領土の約半分を占拠されたものの…。短期間で戦線を拡大させたメガラニカ防衛隊は国力が貧弱であり兵站の遅滞から膠着し始める。
「メガラニカ防衛隊は膠着状態ですからね!劣勢を挽回出来るチャンスですよ!」
するとブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。
「訓練中の【ホムンクルス】だが…正規軍の将兵として実戦に配属出来るのか?」
「訓練中のホムンクルスですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から研究…。開発されたクローン人間達の総称である。度重なる戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。世界最終戦争以前のアプセラス帝国は小規模の新興国であり人員不足の観点からクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。通常クローン人間の開発は倫理的問題点から民主主義の国家では法律で禁止されるのが通例であるが…。人権を尊重しない独裁政治のアプセラス帝国ではクローン人間の開発も容易に実現出来たのである。今現在は推計三百万人ものホムンクルスが大量生産され…。正規軍の将兵として実戦に参加出来そうなホムンクルスは推計二十万人である。
「彼等が正規軍の将兵として実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。アプセラス帝国軍はホムンクルスと人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスの将兵を最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
近日ではアプセラス帝国の劣勢から脱走兵やらメガラニカ防衛隊に加勢する勢力が続出…。両勢力の力関係は完全に逆転し始める。人員確保が難化し続けるアプセラス帝国軍にとってホムンクルス将兵の投入は非常に好都合だったのである。
「本題ですが…開発部が新型兵器を提案しました…」
開発部が提案した数種類の新型兵器の設計図をブラッドフォードに提出する。
「戦闘用ドローン…『ケルベロス』?」
「ケルベロスは…」
ケルベロスとはアプセラス帝国軍が開発した無人戦闘機である。従来型の有人戦闘機よりは一回り小型であるがマッハ八以上の最高速度を発揮出来…。機体底部には対地対艦武装は大型ミサイルを搭載する。対空装備は対空プラズマレーザーと実弾の対空機関砲を搭載…。
「ケルベロスが量産化に成功出来れば…メガラニカ防衛隊のドローン兵器『グリフォン』にも対抗出来ましょう…」
メガラニカ南方海戦でアプセラス帝国軍艦隊を撃退させたドローン兵器の正体はグリフォンと判明する。本機は南方海戦でアプセラス帝国海軍部隊が鹵獲したグリフォンを研究…。設計された機体でありメガラニカ防衛隊のグリフォンに対抗出来る戦闘用ドローン兵器として提案されたのである。
「ケルベロス…試作機の完成を見届けるか…」
二枚目の設計図を直視する。
「ん?此奴は…」
「二枚目の新型兵器は超砲撃型戦艦…『ティタニア』です…」
「超砲撃型戦艦…ティタニア?」
正式名は超砲撃型戦艦ティタニアであり海軍直属の開発部が提案したのである。今現在では完全に過去の遺産である超弩級戦艦であるがティタニアは最先端の科学技術と過去のロストテクノロジーを結集…。現代型大艦巨砲主義の象徴である。艦体の全長は三百メートルサイズと巨体であり全幅は五十メートルサイズ…。全備総重量は前代未聞の推定七十万トンクラスの超弩級戦艦である。
「今時大艦巨砲主義なんて…時代錯誤だろ…」
ブラッドフォードは時代錯誤であると感じるが…。
「戦艦ティタニアは現在開発中の超大型電磁投射砲を搭載する予定なのです…」
「電磁投射砲か…」
電磁投射砲は現在アプセラス帝国軍が開発中の実弾電磁兵器である。高額のミサイルよりも安価であり高威力を発揮出来ると期待される。
「海軍開発部の大計画では戦艦ティタニアの装甲は『エターナルメタル』を使用するとの情報です…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは月面で採掘された不朽性の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスも安価ですからね♪」
「であれば建造を急行するべきだな…」
直後である。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で会議室に入室したのである。
「緊急事態だと?何事だ?」
ブラッドフォードが問い掛けると通信兵はビクビクした様子で…。
「南方のメティス諸島…メティス基地が敵軍に占拠…基地を防衛する守備隊は必死に交戦しましたが…部隊は玉砕したとの情報です…」
「なっ!?メティス基地の守備隊が…玉砕だと!?守備隊は全滅したのか!?」
「残念ですが…」
ルーヴェルハルトは驚愕したのである。メティス基地とは強固の大規模要塞が構築された本土防衛用の第二防衛ライン…。推計三万人ものアプセラス帝国陸軍守備隊が配置されたが本日未明にメガラニカ防衛隊の強襲で全滅したのである。
「メティス基地が陥落したか…恐らく今度の攻撃目標は最終防衛ラインの…アポロゾーン基地だな…」
アポロゾーン基地とは最南端に位置する離島…。アポロゾーン本島を防衛するアプセラス帝国軍守備隊の本拠地である。アプセラス帝国本土を防衛する最重要防衛拠点であるものの…。推計八十万人もの民間人も安住する。ルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「大総統…即刻アポロゾーン本島に援軍を派遣させますか?」
「援軍は不要だ…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの返答にルーヴェルハルトと通信兵は絶句したのである。
「本気ですか!?大総統!?」
「私は本気だよ…ルーヴェルハルト…」
「如何して援軍を派遣しないのですか!?アポロゾーンが陥落すれば…今度は本土が攻撃対象なのですよ!?」
ブラッドフォードは再度無表情で返答する。
「アポロゾーンの守備隊には陽動作戦に利用する…」
「陽動作戦ですと?」
「味方の戦闘機に特殊弾頭を搭載…アポロゾーンに侵攻中のメガラニカ防衛隊を特殊弾頭ミサイルで殲滅する…」
アポロゾーン基地は陸海軍の大部隊が駐屯…。基地内の兵力も推計十四万人であり基地を陥落させるには相当数の部隊が必要である。アポロゾーンを攻防する両軍に特殊弾頭ミサイルで攻撃…。当然として味方の部隊は全滅するが敵軍の侵攻を阻止するには非常に好都合である。
「特殊弾頭ミサイルですと!?アポロゾーンに特殊弾頭なんて使用すれば味方の守備隊は勿論…大勢の民間人にも被害が…」
特殊弾頭ミサイルは所謂核兵器の一種であり一発のミサイルで十数キロメートルもの広範囲を焦土化させられる。非人道的でありイエスマンのルーヴェルハルトも特殊弾頭ミサイルの使用には躊躇する。
「今更何を躊躇するのだ?ルーヴェルハルト…特殊弾頭なら二年前の大戦争で無尽蔵に使用しただろ…」
小国家だったアプセラス帝国が世界最終戦争で勝利出来たのは特殊弾頭ミサイルの多用である。
「敵味方諸共…殲滅するのですか?」
「最早多少の犠牲は止むを得ない…」
ルーヴェルハルトの問い掛けにブラッドフォードは即答する。
「特殊弾頭は極秘だぞ…兎にも角にもアポロゾーンの守備隊には本島の防衛を徹底させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは不本意であるが承諾したのである。

第三話

攻防戦

五月二十七日早朝…。メガラニカ防衛隊の大艦隊がアプセラス帝国最終防衛区域アポロゾーンへと進行を開始したのである。同時刻…。アポロゾーン基地総司令部では拠点防衛用のスーパーレーダーが反応したのである。
「一体何事だ!?」
「スーパーレーダーが反応したぞ!」
即座に立体映像のホログラムで確認する。ホログラムには数十隻もの艦艇が確認出来る。
「此奴はメガラニカ防衛隊の艦隊だな…アポロゾーンを攻略するみたいだ…」
「如何しましょう…総司令官…」
守備隊の陸軍総司令官が各員に指示したのである。
「即刻防衛戦を開始する!各員は戦闘配置だ!アポロゾーンは徹底的に死守しろ!」
アポロゾーンは本土防衛の最終防衛ラインでありアポロゾーンが陥落すれば本土が攻撃される。
「通信兵…本土にも援軍の要請を伝達しろ…」
「はっ!」
通信兵は即座に総本部に通達したのである。三十分後…。メガラニカ防衛隊の大艦隊がアポロゾーンの防衛区域へと到達したのである。
「総司令官…メガラニカの大艦隊が防衛区域に到達しました…」
「防衛戦を開始するか…」
攻撃開始の合図と同時に海面上からは百二十隻もの魚雷艇…。滑走路からは百三十機もの戦闘爆撃機が飛来したのである。
メンテ
桜花姫 ( No.25 )
日時: 2021/08/17 09:38
名前: 月影桜花姫

第二部

第一話

斬首

世界樹の霊魂巨神木との死闘から半年後の天地歴四千二十年十二月中旬…。太平神国に安寧秩序が到来したものの近頃東国の中心街では何者かによって頭首を斬首される連続殺人事件が多発したのである。殺人事件の発生に町民達は畏怖する。真夜中に二人の鎮守府常備軍の邏卒が東国の中心街を夜番したのである。
「折角平穏が戻ったのに…殺人事件が三件も連続的に発生するなんて物騒だな…」
「恐らく匪賊の仕業だろうが…斬首するなんて随分悪質だよな…」
殺害された被害者達は三人とも頭首を斬首された状態であり翌朝には斬首された頭部と遺体が事件現場で発見される。すると小柄の邏卒がブルブルと寒気を感じる。
「こんな真夜中に人殺しなんかと出くわしたくないぜ…勘弁しろよな…」
「東国の武士団である俺達が人殺しに畏怖して如何する?こんな小事件で畏怖しちまったら俺達は世間様の笑い者だぜ…」
「今回も月影桜花姫様の出番だよな…彼女だったら百人力?千人力だろうし…」
邏卒が口走った月影桜花姫の一言に大柄の邏卒が苛立ち始める。
「桜花姫…桜花姫って…毎回不寝番の桜花姫に頼りっ放しだと東国の武士団は不必要だって村人達から造反されちまうよ!好い加減武士団の上役達も内部を改革させないと形骸化しちまうぞ…」
近年では不寝番の最上級妖女…。月影桜花姫の悪霊征伐により東国武士団の権威が失墜したのである。東国武士団の形骸化と他力本願が問題視され武士団内部からも改革派が出現…。武士団全体の再構築が公言されたのである。
「相手が匪賊だけなら俺達でも対処出来るかも知れないが…神出鬼没の悪霊なんて俺達では頑張っても如何にも出来ないだろ…」
「相手が悪霊だったらな…」
彼等が雑談中…。
「ん?」
東国と北国に国境に直結する両国橋より番傘を所持した赤色の着物姿の女性がポツンと佇立した様子であり天空の満月を眺望する。
「一体誰だろう?」
「こんな真夜中に女人が一人で何を…」
彼等は恐る恐る両国橋へと移動するなり…。番傘の女性の背後に近寄ったのである。女性は小柄の背丈であるが非常に美的の雰囲気であり頭髪には寒椿の髪装飾が確認出来る。
「真夜中だぞ…近頃は斬首事件で物騒だしこんな真夜中にあんたみたいな小町娘が一人で出歩くのは危険だぜ!即刻家屋敷に戻りやがれ!」
大柄の邏卒は強気の態度で女性に命令する。大柄の邏卒は強気であったが女性は無反応であり見向きすらしなかったのである。
「此奴…」
(畜生が…無視しやがって!)
大柄の邏卒は女性の態度に苛立ったのかピリピリする。すると小柄の邏卒が恐る恐る…。
「失礼なのですが…貴女様みたいな美人さんがこんな真夜中に一人で出歩かれたら人攫いに遭遇するかも知れませんし…即刻家屋敷に戻られませんか?」
小柄の邏卒が物静かに発言するも女性は反応しない。
「此奴…聾者っぽいな…」
「彼女は雛人形みたいだな…私達の問い掛けには反応しないし…」
(不吉だな…)
ゾッとした小柄の邏卒は女性の雰囲気に畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。
「貴様…こんな小町娘に畏怖するなんて♪余程の小心者だな♪」
大柄の邏卒は女性の背後へと移動するなり…。
「外見だけなら可愛らしい雰囲気だな♪素顔は別嬪かな?」
小柄の邏卒はビクビクした様子で大柄の邏卒に制止する。
「女人に手出しするなよ!任務は如何する!?」
制止する小柄の邏卒に大柄の邏卒は強気で反論したのである。
「任務なんて後回しだよ♪後回し♪」
「後回しって…」
大柄の邏卒の無責任さに呆れ果てる。
「真夜中だし…人目は貴様だけだからな♪」
大柄の邏卒はムラムラした様子で赤面するなり…。
「小町娘の姉ちゃんよ♪俺と一緒に夜遊びしないか?」
小柄の邏卒は膠着したのである。
(一体如何すれば…)
困惑した直後…。女性が背後を直視したのである。
「えっ?」
女性は半透明の血紅色の瞳孔であり無表情で大柄の邏卒を凝視する。
「素顔も別嬪だな♪」
大柄の邏卒が微笑した直後…。大柄の邏卒の喉元から血液が流れ出る。
「えっ?流血だと?」
大柄の邏卒は恐る恐る喉元に接触する。
「如何して流血した?」
すると直後…。
「えっ?」
大柄の邏卒の頭首がポロッと橋板に落下したのである。
「ひっ!」
(一体何が!?)
小柄の邏卒は極度の恐怖心により恐る恐る後退り…。一目散に逃走したのである。翌朝…。東国と北国の国境に直結する両国橋にて斬首された大柄の邏卒の遺体が発見される。当日の真昼…。最上級妖女の月影桜花姫は久方振りに東国の三蔵郎の寺院へと訪問したのである。
「三蔵郎様♪」
「桜花姫様でしたか♪久方振りですな♪本日は如何されましたか?」
三蔵郎は久方振りの桜花姫の訪問に大喜びする。
「勿論暇潰しよ♪」
「承知しました♪折角ですし昼食でも如何でしょうか?」
「昼食ですって♪空腹だから頂戴するわね♪」
三蔵郎は桜花姫に客室へと案内したのである。
「早速食事を用意しますので…」
三蔵郎は客室から退室する。
「霊魂巨神木の事件は無事に解決したけれど…悪霊が出現しないと面白くないわね…」
半年前に発生した霊魂巨神木の事件は無事に解決したが…。
「毎日が退屈だわ…」
平和が到来すると非常に退屈なのか普通の日常生活が憂鬱に感じられる。
「今後如何しましょう…」
すると三蔵郎が恐る恐る客室へと戻ったのである。
「桜花姫♪」
「三蔵郎様…食事は何かしら?」
「本日の昼食は天丼ですよ♪」
三蔵郎が用意した食事は美味しそうな天丼であり桜花姫は頬張りたくなる。
「天丼なのね♪美味しそうだわ♪」
海老天を頬張る直前…。何者かが寺院の客室へと乱入したのである。
「失礼します!」
突然の出来事に桜花姫と三蔵郎は驚愕する。
「きゃっ!」
「うわっ!」
「突然何事よ!?」
客室へと乱入した人物とは小柄の邏卒である。
「誰かと思いきや…鎮守府の駐在員さんでしょうか?」
「如何して鎮守府の駐在員さんが三蔵郎様の寺院なんかに?」
小柄の邏卒は桜花姫を直視するなり…。
「ひっ!悪霊!?」
「なっ!」
邏卒の悪霊発言に桜花姫はムッとする。
「失礼しちゃうわね!地上界の女神様である私に悪霊ですって!」
失言した邏卒を睥睨するなり…。
「命知らずのあんたは招き猫に変化しなさい♪」
すると小柄の邏卒は桜花姫の変化の妖術によって招き猫に変化させられる。
「えっ!?駐在員さんが招き猫に!?」
三蔵郎は一瞬で招き猫に変化した邏卒を直視すると驚愕したのである。
「私の天道眼は変化の妖術で多種多様の物体を別物に変化させられるのよ♪悪霊は勿論…人間だって無条件に変化させられるからね♪」
すると三蔵郎は恐る恐る桜花姫に…。
「ですが桜花姫様…遣り過ぎでは?彼を元通りには戻せないのでしょうか?」
「勿論戻せるわよ♪」
変化の妖術を解除…。妖術で招き猫に変化させられた邏卒は元通りの人間の姿形に戻ったのである。
「元通りに戻れた…」
小柄の邏卒はホッとする。
「反省しなさいね♪」
桜花姫は笑顔で発言したのである。すると邏卒はビクビクした様子で恐る恐る…。
「失礼しました…桜花姫様…」
桜花姫に謝罪したのである。
「気にしないで♪金輪際地上界の女神様である私に悪霊なんて失言したら今度こそ桜餅に変化させてあんたを食い殺しちゃうからね♪」
邏卒は勿論…。
(桜花姫様…)
三蔵郎も苦笑いする。
「ですが突然如何されたのですか?重役である東国武士団の駐在員さんがこんな寺院に訪問されるなんて…事件でも発生したのでしょうか?」
「昨夜の出来事なのですが…」
邏卒は昨夜の出来事は勿論…。昨今に頻発した連続斬首事件を洗い浚い告白したのである。
「真夜中の連続斬首事件ですか…一大事ですね…」
「昨夜に遭遇した小町娘によって私の仲間が殺されましたからね…」
(小町娘?)
小町娘の一言に桜花姫が反応する。
「駐在員さんの仲間は小町娘に殺されたの?」
桜花姫が質問すると邏卒は恐る恐る…。
「彼女は妖術らしき摩訶不思議の効力で…私の仲間の頭首を斬首されたのです…被害者達は全員共通して頭首を斬撃された状態でしたからね…」
「ひょっとして妖女の仕業かしら?」
「妖女ですと?」
三蔵郎と邏卒は桜花姫の妖女の一言に反応したのである。
「真犯人が妖女なのかは現段階では断定は出来ないけれど…彼女の特徴とかは?」
桜花姫の質問に邏卒は恐る恐る返答する。
「私が遭遇した小町娘の特徴ですか…特徴であれば赤色の着物姿でしたね…頭髪には寒椿の髪装飾…右手には番傘でした…」
「赤色の着物姿…寒椿の髪装飾…番傘ね…」
桜花姫は一瞬沈黙したのである。
「桜花姫様…如何されましたか?」
「ひょっとすると今回の連続斬首事件も…悪霊の仕業かも知れないわ…」
「悪霊ですと!?」
三蔵郎と邏卒は悪霊の一言に反応する。
「ひょっとすると【椿女郎】って名前の小町娘の悪霊の仕業よ…」
「椿女郎ですと?椿女郎とは一体何者なのでしょうか?」
「椿女郎はね…」
椿女郎とは戦乱時代に極悪非道の荒武者によって頭部を斬首された村娘の亡霊である。外見のみなら容姿端麗の小町娘であるが…。霊力は非常に強力であり彼女の瞳孔を直視した人間は彼女の霊力により頭首を斬首される。今現在でも成仏出来ずに各地を徘徊しては遭遇した人間の頭首を自身の霊能力で斬首したのである。
「戦乱時代に斬首された村娘の悪霊でしたか…非常に気の毒ですね…」
「椿女郎の瞳孔を直視すれば彼女の霊能力によって頭首を斬首されるわ…」
「私が彼女に斬首されなかったのは…」
「あんたが斬首されなかったのは幸運にも彼女の瞳孔を直視しなかったからよ…」
命拾いした邏卒であるが…。
「ですが正直…私も彼女の素顔を拝見したかったですよ♪彼女は別嬪っぽかったし…」
「駐在員さんが死にたくなったら彼女の素顔を直視しなさいよ♪」
桜花姫は笑顔で発言する。
「桜花姫様は意地悪ですね♪」
談笑した桜花姫と邏卒であるが桜花姫は邏卒に質問したのである。
「如何してあんたは初対面の私を悪霊と勘違いしたのよ?」
邏卒は苦笑いするなり…。
「椿女郎と命名される悪霊が奇遇にも桜花姫様と姿形が一致しましてね…桜花姫様が一瞬悪霊かと勘違いしちゃったのですよ♪」
「桜花姫様は普段から赤色の着物姿ですからね♪」
「三蔵郎様も…失礼しちゃうわね…」
三蔵郎に揶揄された桜花姫は表情が赤面する。
「勿論桜花姫様は別嬪ですよ♪」
「勿論ですとも♪」
「私が別嬪なんて三蔵郎様も駐在員さんも大袈裟ね♪」
桜花姫は内心大喜びしたのである。
「椿女郎は即刻仕留めないと温厚篤実の女神様である私が悪霊と勘違いされちゃうからね!傍迷惑だわ…」
「桜花姫様の風評被害は勿論ですが…今回の問題を放置し続ければ大勢の町民達が斬首されますからね!」
三蔵郎は桜花姫を凝視するなり…。
「桜花姫様…即刻悪霊の椿女郎を征伐しなくては…」
「本来なら即刻征伐したいのだけれど…生憎椿女郎が出現するのは真夜中だけなのよね…」
椿女郎が出現するのは真夜中のみであり日中では出現しない。桜花姫は邏卒に指示する。
「駐在員さんは武士団の役人達に今夜の夜番活動を中止させなさい…勿論東国の町民達には夜間の外出を厳禁させてね♪」
「承知しました…私は失礼しますね…」
承諾した邏卒は外出したのである。
「ですが今回の悪霊事件も非常に厄介そうですね…」
「厄介かしら?悪霊退治屋の私にとっては好都合だけれどね♪何よりも悪霊征伐なんて久方振りだし♪」
久方振りの悪霊出現に桜花姫は大喜びする。
「ですが奇妙ですね…」
三蔵郎の表情が険悪化したのである。
「何が奇妙なの?三蔵郎様?」
「霊魂巨神木の悪霊の集合体を桜花姫様が成仏させたのに…今回は女人の悪霊が出現しました…」
半年前に霊魂巨神木に憑霊した悪霊の集合体は桜花姫の神通力によって成仏されたが…。近頃は各地に悪霊が再出現し始めたのである。少数であるが悪霊の再出現に三蔵郎は極度の胸騒ぎを感じる。
「桜花姫様…私は極度の胸騒ぎを感じるのです…」
「胸騒ぎですって…」
「今迄に出現した以上の悪霊が出現するかも知れません…」
三蔵郎は今迄に出現した悪霊とは桁外れの霊力を保持…。強大なる悪霊の出現を危惧したのである。三蔵郎は人一倍心配性の性格であるが桜花姫も悪霊の再出現は非常に気になる。
「兎にも角にも私は今回の悪霊を征伐するわね…」
「承知しました…桜花姫様…」
「早速昼食を頂戴するわね♪」
桜花姫と三蔵郎は昼食の天丼を食事したのである。当日の真夜中…。桜花姫は久方振りの悪霊征伐にワクワクした様子で闇夜の東国に直行する。
(椿女郎…今夜は出現するかしら♪)
一時間後…。東国の中心街へと到達する。
「真夜中の東国って普段は都会なのに無人の過疎地みたいだわ…」
日中は人通りが過多である東国の中心街であるが…。真夜中では人通りは皆無であり武士団の夜間の外出禁止命令によって町民は誰一人として確認出来ない。
「好都合ね♪」
今夜は武士団の巡邏も禁止される。
「悪霊を仕留めて思う存分熟睡するわよ♪」
適当に中心街を出回るのだが…。霊力らしい霊力を感じられず悪霊らしき物体は何一つ発見出来ない。
「はぁ…」
(霊力も感じられないわね…)
困惑した桜花姫であるが…。
「両国橋は如何かしら…」
事件現場である東国と北国を直結する両国橋を想起したのである。
「両国橋に直行するわよ♪」
即座に両国橋へと移動する。数分後…。両国橋へと到達したのである。
「両国橋に到着したけれど…」
周囲を警戒するが霊力も人影も皆無であり桜花姫は落胆する。
「如何しましょう…」
(真夜中に発見出来なければ悪霊を仕留められなくなるわ…)
一息したのである。
「今夜は出直しかしら…」
西国に戻ろうかと思いきや…。突如として背後より人気を感じる。
「えっ?」
(人気かしら?)
彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「こんな真夜中に誰かしら?」
桜花姫の背後には番傘を所持した赤色の着物姿の女性が真夜中の満月を眺望する。彼女の頭髪には寒椿の髪装飾が確認出来る。
(番傘と寒椿の髪装飾…ひょっとして彼女は…)
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る一歩ずつ番傘を所持する女性へと近寄る。
「あんたは悪霊の椿女郎ね…こんな真夜中にあんたみたいな村娘が一人で外出するなんて不自然だわ…」
桜花姫は女性に問い掛けるが…。番傘の女性は沈黙した様子であり只管天空の満月を眺望し続けるだけである。
(私の問い掛けに無視するなんて…腹立たしい悪霊ね…)
彼女の態度に桜花姫はピリピリする。すると椿女郎は背後に位置する桜花姫の方向を直視する直前…。
「えっ!?」
桜花姫は即座に両目を瞑目させる。
(危機一髪だったわ!下手に彼女の瞳孔を直視すると斬首されちゃうのよね…)
桜花姫は瞑目した状態で恐る恐る後退りする。
(非常に厄介だわ…如何しましょう…)
瞑目し続けた状態では身動きすら不安定であり妖術を発動したくても集中出来ず思う存分に妖術を発動出来ない。
(こんな状態では不利だわ…)
「一か八か逃げましょう!」
桜花姫は両国橋から一目散に逃走したのである。
(緊張しちゃったから変化の妖術も発動出来ないわね…)
緊張したのと椿女郎の素顔が気になり変化の妖術を発動したくても発動出来なかったのである。
(彼女の素顔も気になるし…)
「一か八か…」
桜花姫は斬首を覚悟…。再度両国橋へと戻ったのである。数分後…。桜花姫は両国橋に到達する。両国橋には満月を眺望し続ける椿女郎が確認出来る。
(椿女郎だわ…今度こそ妖術で仕留めるわよ♪)
桜花姫は恐る恐る椿女郎に近寄る。
「椿女郎!今度こそあんたを成仏させるからね!覚悟しなさいよ!」
すると数秒後…。椿女郎は桜花姫に反応したのか再度背後の彼女を直視するなり無表情で桜花姫を凝視する。
(椿女郎って…悪霊なのに意外と美人さんなのね♪)
彼女の素顔は非常に美的であり桜花姫でさえも容姿端麗であると感じる。
(本当に斬首されるかしら?)
数秒間が経過したものの…。何も発生しない。
「別に大丈夫そうね♪」
大丈夫であると確信した直後…。
「えっ?」
喉元からポタポタッと赤色の液体が流れ出る。
「何かしら?」
桜花姫は恐る恐る首筋の液体に接触したのである。
「流血だわ…」
皮膚から流れ出る赤色の液体が血液であると確信した直後…。桜花姫の頭首がポロっと橋板に落下したのである。椿女郎は霊能力で桜花姫の頭首を斬首すると不吉の表情で微笑する。彼女は再度満月を眺望するのだが…。
「残念だったわね♪椿女郎♪」
椿女郎は女性の美声に反応したのか背後を直視すると両目を瞑目した無傷の桜花姫が佇立する。すると椿女郎の霊能力によって斬首された桜花姫の肉体と頭首がポンッと白煙により消滅したのである。無表情だった椿女郎であるがハッとした表情で桜花姫を凝視する。
「あんたの表情を直視出来ないのは非常に残念だけれど♪あんたが霊能力で斬首したのは私の分身体なのよね♪」
桜花姫は分身の妖術で形作った分身体を利用して椿女郎と接触…。彼女の形相を認識させたのである。桜花姫は変化の妖術を発動…。
「あんたの素顔は分身体で確認したからね♪あんたは桜餅に変化しなさい♪」
椿女郎を桜餅に変化させる。
「消耗した妖力を回復させないと♪」
桜餅に変化した椿女郎をパクッと頬張る。
「美味だわ♪」
すると両国橋から感じられた不吉の霊力が消失する。
「事件解決ね♪私は西国に戻って思う存分熟睡するわよ♪」
無事事件を解決させた桜花姫は即座に西国へと戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.26 )
日時: 2021/08/17 09:39
名前: 月影桜花姫

第二話

鬼面山

椿女郎との死闘から四日後の真昼…。南国の鬼面山と命名される岩山にて無数の悪霊が出現したとの噂話が国全体に出回る。噂話が気になった桜花姫は悪霊征伐にワクワクしたのか西国から南国に聳え立つ鬼面山へと直行する。
「今度は南国の鬼面山に悪霊が出現したのね♪」
鬼面山とは標高九町の岩山であり大山全体が鬼面を連想させる外観から鬼面山と命名される。霊魂巨神木との戦闘から悪霊の出現は少数であったものの…。久方振りの悪霊の大群出現に桜花姫は大喜びしたのである。西国から徒歩により二時間後…。南国の村里に到達する。
「南国に到着したわね♪」
南国の村里は非常に殺風景であるものの…。大勢の農民達が農作業に尽力中である。
(今回は何が出現したのかしら♪半年前の荒神山の戦闘みたいに大量の悪霊が出現したら面白いわね♪)
半年前の荒神山での悪霊征伐を想起する。
「即刻鬼面山に移動しないと…」
目的地の鬼面山に直行したいが場所が不明瞭である。
(鬼面山の場所って…)
困惑した桜花姫は恐る恐る耕作中の農民に近寄るなり…。
「御免あそばせ♪百姓さん♪」
すると耕作中の農民が恐る恐る桜花姫を直視する。
「えっ?花魁の娘さんが南国の村里に訪問されるなんて…一体何事ですかね?」
農民の花魁発言に桜花姫は苛立ったのか即答したのである。
「なっ!失礼しちゃうわね…私は最上級妖女の月影桜花姫よ!花魁なんかと勘違いしないでよね!」
桜花姫の返答に農民は驚愕する。
「貴女様は伝説の最上級妖女の…月影桜花姫様ですか!?」
農民は即座に桜花姫に謝罪したのである。
「大変失礼しました!月影桜花姫様…花柄の着物姿だったので桜花姫様を花魁の娘さんと勘違いしちゃいました…」
「私自身奇抜だから花魁と見間違えるでしょうね♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「ですがこんな早朝から如何して桜花姫様は南国に訪問されたのですか?南国はこんなにも田舎村ですよ…」
南国の領土の広大さは東国に匹敵するものの土地の大半は農村地帯であり娯楽は皆無である。
「近頃南国の鬼面山に悪霊の大群が出現したみたいだからね♪私は鬼面山に出現した悪霊の大群を征伐しに南国に出掛けたのよ♪」
「鬼面山の悪霊征伐ですね…」
桜花姫は恐る恐る鬼面山の場所を質問する。
「私は鬼面山の場所を知りたくて…あんたは知らないかしら?」
農民は北方の側面に位置する岩山を指差したのである。
「鬼面山であれば北方の岩山ですよ…」
「北方の岩山ですって?」
桜花姫は農民が指差した北方の岩山を眺望する。鬼面山は農村から非常に近辺であり徒歩でも十数分で到達出来る近距離である。
「案外近辺だったのね♪感謝するわね♪」
桜花姫は北方の岩山を目印に直進する。農村からは感じられなかったが鬼面山に近寄ると重苦しい無数の霊力を感じる。
「霊力かしら?」
(非常に重苦しいわね…)
鬼面山の表面は非常に暗闇であり無数の霊力の悪影響からか空気も全体的に重苦しい。
「こんなにも空気が重苦しいなんて…普通の人間なんて近寄れないでしょうね…」
桜花姫は恐る恐る鬼面山へと突入する。周辺はゴツゴツの岩壁ばかりで動植物は確認出来ない。
「昼間なのに真夜中みたいな雰囲気だわ…」
すると山道の周辺より…。
霊力だわ…悪霊かしら?」
無数の霊力が近寄るのを感じる。
(天道眼…発動!)
警戒した桜花姫は即座に瞳術の天道眼を発動…。血紅色だった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光する。直後…。目前の地面より無数の食人餓鬼が出現したのである。
「食人餓鬼の大群なんて…久方振りね♪」
彼女は久方振りの悪霊との遭遇に大喜びする。
「悪霊を蹴散らせるわよ♪」
地面から出現した無数の食人餓鬼が桜花姫に殺到したのである。
「死滅しなさい♪」
桜花姫は即座に念力の妖術を発動…。殺到する無数の食人餓鬼の頭部を破裂させたのである。
「楽勝♪楽勝♪」
周辺の地面には頭部を破裂させられた無数の食人餓鬼の血肉が散乱する。桜花姫は一安心するものの…。背後からも無数の霊力を感じる。
「背後?」
背後の地面からも無数の食人餓鬼が出現したのである。
「鬱陶しい奴等だわ…」
苛立った桜花姫であるが…。
「あんた達も死滅しなさい♪」
背後から殺到する食人餓鬼を念力の妖術によって粉砕する。一瞬で食人餓鬼の大群を仕留めたのである。
「妖力を消耗しちゃったから桜餅に変化させちゃおうかしら♪」
彼女はルンルンした気分で変化の妖術を発動…。破裂させた無数の食人餓鬼の肉片を自身の大好物である桜餅に変化させる。
「消耗しちゃった妖力を回復させないと♪」
本来は悪霊の血肉であるが桜花姫は無我夢中に無数の桜餅を頬張る。数分後…。道端に散乱した無数の桜餅をパクパクと平らげたのである。
「妖力は回復したわね♪」
桜餅によって妖力を回復させた直後…。
「えっ!?」
背後より複数の霊力を感じる。
「霊力を感じるわね…」
(食人餓鬼を上回る霊力だわ…一体何かしら?)
恐る恐る背後を警戒するなり…。
「今度の相手は集合体の百鬼食人餓鬼かしら?悪霊の親玉が三体も出現するなんてね♪」
桜花姫の背後に出現した悪霊は無数の食人餓鬼が一体化した百鬼食人餓鬼であり三体も出現したのである。百鬼食人餓鬼の出現に桜花姫は大喜びする。
(私は空腹だから好都合だわ♪)
すると百鬼食人餓鬼の体表である無数の食人餓鬼がギョロッと桜花姫を睥睨したのである。
「気味悪さだけは抜群ね♪」
百鬼食人餓鬼の体表である食人餓鬼の口先から猛毒の瘴気を放出する。
(瘴気かしら?)
すると地面の石道が融解されたのである。
(百鬼食人餓鬼の瘴気は非常に強力ね…皮膚に接触すると危険そうだわ…)
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。百鬼食人餓鬼の瘴気を無力化したのである。
「鬱陶しいからあんた達は飴玉に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動…。三体の百鬼食人餓鬼を大好きな飴玉に変化させたのである。桜花姫は飴玉に変化した百鬼食人餓鬼をパクッと頬張る。
「美味だわ♪」
大喜びした桜花姫であるが直後である。鬼面山の天辺より強大なる霊力を感じる。
「今度は何かしら?」
(天辺から霊力を感じるわ…)
気になった桜花姫は一目散に鬼面山の天辺へと直行したのである。天辺に到達した桜花姫は周囲を警戒する。
「食人餓鬼を上回る霊力なのは確実ね…」
すると背後から強烈なる熱気を感じる。
「熱気!?」
彼女は恐る恐る背後を直視するなり…。
「天辺の霊力の正体はあんただったのね…」
桜花姫の背後に出現したのは空中を浮遊する牛車の車輪である。超高温の火炎に包まれた車輪の中心部には僧侶らしき頭部が確認出来る。
「あんたは車輪の悪霊…【天空輪入道】ね…」
(此奴は殺された僧侶の悪霊だったかしら?)
天空輪入道とは戦乱時代にて惨殺された僧侶達の悪霊の集合体である。すると天空輪入道は空中を浮遊した状態から桜花姫を睥睨する。
「命知らずの人間の小娘が…鬼面山の天辺に到達するとは無謀なり!」
天空輪入道は人間界の公用語で発言したのである。天空輪入道の人間の小娘発言に桜花姫は腹立たしくなる。
「誰が人間の小娘ですって!私は最上級妖女なのよ!」
桜花姫は強気で返答する。
「随分強気であるな…最上級妖女の小娘よ…」
「如何やら鬼面山の霊力の正体はあんただったみたいね♪」
「命知らずの妖女の小娘…俺に遭遇したのを後悔せよ!」
天空輪入道は口先に強烈なる火炎を凝縮させる。
(予想外ね…食人餓鬼は勿論…百鬼食人餓鬼の霊力よりも強力だわ…)
食人餓鬼の集合体である百鬼食人餓鬼をも上回る霊力に桜花姫は一瞬後退りする。
「戦慄したか!か弱き小娘の妖女よ!」
桜花姫は笑顔で反論したのである。
「誰が戦慄ですって♪」
天空輪入道の口先に凝縮された火炎は高熱の火球へと変化する。
「死滅せよ!」
天空輪入道は口先から高熱の火球を発射したのである。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。天空輪入道の火球を無力化したのである。
「危機一髪ね♪」
「妖力の防壁で無力化したか…」
「私も猛反撃しちゃうわよ♪桜餅に変化しちゃいなさい♪」
桜花姫は天空輪入道に変化の妖術を発動するものの…。天空輪入道は浮遊した状態であり桜餅に変化しない。
(えっ!?如何して!?)
「如何して妖術が発動しないの!?」
予想外の事態に桜花姫は驚愕する。
「残念だったな…妖女の小娘よ♪貴様の妖術は俺には通用しない!」
「念力の妖術だったら如何かしら…」
今度は天空輪入道に念力の妖術を発動するのだが…。天空輪入道は平然とした状態であり念力の妖術さえも発動されない。
「如何して私の妖術が無力化されるのよ…」
天空輪入道は動揺する桜花姫に…。
「本来俺の肉体は霊魂巨神木の肉片から誕生した器物であるからな♪貴様程度の妖術では俺は仕留められまい!貴様が俺に妖術を発動すれば貴様の妖力は必然的に俺の肉体に吸収されるだけだ!」
「妖力を吸収するなんて…小面蜘蛛みたいね…」
本来天空輪入道の肉体は霊魂巨神木の木材から誕生した器物の悪霊であり地方では付喪神とも呼称される。妖術で天空輪入道に攻撃すると本体の吸収能力によって妖力を吸収され…。妖術は無力化される。
「貴様程度の妖術では俺には勝利出来ない!観念せよ!」
豪語する天空輪入道であるが…。
「半年前の私だったら悪戦苦闘は確実だったかも知れないわね♪」
桜花姫は余裕の表情である。
「ん?」
(此奴…俺を相手に随分と余裕だな…)
すると桜花姫はニコッと微笑む。
「口寄せの妖術なら如何かしら♪」
「口寄せの妖術だと?」
桜花姫は神通力を利用するなり…。口寄せの妖術を発動する。桜花姫は俗界とは異世界より近代兵器である小型対空ミサイルを鬼面山天辺へと一瞬でワープさせる。
「なっ!?異次元空間から火箭弾を口寄せしたのか?」
口寄せの妖術は別名時空間妖術である。多種多様の生命体のみならず…。異世界に存在する物品すらも自由自在に口寄せ出来る。異世界から口寄せされた小型対空ミサイルの導火線に火炎の妖術で着火…。小型対空ミサイルは飛翔すると鬼面山の天辺に浮遊する天空輪入道へと直撃したのである。
「異世界の火箭弾で死滅するのね♪」
「ぎゃっ!」
小型対空ミサイルの直撃により天空輪入道の肉体はバラバラに粉砕される。地面には天空輪入道の肉片が彼方此方に散乱する。
「今度こそ桜餅に変化しなさい♪」
桜花姫は変化の妖術を駆使するなり…。バラバラに粉砕された天空輪入道の肉片を大好きな桜餅に変化させる。
「空腹だし桜餅を食べちゃおうかしら♪」
彼女はムシャムシャと桜餅を平らげる。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫であるが…。背後より強大なる複数の霊力を感じる。
「えっ?」
(今度は何かしら?)
背後を警戒するなり…。
「鬱陶しいわね…天空輪入道が三体も出現するなんて…」
彼女の背後には三体の天空輪入道が出現したのである。
「こんな妖女の小娘が俺の分身体を死滅させるとは…」
「如何やら貴様は普通の妖女とは別格であるな…」
「ひょっとして貴様…一握りの最上級妖女だな?」
桜花姫は笑顔で発言する。
「勿論私は最上級妖女なのよ♪其処等の妖女とは別格だからね♪あんた達も変化の妖術で桜餅に変化させるわよ♪」
三体の天空輪入道は即答したのである。
「こんな小娘を相手に…本領を発揮させられるとは…」
三体の天空輪入道の肉体がピカッと発光したかと思いきや…。
「えっ!?一体何事!?」
三体の天空輪入道が融合すると牛車の悪霊へと一体化したのである。
「ヨウジョノコムスメ…キサマヲヒキコロシテヤル…」
「厄介なのが出現したわね…」
(此奴は今迄に出現した悪霊とは桁違いの霊力だわ…)
桜花姫は牛車の悪霊を直視するなり恐る恐る後退りする。
「三体の天空輪入道が一体化して…牛車の悪霊…【朧戦車】が出現するなんて…」
(此奴…今迄出現した悪霊とは別格みたいだわ…)
朧戦車とは戦乱時代に斬首された武将達の怨念が融合化した集合体である。本体である牛車の前方部分には鬼首が確認出来る。霊力のみなら最上級の悪霊である。
(畜生…こんな悪霊は妖力を発動したとしても吸収されるでしょうね…如何しましょう…)
朧戦車の肉体も霊魂巨神木の木材から誕生した器物の悪霊であり妖力を駆使しても確実に吸収される。
「ヨウジョノコムスメヨ!シメツセヨ!」
口先より蛍光色の火球を発射する。直後…。桜花姫は妖力の防壁により火球を無力化するも火球の爆発力により吹っ飛ばされる。
「きゃっ!」
朧戦車の攻撃力は桁外れであり妖力の防壁でも本体を防ぎ切るのが精一杯だったのである。
(妖力の防壁を発動しなければ全身がバラバラだったわね…)
朧戦車の攻撃に吹っ飛ばされた桜花姫は地面に横たわる。
「コノママキサマヲヒキコロシテヤル…ヨウジョノコムスメ!カクゴセヨ!」
「ぐっ!」
(一か八か口寄せの妖術で…)
桜花姫は一か八かの苦肉の策により口寄せの妖術を発動する。朧戦車に轢死させられる寸前…。
「ナッ!?ニンゲンノツクッタタイホウダト!?」
桜花姫は口寄せの妖術によって超未来の世界で製造されたであろう最新式の巨大戦艦型固定砲台を口寄せしたのである。
「死滅するのはあんたよ!朧戦車!」
朧戦車の前面に出現した巨大戦艦型固定砲台が突進する朧戦車を砲撃…。
「ギャッ!」
巨大戦艦型固定砲台の砲撃によって朧戦車はバラバラに粉砕させる。
「朧戦車を仕留めたわね♪久方振りの強敵だったわ…」
すると鬼面山から霊力が感じられなくなる。
「無事に事件は解決かしら♪」
危機一髪朧戦車に辛勝した桜花姫は一安心する。
「消耗しちゃった妖力を回復させないと♪」
変化の妖術を発動するなりバラバラに粉砕された朧戦車の肉片を無数の桜餅に変化させる。桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張ったのである。
(満腹♪満腹♪)
「悪霊事件も無事に解決出来たし…西国に戻りましょう♪」
桜餅を腹一杯平らげた桜花姫は鬼面山から下山する。
メンテ
桜花姫 ( No.27 )
日時: 2021/08/17 09:40
名前: 月影桜花姫

第三話

人魚

南国の鬼面山から下山してより二時間後…。桜花姫は無事に西国へと戻ったのである。
「天霊山の露天風呂にでも入浴しちゃおうかしら♪」
時間帯は夕方であり彼女は即刻天霊山天辺の露天風呂へと直行する。すると突然…。
「えっ!?何かしら!?」
突如として天霊山の天辺より摩訶不思議の妖力を感じる。
(妖力っぽいけれど…ひょっとして天霊山の天辺に妖女が?)
「一体誰かしら?」
気になった桜花姫は即座に天霊山の天辺へと急行したのである。すると露天風呂の中心部より一人の女性らしき人影を確認する。
(彼女は何者なのかしら?)
桜花姫は岩陰から恐る恐る入浴中の女性の様子を観察したのである。彼女の頭髪は赤髪のストレートロングであり頭髪には海星型のヘアアクセサリー…。両方の耳朶には金剛石のイヤリングが確認出来る。何よりも気になったのは彼女の巨乳のおっぱいであり桜花姫はジーッと凝視する。
(おっぱいは私に匹敵するかも…えっ!?)
彼女の下半身を直視した桜花姫は極度の驚愕により口走る。
「人魚!?」
露天風呂の水面より銀鱗の大魚の尾鰭を直視したのである。入浴中の女性の正体が人魚であると認識する。
(彼女が本物の人魚なのは確実ね…如何して人魚が地上界に?)
今現在では地上界で人魚の血族と断定出来るのは桜花姫のみであり彼女を除外すると人魚の血族は皆無である。
「今時私以外の人魚なんて希少価値だわ…」
すると直後…。人魚はピクッと背後の岩陰を警戒したのか恐る恐る背後の岩陰をジーッと凝視する。
(気付かれちゃったわ…即刻戻らないと…)
桜花姫は恐る恐る天霊山から下山したのである。無事に自宅へと帰宅するなりゴロゴロと寝転ぶ。
「結局先程の人魚は一体何者だったのかしら?」
彼女が何者なのか非常に気になり結局真夜中も寝付けなかったのである。翌朝…。桜花姫は娯楽目的にて東国の三蔵郎の寺院へと訪問する。
「お早う三蔵郎様♪」
「お早う御座います桜花姫様♪こんな早朝に訪問されるなんて…一体如何されましたか?」
「御免あそばせ♪霊魂巨神木の悪霊を仕留めてから毎日が退屈だったからね♪単なる暇潰しよ♪」
「暇潰しでしたか…折角なので緑茶と…菓子類を用意しなくては♪」
「御免あそばせ♪三蔵郎様♪」
桜花姫は大喜びするなり客室へと入室したのである。三蔵郎は緑茶と異国の洋菓子であるカステラケーキを用意する。
「何かしら♪異国の洋菓子?」
異国の菓子類は滅多に入手出来ない高額品の代物であり桜花姫は大喜びしたのである。
「カステラケーキと命名される異国の洋菓子ですよ♪昨晩北国の知人から頂戴しました♪太平神国では滅多に吟味出来ない貴重品ですからね♪是非とも桜花姫様にカステラケーキを提供しますよ…」
「感謝するわね♪三蔵郎様♪」
桜花姫は恐る恐る洋菓子のカステラケーキを味見する。
「美味だわ♪」
彼女はカステラケーキが大変美味しかったのか満足気の様子である。
「異国の洋菓子も絶品ね♪」
「桜花姫様が大喜びされたので安心しましたよ…」
すると桜花姫は昨夕の出来事を想起するなり…。
「三蔵郎様?」
「如何されましたか?桜花姫様?」
天霊山の露天風呂にて人魚と遭遇した出来事を三蔵郎に一部始終告白したのである。
「桜花姫様は天霊山の露天風呂で人魚の女性に遭遇されたのですか?」
「正直…島国の太平神国では私以外の人魚の血族なんて皆無でしょうし…私の遭遇した人魚は一体何者だったのかしら?」
三蔵郎は恐る恐る…。
「ひょっとすると桜花姫様が遭遇された人魚の女性とは…異国の人魚なのでは?」
「異国の人魚ですって?」
「異国でも人魚伝説は有名ですし…桜花姫様が昨夕に遭遇された人魚の女性とは太平神国に入国された異国の妖女なのでしょうね…」
「私が遭遇した人魚が異国の妖女である可能性も否定出来ないわね…」
「ですが正直私も遭遇したかったですよ♪異国の人魚に♪」
「勿論おっぱいは私に匹敵する巨乳ちゃんだったわよ♪」
笑顔で発言する桜花姫に三蔵郎は赤面…。動揺するも必死に誤魔化したのである。
「なっ!私は…別に…何も…」
(普段は生真面目の三蔵郎様でも変態男みたいね♪)
桜花姫は赤面する三蔵郎を揶揄する。
「ですが桜花姫様が遭遇された人魚の女性が何者なのかは非常に気になりますね…」
「今度彼女と遭遇したら会話したいわね…敵意は無さそうだったし…」
桜花姫はカステラケーキをペロリと頬張るなり…。西国へと戻ったのである。すると桜花姫の家屋敷の玄関口よりピンク色のロングドレスを着用した小柄の女性が佇立する。頭髪は赤髪のストレートロングであり頭髪には海星型のヘアアクセサリーが確認出来る。
(えっ?彼女は一体誰なのかしら?)
桜花姫は恐る恐る女性の背後へと近寄るなり…。ポンッと彼女の背中に接触する。
「きゃっ!」
驚愕した彼女は即座に背後を直視したのである。彼女はアクアカラーの碧眼であり異国の人間であると認識出来る。
「突然何するのよ!吃驚するじゃない!」
「突然何するのよって…私の台詞よ!私に用事かしら…」
桜花姫が発言すると彼女は謝罪したのである。
「御免なさい…」
「別に…えっ?」
赤髪の女性を昨夕に遭遇した人魚であると確信する。
「ひょっとしてあんたは…昨夕に天霊山の露天風呂で入浴中だった…異国の人魚かしら?」
赤髪の女性はハッとするなり…。
「あんたは入浴中の私を覗き見した…小娘!?」
彼女の小娘発言にムッとしたのか即答する。
「なっ!誰が小娘ですって!?私は誰よりも温厚篤実の女神様なのよ!」
「自分で女神様って自称しちゃうなんて…」
赤髪の女性は女神様を自称する桜花姫に苦笑いしたのである。
「あんたの名前は?」
問い掛けられた赤髪の女性は恐る恐る名前を名乗る。
「私の名前は【アクアヴィーナス】…深海底の人魚王国『アクアユートピア』の人魚の末裔よ…」
「アクアユートピアって?」
「アクアユートピアは私の祖国よ…」
アクアユートピアとは深海底の理想郷であり大勢の人魚達が深海底のアクアユートピアで安住する。地上界では別名人魚王国とも呼称される。
「アクアヴィーナスは異国の人魚だったのね…」
「無論ね…」
アクアヴィーナスは恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「極東のイーストユートピアでは天下無敵の魔法使いが君臨するって…噂話が世界各地で出回ったのだけど…あんたは月影桜花姫って名前の魔法使いの居場所は知らないかしら?」
「えっ?」
(イーストユートピアって何かしら?)
世界各地では太平神国は極東の理想郷と認識され…。極東のイーストユートピアと呼称される。アクアヴィーナスの質問に桜花姫は即答したのである。
「私が月影桜花姫よ!魔法使いって何者よ!?私は妖女だからね…」
「妖女?極東のイーストユートピアでは魔法使いは妖女って呼称されるのね…意外だわ…」
世界各国では妖女は魔法使いか魔女と呼称されるのが通説である。
「勿論妖女は妖女でも…私は最上級妖女なのよ!留意しなさいね!」
「あんたが噂話の月影桜花姫だったのね…」
「勿論よ!私が最上級妖女の月影桜花姫様だからね♪」
アクアヴィーナスはボソッと本音を口走る。
「第一印象…あんたって世間知らずの小娘っぽいわね…正直最上級の魔法使いとは程遠い雰囲気だわ…」
「なっ!?」
アクアヴィーナスの本音に桜花姫はピリピリするなり…。
(此奴…)
「あんた…地上界の女神様である私に世間知らずの小娘ですって!」
「ひっ!」
アクアヴィーナスは怒号する桜花姫に畏怖したのである。桜花姫はアクアヴィーナスに変化の妖術を発動する。
「命知らずのあんたは溝鼠に変化しなさい…」
すると直後…。アクアヴィーナスは桜花姫の変化の妖術によって小汚い溝鼠に変化したのである。
「きゃっ!」
アクアヴィーナスは恐る恐る自分自身の肉体を凝視するなり…。
(えっ!?如何して私は溝鼠に!?)
アクアヴィーナスは桜花姫の妖術に戦慄する。
「地上界の女神様である私を世間知らずの小娘なんて…失言した天罰だからね♪」
桜花姫は即座に変化の妖術を解除…。アクアヴィーナスを溝鼠の状態から元通りの姿形に戻したのである。
「えっ?私は元通りに戻れたのね…」
アクアヴィーナスはビクビクした様子であるがホッとする。
「反省しなさいね♪金輪際女神様の私に失言すれば…今度こそ桜餅に変化させてあんたを食い殺しちゃうからね♪」
桜花姫は笑顔で忠告したのである。
「ひっ!」
笑顔で食い殺すと忠告する桜花姫に…。アクアヴィーナスは畏怖したのかビクビクする。
「御免なさい…月影桜花姫…」
「気にしないで♪金輪際失言しないのよ♪」
アクアヴィーナスは恐る恐る桜花姫に謝罪したのである。
「如何してあんたは島国の太平神国なんかに?」
問い掛けられたアクアヴィーナスは恐る恐る…。
「私達の祖国であるアクアユートピアが極悪非道の魔女と手下達によって占拠されちゃったのよ…」
人魚達の理想郷アクアユートピアは極悪非道の深海底魔女と部下達によって侵略されたのである。魔女と部下達の襲撃からアクアユートピアの人魚達は必死に抵抗するのだが…。魔女の魔力は桁違いに強力であり魔女の猛反撃によって抵抗した大勢の人魚達が惨殺される。
「平和だったアクアユートピアが深海底の魔女に侵略されて…私の母様…【ウェンディーネ】母様が魔女に連行されちゃったの…」
「ウェンディーネってあんたの母様なの?」
「私の母様よ…魔女に連行されたの…」
ウェンディーネとはアクアヴィーナスの母親である。今現在深海底のアクアユートピアは魔女と部下達の魔窟であり母親のウェンディーネは魔女に連行される。幸運にも愛娘であるアクアヴィーナスは危機一髪アクアユートピアから脱出出来たものの…。母親のウェンディーネを見殺した事実に自分自身の無力さと極度の罪悪感が芽生え始める。
「結局私は何も出来ず…ウェンディーネ母様を見殺しに…」
アクアヴィーナスの涙腺から涙が零れ落ちる。
「私に依頼したかったのね♪」
「噂話ではあんたの母親も人魚の血族みたいだし…魔法使いのあんただったら魔女にも対抗出来るかなって…」
「あんたの祖国を牛耳る魔女を征伐するのね♪面白そうだわ♪」
魔女の征伐に桜花姫は非常にワクワクしたのである。
「最上級妖女の私が魔女を徹底的に蹴散らせるから安心しなさい♪」
桜花姫は笑顔で魔女を征伐すると宣言する。
(桜花姫の魔法は本物だったわ…最強の魔法使いである彼女なら…アクアユートピアを侵略した魔女が相手でも撃退出来るかも知れないわね…)
アクアヴィーナスは桜花姫の妖力の絶大さを実感したのである。
「即刻出掛けちゃおうかしら♪」
「下準備しなくても大丈夫なの?」
「大丈夫よ♪早速あんたの祖国に道案内してよ♪」
アクアヴィーナスは桜花姫に道案内するなり西国の海岸へと直行する。
「案外近辺なのね♪」
「人魚に変身するわね…」
アクアヴィーナスは変身魔法を発動したのである。アクアヴィーナスの全身が虹色に発光したかと思いきや…。彼女の下半身が銀鱗の大魚へと変化したのである。
「美人さんね♪アクアヴィーナス♪」
桜花姫の美人さん発言にアクアヴィーナスは赤面する。
「あんたも…桜花姫も人魚に変身出来るのよね?」
「勿論よ♪」
桜花姫は笑顔で即答したのである。変化の妖術を発動…。下半身が銀鱗の大魚へと変化する。するとアクアヴィーナスは赤面した表情で恐る恐る…。
「あんたも…人魚の桜花姫も…海水の女神様だよ…」
「私が海水の女神様なんて♪アクアヴィーナスは大袈裟ね♪」
(私が海水の女神様ですって♪)
ボソッと発言するアクアヴィーナスに桜花姫は内心大喜びしたのである。
「人魚に変化しちゃったし!私達は早速アクアユートピアに直行しましょう!」
「承知したわ…即刻アクアユートピアに道案内するわよ…」
彼女達は海中へと潜行するなり深海底のアクアユートピアへと驀進する。
メンテ
桜花姫 ( No.28 )
日時: 2021/08/17 09:41
名前: 月影桜花姫

第四話

アクアユートピア

人魚に変身した桜花姫とアクアヴィーナスが深海底地帯のアクアユートピアへと移動中…。深海底地帯の失楽園『ネクロデストピア』では魔女が魔法の水晶玉にて直進中の彼女達の様子を観察する。
「えっ?アクアユートピアの赤毛の人魚と…同行者の小娘は一体何者なのかしら?」
魔法の水晶玉に投影された桜花姫を直視するなり彼女が何者なのか非常に気になる。
「異国の人魚みたいだわ…彼女は一体何者なの?」
深海底の魔女は死霊魔術を発動するなり…。殺害した人魚達を女性型アンデッドとして復活させる。
「下級アンデッド…【ネクロマーメイド】…彼女達を食い殺しなさい…」
ネクロマーメイドとは死霊魔術によって復活した人魚の女性型アンデッドであり嗜好品は生命体の血肉である。基本的には魚介類やら鯨類の血肉を捕食するものの…。場合によっては陸生動物やら人間の血肉をも捕食する。同時刻…。必死に力泳する桜花姫であるが移動中に極度の疲労を感じる。
「桜花姫?大丈夫なの?先程からあんたの顔色が…」
アクアヴィーナスは疲労する桜花姫を心配する。
「私なら大丈夫よ…」
「本当に大丈夫なの?」
「アクアヴィーナスは極度の心配性なのね…」
(正直息苦しいわ…)
心配するアクアヴィーナスに桜花姫は苦笑いの表情で返答したのである。
(深海底って予想外に体力と妖力を消耗するわね…)
深海底の自然環境は予想外に苛烈であり苦難に感じる。すると突如として無数の殺気を感じる。
(殺気だわ…一体何かしら?)
周辺は暗闇の深海底であるものの…。無数の殺気が彼女達に急接近するのを感じる。警戒する桜花姫にアクアヴィーナスは不安がる。
「桜花姫…如何しちゃったの!?」
「殺気を感じるの…」
「殺気ですって!?」
すると遠方の海中より全身血塗れの人魚達が出現…。彼女達に急接近する。
「えっ?人魚かしら?」
「えっ…」
「えっ?アクアヴィーナス?」
血塗れの人魚を直視したアクアヴィーナスはビクビクした様子で…。
「奴等は…ネクロマーメイドよ!」
「ネクロマーメイドって?」
「死亡した人魚の下級アンデッドよ…彼女達は色んな生命体の血肉を捕食するわ…」
「悪霊の食人餓鬼みたいな奴等ね♪」
桜花姫は即座に瞳術の天道眼を発動…。血紅色だった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色に発光する。アクアヴィーナスは桜花姫の瞳孔を直視すると驚愕したのである。
「桜花姫の瞳孔が…」
(彼女の瞳孔はレッドアイだったのに…半透明のアクアカラーに発光するなんて…)
桜花姫は殺到する無数のネクロマーメイドを睥睨するなり…。
「深海底の悪霊…死滅しなさい♪」
直後である。突如としてネクロマーメイドが身動きしなくなったかと思いきや…。彼女達の全身が肥大化するとパンッと一瞬で破裂したのである。
「きゃっ!」
桜花姫の念力の妖術によって無数のネクロマーメイドは仕留められたものの…。予想外の超常現象にアクアヴィーナスはビクビクした様子で戦慄する。
「戦慄しなくても大丈夫よ♪アクアヴィーナス♪」
アクアヴィーナスは極度の戦慄によりビクビクと身震いしたのである。周辺はネクロマーメイドの無数の血肉が散乱する。
「念力の妖術で妖力を消耗しちゃったからね…」
今度は変化の妖術を発動…。念力の妖術により仕留めたネクロマーメイドの無数の血肉を大好きな桜餅に変化させる。
「人魚に変化した状態で妖術を発動しちゃうと全身の疲労が蓄積されちゃうのよね♪」
桜花姫はパクパクと桜餅を頬張り始める。
「アクアヴィーナス♪あんたも味見しないかしら♪桜餅は絶品よ♪」
「私は…遠慮するわ…」
アクアヴィーナスは悪食の桜花姫にドン引きしたのか気味悪くなる。
(異国の魔法使いはこんなにも荒唐無稽の魔法を使用するのね…)
数分後…。桜花姫は桜餅を完食する。
「アクアユートピアに直行して…極悪非道の魔女を仕留めるわよ♪」
同時刻…。ネクロデストピアでは魔女が水晶玉で桜花姫の様子を観察するのだが彼女の荒唐無稽の妖術に驚愕したのである。
(げっ!魔法で殺害したネクロマーメイドの肉片を異国のスイーツに変化させて頬張るなんて…)
「異国の魔法使いは予想外に厄介だし…何よりも発想が下劣だわ…」
殺害したネクロマーメイドの肉片を大好きな桜餅に変化…。無我夢中に桜餅を頬張り続ける桜花姫を直視するなり気味悪くなる。
(異国の魔法使いってこんなにも悪食で下劣なのね…)
魔女は一息するなり…。
「異国の魔法使いを相手するなら彼が適任かしら?」
魔女は召喚魔法を発動する。直後…。規格外に巨体の超大型クリーチャーを召喚したのである。
「彼なら異国の魔法使いが相手でも捕食出来るでしょうね…」
魔女が召喚魔法で召喚した異類の超大型クリーチャーは規格外に巨体であり本拠地の外部にて召喚される。姿形はワーム型の巨大生命体であり全身の皮膚には無数の人面が確認出来る。魔女は本拠地の窓際から巨体のクリーチャーに命令する。
「ワーム型アンデッド…【ネクロシーワーム】よ…あんたは即刻異国の魔法使いと小判鮫の人魚を捕食しなさい♪」
ネクロシーワームとは規格外に巨体のワーム型アンデッドであり溺死した人間達は勿論…。多種多様の魚介類の怨念が融合化した集合体である。性格は獰猛で強欲であり鯨類やら人魚は勿論…。場合によっては海面上の船舶を襲撃して人間の船員をも捕食する。ネクロシーワームは魔女の命令に服従…。即座に移動を開始したのである。同時刻…。桜花姫とアクアヴィーナスは必死にアクアユートピアへと直行する。
「一息頑張ればアクアユートピアに到達するわよ…」
アクアヴィーナスは桜花姫を直視したのである。
「えっ…桜花姫?」
桜花姫は非常に険悪化した表情であり彼女の息苦しそうな表情を直視するとアクアヴィーナスは極度に不安がる。
(大丈夫なのかしら?桜花姫…)
アクアヴィーナスは桜花姫に恐る恐る大丈夫なのか如何なのか問い掛ける。
「桜花姫?一体如何しちゃったの?大丈夫?」
すると桜花姫は警戒した様子で恐る恐る…。
「アクアヴィーナス…規格外の霊力が接近中よ…」
「えっ?規格外の…霊力ですって?」
(今度は何が出現するのよ!?)
アクアヴィーナスは全身がブルブルした様子で桜花姫に密着する。すると遠方の暗闇の海中より正体不明の移動物体が猛スピードで彼女達に急接近したのである。
「一体何かしら?」
規格外に巨体のワーム型の巨大クリーチャーが出現する。
「ひっ!」
アクアヴィーナスはワーム型の巨大クリーチャーを直視すると極度に戦慄したのである。
「こんな怪物に畏怖するなんてアクアヴィーナスは大袈裟ね…」
桜花姫は極度に戦慄するアクアヴィーナスに苦笑いする。
(小心者のアクアヴィーナスが太平神国の悪霊と遭遇しちゃえば確実に気絶するでしょうね♪)
アクアヴィーナスが太平神国の悪霊と遭遇する場面を想像すると桜花姫は内心大笑いしたのである。アクアヴィーナスは恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「桜花姫は…アンデッドに遭遇しても平気なの?」
桜花姫は笑顔で即答する。
「別に♪こんな怪物と遭遇するのは太平神国では日常茶飯事だからね♪」
「日常茶飯事って…」
(イーストユートピアって名前とは裏腹に相当物騒なのかしら?)
桜花姫の返答にアクアヴィーナスは絶句したのである。
「深海底にはこんな怪物が生息するのね…巨大蚯蚓かしら?」
「此奴はワーム型の巨大アンデッド…ネクロシーワームよ!大型の鯨類だって簡単に食い殺しちゃうわ!」
「アンデッドって悪霊ね♪鯨類を捕食するなんて大物だわ♪」
アクアヴィーナスは恐る恐る…。
「桜花姫…即刻逃げましょう!」
「逃げましょうって…」
「ネクロシーワームはネクロマーメイドよりも厄介なのよ!あんたでも食い殺されちゃうわ!」
「食い殺されちゃうって…ネクロシーワームが私に食い殺されちゃうのかしら♪」
桜花姫は笑顔でネクロシーワームを凝視する。
「私の食欲は悪霊以上だからね♪相手が巨体のアンデッドでも私が食い殺しちゃうわよ♪」
「桜花姫…」
桜花姫は余裕の様子だったのである。すると直後…。
「きゃっ!」
ネクロシーワームは猛スピードで桜花姫に急接近すると彼女の肉体諸共パクッと桜花姫を捕食したのである。
「えっ!?桜花姫!?」
桜花姫は一瞬でネクロシーワームに捕食され…。アクアヴィーナスは一瞬の出来事に混乱する。
(桜花姫が捕食されちゃった…)
桜花姫はネクロシーワームに捕食されアクアヴィーナスは絶望したのである。逃げられるのであれば一目散に逃げたい彼女であるが…。極度の恐怖心からか全身が膠着化したのである。ネクロシーワームは猛スピードでアクアヴィーナスに接近するなり…。
「きゃっ!」
アクアヴィーナスの全身を拘束したのである。ネクロシーワームは口先を開口する。
「ひっ!」
(私も…捕食されちゃうわ…)
アクアヴィーナスは極度の恐怖心により涙腺から涙が零れ落ちる。ネクロシーワームは口先を開口した直後…。突如として身動きしなくなる。
「えっ!?」
(一体何が!?如何してネクロシーワームは身動きしなくなったのかしら…)
突如として身動きしなくなったネクロシーワームにアクアヴィーナスは何が発生したのか理解出来ない。すると数秒間が経過したのである。ネクロシーワームの全身がポンッと白煙に覆い包まれ消滅したかと思いきや…。桜餅と妖力の防壁を発動した桜花姫が出現したのである。
(えっ!?桜花姫!?)
桜花姫は妖力の防壁を解除するなり笑顔で桜餅をパクッと頬張る。
「悪霊でも桜餅に変化させちゃえば非常に美味だわ♪」
アクアヴィーナスは恐る恐る桜花姫に近寄るなり…。
「桜花姫…あんたはネクロシーワームに食べられちゃったのに無事だったのね…」
アクアヴィーナスは内心ホッとしたのか涙腺から涙が零れ落ちる。
「一瞬あんたがアンデッドに食い殺されちゃったのかと…」
「心配させちゃったわね♪御免あそばせ♪」
桜花姫はアクアヴィーナスに謝罪する。
「最強クラスのアンデッドを簡単に仕留めちゃうなんて…桜花姫の魔法は想像以上に強力だわ…」
「勿論私は最上級の妖女だからね♪悪霊が私を食い殺すなんて無謀なのよ♪」
するとアクアヴィーナスは恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「如何して桜花姫はネクロシーワームに捕食されたのに無事だったの?」
「私はネクロシーワームに捕食される直前に妖力の防壁を発動したの♪ネクロシーワームの胃袋で変化の妖術を発動したのよ♪」
「ネクロシーワームの体内で魔法を使用したのね…何よりもあんたが無事でホッとしたわ…」
アクアヴィーナスは一安心したのである。
同時刻…。失楽園のネクロデストピアでは魔女が魔法の水晶玉に投影された光景を直視する。
「えっ!?」
ネクロシーワームが桜花姫に仕留められた光景に魔女は愕然としたのである。
「最上級のアンデッドであるネクロシーワームが見ず知らずの異国の魔法使いに仕留められるなんて…」
(異国の魔法使い…彼女は想像以上に厄介だわ…)
ネクロシーワームが仕留められたのは正直予想外であり魔女は桜花姫の妖力の絶大さに畏怖し始める。
(異国の魔法使いに私の居場所を察知されると非常に不都合だわ…即刻彼奴の封印を…)
「彼女を解放させないと異国の魔法使いには対抗出来ないでしょうね…」
不本意であるものの…。
「一か八か牢獄に…」
魔女は恐る恐る地下壕の牢獄へと移動したのである。同時刻…。桜花姫とアクアヴィーナスは無事に深海底のアクアユートピアへと到達する。
「えっ!?深海底に村里だわ…」
「私の祖国…アクアユートピアなのよ…」
アクアユートピアは貝殻みたいなデザインの住宅地が無数に隣接…。全体的に独特の景観だったのである。
「あんたの祖国って異世界みたいね♪」
深海底地帯のアクアユートピアは異世界でありアクアユートピアの独特の雰囲気に桜花姫は非常にワクワクする。
「独特の雰囲気なのに殺風景ね…人気が感じられないわ…」
「アクアユートピアは魔女に侵略されちゃったからね…何よりもウェンディーネ母様が無事なのか心配だわ…」
「私は即刻あんたの母様を救出するわよ♪」
桜花姫は笑顔であるものの…。妖力の消耗により深呼吸が目立ち始める。
「大丈夫なの?桜花姫?先程から深呼吸が…」
「アクアヴィーナスは心配性ね…心配しなくても私なら大丈夫よ…」
(深海底の水圧と人魚に変身した影響かしら?妖力を回復させたのに数分間で消耗しちゃうなんて…)
水圧の影響からか深海底での長時間の人魚の変身は妖力と体力の消耗が桁違いである。人魚に変身し続けた場合深海底の水圧による溺死…。妖力の消耗による衰弱死の可能性すら否定出来ない。
(長時間の人魚の変化は衰弱死に直結するわね…変化を解除しちゃったら水圧で溺死するかも知れないし…今回の事件は短時間で解決させないと…)
当初は娯楽感覚であったものの…。妖力の消耗が予想外であり短時間での事件解決は困難であると実感する。
「アクアヴィーナス…アクアユートピアに潜入しましょう…」
彼女達は恐る恐る物静かなアクアユートピアに潜入したのである。
「アクアユートピアって普段からこんなにも物静かなの?」
「人魚は少数民族だし場所が暗闇の深海底だからね…魔女に侵略されてからは無人地帯みたいだわ…」
周囲を警戒するのだが…。人魚の住民は誰一人として確認出来ない。
「えっ?」
すると桜花姫は殺気を感じるなり民家の路地裏へと移動する。
「きゃっ!」
桜花姫の悲鳴に戦慄したのかアクアヴィーナスは恐る恐る居住地の路地裏へと移動するなり…。
「一体何事よ!?ひゃっ!」
路地裏には殺害された抹香鯨の水死体が転がった状態であり体表には無数の小魚によって食い破られた形跡が確認出来る。
「如何やら抹香鯨の水死体みたいね…ネクロマーメイドに食い殺されちゃったのかしら?」
「私にも何が何やらサッパリだわ…ひっ!」
突如として抹香鯨の体内がモゴモゴッと蠢動したかと思いきや…。
「今度は何かしら!?」
抹香鯨の体内を食い破るなり血塗れの肉食怪魚が無数に出現したのである。
「きゃっ!此奴は【ダークフィッシュ】だわ!」
「ダークフィッシュ!?」
ダークフィッシュとは深海魚の魚類型アンデッドでありネクロマーメイドによって食い殺された魚介類がアンデッドとして復活…。多種多様の新鮮なる魚介類やら大型海洋生物の血肉を捕食する。性格は非常に獰猛で強欲であり人魚は勿論…。場合によっては海面上を漂流する人間やら陸生動物の血肉さえも捕食する。
「相手が小魚の悪霊でも♪」
(桜餅に変化しなさい♪)
殺到する無数のダークフィッシュを桜餅に変化させる。
「私を捕食するなんて無謀なのよ♪」
桜餅に変化した無数のダークフィッシュを頬張る。
「正直あんたの魔法って荒唐無稽だけど便利ね…捕食者を食い殺しちゃうなんて…」
アクアヴィーナスは苦笑いしたのである。
「桜花姫…折角だし私の自宅で休憩しない?」
「勿論よ♪休憩しましょう♪」
桜花姫は大喜びするなりアクアヴィーナスの自宅へと同行する。
「私の自宅よ…」
「あんたの家屋敷なのね…地上界と比較すると随分独特の雰囲気ね♪」
アクアヴィーナスの家屋敷も貝殻のデザインであり非常に独特の雰囲気である。桜花姫はワクワクした様子でアクアヴィーナスの自宅に入室するのだが…。屋敷内は魔力によって防水された状態であり普通に呼吸出来る。
「えっ?普通に呼吸出来るわ…」
「防水用の魔法の効力で室内は呼吸出来るのよ…地上界みたいに普通に生活出来るわ…」
アクアユートピアの各家屋敷には防水用のシールド魔法によって通常の人間の状態でも生活出来る。
「元通りに戻れるのね♪」
桜花姫は即刻変化の妖術を解除…。元通りの人間の姿形に戻ったのである。
「長時間の人魚の状態は疲れ果てるわね♪こんなにも疲れ果てたのは久方振りよ♪」
アクアヴィーナスも人間の姿形に変化する。
「私達人魚は真逆なのよね…大昔から深海底のアクアユートピアで生活し続けた影響かしら?」
アクアユートピアの人魚達は長期間の深海底での生活により魔力の消耗は軽微であり人魚に変身した状態でも平気である。すると桜花姫はソファーベッドの壁際に配置された写真の女性に注目する。
「えっ?本物みたいな似顔絵だわ…一体誰の似顔絵なのかしら?」
「写真よ…」
「写真って…何かしら?」
太平神国では長年の鎖国によって銃火器を除外する異国の科学技術は勿論…。異国の文化財は皆無であり桜花姫は写真に魅了されたのである。
「アクアユートピアではこんな代物が出来るのね♪」
「別に…今時写真なんて地上界でも普通に一般的でしょう…」
「写真の女性は誰なのよ?」
写真の女性が誰なのか気になる。
「彼女が私の母様…ウェンディーネ母様よ…」
「彼女があんたの母様なのね♪随分美人の女性だわ♪」
ウェンディーネは金髪碧眼の美少女である。
「正直ウェンディーネ母様が無事なのか不安だわ…」
するとアクアヴィーナスはフッと想起するなり…。書棚の宝石箱から水色の水晶玉を入手するなり恐る恐る桜花姫に手渡したのである。
「桜花姫…」
「えっ?何かしら…水晶玉?」
水晶玉に接触した直後…。消耗された妖力が一瞬で回復する。
「妖力が戻ったわ…一体如何して!?」
「水晶玉は魔法石の『アクアクリスタル』よ…」
「アクアクリスタルって?」
アクアクリスタルとは深海底地帯で採掘された魔法石であり人魚がアクアクリスタルに接触すると消耗した魔力が蓄積される。深海底では魔力の消耗が地上界とは桁違いでありアクアユートピアの人魚達が深海底の自然環境で適応出来るのはアクアクリスタルの効力である。
「私達人魚にとってアクアクリスタルは必要不可欠だからね…」
「私にとっての桜餅ね♪」
するとアクアヴィーナスは紅茶と洋菓子のショートケーキを用意する。
「何かしら?」
「紅茶とショートケーキよ…折角だし味見したら…」
「ショートケーキ?洋菓子かしら♪」
桜花姫はペロリとショートケーキを平らげる。
「洋菓子も美味だわ♪」
彼女はショートケーキの美味しさに大喜びする。
「ショートケーキを一瞬で平らげちゃうなんて…」
ショートケーキをペロリと平らげた桜花姫を直視するなりアクアヴィーナスは苦笑いしたのである。
「休憩は終了よ!」
「大丈夫なの?」
アクアヴィーナスは桜花姫を心配するが…。桜花姫は笑顔で即答する。
「私なら大丈夫よ♪アクアヴィーナスは心配性ね…兎にも角にも私達は即刻あんたの母様を救出しないと!」
桜花姫は変化の妖術を発動…。再度人魚に変身する。
「アクアヴィーナス…あんたも人魚に変身しちゃいなさい♪即刻あんたの母様を救出しに出掛けるわよ♪」
「承知したわ…」
アクアヴィーナスも変身魔法で人魚に変身したのである。人魚に変身した彼女達は恐る恐る外出する。すると道端には無数のダークフィッシュとネクロマーメイドが徘徊したのである。
「ひっ!ダークフィッシュとネクロマーメイドだわ…如何してアンデッドがこんなにも徘徊中なのよ…」
「深海底の魔女の仕業かしらね…」
魔女は召喚魔法により無数のダークフィッシュとネクロマーメイドをアクアユートピアの中心街にて召喚…。徘徊させる。無数のアンデッドがアクアユートピア全域に徘徊中であり最早アクアユートピアはアンデッドの巣窟である。徘徊する無数のアンデッドにアクアヴィーナスは極度に戦慄するが…。桜花姫は余裕の表情でありアンデッドの出現に大喜びする。
「悪霊がこんなにも徘徊中なんて♪私にとっては桜餅の調味料ね♪」
すると玄関口近辺には複数のネクロマーメイドと数匹のダークフィッシュが徘徊中であり玄関口の彼女達をギロッと睥睨するなり…。猛スピードで殺到したのである。
「きゃっ!」
「鬱陶しい奴等だわ♪」
桜花姫は変化の妖術を発動…。殺到するネクロマーメイドとダークフィッシュを桜餅に変化させる。
「桜花姫の魔法は荒唐無稽ね…」
桜花姫はムシャムシャと桜餅を頬張る。数分間で桜餅を食べ終わる。
「相手するのも面倒臭いし…口寄せの妖術で片付けましょうかね♪」
桜花姫は口寄せの妖術を発動…。先程仕留めた無数のダークフィッシュとネクロマーメイドを口寄せの妖術で復活させる。
「きゃっ!アンデッドだわ!」
アクアヴィーナスは突如として出現したネクロマーメイドとダークフィッシュを直視するなり…。ビクビクしたのである。
「アクアヴィーナスは大袈裟ね…大丈夫よ♪彼等は私が口寄せの妖術で復活させた手駒だから♪」
「如何して桜花姫はアンデッドを召喚出来るの?」
アクアヴィーナスの質問に桜花姫は即答する。
「口寄せの妖術は死滅した生命体は勿論…地獄の悪霊だって元通りに復活させられるからね♪」
「死滅した生命体を復活させるなんて…桜花姫は本物の女神様だわ…」
常識の通用しない荒唐無稽の妖術にアクアヴィーナスは理解出来なくなる。
「私が本物の女神様なんて…アクアヴィーナスは大袈裟ね♪」
桜花姫は内心大喜びしたのである。
「あんた達♪アクアユートピアで徘徊中の悪霊を一掃しなさい♪」
無数のアンデッドは無言で承諾するなり…。周辺で徘徊中のネクロマーメイドとダークフィッシュに接触すると自爆したのである。アクアユートピアの彼方此方で爆発音が響き渡る。
「相手するのも面倒臭いからね♪」
「復活させたアンデッドを自爆に利用するなんて…」
アクアヴィーナスの発言に桜花姫は笑顔で即答する。
「所詮悪霊は自爆要員だからね♪」
復活させたアンデッドの自爆攻撃によってアクアユートピアに徘徊中のダークフィッシュとネクロマーメイドは一掃される。
「徘徊中の悪霊は一掃させたし…」
桜花姫は先程仕留めたネクロマーメイドの一体を口寄せの妖術により再復活させたのである。
「如何してネクロマーメイドを復活させたの?」
「情報収集よ♪」
「情報収集ですって?」
桜花姫はネクロマーメイドに質問する。
「あんたの親玉の居場所を告白しなさい…」
「告白ってネクロマーメイドはアンデッドなのよ…喋れないでしょう…」
喋れないと断言するアクアヴィーナスであるが…。ネクロマーメイドは恐る恐る人間の口言葉で発言し始めたのである。
「ワタシタチノ…ハハギミサマ…【スキュラン】サマノ…イバショハ…シツラクエン…ネクロデストピアノ…マオウジョウ…」
「えっ!?ネクロマーメイドって…普通に人語で喋れるのね…」
ネクロマーメイドは片言であるが人間界の公用語で喋れる。人語で発言するネクロマーメイドにアクアヴィーナスは驚愕する。
「スキュランって魔女があんた達悪霊の黒幕なのね♪即刻ネクロデストピアの魔女の本拠地に直行しないと♪」
黒幕の居場所を把握した桜花姫は即刻ネクロデストピアへの直行を決意したのである。
「情報収集感謝するわね♪」
桜花姫はネクロマーメイドに感謝するのだが…。
「折角だけど♪あんたは桜餅に変化しなさい♪」
口寄せの妖術によって復活させたネクロマーメイドに変化の妖術を発動したのである。ネクロマーメイドは白煙に覆い包まれポンッと桜餅に変化…。桜花姫は即座に桜餅をパクッと平らげる。
「復活させたのに結局食い殺しちゃうのね…」
「私は空腹だから♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「空腹だからって…」
桜花姫の返答にアクアヴィーナスは苦笑いしたのである。
「妖力も回復したわ♪アクアヴィーナス!即刻ネクロデストピアの魔王城に直行して魔女を仕留めるわよ♪」
意気込む桜花姫であるが…。ネクロデストピアに聳え立つ魔王城の場所が不明でありアクアヴィーナスに道案内を依頼する。
「道案内してよ♪アクアヴィーナス♪」
「道案内するけれど…ネクロデストピアはアンデッドの魔窟なのよね…」
ネクロデストピアはアンデッドの魔窟であり悪魔の海域として認識される危険区域である。ネクロデストピアに潜入した人魚で生還した人魚は皆無でありアクアユートピアでは禁止区域に指定される。
「ネクロデストピアに潜入した人魚で生還した人魚は皆無なのよね…私…死にたくないわ…」
ウジウジするアクアヴィーナスに桜花姫は苛立ったのか怒号する。
「確りしなさい!アクアヴィーナス!」
「えっ…桜花姫…」
「あんたは自分の母様を無事に救出したいのよね!?今更当事者のあんたが畏怖しちゃって如何するのよ!?」
桜花姫の怒号にアクアヴィーナスはハッとした表情で…。
「御免ね…桜花姫…私…恐怖心で畏怖しちゃったわ…ウェンディーネ母様を救出しないと…」
極度の恐怖心によりビクビクしたアクアヴィーナスであるが桜花姫の大目玉によって平常心に戻ったのである。
「道案内するわね…桜花姫…」
「勿論よ♪」
アクアヴィーナスは恐る恐る桜花姫に道案内する。
メンテ
桜花姫 ( No.29 )
日時: 2021/08/17 09:42
名前: 月影桜花姫

第五話

ネクロデストピア

同時刻…。失楽園ネクロデストピアの魔王城にて魔女のスキュランは恐る恐る地下壕の牢獄へと移動する。
「人魚と異国の魔法使いが魔王城に到達するのも時間の問題だからね…」
鉄格子の奥側には上半身が巨体の人間の女性…。下半身が巨大海蛇の巨大女性型アンデッドが収容される。巨体の女性型アンデッドがスキュランをギラギラと睥睨するなり…。
「あんたは真蛸の小母さん…如何してあんたが地下壕の牢獄なんかに?今更食いしん坊の私に何を要求するのよ?」
スキュランは上半身が人間の女性であり下半身は真蛸である。女性型アンデッドの真蛸発言にピリピリする。
「真蛸って…」
(失礼しちゃうわね…鬱陶しいビッチだわ…)
彼女の発言に苛立ったスキュランであるが…。
「最上級アンデッド…【アクアラーミアン】…あんたを解放するわよ…」
「えっ!?解放ですって!?」
アクアラーミアンとはスキュランが自身の血肉から魔法で誕生させた最上級の巨大女性型アンデッドであり魔力のみならスキュランをも上回る。素肌は水色で頭髪は青色…。赤色の口紅とリング状の純金のイヤリングが特徴的である。アクアラーミアンは非常に暴れん坊で食いしん坊のアンデッドであり魔女のスキュランでさえも彼女を抑制させるのに体内の魔力を消耗…。彼女を抑制させるだけでも精一杯であり今現在では地下壕の牢獄にて封印されたのである。封印により身動き出来ないアクアラーミアンであるが…。
「あんたは本当に私を解放するの♪」
スキュランの牢獄からの解放の一言に反応する。
「勿論よ…アクアラーミアンを解放するわよ…」
スキュランはビクビクした様子で返答したのである。
「今更私を解放するなんて♪私はあんたを食い殺すかも知れないのに♪ひょっとしてあんたは食いしん坊の私に食い殺されたいのかしら♪」
アクアラーミアンはスキュランを揶揄する。
「沈黙しなさい…あんたの大好きな人魚の血肉がネクロデストピアに接近中なのよ…」
「えっ!?人魚がネクロデストピアに接近中ですって♪」
アクアラーミアンは大喜びする。
「即刻解放してよ♪空腹だから人魚を頬張りたいわ♪」
彼女は両目をキラキラさせた表情でスキュランに問い掛ける。
「今回の人魚は?」
「今回の餌食は…赤毛の人魚と人魚にも変身出来る異国の魔法使いよ…」
「えっ?」
アクアラーミアンは異国の魔法使いに反応したのである。
「異国の魔法使いですって!?面白そうだわ♪一体何者かしら♪」
大喜びするアクアラーミアンであるが…。腹部から腹鳴がグーッと響き渡る。
「私は空腹なのよ♪異国の魔法使いを捕食したいわ♪私を牢獄から解放してよ♪」
スキュランはプルプルと身震いした様子で…。鉄格子の封印魔法を解除したのである。アクアラーミアンはワクワクした様子で鉄格子を破壊するなり…。
「久方振りに大食い出来るわね♪」
尻尾でスキュランを力任せに拘束する。
「なっ!?私を…如何するのよ!?」
スキュランは極度の戦慄によりビクビクしたのである。
「恐怖心かしら♪あんたは私をこんなにも小汚い牢獄に十年間も封印し続けたからね♪」
アクアラーミアンは笑顔で発言するが…。
「本来なら私を封印したあんたを即刻食い殺したいのだけれどね…スキュランを捕食するのは後回しだからね♪私は即刻異国の魔法使いと赤毛の人魚を食い殺しに出掛けるわ♪」
アクアラーミアンはスキュランを解放するなり外部へと直行する。
「一瞬彼女に食い殺されるかと…」
スキュランは命拾いしたのか内心ホッとする。
(兎にも角にもアクアラーミアンが異国の魔法使いと潰し合えば確実に共倒れか…何方かが食い殺されるでしょうね…)
桜花姫とアクアラーミアンが潰し合えば高確率で両者ともが魔力を消耗…。潰し合いで魔力を消耗した両者を殲滅するのがスキュランの魂胆である。
「今回でトラブルメーカーは排除出来るし…アクアユートピア全域も無事に征服出来るわ♪」
(一石二鳥ね♪)
同時刻…。移動中の桜花姫とアクアヴィーナスであるが遠方の海中より強大なる妖力を感じる。
「えっ?妖力かしら…」
「妖力ですって?」
「遠方から妖力を感じるのよ…」
「妖力って…ひょっとして今度もネクロマーメイドかしら?」
「ネクロマーメイドとは別物みたいだわ…」
「ネクロマーメイドとは別物ですって?」
「非常に強力だわ…一体何かしら?」
妖力の正体は不明であるものの…。彼女達は警戒する。すると遠方より正体不明の移動物体が猛スピードで彼女達に急接近したのである。
「えっ!?何かしら!?」
移動物体は猛スピードで力泳するなり彼女達の目前に出現する。
「海蛇の…悪霊みたいね…」
移動物体の正体とは上半身が巨体の人間の女性であるものの…。下半身は巨体の海蛇である。
「彼女は海蛇の女王…アクアラーミアンだわ!最上級のアンデッドよ!」
「最上級のアンデッドですって♪早速面白くなったわね♪」
桜花姫は強敵との遭遇により非常にワクワクする。するとアクアラーミアンは蛍光色の瞳孔で桜花姫をジロジロと凝視するなり…。
「如何やらあんたが異国の魔法使いみたいね♪美味しそうだわ♪」
「私もあんたを桜餅に変化させて食べちゃいたいわ♪」
笑顔で発言するアクアラーミアンに桜花姫も笑顔で返答したのである。
「アクアラーミアンだったかしら?あんたは桜餅に変化しなさい♪」
彼女に変化の妖術を発動するのだが…。アクアラーミアンは桜餅に変化しない。
「えっ?あんたは私に何したのかしら♪」
アクアラーミアンはピンピンした様子であり桜花姫は動揺する。
「えっ!?如何して変化の妖術が発動しないのよ!?」
「桜花姫の魔法が無力化された!?」
(アクアラーミアンには桜花姫の魔法が通用しないのかしら?)
アクアヴィーナスは恐る恐るアクアラーミアンに問い掛ける。
「あんたは一体何したのよ?アクアラーミアン…」
アクアヴィーナスの質問にアクアラーミアンは笑顔で返答したのである。
「何って♪私は彼女の魔力をペロペロッと平らげただけよ♪」
「平らげたって…ひょっとして彼女も吸収能力で私の妖力を…」
先程は余裕だった桜花姫であるが…。恐る恐る後退りする。
「えっ?桜花姫?」
桜花姫の様子を直視すると彼女は全身がプルプルと身震いした様子である。
(ひょっとして彼女は恐怖心を…)
恐怖心からかプルプルと身震いする桜花姫を直視するなりアクアヴィーナスは極度の不安感が芽生える。
(私一人では何も出来ないし…一体如何すれば…)
深海底地帯の自然環境では妖力の消耗は桁外れであり吸収能力を保持するアンデッドは最悪の難敵である。圧倒的に不利であると判断した桜花姫は苦し紛れに…。
「アクアヴィーナス…あんたは即刻アクアユートピアに戻りなさい…戻らなければあんただって確実に殺されるかも知れないわよ…」
桜花姫は恐る恐る彼女に指示するのだがアクアヴィーナスは強張った表情で桜花姫の指示を拒否する。
「私は…一人でアクアユートピアへは戻れないよ…恩人の桜花姫を見殺しになんて出来ないわ…」
本心では逃げられるのであれば一目散に逃げたいアクアヴィーナスであるが…。母親のウェンディーネを見殺した自身への無力感と罪悪感に影響され桜花姫を見殺しには出来なかったのである。
「見殺しって…今回ばかりは私だって殺されるかも知れないのに!一人では何も出来ないあんたは正直足手纏いなのよ!」
「えっ…」
アクアヴィーナスは足手纏い発言にピクッと反応する。
「はっ!?」
(私は一体何を…)
本音を口走り桜花姫はハッとした表情で…。
「御免なさい…アクアヴィーナス…気にしないで…」
桜花姫は即座にアクアヴィーナスに謝罪する。謝罪した桜花姫であるもののアクアヴィーナスは無表情で…。
「別に…私は気にしないから大丈夫よ…私が足手纏いなのは事実だし…」
「アクアヴィーナス…」
すると沈黙したアクアラーミアンが笑顔で発言する。
「女同士の雑談は終了したかしら♪あんた達は私の餌食決定だからね♪二人とも私に仲良く食い殺されちゃいなさい♪」
アクアラーミアンは召喚魔法を発動…。彼女達の背後より四体のネクロマーメイドが召喚される。
「えっ!?ネクロマーメイド!?」
「ネクロマーメイド♪彼女達を拘束しなさい♪」
四体のネクロマーメイドは彼女達に密着すると力任せに彼女達の身動きを封殺したのである。
「きゃっ!」
「ぐっ!」
アクアラーミアンは身動き出来なくなった桜花姫に近寄るなり…。
「異国の魔法使い♪手始めにあんたから味見するわね♪」
するとアクアヴィーナスは力一杯鼓舞するなり恐る恐る発言する。
「彼女を…桜花姫を見逃して!本来彼女は無関係なのよ…食い殺したければ私だけを食い殺しなさい!」
(えっ!?アクアヴィーナス!?)
アクアヴィーナスの突発的発言に桜花姫は驚愕したのである。
「小判鮫の分際で…」
苛立ったアクアラーミアンはギロッとアクアヴィーナスを睥睨するなり…。
「別に心配しなくても小判鮫のあんたも食い殺すから安心しなさい♪私は異国の魔法使いから食事したいの♪食事中に私に口出しするのであれば私の魔法であんたを喋れなくしちゃうわよ…」
「ひっ!」
アクアラーミアンの恫喝にアクアヴィーナスは畏怖したのである。アクアラーミアンは桜花姫の頬っぺたをペロペロする。
「異国の魔法使い♪あんたみたいな可愛らしい小娘は大好きよ♪食い殺しちゃうのが勿体無いわね♪」
(彼女は余程の物好きなのかしら?悪霊に気に入られるなんて…)
桜花姫は内心苦笑いしたのである。
「ぐっ!」
アクアラーミアンに接触された悪影響により桜花姫は体内の妖力が消耗する。
(妖力が一瞬で消耗しちゃうんなんて…ひょっとしてアクアラーミアンの吸収能力かしら…)
「あんたの魔力は誰よりも美味だわ♪肉体諸共食べちゃおうかしら♪」
アクアラーミアンが桜花姫に接触した直後…。
(桜花姫がアクアラーミアンに食べられちゃうわ!)
アクアヴィーナスは咄嗟の判断により背後のネクロマーメイドに力一杯頭突きしたのである。
「ギャッ!」
「アクアヴィーナス!?」
アクアヴィーナスは力一杯の頭突きにより背後のネクロマーメイドを怯ませる。
「桜花姫!」
アクアヴィーナスは咄嗟に所持品のアクアクリスタルを力一杯投擲する。
(アクアヴィーナス!)
桜花姫は即座にアクアヴィーナスの方向を直視するなり…。力一杯投擲されたアクアクリスタルを大好きな桜餅に変化させたのである。桜花姫は桜餅に変化したアクアクリスタルをパクッと頬張る。
「こんなにも絶体絶命の状況下で異国のスイーツなんて食べちゃって如何するのよ♪」
アクアラーミアンは失笑するものの…。桜花姫の妖力が先程よりも増大化したのである。
(えっ?彼女の魔力が先程よりも桁違いに増大化したわ…一体如何してなの?)
妖力が増大化した桜花姫に不思議がる。不思議がるアクアラーミアンにアクアヴィーナスが解説する。
「残念だったわね!アクアラーミアン!私が桜花姫に食べさせたアイテムは魔法石のアクアクリスタルよ!」
「アクアクリスタルだって!?」
アクアクリスタルの一言にアクアラーミアンは驚愕したのである。
「桜花姫は異国のスイーツに変化させたアクアクリスタルを頬張ったのよ…魔力だけなら確実にあんたを上回ったわ…」
「妖力が戻ったからね♪」
桜花姫は変化の妖術を発動…。
「あんた達は即刻桜餅に変化しちゃいなさい♪」
背後で桜花姫とアクアヴィーナスを拘束する四体のネクロマーメイドを大好きな桜餅に変化させる。
「えっ…私のネクロマーメイドが…」
「如何やらアクアラーミアンには変化の妖術は通用しなかったみたいね♪」
桜花姫の余裕の様子にアクアラーミアンは苛立ったのである。
(此奴…小娘の分際で…)
「異国の魔法使いが…私には魔力による攻撃法は通用しないからね!」
アクアラーミアンは変化の妖術を発動した桜花姫の妖力を吸収能力によって即座に吸収する。
「今度の攻撃であんたを仕留めるわ…」
桜花姫の発言にアクアラーミアンは反論したのである。
「私を仕留めるって?私よりも魔力が上回ったとしてもあんた達は圧倒的に不利なのよ…私に魔法なんて通用しないのにあんた達に何が出来るの?」
「鬱陶しいあんたは…」
(口寄せの妖術…発動!)
桜花姫は即座に口寄せの妖術を発動する。
「えっ?」
口寄せの妖術を発動するとアクアラーミアンの背後より異次元空間が出現したのである。
「異次元空間かしら?」
直後…。異次元空間の中心部より近代兵器である魚雷を口寄せしたのである。
「なっ!?」
(異次元の空間から魚型の武器が召喚されるなんて…)
アクアラーミアンの背後に魚雷が出現するなり…。アクアラーミアンの背後より魚雷が一直線に突っ込む。彼女の背中に魚雷が接触した直後…。魚雷が爆散する。
「ぎゃっ!」
アクアラーミアンは魚雷攻撃によって全身がバラバラに粉砕されたのである。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。爆散した魚雷の水圧から危機一髪本体を防備する。同行者のアクアヴィーナスにも妖力の防壁を発動…。アクアヴィーナスも無事だったのである。
「一件落着♪アクアヴィーナス…大丈夫かしら?」
「私なら大丈夫よ…感謝するわね♪桜花姫♪」
アクアヴィーナスもホッとしたのか微笑む。
「アクアヴィーナス♪微笑んだわね♪」
「えっ!?」
アクアヴィーナスはハッとした表情から赤面するなり…。表情を無理矢理に強張らせる。
「アクアヴィーナス…」
(彼女は強情ね…無理に表情を強張らせなくても…)
無理矢理に表情を強張らせるアクアヴィーナスに桜花姫は苦笑いしたのである。
「妖力を消耗したからね♪」
桜花姫は魚雷攻撃によってバラバラに粉砕されたアクアラーミアンの無数の血肉を直視するなり…。
「今度こそ桜餅に変化しちゃえ♪」
変化の妖術でバラバラに粉砕されたアクアラーミアンの無数の血肉を桜餅に変化させる。
「アクアヴィーナス♪あんたも味見しない?」
「私は食べたくないわ…遠慮するわね…」
アクアヴィーナスは苦笑いの様子であり遠慮したのである。桜花姫は即座に散乱した桜餅をムシャムシャと平らげる。数分後…。桜餅を完食したのである。
「食べ過ぎちゃったわね♪」
桜花姫の腹部がプクプクの状態であり肥満化する。
「食べ過ぎでしょう…桜花姫…」
アクアヴィーナスは苦笑いしたのである。
「御免あそばせ♪即刻ネクロデストピアに直行するわよ!」
彼女達はネクロデストピアの魔王城へと直行する。
メンテ
桜花姫 ( No.30 )
日時: 2021/08/17 09:43
名前: 月影桜花姫

第六話

魔王城

アクアヴィーナスは桜花姫と移動中…。
(月影桜花姫…人一倍ヘタレの私でも彼女と一緒だったら…危険区域のネクロデストピアに到達したとしても生還出来るかも知れないわ…)
普段は人一倍ネガティブ思考のアクアヴィーナスであるものの桜花姫と一緒に行動すると希望が芽生える。すると突如として周辺が暗闇に覆い包まれる。
「暗闇だわ…」
「ネクロデストピアは間近っぽいわね…」
「目的地は目前なのね♪」
桜花姫は非常にワクワクする。暗闇の周辺より無数の殺気と霊力を感じる。
(ん?無数の霊力を感じるわ…)
「悪霊かしら♪」
「悪霊って…アンデッドが出現したの!?」
アクアヴィーナスはビクビクするなり…。力一杯桜花姫に密着する。
「アクアヴィーナスは大袈裟ね♪戦慄しなくても大丈夫よ♪」
「御免なさい桜花姫…結局私一人では力不足だし何一つ出来ないから…」
(先程の彼女の度胸は何だったのかしら?)
極度に畏怖するアクアヴィーナスの様子に桜花姫は苦笑いしたのである。暗闇の海中を直進し続けると無数の殺気と霊力を感じる。
(無数の霊力を感じるわ…敵陣だからかしら?)
桜花姫は即座に天道眼を発動…。妖力の防壁を形作る。
「悪霊が接近中ね♪」
暗闇の海中より数百体…。数千体ものネクロマーメイドとダークフィッシュが移動中の桜花姫とアクアヴィーナスに殺到する。
「きゃっ!アンデッドの大群よ!食べられちゃうわ!」
一人で大騒ぎするアクアヴィーナスに桜花姫は大袈裟であると感じる。
「アクアヴィーナスは本当に大袈裟ね…」
ネクロマーメイドとダークフィッシュの大群が彼女達に接触する直前…。妖力の防壁から半透明の血紅色の魔手を形作る。
「悪霊の分際で私に接触するなんて無謀なのよ♪」
ネクロマーメイドとダークフィッシュの大群は桜花姫とアクアヴィーナスに殺到するものの…。妖力の防壁から出現した無数の血紅色の魔手によって瞬殺される。防壁の魔手に接触したネクロマーメイドとダークフィッシュは肉体が粉砕…。暗闇の海中にて無数の血肉が散乱したのである。
「シールド魔法から紅色の魔手が…一体何かしら?」
「妖力の防壁を攻撃用に応用しただけよ♪」
「桜花姫の魔法は本当に万能なのね…」
「私にとっては序の口だから♪」
桜花姫の返答にアクアヴィーナスは絶句する。
「こんなにも荒唐無稽なのに序の口って…」
(桜花姫に私達の常識なんて通用しないわね…)
桜花姫の荒唐無稽さにアクアヴィーナスは普段の自分達の常識が微細に感じられる。暗闇の海中を直進し続けると遠方より異国風の根城らしきシルエットが確認出来る。
「えっ?何かしら?」
「如何やら根城っぽいわね…」
「ひょっとすると根城は魔女の本拠地かも知れないわね♪」
正体不明のシルエットに接近するとシルエットの正体は暗闇に覆い包まれた根城であると確信する。
「魔女の本拠地かしら…」
「根城の内部から人魚達の妖力と無数の霊力を感じるわね♪」
「妖力と霊力ですって?」
「あんた達の認識では魔力だったわね…」
アクアヴィーナスは恐る恐る魔王城を直視するなり…。
「魔女の本拠地にアクアヴィーナスが…」
「アクアヴィーナス…根城に潜入するわよ♪魔女に遭遇したら即刻彼女を食い殺してアクアヴィーナスの母様とアクアユートピアの人魚達を救出しましょう♪」
(魔女を食い殺すって…)
アクアヴィーナスは魔女を食い殺すと笑顔で発言する桜花姫に内心ゾッとしたのである。彼女達は恐る恐る魔王城の表門へと近寄る。
「念力で粉砕しちゃいましょう♪」
桜花姫は念力の妖術によって魔王城の表門を粉砕…。
「潜入するわよ…アクアヴィーナス♪」
彼女達は警戒した様子で恐る恐る魔王城へと潜入する。魔王城の城内では無数のダークフィッシュとネクロマーメイドが徘徊中である。侵入者である桜花姫とアクアヴィーナスを直視するなり彼女達に殺到する。
「あんた達は命知らずね♪」
桜花姫は念力の妖術を発動…。体内からアンデッドの肉体を破裂させる。
「こんなにもアンデッドの大群を瞬殺しちゃうなんて…」
「根城の守備陣は蹴散らしたわ♪最上階に直行しましょう♪」
彼女達は魔王城の最上階へと直進する。直進中にも無数のダークフィッシュとネクロマーメイドに遭遇するも桜花姫の猛反撃によって蹴散らされる。
「アクアクリスタルの効力かしら♪妖力の消耗が気にならなくなったわ♪」
桜餅に変化させたアクアクリスタルの効力により深海底地帯の自然環境でも妖力の消耗が緩和されたのである。彼女達は魔王城の最上階へと到達する。
「如何やら根城の最上階っぽいわね…ん?」
最上階の中心部より下半身が真蛸の女性が確認出来る。
「誰かしら?」
するとアクアヴィーナスがプルプルと身震いするなり…。
「彼女が…」
「えっ?如何しちゃったのよ?アクアヴィーナス?」
「彼女が…」
「えっ?彼女?」
「彼女が…私達のアクアユートピアを襲撃した魔女よ…」
(此奴が魔女ね…)
「彼女があんたの祖国を侵略した魔女なのね♪真蛸みたいだわ♪」
すると桜花姫の真蛸発言にスキュランはピクッと反応するなり…。
「誰が真蛸ですって!?失礼しちゃうわね…私は深海底の魔女…スキュランよ!」
真蛸と揶揄されたスキュランは桜花姫を睥睨したのである。
「スキュラン…」
「あんたが今回の事件の黒幕っぽいわね♪」
「ワーム型アンデッドのネクロシーワームと最上級アンデッドのアクアラーミアンを死滅させ…ノーダメージで魔王城の最上階に到達するなんて異国の魔法使いは予想外に手強いわね…」
「勿論私は最上級妖女だからね♪」
桜花姫は笑顔で発言する。
「即刻あんたを仕留めて連行されたアクアヴィーナスの母様とアクアユートピアの人魚達を無事に救出するわよ♪」
「彼女達を無事に救出出来るかしら?現実を直視しない単細胞のあんた達に…」
スキュランは平常心の様子であり桜花姫は警戒したのである。
(スキュランは随分冷静ね…妖力だけならアクアラーミアンよりも数段階下回るのに…如何して彼女は冷静なのかしら?)
するとアクアヴィーナスは恐る恐るスキュランに問い掛ける。
「如何してスキュランは私達のアクアユートピアを侵略したのよ?」
「私がアクアユートピアを侵略した理由ですって?」
スキュランは一息するなり…。
「深海底のアクアユートピアでは…無尽蔵の魔法石…アクアクリスタルを入手出来るからね…」
「アクアクリスタルですって?」
アクアクリスタルの一言に桜花姫とアクアヴィーナスは反応する。
「魔法石のアクアクリスタルは米粒大のサイズだとしても地上界の一国を引っ繰り返せる魔力を発揮出来るのよ♪米粒大のアクアクリスタルでも超一流の魔法使いが所持すれば一国を陥落させられるし…一国の征服だって実現出来る魔力を入手出来るからね♪」
魔法石のアクアクリスタルは消耗した魔力の回復だけではなく超一流の魔女がアクアクリスタルを所持した場合…。体内の魔力を数十倍から数百倍にも増大化させられる。一国のスケールにアクアヴィーナスは勿論…。桜花姫も絶句したのである。
「米粒大のアクアクリスタルだけで…一国ですって…」
「如何して魔女のスキュランに魔法石のアクアクリスタルが必要なのよ?魔法石のアクアクリスタルを所持しなくてもあんたの魔力は桁外れに強力でしょう…」
スキュランの魔力を高評価したアクアヴィーナスであるが…。スキュランは一瞬沈黙したのである。
「私は莫大なるアクアクリスタルで私自身の魔力を増大化させ…魔法の海水で地上界全域を水没させるのよ♪地上界全域を水没させるには私自身の魔力だけでは力不足だからね…アクアユートピアのアクアクリスタルで私自身の魔力を数百倍に増大化させたかったのよ♪」
スキュランの主目的に桜花姫とアクアヴィーナスは沈黙する。
「極悪非道の人間達を溺死させ…全世界を魔法の海水で覆い包ませるのよ♪」
「スキュラン?」
桜花姫は恐る恐るスキュランに問い掛ける。
「何よ?」
「あんたも…人間達が大嫌いなの?」
「無論よ…」
桜花姫の問い掛けにスキュランは即答したのである。
「如何してあんたは地上界の人間達を溺死させたいのよ?」
再度問い掛けられたスキュランは無言で魔法を発動…。桜花姫とアクアヴィーナスの目前に蛍光色の発光体を発生させる。
「何かしら?」
「時空の光球よ…」
「時空の光球?」
「時空の光球は…」
時空の光球とは別名予言の発光体とも命名される予言魔法である。蛍光色の発光体に接触すると超古代から超未来は勿論…。あらゆる並行世界で発生する出来事を実体験出来る魔法の発光体であり幻術とは別物である。
「面白そうだわ♪接触しましょう♪アクアヴィーナス♪」
「えっ…大丈夫なの?火傷しないかな…」
アクアヴィーナスは極度に不安がる。
「安心しなさい…火傷しないから…」
スキュランは火傷しないと発言するのだが…。アクアヴィーナスはビクビクした様子で恐る恐る時空の光球に接触したのである。
「本当に…大丈夫かな…」
「私も♪」
桜花姫は娯楽感覚で時空の光球に接触する。すると彼女達の脳内にとある平野にて獣類の毛皮を羽織った大勢の部族が尖頭器を所持…。闘争する光景が鮮明に発現されたのである。
(えっ?何かしら?)
するとパッと闘争の光景が消滅したかと思いきや…。今度はとある海峡での合戦場の様子である。とある巨大船団と別の巨大船団が衝突する光景であり主戦場が船上で足場が不安定であるが両勢力とも必死に奮闘する。パッと戦闘の光景が消滅したのである。今度は数百隻もの異国の軍船がとある砂浜にて上陸を開始…。巨漢の兵士達が火薬を投擲して甲冑を装備した武士達に攻撃する光景が発現される。暴風雨により無数の軍船が沈没…。大勢の兵士達が溺死する光景も確認出来る。暴風雨の光景が消滅すると今度は各勢力が多種多様の家紋を掲揚した甲冑の武士達がとある荒野にて奮闘する光景が発現される。
(ひょっとして戦乱時代の様子かしら?)
桜花姫は戦乱時代を連想したのである。総大将らしき武将の目前には斬首された武士達の生首が並列される。すると今度は炎上する家屋にて一人の家臣に裏切られた武将が自害する光景である。場面が一変すると今度の光景は蒸気を放出する異国の巨大軍船が馴染み深いとある湾港に上陸する光景が発現され…。異国の軍服を着用した巨漢男性と和服の男性達が会話する光景が確認出来る。すると場面は一変…。異国の軍服と鉄砲を所持した異国風の軍勢と和服と甲冑を装備した古風の軍勢が交戦する。
(一体何が…)
両勢力の戦闘の光景が消滅すると今度は鉄砲を所持した異国風の黒服の兵士達がとある丘陵地にて突撃する場面が発現…。突撃する大勢の兵士達が丘陵地の狙撃兵達により銃殺されたのである。場面が一変すると今度はとある青海原にて数十隻もの鋼鉄の巨大軍船が突入する数十隻もの鋼鉄の巨大軍船を無数の大砲で砲撃する光景が発現される。すると今度は鋼鉄の無数の鳥類がとある異国の湾港にて飛行中…。湾港に停泊中の巨大軍船を鋼鉄の火薬で攻撃する光景が発現されたのである。十数隻もの巨大軍船が沈没…。大勢の兵士達が鋼鉄の火薬で吹っ飛ばされる。直後…。とある諸島にて鋼鉄の火薬を抱き抱えた鋼鉄の鳥類が大砲を装備した鋼鉄の巨大軍船に自爆攻撃する光景が発現される。すると今度は鋼鉄の火薬を抱き抱えた小柄の少年兵が大砲を装備した鋼鉄の巨大牛車に突撃…。鋼鉄の巨大牛車諸共自爆攻撃する光景も発現されたのである。先程の光景が消滅…。今度は無数の鋼鉄の鳥類がとある城下町に鋼鉄の火薬を投下する光景が発現される。火炎に覆い包まれた村人達…。頭巾の女性達が必死に炎上する家屋敷を消火する光景が発現されたのである。場面が一変すると突然ピカッと高熱の閃光が一面に光り輝いたかと思いきや…。とある村里全域にてどす黒いキノコ雲と黒色の雨水も確認出来る。焦土化した陸地では眼球と全身の皮膚がドロドロに焼け爛れた大勢の村人達が各地を彷徨する。焦土化した各地には無数の焼死体が埋没…。無数の蛆虫が発生したのである。
「如何してこんな…」
アクアヴィーナスは極度の恐怖心により涙腺から涙が溢れ出る。全身がプルプルするなり膠着したのである。
「アクアヴィーナス…」
(如何やら彼女は限界みたいね…)
すると時空の光球はパッと消滅する。スキュランは無表情で桜花姫を直視するなり…。
「常日頃から単細胞のあんた達でも理解出来たでしょう?人間達の野蛮さを…」
「先程の光景は幻術かしら?」
桜花姫の返答にスキュランは全否定する。
「幻術なんて甘っちょろい子供騙しの魔法とは別物よ!時空の光球は超古代から超未来は勿論…無限の並行世界で発生する出来事を鮮明に再現させる予言の魔法なの…」
「予言の…魔法?」
「先程の光景は超古代から超未来の戦乱は勿論…別の時間軸で勃発する一連の戦乱なのよ…醜悪なる人間達の悪行かしら…」
桜花姫は沈黙する。
「こんなにも同族同士で殺し合って…自然界の自然環境を汚染させる全人類を滅亡させたいからこそ…私はアクアクリスタルの絶大なる魔力を利用して地上界全域を水没させたいのよ…」
すると桜花姫は無表情で…。
「別にあんたが人間達を溺死させたいのであれば思う存分殺しなさいよ…先程の光景を直視させられちゃったら人間界を守護するのも笑止千万だわ…所詮人間達があんたの魔法で溺死しちゃうのも自業自得でしょう…」
「あんたって意外だね…」
スキュランは桜花姫の返答に意外であると感じる。
「えっ?何が意外なのよ?」
「正直あんたは姿形も発想も世間知らずの単細胞って印象だったけど…思考力だけなら赤髪の女友達よりは大人の女性みたいね♪正直ホッとしたわ♪」
(鬱陶しい真蛸ね…何が大人の女性みたいな思考力よ…)
スキュランから大人と認識された桜花姫であるが内心ではピリピリする。
「あんたが私の主目的に協力するのであれば赤髪の女友達もアクアユートピアの人魚達も無事に解放するけれど♪」
「誰が真蛸のあんたなんかに協力するか…」
桜花姫は協力を拒否したのである。
「地上界を水没させちゃうと太平神国の桜餅は二度と食べられなくなるし…三蔵郎様と小猫姫が溺死しちゃうからね…何よりも悪霊征伐と匪賊征伐が出来なくなるわ♪」
数秒後…。
「悪いけどあんたの野望には賛同出来ないわね…」
笑顔で返答する桜花姫にスキュランはピリッと苛立ったのである。
「異国の魔法使いが…所詮あんたも人間達に味方するのね…」
苛立ったスキュランは桜花姫とアクアヴィーナスに魔法を発動する。
「えっ?」
すると突如…。
(なっ!?突然身動き出来なくなったわ…一体何が?)
彼女達は金縛りにより身動き出来なくなる。
(ひょっとして金縛りの魔法かしら?)
スキュランは金縛りの魔法によって桜花姫とアクアヴィーナスの身動きを封殺したのである。
「身動き出来なくなったわね♪」
身動き出来なくなった桜花姫とアクアヴィーナスに催眠術魔法を発動する。
「えっ…」
(何かしら?)
(突然眠気が…)
すると桜花姫とアクアヴィーナスは極度の眠気により熟睡したのである。
「あんた達は精一杯熟睡しなさい♪」
スキュランは熟睡した桜花姫に恐る恐る接触するなり…。
「異国の魔法使いは生意気で腹立たしい小娘だったけど…熟睡すると寝顔だけは人一倍美人さんだわ♪非常に勿体無いわね♪」
(早速彼女達をピチピチの甘海老に変化させちゃおうかしら♪)
魔法によって睡眠中の桜花姫とアクアヴィーナスを小指サイズの甘海老に変化させたのである。
「美味しそうな甘海老ね♪異国の魔法使いはピチピチした素肌の感触が誰よりも美味しそうだわ♪」
即刻頬張ろうかと思いきや…。ポンッと小指サイズの甘海老に変化した桜花姫の肉体が突発的に消滅したのである。
「えっ!?一体何が…如何して彼女の肉体が消滅したのよ!?」
突然消滅した甘海老の桜花姫にスキュランは驚愕する。
「彼女は一体!?」
すると背後より何者かがポンッとスキュランの背中に接触したのである。
「きゃっ!」
突然の出来事によりスキュランはビクッと反応する。
「御免あそばせ♪」
「えっ!?あんたは…」
スキュランの背中を接触したのは誰であろう桜花姫だったのである。
「あんたは異国の魔法使い!?如何して元通りに…あんたは私が魔法で甘海老に変化させたのよ…」
元通りに戻った桜花姫にスキュランは動揺する。不思議がるスキュランに桜花姫は笑顔で説明したのである。
「あんたが妖術で甘海老に変化させたのは私の分身体なのよ♪残念だったわね♪」
「分身体ですって!?」
スキュランが魔法を発動する直前に分身の妖術を発動…。スキュランの魔法で小指サイズの甘海老に変化したのは桜花姫の分身体であり彼女の本体は無事だったのである。
「分身体の魔法で私の魔法を無力化するなんて…異国の魔法使いは悪知恵も超一流みたいね…」
「残念だったわね♪真蛸の小母さん♪私こそあんたを桜餅に変化させて頬張っちゃうわよ♪」
笑顔で発言する桜花姫にスキュランは恐る恐る忠告する。
「私を食い殺せば…甘海老に変化させたあんたの女友達は勿論…アクアユートピアの人魚達も二度と元通りには戻れなくなるわよ…」
忠告された桜花姫であるが…。
「別に♪元通りに戻れないから何よ?」
「えっ!?仲間が元通りに戻れなくなるのにあんたは正気なの!?」
桜花姫の予想外の返答にスキュランは愕然としたのである。
「私は正気よ♪私はあんたが気に入らないからあんたを食い殺したいだけなのよ♪」
「あんたは外見とは裏腹に悪魔みたいね…」
悪魔と誹謗された桜花姫であるが…。
「悪魔だから何よ♪鬱陶しいあんたは桜餅に変化しちゃいなさい♪」
桜花姫は変化の妖術を発動するとスキュランを大好きな桜餅に変化させる。一口で桜餅に変化したスキュランをパクッと頬張る。
「桜餅は美味だわ♪」
甘海老に変化したアクアヴィーナスを直視するなり…。
「口寄せの妖術でスキュランを元通りに復活させれば問題解決なのよね♪」
即座に口寄せの妖術を発動する。先程変化の妖術で食い殺したスキュランを元通りに復活させたのである。
「えっ?私は一体?」
「元通りに戻れたわね♪スキュラン♪」
スキュランは無表情であり何も反応しない。姿形は生前と瓜二つであるが術者である桜花姫によって自我を掌握された状態であり今現在のスキュランは彼女の傀儡人形である。
「スキュラン♪あんたの魔法によって甘海老に変化させられちゃったアクアヴィーナスとアクアユートピアの人魚達を元通りに戻しちゃいなさい♪」
「承知したわ…」
スキュランは桜花姫の命令を承諾…。即座に魔法を解除したのである。魔法を解除されたアクアヴィーナスは勿論…。魔王城で拘束された人魚達も甘海老の状態から元通りの人魚の姿形へと戻れたのである。熟睡中だったアクアヴィーナスが恐る恐る目覚める。
「えっ?私は一体何を?」
彼女は寝惚けた様子であったがスキュランを直視するなりビクッとした反応で戦慄したのである。
「えっ!?スキュラン!?」
「あんたは本当に小心者ね…アクアヴィーナス♪」
「桜花姫!?」
アクアヴィーナスは恐る恐るスキュランを直視するなり…。
「えっ?彼女は無反応だわ…無感情のビスクドールみたいね…」
スキュランはアクアヴィーナスにジーッと凝視されても無反応であり無表情だったのである。
「今現在の彼女は口寄せの妖術で復活させた傀儡人形だからね♪本物のスキュランなら私が征伐しちゃったから大丈夫よ♪」
「えっ?征伐って…あんたが本物のスキュランを仕留めちゃったの!?」
「勿論よ♪」
(桜花姫…あんただったらアクアクリスタルの魔力を使用しなくても一国を征服出来そうね…)
アクアヴィーナスは桜花姫が黒幕であるスキュランを仕留めた事実に驚愕する。
「スキュランに魔法を解除させたからあんたは勿論♪今頃はアクアユートピアの人魚達も無事に解放されたでしょうね♪」
「アクアヴィーナスも解放されたのね…」
すると背後の鉄扉が解放されるなり金髪の人魚がウェンディーネに近寄るなり力一杯密着する。
「アクアヴィーナス♪」
「ウェンディーネ母様!?無事だったのね…」
アクアヴィーナスは母親のウェンディーネとの再会に涙腺から涙が零れ落ちる。
「アクアヴィーナス…私…母様が魔女に殺されちゃうかと…」
「大丈夫よ…大丈夫だからね…ウェンディーネ母様…」
「アクアヴィーナス…」
「母様が無事で何よりだわ…」
ウェンディーネ自身も殺害される恐怖心によって落涙したものの無事に解放され…。大喜びしたのである。
「私だけ逃げちゃって御免なさいね…ウェンディーネ母様…私は母様を見殺しに…」
謝罪するアクアヴィーナスであるがウェンディーネは笑顔で…。
「気にしないで♪アクアヴィーナス♪無事に戻れただけでも結果オーライでしょう♪」
「ウェンディーネ…」
アクアヴィーナスは涙腺から涙が溢れ出る。
「えっ?彼女は誰かしら?」
するとウェンディーネは桜花姫に気付いたのである。
「ウェンディーネ母様…桜花姫に感謝してよね…彼女の協力が無ければ母様は今頃魔女に食い殺されちゃったかも知れないのよ…」
アクアヴィーナスは恐る恐る桜花姫を直視するなり…。
「ひょっとして貴女様がイーストユートピアの伝説の魔法使いである月影桜花姫様ですか!?」
「勿論♪私が誰よりも温厚篤実で最上級妖女であり…地上界の女神様♪桜花姫…月影桜花姫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
(人一倍短気で無慈悲のあんたが地上界の女神様を自称するなんて…)
地上界の女神様を自称する桜花姫にアクアヴィーナスは苦笑いする。
「あんたがアクアヴィーナスの母様ね♪美人さんだわ♪」
「私が美人さんなんて…桜花姫様は大袈裟ですわね♪」
するとウェンディーネは桜花姫に謝意する。
「大変感謝しますわ♪桜花姫様♪」
アクアヴィーナスも恐る恐る桜花姫に謝意したのである。
「私からも感謝するわ…桜花姫…」
アクアヴィーナスは涙腺から涙が溢れ出る。
「あんたの孤軍奮闘で私達は勿論!アクアユートピアの人魚達が無事に解放されたわ…私達にとって桜花姫…あんたは正真正銘本物の救世主…地上界の女神様よ…」
落涙するアクアヴィーナスに桜花姫は困惑したのである。
「私が地上界の女神様なんて…あんた達は大袈裟ね♪私にとって悪霊征伐なんて所詮道楽だし夜遊びと一緒なのよ♪今回の悪霊事件で暇潰し出来たからね♪感謝したいのは私自身だから♪」
「桜花姫…」
「桜花姫様…」
桜花姫は先程から無言のスキュランを凝視するなり…。
「スキュラン…あんたはアクアユートピアの守護神として活動しなさい♪金輪際アクアユートピアを侵略するなんて悪巧みは厳禁だからね♪」
「承知したわ…」
スキュランは無表情であるものの承諾したのである。スキュランはテレポート魔法を発動…。アクアユートピアへと瞬間移動したのである。
「一件落着ね♪」
一安心した直後…。
「えっ?」
桜花姫は突如として息苦しくなる。
「ぐっ!」
(疲労感かしら…)
突然息苦しくなる桜花姫にアクアヴィーナスとウェンディーネはゾッとしたのである。
「えっ!?桜花姫!?如何しちゃったのよ…」
「大丈夫ですか!?桜花姫様!?」
「妖力の消耗かしら…突然息苦しくなったのよ…」
桜花姫は息苦しいのか小声で返答…。正直返答するだけでも辛苦の状態だったのである。
「ひょっとすると桜花姫は魔力の消耗で長時間の人魚の状態が維持出来なくなったのかも知れないわ…」
「ウェンディーネ母様…早急に地上界に戻らないと桜花姫様が溺死しちゃうわ!如何しましょう!?」
「私は即刻桜花姫を地上界に浮上させるわよ!」
「えっ?アクアヴィーナス!?」
アクアヴィーナスは衰弱化した桜花姫を力一杯抱き抱えるなり海面上へと急行したのである。
(死なないでよ…桜花姫…死んじゃったら承知しないわよ!)
アクアヴィーナスは全身全霊の力泳によりとある無人島へと漂着する。無人島に漂着した直後…。桜花姫の変化の妖術が解除される。
「桜花姫!?大丈夫!?」
数秒後…。
「はぁ…はぁ…」
桜花姫は深呼吸したのである。
「えっ?私は一体…」
「桜花姫…意識が戻ったみたいね…」
アクアヴィーナスは意識が戻った桜花姫の様子にホッとする。
「アクアヴィーナス?えっ?」
桜花姫は真夜中の天空を直視するなり…。地上界であると認識する。
「私は地上界に?何時の間にか戻っちゃったのかしら?」
「突然あんたが息苦しくなるからビクビクしちゃったわよ…もう少しであんた…窒息死しちゃうかと…」
「心配させちゃったわね…御免あそばせ♪」
「あんたが無事で何よりだわ…」
周辺を眺望するのだが視界一面が無人島である。遠方は闇夜の青海原であり陸地は何一つ確認出来ない。
「アクアユートピアから随分遠方に移動しちゃったからね…」
「口寄せの妖術で私達諸共目的地に口寄せしましょう♪」
「えっ!?目的地にワープ出来るの!?」
「一か八か…」
桜花姫は即座に口寄せの妖術を発動…。自分自身とアクアヴィーナスを太平神国の西国を目印に口寄せしたのである。彼女達は一瞬で西国の天霊山の頂上へと瞬間移動する。
「ひょっとしてイーストユートピアの小山かしら?」
「如何やら私達は無事に太平神国に戻れたみたいね♪」
「私達…一瞬で陸地に瞬間移動しちゃったの!?」
「勿論よ♪」
アクアヴィーナスは恐る恐る天霊山の頂上から西国の村里を眺望したのである。
「あんたの祖国だったわね…」
「私とあんたが遭遇した場所よ♪」
アクアヴィーナスは涙腺から涙が零れ落ちる。
「一日間の出来事なのに…長期間の長旅に感じられるわね…」
「私も極度の疲労感が蓄積したから…久方振りに天霊山の露天風呂にでも入浴しちゃおうかしら♪」
桜花姫は着物を脱衣し始める。人前で着物を脱衣する桜花姫にアクアヴィーナスは赤面したのである。
「えっ!?桜花姫!?人前で何するのよ!?」
「何って…入浴するから脱衣しただけよ♪」
「えっ!?あんたは人前なのに平気なの!?」
アクアヴィーナスに問い掛けられた桜花姫であるが…。桜花姫は笑顔で即答する。
「別に♪人前だからって何よ♪折角だしあんたも一緒に入浴しましょうよ♪女同士だから全裸でも平気でしょう♪」
アクアヴィーナスはビクビクした様子で周囲を警戒するなり…。
(人気は無さそうだわ…)
「折角だし…私も入浴しちゃおうかしら…」
彼女は赤面した表情で恐る恐る衣服を脱衣したのである。衣服を脱衣するとアクアヴィーナスは警戒した様子で露天風呂へと入浴する。するとアクアヴィーナスは恐る恐る…。
「桜花姫…」
「何よ?アクアヴィーナス?」
「御免なさいね…桜花姫…何も謝礼が出来なくて…」
謝罪するアクアヴィーナスに桜花姫は笑顔で即答する。
「別に謝礼なんて…気にしないの♪」
「私自身足手纏いで桜花姫に守護されてばかりだし…」
アクアヴィーナスは赤面した表情で…。
「アクアユートピアに平和が戻ったから…私からの恩返しに今度はショートケーキでも如何かなって…あんたは人一倍スイーツが大好きみたいだし…」
「ショートケーキですって♪」
ショートケーキに反応したのか桜花姫は大喜びしたのである。
「あんたのショートケーキは本当に美味しかったから…是非とも今度食べさせてよ♪」
「勿論よ♪桜花姫♪」
アクアヴィーナスは笑顔で即答する。
メンテ
桜花姫 ( No.31 )
日時: 2021/08/17 09:44
名前: 月影桜花姫

第七話

廃神社

スキュランによるアクアユートピアでの事件が無事解決してより翌日の早朝…。桜花姫の妹分である山猫妖女の小猫姫は暇潰しに西国の廃神社にて一休みする。
「毎日毎日…退屈だな…」
(悪霊でも出現しないかな?)
霊魂巨神木との死闘以後…。小猫姫は桜花姫みたいに悪霊征伐に尽力するのだが近頃は悪霊も匪賊も出現せず退屈の毎日だったのである。
(悪霊が出現すれば…私でも桜花姫姉ちゃんみたいに悪霊を仕留めちゃうのに…)
小猫姫は一息した直後…。
「えっ?」
(一体何だろう?)
突如として極度の胸騒ぎを感じる。
「胸騒ぎかな…」
非常に気味悪くなり周囲を警戒したのである。
「ひょっとして出現したのかな?」
小猫姫は警戒するものの…。内心ワクワクしたのである。すると暗闇の天然林より無数の鬼火が出現する。
「えっ?悪霊かな?」
無数の鬼火の出現に小猫姫は内心大喜びしたのである。
「本物の悪霊っぽいね♪」
背後より強烈なる霊力を察知…。小猫姫は恐る恐る背後の鳥居を直視する。
「えっ?人間の…生首?」
(巨体だね…)
廃神社の鳥居から女性らしき巨体の生首が出現したのである。
「ひょっとして此奴は以前…桜花姫姉ちゃんが退治した大生首って悪霊かな?」
悪霊の正体は大生首であり浮遊した状態で小猫姫を直視するなり不吉の笑顔でニヤッと微笑む。
「早速私の出番みたいだね♪退治するよ!」
すると突然…。大生首は口先を開口すると周囲に浮遊する無数の鬼火を吸収したのである。
「えっ?一体何を?」
鬼火を吸収すると先程よりも大生首の霊力が増幅される。
「霊力が強化されたみたいだね…」
すると大生首は口先より無数の火の玉を放出したのである。
「火の玉?」
(変化の妖術で…)
小猫姫は変化の妖術を発動…。伝説の妖獣に変化したのである。大生首が放出した無数の火の玉が小猫姫に接近する。小猫姫は体内の妖力を増幅させるなり…。
「はっ!」
衝撃波を発生させる。小猫姫が衝撃波を発生させた直後…。大生首の火の玉は一瞬で消失したのである。
「あんた程度の火の玉なんて私には通用しないからね!」
小猫姫は口先より高熱の雷光を凝縮させる。
「死滅しろ!大生首!」
口先から高熱の雷球を放出したのである。小猫姫が放出した高熱の雷球は大生首に直撃するのだが…。大生首はパッと消滅したのである。
「えっ!?消滅した!?」
(大生首は?)
周囲を警戒するものの…。大生首は確認出来ない。
(霊力は感じられるけれど…)
霊力は感じるのだが大生首の居場所は不明である。
(先程の大生首は幻影かな?)
「本体は一体…」
すると突然…。周囲の地中より無数の食人餓鬼が出現したのである。
「えっ?今度は食人餓鬼の大群?」
無数の食人餓鬼が小猫姫に殺到したのである。
(食人餓鬼が相手なら…)
小猫姫は衝撃波を発動…。殺到する食人餓鬼の大群を一瞬でバラバラに粉砕したのである。食人餓鬼は肉体が非常に脆弱であり僅少の妖力で仕留められるものの…。多勢に無勢であり地中より更なる大量の食人餓鬼が再度出現する。
(こんなに出現するなんて…半年前の悪霊騒動以来だね…)
再度出現した無数の食人餓鬼は小猫姫に殺到…。小猫姫は口先に妖力を凝縮させる。
「死滅しろ!」
口先より高熱の雷球を発射…。殺到する食人餓鬼の大群を焼失させたのである。
「仕留めたね…」
小猫姫はホッとしたのか一安心した直後…。再度霊力を感じる。
(今度は何だろう?)
すると地面より無数の食人餓鬼が一体化した肉団子の悪霊…。百鬼食人餓鬼が出現したのである。体表には無数の食人餓鬼の顔面が確認出来る。
「此奴は…百鬼食人餓鬼?」
(以前桜花姫姉ちゃんが退治した食人餓鬼の集合体だったよね…)
百鬼食人餓鬼の体表の食人餓鬼が小猫姫を凝視する。
「気味悪いね…」
体表の無数の食人餓鬼が口先から高熱の火炎を放射したのである。小猫姫は即座に雷光の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の火炎を無力化したのである。
「こんな程度の火炎では私には通用しないよ!」
小猫姫は落雷の妖術を発動…。
「成仏しろ!」
天空が黒雲により覆い包まれる。すると黒雲の中心部より高熱の落雷が百鬼食人餓鬼に直撃…。百鬼食人餓鬼が佇立した地面が抉れる。百鬼食人餓鬼は高熱の落雷により消滅したのである。
「悪霊は消滅したね…」
百鬼食人餓鬼を仕留めた直後…。背後より強烈なる霊力が突発的に出現したのである。
「えっ!?」
(霊力?)
小猫姫は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「大生首…」
先程突然消失した大生首が再度出現したのである。大生首は小猫姫を直視するなりニヤッと不吉の笑顔で微笑む。
「あんたは本当に気味悪いね…」
小猫姫は高熱の雷球を発射する。発射された高熱の雷球は大生首に直撃するのだが…。パッと消失したのである。
「えっ!?今度も幻影?」
直後…。大生首の本体が小猫姫の目前より出現する。
「此奴が大生首の本体!?」
すると大生首は人間界の公用語で発語し始める。
「伝説の妖獣に変化出来る妖女の小娘よ…貴様の妖力は非常に絶大だ…」
「えっ!?」
(大生首って…喋れるの!?)
人語で発語する大生首に小猫姫は驚愕したのである。
「先程の戦闘で貴様の妖力は消耗した…」
すると小猫姫は妖力の消耗により変化の妖術が解除され…。伝説の妖獣から元通りの人間の姿形に戻ったのである。
「えっ!?」
(戻っちゃった…)
妖力の消耗により小猫姫は身動き出来なくなる。
「ぐっ!」
(迂闊だった…妖力の消耗で身動き出来なくなるなんて…)
大生首はニヤッと微笑むなり…。
「妖獣の小娘よ…貴様は私に食い殺される運命なのだ♪」
大生首は小猫姫に急接近する。
「妖獣の小娘よ…貴様の肉体を頂戴する♪」
「ひっ!」
(私…悪霊に食い殺されちゃうよ…蛇骨鬼婆ちゃん…桜花姫姉ちゃん…)
小猫姫は恐怖心により瞑目したのである。大生首に食い殺される直前…。
「桜餅に変化しなさい♪」
すると大生首はポンッと白煙に覆い包まれ小皿と桜餅に変化したのである。
「えっ!?」
(一体何が?)
小猫姫は恐る恐る両目を見開くと目前の地面には小皿と桜餅が確認出来る。
「えっ?如何して桜餅が?」
すると背後より桜花姫が近寄る。
「危機一髪だったわね♪小猫姫♪」
「えっ?桜花姫姉ちゃん?」
桜花姫は小皿に配置された桜餅をパクッと頬張る。
「ひょっとして桜餅の正体は…」
桜花姫は笑顔で即答する。
「勿論大生首よ♪」
桜花姫は変化の妖術で悪霊の大生首を桜餅に変化…。頬張ったのである。
「悪霊でも桜餅に変化させちゃえば美味ね♪」
(桜花姫姉ちゃん…悪霊を食べちゃうなんて…)
美味しそうに桜餅を頬張る桜花姫に小猫姫は苦笑いする。
「今回出現した大生首は前回私が征伐した大生首よりも強力だったみたいね…」
すると小猫姫は恐る恐る…。
「桜花姫姉ちゃんは如何して私の居場所を?」
「近辺の神社であんたの妖力と悪霊の霊力を察知したのよ♪何よりもあんたの妖力は其処等の妖女よりも強力だから非常に目立つわよ♪」
「桜花姫姉ちゃん…」
小猫姫は苦笑いしたのである。
「私に内緒で悪霊征伐なんて小猫姫の意地悪♪」
「意地悪も何も…結局大物は桜花姫姉ちゃんが仕留めちゃったけどね…」
「あんたも頑張ったみたいね♪」
「桜花姫姉ちゃん…」
小猫姫は赤面するも内心では大喜びする。
メンテ
桜花姫 ( No.32 )
日時: 2021/08/17 09:45
名前: 月影桜花姫

第八話

救出作戦

無数の悪霊と大生首との戦闘から四日後の夕方…。桜花姫は毎日の日課である天霊山の露天風呂にて入浴したのである。
「極楽♪極楽♪」
天霊山の露天風呂に入浴すると一日の浪費した妖力が蓄積される。
「天霊山の露天風呂は最高だわ♪」
(湯加減も良好だし♪)
すると彼女は変化の妖術を発動…。桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化したのである。同時に長髪の黒髪が銀髪に変色する。
「完了♪」
桜花姫は人魚に変化した状態から露天風呂にて遊泳したのである。西国は温泉郷として有名である反面…。天霊山の露天風呂に入浴するのは大半が桜花姫である。彼女を除外すると桜花姫以外の妖女やら人間は滅多に露天風呂へは入浴しない。天霊山の露天風呂は実質桜花姫が私物化した状態だったのである。すると突然…。
「なっ!?」
(妖力だわ…)
近辺より僅少の妖力が天霊山の露天風呂に接近するのを感じる。
(妖女なのは確実ね…)
「一体誰かしら?」
妖力を察知した桜花姫は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「えっ?あんたは…」
桜花姫の背後には水色のロングドレスを着用した金髪碧眼の白人美少女が佇立する。
「貴女様は月影桜花姫様でしょうか?」
「ひょっとしてあんたはアクアユートピアの…アクアヴィーナスの母様かしら?」
天霊山の露天風呂に来訪したのはアクアユートピア出身者…。アクアヴィーナスの母親のウェンディーネだったのである。
「如何しちゃったのよ?深海底のアクアユートピアからこんな場所に入国するなんて…」
するとウェンディーネは深刻そうな表情で…。
「桜花姫様!大変です!」
「えっ?何が大変なの?」
(ひょっとして今回も大事件発生かしら?)
ウェンディーネの様子から一大事であると察知する。ウェンディーネはソワソワした表情で恐る恐る…。
「一昨日の出来事なのですが…アクアヴィーナスが気分転換に地上界へと出掛けたのですが…全然戻らなくて…」
今日より二日前の出来事である。スキュランと無数のアンデッドによる大騒ぎから数日後…。アクアヴィーナスは久方振りの気分転換に地上界へと出掛けたのだが二日間が経過しても戻らなかったのである。
「アクアヴィーナスが戻らないの?」
「彼女が出掛けても普段なら四時間程度…場合によっては二時間程度で帰宅するのですが…」
アクアヴィーナスは人一倍小心者であり半日間出歩くだけでも彼女にとってはハードであり普段は短時間で帰宅するのが通例である。桜花姫は恐る恐るウェンディーネに問い掛ける。
「アクアヴィーナスの母様?魔女のスキュランには依頼しなかったのかしら?」
桜花姫が問い掛けるとウェンディーネはビクッと反応する。
「えっ!?」
(彼女の様子だと…魔女のスキュランには依頼しなかったみたいね…)
ウェンディーネの様子に桜花姫は苦笑いしたのである。
「御免なさい…私…人一倍深海底魔女のスキュランが苦手で…彼女に依頼は勿論…相談すら出来ませんでした…」
「彼女は深海底では最強の魔女だし…スキュランの魔法だったら小心者のアクアヴィーナスが行方不明でも簡単に発見出来そうよ…」
ウェンディーネにとって深海底魔女のスキュランはトラウマの対象であり桜花姫が口寄せの妖術により浄化された状態でスキュランは復活したものの…。国内では彼女を毛嫌いする人魚の平民も少なくない。
(彼女は一度アクアユートピアを侵略した張本人だからね…信用されないのは自業自得だから仕方ないわね…)
桜花姫はニコッと微笑むなり…。
「承知したわ♪協力するわよ♪」
「桜花姫様♪」
ウェンディーネは一安心したのか笑顔が戻ったのである。
「アクアヴィーナス…彼女の居場所を特定するなら…」
(こんな場合…千里眼の妖術が有効ね…)
桜花姫は両目を瞑目するなり…。
(千里眼の妖術…発動!)
千里眼の妖術とは広範囲に存在する物体やら特定の人物を正確に知覚出来る妖術である。背後からの透視能力も発揮出来る。千里眼の妖術を発動すると桜花姫の脳内より広大なる大海原を航行中の一隻の帆船が発現されたのである。
(何かしら?異国の…軍船?)
無数の大砲を装備…。人間の髑髏らしき旗印が確認出来る。すると船内の内部には拘束された状態の小柄の童顔美少女がソワソワした表情で落涙するのを発見…。
(えっ!?彼女は…)
童顔美少女はピンク色のロングドレスに頭髪は赤毛のストレートロングである。
(ひょっとして彼女はアクアヴィーナス!?拘束されたのかしら…)
拘束された童顔美少女がアクアヴィーナスであると確信する。桜花姫は恐る恐る…。
「母様…アクアヴィーナスを発見したわ…」
「えっ!?本当ですか!?」
するとウェンディーネはハッとした表情で反応する。
「アクアヴィーナスの居場所は一体?」
「アクアヴィーナスは異国の軍船に拘束されたみたいよ…」
桜花姫は険悪化した表情で発言したのである。
「異国の軍船ですって?」
「私が千里眼の妖術で確認したのは髑髏の旗印の軍船だったわ…アクアヴィーナスは軍船の船内で拘束された状態だったわ…」
髑髏の旗印にウェンディーネは反応する。
「桜花姫様が魔法で確認された異国の軍船って…ひょっとすると海賊団の海賊船では?」
「えっ?海賊団ですって?海賊団って…何かしら?」
太平神国では海賊団と命名される言語が皆無であり桜花姫は海賊団の意味が理解出来なかったのである。
「海賊団はね…」
海賊団とは海上で略奪行為を実行する盗賊達の集団であり近年では多数の海賊達が大海原を大航海…。無力の小国やら遭遇した多数の商船を襲撃したのである。
「海賊団って水軍みたいな奴等ね…」
戦乱時代では太平神国の海域にも極悪非道の水軍が活動…。各地の村里を襲撃しては村人達から畏怖されたのである。戦乱時代から安穏時代に変化する中頃には勢力の規模が縮小化…。今現在では完全に自然淘汰されたのである。
「アクアヴィーナスは海賊達に誘拐されたのですね…」
すると桜花姫は笑顔で断言する。
「私が誘拐されたアクアヴィーナスを救出してから…海賊団って名前の匪賊の集団を蹴散らせるわね♪」
「桜花姫様…」
同時刻…。海賊達により誘拐されたアクアヴィーナスは海賊船の船内密室にて拘束される。船内密室の天井中心部にはオレンジカラーのマリンランプが室内全体を発光させる。
(私…海賊達に殺されちゃうのかな?)
アクアヴィーナスは極度の恐怖心からか涙腺より涙が零れ落ちる。魔力の消耗により人魚の状態から人間の姿形に戻ったのである。
「下半身が人間の両足に戻ったわ…」
すると二人の海賊達が船内の密室に入室する。
「人魚の姉ちゃんよ♪魔法で人間に変身したのか?」
「人魚の姉ちゃんは人間の姿形でも可愛らしいけどな♪」
海賊達は横たわったアクアヴィーナスに近寄る。アクアヴィーナスは恐る恐る…。
「私を…如何するの?殺しちゃうの?食べちゃうの?」
ビクビクするアクアヴィーナスに海賊達は大笑いする。
「傑作だな♪人魚の姉ちゃんよ♪」
「俺達は極悪非道の海賊団だが…人魚を食い殺しちまったら折角の賞金を頂戴出来なくなるからな♪」
すると小柄の船員がボソッと小声で…。
「正直…人魚の姉ちゃんを犯しちまいたいが…こんな場所で犯しちまったら折角の賞金が水の泡だ…」
小柄の船員はムラムラした様子で力一杯アクアヴィーナスの乳房に接触する。
「ひっ!」
「此奴は高値で密売出来そうだぜ♪」
アクアヴィーナスは極度の恐怖心からか全身が膠着したのである。すると大柄の船員が恐る恐る…。
「貴様好い加減にしろよ…こんな人魚は激レアだから犯しちまいたいのは同意するが…」
注意する大柄の船員に小柄の船員が睥睨する。
「はっ?一般船員の分際で俺に指図するのか?」
小柄の船員は大柄の海賊に反抗する。
「必要以上に畏怖させて自害されちまったら元も子もないだろ…深海底の人魚なんて滅多に捕獲出来ない代物だぞ!こんな場所で人魚に自害されちまったら折角の賞金がワンゴールドも確保出来なくなるぞ…」
ワンゴールドとは金貨一枚分であり現実世界なら推計四百万円の高価値である。人魚は世界各国でも僅少の種族であり一人でも人魚を捕獲出来れば最低でも金貨五十枚は獲得出来る。
「此奴を無傷で密売出来れば最低でも五十ゴールドはゲット出来るぞ…」
「畜生が…」
制止された小柄の船員は大柄の船員を睥睨するなり後退りする。するとアクアヴィーナスは恐る恐る大柄の船員に…。
「結局…あんた達は私を如何するの?」
恐る恐る問い掛けるアクアヴィーナスの質問に大柄の船員は即答する。
「貴様は地上界の超大国に密売される…恐らく貴様一人でも金貨五十ゴールドは確実だからな…」
「ひょっとして身売りとか?」
「勿論…」
アクアヴィーナスの身売りの発言に大柄の船員は即答したのである。
「えっ…私…異国に身売りされちゃうの…」
するとアクアヴィーナスはビクビクするなり涙腺から涙が零れ落ちる。
「安心しろ…最低でも海賊船の船内では殺されないからな…」
すると小声で…。
「無論…超大国に密売されてからの生存は保証出来ないが…」
「えっ…」
アクアヴィーナスは極度の精神的ショックからか意識を喪失…。再度横たわったのである。
「人魚が気絶しちまったぜ…如何するよ?」
「下手に船内で大騒ぎされるよりは…」
「随分大人しい人魚だったな…」
彼等は密室を退室するなり…。ドアを厳重にロックしたのである。同時刻…。桜花姫とウェンディーネは西国の海辺へと移動したのである。
「変化の妖術で人魚に変化しちゃいましょう♪」
桜花姫は変化の妖術を発動すると下半身が銀鱗の大魚へと変化…。ストレートロングの黒髪が銀髪へと変色したのである。桜花姫は小柄の身長であるが変化の妖術で人魚に変化すると体長は推定八尺程度に巨大化する。同行したウェンディーネが人魚に変化した桜花姫を直視すると恐る恐る…。
「桜花姫様は人魚に変身しても可愛らしいですね…誰よりも海水の女神様って雰囲気ですよ♪」
ウェンディーネが海水の女神様と発言すると桜花姫は赤面した様子で返答する。
「こんな私が海水の女神様なんて♪アクアヴィーナスの母様は大袈裟ね♪」
(私が海水の女神様ですって♪)
大袈裟と発言するが内心では大喜びしたのである。ウェンディーネも魔法で人魚に変身する。下半身が大魚へと変化…。水色の魚鱗へと変化したのである。
「勿論母様も深海底の天女みたいで可愛らしいわよ♪」
桜花姫の深海底の天女発言にウェンディーネは大喜びする。
「私が深海底の天女なんて♪桜花姫様も大袈裟ですわね♪」
彼女達は即座に海中へと潜水したのである。ウェンディーネが恐る恐る…。
「桜花姫様?アクアヴィーナスは無事なのでしょうか?」
恐る恐る問い掛けるウェンディーネに桜花姫は笑顔で即答する。
「大丈夫よ♪母様♪アクアヴィーナスは海賊船の船内で気絶した状態だったけど無事だからね♪安心しなさい♪」
桜花姫は千里眼の妖術でアクアヴィーナスの状態を正確に知覚したのである。
「無事でしたか…」
(アクアヴィーナス…無事で良かったわ♪)
ウェンディーネはホッとしたのか一安心する。
「今回は人間相手だから楽勝ね♪」
桜花姫とウェンディーネはアクアヴィーナスを誘拐した海賊船を目標に海中を直進したのである。すると海中を直進してより二時間後…。西国近海から推定五百キロメートルの海域よりとある無人島を発見する。
「母様…」
「えっ?桜花姫様?」
「無人島で休憩しましょう…」
桜花姫は人魚に変身した影響からか息苦しそうな表情だったのである。
「桜花姫様…」
(ひょっとして体内の魔力が消耗しちゃったのかしら?)
人魚に変身した状態で長時間力泳し続けると普段の戦闘よりも大量の妖力が消耗する。彼女達は無人島の砂浜へと上陸すると桜花姫は即座に変化の妖術を解除…。元通りの童顔美少女へと戻ったのである。
「はぁ…はぁ…」
桜花姫は極度の疲労により深呼吸する。
(桜花姫様…苦痛そうだわ…)
ウェンディーネは恐る恐る…。
「桜花姫様?大丈夫ですか?」
「大丈夫よ…私は平気だから♪心配しないで…」
桜花姫は疲労した様子であるが多少強張った笑顔で返答する。
「桜花姫様…」
(本当に大丈夫かしら…)
桜花姫は非常に強張った笑顔でありウェンディーネは不安がる。すると桜花姫は恐る恐る…。
「アクアヴィーナスの母様…御免なさいね…」
ウェンディーネに謝罪したのである。
「御免なさいって…一体如何されましたか?」
「アクアヴィーナスは私一人で救出するわね…正直人間の海賊団が相手でも妖力を消耗した状態では母様を守護出来ないわ…」
妖力を消耗した状態では同行者を守護して戦闘するのは非常に不利であり戦闘用の魔法を使用出来ないウェンディーネは正直足手纏いだったのである。
「承知しました…桜花姫様…」
桜花姫の発言にウェンディーネは承諾する。彼女は意外にも素直であり桜花姫は内心ホッとしたのである。
「アクアヴィーナスの母様は無人島で待機してね…」
「私は大丈夫ですけど…アクアヴィーナスは無事でしょうか?」
心配するウェンディーネに桜花姫は笑顔で即答する。
「彼女なら大丈夫よ♪無人島の近辺からアクアヴィーナスの妖力を感じるのよ♪」
拘束されたアクアヴィーナスの魔力が近辺より感じられる。海賊船は間近であると確信したのである。
「私は海賊達を蹴散らして…アクアヴィーナスを救出するからね!」
桜花姫は変化の妖術を発動…。即座に人魚に変化すると再度海中へと潜水したのである。
「桜花姫様…」
ウェンディーネは桜花姫を見届ける。同時刻…。海中へと潜水した桜花姫であるが妖力の消耗は想像以上であり長時間人魚の状態を維持するのは不利であると確信する。
(今回も短時間で事件を解決させないと…私自身が衰弱死するわね…)
数分後…。数キロメートルの長距離より船体の船底を確認する。
(えっ?何かしら?)
桜花姫は即座に浮上…。海面上から数キロメートルの長距離より船影を確認する。
「船影だわ…」
(異国の…軍船かしら?)
形状的には木造の帆船であり髑髏の旗印が確認出来る。
(ひょっとして私が千里眼の妖術で発見した海賊船かしら?)
桜花姫は両目を瞑目させると船内から僅少の魔力を感じる。
(海賊船の船内からアクアヴィーナスの妖力を感じるわ…)
海賊船の船内よりアクアヴィーナスの妖力を察知…。木造の帆船がアクアヴィーナスを誘拐した海賊船であると確信する。
(短時間で奴等を蹴散らしましょう…)
桜花姫は変化の妖術を発動…。全長数十メートル規模の巨大真蛸の妖怪海坊主に変化したのである。
(妖怪海坊主に変化して海賊達を征伐しましょう♪)
桜花姫は即座に潜水するなり…。海中から恐る恐る海賊船に接近する。同時刻…。海賊船甲板の見張り役が数キロメートルの遠距離から正体不明の物体が潜水したのを発見したのである。
「数キロメートルの西海から正体不明の物体が海中に潜水したぞ…」
見張り役の発言に乗組員達が反応する。
「ん?正体不明の物体だと?」
乗組員の一人が双眼鏡で西方の海面上を確認するのだが…。
「何も確認出来ないぞ…単なる見間違いだろ…」
直後である。海賊船の船体全体がグラグラッと震動したのである。
「うわっ!」
「一体何が!?」
すると直後…。甲板より巨大真蛸の触手が出現するなり海賊船の甲板に密着する。
「ひっ!」
「此奴は触手!?」
数秒後…。海賊船の左舷中央から数十メートルサイズの巨大真蛸が海面上より出現したのである。
「うわっ!此奴はクラーケンか!?」
海賊船の乗組員達は突如として出現した巨大真蛸に驚愕する。
「即刻カノン砲を用意しろ!クラーケンを仕留めろ!」
同時刻…。船内の密室にて気絶したアクアヴィーナスであるが船体の震動により目覚めたのである。
「ひっ!」
(一体何が!?)
船体の震動にビクビクする。
(ウェンディーネ母様…桜花姫…私…死にたくないよ…)
極度の恐怖心からかアクアヴィーナスの涙腺より涙が零れ落ちる。海賊船の海賊達は突如として出現した巨大真蛸にカノン砲を発砲する直前…。巨大真蛸は体表から発生した白煙に覆い包まれポンッと一瞬で消滅したのである。
「なっ!?クラーケンが消滅しやがったぞ!」
「先程の光景は…幻影だったのか?」
すると直後…。
「なっ!?」
海賊船の左側の甲板には着物姿の小柄の女性が佇立する。
「此奴は異国の小娘か!?」
「貴様は一体何者だ!?如何してこんな場所に…」
海賊達は警戒した様子で恐る恐る女性に近寄る。すると女性は笑顔で…。
「私は最上級妖女の桜花姫…月影桜花姫よ♪」
桜花姫は笑顔で名前を名乗ったのである。
「月影桜花姫だと?」
「先程のクラーケンの正体は貴様だったのか!?」
桜花姫は問い掛けられるも…。
「えっ?クラーケンって?」
「異国の魔女が!貴様を打っ殺す!」
乗組員の一人が護身用のピストルを入手するなり桜花姫に発砲したのである。桜花姫は妖力の防壁を発動…。発砲されたピストルの弾丸を無力化したのである。
「此奴!魔法で本体をガードしやがったのか!?」
すると桜花姫は無表情で…。
「私に手出しする愚者には…」
変化の妖術を発動する。
「あんたは桜餅に変化しなさい♪」
直後…。ピストルを所持した船員が小皿に配置された桜餅に変化させられたのである。
「えっ!?魔法なのか!?」
「人間が…異国のスイーツに!?」
海賊達は恐る恐る後退りする。
「此奴は魔法で俺達の仲間を異国のスイーツに変化させたのか…」
海賊達は恐怖心によりプルプルしたのである。
「此奴は女体の怪物だ!逃げろ!」
女体の怪物発言に桜花姫はピクッと反応する。
「誰が女体の怪物ですって!?地上界の女神様である私に女体の怪物なんて…失礼しちゃうわね…」
桜花姫は逃走する海賊達を睥睨するなり…。
「あんた達は全員…ショートケーキに変化しなさい♪」
変化の妖術を発動すると海賊船の乗組員達全員がショートケーキに変化させる。桜花姫は変化の妖術によってショートケーキに変化させた海賊船の乗組員達をパクパクと食い殺したのである。
「妖力が回復したわね♪」
ショートケーキを完食すると消耗した妖力が回復する。
「誘拐されたアクアヴィーナスを救出しないとね♪」
桜花姫はアクアヴィーナスの魔力を感じる密室へと移動したのである。数分後…。密室のドアへと到達する。
「室内から彼女の妖力を感じるわね…」
桜花姫は念力の妖術を発動するとロックされたドアを開放したのである。
「アクアヴィーナス?大丈夫?」
「えっ…桜花姫!?」
アクアヴィーナスはホッとしたのか脱力する。
「大丈夫かしら?アクアヴィーナス?」
桜花姫はアクアヴィーナスに近寄る。
「桜花姫…」
アクアヴィーナスは力一杯彼女に密着すると涙腺から涙が零れ落ちる。
「桜花姫…私…身売りされちゃうかと…」
「安心しなさい♪海賊達は征伐したから…」
「感謝するわね…桜花姫…」
「あんたの母様も相当心配したのよ…人一倍小心者のあんたが海賊団に誘拐されたからね♪」
「ウェンディーネ母様が…」
すると桜花姫は口寄せの妖術を発動…。無人島にて待機中であった母親のウェンディーネが海賊船の密室にて強制的にテレポーテーションされたのである。
「えっ!?一体何が?」
ウェンディーネは突然の出来事に驚愕する。
「口寄せの妖術で母様を口寄せしたのよ♪」
「えっ?桜花姫様が私を…」
ポカンとするウェンディーネであるが…。アクアヴィーナスが恐る恐る近寄る。
「母様…」
「アクアヴィーナス…」
ウェンディーネは力一杯アクアヴィーナスに密着したのである。
「アクアヴィーナス!無事で良かった…」
ウェンディーネは涙腺から涙が零れ落ちる。
「御免なさいね…ウェンディーネ母様…心配させちゃって…」
「気にしないでアクアヴィーナス…貴女が無事なのが何よりよ…」
「一件落着ね♪」
桜花姫は一息するなり…。
「兎にも角にも…事件は無事に解決したから私は退散するわね♪」
直後である。アクアヴィーナスは恐る恐る…。
「桜花姫?」
「何よ?アクアヴィーナス?」
「折角だし…アクアユートピアでショートケーキでも…如何かしら?」
「えっ!?ショートケーキですって!?」
「前回は何も謝礼が出来なかったからね…今回こそは桜花姫に謝礼したいの…」
桜花姫は大喜びした様子であり笑顔で承諾したのである。
「即刻アクアユートピアに移動しましょう♪ショートケーキ食べたいわ♪」
「桜花姫には感謝したくても感謝し切れないからね…」
彼女達は人魚に変化すると深海底地帯のアクアユートピアへと直行する。
メンテ
桜花姫 ( No.33 )
日時: 2021/08/17 09:46
名前: 月影桜花姫

第九話

大黒島

アクアヴィーナス救出作戦から五日後の真夜中の出来事である。北国の最北端に位置する大黒島で無数の悪霊が出現…。大黒島を占拠したのである。翌日の真昼…。大黒島の悪霊出現の噂話を熟知した桜花姫は即座に北国へと直行したのである。
「大黒島に悪霊が出現するなんて…」
大黒島は今現在でこそ大勢の漁民達が移住する離島であるが…。大昔の戦乱時代では罪人達が配流された場所として有名である。
「今回は一体何が出現したのかしら?」
二時間後…。桜花姫は北国の海岸へと到達する。海岸の砂浜から海面上を眺望したのである。
「大黒島かしら?」
海面上を眺望し続けると小規模の孤島を発見する。
「大黒島っぽいわね…」
海岸の砂浜から大黒島への距離は推定五キロメートルの長距離であるが…。大黒島から漁民達の無数の鮮血と霊力を感じる。
(無数の鮮血と霊力を感じるわ…)
「大黒島の漁民達は悪霊に食い殺されたみたいね…」
桜花姫は即座に変化の妖術を発動…。人魚に変化したのである。
「悪霊を征伐するわよ…」
桜花姫は人魚の状態で海面上を力泳…。大黒島へと直行したのである。大黒島へは数分間で到達する。
「到着したわね♪」
人魚の状態から元通りの姿形に戻ったのである。大黒島は非常に物静かであるが…。無数の霊力が徘徊するのを感じる。
「悪霊の気配だわ…」
桜花姫は即座に警戒…。天道眼を発動する。すると数秒後である。周囲の砂浜より数十体もの食人餓鬼が出現…。桜花姫を注視したのである。
「食人餓鬼だわ♪」
(早速出現したわね♪)
悪霊の出現に大喜び…。数十体の食人餓鬼が桜花姫に殺到し始める。
「あんた達は無謀ね…」
桜花姫は彼等の行動に呆れ果てる。
「あんた達は桜餅に変化しなさい♪」
殺到する無数の食人餓鬼に変化の妖術を発動…。食人餓鬼は数十個の桜餅と小皿に変化したのである。
「桜餅に変化したわね♪」
(消耗しちゃった妖力を回復させたいからね♪早速頂戴するわよ♪)
桜花姫は周辺の桜餅をパクパクッと食べ始める。数分後…。桜餅を完食する。
(妖力は回復したし…)
「悪霊を征伐しましょう♪」
桜花姫は住宅街へと移動したのである。
「住宅街から無数の妖力を感じるわね…」
(今度は何が出現するのかしら?)
同時刻…。
「はぁ…はぁ…」
大黒島の住宅街にて一人の村娘が無数の悪霊から逃走する。
(逃げないと…悪霊に食い殺されちゃう…)
村娘はとある住居へと進入…。潜伏したのである。恐怖心からか全身が身震いする。
(私…如何すれば…)
すると直後…。戸口よりガタガタッと物音が響き渡る。
「ひっ!」
(死にたくないよ…父ちゃん…母ちゃん…)
村娘は涙腺より涙が零れ落ちる。
「可愛らしい少女ね♪」
「えっ?」
恐る恐る背後を直視…。彼女の背後には花魁らしき女性が家屋敷の居間でビクビクする村娘を凝視し続ける。
「えっ…誰なの?」
花魁は非常に妖美の雰囲気であるが…。
「私はあんたみたいな純粋無垢の少女が大好きなのよ♪大人しく私に食べられちゃいなさい♪」
花魁の発言に極度の恐怖心を感じる。
「ひっ!」
(悪霊!?)
花魁は人外であると察知…。即座に家屋敷から脱走したのである。必死に逃走するのだが…。
「私からは逃げられないわよ♪」
先程遭遇した花魁が路地裏にて再度遭遇する。
「えっ!?」
(如何して…)
村娘は恐る恐る後退りしたのである。すると背後には二体の食人餓鬼がふら付いた身動きで村娘に近寄る。
「悪霊!?」
直後…。村娘は花魁に捕捉されたのである。
「きゃっ!」
「好い加減観念しなさい♪」
「きゃっ!誰か!誰か!」
村娘は必死に抵抗するものの…。花魁の女性は外見とは裏腹に非常に力強く村娘の力量では抵抗すら出来ない。
「村里で無事なのはあんただけね♪あんたの清心を頂戴するわね♪」
花魁は赤面した表情で無理矢理に接吻…。
「ぐっ!」
花魁に口移しされた直後である。村娘は全身が脱力…。意識が喪失した状態で地面に横たわる。花魁は満足気に…。
「美味しいわね♪女子の清心は純真無垢だから非常に美味だわ♪」
村娘の清心を完食した花魁は即座に退散したのである。数分後…。桜花姫が路地裏にて地面に横たわる村娘を発見する。
「彼女は村娘かしら?」
恐る恐る彼女に接触…。
「仮死状態ね…即刻悪霊を仕留めないと彼女が衰弱死するわ…」
直後である。突如として周囲より無数の気配を感じる。
「霊力かしら?」
すると地面より十数体もの食人餓鬼が出現する。
「毎度毎度…鬱陶しいわね…」
十数体の食人餓鬼が桜花姫に殺到したのである。
「はぁ…」
桜花姫は呆れ果てるものの…。
「砂金に変化しなさい…」
砂金の妖術を発動する。すると殺到する十数体の食人餓鬼がサラサラの砂金に変化…。一瞬で崩れ落ちる。
「楽勝♪楽勝♪」
食人餓鬼を一蹴した桜花姫であるが今度は背後から五体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「今度は百鬼食人餓鬼かしら?」
無数の食人餓鬼の顔面が桜花姫を睥睨したのである。
(私を殺したいみたいね…)
百鬼食人餓鬼は全身の食人餓鬼の顔面から高熱の熱風を放出…。桜花姫に攻撃したのである。
「熱風?」
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
「あんた達は…」
再度変化の妖術を発動…。五体の百鬼食人餓鬼を大好きな桜餅に変化させる。
「妖力が消耗しちゃったからね♪」
再度桜餅をパクッと頬張り始める。
「満腹♪満腹♪」
桜花姫は満足するが…。
「えっ?」
(殺気!?)
今度は人間達の殺気を感じる。
(人間達の殺気だわ…)
再度警戒する。直後…。周囲の家屋より十数人の刃物を所持した漁民達が桜花姫を包囲する。
「何よ?あんた達…」
(村人達かしら?)
彼等の表情は無表情であり人形みたいな雰囲気だったのである。
(人形みたいだわ…何者かに憑霊されたのかしら?)
漁民達が桜花姫に殺到する。
「仕方ないわね…」
桜花姫は即座に睡眠の妖術を発動…。睡眠の妖術を発動すると殺到する漁民達はバタッと横たわる。
「全員熟睡したみたいね…」
(えっ?)
背後より気配を感じる。
(気配だわ…悪霊かしら?)
恐る恐る背後を警戒…。背後には色白の花魁らしき女性が佇立する。
(花魁かしら?)
花魁の女性は桜花姫を直視するなりニコッと微笑む。桜花姫は恐る恐る…。
「あんたは悪霊の亡霊新婦ね…」
(幻術で村人達を傀儡人形みたいに操作したのかしら?)
亡霊新婦は亭主に殺害された令夫人の悪霊である。人語で会話も可能であり幻術を駆使出来る。亡霊新婦は人語で返答したのである。
「あんたは妖女の月影桜花姫かしら?折角だからあんたの清心も頂戴するわね♪」
「出来るかしら?私は最上級妖女なのよ…」
「勿論私だけでは最上級妖女のあんたを仕留められないからね…」
直後…。
「あんた達♪出番よ♪」
すると周辺の地面より数十体もの食人餓鬼が再度出現する。
「食人餓鬼?」
(如何やら幻術で操作したのね…)
亡霊新婦は幻術により悪霊さえも傀儡人形として利用出来る。
「こんな奴等で私を仕留めるなんて…あんたは余程のお馬鹿さんみたいね♪」
桜花姫は即座に氷結の妖術を発動…。周囲の食人餓鬼を凍結化させる。全身を凍結化された食人餓鬼は肉体がバリバリッと崩れ落ちる。
「此奴なら如何かしら?」
すると目前の地面より巨大能面が出現したかと思いきや…。八本の蜘蛛脚が生成される。
「えっ…此奴は…」
桜花姫も突如として出現した巨大能面にドキッとする。
「此奴は…小面蜘蛛…」
普段は霊性の桜花姫であるが…。突然の小面蜘蛛の出現により恐る恐る後退りする。
「桜花姫♪先程の威勢は如何しちゃったのかしら♪」
桜花姫にとって小面蜘蛛はトラウマであり恐怖心からか身震いしたのである。
「小面蜘蛛にあんたの妖術は通用しないわよ♪大人しく小面蜘蛛に食い殺されちゃいなさい♪」
すると小面蜘蛛は口先から蜘蛛糸を放出…。
「きゃっ!」
桜花姫を拘束したのである。蜘蛛糸で拘束された直後…。
「ぐっ!」
(妖力が…消耗するわ…)
身動き出来ないばかりか体内の妖力が吸収されたのである。
(衰弱死しちゃうわ…)
桜花姫は衰弱化…。バタッと横たわったのである。亡霊新婦が横たわる桜花姫に近寄る。
「早速…あんたの清心を頂戴するわね♪」
亡霊新婦は赤面した表情で…。身動き出来なくなった桜花姫に接吻したのである。
「ぐっ…」
スーッと全身が脱力…。桜花姫は意識が遠退き始める。
「美味しいわね♪あんたの清心も♪」
亡霊新婦は接吻により桜花姫の清心を吸収…。大喜びしたのである。
「えっ?」
直後…。突如として気味悪くなり亡霊新婦は吐血したのである。
「ぎゃっ!」
吐血した亡霊新婦は横たわった桜花姫を睥睨するなり…。
「如何やら彼女…純粋無垢とは程遠いみたいね…邪心だらけだわ…」
直後である。横たわる桜花姫の肉体から白煙が発生…。ポンッと消滅したのである。
「えっ!?一体何が!?」
すると亡霊新婦の背後より…。
「誰が邪心ですって?」
背後には桜花姫が佇立する。
「あんたは桜花姫!?」
「残念だったわね♪あんたが接吻したのは私の分身体よ♪」
「分身体だと!?」
亡霊新婦は畏怖したのは恐る恐る後退りしたのである。
「地上界の女神様である私を…邪心なんて失言するあんたは…」
桜花姫は変化の妖術を発動…。亡霊新婦は桜餅に変化したのである。
「妖力が通用しないあんたは…」
口寄せの妖術を発動…。上空より無人の小型爆撃機を口寄せしたのである。小型爆撃機は小面蜘蛛に爆弾一発を投下…。小面蜘蛛はバラバラに粉砕されたのである。亡霊新婦と小面蜘蛛を仕留めた影響からか大黒島の霊力が感じられなくなる。
(大黒島の霊力が消失したわ…)
「事件は無事解決ね♪」
桜花姫はパクッと桜餅を頬張る。数秒間が経過すると亡霊新婦に傀儡人形として利用された漁民達は勿論…。
「えっ?私は一体…」
先程亡霊新婦に清心を奪取された村娘も意識が戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.34 )
日時: 2021/08/17 09:47
名前: 月影桜花姫

最終話

因縁

大黒島での戦闘から一週間後の早朝…。僧侶の三蔵郎は室内を清掃するのだが摩訶不思議の刀剣を発見したのである。
「えっ?ひょっとして刀剣でしょうか?」
三蔵郎は恐る恐る刀剣に接触する。
「なっ!?名刀の『霊斬刀』では!?」
霊斬刀とは国宝級の名刀であり戦乱時代の英雄…。夜桜崇徳丸が所持した牢固石の刀剣である。戦乱時代では単なる刀剣として扱われるも崇徳丸の死後…。神出鬼没の悪霊を征伐する名刀霊斬刀と命名されたのである。当時怨敵であった南国と北国からは今現在でも不吉の妖刀と皮肉られる。
「如何してこんな国宝級の代物が…私の寺院に?」
不思議がる三蔵郎であるがフッと想起するなり…。
「一昨年に知人に贈呈された代物でしたね♪」
一昨年に知人から霊斬刀を頂戴した内容を忘却したのである。
「清掃中に霊斬刀を発見したのは何かしらの運命なのかも知れませんね♪」
(折角なので…記念品として私の自室にでも装飾しますかね♪)
三蔵郎はルンルンした気分で自室の屏風に霊斬刀を装飾する。
「ですが霊斬刀が千年前の代物なんて…私には想像も出来ませんね…」
三蔵郎は霊斬刀に魅了される。
(こんな刀剣で大勢の悪者達を撃退出来れば…本物の武士みたいに大勢の村人達に敬愛されるのですがね…)
三蔵郎は妄想したのである。
「明日の早朝…暇潰しに西国の国境で素振りするのも悪くないですね♪」
翌日の早朝…。三蔵郎は霊斬刀を所持するなり東国と西国の国境に位置する山道へと移動したのである。恐る恐る周囲の人通りを警戒する。
「早朝であれば国境の山道でも人通りは少数ですし大丈夫でしょうね…」
時間帯は早朝で人通りも皆無であり三蔵郎は力一杯素振りしたのである。
「常日頃の気苦労も解消出来ますし…最高ですね♪」
(私も歴史人物の夜桜崇徳丸様みたいに大勢の悪者達を撃退して…誰かを守護したいですな♪)
三蔵郎にとって戦乱時代に活躍した崇徳丸は憧憬の対象であり三蔵郎は彼を意識する。無我夢中に何度も何度も素振りを反復し続けたのである。
(悪霊でも出現しませんかね?)
「霊斬刀で悪霊を仕留められるのであれば是非とも霊斬刀で悪霊を仕留めたいですな♪」
すると直後…。突如として極度の胸騒ぎを感じたのである。
「なっ!?」
(胸騒ぎでしょうか…)
突如として極度の死臭と強烈なる殺気が此方に接近するのを感じる。
(極度の死臭と殺気…一体何が?)
正体不明の不吉の気配は刻一刻と山道へと急接近する。数秒後…。全身が血塗れで規格外に巨体の野犬が国境の山道に出現したのである。
「えっ…野犬!?」
(巨体だな…)
左側の前頭部が白骨化した状態であり巨体の野犬は正真正銘悪霊であると認識出来る。
(此奴は…野犬の悪霊なのか!?)
口先には咀嚼された肉片らしき物体を確認…。何かを捕食したのであると推測する。
「悪霊は遭遇した野獣を食い殺したのでしょうか?」
三蔵郎は極度の恐怖心により恐る恐る後退りする。
(人間の私でも感じられる強烈なる殺気…非常に厄介かも知れませんね…)
殺されるかも知れないと危惧するのだが…。野犬の悪霊と対峙すると不自然にも霊斬刀がカタカタッと震え始める。
「えっ!?霊斬刀が…」
(ひょっとして私に野犬の悪霊を仕留めろと…)
逃亡出来るのであれば一目散に逃亡したい三蔵郎であるが…。
(現在地は東国と西国との国境…私が逃亡すれば東国にも西国にも悪影響が…)
戦闘を放棄して逃亡すれば命拾いは出来るものの戦闘を放棄すれば確実に大勢の村人達が悪霊によって惨殺されるのは明白である。
(私が逃亡すれば東国は勿論…西国にも被害が及びましょう…何よりも西国は桜花姫様が安住される桃源郷…)
「全身全霊私が死守しなくては!」
三蔵郎は決意する。三蔵郎の表情が変化すると野犬の悪霊がピクッと反応したのである。野犬の悪霊はギロッと三蔵郎を睥睨するなり…。
「なっ!」
野犬の悪霊は猛スピードで突進したのである。三蔵郎は咄嗟に野犬の悪霊の突進を間一髪回避…。野犬の悪霊は一直線に突進するなり三蔵郎の背後の岩壁へと突っ込んだのである。
(危機一髪…こんなのに突進されたら全身が粉砕されますね…)
野犬の悪霊の突進によって頑強なる岩壁が抉れる。三蔵郎は神速により野犬の悪霊の背後へと移動するなり背後から霊斬刀で斬撃する。
(悪霊を仕留めたか!?)
手応えは感じるものの…。野犬の悪霊の姿形がパッと消滅する。
(ひょっとして先程の姿形は残像なのか!?)
野犬の悪霊は神速によって三蔵郎の斬撃を回避したのである。
「残像だったか…」
野犬の悪霊は一瞬で三蔵郎の背後へと移動する。野犬の悪霊がギロッと睥睨した直後…。
「えっ?」
霊斬刀がピカッと蛍光色に発光したのである。
(霊斬刀が発光した…)
すると全身に重苦しい殺気を感じる。天空一面が黒雲により覆い包まれる。
(天空が…)
直後…。ピカッと落雷が三蔵郎の頭上より落下したのである。
「落雷!?」
三蔵郎は咄嗟の判断により落雷の回避に成功する。
「危機一髪だった…」
(ひょっとして霊斬刀は私に生命の危機を予知したのか…)
すると突然…。
「貴様は僧侶の身分であるが…彼奴に酷似する…」
突然人間の口言葉で発語した野犬の悪霊に驚愕したのである。
「なっ!悪霊は人語で喋れるのか!?」
「貴様も彼奴と同様の反応であるな…」
「彼奴とは…誰なのでしょうか?」
野犬の悪霊は即答する。
「夜桜崇徳丸と名乗る…愚劣なる人間の若武者である…」
(夜桜崇徳丸だって!?)
夜桜崇徳丸の名前を傾聴した直後…。三蔵郎は何が何やら困惑したのである。
「ひょっとすると僧侶の貴様は…戦乱時代の夜桜崇徳丸と名乗る武士の再来であるな…」
野犬の悪霊の発言に三蔵郎は絶句する。
(私が…崇徳丸様の再来ですと!?)
「雰囲気もだが…醜悪なる人間としては非常に清心であるからな…貴様は崇徳丸に共通する…」
(ですが私の前世が夜桜崇徳丸様ですか♪)
崇徳丸の再来である事実に三蔵郎は内心大喜びしたのである。三蔵郎は恐る恐る…。
「貴方様は一体何者でしょうか?」
問い掛けられた野犬の悪霊は即答する。
「私は死霊餓狼…千年前に醜悪なる人間によって惨殺された野犬の亡霊とでも…」
「死霊餓狼…」
死霊餓狼とは極悪非道の人間に惨殺された野犬の亡霊と認識される反面…。汚染された自然界から誕生した悪霊の集合体とも呼称される。共通する伝承では死霊餓狼は人間達に憎悪…。死霊餓狼と遭遇した人間は確実に食い殺されるのが通説である。死霊餓狼の肉体を死滅させたとしても死霊餓狼の呪力は本体を死滅させた人間に憑霊…。憑霊された人間に大勢の人間達を呪力で殺させる。大勢の人間達を殺害すると最終的には死霊餓狼の呪力に憑霊された人間の肉体は腐敗…。腐敗した肉体は確実に崩れ落ちる。
(悪霊は悪霊でも最初に遭遇した悪霊が死霊餓狼なんて…私は人一倍不運ですね…)
「ですが如何して今更死霊餓狼が出現したのですか?」
死霊餓狼は一瞬沈黙するなり…。
「今迄に愚劣なる人間の亡者達を利用したが…結局貴様達愚劣なる人間達を呪殺出来なかったからな…私自身が直接的に愚劣なる人間達を全滅しに顕現したのだ…」
死霊餓狼の発言に三蔵郎はピクッと反応する。
「ひょっとして今迄出現した悪霊は死霊餓狼が…」
死霊餓狼は即答したのである。
「勿論…半年前に世界樹である霊魂巨神木に憑霊して…大勢の亡者達を利用したのも私自身であるからな…」
「貴様が黒幕だったのか…」
霊魂巨神木は本来純粋無垢で無害の樹木であるが死霊餓狼の怨念が無害の霊魂巨神木に憑霊…。戦乱時代で死去した大勢の亡者達を復活させ各地の村人達を襲撃させたのである。
「結局…崇徳丸の花嫁の再来によって阻止されたが…」
「崇徳丸様の花嫁の再来とは…」
(ひょっとすると…桜花姫様でしょうか?)
三蔵郎は桜花姫を連想する。
「如何やら今回は幸運にも崇徳丸の花嫁の再来は不在であるからな…非常に好都合である!」
「ですが今回は私が全身全霊で貴方様の野望を阻止しますよ!今度も各地の村里を襲撃するみたいですからね!」
三蔵郎は強気で返答したのである。
「随分強気であるな…手始めに貴様を呪殺して…愚劣なる人間達を殲滅するか…」
(僧侶を呪殺して僧侶の肉体に憑霊すれば…花嫁の再来とて迂闊には手出し出来なくなるからな…)
死霊餓狼は口先より高熱の火球を発射したのである。
「死滅せよ!崇徳丸の再来!」
(火球!?)
三蔵郎は高熱の火球を一刀両断…。高熱の火球を斬撃したのである。両断された火球は三蔵郎の背後にて爆散…。背後の地面にはクレーターが形作られる。
(こんなのが直撃すれば即死でしょうね…)
火球の灼熱によって霊斬刀の白刃が赤化する。
「牢固石の白刃が高熱で赤化するなんて…」
(普通の刀剣なら確実に屈折するでしょうね…)
「今度こそ死滅しろ!崇徳丸の再来!」
死霊餓狼は再度口先から高熱の火球を発射したのである。
「なっ!?」
三蔵郎は咄嗟に火球を回避する。
(畜生…間一髪回避したか…)
「愚劣なる人間の分際で私の攻撃を回避するとは…貴様が崇徳丸の再来なのは決定的であるな…」
死霊餓狼は力一杯睥睨するなり…。
「崇徳丸の再来!」
(今度こそ死滅しろ!)
死霊餓狼は全身全霊で突進する。相手は猛スピードであり三蔵郎は回避出来ない。
(止むを得ないな…)
三蔵郎は咄嗟の斬撃で死霊餓狼の右側の前脚を斬撃したのである。
「ぎゃっ!」
間一髪死霊餓狼の右側の前脚を斬撃…。死霊餓狼の突進攻撃を無力化したのである。
(一歩間違えれば殺されたのは私だったでしょうね…)
死霊餓狼はバタッと地面に横たわる。三蔵郎は恐る恐る衰弱化した死霊餓狼へと近寄る。
(死霊餓狼を仕留めれば…東国も西国も無事に守護出来る…)
「戦乱時代の悪霊…成仏せよ…」
斬撃する寸前…。
「えっ!?」
三蔵郎は斬撃したいが死霊餓狼の悲哀の表情を直視すると殺せなくなる。
(私には殺せないな…死霊餓狼を仕留めなければ東国と西国の大勢の村人達が殺害されるかも知れないのに…)
相手が悪霊であっても衰弱化した表情を直視すると心苦しくなる。
「悪霊を相手に躊躇いとは…所詮貴様の慈悲は崇徳丸と同様であるな…貴様の躊躇いが愚劣なる人間達の殺戮に直結するのに…」
「なっ!?」
三蔵郎はゾッとしたのか極度の胸騒ぎを感じる。
(強烈なる殺意…死霊餓狼は一体何を?)
三蔵郎は警戒するなり恐る恐る後退りする。
「崇徳丸の再来よ…貴様の身動きを封殺する…」
「身動きを封殺ですと!?」
すると突然…。
「ぐっ!」
(一体何が!?)
突如として三蔵郎は身動き出来なくなる。
(ひょっとして金縛りか?身動き出来なくなるなんて…)
「金縛りで貴様の身動きを封殺した…最早身動きは出来まい…」
死霊餓狼は一息するなり…。
「貴様の肉体に憑霊する…最早野犬の肉体も不必要だ!」
すると死霊餓狼の肉体から黒煙が発生するなり三蔵郎の肉体へと憑霊する。
(なっ!?)
死霊餓狼の肉体から発生した黒煙こそが死霊餓狼の本体であり三蔵郎の肉体へと憑霊したのである。
「ぐっ!」
(視界が…)
三蔵郎は意識が喪失する。数秒後…。野犬の肉体が崩れ落ちる。
「人間の肉体に憑霊したな♪」
(人間は人間でも私が憎悪する崇徳丸の再来であるからな♪)
死霊餓狼は大喜びする。
「即刻愚劣なる人間達を呪殺したいが…」
(手始めに崇徳丸の花嫁の…再来から呪殺するか…)
死霊餓狼の霊体は三蔵郎の肉体に憑霊した状態で西国の村里へと直行したのである。同時刻…。
「えっ?何かしら?」
(霊力?)
桜花姫は自宅で昼寝したものの極悪非道の霊力を察知するなり起床する。
「無数の霊力を感じるわ…」
(東国との国境に悪霊が出現したのかしら?)
直後…。
「えっ!?」
霊力が突然パッと消失するなり感じられなくなる。
(如何して突然霊力が消失したのかしら?)
桜花姫は警戒したのかソワソワする。直後である。
「きゃっ!」
突然の板戸のノックに驚愕する。
(吃驚するじゃない…)
桜花姫は玄関の板戸へと移動するなり…。
(一体誰かしら?)
「何よ?」
彼女は恐る恐る玄関の板戸を開放すると玄関口には刀剣を所持した三蔵郎が佇立する。
「えっ!?三蔵郎様?」
突然の三蔵郎の訪問に桜花姫は驚愕したのである。
「三蔵郎様が私の家屋敷に訪問するなんて…」
何よりも気になるのは血塗れの刀剣であり僧侶である三蔵郎が如何してこんな代物を所持するのか非常に気になる。
(物騒だわ…如何して三蔵郎様は血塗れの刀剣を?)
三蔵郎の表情を直視すると無表情であり桜花姫は警戒した様子で恐る恐る後退りする。
(相手は三蔵郎様なのに…不吉だわ…)
人一倍温柔敦厚の三蔵郎が別人みたいに感じられる。
(普段の三蔵郎様とは別人みたいだわ…ひょっとして三蔵郎は前回みたいに何者かによって憑依されちゃったのかしら?)
桜花姫は三蔵郎を睥睨するなり…。
「あんたは一体何者よ?姿形は三蔵郎様本人でも…中身は別物よね?」
すると三蔵郎らしき人物が発言し始める。
「最上級の妖女である貴様には通用しまいか…一瞬で見破られるとは…」
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る後退りするなり…。
「はっ?あんたは一体何者なのよ?」
三蔵郎らしき人物は即答する。
「私が誰かって?私は死霊餓狼…半年前に貴様によって成仏させられた悪霊の片鱗とでも…」
「悪霊の片鱗?死霊餓狼ですって?」
桜花姫は何が何やら理解出来なかったのか珍紛漢紛だったのである。
「私は半年前に世界樹の霊魂巨神木に憑霊した悪霊…所謂悪霊の集合体だよ…」
「霊魂巨神木!?」
桜花姫は霊魂巨神木の一言にピクッと反応する。
「あんたが霊魂巨神木に憑霊した悪霊の正体だったのね…」
「無論であるが…貴様の神通力で霊体の九分九厘が浄化されたのは非常に無念であるぞ…」
「今現在のあんたは悪霊の集合体の…残滓なのね…」
死霊餓狼は余裕の態度であり表情が変化しない。
「如何やら今現在の貴様は半年前みたいに莫大なる神通力を使用出来ないみたいだな…最強の妖女である貴様さえ呪殺出来れば愚劣なる人間達の殲滅は片手間である…」
(今現在の僧侶の肉体が死滅したとしても…再度別の人間に憑霊するだけだからな♪誰であっても私は仕留められない…相手が崇徳丸の花嫁でも♪)
本来死霊餓狼の本体は不定形の霊体であり多種多様の生命体は勿論…。多種多様の器物にも憑霊出来る。
「自身を最上級の妖女と豪語する貴様でも…私が憑霊した僧侶には手出し出来ないであろう♪」
桜花姫はピクッと反応する。
(私でも三蔵郎様には妖術なんて使用出来ないわ…一体如何すれば…)
困惑した桜花姫に死霊餓狼は失笑したのである。
「如何やら貴様は本当に手出し出来ないみたいだな♪」
(崇徳丸の再来に憑霊したのは正解であったな♪憑霊したのが別人であれば猛反撃されただろうが…)
死霊餓狼は霊斬刀で桜花姫の右手首を斬撃…。
「きゃっ!」
掠り傷であったが桜花姫はバタッと横たわったのである。
「最上級の妖女である貴様にとって…こんな人間の僧侶は妖術を駆使すれば簡単に仕留められるのに勿体無いな♪所詮貴様は妖術が使用出来なければ何も出来ない小娘同然なのだ♪」
(三蔵郎様…)
極度の悲痛により桜花姫は精神的に参ったのか落涙する。
「崇徳丸の花嫁の再来よ…本日が貴様にとって命日である!貴様が家族と豪語する人間の僧侶によって貴様は惨殺されるのだ!」
(勿論貴様の家族である僧侶も呪殺するから無間地獄で再会出来るが♪)
霊斬刀で斬撃される寸前…。
「ぐっ!」
突如として両手が氷結したのである。
「なっ!?氷結だと!?」
死霊餓狼の両手が突然の氷結により両手が使用出来なくなる。
「えっ!?氷結?」
「危機一髪だったわね…桜花姫♪」
死霊餓狼の背後には水色の着物姿の花魁が佇立する。
(えっ?花魁?)
「誰なの?ひょっとしてあんたも妖女かしら?」
花魁は笑顔で…。
「私よ…私♪粉雪妖女の氷麗姫よ♪」
「えっ!?あんたは…粉雪妖女の氷麗姫だったの!?」
粉雪妖女の氷麗姫は口寄せの妖術で復活してからは花魁として活動中だったのである。雰囲気が以前とは別人であり桜花姫は驚愕する。
(花魁の正体が氷麗姫だったなんて…一瞬別人かと…)
「氷麗姫…如何してあんたが?」
「西国の村里から薄気味悪い霊力を察知したのよ…場所があんたの家屋敷だったのは正直意外だったけどね♪」
「半年前は敵対者だったあんたが私に助太刀するなんて…」
桜花姫は氷麗姫の行動に意外であると感じる。死霊餓狼は恐る恐る背後を凝視するなり氷麗姫を睥睨したのである。
「如何やら貴様も…妖女の小娘みたいだな…」
「あんたは人間の僧侶みたいだね…桜花姫に手出しするなら私は手加減しないわよ!」
「氷麗姫!三蔵郎様には手出ししないで!」
氷麗姫は強気の様子であったが桜花姫は氷麗姫に切願する。
「えっ!?僧侶はあんたを殺そうと…」
「三蔵郎様は悪霊に憑霊されただけなの!彼を殺さないで…」
氷麗姫は瞑目するなり…。
(彼自身は普通の人間なのに僧侶の肉体から亡者達の霊力が感じられるわね…)
「僧侶は極悪非道の悪霊に憑霊されちゃったのね…」
彼女は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「桜花姫?悪霊を除霊するとか…変化の妖術で僧侶を食い殺してから口寄せの妖術で再度僧侶を元通りに復活させるとか出来ないの?」
氷麗姫に問い掛けられた桜花姫であるが彼女は困惑した表情で…。
「生憎除霊の妖術は出来ないの…変化の妖術で三蔵郎様を桜餅に変化させて食べちゃえば簡単だけど…人一倍食いしん坊の私でも三蔵郎様を食い殺すなんて出来ないわ…」
(桜花姫にとって悪霊に憑霊された僧侶は余程大切なのね…)
氷麗姫は一瞬意外であると感じる。
(僧侶の身動きは封殺出来ても…私には除霊なんて出来ないし一体如何すれば?)
氷麗姫は困惑した直後…。
「如何やら間に合ったね♪」
「悪者は私が征伐するよ!」
「あんた達は蛇神の蛇骨鬼婆ちゃんと山猫妖女の小猫姫!?如何してあんた達が…」
「西国の村里から極悪非道の霊力を察知したからね♪」
蛇神の蛇骨鬼と山猫妖女の小猫姫も死霊餓狼の霊力を目印に桜花姫の家屋敷へと参上したのである。
「えっ?悪者は?」
小猫姫は家屋敷を警戒するものの…。
「小猫姫…悪者は…」
蛇骨鬼は苦笑いした表情で氷結により身動き出来なくなった三蔵郎を指差したのである。
「えっ?三蔵郎様でしょう?如何して刀剣を?」
蛇骨鬼は三蔵郎の肉体に憑霊した死霊餓狼を睥睨するなり…。
「死霊餓狼も執念深いね…最早戦乱時代は終焉したのに…」
(老婆の分際で…)
蛇骨鬼の発言に死霊餓狼は即答したのである。
「私を浄化したとしても愚劣なる人間達は未来永劫戦乱時代を頻発させる…愚劣なる人間達を全滅させなければ今後も自然界は汚染されるだけだぞ…」
(最早悪意の集合体である死霊餓狼に説得は無意味だね…)
死霊餓狼は亡者達の悪意の集合体であり説得は不可能であると判断する。
「覚悟しな…死霊餓狼…」
蛇骨鬼は左手が白蛇へと変化させるなり…。蛇骨鬼の白蛇が三蔵郎の肉体に接触したのである。直後…。
「ぐっ!」
(蛇神の蛇骨鬼…愚劣なる人間達によって迫害された純血の神族が人間達に加勢するとは…)
三蔵郎の肉体から不定形の黒雲が発生したのである。
「黒雲だわ…ひょっとして死霊餓狼の本体かしら?」
すると三蔵郎は意識が消失するなりバタッと横たわる。
「三蔵郎様が…」
「心配しなくても大丈夫だよ…死霊餓狼の霊体を除霊したから三蔵郎は一時的に気絶しただけだよ…」
すると小猫姫と氷麗姫がポカンとする。
「死霊餓狼の本体って?」
「私にも何が何やら…」
(小猫姫と氷麗姫には死霊餓狼の本体が認識出来ないのね…)
死霊餓狼の霊体を認識出来るのは特定の人物のみであり普通の人間は勿論…。凡庸の妖女でも死霊餓狼の霊体は認識出来ない。
「死霊餓狼の憑霊から無事に三蔵郎を解放したからかね…今度こそ桜花姫ちゃんの出番だよ♪」
桜花姫は蛇骨鬼の効力に驚愕する。
(物理的に三蔵郎様の肉体から死霊餓狼を除霊させちゃうなんて…)
驚愕した桜花姫であるが即座に変化の妖術を発動…。
「死霊餓狼!桜餅に変化しちゃえ!」
すると不定形の霊体である死霊餓狼がポンッと小皿と桜餅に変化したのである。小猫姫と氷麗姫は桜餅として実体化した死霊餓狼を直視するなり…。
「えっ!?突然桜餅が!?」
「霊体さえも桜餅に変化させちゃうなんて…桜花姫は天道の化身かしら?」
小猫姫と氷麗姫は苦笑いする。桜花姫はパクっと実体化した桜餅を頬張る。
「悪霊でも桜餅に変化させると美味だわ♪」
「本日で戦乱時代の因縁を完全に浄化させたね…桜花姫ちゃん♪」
小猫姫は蛇骨鬼に問い掛ける。
「蛇骨鬼婆ちゃん?結局死霊餓狼って何者だったの?」
「死霊餓狼は戦乱時代に人間に殺された野犬の悪霊だよ…自然界から誕生した悪霊で多種多様の怨念を吸収するから多種多様の悪霊を実体化させられるのさ♪所謂亡者達の悪意の集合体だね…」
「今迄に出現した悪霊は死霊餓狼が復活させたの?」
「勿論♪半年前に霊魂巨神木に憑霊して大量の悪霊を復活させたのも死霊餓狼の霊体だからね…半年前は桜花姫ちゃんと小猫姫の力戦で霊体の九分九厘を成仏させられたけど…今回は霊体の片鱗が三蔵郎に憑霊したみたいだね…」
すると蛇骨鬼は小声でボソッと発言したのである。
「千年前の元祖妖女…桃子姫が健康体なら死霊餓狼は完全に浄化されたのだけれどね…彼女は病弱だったから死霊餓狼を浄化し切れなかった…」
「桃子姫って誰なのよ?」
一同は桃子姫の名前に反応する。
「桃子姫は…所謂桜花姫ちゃんの前世だよ…」
桜花姫の前世の一言に一同は驚愕したのである。
「えっ!?桃子姫って妖女が桜花姫姉ちゃんの前世なの!?」
「桜花姫の前世が…元祖妖女ですって!?」
「桃子姫って妖女が…私の…前世?」
「桃子姫はね…」
蛇骨鬼は千年前の伝承である桃子姫の伝説を一部始終力説する。桃子姫の伝説を傾聴した一同は絶句したのである。
「想像以上に壮絶だったのね…戦乱時代って…」
(別に沈黙しなくても…)
沈黙した一同に蛇骨鬼は苦笑いする。
「何よりも今回で死霊餓狼は完全に浄化されたからね♪金輪際太平神国では悪霊は出現しなくなるだろうよ♪」
「えっ…」
「悪霊は金輪際出現しないのね♪」
「一安心だね♪」
小猫姫と氷麗姫は大喜びするものの…。桜花姫はパッとしなかったのか寂然の表情だったのである。こんな彼女に蛇骨鬼は恐る恐る問い掛ける。
「桜花姫ちゃん?大丈夫かい?」
「大丈夫だけれど…正直…悪霊征伐が出来なくなるから…今後は退屈だなって…」
桜花姫の発言に氷麗姫は呆れ果てる。
(退屈って…)
「あんたはお馬鹿さんね…悪霊なんて四六時中出現されたら傍迷惑でしょう!私は懲り懲りだわ!」
蛇骨鬼がボソッと発言したのである。
「今回で死霊餓狼が完全に浄化されたとしても…人間達が再度戦乱時代を頻発させた場合は第二…第三の死霊餓狼が出現するかも知れないからね…戦乱時代は絶対に阻止しないと…」
「勿論だよ!蛇骨鬼婆ちゃん!今後は私も桜花姫姉ちゃんと一緒に悪者を征伐するから安心してね!」
豪語する小猫姫に氷麗姫は苦笑いする。
(化け猫のお嬢ちゃんは…二代目の桜花姫だね…)
沈黙する桜花姫に蛇骨鬼が…。
「桜花姫ちゃんよ…あんたは金輪際匪賊征伐に専念しな♪」
桜花姫はボソッと返答する。
「勿論よ…蛇骨鬼婆ちゃん…」
すると直後…。気絶した三蔵郎が恐る恐る目覚める。
「三蔵郎様!?」
「如何やら彼が目覚めたみたいだね…」
「えっ?私は今迄一体何を?」
三蔵郎は警戒した様子でハッとするなり…。
「桜花姫様ですか!?悪霊は!?即刻悪霊を征伐しなくては!」
蛇骨鬼は笑顔でポンっと接触する。
「一安心しな…悪霊なら桜花姫ちゃんが成仏させたからあんたが心配しなくても大丈夫だよ♪」
「えっ!?桜花姫様が…悪霊を成仏させられたのですか…」
三蔵郎は一安心したのかホッとしたのである。
「桜花姫様の妖術で悪霊は無事に征伐されたのですね…一件落着ですな♪」
すると桜花姫は落涙するなり…。
「うわっ!桜花姫様!?」
桜花姫は力一杯三蔵郎の腹部に密着したのである。
「一体如何されましたか?」
「三蔵郎様!」
(桜花姫様…)
氷麗姫が恐る恐る三蔵郎に近寄る。
「あんたの名前は三蔵郎だったわね…」
「私は三蔵郎ですが…一体如何されましたか?」
氷麗姫は三蔵郎を睥睨するなり…。
「三蔵郎は悪霊に憑霊されちゃったみたいだけどあんたは桜花姫に手出しする寸前だったのよ…あんたは即刻桜花姫に謝罪しなさい!下手すれば桜花姫は殺されるかも知れなかったのよ…」
「えっ!?僧侶である私が…桜花姫様を殺そうと…」
三蔵郎は絶句したのである。
(私が…桜花姫様に…)
三蔵郎の涙腺から涙が零れ落ちる。
「今回は私にとって人生最大の過誤です…」
落涙する三蔵郎に桜花姫は笑顔で…。
「三蔵郎様…気にしないで♪」
「ですが桜花姫様…私は…」
「三蔵郎様は悪霊に憑霊されただけだから三蔵郎様は何も悪くないわよ♪三蔵郎様が無事で何よりだから♪」
「私は悪霊によって憑霊されたかも知れませんが桜花姫様に手出ししたのは事実みたいですし…私にとって今回の過誤は一生の不覚です…」
「気にしないの♪三蔵郎様♪」
「ですが私は桜花姫様に贖罪しなければ!」
彼自身今回の罪悪を贖罪しなければ一生後悔するのではと感じる。すると桜花姫は笑顔で発言するなり…。
「三蔵郎様が如何しても贖罪したいのであれば…和菓子屋で桜餅を頬張らせてよ♪」
「えっ!?桜餅って…」
「贖罪が桜餅なんて…」
(桜花姫ちゃんらしいね…)
桜花姫の発言に一同はポカンとした反応である。
「贖罪は贖罪でも桜花姫にとっての贖罪は非常に軽薄なのね…」
(桜花姫らしいけれども…)
一同は苦笑いする。
「三蔵郎様♪即刻東国の和菓子屋に直行しましょう♪」
「勿論ですとも♪桜花姫様♪」
桜花姫と三蔵郎は東国の和菓子屋へと直行したのである。
完結
メンテ
桜花姫 ( No.35 )
日時: 2021/08/17 09:48
名前: 月影桜花姫

第三部

第一話

桜花

天地暦三千九百九十二年四月四日の真夜中…。東国武士団の夜番警備隊であった月影夜叉丸は東国の国境より出現した悪霊を征伐しに出掛ける。
「東国に悪霊が出現したか…」
近頃は悪霊の出現頻度が頻繁であり常日頃から多忙である夜叉丸は非常に苛立ったのである。東国武士団は悪霊征伐に対応出来る夜番警備隊を結成させるのだが…。安穏時代は長年の平和の弊害からか凄腕の剣豪は一握りだったのである。唯一剣豪と畏怖される武家一族の月影一族名手…。月影夜叉丸が悪霊征伐専門の夜番警備隊に抜擢されたのである。夜叉丸は安穏時代の太平神国では一番の剣豪であり彼に対抗出来る剣豪は今現在皆無とも断言出来る。性格は非常に生真面目で人一倍厳格であり一人での活動が大半であり仲間達からは一匹狼とも揶揄される。一時間後…。夜叉丸は東国の国境に到達する。
「悪霊が出現するって…噂話の場所だな…」
夜叉丸は周囲を警戒するのだが…。周囲は暗闇の自然林ばかりで何も確認出来ない。
「悪霊が出現しそうな雰囲気であるが…」
数秒後…。突発的にゾッとしたのか極度の胸騒ぎを感じる。
(突然胸騒ぎが…)
「一体何が出現する?」
すると背後の地中より数体の食人餓鬼が出現したのである。
「此奴は食人餓鬼か…」
夜叉丸は即座に護身用の刀剣を抜刀するなり…。
「悪霊よ…即刻征伐する…」
護身用の刀剣を抜刀した夜叉丸は神速の身動きで食人餓鬼に接近すると斬撃したのである。頭首を斬撃された食人餓鬼は身動きしなくなる。一体の食人餓鬼を仕留めるのだが…。
「恐怖を感じられないのか?」
食人餓鬼は恐怖心が皆無であり彼等の大群は只管に夜叉丸へと殺到する。
「死滅せよ!」
夜叉丸は神速の身動きにより自身に殺到し続ける食人餓鬼を全滅させる。
「貴様達程度で私を食い殺そうなんて片腹痛いわ…」
自宅へと戻ろうかと思いきや…。背後より無数の殺気を感じる。
「ん?今度は…」
夜叉丸は警戒した様子で恐る恐る背後を確認したのである。
「此奴は…」
背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉団子の怪物がノソノソと夜叉丸に近寄る。
「此奴は悪霊の集合体…百鬼食人餓鬼か…」
夜叉丸の背後に出現したのは無数の食人餓鬼が一体化した肉塊の悪霊…。百鬼食人餓鬼である。
「悪霊の親玉が出現するとは…」
百鬼食人餓鬼の体表に確認出来る無数の食人餓鬼の頭部が夜叉丸を凝視するなり…。口先から猛毒の瘴気を放射したのである。百鬼食人餓鬼の瘴気は黒煙であり黒煙に接触した地面…。周囲の植物が枯死したのである。
(此奴は瘴気か…)
純血の人間である夜叉丸にとって百鬼食人餓鬼の瘴気は致命傷であり僅少でも体内に吸収すれば毒死は回避出来ない。夜叉丸は呼吸を我慢した状態で百鬼食人餓鬼に接近したのである。
(成仏せよ!)
百鬼食人餓鬼の胴体を一刀両断…。両断された百鬼食人餓鬼は肉片がバラバラに散乱すると無数の食人餓鬼へと変化する。同時に瘴気は自然と浄化されたのである。
(瘴気は浄化されたが…)
「百鬼食人餓鬼の肉片から無数の食人餓鬼に変化するとは…」
無数の食人餓鬼が夜叉丸に殺到する。
「覚悟しろ!悪霊!」
数秒間で出現した無数の食人餓鬼を仕留めたのである。
「片付けたか…」
すると国境の殺気も感じられなくなる。
「如何やら無事に終了したか…」
無事に事件は解決…。夜叉丸は西国の自宅へと戻ったのである。
「夜叉丸様…お帰りなさい…」
「美海姫か…」
美海姫は真珠の耳装飾と群青色の着物が特徴的であり頭髪は黒毛の長髪…。両目は半透明の血紅色である。自宅へと戻った夜叉丸に女房の美海姫は恐る恐る…。
「今夜も無事に戻られましたね…」
美海姫は夜叉丸に緑茶を手渡したのである。夜叉丸は肥大化した美海姫の下腹を恐る恐る凝視するなり…。
「以前よりも満月みたいだな…」
「えっ…満月ですか?」
夜叉丸の発言に美海姫は赤面する。
「数日後に私達の赤ちゃんが誕生しますよ♪」
「数日後には…俺も父親なのか…」
普段は厳格の夜叉丸であるが…。今日の夜叉丸は普段の彼とは別人みたいに穏和だったのである。
(夜叉丸様♪)
夜叉丸の様子に美海姫はニコッと微笑む。すると夜叉丸は恐る恐る…。
「美海姫…明日は久方振りに近辺の川辺で散歩しないか?」
「えっ?」
夜叉丸の発言に美海姫は一瞬驚愕する。夜叉丸は基本的に一人で行動するのが大半であり自宅でも食事以外は単独行動が日常茶飯事だったのである。
「駄目か?」
「駄目なんて…一緒に散歩しましょう♪」
(夜叉丸様と散歩なんて♪)
美海姫は内心大喜びする。翌日の真昼…。夜叉丸と美海姫は近辺の川辺を散歩したのである。周囲は川音と風音の音色が村里全体に響き渡り…。満開に開花した桜花の樹木が川辺に確認出来る。夜叉丸は満開に開花した桜花の樹木を直視したのである。
「桜花の樹木が満開だな…」
「魅了されますね♪」
桜花の樹木に二人は感動する。すると桜花の樹木に魅了された夜叉丸は恐る恐る…。
「美海姫?」
「如何されましたか?夜叉丸様?」
夜叉丸は一瞬沈黙するのだがボソッと発言する。
「子供の名前だが…女の子だったら…桜花姫なんて如何かな?」
「えっ…桜花姫ですか?」
美海姫は一瞬沈黙するが…。ニコッと微笑んだのである。
「桜花姫♪春季の天女みたいで可愛らしい名前ですね♪」
「えっ!?桜花姫で大丈夫なのか?」
ハッとした表情の夜叉丸に美海姫は笑顔で即答する。
「勿論…私は大賛成ですよ♪」
「大賛成か…」
夜叉丸はホッとした表情であり内心大喜びしたのである。
「私自身は純血の妖女だから…多分子供は女の子でしょうね…」
基本的に妖女は同種の妖女しか出産出来ない。すると夜叉丸は恐る恐る問い掛ける。
「美海姫よ…」
「如何されましたか?」
「美海姫は俺と一緒で幸福だったか?」
「えっ?突然如何されたのでしょうか!?」
突然の夜叉丸の問い掛けに美海姫は吃驚したのである。
「俺は…人一倍一匹狼の性格だからな…正直気難しいかなって…」
(夜叉丸様…自分の性格が気になるのかしら?)
すると美海姫は笑顔で返答する。
「私は今現在でも幸福ですよ♪私が夜叉丸様に見惚れたのですから♪三年前に夜叉丸様と対面しなければ私は今頃悪霊に食い殺されたでしょう…」
美海姫は三年前の真夜中の散歩中に悪霊と遭遇…。食い殺される寸前に夜番警備隊の夜叉丸に守護され夜叉丸に見惚れたのである。
「美海姫は単純だな…」
美海姫は赤面する。
「ですが三年前の悪霊事件に遭遇しなければ…私は夜叉丸様とは婚姻出来なかったのですからね♪」
「殺されたかも知れないからな…」
二人は自宅へと戻ったのである。翌日の早朝…。薬屋の蛇骨鬼が月影家の武家屋敷へと訪問する。
「邪魔するよ♪」
「蛇骨鬼婆様♪久し振りですね♪」
美海姫は蛇骨鬼との久方振りの再会に大喜びしたのである。
「美海姫ちゃんよ♪あんたが元気そうで安心したよ♪」
美海姫の元気そうな様子に蛇骨鬼は一安心する。
「ん?あんたの亭主は?」
「夜叉丸様なら東国の鎮守府に出掛けましたよ…」
「好都合だね…」
蛇骨鬼はホッとしたのである。
「本日は如何されたのでしょうか?」
問い掛けられた蛇骨鬼は即答する。
「あんたが月影夜叉丸って人間の武士と婚姻してから元気なのか如何なのか確認したかったのさ♪」
「私は毎日元気ですよ♪蛇骨鬼婆様は心配性ですね♪」
美海姫は笑顔で返答したのである。
「私でも心配するよ!あんたは天女の村里では一番の気弱で病弱だったからね…」
天女の村里とは南国に存在する小村落地帯であり両親を亡くした孤児達は勿論…。迫害された妖女の子供達が生活する安住の居住地である。幼少期では美海姫も蛇骨鬼に世話され…。南国の天女の村里で生活したのである。弱肉強食の戦乱時代では各地の戦乱やら疫病によって両親を亡くした大勢の孤児達を蛇骨鬼が養護…。子供達を世話したのである。
「人一倍気弱で病弱だったあんたが…数日後には一児の母親とはね♪」
美海姫は赤面した表情で…。
「私にも子供が出来ますからね♪」
すると蛇骨鬼はボソッと発言する。
「私も初孫と対面したいね♪」
「えっ?初孫ですって?」
蛇骨鬼の初孫の一言に反応したのである。
「初孫は初孫だよ!私にとってあんたは愛娘だからね♪当然としてあんたの愛娘は私にとって初孫だよ♪」
「蛇骨鬼婆様…」
美海姫は苦笑いする。
「何よりもあんたが元気そうで安心したよ♪私は退散するね♪」
蛇骨鬼は南国へと戻ったのである。
「蛇骨鬼婆様も元気そうで何よりだわ…」
翌日の真夜中…。夜叉丸は不吉の気配を察知したのである。
(殺気か!?)
警戒した様子で刀剣を所持…。外出したのである。美海姫は熟睡中であったがゴソゴソッと物音に気付いたのか目覚める。
「えっ?夜叉丸様は?」
屏風の刀剣と甲冑が無かったのである。
「ひょっとして夜叉丸様…」
外出したのであると察知する。同時刻…。夜叉丸は近辺に位置する廃神社にて無数の殺気を察知したのである。
「廃神社か…」
(ひょっとして悪霊の大群か!?)
暗闇の廃神社へと到達するのだが…。廃神社には無数の食人餓鬼の血肉が散乱する。廃神社の中心部には藍色の着物姿…。木刀を所持した小柄の花魁が確認出来る。
(彼女は花魁なのか?)
こんなにも真夜中に女性が一人で出歩くのを不自然に感じる。夜叉丸は恐る恐る…。
「悪霊が…貴様が退治したのか?」
問い掛けられた女性は背後の夜叉丸を直視する。
「貴様は…人間の武士だな…」
女性は両目が半透明の群青色であり姿形は人間であるが…。雰囲気から人間とは別物であると察知する。
(此奴…)
「女人…貴様は人間でも悪霊でも無さそうだな…一体何者だ?」
すると花魁は名前を名乗る。
「私は【冥王鬼】…神族の一員だ…」
「なっ!?貴様…神族だと!?」
自身を神族の一員と名乗る冥王鬼に夜叉丸は驚愕したのである。何故なら旧世界を支配した神族であるが戦乱時代以前の太古の大昔に人間達との大戦で敗北…。過半数以上の神族が人間達により殺され今現在生存を確認出来る神族は実質太平神国出身者の蛇骨鬼のみである。
「伝承では蛇骨鬼以外の神族は全員殺されたと…」
「如何やら今現在は間違った認識が出回ったみたいだな…人間達との大戦で瀕死だった私は同胞達と一緒に異国の土地で肉体を回復させたのだ…」
冥王鬼は数万年前…。人間達との大戦で瀕死の状態であり同胞と一緒に異国の土地へと逃亡したのである。
「瀕死から復活した私は以前よりも肉体が強化されたのだ…手始めに神聖なる土地に蔓延する虫けらを蹴散らしたが…こんな奴等では強化された私の実力を発揮するには力不足である…」
冥王鬼は夜叉丸を直視するなり…。
「人間であるが相当の実力者である貴様であれば…地面の薄汚い害虫よりは私の実力を発揮出来そうだな…」
冥王鬼の雰囲気に圧倒されたのか夜叉丸は恐る恐る後退りする。
(此奴は悪霊よりも厄介そうだ…人間の私では対処出来ない…)
夜叉丸は恐る恐る刀剣を抜刀したのである。
「相手が神族でも…」
(私が此奴を阻止しなければ…西国は勿論…何よりも美海姫と…桜花姫が…)
相手が自身よりも強大であっても阻止しなければ西国は勿論…。女房の美海姫と愛娘の桜花姫が殺害されるのは明白である。夜叉丸は冥王鬼に睥睨するなり…。
(姿形は女人でも…)
「冥王鬼とやら!覚悟しろ!」
神速の身動きによって冥王鬼に急接近すると即座に斬撃したのである。すると冥王鬼は自身の木刀で間一髪ガードする。
「貴様…人間としては非常に強力だな…」
直後…。
「なっ!?」
(此奴…木刀で…)
摩訶不思議の超常現象により夜叉丸の鋼鉄の刀剣がパリッと屈折したのである。
(妖術か!?)
「私の刀剣が一瞬で…」
突然の超常現象に夜叉丸はハッとしたのか全身が膠着する。
「貴様が不思議がるのも当然であるな…私の木刀は世界樹の霊魂巨神木の小枝で形作られた神剣だ…」
「霊魂巨神木だと?」
冥王鬼の所持する木刀は世界樹の霊魂巨神木から形作られた代物であり鋼鉄をも上回る硬質さである。
「私の木刀は鋼鉄をも上回る…死滅しろ!」
夜叉丸はザクッと腹部を斬撃され…。
「ぐっ!」
(木刀で…)
地面に横たわったのである。
「所詮貴様は脆弱なる人間だ…神族の一員である私には勝利出来ない…死滅せよ…無力の人間…」
直後…。冥王鬼は身動きしなくなる。
「今更瀕死の貴様を殺しても無意味だ…失血死するのだな…」
すると夜叉丸は恐る恐る問い掛ける。
「貴様は…一体…何が目的だ?」
「私の目的だと?」
冥王鬼は即答する。
「太古の大昔に存在した…神族の神世界を再興させるだけだ…数万年前の大戦で私達神族は貴様達人間によって駆逐されたのだ…」
古代時代当時の神族は多種多様の超能力を所持した最強の少数民族であったが…。大勢の人間達を相手するには多勢に無勢であり大勢の神族が迫害され惨殺されたのである。
「今現在の強大化した私であれば…一国程度なら一日で破滅させられる…」
「私達…人間に…復讐するのか?あんたは…」
夜叉丸が問い掛けると冥王鬼は即答する。
「即刻全滅させたいが…幸運にも太平神国には無数の悪霊が蔓延中であるからな…彼等によって貴様達人間が駆逐されるのも時間の問題だ…私が手出しせずとも太平神国は無数の悪霊によって死滅させられるであろう…」
すると冥王鬼の姿形がパッと消失…。冥王鬼は退散したのである。
(畜生…迂闊だった…)
夜叉丸は血塗れの状態であるが…。
「ぐっ…」
(美海姫…)
夜叉丸は瀕死の状態で自宅へと戻ったのである。地面には傷口の鮮血がポトポトッと出血し続ける。
「ぐっ!」
(視界が…)
出血多量により視界が黒化…。
(今夜が俺の命日とは…畜生…)
全身がフラフラしたのである。夜叉丸は自宅の玄関へと到達するのだが…。バタッと力尽きる。
(美海姫…桜花姫…)
夜叉丸は衰弱化したのである。
(畜生が…明日は桜花姫の出産日かも知れないのに…桜花姫を抱けないのは…心残りだな…)
直後…。夜叉丸は息絶えたのである。玄関口の物音に気付いた美海姫は即座に玄関へと移動するなり…。
「えっ?夜叉丸様…夜叉丸様!?」
美海姫は夜叉丸に接触すると失血死したのだと察知する。
(えっ…如何して…夜叉丸様が…)
「夜叉丸様…如何して…」
涙腺より涙が零れ落ちる。夜叉丸が死去したのは桜花姫の誕生日の前日だったのである。夜叉丸が死去した翌朝…。愛娘の桜花姫が誕生したのである。
メンテ
桜花姫 ( No.36 )
日時: 2021/08/17 09:49
名前: 月影桜花姫

第二話

人工妖女

天地暦四千二十年十二月二十八日の十六時半…。北国に聳え立つ天神山の洞窟ではとある集団が集結する。
「全員集合したな…」
首領らしき人物が頭陀袋から木材の破片を入手したのである。
「ん?木材の…破片ですか?」
首領らしき人物は一息するなり…。
「此奴は付喪神の肉片だよ♪」
「付喪神の肉片!?」
付喪神とは通称小面蜘蛛の肉片である。
「付喪神って…悪霊の小面蜘蛛ですよね…」
「勿論だとも♪半年前に西国の廃村で付喪神の肉片を回収したからな…」
「頭領…付喪神の肉片を如何されるのでしょうか?」
すると集団の頭領は恐る恐る背後の物体を直視する。
「女人の…死体?」
「死体なんて気味悪いですね…」
頭領の背後には腐敗した小柄の女性の遺体が確認出来る。女性の遺体は皮膚の劣化により遺体の一部は完全に白骨化した状態だったのである。
「此奴の体内に付喪神の肉片を含有させ…史上最強の人工の妖女を誕生させるのだよ…」
「なっ!?人工の妖女ですと!?」
「本気ですか!?頭領!?」
人工の妖女を誕生させる計画であるが…。周囲の者達は本当に人工の妖女が誕生するのか如何なのか疑問視したのである。
「人工の妖女なんて…実現出来るのでしょうか?」
「実現出来るかは断言出来ないが…一か八か…」
頭領は恐る恐る小面蜘蛛の肉片を女性の遺体の内部に混入させる。すると直後である。
「なっ!?」
女性の遺体に小面蜘蛛の肉片を混入させると一瞬であるが…。女性の遺体がピクッと身動きしたのである。
「死体が一瞬身動きしたぞ…」
彼等は恐る恐る女性の遺体に近寄る。彼等が近寄るが女性の遺体は停止した様子であり何も反応しない。
「彼女は…身動きしなくなったな…」
「先程の超常現象は一体…」
数秒後…。遺体の腐敗した部分が猛スピードで再生され遺体は新鮮なる生身の女体へと変化したのである。
「うわっ!本物なのか?」
すると生身の女体は深呼吸し始める。
「此奴は生者みたいだな…実験は成功したのか!?」
頭領は大喜びする。
「計画は成功した♪人工の妖女が誕生したぞ♪」
外見のみなら黒髪で長髪の童顔美少女であり体格は小柄であるが非常に容姿端麗である。直後…。瞑目した生身の女体が恐る恐る目覚める。
「目覚めたか…」
「此奴は人形みたいな女人だな…」
生身の女体は警戒した様子であり血紅色の瞳孔で周囲を恐る恐る凝視したのである。
「別に警戒しなくても大丈夫だぞ♪貴様の名前は…人工妖女…【魍魎姫】なんて如何かな?」
頭領は生身の女体を魍魎姫と名付ける。魍魎姫と名付けられた生身の女体は無表情で頭領を凝視し始める。
「ん?空腹なのか?」
彼女は無反応であり何も喋らない。
「彼女は喋れないのかな?」
すると直後である。魍魎姫はニコッと微笑むなり…。
「えっ?」
右腕より複数の真蛸らしき触手を生成させると頭領に密着させる。
「うわっ!何事だ!?」
頭領は魍魎姫の触手に全身が覆い包まれ…。ズルズルと彼女の体内に吸収される。
「ひっ!」
「此奴…頭領を捕食しやがったぞ!」
警戒した周囲の人間達は即座に抜刀したのである。
「此奴は欠陥だ!即刻仕留めろ!」
危惧した魍魎姫は即座に両腕から無数の触手を生成…。周囲の人間達を拘束したのである。触手の吸盤が皮膚に密着され身動き出来なくなる。
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
彼等はズルズルと彼女の体内へと吸収される。数秒間が経過すると魍魎姫の肉体が元通りに戻ったのである。すると直後…。
「食べたい…人間を…食べたい…食べたい…」
魍魎姫は人間の口言葉で発語したのである。彼女は周囲を警戒するなり恐る恐る洞窟から脱出…。全裸の状態で山道を直進する。洞窟から脱出した魍魎姫であるが夕方…。三人の匪賊達と遭遇する。
「ん?誰だ?」
「村娘の姉ちゃんか?」
「全裸だが…村娘は誰かに犯されちまったのか♪」
大柄の匪賊は全裸の彼女にムラムラしたのである。
「姉ちゃんは巨乳で可愛らしいな♪犯しちまいたいぜ♪」
すると大柄の匪賊が彼女の乳房を弄る。
「饅頭みたいだな♪」
乳房を弄られた魍魎姫であるが…。
「ん?此奴…」
彼女は無反応であり無表情だったのである。
「此奴は人形みたいで気味悪いな…普通の女子だったら悲鳴か抵抗するだろうに…」
匪賊の一人が無抵抗の魍魎姫に畏怖したのか恐る恐る後退りする。
「こんな小娘相手に畏怖しやがって♪」
大柄の匪賊は揶揄したのである。直後…。
「食べたい…」
「ん?」
彼女の食べたいと発言する一言に匪賊達は反応する。
「食べたいって…何を?」
大柄の匪賊に問い掛けられた魍魎姫はニコッと微笑む。
「人間…食べたい♪人間♪食べたい♪私♪空腹♪空腹♪」
「はっ?」
直後である。
「えっ!?」
魍魎姫の左腕から無数の触手が生成すると大柄の匪賊の肉体を覆い包み…。ズルズルと大柄の肉体諸共匪賊を体内に吸収したのである。
「ひっ!」
「此奴は怪物か!?」
魍魎姫に畏怖した二人の匪賊は一目散に逃走…。魍魎姫は一息する。
「今度は妖女♪妖女が食べたい♪食べたい♪妖女♪食べたい♪妖女♪」
大勢の人間達を捕食した影響からか先程よりは大人びた雰囲気へと変貌したのである。翌日の真昼…。桜花姫は久方振りに死去した父親の夜叉丸と母親の美海姫の墓参りに出掛けたのである。
(父様…母様…)
桜花姫は両目を瞑目させるなり恐る恐る合掌する。すると直後である。突然背後より…。
「桜花姫ちゃんが両親の墓参りとは珍妙だね♪」
「きゃっ!」
吃驚した桜花姫は即座に背後を直視したのである。
「誰かと思いきや…蛇骨鬼婆ちゃん…吃驚させないでよね…」
「御免よ♪御免よ♪吃驚させちゃったね♪」
蛇骨鬼は笑顔で謝罪する。
「最近は悪霊征伐で多忙だったからね…」
「久方振りに元気そうなあんたと対面出来て…両親も大喜びだろうよ♪」
蛇骨鬼が笑顔で発言するのだが…。
「如何かな?母様は私が殺しちゃったのよね…」
「桜花姫ちゃん…」
蛇骨鬼は桜花姫の雰囲気に一瞬気まずくなる。すると桜花姫は恐る恐る問い掛ける。
「私の父様って…どんな人物だったの?」
問い掛けられた蛇骨鬼は一瞬困惑するものの…。
「第一印象は優男とは程遠い印象だったかね…生真面目だけど必要以上に厳格だったかな?」
「三蔵郎様とは正反対みたいね…」
桜花姫は苦笑いする。
「普段の彼奴は…夜叉丸は厳格で一匹狼だったけれども…人一倍人情味で情熱的だったかな?」
「一匹狼なのは私みたいだね…父様♪」
桜花姫はニコッと微笑む。
「一匹狼っぽい部分は桜花姫ちゃんっぽいね♪」
「本当ね♪私も一人で行動するのが大好きだからね♪」
二人は談笑したのである。同時刻…。粉雪妖女の氷麗姫は北国の山道を通行したのである。
「はぁ…最近は退屈だわ…」
氷麗姫は花魁として活動中であったが…。時たま匪賊の征伐にも尽力したのである。死霊餓狼の消滅以後…。世の中は非常に平和であり匪賊の活動も小規模化したのである。
「匪賊達も桜花姫に畏怖しちゃったのかしら?本当に退屈だわ…」
(こんなにも世の中が平和だと…私が活躍したくても活躍出来ないわね…)
日常が退屈であると愚痴る氷麗姫であるが…。数メートルの近距離より全裸の女性が笑顔で歩行するのを確認する。
「えっ!?」
(如何して彼女は全裸なのよ!?)
気味悪いと感じるなり氷麗姫は素通りするのだが…。彼女は笑顔でジロジロと氷麗姫を凝視し続ける。無視したい氷麗姫であるが…。
「鬱陶しいわね!先程から何よ!?」
苛立った氷麗姫はヘラヘラする全裸の女性に怒号したのである。すると彼女は笑顔で…。
「私♪名前♪魍魎姫♪魍魎姫♪あんた♪妖女♪食べたい♪食べたい♪妖女♪」
彼女は自身を魍魎姫と名乗る。魍魎姫はヘラヘラした様子であり氷麗姫は気味悪くなったのか恐る恐る後退りする。
「えっ…魍魎姫だって?」
(此奴…悪霊なの!?悪霊って死霊餓狼が浄化されちゃったから…悪霊とは別物よね?霊力は感じられないし…)
現段階では魍魎姫と名乗る全裸の女性が何者なのかは不明瞭であり氷麗姫は非常に気味悪がる。
(何方にせよ厄介だわ…此奴の正体は一体何者なのかしら?)
氷麗姫は魍魎姫に睥睨する。
「あんた…凍死しなさい…」
氷麗姫は粉雪妖術を発動…。魍魎姫の両足を氷結させ魍魎姫は身動き出来なくなる。
「ぎゃっ!身動き…出来ない…食べられない♪食べられない♪」
氷結の妖術で身動きを封殺された魍魎姫であるが…。こんな状態でも彼女はヘラヘラしたのである。
「えっ…」
(此奴…桜花姫以上に狂気ね…)
全身を氷結させる寸前…。魍魎姫は両手より蛸足を連想させる無数の触手を発動したのである。
「えっ!?」
魍魎姫の体内より出現した無数の触手が氷麗姫の全身に密着する。
「ひゃっ!」
「あんた♪妖女♪食べたい♪食べたい♪」
触手の吸盤が皮膚に密着すると氷麗姫は気味悪くなる。
(畜生…一か八か…)
氷麗姫は一か八か粉雪分身の妖術を発動…。皮膚の表面より粉雪を地面に飛散させる。直後…。氷麗姫の全身は魍魎姫の触手に覆い包まれ触手諸共彼女の体内へと吸収されたのである。
「御馳走様♪御馳走様♪満足♪満足♪」
氷麗姫を捕食した魍魎姫は大喜びする。
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
魍魎姫はヘラヘラした様子で移動したのである。魍魎姫が退散した数秒後…。飛散した粉雪が融合化すると女体を形作り氷麗姫が復活する。
「危機一髪だったわね…」
(粉雪分身の妖術を発動しなかったら…私は確実に食い殺されたわね…)
氷麗姫は周囲を警戒したのである。
「魍魎姫…下手すれば悪霊よりも厄介そうね…」
(桜花姫だったら…)
氷麗姫は即座に西国へと直行する。
メンテ
桜花姫 ( No.37 )
日時: 2021/08/17 09:50
名前: 月影桜花姫

第三話

遭遇

同日の夕方…。最上級妖女の月影桜花姫は毎日の日課である天霊山の露天風呂に入浴したのである。
「極楽♪極楽♪」
露天風呂の適温の湯加減に桜花姫は満足する。
「天霊山の露天風呂は湯加減も適温だし…消耗しちゃった妖力も回復させられるから最高ね♪」
露天風呂の湯加減に満足した桜花姫であるが…。背後よりガサガサッと人気に気付いたのである。
(人気!?)
「一体何者!?」
警戒した様子で背後を直視する。すると背後の岩陰より茶髪の童顔美少女が出現したのである。
「誰かと思いきや…あんたは山猫妖女の小猫姫…」
「桜花姫姉ちゃん♪」
小猫姫の出現に桜花姫は笑顔で…。
「女の子なのに入浴中の女性を覗き見するなんて♪あんたは相当の物好きなのね♪三蔵郎様みたいだわ♪」
「私は…別に…」
小猫姫は苦笑いする。同時刻…。東国の寺院では三蔵郎がクシャミしたのである。
「一体何事でしょうか?誰か私の噂話でも…」
同時刻…。小猫姫は赤面した様子で着物を脱衣したのである。
「私も…天霊山の露天風呂に入浴したくて…」
小猫姫は恐る恐る周囲を警戒するなり…。石造りの露天風呂へと入浴したのである。
「小猫姫♪」
桜花姫は入浴中の小猫姫に近寄る。
「えっ…何よ?桜花姫姉ちゃん…」
「あんたのおっぱいって…饅頭みたいね♪」
「えっ?饅頭?」
桜花姫は赤面した表情で恐る恐る…。小猫姫の巨乳のおっぱいを力一杯弄ったのである。
「きゃっ!桜花姫姉ちゃんの助平!突然何するのよ!?」
突然の桜花姫の行為に小猫姫は動揺する。
「あんたのおっぱいは本当に饅頭みたいで可愛らしいわね♪」
(桜花姫姉ちゃん…)
小猫姫は赤面したのである。
「私だって!仕返ししちゃうよ!」
小猫姫も桜花姫に仕返しする。力一杯桜花姫の乳房を接触…。
「きゃっ!いや〜ん♪」
桜花姫も赤面したのである。すると直後…。
「えっ?」
再度背後から気配を感じる。
「気配だわ…今度は誰かしら?」
「誰だろう?」
彼女達は恐る恐る背後を警戒すりなり…。岩陰より人気を感じる。
「誰なの?」
すると岩陰から水色の着物姿の花魁が出現する。
「あんたは…粉雪妖女の氷麗姫…」
「桜花姫…」
同時刻…。徘徊中の魍魎姫は東国の天空山頂上へと移動したのである。天空山とは東国の最高峰であり標高三キロメートルの巨山…。東国の観光地である。数年前は悪霊の出現により登山者は減少傾向であったが死霊餓狼の消滅以後…。再度登山者が増加し始める。天空山の頂上では鎖鎌を所持するとある童顔の美少女が修行に尽力する。
「修行して最上級妖女の月影桜花姫様は無理でも…妹分の小猫姫には勝利したいわね…」
彼女は妖女の【山茶花姫】…。年齢は小猫姫と同年代であり彼女の好敵手である。彼女の家系は最強の忍者一族であり戦乱時代は諜報活動…。要人の暗殺任務で活躍したのである。安穏時代は平和であり忍者の仕事は限定的であるが…。山茶花姫は唯一の女性忍者であり匪賊の暗殺任務に従事する。山茶花姫は鎖鎌の大鎌を投擲しては近辺の樹木をグルグルに絡まらせる。
「雷撃!」
両手より雷撃の妖術を発動…。体内から放電させた雷光を所持品の鎖鎌に流電させたのである。直後…。樹木が黒焦げに燃焼する。
「上出来♪上出来♪」
修行の成果に山茶花姫は大喜びしたのである。
「こんな私でも山猫妖女の小猫姫になら対抗出来そうね♪」
ホッとした直後…。
(えっ?)
僅少であるが突如として別の妖力が天空山頂上に接近するのを感じる。
(妖力を感じるわね…一体何かしら?)
警戒した山茶花姫は恐る恐る背後を直視する。
「あんた…何者よ?」
(妖女なのかしら…)
山茶花姫の背後には全裸の女性が佇立…。彼女はヘラヘラした表情で山茶花姫を凝視したのである。
(何者なの?此奴…悪霊みたいで気味悪いわね…)
すると全裸の女性は笑顔で…。
「私♪魍魎姫♪あんた♪妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
「魍魎姫?あんたみたいな妖女は初耳だわ…」
(彼女の体内から僅少の妖力は感じられるけれども…彼女は一体何者なのかしら?)
魍魎姫が妖女なのか疑問視する。
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
「此奴…」
(先程から食べたい…食べたいって鬱陶しいわね…)
山茶花姫は只管食べたいと連呼する魍魎姫に大層苛立ったのである。
「あんたみたいな下級妖女…即刻死になさい!」
山茶花姫は即座に鎖鎌を投擲…。魍魎姫を捕縛したのである。身動き出来なくなった魍魎姫であるがヘラヘラする。
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
ヘラヘラする魍魎姫に山茶花姫は気味悪がる。
「あんたみたいな痴人と遭遇したのは初体験ね…」
山茶花姫は妖力を発動…。
「自爆しろ…」
山茶花姫は自爆の妖術を発動したのである。
「えっ♪」
直後…。魍魎姫の肉体は自爆の妖術によってバラバラに粉砕される。天空山頂上には魍魎姫の血肉やら肉片が飛散したのである。
「所詮は下級妖女…あんたみたいな下級妖女が私を食い殺すなんて無謀なのよ…」
戻ろうかと思いきや…。飛散した周辺の肉片がピクピクッと鼓動すると一瞬で融合化したのである。融合化した肉塊は女体を形作り…。元通りの魍魎姫に戻ったのである。
「復活♪復活♪私♪不死身♪私♪不死身♪」
「なっ!?」
(此奴…肉体をバラバラに粉砕させても元通りに戻れるなんて…此奴は悪霊以上に厄介ね…)
山茶花姫は驚愕したのか恐る恐る後退りする。
「今度は私の出番♪私の出番♪私の出番♪」
魍魎姫は捕食した氷麗姫の氷結の妖術を発動…。山茶花姫の両足を氷結させたのである。
「なっ!?氷結!?」
山茶花姫は両足の氷結により身動き出来なくなる。
(迂闊だったわ…)
すると魍魎姫は両手より無数の触手を生成させるなり…。山茶花姫を拘束したのである。
「きゃっ!」
触手の吸盤により身動きを封殺する。
「ぐっ!」
(迂闊だったわ…身動き出来なくなるなんて…)
山茶花姫の身体髪膚は魍魎姫の触手に覆い包まれる。
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
数秒後…。
(馬鹿だったわ…私…こんな痴人に食い殺されるなんて…)
触手で覆い包まれた山茶花姫の肉体は触手諸共魍魎姫の体内へと吸収されたのである。
「御馳走様♪御馳走様♪」
妖女の山茶花姫を食い殺した魍魎姫は天空山から退散する。同時刻…。氷麗姫は桜花姫の家屋敷にて真昼の出来事を一部始終告白したのである。
「あんたの粉雪の分身が魍魎姫なんて名前の…正体不明の女人に捕食されちゃったのね…」
「魍魎姫って女人の正体は…悪霊なのかな?」
小猫姫はボソッと発言する。
「悪霊なら霊力を感じられるでしょうし…私が即刻退治するわよ…悪霊は死霊餓狼が消滅しちゃったから俗界には出現しないわよ…」
死霊餓狼が消滅してより悪霊は出現しなくなる。
「昼間に遭遇した彼女からは霊力は感じられなかったわ…悪霊とは別物っぽかったけれど…妖女でも無さそうな雰囲気だったわね…」
現段階では魍魎姫の正体は不明であり彼女達はモヤモヤする。すると桜花姫は恐る恐る…。
「彼女の正体が悪霊でも…妖女にも該当しないのであれば…神族の一員の可能性は…」
「神族の一員ですって?」
神族の仮説に小猫姫は否定する。
「蛇骨鬼婆ちゃん以外の神族は大昔の大戦で全滅しちゃったらしいよ…」
「私も同感…」
「であれば魍魎姫って一体何者なのかしら?」
結局魍魎姫の正体が何者なのか不明であり彼女達はモヤモヤした様子で解散したのである。小猫姫は帰宅途中…。
「えっ?何だろう?」
南国国境の山道よりフラフラした状態で歩行し続ける人影を発見したのである。
(人影かな?)
周囲は暗闇であり人影の正体は不明であるが…。フラフラした身動きで小猫姫の方向に接近する。
(悪霊っぽいけれど…)
「悪霊は死霊餓狼が消滅しちゃったから出現しないし…こんな真夜中に一体何者だろう?」
人影がフラフラした状態で小猫姫の間近に近寄る。
「えっ!?」
(女の人!?)
人影の正体は全裸の女性であり小猫姫を直視するなりニコッと微笑む。
「あんた♪妖女♪食べたい♪」
彼女の口言葉に小猫姫はハッとする。
(食べたいって…ひょっとして彼女が氷麗姫様の粉雪分身を捕食した…魍魎姫!?)
全裸の女性が魍魎姫であると察知…。小猫姫は警戒した様子で恐る恐る後退りする。
(此奴が本当に魍魎姫であれば…)
小猫姫は睥睨するなり…。
「あんたが魍魎姫なら私が征伐するよ!」
「私♪魍魎姫♪あんた♪妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
魍魎姫はヘラヘラした様子で小猫姫に近寄ったのである。
「あんた何者よ!?私に近寄らないで!」
小猫姫は近寄る魍魎姫に睥睨する。
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
小猫姫に睥睨された魍魎姫であるが…。彼女はヘラヘラした様子である。
「此奴…」
小猫姫は非常に苛立ったのか大声で…。
「私に近寄るな!」
変化の妖術を発動すると伝説の妖獣に変化したのである。小猫姫の妖力は莫大であり近寄った魍魎姫の肉体は一瞬で粉砕され…。地面にはバラバラに粉砕された無数の血肉やら肉片が飛散したのである。
「簡単に仕留めちゃったね…全身に妖力を放出させただけなのに…」
小猫姫は全身に妖力を放出させただけであり魍魎姫の肉体は非常に脆弱なのか簡単に粉砕される。
「こんな場所で長居したくないし…」
(即刻戻らないと…蛇骨鬼婆ちゃんを心配させちゃうよね…)
南国の自宅に戻ろうかと思いきや…。バラバラに粉砕された魍魎姫の血肉が融合化すると元通りの女体の姿形に戻ったのである。
「復活♪復活♪私♪不死身♪私♪不死身♪」
元通りに再生した魍魎姫の肉体に小猫姫は驚愕する。
「なっ!?」
(此奴…肉体がバラバラでも元通りに復活出来るの!?)
小猫姫は警戒した様子で口先に妖力を凝縮させる。
「死滅しろ!」
口先より高熱の雷球を発射…。高熱の雷球は魍魎姫の肉体に直撃すると彼女の肉体は簡単に粉砕されたのである。
「今度こそ…」
焦土化した山道には黒焦げの肉片が散乱する。
(今度こそ魍魎姫は死滅したかな?)
数秒後…。一部の小指サイズの肉片が等身大サイズに細胞分裂すると等身大の女体を形成させる。
(えっ!?魍魎姫は不死身!?)
小猫姫はゾッとしたのである。女体は魍魎姫の肉体へと形作られる。
「元通り♪復活♪復活♪」
魍魎姫はヘラヘラした様子で再度小猫姫に近寄る。
「あんた♪妖女♪食べたい♪食べたい♪」
小猫姫は再度高熱の雷球を発射するのだが…。魍魎姫は両手より無数の触手を発動すると高熱の雷球を吸収したのである。
「えっ!?雷球が…」
妖力の吸収能力によって小猫姫の雷球を無力化する。
「あんたの妖力♪美味しい♪妖力♪美味しい♪」
魍魎姫は大喜びしたのである。
「今度はあんた♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
魍魎姫は再度両手から無数の触手を発動…。妖獣形態の小猫姫を拘束したのである。
「きゃっ!」
(身動き出来ない…如何すれば!?)
魍魎姫の触手により小猫姫は身動き出来なくなる。
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
彼女の触手が皮膚に密着すると全身の妖力が吸収され…。小猫姫は一瞬で元通りの少女の姿形に戻ったのである。
「ぐっ!」
(変化の妖術が解除されちゃった…私…食い殺されちゃうよ…)
小猫姫は極度の恐怖心からか涙腺から涙が零れ落ちる。
(蛇骨鬼婆ちゃん…桜花姫姉ちゃん…)
魍魎姫の体内へと吸収される直前…。突如として魍魎姫の肉体がパンっと破裂したのである。
「きゃっ!」
突然の出来事に小猫姫は吃驚する。
「えっ!?」
(魍魎姫が…)
直後…。何者かが小猫姫の背中をポンッと接触する。
「ひゃっ!」
吃驚した小猫姫は即座に背後を直視…。
「桜花姫姉ちゃん!?」
小猫姫の背中を接触した人物は誰であろう最上級妖女…。桜花姫だったのである。
「御免あそばせ♪小猫姫♪」
「桜花姫姉ちゃん♪」
桜花姫の参上に小猫姫はホッとしたのか一安心する。
「桜花姫姉ちゃん…感謝するね…」
恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「如何して桜花姫姉ちゃんがこんな場所に?」
「あんたの妖力は勿論だけど…複数の妖女の妖力を察知したからね♪」
南国の国境より小猫姫と数人の妖女の妖力を察知したのである。
「此奴は魍魎姫だよ…」
直後…。念力の妖術でバラバラに粉砕された魍魎姫の血肉が融合化すると元通りに戻ったのである。
「元通り♪元通り♪復活♪復活♪」
復活した魍魎姫はヘラヘラした表情で桜花姫を凝視する。
「あんた♪妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
「彼女が魍魎姫ね…」
(彼女の体内から小猫姫と氷麗姫の妖力と…別の誰かの妖力が感じられるわね…)
現段階では彼女が何者なのかは不明であるが…。複数の妖女の妖力を吸収したのは確実であると認識出来る。
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
すると魍魎姫は氷麗姫の氷結の妖術を発動したのである。氷結の妖術により桜花姫の両足が氷結され…。身動き出来なくなる。
(氷麗姫の妖術ね…)
身動き出来なくなった桜花姫であるが…。彼女は冷静である。直後…。魍魎姫は両手から無数の触手を生成させ氷結により身動き出来なくなった桜花姫を拘束する。
「桜花姫姉ちゃんが拘束されちゃった!」
拘束された桜花姫に小猫姫はハラハラしたのである。
「心配しなくても大丈夫よ…小猫姫…」
捕食されても可笑しくない状態であるが…。桜花姫は冷静であり小猫姫は不思議がる。
(食い殺されちゃうかも知れないのに…如何して桜花姫姉ちゃんは冷静なの?)
すると魍魎姫はヘラヘラした様子で…。
「あんた♪妖女♪食べたい♪食べたい♪」
桜花姫の肉体は魍魎姫の触手により覆い包まれる。
「桜花姫姉ちゃん!?」
(食べられちゃう!)
畏怖する小猫姫であるが…。魍魎姫の触手に覆い包まれた桜花姫の肉体から白煙が発生するとポンッと消滅したのである。
「えっ!?桜花姫姉ちゃん!?桜花姫姉ちゃんは!?」
小猫姫は勿論…。
「えっ?妖女は?妖女は?」
魍魎姫でさえも何が発生したのか理解出来ない。すると魍魎姫の背後より何者かがポンッと彼女の背中を接触する。
「えっ?誰?誰?」
「残念だったわね♪魍魎姫♪」
「桜花姫姉ちゃん!?」
(無事だったのね…冷や冷やしちゃったよ…)
冷や冷やした小猫姫であるが…。桜花姫は健在であり彼女はホッとしたのである。
「妖女?妖女?」
「あんたが拘束したのは私の分身体なのよ♪」
桜花姫は魍魎姫に食い殺される寸前…。分身の妖術を発動したのである。
「残念だったわね♪あんたみたいなお馬鹿さんが最上級妖女である私を食い殺すなんて無謀なのよ♪」
すると魍魎姫は周囲をキョロキョロさせる。
「覚悟しなさい♪」
魍魎姫は圧倒的に不利であると判断…。雷撃分身の妖術を発動したのである。雷撃分身の妖術とは自爆分身の妖術の類似妖術であり分身体を攻撃用に転用させた妖術…。分身体を自爆させ相手を感電死させる妖術である。魍魎姫の肉体が雷撃に変化…。桜花姫と小猫姫を急襲したのである。
「なっ!?」
(雷撃分身の妖術!?)
桜花姫は自身の肉体と小猫姫に防壁の妖術を発動…。雷撃分身による感電攻撃を無力化したのである。
「危機一髪だったわね♪」
桜花姫は一安心する。
「魍魎姫…結局逃げられちゃったね…」
魍魎姫は雷撃分身の妖術を発動したと同時に逃亡したのである。
「逃げられちゃったのは残念だわ…」
最早桜花姫でも妖力も感じられず…。逃亡した魍魎姫を追撃するのは不可能だったのである。
「今度遭遇したら確実に魍魎姫を仕留めましょう…」
(結局彼奴は何者なのかしらね?魍魎姫の体内からは妖力を感じられたけれど…違和感が…)
魍魎姫の体内からは妖力を感じられるのだが…。妖女と断言すると微妙に異質的だったのである。すると小猫姫が恐る恐る発言する。
「蛇骨鬼婆ちゃんだったら魍魎姫の正体が何者なのか判明出来るかも…」
「であれば即刻南国の村里に直行しましょう♪」
彼女達は南国の村里へと直行したのである。数分後…。蛇骨鬼の自宅へと到達する。
「今晩は♪蛇骨鬼婆ちゃん♪」
笑顔で挨拶するのだが…。
「えっ…」
「蛇骨鬼婆ちゃん?」
蛇骨鬼は居間にグッタリと横たわった状態だったのである。小猫姫が蛇骨鬼に殺到する。
「蛇骨鬼婆ちゃん!?」
すると蛇骨鬼が恐る恐る目覚める。
「小猫姫かい…」
「蛇骨鬼婆ちゃん…大丈夫?」
問い掛けられた蛇骨鬼は小声で返答する。
「私は大丈夫だよ…常日頃の疲労が蓄積しちまっただけだから…」
「疲労だったの…」
小猫姫は一安心したのかホッとしたのである。すると桜花姫が恐る恐る質問する。
「蛇骨鬼婆ちゃん?質問なのだけど…」
「質問だって?」
桜花姫は先程の出来事を一部始終蛇骨鬼に口述したのである。
「魍魎姫と名乗る正体不明の女人ね…」
「彼女の正体が妖女なのか神族なのか…知りたくてね…」
すると蛇骨鬼は発言する。
「神族は該当しないね…俗界で私以外の神族は実質存在しないからね…」
「消去法で妖女かしら?」
「微妙だけど…妖女とも無縁かな…」
妖女も否定したのである。
「妖女とも無縁であれば…彼女は一体何者なのかしら?」
蛇骨鬼は一瞬沈黙するなり…。
「ひょっとすると魍魎姫の正体は…人工の妖女とか…」
「えっ!?人工の妖女ですって!?」
蛇骨鬼の人工の妖女発言に桜花姫と小猫姫は驚愕する。
「人工って…人間によって誕生した妖女なの?」
「人為的に妖女なんて出来るの?」
「五百年前の伝承だけれどね…」
五百年前の出来事である。とある村里の夫婦が疫病で死去した愛娘の遺体に世界樹として認識される霊魂巨神木の破片を愛娘の遺体に含有…。愛娘は元通りの姿形に復活したのである。愛娘の復活に大喜びした夫婦であったが…。復活した愛娘は生前とは別人であり姿形は人間の少女であるが悪霊以上の怪物だったのである。夫婦は彼女に食い殺され…。村里で暴れ回る。一晩中暴れ回った彼女は最終的に村里の妖女によって退治されたのである。
「人間の愚行による悲劇だね…」
すると桜花姫は一言…。
「結局は人間達の自業自得ね…」
桜花姫は愛娘を怪物として復活させた夫婦を自業自得であると感じる。
「先程の伝承から魍魎姫の正体が判明したわね…」
「ひょっとして魍魎姫の正体は人間の愚行によって復活した…女性の遺体だったの?」
「かも知れないね…」
断言は出来ないが魍魎姫の大凡の正体を把握した桜花姫は西国へと戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.38 )
日時: 2021/08/17 09:51
名前: 月影桜花姫

第四話

増殖

真夜中の魍魎姫との戦闘から三日後…。魍魎姫とは遭遇しなかったが三人の若齢の村娘が神隠しに遭遇するとの行方不明事件が三件も連続的に発生したのである。近所の村人達は勿論…。東国の鎮守府も行方不明者である村娘達を捜索するのだが発見されない。神隠しに遭遇した村娘達は人外の妖女だったのである。神隠しの噂話は国全体に出回り桜花姫も神隠しの噂話を熟知する。噂話を熟知した当日…。暇潰しに東国の茶店で一休みしたのである。
(神隠しの事件ね…)
「行方不明者は三人とも妖女…」
彼女はフッと魍魎姫を連想する。
(今回の事件…魍魎姫…)
「彼奴の仕業なのは確実ね…」
すると直後…。
「桜花姫?」
「えっ?あんたは…粉雪妖女の氷麗姫?」
花魁の氷麗姫が同席したのである。
「こんな茶店で一休みなんて…桜花姫らしいわね♪」
「和菓子屋は私にとって日課だからね…当然でしょう…」
机上には小皿と桜餅…。緑茶が確認出来る。
「如何してあんたはこんな場所に?」
問い掛けられた氷麗姫は笑顔で返答する。
「単なる気分転換よ♪気分転換♪」
すると氷麗姫は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「如何やら神隠しの事件が気になるみたいね…」
「今回の相手は今迄の悪霊よりも厄介そうだし…」
「最上級妖女のあんたでも厄介って感じるのであれば…余程手強いみたいね…私なんて場違いだわ…」
氷麗姫は魍魎姫を相手に命拾い出来た自身を驚愕する。
「魍魎姫は妖女を捕食しても妖力を潜伏させちゃうから妖力を感じられないのよね…」
魍魎姫は絶大なる妖力を保持するのだが体内の妖力を潜伏させられ…。彼女の居場所を特定するのは実質困難である。同時刻…。二人の東国武士団の邏卒が東国郊外に位置する山道を巡邏する。
「近頃は悪霊も匪賊も出現しなくなったが…物騒だよな…」
大柄の邏卒が発言すると小柄の邏卒が返答したのである。
「村娘が三人も行方不明だからな…神隠しにでも遭遇したか?」
「神隠しね…本当に神隠しだとすれば俺達では如何にも出来ないぞ…神隠しであれば西国の桜花姫様の出番だな…」
「桜花姫様だったら神隠しでも簡単に解決出来そうだな♪」
「正直今回の事件も彼女が適任だよな…」
直後…。
「ん?誰だろう…」
山道の道中より不吉の女性に遭遇する。
「女人?」
「こんな山道で女人が一人で出歩くなんて…」
女性は紫色の着物姿であり非常に小柄の体格であるのだが…。雰囲気は非常に異質的でありフラフラした様子で山道を歩行したのである。
「悪霊みたいで気味悪いな…」
すると女性は二人の邏卒を直視するなり…。
「食べたい♪」
ニコッとした表情で二人の邏卒を凝視したのである。
「はっ?食べたいって…何を?」
問い掛けられた女性は笑顔で…。
「あんた達♪人間♪食べたい♪私♪魍魎姫♪」
自身を魍魎姫と名乗る女性はヘラヘラした表情で二人の邏卒に近寄る。
「魍魎姫だって?」
「此奴…重度の痴人か?」
すると小柄の邏卒が抜刀する。
「近寄るな!近寄れば貴様を斬殺するぞ!」
威嚇された魍魎姫であるが…。彼女は只管にヘラヘラした様子であり彼等に近寄る。
「如何やら殺されたいらしいな…」
直後である。魍魎姫は両腕から無数の触手を生成…。
「なっ!?」
刀剣を抜刀した邏卒を拘束したのである。
「食べたい♪人間♪食べたい♪」
邏卒は魍魎姫の触手に覆い包まれ…。彼女の体内へと吸収される。
「ひっ!此奴は怪物だ!」
大柄の邏卒は恐怖心により一目散に逃走したのである。
「御馳走様♪御馳走様♪満足♪満足♪」
魍魎姫は大喜びするのだが…。
「えっ?」
突如として左腕がモゴモゴと蠢動し始める。数秒後…。魍魎姫の左腕から数十個ものビー玉サイズの肉塊が排出されたのである。
「ん?」
魍魎姫は体内から排出された無数の肉塊を凝視する。すると直後である。排出された無数の肉塊が人型を形成…。等身大の女体を形作る。肉塊は等身大の全裸の女性へと変化したのである。
「あんた達♪あんた達♪私の♪子供♪子供♪」
彼女の体内から排出された無数の肉塊は魍魎姫の分身体であり魍魎姫は大喜びする。すると周囲の分身体は母体である魍魎姫を直視するなりヘラヘラしたのである。
「あんた♪母体♪母体♪」
「私♪空腹♪空腹♪妖女♪食べたい♪食べたい♪」
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
彼女達はヘラヘラした表情で只管に食べたいと連呼する。同時刻…。桜花姫は西国の自宅にて昼寝するのだが無数の妖力を察知したのである。
「えっ!?何かしら?」
(無数の妖力がバラバラに砕け散った様子だわ…)
突如として出現した複数の妖力が一瞬でバラバラに分裂するのを察知…。
「ひょっとして魍魎姫の妖力かしら?」
魍魎姫の妖力であると予想したのである。無数の妖力が気になった桜花姫は即座に外出するなり無数の妖力の感じる場所へと直行する。同時刻…。各村落では魍魎姫の【分裂体】が出没しては遭遇した村人達を食い殺したのである。当然として魍魎姫の分裂体は大都市である東国にも出現する。
「何やら外部が非常に騒然としますね…」
(一体何事でしょうか?)
東国の寺院では三蔵郎が二階の雨戸を開放するなり恐る恐る外部の様子を直視したのである。
「なっ!?」
逃走する町民達は勿論…。背後には数十人もの全裸の女性がふら付いた様子で追尾したのである。
「女性でしょうか?」
直後…。彼女達の両腕が真蛸の触手に変化すると逃走する町民達を拘束したのである。町民達は全身を触手に覆い包まれ…。彼女達に捕食される。
「げっ!」
町民達が食い殺される場面を直視した三蔵郎は気味悪くなる。
(ひょっとして彼女達は女体の悪霊でしょうか?)
一瞬女体の悪霊と解釈するのだが…。
(ですが悪霊は元凶である死霊餓狼を桜花姫様が退治されたみたいなので…悪霊は該当しないでしょうね…)
「であれば彼女達の正体は一体…」
混乱したのである。すると一体の分裂体が二階の三蔵郎を直視する。
「えっ!?」
分裂体は三蔵郎を直視するなりニコッと微笑む。
「あんた♪人間♪食べたい♪食べたい♪」
ゾッとした三蔵郎は即座に雨戸を密閉したのである。
(私も彼女達に食い殺されるかも知れない…)
三蔵郎は即座に自室へと移動…。屏風に装飾された霊斬刀を護身用に所持したのである。
「先程の女人は悪霊よりも厄介かも知れませんね…」
すると直後…。二階より一体の分裂体が進入する。
「あんた♪人間♪食べたい♪食べたい♪」
三蔵郎は恐る恐る後退りしたのである。
「貴女様は一体何者でしょうか?」
問い掛けられた分裂体はヘラヘラした様子で…。
「私♪魍魎姫の子供♪子供♪あんた♪食べたい♪」
彼女は只管に食べたいと連呼する。
(魍魎姫と呼称される人物が今回の元凶みたいですね…)
「止むを得ないですね…」
三蔵郎は即座に霊斬刀を抜刀したのである。
(正直相手が正体不明の怪物でも…か弱き女性の姿形では本領を発揮出来ませんが…)
「御免!」
神速の身動きでスパッと魍魎姫の分裂体を一刀両断…。分裂体は左右に両断されたのである。
「相手が悪霊であれば簡単に仕留められるのですが…」
一安心した直後…。両断された分裂体の半身がピクピクッと身動きしたのである。
「なっ!?」
左右両方の半身が再生され…。一体のみだった分裂体が二体の分裂体に分裂したのである。
(彼女はバラバラに砕け散ると増殖するのでしょうか…)
「であれば非常に厄介ですね…」
二体に分裂した分裂体は目覚めるなり三蔵郎を凝視する。
「食べたい♪」
「あんた♪人間♪食べたい♪」
彼女達はヘラヘラした表情で三蔵郎に近寄る。
(彼女達を迂闊に斬撃しても増殖するのは明白…一体如何すれば?)
三蔵郎は混乱したのである。後退りした直後…。突如として二体の分裂体が氷結により身動き出来なくなる。
「氷結ですと!?」
(突然何が!?)
すると背後より何者かがポンっと三蔵郎の背中を接触したのである。
「えっ?」
「危機一髪ね…三蔵郎…」
「貴女様は…粉雪妖女の氷麗姫様でしたか…」
氷麗姫は氷結の妖術によって二体の分裂体の身動きを一時的に封殺する。
「感謝しますね♪氷麗姫様♪氷麗姫様の加勢で命拾い出来ました♪」
三蔵郎は笑顔で謝礼するのだが…。
「勘違いしないで!あんたを守護しないと桜花姫が心配するからね…」
桜花姫の名前にハッとする。
(桜花姫様…)
「彼女は一体…」
「桜花姫…彼奴なら今頃…」
同時刻…。北国の国境へと到達した桜花姫であるが六体の分裂体に包囲される。
「あんた達…魍魎姫の分身体かしら?姿形は母体と瓜二つね…」
分裂体はヘラヘラした表情で…。
「あんた♪妖女♪食べたい♪食べたい♪」
彼女達は只管に妖女を食べたいと連呼する。
「私を食い殺したいのね♪あんた達に出来るかしら?妖女は妖女でも…私は其処等の妖女とは別格だからね♪」
「あんた♪美味しそう♪食べたい♪食べたい♪」
六体の分裂体はヘラヘラした様子で桜花姫に近寄る。
「鬱陶しい奴等ね…」
桜花姫は天道眼を発動…。半透明の血紅色であった両方の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光したのである。
「あんた達…死になさい…」
直後…。六体の分裂体は念力の妖術によって全身が破裂したのである。地面には分裂体の血肉やら肉片が飛散する。
「他愛無いわね…」
楽勝であると感じるものの…。飛散した無数の肉片が再度等身大の女体を形成したのである。先程飛散した無数の血肉は数百体もの分裂体に変化する。
「面倒臭いわ…」
(彼女達はバラバラに粉砕しても肉片からでも再生して…増殖するみたいね…)
魍魎姫の分裂体は一体をバラバラに粉砕しても肉片からでも再生…。無限に増殖する。数百体もの分裂体が再度桜花姫を包囲したのである。
「あんた♪妖女♪食べたい♪食べたい♪」
「食べたい♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
圧倒的に不利であり周囲は絶望的光景であるが…。桜花姫は余裕の様子だったのである。
「好都合だわ♪」
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒するなり…。
「あんた達…桜餅に変化しなさい!」
今度は変化の妖術を発動する。すると周囲の分裂体がポンっと白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「楽勝♪楽勝♪」
(妖力を消耗しちゃったから…妖力を回復させないと♪)
妖力の消耗により桜花姫は周囲の桜餅をパクパクと頬張る。すると背後より…。
「桜花姫だわ!」
「桜花姫様!」
氷麗姫と三蔵郎が近寄る。
「氷麗姫と三蔵郎様…」
「えっ?」
氷麗姫は地面の小皿を直視するなり…。
「ひょっとして小皿は全部…」
桜花姫は笑顔で即答する。
「勿論♪魍魎姫の分身体よ♪」
「変化の妖術を使用したのね…」
「勿論♪」
(桜花姫らしいわね…)
氷麗姫と三蔵郎は苦笑いしたのである。
「妖力は回復出来たし♪本体の魍魎姫を征伐しましょうかね♪」
「桜花姫様が出陣されなければ被害が増加しますからね…即刻母体である魍魎姫の征伐を…」
直後…。
「何かしら?」
「桜花姫様?如何されましたか?」
三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「複数の妖力を感じるわ…」
「複数の…妖力ですと?」
「氷麗姫も感じるでしょう?」
氷麗姫も妖力を感じる。
「私も感じるわね…此奴は非常に強力だわ…」
「人間の私には何が何やら…」
人間の三蔵郎には妖力は感じられない。数秒後…。国境の自然林より紫色の着物姿の女性がフラフラした状態で三人に近寄る。
「ん?彼女は村里の女性でしょうか?」
「私達が出向かなくても大丈夫そうね…」
すると紫色の着物の女性はニコッと微笑むなり…。
「妖女♪人間♪食べたい♪」
「魍魎姫だわ…」
三人の目前に出現した女性は魍魎姫の本体だったのである。
「魍魎姫…此奴が本体ね…」
「彼女が魍魎姫ですか…外見のみなら普通の小町娘っぽいですが…」
氷麗姫は恐る恐る後退りする。
「外見だけなら普通の小町娘だけれども…妖力だけなら桜花姫に匹敵するわね…」
「えっ!?桜花姫様に匹敵する妖力ですと!?」
氷麗姫の発言に三蔵郎は驚愕したのである。
「前回よりも桁外れに強大化したみたいだわ…何人の妖女を捕食したのかしら?」
魍魎姫は今迄に氷麗姫の粉雪分身と山茶花姫…。彼女達以外にも三人の妖女を捕食したのである。多数の妖女を捕食した結果…。最上級妖女である桜花姫にも対抗出来る妖力を保持したのである。最早彼女に妖力で対抗出来るのは最上級妖女の桜花姫…。実質彼女だけである。
「此奴を仕留めるには一筋縄では無理そうね…」
魍魎姫はヘラヘラした表情で…。
「あんた♪妖女♪食べたい♪美味しそう♪」
彼女はニコッとした表情で桜花姫を直視したのである。
「あんた♪美味しそう♪食べたい♪食べたい♪」
すると魍魎姫は右手に妖力を凝縮させ高熱の火球を発射する。
「火球?」
桜花姫は妖力の防壁を形成…。魍魎姫の火球攻撃を無力化したのである。
「こんな程度で私を仕留めるなんて無理ね…」
今度は鎌鼬の妖術を発動…。突風の白刃が桜花姫を急襲する。
「鎌鼬の妖術かしら?」
再度妖力の防壁で無力化したのである。
「こんな程度の妖術では私を食い殺すなんて不可能だわ…」
(所詮妖力が強大なだけね…)
魍魎姫は妖力のみなら桜花姫と同等であるが…。自身の発動する妖術では桜花姫を仕留めるには力不足であり手応えを感じられない。
「食べたい♪妖女♪食べたい♪」
指摘された魍魎姫であるが…。彼女はヘラヘラした表情であり只管に食べたいと連呼し続ける。
「此奴…相当の痴人みたいね…」
桜花姫は呆れ果てる。
「あんたは桜餅に変化しなさい…」
変化の妖術を発動したのである。
「えっ?」
魍魎姫に変化の妖術を発動するのだが…。魍魎姫は桜餅に変化しない。
「あんたの妖力♪美味しい♪美味しい♪」
桜花姫の妖力を吸収すると魍魎姫は大喜びする。
「桜花姫の妖術が通用しないなんて…」
「ひょっとして彼女は桜花姫様の妖力を吸収されたのでしょうか?」
すると先程よりも魍魎姫の妖力が増幅される。
「此奴…私の妖力を吸収したみたいね…」
(面倒臭い相手だわ…)
桜花姫は背後の氷麗姫と三蔵郎に指示する。
「氷麗姫…三蔵郎様…あんた達は即刻逃げなさい…此奴は一筋縄では仕留められないわ…」
「桜花姫でも簡単には仕留められないのね…」
「承知しました…桜花姫様…」
直後である。
「えっ!?」
「桜花姫!?」
「なっ!?桜花姫様の両足に…」
何時の間にか桜花姫の両足に魍魎姫の触手が接触…。身動きを封殺したのである。
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
魍魎姫は笑顔であり只管に食べたいと連呼する。
「ぐっ!」
(迂闊だったわ…)
触手の特性からか体内の妖力が魍魎姫の触手に吸収されたのである。
(妖力が吸収されるわ…)
触手により身動き出来なくなった桜花姫は全身を覆い包まれ…。魍魎姫の体内へと吸収されたのである。
「きゃっ!桜花姫が!」
「桜花姫様が食い殺されるなんて…」
氷麗姫と三蔵郎は絶望…。涙腺より涙が零れ落ちる。
「桜花姫様が…」
「最早私達では…」
(魍魎姫に対抗出来ないわ…)
魍魎姫は満足したのか笑顔で…。
「御馳走様♪御馳走様♪満足♪満足♪」
今迄よりも魍魎姫の妖力が桁外れに増幅されたのである。
(桜花姫の本体を吸収した影響かしら?魍魎姫の妖力が今迄以上に増幅されたわね…)
血紅色であった魍魎姫の瞳孔が半透明の瑠璃色に変化…。
「此奴…桜花姫の天道眼を…」
桜花姫の肉体を吸収した影響からか彼女の十八番である天道眼を開眼したのである。
「彼女…桜花姫様の天道眼を使用出来るなんて…」
魍魎姫は二人を凝視するなり…。ニコッと微笑む。
「今度はあんた達♪食べたい♪食べたい♪」
今現在の魍魎姫は最上級妖女をも上回る最強の怪物へと進化したのである。氷麗姫は恐る恐る…。
「三蔵郎…あんただけでも逃げなさい…」
「えっ…ですが氷麗姫様…」
三蔵郎は困惑したのである。
「正直人間のあんたでは此奴には対抗出来ないわ…」
三蔵郎は不本意であるが…。
「承知しました…」
三蔵郎は一目散に逃走したのである。
「二度も殺されるのね…私…」
氷麗姫は一息する。
(桜花姫?私は如何すれば…)
魍魎姫はヘラヘラした表情で氷麗姫に近寄る。
「妖女♪食べたい♪妖女♪食べたい♪」
「二度も死にたくないけれども…」
氷麗姫は覚悟する。魍魎姫は両手より触手を生成…。氷麗姫を拘束したのである。
「あんた♪妖女♪食べたい♪」
氷麗姫は睥睨するなり…。
「私を食い殺したければ食い殺しなさいよ!」
全身が触手に覆い包まれる寸前である。
「ん?」
突如として魍魎姫は身動きしなくなる。
「えっ!?」
(彼女に一体何が!?)
先程はヘラヘラした表情だった魍魎姫であるが…。今現在の彼女は無表情であり氷麗姫は何が発生したのか理解出来ない。生成された触手が魍魎姫の体内へと戻ったのである。
「私を…食い殺さないの?」
すると直後…。魍魎姫の肉体がポンっと白煙に覆い包まれ小皿と桜餅に変化したのである。
「えっ!?桜餅!?」
(一体全体何が!?)
氷麗姫は恐る恐る桜餅に近寄る。
「如何して魍魎姫は桜餅に変化しちゃったのかしら?」
すると桜餅がポンっと白煙に覆い包まれ…。魍魎姫に食い殺された桜花姫が出現したのである。
「えっ!?桜花姫!?」
(如何して彼女が…)
突如として出現した桜花姫に氷麗姫は驚愕…。彼女が本物の桜花姫なのか恐る恐る問い掛ける。
「一体何が発生したの?あんたは本物の桜花姫かしら?桜花姫は魍魎姫に食い殺されたのよ…」
すると桜花姫は氷麗姫の問い掛けに即答する。
「私は一時的に魍魎姫に吸収されたけれどね♪魍魎姫の体内で彼女を食い殺したのよ♪」
「えっ…魍魎姫の体内で彼女を食い殺したの?」
氷麗姫は想像するだけで気味悪くなる。
「最上級妖女の私を食い殺すなんて無謀なのよ♪」
魍魎姫は桜花姫の吸収により一時的に彼女の妖力を所持するが…。桜花姫の妖力は其処等の妖女とは桁外れであり彼女の妖力は扱い切れず真逆に内部から吸収されたのである。
(桜花姫…あんたは油虫かしら…)
氷麗姫は捕食されても死なない桜花姫を油虫であると感じる。
「桜花姫は不死身ね…如何すればあんたを殺せるのかしら?」
「多分寿命以外では無理でしょうね♪」
笑顔で即答する。
「寿命って…」
桜花姫の返答に氷麗姫は苦笑いしたのである。
「兎にも角にも♪各地で暴れ回る魍魎姫の分身体を一掃しないと♪」
桜花姫は変化の妖術を発動…。すると各地で徘徊する魍魎姫の分裂体を桜餅に変化させたのである。
「彼女達を浄化したわ♪一安心ね♪」
同時刻…。三蔵郎は逃走中に魍魎姫の分裂体に包囲されるも彼女達は突如として桜餅に変化したのである。
「桜餅!?」
(如何して彼女達は桜餅に変化したのでしょうか?)
突然の超常現象に三蔵郎は混乱するも…。
「北国の国境に戻りましょうかね…」
北国の国境へと直行したのである。
「氷麗姫様!」
「あんたは…三蔵郎…戻ったのね…」
すると桜花姫を直視するなり…。
「なっ!?桜花姫様!?」
驚愕したのである。
「三蔵郎様♪無事だったのね♪」
三蔵郎は桜花姫との再会に落涙したのである。
「桜花姫様!無事で良かったです…先程は桜花姫様が魍魎姫に食い殺されたとばかり…」
「心配させちゃったわね♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪したのである。
「桜花姫様が無事なのが何よりですよ♪ですが桜花姫様は肉体を魍魎姫に吸収されたのに如何して無事に戻れたのですか?」
問い掛けられた桜花姫は先程の経緯を説明する。
「体内から彼女の肉体を吸収されたのですか…」
三蔵郎は苦笑いしたのである。
「兎にも角にも…事件は無事に解決出来たし♪解散しましょう♪」
「折角ですし…私の寺院で茶会しませんか?桜餅も用意しますよ♪」
「桜餅ですって♪」
桜餅の一言に桜花姫は反応する。
「桜花姫…」
氷麗姫は苦笑いしたのである。
「早速寺院に移動しましょう♪氷麗姫は如何するかしら?」
「今回は私も参加するわ…」
一同は東国へと移動する直前…。背後より妖力を感じる。
「妖力だわ…」
「妖力ですと?」
一同の背後には山猫妖女の小猫姫がプルプルした様子で近寄る。
「はぁ…はぁ…」
「えっ…あんたは桜花姫の妹分の…小猫姫だっけ?」
「小猫姫?如何しちゃったのよ?」
小猫姫は小声で…。
「桜花姫姉ちゃん…」
すると彼女は涙腺から涙が零れ落ちる。
「えっ!?小猫姫!?大丈夫!?」
「一体…如何されたのでしょうか?」
普段は人一倍人懐っこく笑顔の絶えない小猫姫であるが…。落涙する小猫姫に一同は何事かと心配したのである。
「大丈夫?小猫姫?一体如何したのよ
問い掛けられた小猫姫は桜花姫を直視するなり…。
「蛇骨鬼婆ちゃんが…蛇骨鬼婆ちゃんが…」
「蛇骨鬼婆ちゃんが如何したのよ?」
直後である。
「死にそうなの…」
「えっ…」
小猫姫の発言に桜花姫は勿論…。三蔵郎も氷麗姫も沈黙する。
「蛇骨鬼婆ちゃんが…」
小猫姫は一部始終口述したのである。蛇骨鬼は三日前以前から体調が悪化…。小猫姫には秘密にするも三日前に自宅の居間で昏倒したのである。本人は平気であると言明するのだが…。本日の早朝より吐血したのである。
「病院には?」
「蛇骨鬼婆ちゃんは受診を拒否したの…」
「承知したわ…」
すると三蔵郎は恐る恐る…。
「桜花姫様…如何されますか?」
「三蔵郎様…御免なさいね…」
桜花姫は口寄せの妖術を発動すると自分自身を蛇骨鬼の家屋敷へと瞬間移動したのである。
「桜花姫様!?」
桜花姫は口寄せの妖術にて蛇骨鬼の家屋敷へと一瞬で瞬間移動する。蛇骨鬼はグッタリした様子であり居間で寝込む。
「誰かと思いきや…桜花姫ちゃんかね…」
「蛇骨鬼婆ちゃん…」
桜花姫は恐る恐る寝込む蛇骨鬼に近寄る。
「大丈夫?」
問い掛けられた蛇骨鬼は瞑目するなり…。
「私の寿命は…恐らく数日だね…」
普段は誰よりも元気であり冗談が大好きな蛇骨鬼であるが今回ばかりは本当であると感じる。
(蛇骨鬼婆ちゃん…)
桜花姫は涙腺より涙か零れ落ちる。
「大丈夫かい?桜花姫ちゃんらしくないね…」
「蛇骨鬼婆ちゃん!」
桜花姫は力一杯密着したのである。
(桜花姫ちゃん…)
蛇骨鬼はボソッと発言する。
「あんたと小猫姫は私にとって…自慢の孫娘だよ…」
「私が…蛇骨鬼婆ちゃんの孫娘?」
孫娘の一言に桜花姫は内心嬉しくなる。
「私は老衰で旅立つかも知れないけれども…桜花姫ちゃんは桜花姫ちゃんらしく自由に生きな♪」
「蛇骨鬼婆ちゃん…」
すると蛇骨鬼はスヤスヤと熟睡したのである。
「蛇骨鬼婆ちゃん…眠っちゃったな…」
メンテ
桜花姫 ( No.39 )
日時: 2021/08/17 09:52
名前: 月影桜花姫

第五話

地獄

魍魎姫と無数の分裂体との戦闘から二週間が経過…。桜花姫は自宅の居間でゴロゴロと寝転ぶ。
(蛇骨鬼婆ちゃん…大丈夫かな?)
蛇骨鬼の様子が気になったのである。蛇骨鬼は小猫姫により介抱されるも老衰からか体調は日に日に悪化…。虫の息だったのである。
(蛇骨鬼婆ちゃん…)
日に日に衰弱化し続ける蛇骨鬼が気になり食欲も減退…。極度の不安と憂鬱からか大好きな桜餅も食べたくなくなる。
「はぁ…」
気分転換に別の場所に移動したくなる。桜花姫は西国の海辺に移動したのである。
「蛇骨鬼婆ちゃん…大丈夫かな?」
遠方の水平線を眺望するのだが如何しても蛇骨鬼の様子が気になる。すると直後…。
「えっ?」
突如として何者かの気配を感じる。
(気配だわ…人間では無さそうね…)
恐る恐る背後を直視する。
「あんた…一体何者?」
桜花姫の背後には藍色の着物姿の女性が佇立…。体格は小柄であり左手には木刀を所持する。
(花魁かしら?外見だけだったら普通の人間っぽいけれど…)
両目は半透明の群青色であり神秘性を感じさせる。
(妖女でも無さそうだわ…)
彼女の雰囲気は非常に神秘的であり妖女とも別物である。すると女性は無表情で桜花姫を直視するなり…。
「貴様…最上級妖女の月影桜花姫だな…」
「えっ!?如何して見ず知らずのあんたが私の名前を…」
彼女とは初対面であるが桜花姫の名前を熟知する花魁らしき女性に驚愕したのである。
「あんたは一体何者なの!?」
「私は冥王鬼…神族の一員だ…」
問い掛けられた女性は自身を神族の一員…。冥王鬼であると名乗る。
「えっ!?あんたは神族の一員ですって!?」
神族の一言に桜花姫は驚愕する。
(蛇骨鬼婆ちゃん以外の神族は全滅したって…)
「不思議そうだな…妖女の小娘よ…私は正真正銘神族だぞ…」
「蛇骨鬼婆ちゃん以外の神族は…大昔に全員殺されたって…」
「貴様の反応…彼奴と一緒だな…」
「彼奴って?誰なのよ?」
数秒後…。
「月影夜叉丸と名乗る…人間の武士だよ…」
「えっ…月影夜叉丸って…」
(父様の名前!?)
父親の夜叉丸の名前を熟知する冥王鬼に再度驚愕したのである。
「如何して見ず知らずのあんたが私の父様の名前を?」
桜花姫は恐る恐る冥王鬼に問い掛ける。
「貴様の父親…月影夜叉丸を殺害したのは誰であろう私だからな…」
「えっ…あんたが…私の父様を?」
桜花姫は一瞬沈黙する。
「私を憎悪するか?月影桜花姫よ…」
「別に…」
「はっ?」
桜花姫の反応に冥王鬼は不思議に感じる。
「貴様…身内が殺されて憎悪しないとは…」
「今更父様を殺したって発言されても…私は生前の父様を知らないし…」
実際問題夜叉丸が殺害されたのは桜花姫の出産日前日である。
「貴様は相当の奇人だな…」
「奇人だから何よ♪」
奇人と発言されても桜花姫は平気だったのかニコッと微笑む。
「あんたは神族みたいだけど…伝承では神族は全滅したって…」
今現在では神族の存在は伝説であり彼等に対する認識も架空の神話程度の認識だったのである。
「今現在では間違った認識が各地に出回ったのだな…」
「如何して神族の一員であるあんたが今更こんな場所に?」
桜花姫の質問に冥王鬼は即答する。
「貴様の天道眼を…入手したいからな…」
「えっ?天道眼?」
桜花姫は理解出来なかったのか混乱したのである。
「貴様の天道眼を入手出来れば…私の主目的である人間達を殲滅出来…神世界の再興が実現するからな…」
太古の大昔に神族は人間達との大戦に敗北…。冥王鬼は大勢の同胞達が殺され人間達を憎悪したのである。
「人間達に対する復讐であり…神世界を再興させる絶好の機会なのだ…」
「人間達の殲滅に…私の天道眼が必要なの?」
「勿論だ…天道眼は想像を実現させる効力が発揮出来るからな…」
「えっ!?」
(想像を実現ですって…)
天道眼は万能の瞳術であり術者の想像を現実世界で実現させる効力を発揮出来る。今迄桜花姫が多種多様の妖術を使用出来たのは彼女の想像が実現した結果である。
「貴様の天道眼を頂戴する…」
すると桜花姫はギロッと冥王鬼を睥睨する。
「天道眼を頂戴ですって?」
「私を妖術で仕留めるか?」
冥王鬼の発言に苛立ったのか天道眼を発動したのである。
「当然でしょう…」
「天道眼か…」
血紅色だった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光する。
「あんたは桜餅に変化しなさい!」
冥王鬼に変化の妖術を発動したのである。
「ん?」
変化の妖術を発動するのだが…。冥王鬼は桜餅に変化しない。
「えっ!?如何して冥王鬼は桜餅に変化しないの!?」
桜花姫は動揺したのである。
「貴様程度の妖術なんて私には通用しない…何故なら…」
桜花姫に木刀を誇示する。
「木刀?」
「私の木刀は木刀でも…其処等の木刀とは格別だぞ!此奴は霊魂巨神木の小枝から彫刻された神器である…」
「霊魂巨神木ですって!?」
桜花姫は驚愕したのである。冥王鬼の所持する木刀は霊魂巨神木の小枝から誕生した神器であり妖術を無力化…。妖力を吸収出来る。
「私の神聖なる木刀には貴様程度の妖術は通用しない…今度は私が貴様に反撃するぞ…」
冥王鬼は神速の身動きにより桜花姫の目前に接近…。
「えっ?」
彼女の腹部を斬撃したのである。
「ぎゃっ!」
冥王鬼の所持する木刀は鋼鉄の刀剣に匹敵する強度…。相手を斬殺するのも可能である。腹部を斬撃された桜花姫は腹部から出血…。
「ぐっ…」
(迂闊だったわ…)
バタッと地面に横たわる。
「何が最上級妖女だ…所詮貴様は妖術を無力化すれば其処等のか弱き小娘同然なのだ…」
冥王鬼は桜花姫の右手に接触したのである。
「今度こそ貴様の天道眼を頂戴するぞ…」
直後…。桜花姫は身動き出来なくなる。
「えっ…」
(一体何が!?身動き出来ないわ!)
数秒後…。
「はっ!?」
身動き出来たのである。すると冥王鬼は微笑した表情で…。
「貴様から天道眼を頂戴した…」
冥王鬼の発言に桜花姫は愕然とする。
「えっ!?私の天道眼を!?」
「今現在の貴様は天道眼を使用出来ない…」
天道眼を奪取された桜花姫は多種多様の妖術を使用出来ず…。最早戦闘は不可能である。
「天道眼を…」
天道眼の発動を試行するが天道眼は発動されない。
(えっ…私…)
冥王鬼は険悪化した表情で…。
「貴様の肉体から数百体?数千体もの薄汚い亡者達の気配を感じる…貴様はか弱き小町娘とは裏腹に薄汚い亡者の集合体か…」
「なっ!?私を亡者の集合体ですって…」
桜花姫はギロッと冥王鬼を睥睨したのである。
「貴様みたいな薄汚い亡者の集合体なんかに神聖なる天道眼は宝の持ち腐れだ…」
本来なら冥王鬼に変化の妖術を発動したいが天道眼を使用出来ない状態ではあらゆる妖術を使用出来ない。
「天道眼とは本来は神族の眼光なのだ…」
「神族の眼光?」
神族の神世界では天道眼は別名神族の眼光と呼称される。
「神族の眼光は純血の神族である私にこそ相応しい…」
「如何して私に天道眼が…」
桜花姫の疑問に冥王鬼は即答する。
「小娘の分際である貴様が神聖なる天道眼を開眼出来たのは霊魂巨神木が関係する…」
霊魂巨神木は本来神族の鮮血を吸収した樹木である。千年前の戦乱時代に西国の桃子姫が霊魂巨神木の果実を採食…。神族の眼球である天道眼を開眼したのである。
「皮肉にも貴様は桃子姫と名乗る妖女の再来だ…であるからこそ神族の眼光を使用出来ただけだ…」
桜花姫は恐る恐る…。
「金輪際…私は妖術を使用出来ないの?」
問い掛けられた冥王鬼は即答する。
「当然だ…今迄桜花姫があらゆる妖術を使用出来たのは神聖なる天道眼の効力なのだよ!神族の眼光を使用出来なくなった貴様は金輪際何一つとして妖術を使用出来ない…本日より貴様は最上級妖女から下級妖女へと降格したのだ…」
「此奴…」
桜花姫は腹立たしくなる。直後…。斬撃された腹部の傷口が自然に治癒されたのである。
(私なら大丈夫…妖術が使用出来なくても…)
彼女は幼少期に天道眼を開眼する以前から妖力のみは通常の妖女の数十倍を所持…。妖力のみなら莫大だったのである。桜花姫は体内の妖力により自力で傷口を再生させる。
「妖術が使用出来ずとも…肉体が本能的に外傷を自然治癒するとは…」
(悪運だけは人一倍だな…)
すると半透明の群青色だった冥王鬼の瞳孔が半透明の瑠璃色に発光する。
「えっ!?天道眼だわ…」
冥王鬼は天道眼を発動したのである。
「神族の眼光だ…貴様は死後の世界…地獄に直行するのが相応しい…」
直後…。桜花姫は冥王鬼の発動した口寄せの妖術によって死後の世界である地獄へと連行されたのである。
(神族の眼光を無くした小娘は二度と俗界へは戻れなくなる…地獄で無限の苦痛を痛感せよ…)
冥王鬼の口寄せの妖術により強制的に地獄へと連行された桜花姫は気絶した状態で地面に横たわる。連行されてより数分後…。
(えっ?何かしら…)
目覚めた直後…。桜花姫は周辺の光景を直視するとハッとしたのである。
「えっ!?一体何が!?」
周辺を眺望すると地上全体が灼熱の火山地帯であり森林やら海水は何一つ確認出来ない。
「ひょっとして本物の地獄…」
(私…死んじゃったのかしら?)
生死は不明瞭であるが…。天道眼を使用出来ず極度の恐怖心により身震いする。
(私…今迄…)
今迄は天道眼の乱用により天下無敵の気分であったが…。天道眼を無くした今現在では自分自身の無力さに絶望する。
(一体如何すれば…)
すると周囲より…。
「えっ!?」
周囲をキョロキョロさせると自身の周囲には数体の食人餓鬼が出現したのである。
「彼等は食人餓鬼!?」
天道眼を発動出来れば大喜びであるが…。何一つとして妖術を使用出来ない無力の状態では食人餓鬼すらも脅威に感じる。
「止むを得ないわね…」
(逃げないと悪霊に食い殺されちゃうわ…)
桜花姫は落涙するなり…。一目散に逃走したのである。
「岩陰だわ…」
四町の距離より岩陰を発見した桜花姫は岩陰にて潜伏する。
「はぁ…はぁ…」
(今後は如何しましょう…)
一休みした桜花姫だが今後は如何するべきか苦悩したのである。一息した直後…。周囲の地中より気配を感じる。
(えっ…気配だわ…)
「霊力?」
彼女の感じる気配とは霊力であり食人餓鬼よりも強大である。数秒後…。地面より無数の食人餓鬼が一体化した百鬼食人餓鬼が五体も出現したのである。
「百鬼食人餓鬼!?」
百鬼食人餓鬼の出現に桜花姫は恐怖を感じる。実質天道眼を所持しない状態では通常の食人餓鬼すら仕留められず…。親玉である百鬼食人餓鬼を仕留めるのは確実に不可能である。
(天道眼が無くなった状態では百鬼食人餓鬼を仕留めるのは不可能だわ…)
「如何しましょう…」
桜花姫はビクビクした様子で後退りする。最期を覚悟した直後…。突如として右腕がモゴモゴッと蠢動したのである。
「えっ…私の右腕が…」
モゴモゴッと蠢動する右腕に気味悪くなる。数秒後である。桜花姫の右腕から無数の真蛸らしき触手が出現…。五体の百鬼食人餓鬼を拘束したのである。
「げっ!触手!?」
(ひょっとして魍魎姫の…)
右腕から出現した触手は魍魎姫の肉体の一部であり桜花姫は一週間前に彼女との戦闘で肉体を同化…。皮肉にも魍魎姫の肉体を吸収した影響で本能的に彼女の特殊能力が発動したのである。桜花姫は不本意であるが触手で拘束した五体の百鬼食人餓鬼の肉体を覆い包み…。自身の体内に吸収したのである。
「はぁ…魍魎姫みたいで気味悪いわ…」
自分の意思で悪霊を吸収するがドン引きする。
(天道眼を使用出来ないのであれば止むを得ないわね…)
覚悟した桜花姫は再度行動を開始したのである。行動を再開してより五分後…。今度は全身に鎧兜を装備した巨体の人骨が出現したのである。
(甲冑の人骨…)
「此奴は戦死者達の悪霊…骸骨荒武者だったわね…」
骸骨荒武者は戦乱時代に戦死した戦死者達の無念の集合体であり左手には金砕棒を所持する。
「相手が誰であろうと…」
体内から触手を生成させる直前…。骸骨荒武者は背後から何者かの攻撃によりバラバラに粉砕される。
「えっ!?一体何が!?」
桜花姫の目前には右手に雷光の刀剣を所持した小柄の武士が佇立する。鬼神を連想される甲冑を装備…。桜花姫を凝視したのである。
「こんな場所に貴様みたいなか弱き小娘が落下するとは…不運だな…」
「はっ?何が不運なのよ?」
「貴様…か弱き外見とは裏腹に相当の大悪人みたいだな…」
「なっ!?」
武士の大悪人の一言に反応したのか桜花姫はピリピリする。
(此奴…)
「地上界の女神様である私を大悪人ですって!?」
桜花姫は睥睨した表情で武士に怒号したのである。
「あんた…私に殺されたいのかしら?」
武士は無表情で返答する。
「俺は二度も殺された極悪非道の荒武者だぜ…」
「二度も殺されたって?」
(此奴…悪霊なのは確実だけど…其処等の悪霊とは随分異質的だわ…人間っぽいわね…)
桜花姫は恐る恐る亡者の武士に問い掛ける。
「あんたは一体何者なの?名前は?」
すると武士は即座に名前を名乗る。
「俺は…北国最強の鬼神…鬼殺丸だ…」
「えっ!?鬼殺丸ですって!?」
鬼殺丸の名前に桜花姫は驚愕したのである。
(鬼殺丸って…)
「戦乱時代に活躍した北国の武士だったわよね?」
鬼殺丸とは戦乱時代に活躍した武士の一人…。北国出身者である。今現在では史上最悪の大悪党として大勢の大衆から嫌悪される。
「勿論だ…」
「歴史学では…生前のあんたは極悪非道の大悪党だって…」
「俺が大悪党か…」
大衆からは極悪非道の大悪党として扱われる鬼殺丸であるが…。彼自身は特段気にならなかったのである。
「俺は兎にも角にも誰かを打っ殺したいからな…俗界の愚民達が俺を悪人だの極悪非道だの扱おうが構わん…悪党で上等だ…」
(此奴は相当の異端者だわ…地獄でこんな大悪党と遭遇するなんて私は不運なのかも知れないわね…)
正直鬼殺丸との遭遇に面倒臭く感じる。すると鬼殺丸は桜花姫にボソッと発言する。
「貴様…二度目に俺を打っ殺した天女の小娘に瓜二つだな…」
桜花姫は天女の一言に反応したのである。
(えっ?)
「天女の小娘?誰なのかしら…」
鬼殺丸は険悪化した表情で…。
「桃子姫って…名前の天女の小娘だったか?貴様は雰囲気だけなら天女の彼奴にそっくりだ…」
(桃子姫って…元祖妖女の…)
桃子姫の名前を傾聴するなり桜花姫は内心大喜びする。
(最初は吃驚しちゃったけど…私の前世が元祖妖女なのは正直意外だったわ♪)
「当然として貴様と桃子姫では性格は似ても似つかないか…」
鬼殺丸の発言に桜花姫はピクッと反応したのである。
「えっ?」
「貴様は好戦的で強欲そうな雰囲気…正真正銘のじゃじゃ馬だな…」
「なっ!?」
(此奴…腹立たしいわね…)
鬼殺丸の失言にピリピリする。
「地上界の女神様である私にじゃじゃ馬ですって…」
変化の妖術を使用出来るのであれば即刻駆使したいが…。
(妖術さえ使用出来れば…こんな悪霊なんて簡単に…)
彼女にとって最大の十八番である天道眼が使用出来ないので変化の妖術も使用出来ず桜花姫は余計に苛立ったのである。
「貴様みたいなじゃじゃ馬の小娘が地上界の女神様を自称するとは…片腹痛いぜ…」
自身を地上界の女神様と自称する桜花姫を揶揄する。
「ぐっ…」
(此奴…今度食い殺すから覚悟しなさいよ…)
苛立った桜花姫であるが…。一息したのである。
「鬼殺丸?」
桜花姫は不安そうな表情で恐る恐る問い掛ける。
「私って…死んじゃったの?」
桜花姫の問い掛けに鬼殺丸は即答する。
「貴様の肉体は…生者の肉体だ…」
「えっ!?生者の肉体ですって…」
「今現在の貴様は仮死状態だ…」
(無事なのね♪)
桜花姫はホッとしたのである。
「であれば私は俗界に戻れるのね♪」
希望が芽生える。
「即刻地獄から脱出しないと…」
「俗界に戻りたければ…地獄の石門に移動するのだな…」
「地獄の石門ですって?」
地獄の石門とは俗界と黄泉の国との境目であり死者は通過出来ないが仮死状態…。生者であれば通過出来る。
「地獄の石門に移動すれば私は俗界に戻れるのね♪早速地獄の石門に移動しましょう♪」
桜花姫はルンルンの気分であるが…。
「地獄の石門を突破するには…朧戦車って門番の悪霊を仕留めなければ地獄の石門を通過出来ないぞ…」
「えっ…朧戦車って…」
朧戦車とは悪霊の一体であり俗界では最上級の悪霊として認識される。其処等の悪霊とは別格であり天道眼を所持しない状態では確実に苦戦…。場合によっては敗死する可能性も否定出来ない。
(朧戦車って…悪霊は悪霊でも最強の悪霊だったわよね…妖術を駆使出来ない私に朧戦車を攻略出来るかしら?)
非常に不安がる。恐る恐る鬼殺丸を直視するなり…。
(正直此奴も今一信用出来ないのよね…)
すると鬼殺丸はギロッと睥睨する。
「貴様…俺を信用出来ないか?」
「げっ!」
鬼殺丸が問い掛けると桜花姫はビクッと反応したのである。
「図星か…」
桜花姫はボソッと一言…。
「あんたは極悪非道の悪人だし…正直…」
「別に俺を信用せずとも構わんが…門番の朧戦車を仕留めなければ貴様は二度と俗界へは戻れなくなるぞ…」
「仕方ないわね…」
桜花姫は地獄の石門を目標に行動を開始する。移動してより三十分後…。周囲より無数の殺気を察知したのである。
「殺気だわ…」
(ひょっとして霊力…)
桜花姫はソワソワした様子で周囲を警戒する。数秒間が経過すると周囲の地面より数十体…。数百体もの食人餓鬼が出現したのである。
(食人餓鬼かしら?)
無数の食人餓鬼が桜花姫に殺到する。
「毎回…毎回鬱陶しい奴等ね…」
(食人餓鬼程度なら…)
桜花姫は両腕から無数の触手を生成…。殺到する無数の食人餓鬼を拘束したのである。
「頂戴するわね♪」
拘束した食人餓鬼の全身を覆い包み…。自身の体内へと吸収したのである。
「案外魍魎姫の特殊能力も役立つわね♪」
便利であると感じる。数分後…。石造りの四十尺サイズの城門らしき巨大物体を発見する。
(石造りの城門?)
「ひょっとして地獄の石門かしら…」
発見した城門らしき物体は地獄の石門である。
「此奴を通過出来れば私は地獄から脱出出来るのね♪」
(案外楽勝だわ…)
楽勝であると感じるも…。背後から強大なる霊力を感じる。
「えっ…霊力?」
恐る恐る背後を警戒するなり…。
「此奴…ひょっとして…」
桜花姫の背後には鬼首と牛車が一体化した悪霊が出現…。ギロッとした表情で桜花姫を睥睨する。
「此奴は朧戦車だわ…」
朧戦車とは戦乱時代に斬首された武将達の無念の集合体であり最上級の悪霊である。
(如何やら朧戦車が出現するのは本当だったのね…)
以前出現した朧戦車は口寄せの妖術によって異世界に存在する巨大兵器を使用…。辛勝するも今回は天道眼が使用出来ず自力で朧戦車を仕留めるのは確実に不可能である。すると朧戦車の鬼首が人語で発語し始める。
「コムスメ…キサマハセイジャカ?イキテイルニンゲンガジゴクニオチルトハ…キサマハカヨワイコムスメノブンザイデアリナガラ…マレニミルソウトウノワルダナ…」
「此奴…」
朧戦車の発言に桜花姫はプルプルする。
「マアイイ…キサマハコノママイキテカエレルトハオモウナヨ!ココデキサマヲブッコロシテヤルゼ!」
朧戦車は鬼首の口部を開口するなり…。
「クライヤガレ!」
口先から霊力で形作った高熱の火球を発射したのである。
「一か八か!」
高熱の火球が直撃する直前…。桜花姫は両手から触手を生成させ高熱の火球を吸収したのである。
(魍魎姫の触手って…霊力も吸収出来るのね♪)
魍魎姫の吸収力は妖力と神通力は勿論…。霊力さえも無力化出来る。
(天道眼が無くても突破出来るかも知れないわ!)
すると朧戦車は再度口先を開口させる。
「オレノコウゲキヲムリョクカシタカ…」
口先より鋼鉄の大砲が出現したのである。
「えっ!?大砲!?」
「コイツハオクノテダ…タイホウデキサマヲフットバシテヤルゼ!カクゴシヤガレ!」
数秒後…。大砲から鋼鉄の砲弾が発射される。
(今度こそ一か八か…)
触手で肉塊の防壁を生成するのだが…。
「きゃっ!」
肉塊の防壁は破壊され桜花姫は吹っ飛ばされたのである。
「ぐっ…」
桜花姫は地面に横たわる。彼女は恐る恐る自身の両腕を直視…。
「えっ…」
桜花姫の両腕は朧戦車の砲撃により吹っ飛ばされ地面には大量の鮮血が流れ出る。
(迂闊だったわ…両腕が…)
先程の攻撃は実弾による攻撃であり魍魎姫の吸収能力も発揮されなかったのである。
「コンドコソトドメダ!コノママキサマヲヒキコロシテヤル!」
朧戦車は猛スピードで横たわった状態の桜花姫に急接近…。桜花姫は逃げたいが両腕が切断され逃げたくても逃げられない。
(俗界に戻れないわ…)
覚悟した直後…。
「ナンダト!?」
突如として朧戦車が爆散したのである。
「えっ!?」
突然の出来事に桜花姫はハッとする。
「一体何が…」
すると桜花姫の背後より…。
「こんな雑魚を相手に瀕死とは…」
「あんたは…鬼殺丸!?」
桜花姫の背後に出現したのは先程遭遇した鬼殺丸であり左手には携帯式の榴弾砲を装備する。
「如何して生者である私を…」
鬼殺丸はギロッと桜花姫を睥睨…。
「こんな場所で貴様に死なれちまうと面倒だからな…恐らく貴様の死後は地獄で確定だろうし…」
彼にとって地獄とは最高の楽園であり桜花姫が地獄に滞留するのは非常に不都合だったのである。
「私…今度こそ俗界に戻れるのね♪」
桜花姫は大喜びする。
「感謝するわね♪鬼殺丸♪私…あんたを誤解しちゃったみたい♪」
「貴様は鬱陶しい小娘だ…」
すると桜花姫はニコッとした表情で…。
「天道眼を無事奪還したら…あんたを生者として復活させるわね♪」
「残念だが俺は二度と俗界へは戻りたくないな…人間の肉体は脆弱で不自由だ…」
鬼殺丸にとっては今現在の悪霊の肉体で大満足であり人間として復活したくなかったのである。
「何よりも地獄は悪霊の魔窟だ…地獄であれば思う存分悪霊を仕留められるからな…」
すると桜花姫はニヤッと微笑む。
(私も旅立つなら天国なんかよりも地獄に旅立ちたいわね♪)
直後…。地獄の石門が開放されたのである。
「如何やら時間だ…」
「石門が開放されたわ…」
「生者である貴様に反応したみたいだ…」
桜花姫は笑顔で…。
「達者でね♪鬼殺丸♪」
すると鬼殺丸は問い掛ける。
「貴様…名前は?」
「えっ…」
桜花姫は一瞬表情が赤面するも…。笑顔で名前を名乗る。
「私は桜花姫♪最上級妖女の月影桜花姫よ♪」
「月影桜花姫か…」
鬼殺丸はボソッと発言する。
「桜花姫が戦乱時代の人間で俺と遭遇しちまったら…俺の人生は大分変化したのかも知れないな…」
「勿論私も一緒よ♪」
(私と桃子姫…誕生した時代を間違えちゃったみたいね…)
桜花姫は内心戦乱時代に羨望したのである。
「兎にも角にも貴様の居場所は俗界だろ?即刻俗界に戻りやがれ…正直目障りだ…」
「勿論よ♪」
桜花姫は恐る恐る地獄の石門を通過…。背後を直視すると地獄の石門が自動的に閉門される。
(地獄へは戻れなくなったのね…)
僅少であるが…。内心寂然に感じる。
「俗界に戻らないと三蔵郎様が心配するわよね…」
周辺を直視すると視界全体が暗闇の空間であり非常に不吉である。
(私…俗界に戻れるのかしら?)
不安に感じる。すると数秒後…。
「えっ…」
突如として強烈なる眠気を感じる。
(眠気だわ…)
突然の眠気により桜花姫はパタッと地面に横たわり…。極度の疲労からか衰弱化したのである。
メンテ
桜花姫 ( No.40 )
日時: 2021/08/17 09:53
名前: 月影桜花姫

第六話

精霊

一時的に死後の世界である地獄に幽閉された桜花姫であるが…。地獄の住人である鬼殺丸の協力により俗界と地獄の境目である地獄の石門を無事通過出来たのである。境目の空間にて衰弱化した桜花姫は自身の自宅にて目覚める。
(えっ…私は…)
周囲を直視するなり…。
「私の…家屋敷だわ…」
極度の安心感によりホッとしたのである。
「私…地獄から無事脱出出来たのね♪」
無事に地獄から戻れたと実感出来…。桜花姫は大喜びする。
(早速今回の出来事を誰かに喋っちゃおうかな♪)
すると直後である。何者かがトントンッと自宅の板戸をノックする。
「えっ?誰かしら?」
玄関へと移動すると玄関口には粉雪妖女の氷麗姫が桜花姫の自宅に訪問したのである。
「氷麗姫?」
氷麗姫は非常に真剣そうな表情で桜花姫を凝視する。
「桜花姫…」
「何よ?」
氷麗姫は恐る恐る…。
「あんたの仲間…蛇骨鬼だったかしら?」
「えっ…蛇骨鬼婆ちゃんが何よ…」
蛇骨鬼の名前に桜花姫はビクビクする。
「蛇骨鬼…危篤状態らしいの…」
「えっ…危篤ですって…」
蛇骨鬼は危篤状態であり今夜が山場だったのである。
「私と一緒に南国に直行しましょう…」
「承知したわ…」
外出すると時間帯は真夜中であり星空が眺望出来る。すると氷麗姫が桜花姫の方向を直視するなり…。
「あんた三日間も留守だったから心配したわよ…」
「えっ?三日間?」
桜花姫は三日間も地獄に滞在したのである。
(私…三日間も地獄に…)
時間の感覚が麻痺する。移動を開始してより一時間後…。桜花姫と氷麗姫は南国の天女の村里に到達する。
「南国だわ…」
「蛇骨鬼婆ちゃんの家屋敷は…」
数分後…。蛇骨鬼の自宅に到着したのである。
「桜花姫様…」
蛇骨鬼の自宅には三蔵郎と小猫姫…。居間の中心には衰弱化した蛇骨鬼が確認出来る。
「桜花姫姉ちゃん…」
小猫姫は落涙した様子で桜花姫を直視する。
「小猫姫…」
桜花姫は恐る恐る小猫姫に近寄る。
「御免ね…三日間も留守しちゃって…」
小猫姫に謝罪したのである。
「大丈夫…大丈夫よ…気にしないで桜花姫姉ちゃん…」
(小猫姫…)
桜花姫は涙腺より涙が零れ落ちる。
「蛇骨鬼婆ちゃんは…」
衰弱化した蛇骨鬼は最早両目を瞑目させ素肌も土気色だったのである。
「老衰かしら…」
桜花姫は恐る恐る蛇骨鬼の皮膚に接触する。
(蛇骨鬼婆ちゃん…)
桜花姫が接触した直後…。蛇骨鬼はスーッと全身が脱力したのである。
「蛇骨鬼婆ちゃん…」
蛇骨鬼は老衰により息絶える。
「老衰による自然死ですね…」
三蔵郎は両手で合掌する。沈黙した氷麗姫は内心…。
(こんな発言は桜花姫と小猫姫には出来ないけれど…死に方としては理想の死に方よね…)
不謹慎であるが蛇骨鬼の死に方は理想の死に方であると感じる。すると直後である。
「えっ?」
自然死した蛇骨鬼の肉体がピカッと発光したかと思いきや…。白色の大蛇に変化したのである。
「なっ!?」
「大蛇だわ…」
「蛇骨鬼婆ちゃん?」
数秒後…。白色の大蛇は粒子状の発光体に変化すると消滅したのである。
「如何やら…蛇骨鬼様は天空世界に旅立たれたのでしょうね…」
三蔵郎が発言すると氷麗姫も発言する。
「最期に白蛇に変化するなんて…摩訶不思議ね…」
小猫姫は沈黙した様子であり何も喋らない。一時間は沈黙の空気であり誰もが気まずいと感じる。沈黙の一時間から五分後…。一同は解散したのである。帰宅中…。桜花姫は真夜中の夜空を眺望する。
「蛇骨鬼婆ちゃん…」
(本当に死んじゃったのね…)
再度涙腺から涙が零れ落ちる。三十分後…。無事に自宅へと戻ったのである。桜花姫は自宅の居間にて寝転ぶ。精神的にも肉体的にも疲れ果てたのか睡眠したのである。熟睡した桜花姫だが…。摩訶不思議の気配により目覚める。
(えっ…何かしら?)
桜花姫は恐る恐る外出したのである。すると周辺には虹色の発光体が無数に浮遊する。
「発光体だわ…」
(一体何かしら?)
今度は天霊山から摩訶不思議の神通力を察知したのである。
「ひょっとして神通力!?」
(天霊山ね…)
気になった桜花姫は即座に天霊山へと直行する。天霊山の天辺を直視すると天辺全体が虹色の発光により光り輝いたのである。移動してより数分後…。桜花姫は天霊山の頂上へと到達する。
「えっ!?」
天霊山の頂上には百尺サイズの巨大広葉樹が存在…。木枝には虹色の単葉やら果実が確認出来る。桜花姫は一息するなり…。
「ひょっとして…霊魂巨神木?」
天霊山の頂上に聳え立つ樹木とは世界樹の霊魂巨神木だったのである。
(如何して霊魂巨神木がこんな場所に…)
霊魂巨神木は突発的に出現する摩訶不思議の樹木であるが…。突然の出現に意味深さを感じる。すると突如として霊魂巨神木の樹木全体がピカッと虹色に発光したのである。
「きゃっ!」
突然の樹木の発光によって桜花姫は両目を力一杯瞑目させる。数秒後…。桜花姫は両目を見開くと彼女の目前には小柄の巫女装束の女性が佇立する。彼女は黒髪の長髪であり背丈は桜花姫よりも小柄である。女性の両目は半透明の瑠璃色の瞳孔であり桜花姫は驚愕する。
「あんた…一体何者なの?」
(彼女の両目…瑠璃色だわ…ひょっとして天道眼かしら…)
恐る恐る問い掛ける桜花姫に女性は名前を名乗る。
「私は霊魂巨神木の精霊…姿形は元祖妖女…桃子姫であるが…」
「霊魂巨神木の精霊ですって?」
雰囲気こそ以前とは若干変化したが…。霊魂巨神木の精霊との再会は半年前以来である。
「あんたの容姿…元祖妖女の桃子姫だったのね…」
「桃子姫の死後…彼女の魂魄は樹木である私と同化したからな…」
桜花姫は再度霊魂巨神木の精霊に問い掛ける。
「如何してあんたは天霊山の頂上に出現したの?」
すると霊魂巨神木の精霊は一息するなり…。
「桜花姫…冥王鬼と名乗る神族の暴走を阻止するのだ…」
「冥王鬼ですって!?」
桜花姫は冥王鬼の名前に反応する。
(彼奴は私の天道眼を奪取した神族の一員だったわね…)
冥王鬼の名前に腹立たしくなる。
「冥王鬼は神族でも最強に部類される存在だ…俗界で彼女を阻止出来るのは…最上級妖女である月影桜花姫…貴様のみ…」
霊魂巨神木の精霊は桜花姫の実力を高評価するのだが…。
「私…先日冥王鬼に天道眼を奪取されて…天道眼を駆使出来なくなったの…」
桜花姫は困惑したのである。
「冥王鬼に天道眼が奪取されたのは本当なのか…」
「残念だけど…今現在の私は妖術が使用出来ない下級妖女なのよ…」
問い掛けられた桜花姫は困惑した表情で返答する。
「先程の内容が事実であれば…地上界は勿論…全世界の滅亡は回避出来なくなるな…」
「全世界の滅亡ですって!?」
恐る恐る霊魂巨神木の精霊に問い掛ける。
「恐らく冥王鬼は貴様から奪取した天道眼の効力で全世界の種族を滅亡させ…神族の支配する神世界を創造するであろう…」
本来天道眼は神族でも最高神に部類される神族の所有物である。最高神が天道眼を発動すると無限の森羅万象をも翻弄出来る。
「如何すれば冥王鬼を阻止出来るの?」
「最終手段だ…」
突如として精霊の左手より虹色に発光する摩訶不思議の果実が出現…。
「虹色の…果実だわ…」
精霊は桜花姫に果実を手渡したのである。
「霊魂巨神木の神聖なる果実だ…此奴は戦乱時代に元祖妖女である桃子姫が菜食した代物であるぞ…」
霊魂巨神木の果実を菜食した人間は妖力を所持出来る。
「私の神聖なる果実を菜食すれば貴様は再度…天道眼を開眼出来る…」
「えっ…天道眼を?」
桜花姫は一息するなり…。恐る恐る手渡された果実を一口菜食したのである。
「えっ?」
直後…。血紅色だった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色に発光したのである。
「如何やら貴様に天道眼が戻ったみたいだな…」
「本当に♪天道眼が戻ったの♪」
肉体に妖力が戻ったかは無感覚であったが…。桜花姫は大喜びしたのである。数秒後…。
(妖力が戻った感覚だわ…)
天道眼の開眼により妖力も戻ったと自覚出来たのである。
「余談であるが…貴様が衰弱死しなかったのは奇跡だ…」
「えっ?何が奇跡なの?」
精霊はボソッと一言…。
「基本的に私の果実を菜食した人間は…即刻衰弱死する…」
霊魂巨神木の果実は別名禁断の果実であり普通の人間が菜食した場合…。数秒間で衰弱死する。誰しもが妖力は所持出来ない。
「桃子姫と私が死ななかったのは…」
「貴様と桃子姫は運命の存在であり…最初から妖女として覚醒すべき人間であった…」
「はぁ…」
(私には何が何やら…)
桜花姫は内心珍紛漢紛だったのである。
「兎にも角にも天道眼と妖力が戻ったし♪精霊には感謝するわね♪」
すると精霊は真剣そうな表情で…。
「折角だが…貴様に対面したい人物が三人存在する…」
「えっ?私に対面?誰なの…」
精霊は自身の神通力で三人の霊体を口寄せする。桜花姫の背後より三人の半透明の人物が出現…。桜花姫は警戒した様子で恐る恐る三人の霊体を直視したのである。
「えっ!?」
半透明の人物とは老衰により死去した老婆の蛇骨鬼と群青色の着物姿の女性…。若齢の若武者が佇立する。
「あんたは蛇骨鬼婆ちゃんと…母様!?若武者は誰かしら…」
「若武者は貴様の実父…夜叉丸だ…」
「若武者は私の父様?」
群青色の着物姿の女性は母親の美海姫であり若齢の若武者は父親の夜叉丸である。すると蛇骨鬼は笑顔で…。
「桜花姫ちゃん♪あんたと再会出来て何よりだよ♪」
蛇骨鬼は桜花姫と再会出来大喜びする。
「蛇骨鬼婆ちゃん…」
一方の桜花姫は涙腺から涙が零れ落ちる。
「今現在の私は自然界と一体化した存在だよ♪」
蛇骨鬼は人間の老婆としての肉体は維持出来なくなったが…。彼女の魂魄は自然界と一体化する。
「消滅したのは実体としての肉体だけだからね♪あんまり悲観しないでね…」
「私は大丈夫だけど…小猫姫が…」
小猫姫は蛇骨鬼の自然死により彼女自身のショックは想像以上である。
「小猫姫は純粋だからね…」
「彼女を元気付けたいわ…」
小猫姫を元気付けたいと発言する桜花姫に蛇骨鬼は再度笑顔で…。
「彼女なら大丈夫だよ♪」
「えっ?」
「時間が解決するさ♪」
現状では精神的ショックにより気力が消失するが時間が解決すると蛇骨鬼は思考する。
(無理に元気付けないのが無難かしら…)
すると今度は母親の美海姫が笑顔で発言したのである。
「桜花姫♪久し振りね♪」
「母様…」
桜花姫は恐る恐る…。
「御免なさい…母様…私は母様を…」
謝罪した桜花姫であるが美海姫は笑顔で返答する。
「気にしないで♪桜花姫♪」
「えっ…私は妖力で母様を殺したのよ…」
美海姫は一息すると真実を告白する。
「私の本当の死因は…食人餓鬼の毒素が原因なの…」
「えっ?食人餓鬼の…毒素?」
美海姫は夜叉丸と婚姻する三年前…。食人餓鬼に襲撃され左手を怪我したのである。外傷自体は軽傷であったが十五年後…。食人餓鬼の毒液が全身に転移したのである。
「本当の原因は悪霊の毒素なのよ…桜花姫は自分を非難しないで…」
美海姫の発言により心情の罪悪感が解消される。
「あんたは悪くないのよ…桜花姫♪」
「母様…」
今迄は美海姫を殺害した罪悪感により辛苦されたが…。美海姫との再会により長年の罪悪感から解放されたのである。すると今度は父親の夜叉丸が発言する。
「桜花姫なのか…こんなに美人だったとは…」
美人の一言に桜花姫は赤面したのである。
「私が美人なんて…父様は大袈裟ね♪」
すると夜叉丸は小声で…。
「元気そうで安心した…今迄大変だったな…桜花姫…悪かったな…」
夜叉丸は桜花姫に謝罪したのである。
「別に謝罪しなくても…案外一人でも気楽だったし♪悪霊征伐は面白かったわよ♪」
「此奴…」
(外見とは裏腹に活気だな…)
か弱そうな外見とは裏腹に活気であると感じる。
「私は一人でも幸福よ♪」
「桜花姫が幸福であれば俺は満足だ…」
(父様…)
夜叉丸の発言に桜花姫は微笑む。意外と優男であると感じる。
「父様?」
「ん?如何した?」
「父様って…冥王鬼って名前の神族に殺されたの?」
桜花姫は真剣そうな表情で恐る恐る問い掛ける。
「彼奴か…」
問い掛けられると夜叉丸の表情が険悪化したのである。
「想起したくないが…俺が冥王鬼に殺されたのは事実だ…」
桜花姫はハッとする。
「父様が冥王鬼に殺されたのは本当だったのね…」
「冥王鬼か…」
蛇骨鬼は真剣そうな表情でボソッと発言する。すると美海姫がハッとした表情で反応したのである。
「えっ!?冥王鬼?神族ですって…夜叉丸様は悪霊に殺されたのでは!?」
当時は誰もが悪霊によって殺されたと認識する。
「当時の俺は悪霊を征伐しに出掛けたが…悪霊は木刀を所持した女人によって退治されたのだが…」
「木刀を所持した女人が冥王鬼だったのね…」
「嗚呼…」
「如何して冥王鬼って神族の一員が夜叉丸様を殺害されたのです?」
美海姫は恐る恐る夜叉丸に問い掛ける。
「恐らく肩慣らしだろうな…」
「冥王鬼は…」
今度は蛇骨鬼が発言する。
「彼奴は姿形こそ小柄の小娘だが…人間なんて瞬殺されるだろう…」
桜花姫は精霊を直視するなり…。
「彼奴の木刀は霊魂巨神木の小枝で形作られた代物だったわよね?」
「勿論だ…冥王鬼の木刀は私の肉体の一部から形作られた刀剣だ…鋼鉄の刀剣だって簡単に屈折させられるし妖術だって無力化出来る…」
(冥王鬼の木刀は厄介ね…私の妖術も無力化されるし…)
「冥王鬼に対抗するには如何すれば?」
桜花姫の問い掛けに精霊は即答する。
「天道眼と木刀を所持する冥王鬼に対抗するには…天道眼と霊斬刀が必要だな…」
「霊斬刀ですって?」
霊斬刀に夜叉丸が反応したのである。
「霊斬刀とは夜桜崇徳丸が所持した伝説の刀剣だな…牢固石の…」
「勿論…」
「霊斬刀は三蔵郎様が…」
「三蔵郎だと?一体誰だ?」
すると蛇骨鬼が笑顔で返答する。
「三蔵郎は桜花姫ちゃんの理解者だよ♪助平だけど僧侶だからね♪」
「助平って…」
桜花姫は苦笑いしたのである。
「人一倍内気だった桜花姫にも理解者がね♪三蔵郎様には感謝しないと…」
「こんな俗界にも聖者が存在するとは…」
美海姫も夜叉丸も一安心する。精霊は再度発言したのである。
「兎にも角にも今現在の冥王鬼は最高神に匹敵する存在だ…冥王鬼に対抗出来るのは桜花姫だけだからな…」
天道眼を開眼した冥王鬼は最早最高神に匹敵する存在へと進化…。最早彼女に対抗出来るのは天道眼を所持する桜花姫以外には存在しない。直後…。
「えっ?三人の肉体が…」
半透明だった三人の肉体が消滅し始める。
「如何やら時間みたいだね…」
蛇骨鬼は桜花姫を直視するなり…。
「桜花姫ちゃんよ…彼女を…冥王鬼を復讐から解放してね…」
「えっ?蛇骨鬼婆ちゃん?」
蛇骨鬼と冥王鬼は太古の大昔は悪友の関係だったのである。
「彼奴は神族だが…精神的には非常に未熟だからね♪」
正直冥王鬼の存在は気に入らなかったが…。
「努力するよ♪蛇骨鬼婆ちゃん♪」
笑顔で返答したのである。
「大変かも知れないけど小猫姫と仲良く支え合いな♪間違っても口寄せの妖術なんかで自然界の一部である私を復活させないでね…」
「えっ…」
桜花姫は一瞬困惑するものの…。蛇骨鬼の希望を尊重したのである。
「約束するよ…蛇骨鬼婆ちゃん…」
すると今度は美海姫が発言する。
「桜花姫…達者でね♪私は何時迄も貴女を見守るから♪」
「母様…」
桜花姫は再度涙腺から涙が零れ落ちる。今度は夜叉丸が発言する。
「桜花姫よ…今後も大変だろうが桜花姫は桜花姫らしく自由に生きろ…」
一息するなり…。
「冥王鬼なんかに殺されるな…精一杯頑張れよ…」
「父様…勿論よ♪」
数秒間が経過すると三人の肉体は完全に消滅したのである。
「はぁ…」
(三人には二度と再会出来ないのね…)
内心切なくなる。
「冥王鬼との戦闘は今迄とは比較出来ない大激戦だろう…最悪全世界の滅亡も否定出来ない…」
「私が彼奴を征伐するわよ…相手が神族だからって手加減しないから…」
桜花姫は断言する。
「であれば一安心だ…」
数秒後…。今度は精霊の肉体が消滅し始める。
「えっ?あんたの肉体が…」
「如何やら私も時間みたいだ…」
精霊は最後に…。
「最上級妖女の月影桜花姫よ…冥王鬼から全世界を救済しろ…最上級妖女の貴様なら…」
精霊の肉体は完全消滅したのである。
(全世界を救済なんて…)
「私に出来るかしら?」
メンテ
桜花姫 ( No.41 )
日時: 2021/08/17 09:54
名前: 月影桜花姫

第七話

魔獣

一週間後の早朝…。太平神国の裏側に位置する孤島では神族の冥王鬼が到達する。
「今現在でも近海の海底下に…」
(十二人の最高神によって封印された魔獣が存在するか…)
数百万年前の超古代時代…。神族の最盛期であり地上界には高度化された無数の神族による文明社会が構築されたのである。とある望月某日…。天空より全長が小大陸規模もの魔獣が出現したのである。魔獣は世界各地で暴れ回り大勢の神族やら人間達を虐殺…。大陸の陸地をバリバリと食い散らかしたのである。神族でも最強の部類である十二人の最高神と交戦…。長期戦であったが最高神の神通力によって魔獣は深海底にて封印されたのである。魔獣の封印には成功するも…。十二人の最高神は神通力の消耗によって衰弱死したのである。魔獣の暴走によって地形が大幅に変化…。魔獣の暴走こそ神族が弱体化する決定的要因だったのである。
「今回は超古代に神族を殺害した魔獣を復活させ…地上界の人間達を駆逐する…」
冥王鬼は天道眼の効力により結界を発動…。目的地である深海底へと移動したのである。数分後…。冥王鬼は目的地の海底下へと到達する。周辺は暗闇の海中であったが目的地の海底下中心部には規格外の巨大海亀らしき岩石物体が確認出来る。
「此奴が…魔獣…【羅刹獣】か…」
羅刹獣は全身が凸凹の岩石の肉体である。凸凹した岩石の甲羅には無数の巨大人面…。尻尾の部分は巨大海蛇が確認出来る。封印された羅刹獣の全身には金剛石で形作られた巨大鉄鎖により封殺され…。完全に身動き出来ない状態である。すると冥王鬼の神通力に反応したのか巨大人面の一部が海中を浮遊する冥王鬼をギロッと直視する。
「こんな深海底に小娘か?貴様…一体何者だ?」
巨大人面は人語で発言したのである。
「私は…冥王鬼…神族の一員だ…」
「貴様…神族の小娘か?今度こそ封印された私を死滅させるか?」
問い掛けられた冥王鬼は即答する。
「貴様を封印から解放する…」
封印から解放すると発言した冥王鬼であるが…。羅刹獣の巨大人面は失笑したのである。
「貴様正気か?最高神ですら衰弱化させた私を貴様みたいな小娘が解放するとは…貴様は余程の命知らずであるな…」
「鬱陶しい…貴様は解放されたくないのか?」
「復活させた瞬間…私は再度暴れ回る…今度こそ全世界の滅亡は確定的であるぞ…」
「地上界全域を滅亡させるには貴様の絶大なる魔力が必要不可欠なのだ…地上界の滅亡は私にとって好都合…」
「地上界の滅亡か…」
すると今度は別の巨大人面が発言する。
「貴様が私を封印から解放するのか!?であれば即刻封印を解除させろ!今度こそ大暴れして全世界を打っ壊すからよ♪」
別の巨大人面は失笑するなり…。
「私を復活させた瞬間…チビッ子の姉ちゃんを食い殺しちまうぜ♪」
巨大人面の発言に冥王鬼は呆れ果てる。
「封印から解放させたとしても今現在の羅刹獣は弱体化した状態だ…間違っても天道眼を所持する私を殺せないぞ…」
長期間の封印の効力からか羅刹獣の魔力は超古代時代から相当弱体化したのである。
「畜生が…本調子であればこんな小娘簡単に打っ殺せるのだが…」
「今現在の状態であれば…貴様に協力するのが正解みたいだな…」
「神族の小娘に協力するのは気に入らないが…止むを得ない…」
(交渉成立だな…)
冥王鬼は微笑する。
「早速貴様の封印を解除する…」
冥王鬼は瞑目するなり…。
「天道眼…発動!」
群青色だった両目の瞳孔が半透明の瑠璃色に発光したのである。
「羅刹獣…貴様の封印を解除する…はっ!」
直後…。念力の効力により羅刹獣の全身の身動きを封殺した金剛石の巨大鉄鎖がバリっと破壊されたのである。すると封印が全面的に解除され…。本体の先端部分に位置する頭部がハイテンションで大喜びしたのである。
「ヤッタゼ!トウトウフウインガカイジョサレタカ!ヒサカタブリニチジョウデオオアバレシテヤルゼ!」
本体の先端に位置する頭部部分が冥王鬼を直視するなり…。
「フウインヲカイジョシタノハシンゾクノネエチャンカ!?アリガトサンヨ♪チジョウノガイチュウドモヲクイコロシニデカケルカ!」
(此奴…下手すれば扱い切れないかも知れないな…)
羅刹獣は殺戮と破壊のみの破壊者である。本来の魔力が戻れば天道眼を駆使しても羅刹獣をコントロールするのは非常に困難であると感じる。
(羅刹獣が多少弱体化したのが何よりだな…)
同時刻…。深海底地帯のアクアユートピアでは深海底魔女のスキュランが魔法の水晶玉で深海底の異変をキャッチする。
「えっ?」
(水晶玉が反応したわ…)
魔法の水晶玉を直視するなり…。
「なっ!?此奴は…」
魔法の水晶玉には冥王鬼と封印が解除された羅刹獣が映写される。
「此奴は超古代に地上界で暴れ回った魔獣…羅刹獣だったかしら?」
(胸騒ぎの原因は此奴だったのね…)
スキュランは恐怖心からか全身がプルプルする。
「伝承では羅刹獣の大暴れで全世界が滅亡寸前だったとか…」
魔法の水晶玉に映写された冥王鬼を直視したのである。
(羅刹獣は封印が解除されたのかしら?ひょっとして小柄の少女が羅刹獣の封印を…)
「兎にも角にも…アクアユートピアの人魚達には国外の外出を徹底的に禁止させないと…」
スキュランは即刻国外への外出禁止をアクアユートピア全域に発令…。国外への外出は全面禁止され国境は完全に封鎖されたのである。二人の人魚の側近がスキュランの家屋敷に訪問する。
「スキュラン様…国外への外出禁止を発令しました!」
「国境もシールド魔法で封鎖しました…国内の安全は確保出来た模様です」
「完了したのね…上出来だわ…」
するとドアがノックされたのである。
「誰かしら?」
ウェンディーネがソワソワした様子で入室する。
「スキュラン!大変よ!」
「えっ!?今度は何事!」
ウェンディーネの様子にスキュランは吃驚したのである。
「アクアヴィーナスが…出掛けちゃったの…」
彼女は落涙する。
「えっ…アクアヴィーナス…国外に出掛けちゃったの!?」
スキュランは呆れ果てる。
「はぁ…」
(彼女は人一倍弱虫なのにトラブルメーカーね…)
すると側近は恐る恐る…。
「スキュラン様…彼女を救出しますか?」
スキュランは一息する。
「彼女には悪いけれど…救出は出来ないわ…」
「えっ!?スキュラン!?」
スキュランの発言にウェンディーネはビクッと反応したのである。
「アクアヴィーナスは如何なるのよ!?」
「正直私にはアクアユートピアの国内を守護するのが精一杯なの…彼女には悪いけど…」
「スキュラン…」
ウェンディーネは絶望する。同時刻…。国外へと出掛けたアクアヴィーナスは深海底を移動中に極度の胸騒ぎを感じる。
(先程から胸騒ぎを感じるわ…)
恐怖心によりビクビクする。
「アクアユートピアに戻ろうかな…」
戻ろうかと思いきや…。海底下を直視すると岩石の塊状が移動するのを発見する。
「えっ…」
(何かしら…)
岩石の移動物体は規格外の巨大さである。海底下の移動物体を凝視し続けると上部の表面には無数の巨大人面が確認出来る。
「ひっ!」
(人面だわ…)
無数の巨大人面にアクアヴィーナスは畏怖したのである。移動物体を凝視し続けると小大陸規模の規格外の巨大海亀であると認識する。
(ひょっとして海亀の怪物かしら?)
すると甲羅の表面に存在する巨大人面の一部が直上のアクアヴィーナスを発見するなり…。
「ん?彼奴は人魚の小娘か?」
巨大人面は人語で発言したのである。
「如何やら人魚の小娘みたいだな…」
「肩慣らしには好都合だが…如何する?」
「人魚の小娘を食い殺しちまうか?」
無数の人面が相談し始める。すると本体の先端に位置する海亀の頭部が大声で…。
「セナカノガンメン!サッキカラコソコソハナシヤガッテ…オレハクウフクナンダ!ダイチヲクウノガサキダ!アンナコバンザメデハハラノタシニモナラン…ホウチシテオケ!」
海亀の頭部が怒号すると甲羅の無数の人面は沈黙したのである。海亀の怪物は大南海へと直進…。アクアヴィーナスは命拾いしたのである。
「はぁ…はぁ…」
(一瞬食い殺されるかと…)
アクアヴィーナスは周辺を警戒するなり…。
(先程の怪物は一体何者だったのかしら?)
「イーストユートピアの桜花姫なら海亀の怪物を退治出来るかな?」
アクアヴィーナスは即刻太平神国に直行したのである。同時刻…。桜花姫は暇潰しに東国の茶店に来店したのである。彼女は大好きな桜餅を頬張る。
「桜餅は美味ね♪」
すると彼女の背後より…。
「桜花姫♪」
何者かが彼女の背中を接触する。
「きゃっ!」
桜花姫は驚愕したのである。
「誰よ!?吃驚するじゃない!」
背後を直視すると背後の人物は氷麗姫…。彼女だったのである。
「えっ?氷麗姫…あんただったのね…」
「御免あそばせ♪」
笑顔で謝罪する。
「あんた…吃驚させないでよね…折角の娯楽が台無しじゃない…」
「御免♪御免♪」
氷麗姫も同席したのである。
「今日は何事かしら?」
桜花姫が問い掛けると氷麗姫は真剣そうな表情で…。
「あんたの妹分の小猫姫だけどね…今日の早朝に自害し掛けたの…」
「えっ…小猫姫が自害ですって…」
蛇骨鬼が老衰してより小猫姫は精神的に参ったのか出刃包丁で自害し掛けたのである。
「今日は私が阻止したから大丈夫だったけど…」
今回は氷麗姫の参上により氷結の妖術を駆使…。危機一髪自害を阻止したのである。
「一歩間違えれば…彼女…本当に自殺しちゃうかも…」
「小猫姫…」
蛇骨鬼の霊体との会話により自然界と一体化した事実を小猫姫に説明するも…。彼女は納得しなかったのである。
「小猫姫は?」
「三蔵郎の寺院よ…」
今現在小猫姫は三蔵郎の寺院で寝転び…。三蔵郎が彼女の様子を見守る。
「三蔵郎様…大丈夫かな?」
(正直不安だわ…)
小猫姫が脱走しないか正直不安だったのである。
「大丈夫よ…桜花姫♪三蔵郎は人間だけど死霊餓狼とも互角に接戦した実力者なのよ♪小猫姫でも簡単には…」
直後…。桜花姫の姿形が消失する。
「えっ!?桜花姫は!?」
同時刻…。桜花姫は口寄せの妖術により三蔵郎の寺院へと瞬間移動したのである。
「三蔵郎様?」
玄関の戸口をノックするのだが…。
「無反応ね…」
桜花姫は恐る恐る寺院へと進入したのである。
「三蔵郎様は…」
客室へと入室すると客室では三蔵郎がグッタリとした表情で横たわる。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫はソワソワした表情で三蔵郎に近寄るなり安否を確認する。
「はぁ…」
(三蔵郎様は大丈夫そうね…)
ホッとしたのか一安心したのである。すると横たわる三蔵郎の左側の真横には木魚が確認出来る。
「如何して木魚がこんな場所に…」
すると横たわった三蔵郎が目覚める。
「うっ!私は…」
「三蔵郎様?大丈夫?」
「えっ?桜花姫様でしたか…ん!?小猫姫様…」
「小猫姫?」
三蔵郎は恐る恐る…。
「私は…小猫姫様に木魚で殴打されて…」
「えっ!?小猫姫が!?」
桜花姫はゾッとしたのである。
(ひょっとして彼女…)
彼女は恐怖心からか全身が身震いする。即座に二階の居間へと移動したのである。
「えっ?桜花姫様?」
二階の居間に到達すると屏風を直視する。
「小猫姫…」
屏風に装飾された霊斬刀が無くなったのである。
「えっ!?私の霊斬刀が…」
三蔵郎は精神的ショックからか全身が脱力する。
「一体誰が…私の霊斬刀を窃盗したのでしょうか…」
桜花姫は小声で…。
「小猫姫かしら…」
「えっ?小猫姫様が?」
「三蔵郎様…御免なさいね…」
桜花姫は自分自身に口寄せの妖術で小猫姫の居場所へと自身を口寄せしたのである。小猫姫は霊斬刀を所持した状態で東国と南国の国境に位置する山道にて移動する。
「えっ…桜花姫姉ちゃん…」
小猫姫は突発的に出現した桜花姫と遭遇…。一時的に佇立する。
「私からは逃げられないわよ…大人しく霊斬刀を渡しなさい…」
すると小猫姫は睥睨するなり…。
「渡さない…今日は私の命日なの…」
小猫姫は落涙したのである。
「私を死なせてよ…桜花姫姉ちゃん…」
「はぁ…小猫姫…」
桜花姫は呆れ果てる。
「あんたが自害したって…誰も大喜びしないわよ…」
「私は一人では何も出来ないし…未来に希望なんて無いよ…」
「あんた…」
「私を殺したければ殺せば?桜花姫姉ちゃんの大好きな桜餅に変化させて私を食い殺しちゃえば?」
苛立った桜花姫は無表情で…。
「小猫姫?」
「何よ?桜花姫姉ちゃん?」
力一杯小猫姫の頬っぺたを引っ叩いたのである。
「きゃっ!」
小猫姫は地面に横たわる。
「あんたみたいな意気地なしは桜餅に変化させても不味いだけよ…」
桜花姫は無表情であり霊斬刀を回収する。
「霊斬刀は三蔵様の所有物だからね…」
すると桜花姫は再度無表情で発言したのである。
「今日からあんたとは絶縁ね…自害したければ勝手に自害しなさい…」
桜花姫は退散したのである。移動中…。
(小猫姫の馬鹿…)
涙腺より涙が零れ落ちる。小猫姫の様子が気になるのか再度戻ろうかと思いきや…。突発的にグラグラッと地面が地響きにより震動したのである。
「なっ!?」
(ひょっとして地震かしら…)
地響きは数秒間で沈静する。
「先程の地響きは一体何だったのかしら?」
すると彼女の前方より…。
「桜花姫!」
「えっ…」
ピンク色のロングドレスと赤髪の小柄の女性が桜花姫に近寄る。
「あんたはアクアユートピアのアクアヴィーナス?」
「はぁ…はぁ…桜花姫…」
赤髪の女性はアクアユートピアのアクアヴィーナスであり非常にソワソワした様子だったのである。
「大丈夫?アクアヴィーナス?今度は何事かしら?」
「桜花姫…大変なの!」
アクアヴィーナスは真剣そうな表情で…。
「西海の深海底で海亀みたいな怪物が出現したの!陸地みたいに巨体だったわ…」
「海亀みたいな怪物?」
桜花姫は一瞬沈黙する。
(幼少期に蛇骨鬼婆ちゃんが…先程の地震は怪物の仕業かしら?)
神族の昔話で旧世界を襲撃した巨体の怪物の伝承を想起したのである。
(大昔の伝承と関連するかしら…)
「気になるわね…」
アクアヴィーナスは恐る恐る…。
「如何しましょう…」
彼女は恐怖心からか涙腺より涙が零れ落ちる。
「海亀の怪物の正体が旧世界を襲撃した魔獣であれば…私以外では対抗出来ないわ…」
「えっ…」
アクアヴィーナスは絶望により沈黙する。
(最上級妖女の私でも全世界規模の怪物を攻略出来るかしら…)
普段なら大喜びで征伐に出掛けるのだが…。今回の戦闘は今迄の戦闘とはスケールが桁外れであり自身の妖力のみで怪物に対抗出来るかは正直未知数だったのである。
「アクアヴィーナスは東国の三蔵郎様の寺院で待機しなさい…寺院へは私が案内するから…」
「えっ?三蔵郎様って誰なの?」
桜花姫は笑顔で即答する。
「三蔵郎様は人間の僧侶よ♪仏様を擬人化した存在だから大丈夫よ♪」
「えっ?はぁ…」
アクアヴィーナスは珍紛漢紛であったが桜花姫と一緒に東国の寺院へと急行したのである。
「三蔵郎様!」
桜花姫は玄関をノックする。
「えっ?桜花姫様…ん?同行者の女性は?」
アクアヴィーナスは恐る恐る名前を名乗る。
「私は…アクアヴィーナスです…」
すると桜花姫が笑顔で紹介する。
「彼女は人魚王国のアクアユートピアの人魚なの♪」
「貴女様は異国の人魚の女性ですか♪」
三蔵郎は一瞬アクアヴィーナスに見惚れる。
「三蔵郎様…一定の時間だけど…彼女を保護出来ないかしら?」
「保護ですと?」
桜花姫は超古代の魔獣が出現した事実を洗い浚い報告したのである。
「えっ!?旧世界に封印された魔獣が出現したのですか!?」
するとアクアヴィーナスがボソッと一言…。
「私は深海底で海亀みたいな怪物と遭遇しました…遭遇した当初は魔獣に食い殺されるかと…」
アクアヴィーナスは恐怖心から涙腺から涙が零れ落ちる。
「ですがアクアヴィーナス様が無事なのが何よりですよ♪」
「感謝します…」
桜花姫は三蔵郎に霊斬刀を手渡したのである。
「三蔵郎様?」
「えっ?霊斬刀…」
すると三蔵郎は恐る恐る…。
「小猫姫様は無事ですか?」
問い掛けられた桜花姫は一瞬ビクッと反応するも笑顔で返答する。
「彼女なら…大丈夫よ♪小猫姫は自害しないって約束したから♪」
「であれば一安心ですね♪」
「小猫姫はソッとしましょう…」
「承知しました♪」
直後である。再度地面がグラグラッと震動する。
「なっ!?」
「地響きだわ!」
「今度も地震だわ…」
(魔獣の仕業かしら?)
突然…。近辺より摩訶不思議の神力を感じる。
(えっ?何かしら?神通力でも妖力でも無いわね…ひょっとして神族!?)
桜花姫は警戒したのである。
「三蔵郎様!アクアヴィーナスは即刻寺院に避難して!」
「えっ!?桜花姫!?」
「一体何が発生したのですか?」
桜花姫は恐る恐る…。
「神族が接近中なの…」
「神族ですと!?」
「危険そうなの…」
「下手すれば殺されるかも…」
三蔵郎は承諾する。
「承知しました…桜花姫様…」
すると寺院の表門より…。木刀を所持した青色の着物姿の女性が進入したのである。
「彼女は…」
「誰かしら?」
桜花姫は恐る恐る…。
「彼女は冥王鬼…神族の一員よ…」
「彼女が神族ですか?人間の女性みたいですね…」
すると冥王鬼は無表情で発言する。
「亡者の集合体…月影桜花姫よ…貴様は死後の世界である地獄から脱出するとは…」
「私は天国でも地獄でも脱出するから安心しなさい…」
「悪運だけは人一倍だな…」
直後…。桜花姫の両目の瞳孔が半透明の瑠璃色に発光したのである。
「貴様…神族の眼光を…」
「残念だったわね♪あんたから一時的に天道眼を奪取されたけど霊魂巨神木の精霊から再度頂戴したのよ♪」
笑顔で発言する桜花姫に冥王鬼は内心苛立ったのか一言…。
「霊魂巨神木はこんな小娘に味方するとは…」
「私は即刻魔獣を仕留めたいの…邪魔しないで…」
冥王鬼は魔獣の一言に反応する。
「魔獣か…」
普段は無表情の冥王鬼であるが微笑したのである。
「何が可笑しいのよ?」
問い掛けられた冥王鬼は即答する。
「魔獣を封印から解放させたのは誰であろう私だからな…今頃は世界各地で大暴れだろうよ…」
「えっ!?あんたが!?」
彼女の発言に一同は反応したのである。すると三蔵郎は恐る恐る…。
「魔獣とは…ひょっとして伝説の羅刹獣でしょうか?」
「羅刹獣って?」
「羅刹獣は太古の旧世界で大暴れした海亀の怪物ですよ…伝承では十二人の最高神によって封印されたと…」
三蔵郎は桜花姫とアクアヴィーナスに説明する。
「ですが如何して神族の一員である冥王鬼が…古代の怪物を復活させたのですか?怪物によって数百人もの神族が惨殺されたのですよね?」
三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。すると冥王鬼は即答する。
「大勢の仲間達が羅刹獣によって殺されたが…今現在の私は羅刹獣以上に地上界を君臨する人間達こそ殲滅したい…」
「冥王鬼は如何して人間達を殲滅したいのですか?」
「私が人間達を殲滅したい理由だと?」
冥王鬼は一息するなり…。
「貴様達も人類の歴史学を勉学すれば理解出来るだろうが…人間の歴史は戦争と自然界を汚染させるばかりだ…恐らく未来の世界でも戦争は何度も勃発するだろう…」
彼女の発言に桜花姫はハッとする。
(スキュランの時空の光球…)
桜花姫は時空の光球で発現された数多の戦争の光景を想起したのである。
(今後も戦乱時代みたいな時代が何度も到来するのかしら?)
正直自身も戦乱時代を体験出来ればと希求する。
(面白そうだわ♪今後の時代を見届けたいわね…)
するとアクアヴィーナスが恐る恐る問い掛ける。
「如何してあんたは本来仕留めるべき相手を復活させたのよ?あんたは神族だし…人間達を仕留めるなら一人でも簡単でしょう?」
問い掛けられた冥王鬼はアクアヴィーナスに返答する。
「地上界の人間達だけを殲滅するなら私一人でも容易いが…太平神国には数多くの妖女が安住する桃源郷だ…最上級妖女である桜花姫が死後の地獄から生還したからには…」
正直桜花姫が俗界に戻ったのは予想外であり目的を達成するのに数多の妖女と彼女の存在は不都合だったのである。今度は三蔵郎が質問する。
「人間達を殲滅したとしても羅刹獣と神族である冥王鬼は敵対関係です…羅刹獣は大勢の神族を殺害した強者ですし貴女様も殺される可能性だって否定出来ませんよ…」
「であれば今度は羅刹獣を殲滅するだけだ…今現在の羅刹獣は長年の封印で相当弱体化した状態だ…私単独でも簡単に仕留められる…」
「私から天道眼を奪取したのは魔獣の羅刹獣の封印を解除したかったからなのね…」
「えっ!?桜花姫様?天道眼を奪取されたって…」
「先日の出来事だけどね…」
問い掛けられた桜花姫は先日の出来事を洗い浚い公言したのである。
「桜花姫様は彼女に天道眼を奪取されたなんて…」
「死後の世界にも幽閉されちゃったし…一苦労だったわ…」
所詮羅刹獣は人間達を殲滅する手駒であり瞳術の天道眼を所持した冥王鬼にとって弱体化した羅刹獣は目的を完遂させる手駒だったのである。
「遅かれ早かれ羅刹獣の封印を解除した以上…全世界が滅亡するのは時間の問題だ…」
すると冥王鬼は天道眼を発動…。
「貴様達の身動きを封殺する…」
直後である。冥王鬼の金縛りによって三蔵郎とアクアヴィーナスは身動き出来なくなる。
「なっ!?」
「えっ!?」
二人は身動きを封殺される。
「三蔵郎様!?アクアヴィーナス!?」
(金縛りでしょうか?)
三蔵郎は身動きしたいが金縛りにより身動き出来ない。
(身動き出来ないよ…)
アクアヴィーナスは涙腺より涙が零れ落ちる。
「二人の身動きは封殺出来たが…月影桜花姫…妖女である貴様には私の金縛りが通用しなかったか…」
桜花姫には冥王鬼の金縛りが発動されず自由自在に身動き出来たのである。桜花姫は冥王鬼を睥睨するなり…。
「冥王鬼…あんたは本当に気に入らないわ…」
(蛇骨鬼婆ちゃんからは此奴を救済してって依頼されたけれど…)
天道眼を所持する冥王鬼と交戦するなら全力で力戦しなければ勝利出来ないと確信する。
(中途半端では今度こそ地獄に逆戻りね…)
桜花姫も天道眼を発動したのである。
「貴様も天道眼を発動したか…天道眼を発動したとしても私の木刀は妖力を吸収する神器…貴様が勝利する可能性は皆無だぞ…」
冥王鬼の木刀は霊魂巨神木の小枝から形作られた神器であり妖力による攻撃は木刀に吸収される。桜花姫は恐る恐る後退りする。
(天道眼を使用出来ても…単独で此奴を仕留められるかしら?)
すると直後である。
(えっ?霊斬刀が…)
三蔵郎の所持する霊斬刀がカタカタッと振動したかと思いきや…。空中を浮遊したのである。数秒後…。桜花姫の目前に落下したのである。
「えっ?霊斬刀?」
(ひょっとして所持しろと?)
摩訶不思議の超常現象であったが…。桜花姫は恐る恐る霊斬刀を所持したのである。
「霊斬刀だと?牢固石の刀剣か?」
冥王鬼は警戒する。
「私でも対抗出来るかも知れないわね…」
メンテ
桜花姫 ( No.42 )
日時: 2021/08/17 09:55
名前: 月影桜花姫

第八話

最終決戦

同時刻…。小猫姫は南国の山道にて歔欷したのである。
(私は今後…如何すれば…蛇骨鬼婆ちゃんは死んじゃったし…私一人では何も出来ないよ…)
「私…死にたいよ…」
すると直後…。背後より摩訶不思議の気配を感じる。
「えっ?」
背後には白色の大蛇が歔欷し続ける小猫姫を凝視したのである。
「白蛇かな?」
小猫姫は恐る恐る白蛇に近寄る。すると白蛇が人語で…。
「小猫姫よ♪久し振りだね♪」
笑顔で発言したのである。
「えっ!?白蛇が喋った!?」
人語で発言する白蛇に小猫姫は驚愕する。
「別に吃驚しなくても♪私だよ♪蛇骨鬼♪」
白蛇は自身を蛇骨鬼と名乗る。
「えっ…蛇骨鬼婆ちゃん?蛇骨鬼婆ちゃんなの?」
「勿論私だよ♪」
小猫姫は再度落涙するなり…。蛇骨鬼に密着したのである。
「蛇骨鬼婆ちゃん!」
「小猫姫…あんたは本当に甘えん坊だね♪」
すると蛇骨鬼は小声で…。
「心配させちゃったね…御免ね…小猫姫…今迄辛かっただろう?」
問い掛けられた小猫姫は小声で返答する。
「正直…」
「あんたは正直者だね♪」
すると小猫姫は恐る恐る…。
「蛇骨鬼は死んじゃったのに如何して?」
小猫姫の問い掛けに蛇骨鬼は即答する。
「今現在の私は肉体こそ消滅しちゃったけど…私の霊魂は自然界と一体化したのさ♪」
蛇骨鬼は死後…。小猫姫の様子を観察した蛇骨鬼だがメソメソし続ける小猫姫を心配したのである。
「あんたの様子が気になってね♪」
「蛇骨鬼婆ちゃん…私…」
小猫姫は死にたくなった事実と桜花姫と絶縁した事実を洗い浚い告白したのである。
「桜花姫ちゃんと絶縁しちゃったのかね…」
「私…二度と桜花姫姉ちゃんとは…」
涙腺から涙が零れ落ちる。
「私…本当は桜花姫姉ちゃんと仲直り出来るなら…仲直りしたいよ…」
仲直りしたいと本音を告白する小猫姫に蛇骨鬼は笑顔で…。
「安心しな♪小猫姫♪素直に謝罪すれば仲直り出来るさ♪」
「仲直り出来るかな?」
小猫姫は不安がる。
「桜花姫ちゃんは基本的に人間関係では無欲恬淡だからね♪」
「桜花姫姉ちゃんに謝罪するよ…」
小猫姫は内心不安であったが謝罪を決意する。すると蛇骨鬼は小猫姫を直視するなり…。
「小猫姫…あんたは小梅姫って名前の妖女と瓜二つだね…」
「小梅姫って誰なの?」
「小梅姫はね…元祖妖女…桃子姫の愛娘だよ♪」
桃子姫の名前に小猫姫は反応する。
「桃子姫って…千年前の妖女の…ひょっとして彼女の愛娘が私にそっくりなの?」
「勿論だよ♪」
すると蛇骨鬼は再度笑顔で…。
「ひょっとすると小猫姫は小梅姫の再来かも知れないね♪」
「えっ…私が…」
(元祖妖女の…愛娘の再来♪)
小猫姫は赤面するが内心では大喜びしたのである。一瞬であるが小猫姫はニコッと微笑む。
「おっ!小猫姫…笑顔が戻ったね♪」
「えっ?」
「小猫姫は笑顔が一番だよ♪」
すると直後…。実体化した蛇骨鬼の肉体であるが突如として半透明化したのである。
「えっ!?蛇骨鬼婆ちゃん!?肉体が半透明に…」
「如何やら時間みたいだね…」
「えっ…」
蛇骨鬼は最後に…。
「小猫姫…今後は大変かも知れないけどね…あんたはあんたらしく大勢の村人達と仲良く生活しな♪あんたは人一倍甘えん坊だけど人懐っこい性格だから大丈夫だよ♪勿論桜花姫ちゃんや三蔵郎とも仲良くね♪間違っても自害は駄目だよ…」
「蛇骨鬼婆ちゃん…」
「時たまだけど…私の墓参りは忘れずにね♪」
「約束するよ…蛇骨鬼婆ちゃん…」
小猫姫は落涙し始める。
「最後だけどね…私にとってあんたとの生活は毎日が幸福だったよ♪」
「蛇骨鬼婆ちゃん…」
「感謝するね♪小猫姫♪」
半透明化した蛇骨鬼の肉体が消滅したのである。
「えっ…」
(蛇骨鬼婆ちゃんの肉体が…)
寂然と感じるが…。
「私…三蔵郎様の寺院に戻ろう…」
(戻って桜花姫姉ちゃんと三蔵郎様に謝罪しないと…)
小猫姫は三蔵郎の寺院へと直行したのである。同時刻…。寺院の庭園では桜花姫と冥王鬼が対峙する。
「死滅せよ…亡者の集合体…」
冥王鬼は木刀に自身の神力を集中…。木刀の剣先から蛍光色の雷球を形成させる。
「雷球だわ…」
直後…。木刀の剣先から蛍光色の雷球が発射される。雷球が桜花姫に接近するが桜花姫は霊斬刀で一振り…。雷球を消滅させたのである。
「私の神力を消滅させるとは…」
「今度は私の出番ね♪」
桜花姫は自身の妖力を霊斬刀に集中させる。すると銀色だった霊斬刀の白刃は血紅色の霊気に覆い包まれる。
「貴様の所持する刀剣は妖刀だな…」
冥王鬼は勿論…。
(霊斬刀に血紅色の霊気…本物の妖刀みたいですね…)
三蔵郎も血紅色の霊気に覆い包まれた霊斬刀を直視すると正真正銘妖刀であると感じる。桜花姫は妖刀へと変化した霊斬刀を一振りする。すると直後…。霊斬刀の効力からか表門を消滅させる衝撃波を発生させる。寺院の前方近辺より推定二百メートル規模のクレーターが形作られる。
「えっ…」
桜花姫は勿論…。三蔵郎と霊斬刀の威力を直視するなり愕然とする。
(桜花姫様が妖力を集中させただけで…こんな威力を発揮出来るなんて…)
一方のアクアヴィーナスも…。
(恐らく桜花姫の魔力の効力よね…深海底魔女のスキュランが彼女に退治されるのも納得だわ…)
するとクレーターの中心部より結界を構築した冥王鬼が浮遊する。
「絶大なる妖力だ…貴様の力量は妖女のみならず…下手すると最高神に相当するかも知れないな…」
「私が…最高神に?」
冥王鬼は東国最高峰…。天空山を眺望したのである。
(桜花姫と仲間達を相手するのは後回しだ…)
冥王鬼は突如として姿形がパッと消滅する。
「冥王鬼!?」
(逃げられちゃった…)
桜花姫は身動き出来なくなった三蔵郎とアクアヴィーナスの金縛りを解除したのである。
「身動き出来るわ…」
「感謝しますね…桜花姫様…」
三蔵郎とアクアヴィーナスは桜花姫に感謝する。
「あんたは本当に最強ね…桜花姫…」
アクアヴィーナスはビクビクした様子で桜花姫が最強であると発言したのである。
「勿論♪私は最上級妖女の月影桜花姫だからね♪」
彼女は笑顔で返答する。
「ですが桜花姫様が霊斬刀を一振りしただけで二町の陸地が一掃されるなんて…ひょっとすると霊斬刀は妖女が所持してこそ本来の力量を発揮するのかも知れませんね…」
直後である。
「えっ!?」
霊斬刀が虹色に発光したかと思いきや…。巫女装束の小柄の少女が霊斬刀の白刃から出現したのである。
「きゃっ!」
「うわっ!霊斬刀から女人が…」
「彼女は一体何者なの!?」
三蔵郎とアクアヴィーナスは驚愕する。桜花姫は突如として出現した巫女装束の女性に恐る恐る…。
「あんたは霊魂巨神木の精霊かしら?」
「私だ…」
霊魂巨神木の精霊は即答する。
「三蔵郎様から霊斬刀を私に手渡ししたのはあんたかしら?」
「無論である…」
アクアヴィーナスは恐る恐る…。
「彼女は一体何者なの?桜花姫…」
アクアヴィーナスの問い掛けに桜花姫は笑顔で返答する。
「彼女は世界樹の霊魂巨神木の精霊よ…姿形は小柄の少女だけど本体は世界樹だからね♪」
「貴女様は霊魂巨神木の精霊でしたか…」
(こんなにも美人なんて…)
三蔵郎は精霊に見惚れたのか赤面したのである。
「貴様はこんな私に見惚れたのか?」
問い掛けられた三蔵郎は動揺し始める。
「えっ!?私は別に…何も…」
三蔵郎は必死に誤魔化したのである。
(三蔵郎様は助平だわ♪)
桜花姫は三蔵郎の様子にニコッと微笑む。すると精霊は三蔵郎を直視するなりボソッと発言する。
「如何やら貴様が桜花姫の理解者である人間の僧侶か…悪霊の集合体に憑霊されても健康体とは…」
「意気衝天こそが私にとって美点ですからね♪私は一生涯現役ですよ!」
精霊に一生現役だと断言したのである。
「貴様だったら悪霊に憑霊されても大丈夫だな…」
すると今度は桜花姫が発言する。
「あんたは今迄雲隠れしたのね…」
霊魂巨神木の精霊は雲隠れした状態で桜花姫に追尾…。彼女と同行したのである。
「貴様には見破られたか…」
「当然でしょう♪私に雲隠れしても簡単に見破っちゃうからね♪」
桜花姫は最初から精霊が自身の背後に追尾したのを察知する。
「先程の絶大なる妖力だ…貴様だったら冥王鬼の暴走を阻止出来るかも知れないな…」
「早速冥王鬼を仕留めちゃいましょう♪」
「勿論ですとも♪桜花姫様♪即刻冥王鬼を降参させ…彼女の暴走から俗界を守護しましょう!」
するとアクアヴィーナスが恐る恐る…。
「桜花姫?彼奴の居場所は?」
「冥王鬼の居場所なら千里眼の妖術で把握したから大丈夫♪」
桜花姫は冥王鬼が撤退した直後に千里眼の妖術を発動…。彼女の居場所を正確に把握したのである。
「冥王鬼の居場所は天空山の頂上よ♪」
「天空山とは東国の最高峰ですか…」
冥王鬼は天空山の頂上にて逃亡…。潜伏したのである。一同は天空山へと移動する直前…。
「えっ…」
とある白猫が桜花姫の目前に接近したのである。
「白猫かしら?」
桜花姫は恐る恐る近寄る。
「こんな場所に白猫が…」
すると直後である。白猫の肉体から白煙が発生する。
「えっ?」
白猫が白煙に覆い包まれたかと思いきや…。ポンッと小柄の少女が出現する。
「えっ!?白猫が女の子に!?」
アクアヴィーナスは驚愕したのである。
「小猫姫…」
白猫の正体は誰であろう山猫妖女の小猫姫…。彼女だったのである。
「白猫はあんただったのね…」
「桜花姫姉ちゃん…」
二人とも内心気まずいと感じる。小猫姫は多少強張った表情で落涙するなり…。
「桜花姫姉ちゃん…三蔵郎様…心配させちゃって御免なさい…」
小猫姫は二人に謝罪したのである。
「小猫姫様…」
「小猫姫…」
桜花姫も涙腺より涙が零れ落ちる。
「私こそ御免なさいね…小猫姫…」
「えっ…桜花姫様…」
「桜花姫…」
(無慈悲の桜花姫でも…落涙するのね…)
落涙する桜花姫に三蔵郎とアクアヴィーナスは驚愕する。
「私は妹分の小猫姫に絶縁なんて…最低だよね…」
「私だって…何度も自害し掛けて…桜花姫姉ちゃんや三蔵郎様を心配させちゃったから…」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私は何時迄もあんたの姉貴分だから心配しないでね♪」
桜花姫の発言に小猫姫も笑顔で返答する。
「勿論♪私だって何時迄も桜花姫姉ちゃんの妹分だよ♪」
彼女達は笑顔で断言したのである。
「金輪際自害は禁止だからね…小猫姫…約束出来るわよね?」
「大丈夫よ…蛇骨鬼婆ちゃんとも約束したから♪」
「えっ…蛇骨鬼婆ちゃんって?」
彼女の発言に桜花姫は一瞬絶句する。小猫姫は先程の出来事を洗い浚い告白したのである。
「霊体だったけど…蛇骨鬼婆ちゃんと再会出来たから…私は大丈夫だよ♪」
「蛇骨鬼婆ちゃんは小猫姫が余程心配だったみたいね…」
(蛇骨鬼婆ちゃんも安心出来るよね…)
桜花姫は勿論…。三蔵郎も小猫姫の吹っ切れた様子に一先ずホッとする。
「ですが桜花姫様と小猫姫様が仲直り出来たので一安心ですね♪ホッとしましたよ♪」
「小猫姫との関係は一件落着だけど…冥王鬼を仕留めないとね…」
小猫姫は恐る恐る問い掛ける。
「冥王鬼って…誰なの?桜花姫姉ちゃん?」
「冥王鬼は神族の一員で…蛇骨鬼婆ちゃんの悪友よ…」
「蛇骨鬼婆ちゃんの…悪友?」
「彼女を復讐から…解放するのよ…」
普段の桜花姫であれば敵対者が人間であっても我先にと仕留めると断言するのだが…。今回ばかりは異例中の異例であると感じる。すると小猫姫は真剣そうな表情で…。
「桜花姫姉ちゃん!私にも協力させてよ!」
桜花姫はニコッと微笑む。
「勿論よ♪小猫姫♪協力してね!」
一同は再度直行する寸前…。
「悪友の私を放置するなんて意地悪ね♪桜花姫♪」
今度は粉雪妖女の氷麗姫が出現する。
「あんたは氷麗姫?」
すると氷麗姫はアクアヴィーナスの存在に気付くなり…。
「えっ?あんたは誰よ?異国の人間かしら?」
アクアヴィーナスはビクビクした様子で名前を名乗る。
「えっ…私は…アクアヴィーナスです…」
「彼女は人魚王国…アクアユートピアの人魚で私の悪友よ♪人一倍気弱だから意地悪しないでね♪」
「あんたは人魚なのね…」
(彼女…取っ付き難そうな性格だわ…根暗っぽいし仲良く出来なさそうね…)
氷麗姫は内心アクアヴィーナスと仲良くするのは困難であると感じる。桜花姫は周囲を確認する。
「全員集合したわね♪」
桜花姫は一息するなり…。
「今回は恐らく今迄の戦闘とは比較出来ない大激戦が予想されるわ…自宅に戻りたかったら遠慮せずに戻りなさい…無理強いしないから…」
桜花姫の発言に一同は即答する。
「私は桜花姫様に同行しますよ♪」
「私だって!」
「戻っても退屈だからね…協力するわ♪」
アクアヴィーナスも小声で返答する。
「私も…同行するわ…桜花姫…」
霊魂巨神木の精霊も…。
「貴様の奮闘…見届けるか…」
桜花姫の発言に一同は覚悟する。
(あんた達♪)
「成立ね♪」
桜花姫は内心大喜びしたのである。
「早速天空山の頂上に移動するわよ…」
桜花姫は口寄せの妖術を発動する。自分自身の肉体と一同を天空山の頂上を目標にテレポート…。桜花姫一同は目的地である天空山の頂上へと無事に移動出来たのである。
「口寄せの妖術…成功♪」
「天空山の頂上ですか…」
「私達…一瞬で…」
周囲を眺望すると太平神国の村里全域が眺望出来る。
「絶景の景色だわ♪今日が観光だったら最高なのに…」
観光なら最高であると発言する氷麗姫に桜花姫が笑顔で…。
「冥王鬼を片付けてから思う存分観光しちゃえば♪」
「冥王鬼は?」
すると一同の背後より一人の小柄の女性が佇立する。
「貴様達は幸運だな…」
「冥王鬼!?」
一同は背後の冥王鬼に驚愕したのである。
「貴様達…儀式を開始する…」
「儀式ですって?一体何を?」
桜花姫が問い掛けると冥王鬼はニヤッとした表情で…。
「月影桜花姫よ…天道眼の本当の効力を直視するのだ…」
「天道眼の本当の効力ですって?」
精霊は身震いし始める。
「此奴は危険だ!」
普段は物静かな霊魂巨神木の精霊であるが…。非常にソワソワした様子であり一同は絶句する。
「一体如何しちゃったのよ!?」
「全員…死にたくなければ私か桜花姫の肉体に接触するのだ!」
「えっ…」
混乱した一同であるが三蔵郎と氷麗姫には精霊が接触…。アクアヴィーナスと小猫姫には桜花姫が接触したのである。すると数秒後…。冥王鬼は再度天道眼を発動する。
「神族を除外する地上界の愚劣なる生命体…冥界の愚劣なる亡者達よ…神族の神世界から完全に浄化せよ…」
直後である。地上界全域の人間達は勿論…。あらゆる生命体が粒子状の発光体に変化するなり消滅したのである。アクアユートピアではウェンディーネが消滅し始める自身の肉体に恐怖する。
「えっ!?全身が…」
ウェンディーネは肉体諸共消滅したのである。国境のスキュランはアクアユートピア全体をシールド魔法で守護するのだが…。彼女は恐る恐る消滅し始める自身の肉体を直視したのである。
「消滅の魔法かしら…」
(私…二度も殺されるのね…)
消滅の恐怖よりも空虚に感じられる。深海底のアクアユートピアの人魚達は勿論…。海中の生物達も消滅したのである。同時刻…。死後の世界である地獄では亡者達が粒子状の発光体に変化したのである。
「はっ?」
地獄の住人である鬼殺丸は周囲の悪霊が消滅する光景を直視する。
「亡者達が…」
周囲の悪霊が粒子状の発光体に変化…。消滅したのである。
「一体何が発生しやがった?ん?」
自身の肉体を直視すると無数の粒子状の発光体へと変化…。肉体が消滅し始める。
(畜生が…俺も消滅するのか…)
鬼殺丸も消滅したのである。死後の世界である地獄は虚無の世界であり亡者は誰一人として存在しない。同時刻…。天空山の頂上では冥王鬼が桜花姫一行を凝視する。
「非常に残念だな…貴様達だけは無事だったか…」
すると氷麗姫が恐る恐る…。
「えっ…一体何が発生したのよ!?」
問い掛けられた冥王鬼は即答する。
「何が発生したか?神族を除外する低次元の種族を…存在諸共消滅させたのだ…」
冥王鬼の発言に一同は絶句したのである。
「なっ!?」
「存在を…消滅ですって!?」
「地上界の下等生物達は無論…冥界の薄汚い亡者達も全員駆除したからな…神族の支配する神世界に薄汚い害虫の存在は相応しくない…駆除して当然であろう?」
冥王鬼の発動した消滅の効力により地上界は勿論…。死後の世界である冥界は無人地帯であり今現在無事なのは桜花姫一行だけである。
「天道眼と神通力を所持する桜花姫と霊魂巨神木を駆除出来なかったのは非常に残念だ…貴様達は幸運だったな…」
天道眼に対抗出来るのは神通力か天道眼を所持する妖女か霊魂巨神木のみであり冥王鬼の消滅の効力でも桜花姫と霊魂巨神木は消滅を無効化…。無事だったのである。
「えっ…ウェンディーネ母様は?」
恐る恐る問い掛けるアクアヴィーナスに冥王鬼は即答する。
「勿論アクアユートピアの人魚達も消滅した…」
「えっ…ウェンディーネ母様が…」
(死んじゃったの…)
「アクアヴィーナス…」
アクアヴィーナスは落涙したのである。
「勿論人魚の貴様も仕留めるから安心しろ…」
冥王鬼の横暴さに腹立たしくなった三蔵郎は即座に護身用の連発銃を所持…。
「冥王鬼!」
「えっ!?三蔵郎様!?」
周囲の者達は三蔵郎の様子に吃驚する。
「何が神族ですか!?何が神世界ですか!?神族であっても貴女様みたいな極悪非道の大悪党は絶対に看過出来ません!」
三蔵郎は鬼神の表情であり冥王鬼を睥睨したのである。
「えっ…」
(普段は誰よりも仏様みたいな三蔵郎様が…)
桜花姫は勿論…。
(えっ…三蔵郎様…仁王様みたい…)
(三蔵郎って…こんな人物だったっけ?)
小猫姫と氷麗姫も睥睨する三蔵郎に畏怖したのである。桜花姫は恐る恐る…。
「三蔵郎様…あんまり彼女を挑発すると…」
「ですが桜花姫様!彼女は大勢の民衆達を消滅させた極悪非道の大悪党なのですよ!今回の大罪は神族であっても絶対に許容出来ません!」
「三蔵郎様…相手は神族なのよ!?彼女に反抗すれば三蔵郎様が殺されちゃうわ…」
桜花姫は必死に三蔵郎を制止するのだが三蔵郎は只管に怒号する。
「冥王鬼!今回ばかりは私が神族である貴女様を征伐します!」
怒号し続ける三蔵郎に冥王鬼は呆れ果てる。
(人間風情が…)
「貴様は命知らずだな…人間の分際で天道眼を所持する私を征伐すると?片腹痛いわ…」
三蔵郎は最早後戻りが出来ないと覚悟する。
(一か八か…)
「冥王鬼…覚悟!」
三蔵郎は一か八か冥王鬼に連発銃を発砲したのである。
「所詮人間の玩具で…」
(無謀だな…)
冥王鬼は木刀でガードするのだが…。
「はっ!?」
連発銃の弾丸は木刀を屈折させ冥王鬼の胸部を貫通したのである。
「ぐっ…貴様…」
冥王鬼は口先から吐血する。
「えっ…」
一同は予想外の事態に再度絶句したのである。
「冥王鬼の…木刀が…」
本来なら鋼鉄をも両断出来る冥王鬼の木刀であるが…。一発の銃弾によって簡単に屈折したのである。三蔵郎は身震いした表情で恐る恐る…。
「冥王鬼…最後の最後で油断しましたね…油断大敵ですよ…」
すると桜花姫が不思議そうな表情で問い掛ける。
「如何して三蔵郎様の連発銃で…冥王鬼の木刀が簡単に屈折したのかしら?」
桜花姫の疑問に三蔵郎は即答する。
「彼女の木刀は恐らく小面蜘蛛と同質の素材で形作られた代物でしょう…」
冥王鬼の木刀は霊魂巨神木の小枝で形作られた代物である。冥王鬼の木刀は妖力を吸収出来る反面…。妖力を使用しない攻撃には無力である。
「彼女の木刀は妖力を吸収出来るかも知れませんが…妖力を使用しない攻撃なら通用するかも知れないと予想したのです…」
「人間である私の父様は此奴に殺されたのよ…」
すると霊魂巨神木の精霊が解説する。
「恐らくだが当時…貴様の父親…月影夜叉丸が彼女に殺害されたのは装備品の木刀に自身の神力を混入させたのであろう…」
冥王鬼の木刀は自身の神力を混入すると鋼鉄をも両断出来る。真逆に神力を混入しなければ単なる木刀同然である。
「完全に油断だったのね…」
「正直…一か八かの大博打でしたが…」
三蔵郎自身は大博打であり冥王鬼に反撃されるのを覚悟で発砲…。冥王鬼に殺害されるのは覚悟したのである。三蔵郎の大博打で胸部を怪我した冥王鬼であるが…。自身の神力により傷口を治癒させる。
「貴様等…地上界の存在で…全員死滅させる!」
冥王鬼は口寄せにより周囲の地面から三体の小面蜘蛛を出現させたのである。
「蜘蛛の怪物!?」
「ひっ!小面蜘蛛だわ!?」
「桜花姫姉ちゃん!撃退出来ないの!?」
三体の小面蜘蛛は桜花姫一行の周囲を包囲する。
「三体の小面蜘蛛よ!二人を除外して四人は妖女だ!食い殺せ!」
小面蜘蛛は死亡した神族の霊魂が器物に憑霊した悪霊である。霊魂巨神木から誕生した器物の存在であり妖力は通用しない。
「如何するのよ!?桜花姫!?小面蜘蛛には妖術は通用しないわよ!」
桜花姫以外の二人の妖女は勿論…。アクアヴィーナスはビクビクするなり力一杯桜花姫に密着する。妖女が小面蜘蛛を仕留めるのは実質困難であり妖力を使用しても吸収されるだけである。
「桜花姫様…武器を使用しても三体の小面蜘蛛を同時に相手では…」
正直多勢に無勢であり武器を所持する三蔵郎だけで三体の小面蜘蛛を仕留めるのは実質不可能…。桜花姫は一瞬瞑目する。
「一か八か…」
(口寄せの妖術…発動!)
桜花姫は神通力を駆使しなければ発動出来ない口寄せの妖術を使用したのである。自身の細胞を三体の小面蜘蛛の体内に口寄せする。桜花姫の様子に冥王鬼は恐る恐る…。
「ん?貴様…一体何を発動した?妖術を駆使しても小面蜘蛛には通用しないぞ…」
「単なる大博打よ…」
桜花姫は即答する。
「大博打だと?」
すると数秒後…。三体の小面蜘蛛がポンッと白煙に覆い包まれる。
「なっ!?小面蜘蛛が…」
白煙に覆い包まれた三体の小面蜘蛛が三人の桜花姫に変化したのである。
「えっ!?如何して桜花姫が…」
「桜花姫姉ちゃんが三人も!?」
「ひょっとして彼女達は…桜花姫様の分身体でしょうか?」
「如何して蜘蛛の怪物が桜花姫に変化したのかしら?」
突然の出来事に一同は驚愕する。すると冥王鬼は桜花姫に睥睨するなり…。
「貴様…小面蜘蛛の体内に異物を混入させたな?」
桜花姫は笑顔で即答する。
「口寄せの妖術で小面蜘蛛の体内に私自身の細胞を混入させたのよ♪」
彼女は口寄せの妖術で自身の細胞を小面蜘蛛の体内に混入…。侵食させ自身の分身体に変換させたのである。
「小面蜘蛛の肉体を利用して自身の分身体を形作るとは…貴様は小娘の外見とは裏腹に中身は怪物同然だな…」
冥王鬼の怪物発言にピリピリする。
(地上界の女神様である私を怪物ですって…)
「私の分身体!彼女の身動きを封殺しなさい!」
三体の分身体は冥王鬼に金縛りの妖術を発動…。
「ぐっ…」
冥王鬼は完全に身動き出来なくなる。
(木刀さえ破壊されなければ…畜生…)
最早木刀が無くなった状態では天道眼を所持しても桜花姫と三体の分身体に対抗するのは不可能である。
(神世界の再興は間近なのに…私はこんな小娘に殺されるのか…)
桜花姫は一歩ずつ身動き出来なくなった冥王鬼に近寄る。すると小猫姫が大声で…。
「桜花姫姉ちゃん!彼女を殺さないで!」
「えっ?小猫姫?」
制止する小猫姫に一同と冥王鬼はハッとした表情で小猫姫に注目する。
「冥王鬼は蛇骨鬼婆ちゃんの友人なのよ…彼女を殺しちゃったら蛇骨鬼婆ちゃん…絶対に悲しんじゃうよ…」
小猫姫は落涙したのである。すると桜花姫は笑顔で返答する。
「大丈夫よ♪小猫姫♪私は彼女を救済したいの♪蛇骨鬼婆ちゃんと約束したからね♪安心しなさい♪」
桜花姫は金縛りの妖術を解除…。解放したのである。
「えっ!?桜花姫!?折角此奴の身動きを封殺したのに…金縛りを解除しちゃうの!?」
アクアヴィーナスは警戒したのか恐る恐る後退りする。
「大丈夫よ♪アクアヴィーナス♪彼女は大分弱体化したわ♪抵抗しないわよ…」
冥王鬼は先程の消滅の効力により神力を消耗…。最早抵抗出来ない状態である。冥王鬼はバタッと横たわる。
「大丈夫!?冥王鬼!?」
小猫姫が近寄る。冥王鬼は恐る恐る直視するなり…。
「小娘…敵対者である私を庇護するとは…」
「あんたは蛇骨鬼婆ちゃんの友人でしょう?庇護するのは当然だよ…」
小猫姫の発言に冥王鬼は苦笑した様子で返答する。
「貴様は蛇神の蛇骨鬼の知人か?神族の一員なのにこんな小娘と交流したのか…蛇骨鬼は…」
冥王鬼は蛇骨鬼に呆れ果てる。
「蛇骨鬼婆ちゃんにとって…私と桜花姫姉ちゃんは孫娘なの…」
「貴様達が…孫娘だと?」
すると小猫姫は再度涙が零れ落ちる。
「貴様…」
冥王鬼は恐る恐る小猫姫に問い掛ける。
「蛇骨鬼は?」
「蛇骨鬼婆ちゃんは…老衰で死んじゃったよ…」
「老衰か…」
(蛇骨鬼…)
冥王鬼は無表情であり沈黙したのである。沈黙する冥王鬼に桜花姫は再度問い掛ける。
「冥王鬼…如何するのよ?今度こそ私と勝負する?」
問い掛けられた冥王鬼は一瞬苛立つも…。
(今更桜花姫と勝負しても…)
「降参するよ…最早神力も空っぽの状態だ…こんな状態では貴様と勝負しても敗北するだけだからな…」
不本意であるが冥王鬼は降参する。
「あんた♪意外と潔白なのね♪」
(此奴…)
冥王鬼はヘラヘラする桜花姫にピリピリしたのである。すると三蔵郎は恐る恐る…。
「冥王鬼?貴女の神力で消滅された村人達を元通りには戻せませんか?」
問い掛けられた冥王鬼は一瞬困惑したのである。
「あんた…今度も私達に手出しするの?」
桜花姫が問い掛けると冥王鬼は彼女に睥睨するなり…。
「私の敗北だ…神世界の再興を実現出来ないのは残念だったが…人間達への復讐は達成したからな…今更貴様達に手出ししても無意味だ…」
冥王鬼の様子に一同はホッとする。
「再生は可能なのですか?」
「再度天道眼を発動すれば消滅した生命体を復活させられるが…生憎私には神力が消耗した状態だ…再度復活させるには莫大なる神力を回復させなくては…」
すると桜花姫が恐る恐る…。
「私にも出来ないかしら?」
桜花姫の問い掛けに冥王鬼は無表情で返答する。
「貴様自身も神族の眼光を所持する最上級妖女であるが…相当の妖力が必要不可欠だ…場合によっては術者が衰弱死するかも知れない…」
「えっ…」
「術者が…衰弱死ですと…」
桜花姫以外の一同は衰弱死の一言にビクッと反応したのである。
「あんた達♪心配しなくても私なら大丈夫よ♪」
「ですが桜花姫様…」
「あんたが死んじゃったら…」
「桜花姫姉ちゃんが死んじゃったら私…今度こそ…」
「あんた達…」
極度に心配する一同に困惑する。すると直後…。
「きゃっ!」
「地響きです!」
「今度も地震かしら!?」
再度グラグラッと地響きが発生したのである。
「なっ!?」
三蔵郎は東方の海面上に直視する。
「桜花姫様!?東海の海面上に岩石の巨島が此方に接近中です!」
海面上には標高のみでも天空に到達する規格外の巨大移動物体が出現…。
「岩石の巨島ですって?」
桜花姫も岩石の巨島に注目したのである。
「えっ…何かしら?」
アクアヴィーナスはビクビクした様子で桜花姫に密着する。
「アクアヴィーナス?大丈夫?」
「ひょっとして私が深海底で遭遇した…海亀の怪物かしら…」
「えっ…海亀の怪物?彼奴が…」
巨大移動物体は全体的に海亀の形状であり全身は凸凹した岩石の肉体…。尻尾の部分は巨大海蛇であり背中の甲羅部分には無数の巨大人面が確認出来る。
「地震の正体は彼奴だったのね…」
先程から自身が頻発したのは怪物が世界各地で暴れ回った影響である。すると冥王鬼が恐る恐る…。
「魔獣…羅刹獣だな…」
羅刹獣の一言に霊魂巨神木の精霊が反応する。
「羅刹獣だと?此奴が天空から出現した旧世界の魔獣か…こんなにも規格外の怪物だったとは…」
「羅刹獣は神族でも十二人の最高神が全身全霊で封印した規格外の怪物だぞ…封印解除直後であれば私一人でも仕留められる程度の実力だったが…」
氷麗姫は恐る恐る問い掛ける。
「えっ…彼奴はあんたでも仕留められないの!?」
「残念だが…」
羅刹獣は先程よりも魔力が増大化…。最早全盛期に匹敵する状態だったのである。
「こんなにも急速に魔力が増大化するとは予想外だった…」
(世界各地の大陸を暴食したのか?)
氷麗姫が恐る恐る問い掛ける。
「如何すれば彼奴を仕留められるのよ!?彼奴を仕留める方法とか…」
「私に神力が戻れば…一か八か…」
桜花姫が笑顔で…。
「私が羅刹獣を仕留めるわ♪」
仕留めると断言した桜花姫であるが周囲の者達は猛反対する。
「桜花姫様!?本気なのですか!?相手は全世界を破壊し兼ねない規格外の怪物なのですよ…」
「今回ばかりは桜花姫姉ちゃんでも…」
「あんた達は心配性ね♪私は最上級妖女なのよ♪今回だって大丈夫よ!」
周囲の者達の反応に桜花姫は只管笑顔で返答したのである。すると霊魂巨神木の精霊がボソッと一言…。
「仙女に覚醒すれば…」
「えっ?仙女ですって?」
一同は精霊に注目する。
「桜花姫が今度も仙女に覚醒出来れば…羅刹獣を仕留められる確率が上昇するかも知れない…」
「私が仙女に…」
半年前の霊魂巨神木との戦闘を想起したのである。
「桜花姫様が仙女に覚醒出来れば…羅刹獣を征伐出来るのですね!」
「完全に仕留められるかは断言出来ないが…何も実行しないよりは…」
桜花姫は精霊に近寄るなり…。
「早速仙女に覚醒するわ!一体如何すれば仙女に覚醒出来るかしら?」
問い掛けられた精霊は一瞬沈黙するも発言し始める。
「特定の妖女が仙女に覚醒するには莫大なる妖力は勿論…瞳術の天道眼が必要不可欠だ…貴様自身の妖力のみでは力不足であるからな…仙女に覚醒するのであれば周囲の者達の妖力を存分に吸収しろ…」
「妖力を吸収?」
桜花姫は背後の氷麗姫と小猫姫は勿論…。アクアヴィーナスを直視する。
「如何やら今回はあんた達の妖力が必要みたいね…」
すると小猫姫は笑顔で…。
「桜花姫姉ちゃん♪私の妖力…吸収して…」
小猫姫は桜花姫の左手に接触すると急速に妖力を消耗したのである。
「ぐっ!」
「小猫姫…大丈夫?」
心配する桜花姫であるが…。小猫姫は笑顔で返答する。
「私なら大丈夫よ♪桜花姫姉ちゃん…」
小猫姫の妖力は非常に莫大であり彼女の妖力を吸収すると今迄よりも桁外れの妖力が体内に蓄積される。すると氷麗姫は恐る恐る…。
「止むを得ないわね…私の妖力も吸収しなさい…」
氷麗姫は右手で桜花姫の胸部に接触したのである。
「いや〜ん♪」
「桜花姫♪あんたのおっぱいって…饅頭みたいね♪」
(氷麗姫…意外と助平なのね…)
乳房の接触により桜花姫は赤面する。
「なっ!?」
三蔵郎は赤面するも…。即座に瞑目したのである。必死に瞑目する三蔵郎に小猫姫は笑顔で…。
「三蔵郎様って意外と助平だね♪」
「えっ!?私は…別に…何も…」
三蔵郎は必死に誤魔化すものの赤面したのである。桜花姫の乳房を弄った氷麗姫であるが…。
「ぐっ…」
(桜花姫の吸収力は絶大ね…)
体内の妖力を吸収され数十秒で妖力の大半を消耗したのである。今度はアクアヴィーナスが近寄るなり…。
「桜花姫…私の魔力…吸収して…」
「アクアヴィーナス…」
アクアヴィーナスはビクビクした様子であり恐る恐る桜花姫の右手に握手したのである。
「ぐっ!」
体内の魔力が急速に消耗…。桜花姫の体内へと吸収されたのである。
「御免ね…アクアヴィーナス…」
桜花姫はアクアヴィーナスに謝罪する。
「大丈夫よ…桜花姫…気にしないで♪」
アクアヴィーナスは重苦しい状態だが…。笑顔で返答したのである。
「妖力は蓄積されたわ♪あんた達…感謝するわね♪」
桜花姫は彼女達に謝礼する。今度は三蔵郎を直視するなり…。
「三蔵郎様…」
「如何されましたか?」
霊斬刀を手渡したのである。
「返却するわね…今現在の私には不要みたい…」
「承知しました…桜花姫様…」
すると直後…。桜花姫の全身がピカッと光り輝いたのである。
「なっ!?桜花姫様の肉体から閃光が…」
「一体何が…」
突然の彼女の発光に一同は瞑目する。数秒後…。周囲の者達が桜花姫に注目するが頂上の中心部には球状の発光体が確認出来る。
「発光体だわ…」
「桜花姫は?」
すると球状の発光体が女体を形成するなり…。巫女装束の女神へと変化したのである。
「えっ…女神様?」
「彼女は天女でしょうか…」
彼女は両目を瞑目した様子であり頭部には金冠…。背後の背中には円形の光背が確認出来る。三蔵郎は恐る恐る…。
「貴女様は…桜花姫様でしょうか?」
女性は三蔵郎を直視するなり笑顔で返答する。
「私よ♪桜花姫よ♪」
「桜花姫様ですか!?一瞬女神様かと…」
彼女は女神様の一言に赤面…。
「私が女神様なんて♪三蔵郎様は大袈裟ね♪」
内心では大喜びしたのである。
「あんた…桜花姫なの?別人みたいだわ…」
「普段よりも大人っぽいわね…」
氷麗姫とアクアヴィーナスも仙女である彼女に見惚れる。すると精霊が桜花姫に近寄るなり…。
「如何やら成功だな…月影桜花姫よ…今現在の貴様は半年前の貴様よりも強大であるぞ…今現在の貴様は百人力?千人力の妖女だな…」
「私は最上級妖女だから当然よ♪今回は小猫姫以外にも…氷麗姫とアクアヴィーナスの妖力も吸収したからね♪」
今迄で最大級の妖力を所持する。
「今現在の貴様であれば羅刹獣とも思う存分対抗出来そうだ…」
「勿論よ♪」
今度は冥王鬼が近寄る。
「月影桜花姫…貴様の神族の眼光と私の神力…吸収しろ…」
「えっ…冥王鬼…」
冥王鬼の表情を直視すると彼女の表情は先程の殺伐とした雰囲気は感じられない。
(彼女…仏様みたいな雰囲気ね…)
意外であると感じる。
「私は貴様の父親を殺害したからな…今現在の私に出来る唯一の贖罪だ…」
桜花姫はニコッと微笑む。
「気にしないで♪父様の一件は私の誕生日の前日の出来事でしょう♪私は気にしないから大丈夫よ♪」
「えっ…桜花姫様…」
「桜花姫姉ちゃん…」
「あんたは父親が殺されたのに…気にしないって…」
「桜花姫…彼女にとって家族の基準とは…」
気にしないと発言する桜花姫に周囲の者達は一瞬ドン引きしたのである。
「兎にも角にも…私は彼奴を仕留めるわね♪」
桜花姫は飛空の妖術を発動…。肉体が空中へと浮遊したのである。
「桜花姫様…御無事で…」
「桜花姫姉ちゃん!頑張って!」
「あんたらしく大暴れしなさいよ♪桜花姫♪」
一同は天空の桜花姫を見届ける。同時刻…。羅刹獣は太平神国に接近したのである。
「アトハココダケダ!チッポケナシマグニダガ…イガイトカミゴタメハアリソウダゾ…」
すると背中の甲羅部分の人面が発言し始める。
「此奴は島国か?小規模の島国だか…無数の生命体の気配を感じる…」
「生命体か♪こんな小規模の島国にも生命体が存在するのか?此奴は久方振りに満足出来そうだな♪」
「リクチノガイチュウモロトモシマグニヲクッテヤルゼ♪」
太平神国へと直行する羅刹獣であるが…。
「羅刹獣!あんたの相手は私よ!」
「ん!?」
「誰だ?」
「彼奴は?」
甲羅の無数の巨大人面が天空を浮遊する桜花姫を直視したのである。
「彼奴は天女の小娘か…」
「天女の小娘から妖力と神通力を感じるぞ…」
「天女の小娘が相手とは面白そうだ♪早速天女の小娘を打っ殺そうぜ♪」
甲羅の無数の巨大人面が会話し始める。すると前方の巨大海亀の頭部と尻尾部分の巨大海蛇が上空の桜花姫を直視したのである。
「アイツハテンニョノコムスメカ!?キサマハナニモノダ!?」
問い掛けられた桜花姫は即座に名前を名乗る。
「私は最上級妖女の月影桜花姫よ!羅刹獣!あんたを征伐するわ!」
征伐すると断言した桜花姫に甲羅の巨大人面の一部が反応したのである。
「貴様が私を征伐するだと?片腹痛いわ…」
「小娘は余程の命知らずみたいだな…手始めに天女の小娘を死滅させるか…」
すると海亀の頭部が再度発言する。
「シマグニヲクウノハアトマワシダ!マズハテンニョノコムスメカラブッコロシテヤルゼ!」
直後…。甲羅の無数の巨大人面が上空の桜花姫を直視するなり口部を開口したのである。
「一体何を?」
桜花姫は警戒する。直後である。
「トットトシニヤガレ!」
甲羅部分の無数の巨大人面が無数の火球を発射する。一発一発の火球は数十メートル規模であり大気圏上空にて爆散…。上空全体に大陸をも消滅させる大爆発と衝撃波が何百発も頻発したのである。桜花姫は上空を直視する。
(規格外の威力だわ…羅刹獣の火球が一発でも太平神国に直撃すれば陸地は完全に消滅するわね…)
すると一発の火球が上空の桜花姫に急接近…。
「なっ!?」
桜花姫は咄嗟に妖術を発動する。
(止むを得ないわね…)
異次元転送の妖術を発動…。自身に急接近する火球がパッと消滅したのである。火球は異次元空間へとテレポート…。異次元空間にて爆散する。
「危機一髪だったわ…」
羅刹獣の火球は一国をも消滅させる威力であり妖力の防壁でも防ぎ切れるか正直未知数だったのである。
「シブトイコムスメダナ!ヨウジュツデオレノコウゲキヲカイヒシヤガッタカ…」
すると甲羅の巨大人面が発言する。
「ひょっとすると天女の小娘は太古の最高神以上に厄介かも知れないな…」
甲羅の巨大人面は仙女の桜花姫を警戒したのである。
「勿論私は最上級妖女なのよ!即刻あんたを片付けちゃうから安心しなさい♪」
桜花姫の発言に苛立ったのか羅刹獣の海亀の頭部がギロッと天空の彼女を睥睨する。
「コイツ…コムスメノブンザイデ…ナメヤガッテ…ドウヤラコムスメハオレニコロサレタイミタイダナ…」
「今度は私が反撃するわよ!」
桜花姫は両手より神通力を凝縮…。高熱の雷球を形成したのである。
「死滅しなさい!」
羅刹獣の背中の甲羅を目標に高熱の雷球を発射…。背中の甲羅に直撃させたのである。
「直撃したわ!」
直撃したと同時に周辺がピカッと発光…。数十キロメートルもの大爆発を発生させたのである。地上界全域に衝撃波が発生…。絶大なる破壊力により天空山の頂上から桜花姫の奮闘を見守る一同も彼女の神通力に愕然とする。
「桜花姫様…神話の領域ですね…」
「現実なのかしら…」
「異次元の領域だわ…」
桜花姫の荒唐無稽の戦闘に恐怖すら感じる。同時刻…。桜花姫は爆心地を眺望する。
「羅刹獣は?えっ…」
羅刹獣は無傷であり掠り傷すら皆無だったのである。
「コノテイドノコウゲキリョクカ?キサマゴトキ…ショボイヨウジュツデハオレヲタオスコトハデキナイ…」
甲羅の巨大人面も桜花姫を直視…。失笑し始める。
「所詮貴様は小娘だ…」
「貴様程度の神通力では私は仕留められないぞ…」
(羅刹獣…予想以上に頑強ね…)
羅刹獣の肉体は金剛石をも上回る強度であり外部から羅刹獣の皮膚を直接破壊するのは困難である。桜花姫は羅刹獣の様子を直視するなり…。
(此奴の体内から何百体…何千体もの神族の怨念を感じるわ…)
古代の神族との大戦で羅刹獣は数百体から数千体もの神族を食い殺したのである。彼等の怨念が桜花姫を気味悪がらせる。
(羅刹獣を仕留めるには体内の神族の怨念を浄化しないと仕留められないわね…)
すると羅刹獣は海亀の頭部…。甲羅の無数の人面と尻尾の海蛇から雷撃の光線を全身から拡散…。発射したのである。
「えっ!?」
桜花姫は即座に神通力の防壁を発動…。雷撃の光線をガードしたのである。拡散された雷撃の光線は天空山の頂上にも発射される。危機を察知した桜花姫の三人の分身体が妖力の防壁を発動…。雷撃の光線から一同を守護したのである。一人の分身体が背後を直視…。
「大丈夫かしら?」
分身体の問い掛けに三蔵郎は笑顔で返答する。
「大丈夫ですよ♪感謝します…桜花姫様の分身体♪」
三蔵郎は一礼したのである。すると氷麗姫が恐る恐る…。
「こんな戦闘…全世界が滅亡しても可笑しくないわね…大昔の神族はこんな怪物を封印したのよね?」
霊魂巨神木の精霊が返答する。
「神族でも最上級に君臨する十二人の最高神でも…羅刹獣を封印するのが精一杯だった…神力の消耗と戦闘による後遺症で最高神は全滅したからな…」
「桜花姫姉ちゃん…大丈夫かな?一人で羅刹獣を征伐出来るのかな?」
小猫姫は非常に不安がる。
「大丈夫よ…桜花姫なら…」
普段は小心者のアクアヴィーナスであるが…。大丈夫だと断言する。
「数週間前の出来事だけど私の祖国…アクアユートピアは極悪非道の魔女と無数のアンデッドに侵略されちゃったけど彼女の奮闘でアクアユートピアに平和が戻ったのよ…今回だって大丈夫よ…」
「えっ!?桜花姫様が貴女様の祖国を?」
三蔵郎は勿論…。一同は驚愕したのである。
「桜花姫…彼奴は私達に内緒で…」
「桜花姫姉ちゃんが異国でも悪霊を征伐したなんて…」
「恐らく彼女に私達の常識なんて通用しないわ…」
アクアヴィーナスの発言に精霊も賛同する。
「彼奴は存在自体が荒唐無稽だ…多分私達の常識は通用しないだろう…予想を裏切るであろうな…」
普段は無表情の精霊であるが…。僅少にも苦笑いする。三蔵郎は笑顔で…。
「兎にも角にも…私達に出来るのは桜花姫様の勝利の祈願です!桜花姫様の勝利を精一杯祈願しましょう♪」
同時刻…。
(直接攻撃は通用しないし…如何すれば?)
困惑した桜花姫であるがハッとしたのである。
(霊魂巨神木の悪霊を浄化させた…秘術は如何かしら?)
半年前の霊魂巨神木に憑霊した悪霊の集合体を浄化させた秘術…。日輪光を想起したのである。
(日輪光だったら…羅刹獣の体内の怨念を浄化出来るかも知れないわ…)
羅刹獣に通用するかは未知数だが…。一か八か日輪光の使用を決意する。桜花姫は両目を瞑目させる。突如として両目を瞑目させる桜花姫に羅刹獣は警戒したのである。すると甲羅の人面が会話し始める。
「ん?彼奴…一体何を?」
「小娘は恐怖で身動き出来なくなったか?」
海亀の頭部が返答する。
「イヤ…コイツハフシゼンダゾ…ナニカハジメルツモリダ…コムスメハナニカタクランデイヤガルニチガイナイゾ…」
「小細工か…」
桜花姫は再度両目を開眼させる。
「今度こそあんたを仕留めるわ!羅刹獣!」
「オレヲシトメルダト?キサマテイドノヨウジュツデハオレハシトメラレナイゾ…モハヤウツテガナイキサマガ…ドウヤッテオレヲシトメルトイウノダ?」
桜花姫は両手より神通力を凝縮…。虹色の粒子状の発光体が桜花姫の両手より収縮されたのである。
「ン?キサマ…イッタイナニヲスルキダ?」
直後…。
(秘術…)
「日輪光…発動!」
あらゆる怨念を浄化させる日輪光を発動する。両手に収縮された神通力の閃光を発射したのである。日輪光は羅刹獣の甲羅に直撃…。周囲全体が虹色に光り輝いたのである。光り輝く虹色の閃光に三蔵郎は感動…。涙腺より涙が零れ落ちる。
「神聖なる閃光ですね…桜花姫様でしょうか?」
「桜花姫姉ちゃんの…妖術なの?」
「彼女の発動したのは秘術…日輪光だ…」
精霊が解説する。
「日輪光って?」
「日輪光とは成仏出来ない亡者達を浄化させる史上最強の最終奥義だ…私も半年前に彼女の日輪光で悪霊の集合体から解放されたのだ…」
「彼女が…霊魂巨神木を…」
冥王鬼は桜花姫に対する認識が変化し始める。
(彼女なら…)
同時刻…。桜花姫によって日輪光を発射された羅刹獣だが怯まない。
「ナンダ?タダノヒカリカ?イタクモカユクモナイゼ!」
日輪光は怨念を浄化させる閃光であり殺傷能力は発揮されない。
(大丈夫…羅刹獣の体内の怨念は着実に弱体化したわ…)
桜花姫は冷静であり羅刹獣は不思議がる。
「ン?コムスメ?」
(レイセイダナ…)
数秒後…。
「神族の怨念!浄化されなさい!」
全力で日輪光を照射したのである。すると羅刹獣の全身より数千体もの神族の霊魂が出現…。日輪光の閃光により浄化されたのである。
「ナッ!?シンゾクノタマシイガ…ジョウカサレタダト!?」
体内の神族の霊魂は浄化され羅刹獣は弱体化…。甲羅の人面も沈黙したのである。
「羅刹獣…弱体化したわね♪」
「キサマ…」
羅刹獣は天空の桜花姫を睥睨する。
「観念しなさい…」
「コムスメガ…ナメタマネヲシヤガッテ!」
「古代の魔獣…あんたは桜餅に変化しなさい!」
桜花姫は変化の妖術を発動したのである。規格外の巨大さの羅刹獣であるが…。変化の妖術の効力により白煙に覆い包まれ小皿と桜餅に変化したのである。
(羅刹獣は桜餅に変化したわね♪)
自分自身に口寄せの妖術を発動…。海面上にて移動したのである。海面上にプカプカと浮動し続ける桜餅を発見する。
「桜餅♪発見♪」
桜餅をパクっと頬張ったのである。
「美味だわ♪」
桜花姫は大喜びする。日輪光の使用によって神通力を消耗するも桜餅を頬張ると消耗した神通力が回復したのである。
「神通力は蓄積されたし♪天空山に戻りましょう♪」
再度口寄せの妖術を発動…。天空山の頂上へと無事戻ったのである。天空山の頂上にて突然ポンっと白煙が発生…。桜花姫が出現する。
「うわっ!桜花姫様!?」
「きゃっ!桜花姫!?」
突如として出現する桜花姫に周囲の者達は愕然とする。
「突然桜花姫姉ちゃんが出現するから吃驚したよ…」
「御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪したのである。
「ですが無事に戻られたのですね…桜花姫様…」
三蔵郎は感動の再会に落涙する。
「三蔵郎様…」
すると霊魂巨神木の精霊が近寄るなり…。
「見事だったぞ!月影桜花姫!十二人の最高神でも封印するのが精一杯だった羅刹獣を一人で征伐するとは…」
「羅刹獣を征伐出来たのは小猫姫達が協力したからよ…私一人では仕留められなかったわ…」
今度は冥王鬼が発言する。
「貴様が最高神を上回ったのは事実だ…最早俗界で貴様と拮抗出来る存在は皆無だぞ…貴様は最強の存在だ…」
「大袈裟ね…」
(私って…本当に最強の存在なのね♪)
内心では大喜びしたのである。今度は小猫姫と氷麗姫が近寄る。
「桜花姫姉ちゃんが無事に戻れたから一安心だよ♪」
「羅刹獣みたいな規格外の怪物を一人で仕留めちゃったからね…私は一生涯桜花姫には反抗出来ないわ…」
「あんた達♪」
するとアクアヴィーナスが恐る恐る…。
「本当…あんたは私達の常識が通用しないわね…」
「私は地上界の女神様だからね♪」
地上界の女神様を自称する桜花姫に一同は苦笑いする。
「あんた達…如何して苦笑いするのかしら?」
桜花姫はムッとしたのである。数分後…。
「消滅した…人間達…羅刹獣によって破壊された世界各地の大陸を元通りに再生させるわね…」
天地創造の再生の妖術を発動する。冥王鬼によって消滅した人間達やら動物達は勿論…。羅刹獣の暴走で暴食された世界各地の大陸が元通りに再生したのである。
「完了♪消滅した民衆達と破壊された陸地が元通りに戻ったわ♪」
「桜花姫様…本物の女神様ですな…」
最早天道の領域であり一同は愕然とする。
「事件は無事に解決したわ♪戻りましょう♪」
戻ろうかと思いきや…。桜花姫は極度の疲労によりバタッと横たわる。
「えっ!?桜花姫姉ちゃん!?」
「桜花姫様!?」
「桜花姫!?」
神通力の消耗からか仙女の姿形から元通りの桜花姫に戻ったのである。
「桜花姫姉ちゃんが…元通りに…」
すると冥王鬼が恐る恐る接触する。
「安心しろ…彼女は極度の疲労で一時的に衰弱化しただけだ…」
「単純に疲労しただけなのですね…」
「人騒がせね…」
一同は一安心したのである。
「私達の出番は終了ね…」
桜花姫の三体の分身体が自然消滅する。
「えっ…桜花姫様の分身体が…」
「事件が無事に解決したからな…私も退散する…」
今度は霊魂巨神木の精霊が消滅したのである。
「今度は精霊が消滅したわ…」
すると氷麗姫が恐る恐る周囲の者達に問い掛ける。
「あんた達は如何するの?」
三蔵郎は返答する。
「私は寺院に戻りますよ…疲労された桜花姫様を介抱しなくては…」
「私も南国の天女の村里に戻ろうかな♪」
小猫姫は笑顔で返答したのである。アクアヴィーナスはソワソワした表情で…。
「私はアクアユートピアに戻らないと…母様達が心配するし…」
氷麗姫は恐る恐る冥王鬼に問い掛ける。
「あんたは如何するのよ?冥王鬼…」
「私は…」
正直気まずいのか冥王鬼は沈黙したのである。すると小猫姫が笑顔で彼女の両手を接触するなり…。
「冥王鬼姉ちゃん♪私と一緒に居候しない♪」
「えっ!?小猫姫?」
小猫姫の居候発言に氷麗姫は驚愕したのである。冥王鬼は恐る恐る…。
「こんな私で大丈夫なのか?山猫妖女の小猫姫よ…私は大勢の民衆達を消滅させた極悪非道の罪人だぞ…」
困惑した冥王鬼であるが小猫姫は平気そうな様子であり笑顔で返答する。
「消滅しちゃった人間達は元通りに戻れたのよ♪大丈夫よ♪」
「小猫姫…」
無表情の冥王鬼であったが…。彼女は涙腺から涙が零れ落ちる。
(蛇骨鬼…彼女は…小猫姫は人一倍純粋だな…如何して蛇骨鬼が彼女を深愛するのか…理解出来るよ…)
「兎にも角にも…事件は無事に解決したのです♪戻りましょう♪」
三蔵郎は笑顔で発言する。事件が無事に解決すると一同は解散したのである。
メンテ
桜花姫 ( No.43 )
日時: 2021/08/17 09:57
名前: 月影桜花姫

最終話

後日談

羅刹獣との大激戦から一週間後…。事件後アクアヴィーナスは無事にアクアユートピアに帰還したのである。スキュランと母親のウェンディーネにこっ酷く説教され大泣きするも…。翌日には無事を大喜びされる。ギクシャクしたスキュランとの関係も改善され今現在のアクアユートピアは本当の意味で楽園へと変化したのである。一方の氷麗姫は不倫により別居中だった亭主との関係改善に成功…。今現在では本当の夫婦として同居を再開する。一方居候生活を開始した小猫姫と冥王鬼の様子だが…。
「冥王鬼姉ちゃん♪蛇骨鬼婆ちゃんの墓参りしない♪」
「墓参りか…同行するよ…」
冥王鬼は小猫姫と一緒に蛇骨鬼の墓参りに移動したのである。墓場へと到達した彼女達は蛇骨鬼の墓石へと到達する。
「蛇骨鬼婆ちゃん…」
小猫姫は恐る恐る合掌したのである。すると彼女の涙腺より一粒の涙が零れ落ちる。
「小猫姫…」
(彼女にとって蛇骨鬼との死別は相当辛かったのだろうな…)
冥王鬼は恐る恐る小猫姫に接触する。
「冥王鬼姉ちゃん?」
「蛇骨鬼は小猫姫と再会出来て…大喜びだろうよ♪」
「本当かな?」
「勿論だよ…蛇骨鬼にとって小猫姫は最愛の孫娘だからな♪」
「冥王鬼姉ちゃん♪」
「小猫姫には笑顔が一番だな…」
「本当?」
小猫姫に笑顔が戻ったのである。
「戻ろうか?小猫姫…」
「戻ろう♪戻ろう♪」
小猫姫は帰宅途中…。村里の村道にて小柄の若武者の美青年とぶつかったのである。
「きゃっ!」
「うわっ!」
小猫姫と若武者は地面に横たわる。
「小猫姫!?大丈夫か!?」
ぶつかった若武者が恐る恐る…。
「失礼しました!御嬢さん…怪我は?大丈夫ですか?」
若武者は即座に謝罪したのである。
「私は…大丈夫よ…大丈夫だから…心配しないで…」
すると若武者と小猫姫は目線が合致…。
「えっ…」
「はぁ…」
両者は赤面したのである。若武者は内心…。
(俗界にこんな美人さんが存在するなんて…私は俗界の女神様と遭遇したのか!?)
一方の小猫姫も内心ドキドキする。
(如何してこんなに緊張するの!?ひょっとして…)
赤面する小猫姫に冥王鬼は微笑む。
(ひょっとすると小猫姫…恋心か♪)
すると直後である。半透明の白蛇が冥王鬼の背後に出現する。
(なっ!?)
「貴様は蛇神の蛇骨鬼か!?」
「冥王鬼よ…久方振りだね♪」
突如として冥王鬼の背後に出現したのは蛇神の蛇骨鬼だったのである。
「蛇骨鬼…如何して貴様が…」
「単なる挨拶だよ♪久方振りに大昔の悪友に再会したかったのさ♪元気そうで安心したよ…冥王鬼♪」
突然の超常現象に冥王鬼は混乱する。
「混乱するのも当然かね♪大丈夫♪時間は一時的に停止させたから♪」
冥王鬼は恐る恐る小猫姫と若武者を直視するなり…。
「如何やら今現在身動き出来るのは私と蛇骨鬼だけか…」
「蛇骨鬼よ…人一倍人間達を憎悪した貴様がこんなにも変化するとは…予想外だね♪」
「鬱陶しいな…貴様は…」
すると冥王鬼はボソッと小声で…。
「結局私は間違ったのか…」
「結果的に羅刹獣は桜花姫ちゃんによって仕留められた…遅かれ早かれ羅刹獣の封印は脆弱化した状態だったからね♪あんたが封印を解除しなくても封印は自力で解除されただろうよ…」
問い掛ける冥王鬼に蛇骨鬼は否定しなかったのである。
「人間達は野蛮だからね…あんたは今後も抑止力として活動しな♪悪人が出現すれば徹底的に征伐しなよ…勿論殺さない程度に♪」
「私が抑止力か…努力するよ…」
彼女は再度笑顔で…。
「今後も小猫姫と仲良くね♪」
「当然だ…彼女はあんたの孫娘だろう?」
「勿論だとも♪」
蛇骨鬼は笑顔で即答する。
「勿論…桜花姫ちゃんとも仲良くしなよ♪彼女も私の孫娘の一人だからね…」
「なっ!?」
桜花姫の名前にビクッと反応したのである。
(彼奴が蛇骨鬼の孫娘だと!?蛇骨鬼の感性が理解出来ないな…)
冥王鬼は桜花姫の名前にピリピリするが…。
「正直桜花姫は気に入らないが…努力するさ…」
すると突如として蛇骨鬼に肉体が消滅し始める。
「えっ…蛇骨鬼?」
「如何やら時間みたいだね…」
冥王鬼は恐る恐る…。
「消滅するのか…蛇骨鬼…」
「達者でね♪冥王鬼♪」
蛇骨鬼は消滅したのである。
「蛇骨鬼…」
蛇骨鬼が消滅すると停止された時間は再度経過し始める。すると若武者はホッとする。
「御嬢様に怪我が無さそうなので安心しましたよ♪」
若武者は恐る恐る…。
「御詫びなのですが…」
三両の小判を小猫姫に手渡したのである。
「えっ!?三両も!?」
純金の小判に小猫姫は驚愕する。
「怪我が無くても貴女様みたいな女性にぶつかっちゃいましたからね…是非とも貴女様に贖罪しなければ…」
「大袈裟だよ…別に私は大丈夫なのに…」
小猫姫は困惑したのである。
(人間にもこんな若武者が存在するのか…当分は様子見が必要だな…)
人一倍人間を憎悪する冥王鬼であるが…。若武者の行動に彼女は微笑む。すると冥王鬼は笑顔で…。
「人間の若者よ♪貴様は人一倍幸運だな…ぶつかったのが最上級妖女の桜花姫なら貴様みたいな小坊主…簡単に食い殺されただろうよ♪今回はぶつかった相手が小猫姫で幸運だったな…」
「えっ…小猫姫って…」
若武者の表情が変化する。
「貴女様…ひょっとして桜花姫様の妹分の…」
「私は…小猫姫…山猫妖女の小猫姫よ…」
小猫姫は恐る恐る名前を名乗る。すると若武者は大喜びしたのである。
「貴女様が山猫妖女の小猫姫様ですか♪私は小猫姫様が大好きでして…本日が休暇であれば…私と一緒に東国で遊歩しませんか?勿論料金は私が負担しますよ♪」
「えっ…」
(如何するべきなのかな?)
見ず知らずの若武者を相手に小猫姫は困惑するが…。冥王鬼は笑顔で発言する。
「折角の機会だ♪小猫姫よ…勉学として此奴と遊歩したら如何なのだ?」
小猫姫は赤面するが…。
「仕方ないね…」
承諾したのである。すると冥王鬼が若者に睥睨するなり…。
「人間の若武者よ…彼女は人一倍純粋だぞ…彼女を裏切れば私は即刻貴様を惨殺するから覚悟しろよ…」
「ひっ!承知しました…」
冥王鬼の表情に若武者はビクビクする。
(冥王鬼姉ちゃん…)
小猫姫は苦笑いしたのである。同時刻…。氷麗姫は暇潰しに東国の三蔵郎の寺院へと訪問する。
「三蔵郎?」
「誰かと思いきや…貴女様は氷麗姫ですか♪本日は如何されましたか?」
「暇潰しよ♪暇潰し♪」
「暇潰しですか…」
氷麗姫は周囲をキョロキョロしたのである。
「桜花姫は?」
桜花姫の居場所を問い掛けられた三蔵郎は恐る恐る…。
「桜花姫様なら先程桜餅を食べられてから…地獄に出掛けるとか…」
「えっ?地獄ですって?」
氷麗姫は珍紛漢紛だったのである。
「私自身も何が何やら…」
「彼奴は本当に気紛れね…」
同時刻…。
「口寄せの妖術成功♪」
桜花姫は口寄せの妖術により自分自身を死後の世界である地獄に口寄せしたのである。最早口寄せの妖術は死後の世界さえも行き来出来る領域へと到達する。死後の世界である地獄へと到達した彼女は周辺の景色を眺望するなり…。
「地獄は無数の悪霊が出現しそうな雰囲気ね♪」
(悪霊を仕留めるなら最適の場所だわ♪)
地獄の雰囲気にワクワクしたのである。彼女の目前には鬼神の甲冑を装着した武士が存在する。
「久し振りね♪鬼殺丸♪元気だったかしら?」
すると武士は警戒した様子で背後を直視したのである。
「なっ!?貴様は…」
「御免あそばせ♪」
武士は誰であろう地獄の住人…。鬼殺丸だったのである。
「貴様…月影桜花姫か!?二度と地獄へは逆戻りするなと忠告しただろ…」
鬼殺丸は桜花姫を睥睨…。非常に呆れ果てたのである。
「俗界は毎日が平和だから退屈なのよね♪地獄なら思う存分悪霊を征伐出来るし♪」
「貴様は相当の物好きだな…自分から地獄に参上するとは余程の単細胞か?」
すると直後…。周囲の亡者達が生者である桜花姫に気付いたのである。
「地獄の亡者達が生者である貴様に反応しやがったぞ…自分から地獄に参上したのを後悔するぜ…」
再度忠告された桜花姫であるが…。彼女は笑顔で返答する。
「後悔しないわ♪今度の私なら大丈夫よ♪」
「ん?」
(此奴…随分と余裕そうだな…)
桜花姫は余裕の様子であり鬼殺丸は非常に不思議がる。
「私には…」
桜花姫は瞳術である天道眼を発動…。血紅色だった瞳孔が半透明の瑠璃色に発光する。
(桜花姫…)
「瞳孔が瑠璃色に発光するとは…」
「悪霊♪あんた達は桜餅に変化しなさい♪」
周囲の亡者達に変化の妖術を発動したのである。
完結
メンテ
桜花姫※別作品 ( No.44 )
日時: 2021/08/17 10:24
名前: 月影桜花姫

第一話

闇夜

太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の妖怪達が出現し始める。五十年後の天地暦四千二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の妖怪達が出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は妖怪達の魔窟であり人間は誰一人として近寄れない。
(何やら無数の妖気が感じられる…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
(普通の人間は近寄れないな…)
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外である。
「妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体は妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。ふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等か…」
総勢数十体もの食人餓鬼に包囲されるも…。三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼を発火させたのである。三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。巨体の人型であるが体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は【百鬼食人餓鬼】か…」
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上に落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(女性?)
女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が妖怪なのは確実であるが敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの妖気を感じる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の妖怪の集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は妖怪の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行しても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんて大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談♪冗談♪御免あそばせ♪」
笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかもね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪でも…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は妖怪の集合体です…正直桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じる。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気!?)
三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾するのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「妖術で先回りしたのですか?」
「勿論♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達が妖怪化した存在…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。遭遇した人間は溺死する。
「漁船を襲撃したのが海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは…」
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪よ♪」
「あんたが妖怪?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿と大好きな桜餅に変化したのである。
「なっ!?漁船が…」
「桜餅に!?」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは本物の妖怪なのか?」
「勿論♪」
笑顔で即答する。すると漁師達は恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!殺されちまう!」
「逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間は必要以上に妖怪を脅威に感じる。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
メンテ
ギルゾッド ( No.45 )
日時: 2021/08/17 10:39
名前: 月影桜花姫

第一話

制圧作戦

世界最終戦争で旧文明が大崩壊してより四年後…。世界各地は殺伐とした雰囲気であり暴徒化した人間達が食糧の争奪戦で殺し合ったのである。こんなにも荒廃した世の中であるが…。旧文明の復興を主眼に活動する勢力も誕生したのである。某月某日…。荒廃した主要都市部では巨大武装勢力『リベレーターズ』が敵対する巨大軍事勢力『地球革命軍』の軍事工場に強襲を仕掛ける。
「全軍!突撃せよ!」
リベレーターズの総大将【ルーヴェルハルト】の指示と同時に銃火器を所持した戦闘員達が全力で突撃したのである。軍事工場の周辺には十数個ものトーチカが確認出来る。トーチカには機関銃が配備される。
「リベレーターズの突撃隊が突撃を開始したぞ!攻撃しろ!軍事工場には近寄らせるな!」
トーチカの部隊長が命令すると機関銃が炸裂する。無数の銃弾が炸裂…。突入するリベレーターズの突撃隊は地球革命軍の猛攻撃で五十人以上の戦闘員が死傷したのである。地球革命軍の銃撃に畏怖した突撃隊は後退…。自軍の陣地へと戻ったのである。
「貴様等!何故戻った!?」
総大将のルーヴェルハルトは彼等に怒号する。
「総大将…こんな丸腰の状態では無謀ですぜ…」
突撃隊の装備品は護身用のハンドガンのみである。人員でもリベレーターズは二百五十人であるが…。地球革命軍の守備隊は推計五百人であり機関銃以外にも高火力の重戦車が五両も配備される。強固に構築された地球革命軍のトーチカを突破するのは現実的に不可能である。
「多勢に無勢ですぜ…」
「貴様等…」
(役立たずが…)
ルーヴェルハルトは突撃隊の弱腰に呆れ果てる。本来リベレーターズは無頼漢やら戦災孤児によって構成された暴力団的軍閥であり武装も士気も貧弱である。
「撤退しませんか?」
戦闘員の一人が撤退を要請する。
「なっ!?撤退だと!?今回軍事工場を攻略出来れば地球革命軍の戦力低下が期待出来るのだぞ!撤退は許容出来ない!」
軍事工場を今回の作戦で占拠出来れば地球革命軍の戦力低下は勿論…。装備が貧弱のリベレーターズでも高火力の装備品の入手が可能であり独自で武器の生産も出来る。
「ですが総大将…」
弱気の戦闘員達は戦意喪失した様子であり絶句したのである。するとルーヴェルハルトの背後より…。
「俺の出番みたいだな…」
「ん?貴様は…」
ルーヴェルハルトの背後にはフードを被った小柄の人物が近寄る。素顔は不明であるが性別は男性である。
「あんたは何者だよ?」
戦闘員の一人がフードの人物に問い掛ける。するとフードの人物はフードを外したのである。
「なっ!?あんたは…」
フードの人物は両目の瞳孔は半透明の碧眼…。頭髪は銀髪である。周囲の者達は彼に身震いしたのか全身がプルプルする。
「あんたは…【ギルゾッド】か…」
「ギルゾッドだって!?あんたは『ネオヒューマン』の…」
ネオヒューマンとは遺伝子操作によって誕生した人工性の超人類…。人類を超越した存在の総称である。ネオヒューマンは常人以上の身体能力と不老長寿…。摩訶不思議の超能力を駆使出来る。荒廃した今現在でこそネオヒューマンは神性の存在であるが世界最終戦争の終戦後も各地で生存が確認される。
「ギルゾッドって…暗闇の一匹狼だよな?」
ギルゾッドは戦闘に特化されたネオヒューマンである。普段は単独で行動する習性からか異名は暗闇の一匹狼と呼称される。
「如何して一匹狼のあんたがリベレーターズに?」
するとルーヴェルハルトが説明する。
「此奴は三日前にリベレーターズに編入させた…即戦力として期待出来るし百人力?千人力だろうからな…」
ギルゾッドの戦闘能力は規格外であり最低でも機関銃を所持した戦闘員の三百人分は期待出来る。
「ギルゾッド…敵軍を蹴散らすのだぞ…」
ルーヴェルハルトの指示にギルゾッドは無言であるが承諾したのである。ギルゾッドは最前線へと移動する。
「ん?彼奴は何者だ?」
「リベレーターズの新手か?」
「一人で突入するとは…無謀だな…」
将兵の一人がトーチカからハンドガンを所持…。
「射殺する!」
ハンドガンを発砲したのである。直後…。ギルゾッドは超能力を発動する。全身からスパークのシールドが発生…。本体を覆い包む。スパークのシールドによりハンドガンの弾丸が無力化されたのである。
「なっ!?シールドか!?」
「弾丸が…」
「彼奴はひょっとして…ネオヒューマン?」
ネオヒューマンの一言に部隊長は反応する。
「ネオヒューマンだと!?」
戦闘に特化されたネオヒューマンは味方であれば非常に心強い存在である反面…。敵対すれば強大なる近代兵器を所持しても仕留めるのは非常に困難である。
「であれば非常に厄介だな…」
(一か八か…)
不本意であるが…。
「ネオヒューマンを仕留めよ!全軍…総攻撃開始!」
地球革命軍はギルゾッドに総攻撃を仕掛ける。数千発もの弾丸は勿論…。重戦車の戦車砲による砲弾がギルゾッドを急襲する。ギルゾッドは再度スパークのシールドを発動…。機関銃の弾丸と戦車砲の砲弾を無力化したのである。
「畜生…シールドで攻撃を無力化したか…」
ギルゾッドはノーダメージであり地球革命軍の将兵達は絶句する。
「こんな程度か?今度は俺の出番だな…」
メンテ
メガラニカ大事変 ( No.46 )
日時: 2021/08/20 09:25
名前: 月影桜花姫

第一話

開戦

世界暦五百二十二年五月十七日午前八時未明の出来事である。世界最終戦争唯一の戦勝国『太平帝国』は戦前でこそ小規模国家であったが世界最終戦争の快進撃から勢力を拡大化…。戦後の疲弊した世界各国を牛耳れる超大国としての地位と資源を獲得したのである。世界最終戦争の大勝利によって全世界の秩序と覇権を獲得した太平帝国であるが…。太平帝国の存在に反対する一部の国連軍残存勢力と各地の反政府勢力が大南海に位置する孤島にて合流したのである。彼等によって大南海の孤島は自治領『メガラニカ解放区』と命名され太平帝国の支配圏から逃亡した移民者達が亡命…。メガラニカ解放区樹立から一年が経過すると領内の総人口は推計五十万人規模に増大化したのである。メガラニカ解放区の勢力拡大を危惧した太平帝国はメガラニカ解放区に宣戦布告…。翌日には大規模艦隊を派遣させ南方のメガラニカ解放区本土を攻撃目標に直進したのである。太平帝国海軍主力艦隊旗艦…。戦闘航空母艦アスピドケロンには太平帝国国家元首である大総統【ブラッドフォード】が総司令官として乗艦する。
「大総統!徹底的にメガラニカ解放区を撃滅しましょう!」
「当然だ【ルーヴェルハルト】…新世界の統治国である太平帝国に反抗するのが最大の愚行であるか…奴等には徹底的に理解させなければ…」
ルーヴェルハルトは副総統であり大総統のブラッドフォードにとって最高の右腕である。今回は旗艦アスピドケロンの副艦長として抜擢される。今回のメガラニカ解放区本土攻略作戦ではアスピドケロン級大型戦闘航空母艦が五隻投入され…。護衛艦隊にはミサイル巡洋艦十六隻…。二十四隻の防空駆逐艦が出撃する。補助用の魚雷艇二十九隻と八百人以上の上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦十七隻が後方にて航行したのである。
「メガラニカ解放区の領海へは推定二時間で到達する予定です…」
「全軍を警戒態勢に移行させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは通信機にて各艦の乗組員達に警戒態勢を指示する。
「全軍…警戒態勢に移行せよ…」
すると各艦隊の戦闘要員達は戦闘配置に移動したのである。戦闘要員達が戦闘配置に移動してより三分後…。旗艦アスピドケロンの艦橋に設置された最新型スーパーレーダーが反応したのである。
「本艦のスーパーレーダーが反応しました!」
スーパーレーダーは太平帝国海軍が開発した最新式の電波探知機であり地球全体を正確に索敵出来る。太平帝国軍では艦艇のみならず艦載機にも搭載され今現在太平帝国海軍と互角に交戦出来る国家は存在しない。
「何事だ?」
ブラッドフォードは偵察員に問い掛ける。
「南方…三百キロメートルの遠海より艦隊らしき艦影を無数確認…総数は推計四十隻程度です…」
スーパーレーダーには推計四十個もの光点が点滅したのである。
「ステルス機能を搭載させた艦艇か…」
すると直後…。
「無数の飛翔体が味方艦隊に接近中です!」
四十個の対象物である光点から数百個もの微小の光点が超音速で飛来するのを確認する。
「此奴は対艦ミサイル攻撃だ…迎撃態勢に移行しろ!」
ブラッドフォードは即座に迎撃を命令したのである。数秒後…。二十キロメートルの長距離より数百発もの飛翔体が味方艦隊に接近するのを確認する。
「各艦艇!飛翔体を迎撃せよ!」
各艦艇の迎撃システムが作動したのである。近年太平帝国海軍の各艦艇には対空戦闘用に開発された小型の全自動型パルスレーザー対空砲を設置…。超音速で飛来するミサイル迎撃に期待されたのである。数秒後各艦のパルスレーザー対空砲が炸裂…。蛍光色の光弾が各艦に接近する大型対艦ミサイルを迎撃したのである。全自動化によって大型対艦ミサイルは全弾迎撃…。敵艦から発射された大型対艦ミサイルは味方艦隊には一発も命中しなかったのである。通信兵が即座に報告する。
「通信です…敵軍の大型対艦ミサイルは全弾迎撃されました!味方艦隊への損害は皆無です!」
「最先端の科学技術の結晶である太平帝国海軍に旧型の対艦ミサイルで攻撃するとは…奴等は時代錯誤ですな♪」
ルーヴェルハルトは笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…所詮奴等は烏合の衆だ…」
総司令官のブラッドフォードも勝利を確信する。太平帝国軍の大艦隊はメガラニカ解放区近海へと直進したのである。十数分後…。メガラニカ解放区の防衛艦隊と遭遇したのである。ルーヴェルハルトはブリッジ正面の窓側にて恐る恐る双眼鏡を所持…。真正面の敵軍の中規模艦隊を確認する。
「大総統…敵軍の防衛艦隊です…」
メガラニカ解放区の防衛艦隊はミサイル巡洋艦八隻…。十九隻のミサイル駆逐艦と三十二隻の魚雷艇が確認出来る。
「中規模艦隊か…総攻撃せよ…」
ブラッドフォードは即刻中規模艦隊に対する総攻撃を指示…。各艦の大型対艦ミサイルと機関砲が炸裂する。太平帝国軍の先制攻撃によりメガラニカ防衛艦隊は二隻の大型ミサイル巡洋艦と六隻のミサイル駆逐艦が大型対艦ミサイルで撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。海面上には九百人以上の乗組員達が吹っ飛ばされる。
「味方艦隊の圧倒的優勢です!」
旗艦アスピドケロンのブリッジでは乗組員達が沈没する敵艦を眺望する。
「太平帝国軍の圧勝は確実だな…」
「奴等は腐敗した国民主権勢力の残党だ…所詮メガラニカ解放区なんて…」
乗組員達は太平帝国軍の優勢に安堵したのである。同時刻…。メガラニカ解放区防衛艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦リトルヴィーナス艦内では味方艦隊の劣勢に騒然とする。
「多勢に無勢だ…こんな状態では防衛艦隊は全滅するぞ!」
「畜生…防衛艦隊が全滅すれば…太平帝国軍の本土上陸も時間の問題だ…」
乗組員達は騒然とするのだが…。艦長の【ウィンフィールド】は沈黙した様子であり冷静だったのである。乗組員の一人が恐る恐る…。
「ウィンフィールド艦長…如何されましょうか?こんなにも劣勢では味方の防衛艦隊は全滅しますよ…」
「狼狽えるな…」
ウィンフィールドは騒然とする周囲の乗組員達を制止させる。
「ですが艦長…今現在の戦況はメガラニカ解放軍が圧倒的に不利ですよ…」
ウィンフィールドは沈黙した様子で腕時計を確認する。
「時間だな…」
周囲の乗組員達はハッとした表情で…。
「えっ…何が時間なのですか!?」
一人の乗組員が恐る恐るウィンフィールドに問い掛ける。
「作戦を開始する…」
ウィンフィールドは通信兵を直視するなり…。
「通信兵…即刻独立機動部隊に通信させるのだ…出撃の命令を…」
「はっ!」
周囲の者達はポカンとする。
「一体何を開始するのか?」
同時刻…。メガラニカ解放区西方地帯の軍港にて三隻の中型空母が出撃したのである。中型空母にはとある新型兵器が多数搭載される。西方地帯から独立機動部隊が出撃を開始してより五分後…。メガラニカ解放区南方地帯の防衛艦隊は壊滅状態であり撤退を余儀無くされる。壊滅寸前の防衛艦隊の光景に太平帝国軍総司令官のブラッドフォードは航空部隊の出撃を命令する。
「航空部隊を出撃させろ…メガラニカ解放区の南方地帯全域を空爆せよ…非戦闘員への攻撃も許可する…徹底的に奴等を蹴散らせるのだ…」
「はっ!」
ブラッドフォードが命令すると五隻の大型戦闘航空母艦から推計三百機もの戦闘爆撃機が出撃したのである。航空部隊はメガラニカ解放区の南方地帯領空へと進入…。地上への空爆を開始したのである。南方地帯を防衛する地上部隊は必死に太平帝国軍の航空部隊を迎撃するも…。相手は超音速で飛行する戦闘爆撃機であり対空砲は通用せず対空ミサイルで攻撃しても機体に搭載されたパルスレーザーで簡単に無力化されたのである。攻撃開始から三分間が経過すると南方地帯の地上部隊は九割が壊滅…。数千人もの民間人が死傷したのである。旗艦アスピドケロンではブリッジの乗組員達がモニターで戦況の映像を注視する。
「大総統♪太平帝国軍の圧倒的優勢です♪南方地帯の守備隊は壊滅状態ですよ…」
副艦長のルーヴェルハルトが笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…」
ブラッドフォードは現状であれば上陸作戦が可能であると判断…。
「敵軍は相当疲弊した状態だ…味方の上陸部隊に伝播させろ!」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは即座に各輸送艦に伝達する。上陸作戦を開始する直前…。スーパーレーダーが反応したのである。
「スーパーレーダーが反応しました!」
特殊無線技士がブラッドフォードに報告する。
「今度は何事だ!?」
ブラッドフォードが特殊無線技士に問い掛ける。
「西方の海域より無数の移動物体が出現…超音速で此方に急接近中です…」
「移動物体だと?敵機か?」
ブラッドフォードはモニターを作動させる。するとモニターの画面には無数の飛行物体が映写される。
「此奴は…」
飛行物体は軍用機の形状だが従来型の航空機とは異質的であり新型機であると認識する。
「大総統…敵軍の新型機でしょうか?」
「ひょっとすると無人兵器の戦闘用ドローンかも知れないな…」
「戦闘用ドローンですと?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「敵部隊の航空攻撃に警戒せよ…再度迎撃態勢に移行しろ…作戦中の航空部隊にもドローンの迎撃を急行させるのだ…」
「承知しました…大総統…」
戦闘艦隊と各輸送艦隊は上陸作戦を一時中止させ対空戦闘に移行する。数百機ものドローンが肉眼でも視認出来る位置へと到達…。
「大総統…敵軍のドローンです…」
「ドローンを撃墜せよ!味方艦隊には接近させるな!」
ブラッドフォードの命令と同時に各艦艇は対空戦闘を開始する。対空ミサイルと対空パルスレーザーが西方の上空にて炸裂したのである。対空パルスレーザーがドローンに直撃するのだが…。ドローンの機体内部には高エネルギー兵器を無力化する電磁防壁発生装置により対空パルスレーザーが無力化されたのである。旗艦アスピドケロンのブリッジでは双眼鏡で副艦長のルーヴェルハルトが上空を直視する。
「なっ!?シールドでしょうか!?」
「シールドだと?」
「ドローンは高エネルギーのシールドで対空パルスレーザーを無力化しました…ひょっとして奴等…」
「電磁防壁だな…ドローンの機体に光学兵器を無力化するシールド装置を装備したのだな…」
電磁防壁発生装置とは高エネルギー兵器を無力化する補助装置である。近年では太平帝国軍にも同類の補助装置は保有するものの…。艦船用の大型装置であり小型航空機に搭載出来る小型の装置は開発中である。
「如何やら奴等…電磁防壁発生装置の小型化に成功したみたいだな…」
ドローン関連の科学技術ではメガラニカ解放区が太平帝国よりも数段階上回る。人員不足であり少数精鋭のメガラニカ解放軍にとって無人兵器のドローンは最大の戦力であり戦闘に特化されたドローン兵器が多数開発される。一方の太平帝国軍にもドローン兵器は多数配備されるものの…。基本的に偵察用の警戒型ドローンであり戦闘に特化された戦闘用ドローンは試作機のみである。
「艦長…上空より敵機が接近中です!」
対空パルスレーザーの弾幕が太平帝国軍の艦隊周囲に炸裂するのだが…。ドローンは機体のシールド装置でパルスレーザーを潜り抜け味方艦隊の上空間近へと到達する。ドローンは即座に低空飛行…。高速航空魚雷を投下したのである。副艦長のルーヴェルハルトはドローンの高速航空魚雷を投下した瞬間を直視する。
「大総統!敵機は航空魚雷を投下しました…」
「航空魚雷だと?大昔の大戦か?」
本来パルスレーザーはミサイルやら敵機の迎撃を想定して開発された高エネルギー兵器であり水中の魚雷を迎撃するのは不可能である。
「大昔の大戦だな…」
太平帝国軍では魚雷は潜水艦と魚雷艇のみ搭載…。今現在航空魚雷は皆無である。
「艦長!右舷より魚雷が接近中です!」
特殊無線技士が報告する。
「即刻回避だ!」
ブラッドフォードは即座に回避を指示したのである。乗組員達の迅速の対応により旗艦アスピドケロンは敵機の魚雷攻撃を回避する。旗艦アスピドケロンの乗組員達はホッとするも…。直後である。対空戦闘中の一隻のミサイル巡洋艦と二隻の防空駆逐艦がドローンの魚雷攻撃により爆散…。轟沈したのである。
「大総統…戦闘中のミサイル巡洋艦ヘルフィッシュと二隻の防空駆逐艦が敵機の魚雷攻撃で撃沈されました…」
メガラニカ解放軍のドローン兵器は潜水艦に搭載された大型魚雷であり大型艦をも撃沈出来る。今度は輸送艦五隻と魚雷艇八隻がドローンの魚雷攻撃で沈没…。輸送艦六隻と魚雷艇四隻が大破したのである。撃沈された輸送艦からは二千人以上の将兵が海面上に吹っ飛ばされる。作戦中だった航空部隊が味方艦隊上空に帰還…。ドローンを迎撃するもドローンの速度は戦闘爆撃機よりも高速であり反対に味方の戦闘爆撃機が反撃される。二分間の空戦で百八十機もの味方戦闘機が撃墜され…。百人以上のパイロットが戦死したのである。一方のドローン部隊も艦艇と艦載機の対空ミサイルにより三十四機撃墜される。副総統のルーヴェルハルトは上空の光景を直視するなり…。
「大総統…太平帝国軍の劣勢です…」
形勢は完全に逆転したのである。ブラッドフォードは沈黙した様子であるが…。自軍の劣勢に苛立ったのかピリピリし始める。すると直後…。主力の戦闘航空母艦にも被害が出始める。二隻の戦闘航空母艦はドローンの自爆攻撃によって飛行甲板が破壊され…。大破したのである。旗艦アスピドケロンの同型艦であるレヴィアタンはドローンの魚雷攻撃で艦内の弾薬庫に引火…。一瞬で爆沈する。
「同型艦のレヴィアタンが撃沈されました!」
同型艦のレヴィアタンが爆沈したと同時に艦内の四十八機の艦載機は勿論…。五百人以上の乗組員達が一瞬で吹っ飛ばされる。旗艦アスピドケロンの周辺海面上には無数の鉄屑やら乗組員達の死骸がプカプカと浮上する。艦隊の損害からルーヴェルハルトはブラッドフォードに撤退を要請したのである。
「大総統!現状では太平帝国軍が圧倒的に不利です!即刻撤退しなければ…味方の艦隊が全滅しますよ!」
撤退を要請するルーヴェルハルトにブラッドフォードはギロッと睥睨する。
「撤退だと?主力の戦闘航空母艦二隻は健在だ…ドローンは実弾の対空ミサイルで対応しろ…」
実際問題ドローンのシールド装置は対空パルスレーザーによる高エネルギー兵器は無力化出来る反面…。実弾兵器は無力化出来ない。
「ですが対空ミサイルのみでは…本数が…」
ドローンに実弾である対空ミサイルは通用するが…。ドローンに命中させるのは非常に困難であり発射された大半がドローンの機関砲で迎撃される。直後…。
「飛行甲板上空より敵機です!直上に急降下します!」
特殊無線技士が報告する。
「敵機だと?」
数秒後…。急降下したドローンは甲板の直上に対艦ミサイルを発射したのである。直後である。ドンッと艦内全体に爆発音が響き渡り…。旗艦アスピドケロンの艦体全体がグラッと揺れ動いたのである。
「ぐっ!」
艦体が揺れ動いた衝撃にブラッドフォードは横たわる。
「大総統!大丈夫ですか!?」
副艦長のルーヴェルハルトは横たわったブラッドフォードに近寄る。
「私は大丈夫だ…本艦の被害状況は?」
先程のドローンの攻撃により旗艦アスピドケロンの損傷は飛行甲板が大破…。艦内に収納された十八機の艦載機も破壊されたのである。反面…。飛行甲板以外の設備は健在だったのである。
「母艦としての機能は完全に阻害されたな…」
「飛行甲板は使用出来ませんが…旗艦としての機能は健在です…」
「であればダメージコントロールを急行せよ…」
乗組員達が飛行甲板を修理する最中…。三隻の大型輸送艦と六隻の防空駆逐艦がドローンと潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されたのである。予想外の大損害にブラッドフォードは撤退を余儀無くされる。
(戦闘を続行し続ければ太平帝国軍の大艦隊でも確実に全滅するな…)
味方艦隊の全滅を危惧したブラッドフォードは不本意であるが…。撤退を決断する。艦内の通信機を所持するなり…。
「全軍に伝播する…戦闘続行は不可能だ…撤退を開始せよ…」
ブラッドフォードの判断に誰しもが反対しなかったのである。撤退を開始した太平帝国軍の艦隊にメガラニカ解放軍のドローンは攻撃を停止…。本土へと戻ったのである。今回の大海戦で太平帝国軍は大型艦の戦闘航空母艦一隻とミサイル巡洋艦一隻…。小型艦の防空駆逐艦八隻と魚雷艇十二隻が撃沈される。損傷では三隻の戦闘航空母艦と二隻のミサイル巡洋艦が大破…。防空駆逐艦四隻と魚雷艇五隻が大破する。陸軍の上陸部隊は大型輸送艦が八隻撃沈され…。七隻の輸送艦が大破したのである。航空部隊は二百十九機の戦闘爆撃機を喪失…。五十四機の機体が損傷する。人的損害では合計六千九百四十二人が戦死…。合計三千五百六十一人が負傷したのである。一方のメガラニカ解放軍はミライル駆逐艦二隻とミサイル駆逐艦六隻が撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。陸軍の守備隊は五十八両の戦闘車両が破壊…。空軍は五十六機のドローンが撃墜される。人的被害では合計二千三百六十五人が戦死…。合計三千四百七十八人が負傷する。民間人への被害は合計三千五百八十九人が死亡…。合計四千七百三十二人が負傷したのである。今回の戦闘はメガラニカ南方海戦と命名される。今回の大敗北以降…。太平帝国の権威が失墜したのである。

第二話

大艦巨砲主義

メガラニカ南方海戦の大敗北以降…。メガラニカ解放区の猛反撃が開始されたのである。メガラニカ解放軍はドローン兵器の大量投入と国内の反政府勢力の協力により太平帝国の領土の約半分を攻略…。占領したのである。メガラニカ南方海戦から一週間後の五月二十四日…。各自治領の戦闘で推計九百万人もの民間人が死亡したのである。同日…。太平帝国首都イーストサイドの大総統官邸会議室では大総統のブラッドフォードとルーヴェルハルトが対談する。
「大総統…一週間の短期間で太平帝国の統治領の約半分がメガラニカ解放軍の猛反撃により占拠されました…太平帝国軍は劣勢の状態です…」
「一週間で領土の約半分が奴等に占拠させるなんて…ドローン兵器の威力を見縊らなければ…こんな状態には…」
ブラッドフォードは後悔したのである。後悔するブラッドフォードにルーヴェルハルトは前向きな姿勢で…。
「ですが大総統!今現在でこそ劣勢ですが…今迄の戦闘でメガラニカ解放区は太平帝国以上に消耗した状態です!」
今現在のメガラニカ解放区と太平帝国の国力は一対十八でありメガラニカ解放区は圧倒的に不利である。メガラニカ解放軍はドローン兵器の有効活用から各地の戦場で圧倒的物量の太平帝国軍を圧倒する。メガラニカ解放軍の快進撃により太平帝国は領土の約半分を占拠されたものの…。短期間で戦線を拡大させたメガラニカ解放軍は国力が貧弱であり兵站の遅滞から膠着し始める。
「メガラニカ解放軍は膠着状態ですからね!劣勢を挽回出来る絶好のチャンスですよ!」
するとブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。
「訓練中の【ホムンクルス】だが…正規軍の将兵として実戦に配属出来るのか?」
「訓練中のホムンクルスですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から研究…。開発されたクローン人間達の総称である。度重なる戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。世界最終戦争以前の太平帝国は小規模の新興国であり人員不足の観点からクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。通常クローン人間の開発は倫理的問題点から民主主義の国家では法律で禁止されるのが通例であるが…。人権を尊重しない独裁政治の太平帝国ではクローン人間の開発も容易に実現出来たのである。今現在は推計三百万人ものホムンクルスが大量生産され…。正規軍の将兵として実戦に参加出来そうなホムンクルスは推計二十万人である。
「彼等が正規軍の将兵として実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。太平帝国軍はホムンクルスと人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスの将兵を最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
近日では太平帝国の劣勢から脱走兵やらメガラニカ解放軍に加勢する勢力が続出…。両勢力の力関係は完全に逆転し始める。人員確保が難化し続ける太平帝国軍にとってホムンクルス将兵の投入は非常に好都合だったのである。
「本題ですが…開発部が新型兵器を提案しました…」
開発部が提案した数種類の新型兵器の設計図をブラッドフォードに提出する。
「戦闘用ドローン…『ケルベロス』?」
「ケルベロスは…」
ケルベロスとは太平帝国軍が開発した無人戦闘機である。従来型の有人戦闘機よりは一回り小型であるがマッハ八以上の最高速度を発揮出来…。機体底部には対地対艦武装は大型ミサイルを搭載する。対空装備は対空プラズマレーザーと実弾の対空機関砲を搭載…。
「ケルベロスが量産化に成功出来れば…メガラニカ解放軍のドローン兵器『グリフォン』にも対抗出来ましょう…」
メガラニカ南方海戦で太平帝国軍艦隊を撃退させたドローン兵器の正体はグリフォンと判明する。本機は南方海戦で太平帝国海軍部隊が鹵獲したグリフォンを研究…。設計された機体でありメガラニカ解放軍のグリフォンに対抗出来る戦闘用ドローン兵器として提案されたのである。
「ケルベロス…試作機の完成を見届けるか…」
二枚目の設計図を直視する。
「ん?此奴は…」
「二枚目の新型兵器は超砲撃型戦艦…『ティタニア』です…」
「超砲撃型戦艦…ティタニア?」
正式名は超砲撃型戦艦ティタニアであり海軍直属の開発部が提案したのである。今現在では完全に過去の遺産である超弩級戦艦であるがティタニアは最先端の科学技術と過去のロストテクノロジーを結集…。現代型大艦巨砲主義の象徴である。艦体の全長は三百メートルサイズと巨体であり全幅は五十メートルサイズ…。全備総重量は前代未聞の推定七十万トンクラスの超弩級戦艦である。
「今時大艦巨砲主義なんて…時代錯誤だろ…」
ブラッドフォードは時代錯誤であると感じるが…。
「戦艦ティタニアは現在開発中の超大型電磁投射砲を搭載する予定なのです…」
「電磁投射砲か…」
電磁投射砲は現在太平帝国軍が開発中の実弾電磁兵器である。高額のミサイルよりも安価であり高威力を発揮出来ると期待される。
「海軍開発部の大計画では戦艦ティタニアの装甲は『エターナルメタル』を使用するとの情報です…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは月面で採掘された不朽性の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスも安価ですからね♪」
「であれば建造を急行するべきだな…」
直後である。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で会議室に入室したのである。
「緊急事態だと?何事だ?」
ブラッドフォードが問い掛けると通信兵はビクビクした様子で…。
「南方のメティス諸島…メティス基地が敵軍に占拠…基地を防衛する守備隊は必死に交戦しましたが…守備隊は玉砕したとの情報です…」
「なっ!?メティス基地の守備隊が…玉砕だと!?守備隊は全滅したのか!?」
ルーヴェルハルトは驚愕したのである。
「残念ですが…」
メティス基地とは強固の大規模要塞が構築された本土防衛用の第二防衛ライン…。推計三万人もの太平帝国陸軍守備隊が配置されたが本日未明にメガラニカ解放軍の強襲で全滅したのである。
「メティス基地が陥落したか…恐らく今度の攻撃目標は最終防衛ラインの…アポロゾーン基地だな…」
アポロゾーン基地とは最南端に位置する離島…。アポロゾーン本島を防衛する太平帝国軍守備隊の本拠地である。太平帝国本土を防衛する最重要防衛拠点であるものの…。推計八十万人もの民間人も安住する。ルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「大総統…即刻アポロゾーン本島に援軍を派遣させますか?」
「援軍は不要だ…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの返答にルーヴェルハルトと通信兵は絶句したのである。
「本気ですか!?大総統!?」
「私は本気だよ…ルーヴェルハルト…」
「如何して援軍を派遣しないのですか!?アポロゾーンが陥落すれば…今度は本土が攻撃対象なのですよ!?」
ブラッドフォードは再度無表情で返答する。
「アポロゾーンの守備隊には陽動作戦に利用する…」
「陽動作戦ですと?」
「味方の戦闘機に特殊弾頭を搭載…アポロゾーンに侵攻中のメガラニカ解放軍を特殊弾頭ミサイルで殲滅する…」
アポロゾーン基地は陸海軍の大部隊が駐屯…。基地内の兵力も推計十四万人であり基地を陥落させるには相当数の部隊が必要である。アポロゾーンを攻防する両軍に特殊弾頭ミサイルで攻撃…。当然として味方の部隊は全滅するが敵軍の侵攻を阻止するには非常に好都合である。
「特殊弾頭ミサイルですと!?アポロゾーンに特殊弾頭なんて使用すれば味方の守備隊は勿論…大勢の民間人にも被害が…」
特殊弾頭ミサイルは所謂核兵器の一種であり一発のミサイルで十数キロメートルもの広範囲を焦土化させられる。非人道的でありイエスマンのルーヴェルハルトも特殊弾頭ミサイルの使用には躊躇する。
「今更何を躊躇するのだ?ルーヴェルハルト…特殊弾頭なら二年前の大戦争で無尽蔵に使用しただろ…」
小国家だった太平帝国が世界最終戦争で勝利出来たのは特殊弾頭ミサイルの多用である。
「敵味方諸共…殲滅するのですか?」
「最早多少の犠牲は止むを得ない…」
ルーヴェルハルトの問い掛けにブラッドフォードは即答する。
「特殊弾頭は極秘だぞ…兎にも角にもアポロゾーンの守備隊には本島の防衛を徹底させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは不本意であるが承諾したのである。

第三話

攻防戦

五月二十七日早朝…。メガラニカ解放軍の大艦隊が太平帝国最終防衛区域アポロゾーンへと進行を開始したのである。同時刻…。アポロゾーン基地総司令部では拠点防衛用のスーパーレーダーが反応したのである。
「一体何事だ!?」
「スーパーレーダーが反応したぞ!」
即座に立体映像のホログラムで確認する。ホログラムには数十隻もの艦艇が確認出来る。
「此奴はメガラニカ解放軍の艦隊だな…アポロゾーンを攻略するみたいだ…」
「如何しましょう…総司令官…」
「即刻防衛戦を開始する!各員は戦闘配置だ!アポロゾーンは徹底的に死守しろ!」
守備隊の陸軍総司令官が各員に指示したのである。
「はっ!」
アポロゾーンは本土防衛の最終防衛ラインでありアポロゾーンが陥落すれば本土が攻撃される。
「通信兵…本土にも援軍の要請を伝達しろ…」
「はっ!」
通信兵は即座に総本部に通達したのである。三十分後…。メガラニカ解放軍の大艦隊がアポロゾーンの防衛区域へと到達したのである。
「総司令官…メガラニカの大艦隊が防衛区域に到達しました…」
「防衛戦を開始するか…」
攻撃開始の合図と同時に海面上からは百二十隻ものミサイル警備艇…。滑走路からは百三十機もの戦闘爆撃機が飛来したのである。同時刻…。メガラニカ解放軍の大艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦レヴィアタンはスーパーレーダーで太平帝国軍のミサイル警備艇と戦闘爆撃機を確認する。
「艦長…敵部隊を確認しました…」
レヴィアタンの艦長はメガラニカ南方海戦で活躍したウィンフィールドである。
「ホログラムを作動させろ…」
乗組員は艦内のホログラムを作動させる。するとホログラムには百隻以上のミサイル警備艇と戦闘爆撃機が立体映像として映写される。
「旧型の兵器ばかりか…」
「如何されますか?」
乗組員の問い掛けにウィンフィールドは即答する。
「即刻迎撃せよ…ドローン兵器を発進させろ…」
「承知しました…」
旗艦のレヴィアタンから二十八機のグリフォン型ドローン兵器が発進する。レヴィアタンは全長二百四十メートルサイズ…。全幅三十メートルサイズの大型艦であり満載排水量は推定五万トンである。ミサイル戦闘艦としての機能は勿論…。航空機の母艦としても使用出来る。所謂現代型の航空戦艦である。艦載機はドローン兵器であり合計五十機以上搭載出来る。旗艦のレヴィアタンは勿論…。レヴィアタン級航空大型ミサイル戦闘艦六隻と最新鋭のドローン空母艦隊から合計四百機以上ものグリフォン型ドローン兵器が発進したのである。ドローン部隊が発進してより十五分後…。最前線のアポロゾーン防衛部隊と遭遇したのである。両軍が遭遇した直後に戦闘が開始され…。アポロゾーン防衛部隊はミサイル警備艇と戦闘爆撃機による対空ミサイル攻撃で十四機のドローンを撃墜したのである。ドローン撃墜に防衛部隊の将兵達は戦意が向上するも…。相手は新型のドローン兵器であり二分も経過すればドローンの反撃で八十三隻のミサイル警備艇が撃沈され七十六機の戦闘爆撃機が一瞬で撃墜されたのである。ドローン部隊の猛反撃からアポロゾーン防衛部隊は総崩れ…。海上の防衛網は簡単に突破されたのである。
「総司令官…海上の防衛部隊が壊滅…敵軍に突破されました…」
通信兵の報告にアポロゾーン総司令部は混乱する。
「ドローン部隊を使用したか…」
総司令官は一瞬沈黙するも…。
「守備隊に伝播せよ…陸上の防衛戦を開始する!」
「承知しました…」
基地内の将兵達は承諾したのである。
「民間人は緊急用シェルターに避難させろ…」
陸上の防衛部隊は即座に行動を開始する。緊急警報システムが作動され…。民間人は即座に各地に設置された避難用の緊急用シェルターへと移動したのである。民間人の避難終了から三分後…。メガラニカ解放軍のドローン部隊がアポロゾーン領空へと到達する。
「メガラニカのドローンだ!」
「海上の防衛部隊は全滅したのか?」
「兎にも角にも迎撃するぞ!」
陸上の守備隊は迎撃を開始…。上空のドローンを目標に攻撃したのである。数千発もの機関砲と対空ミサイルが上空に炸裂する。守備隊の攻撃で二十二機のドローンを撃墜するも…。ドローンの空爆で三十六両の戦闘車が破壊され百三十七人の将兵が戦死する。三分間の空爆で陸上部隊の八割が壊滅したのである。
「陸上部隊の八割が壊滅しました…」
守備隊の劣勢に総司令部は混乱する。
「なっ!?壊滅状態だと!?」
「ドローンの空爆で守備隊の八割が壊滅したのか!?」
総司令部の将兵達は予想外の事態に恐怖したのである。直後…。スーパーレーダーが反応する。
「スーパーレーダーが反応したぞ…今度は何事だ?」
ホログラムを作動させるとメガラニカ解放軍の大艦隊が映写される。
「敵軍の大艦隊だぞ…アポロゾーンの領海に到達したのか!?」
メガラニカ解放軍の大艦隊は航空大型ミサイル戦闘艦が七隻と正規空母四隻…。ミサイル巡洋艦が十三隻と三十一隻の防空駆逐艦が確認出来る。後方には上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦が十八隻…。補助用の魚雷艇が十五隻確認出来る。メガラニカ解放軍はドローンの投入で海上の防衛部隊を撃退…。メガラニカ解放軍艦隊はノーダメージでアポロゾーンの領海へと到達出来たのである。
「本土から援軍は出動したのか!?」
総司令官が通信兵に問い掛ける。
「無線では…本土から潜水艦が一隻出動したと…」
「はっ?」
総司令官は絶句する。
「こんな状況で潜水艦一隻だと!?何故海軍の主力艦隊を出動させない!?」
「主力艦隊は本土を防衛するのが手一杯であると…」
現実問題…。メガラニカ南方海戦の大敗北から太平帝国軍主力艦隊は艦隊の再建に手一杯であり大艦隊は派遣出来なかったのである。
「畜生が…」
通信兵の報告に総司令官はピリピリする。
(アポロゾーンは陥落しろと?総本部は本土決戦を決断したのか?)
総司令官は決断したのである。
「総員…援軍は期待出来ないが…精一杯アポロゾーンを死守するぞ!」
「はっ!承知しました…」
絶望的状況下であるが将兵達は一致団結…。残存部隊による徹底抗戦を決意したのである。同時刻…。メガラニカ解放軍大艦隊は上陸作戦を開始したのである。十八隻の大型輸送艦から三十六隻の上陸用舟艇が出動…。陸上部隊によるアポロゾーン上陸作戦が開始されたのである。
メンテ
アフターウォーズ ( No.47 )
日時: 2021/08/21 20:28
名前: 月影桜花姫

第一話

制圧作戦

世界最終戦争で旧文明が大崩壊してより四年後…。世界各地は殺伐とした雰囲気であり暴徒化した人間達が食糧の争奪戦で殺し合ったのである。こんなにも荒廃した世の中であるが…。旧文明の復興を主眼に活動する勢力も誕生したのである。某月某日…。荒廃した主要都市部では『ホープセイバーズ』と呼称される巨大武装勢力が敵対する国連軍残存勢力『地球革命軍』の軍事工場に強襲を仕掛ける。
「全軍!突撃せよ!」
ホープセイバーズの総大将【ルーヴェルハルト】の指示と同時に銃火器を所持した戦闘員達が全力で突撃したのである。軍事工場の周辺には十数個ものトーチカが確認出来る。トーチカには機関銃が配備される。
「ホープセイバーズの突撃隊が突撃を開始したぞ!即刻迎撃しろ!軍事工場には近寄らせるな!」
トーチカの部隊長が迎撃を命令すると機関銃が炸裂する。無数の銃弾が炸裂…。突入するホープセイバーズの突撃隊は地球革命軍の猛攻撃で五十人以上の戦闘員が死傷したのである。地球革命軍の銃撃に畏怖した突撃隊は後退…。自軍の陣地へと戻ったのである。
「貴様等!何故戻った!?敵前逃亡は重罪だぞ!」
総大将のルーヴェルハルトは彼等に怒号する。
「総大将…こんな丸腰の状態では無謀ですぜ…」
突撃隊の装備品は護身用のハンドガンやらダガーナイフのみである。人員でもホープセイバーズは二百五十人程度であるが…。地球革命軍の守備隊は推計五百人であり機関銃以外にも高火力の重戦車が五両も配備される。強固に構築された地球革命軍のトーチカを突破するのは現実的に不可能である。
「多勢に無勢ですぜ…」
「貴様等…」
(役立たずが…)
ルーヴェルハルトは突撃隊の弱腰に呆れ果てる。本来ホープセイバーズは無頼漢やら戦災孤児によって構成された暴力団的軍閥組織であり武装も士気も貧弱である。
「撤退しませんか?」
戦闘員の一人が撤退を要請する。
「なっ!?今更撤退だと!?今回軍事工場を攻略出来れば地球革命軍の戦力低下が期待出来るのだぞ!撤退は許容出来ない!」
軍事工場を今回の作戦で占拠出来れば地球革命軍の戦力低下は勿論…。装備が貧弱のホープセイバーズでも高火力の装備品の入手が可能であり独自で武器の生産も出来る。
「ですが総大将…」
弱気の戦闘員達は戦意喪失した様子であり絶句したのである。するとルーヴェルハルトの背後より…。
「俺の出番みたいだな…」
「ん?貴様は…」
ルーヴェルハルトの背後にはフードを被った小柄の人物が近寄る。素顔は不明であるが性別は男性である。
「あんたは何者だよ?」
戦闘員の一人がフードの人物に問い掛ける。するとフードの人物はフードを外したのである。
「なっ!?あんたは…」
フードの人物は両目の瞳孔は半透明の碧眼…。頭髪は銀髪である。周囲の者達は彼に身震いしたのか全身がプルプルする。
「あんたは…【ノイザッグ】か…」
「ノイザッグだって!?あんたは『ネオヒューマン』の…」
ネオヒューマンとは遺伝子操作によって誕生した人工性の超人類…。人類を超越した存在の総称である。ネオヒューマンは常人以上の身体能力と不老長寿…。摩訶不思議の超能力を駆使出来る。荒廃した今現在でこそネオヒューマンは神性の存在であるが世界最終戦争の終戦後も各地で生存が確認される。
「ノイザッグって…暗闇の一匹狼だよな?」
ノイザッグは戦闘に特化されたネオヒューマンである。普段は単独で行動する習性からか異名は暗闇の一匹狼と呼称される。
「如何して一匹狼のあんたがホープセイバーズに所属した?」
するとルーヴェルハルトが説明する。
「此奴は三日前にホープセイバーズに編入させた…即戦力として期待出来るし百人力?千人力の戦力だからな…」
ノイザッグの戦闘能力は規格外であり最低でも機関銃を所持した戦闘員の三百人分は期待出来る。ルーヴェルハルトの指示にノイザッグは無言であるが承諾したのである。ノイザッグは最前線へと移動する。
「ん?彼奴は何者だ?」
「ホープセイバーズの新手か?」
「一人で突入するとは…無謀だな…」
将兵の一人がトーチカからハンドガンを所持…。
「射殺する!」
ハンドガンを発砲したのである。直後…。ノイザッグは超能力を発動する。全身からスパークのシールドが発生…。本体を覆い包む。スパークのシールドによりハンドガンの弾丸が無力化されたのである。
「なっ!?シールドか!?」
「弾丸が…」
「彼奴はひょっとして…ネオヒューマンか?」
ネオヒューマンの一言に部隊長は反応する。
「ネオヒューマンだと!?」
戦闘に特化されたネオヒューマンは味方であれば非常に心強い存在である反面…。敵対すれば強大なる近代兵器を所持しても仕留めるのは非常に困難である。
「敵兵がネオヒューマンであれば…非常に厄介だな…」
(一か八か…)
不本意であるが…。
「ネオヒューマンを仕留めよ!全軍…総攻撃開始!」
地球革命軍はノイザッグに総攻撃を仕掛ける。数千発もの弾丸は勿論…。重戦車の戦車砲による砲弾がノイザッグを急襲する。ノイザッグは再度スパークのシールドを発動…。機関銃の弾丸と戦車砲の砲弾を無力化したのである。
「畜生…シールドで攻撃を無力化したか…」
ノイザッグはノーダメージであり地球革命軍の将兵達は絶句する。するとノイザッグは無表情で…。
「こんな程度か?今度は俺の出番だな…」
ノイザッグは超能力を発動すると軍事工場を守備する五両の重戦車をペシャンコに破壊したのである。
「えっ!?重戦車が…」
ノイザッグの超能力に敵味方は驚愕する。
「畜生…重戦車を破壊されたか…」
破壊された重戦車に地球革命軍の兵士達は戦意喪失するが…。
「相手はネオヒューマン一人だ!彼奴を殲滅せよ!」
部隊長の命令にトーチカの兵士達は再度機関銃で攻撃したのである。
「無謀だな…」
ノイザッグは再度超能力を発動…。数千発もの機関銃の弾丸を停止させる。
「俺に金属類は通用しない…」
ノイザッグはあらゆる金属類を自由自在に操作出来る超能力であり彼に金属を使用した武器は通用しない。
「死滅しろ…」
停止させた無数の銃弾をトーチカの兵士達に返却したのである。
「ぐっ!」
「ぎゃっ!」
返却された無数の銃弾によりトーチカの兵士達は戦死する。
(勝利は目前だな…)
後方のルーヴェルハルトは勝利を確信したのである。
「敵軍は弱体化したぞ!総攻撃を開始しろ!」
ルーヴェルハルトは味方の戦闘員達に総攻撃を指示したのである。主力の突撃隊のみならず…。後方に位置する各戦闘員達も軍事工事への総攻撃に参加したのである。軍事工事はノイザッグの加勢により一時間程度で占拠…。地球革命軍の守備隊は軍事工事から撤退したのである。
「総大将♪敵軍の奴等撤退しましたぜ♪」
戦闘員達は勝利に大喜びする。
「初戦は冷や冷やしたが無事に軍事工場を確保出来たからな…結果オーライだ…」
ルーヴェルハルトはノイザッグに近寄るなり…。
「見事だったぞ♪ノイザッグ♪」
普段は厳格のルーヴェルハルトであるが笑顔で発言する。
「初戦でこんな大戦果とは…貴様は次期総帥候補決定だな♪」
「えっ!?次期総帥候補って…」
周囲の戦闘員達は次期総帥候補に任命されたノイザッグに驚愕したのである。
「此奴が…次期総帥候補だって!?」
「実質今回の戦闘で地球革命軍に勝利出来たのはノイザッグの力戦だからな…次期総帥候補に任命されても可笑しくないぞ…」
するとノイザッグは無表情で…。
「俺は単純に戦闘で気に入らない人間を打っ殺したいだけだ…」
ノイザッグは人一倍好戦的であり戦闘に参加出来れば満足だったのである。
「総帥なんて称号は俺には不要だ…」
ノイザッグの返答に内心ガッカリするものの…。
「貴様が戦闘に参加したいのであれば思う存分戦闘しろ…恐らく今後も地球革命軍との戦闘は予想されるからな…」
今回の戦闘でホープセイバーズは四十三人の戦闘員が戦死するが軍事工場と戦闘車を十三両鹵獲したのである。未完成であるが航空戦力の戦闘用ドローンを十七機鹵獲する。
メンテ
Re: 新世紀エヴァンゲリオン〔仮名〕※休止中 ( No.48 )
日時: 2021/08/24 19:23
名前: 月影桜花姫

第一話

闇夜

太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟であり人間は誰一人として近寄れない。
「何やら無数の妖気が感じられる…」
(如何やら今回も大群だな…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。
「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。ふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」
総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。巨体の人型であるが体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は【百鬼食人餓鬼】か…」
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上に落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
(戻ろうか…)
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(女性?)
女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…発動!」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの妖気が感じられる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。彼女の様子に正直意外であると感じる。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行しても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんて大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは物好きね♪」
揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。
「あんた…私に殺されたいみたいね…」
「私に用事かしら?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかもね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪でも…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は妖怪の集合体です…正直桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気!?)
三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」
「勿論よ♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達が妖怪化した存在…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。遭遇した人間は溺死する。
「漁船を襲撃したのが海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは…」
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪よ♪」
「あんたが妖怪?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「なっ!?漁船が…」
「桜餅に!?」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。
「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは本当に妖怪なのか?」
「勿論♪」
問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。
「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」
三蔵郎は驚愕する。
「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」
桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。
「海難入道は?」
海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来でも巨大真蛸らしき物体は確認出来ない。
(こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…)
すると直後である。妖気が接近するのを感じる。
「妖気!?」
(ひょっとして海難入道かしら?)
接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。
メンテ
アフターウォーズ ( No.49 )
日時: 2021/08/25 19:36
名前: 月影桜花姫

第一話

制圧作戦

世界最終戦争で旧文明が大崩壊してより四年後…。荒廃した世界各地は殺伐とした雰囲気であり暴徒化した人間達が食糧やら領土の争奪戦で殺し合ったのである。こんなにも荒廃した世の中であるが…。東方の亜大陸では旧文明の復興を主眼に活動する勢力が誕生したのである。某月某日…。荒廃した南方地帯の主要都市部では『ホープセイバーズ』と呼称される巨大武装勢力が敵対する国連軍残存勢力『地球新政府軍』の軍事工場に強襲を仕掛ける。
「全軍!突撃せよ!」
ホープセイバーズの総大将【ルーヴェルハルト】の指示と同時に銃火器を所持した戦闘員達が全力で突撃したのである。軍事工場の周辺には十数個ものトーチカが確認出来る。トーチカには機関銃が配備される。
「ホープセイバーズの突撃隊が突撃を開始したぞ!即刻迎撃しろ!軍事工場には近寄らせるな!」
トーチカの部隊長が迎撃を命令すると機関銃が炸裂する。無数の銃弾が炸裂…。突入するホープセイバーズの突撃隊は地球新政府軍の猛攻撃で五十人以上の戦闘員が死傷したのである。地球新政府軍の銃撃に畏怖した突撃隊は即座に後退…。自軍の陣地へと戻ったのである。
「貴様等!何故戻った!?敵前逃亡は重罪だぞ!」
総大将のルーヴェルハルトは彼等に怒号する。
「総大将…こんな丸腰の状態では無謀ですぜ…」
突撃隊の装備品は護身用のハンドガンやらダガーナイフのみである。人員でもホープセイバーズは二百五十人程度であるが…。地球新政府軍の守備隊は推計五百人であり機関銃以外にも高火力の重戦車が五両も配備される。強固に構築された地球新政府軍のトーチカを突破するのは現実的に不可能である。
「多勢に無勢ですぜ…」
「貴様等…」
(役立たずが…)
ルーヴェルハルトは突撃隊の弱腰に呆れ果てる。本来ホープセイバーズは無頼漢やら戦災孤児によって構成された暴力団的軍閥組織であり武装も士気も貧弱である。
「撤退しませんか?」
戦闘員の一人が撤退を要請する。
「なっ!?今更撤退だと!?今回軍事工場を攻略出来れば地球新政府軍の戦力低下が期待出来るのだぞ!撤退は許容出来ない!」
軍事工場を今回の作戦で占拠出来れば地球新政府軍の戦力低下は勿論…。装備が貧弱のホープセイバーズでも高火力の装備品の入手が可能であり独自で武器の生産も出来る。
「ですが総大将…」
弱気の戦闘員達は戦意喪失した様子であり絶句したのである。するとルーヴェルハルトの背後より…。
「俺の出番みたいだな…」
「ん?貴様は…」
ルーヴェルハルトの背後にはフードを被った小柄の人物が近寄る。素顔は不明であるが性別は男性である。
「あんたは何者だよ?」
戦闘員の一人がフードの人物に問い掛ける。するとフードの人物はフードを外したのである。
「なっ!?あんたは…」
フードの人物は両目の瞳孔は半透明の碧眼…。頭髪は銀髪であり両手は黒色の手袋である。周囲の者達は彼に身震いしたのか全身がプルプルする。
「あんたは…【ノイザッグ】か…」
「ノイザッグだって!?あんたは『ネオヒューマン』の…」
ネオヒューマンとは遺伝子操作によって誕生した人工性の超人類…。人類を超越した存在の総称である。ネオヒューマンは常人以上の身体能力と不老長寿…。摩訶不思議の超能力を駆使出来る。荒廃した今現在でこそネオヒューマンは神性の存在であるが世界最終戦争の終戦後も荒廃した各地で生存が確認される。
「ノイザッグって…暗闇の一匹狼だよな?」
ノイザッグは戦闘に特化されたネオヒューマンである。普段は単独で行動する習性からか異名は暗闇の一匹狼と呼称される。
「如何して一匹狼のあんたがホープセイバーズに所属した?」
するとルーヴェルハルトが説明する。
「此奴は三日前にホープセイバーズに編入させた…即戦力として期待出来るし百人力?千人力の戦力だからな…」
ノイザッグの戦闘能力は規格外であり最低でも機関銃を所持した戦闘員の三百人分は期待出来る。ルーヴェルハルトの指示にノイザッグは無言であるが承諾したのである。ノイザッグは最前線へと移動する。
「ん?彼奴は何者だ?」
「ホープセイバーズの新手か?」
「一人で突入するとは…無謀だな…」
将兵の一人がトーチカからハンドガンを所持…。
「射殺する!」
ハンドガンを発砲したのである。直後…。ノイザッグは超能力を発動する。全身からスパークのシールドが発生…。本体を覆い包む。スパークのシールドによりハンドガンの弾丸が無力化されたのである。
「なっ!?シールドか!?」
「弾丸が…」
「彼奴はひょっとして…ネオヒューマンか?」
ネオヒューマンの一言に部隊長は反応する。
「ネオヒューマンだと!?」
戦闘に特化されたネオヒューマンは味方であれば非常に心強い存在である反面…。敵対すれば強大なる近代兵器を所持しても仕留めるのは非常に困難である。
「敵兵がネオヒューマンであれば…非常に厄介だな…」
(一か八か…)
不本意であるが…。
「ネオヒューマンを仕留めよ!全軍…総攻撃開始!」
地球新政府軍はノイザッグに総攻撃を仕掛ける。数千発もの弾丸は勿論…。重戦車の戦車砲による砲弾がノイザッグを急襲する。ノイザッグは再度スパークのシールドを発動…。機関銃の弾丸と戦車砲の砲弾を無力化したのである。
「畜生…シールドで攻撃を無力化したか…」
ノイザッグはノーダメージであり地球新政府軍の将兵達は絶句する。するとノイザッグは無表情で…。
「こんな程度か?今度は俺の出番だな…」
ノイザッグは超能力を発動すると軍事工場を守備する五両の重戦車をペシャンコに破壊したのである。
「えっ!?重戦車が…」
ノイザッグの超能力に敵味方は驚愕する。
「畜生…重戦車を破壊されたか…」
破壊された重戦車に地球新政府軍の兵士達は戦意喪失するが…。
「相手はネオヒューマン一人だ!彼奴を殲滅せよ!」
部隊長の命令にトーチカの兵士達は再度機関銃で攻撃したのである。
「無謀だな…」
ノイザッグは再度超能力を発動…。数千発もの機関銃の弾丸を停止させる。
「俺に金属類は通用しない…」
ノイザッグはあらゆる金属類を自由自在に操作出来る超能力であり彼に金属を使用した武器は通用しない。
「死滅しろ…」
停止させた無数の銃弾をトーチカの兵士達に返却したのである。
「ぐっ!」
「ぎゃっ!」
返却された無数の銃弾によりトーチカの兵士達は戦死する。
(勝利は目前だな…)
後方のルーヴェルハルトは勝利を確信したのである。
「敵軍は弱体化したぞ!総攻撃を開始しろ!」
ルーヴェルハルトは味方の戦闘員達に総攻撃を指示したのである。主力の突撃隊のみならず…。後方に位置する各戦闘員達も軍事工事への総攻撃に参加したのである。軍事工事はノイザッグの加勢により一時間程度で占拠…。地球新政府軍の守備隊は軍事工事から撤退したのである。
「総大将♪敵軍の奴等…撤退しましたぜ♪」
戦闘員達はホープセイバーズの勝利に大喜びする。
「初戦は冷や冷やしたが無事に軍事工場を確保出来たからな…結果オーライだ…」
ルーヴェルハルトはノイザッグに近寄るなり…。
「見事だったぞ♪ノイザッグ♪」
普段は厳格のルーヴェルハルトであるが笑顔で発言する。
「初戦でこんな大戦果とは…貴様は次期総帥候補決定だな♪」
「えっ!?次期総帥候補って…」
周囲の戦闘員達は次期総帥候補に任命されたノイザッグに驚愕したのである。
「此奴が…次期総帥候補だって!?」
「実質今回の戦闘でホープセイバーズが地球新政府軍に勝利出来たのはノイザッグの力戦がデカいからな…」
「今回の大戦果だ…ノイザッグが次期総帥候補に任命されても可笑しくないぞ…」
するとノイザッグは無表情で…。
「俺は単純に戦闘で気に入らない人間を打っ殺したいだけだ…」
ノイザッグは人一倍好戦的であり戦闘に参加出来れば満足だったのである。
「総帥なんて称号は俺には不要だ…」
ノイザッグの返答に内心ガッカリするものの…。
「貴様が戦闘に参加したいのであれば思う存分戦闘しろ…恐らく今後も地球新政府軍との戦闘は予想されるからな…」
今回の軍事工場制圧作戦でホープセイバーズは四十三人の戦闘員が戦死するが軍事工場と戦闘車を十三両鹵獲したのである。未完成であるが…。航空戦力の戦闘用ドローンを十七機鹵獲する。

第二話

歓楽街

地球新政府軍の軍事工場を占拠してより三日後…。ホープセイバーズの戦闘員達は都市部の歓楽街の飲食店にてワイワイと泥酔する。南方地帯はスラム街ばかりだが…。歓楽街では飲食店も経営され大勢の人間達が飲食したのである。戦闘員達は店員と周囲の客人に自分達の武勇伝を自慢する。
「俺達は地球新政府軍の奴等を撃退したホープセイバーズの精鋭だぞ♪今度の南方地帯の支配者は俺達ホープセイバーズだからな♪」
「平伏するなら今後は俺達に平伏しろよ♪」
南方地帯全域は地球新政府軍の支配領域であったが…。三日前の戦闘の大敗北により地球新政府軍は撤退したのである。大袈裟に自慢し続ける彼等に周囲の店員や客人はポカンとする。すると一人の戦闘員が…。
「ん?彼奴は?」
「彼奴?誰だよ?」
「ノイザッグだよ…ノイザッグは?」
「ノイザッグなら出歩いたぜ…」
「一人で出歩きやがったのか?」
ノイザッグは酒場の雰囲気が大嫌いであり歓楽街を適当に出歩いたのである。すると道中…。とあるキャバクラを発見する。三人組のキャバ嬢がノイザッグを直視するなり…。
「男前の兵隊さん♪寄ってかない♪」
メンテ
妖怪奇譚※仮名 ( No.50 )
日時: 2021/08/25 19:40
名前: 月影桜花姫

第一話

闇夜

太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟であり人間は誰一人として近寄れない。
「何やら無数の妖気が感じられる…」
(如何やら今回も大群だな…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。
「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。ふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」
総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。巨体の人型であるが体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は【百鬼食人餓鬼】か…」
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
(戻ろうか…)
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。
「えっ…」
今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(女性?)
女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…発動!」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行しても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんて大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」
揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。
「あんた…私に殺されたいみたいね…」
「私に用事かしら?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかもね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気か!?)
突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」
「勿論よ♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達が妖怪化した存在…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。遭遇した人間は溺死する。
「漁船を襲撃したのが海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは…」
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪よ♪」
「あんたが妖怪?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「なっ!?俺達の漁船が…」
「桜餅に!?」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。
「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは…本当に妖怪なのか?」
「勿論♪私は正真正銘妖怪よ♪」
問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。
「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」
三蔵郎は驚愕する。
「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」
桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。
「海難入道は?」
海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。
(こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…)
すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。
「妖気!?」
(ひょっとして海難入道の妖気かしら?)
接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。
「何かしら?」
巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。
(巨大真蛸…)
「海難入道だわ…」
海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。
「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様は妖怪…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」
海難入道は人語で発言したのである。
「私は人魚にも変化出来るからね♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」
海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり相手が妖怪であっても捕食する。
「私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」
「はっ?」
桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。
「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は存在しないぞ…」
海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。
「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」
「人間に加勢したから何よ?私は邪魔者を仕留めただけよ♪」
桜花姫は笑顔で反論したのである。
「貴様…気に入らないな…」
「如何する♪」
「死滅しろ…」
海難入道は即座に触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」
「今度は私の出番ね♪」
桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。
「あんたこそ死滅しなさい♪」
両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。
「直撃♪」
雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。
「えっ?」
「残念であったな…」
桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。
「吸収するなんて…」
(海難入道には妖術が通用しないのかしら…)
メンテ
宇宙大動乱 ( No.51 )
日時: 2021/08/26 22:01
名前: 月影桜花姫

ジャンル
スペースオペラ

世界観
宇宙文明

登場人物
大銀河帝国軍
【ブラッドフォード】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦692年7月16日
星座:牡牛座
実年齢:30歳
所属:大銀河帝国軍
役職:大総統
階級:総帥
性別:男性
身長:168cm
体重:68kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:冷静沈着、合理主義、強硬
趣味:ライフル射撃

【ストライダー】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦674年3月22日
星座:牡羊座
実年齢:48歳
所属:大銀河帝国軍
役職:副総統
階級:大将
性別:男性
身長:199cm
体重:88kg
血液型:B型
一人称:私
性格:適当、面倒臭がり
趣味:プラモデル作成

【ホムンクルス】
種別:クローン人間
所属:大銀河帝国軍
生産数:700万人〜7億人

タイラントキラー
【ウィグノール】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦678年9月28日
星座:天秤座
実年齢:44歳
所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー
役職:総帥
階級:中将
性別:男性
身長:200cm
体重:89kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:生真面目
趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム

【ウェンフィールド】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦700年8月17日
星座:獅子座
実年齢:22歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大佐
性別:男性
身長:176cm
体重:76kg
血液型:O型
一人称:私
性格:誠実
趣味:ホラーゲーム

ホープセイバーズ
【ルーヴェルハルト】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦668年4月25日
星座:牡牛座
実年齢:54歳
所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ
役職:総帥
階級:少将
性別:男性
身長:198cm
体重:87kg
血液型:A型
一人称:私
性格:穏和、野心的
趣味:宇宙旅行

【セレスティノ】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦698年11月15日
星座:蠍座
実年齢:24歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大尉
性別:男性
身長:180cm
体重:80kg
血液型:B型
一人称:私
性格:信実
趣味:設計

登場国家
『大銀河帝国』
成立日:宇宙新暦376年7月4日
総人口:900億人

自治領
『ユートピアサイド』
統治勢力:大銀河帝国軍
総人口:70億人

『エデンスター』
統治勢力:タイラントキラー
総人口:50億人

『ホープエリア』
統治勢力:ホープセイバーズ
総人口:20億人

登場兵器
大銀河帝国軍
『アルセイス』
諸元
正式名:上級大将専用宇宙戦艦アルセイス
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:7隻
起工日:宇宙新暦722年3月27日
進宙日:宇宙新暦722年4月24日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:400m
全幅:220m
全高:80m
総重量:70万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:300人〜800人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:8基
光子魚雷発射機:2基
多目的ミサイル発射機:12基
艦載機:4機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:750mm
甲板装甲:550mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スレイプニル』
諸元
正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル
所属:大銀河帝国軍
建造所:プルトロン軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:18隻
起工日:宇宙新暦722年4月29日
進宙日:宇宙新暦722年5月26日
就役日:宇宙新暦722年5月30日
全長:990m
全幅:860m
全高:140m
総重量:9900万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:6基
50mm対空パルスレーザー機関砲:80基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:800mm
甲板装甲:720mm
装甲材質:貴金属
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『セイバードラゴン』
諸元
正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:2万隻
起工日:宇宙新暦652年4月22日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:800m
全幅:600m
全高:120m
総重量:500万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:320人
輸送要員:2万人〜4万人
兵装
800mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:8基
多目的ミサイル発射機:20基
艦載機:90機
装甲
主砲装甲:750mm
舷側装甲:500mm
甲板装甲:460mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『バジリスク』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦バジリスク
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:6万隻〜8万隻
起工日:宇宙新暦722年3月26日
進宙日:宇宙新暦722年4月12日
就役日:宇宙新暦722年4月15日
全長:200m
全幅:140m
全高:40m
総重量:5万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
300mm高エネルギー連装砲:3基
50mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:1機〜2機※無人機
装甲
主砲装甲:440mm
舷側装甲:250mm
甲板装甲:130mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『アスピドケロン』
諸元
正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン
所属:大銀河帝国軍
建造所:メティス軍事工場
艦種:宇宙駆逐艦
同型艦:9万隻〜15万隻
起工日:宇宙新暦722年5月14日
進宙日:宇宙新暦722年5月26日
就役日:宇宙新暦722年6月4日
全長:180m
全幅:150m
全高:40m
総重量:4万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
250mm高エネルギー連装砲:4基
40mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:2機※無人機
装甲
主砲装甲:370mm
舷側装甲:240mm
甲板装甲:230mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースバード』
諸元
機種:宇宙戦闘機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦699年12月24日
生産数:8万機
運用開始:宇宙新暦700年6月2日
全長:17m
全幅:16m
全高:6m
総重量:14t
全速力:マッハ15
搭乗員:1人
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置

『セイバードローン』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年4月26日
生産数:780万機
運用開始:宇宙新暦722年5月12日
全長:15m
全幅:14m
全高:4m
総重量:12t
全速力:マッハ15〜超光速
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

『ケルベロス』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年6月30日
生産数:400万機
運用開始:宇宙新暦722年7月15日
全長:16m
全幅:12m
全高:5m
総重量:20t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

タイラントキラー
『サラマンダー』
諸元
正式名:宇宙戦艦サラマンダー
所属:タイラントキラー
建造所:ヘブンスター軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:750隻
起工日:宇宙新暦628年1月24日
進宙日:宇宙新暦630年5月25日
就役日:宇宙新暦650年7月30日
全長:780m
全幅:540m
全高:90m
総重量:300万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:280人
輸送要員:2万人〜3万人
兵装
550mm高エネルギー連装砲:8基
40mm対空パルスレーザー機関砲:38基
光子魚雷発射機:4基
多目的ミサイル発射機:16基
艦載機:150機
装甲
主砲装甲:650mm
舷側装甲:480mm
甲板装甲:240mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『レヴィアタン』
諸元
正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン
所属:タイラントキラー
建造所:ヘブンスター軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:560隻
起工日:宇宙新暦718年3月29日
進宙日:宇宙新暦719年4月13日
就役日:宇宙新暦719年7月12日
全長:960m
全幅:530m
全高:120m
総重量:620万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:20人
輸送要員:4万人〜6万人
兵装
320mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:44基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:480mm
舷側装甲:340mm
甲板装甲:190mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『シーサーペント』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント
所属:タイラントキラー
建造所:ヘブンスター軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:4万隻
起工日:宇宙新暦720年1月27日
進宙日:宇宙新暦720年2月28日
就役日:宇宙新暦720年4月24日
全長:250m
全幅:180m
全高:50m
総重量:6万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
280mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:14基
光子魚雷発射機:4基
艦載機:2機〜4機※無人機
装甲
主砲装甲:470mm
舷側装甲:290mm
甲板装甲:150mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースドローン』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦720年2月27日
生産数:500万機
運用開始:宇宙新暦720年11月29日
全長:14m
全幅:12m
全高:3m
総重量:12t
全速力:マッハ14〜超光速
武装
20mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置

『ホワイトピクシー』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦721年3月12日
生産数:2万機
運用開始:宇宙新暦721年3月15日
全長:18m
全幅:16m
全高:6m
総重量:15t
全速力:マッハ20〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:6基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

ホープセイバーズ
『リトルヴィーナス』
諸元
正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:4隻
起工日:宇宙新暦652年4月25日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:850m
全幅:650m
全高:200m
総重量:600万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基
450mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:120機〜140機※無人機
装甲
主砲装甲:950mm
舷側装甲:580mm
甲板装甲:560mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『フェンリル』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦デュラハン
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:4万隻〜5万隻
起工日:宇宙新暦720年11月26日
進宙日:宇宙新暦721年12月30日
就役日:宇宙新暦721年2月24日
全長:350m
全幅:280m
全高:65m
総重量:7万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
450mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:16基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:5機※無人機
装甲
主砲装甲:680mm
舷側装甲:420mm
甲板装甲:270mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『ハイパードローン』
諸元
機種:無人機
所属:ホープセイバーズ
初飛行:宇宙新暦721年4月15日
生産数:900万機
運用開始:宇宙新暦721年5月30日
全長:12m
全幅:8m
全高:4m
総重量:8t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

作中用語
『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器
『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル
『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器
『メティス基地』小惑星
『プルトロン基地』人工惑星
『メタリックアイ』小惑星
『エターナルメタル』特殊超合金
『スーパーリアクター』無限動力炉
『ハイパーリアクター』新型無限動力炉

第一話

艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。大銀河帝国軍にも宇宙用の偵察型ドローンは使用されるが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で見物しませんか?」
「承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させられますよ♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『ヘブンスター』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!ヘブンスターから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるヘブンスターから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でヘブンスターの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪ヘブンスターの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のヘブンスターから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はヘブンスターでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるヘブンスターに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵軍を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

猛反撃開始

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセイス』だ…」
「えっ…アルセイスって…」
ストライダーはハッとする。
「アルセイスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アルセイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの夫人の名前である。
「大総統が希望すのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアルセイスと改名される。
「此奴の性能は?」
アルセイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり主砲…。超弩級波動砲『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」
三日後…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセイスでありブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊は小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星ヘブンスターを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派のルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの残存艦隊の一部が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残党勢力が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…敵対勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
メンテ
アフターウォーズ ( No.52 )
日時: 2021/08/27 10:19
名前: 月影桜花姫

第一話

開戦

世界暦五百二十二年五月十七日午前八時未明の出来事である。世界最終戦争唯一の戦勝国『アプセラス帝国』は戦前でこそ小規模国家であったが世界最終戦争の快進撃から勢力を拡大化…。終戦後は超大国としての地位と資源を牛耳ったのである。世界最終戦争の大勝利によって全世界の秩序と覇権を獲得したアプセラス帝国であるが…。アプセラス帝国の圧政に反対する一部の国連軍残存勢力と各地の反政府勢力が大南海に位置する孤島にて合流したのである。彼等によって大南海の孤島は自治領『メガラニカ解放区』と命名されアプセラス帝国の支配圏から逃亡した移民者達が亡命…。メガラニカ解放区樹立から一年が経過すると領内の総人口は推計五十万人規模に増大化したのである。メガラニカ解放区の勢力拡大を危惧したアプセラス帝国はメガラニカ解放区に宣戦布告…。翌日には大規模艦隊を派遣させ南方のメガラニカ解放区本土を攻撃目標に直進したのである。アプセラス帝国海軍主力艦隊旗艦…。戦闘航空母艦アスピドケロンにはアプセラス帝国国家元首である大総統【ブラッドフォード】が総司令官として乗艦する。
「大総統!徹底的にメガラニカ解放区を撃滅しましょう!」
「当然だ【ルーヴェルハルト】…新世界の統治国であるアプセラス帝国に反抗するのが最大の愚行であるか…奴等には徹底的に理解させなければ…」
ルーヴェルハルトは副総統であり大総統のブラッドフォードにとって最高の右腕である。今回は旗艦アスピドケロンの副艦長として抜擢される。今回のメガラニカ解放区本土攻略作戦ではアスピドケロン級大型戦闘航空母艦が五隻投入され…。護衛艦隊にはミサイル巡洋艦十六隻…。二十四隻の防空駆逐艦が出撃する。補助用の魚雷艇二十九隻と八百人以上の上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦十七隻が後方にて航行したのである。
「メガラニカ解放区の領海へは推定二時間で到達する予定です…」
「全軍を警戒態勢に移行させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは通信機にて各艦の乗組員達に警戒態勢を指示する。
「全軍…警戒態勢に移行せよ…」
すると各艦隊の戦闘要員達は戦闘配置に移動したのである。戦闘要員達が戦闘配置に移動してより三分後…。旗艦アスピドケロンの艦橋に設置された最新型スーパーレーダーが反応したのである。
「本艦のスーパーレーダーが反応しました!」
スーパーレーダーはアプセラス帝国海軍が開発した最新式の電波探知機であり地球全体を正確に索敵出来る。アプセラス帝国軍では艦艇のみならず艦載機にも搭載され今現在アプセラス帝国海軍と互角に交戦出来る国家は存在しない。
「何事だ?」
ブラッドフォードは偵察員に問い掛ける。
「南方…三百キロメートルの遠海より艦隊らしき艦影を無数確認…総数は推計四十隻程度です…」
スーパーレーダーには推計四十個もの光点が点滅したのである。
「ステルス機能を搭載させた艦艇か…」
すると直後…。
「無数の飛翔体が味方艦隊に接近中です!」
四十個の対象物である光点から数百個もの微小の光点が超音速で飛来するのを確認する。
「此奴は対艦ミサイル攻撃だ…迎撃態勢に移行しろ!」
ブラッドフォードは即座に迎撃を命令したのである。数秒後…。二十キロメートルの長距離より数百発もの飛翔体が味方艦隊に接近するのを確認する。
「各艦艇!飛翔体を迎撃せよ!」
各艦艇の迎撃システムが作動したのである。近年アプセラス帝国海軍の各艦艇には対空戦闘用に開発された小型の全自動型パルスレーザー対空砲を設置…。超音速で飛来するミサイル迎撃に期待されたのである。数秒後各艦のパルスレーザー対空砲が炸裂…。蛍光色の光弾が各艦に接近する大型対艦ミサイルを迎撃したのである。全自動化によって大型対艦ミサイルは全弾迎撃…。敵艦から発射された大型対艦ミサイルは味方艦隊には一発も命中しなかったのである。通信兵が即座に報告する。
「通信です…敵軍の大型対艦ミサイルは全弾迎撃されました!味方艦隊への損害は皆無です!」
「最先端の科学技術の結晶であるアプセラス帝国海軍に旧型の対艦ミサイルで攻撃するとは…奴等は時代錯誤ですな♪」
ルーヴェルハルトは笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…所詮奴等は烏合の衆だ…」
総司令官のブラッドフォードも勝利を確信する。アプセラス帝国軍の大艦隊はメガラニカ解放区近海へと直進したのである。十数分後…。メガラニカ解放区の防衛艦隊と遭遇したのである。ルーヴェルハルトはブリッジ正面の窓側にて恐る恐る双眼鏡を所持…。真正面の敵軍の中規模艦隊を確認する。
「大総統…敵軍の防衛艦隊です…」
メガラニカ解放区の防衛艦隊はミサイル巡洋艦八隻…。十九隻のミサイル駆逐艦と三十二隻の魚雷艇が確認出来る。
「中規模艦隊か…総攻撃せよ…」
ブラッドフォードは即刻中規模艦隊に対する総攻撃を指示…。各艦の大型対艦ミサイルと機関砲が炸裂する。アプセラス帝国軍の先制攻撃によりメガラニカ防衛艦隊は二隻の大型ミサイル巡洋艦と六隻のミサイル駆逐艦が大型対艦ミサイルで撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。海面上には九百人以上の乗組員達が吹っ飛ばされる。
「味方艦隊の圧倒的優勢です!」
旗艦アスピドケロンのブリッジでは乗組員達が沈没する敵艦を眺望する。
「アプセラス帝国軍の圧勝は確実だな…」
「奴等は腐敗した国民主権勢力の残党だ…所詮メガラニカ解放区なんて…」
乗組員達はアプセラス帝国軍の優勢に安堵したのである。同時刻…。メガラニカ解放区防衛艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦リトルヴィーナス艦内では味方艦隊の劣勢に騒然とする。
「多勢に無勢だ…こんな状態では防衛艦隊は全滅するぞ!」
「畜生…防衛艦隊が全滅すれば…アプセラス帝国軍の本土上陸も時間の問題だ…」
乗組員達は騒然とするのだが…。艦長の【ウィンフィールド】は沈黙した様子であり冷静だったのである。乗組員の一人が恐る恐る…。
「ウィンフィールド艦長…如何されましょうか?こんなにも劣勢では味方の防衛艦隊は全滅しますよ…」
「狼狽えるな…」
ウィンフィールドは騒然とする周囲の乗組員達を制止させる。
「ですが艦長…今現在の戦況はメガラニカ解放軍が圧倒的に不利ですよ…」
ウィンフィールドは沈黙した様子で腕時計を確認する。
「時間だな…」
周囲の乗組員達はハッとした表情で…。
「えっ…何が時間なのですか!?」
一人の乗組員が恐る恐るウィンフィールドに問い掛ける。
「作戦を開始する…」
ウィンフィールドは通信兵を直視するなり…。
「通信兵…即刻独立機動部隊に通信させるのだ…出撃の命令を…」
「はっ!」
周囲の者達はポカンとする。
「一体何を開始するのか?」
同時刻…。メガラニカ解放区西方地帯の軍港にて三隻の中型空母が出撃したのである。中型空母にはとある新型兵器が多数搭載される。西方地帯から独立機動部隊が出撃を開始してより五分後…。メガラニカ解放区南方地帯の防衛艦隊は壊滅状態であり撤退を余儀無くされる。壊滅寸前の防衛艦隊の光景にアプセラス帝国軍総司令官のブラッドフォードは航空部隊の出撃を命令する。
「航空部隊を出撃させろ…メガラニカ解放区の南方地帯全域を空爆せよ…場合によっては非戦闘員への攻撃も許可する…徹底的に奴等を蹴散らせるのだ…」
「はっ!」
ブラッドフォードが命令すると五隻の大型戦闘航空母艦から推計三百機もの戦闘爆撃機が出撃したのである。航空部隊はメガラニカ解放区の南方地帯領空へと進入…。地上への空爆を開始したのである。南方地帯を防衛する地上部隊は必死にアプセラス帝国軍の航空部隊を迎撃するも…。相手は超音速で飛行する戦闘爆撃機であり対空砲は通用せず対空ミサイルで攻撃しても機体に搭載されたパルスレーザーで簡単に無力化されたのである。攻撃開始から三分間が経過すると南方地帯の地上部隊は九割が壊滅…。数千人もの民間人が死傷したのである。旗艦アスピドケロンではブリッジの乗組員達がモニターで戦況の映像を注視する。
「大総統♪アプセラス帝国軍の圧倒的優勢です♪南方地帯の守備隊は壊滅状態ですよ…」
副艦長のルーヴェルハルトが笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…」
ブラッドフォードは現状であれば上陸作戦が可能であると判断…。
「敵軍は相当疲弊した状態だ…味方の上陸部隊に伝播させろ!」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは即座に各輸送艦に伝達する。上陸作戦を開始する直前…。スーパーレーダーが反応したのである。
「スーパーレーダーが反応しました!」
特殊無線技士がブラッドフォードに報告する。
「今度は何事だ!?」
ブラッドフォードが特殊無線技士に問い掛ける。
「西方の海域より無数の移動物体が出現…超音速で此方に急接近中です…」
「移動物体だと?敵機か?」
ブラッドフォードはモニターを作動させる。するとモニターの画面には無数の飛行物体が映写される。
「此奴は…」
飛行物体は軍用機の形状だが従来型の航空機とは異質的であり新型機であると認識する。
「大総統…敵軍の新型機でしょうか?」
「ひょっとすると無人兵器の戦闘用ドローンかも知れないな…」
「戦闘用ドローンですと?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「敵部隊の航空攻撃に警戒せよ…再度迎撃態勢に移行しろ…作戦中の航空部隊にもドローンの迎撃を急行させるのだ…」
「承知しました…大総統…」
戦闘艦隊と各輸送艦隊は上陸作戦を一時中止させ対空戦闘に移行する。数百機ものドローンが肉眼でも視認出来る位置へと到達…。
「大総統…敵軍のドローンです…」
「ドローンを撃墜せよ!味方艦隊には接近させるな!」
ブラッドフォードの命令と同時に各艦艇は対空戦闘を開始する。対空ミサイルと対空パルスレーザーが西方の上空にて炸裂したのである。対空パルスレーザーがドローンに直撃するのだが…。ドローンの機体内部には高エネルギー兵器を無力化する電磁防壁発生装置により対空パルスレーザーが無力化されたのである。旗艦アスピドケロンのブリッジでは双眼鏡で副艦長のルーヴェルハルトが上空を直視する。
「なっ!?シールドでしょうか!?」
「シールドだと?」
「ドローンは高エネルギーのシールドで対空パルスレーザーを無力化しました…ひょっとして奴等…」
「電磁防壁だな…ドローンの機体に光学兵器を無力化するシールド装置を装備したのだな…」
電磁防壁発生装置とは高エネルギー兵器を無力化する補助装置である。近年ではアプセラス帝国軍にも同類の補助装置は保有するものの…。艦船用の大型装置であり小型航空機に搭載出来る小型の装置は開発中である。
「如何やら奴等…電磁防壁発生装置の小型化に成功したみたいだな…」
ドローン関連の科学技術ではメガラニカ解放区がアプセラス帝国よりも数段階上回る。人員不足であり少数精鋭のメガラニカ解放軍にとって無人兵器のドローンは最大の戦力であり戦闘に特化されたドローン兵器が多数開発される。一方のアプセラス帝国軍にもドローン兵器は多数配備されるものの…。基本的に偵察用の警戒型ドローンであり戦闘に特化された戦闘用ドローンは試作機のみである。
「艦長…上空より敵機が接近中です!」
対空パルスレーザーの弾幕がアプセラス帝国軍の艦隊周囲に炸裂するのだが…。ドローンは機体のシールド装置でパルスレーザーを潜り抜け味方艦隊の上空間近へと到達する。ドローンは即座に低空飛行…。高速航空魚雷を投下したのである。副艦長のルーヴェルハルトはドローンの高速航空魚雷を投下した瞬間を直視する。
「大総統!敵機は航空魚雷を投下しました…」
「航空魚雷だと?大昔の大戦か?」
本来パルスレーザーはミサイルやら敵機の迎撃を想定して開発された高エネルギー兵器であり水中の魚雷を迎撃するのは不可能である。
「大昔の大戦だな…」
アプセラス帝国軍では魚雷は潜水艦と魚雷艇のみ搭載…。今現在航空魚雷は皆無である。
「艦長!右舷より魚雷が接近中です!」
特殊無線技士が報告する。
「即刻回避だ!」
ブラッドフォードは即座に回避を指示したのである。乗組員達の迅速の対応により旗艦アスピドケロンは敵機の魚雷攻撃を回避する。旗艦アスピドケロンの乗組員達はホッとするも…。直後である。対空戦闘中の一隻のミサイル巡洋艦と二隻の防空駆逐艦がドローンの魚雷攻撃により爆散…。轟沈したのである。
「大総統…戦闘中のミサイル巡洋艦ヘルフィッシュと二隻の防空駆逐艦が敵機の魚雷攻撃で撃沈されました…」
メガラニカ解放軍のドローン兵器は潜水艦に搭載された大型魚雷であり大型艦をも撃沈出来る。今度は輸送艦五隻と魚雷艇八隻がドローンの魚雷攻撃で沈没…。輸送艦六隻と魚雷艇四隻が大破したのである。撃沈された輸送艦からは二千人以上の将兵が海面上に吹っ飛ばされる。作戦中だった航空部隊が味方艦隊上空に帰還…。ドローンを迎撃するもドローンの速度は戦闘爆撃機よりも高速であり反対に味方の戦闘爆撃機が反撃される。二分間の空戦で百八十機もの味方戦闘機が撃墜され…。百人以上のパイロットが戦死したのである。一方のドローン部隊も艦艇と艦載機の対空ミサイルにより三十四機撃墜される。副総統のルーヴェルハルトは上空の光景を直視するなり…。
「大総統…アプセラス帝国軍の劣勢です…」
形勢は完全に逆転したのである。ブラッドフォードは沈黙した様子であるが…。自軍の劣勢に苛立ったのかピリピリし始める。すると直後…。主力の戦闘航空母艦にも被害が出始める。二隻の戦闘航空母艦はドローンの自爆攻撃によって飛行甲板が破壊され…。大破したのである。旗艦アスピドケロンの同型艦であるレヴィアタンはドローンの魚雷攻撃で艦内の弾薬庫に引火…。一瞬で爆沈する。
「同型艦のレヴィアタンが撃沈されました!」
同型艦のレヴィアタンが爆沈したと同時に艦内の四十八機の艦載機は勿論…。五百人以上の乗組員達が一瞬で吹っ飛ばされる。旗艦アスピドケロンの周辺海面上には無数の鉄屑やら乗組員達の死骸がプカプカと浮上する。艦隊の損害からルーヴェルハルトはブラッドフォードに撤退を要請したのである。
「大総統!現状ではアプセラス帝国軍が圧倒的に不利です!即刻撤退しなければ…味方の艦隊が全滅しますよ!」
撤退を要請するルーヴェルハルトにブラッドフォードはギロッと睥睨する。
「撤退だと?主力の戦闘航空母艦二隻は健在だ…ドローンは実弾の対空ミサイルで対応しろ…」
実際問題ドローンのシールド装置は対空パルスレーザーによる高エネルギー兵器は無力化出来る反面…。実弾兵器は無力化出来ない。
「ですが対空ミサイルのみでは…本数が…」
ドローンに実弾である対空ミサイルは通用するが…。ドローンに命中させるのは非常に困難であり発射された大半がドローンの機関砲で迎撃される。直後…。
「飛行甲板上空より敵機です!直上に急降下します!」
特殊無線技士が報告する。
「敵機だと?」
数秒後…。急降下したドローンは甲板の直上に対艦ミサイルを発射したのである。直後である。ドンッと艦内全体に爆発音が響き渡り…。旗艦アスピドケロンの艦体全体がグラッと揺れ動いたのである。
「ぐっ!」
艦体が揺れ動いた衝撃にブラッドフォードは横たわる。
「大総統!大丈夫ですか!?」
副艦長のルーヴェルハルトは横たわったブラッドフォードに近寄る。
「私は大丈夫だ…本艦の被害状況は?」
先程のドローンの攻撃により旗艦アスピドケロンの損傷は飛行甲板が大破…。艦内に収納された十八機の艦載機も破壊されたのである。反面…。飛行甲板以外の設備は健在だったのである。
「母艦としての機能は完全に阻害されたな…」
「飛行甲板は使用出来ませんが…旗艦としての機能は健在です…」
「であればダメージコントロールを急行せよ…」
乗組員達が飛行甲板を修理する最中…。三隻の大型輸送艦と六隻の防空駆逐艦がドローンと潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されたのである。予想外の大損害にブラッドフォードは撤退を余儀無くされる。
(戦闘を続行し続ければアプセラス帝国軍の大艦隊でも確実に全滅するな…)
味方艦隊の全滅を危惧したブラッドフォードは不本意であるが…。撤退を決断する。艦内の通信機を所持するなり…。
「全軍に伝播する…戦闘続行は不可能だ…撤退を開始せよ…」
ブラッドフォードの判断に誰しもが反対しなかったのである。撤退を開始したアプセラス帝国軍の艦隊にメガラニカ解放軍のドローンは攻撃を停止…。本土へと戻ったのである。今回の大海戦でアプセラス帝国軍は大型艦の戦闘航空母艦一隻とミサイル巡洋艦一隻…。小型艦の防空駆逐艦八隻と魚雷艇十二隻が撃沈される。損傷では三隻の戦闘航空母艦と二隻のミサイル巡洋艦が大破…。防空駆逐艦四隻と魚雷艇五隻が大破する。陸軍の上陸部隊は大型輸送艦が八隻撃沈され…。七隻の輸送艦が大破したのである。航空部隊は二百十九機の戦闘爆撃機を喪失…。五十四機の機体が損傷する。人的損害では合計六千九百四十二人が戦死…。合計三千五百六十一人が負傷したのである。一方のメガラニカ解放軍はミライル駆逐艦二隻とミサイル駆逐艦六隻が撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。陸軍の守備隊は五十八両の戦闘車両が破壊…。空軍は五十六機のドローンが撃墜される。人的被害では合計二千三百六十五人が戦死…。合計三千四百七十八人が負傷する。民間人への被害は合計三千五百八十九人が死亡…。合計四千七百三十二人が負傷したのである。今回の戦闘はメガラニカ南方海戦と命名される。今回の大敗北以降…。アプセラス帝国の権威が失墜したのである。

第二話

大艦巨砲主義

メガラニカ南方海戦の大敗北以降…。メガラニカ解放区の猛反撃が開始されたのである。メガラニカ解放軍はドローン兵器の大量投入と国内の反政府勢力の協力によりアプセラス帝国の領土の約半分を攻略…。占領したのである。メガラニカ南方海戦から一週間後の五月二十四日…。各自治領の戦闘で推計九百万人もの民間人が死亡したのである。同日…。アプセラス帝国首都イーストサイドの大総統官邸会議室では大総統のブラッドフォードとルーヴェルハルトが対談する。
「大総統…一週間の短期間でアプセラス帝国の統治領の約半分がメガラニカ解放軍の猛反撃により占拠されました…アプセラス帝国軍は劣勢の状態です…」
「一週間で領土の約半分が奴等に占拠させるなんて…ドローン兵器の威力を見縊らなければ…こんな状態には…」
ブラッドフォードは後悔したのである。後悔するブラッドフォードにルーヴェルハルトは前向きな姿勢で…。
「ですが大総統!今現在でこそ劣勢ですが…今迄の戦闘でメガラニカ解放区はアプセラス帝国以上に消耗した状態です!」
今現在のメガラニカ解放区とアプセラス帝国の国力は一対十八でありメガラニカ解放区は圧倒的に不利である。メガラニカ解放軍はドローン兵器の有効活用から各地の戦場で圧倒的物量のアプセラス帝国軍を圧倒する。メガラニカ解放軍の快進撃によりアプセラス帝国は領土の約半分を占拠されたものの…。短期間で戦線を拡大させたメガラニカ解放軍は国力が貧弱であり兵站の遅滞から膠着し始める。
「メガラニカ解放軍は膠着状態ですからね!劣勢を挽回出来る絶好のチャンスですよ!」
するとブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。
「訓練中の【ホムンクルス】だが…正規軍の将兵として実戦に配属出来るのか?」
「訓練中のホムンクルスですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から研究…。開発されたクローン人間達の総称である。度重なる戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。世界最終戦争以前のアプセラス帝国は小規模の新興国であり人員不足の観点からクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。通常クローン人間の開発は倫理的問題点から民主主義の国家では法律で禁止されるのが通例であるが…。人権を尊重しない独裁政治のアプセラス帝国ではクローン人間の開発も容易に実現出来たのである。今現在は推計三百万人ものホムンクルスが大量生産され…。正規軍の将兵として実戦に参加出来そうなホムンクルスは推計二十万人である。
「彼等が正規軍の将兵として実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。アプセラス帝国軍はホムンクルスと人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスの将兵を最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
近日ではアプセラス帝国の劣勢から脱走兵やらメガラニカ解放軍に加勢する勢力が続出…。両勢力の力関係は完全に逆転し始める。人員確保が難化し続けるアプセラス帝国軍にとってホムンクルス将兵の投入は非常に好都合だったのである。
「本題ですが…開発部が新型兵器を提案しました…」
開発部が提案した数種類の新型兵器の設計図をブラッドフォードに提出する。
「戦闘用ドローン…『ケルベロス』?」
「ケルベロスは…」
ケルベロスとはアプセラス帝国軍が開発した無人戦闘機である。従来型の有人戦闘機よりは一回り小型であるがマッハ八以上の最高速度を発揮出来…。機体底部には対地対艦武装は大型ミサイルを搭載する。対空装備は対空プラズマレーザーと実弾の対空機関砲を搭載…。
「ケルベロスが量産化に成功出来れば…メガラニカ解放軍のドローン兵器『グリフォン』にも対抗出来ましょう…」
メガラニカ南方海戦でアプセラス帝国軍艦隊を撃退させたドローン兵器の正体はグリフォンと判明する。本機は南方海戦でアプセラス帝国海軍部隊が鹵獲したグリフォンを研究…。設計された機体でありメガラニカ解放軍のグリフォンに対抗出来る戦闘用ドローン兵器として提案されたのである。
「ケルベロス…試作機の完成を見届けるか…」
二枚目の設計図を直視する。
「ん?此奴は…」
「二枚目の新型兵器は超砲撃型戦艦…『ティタニア』です…」
「超砲撃型戦艦…ティタニア?」
正式名は超砲撃型戦艦ティタニアであり海軍直属の開発部が提案したのである。今現在では完全に過去の遺産である超弩級戦艦であるがティタニアは最先端の科学技術と過去のロストテクノロジーを結集…。現代型大艦巨砲主義の象徴である。艦体の全長は三百メートルサイズと巨体であり全幅は五十メートルサイズ…。全備総重量は前代未聞の推定七十万トンクラスの超弩級戦艦である。
「今時大艦巨砲主義なんて…時代錯誤だろ…」
ブラッドフォードは時代錯誤であると感じるが…。
「戦艦ティタニアは現在開発中の超大型電磁投射砲を搭載する予定なのです…」
「電磁投射砲か…」
電磁投射砲は現在アプセラス帝国軍が開発中の実弾電磁兵器である。高額のミサイルよりも安価であり高威力を発揮出来ると期待される。
「海軍開発部の大計画では戦艦ティタニアの装甲は『エターナルメタル』を使用するとの情報です…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは月面で採掘された不朽性の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスも安価ですからね♪」
「であれば建造を急行するべきだな…」
直後である。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で会議室に入室したのである。
「緊急事態だと?一体何事だ?」
ブラッドフォードが問い掛けると通信兵はビクビクした様子で…。
「南方のメティス諸島…メティス基地が敵軍の攻勢で占拠…基地を防衛する守備隊は必死に交戦しましたが…守備隊は玉砕したとの情報です…」
「なっ!?メティス基地の守備隊が…玉砕だと!?守備隊は全滅したのか!?」
ルーヴェルハルトは驚愕したのである。
「残念ですが…」
メティス基地とは強固の大規模要塞が構築された本土防衛用の第二防衛ライン…。推計三万人ものアプセラス帝国陸軍守備隊が配置されたが本日未明にメガラニカ解放軍の強襲で全滅したのである。
「メティス基地が陥落したか…恐らく今度の攻撃目標は最終防衛ラインの…パシフィスゾーン基地だな…」
パシフィスゾーン基地とは最南端に位置する離島…。パシフィスゾーン本島を防衛するアプセラス帝国軍守備隊の本拠地である。アプセラス帝国本土を防衛する最重要防衛拠点であるものの…。推計八十万人もの民間人も安住する。ルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「大総統…即刻パシフィスゾーン本島に援軍を派遣させますか?」
「援軍は不要だ…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの返答にルーヴェルハルトと通信兵は絶句したのである。
「本気ですか!?大総統!?」
「私は本気だよ…ルーヴェルハルト…」
「如何して援軍を派遣しないのですか!?パシフィスゾーンが陥落すれば…今度は本土が攻撃対象なのですよ!?」
ブラッドフォードは再度無表情で返答する。
「パシフィスゾーンの守備隊には陽動作戦に利用する…」
「陽動作戦ですと?」
「味方の戦闘機に特殊弾頭を搭載…パシフィスゾーンに侵攻中のメガラニカ解放軍を特殊弾頭ミサイルで殲滅する…」
パシフィスゾーン基地は陸海軍の大部隊が駐屯…。基地内の兵力も推計十四万人であり基地を陥落させるには相当数の部隊が必要である。パシフィスゾーンを攻防する両軍に特殊弾頭ミサイルで攻撃…。当然として味方の部隊は全滅するが敵軍の侵攻を阻止するには非常に好都合である。
「特殊弾頭ミサイルですと!?パシフィスゾーンに特殊弾頭なんて使用すれば味方の守備隊は勿論…大勢の民間人にも被害が…」
特殊弾頭ミサイルは所謂核兵器の一種であり一発のミサイルで十数キロメートルもの広範囲を焦土化させられる。非人道的でありイエスマンのルーヴェルハルトも特殊弾頭ミサイルの使用には躊躇する。
「今更何を躊躇するのだ?ルーヴェルハルト…特殊弾頭なら二年前の大戦争で無尽蔵に使用しただろ…」
小国家だったアプセラス帝国が世界最終戦争で勝利出来たのは特殊弾頭ミサイルの多用である。
「敵味方諸共…殲滅するのですか?」
「最早多少の犠牲は止むを得ない…」
ルーヴェルハルトの問い掛けにブラッドフォードは即答する。
「特殊弾頭は極秘だぞ…兎にも角にもパシフィスゾーンの守備隊には本島の防衛を徹底させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは不本意であるが承諾したのである。

第三話

攻防戦

五月二十七日早朝…。メガラニカ解放軍の大艦隊がアプセラス帝国最終防衛区域パシフィスゾーンへと進行を開始したのである。同時刻…。パシフィスゾーン基地総司令部では拠点防衛用のスーパーレーダーが反応したのである。
「一体何事だ!?」
「スーパーレーダーが反応したぞ!」
即座に立体映像のホログラムで確認する。ホログラムには数十隻もの艦艇が確認出来る。
「此奴はメガラニカ解放軍の艦隊だな…パシフィスゾーンを攻略するみたいだ…」
「如何しましょう…総司令官…」
「即刻防衛戦を開始する!各員は戦闘配置だ!パシフィスゾーンは徹底的に死守しろ!」
守備隊の陸軍総司令官が各員に指示したのである。
「はっ!」
パシフィスゾーンは本土防衛の最終防衛ラインでありパシフィスゾーンが陥落すれば本土が攻撃される。
「通信兵…本土にも援軍の要請を伝達しろ…」
「はっ!」
通信兵は即座に総本部に通達したのである。三十分後…。メガラニカ解放軍の大艦隊がパシフィスゾーンの防衛区域へと到達したのである。
「総司令官…メガラニカの大艦隊が防衛区域に到達しました…」
「防衛戦を開始するか…」
攻撃開始の合図と同時に海面上からは百二十隻ものミサイル警備艇…。滑走路からは百三十機もの戦闘爆撃機が飛来したのである。同時刻…。メガラニカ解放軍の大艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦レヴィアタンはスーパーレーダーでアプセラス帝国軍のミサイル警備艇と戦闘爆撃機を確認する。
「艦長…敵部隊を確認しました…」
レヴィアタンの艦長はメガラニカ南方海戦で活躍したウィンフィールドである。
「ホログラムを作動させろ…」
乗組員は艦内のホログラムを作動させる。するとホログラムには百隻以上のミサイル警備艇と戦闘爆撃機が立体映像として映写される。
「旧型の兵器ばかりか…」
「如何されますか?」
乗組員の問い掛けにウィンフィールドは即答する。
「即刻迎撃せよ…ドローン兵器を発進させろ…」
「承知しました…」
旗艦のレヴィアタンから二十八機のグリフォン型ドローン兵器が発進する。レヴィアタンは全長二百四十メートルサイズ…。全幅三十メートルサイズの大型艦であり満載排水量は推定五万トンである。ミサイル戦闘艦としての機能は勿論…。航空機の母艦としても使用出来る。所謂現代型の航空戦艦である。艦載機はドローン兵器であり合計五十機以上搭載出来る。旗艦のレヴィアタンは勿論…。レヴィアタン級航空大型ミサイル戦闘艦六隻と最新鋭のドローン空母艦隊から合計四百機以上ものグリフォン型ドローン兵器が発進したのである。ドローン部隊が発進してより十五分後…。最前線のパシフィスゾーン防衛部隊と遭遇したのである。両軍が遭遇した直後に戦闘が開始され…。パシフィスゾーン防衛部隊はミサイル警備艇と戦闘爆撃機による対空ミサイル攻撃で十四機のドローンを撃墜したのである。ドローン撃墜に防衛部隊の将兵達は戦意が向上するも…。相手は新型のドローン兵器であり二分も経過すればドローンの反撃で八十三隻のミサイル警備艇が撃沈され七十六機の戦闘爆撃機が一瞬で撃墜されたのである。ドローン部隊の猛反撃からパシフィスゾーン防衛部隊は総崩れ…。海上の防衛網は簡単に突破されたのである。
「総司令官…海上の防衛部隊が壊滅…敵軍に突破されました…」
通信兵の報告にパシフィスゾーン総司令部は混乱する。
「ドローン部隊を使用したか…」
総司令官は一瞬沈黙するも…。
「守備隊に伝播せよ…陸上の防衛戦を開始する!」
「承知しました…」
基地内の将兵達は承諾したのである。
「民間人は緊急用シェルターに避難させろ…」
陸上の防衛部隊は即座に行動を開始する。緊急警報システムが作動され…。民間人は即座に各地に設置された避難用の緊急用シェルターへと移動したのである。民間人の避難終了から三分後…。メガラニカ解放軍のドローン部隊がパシフィスゾーン領空へと到達する。
「メガラニカのドローンだ!」
「海上の防衛部隊は全滅したのか?」
「兎にも角にも迎撃するぞ!」
陸上の守備隊は迎撃を開始…。上空のドローンを目標に攻撃したのである。数千発もの機関砲と対空ミサイルが上空に炸裂する。守備隊の攻撃で二十二機のドローンを撃墜するも…。ドローンの空爆で三十六両の戦闘車が破壊され百三十七人の将兵が戦死する。三分間の空爆で陸上部隊の八割が壊滅したのである。
「陸上部隊の八割が壊滅しました…」
守備隊の劣勢に総司令部は混乱する。
「なっ!?壊滅状態だと!?」
「ドローンの空爆で守備隊の八割が壊滅したのか!?」
総司令部の将兵達は予想外の事態に恐怖したのである。直後…。スーパーレーダーが反応する。
「スーパーレーダーが反応したぞ…今度は何事だ?」
ホログラムを作動させるとメガラニカ解放軍の大艦隊が映写される。
「敵軍の大艦隊だぞ…パシフィスゾーンの領海に到達したのか!?」
メガラニカ解放軍の大艦隊は航空大型ミサイル戦闘艦が七隻と正規空母四隻…。ミサイル巡洋艦が十三隻と三十一隻の防空駆逐艦が確認出来る。後方には上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦が十八隻…。補助用の魚雷艇が十五隻確認出来る。メガラニカ解放軍はドローンの投入で海上の防衛部隊を撃退…。メガラニカ解放軍艦隊はノーダメージでパシフィスゾーンの領海へと到達出来たのである。
「本土から援軍は出動したのか!?」
総司令官が通信兵に問い掛ける。
「無線では…本土から潜水艦が一隻出動したと…」
「はっ?」
総司令官は絶句する。
「こんな状況で潜水艦一隻だと!?何故海軍の主力艦隊を出動させない!?」
「主力艦隊は本土を防衛するのが手一杯であると…」
現実問題…。メガラニカ南方海戦の大敗北からアプセラス帝国軍主力艦隊は艦隊の再建に手一杯であり大艦隊は派遣出来なかったのである。
「畜生が…」
通信兵の報告に総司令官はピリピリする。
(パシフィスゾーンは陥落しろと?総本部は本土での戦闘を決断したのか?)
総司令官は決断したのである。
「総員…援軍は期待出来ないが…精一杯パシフィスゾーンを死守するぞ!」
「はっ!承知しました…」
絶望的状況下であるが守備隊の将兵達は一致団結…。残存部隊による徹底抗戦を決意したのである。同時刻…。メガラニカ解放軍大艦隊は上陸作戦を開始したのである。十八隻の大型輸送艦から三十六隻の上陸用舟艇が出動…。陸上部隊によるパシフィスゾーン上陸作戦が開始されたのである。上陸部隊の戦力は主力戦車五十二両…。装甲車と軽量の戦闘車が六十四両投入される。二万人の海兵隊が上陸したのである。今回の上陸作戦では最新型の地上用ドローンである無人戦車を五機投入…。試作段階であるが実戦配備されたのである。
メンテ
桜花姫 ( No.53 )
日時: 2021/08/27 10:55
名前: 月影桜花姫

第一話

闇夜

太古の大昔…。極東の島国『日倭浄土国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。日倭浄土国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が荒神山に出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟であり人間は誰一人として荒神山へは近寄れない。
「何やら無数の妖気が感じられる…」
(如何やら今回も大群だな…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。
「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「妖怪よ…成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。
「大群だな…」
無数の食人餓鬼はふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」
総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。巨体の人型であるが体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は【百鬼食人餓鬼】か…」
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
(戻ろうか…)
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。
「えっ…」
今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(女性?)
女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…発動!」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行しても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんて大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。日倭浄土国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」
揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。
「あんた…私に殺されたいみたいね…」
「私に用事かしら?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかもね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは日倭浄土国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も日倭浄土国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気か!?)
突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「三蔵郎様♪」
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」
「勿論よ♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達の霊魂が妖怪化した存在…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。遭遇した人間は溺死するのが通例である。
「漁船を襲撃したのが水難妖怪の海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは妖怪を退治するなんて…」
漁師達は呆れ果てる。
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪なのよ♪」
「あんたが妖怪だって?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「なっ!?俺達の漁船が…」
「桜餅に…」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。
「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは…本当に妖怪なのか?」
「勿論♪私は正真正銘妖怪よ♪」
問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間達は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。
「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」
三蔵郎は驚愕する。
「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」
桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。
「海難入道は?」
海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。
(こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…)
すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。
「妖気!?」
(ひょっとして海難入道の妖気かしら?)
接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。
「何かしら?」
巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。
(巨大真蛸…)
「海難入道だわ…」
海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。
「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様は妖怪…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」
海難入道は人語で発言したのである。
「私は人魚にも変化出来るからね♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」
海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり相手が妖怪であっても捕食する。
「私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」
「はっ?」
桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。
「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は存在しないぞ…」
海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。
「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」
「人間に加勢したから何よ?私は邪魔者を仕留めただけよ♪」
桜花姫は笑顔で反論したのである。
「貴様…気に入らないな…」
「如何する♪」
「死滅しろ…」
海難入道は即座に触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」
「今度は私の出番ね♪」
桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。
「あんたこそ死滅しなさい♪」
両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。
「直撃♪」
雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。
「えっ?」
「残念だったな…桜花姫よ…」
桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。
「吸収するなんて…」
(海難入道には妖術が通用しないのかしら…)
メンテ
アクアヴィーナス ( No.54 )
日時: 2021/08/28 22:09
名前: 月影桜花姫

第一話

魔獣

多種多様の生命体が生息する『アクアスター』の深海底地帯には上半身が人間の女性…。下半身が銀鱗の大魚である人魚達が楽園『アクアユートピア』で生息する。アクアユートピアとは人魚達の理想郷であり別名人魚王国とも呼称される。場所が深海底からか外敵も皆無であり正真正銘深海底の理想郷だったのである。平和の日常が数十年と継続されたが…。近頃ではアクアユートピアの近辺にて深海底の魔獣が出現するとの噂話が国全体に出回る。魔獣出現の噂話が出回ってより数日後…。とある一人の人魚がアクアユートピアの市街地を無我夢中に遊泳する。
「アクアユートピアに魔獣が出現するなんて…」
彼女の名前は【アクアヴィーナス】…。赤髪のストレートロングとアクアカラーの瞳孔が特徴的である。服装はピンク色のロングドレスと両方の耳朶には金剛石のイヤリング…。赤毛の頭髪には海星型のヘアアクセサリーが確認出来る。
(アクアユートピアは毎日が平和だけれども…正直退屈しちゃうよ…)
「私が魔法使いみたいに魔法を駆使出来るなら…地上界の冒険とか極悪非道の魔獣を征伐したいな♪」
彼女は非常に子供っぽい性格であり全世界の冒険と魔獣征伐を夢見る人魚である。外見のみなら人間の童顔美少女であるが…。年齢的には成人女性であり精神年齢はお子ちゃま同然である。
「こんな場所で遊泳し続けても面白くないし…戻ろうかな?」
アクアヴィーナスはスイスイと自宅へと直行する。アクアユートピアの家屋敷は地上界の建造物と比較すると非常に独特であり貝殻型やら海星型の家屋敷が数多く確認出来る。無事に自宅へと戻ったアクアヴィーナスは変身を解除するなり…。人間の女性へと戻ったのである。人魚達の室内での生活は魔法によって人魚に変身しなくても生活出来る。
「戻ったよ♪」
リビングルームへと入室するが室内は無人である。
「私だけか…」
ゴロゴロとリビングルームのソファーベットに寝転ぶ。ゴロゴロと寝転んだアクアヴィーナスであるが魔獣が気になるのかソワソワしたのである。
「魔獣が気になるわね…」
(【ウェンディーネ】からは絶対に外出するなって忠告されたけど…)
ウェンディーネとはアクアヴィーナスの悪友でありアクアヴィーナスと居候する。子供っぽいアクアヴィーナスとは正反対であり母親みたいな性格である。
「室内でジッとし続けるのも退屈だし…」
ウェンディーネからは今回の魔獣出現には関与するなと忠告されたが…。全世界の冒険と魔獣征伐を夢見る彼女にとって今回は魔獣遭遇の絶好機だったのである。
(遭遇するだけなら♪)
「魔獣に遭遇したら即座に逃走しちゃえば大丈夫よね?」
アクアヴィーナスはアクアユートピアからの脱出を決意する。同時刻…。国内の歓楽街に出掛けたウェンディーネであるがアクアヴィーナスの様子が気になったのか家屋敷へと帰宅する。
(アクアヴィーナスが気になるわね…)
「戻ろうかな♪」
ウェンディーネは金髪のポニーテールとアクアカラーの瞳孔が特徴的である。両方の耳朶には純金のイヤリング…。金髪の頭髪には海星型のヘアアクセサリーが確認出来る。数分後…。自宅へと戻った彼女は変身を解除させるなり室内へと入室する。
「アクアヴィーナス?」
人気は皆無でありウェンディーネは恐る恐るリビングルームへと入室したのである。
「ん?アクアヴィーナスは?」
リビングルームは空っぽであり誰一人として確認出来ない。
「ひょっとしてアクアヴィーナス…」
彼女は一瞬ドキッとする。
「出掛けちゃったのかな?」
戦慄したウェンディーネは即刻…。
「【スキュラン】様に依頼しないと!」
スキュランとはアクアユートピアの国長であり多種多様の魔法を扱える唯一の魔女である。アクアユートピアの人魚達が深海底地帯で無事に生活出来るのも彼女の魔力であり大勢の人魚達から尊敬される。
(スキュラン様ならアクアヴィーナスの居場所が…)
同時刻…。アクアヴィーナスはアクアユートピアの国境へと到達する。
「アクアユートピアの国境だね♪」
無事にアクアユートピアの国境に到達出来たが…。国境には二人組の人魚の警備員が厳重に警備中であり容易には外出出来ない。
(警備員が二人も…外出出来ないわね…)
「如何しましょう?」
困惑した彼女は頭部のヘアアクセサリーに接触する。
(一か八か…)
アクアヴィーナスは近辺の岩場に潜伏するなり…。警備員の足場を標的に海星型のヘアアクセサリーを力一杯投擲したのである。アクアヴィーナスのヘアアクセサリーは見事に警備員の足場に接触…。
「ん?」
「何事かしら?」
物音に反応したのか警備員達は足場のヘアアクセサリーに反応する。
「海星型のヘアアクセサリーだわ…一体誰のかしら?」
(脱出出来るチャンスだわ!)
警備員達の様子にアクアヴィーナスは力一杯力泳するなり…。全身全霊の力泳によってアクアユートピアの国境を突破したのである。
(脱出成功だわ♪)
国外への脱出成功にアクアヴィーナスは大喜びする。
(本当に魔獣は出現するのかしら?)
恐る恐る周囲の海中を眺望するものの…。深海底は全体的に暗闇であり何一つとして確認出来ない。
(暗闇ばかりだわ…)
アクアユートピアはスキュランの魔法によって国全体が街灯で光明であったものの…。国外の深海底地帯はスキュランの魔法の範囲外であり完全なる未知の領域である。
「こんなにも暗闇ばかりでは何も発見出来ないわね…」
(こんなにも暗闇では魔獣なんて遭遇出来なさそうだわ…)
暗闇に戦慄したのかアクアヴィーナスはアクアユートピアに戻りたくなる。
(何も進展しないし…戻ろうかな?一人で暗闇の深海底を移動するのも心細いし…)
即刻アクアユートピアに戻ろうと決意した直後である。近辺から不吉の轟音が響き渡る。
「きゃっ!一体何よ!?」
正体不明の轟音にアクアヴィーナスはビクビクする。アクアヴィーナスは恐る恐る海底下を直視するなり…。戦慄したのである。
「きゃっ!」
海底下には白骨化した無数の鯨類は勿論…。多種多様の魚介類やら殺害された人魚達の白骨体が無数に確認出来る。
「如何してこんなにも白骨体が…」
(魔獣に食べられちゃったのかしら?)
海底下を凝視し続けると粉砕された無数の沈没船の残骸も発見する。
(沈没船だわ…深海底の墓場みたいね…)
「今度こそ戻りましょう…」
今度こそアクアユートピアに戻ろうかと思いきや…。背後から極度の胸騒ぎを感じる。
(胸騒ぎを感じるわ…一体何かしら?)
恐る恐る背後を警戒するなり…。
「蛍光体?」
彼女の背後には正体不明の蛍光体が暗闇の深海底で浮遊する。周囲が極度の暗闇であり蛍光体の正体は不明である。
「何かしら?」
蛍光体を直視し続けると蛍光体の中心部に瞳孔らしき黒点が確認出来る。
「瞳孔!?目玉だわ…」
蛍光体が巨大生物の眼球であると確信する。すると巨大生物の眼球がギョロギョロと蠢動したのである。
「ひっ!」
アクアヴィーナスは巨大生物の眼球に畏怖するなり全身が膠着する。すると直後…。巨大生物の体表が蛍光色に発光したのである。
「巨大水蛸!?」
アクアヴィーナスの目前に出現したのは規格外の超巨大水蛸でありビクビクするアクアヴィーナスをギロリと凝視する。
「ひょっとして【ダークオクタルス】!?」
ダークオクタルスとは超古代から深海底地帯で生息する巨大海洋生物である。多種多様の魚類やら大型海洋生物は勿論…。人魚をも捕食する。普段は南海の深海底で生息するものの…。空腹であれば海面上へと浮上するなり人間達が乗船する船舶をも沈没させ沈没船諸共乗組員達を捕食する。
「魔獣の正体はダークオクタルスだったのね…」
近頃アクアユートピアの近辺に出現した魔獣の正体がダークオクタルスであると再認識したのである。
(海底下に埋没する白骨体と沈没船はダークオクタルスに捕食された残骸だったのね…)
アクアヴィーナスは恐る恐る後退りする。数秒後…。無数の触手がアクアヴィーナスを急襲したのである。
「きゃっ!」
触手で襲撃されたアクアヴィーナスであったが危機一髪回避する。
(逃げないと食い殺されちゃうわ!)
アクアヴィーナスはダークオクタルスから力一杯力泳するなり逃亡したのである。必死に逃亡するアクアヴィーナスにダークオクタルスは猛スピードで追撃する。アクアヴィーナスは無我夢中に海底下を力泳するなり…。沈没した大型船を発見する。
(沈没船だわ…)
アクアヴィーナスは即座に沈没船の内部へと潜伏したのである。
アクアヴィーナスの行方を見失ったダークオクタルスは沈没船に密着する。危機一髪ダークオクタルスから逃げ切ったアクアヴィーナスであるが彼女が潜入したのは大型船の格納庫であり無数のビヤ樽が確認出来る。
(如何やら格納庫みたいね…)
「沈没船から脱出してもダークオクタルスに捕食されるし…こんな場所で潜伏し続けても時間の問題よね…」
アクアヴィーナスは困惑する。
「一体如何すれば…」
同時刻…。悪友のウェンディーネは国長のスキュランの家屋敷へと訪問する。恐る恐る玄関口のドアをノックしたのである。
「失礼します…」
するとドアから緑髪の人魚が出迎える。
「誰かと思いきや…あんたはウェンディーネ…一体何事かしら?」
緑髪の人魚こそアクアユートピアの国長であるスキュランであり摩訶不思議の魔法を扱える。
「スキュラン様大変です!アクアヴィーナスが…アクアヴィーナスが…」
「アクアヴィーナス?」
スキュランは一瞬沈黙するなり…。
「アクアヴィーナスって…問題児のアクアヴィーナスかしら?」
アクアユートピアではアクアヴィーナスは天然の問題児として有名であり国全体から問題児として認識される。
「外出するなって忠告したのに外出しちゃいました…」
「外出って…」
スキュランは呆れ果てたのか苦笑いする。
「別に外出だけなら…問題無さそうだけど…」
「ですがアクアヴィーナスは常日頃から魔獣を征伐したいとか…全世界を冒険したいって口喧しくて…ひょっとしたら一人で国外に…」
すると直後…。二人の警備員がスキュランの家屋敷に訪問する。
「スキュラン様…失礼します…」
「あんた達は警備員…何事かしら?」
「スキュラン様…国境にこんな代物が…」
警備員の一人がスキュランに落とし物を手渡したのである。
「ん?遺失物?誰かのヘアアクセサリーかしら?」
警備員が手渡した遺失物とは海星型のヘアアクセサリーでありウェンディーネがヘアアクセサリーを直視するとソワソワする。
「海星型のヘアアクセサリーって…」
「ん?ウェンディーネ?突然如何しちゃったのよ?」
ウェンディーネは恐る恐る…。
「彼女の…アクアヴィーナスのだわ…」
「アクアヴィーナスの?如何して国境に彼女のヘアアクセサリーが…」
するとウェンディーネがハッとする。
「ひょっとしてアクアヴィーナスは意図的にヘアアクセサリーを国境に投棄したのね…アクアユートピアから脱出する手段として…」
アクアユートピアは警備が厳重であり容易には国外への逃亡は不可能である。
「彼女は私達の警備をヘアアクセサリーで見事に突破したのですね…」
「私達は警備員として不覚です…」
警備員達は悔悟したのである。
「気にしないの…あんた達は何も悪くないから♪」
スキュランは二人の警備員を気にするなと元気付ける。
「スキュラン様♪」
「今後は厳重に警備するのよ…油断大敵♪」
「承知しました…スキュラン様…」
「ですがスキュラン様…アクアヴィーナスはアクアユートピアから脱出したのですか?彼女が無事なのか不安です…」
不安がるウェンディーネにスキュランは断言する。
「魔法で彼女の居場所を調査するわね…」
「スキュラン様…」
スキュランはリビングルームへと移動したのである。ウェンディーネも彼女に同行するなり恐る恐るスキュランのリビングルームへと入室する。リビングルームの中心部には水色の水晶玉が確認出来る。
「水晶玉かしら?」
「魔法の水晶玉よ…リビングルームの水晶玉でアクアヴィーナスの居場所を察知するわね…」
スキュランは水晶玉に接触する。すると水晶玉がスキュランの魔力に反応したのかピカッと発光したのである。
「きゃっ!」
水晶玉の発光によりウェンディーネは両目を瞑目させる。水晶玉が発光してより数秒後…。水晶玉の表面からアクアヴィーナスの様子が投影されたのである。
「アクアヴィーナスだわ!無事だったのね…」
アクアヴィーナスの様子にウェンディーネはホッとしたのか一安心する。
「如何やら彼女の居場所は沈没船の船内みたいね…」
沈没船の船内であるがアクアヴィーナスは非常にビクビクした様子である。
「ビクビクした様子だわ…」
「如何やら一大事みたいね…」
同時刻…。沈没船の船内ではアクアヴィーナスはダークオクタルスの襲撃に畏怖したのである。
「私は如何すれば…」
(非武装だし魔法なんて扱えないし…魔獣に食い殺されるのも時間の問題だわ…)
すると直後…。船内の板壁がガタガタッと物音が響き渡る。
「ひっ!何よ…」
アクアヴィーナスは物音に恐怖したのである。数秒後…。ダークオクタルスの二本の触手が船内の板壁を貫通させるなりニョロニョロと格納庫を弄り回る。
「えっ…蛸足!?」
(ダークオクタルスの…触手だわ…)
アクアヴィーナスの極度の恐怖心によって全身が膠着化したのである。
(今度こそ…食い殺されるわ…)
ダークオクタルスに食い殺されるのを覚悟するが…。格納庫を弄り回った触手は退散したのである。
(ん?触手が…)
「気付かれなかったのかしら?」
気付かれなかったアクアヴィーナスはホッとしたのか一安心する。
(ひょっとしてダークオクタルスは物音に反応するのかしら…)
一息したアクアヴィーナスは恐る恐る周囲のビヤ樽を確認するとドクロマークのビヤ樽を発見したのである。
「ドクロマークだわ…ひょっとして爆薬かしら?」
ドクロマークのビヤ樽に接触するなり…。
(爆薬だったら魔法を扱えない私でも…)
「ダークオクタルスを仕留められちゃうかも知れないわね♪」
楽観視した直後である。
「きゃっ!」
真下の床板から触手が出現するなりアクアヴィーナスを拘束…。触手の吸盤が皮膚に密着すると身動き出来なくなる。
「ぐっ!」
(油断しちゃったわ…)
すると彼女の前面に位置する板壁が破壊されるとワーム型の口先が出現したのである。
「きゃっ!」
(ダークオクタルスの口先かしら…)
ズルズルと口先に引き摺り込まれる。
(今度こそ私はダークオクタルスの餌食だわ…)
今度こそ最期を覚悟するが…。入手したドクロマークのビヤ樽を直視すると爆薬でダークオクタルスを仕留められるのではと思考する。
(爆薬をダークオクタルスの口先に…)
「一か八か!」
ダークオクタルスに捕食される寸前…。アクアヴィーナスは一か八か力一杯入手したドクロマークのビヤ樽を投擲したのである。投擲したドクロマークのビヤ樽は口先の歯牙に接触すると数秒後…。爆散したのである。ドクロマークのビヤ樽に接触したダークオクタルスは大ダメージにより口先から大量の鮮血と肉片が格納庫全域に染色する。ダークオクタルスは苦悶により触手で拘束したアクアヴィーナスを船内の板壁に吹っ飛ばしたのである。
「ぎゃっ!」
アクアヴィーナスはグッタリと横たわる。するとダークオクタルスは即座に逃亡したのである。
「ダークオクタルスが…」
アクアヴィーナスは全身の脱力感により膠着する。すると直後…。背後より人気を感じる。
「ん!?誰かしら?」
恐る恐る背後を警戒するなり…。
「アクアヴィーナス…」
「ひっ!ウェンディーネと…スキュラン様!?」
人気の正体とは悪友のウェンディーネと国長のスキュランだったのである。
「アクアヴィーナス…如何やら無事だったみたいね♪」
スキュランは笑顔で発言する。
「魔法も使用出来ないあんたが魔獣のダークオクタルスを撃退しちゃうなんて…普通の人魚なら不可能ね…」
スキュランはアクアヴィーナスに感心したのである。
「ダークオクタルスには逃げられちゃったけどね♪」
アクアヴィーナスは微笑む。すると無口であったウェンディーネがアクアヴィーナスを睥睨するなり…。
「アクアヴィーナス…あんたは…」
「ウェンディーネ?」
ウェンディーネは恐る恐るアクアヴィーナスに近寄った直後である。アクアヴィーナスの頭部にゴツンと拳骨…。
「ぎゃっ!」
ウェンディーネの拳骨にスキュランも沈黙したのである。
(ウェンディーネ…)
アクアヴィーナスの頭頂部にたん瘤がプックラと形作られる。
「アクアヴィーナス!罰則として三日間のスイーツタイムは禁止だからね!」
「スイーツタイムの禁止って如何してよ!?三日間も…」
「如何してって?あんたが誰にも相談せず勝手に行動したからよ!あんたの一人の行動によって国全体が大騒ぎだったのよ!」
本来なら死罪であるが穏便のスキュランにより罰則は三日間のスイーツタイムの禁止のみだったのである。スキュランが笑顔で…。
「本来ならアクアヴィーナスの行動は重罪だけれどね♪今回は結果的にダークオクタルスを撃退しちゃったみたいだし…アクアユートピアは勿論♪深海底に平和が戻ったからね♪三日間のスイーツタイムは我慢しなさい♪」
「スキュラン様…御免なさい…ウェンディーネも…」
アクアヴィーナスはスキュランとウェンディーネに謝罪する。
「今回の大騒ぎでダークオクタルスもアクアユートピアへは金輪際近寄らないでしょうね♪」
するとスキュランは海星型のヘアアクセサリーをアクアヴィーナスに手渡したのである。
「あんたのヘアアクセサリーよ♪アクアヴィーナス♪」
「私のヘアアクセサリーだわ!?如何してスキュラン様が?」
「国境で警備員があんたのヘアアクセサリーを回収したのよ♪感謝するなら彼女達に感謝するのね…」
ヘアアクセサリーを手渡されたアクアヴィーナスは即座にヘアアクセサリーを装飾する。
「アクアヴィーナス♪ウェンディーネ♪アクアユートピアに戻りましょう♪」
彼女達はアクアユートピアへと戻ったのである。移動中…。ウェンディーネが恐る恐るアクアヴィーナスに問い掛ける。
「アクアヴィーナス?」
「何よ?ウェンディーネ…」
アクアヴィーナスは赤面するなり…。
「御免ね…アクアヴィーナス…」
ウェンディーネの突然の謝罪にアクアヴィーナスは動揺したのである。
「突然如何しちゃったの!?ウェンディーネ?」
「私自身…今迄過保護過ぎちゃったのかも知れないわ…あんたを不必要に束縛しなければ今回みたいな大騒ぎには発展しなかったでしょうし…あんたを理解出来れば今回の大騒ぎは回避出来たのかなって…」
(ウェンディーネ…)
ウェンディーネの発言にアクアヴィーナスは笑顔で返答する。
「ウェンディーネ♪気にしないで♪私なら大丈夫だから♪」
するとスキュランが笑顔で…。
「私が魔法を扱えなければアクアヴィーナスみたいな行動は出来ないわね♪あんたの行動力は超一流よ♪行動力だけなら私を上回るわね♪」
「スキュラン様♪」
スキュランに絶賛されたアクアヴィーナスは大喜びする。
「アクアヴィーナス?」
「ん?何かしら?ウェンディーネ?」
ウェンディーネの表情が赤面するなり…。
「あんたは今後も冒険したいのよね?」
ウェンディーネの問い掛けにアクアヴィーナスは断言する。
「勿論よ♪許可されたら即刻活動するわよ♪」
即答するアクアヴィーナスにウェンディーネとスキュランは苦笑いしたのである。
「アクアヴィーナスらしいわね…今度国外で活動するなら私も一緒に同行しちゃうわね…」
「ひょっとしてウェンディーネも冒険したいの♪」
アクアヴィーナスは大喜びするがウェンディーネはピリピリするなり…。
「あんたが心配なだけよ!人騒がせなあんたを一人で活動させれば国全体が大騒ぎに発展するからね!私はあんたの監視役だから!勘違いしないでよね…」
ウェンディーネの発言にスキュランは笑顔で賛同する。
「私もウェンディーネと同意見よ♪正直アクアヴィーナスには監視役が必要不可欠ね…」
「スキュラン様も…」
「単独で行動させないからね♪お子ちゃまアクアヴィーナスちゃん♪」
ウェンディーネはアクアヴィーナスを揶揄したのである。
「誰がお子ちゃまですって!」
揶揄するウェンディーネにアクアヴィーナスは反応する。
「あんたが人一倍お子ちゃまなのは事実でしょう♪お子ちゃまアクアヴィーナスちゃん♪」
「ウェンディーネ!」
アクアヴィーナスはプンプンする。
「今回のアクアヴィーナスの四苦八苦でダークオクタルスの大騒ぎも無事に終息したみたいだから♪国外での活動は許可するわよ♪アクアヴィーナス♪」
「全世界を冒険出来るの!?」
「全世界を冒険したければ冒険しなさい♪監視役と一緒に行動するのが必須条件だけれどね…」
無事に国外での活動を許可されたアクアヴィーナスであるが…。今後国外で活動する場合はウェンディーネとの同行が必須条件だったのである。
「約束だからね…アクアヴィーナス…私に無許可で単独活動したら今度こそ一年間スイーツタイムは厳禁よ!」
アクアヴィーナスは笑顔で即答する。
「勿論よ♪約束するわね♪」
人騒がせなアクアヴィーナスであったが…。結果的に彼女の予想外のドタバタによってアクアユートピアに平和が戻ったのである。

第二話

秘密基地

ダークオクタルスによる魔獣事件から二週間後の真昼…。ウェンディーネは久方振りに海面上へと浮上したのである。暇潰しに晴天の天空をボーっと眺望する。
「晴天の天気ね…」
天空を飛行する白鳥を眺望するなり…。
(私も白鳥みたいに広大無辺の天空を自由自在に飛翔出来れば…)
するとハッとしたのか正気に戻ったのである。
(私は一体何を思考しちゃったのかしら?天空を飛行したいなんて夢物語を想像しちゃうなんて…)
「アクアヴィーナスみたいだわ…」
アクアヴィーナスに類似すると感じると自分自身が気恥ずかしくなる。
(アクアユートピアに戻りましょう…)
アクアユートピアに戻ろうかと思いきや…。
「ん?何かしら?」
ウェンディーネが浮上する海面上の海域から数千メートルの長距離に正体不明の船影らしき物体を発見したのである。
「船影みたいだわ…人間かしら?」
遠方の船影を凝視し続けると船影の正体はドクロマークの小型帆船であると認識する。
「ドクロマークだわ…」
(ひょっとして海賊船?)
同時刻…。小型帆船の船内では見張り役の乗組員が双眼鏡で海面上のウェンディーネを発見する。
「ひょっとして人魚なのか!?」
「ん?人魚だって?」
見張り役の人魚発言の一言に周囲の乗組員達が反応したのである。
「西側の数千メートルの長距離に金髪の人魚を発見しました…」
「本当に人魚だったのか?」
「大魚の尾鰭を確認したので恐らくは人魚かと…」
別の乗組員が双眼鏡で海面上のウェンディーネを確認する。
「彼奴は人魚の小娘だぜ…如何やら本物みたいだな…」
「ですが人魚が実在するなんて…」
「即刻船長に報告しろ…人魚の小娘が出現したと…」
見張り役は即座に船長室へと移動したのである。恐る恐るドアをノックするなり船長室へと入室する。
「失礼します…船長…」
「ん?一体何事かな?」
船長は大柄の大男であり左手の義手は金無垢のフックである。
「本船の近辺より一匹の人魚の小娘を発見しました…如何しますか?」
「人魚の小娘だと?」
(人魚の小娘を発見したからって…報告しやがって…)
見張り役の報告に一瞬苛立ったものの…。
(人魚の小娘を捕獲すると大金を確保出来るかも知れないな♪)
人魚の捕獲によって大金を獲得出来ると思考する。
(人魚の小娘を【プランケン】博士に密売すれば…)
プランケンとは天才科学者であり天才的頭脳によって多種多様の新型兵器は勿論…。最新式の生活必需品を開発した世界一の天才科学者である。表向きは世界各国に貢献する天才科学者であるが…。裏社会では社会的に役立たないと判断した人間達を人体実験に利用するマッドサイエンティストとして暗躍する。
(小娘でも…人魚なんて滅多に遭遇出来ないからな♪人魚の小娘をプランケン博士に密売しちまえば大喜びで大金を支払うだろうよ♪)
船長は薄笑いするなり…。
「即刻人魚の小娘を捕獲しろ!間違っても死なせるなよ…」
「承知しましたぜ♪」
メンテ
桜花姫※妖怪奇譚 ( No.55 )
日時: 2021/08/29 19:39
名前: 月影桜花姫

第一話

闇夜

太古の大昔…。極東の島国『天球神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。天球神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が荒神山に出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟同然であり人間は誰一人として荒神山へは近寄れない。
「何やら無数の妖気が感じられる…」
(如何やら今回の相手も大群だな…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。
「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「妖怪よ…成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。
「大群だな…」
無数の食人餓鬼はふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」
総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度の相手は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。肉塊の怪物は巨体の人型であるが…。全身の体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は食人餓鬼の親玉…【百鬼食人餓鬼】か…」
百鬼食人餓鬼は通常の食人餓鬼の集合体であり食人餓鬼の親玉である。
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
(戻ろうか…)
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。
「えっ…」
今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(女性?)
女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…発動!」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行し続けても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんてあんたは大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。天球神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」
揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。
「あんた…私に殺されたいみたいね…」
「私に用事かしら?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかもね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは天球神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も天球神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気か!?)
突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「三蔵郎様♪」
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」
「勿論よ♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達の霊魂が妖怪化した化身…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。海難入道と遭遇した人間は溺死するのが通例である。
「漁船を襲撃したのが水難妖怪の海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは妖怪を退治するなんて…」
漁師達は呆れ果てる。
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪なのよ♪」
「あんたが妖怪だって?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「なっ!?俺達の漁船が…」
「桜餅に!?如何してこんな…」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。
「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは…本当に妖怪なのか?」
「勿論♪私は正真正銘妖怪なのよ♪」
問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間達は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。
「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」
三蔵郎は驚愕する。
「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」
桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。
「海難入道は?」
海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。
(こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…)
すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。
「妖気!?」
(ひょっとして海難入道の妖気かしら?)
接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。
「何かしら?」
巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。
(巨大真蛸…)
「海難入道だわ…」
海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。
「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」
海難入道は人語で発言したのである。
「私は変化の妖術で人魚にも変化出来るからね♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」
海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり自身が空腹であれば相手が妖怪であっても捕食する。
「空腹ね…私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」
「はっ?」
桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。
「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は皆無であるぞ…」
海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。
「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」
「人間に加勢したから何よ?私は鬱陶しい邪魔者を仕留めただけなのよね♪」
桜花姫は笑顔で反論したのである。
「貴様…気に入らないな…」
「気に入らないなら如何するのかしら♪」
「死滅しろ…」
海難入道は即座に触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」
「今度は私の出番ね♪」
桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。
「あんたこそ死滅しなさい♪」
両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。
「直撃♪直撃♪」
雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。
「えっ?」
「残念だったな…桜花姫よ…」
桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。
「妖力を吸収するなんて…」
普段は冷静の桜花姫であるが…。海難入道の吸収能力に一瞬動揺する。
(海難入道には妖術が通用しないのかしら…)
「不思議そうな表情だな…桜花姫…俺はあらゆる妖力を吸収出来…妖術を無力化出来るのだ…」
海難入道の最強の特殊能力である吸収能力は自身の肉体に接触した多種多様の妖力を吸収出来…。あらゆる妖術を無力化出来る。基本的に妖力を駆使した攻撃法では海難入道は仕留められない。
「貴様程度の妖術では俺を仕留められない!」
(妖術が通用しないなんて…此奴は意外と厄介だわ…)
あらゆる魑魅魍魎の集合体である桜花姫でも…。妖力を吸収する妖怪を仕留めるのは非常に困難である。
(出直そうかな?)
恐る恐る後退りする。後退りする桜花姫に…。
「先程の威勢は如何した?俺に恐怖したか?」
「別に…」
問い掛けられた桜花姫は無表情で返答する。
「貴様は妖力だけなら大妖怪に匹敵するな…是非とも貴様を捕食したい…」
「私を捕食ですって?」
「あらゆる妖怪の集合体である貴様を食い殺せば…俺は大妖怪の領域に到達出来るからな♪」
豪語する海難入道に桜花姫は笑顔で…。
「私を捕食なんて…あんた程度の妖怪に出来るかしら♪」
桜花姫は笑顔で挑発したのである。
「貴様…本当に食い殺されたいらしいな…」
「食い殺せるのであれば私を食い殺しなさいよ♪」
桜花姫は再度挑発する。
「妖怪の小娘風情が…貴様は本当に気に入らない小娘だな…」
すると蛸足の巨大触手で桜花姫を拘束したのである。
「えっ?」
「貴様を食い殺す!」
一口で桜花姫を捕食…。口内で彼女を咀嚼したのである。
「所詮はこんな程度の妖怪だ…」
すると直後…。桜花姫を捕食した影響からか先程よりも妖力が急上昇したのである。
(俺の妖力が増大化したぞ!)
「今日から俺も大妖怪の仲間入りだな♪」
妖力のみなら今現在の海難入道は大妖怪に匹敵…。海難入道は強大化した自身の妖力に大喜びしたのである。すると直後…。
「ん?」
海難入道の全身が白煙に覆い包まれ…。二町規模の巨大さである海難入道の肉体が消滅したのである。すると白煙の内部から海難入道によって食い殺された桜花姫が出現…。彼女は無傷であり平気そうな様子だったのである。
「海難入道を仕留めたし♪」
(陸地に戻りましょう♪)
桜花姫は再度瞬間移動の妖術を駆使…。海岸の砂浜へと戻ったのである。
「なっ!?桜花姫様!?」
三蔵郎と合流する。
「三蔵郎様♪妖怪は無事征伐したわ♪」
「征伐されたみたいですね…一瞬桜花姫様の妖気が消滅したので食い殺されたのかと…」
「一度海難入道に捕食されたけどね♪」
桜花姫は一時的に海難入道に捕食されたものの…。体内から海難入道の肉体と同化したのである。
「反対に私が海難入道を捕食したのよ♪」
「えっ…捕食?」
今現在海難入道は桜花姫の肉体の一部に変化する。
「兎にも角にも…海難入道は仕留めたから南国の海域は大丈夫よ♪」
「ですが事件は無事解決したので安心ですね…」
三蔵郎も一安心したのである。
メンテ
桜花姫※リメイク ( No.56 )
日時: 2021/08/30 08:39
名前: 月影桜花姫

第一話

闇夜

太古の大昔の出来事である。天地歴三千二百六十二年四月八日…。極東に位置する青海原の島嶼では俗界の理想郷とも呼称される多神教の小規模民国『天球神国』が誕生する。天球神国は原生林の島国地帯であるものの…。国内では武力による戦乱が各地で頻発したのである。弱肉強食の戦乱時代が終焉してより千年後…。共存共栄の安穏時代は非常に安穏であり毎日の日常生活が退屈にも感じられる。天地歴一万二十年三月下旬…。近頃は度重なる神隠しやら無数の亡者達による超常現象が各農村地帯で頻発したのである。同年の五月上旬の真夜中…。赤色の着物姿の女性が一人で南国の荒神山を視察する。彼女の名前は不寝番の【月影桜花姫】である。
「噂話の荒神山かしら?」
桜花姫とは表向きだけなら西国の小町娘であるが…。悪霊退治屋を自称する無所属の不寝番である。彼女は強大なる妖術を駆使しては多種多様の超常現象は勿論…。無数の亡者達による怪異事件を解決させた数多くの快挙により国全体の有名人である。外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
「目的地の荒神山に到着したわね…」
こんなにも人間的雰囲気の桜花姫であるが…。彼女自身は人間の血族とは無縁の超自然的生命体であり妖女の母親と人間の父親の混血である。両目の瞳孔が半透明の血紅色である理由も純血の妖女である母親の血統が影響する。妖女とは摩訶不思議なる超常現象やら妖術を多用する女性達の総称化である。肉体の天寿には束縛されるものの…。半永久的に不老長寿の肉体を維持出来る。一握りの最上級妖女であれば通常の妖女よりも妖力が桁違いであり長命であると予測される。桜花姫は正真正銘最上級に位置する妖女である。桜花姫は悪霊相手には容赦せず…。基本的に人間には手出ししない不殺生の判官贔屓であり余程の難局に遭遇しなければ人間達には手出ししない。
(村人達は大袈裟なのよね…)
「こんなにも他愛無い超常現象なのに村人達は不必要に戦慄しちゃって…」
彼女自身性格的には温厚篤実であるものの…。肉体的には非常に愚鈍であり人一倍ひ弱である。神出鬼没の不吉なる超常現象に遭遇しても戦慄しないものの…。非常に無鉄砲で無計画であり悪戦苦闘の場面も頻繁である。
「私は平気だけど…荒神山って普通の人間であれば誰でも戦慄しそうな雰囲気だわ…」
桜花姫は娯楽の感覚で暗闇に覆い包まれた荒神山の天辺へと到達する。周囲は非常に物静かであり僅少の風音が山道に響き渡る程度である。
「頂上は意外と物静かね…」
(悪霊が出現するかしら?)
悪霊とは亡者達の怨念が実体化した存在であり生者を敵対視する。戦乱時代以前の古来より悪霊は存在するが…。大勢の人間達が殺し合った戦乱時代から悪霊の出現頻度が増加したのである。神出鬼没であり各地に出現…。村人を襲撃したのである。すると直後…。
「えっ?」
(人気だわ…)
天辺から人気を感じる。天辺の中心地より小柄の人影らしき気配を察知…。
「こんな真夜中に誰かしら?」
彼女は非常に警戒した様子で恐る恐る荒神山頂上の中心地に近寄る。
「一体何者よ?」
頂上の人影とは小柄の体格の僧侶だったのである。
(誰かと思いきや…)
「ひょっとしてあんたは人間の僧侶かしら?」
僧侶は非常に物静かな雰囲気であり無表情であるものの…。
「大変失礼しましたね…私は僧侶の【三蔵郎】ですよ…」
三蔵郎と名乗る僧侶は紳士的に謝罪したのである。
「あんたは人間の僧侶だったのね…一瞬悪霊と勘違いしちゃったわよ…」
「戦慄されたのであれば失礼しちゃいましたね…」
「別に戦慄しないわよ…」
すると三蔵郎は恐る恐る…。
「大変失礼なのですが…ひょっとすると貴女様は花魁の娘さんでしょうか?」
桜花姫は三蔵郎と名乗る僧侶の花魁発言に苛立つなり…。
「なっ!?誰が花魁ですって…勘違いしないでよね!私は小町娘よ!」
桜花姫に怒号された三蔵郎は即座に謝罪する。
「大変失礼しました…ですが貴女様みたいな容姿端麗の娘さんがこんなにも不吉の荒神山で一体何を?」
(私が容姿端麗ですって♪)
三蔵郎の容姿端麗の発言に桜花姫は内心大喜びしたのである。
「あんたは三蔵郎様だったかしら♪私が容姿端麗なんて三蔵郎様は非常に大袈裟ね♪」
彼女は三蔵郎の質問に即答する。
「私は神出鬼没の悪霊退治屋の妖女だからね♪今回は荒神山で頻発する超常現象を追跡中だったのよ♪」
「貴女様は妖女だったのですか…」
近頃南国に聳え立つ荒神山では不吉なる超常現象が合計十四件も発生したのである。荒神山は不吉の名称であるが荒神山の天辺から眺望出来る南国の村里の景色は非常に絶景であり観光地としては勿論…。大勢の旅人達が野営目的に荒神山で野宿したのである。今現在では荒神山は平穏の観光地として有名であるが大昔の戦乱時代…。荒神山は千年以上前の戦乱時代では各戦場で戦死した戦死者達やら飢饉によって餓死した領民達の火葬場として利用されたのである。戦乱時代に成仏出来なかった神出鬼没の亡者達の目撃情報が噂話として南国全域に出回る。天球神国を実行支配する東国武士団に荒神山に出没した悪霊征伐の依頼が殺到したものの東国の武士団は勿論…。各地方の武士団も静観状態であり実質悪霊関連の問題には放置状態だったのである。
「荒神山で発生した超常現象を追跡中だったのですね…」
「近頃は国全体で超常現象が頻発したからね♪」
「近頃は大変物騒ですからね…」
一時期は沈静化した状態であったが…。最近では悪霊による怪異事件が各地で多発化し始める。三蔵郎は地面の無数の石ころに土鍋を設置させる。土鍋に多種多様の野菜類やら鹿肉は勿論…。貴重品である鯨肉で料理する。
「貴女様も如何でしょうか?味見するだけでも…」
炬火によって土鍋の食材を煮付ける。
(味噌汁だわ♪美味しそうね…)
土鍋の味噌汁を凝視し続けると桜花姫も三蔵郎の調理する味噌汁を頬張りたくなる。
「三蔵郎様の夕食かしら?」
桜花姫は無我夢中に土鍋の味噌汁を凝視し続けたのである。
「炭火の鶏肉も如何でしょうか?麦飯も用意しますよ…」
「私にも!?」
一瞬困惑するものの…。
(大変美味そうだからね♪)
「空腹だから私にも食事させてね♪御免あそばせ♪」
食いしん坊の桜花姫は手渡された味噌汁を即座に平らげる。
「一瞬で平らげるなんて…娘さんは相当空腹だったのですね…」
三蔵郎は味噌汁を一瞬で平らげた桜花姫を直視するなり苦笑いする。
「非常に美味だったわ♪」
満足気に炭火の鶏肉を頬張る。
「飲料水は如何でしょうか?」
三蔵郎は恐る恐る瓢箪を桜花姫に手渡したのである。
「ひょっとして梅酒かしら?私は酒類が人一倍大嫌いなのよね…」
桜花姫は酒類が人一倍苦手であり微量でも摂取すると気味悪くなる。
「大丈夫ですよ…緑茶ですから一安心しなされ…」
「緑茶なら一安心だわ♪」
すると三蔵郎は恐る恐る質問したのである。
「大変失礼なのですが…娘さんの名前は何ですか?」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私の名前は桜花姫…月影桜花姫よ♪」
「えっ!?月影桜花姫様ですと!?」
三蔵郎は大変驚愕したのである。
「ひょっとして貴女様が多種多様の超常現象を解決させた伝説の最上級妖女…月影桜花姫様でしたか…」
「勿論よ♪」
「ですがこんなにも不吉の荒神山で最上級妖女である月影桜花姫様と対面出来るなんて…大変光栄ですな♪」
「大袈裟ね♪」
すると桜花姫も三蔵郎に問い掛ける。
「三蔵郎様はこんなにも暗闇の荒神山で一体何を?」
三蔵郎は暗闇の夜空を眺望するなり…。
「私にとっての道楽ですかね…」
「道楽ですって?」
「私にとって自然界での食卓こそが醍醐味なのですよ♪春夏秋冬の季節の変化…常日頃から森林浴の音色…川水の風音は精神的にも肉体的にも非常に沈静化されましょう…こんなにも殺伐とした雰囲気の荒神山でも…」
「如何にも聖職者っぽい主義主張だわ…」
(三蔵郎様は典型的に堅苦しい人間みたいね…)
桜花姫は内心三蔵郎の思考を堅苦しく感じる。
「想像力は十人十色多種多様ですからね…」
三蔵郎は無表情で広大無辺の夜空を眺望したのである。
「無数の星月夜が認識出来る森羅万象とは非常に広大無辺ですな…摩訶不思議の森羅万象には圧倒されますよ…」
(三蔵郎様…残念だけれども…私には何が何やら全然理解出来ないわ…)
三蔵郎の発言に桜花姫は困惑する。
「広大無辺の森羅万象とは非常に興味深い超常現象ですな…」
(三蔵郎様は一体何を発言したいのかしら?)
桜花姫は三蔵郎の発言に困惑し続けるものの…。彼女は無言で首肯したのである。すると三蔵郎から意味深の発言を拝聴する。
「近頃…私の寺院近隣の墓場から不吉の気配を察知しましてね…」
無表情だった三蔵郎の表情が一瞬険悪化したのである。
「不吉の気配ですって?一体何かしら?」
「近頃…悪運にも大勢の村人達が息絶えたのでしょうね…死去した彼等の怨恨なのでしょうか?」
(大勢の村人達が息絶えた?)
「ひょっとすると悪霊の仕業かも知れないわね…」
(先程から悪霊の気配が…)
桜花姫は不吉の霊力を感じる。
「非常に戦慄だわ…」
「桜花姫様?悪霊の追跡は如何されるのですか?」
「勿論継続するわよ!神出鬼没の悪霊と遭遇したとしても最上級の妖女である私が問答無用で征伐しちゃうからね♪」
「最上級妖女である桜花姫様が悪霊を征伐されるのであれば一安心ですな…」
桜花姫は荒神山の天辺で三蔵郎と対談し続けても無意味であると判断するなり…。
「三蔵郎様…御免あそばせ♪」
「如何されましたか?桜花姫様…」
「私は常日頃から悪霊征伐で大忙しだからね…即刻今回の超常現象の主要因を追跡しないと…」
「私は是非とも桜花姫様の上首尾を見届けましょう…」
桜花姫は即座に超常現象を追跡したのである。桜花姫の周辺は自然林であるものの…。
「悪霊の魔窟みたいだわ…」
普段は観光地として有名であるが真夜中の荒神山は闇夜の魔窟であり極度の不吉さと殺伐さを感じさせる。すると背後より無数の気配が接近するのを察知…。恐る恐る背後を確認する。
「突然胸騒ぎが…」
桜花姫は極度の胸騒ぎを感じるなり背後からの襲撃に警戒したのである。
「一体何事かしら?」
恐る恐る背後からの襲撃を警戒するものの…。
「人間の気配は感じられないわね…」
周辺の自然林は暗闇であり背後には何も確認出来ない。
「ひょっとして私の勘違いだったのかしら?」
桜花姫の誤認識かと思いきや…。
「えっ!?」
何やら背後の地面より無数の殺気を感じる。
「何かしら…」
(地面からだわ…)
背後の地面より小柄の人影が無数に出現したのである。
「此奴は悪霊!?」
無数の人影は真夜中の暗闇によって姿形の認識が非常に困難であるものの…。極度の腐敗と悪臭により悪霊であると再認識する。全身が血塗れの状態であり皮膚の腐敗が原因なのか両目からは眼球と下腹からは体内の臓物が噴出した醜悪なる姿形…。全体的に皮膚と人骨のみの肉体であり非常にどす黒い醜悪なる風貌である。
「死滅した人間達の末路だわ…」
体格的には女性よりも一回り小柄であり初生児の体格であるものの…。姿形による老若男女の区別は出来ない。身動きは非常に鈍足であり発語も支離滅裂である。
(悪臭から判断して…)
「悪霊の【食人餓鬼】かしら…」
食人餓鬼とは大昔の戦乱時代…。再起不能の疫病やら飢饉による衰弱死から悪霊へと変貌した醜悪なる亡者達の総称化である。埋葬されなかった悪影響により未来永劫成仏出来ないらしく今現在も俗界にて半永久的に徘徊し続ける。彼等は非常に強欲であり極度の空腹からか生者と遭遇すると即刻敵対視…。新鮮なる人間の血肉を無我夢中に捕食する。新鮮なる人間の血肉こそ食人餓鬼にとっての嗜好品であり捕食こそが彼等の共通性である。南国の地方では別名として疫病神とも呼称される。
「即刻面白くなったわね♪」
食人餓鬼の大群は人海戦術により無抵抗の桜花姫へと殺到する。
「私に大勢で真剣勝負なんて軽佻浮薄だわ♪」
普通の人間であれば極度に戦慄する場面であるものの…。桜花姫は無数の悪霊との遭遇を娯楽的に感じられる。
「悪霊は悪霊でも雑魚が相手なら楽勝ね♪」
桜花姫は咄嗟に妖術を発動…。血紅色であった両目の瞳孔が半透明化した瑠璃色の碧眼へと変化したのである。
「瞳術…」
(『天道眼』…)
天道眼とは自然界を翻弄出来る屈指の瞳術であり多種多様の超常現象を発動出来る。天道眼を開眼した妖女は念力の妖術やら超常現象は勿論…。応用出来れば現存する多種多様の超自然を自由自在に発揮出来る。天道眼から発動される妖術は非常に怪力乱神であり噂話では広大無辺の森羅万象をも翻弄させる超自然的現象を実現化させるとも…。存命中の妖女でさえも天道眼の秘密は不明瞭であり誰一人として明確化出来なかったのである。特定の地方では別名万能眼とも呼称される。
「私も人気者だわ♪」
彼等が桜花姫の近辺へと到達する寸前…。天道眼の発動によって殺到する食人餓鬼の皮膚が超高温の火炎の妖術により焼殺されたのである。
「醜悪なる亡者達…成仏しなさい♪」
食人餓鬼の肉体は高熱の発火現象によって一瞬で黒焦げに焼殺される。
「楽勝だったわ♪」
桜花姫の佇立する地面周辺には黒焦げに焼殺された食人餓鬼の焼死体が無数に埋没したのである。
「悪霊でも微弱の食人餓鬼程度なら火炎の妖術だけでも容易に仕留められちゃうわね♪」
すると彼女の背後から無数の霊力を感じる。
「えっ?今度は何かしら?」
背後の地面より無数の食人餓鬼が出現したのである。
「鬱陶しい奴等ね…」
背後から無数の食人餓鬼が桜花姫に殺到する。
「あんた達は命知らずだわ♪氷結しなさい♪」
桜花姫の妖力によって彼等の肉体が一瞬で凍結化したのである。氷結の妖術により無数の食人餓鬼は身動き出来なくなる。数秒後…。
「あんた達も成仏するのね♪」
(念力の妖術…発動!)
桜花姫は念力の妖術によって凍結化した食人餓鬼の肉体を粉砕させる。凍結化した彼等の肉体は一瞬で崩れ落ちたのである。
「えっ?」
今度は食人餓鬼とは別物の霊力を感じる。
「今度は何かしら…食人餓鬼とは別物みたいだわ…」
すると眼前の地面より戦乱時代の甲冑を装備した人骨が出現する。甲冑の人骨は非常に巨体であり背丈は成人男性を一回り上回る。
(鎧兜の人骨…)
「ひょっとして戦死者達の悪霊…【骸骨荒武者】かしら?」
骸骨荒武者とは戦乱時代に息絶えた戦死者達の無念の集合体であり生者を敵対視する。
「埋葬されなかった戦死者達の亡霊が出現するなんて…」
骸骨荒武者は右手の刀剣で桜花姫に斬撃するものの…。骸骨荒武者の身動きは非常に鈍足であり人一倍身体能力が愚鈍の桜花姫でも容易に回避出来る。
「危機一髪だったわ…」
桜花姫は恐る恐る後退りするなり…。
「戦乱時代の戦死者達…成仏するのね…」
(砂金に変化しなさい!)
砂金の妖術を発動した影響により骸骨荒武者の肉体を砂金に変化させる。砂金に変化した骸骨荒武者の肉体は一瞬で崩れ落ちる。
「他愛無いわね♪」
骸骨荒武者を仕留めた桜花姫は一安心するが…。暗闇の背後より複数の霊力を感じる。
「えっ?霊力かしら?」
警戒した桜花姫は恐る恐る背後を確認する。すると彼女の背後には三体の骸骨荒武者が出現したのである。
「骸骨荒武者だわ…三体も出現するなんて…」
悪霊を仕留めるのは余裕であるが鬱陶しく感じる。
「鬱陶しい奴等ね…」
桜花姫は体内の妖力を収縮…。両手に高熱の火球を形成したのである。
「成仏しなさい♪」
形成した高熱の火球で一体の骸骨荒武者を粉砕する。
「二体とも仕留めましょう♪」
二体の骸骨荒武者を仕留める直前…。背後から何者かによる火縄銃の銃撃で背中を狙撃されたのである。
「ぐっ!」
火縄銃で狙撃された桜花姫は地面に横たわる。背中の傷口からは大量の鮮血が流れ出る。
(迂闊だったわ…一体誰が…)
暗闇の自然林より火縄銃を武装した一体の骸骨荒武者が出現する。暗闇の自然林より桜花姫の背後から彼女を狙撃したのである。骸骨荒武者は鈍足で横たわった桜花姫に近寄る。
(私を如何するのかしら?)
二体の骸骨荒武者も横たわった桜花姫に近寄るなり刀剣を抜刀する。
(殺されちゃうわね…兎にも角にも一か八か…)
桜花姫は分身の妖術を発動…。血塗れの肉体が白煙により消滅する。突然消滅した桜花姫に動揺したのか三体の骸骨荒武者は周囲を警戒したのである。暗闇の自然林から桜花姫の本体が出現…。
「残念だったわね♪あんた達が攻撃したのは私の分身体よ♪」
桜花姫は両手より高熱の雷撃の妖術を発動したのである。雷撃の妖術によって三体の骸骨荒武者は撃破される。すると荒神山の無数の悪霊を全滅させた影響からか突如として荒神山から感じられた重苦しい霊力が感じられなくなる。
「如何やら荒神山に蔓延る骸骨荒武者と食人餓鬼は全滅したみたいね…」
一安心した桜花姫は恐る恐る荒神山から脱出したのである。
「荒神山の超常現象は無事解決だわ♪」
とある獣道にて小柄の老婆と小柄の美少女に遭遇する。
「こんな真夜中の夜道に何者かしら?」
彼女達は非常に小柄の体格である。
「あんた達は薬屋の【蛇骨鬼】婆ちゃんと孫娘の【小猫姫】かしら!?」
「桜花姫姉ちゃん!?」
小猫姫は純血の山猫の妖女であり外見的には人間の美少女とも間違えられる。蛇骨鬼の愛娘であり桜花姫にとっては妹分である。小猫姫は桜花姫との遭遇に大喜びする。
「蛇骨鬼婆ちゃん♪桜花姫姉ちゃんだよ♪」
「こんな真夜中の夜道に誰かと思いきや…あんたは最上級妖女の月影桜花姫ちゃんだね?久方振りだね…桜花姫ちゃん♪」
「あんた達こそ♪」
久方振りの蛇骨鬼と小猫姫との再会に桜花姫は大喜びしたのである。
「こんなにも暗闇の荒神山で桜花姫ちゃんと出くわしちゃうなんて非常に奇遇だね…」
蛇骨鬼は神族と命名される人外種族の一員であり異名は蛇神と呼称される。外見のみなら小柄の人間の老婆であり村里の村人達からは人間の老婆とも間違えられる。神族とは太古の大昔より世界各地に君臨した人外の少数民族である。神族は多種多様の姿形に変化が可能であり蛇骨鬼は基本的に小柄の老婆の姿形で活動する。古代の世界では大勢の神族が世界各地で活動中であったが…。今現在では絶滅状態であり蛇神の蛇骨鬼を除外する神族は皆無である。唯一純血の神族として断定出来るのは天球神国出身者の蛇骨鬼…。実質彼女のみである。蛇骨鬼の同行者である小猫姫は蛇骨鬼にとって孫娘であり唯一の家族であるが…。小猫姫は正真正銘の純血の妖女であり神族とは無縁の孤児である。
「あんた達はこんなにも暗闇で物騒なのに大丈夫なのかしら?」
「私は大丈夫だよ♪真夜中の夜道は面白いもん♪」
小猫姫は真夜中でも平気なのか笑顔で断言する。
「桜花姫ちゃん…あんたみたいな人一倍容姿端麗の小娘が真夜中の夜道を単独で出歩くなんて…」
「こんな私が容姿端麗なんて♪蛇骨鬼婆ちゃんは大袈裟ね♪」
(私が容姿端麗ですって♪)
蛇骨鬼に大袈裟と発言するが内心では大喜びしたのである。
「私は毎日が任務で大忙しだからね…」
「桜花姫姉ちゃんの任務って?」
小猫姫は不思議そうな表情で問い掛ける。
「私の任務はね…夜遊びよ♪」
桜花姫は笑顔で夜遊びと返答したのである。
「夜遊びって面白いのかな?」
(桜花姫ちゃんは…)
夜遊びと発言する桜花姫に蛇骨鬼は苦笑いする。
「悪霊征伐かね?こんなにも不吉の真夜中にあんたも勇猛果敢だね…」
「別に…私自身悪霊征伐は面白いから大丈夫なのよ♪内心私にとって悪霊征伐なんて常日頃の道楽だからね♪」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「あんたが悪霊征伐の悪影響で過労死しちゃったら大変だからね…私の傷薬でも必要不可欠かな?」
「残念だったわね♪私には凡庸の傷薬なんて不必要なのよ…何よりも私にとっての傷薬は私自身の妖力だから♪私の妖力は万能薬なのよ♪」
桜花姫は自身の妖力の強大さを自慢する。
「蛇骨鬼婆ちゃんこそ常日頃の薬品の研究なんかで過労死しないでよ♪」
「私は過労死しないよ…最上級妖女の桜花姫ちゃんには私の傷薬は不必要みたいだね…」
(桜花姫ちゃんには不必要だったか…)
蛇骨鬼は内心残念がる。
「達者でね♪桜花姫姉ちゃん♪」
「あんた達こそ達者でね♪」
すると蛇骨鬼と小猫姫は荒神山より退去する。
「私も即刻西国に戻ろうかしら…」
桜花姫は祖国である西国の家屋敷へと無事に戻ったのである。
メンテ
桜花姫※リメイク ( No.57 )
日時: 2021/08/30 08:41
名前: 月影桜花姫

第二話

天神山

西国の領内には天神山と命名される小山が存在する。荒神山での亡者達との戦闘から三日後の真夜中…。小山である天神山から複数の霊力を感じる。
「霊力だわ…一体何かしら?」
(場所は…天神山ね…)
天神山は太古の大昔に天空の女神が降臨した伝説から天神山と命名される。十数年前は天神山に七軒の集落家屋が建築され村人達が住居したものの…。今現在では廃屋のみが残存した状態であり住居者達の行方は不明であり今現在でも家族の消息は確認出来ない現状である。悪霊に食い殺されたのではと噂話が西国全域に出回る。気になった桜花姫は即座に天神山へと直行する。桜花姫の自宅から天神山への距離は三町程度であり比較的近辺だったのである。数分後…。天神山に到達する。
(胸騒ぎだわ…)
天神山に近寄ると極度の胸騒ぎを感じる。桜花姫は警戒するも天神山の天辺へと移動する。山道を移動中…。周辺の天然林より蛍光色の無数の鬼火が飛来する。
「鬼火だわ…」
無数の鬼火は天神山の天辺に移動したのである。
(天神山の天辺に無数の鬼火…気になるわね…)
数分間が経過すると桜花姫は天神山の天辺に到達したのである。天辺には廃神社と鳥居が確認出来る。
「廃神社だわ…」
桜花姫は恐る恐る鳥居を潜り抜ける。
「不吉の霊力を感じるわね…」
鳥居を潜り抜けると不吉の霊力を感じる。
(一体何が出現するかしら?)
恐る恐る周辺を警戒するのだが…。彼女の周囲は蛍光色の鬼火ばかりで悪霊らしき物体は何一つ確認出来ない。
「霊力は感じられるけれど…」
直後…。
「えっ?」
(何かしら?)
背後より極度の悪寒戦慄が桜花姫の全身を膠着させる。桜花姫は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「霊力の正体はあんただったのね…」
桜花姫の背後に出現したのは空中を浮遊する女性の頭部らしき巨体の生首であり全頭高は推定五尺程度である。
「悪霊の【大生首】だったかしら…」
大生首とは肉体が頭首のみの悪霊であり戦乱時代の最中匪賊達に犯され…。最終的に斬首された女性と子供達の無念の集合体である。大生首は色白の女性の生首であるが…。本体は規格外に巨大であり不吉の大目玉が桜花姫を直視すると不吉の笑顔で微笑む。
「気味悪いわね…」
すると今度は赤子らしき産声が天神山の頂上全域に響き渡る。
「今度は子供の産声かしら?」
暗闇の天然林より浮遊する赤子らしき巨大生首が三体も出現したのである。
「今度は子供の大生首かしら?」
桜花姫は合計四体の大生首に包囲される。
(天神山の集落で村人達が行方不明なのは大生首の仕業っぽいわね…)
天神山の行方不明事件は大生首の仕業であると予想する。すると四体の大生首は口先を開口すると周囲の鬼火を吸収したのである。
(鬼火を吸収したわ…)
四体の大生首が周辺の鬼火を吸収すると先程よりも霊力が強大化する。
「先程よりも霊力が増幅されたみたいね…」
桜花姫は両目を瞑目するなり体内の妖力を増大化…。
(天道眼…発動!)
瞳術の天道眼を発動させる。
「天道眼さえ発動しちゃえば数多の妖術を使用出来るのよね♪」
天道眼は伝説の瞳術であり天道眼を開眼した妖女は数多の妖術を発動出来る。
「鬱陶しいから成仏しなさい♪」
桜花姫は火炎の妖術を発動…。両手から火球を発射したのである。発射された火球は真正面に対峙する女性の大生首に直撃…。爆散したのである。無数の血肉が地面に散乱する。
「楽勝だわ♪他愛無いわね…」
女性の大生首を仕留めたかと思いきや…。
「えっ?」
大生首の血肉から猛毒の黒煙が発生する。
「なっ!?」
(ひょっとして瘴気かしら?)
大生首の血肉から発生した猛毒の瘴気は地面を溶解させたのである。
(大生首は仕留められた直後に霊能力を発動するのね…)
「多少の瘴気なら大丈夫だけれど…」
桜花姫は妖女と人間の混血であり多少の瘴気であれば平気であるものの…。肉体的には脆弱であり純血の妖女を下回る。
(私自身は勿論…西国全体が瘴気で汚染されるわね…)
地面の草木が猛毒の瘴気で枯死する。すると桜花姫も息苦しくなる。
「ぐっ!」
最早毒死するのは時間の問題である。
(瘴気に対抗するなら…)
桜花姫は一か八か浄化の妖術を発動する。
「浄化の妖術…発動!」
浄化の涼風を生成するなり大生首の血肉から発生した猛毒の瘴気を浄化したのである。同時に浄化の涼風に感触した三体の赤子の大生首が笑顔で消滅…。成仏したのである。
「彼等は成仏したみたいね♪一件落着だわ♪」
桜花姫は一安心する。すると先程火炎の妖術で粉砕された女性の大生首は土壌へと戻ったのである。猛毒の瘴気で汚染された地面の草木が元通りに生成される。
「自然も元通りに戻ったわ♪」
天神山に蔓延る不吉の霊力も消滅する。
「無事に事件も解決出来たし…戻りましょう♪」
無事に事件を解決した桜花姫は自宅へと戻ったのである。
メンテ
桜花姫※リメイク ( No.58 )
日時: 2021/08/30 08:42
名前: 月影桜花姫

第三話

死闘

天神山での重苦しい闇夜から三日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。東国とは天球神国でも比較的老熟した全国一の城下町…。総人口も天球神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな餡蜜と桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に和菓子を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは三日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
桜花姫は恐る恐る…。
「ん?」
三蔵郎は桜花姫の存在に気付いたのである。
「誰かと思いきや…貴女様は最上級妖女の月影桜花姫様でしたか!?南国の荒神山から無事に戻られたのですね♪」
「本当に三蔵郎様だったのね♪」
「ですがこんな茶店で桜花姫様と再会出来るなんて非常に奇遇ですな♪」
三蔵郎は桜花姫と再会するなり大喜びする。
「如何して三蔵郎様は和菓子屋に?」
「茶店で満喫するのは私にとって道楽ですからね♪」
「奇遇だわ…勿論私もね♪」
桜花姫は無我夢中に和菓子を頬張ったのである。
「ひょっとして桜花姫様も和菓子が大好きなのですか?」
桜花姫は即答する。
「勿論よ♪三蔵郎様も?」
三蔵郎も笑顔で返答したのである。
「勿論私も和菓子は大好きですよ♪和菓子屋は私にとって醍醐味ですからね♪」
すると三蔵郎は突発的に顔色を変化させる。
「桜花姫様?」
「何よ?三蔵郎様?」
「桜花姫様は悪霊退治屋として粉骨砕身されたと各村落の村人達から拝聴しました…近頃の噂話なのですが…」
桜花姫は即座に三蔵郎からの噂話を拝聴する。
「噂話ですって?一体何かしら?」
「近頃…北国では各村落の赤子の神隠しが頻発しましてね…」
近頃北国では幼子の行方不明事件が頻発したのである。村人達は必死に行方不明の子供達を捜索するのだが…。子供達は誰一人として発見出来ない。依然として子供達は誰一人発見されず悪霊による神隠しか匪賊達による人攫いであると予測する。
「神隠しですって?興味深いわね♪」
「村人達の噂話では一昨日の出来事ですかね?神隠しが匪賊達による悪逆無道なのか…神出鬼没の悪霊の仕業なのかは不明瞭とされますが…」
「一昨日の出来事ね…」
(非常に面白そうだわ♪私の出番が到来したかしら♪)
桜花姫は突発的に闘争心が充溢したのである。
「三蔵郎様!如何やら今回の事件は私の出番みたいね♪」
「ひょっとして桜花姫様…」
桜花姫は笑顔で即答する。
「勿論征伐するわよ!即刻悪霊を仕留めないとね♪」
「ですが桜花姫様…現段階では今回の神隠しの主原因が悪霊の仕業なのか如何なのかは不明瞭ですよ…匪賊達による人攫いかも知れませんし…」
三蔵郎は極度の心配性なのか非常に不安視したのである。
「村人達の噂話では桜花姫様は敵対者が極悪非道だったとしても人間には手出しされないみたいですが…敵対者が極悪非道の匪賊達であれば如何されるのですか?」
桜花姫は極度に不安視する三蔵郎に即答する。
「無論人一倍温厚篤実の私でも…極悪非道の匪賊達であれば即刻仕留めちゃうからね♪相手が人間だからって手加減しないから大丈夫よ♪」
普段は温厚篤実の桜花姫であるが残虐非道の匪賊達には滅法無慈悲である。
「一安心ですね!桜花姫様は極楽浄土の女神様を連想しますからね♪相手が人間の匪賊達であれば困惑されるのではと私自身心配しちゃいましたよ♪」
「私が極楽浄土の女神様ですって♪私が極楽浄土の女神様なんて三蔵郎様も大袈裟ね♪」
極楽浄土の女神様と同一視された桜花姫は内心では大喜びする。
「私に手出し出来る人間がこんな島国の天球神国に実在するのかしら♪最上級妖女の私に手出し出来るのであれば是非とも対面したいわね♪」
莫大なる妖力を保有する最上級妖女の桜花姫にとって多人数による人海戦術は無意味である。桜花姫が単独であったとしても戦力的には全国各地の武士団全勢力に匹敵するのではと各村落の領主達が独自で推測…。村人達には間違っても最上級妖女の桜花姫だけには手出しするなとこっ酷く忠告したのである。
「ですが今回の神隠しの敵対者が極悪非道の匪賊でも油断大敵ですよ!桜花姫様の多用される妖術は天下無双かも知れませんが…油断すれば絶体絶命へと直結するでしょう…」
(三蔵郎様は極度の心配性だわ…)
彼女自身内心では口喧しいと感じるものの三蔵郎に感謝する。
「助言感謝するわね…三蔵郎様…」
桜花姫は即座に北国へと出掛けたのである。
「彼女は電光石火ですね…」
三蔵郎は城下町から疾走する桜花姫を見届ける。一時間後…。桜花姫は東国と北国の国境に位置する田舎村へと到達する。北国の村里は非常に殺風景であり過疎化した麦畑ばかりである。
「北国って随分と殺風景の田舎町なのね…」
不可解にも国境の村里には村人が誰一人として確認出来ない。
「無人地帯だわ…」
適当に麦畑を眺望し続けるなり赤子を抱き抱えた白装束の長髪の女性が村里にて佇立したのである。
「えっ?村里の親子かしら?」
桜花姫は恐る恐る赤子を抱き抱える女性へと近寄るなり…。
「母親は大怪我したのね…」
母親の白装束は血塗れであり皮膚の表面には無数の外傷が確認出来る。
「一体彼女に何が?」
桜花姫は一瞬戦慄するものの…。
「大丈夫かしら?」
恐る恐る女性の安否を確認する。母親は無表情であったものの…。恐る恐る近寄る桜花姫を凝視するなり無言の様子で彼女を睥睨したのである。母親に睥睨された桜花姫は母親に腹立たしくなる。
「何よ?」
(腹立たしいわね…)
桜花姫も母親に睥睨し返したのである。すると数秒後…。母親は無言で一目散に逃走したのである。
「如何して母親は私から逃走しちゃったのかしら?」
桜花姫は即座に逃走中の母親を追跡する。
「彼女って…俗界の人間だったのかしら?」
母親は墓場へと潜入したのである。
「墓場だわ…」
桜花姫は母親を追尾するなり恐る恐る墓場へと潜入する。
「先程の母親は一体何者だったのかしら?」
(彼女からは霊力らしい霊力は感じられなかったけれども…)
赤子を抱き抱える母親らしき人物が俗界の人間なのか如何なのかを疑問視したのである。
「雰囲気と姿形から判断して…」
(ひょっとすると彼女の正体って俗界とは無縁の化身なのかも知れないわね…悪霊なのかしら?)
桜花姫は母親の正体が悪霊であると推測する。すると先程の母親らしき女性と再度遭遇したのである。即刻近寄ろうかと思いきや…。
「えっ!?如何して全裸なのよ!?」
母親は白装束を脱衣した状態であり全裸である。
(恥知らずだわ…)
彼女は赤子を抱き抱えた状態から母乳と赤子の前頭部を密着させる。
「何するのよ!?」
処女の桜花姫にとって非常に不愉快であり一瞬膠着化する。桜花姫は恐る恐る墓石から母親の様子を観察したのである。
(母親は一体何を!?)
すると赤子の肉体が液体化するなり赤子の肉体諸共母親の体内へと一瞬で捕食…。
「ひっ!赤子の肉体を吸収するなんて…」
予想外の出来事により桜花姫は愕然とする。
「人間の血肉を吸収出来る特質…」
母親は桜花姫を凝視…。不吉の表情微笑んだのである。
「ひょっとして神隠しの真犯人は悪霊の【亡霊女房】だったのね…」
亡霊女房とは人間の赤子を捕食する母親の悪霊であり姿形のみなら人間の女性である。亡霊女房は戦乱時代に頻発する戦乱やら疫病によって赤子が死去した母親達の無念の集合体…。人間の赤子を体内へと吸収する性行為も赤子への執着と愛情表現である。桜花姫は咄嗟に亡霊女房の近辺へと接近する。
「私が母親達の霊魂であるあんたを成仏させるわ!」
桜花姫は妖力を蓄積させるなり落雷の妖術を発動…。入道雲を天空全域へと凝縮させたのである。
「亡霊女房…覚悟するのね!」
天空全域が入道雲に覆い包まれたかと思いきや…。入道雲から落雷攻撃を発動させる。落雷は亡霊女房の頭頂部へと落下したのである。
「直撃したわね…」
強烈なる落雷攻撃によって桜花姫は一瞬両目を閉眼させる。落雷の破壊力は地面を容易く陥没させたのである。
「瞬殺だったわ♪」
亡霊女房は肉体が非常に脆弱であり無数の血肉やら手足の肉片は勿論…。体内の臓物が地面に散乱する。
「彼女を仕留めたかしら?」
桜花姫は恐る恐る両目を見開くなり亡霊女房を仕留めたか如何なのかを再確認したのである。
「如何やら亡霊女房を仕留めたみたいね♪」
叫喚地獄の場面であるものの…。
「無防備の状態で落雷が直撃しちゃえば誰だって死滅するわよね♪」
桜花姫は今度こそ手応えを感じる。
「亡霊女房を無事征伐したから私は戻りましょうかね…」
桜花姫は一安心したのか西国へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ!?」
背後から極度の胸騒ぎを感じる。
(胸騒ぎだわ…)
「何かしら!?」
背後より微弱の霊力を察知したのである。彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「此奴…鬱陶しいわね…」
肉体を粉砕された亡霊女房の血肉が融合化したのである。亡霊女房の肉体は数秒間で元通りに復活する。
「粉砕された肉体が一瞬で元通りなんて…亡霊女房は不死身の肉体ね…」
(生命力と治癒力だけなら規格外だわ…)
亡霊女房は桜花姫の愕然とした表情を凝視するなり不吉の表情で微笑む。亡霊女房は口辺から猛毒の溶解液を噴射したのである。
「毒液!?」
桜花姫は咄嗟に妖力で半透明の防壁を形作るなり…。危機一髪溶解液から本体を防備したのである。半透明の防壁周辺の地面は亡霊女房が噴射した猛毒の溶解液によって液状化する。
「如何やら危機一髪ね…」
(妖力の防壁を発動しなかったら大怪我だったわ…)
桜花姫は一安心するものの…。彼女の表情が険悪化したのである。
「私は亡霊女房の霊力を見縊り過ぎたわね…」
体内の妖力を蓄積させるなり念力の妖術を発動…。すると亡霊女房の肉体が肥大化したのである。
「破裂するのね♪」
皮膚の表面からどす黒い大量の血液が流れ出るなり…。超常現象によって体内から肉体を破裂させる。地面には無数の肉片やら血肉が散乱する。
「亡霊女房は再復活するかしら?」
先程発動した念力の妖術は様子見であり亡霊女房の肉体が再生能力によって元通りに復活するのか如何なのかを再確認したかったのである。亡霊女房の肉体は一瞬で破裂したものの…。破裂した無数の肉片が再度融合化するなり亡霊女房の肉体は元通りに戻ったのである。
「本当に再復活したわね…」
(私にもこんな再生能力が…)
桜花姫は内心亡霊女房の再生能力を羨望する。
「亡霊女房の再生能力の攻略法は?」
即座に透視能力を発揮出来る天眼の妖術を発動させる。
(亡霊女房の弱点は何かしら?)
天眼の妖術の透視能力によって亡霊女房の腹部中心部より水晶玉を発見する。
「えっ?亡霊女房の体内から水晶玉だわ…」
(気になるわね…ひょっとして水晶玉は亡霊女房の本体なのかしら?)
桜花姫は念力の妖術を再発動…。体内より亡霊女房の腹部を破裂させる。亡霊女房の腹部が破裂した直後…。亡霊女房の破裂した体内より本体である水晶玉を摘出したのである。
「水晶玉だわ♪」
水晶玉が地面へと落下したかと思いきや…。
「ん?」
水晶玉は蛍光色へと発光したのである。すると周辺の地面に散乱した無数の血肉が水晶玉へと密着するなり…。
「如何やら体内の水晶玉こそが亡霊女房の本体っぽいわね…」
数秒間で亡霊女房の肉体は元通りに復活したのである。
「弱点さえ見破れちゃったら楽勝だわ♪」
亡霊女房の弱点を見破った桜花姫は念力の妖術によって水晶玉を粉砕…。体内の水晶玉が粉砕されると亡霊女房の再生能力が発動しなくなる。
「亡霊女房…完全消滅しなさい…」
即座に火炎の妖術を発動…。
「今度こそ亡霊女房を仕留めたわね…」
粉砕された亡霊女房の肉体諸共体内の水晶玉の破片を焼失させる。
「母親達の霊魂…成仏するのね…」
桜花姫は周辺を恐る恐る警戒するなり西国へと無事戻ったのである。
(彼女は…)
「亡霊女房は予想外に手強かったわね…」
無事に家屋敷へと戻った桜花姫は一息するなり…。寝転んだのである。
「随分派手に妖術を連発しちゃったからかしら…」
妖力を余分に連発した結果…。
「極度に息苦しいのよね…」
体内の妖力を過剰に消耗したのである。
「亡霊女房は私より格下だけれども…」
(最上級妖女である私が格下の悪霊を相手に消耗戦なんてね…)
今回の出来事から自分自身の傲慢さと力不足を痛感したのである。
「今回は完全に軽率だったわね…」
メンテ
桜花姫※リメイク ( No.59 )
日時: 2021/08/30 08:43
名前: 月影桜花姫

第四話

雪国

亡霊女房との血みどろの戦闘から二週間後の早朝である。三人の匪賊達が北国の過疎化した廃村へと侵入する。
「無人の廃村みたいですぜ♪頭領♪」
大柄の匪賊が周辺を眺望したのである。
「過疎地か…人気は無さそうだな…」
「無人の廃村なら俺達の潜窟として利用出来ますぜ♪」
小柄の匪賊が笑顔で発言する。
「であれば廃村を占拠するか…」
廃村は無人であり潜窟として利用するのであれば好都合であると判断する。すると中柄の匪賊が小声で恐る恐る…。
「頭領!頭領!」
「何事だ?」
「村娘です…村娘を発見しました…」
「ん?村娘だと?」
中柄の匪賊は仲間の二人を案内したのである。廃村の中心地にはとある祭壇が設置され…。祭壇の近辺には小柄の女性が徘徊する。素顔は不明だが黒髪の長髪であり白装束の着物姿である。三人の匪賊達は近辺の民家から恐る恐る白装束の女性を観察する。
「本当だな…」
「彼女は一体何を?」
すると小柄の匪賊が赤面するなり…。
「可愛らしい雰囲気ですね♪胸部の谷間とか♪」
「えっ…」
「此奴…」
赤面する小柄の匪賊に二人は苦笑いしたのである。
「如何してこんな場所に村娘が一人で?」
中柄の匪賊が身震いした様子で発言する。
「ひょっとして彼女…悪霊とか?」
中柄の匪賊の発言に二人は困惑したのである。
「はっ?」
「貴様は馬鹿か?村娘は人間だろう…所詮悪霊なんて単なる子供騙しだな…」
二人の匪賊は全否定するのだが…。
「ですがこんなにも人気の無さそうな廃村で村娘が一人で行動するなんて可笑しいですよ!不自然だ…」
「大袈裟だな…」
すると小柄の匪賊が恐る恐る…。
「えっ?彼女は?」
「ん?」
先程祭壇の近辺で徘徊中だった村娘を見失ったのである。
「村娘は雲隠れしたか?」
中柄の匪賊が畏怖した様子で…。
「恐らく彼女は廃村の地縛霊ですよ…即刻廃村から逃げましょう…」
畏怖する中柄の匪賊に匪賊の頭領が怒号する。
「何が悪霊だ!大体村娘が悪霊だって証拠が存在するのか!?」
怒号した直後…。背後より極度の悪寒戦慄と気配を感じる。
「えっ…」
彼等は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「ひっ!」
彼等の背後には先程祭壇の近辺で徘徊中だった白装束の女性が三人の背後に佇立したのである。
(此奴…一瞬で移動したのか…)
彼女は美的の容姿であるが青色の口紅…。両目の瞳孔は血紅色であり人間の女性とは無縁の雰囲気だったのである。匪賊の頭領は恐る恐る…。
「貴様…本物の悪霊なのか?」
すると白装束の女性は笑顔の表情で匪賊の頭領に接触したのである。
「ん?一体何を?」
直後…。
「なっ!?」
匪賊の頭領は一瞬で全身が氷結され肉体が崩れ落ちる。
「ひっ!此奴は悪霊だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
二人の匪賊は極度の恐怖心からか一目散に逃走したのである。二人は廃村の郊外にて一休みする。
「はぁ…はぁ…」
「俺達…廃村で本物の悪霊と遭遇しちまうなんて…」
「最悪だな…頭領は殺されちまうし…」
直後である。
「えっ?」
再度極度の寒気を感じる。
「ひょっとして…」
すると小柄の匪賊の左側真横より先程の白装束の女性が笑顔で凝視する。
「ひっ!悪霊!?」
彼等は落涙するなり一目散に逃走…。全力で疾走したのである。同日の真昼…。天球神国全域にて猛吹雪による寒風が各農村地帯で頻発したのである。突如として頻発した猛吹雪は農村の村人達を衰弱死させる。僧侶の三蔵郎はとある蔵屋敷の窓際から恐る恐る外部の雪景色を眺望したのである。
(近頃は暴風雪が頻発しますね…)
「ひょっとして今回も悪霊が出現した悪影響でしょうか?」
三蔵郎は頻発する猛吹雪を超常現象の悪影響であると認識する。
「超常現象による天変地異ですかね?」
同時刻…。桜花姫は自宅にて無我夢中に大好きな小倉汁粉を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
単独での間食であるものの…。人一倍食いしん坊の桜花姫は一瞬で小倉汁粉を平らげる。
「近頃寒風が頻発するわね…」
極度の胸騒ぎを感じる。
(こんなにも猛吹雪が頻発するなんて不吉だわ…)
桜花姫は気になったのか天道眼を発動したのである。すると北国の廃村より珍妙なる妖力を察知する。
「えっ?北国の廃村から妖力を感じるわ…」
(ひょっとして今回は妖女の仕業かしら…)
即座に北国の廃村へと出向いたのである。
「今回の相手は誰かしら?」
亡霊女房での悪戦苦闘により極度の胸騒ぎを感じる。移動を開始してより一時間後…。目的地の廃村へと到着する。
「目的地の廃村だけれども…正真正銘雪国なのね…」
廃村全域が雪景色であり村人は誰一人として確認出来ない。
「如何やら人間の気配は無さそうだわ…」
乱層雲と極度の猛吹雪の悪影響により妖力を感じられなくなる。
「暴風雪の悪影響かしら?超常現象を特定化出来ないわね…」
適当に歩行した直後…。
「人肉の悪臭だわ…一体何かしら?」
積雪より大勢の凍結化した村人達が確認出来る。
「村人達は凍結化で息絶えたのね…」
彼女は天道眼を発動するなり…。
「なっ!?」
突発的に胸騒ぎが彼女の身体髪膚を膠着化させる。
「妖力を感じるわ…」
(如何やら今回の相手は妖女みたいね…)
桜花姫の背後から莫大なる妖力の気配を察知したのである。
「私の背後かしら…ん?」
桜花姫は恐る恐る背後を凝視する。
「女性だわ…一体誰かしら?」
白装束の長髪の女性が桜花姫の隣接へと急接近するなり…。
「きゃっ!」
白装束の女性は口移しにより桜花姫に接吻したのである。接吻された桜花姫は白装束の女性を非常に気味悪がる。
「突然何するのよ!変態女!見ず知らずの女性に口移しなんて不潔だわ…」
女性の破廉恥さから桜花姫は恐る恐る後退りする。
「あんたの感触…ひょっとして氷水かしら?」
先程の口移しにより女性から極度の悪寒戦慄を感じる。
「ぐっ!体内の妖力が…」
氷麗姫による接吻の悪影響からか桜花姫の妖力が微量に消耗する。
「誰かと思いきや…あんたは粉雪妖女の【氷麗姫】だったのね…」
粉雪妖女の氷麗姫とは純血の妖女であり氷雪系統の妖術を多用する妖女である。恐る恐る後退りする桜花姫に氷麗姫は不吉の表情で微笑む。
「今回の猛吹雪の主要因は氷麗姫…あんたの仕業だったのね…」
桜花姫は氷麗姫に火炎の妖術を発動させる。超高温の火炎攻撃によって氷麗姫の肉体が一瞬で崩れ落ちたのである。
「仕留めたかしら?えっ!?」
すると桜花姫の周辺の積雪から無数の女体が形作られる。
「氷麗姫の分身体かしら?」
氷麗姫は冷風を放出するものの…。桜花姫は咄嗟に妖力の防壁を発動するなり氷麗姫の放出する冷風から本体を防備したのである。
「分身なんて面倒臭いわね…」
本体の判別は困難であるものの…。
「氷麗姫にとって私は相性的に最悪だったわね♪」
桜花姫にとって火炎系統の妖術は得意中の得意妖術であり氷雪系統の妖術を多用する氷麗姫を相手に桜花姫は余裕の様子である。
「凡庸の妖女が最上級妖女の私に真剣勝負なんて無謀なのよ♪」
氷雪系統の妖術を多用する氷麗姫にとって桜花姫は最悪の天敵であり桜花姫は微笑むなり…。
「あんたは喋れなくても恐怖心は感じられるのね♪」
氷麗姫は微笑する桜花姫に戦慄したのである。
「覚悟しなさい…氷麗姫ちゃん♪」
桜花姫は天道眼を発動するなり…。
「本体諸共死滅しなさいね♪氷麗姫♪」
天空より無数の火球を廃村全域に落下させたのである。猛烈なる火球の猛攻撃によって氷麗姫の無数の分身体を焼失させる。火球の破壊力は非常に強力であり猛攻撃による超高温の火炎攻撃が氷麗姫本体を一瞬で焼失させたのである。氷麗姫の悲痛の阿鼻叫喚が廃村全域へと響き渡る。
「氷麗姫は死滅したかしら…」
氷麗姫を仕留めた影響により猛吹雪が沈静化する。
「氷麗姫を仕留めた影響かしら?」
寒風も感じられなくなる。
「天変地異は無事解決ね♪即刻戻ろうかしら…」
天変地異が終息するなり…。桜花姫は無事に西国へと戻ったのである。
「今回は楽勝だったわね♪」
一安心した彼女は家屋敷にて寝転ぶものの…。直後である。左耳より極度の悪寒戦慄を感じる。
「きゃっ!」
悪寒戦慄に身震いした桜花姫は恐る恐る左辺を直視するなり…。先程焼殺した氷麗姫が寝転んだ状態で桜花姫を凝視する。
「えっ!?あんたは!?」
突然の出来事により桜花姫は驚愕したのである。氷麗姫は桜花姫を凝視するなり微笑む。すると氷麗姫は不吉の笑顔で…。
「あんたは人一倍容姿端麗の妖女だわ♪」
氷麗姫は人間の口言葉で発言したのである。
(えっ!?氷麗姫って喋れるの!?)
桜花姫は人間界の公用語で発語する氷麗姫に愕然とする。
「あんたは最上級妖女の月影桜花姫だったわね♪」
すると氷麗姫は桜花姫に接触したのである。直後…。
「ぎゃっ!」
桜花姫は氷麗姫の金縛りの妖術によって身動き出来なくなる。
(金縛りの妖術かしら?身動き出来なくなるなんて…)
「残念だったわね♪あんたが雪国で死滅させたのは私の分身体なのよ♪私は分身体からでも復活出来るから本体が焼殺されても大丈夫だからね♪油断大敵よ…月影桜花姫ちゃん♪」
氷麗姫は粉雪分身の妖術で形作った分身体の欠片のみでも残存すれば本体が死滅したとしても容易に復活出来る。先程は雪国にて氷雪の欠片を桜花姫の着物に密着させた状態で…。桜花姫の家屋敷に潜入出来たのである。
(復活ですって!?)
氷麗姫は桜花姫に密着するなり…。
「私はね…あんたみたいな妖女の小娘が人一倍大好きなのよ♪あんたみたいな小娘とこんな小部屋で二人だけだと接吻したくなっちゃうわ♪」
氷麗姫は表情が赤面すると桜花姫に口移ししたのである。氷麗姫によって無理矢理に口移しされた直後…。体内の妖力が氷麗姫の吸収能力によって吸収される。
「ぐっ!」
(体内の妖力が…)
妖力の消耗によって衰弱死するかと思いきや…。桜花姫の肉体が白煙により一瞬で消滅したのである。
「えっ!?桜花姫は?」
氷麗姫の背後より何者かが背中に接触する。
「きゃっ!」
「残念だったわね♪あんたが口移ししたのは私の分身体よ♪」
「桜花姫!?」
桜花姫は氷麗姫に接吻される直前に分身の妖術を発動…。氷麗姫の吸収能力の無力化に成功する。氷麗姫の口移しによって吸収された妖力は微量だったのである。
「分身体で欺瞞するなんて…悪知恵だけは一人前だわ…」
「悪因悪果よ♪今度こそ死滅するのね…氷麗姫♪」
桜花姫は変化の妖術を発動する。変化の妖術とはあらゆる物体を別の物体に変化させる変幻自在の妖術である。
「桜餅に変化しなさい♪」
すると氷麗姫の肉体が桜花姫の大好きな桜餅に変化させる。
「美味しそうだわ♪」
桜花姫は変化の妖術によって桜餅に変化した氷麗姫を食い殺したのである。
「美味だわ♪」
桜餅に変化させた氷麗姫を捕食すると吸収された妖力が回復する。変化の妖術で食べ物に変化させた対象物を食べれば消耗した妖力も回復させられる。
「彼女に吸収されちゃった妖力も戻ったし♪一石二鳥ね♪」
桜花姫は再度寝転んだのである。
メンテ
桜花姫※リメイク ( No.60 )
日時: 2021/08/30 08:43
名前: 月影桜花姫

第五話

幻術

氷麗姫との死闘から四日後の真夜中…。南国の村里では若齢の村娘達が衰弱化する不吉の超常現象が頻発したのである。噂話を聴取した桜花姫は欣喜雀躍の気分で南国の村里へと直行する。
「今度も悪霊事件っぽいわね♪今度は一体何が出現したのかしら♪」
一時間後…。南国の村里に到達したのである。
「今回は悪霊の仕業かしら♪ひょっとして今度も妖女の仕業かしら♪」
桜花姫は村里に到達するものの…。村里は非常に物静かであり誰一人として村人は確認出来ない。村里全体が重苦しい空気からか極度の息苦しさを感じさせる。
「過疎地だからかしら?人気は感じられないわね…」
すると直後…。各家屋敷から無数の物音が響き渡る。
「えっ?何かしら?」
各家屋敷より出刃包丁を所持した老若男女が同時に外出する。
「村人達!?」
(様子が可笑しいわね…)
彼等は無表情であり精気を感じられない。
「村人達は如何しちゃったのかしら?」
村人達は無表情で桜花姫を直視した直後…。
「何よ?」
彼女に殺到したのである。
「人間の分際で私に手出しするなんて無謀なのよ♪」
桜花姫は即座に念力の妖術を発動…。
「あんた達は熟睡しちゃいなさい♪」
念力の妖術により殺到する村人達を気絶させたのである。
「他愛無いわね♪」
桜花姫は恐る恐る一人の村人に接触する。
「不自然だったわね…村人達は誰かに操作された様子だったわ…」
直後…。
「きゃっ!」
近辺の路地裏から女性らしき悲鳴が響き渡る。
(えっ?女性の悲鳴だわ…)
「一体何事かしら?」
同時刻…。村道の路地裏では一人の若齢の村娘が花魁らしき色白の女性に捕捉されたのである。
「私からは逃げられないわよ♪好い加減観念しなさい♪」
「きゃっ!誰か!誰か!」
村娘は必死に抵抗するものの…。花魁らしき色白の女性は外見とは裏腹に非常に力強く村娘の力量では抵抗すら出来ない。
「村里で無事なのはあんただけよ♪あんたの清心を頂戴するわね♪」
色白の女性は赤面した表情で無理矢理に接吻…。
「ぐっ!」
色白の女性に口移しされた直後である。村娘は全身が脱力するなり…。意識が喪失した状態で地面に横たわる。色白の女性は満足気に…。
「美味しいわね♪女子の清心は純真無垢だから非常に美味だわ♪」
清心を完食した女性は即座に退散するものの…。直後である。
「如何やら今回の事件はあんたの仕業だったみたいね♪」
色白の女性は背後の桜花姫を直視する。
「誰かと思いきや…あんたは最上級の妖女…月影桜花姫だったかしら♪」
「あんたは悪霊の【亡霊新婦】だったわね♪悪霊なのに喋れるなんて…」
亡霊新婦とは亭主に殺害された令夫人の亡霊である。姿形こそ色白で赤色の着物姿の女性であるが正真正銘悪霊であり人間界の公用語で会話出来る。接吻によって人間の清心を吸収する女性の悪霊であり純真無垢の女子の清心こそ彼女にとって最高の嗜好品である。
「悪霊の分際なのにひ弱の女の子を相手に接吻なんて…あんたは余程の悪趣味みたいね♪」
桜花姫に挑発された亡霊新婦であるが…。彼女は笑顔で返答する。
「あんたは口喧しい小娘だわ…あんたの清心も吸収しちゃおうかしら♪」
「出来るかしら♪私は其処等の女の子みたいに簡単には接吻出来ないわよ♪」
桜花姫は亡霊新婦に挑発したのである。
「月影桜花姫…無論あんたは妖女だから手加減しないわよ…」
亡霊新婦は笑顔の表情から険悪化した表情に一変する。
「えっ?」
亡霊新婦は幻術を発動すると地面より半透明の触手が無数に出現…。半透明の無数の触手が桜花姫の全身を拘束したのである。
「きゃっ!」
(ひょっとして幻術かしら…)
桜花姫は半透明の触手によって身動き出来なくなる。亡霊新婦は一歩ずつ膠着状態の桜花姫に近寄る。
「折角だからね♪暇潰しにあんたの清心も頂戴するわね♪」
亡霊新婦は表情が赤面するなり…。
「私に遭遇したのが不運だったのよ…月影桜花姫♪覚悟出来たかしら♪」
亡霊新婦は身動き出来なくなった桜花姫に口移ししたのである。
「ぐっ!」
(体内の妖力が…吸収されちゃうわ…)
亡霊新婦の口移しにより体内の妖力が吸収される。
「あんたの清心も美味だわ♪」
(衰弱死するのね…)
大喜びした直後…。
「ん!?ぎゃっ!」
亡霊新婦は気味悪くなったのか突如として吐血したのである。
(えっ!?一体何が…如何して亡霊新婦は吐血したの?)
吐血した亡霊新婦は恐る恐る後退りするなり…。
「ぐっ…あんたは純真無垢の清心とは程遠いわ…」
膠着状態の桜花姫を睥睨したのである。
「如何してあんたの心情は人一倍どす黒く下劣なのかしら…あんたみたいな不潔と遭遇したのは久方振りね…」
亡霊新婦の発言に苛立ったのか腹立たしくなる。
「なっ!誰よりも温厚篤実の女神様である私に不潔ですって!?」
亡霊新婦に怒号した桜花姫は即座に天道眼を発動…。亡霊新婦の幻術を無力化したのである。桜花姫の全身に密着する半透明の触手も消滅する。
「私の幻術を自力で解除するなんて…」
亡霊新婦は自力で幻術を解除させた桜花姫に驚愕したのである。
「残念だったわね♪亡霊新婦♪天道眼を発動しちゃえば幻術だって無力化出来るのよ♪」
「天道眼ですって?」
「今度は私の出番みたいね♪」
桜花姫は変化の妖術を発動…。
「女神様の私に不潔って失言した天罰よ♪飴玉に変化しちゃいなさい♪」
変化の妖術により亡霊新婦の肉体を大好きな飴玉に変化させる。
「亡霊新婦は飴玉に変化したわね♪成仏しなさい♪」
桜花姫は即座に飴玉に変化した亡霊新婦を頬張る。
「美味だわ♪」
すると直後…。先程亡霊新婦に清心を吸収された村娘が恐る恐る目覚めたのである。
「えっ?私は一体何を…」
村娘の様子に桜花姫は一安心する。
「如何やら亡霊新婦に吸収された村人達の清心が無事に戻ったみたいね♪一件落着かしら♪」
事件が解決すると桜花姫は即刻西国へと戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.61 )
日時: 2021/08/30 08:44
名前: 月影桜花姫

第六話

斬首

亡霊新婦との戦闘から六日後の真夜中…。東国の中心街では何者かによって頭首を斬首される連続殺人事件が多発したのである。多発する殺人事件の発生に町民達は畏怖する。真夜中に二人組の武士団の邏卒が東国の中心街を夜番したのである。
「折角平穏が戻ったのに…殺人事件が三件も連続的に発生するなんて物騒だな…」
「恐らく匪賊の仕業だろうが…斬首するなんて随分悪質だよな…」
殺害された被害者達は三人とも頭首を斬首された状態であり翌朝には斬首された頭部と遺体が事件現場で発見される。すると小柄の邏卒がブルブルと寒気を感じる。
「こんな真夜中に人殺しなんかと出くわしたくないぜ…勘弁しろよな…」
「東国の武士団である俺達が人殺しに畏怖して如何する?こんな小事件で畏怖しちまったら俺達は世間様の笑い者だぜ…」
「今回も月影桜花姫様の出番だよな…彼女だったら百人力?千人力だろうし…」
邏卒が口走った月影桜花姫の一言に大柄の邏卒が苛立ち始める。
「桜花姫…桜花姫って…毎回不寝番の桜花姫に頼りっ放しだと東国の武士団は不必要だって村人達から造反されちまうよ!好い加減武士団の上役達も内部を改革させないと形骸化しちまうぞ…」
近年では不寝番の最上級妖女…。月影桜花姫の悪霊征伐により東国武士団の権威が失墜したのである。東国武士団の形骸化と他力本願が問題視され武士団内部からも改革派が出現…。武士団全体の再構築が公言されたのである。
「相手が匪賊だけなら俺達でも対処出来るかも知れないが…神出鬼没の悪霊なんて俺達では頑張っても如何にも出来ないだろ…」
「相手が悪霊だったらな…」
彼等が雑談中…。
「ん?」
東国と北国に国境に直結する両国橋より番傘を所持した赤色の着物姿の女性がポツンと佇立した様子であり天空の満月を眺望する。
「一体誰だろう?」
「こんな真夜中に女人が一人で何を…」
彼等は恐る恐る両国橋へと移動するなり…。番傘の女性の背後に近寄ったのである。女性は小柄の背丈であるが非常に美的の雰囲気であり頭髪には寒椿の髪装飾が確認出来る。
「真夜中だぞ…近頃は斬首事件で物騒だしこんな真夜中にあんたみたいな小町娘が一人で出歩くのは危険だぜ!即刻家屋敷に戻りやがれ!」
大柄の邏卒は強気の態度で女性に命令する。大柄の邏卒は強気であったが女性は無反応であり見向きすらしなかったのである。
「此奴…」
大柄の邏卒は女性の態度に苛立ったのか腹立たしくなる。
(畜生が…無視しやがって!)
すると小柄の邏卒が恐る恐る…。
「失礼なのですが…貴女様みたいな美人さんがこんな真夜中に一人で出歩かれたら人攫いに遭遇するかも知れませんし…即刻家屋敷に戻られませんか?」
小柄の邏卒が物静かに発言するも女性は反応しない。
「此奴…聾者っぽいな…」
「彼女は雛人形みたいだな…私達の問い掛けには反応しないし…」
(不吉だな…)
小柄の邏卒は女性の雰囲気に畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。
「貴様…こんな小町娘に畏怖するなんて♪余程の小心者だな♪」
大柄の邏卒は女性の背後へと移動するなり…。
「外見だけなら可愛らしい雰囲気だな♪素顔は別嬪かな?」
小柄の邏卒は身震いした様子で大柄の邏卒に制止する。
「女人に手出しするなよ!任務は如何する!?」
制止する小柄の邏卒に大柄の邏卒は強気で反論したのである。
「任務なんて後回しだよ♪後回し♪」
「後回しって…」
大柄の邏卒の無責任さに呆れ果てる。
「真夜中だし…人目は貴様だけだからな♪」
大柄の邏卒は欲情した様子であり赤面する。
「小町娘の姉ちゃんよ♪俺と一緒に夜遊びしないか?」
小柄の邏卒は膠着したのである。
(一体如何すれば…)
困惑した直後…。女性が背後を直視したのである。
「えっ?」
女性は半透明の血紅色の瞳孔であり無表情で大柄の邏卒を凝視する。
「素顔も別嬪だな♪」
大柄の邏卒が微笑した直後…。大柄の邏卒の喉元から血液が流れ出る。
「えっ?流血だと?」
大柄の邏卒は恐る恐る喉元に接触する。
「如何して流血した?」
すると直後…。
「えっ?」
大柄の邏卒の頭首が橋板に落下したのである。
「ひっ!」
(一体何が!?)
小柄の邏卒は極度の恐怖心により恐る恐る後退りし始め…。一目散に逃走したのである。翌朝…。東国と北国の国境に直結する両国橋にて斬首された大柄の邏卒の遺体が発見される。事件発生から三日後の真夜中…。東国の噂話を熟知した桜花姫は興味本位に闇夜の東国へと直行する。
(椿女郎…今夜は出現するかしら♪)
一時間後…。東国の中心街へと到達する。
「真夜中の東国って都会なのに無人の過疎地みたいだわ…」
日中は人通りが過多である東方国の中心街であるが…。真夜中では人通りは皆無であり東国武士団の夜間の外出禁止令により誰一人として通行者は確認出来ない。
「好都合ね♪」
今夜は武士団の巡邏も禁止される。
「悪霊を仕留めて思う存分熟睡するわよ♪」
適当に中心街を出回るのだが…。霊力らしい霊力を感じられず悪霊らしき物体は何一つとして発見出来ない。
「はぁ…」
(霊力も感じられないわね…普通の殺人事件かしら?)
困惑した桜花姫であるが…。
「両国橋は如何かしら…」
事件現場である東国と北国を直結する両国橋を想起したのである。
「両国橋に直行するわよ♪」
即座に両国橋へと移動する。数分後…。両国橋へと到達したのである。
「両国橋に到着したけれど…」
周囲を警戒するのだが…。霊力も人影も皆無であり桜花姫は落胆する。
「如何しましょう…」
(悪霊は発見出来ないし…無駄足だったわね…)
一息したのである。
「出直しかしら…」
西国に戻ろうかと思いきや…。突如として背後より人気を感じる。
「えっ?」
(人気かしら?)
彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「誰かしら?」
桜花姫の背後には番傘を所持した赤色の着物姿の女性が真夜中の満月を眺望する。
(こんな真夜中に小町娘?)
彼女の頭髪には寒椿の髪装飾が確認出来る。
(番傘と寒椿の髪装飾…ひょっとして彼女は…)
桜花姫は警戒した様子で恐る恐る一歩ずつ番傘を所持する女性へと近寄る。
「あんたは悪霊の椿女郎ね…こんな真夜中にあんたみたいな小町娘が一人で出歩くなんて不自然だわ…」
椿女郎とは戦乱時代に極悪非道の荒武者によって頭部を斬首された村娘の亡霊である。外見のみなら容姿端麗の小町娘であるが…。霊力は非常に強力であり彼女の瞳孔を直視した人間は彼女の霊力により頭首を斬首される。今現在でも成仏出来ずに各地を徘徊しては遭遇した人間の頭首を自身の霊能力で斬首したのである。桜花姫は女性に問い掛けるが…。番傘の女性は沈黙した様子であり只管天空の満月を眺望し続けるだけである。
(私の問い掛けに無視するなんて…腹立たしい悪霊ね…)
彼女の態度に桜花姫は腹立たしくなる。すると椿女郎は背後に位置する桜花姫の方向を直視する直前…。
「えっ!?」
桜花姫は即座に両目を瞑目させる。
(危機一髪だったわ…下手に彼女の瞳孔を直視すると斬首されちゃうのよね…)
桜花姫は瞑目した状態で恐る恐る後退りする。
(非常に厄介だわ…如何しましょう…)
瞑目し続けた状態では身動きすら不安定であり妖術を発動したくても集中出来ず思う存分に妖術も発動出来ない。
(こんな状態では不利だわ…)
「一か八か逃げましょう…」
桜花姫は両国橋から一目散に逃走したのである。
(緊張しちゃったから変化の妖術も発動出来ないわね…)
緊張したのと椿女郎の素顔が気になり変化の妖術を発動したくても発動出来なかったのである。
(彼女の素顔も気になるし…)
「一か八か…」
桜花姫は斬首を覚悟…。再度両国橋へと戻ったのである。数分後…。桜花姫は両国橋に到達する。両国橋には満月を眺望し続ける椿女郎が確認出来る。
(椿女郎だわ…今度こそ妖術で仕留めるわよ♪)
桜花姫は恐る恐る椿女郎に近寄る。
「椿女郎!今度こそあんたを成仏させるからね!覚悟しなさいよ!」
すると数秒後…。椿女郎は桜花姫に反応したのか再度背後の彼女を直視するなり無表情で桜花姫を凝視する。
(椿女郎って…悪霊なのに意外と美人さんなのね♪)
彼女の素顔は非常に美的であり桜花姫でさえも容姿端麗であると感じる。
(本当に斬首されるかしら?)
数秒間が経過したものの…。何も発生しない。
「別に大丈夫そうね♪」
大丈夫であると確信した直後…。
「えっ?」
喉元から赤色の液体が流れ出る。
「何かしら?」
桜花姫は恐る恐る首筋の液体に接触したのである。
「流血だわ…」
皮膚から流れ出る赤色の液体が血液であると確信した直後…。桜花姫の頭首が橋板に落下したのである。椿女郎は霊能力で桜花姫の頭首を斬首すると不吉の表情で微笑する。彼女は再度満月を眺望するのだが…。
「残念だったわね♪椿女郎♪」
椿女郎は女性の美声に反応したのか背後を直視すると両目を瞑目した無傷の桜花姫が佇立する。すると椿女郎の霊能力によって斬首された桜花姫の肉体と頭首から白煙が発生…。消滅したのである。無表情だった椿女郎であるが驚愕した表情で桜花姫を凝視する。
「あんたの表情を直視出来ないのは非常に残念だったけどね♪あんたが霊能力で斬首したのは私の分身体なのよ♪」
桜花姫は分身の妖術で形作った分身体を利用して椿女郎と接触…。彼女の形相を認識させたのである。桜花姫は変化の妖術を発動…。
「あんたの素顔は分身体で確認したからね♪あんたは桜餅に変化しなさい♪」
椿女郎を桜餅に変化させる。
「消耗した妖力を回復させないと♪」
桜餅に変化した椿女郎を一口で頬張る。
「美味だわ♪」
すると両国橋から感じられた不吉の霊力が消失する。
「事件解決ね♪私は西国に戻って思う存分熟睡するわよ♪」
無事事件を解決させた桜花姫は即座に西国へと戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.62 )
日時: 2021/08/30 08:45
名前: 月影桜花姫

第七話

悪戦苦闘

椿女郎との死闘から一週間後の真夜中…。東国と西国の国境の山道にて五人の匪賊達が一休みする。
「今日は大量でしたね♪米俵を二石も入手出来るなんて♪」
小柄の匪賊が笑顔で発言したのである。
「明日は如何しますかい?」
中肉中背の匪賊が問い掛ける。すると小柄の匪賊が笑顔で…。
「明日は西国なんて如何かな!?西国は田舎村だし食糧品を分捕るには最適だぜ♪」
小柄の匪賊の発言に大柄の匪賊が身震いしたのである。
「貴様は馬鹿か!?」
「えっ!誰が馬鹿だって!?」
大柄の匪賊の馬鹿発言に小柄の匪賊は腹立たしくなる。
「喧嘩したいのか!?」
大柄の匪賊は恐る恐る…。
「貴様は知らないのか?月影桜花姫の存在を…」
「月影桜花姫だって?誰だよ?」
周囲の者達は小柄の匪賊に呆れ果てる。
「貴様は本当に世間知らずだな…西国には最上級妖女の月影桜花姫が居住する妖女の魔窟だぞ…」
今度は中肉中背の匪賊が発言する。
「西国の村里なんか襲撃すれば…俺達みたいな凡人なんて桜花姫に瞬殺されちまうだろうな…」
「桜花姫って妖女は最強なのか?」
小柄の匪賊が問い掛けると大柄の匪賊が即答したのである。
「勿論最強だぞ…桜花姫は其処等の妖女とは別格に最強らしいし…俺達みたいな人間にも容赦しないらしいぞ…」
桜花姫は悪霊が出現しなければ時たま匪賊を征伐する。すると今度は別の小柄の匪賊が赤面した表情で…。
「桜花姫って…噂話では絶世の美女らしいな♪遭遇出来るなら遭遇したいぜ♪」
「貴様は相当の物好きだな…絶世の美女だとしても桜花姫は妖女だからな…所詮妖女なんて其処等の悪霊と一緒だろう…」
大柄の匪賊は揶揄したのである。
「兎にも角にも…明日は西国以外の人気の少なそうな村里を襲撃するか?」
「決定だな…」
すると直後…。
「うっ…」
突如として中肉中背の匪賊が極度の寒気により凍え始める。
「ん?如何した?」
「大丈夫か?」
「突然寒気が…」
極度の寒気からか全身が身震いしたのである。すると今度は大柄の匪賊が突然の寒気により凍え始める。
「俺も…」
「大丈夫かよ!?風邪か?」
直後…。周囲より気配を感じる。
「ん!?」
「気配だ…」
「人気か?」
突然の気配に匪賊達は警戒したのである。中肉中背の匪賊は恐る恐る…。
「人気なのか?」
「人気では…無さそうだな…」
「山犬か?」
匪賊達は恐る恐る護身用の刀剣を抜刀したのである。
「何が出現するか?」
目前の樹海より人影を確認…。匪賊達に接近する。
「人影だ…」
数秒後…。樹海より全身の皮膚が腐敗した小柄の怪物が出現したのである。
「ひっ!此奴は…」
「食人餓鬼って悪霊だったか?」
「此奴なら子供でも殺せるぜ♪打っ殺しちまえ!」
小柄の匪賊は食人餓鬼に近寄るなり頭部を斬首…。仕留めたのである。周囲の匪賊達は身動きしなくなった食人餓鬼に恐る恐る近寄る。
「身動きしなくなったぞ…」
「此奴は本当に雑魚みたいだな…」
食人餓鬼は非常に脆弱の悪霊であり頑張れば人間の子供でも仕留められる程度である。
「如何してこんな場所に悪霊が…」
「悪霊は神出鬼没だからな…」
「兎にも角にも…悪霊は仕留めたからな…一休みしないか?」
彼等は再度一休みするのだが…。再度寒気を感じる。
「今度も寒気を感じるぞ…」
「ひょっとして今度も悪霊が出現したか?」
彼等は再度警戒…。刀剣を抜刀したのである。
「今度は何が出現する?」
直後…。周辺の樹海より数十体もの食人餓鬼が出現したのである。
「今度は悪霊が大量に出現したぞ…如何する?」
「相手するか?」
すると大柄の匪賊が恐る恐る…。
「多勢に無勢だぜ…」
食人餓鬼は子供でも仕留められる程度の悪霊だが多勢に無勢であり圧倒的に不利である。
「逃げないか?」
「止むを得ないな…」
不本意であるが彼等は逃走を決意したのである。逃走する寸前…。
「ん?」
突如として食人餓鬼の大群は身動きしなくなる。
「えっ!?一体何が?」
身動きしなくなった食人餓鬼に匪賊達は何が発生したのか不思議がる。食人餓鬼は恐る恐る後退り…。鈍足の身動きで逃亡したのである。
「命拾いしたぜ…」
「奴等…如何して奴等逃げやがった?」
彼等は命拾いに安堵するのだが…。背後より気配を感じる。
「えっ…」
五人の匪賊達は恐る恐る背後を直視するなり…。
「ひっ!」
「蜘蛛の怪物だ!」
背後には正体不明の巨大蜘蛛らしき怪物が出現する。
「食い殺されちまう!逃げろ!」
彼等は一目散に逃走したのである。翌日の真昼…。西国に隣接する廃村の地面より野犬に咀嚼された大量の血肉やら人骨が無数に発見されたのである。近隣の村人達からは無間地獄の亡者達が出没したとの噂話が国全体に出回る。同時刻…。東国近辺の辺境地より食人餓鬼の大群が隣接する各地に出没したのである。村人達の噂話が気になった桜花姫は即刻問題の廃村へと直行する。
「廃村の無数の人骨と肉片…東国に出没した食人餓鬼の大群…」
(無数の悪霊が出現した因果関係は一体何かしら?)
西国から非常に近辺なのか数分間で到着する近距離である。桜花姫は恐る恐る廃村の様子を眺望する。
「随分殺風景ね…」
誰一人として村人が定住しない魔窟であり廃村から無数の霊力を察知したのである。
「廃村から無数の霊力を感じるわ…」
人気は皆無であり廃村の雰囲気から黄泉の国を連想させる。
「気味悪いわね…」
(空気も息苦しいし…)
廃村は非常に息苦しい場所であり普通の人間であれば卒倒しそうな雰囲気である。
「今回の超常現象では何が出現するのかしら?」
(亡霊新婦は勿論…亡霊女房よりも面倒臭いかも知れないわね…)
廃村の重苦しい空気からか気味悪くなる。廃村の雰囲気から無気力化するものの…。
「廃村中心部の楼閣が非常に不吉だわ…」
廃村中心地の楼閣から非常に重苦しい無数の霊力を察知したのである。
「妖力を消耗するのも面倒臭いからね…力任せで突破しちゃうわよ!」
彼女は鈍足であるものの真正面から廃村へと突入する。
「何かしら?」
すると周辺の地面より無数の食人餓鬼が出現…。大勢で道中を通行する桜花姫に殺到したのである。
「彼等なりの挨拶かしら?」
(食人餓鬼にとって私は嗜好品みたいね…)
桜花姫は即座に瞳術の天道眼を発動…。半透明の妖力の防壁を発動したのである。防壁の表面より半透明化した血紅色の魔手を無数に出現させる。
「鬱陶しい奴等だわ…」
妖力によって出現した無数の魔手は彼女に殺到する無数の食人餓鬼の猛攻撃から本体を防備…。血紅色の魔手は桜花姫に殺到する食人餓鬼を縦横無尽に蹴散らせる。
「人気者も災難だわ♪」
桜花姫は泰然自若とした様子であり無謀にも殺到し続ける食人餓鬼の大群を容易に死滅させたのである。桜花姫の発動した魔手に接触した食人餓鬼は一瞬で肉体が粉砕される。桜花姫が通過した直後…。桜花姫の通過した地面には食人餓鬼の無数の肉片やら血肉が彼女の路傍に散乱したのである。桜花姫は一直線に驀進するなり廃村中心部の楼閣へと到達する。
「楼閣から霊力を感じるわね…」
楼閣の最上階から不吉の霊力が感じられる。桜花姫は一息するなり…。恐る恐る楼閣へと潜入したのである。居室には異国風の調度品が散乱した状態であり居住者は誰一人として確認出来ない。
「如何やら大昔は富裕層の居住地だったのかしら…」
楼閣は全面的に洋式風の雰囲気である。
「室内の雰囲気は異国を意識したのかしら?異世界みたいだわ…」
洋式風の調度品ばかりであり異世界みたいに感じられる。階段にて最上層へと到達する。
「博物館みたいだわ…」
楼閣の最上層は骨董品の貯蔵庫であり桜花姫は無尽蔵の異国風の骨董品に魅了されたのである。
「楼閣の骨董品を競売しちゃえば私も富裕層かしら♪」
すると貯蔵庫の中心部には摩訶不思議なる骨董品が非常に気になる。
「何かしら?ひょっとして能面?」
桜花姫が気になった代物とは精巧に形作られた能面であるものの…。
「表情が気味悪いわね…」
能面は非常に不自然であり等身大の人間と同程度の巨大さである。
「非常に悪趣味だわ…能面って外見的にも不吉なのよね…」
桜花姫は巨大能面を直視すると鳥肌が立つのか非常に気味悪くなる。
「私には所有者の感受性が理解出来ないわね…能面なんて気味悪いだけなのよ…私は大嫌いだわ…」
迂闊にも巨大能面に近寄るなり…。恐る恐る接触したのである。
「普通の能面よりも随分特大なのね…単なる装飾品なのかしら?」
先程から疑問視したのか桜花姫が楼閣へと潜入した直後に室内の霊力が完全消失する。
「霊力が感じられなくなったわ…」
霊力が皆無であると察知するなり桜花姫は恐る恐る庭園へと戻ろうかと思いきや…。背後から物音が響き渡る。彼女は即座に背後を警戒するなり…。
「えっ?一体何事!?」
巨大能面の両目部分が蛍光色へと変色した状態であり無数の人間の細腕らしき脚部が形作られる。姿形は巨大化した巨大人面蜘蛛であり中心部の胴体部分が巨大能面である。
「ひょっとしてあんたは器物の悪霊…【小面蜘蛛】かしら!?」
(厄介なのが出現したわね…)
小面蜘蛛とは器物である巨大能面へと憑霊した憑依系統の悪霊であり南国では別名巨大能面の付喪神とも命名される。器物に憑霊出来る呪術により天道眼を保有する桜花姫をも錯覚させる。小面蜘蛛の胴体部分である巨大能面の両目が桜花姫を凝視するなり微笑する。
「気味悪いわね…」
微笑する小面蜘蛛に桜花姫は気味悪くなる。すると巨大能面の口先より白色の蜘蛛糸を噴出したのである。
「きゃっ!」
小面蜘蛛の蜘蛛糸が彼女の皮膚に接触した直後…。
「ぐっ!」
(何かしら?妖力が消耗するなんて…)
体内の妖力が格段に消耗したのである。体内の妖力が一瞬で半減したのか肉体の身動きすらも負担に感じられる。
(迂闊だったわ…能面の正体が悪霊の小面蜘蛛だったなんて…如何して今迄気付かなかったのかしら?)
小面蜘蛛の蜘蛛糸に接触すると莫大なる妖力を一瞬で消耗する。大量の妖力を駆使する攻撃法では小面蜘蛛を仕留めるのは非常に困難である。莫大なる妖力と天道眼による多種多様の妖術を保有化…。自由自在に扱える桜花姫にとって小面蜘蛛は相性的にも最悪の天敵である。
(私は小面蜘蛛の餌食に…)
桜花姫は莫大なる妖力の消耗によって力尽きたのか横たわる。横たわった彼女の隣接に小面蜘蛛が急接近する。
「小面蜘蛛…」
(私を食い殺したければ食い殺しなさいよ…)
桜花姫は捕食されるのを覚悟したのである。
(最上級妖女の私が…悪霊を相手に圧倒されるなんて…)
彼女は僅少の妖力によって時空間停止の妖術の使用を決意する。
(一か八か…)
時空間停止の妖術を発動したのである。直後…。小面蜘蛛は一時的に身動きしなくなる。時空間停止の妖術は数分間のみ周囲の時間と空間を停止させられる妖術…。自身は身動き出来るが周囲の空間は何もかもが停止状態だったのである。
「今度は…」
瞬身の妖術を発動する。瞬身の妖術とは所謂瞬間移動であり瞬時に安全地帯に移動出来る。桜花姫は瞬身の妖術の使用により楼閣から無事脱出…。近辺の山道へと移動したのである。
(危機一髪だったわ…)
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒…。無事に楼閣から脱出出来たのである。
「脱出には成功したみたいね…」
妖力の消耗によって妖術の使用は不可能であり一時的に退却を余儀無くさせられる。
(時空間停止の妖術は解除されたし…即刻戻らないと…)
大量の妖力消耗によって妖術が使用出来なくなり一時的に退却しなくては悪霊征伐が出来なくなる。
(こんなにも妖力を消耗した状態では妖術を使用出来ないわね…)
桜花姫は西国へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
周囲の地面より数体の食人餓鬼が出現する。彼等は地面に横たわった桜花姫へと殺到したのである。
「今度は食人餓鬼!?」
最早桜花姫は妖力を消耗した満身創痍の状態であり数体の食人餓鬼さえも仕留められなくなる。
(本調子の私だったら食人餓鬼なんて片手間で片付けられちゃうのに…)
本調子の彼女にとって食人餓鬼の大群相手は片手間であるものの…。大量の妖力を消耗した状態では複数の食人餓鬼さえも仕留められなくなる。彼等は無我夢中に横たわった桜花姫に殺到したのである。
「きゃっ!」
桜花姫は戦慄するなり恐る恐る後退りする。
(私は食人餓鬼に食い殺されちゃうのね…)
数体の食人餓鬼が彼女の肉体に接触する直前…。
「えっ!?」
食人餓鬼は突発的に身動きしなくなる。
「如何して身動きしなくなったの?」
恐る恐る地面を注視するなり…。
「きゃっ!蜘蛛糸だわ…」
小面蜘蛛の白色の蜘蛛糸を確認する。
「ひょっとして小面蜘蛛かしら?」
彼等の背後には標的である桜花姫を追撃する小面蜘蛛が近寄る。
「小面蜘蛛!?」
(今度こそ私は小面蜘蛛に食い殺されちゃうわ…)
小面蜘蛛に戦慄した桜花姫は全身が膠着したのである。金縛りの妖術によって楼閣から危機一髪脱出出来たものの…。小面蜘蛛は桜花姫の妖力を目印に彼女の居場所を察知する。必死に逃走する桜花姫を見逃さなかったのである。小面蜘蛛は体内から噴出させた蜘蛛糸によって身動き出来なくなった数体の食人餓鬼を捕食する。
「悪霊が悪霊を共食いするなんて…」
桜花姫は悪霊が悪霊を食い殺す残虐非道の場面に気味悪くなる。食い殺される食人餓鬼みたいに自分自身も小面蜘蛛に食い殺されるのではと想像すると自害したくなる。小面蜘蛛は横たわった桜花姫に近寄るなり…。小面蜘蛛の鋭利の脚部が桜花姫の腹部を抉り抜いたのである。
「ぎゃっ!」
急所を抉り抜かれた直後…。
「ぐっ!」
吐血したのである。地面は桜花姫の大量の出血によって血紅色に変色する。
(結局私は小面蜘蛛に捕食されちゃうのね…)
致命傷であり失血死寸前の瀕死状態である。最早全身の無感覚によって痛覚すらも感じられなくなる。身動き出来なくなった桜花姫は今度こそ最期を覚悟したのである。すると直後…。
「きゃっ!」
両目を瞑目すると耳元より爆発音が響き渡る。
(えっ!?爆発音?)
恐る恐る両目を見開くなり…。肉体を粉砕された小面蜘蛛の血肉が散乱した状態であり死滅した小面蜘蛛の背後には携帯式の榴弾砲を武装した僧侶服の何者かが地面に横たわった桜花姫に恐る恐る近寄る。
(誰かしら?)
僧侶服の人物とは僧侶の三蔵郎であり精神的にも肉体的にも衰弱化した桜花姫にとって三蔵郎は守護神にも感じられる。
「危機一髪でしたね…桜花姫様…」
「ひょっとして三蔵郎様?」
「桜花姫様…大丈夫ですか?」
三蔵郎は桜花姫の抉り抜かれた胸背の外傷を直視するなり…。
「桜花姫様…」
(致命傷ですね…)
桜花姫の外傷を直視した三蔵郎は絶句する。
「私なら大丈夫よ…外傷なら自力で治癒出来るから…」
「自力で治癒ですと?」
すると桜花姫の傷口は体内の妖力によって治癒されたのである。
「致命的外傷も一瞬で元通りなんて桜花姫様の妖力は正真正銘万能薬ですね…」
(ですが桜花姫様は出血多量の悪影響によって衰弱化された状態ですが…)
桜花姫は多量の出血により肉体的にも精神的にも疲弊した状態である。
「如何して人間の三蔵郎様が悪霊の小面蜘蛛を仕留められたのかしら?小面蜘蛛って悪霊でも段違いに強敵なのよ…」
「小面蜘蛛は妖力を無力化させる悪霊ですよね?妖力を多用すれば悪戦苦闘は必須でしょうが妖力が未利用の攻撃法によって撃退出来るのでしょうね…今回の悪霊は莫大なる妖力を保有する妖女では最悪の天敵かと…」
三蔵郎は妖力を利用しない攻撃法こそが小面蜘蛛にとって唯一の弱点であると推測する。小面蜘蛛は摩訶不思議の妖力を多用する妖女では相性的にも最悪であるものの…。武装化した人間には滅法脆弱である。
「ですが一安心ですね♪桜花姫様が無事なのが何よりですから…」
「三蔵郎様…」
桜花姫は涙腺から大粒の涙が零れ落ちるなり落涙する。
「三蔵郎様!」
桜花姫は三蔵郎の腹部に力一杯密着したのである。
「桜花姫様!?」
三蔵郎にとって彼女の様子は幼女であり純情可憐に感じられる。
「桜花姫様…」
(余程辛かったのでしょうね…)
疲弊した桜花姫を直視するなり…。三蔵郎は人一倍病弱だった愛娘を想起したのである。
(私の愛娘は一昨年…疫病によって…)
三蔵郎は一昨年伝染病で死去した愛娘を追想するなり内心極度の悲痛さを感じる。数分後…。
「桜花姫様?空腹なのでは?」
三蔵郎は空腹の彼女に麦飯を手渡したのである。
「御免あそばせ…こんな貴重品を私なんかに大丈夫なのかしら?」
「桜花姫様が空腹なのは一目瞭然ですし…桜花姫様が無事なのが何よりですから…桜花姫様は気になさらなくても大丈夫ですよ♪」
「三蔵郎様…」
桜花姫は三蔵郎の雰囲気が一瞬父親との距離感を想像したのである。すると感情が高揚したのか彼女の両目から大粒の涙が零れ落ちる。
(父親との距離感って…こんな雰囲気なのかしら…)
彼女は力一杯麦飯を平らげる。一瞬で麦飯を完食したのである。
「桜花姫様は相当空腹だったのですね…」
「小面蜘蛛の蜘蛛糸で体内の妖力を消耗させられちゃったからね…」
すると桜花姫は恐る恐る三蔵郎に告白する。
「私…一瞬三蔵郎様が私の父親だったらって…妄想しちゃったわ…」
「私が桜花姫様の父親ですと…」
桜花姫の発言に一瞬驚愕するものの…。
(私が桜花姫様の父親ですか♪)
三蔵郎は想像するなり内心大喜びしたのである。
「三蔵郎様?」
「如何されましたか?桜花姫様?」
桜花姫は叫喚地獄だった幼少期の出来事から悪霊退治屋として活動し始めた経緯を三蔵郎に一部始終追憶する。
「大昔の私はね…」
桜花姫の血筋は名門の武家一族…。月影一族の一人娘であり彼女の家系は分家に分類される。父親は東国武士団所属の最上級武士【月影夜叉丸】であり母親は人魚妖女の【月影美海姫】…。人間の夜叉丸と純血の妖女である美海姫の混血が愛娘の桜花姫である。父親の夜叉丸は天地歴九千九百九十二年四月七日の桜花姫の出産日前日にて死去…。母親の美海姫と一緒に生活したのである。東国武士団の最上級武士であった夜叉丸の財産によって毎日が暖衣飽食の生活であり非常に裕福であったものの…。桜花姫は春風駘蕩の毎日が非常に退屈であり武陵桃源の暖衣飽食に極度の倦怠感を感じる。憂鬱であった幼少期であるが彼女に人生最大の変化が到来したのである。不運にも十二歳の誕生日後日…。断崖絶壁の落石に直面する。不運にも桜花姫は落石によって背中を損傷したのである。
「私は落石で絶体絶命だったのよ…」
落石の事故後…。桜花姫は半死半生の状態であったものの背中の外傷が一瞬で自然治癒したのである。落石による外傷が全治した直後…。血紅色であった半透明の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光したのである。突如として体内の妖力が通常の妖女よりも桁違いに増大化…。規格外の妖力の覚醒により日に日に強大化した彼女は体内で蓄積された妖力を自力で抑制出来なくなる。
「当時子供だった私は妖力を自由自在に扱えなかったのよ…」
妖力を抑制出来なくなった桜花姫は不本意にも妖力の暴走によって唯一の肉親である母親の美海姫を殺害…。
(温厚篤実の桜花姫様が母君様を殺害ですと!?)
「桜花姫様が母君様を殺害されたのは事実なのでしょうか?」
「私が母様を殺したのは事実なのよね…」
三蔵郎は驚愕する。
「私は正真正銘残虐非道の殺人鬼なのよ…」
残虐非道の殺人鬼として明断された桜花姫は東国武士団の看守達により隔離される。監獄にて武士団の看守達から一晩中拷問されたものの…。桜花姫の規格外の生命力に戦慄したのである。看守達は桜花姫の常人をも超越した生命力に戦慄…。武士団の看守達は彼女を監獄から釈放させる。人間達にとって害悪である悪霊から村人達を防備する不寝番としての活動を必須要件として多種多様の悪霊やら大勢の匪賊達を問答無用に征伐したのである。妖力の順応化は非常に困難であったものの日に日に妖力を多用し続けた結果…。十八歳の中頃には伝説の秘術として伝承される瞳術の天道眼を開眼させたのである。
「桜花姫様が悪霊退治屋として活動された理由とは…不本意にも母君様を殺害された自分自身の罪悪感だったのですね…」
「内心忘却したい黒歴史なのよね…」
「ですが桜花姫様は人一倍勇猛果敢の女神様ですよ…勿論誰よりも♪」
桜花姫は三蔵郎の女神様発言に返答する。
「私が女神様なんて…三蔵郎様は随分表現が大袈裟ね…」
「桜花姫様は不本意にも幼少期に母君様を殺害されたのは事実なのかも知れません…ですが何よりも桜花姫様は罪滅ぼしとして無数の悪霊は勿論…極悪非道の匪賊達から村人達を守護する悪霊退治屋として粉骨砕身されたのも事実ですからね…」
「三蔵郎様…」
桜花姫の顔色が変化したのである。
「所詮妖女も生命体なのです…森羅万象に実在する生命体とは善悪の集合体であり非常に複雑ですからね…勿論こんな私自身にも悪心は存在しますよ♪」
三蔵郎の鼓舞激励によって微弱であるものの…。
「三蔵郎様♪三蔵郎様には大変感謝するわ…」
桜花姫に笑顔が戻ったのである。
「私自身桜花姫様に役立てただけでも恐悦至極に感じられますよ♪」
「三蔵郎様♪」
桜花姫は三蔵郎の鼓舞激励に一安心する。
「桜花姫様…今後は如何されますか?」
「無数の霊力が国全体に分散しちゃったみたいだからね…」
(亡者達が国全体に徘徊し続けると非常に大変だわ…)
突如として莫大なる無数の食人餓鬼の気配を察知したのである。
「国全体に霊力ですと!?一大事ですね…即刻悪霊を撃退しなければ…」
「食人餓鬼が増大化した悪影響ね…」
「ですがこんなにも突発的に食人餓鬼の大群が出現するなんて…」
「如何してこんなにも食人餓鬼の大群が出現しちゃったのかしら?」
すると桜花姫は三蔵郎に協力を要望する。
「三蔵郎様?」
「如何されましたか?桜花姫様?」
「今回ばかりは三蔵郎様の協力が必要不可欠なのよ…正直今回の悪霊征伐は私だけで解決するのは心細いのよね…」
正直今回も単独で悪霊事件を解決させたかったが先程の予想外の悪戦苦闘によって桜花姫は極度に心細くなる。
「勿論ですとも♪私は是非とも桜花姫様に協力しますよ♪」
桜花姫の要望に三蔵郎は大喜びで承諾したのである。
「三蔵郎様と一緒なら心強いわ♪」
メンテ
桜花姫※リメイク ( No.63 )
日時: 2021/08/30 08:46
名前: 月影桜花姫

第八話

敗走

桜花姫と三蔵郎は増大化した無数の霊力を感じる東国へと到達…。城下町の中心街に潜入したのである。東国の絶景は全域が主戦場であり城下町の地面には腐敗した無数の血肉は勿論…。散乱した血塗れの臓器やら血肉が無数に確認出来る。先程遭遇した食人餓鬼の大群が無数に出現…。逃走中の村人達に殺到するなり人間の血肉を無我夢中に捕食したのである。
「本物の地獄絵ですね…東国では一体何が…」
「彼等にとって人間の血肉は嗜好品だからね…」
徘徊中の無数の食人餓鬼が移動中の桜花姫と三蔵郎に殺到するなり…。大勢で襲撃するものの桜花姫が念力の妖術を発動すると彼等は瞬殺される。
「鬱陶しい悪霊だわ…」
桜花姫と三蔵郎の地面周辺には食人餓鬼の血肉やら体内の臓器が無数に散乱する。
(直接手出ししなくとも確実に殺害出来るなんて…)
三蔵郎は桜花姫の天道眼の効力に驚愕したのである。
「桜花姫様の妖力を肉眼で拝見しましたが…こんなにも天下無双とは非常に心強いですな…」
「私にとって片手間よ♪」
「片手間ですと!?」
(ですが桜花姫様の妖力がこんなにも強力であれば私の協力なんて無意味なのでは?)
内心桜花姫には同行者の協力は不必要なのではと感じる。
「鬱陶しい奴等ね…」
桜花姫は苛立った様子であり村人達の血肉を無我夢中に捕食し続ける食人餓鬼の大群に猛反撃したのである。無数の食人餓鬼の頭部を念力によって破裂させる。頭部が破裂した食人餓鬼は身動き出来なくなる。
「相手が微弱の食人餓鬼であれば…桜花姫様の妖力は天下無敵ですね♪」
「私にとって食人餓鬼なんて問題外よ…」
桜花姫にとって悪霊やら通常の妖女であれば滅法天下無双であるものの…。
(食人餓鬼が問題外でも妖力の消耗戦で私自身疲弊状態なのよね…)
先程の予想外の悪戦苦闘により妖力の消耗戦が影響したのか息苦しい深呼吸が目立ったのである。
「桜花姫様?」
「何かしら…三蔵郎様?」
「大丈夫ですか?何やら桜花姫様の顔色が…」
三蔵郎は息苦しそうに深呼吸する桜花姫を心配する。
「別に…私なら大丈夫よ…」
「ですが桜花姫様の顔色が…」
「三蔵郎様は人一倍心配性なのね…三蔵郎様が気にしなくても私は大丈夫だからね…」
城下町の中心地区域内へと到達するものの…。東国の村人達は誰一人として確認出来ない。
「無人地帯だわ…村人達の居場所は?」
「東国の村人達は武士団の本拠地である根城へと避難されました…最早東国全域が亡者達によって占拠されたのでしょうね…」
すると三蔵郎は桜花姫に助言する。
「桜花姫様の妖力は変幻自在かも知れませんが…先程の小面蜘蛛みたいな最上級の悪霊にでも遭遇すれば確実に苦戦するでしょう…護身用の装備品が必要不可欠かと…油断大敵ですよ…」
「護身用の装備品ですって?」
「武士団の駐屯地で装備品を確保しましょう…私が道案内しますよ…」
三蔵郎は桜花姫を道案内するなり一緒に駐屯地へと移動したのである。数分後…。桜花姫と三蔵郎は武士団の駐屯地に到達する。
「廃屋っぽいわね…」
「武士団の駐屯地も食人餓鬼の大群に占拠されましたからね…」
二人は恐る恐る駐屯地へと潜入したのである。駐屯地は無人化した廃屋であり武士団の守備隊は食人餓鬼の猛攻撃によって危機一髪撤退…。本拠地である根城へと退却したのである。
「常備軍は撤退しちゃったのかしら?」
通路は血塗れの刀剣やら甲冑が散乱した状態である。
「何しろ相手は神出鬼没の悪霊ですし武士団の守備隊が少数精鋭であったとしても無数の悪霊を撲滅させるなんて夢物語でしょう…ですが彼等が撤退した恩恵によって容易に潜入出来ましたからね…」
最早守備隊の駐屯地は無防備の状態であり非武装の村人達でも容易に潜入出来る。
「先程は私も駐屯地の武器庫で榴弾砲を確保しましたからね…」
桜花姫と三蔵郎は恐る恐る武器庫へと入室する。武器庫には多種多様の火縄銃やら手榴弾は勿論…。異国で購入された最新式の散弾銃やら携帯式の迫撃砲が無尽蔵に確認出来る。
「連発銃なんて如何でしょうか?連発銃であれば誰でも手軽に扱えるでしょう…」
三蔵郎は軽量化された携帯式の連発銃を桜花姫に手渡したものの…。
「三蔵郎様…残念だけど私には連発銃は相応しくないわね…」
桜花姫は連発銃の使用を拒絶する。
(私自身砲術は未経験だからね…連発銃なんて代物は私には扱えないわ…)
基本的に荒唐無稽の妖術を駆使する桜花姫にとって自身の肉体を行使する砲術やら武術は不向きであり連発銃の使用法は滅法専門外の領域である。
「短刀の懐刀だったら愚鈍の私でも…」
桜花姫は体術やら武術を多用する兵法は不向きであるものの…。比較的誰でも扱えそうな短刀の懐刀を護身用に所持する。
「三蔵郎様…即刻武器庫から脱出しましょう…」
「承知しました…」
すると通路より物音が響き渡る。
「通路から物音だわ…食人餓鬼かしら?」
通路より無数の霊力を察知したのである。
(無数の霊力が密集した状態だわ…何かしら!?)
桜花姫は恐る恐る武器庫から脱出するなり…。
「怪物!?」
通路に佇立する怪物とは無数の食人餓鬼が融合化した肉団子の悪霊である。
「食人餓鬼とは別物だわ…悪霊の変異体かしら?」
姿形のみなら肉団子を連想させる巨体の肉塊人間であるものの…。全身の皮膚の表面には醜悪なる食人餓鬼の顔面が無数に確認出来る。
「先程から感じる無数の霊力って…肉団子の怪物だったのね…」
三蔵郎も恐る恐る武器庫から退室する。
「ひょっとして悪霊の【百鬼食人餓鬼】では?」
「百鬼食人餓鬼ですって?」
「食人餓鬼の集合体ですよ…」
「食人餓鬼の集合体?」
三蔵郎は桜花姫に解説したのである。
「征伐された彼等の…無数の食人餓鬼の怨恨が具現化した悪霊の親玉でしょうね…」
「無数の食人餓鬼の怨恨が具現化ですって…」
図体は等身大の人間と同程度であり一匹一匹の食人餓鬼の霊力は非常に微弱であるものの…。
「傍迷惑なのが出現したわね…」
食人餓鬼の大群が無数に融合化した影響によって最上級の妖女である桜花姫も恐る恐る後退りする。
(私が万全の状態であれば…食人餓鬼の集合体なんて片手間だけれども…)
妖力の消耗戦により百鬼食人餓鬼との徹底抗戦は非常に難局である。
(迂闊にも小面蜘蛛から大量の妖力を消耗させられちゃったからね…)
すると百鬼食人餓鬼の全体像から確認出来る表面の食人餓鬼の口辺より超高温の熱風を放射する。桜花姫は咄嗟に霊力の防壁を発動…。同行者である三蔵郎にも妖力の防壁を発動するなり危機一髪彼を熱風から防備する。
「三蔵郎様…命拾いしたわね♪」
「感謝します桜花姫様…即刻ですが桜花姫様の妖術で百鬼食人餓鬼に猛反撃しちゃいましょう♪桜花姫様が天下無敵の妖術を駆使しちゃえば集合体の百鬼食人餓鬼だって撃退出来るでしょう!」
「三蔵郎様…」
桜花姫は苦笑いしたのである。
「桜花姫様…如何されたのですか?」
苦笑いする桜花姫に恐る恐る問い掛ける。
(先程の妖力の防壁で空っぽの状態なのよね…)
妖力が空っぽの状態であり百鬼食人餓鬼と応戦しても敗戦は確実であると判断した桜花姫は苦し紛れに…。
「三蔵郎様!即刻駐屯地から一か八か脱出しましょう…」
三蔵郎に逃走を合図したのである。
「えっ?脱出ですと?」
三蔵郎は一瞬困惑するが…。
(桜花姫様…)
桜花姫の表情から三蔵郎は咄嗟に掌握する。
「承知しました!桜花姫様…」
桜花姫と三蔵郎は全力疾走により駐屯地から無事脱出したのである。桜花姫は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「三蔵郎様…危機一髪だったわね♪」
「ですが如何して桜花姫様は逃走を判断されたのですか?桜花姫様らしくないですね…」
三蔵郎は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「桜花姫様が天下無敵の妖術を駆使すれば食人餓鬼の集合体である百鬼食人餓鬼と交戦したとしても容易に撃退出来るのでは?」
「度重なる消耗戦で妖術が発動出来なくなったのよ…こんな空っぽの状態で百鬼食人餓鬼と徹底抗戦なんて無謀だわ…」
度重なる妖力の消耗戦によって桜花姫は満身創痍の状態であり妖力を消耗した状態では食人餓鬼の集合体である百鬼食人餓鬼は勿論…。相手が食人餓鬼の大群だったとしても絶体絶命である。
「人間の三蔵郎様は勿論…最上級妖女の私だって確実に瞬殺されるでしょうね…」
「えっ…最上級妖女の桜花姫様が悪霊を相手に瞬殺されるなんて…」
三蔵郎は桜花姫が非常に弱気であると感じるも…。桜花姫は息苦しく深呼吸したのである。
(桜花姫様…本当に重苦しい様子ですね…)
三蔵郎は恐る恐る…。
「如何やら妖力が消耗されたのは本当みたいですね…桜花姫様…」
「御免なさいね…三蔵郎様…」
桜花姫は謝罪したのである。
「妖力を消耗した状態では食人餓鬼の大群を相手するのも正直悲痛なのよね…『天霊山』の露天風呂にでも入浴出来れば…」
「天霊山の露天風呂ですか?」
天霊山とは西国の丘陵地であり俗界の温泉郷と命名される。妖女にとって天霊山の露天風呂は消耗した妖力を回復させられる正真正銘の妖力補給所であり極楽浄土である。
「西国の露天風呂なら思う存分妖力を回復させられるのよね…」
「西国は俗界の温泉郷ですからね…」
西国は天球神国唯一の温泉郷であるものの…。不運にも東国から田舎村の西国は遠距離である。
「距離的にも西国は遠距離なのよね…」
困惑し続ける桜花姫と三蔵郎であるが二人の背後より百鬼食人餓鬼が接近する。
「桜花姫様!?百鬼食人餓鬼ですよ!」
「私達を追尾したのね…」
(如何やら私達に選択肢は皆無みたいだわ…)
桜花姫と三蔵郎は一目散に逃走したのである。
「三蔵郎様…超特急で西国に戻りましょう…」
桜花姫は一時的に撤収を決意する。
「承知しました!」
二人は恐る恐る悪霊の襲撃を警戒するなり獣道にて西国へと全力疾走したのである。親玉の百鬼食人餓鬼は勿論…。食人餓鬼の身動きは非常に鈍足であり彼等から追尾されなかったのである。
メンテ
桜花姫※リメイク ( No.64 )
日時: 2021/08/30 08:47
名前: 月影桜花姫

第九話

反撃

同時刻…。北国のとある山道では旅先にて蛇神の蛇骨鬼と山猫妖女の小猫姫が食人餓鬼の大群に追尾されたのである。
「ぐっ!」
「蛇骨鬼婆ちゃん!大丈夫!?」
蛇骨鬼は北国の山奥にて食人餓鬼の大群から逃走中…。極度の腰痛により身動き出来なくなる。獣道にて蛇骨鬼は横たわる。
「畜生…」
(こんな状況下で腰痛なんて…)
すると彼女達の背後より無数の食人餓鬼が急接近したのである。
(私の命日かね…)
「本日で神族も全滅かも知れないね…」
蛇骨鬼は覚悟する。すると小猫姫は無表情で…。
「蛇骨鬼婆ちゃん…私…」
「小猫姫?」
小猫姫の体内より強大化した妖力を感じる。
「小猫姫!?」
(小猫姫から妖力を感じる…)
小猫姫の皮膚から蛍光色の秘められた妖力が表面化する。
「小柄の小猫姫に…こんなにも潜在的妖力が…」
(ひょっとすると小猫姫は妖力だけなら幼少期の桜花姫ちゃんに匹敵するかも知れないね…)
蛇骨鬼は小猫姫の潜在的妖力に驚愕したのである。すると小柄の小猫姫は肉体が変化するなり…。伝説の妖獣へと変化したのである。
「ひょっとして伝説の…妖獣!?」
(子供の小猫姫が…伝説の妖獣に変化出来るなんて…)
小猫姫の潜在能力に蛇骨鬼は勿論…。悪霊の食人餓鬼でさえも伝説の妖獣へと変化した小猫姫を直視するなり一瞬後退りしたのである。
「あんた達!蛇骨鬼婆ちゃんには…手出しさせないからね!覚悟しなよ!」
伝説の妖獣に変化した小猫姫は食人餓鬼の大群へと突進…。真正面に位置する数体の食人餓鬼を撃退する。極度に腐敗した食人餓鬼の肉体は非常に脆弱であり伝説の妖獣に変化した小猫姫が力一杯突進すると容易に粉砕されたのである。食人餓鬼の大群が再度小猫姫に殺到するものの…。小猫姫は口先を開口すると体内の妖力を凝縮させる。すると直後…。口先から高熱の雷球を射出したのである。高熱の雷球により獣道は焦土化…。一瞬で食人餓鬼の大群を消滅させ獣道の推定二町の界隈が焦土化したのである。圧倒的妖力により食人餓鬼の大群を消滅させた小猫姫であるが…。莫大なる妖力の消耗により小猫姫は元通りの姿形に戻ったのである。
「はぁ…はぁ…」
彼女は精神的にも肉体的にも疲弊したのか地面に横たわる。
「小猫姫!?大丈夫かい!?」
すると小猫姫は疲れ果てた表情で返答する。
「蛇骨鬼婆ちゃん…私なら大丈夫だよ…疲れ果てただけだから…」
「小猫姫…」
小猫姫の様子に蛇骨鬼は一安心したのである。
「桜花姫姉ちゃんは…大丈夫かな?」
彼女は桜花姫が大丈夫なのか非常に気になる。
「桜花姫ちゃんなら小猫姫が心配しなくても大丈夫だよ♪桜花姫ちゃんの場合妖女は妖女でも最上級の妖女だからね♪彼女の妖力は其処等の妖女とは別格だよ…」
蛇骨鬼は笑顔で断言する。
「桜花姫姉ちゃんなら…大丈夫だよね♪」
「桜花姫ちゃん…彼女なら今頃は…」
同時刻…。桜花姫と三蔵郎は無事に西国へと到達する。
「如何やら西国に到達したみたいですね♪桜花姫様の祖国ですか?」
「勿論よ♪無事に西国に戻れたから一安心だわ…」
時間帯は真夜中であり物静かな暗闇の夜空を眺望すると桜花姫と三蔵郎は一安心したのである。
「夜空だわ…」
桜花姫は物静かな夜空を眺望したのである。すると三蔵郎が笑顔で…。
「田舎村の西国へは食人餓鬼の襲撃は皆無だったみたいですね♪桜花姫様の祖国が無事なので一安心ですよ♪」
「油断大敵だけれどね…西国は正真正銘武陵桃源だったみたいだわ…」
過疎地である西国は総人口も比較的少人数であり神出鬼没の食人餓鬼の大群も襲撃しなかったのである。桜花姫と三蔵郎は桜花姫の自宅の近辺に隣接する天霊山へと直行する。
「目的地の天霊山よ…」
「天霊山とは…こんなにも低山だったのですね…」
三蔵郎は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「ですが天霊山の露天風呂なんかで…消耗された妖力を回復させられるのですか?」
「天霊山の露天風呂は私達妖女にとって極楽浄土だからね♪天霊山の露天風呂なら消耗しちゃった妖力だって回復させられるわ♪」
天霊山は非常に物静かであるが桜花姫は極度に周囲を警戒…。恐る恐る天霊山の天辺へと到達したのである。天霊山の天辺中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「天霊山の露天風呂…本物の幻想郷みたいですね♪」
「天霊山は神秘の場所よ♪私にとって天霊山の露天風呂で入浴するのが毎晩の醍醐味だからね♪」
桜花姫は毎晩天霊山の露天風呂で入浴する。
「自然界での入浴とは非常に健康的ですからね♪」
すると彼女は人前であるものの…。特段気にならなかった様子であり突如として着物を脱衣したのである。
「なっ!?桜花姫様!?」
三蔵郎は公明正大に着物を脱衣する桜花姫に驚愕する。
「何かしら?三蔵郎様…」
桜花姫は無表情で返答したのである。
「桜花姫様…人前で何を!?」
彼女は平気そうな表情で…。
「何って…入浴するから着物を脱衣しただけよ…」
桜花姫は全裸の状態であり三蔵郎の表情が赤面する。すると赤面した三蔵郎の反応に桜花姫は笑顔で…。
「三蔵郎様は大袈裟ね♪」
桜花姫は赤面する三蔵郎の様子に微笑ましくなる。
(生真面目の三蔵郎様も悩殺しちゃったわね♪)
三蔵郎は人前で脱衣しても平常心である桜花姫に愕然とする。
「私にとって三蔵郎様は特別だから大丈夫なのよ♪別に全裸だからって私は気にしないから…」
「気にしないって…桜花姫様は正真正銘女性なのですよ…」
桜花姫は全裸の状態であろうとも平常心の様子である。
「私自身全裸でも気にならないのよね♪人前で全裸だからって何よ?三蔵郎様は大袈裟ね♪」
「妖女とは…」
(妖女って私達人間とは感覚が別次元なのでしょうね…)
三蔵郎は摩訶不思議の妖女が人間とは異質的であると再認識する。
「変化の儀式を発動するわよ…」
「変化の儀式ですと?」
すると桜花姫の全身の皮膚が虹色に変化したかと思いきや…。
「桜花姫様!?」
三蔵郎は強烈なる無数の発光体によって両目を瞑目させる。すると桜花姫の血紅色であった両目が瑠璃色へと変化したのである。直後…。彼女の下半身が銀鱗の大魚へと変化するなり人間の女性から美貌を感じさせる人魚の肉体へと変化したのである。黒毛の頭髪が銀髪へと変色する。
(えっ…桜花姫様が…)
「人魚に!?」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられるが自分自身の肉体をあらゆる動植物にも変化させられる。雰囲気の変化した彼女に三蔵郎は驚愕の様子であり…。内心人魚に変化した桜花姫に見惚れる。
「三蔵郎様♪如何かしら♪」
人魚に変化した桜花姫は普段の体格を一回り上回る巨体であり人魚の状態で入浴したのである。
(桜花姫様が人魚に変化出来る理由とは天道眼の効力なのでしょうか?)
「桜花姫様は人魚にも変化出来るのですね…」
「私の母様が人魚の血筋だからね♪」
彼女の母親である美海姫は純血の人魚であり桜花姫も美海姫の血筋により人魚に変化出来る。
「折角だし三蔵郎様も私と一緒に混浴しないかしら?適度の湯加減だし♪」
「えっ!?私が桜花姫様と混浴ですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。桜花姫に笑顔で歓迎されるものの…。今回ばかりは拒否したのである。
「桜花姫様…生憎ですが今回ばかりは私は遠慮しますよ…私は無事超常現象が解決してから桜花姫様と一緒に混浴でも♪」
三蔵郎は赤面する。
「三蔵郎様は遠慮深いのね♪」
桜花姫は満足気の様子であり度重なる悪戦苦闘によって消耗した妖力が体内に蓄積…。万全の状態へと戻ったのである。
(如何やら桜花姫様の妖力が回復したみたいですね…)
三蔵郎は露天風呂で水遊びする桜花姫を見守るものの…。
(今更なのですが…私も桜花姫様と一緒に混浴したかったな…如何して私は遠慮しちゃったのか…)
三蔵郎は後悔したのか無我夢中に水遊びする桜花姫の様子を注視し続けると内心彼女と混浴したくなる。
「天霊山の露天風呂は極楽浄土だわ…先程の悪戦苦闘が悪夢だったって感じられるのよね…」
桜花姫は真夜中の夜空を眺望する。
「ですが桜花姫様は今後如何されるのですか?食人餓鬼の大群は勿論ですが…百鬼食人餓鬼の暴走を黙殺し続ければ国全体が彼等に占拠されましょう…」
「体力と妖力を回復させたら即刻猛反撃するからね♪私が全身全霊で食人餓鬼の大群と百鬼食人餓鬼の大群を蹴散らしちゃうわよ!」
数分後…。露天風呂の効力によって桜花姫の妖力が完全に回復したのである。入浴終了後…。桜花姫は人魚の状態から人間の姿形へと元通りに戻ったのである。桜花姫は即座に脱衣した着物を着衣する。
「三蔵郎様…妖力は万全よ!万全の状態なら食人餓鬼の大群は勿論…百鬼食人餓鬼が襲撃したとしても撃退出来るわ!」
「如何やら本調子が戻ったみたいですね♪桜花姫様♪」
すると三蔵郎は突発的に彼女に提案したのである。
「桜花姫様?突発的なのですが別行動は如何でしょうか?」
「別行動ですって?」
「桜花姫様は東国の城下町に出現した食人餓鬼の大群と親玉の百鬼食人餓鬼の征伐に全身全霊を…私は彼等の大群が出現した主要因を徹底的に探索します…」
「百鬼食人餓鬼は勿論…東国の城下町には神出鬼没の食人餓鬼の大群が徘徊中なのよ…人間の三蔵郎様が単独で出歩くのは自害するのと一緒だわ…」
桜花姫は非常に危惧するものの三蔵郎は大丈夫であると断言する。
「私は先程武器庫で無尽蔵の弾薬と護身用の連発銃を確保しましたからね♪私なら大丈夫ですよ…」
「悪霊が大群であれば即座に避難するのよ…三蔵郎様…」
「承知しました…桜花姫様…」
桜花姫の心配事を把握するなり三蔵郎は恐る恐る東国の城下町へと戻ったのである。桜花姫と三蔵郎は本格的に別行動を開始する。
「三蔵郎様は単独で大丈夫かしら…」
桜花姫は三蔵郎が単独で大丈夫なのか不安視したのである。桜花姫は天道眼を発動…。東国の中心街を徘徊する百鬼食人餓鬼の居場所を察知する。
「百鬼食人餓鬼の気配を感じるわ…」
百鬼食人餓鬼の霊力は規格外であり周辺には無数の食人餓鬼が徘徊中であるものの…。容易に居場所を特定化出来る。
「百鬼食人餓鬼だけは規格外だからね…霊力が目立ち過ぎだわ…」
(霊力が強力だから容易に居場所を特定化出来るのよね♪)
桜花姫は即座に東国へと直行する。獣道にて徘徊中の無数の食人餓鬼に遭遇するものの即座に念力の妖術を発動…。容易に彼等を蹴散らせる。
「周辺の妨害者達が鬱陶しいわね…」
無数の食人餓鬼が大勢で殺到するものの…。彼女の本体に接触する直前に彼等の肉体が念力の妖術によって粉砕されたのである。露天風呂の効力からか先程よりも桜花姫の妖力が増強化する。数分後…。
「百鬼食人餓鬼は中心街で徘徊中ね…」
桜花姫は東国の中心街へと到達する。
(百鬼食人餓鬼は私が仕留めるからね♪)
「覚悟しなさいよ…」
桜花姫は恐る恐る東国の中心街へと潜入したのである。
「村人達だわ…」
(非常に心苦しいわね…)
農村地帯は食人餓鬼の襲撃によって惨殺された村人達の血肉やら無数の肉片が散乱する。
「彼等は食人餓鬼の襲撃によって惨殺されたのね…」
すると横たわった村人達が突発的に身動きし始めたのである。彼等は通行中の桜花姫に殺到する。
「きゃっ!」
桜花姫は咄嗟に念力の妖術を発動…。
「死滅しなさい!」
殺到する村人達の腹部を念力の妖術で粉砕したのである。村人達を仕留めたかと思いきや…。
「えっ!?」
上半身のみで身動きするなり桜花姫に急接近する。
(上半身のみで身動き出来るなんて…)
即座に念力の妖術を再活用するなり食人餓鬼へと変化した村人達の頭部を粉砕…。すると頭部を粉砕された影響からか村人達は身動きしなくなる。
「脳味噌を粉砕しちゃえば身動き出来なくなるみたいね…」
如何して食人餓鬼によって殺害された村人達が突発的に身動きしたのか疑問視する。
「如何して食人餓鬼に食い殺された村人達が身動きしたのかしら…」
(ひょっとすると食人餓鬼に食い殺された人間も食人餓鬼として復活するのかしら?疫病みたいだわ…)
通常の食人餓鬼は捕食されても食人餓鬼には変化しなかったが今回の天災地変で出現した食人餓鬼は今迄に出現した食人餓鬼とは別物であり捕食…。殺害された人間も食人餓鬼として復活するのである。
「食人餓鬼に襲撃された人間達が食人餓鬼として復活するのであれば相当厄介だわ…」
最早祖国存亡の瀬戸際であり最悪の場合…。食人餓鬼の増大化による天球神国の滅亡が危惧される。
「東国は勿論…最悪天球神国が滅亡するかも知れないわね…」
すると突発的に胸騒ぎを感じる。
「霊力かしら!?」
彼女の背後には無数の人面が融合化した百鬼食人餓鬼が佇立する。
「百鬼食人餓鬼だわ…」
百鬼食人餓鬼の無数の人面が桜花姫を睥睨の眼力で凝視するなり超高温の熱風を放射したのである。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。超高温の熱風から本体を防備したのである。
「危機一髪ね♪」
天道眼の効力により百鬼食人餓鬼の頭頂部から雷撃の妖術を発動する。
「死滅しなさい!百鬼食人餓鬼…」
すると高熱の落雷によって地面は陥没…。百鬼食人餓鬼の肉体が粉砕される。
「仕留めたかしら?」
落雷で粉砕された無数の肉片が小柄の人間体を形作るなり無数の食人餓鬼へと分裂したのである。
(粉砕された肉片が食人餓鬼に分裂したのね…)
桜花姫は超高温の火炎の妖術を発動…。分裂した食人餓鬼の大群を火炎の妖術で焼殺する。
「亡者達…成仏しなさい…」
火炎の妖術により数秒間で食人餓鬼の大群は完全焼失したのである。
「焼失したわね…楽勝だったわ♪」
桜花姫は手応えを感じる。
「三蔵郎様は大丈夫かしら?」
桜花姫は三蔵郎が無事なのか如何なのか非常に気になる。
メンテ
桜花姫※リメイク ( No.65 )
日時: 2021/08/30 08:47
名前: 月影桜花姫

第十話

仙女

同時刻…。三蔵郎は無事に東国へと到達したのである。各家屋敷の路地裏を通行中…。とある血塗れの女性と遭遇したのである。三蔵郎は恐る恐る…。
「大丈夫ですか?」
女性は無表情であり三蔵郎を凝視し続けるだけである。
「如何されましたか?」
(不吉ですね…)
女性の様子に三蔵郎は非常に気味悪くなる。すると数秒後…。無表情の女性は突発的に卒倒したのである。
「うわっ!」
驚愕した三蔵郎は恐る恐る横たわった彼女の皮膚に接触するなり…。
「如何やら失血死したみたいですね…」
(悪霊によって殺害されたのでしょうか…無念です…)
数秒後に失血死した女性が佇立したのである。すると数秒後…。女性の肉体が一瞬で腐敗したのである。
「肉体が一瞬で腐敗するなんて…」
三蔵郎は気味悪がる。横たわった女性の肉体が腐敗したかと思いきや…。
「此奴は食人餓鬼!?」
腐敗した彼女の体内から小柄の食人餓鬼が出現したのである。
(ひょっとして食人餓鬼によって殺害された人間は食人餓鬼として復活するのでしょうか?)
突如として女性の体内から出現した食人餓鬼が三蔵郎に近寄るものの…。三蔵郎は即座に護身用の連発銃で食人餓鬼の頭部を狙撃したのである。すると頭部を狙撃された直後に食人餓鬼は身動きしなくなる。
「疫病みたいですね…」
すると背後に無数の殺気を感じる。
(殺気!?)
恐る恐る背後を警戒するなり…。
「食人餓鬼と…村人達でしょうか?」
無数の食人餓鬼と血塗れの村人達が大勢で山奥へと移動する。
「彼等の目的地は一体?」
彼等の行動が気になった三蔵郎は彼等の背後から恐る恐る追尾したのである。数分後…。三蔵郎は日和山と命名される低山へと到達したのである。日和山の天辺には虹色に発光する摩訶不思議の広葉樹が確認出来る。
「摩訶不思議の広葉樹ですな…」
すると無数の食人餓鬼と血塗れの村人達が虹色に発光する広葉樹の表面へと殺到したのである。すると広葉樹の表面から無数の触手が出現するなり…。樹木の表面に密着する食人餓鬼と血塗れの村人達は広葉樹から出現した触手によって肉体諸共捕食されたのである。
「広葉樹が食人餓鬼と村人達を捕食するなんて…樹木の悪霊でしょうか…」
数秒後…。広葉樹の表面より無数の食人餓鬼の集合体である百鬼食人餓鬼が二体も出現したのである。
「百鬼食人餓鬼!?」
(悪霊の親玉が二体も出現するなんて…)
三蔵郎は気味悪がるなり恐る恐る後退りしたのである。すると突然…。金縛りによって身動き出来なくなる。
「ぐっ!」
(一体何が!?身動き出来なくなるなんて…)
三蔵郎は身動き出来なくなった状態から突発的に衰弱化したのである。
(突然眠気が…桜花姫様…)
同時刻…。三蔵郎の気配を感じられなくなった桜花姫は即座に東国近辺に位置する日和山へと急行する。
「突然三蔵郎様の気配が感じられなくなったわ…三蔵郎様は一体何に遭遇しちゃったのかしら?」
低山の日和山から食人餓鬼の無数の霊力とは別物の神通力を感じる。
「食人餓鬼の霊力なら感じるけれども…」
(中心部から百鬼食人餓鬼を上回る霊力?神通力を感じるわ…神通力の正体は何かしら?)
すると桜花姫の背後より無数の食人餓鬼は勿論…。二体の百鬼食人餓鬼が出現したのである。
「百鬼食人餓鬼が二体も出現するなんて…」
食人餓鬼の大群と二体の百鬼食人餓鬼が桜花姫に殺到する。
「鬱陶しい奴等だわ…多勢に無勢なら♪」
こんなにも絶体絶命であるものの…。桜花姫は平常心の様子である。
「あんた達…桜餅に変化しなさい♪」
桜花姫は変化の妖術を発動するなり無数の食人餓鬼は勿論…。二体の百鬼食人餓鬼を自身の大好物である桜餅に変化させる。
「美味しそうだわ♪消耗しちゃった妖力を回復させられるわね♪」
桜花姫は無尽蔵の桜餅を頬張る。
「美味しいわね♪」
無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「三蔵郎様の安否を確認しないと!」
すると彼女の背後より四人の匪賊達が近寄る。
「よっ♪花魁の姉ちゃんよ♪」
「あんた達は…何者よ?私は十中八九普通の小町娘だからね…花魁なんかと勘違いしないでよね…」
接触する匪賊達に苛立ったのである。
(面倒臭いわね…ひょっとして匪賊達かしら?こんな場所で匪賊と遭遇するなんて私も不運だわ…)
彼等の装備品は刀剣やら携帯式の連発銃であり桜花姫は警戒するなり恐る恐る後退りする。
「不用意に警戒しなくても大丈夫だよ♪大人しく金品を手渡しちゃえば小町娘の姉ちゃんには手出ししないからよ♪」
「俺達は誰よりも温厚篤実の若侍だからな♪」
「あんた達が温厚篤実の若侍ね…」
(匪賊の分際で何が若侍よ…)
桜花姫は彼等を軽蔑するなり…。無表情で反論する。
「私はあんた達みたいな田舎侍とは大違いで常日頃から大忙しなの…殺されたくなければあんた達こそ逃走するのね…」
「はっ?殺されたくなかったらって…」
「俺達を田舎侍って軽蔑するなんて片腹痛いぜ♪小町娘の姉ちゃんよ♪」
「小町娘の姉ちゃんは余程の命知らずみたいだな♪」
彼等は桜花姫の発言に苛立ったのである。
「命知らずなのはあんた達でしょう?こんな天災地変なのよ…あんた達だって悪霊に食い殺されるかも知れないのに…」
桜花姫は無表情で反論する。
「如何やら本当に打っ殺されたいらしいな…」
「相手は所詮小娘!力尽くでも金品を強奪しちまえ!」
匪賊達は桜花姫に殺到したのである。
「鬱陶しい奴等だわ…」
桜花姫は即座に天道眼を発動…。
(雨蛙に変身しちゃえ♪)
変化の妖術によって巨漢の匪賊を微弱の雨蛙に変化させる。すると三人の匪賊達は桜花姫の妖術で雨蛙に変化させられた匪賊を恐る恐る凝視するなり…。驚愕したのである。
「ひっ!如何して人間が雨蛙に!?」
「妖術なのか…」
すると小柄の匪賊が恐る恐る…。
「ひょっとして貴様は…」
「私が誰かって?」
桜花姫は笑顔の表情で名前を名乗る。
「私は悪霊退治屋の桜花姫…月影桜花姫よ♪」
笑顔で名前を名乗る桜花姫に彼等は驚愕したのか恐る恐る後退りしたのである。
「なっ!?月影桜花姫って冗談だろ…」
「貴様が最上級妖女って噂話の…月影桜花姫なのか!?」
「本物かよ…」
匪賊達は後退りするものの…。中肉中背の匪賊が恐る恐る連発銃に弾丸を装填させる。
「狼狽えるな!桜花姫が最上級の妖女だとしても所詮は単なる小娘!連発銃で狙撃しちまえば最上級の妖女だって打っ殺せるさ…」
「如何やらあんたは余程の命知らずみたいね♪」
桜花姫は失笑する。
「桜花姫!覚悟しやがれ!」
匪賊は連発銃から弾丸を発砲したのである。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。妖力の防壁によって発砲された弾丸を無力化したのである。
「畜生が…此奴は妖術で弾丸を無力化しやがったか…」
桜花姫は不本意であるものの…。
(禁断の妖術…発動しちゃおうかしら♪)
匪賊の一人に禁断の妖術を発動する。
(飴玉に変化しちゃえ…)
すると連発銃を武装した匪賊が桜花姫の禁断の妖術によって彼女の大好きな飴玉に変化したのである。
「うわっ!人間が妖術で飴玉に変化したぞ…」
桜花姫は無表情で発言する。
「私に殺されたいのは誰かしら?」
彼等は桜花姫に戦慄する。
「ひっ!打っ殺されちまうよ!逃げろ!」
匪賊達は極度の恐怖心により一目散に逃走したのである。
「鬱陶しい奴等だったわ…」
匪賊達を撃退した桜花姫は摩訶不思議の神通力を目印に目的地の日和山へと到達したのである。
「虹色の広葉樹だわ…えっ?三蔵郎様!?」
天辺の中心部には虹色に発光した広葉樹と地面に横たわった三蔵郎らしき人物が確認出来る。桜花姫は警戒した様子で恐る恐る横たわった三蔵郎に近寄るものの…。
「三蔵郎様だよね…」
普段の温柔敦厚の三蔵郎とは別人であり非常に薄気味悪い雰囲気だったのである。不吉にも人間である三蔵郎の肉体から摩訶不思議の神通力を感じる。
「三蔵郎様の肉体から神通力を感じるわ…」
すると横たわった三蔵郎が恐る恐る目覚める。
「三蔵郎様!?大丈夫なの?」
三蔵郎は無表情で桜花姫を凝視するなり…。
「三蔵郎だと?人違いであるな…」
「えっ?」
三蔵郎の返答に桜花姫は困惑したのである。
(姿形は三蔵郎様でも…別人みたいだわ…)
地上界の聖人である三蔵郎であるが雰囲気の変化に桜花姫は後退りする。すると三蔵郎らしき人物は睥睨した表情で…。
「私は【霊魂巨神木】である…」
三蔵郎らしき人物は自身を霊魂巨神木と名乗る。
「霊魂巨神木ですって!?」
「僧侶の肉体に憑霊した…」
(霊魂巨神木って…大昔の伝承では世界樹だったかしら?)
霊魂巨神木とは森羅万象の造物主であり太古の古代人達の伝承では森羅万象の世界樹として認識される。
(こんな小山みたいな日和山に本物の世界樹と遭遇しちゃうなんてね…)
霊魂巨神木は太古の大昔に存在した樹木であり死滅した神族の鮮血を養分として誕生したのである。古代人達から森羅万象の創造主やら世界樹として神格化されたものの…。戦乱時代末期の出来事である。とある田舎村の病弱だった村娘が霊魂巨神木の果実を菜食…。人間の女性であった彼女は超自然の妖女へと覚醒するなり摩訶不思議の妖力を入手したのである。霊魂巨神木の果実を菜食した彼女こそが事実上妖女の元祖であり今現在では昔話として伝承される。
「造物主である私と対峙して正気を維持出来るとは…妖女は妖女でも貴様は最上級の妖女であるな…」
桜花姫は三蔵郎の肉体に憑霊した霊魂巨神木を睥睨するなり…。
「霊魂巨神木…三蔵郎様を元通りに戻しなさい!」
桜花姫は勇往邁進の気構えで断言する。
「妖女の小娘よ…僧侶の肉体を元通りに戻したければ私に協力しろ…」
「協力ですって?何よ?」
霊魂巨神木は一息したのである。
「貴様の妖術で…全世界の人間達を殲滅せよ…」
「はっ?」
霊魂巨神木の発言に桜花姫は呆れ果てる。
「貴様の妖力は非常に強力である…最上級妖女の貴様であれば一日に一国の人間達を全滅させられるだろう…」
桜花姫は苛立った表情で睥睨する。
「面倒臭いわね…誰があんたの協力なんて…人間達を殲滅したいのであればあんたが一人で実行すれば?」
「であれば貴様の僧侶は一生涯元通りには戻れない…」
「卑劣だわ…あんた…」
「貴様だって一緒だろ…」
桜花姫の卑劣の一言に霊魂巨神木は反論したのである。すると桜花姫は睥睨した表情で問い掛ける。
「如何してこんなにも無数の悪霊が俗界に出現したのよ?世界樹のあんただったら天災地変の主要因を特定出来るわよね?」
すると問い掛けられた霊魂巨神木は断言する。
「今回大勢の亡者達を俗界に口寄せしたのは私自身の神通力である…」
(霊魂巨神木が…)
「神通力って…あんたが黒幕だったのね!」
桜花姫は突如として表情が強張ったのである。
「今回私が大勢の亡者達を口寄せさせた主原因とは…所詮人間達の自業自得であるからな…」
「人間達の自業自得ですって?」
「愚劣なる人間達は戦乱時代以前の太古の大昔から同族同士で殺し合い…自然界の多種多様の動植物を殺戮し続けたからな…」
戦乱時代以前からも人間達は同族で紛争し合い…。殺し合ったのである。
「私は彼等の野蛮さと傲慢さにより愚劣なる俗界の人間達を見限ったのだ…」
表情が強張った桜花姫であるものの霊魂巨神木の発言に意気投合…。否定しなかったのである。
「霊魂巨神木…あんたの主義主張も理解出来るかも知れないわ…内心私自身も人間達は大嫌いよ…私自身も幼少期は周囲の村人達に妖女だからって迫害されたのよね…人間達って野蛮で強欲よね?」
今現在でこそ桜花姫は悪霊退治屋として各地方で活躍するが…。幼少期は一部の村人達から疫病神と嫌悪され迫害されたのである。
「私自身も人間なんて誰一人として信頼出来なかったわ…」
桜花姫は幼少期に一部の村人達による偏見…。迫害から人間達を憎悪したのである。
「無論である…人間とは醜悪なる生命体であるからな…」
霊魂巨神木は即答する。
「結局人間は誰も信頼出来なかったけれどね…」
「ん?貴様は何を発言したいのであるか?」
数秒後…。
「三蔵郎様…彼だけは私の唯一の理解者であり…私にとって唯一信頼出来る人間だったのよ…」
「僧侶が唯一の貴様の理解者であると?」
「私にとって三蔵郎様は家族同然なのよ!私の家族である三蔵郎様に手出しするなら言語道断!あんたが世界樹だからって手加減しないからね!」
「であれば折角の機会である…私と真剣勝負でも如何かな?最上級妖女の小娘よ…」
霊魂巨神木が真剣勝負を提案する。
「私があんたと真剣勝負ですって?」
「無論小娘が私に敗戦したならば…貴様の寿命を収縮させる…貴様が家族であると豪語する僧侶も未来永劫呪詛し続ける…」
すると桜花姫は恐る恐る霊魂巨神木に質問したのである。
「反対に私が…あんたとの真剣勝負に勝利出来たら如何するのよ?」
「小娘が私に勝利したならば貴様の寿命を収縮させないし…貴様が家族であると豪語する僧侶も呪詛から無条件に解放する…無数の悪霊による天災地変も無事終息させるぞ…」
桜花姫は一瞬度重なる悪戦苦闘により困惑するものの…。霊魂巨神木の提案を承諾したのである。
「私は全身全霊であんたを仕留めるからね!」
すると三蔵郎の肉体は脱力により横たわる。三蔵郎に憑霊した霊魂巨神木の神通力が本体である広葉樹に戻ったのである。
「如何やら手加減しなくても大丈夫みたいね♪」
桜花姫は即座に天道眼を発動…。
(火球の妖術で…)
火球の妖術を発動すると手首より超高温の発光体を形成したのである。
「死滅しなさい!」
発射された発光体は非常に特大であり霊魂巨神木の表面に直撃…。爆散したのである。
「直撃♪」
仕留めたかと思いきや…。霊魂巨神木は神通力の防壁によって直撃した超高温の発光体を無力化したのである。
(私の妖力を無力化するなんて…)
霊魂巨神木は無数の人魂を口寄せするなり融合化…。特大の鬼火を形作る。
「鬼火かしら…」
(死滅した人魂の集合体である…死滅せよ!)
霊魂巨神木の発動した鬼火は死滅した人魂の集合体であり桜花姫に放射したのである。桜花姫は即座に寒風を発動…。霊魂巨神木の鬼火を消失させる。
(寒風で私の鬼火を無力化するとは…)
周辺の地面より半透明の触手を無数に出現…。
「触手!?」
桜花姫は咄嗟に妖力の防壁を発動したのである。妖力の防壁を発動すると半透明の触手の無力化に成功する。
「危機一髪ね♪」
霊魂巨神木は精神感応により桜花姫の脳裏に伝達したのである。
(天道眼の防壁で私の神通力を無力化するとは…)
「霊魂巨神木!?精神感応かしら?」
(太古の大昔から数多くの妖女が伝説の瞳術である天道眼を保有したが…貴様に匹敵する妖女は誰一人として皆無であった…)
桜花姫も精神感応で返答する。
(勿論私は最上級の妖女だからね♪其処等の妖女とは別格なのよ♪)
(無論貴様は屈強の最上級妖女であるが…所詮肉体はか弱き小娘…森羅万象の造物主である私には勝利出来ないであろう…)
(私が勝利出来ないかは…)
両手より雷光の光線を発動…。霊魂巨神木の樹木に直撃させる。
(絶大なる雷撃であるが…)
桜花姫の発動した雷光の光線を吸収したのである。
(私には貴様程度の妖術は通用しないぞ…)
「一筋縄ではあんたは仕留められないわね…」
霊魂巨神木は金縛りにより桜花姫の身動きを封殺したのである。
「ぐっ!」
(ひょっとして金縛りかしら?)
桜花姫は霊魂巨神木の金縛りによって身動き出来なくなる。
(妖女の小娘よ…貴様の妖力を頂戴するぞ…)
地面より半透明の無数の触手が出現…。桜花姫の全身に接触する。
「きゃっ!」
(私の妖力が…)
半透明の触手によって身動き出来なくなった桜花姫は霊魂巨神木の吸収能力により体内の妖力が一瞬で消耗させられる。
「妖力が…」
(吸収されちゃうわ…衰弱死しちゃうかも…)
覚悟した直後である。周囲の自然林から一匹の白猫が出現…。
「えっ…」
(白猫!?)
白猫の目力により衝撃波を発生させたのである。直後…。無数の触手を消滅させる。
「きゃっ!」
衝撃波の発生に桜花姫は地面に横たわる。白猫の体内から妖力を感じる。
(白猫の体内から妖力を感じるわね…ひょっとして白猫の正体は妖女かしら?)
白猫が人間の少女の姿形へと変化する。
「ひょっとしてあんたの正体は…」
「桜花姫姉ちゃん…大丈夫?」
「あんたは山猫妖女の小猫姫!?」
白猫の正体は山猫妖女の小猫姫だったのである。小猫姫は変化の妖術によって白猫にも変化出来る。すると横たわった桜花姫の背後より大神族の蛇骨鬼が恐る恐る近寄る。
「桜花姫ちゃんよ…大丈夫かね?」
「蛇神の蛇骨鬼婆ちゃんも?」
「最上級妖女の桜花姫ちゃんがこんなにも衰弱化しちゃうなんてね…」
蛇骨鬼は特殊能力によって左手を白蛇に変化…。恐る恐る桜花姫の背中に接触したのである。
「妖力が戻ったわ…」
桜花姫の消耗した妖力を回復させる。
「命拾いしたね…桜花姫ちゃん…」
「感謝するわ…蛇骨鬼婆ちゃん♪小猫姫♪」
蛇骨鬼の特殊能力によって桜花姫の消耗した妖力は回復したのである。蛇骨鬼は恐る恐る霊魂巨神木を凝視するなり…。
(今回の相手は世界樹の霊魂巨神木だね…)
「こんな荒唐無稽の造物主を相手に真正面から真剣勝負なんてね…普通の妖女なら暴虎馮河だよ…」
「私は三蔵郎様を元通りに戻したかったのよ…」
「三蔵郎様だって?三蔵郎とは誰かね?」
「三蔵郎様は…」
蛇骨鬼は桜花姫の背後に横たわる三蔵郎を直視する。
「誰かと思いきや…男前の僧侶だね♪」
「私にとって三蔵郎様は人間では唯一の理解者だから…」
(彼が桜花姫ちゃんの理解者とはね…こんな世の中でも温柔敦厚の人間が実在するなんて…)
蛇骨鬼は微笑むなり…。
「人間を人一倍毛嫌いした桜花姫ちゃんが本心から一人の人間を救済したいなんてね♪小猫姫よ♪」
「何よ?蛇骨鬼婆ちゃん?」
「桜花姫ちゃんに協力しな♪」
小猫姫は大喜びで承諾する。
「勿論だよ♪私は桜花姫姉ちゃんに協力するよ♪」
小猫姫は体内の妖力を増強化させるなり伝説の妖獣へと変化したのである。伝説の妖獣に変化した小猫姫を凝視するなり桜花姫は驚愕する。
「小猫姫が伝説の妖獣に!?」
「私も変化出来るのよ♪桜花姫姉ちゃん!私と精一杯共闘しましょう!」
(小猫姫が伝説の妖獣に変化出来るなんてね…非常に心強いわ!)
「勿論よ♪小猫姫♪」
桜花姫と小猫姫の一枚岩に危惧したのか霊魂巨神木の神通力が先程よりも増大化したのである。
(天道眼の小娘は勿論…妖獣の小娘も出現するとは…)
天空全体が黒雲により覆い包まれる。
「先程よりも霊魂巨神木の神通力が増大化したわ…」
桜花姫は一瞬身震いしたのである。
「油断大敵よ…小猫姫…」
「桜花姫姉ちゃんこそ油断大敵だからね♪」
直後…。
「えっ!?雷撃だわ!」
すると強烈なる落雷攻撃が彼女達の直上より落下する。桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。霊魂巨神木の落雷攻撃を無力化したのである。小猫姫も雷光の防壁により霊魂巨神木の落雷を無力化する。
「死滅しろ!」
小猫姫は妖力を凝縮させるなり口先から高熱の雷球を発射したのである。小猫姫の高熱の雷球は霊魂巨神木の樹木表面に直撃するものの…。霊魂巨神木の吸収能力によって小猫姫の発射した高熱の雷球は無力化されたのである。
「私の妖力が吸収されちゃった…此奴は容易には仕留められないね!桜花姫姉ちゃん!」
「霊魂巨神木は本物の世界樹だからね…此奴には妖術は通用しないみたいよ…」
(私と小猫姫は妖力だけなら確実に霊魂巨神木を上回ったけれども…霊魂巨神木の吸収能力には妖術は無力化されるし…一体如何すれば霊魂巨神木を仕留められるのかしら?)
通常の妖術では無力化される霊魂巨神木に彼女達は困惑する。
「私にも此奴に対抗出来る神通力が扱えるなら…」
すると地獄耳の蛇骨鬼は桜花姫が口走った神通力の一言を傾聴するなり…。
「えっ?神通力だって?」
蛇骨鬼は頭陀袋からとある木材の破片を桜花姫に手渡したのである。
「えっ?何かしら?」
「何って…小面蜘蛛の肉片だよ♪」
蛇骨鬼は笑顔で木材の破片が小面蜘蛛の肉片であると即答する。
「げっ!小面蜘蛛の肉片ですって!?」
木材の破片が小面蜘蛛の肉片である事実に桜花姫は一瞬気味悪がる。
「桜花姫ちゃんよ…あんたも神通力を入手したかったら小面蜘蛛の肉片を頬張りな♪本来小面蜘蛛は霊魂巨神木の皮膚から形作られた能面だからね♪」
小面蜘蛛が誕生した経緯は不明であるが…。一説では古代の人間達によって迫害された神族の怨念が能面に憑霊した悪霊であるとも解釈される。
「小面蜘蛛の肉片を食べちゃえばあんたの天道眼を覚醒させられるかも知れないよ…」
「天道眼の覚醒ですって…」
(こんな老婆が小面蜘蛛の肉片を入手したとは…)
霊魂巨神木も小面蜘蛛の肉片を察知する。小面蜘蛛の肉片を手渡された桜花姫であったものの…。非常に困惑したのである。
(こんな代物…食いしん坊の私でも頬張りたくないわね…如何しましょう?)
生理的に小面蜘蛛の肉片を捕食したくない桜花姫であるものの…。
(一か八か…)
「桜餅に変化しなさい!」
変化の妖術を発動すると小面蜘蛛の肉片は桜花姫の大好きな桜餅に変化したのである。
「小面蜘蛛の肉片を…あんたの大好きな桜餅に変化させるなんてね…」
蛇骨鬼は苦笑いする。
「桜餅に変化しちゃえば小面蜘蛛の肉片だって吟味出来るからね♪」
桜花姫は変化の妖術で桜餅に変化した小面蜘蛛の肉片を一口で平らげる。
(所詮妖女の小娘が私の肉体の欠片である小面蜘蛛の肉片を捕食したとしても扱える神通力は微量…造物主の私には程遠い!)
霊魂巨神木は桜花姫を脆弱であると判断する。
「えっ?」
突如として桜花姫の肉体が粒子状の虹色の発光体に覆い包まれる。
「桜花姫ちゃん!?」
「桜花姫姉ちゃん!?」
蛇骨鬼と小猫姫は強烈なる虹色の発光体により瞑目したのである。すると数秒後…。無数の発光体の中心部より大日如来を連想させる巫女装束の女神が出現する。
「女神様かな?」
「えっ?あんたは仙女かね?」
巫女装束の女神の頭部には金無垢の金冠…。背中には大日如来を連想させる黄金色の輪光体が形作られる。蛇骨鬼と小猫姫は恐る恐る…。
「ひょっとしてあんたは…桜花姫ちゃんなのかい?」
「桜花姫姉ちゃんだよね?」
すると巫女装束の女神は背後の小猫姫と蛇骨鬼を直視するなり…。
「私よ…桜花姫よ♪」
蛇骨鬼は仙女へと覚醒した桜花姫に驚愕したのである。
「えっ…」
(桜花姫ちゃんが容姿端麗の仙女に覚醒するなんて…)
小猫姫は仙女の桜花姫に見惚れる。
「本物の女神様みたいだね♪桜花姫姉ちゃん♪」
「私が女神様なんて…小猫姫は大袈裟ね♪」
(私が女神様♪)
内心大喜びしたのである。
「私…普段よりも妖力が増強化したのかしら…」
霊魂巨神木は返答する。
(天道眼の覚醒によって小娘の体内の妖力が神通力に変化したが…貴様の体内の神通力は私よりも数段階下回る!所詮貴様はか弱き小娘…貴様程度の微弱の肉体では扱える神通力も微量である!造物主の私には程遠いぞ…)
「現段階の私だったら…圧倒的に劣勢かも知れないわね♪」
「えっ?桜花姫姉ちゃん?」
彼女は笑顔で背後の小猫姫を凝視するなり…。
「小猫姫♪」
「何よ?桜花姫姉ちゃん?」
「小猫姫…あんたの妖力を私に♪」
小猫姫は変化の妖術を解除するなり伝説の妖獣から本来の美少女の姿形へと戻ったのである。恐る恐る桜花姫の背中に接触する。すると桜花姫の吸収能力により小猫姫の莫大なる妖力が一瞬で消耗したのである。
「ぐっ!妖力が一瞬で…」
「御免あそばせ♪小猫姫…」
(小猫姫…あんたの妖力を頂戴するわね…此奴を仕留めるにはあんたの妖力が必要なのよ…)
桜花姫は謝罪する。小猫姫は非常に息苦しくなるものの…。
「私なら大丈夫だから…気にしないで…桜花姫姉ちゃん♪」
小猫姫は笑顔で返答したのである。
「感謝するわね♪小猫姫♪」
桜花姫に吸収された小猫姫の妖力は彼女の体内にて神通力へと変化する。すると桜花姫の神通力は先程よりも数段階増大化したのである。
(微弱であった小娘の神通力が造物主である私に匹敵?上回るなんて…)
急速に神通力が増大する桜花姫に霊魂巨神木は驚愕する。小猫姫の妖力によって桜花姫の神通力が霊魂巨神木を数段階上回ったのである。
「桜花姫ちゃんが天道眼の覚醒と小猫姫の妖力によって造物主である霊魂巨神木の神通力を上回るなんてね…」
(ひょっとすると彼女は…桜花姫ちゃんは正真正銘戦乱時代に実在した元祖妖女の再来なのかも知れないね…)
蛇骨鬼は桜花姫を見守るなり大昔の伝説を連想…。桜花姫が大昔に実在した元祖妖女の再来なのではと推測する。
「霊魂巨神木…あんたの本体から戦乱時代の無念の亡者達の霊力を感じるわ…」
桜花姫は瞑目するなり…。
「私があんたの本体に憑霊する亡者達を成仏させるわ…」
(仙術…『日輪光』!)
虹色の神通力を諸手に凝縮させるなり…。両手より虹色の発光体を射出する。桜花姫が発動させた虹色の日輪光は霊魂巨神木に直撃したのである。
(こんな微弱の小娘が…仙術である日輪光を発動させるとは…)
霊魂巨神木は咄嗟に神通力の防壁にて樹木本体を防備するものの…。仙女へと覚醒した桜花姫の日輪光は霊魂巨神木の神通力の防壁を容易に無力化する。防壁を無力化した日輪光は霊魂巨神木の表面に直撃したのである。すると樹木に憑霊した無数の亡者達の阿鼻叫喚が国全体へと響き渡る。
「ぐっ!」
「きゃっ!」
「小猫姫!?蛇骨鬼婆ちゃん!?」
霊魂巨神木の樹木本体に憑霊した無数の亡者達の阿鼻叫喚は蛇骨鬼と小猫姫は勿論…。各地の村人達をも卒倒させたのである。
(戦乱時代の亡者達は一筋縄では成仏出来ぬ!所詮小娘の貴様では…)
「沈黙するのね!」
桜花姫は即答する。桜花姫は全身全霊の神通力を発動…。
「戦乱時代の亡者達!好い加減成仏しなさい!」
全身全霊の神通力によって無念の亡者達の阿鼻叫喚を沈黙させたのである。数秒後…。
「はぁ…はぁ…」
神通力の消耗戦によって桜花姫は力尽きるなり地面に横たわる。桜花姫は仙女の状態から元通りの彼女に戻ったのである。霊魂巨神木からは醜悪なる亡者達の霊力は感じられない。すると霊魂巨神木は半透明の触手を発動…。
「霊魂巨神木…私を…如何するのよ…」
霊魂巨神木の触手が疲れ果てた桜花姫の皮膚に接触するなり消耗した妖力を回復させる。
(妖力が戻ったわ…)
「如何して私に妖力を…」
すると直後…。霊魂巨神木が樹木の状態から桜色の着物姿の女性に変化したのである。
「えっ!?あんたは樹木に憑霊する精霊かしら?」
(ひょっとして霊魂巨神木の正体は女体の精霊だったの?)
霊魂巨神木は桜花姫の質問に即答する。
(私の本来の姿形である…今迄は大勢の醜悪なる亡者達に憑霊されてより…本来の姿形には戻れなかった…)
霊魂巨神木の精霊は一息するなり…。
(貴様は戦乱時代の亡者達を無事に成仏させたからな…私は天道眼の所有者に無念の亡者達を成仏させたかった…)
「戦乱時代の亡者達…」
(大勢の成仏出来ぬ亡者達が私の体内に密集したからな…)
「ひょっとして今回の天災地変は…意図的に私の天道眼を覚醒させる魂胆だったのね…」
霊魂巨神木の精霊は恐る恐る返答する。
(人間達には傍迷惑だったかも知れないが…)
桜花姫は沈黙する。
(貴様にとって彼が…人間の僧侶が唯一の理解者なのか…)
桜花姫は地面に横たわった三蔵郎を凝視するなり即答したのである。
「勿論よ…あんたの神通力で三蔵郎様を元通りに戻しなさい…」
霊魂巨神木の精霊は返答する。
(貴様の僧侶を元通りに戻そう…貴様の神通力が…私の体内で忘却された戦乱時代の亡者達を無事成仏させられたからな…是非とも貴様には感謝しなければ…)
直後である。暗闇であった天空の黒雲も消失…。村里にて徘徊中だった食人餓鬼と百鬼食人餓鬼も霊魂巨神木の精霊の神通力によって白砂へと変化するなり成仏する。
(貴様の僧侶の肉体を無事元通りに戻した…天球神国の天災地変も終息させたからな…)
霊魂巨神木の精神感応が響き渡る。
(小娘よ…貴様の名前は?)
桜花姫は即答する。
「私は桜花姫…月影桜花姫よ…」
(月影桜花姫と名乗る妖女よ…貴様は天道眼を所有する唯一の妖女…天寿によって貴様の肉体が死滅したとしても極楽浄土の守護神として覚醒する…月影桜花姫とやら…太古の妖女は戦乱で荒廃化した天球神国に安寧秩序を樹立させた…貴様の神通力であれば一天四海全域の安寧秩序を樹立させられるかも知れないな…)
「私が極楽浄土の守護神?一天四海の安寧秩序ですって?」
(貴様は彼女の後継者に相応しいからな…月影桜花姫よ…)
直後…。霊魂巨神木の精霊が無数の粒子状へと変化するなり天空にて消滅したのである。
「霊魂巨神木が…」
(神通力が感じられなくなったわ…霊魂巨神木が消滅するなんてね…)
すると地面に横たわった三蔵郎は勿論…。卒倒した蛇骨鬼と小猫姫が目覚める。
「えっ?私は一体何を?」
「桜花姫ちゃん?」
「桜花姫姉ちゃん?」
「三蔵郎様!」
桜花姫は力一杯三蔵郎に密着する。
「ぐっ!桜花姫様!?突然如何されたのですか!?」
突然の出来事に三蔵郎は困惑したのである。
「桜花姫姉ちゃん!私にも♪」
小猫姫は桜花姫の胸元に力一杯密着する。
「小猫姫…妹分のあんたでもおっぱいに密着されちゃったら…私…」
桜花姫は赤面したのである。
「最上級妖女でも人間の混血である桜花姫ちゃんが…造物主の霊魂巨神木を仕留めるなんてね…」
桜花姫は一瞬困惑するものの…。恐る恐る返答する。
「仕留めたわよ…」
(桜花姫ちゃん…)
蛇骨鬼は桜花姫の様子から察知する。桜花姫は恐る恐る蛇骨鬼に問い掛けたのである。
「如何して蛇骨鬼婆ちゃんが小面蜘蛛の破片を?」
「西国の廃村で確保したのさ♪本来なら傷薬の原料品として役立てたかったけどね…」
「傷薬って…」
桜花姫は苦笑いする。
「私が神通力を扱えたのは小面蜘蛛の肉片を捕食したからなのよね♪小面蜘蛛の肉片を吟味しなかったら今頃私達は霊魂巨神木の悪霊に敗北したでしょうね…」
「こんな老婆の私でも桜花姫ちゃんに役立てたみたいだね♪」
蛇骨鬼は微笑む。すると小猫姫も桜花姫に密着した状態で…。
「私だって桜花姫姉ちゃんに協力したよ!私も役立てたでしょう!?桜花姫姉ちゃん!?」
「勿論小猫姫もね♪」
桜花姫は瞑目するなり恐る恐る小猫姫に接吻する。
「桜花姫様!?」
「桜花姫ちゃん!?」
三蔵郎と蛇骨鬼は驚愕したのである。桜花姫に接吻された小猫姫は無言で赤面するなり…。
「えっ!?」
(桜花姫姉ちゃん…)
彼女の身体髪膚が膠着化したのである。すると三蔵郎が恐る恐る…。
「談笑中に大変失礼なのですが…」
「何よ…三蔵郎様?」
「先日なのですが…私の隣人から良質の白米たっぷりの米俵と猪肉を提供されましてね♪是非とも今晩は私の寺院で食事しませんか?」
蛇骨鬼と小猫姫が反応する。
「食事だって♪私達も大丈夫かい♪」
「猪肉♪私も食事したいよ♪」
「勿論ですとも♪是非とも蛇骨鬼様も小猫姫様も一緒に食事しましょう!」
蛇骨鬼と小猫姫は大喜びしたのである。
「勿論…桜花姫様も一緒に食事しましょう♪」
「私も食事させてね♪」
桜花姫は一息するなり恐る恐る三蔵郎に近寄る。
「桜花姫様?如何されましたか?」
すると三蔵郎の耳元で…。
「私はね…人間では誰よりも三蔵郎様が大好きなの♪」
(桜花姫様…)
三蔵郎は一瞬驚愕するものの笑顔で返答する。
「私にとって桜花姫様は愛娘同然ですからね♪」
「精一杯長生きしてよね…三蔵郎様♪」
「勿論ですとも!桜花姫様も精一杯長生きするのですよ…」
桜花姫と三蔵郎は握手したのである。
(私は長生きするからね…)
桜花姫は精一杯長生きしなければと決心する。
メンテ
桜花姫※リメイク ( No.66 )
日時: 2021/08/30 08:48
名前: 月影桜花姫

最終話

匪賊征伐

霊魂巨神木と無数の亡者達による天災地変から三週間後の早朝である。悪霊事件が解決してより天球神国に安寧秩序が戻ったものの…。南国の荒神山は極悪非道の匪賊達により牛耳られたのである。近頃匪賊達による悪巧みの噂話が国全体に出回る。噂話が気になった桜花姫は即座に南国の荒神山へと潜入したのである。
(荒神山では極悪非道の匪賊達が潜伏中みたいね…)
先日より桜花姫が荒神山に出没した悪霊の大群を仕留めて以降荒神山は元通りの観光地に戻ったものの…。近日では十数人の匪賊達により荒神山は完全占拠されたのである。桜花姫は南国の荒神山に到達するなり…。
「何かしら?」
周辺の自然林より無数の人間達の殺気を感じる。
「人間達の殺気を感じるわ…」
登山中に一瞬身震いするものの…。
「手出しするなら相手が人間でも私は手加減しないわよ!」
桜花姫は警戒した様子で荒神山の天辺へと突入したのである。
「天道眼…」
桜花姫は瞳術の天道眼を発動…。半透明の血紅色だった両目の瞳孔が瑠璃色の碧眼へと発光する。
「天道眼を発動するのは久方振りね…」
霊魂巨神木に憑霊した無数の亡者達よる悪霊事件が解決してからは毎日が平穏の日常であり摩訶不思議の超常現象も悪霊も出現しなかったのである。平穏の日常は桜花姫にとって極度の憂鬱であったものの…。
「退屈中だったし…私にとって今回の大騒ぎは絶好機なのよね♪」
彼女にとって匪賊達の征伐は久方振りの道楽であり内心大喜びしたのである。すると突然…。周辺の自然林より人間達の殺気を感じる。
「人間達の殺気だわ…」
突如として周辺より無数の火縄銃の弾丸が乱射される。
(敵襲かしら!?)
桜花姫は即座に妖力の防壁を発動…。火縄銃の弾丸を無力化したのである。近辺の地面には無数の弾丸が散乱する。
「陣地の見張り役は数人かしら?」
自然林から桜花姫を狙撃した見張り役の匪賊達は弾丸を無力化した彼女に戦慄したのである。
「畜生が…弾丸を無力化するなんて…」
「ひょっとして妖術で弾丸を無力化しやがったのか!?」
「如何やら侵入者は妖女みたいだな…」
匪賊達は恐る恐る後退りする。
「即刻本拠地に戻ろう…火縄銃では妖女は仕留められまい…」
天辺の本拠地に戻ろうかと思いきや…。
「ぎゃっ!」
突如として小柄の見張り役の頭部が肥大化したのである。周囲の匪賊達は肥大化した頭部を直視するなり戦慄する。
「頭部が…」
数秒後…。肥大化した頭部が破裂したのである。
「ひっ!」
「頭部が破裂しやがった!」
地面には無数の血肉やら脳味噌が散乱する。
「如何してこんな…」
「妖術で破裂させたのか!?」
戦慄した見張り役達は一目散に逃走したのである。数秒後…。桜花姫が自然林へと潜入する。
「如何やら見張り役は逃走しちゃったみたいね…えっ?」
地面に散乱した血肉やら脳味噌を直視するなり…。
(気味悪いわね…)
「桜餅に変化させちゃおうかしら♪」
桜花姫は変化の妖術によって散乱した見張り役の血肉を大好きな桜餅に変化させたのである。
「消耗しちゃった妖力を回復させなくちゃね♪」
散乱した桜餅を頬張るなり消耗した妖力を回復させる。
「妖力も万全だし♪本拠地に潜伏中の匪賊達を蹴散らせないと…」
桜花姫は荒神山天辺の本拠地へと進行したのである。すると背後より…。
「雑魚の分際で鬱陶しいわね…」
異国の洋弓銃を装備した匪賊が出現する。
「侵入者は毒死しやがれ!」
洋弓銃から猛毒の毒矢を発射するなり…。桜花姫に射撃したのである。
(毒矢かしら?)
即座に妖力の防壁を発動…。毒矢を無力化する。
「雨蛙に変化しなさい♪」
すると匪賊は変化の妖術によって雨蛙に変化したのである。
「私は常日頃から大忙しなのよ♪」
獣道を通行中…。獣道の道端で一休みしたのである。
「私だけで匪賊達を全滅させるのは片手間だけれども…」
一息するなり…。
「禁断の妖術…発動しちゃおうかしら♪」
神通力による禁断の妖術を発動したくなる。地面の石ころを直視する。
「口寄せの妖術…発動!」
すると数秒後…。地面の石ころが蛍光体に変化したのである。蛍光体の石ころが等身大の女体を形作るなり…。白装束の女性が地面に横たわったのである。白装束の女性が恐る恐る目覚める。
「えっ?私は…」
白装束の女性は寝惚けた様子であったものの…。
「えっ?誰かしら…」
女性は桜花姫と目線が合致する。
「ひっ!あんたは!?」
白装束の女性が桜花姫に気付いたかと思いきや…。桜花姫を直視すると彼女は極度に戦慄する。
「戦慄しなくても大丈夫よ♪私よ…桜花姫よ♪」
「あんたは…月影桜花姫!?」
「久方振りね…氷麗姫♪元気そうで安心したわ♪」
口寄せの妖術によって俗界に口寄せされたのは数週間前の戦闘で桜花姫の変化の妖術により食い殺された粉雪妖女の氷麗姫だったのである。
「如何してあんたが!?私は桜花姫に捕食されて…食い殺されたのよ…」
「口寄せの妖術であんたを俗界に再臨させたのよ♪」
口寄せの妖術とは伝説の瞳術である天道眼と造物主の神通力を保有する妖女のみが使用出来る前代未聞の禁断の妖術…。所謂時空間妖術の一種であり黄泉の国の死没者でさえも元通りに復活させられる。
「捕食された私を復活させるなんて…あんたは本物の女神様だね…」
氷麗姫は苦笑いしたのである。
「私が女神様なんて…氷麗姫は大袈裟ね♪」
氷麗姫の女神様発言に桜花姫は内心大喜びする。
(黄泉の国から死没者を簡単に復活させちゃうなんて…桜花姫は末恐ろしくなるわね…)
黄泉の国の死没者でさえも元通りに復活させた桜花姫を氷麗姫は戦慄したのである。
「如何してあんたみたいな小娘がこんなにも夢物語みたいな妖術が扱えるのよ?口寄せの妖術って禁断の妖術だったわよね?」
氷麗姫の質問に桜花姫は経緯を洗い浚い告白する。
「あんたが森羅万象の造物主である霊魂巨神木を仕留めちゃったの!?霊魂巨神木って世界樹だったわよね?」
桜花姫は笑顔で返答したのである。
「無論ね♪霊魂巨神木は仕留められたけれど私一人では断然勝利出来なかったわよ…妹分の小猫姫と一緒に共闘したのだけれどね♪」
「仲間と共闘したとしても結果的にあんたみたいな小娘が森羅万象の造物主に勝利しちゃったみたいだからね…私みたいな凡庸の妖女では到達したくても到達出来ない領域だわ…」
氷麗姫にとって今現在の桜花姫は異次元の存在であり自身が低次元の微生物であると感じる。すると桜花姫は一息するなり…。
「口寄せの妖術は莫大の妖力を消耗しちゃうわね♪普通の妖女なら過労死するかも知れないわ…」
口寄せの妖術は通常の妖術とは桁違いの妖力が必要不可欠であり唯一瞳術の天道眼と造物主の神通力を扱える妖女のみが使用出来る。大量の妖力を所持した妖女を復活させるのであれば莫大なる妖力を消耗…。場合によっては術者の過労死も否定出来ない。桜花姫は口寄せの妖術を駆使した影響により大量の妖力を消耗する。
「普通の人間とか悪霊なら極小の妖力でも復活出来るけどね♪死滅した妖女を元通りに復活させるのは最上級妖女の私でも一苦労だわ…」
(人間と悪霊なら極小の妖力で復活出来るの!?)
桜花姫の発言に絶句する。
(ひょっとして桜花姫は天道の化身かしら?)
氷麗姫は桜花姫の正体が天道の化身なのではと連想したのである。すると桜花姫は氷麗姫に問い掛ける。
「如何して氷麗姫は西国の廃村で村人達を氷結させちゃったのよ?」
氷麗姫は一瞬困惑するものの恐る恐る…。
「私の宿六が…不倫したからよ…」
「宿六の不倫ですって?」
「宿六の不倫に苛立って無関係の村人達を氷結させたの…」
「あんたは人騒がせな人妻ね…」
(完全に八つ当たりだわ…)
桜花姫は呆れ果てる。
「金輪際夫婦間の八つ当たりで無関係の人間には手出ししないのよ…」
桜花姫の警告に氷麗姫は恐る恐る承諾したのである。
「勿論よ…」
「苛立って無関係の誰かに手出しすれば今度こそ私が征伐するからね♪」
桜花姫は笑顔で断言する。不吉の笑顔で微笑む桜花姫に戦慄した氷麗姫であるが内心気恥ずかしくなったのか沈黙したのである。
「即刻本拠地に潜入しましょう♪」
「本拠地ですって?」
「荒神山を牛耳る匪賊達を徹底的に征伐するのよ♪勿論あんたも私に協力するわよね?」
氷麗姫は笑顔の桜花姫に戦慄する。
「勿論…私も協力するわよ…」
(折角元通りに復活出来たのに…桜花姫に協力しなかったら今回も食い殺されちゃうかも知れないからね…)
氷麗姫は折角第二の人生を満喫出来るのに殺されては元も子もないと感じる。氷麗姫は笑顔の桜花姫に身震いしたのである。
「勿論♪今回私が傍若無人のあんたを復活させたのは私自身の気紛れだからね♪」
桜花姫の傍若無人の一言に一瞬腹立たしくなる。
(傍若無人なのはあんただって一緒でしょうが!桜花姫!)
苛立った氷麗姫であるが堪忍する。
「先程の口寄せの妖術で私は空腹だし敵対視するのであれば即刻あんたを桜餅に変化させて食い殺しちゃうかも知れないわよ♪」
笑顔で発言する桜花姫に苛立つものの…。不本意であるが氷麗姫は桜花姫に服従したのである。
「別に敵対視しないわよ…裏切れば食い殺されるのは明白だし…」
「交渉成立ね♪」
桜花姫と氷麗姫は一致団結…。匪賊達の本拠地へと移動したのである。数分後…。彼女達は荒神山の天辺へと到達する。
「到達したわね♪」
「荒神山の天辺だわ…」
天辺の中心部には楼閣らしき家屋敷が確認出来る。
「家屋敷だわ…奴等の本拠地っぽいわね…」
「表門の門番は二人ね…」
家屋敷の表門には二人組の門番が見張り役として表門を警護する。
「門番を突破しちゃえば楽勝ね♪」
「如何するのよ?桜花姫?」
「勿論正面突破で門番達を仕留めるわよ♪」
「あんたらしいわね♪桜花姫♪」
彼女達は家屋敷の表門へと近寄る。すると桜花姫は笑顔で挨拶する。
「御免あそばせ♪」
「なっ!?貴様達は一体何者であるか!?」
表門の門番達は警戒するなり即座に抜刀したのである。
「花魁かと思いきや…貴様は妖女であるな!?」
「先程の妖女の噂話とやらは事実であったか!」
桜花姫は笑顔で発言する。
「あんた達…私に殺されたくなければ即刻表門を開放しなさい♪」
「何を!小娘の分際で!」
「斬首されたいか!?小娘!?」
桜花姫の発言に苛立った門番達は桜花姫に殺到したのである。
「地上界の女神様のである私に小娘なんて…あんた達は余程の命知らずなのね♪」
即座に念力の妖術を発動…。門番達の肉体を破裂させる。
「ぐっ!」
「ぎゃっ!」
表門には彼等の血肉やら肉片が散乱する。
「桜花姫…あんたは相手が人間でも手加減しないのね…」
人間相手に手加減しない桜花姫に氷麗姫は気味悪がる。
「手加減するも何も…敵対者が人間だったとしても確実に仕留めるのが私だからね♪無論無抵抗の人間なら相手が匪賊だったとしても手出ししないから安心しなさい♪」
気味悪がる氷麗姫であるが…。桜花姫は笑顔で反論する。
「あんただって数週間前は八つ当たりで村人達を殺戮したでしょう♪私は八つ当たりでは相手が誰でも人間は殺さないからね♪」
桜花姫の反論に氷麗姫は沈黙したのである。
「一休みしましょう♪私は空腹なので♪」
桜花姫は変化の妖術を発動するなり…。散乱した門番達の血肉を無数の桜餅に変化させたのである。
「えっ!?人間の血肉が桜餅に!?」
(半年前は私自身も桜花姫の変化の妖術で桜餅に変化させられて食い殺されたのよね…)
氷麗姫は数週間前の出来事を想起するなり身震いする。
「消耗した妖力を回復させないと♪」
桜花姫は極度の空腹であり散乱する桜餅を無我夢中に頬張る。
「桜餅でも本来は人間の血肉なのよ…笑顔で頬張れるなんて…」
桜花姫の悪食に氷麗姫は気味悪くなる。
「人間の血肉でも妖術で変化させれば気にならないから大丈夫よ♪折角だから氷麗姫も一緒に味見しない?」
「私は味見したくないわ!」
(人間の血肉なんて桜餅でも食べたくないわね…)
氷麗姫は断然拒否する。数分後…。
「美味だわ♪」
桜花姫は表門に散乱した無数の桜餅を平らげたのである。
「数分間で無数の桜餅を平らげるなんて…」
数分間で無数の桜餅を桜花姫に氷麗姫は苦笑いする。
「妖力も回復出来たし♪」
「匪賊達を蹴散らせるのよね?」
「今回は普通に蹴散らせるのは面白くないから…」
「如何するのよ?」
桜花姫は地面の石ころを凝視するなり…。
(口寄せの妖術…発動!)
桜花姫は口寄せの妖術を再発動する。口寄せの妖術を発動すると地面の石ころが蛍光体へと変化したかと思いきや…。一瞬で人間の姿形を形成したのである。数秒後…。先程念力の妖術で仕留めた門番の一人を元通りの姿形に復活させたのである。
「えっ!?先程仕留めた人間の門番だわ!ひょっとして彼も口寄せの妖術で復活させたの!?」
問い掛ける氷麗姫に桜花姫は笑顔で即答する。
「勿論よ♪彼も私が口寄せの妖術で復活させたのよ♪口寄せの妖術は普通の人間は当然♪普通の悪霊程度なら微量の妖力で復活させられるから非常に便利でしょう♪」
口寄せの妖術は同種の妖女を復活させた場合妖力の消耗は通常の妖術よりも桁外れであるが人間は勿論…。通常の悪霊を復活させるには微量の妖力のみで復活させられる。
(こんな荒唐無稽の小娘が夢物語みたいな非人道的妖術を自由自在に扱えるなんて…)
黄泉の国からの死没者さえ元通りに復活させる口寄せの妖術に氷麗姫は再度末恐ろしくなる。
「えっ?如何しちゃったのかしら?門番は喋らないし無反応だわ…」
元通りに復活させた門番であるが…。沈黙した様子であり何一つとして身動きしない。
「身動きしないわよ…無表情の雛人形みたいね…」
「勿論♪身動き出来ないし彼自身は単なる傀儡人形だからね…」
本来口寄せの妖術で復活させた対象者は妖術を発動した使用者の傀儡人形として扱われる。無論対象者の自我は妖術の使用者に掌握…。妖術の使用者が掌握を軽減化させなければ復活した対象者は単なる手駒であり姿形が生身の傀儡人形同然である。
「あんたが意思表示を表現出来るのは私が掌握を軽減化しただけだからね♪本来なら口寄せの妖術で復活させた氷麗姫だって私の傀儡人形なのよ♪」
復活させた門番は微量の妖力で形作られた不良品であり姿形は元通りでも自我は皆無であり彼自身は自己の意思表示は出来ない。すると桜花姫は復活した門番に問い掛けたのである。
「あんた達の家屋敷では何人の匪賊達が潜伏中なのかしら?」
桜花姫の質問に門番は的確に即答する。
「本拠地には守備隊が十三人…地下壕の牢獄には六人の見張り役が四人の村娘達を監禁中である…」
「村娘ですって?」
村娘の一言が気になったのか桜花姫は門番に再質問したのである。
「村娘って何よ?」
「南国の各村落から四人の村娘達を連行した…」
「如何してあんた達は村娘を四人も連行したのよ?」
門番は一瞬沈黙するなり…。
「連行した村娘達は異国に身売りされるからな…」
「身売りですって…」
門番の発言に彼女達は一瞬絶句する。
「ひ弱の女性を異国なんかに身売りさせるなんて極悪非道だわ…」
「今時身売りなんて完全に時代錯誤ね…」
桜花姫は勿論…。氷麗姫さえも腹立たしくなる。
「桜花姫…即刻彼女達を救出しましょう!」
「勿論よ!今回ばかりは地上界の女神様である私でも腹立たしくなったわ!」
(無慈悲のあんたが地上界の女神様って自称しちゃうなんて…)
氷麗姫は自分自身を地上界の女神様と自称する桜花姫に一瞬苦笑いしたのである。すると桜花姫は門番に接触するなり…。
「あんたは即刻本拠地に潜伏しなさい♪無事に潜伏出来たら匪賊の親玉諸共本拠地で自爆するのよ♪」
「えっ!?折角復活させたのに彼を自爆させるの!?」
桜花姫の自爆発言に氷麗姫は驚愕したのである。
「所詮門番は自爆要員だからね♪彼自身の自我は私が掌握したから意思表示も反論も出来ないわよ…」
桜花姫は再度門番に命令する。
「即刻あんたは本拠地に戻って親玉と部下の奴等諸共爆殺しなさい…勿論親玉には二人の妖女を仕留めたってちゃんと報告するのよ♪」
「承知した…」
桜花姫の命令を承諾した門番は表門から家屋敷へと入室…。家屋敷最上階の本拠地に戻ったのである。
「桜花姫…あんたも人一倍鬼畜ね…」
氷麗姫の発言に桜花姫は笑顔で即答する。
「無論私は敵対者には手加減しないからね♪手段が残虐非道でも敵対者は確実に仕留めるのが私だから…」
「あんたらしいわね♪桜花姫…」
氷麗姫は一瞬身震いするが笑顔で返答したのである。
「即刻監禁された女性達を救出しましょう♪」
彼女達は表門から恐る恐る家屋敷へと潜入する。
「屋敷内では人間達の気配は感じられないわね…」
周辺からは人間の気配も殺気も感じられない。
「門番の情報では連行された四人の村娘達の居場所は地下豪だったわね…」
すると通路の右側片隅に地下室への直階段を確認する。
「直階段だわ♪地下豪に潜入出来そうよ♪」
すると突然…。
「えっ!?」
(殺気かしら!?)
背後より殺気を感じる。
「桜花姫!敵襲よ!」
彼女達の背後には火縄銃を武装した匪賊が出現…。
「妖女!死滅しやがれ!」
桜花姫は背中を狙撃される。
「ぎゃっ!」
火縄銃で狙撃された桜花姫は多量の出血により横たわったのである。
「桜花姫!?大丈夫!?」
「氷麗姫…私…」
突発的出来事により氷麗姫は狼狽える。
「油断大敵ね…迂闊だったわ…ぐっ!」
桜花姫は吐血したのである。
「桜花姫!?」
(私は如何すれば…)
すると匪賊が狼狽える氷麗姫に近寄る。
「白装束の姉ちゃんよ♪即刻あんたも打っ殺すから覚悟しな♪」
氷麗姫は無表情で匪賊を睥睨するなり…。
「死滅するのはあんたよ…」
「はっ?」
氷麗姫は妖力により匪賊の肉体を一瞬で氷結させる。
「死滅しなさい!」
「なっ!?」
数秒後…。氷結された匪賊の肉体は一瞬で崩れ落ちる。
「桜花姫…大丈夫?」
氷麗姫は恐る恐る横たわった桜花姫に接触すると戦慄する。
「ひゃっ!」
(低体温だわ…)
桜花姫の肉体は非常に低体温であり氷麗姫は絶望したのである。
(最上級妖女の桜花姫が殺されちゃうなんて…)
絶望した直後…。突如として横たわった桜花姫の肉体から白煙が発生すると一瞬で消滅したのである。
「桜花姫!?」
突然消滅した桜花姫に氷麗姫は驚愕する。
「えっ?桜花姫の肉体は?」
すると背後より何者かが氷麗姫の背中に接触したのである。
「きゃっ!」
背中を接触された氷麗姫は驚愕する。
「氷麗姫♪」
「桜花姫!吃驚するじゃない!」
吃驚した氷麗姫は桜花姫に怒号したのである。
「御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「分身体だから大丈夫よ♪」
「分身体だったのね…」
先程狙撃された肉体が妖力によって形作られた桜花姫の分身体であり氷麗姫は一安心したのである。
「冷や冷やさせないでよ…一瞬あんたが本当に殺されちゃったのかと…」
「私に接吻したあんたが私を心配するなんてね♪感謝するわね♪」
すると氷麗姫は赤面した表情で否定する。
「勘違いしないで!私は別に…誰があんたの心配なんか…」
赤面した氷麗姫であるが…。彼女は無理矢理に表情を強張らせる。
(氷麗姫…表情を強張らせなくても…)
桜花姫は無理矢理に表情を強張らせる氷麗姫に苦笑いする。
「悪者はあんたが仕留めたみたいだから…即刻地下壕に潜入するわよ♪」
同時刻…。桜花姫の口寄せの妖術によって復活させられた門番は最上階の本拠地へと到達したのである。最上階には十三人の匪賊達と中心部には親玉らしき巨漢の無頼漢が集結する。
「ん?貴様は門番だな…何事かな?」
「二人組の妖女が出現してから随分大騒ぎみたいだが…通路は大丈夫なのかよ?」
門番は無表情で巨漢の無頼漢に報告したのである。
「親玉…」
「ん?」
門番は一息するなり…。
「噂話の二人組の妖女なら先程…俺が確実に仕留めたから安心しな…」
「妖女を確実に仕留めたって?」
匪賊達は門番が桜花姫と氷麗姫を本当に仕留めたのか疑問視する。
「貴様が二人組の妖女とやらを仕留めたのは事実であるか?」
「本当に妖女を仕留めたのかよ?」
「勿論…」
すると数秒後…。門番の体内から超高温の熱気が凝縮される。
「なっ!?此奴の体内から熱気だぞ…」
「一体何が!?」
直後…。門番の肉体が爆散したのである。
「うわっ!」
「ぎゃっ!」
門番の自爆によって周辺の匪賊達も爆殺される。家屋敷全域に爆発音が響き渡ったのである。同時刻…。地下豪では本拠地から響き渡った爆発音により六人の見張り役達が狼狽える。
「爆発音だと!?」
「最上階からだったよな…」
「如何して最上階から爆発音が…一体何が発生した!?」
連行された四人の村娘達も先程の爆発音に戦慄したのである。
「一体何かしら?」
「火薬の爆発音みたいね…」
「私達…こんな牢獄で殺されちゃうのかな…」
「私…こんな牢獄で死にたくないよ…」
彼女達は極度の戦慄により涙腺から涙が零れ落ちる。すると地下豪の鉄扉から二人組の妖女が潜入する。
「御免あそばせ♪」
笑顔で挨拶する桜花姫に見張り役達は戦慄したのである。
「うわっ!貴様達は!?」
「誰かと思いきや…貴様達は噂話の二人組の妖女だな…」
「如何して妖女が地下豪に潜入出来た!?」
「門番の奴等…警備をすっぽかしやがったのかよ!」
「結局俺達が尻拭いとは…」
桜花姫は笑顔で断言する。
「如何やらあんた達の門番が私達に寝返っちゃったみたいよ♪今頃仲間内で内輪揉めでしょうね♪」
「内輪揉めだって!?」
「門番が裏切りやがったのか!?」
問い掛けられた桜花姫であるが彼女は笑顔で…。
「さあね♪」
見張り役達は桜花姫の態度に苛立ったのである。
「此奴…」
「貴様出鱈目を…打っ殺されたいか!?」
桜花姫の返答に腹立たしくなった巨漢の見張り役が護身用の連発銃で桜花姫を狙撃…。
「桜花姫!?」
氷麗姫は畏怖したのである。狙撃された桜花姫であるものの…。危機一髪妖力の防壁を発動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
妖力の防壁により連発銃の弾丸を無力化…。氷麗姫は一安心する。
「あんたは本当に人騒がせね…」
「心配しなくても大丈夫よ♪氷麗姫♪」
見張り役達は恐る恐る後退りしたのである。
「畜生が…妖女の小娘は妖術で弾丸を無力化しやがったか…」
「弾丸では私は殺せないわよ♪私に手出ししたあんたは即刻招き猫に変化しなさいの♪」
桜花姫は変化の妖術を発動…。巨漢の見張り役を精巧に形作られた招き猫に変化させる。
「うわっ!人間が招き猫に!?」
見張り役達は勿論…。牢獄の村娘達も桜花姫の変化の妖術によって招き猫に変化させられた見張り役に驚愕したのである。
「人間が招き猫に変化するなんて…」
「妖術かしら?」
四人の村娘達は恐る恐る桜花姫に注目するなり…。
「えっ?ひょっとして彼女は…」
「西国の月影桜花姫様かしら?」
「月影桜花姫だって!?冗談だろ…」
小柄の見張り役は身震いするなり戦慄したのである。
「狼狽えるな!西国の月影桜花姫とて所詮は小娘!打っ殺しちまえ!」
見張り役達は連発銃で桜花姫に総攻撃するものの…。妖力の防壁によって連発銃の弾丸を無力化される。
「鬱陶しい奴等だわ…」
(飴玉に変化しなさい♪)
連発銃で狙撃した見張り役達を大好きな飴玉に変化させたのである。
「ひっ!」
唯一無抵抗だった小柄の匪賊が極度の恐怖心により落涙する。
「無事なのはあんただけね♪あんたは如何するかしら♪」
すると小柄の匪賊は恐る恐る…。
「俺は…降参するよ…」
匪賊は極度の戦慄により身震いしたのである。
「金輪際悪さしないから…今回は見逃して…」
身震いした様子で一歩ずつ後退りする。
「別に…私は誰よりも温厚篤実の女神様だからね♪匪賊でも無抵抗の人間には手出ししないから安心しなさい♪」
即座に匪賊の装備品を飴玉に変化させる。
「狙撃したくても出来なくなったわね♪」
桜花姫は牢獄を直視するなり…。
「即刻彼女達を救出しないと♪」
すると氷麗姫が牢獄の鉄格子に接触する。
「えっ?氷麗姫?如何するのよ?」
「桜花姫…私にも役立たせてよ…」
(彼女なりの罪滅ぼしかしら♪如何やら彼女も役立ちたいみたいね♪)
「承知したわ♪氷麗姫…思う存分役立ちなさい♪」
桜花姫は笑顔で承諾したのである。氷麗姫は四人の村娘達に警告する。
「あんた達…村里に戻りたかったら鉄格子には接触しないのよ…」
「承知しました…」
彼女達は恐る恐る後退りしたのである。すると氷麗姫は鉄格子に接触するなり…。一瞬で氷結させたのである。
「鉄格子が…」
「氷結するなんて…」
四人の村娘達は驚愕する。すると数秒後…。妖術で氷結させた鉄格子が一瞬で崩れ落ちる。
「鉄格子が崩れ落ちたわ…」
「私達…村里に戻れるのね♪」
解放された四人の村娘達は大喜びしたのである。
「桜花姫様と…誰でしたっけ?」
「私は氷麗姫よ…」
「氷麗姫様♪」
「大変感謝します♪桜花姫様と氷麗姫様が参上されなかったら私達は今頃異国に身売りされたかも知れません…」
桜花姫は笑顔で断言する。
「別に…あんた達が無事なのが何よりよ♪匪賊達を征伐するのも案外面白かったし♪」
「えっ?面白かったのかな?」
氷麗姫は笑顔で発言する桜花姫に苦笑いしたのである。
「あんた達…即刻地下壕から脱出しましょう♪」
すると氷麗姫が警戒した表情で…。
「油断大敵だよ…桜花姫…匪賊の残党が屋敷内に潜伏中かも知れないし…」
桜花姫は笑顔で即答する。
「心配しなくても大丈夫よ♪氷麗姫♪匪賊の残党が襲撃したとしても私が即刻仕留めちゃうから♪」
彼女達は警戒した様子で恐る恐る地下壕から脱出する。無事に匪賊達の家屋敷から脱出したのである。
「私達…戻れたのね…」
「無事に戻れるなんて…」
四人の村娘達は涙腺から涙が零れ落ちる。
「桜花姫様…氷麗姫様…貴女達には大変感謝します…」
「私達…貴女達に何も謝礼が出来なくて御免なさいね…」
彼女達は桜花姫と氷麗姫に謝罪する。
「別に謝礼なんて…」
謝罪された桜花姫は困惑するものの…。
「別に気にしないの♪私にとって匪賊征伐は道楽だから♪所詮夜遊びと一緒だからね♪あんた達は気にしなくても大丈夫なのよ♪」
事実桜花姫にとって悪霊征伐も匪賊征伐も娯楽であり報酬は不要である。匪賊征伐を夜遊びと断言する桜花姫に氷麗姫は苦笑いする。
(匪賊達を征伐するのが道楽って…桜花姫は人一倍異端者だわ…)
桜花姫は異端者であると感じる。
「あんた達…無事に戻りなさいね♪」
「承知しました♪」
「達者でね♪」
「桜花姫様と氷麗姫様も♪」
四人の村娘達は恐る恐る南国の村里へと戻ったのである。桜花姫は背後の氷麗姫を直視するなり…。
「氷麗姫…あんたは今後如何するのよ?」
「桜花姫…私は…」
氷麗姫は一瞬沈黙するも笑顔で返答する。
「今回あんたと一緒に行動してから…私もあんたみたいに悪霊とか匪賊を征伐したくなったわ♪」
笑顔で発言した氷麗姫に桜花姫は微笑む。
「氷麗姫♪あんたの妖力でも匪賊程度なら確実に仕留められるでしょうね♪精一杯頑張りなさい♪」
「私も…八つ当たりで大勢の人間達を殺しちゃったからね…精一杯贖罪しないと!」
「反省したのね♪氷麗姫…」
改心した氷麗姫に感心する。
「桜花姫♪今回はあんたの気紛れかも知れないけれどね…感謝するわね♪」
「氷麗姫…」
(本来なら口寄せの妖術は非人道的妖術かも知れないけれど…結果的に悪くなかったのかも知れないわね♪)
数週間前は敵対者だった氷麗姫の変貌に一瞬驚愕するものの…。口寄せの妖術で復活させられたのは怪我の功名であると氷麗姫は感じる。
「私は第二の人生…精一杯長生きするからね…桜花姫♪」
断言する氷麗姫に桜花姫も笑顔で返答する。
「私もね♪」
数分後…。
「私は北国に帰郷するわね…」
「達者でね♪」
彼女達は解散したのである。帰宅中…。
(久し振りに東国の三蔵郎様に挨拶しましょうかね♪)
桜花姫は久方振りに東国の三蔵郎の寺院へと訪問する。二時間後…。桜花姫は東国の寺院に到達したのである。寺院の玄関にて桜花姫は笑顔で…。
「三蔵郎様♪」
桜花姫の美声に反応したのか三蔵郎は超特急で玄関口へと移動する。
「誰かと思いきや…月影桜花姫様でしたか♪久方振りですな♪」
三蔵郎は桜花姫との再会に大喜びしたのである。
「三蔵郎様♪元気そうで安心したわ♪」
「桜花姫様こそ元気そうで何よりですよ♪折角ですし…茶話会でも如何でしょうか♪」
三蔵郎は桜花姫を客室に案内するなり麦茶と牡丹餅を用意したのである。
「牡丹餅だわ♪美味そうね♪」
桜花姫は牡丹餅に大喜びする。
「桜花姫様が大喜びの様子なので一安心ですよ♪本来であれば桜花姫様の大好きな桜餅を用意したかったのですが…生憎桜餅は和菓子屋でも完売しちゃったみたいですね…」
恐る恐る謝罪する三蔵郎に桜花姫は笑顔で…。
「気にしないで三蔵郎様♪桜餅なら先程腹一杯平らげたから♪」
「頬張ったのですね…桜餅を頬張ったのであれば一安心です♪」
桜花姫は先程の出来事を三蔵郎に洗い浚い告白する。
「荒神山で匪賊達を征伐しに出掛けられたのですか!?連行された村里の女性達を無事に救出されたのですね…」
「面白かったわよ♪」
「ですが私も桜花姫様と一緒に行動したかったですよ…今回は非常に残念ですね…」
三蔵郎は非常に残念であると感じる。
「今回ばかりは敵対者が匪賊だったとしても相手は普通の人間だからね…正直聖職者の三蔵郎様は呼び辛かったのよ♪三蔵郎様は人一倍温柔敦厚で心配性だから悪霊は征伐出来ても人殺しなんて出来ないでしょう?」
桜花姫は笑顔で発言する。
「桜花姫様…」
(彼女は正真正銘…天球神国の女神様ですね♪)
桜花姫と三蔵郎は談笑し合ったのである。真夜中の出来事である。大騒ぎが鎮静化した真夜中の荒神山では蛇神の蛇骨鬼と山猫妖女の小猫姫が天辺へと到達する。
「なっ!?荒神山の天辺中心部にこんな家屋敷が築造されたなんて…」
「誰の家屋敷かな?」
すると家屋敷の表門に小柄の匪賊が横たわる。
「えっ?誰だろう?」
「ん?ひょっとして家屋敷の宿主かね?」
「大丈夫かな?」
蛇骨鬼は恐る恐る横たわる匪賊の若者に近寄る。匪賊の背中に接触するなり…。
「若者よ…大丈夫かね?」
接触しても匪賊は無反応である。
「如何やら気絶したみたいだね…」
「如何して表門で気絶しちゃったのかな?」
「私にも何が何やらさっぱりだね…」
すると数秒後…。気絶した匪賊が恐る恐る目覚める。
「ん?俺は…」
「目覚めたかね?若者よ…」
「大丈夫かな?」
匪賊は寝惚けた様子であったものの蛇骨鬼と小猫姫を直視した直後…。突如として身震いしたのである。
「ひっ!俺を食い殺さないで!」
彼女達を直視するなり非常に戦慄する。戦慄する匪賊に蛇骨鬼と小猫姫は驚愕したのである。
「如何しちゃったのかね?別に私達はあんたを食い殺したりしないよ…」
「心配しなくても私達は手出ししないから大丈夫だよ…」
蛇骨鬼は近寄るものの…。
「ひっ!鬼婆…俺に近寄るな!近寄らないで!」
匪賊の鬼婆発言に小猫姫は一瞬失笑する。
「蛇神の蛇骨鬼婆ちゃんに鬼婆だって♪蛇骨鬼婆ちゃん♪」
匪賊に鬼婆と発言された蛇骨鬼は身震いするなり…。力強く睥睨した表情で匪賊に怒号したのである。
「誰が鬼婆だって!あんたは私に食い殺されたいのかい!?」
「ひっ!失礼しました…女神様…」
「蛇骨鬼婆ちゃんが女神様って♪」
匪賊の女神様発言に小猫姫は大笑いする。
「金輪際悪さしないから俺を食い殺さないで…」
匪賊は恐る恐る後退りするなり…。落涙した様子で一目散に荒神山から逃走したのである。
「妖女は懲り懲り!」
全力疾走する匪賊に蛇骨鬼と小猫姫は非常に困惑する。
「一体何事だったのかね?」
「如何して逃走しちゃったのかな?」
「私が精霊だからかね?私にも何が何やら…」
「蛇骨鬼婆ちゃんに鬼婆とか女神様って失言しちゃったのは大笑いしちゃったよ♪」
揶揄する小猫姫に蛇骨鬼は赤面したのである。
「小猫姫…今回の荒神山での出来事は私とあんただけの秘密だからね!絶対に誰かに喋ったら承知しないよ!」
蛇骨鬼は小猫姫に断言するものの…。
「今回の出来事を桜花姫姉ちゃんに喋っちゃおうかな♪面白かったし♪」
小猫姫の返答に蛇骨鬼は怒号する。
「小猫姫!桜花姫ちゃんに喋ったら承知しないからね!勿論私とあんたの二人だけの秘密だよ!」
すると小猫姫の腹部から腹鳴が響き渡る。
「えっ…」
「小猫姫♪空腹感かね…」
小猫姫は腹鳴により赤面する。
「戻って夕食だね♪小猫姫♪」
「勿論だよ♪蛇骨鬼婆ちゃん♪戻ろう♪戻ろう♪」
蛇骨鬼と小猫姫は西国へと戻ったのである。
完結
メンテ
宇宙大動乱 ( No.67 )
日時: 2021/08/31 16:47
名前: 月影桜花姫

ジャンル
スペースオペラ

世界観
宇宙文明

登場人物
大銀河帝国軍
【ブラッドフォード】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦692年7月16日
星座:牡牛座
実年齢:30歳
所属:大銀河帝国軍
役職:大総統
階級:総帥
性別:男性
身長:168cm
体重:68kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:冷静沈着、合理主義、強硬
趣味:ライフル射撃

【ストライダー】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦674年3月22日
星座:牡羊座
実年齢:48歳
所属:大銀河帝国軍
役職:副総統
階級:大将
性別:男性
身長:199cm
体重:88kg
血液型:B型
一人称:私
性格:適当、面倒臭がり
趣味:プラモデル作成

【ホムンクルス】
種別:クローン人間
所属:大銀河帝国軍
生産数:700万人〜7億人

タイラントキラー
【ウィグノール】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦678年9月28日
星座:天秤座
実年齢:44歳
所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー
役職:総帥
階級:中将
性別:男性
身長:200cm
体重:89kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:生真面目
趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム

【ウェンフィールド】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦700年8月17日
星座:獅子座
実年齢:22歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大佐
性別:男性
身長:176cm
体重:76kg
血液型:O型
一人称:私
性格:誠実
趣味:ホラーゲーム

ホープセイバーズ
【ルーヴェルハルト】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦668年4月25日
星座:牡牛座
実年齢:54歳
所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ
役職:総帥
階級:少将
性別:男性
身長:198cm
体重:87kg
血液型:A型
一人称:私
性格:穏和、野心的
趣味:宇宙旅行

【セレスティノ】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦698年11月15日
星座:蠍座
実年齢:24歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大尉
性別:男性
身長:180cm
体重:80kg
血液型:B型
一人称:私
性格:信実
趣味:設計

登場国家
『大銀河帝国』
成立日:宇宙新暦376年7月4日
総人口:900億人

自治領
『ユートピアサイド』
統治勢力:大銀河帝国軍
総人口:70億人

『エデンプラネット』
統治勢力:タイラントキラー
総人口:50億人

『ホープエリア』
統治勢力:ホープセイバーズ
総人口:20億人

登場兵器
大銀河帝国軍
『アルセイス』
諸元
正式名:上級大将専用宇宙戦艦アルセイス
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:7隻
起工日:宇宙新暦722年3月27日
進宙日:宇宙新暦722年4月24日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:400m
全幅:220m
全高:80m
総重量:70万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:300人〜800人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:8基
光子魚雷発射機:2基
多目的ミサイル発射機:12基
艦載機:4機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:750mm
甲板装甲:550mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スレイプニル』
諸元
正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル
所属:大銀河帝国軍
建造所:プルトロン軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:18隻
起工日:宇宙新暦722年4月29日
進宙日:宇宙新暦722年5月26日
就役日:宇宙新暦722年5月30日
全長:990m
全幅:860m
全高:140m
総重量:9900万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:6基
50mm対空パルスレーザー機関砲:80基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:800mm
甲板装甲:720mm
装甲材質:貴金属
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『セイバードラゴン』
諸元
正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:2万隻
起工日:宇宙新暦652年4月22日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:800m
全幅:600m
全高:120m
総重量:500万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:320人
輸送要員:2万人〜4万人
兵装
800mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:8基
多目的ミサイル発射機:20基
艦載機:90機
装甲
主砲装甲:750mm
舷側装甲:500mm
甲板装甲:460mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『バジリスク』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦バジリスク
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:6万隻〜8万隻
起工日:宇宙新暦722年3月26日
進宙日:宇宙新暦722年4月12日
就役日:宇宙新暦722年4月15日
全長:200m
全幅:140m
全高:40m
総重量:5万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
300mm高エネルギー連装砲:3基
50mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:1機〜2機※無人機
装甲
主砲装甲:440mm
舷側装甲:250mm
甲板装甲:130mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『アスピドケロン』
諸元
正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン
所属:大銀河帝国軍
建造所:メティス軍事工場
艦種:宇宙駆逐艦
同型艦:9万隻〜15万隻
起工日:宇宙新暦722年5月14日
進宙日:宇宙新暦722年5月26日
就役日:宇宙新暦722年6月4日
全長:180m
全幅:150m
全高:40m
総重量:4万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
250mm高エネルギー連装砲:4基
40mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:2機※無人機
装甲
主砲装甲:370mm
舷側装甲:240mm
甲板装甲:230mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースバード』
諸元
機種:宇宙戦闘機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦699年12月24日
生産数:8万機
運用開始:宇宙新暦700年6月2日
全長:17m
全幅:16m
全高:6m
総重量:14t
全速力:マッハ15
搭乗員:1人
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置

『セイバードローン』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年4月26日
生産数:780万機
運用開始:宇宙新暦722年5月12日
全長:15m
全幅:14m
全高:4m
総重量:12t
全速力:マッハ15〜超光速
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

『ケルベロス』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年6月30日
生産数:400万機
運用開始:宇宙新暦722年7月15日
全長:16m
全幅:12m
全高:5m
総重量:20t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

タイラントキラー
『サラマンダー』
諸元
正式名:宇宙戦艦サラマンダー
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:750隻
起工日:宇宙新暦628年1月24日
進宙日:宇宙新暦630年5月25日
就役日:宇宙新暦650年7月30日
全長:780m
全幅:540m
全高:90m
総重量:300万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:280人
輸送要員:2万人〜3万人
兵装
550mm高エネルギー連装砲:8基
40mm対空パルスレーザー機関砲:38基
光子魚雷発射機:4基
多目的ミサイル発射機:16基
艦載機:150機
装甲
主砲装甲:650mm
舷側装甲:480mm
甲板装甲:240mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『レヴィアタン』
諸元
正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:560隻
起工日:宇宙新暦718年3月29日
進宙日:宇宙新暦719年4月13日
就役日:宇宙新暦719年7月12日
全長:960m
全幅:530m
全高:120m
総重量:620万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:20人
輸送要員:4万人〜6万人
兵装
320mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:44基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:480mm
舷側装甲:340mm
甲板装甲:190mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『シーサーペント』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:4万隻
起工日:宇宙新暦720年1月27日
進宙日:宇宙新暦720年2月28日
就役日:宇宙新暦720年4月24日
全長:250m
全幅:180m
全高:50m
総重量:6万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
280mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:14基
光子魚雷発射機:4基
艦載機:2機〜4機※無人機
装甲
主砲装甲:470mm
舷側装甲:290mm
甲板装甲:150mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースドローン』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦720年2月27日
生産数:500万機
運用開始:宇宙新暦720年11月29日
全長:14m
全幅:12m
全高:3m
総重量:12t
全速力:マッハ14〜超光速
武装
20mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置

『ホワイトピクシー』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦721年3月12日
生産数:2万機
運用開始:宇宙新暦721年3月15日
全長:18m
全幅:16m
全高:6m
総重量:15t
全速力:マッハ20〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:6基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

ホープセイバーズ
『リトルヴィーナス』
諸元
正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:4隻
起工日:宇宙新暦652年4月25日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:850m
全幅:650m
全高:200m
総重量:600万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基
450mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:120機〜140機※無人機
装甲
主砲装甲:950mm
舷側装甲:580mm
甲板装甲:560mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『フェンリル』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦デュラハン
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:4万隻〜5万隻
起工日:宇宙新暦720年11月26日
進宙日:宇宙新暦721年12月30日
就役日:宇宙新暦721年2月24日
全長:350m
全幅:280m
全高:65m
総重量:7万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
450mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:16基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:5機※無人機
装甲
主砲装甲:680mm
舷側装甲:420mm
甲板装甲:270mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『ハイパードローン』
諸元
機種:無人機
所属:ホープセイバーズ
初飛行:宇宙新暦721年4月15日
生産数:900万機
運用開始:宇宙新暦721年5月30日
全長:12m
全幅:8m
全高:4m
総重量:8t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

作中用語
『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器
『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル
『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器
『メティス基地』小惑星
『プルトロン基地』人工惑星
『メタリックアイ』小惑星
『エターナルメタル』特殊超合金
『スーパーリアクター』無限動力炉
『ハイパーリアクター』新型無限動力炉

第一話

艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。大銀河帝国軍にも宇宙用の偵察型ドローンは使用されるが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で見物しませんか?」
「承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させられますよ♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵軍を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセイス』だ…」
「えっ…アルセイスって…」
ストライダーはハッとする。
「アルセイスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アルセイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの夫人の名前である。
「大総統が希望すのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアルセイスと改名される。
「此奴の性能は?」
アルセイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり主砲…。超弩級波動砲『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

猛反撃

三日後…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセイスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。
「メタリックアイの宙域に無事到達したな…」
旗艦アルセイスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。
(メタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(一個艦隊程度だな…)

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…敵対勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
メンテ
桜花姫※妖怪奇譚 ( No.68 )
日時: 2021/09/01 09:10
名前: 月影桜花姫

第一話

真夜中

太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が荒神山に出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟同然であり人間は誰一人として荒神山へは近寄れない。
「何やら無数の妖気が感じられる…」
(如何やら今回の相手も大群だな…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。
「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「妖怪よ…成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。
「大群だな…」
無数の食人餓鬼はふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」
総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度の相手は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。肉塊の怪物は巨体の人型であるが…。全身の体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は食人餓鬼の親玉…【百鬼食人餓鬼】か…」
百鬼食人餓鬼は通常の食人餓鬼の集合体であり食人餓鬼の親玉である。
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
(戻ろうか…)
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。
「えっ…」
今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(女性?)
女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…発動!」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行し続けても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんてあんたは大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」
揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。
「あんた…私に殺されたいみたいね…」
「私に用事かしら?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかも知れないわね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気か!?)
突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「三蔵郎様♪」
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」
「勿論よ♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達の霊魂が妖怪化した化身…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。海難入道と遭遇した人間は溺死するのが通例である。
「漁船を襲撃したのが水難妖怪の海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは妖怪を退治するなんて…」
漁師達は呆れ果てる。
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪なのよ♪」
「あんたが妖怪だって?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「なっ!?俺達の漁船が…」
「桜餅に!?如何してこんな…」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。
「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは…本当に妖怪なのか?」
「勿論♪私は正真正銘妖怪なのよ♪」
問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間達は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。
「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」
三蔵郎は驚愕する。
「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」
桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。
「海難入道は?」
海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。
(こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…)
すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。
「妖気!?」
(ひょっとして海難入道の妖気かしら?)
接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。
「何かしら?」
巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。
(巨大真蛸…)
「海難入道だわ…」
海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。
「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」
海難入道は人語で発言したのである。
「私は変化の妖術で人魚にも変化出来るからね♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」
海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり自身が空腹であれば相手が妖怪であっても捕食する。
「空腹ね…私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」
「はっ?」
桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。
「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は皆無であるぞ…」
海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。
「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」
「人間に加勢したから何よ?私は鬱陶しい邪魔者を仕留めただけなのよね♪」
桜花姫は笑顔で反論したのである。
「貴様…気に入らないな…」
「気に入らないなら如何するのかしら♪」
「妖怪の面汚しである貴様は死滅しろ…」
海難入道は即座に巨大触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」
「今度は私の出番ね♪」
桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。
「あんたこそ死滅しなさい♪」
両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。
「直撃♪直撃♪」
雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。
「えっ?」
「残念だったな…桜花姫よ…」
桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。
「妖力を吸収するなんて…」
普段は冷静の桜花姫であるが…。海難入道の吸収能力に一瞬動揺する。
(海難入道には妖術が通用しないのかしら…)
「不思議そうな表情だな…桜花姫…俺はあらゆる妖力を吸収出来…妖術を無力化出来るのだ…」
海難入道の最強の特殊能力である吸収能力は自身の肉体に接触した多種多様の妖力を吸収出来…。あらゆる妖術を無力化出来る。基本的に妖力を駆使した攻撃法では海難入道は仕留められない。
「貴様程度の妖術では俺を仕留められない!」
(妖術が通用しないなんて…此奴は意外と厄介だわ…)
あらゆる魑魅魍魎の集合体である桜花姫でも…。妖力を吸収する妖怪を仕留めるのは非常に困難である。
(出直そうかな?)
恐る恐る後退りする。後退りする桜花姫に…。
「先程の威勢は如何した?俺に恐怖したか?」
「別に…」
問い掛けられた桜花姫は無表情で返答する。
「貴様は妖力だけなら大妖怪に匹敵するな…是非とも貴様を捕食したい…」
「私を捕食ですって?」
「あらゆる妖怪の集合体である貴様を食い殺せば…俺は大妖怪の領域に到達出来るからな♪」
豪語する海難入道に桜花姫は笑顔で…。
「私を捕食なんて…あんた程度の妖怪に出来るかしら♪」
桜花姫は笑顔で挑発したのである。
「貴様…本当に食い殺されたいらしいな…」
「食い殺せるのであれば私を食い殺しなさいよ♪」
桜花姫は再度挑発する。
「妖怪の小娘風情が…貴様は本当に気に入らない小娘だな…」
すると蛸足の巨大触手で桜花姫を拘束したのである。
「えっ?」
「貴様を食い殺す!」
一口で桜花姫を捕食…。口内で彼女を咀嚼したのである。
「所詮桜花姫はこんな程度の妖怪だ…」
すると直後…。桜花姫を捕食した影響からか先程よりも妖力が急上昇したのである。
「俺の妖力が増大化したぞ!」
妖力のみなら今現在の海難入道は大妖怪に匹敵…。海難入道は強大化した自身の妖力に大喜びしたのである。
「今日から俺も大妖怪の仲間入りだな♪」
すると直後…。
「ん?」
海難入道の全身が白煙に覆い包まれ…。二町規模の巨大さである海難入道の肉体が消滅したのである。すると白煙の内部から海難入道によって食い殺された桜花姫が出現…。彼女は無傷であり平気そうな様子だったのである。
「海難入道を仕留めたし♪」
(陸地に戻りましょう♪)
桜花姫は再度瞬間移動の妖術を駆使…。海岸の砂浜へと戻ったのである。
「なっ!?桜花姫様!?」
三蔵郎と合流する。
「三蔵郎様♪妖怪は無事征伐したわ♪」
「海難入道を征伐されたみたいですね…一瞬桜花姫様の妖気が消滅したので食い殺されたのかと…」
「一度海難入道に捕食されちゃったけれどね♪」
桜花姫は一時的に海難入道に捕食されたものの…。体内の胃袋から海難入道の肉体と同化したのである。
「反対に私が海難入道を捕食したのよ♪」
「えっ…捕食ですと?」
今現在海難入道は桜花姫の肉体の一部に変化する。
「兎にも角にも…海難入道は仕留めたから南国の海域は安全よ♪」
「事件は無事解決したので一件落着ですね…」
三蔵郎も一安心したのである。
「事件も解決したし♪戻りましょう♪」
「解散しますかね…」
桜花姫と三蔵郎は解散…。二人は村里へと戻ったのである。

第三話

強襲

南国での海難入道との大海戦から六日後の真夜中…。桜花姫は暇潰しに北国の村里にて散歩したのである。
「退屈ね…」
時間帯は深夜であり村人達は確認出来ない。
「妖怪でも出現しないかしら?」
基本的に多数の百鬼夜行が活動するのは真夜中であり日中に出現するのは中級以上の妖怪である。
「戻ろうかな?」
戻ろうかと思いきや…。
「ん!?」
突如として周囲より無数の気配を感じる。
(気配だわ…)
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒し始める。
(無数の妖気みたいね…)
「妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり無数の妖怪達が自身に接近するのを察知する。
「何が出現するのかしら?」
すると直後である。周囲の地面より数十体もの食人餓鬼が出現…。周囲を包囲されたのである。
「食人餓鬼だわ…」
(敵意も感じられるわね…)
突如として出現した食人餓鬼であるが…。桜花姫を敵対視した様子だったのである。
「あんた達…如何やら私が気に入らないみたいね♪」
メンテ
メガラニカ大事変 ( No.69 )
日時: 2021/09/01 19:25
名前: 月影桜花姫

第一話

開戦

世界暦五百二十二年五月十七日午前八時未明の出来事である。世界最終戦争唯一の戦勝国『太平帝国』は戦前でこそ小規模国家であったが世界最終戦争の快進撃から勢力を拡大化…。終戦後は超大国としての地位と資源を牛耳ったのである。世界最終戦争の大勝利によって全世界の秩序と覇権を獲得した太平帝国であるが…。太平帝国の圧政に反対する一部の国連軍残存勢力と各地の反政府勢力が大南海に位置する孤島にて合流したのである。彼等によって大南海の孤島は自治領『メガラニカ自由区』と命名され覇権国家である太平帝国の支配圏から逃亡した移民者達が亡命…。メガラニカ自由区樹立から一年が経過すると領内の総人口は推計五十万人規模に増大化したのである。メガラニカ自由区の勢力拡大を危惧した太平帝国はメガラニカ自由区に宣戦布告…。翌日には大規模艦隊を派遣させ南方のメガラニカ自由区本土を攻撃目標に直進したのである。太平帝国海軍主力艦隊旗艦…。戦闘航空母艦アスピドケロンには太平帝国国家元首であり総軍の最高指導者である大総統【ブラッドフォード】が総司令官として乗艦する。
「大総統!徹底的にメガラニカ自由区を撃滅しましょう!」
「当然だ【ルーヴェルハルト】…新世界の統治国である太平帝国に反抗するのが最大の愚行であるか…奴等には徹底的に理解させなければ…」
ルーヴェルハルトは副総統であり大総統のブラッドフォードにとって最高の右腕である。今回は旗艦アスピドケロンの副艦長として抜擢される。今回のメガラニカ自由区本土攻略作戦ではアスピドケロン級大型戦闘航空母艦が五隻投入され…。護衛艦隊にはミサイル巡洋艦十六隻…。二十四隻の防空駆逐艦が出撃する。補助用の魚雷艇二十九隻と八百人以上の上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦十七隻が後方にて航行したのである。
「メガラニカ自由区の領海へは推定二時間で到達する予定です…」
「全軍を警戒態勢に移行させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは通信機にて各艦の乗組員達に警戒態勢を指示する。
「全軍…警戒態勢に移行せよ…」
すると各艦隊の戦闘要員達は戦闘配置に移動したのである。戦闘要員達が戦闘配置に移動してより三分後…。旗艦アスピドケロンの艦橋に設置された最新型スーパーレーダーが反応したのである。
「本艦のスーパーレーダーが反応しました!」
スーパーレーダーは太平帝国海軍が開発した最新式の電波探知機であり地球全体を正確に索敵出来る。太平帝国軍では艦艇のみならず艦載機にも搭載され今現在太平帝国海軍と互角に交戦出来る国家は存在しない。
「何事だ?」
ブラッドフォードは偵察員に問い掛ける。
「南方…三百キロメートルの遠海より艦隊らしき艦影を無数確認…総数は推計四十隻程度です…」
スーパーレーダーには推計四十個もの光点が点滅したのである。
「ステルス機能を搭載させた艦艇か…」
すると直後…。
「無数の飛翔体が味方艦隊に接近中です!」
四十個の対象物である光点から数百個もの微小の光点が超音速で飛来するのを確認する。
「此奴は対艦ミサイル攻撃だ…迎撃態勢に移行しろ!」
ブラッドフォードは即座に迎撃を命令したのである。数秒後…。二十キロメートルの長距離より数百発もの飛翔体が味方艦隊に接近するのを確認する。
「各艦艇!飛翔体を迎撃せよ!」
各艦艇の迎撃システムが作動したのである。近年太平帝国海軍の各艦艇には対空戦闘用に開発された小型の全自動型パルスレーザー対空砲を設置…。超音速で飛来するミサイル迎撃に期待されたのである。数秒後各艦のパルスレーザー対空砲が炸裂…。蛍光色の光弾が各艦に接近する大型対艦ミサイルを迎撃したのである。全自動化によって大型対艦ミサイルは全弾迎撃…。敵艦から発射された大型対艦ミサイルは味方艦隊には一発も命中しなかったのである。通信兵が即座に報告する。
「通信です…敵軍の大型対艦ミサイルは全弾迎撃されました!味方艦隊への損害は皆無です!」
「最先端の科学技術の結晶である太平帝国海軍に旧型の対艦ミサイルで攻撃するとは…奴等は時代錯誤ですな♪」
ルーヴェルハルトは笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…所詮奴等は烏合の衆だ…」
総司令官のブラッドフォードも勝利を確信する。太平帝国軍の大艦隊はメガラニカ自由区近海へと直進したのである。十数分後…。メガラニカ自由区の防衛艦隊と遭遇したのである。ルーヴェルハルトはブリッジ正面の窓側にて恐る恐る双眼鏡を所持…。真正面の敵軍の中規模艦隊を確認する。
「大総統…敵軍の防衛艦隊です…」
メガラニカ自由区の防衛艦隊はミサイル巡洋艦八隻…。十九隻のミサイル駆逐艦と三十二隻の魚雷艇が確認出来る。
「中規模艦隊か…総攻撃せよ…」
ブラッドフォードは即刻中規模艦隊に対する総攻撃を指示…。各艦の大型対艦ミサイルと機関砲が炸裂する。太平帝国軍の先制攻撃によりメガラニカ防衛艦隊は二隻の大型ミサイル巡洋艦と六隻のミサイル駆逐艦が大型対艦ミサイルで撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。海面上には九百人以上の乗組員達が吹っ飛ばされる。
「味方艦隊の圧倒的優勢です!」
旗艦アスピドケロンのブリッジでは乗組員達が沈没する敵艦を眺望する。
「太平帝国軍の圧勝は確実だな…」
「奴等は腐敗した国民主権勢力の残党だ…所詮メガラニカ自由区なんて…」
乗組員達は太平帝国軍の優勢に安堵したのである。同時刻…。メガラニカ自由区防衛艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦リトルヴィーナス艦内では味方艦隊の劣勢に騒然とする。
「多勢に無勢だ…こんな状態では防衛艦隊は全滅するぞ!」
「畜生…防衛艦隊が全滅すれば…太平帝国軍の本土上陸も時間の問題だ…」
乗組員達は騒然とするのだが…。艦長の【ウィンフィールド】は沈黙した様子であり冷静だったのである。乗組員の一人が恐る恐る…。
「ウィンフィールド艦長…如何されましょうか?こんなにも劣勢では味方の防衛艦隊は全滅しますよ…」
「狼狽えるな…」
ウィンフィールドは騒然とする周囲の乗組員達を制止させる。
「ですが艦長…今現在の戦況はメガラニカ防衛軍が圧倒的に不利ですよ…」
ウィンフィールドは沈黙した様子で腕時計を確認する。
「時間だな…」
周囲の乗組員達はハッとした表情で…。
「えっ…何が時間なのですか!?」
一人の乗組員が恐る恐るウィンフィールドに問い掛ける。
「作戦を開始する…」
ウィンフィールドは通信兵を直視するなり…。
「通信兵…即刻独立機動部隊に通信させるのだ…出撃の命令を…」
「はっ!」
周囲の者達はポカンとする。
「一体何を開始するのか?」
同時刻…。メガラニカ自由区西方地帯の軍港にて三隻の中型空母が出撃したのである。中型空母にはとある新型兵器が多数搭載される。西方地帯から独立機動部隊が出撃を開始してより五分後…。メガラニカ自由区南方地帯の防衛艦隊は壊滅状態であり撤退を余儀無くされる。壊滅寸前の防衛艦隊の光景に太平帝国軍総司令官のブラッドフォードは航空部隊の出撃を命令する。
「航空部隊を出撃させろ…メガラニカ自由区の南方地帯全域を空爆せよ…場合によっては非戦闘員への攻撃も許可する…徹底的に奴等を蹴散らせるのだ…」
「はっ!」
ブラッドフォードが命令すると五隻の大型戦闘航空母艦から推計三百機もの戦闘爆撃機が出撃したのである。航空部隊はメガラニカ自由区の南方地帯領空へと進入…。地上への空爆を開始したのである。南方地帯を防衛する地上部隊は必死に太平帝国軍の航空部隊を迎撃するも…。相手は超音速で飛行する戦闘爆撃機であり対空砲は通用せず対空ミサイルで攻撃しても機体に搭載されたパルスレーザーで簡単に無力化されたのである。攻撃開始から三分間が経過すると南方地帯の地上部隊は九割が壊滅…。数千人もの民間人が死傷したのである。旗艦アスピドケロンではブリッジの乗組員達がモニターで戦況の映像を注視する。
「大総統♪太平帝国軍の圧倒的優勢です♪南方地帯の守備隊は壊滅状態ですよ…」
副艦長のルーヴェルハルトが笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…」
ブラッドフォードは現状であれば上陸作戦が可能であると判断…。
「敵軍は相当疲弊した状態だ…味方の上陸部隊に伝播させろ!」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは即座に各輸送艦に伝達する。上陸作戦を開始する直前…。スーパーレーダーが反応したのである。
「スーパーレーダーが反応しました!」
特殊無線技士がブラッドフォードに報告する。
「今度は何事だ!?」
ブラッドフォードが特殊無線技士に問い掛ける。
「西方の海域より無数の移動物体が出現…超音速で此方に急接近中です…」
「移動物体だと?敵機か?」
ブラッドフォードはモニターを作動させる。するとモニターの画面には無数の飛行物体が映写される。
「此奴は…」
飛行物体は軍用機の形状だが従来型の航空機とは異質的であり新型機であると認識する。
「大総統…敵軍の新型機でしょうか?」
「ひょっとすると無人兵器の戦闘用ドローンかも知れないな…」
「戦闘用ドローンですと?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「敵部隊の航空攻撃に警戒せよ…再度迎撃態勢に移行しろ…作戦中の航空部隊にもドローンの迎撃を急行させるのだ…」
「承知しました…大総統…」
戦闘艦隊と各輸送艦隊は上陸作戦を一時中止させ対空戦闘に移行する。数百機ものドローンが肉眼でも視認出来る位置へと到達…。
「大総統…敵軍のドローンです…」
「ドローンを撃墜せよ!味方艦隊には接近させるな!」
ブラッドフォードの命令と同時に各艦艇は対空戦闘を開始する。対空ミサイルと対空パルスレーザーが西方の上空にて炸裂したのである。対空パルスレーザーがドローンに直撃するのだが…。ドローンの機体内部には高エネルギー兵器を無力化する電磁防壁発生装置により対空パルスレーザーが無力化されたのである。旗艦アスピドケロンのブリッジでは双眼鏡で副艦長のルーヴェルハルトが上空を直視する。
「なっ!?シールドでしょうか!?」
「シールドだと?」
「ドローンは高エネルギーのシールドで対空パルスレーザーを無力化しました…ひょっとして奴等…」
「電磁防壁だな…ドローンの機体に光学兵器を無力化するシールド装置を装備したのだな…」
電磁防壁発生装置とは高エネルギー兵器を無力化する補助装置である。近年では太平帝国軍にも同類の補助装置は保有するものの…。艦船用の大型装置であり小型航空機に搭載出来る小型の装置は開発中である。
「如何やら奴等…電磁防壁発生装置の小型化に成功したみたいだな…」
ドローン関連の科学技術ではメガラニカ自由区が太平帝国よりも数段階上回る。人員不足であり少数精鋭のメガラニカ防衛軍にとって無人兵器のドローンは最大の戦力であり戦闘に特化されたドローン兵器が多数開発される。一方の太平帝国軍にもドローン兵器は多数配備されるものの…。基本的に偵察用の警戒型ドローンであり戦闘に特化された戦闘用ドローンは試作機のみである。
「艦長…上空より敵機が接近中です!」
対空パルスレーザーの弾幕が太平帝国軍の艦隊周囲に炸裂するのだが…。ドローンは機体のシールド装置でパルスレーザーを潜り抜け味方艦隊の上空間近へと到達する。ドローンは即座に低空飛行…。高速航空魚雷を投下したのである。副艦長のルーヴェルハルトはドローンの高速航空魚雷を投下した瞬間を直視する。
「大総統!敵機は航空魚雷を投下しました…」
「航空魚雷だと?大昔の大戦か?」
本来パルスレーザーはミサイルやら敵機の迎撃を想定して開発された高エネルギー兵器であり水中の魚雷を迎撃するのは不可能である。
「大昔の大戦だな…」
太平帝国軍では魚雷は潜水艦と魚雷艇のみ搭載…。今現在航空魚雷は皆無である。
「艦長!右舷より魚雷が接近中です!」
特殊無線技士が報告する。
「即刻回避だ!」
ブラッドフォードは即座に回避を指示したのである。乗組員達の迅速の対応により旗艦アスピドケロンは敵機の魚雷攻撃を回避する。旗艦アスピドケロンの乗組員達はホッとするも…。直後である。対空戦闘中の一隻のミサイル巡洋艦と二隻の防空駆逐艦がドローンの魚雷攻撃により爆散…。轟沈したのである。
「大総統…戦闘中のミサイル巡洋艦ヘルフィッシュと二隻の防空駆逐艦が敵機の魚雷攻撃で撃沈されました…」
メガラニカ防衛軍のドローン兵器は潜水艦に搭載された大型魚雷であり大型艦をも撃沈出来る。今度は輸送艦五隻と魚雷艇八隻がドローンの魚雷攻撃で沈没…。輸送艦六隻と魚雷艇四隻が大破したのである。撃沈された輸送艦からは二千人以上の将兵が海面上に吹っ飛ばされる。作戦中だった航空部隊が味方艦隊上空に帰還…。ドローンを迎撃するもドローンの速度は戦闘爆撃機よりも高速であり反対に味方の戦闘爆撃機が反撃される。二分間の空戦で百八十機もの味方戦闘機が撃墜され…。百人以上のパイロットが戦死したのである。一方のドローン部隊も艦艇と艦載機の対空ミサイルにより三十四機撃墜される。副総統のルーヴェルハルトは上空の光景を直視するなり…。
「大総統…太平帝国軍の劣勢です…」
形勢は完全に逆転したのである。ブラッドフォードは沈黙した様子であるが…。自軍の劣勢に苛立ったのかピリピリし始める。すると直後…。主力の戦闘航空母艦にも被害が出始める。二隻の戦闘航空母艦はドローンの自爆攻撃によって飛行甲板が破壊され…。大破したのである。旗艦アスピドケロンの同型艦であるレヴィアタンはドローンの魚雷攻撃で艦内の弾薬庫に引火…。一瞬で爆沈する。
「同型艦のレヴィアタンが撃沈されました!」
同型艦のレヴィアタンが爆沈したと同時に艦内の四十八機の艦載機は勿論…。五百人以上の乗組員達が一瞬で吹っ飛ばされる。旗艦アスピドケロンの周辺海面上には無数の鉄屑やら乗組員達の死骸がプカプカと浮上する。艦隊の損害からルーヴェルハルトはブラッドフォードに撤退を要請したのである。
「大総統!現状では太平帝国軍が圧倒的に不利です!即刻撤退しなければ…味方の艦隊が全滅しますよ!」
撤退を要請するルーヴェルハルトにブラッドフォードはギロッと睥睨する。
「撤退だと?主力の戦闘航空母艦二隻は健在だ…ドローンは実弾の対空ミサイルで対応しろ…」
実際問題ドローンのシールド装置は対空パルスレーザーによる高エネルギー兵器は無力化出来る反面…。実弾兵器は無力化出来ない。
「ですが対空ミサイルのみでは…本数が…」
ドローンに実弾である対空ミサイルは通用するが…。ドローンに命中させるのは非常に困難であり発射された大半がドローンの機関砲で迎撃される。直後…。
「飛行甲板上空より敵機です!直上に急降下します!」
特殊無線技士が報告する。
「敵機だと?」
数秒後…。急降下したドローンは甲板の直上に対艦ミサイルを発射したのである。直後である。ドンッと艦内全体に爆発音が響き渡り…。旗艦アスピドケロンの艦体全体がグラッと揺れ動いたのである。
「ぐっ!」
艦体が揺れ動いた衝撃にブラッドフォードは横たわる。
「大総統!大丈夫ですか!?」
副艦長のルーヴェルハルトは横たわったブラッドフォードに近寄る。
「私は大丈夫だ…本艦の被害状況は?」
先程のドローンの攻撃により旗艦アスピドケロンの損傷は飛行甲板が大破…。艦内に収納された十八機の艦載機も破壊されたのである。反面…。飛行甲板以外の設備は健在だったのである。
「母艦としての機能は完全に阻害されたな…」
「飛行甲板は使用出来ませんが…旗艦としての機能は健在です…」
「であればダメージコントロールを急行せよ…」
乗組員達が飛行甲板を修理する最中…。三隻の大型輸送艦と六隻の防空駆逐艦がドローンと潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されたのである。予想外の大損害にブラッドフォードは撤退を余儀無くされる。
(戦闘を続行し続ければ太平帝国軍の大艦隊でも確実に全滅するな…)
味方艦隊の全滅を危惧したブラッドフォードは不本意であるが…。撤退を決断する。艦内の通信機を所持するなり…。
「全軍に伝播する…戦闘続行は不可能だ…撤退を開始せよ…」
ブラッドフォードの判断に誰しもが反対しなかったのである。撤退を開始した太平帝国軍の艦隊にメガラニカ防衛軍のドローンは攻撃を停止…。本土へと戻ったのである。今回の大海戦で太平帝国軍は大型艦の戦闘航空母艦一隻とミサイル巡洋艦一隻…。小型艦の防空駆逐艦八隻と魚雷艇十二隻が撃沈される。損傷では三隻の戦闘航空母艦と二隻のミサイル巡洋艦が大破…。防空駆逐艦四隻と魚雷艇五隻が大破する。陸軍の上陸部隊は大型輸送艦が八隻撃沈され…。七隻の輸送艦が大破したのである。航空部隊は二百十九機の戦闘爆撃機を喪失…。五十四機の機体が損傷する。人的損害では合計六千九百四十二人が戦死…。合計三千五百六十一人が負傷したのである。一方のメガラニカ防衛軍はミライル駆逐艦二隻とミサイル駆逐艦六隻が撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。陸軍の守備隊は五十八両の戦闘車両が破壊…。空軍は五十六機のドローンが撃墜される。人的被害では合計二千三百六十五人が戦死…。合計三千四百七十八人が負傷する。民間人への被害は合計三千五百八十九人が死亡…。合計四千七百三十二人が負傷したのである。今回の戦闘はメガラニカ南方海戦と命名される。今回の大敗北以降…。太平帝国の権威が失墜したのである。

第二話

大艦巨砲主義

メガラニカ南方海戦の大敗北以降…。メガラニカ自由区の猛反撃が開始されたのである。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の大量投入と国内の反政府勢力の協力により太平帝国の領土の約半分を攻略…。占領したのである。メガラニカ南方海戦から一週間後の五月二十四日…。各自治領の戦闘で推計九百万人もの民間人が死亡したのである。同日…。太平帝国首都イーストサイドの大総統官邸会議室では大総統のブラッドフォードとルーヴェルハルトが対談する。
「大総統…一週間の短期間で太平帝国の統治領の約半分がメガラニカ防衛軍の猛反撃により占拠されました…太平帝国軍は劣勢の状態です…」
「一週間で領土の約半分が奴等に占拠させるなんて…ドローン兵器の威力を見縊らなければ…こんな状態には…」
ブラッドフォードは後悔したのである。後悔するブラッドフォードにルーヴェルハルトは前向きな姿勢で…。
「ですが大総統!今現在でこそ劣勢ですが…今迄の戦闘でメガラニカ自由区は太平帝国以上に消耗した状態です!」
今現在のメガラニカ自由区と太平帝国の国力は一対十八でありメガラニカ自由区は圧倒的に不利である。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の有効活用から各地の戦場で圧倒的物量の太平帝国軍を圧倒する。メガラニカ防衛軍の快進撃により太平帝国は領土の約半分を占拠されたものの…。短期間で戦線を拡大させたメガラニカ防衛軍は国力が貧弱であり兵站の遅滞から膠着し始める。
「メガラニカ防衛軍は膠着状態ですからね!劣勢を挽回出来る絶好のチャンスですよ!」
するとブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。
「訓練中の【ホムンクルス】だが…正規軍の将兵として実戦に配属出来るのか?」
「訓練中のホムンクルスですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から研究…。開発されたクローン人間達の総称である。度重なる戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。世界最終戦争以前の太平帝国は小規模の新興国であり人員不足の観点からクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。通常クローン人間の開発は倫理的問題点から民主主義の国家では法律で禁止されるのが通例であるが…。人権を尊重しない独裁政治の太平帝国ではクローン人間の開発も容易に実現出来るのである。今現在は推計三百万人ものホムンクルスが大量生産され…。正規軍の将兵として実戦に参加出来そうなホムンクルスは推計二十万人である。
「彼等が正規軍の将兵として実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。太平帝国軍はホムンクルスと人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスの将兵を最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
近日では太平帝国の劣勢から脱走兵やらメガラニカ防衛軍に加勢する勢力が続出…。両勢力の力関係は完全に逆転し始める。人員確保が難化し続ける太平帝国軍にとってホムンクルス将兵の投入は非常に好都合だったのである。
「本題ですが…開発部が新型兵器を提案しました…」
開発部が提案した数種類の新型兵器の設計図をブラッドフォードに提出する。
「戦闘用ドローン…『ケルベロス』?」
「ケルベロスは…」
ケルベロスとは太平帝国軍が開発した無人戦闘機である。従来型の有人戦闘機よりは一回り小型であるがマッハ八以上の最高速度を発揮出来…。機体底部には対地対艦武装は大型ミサイルを搭載する。対空装備は対空プラズマレーザーと実弾の対空機関砲を搭載…。
「ケルベロスが量産化に成功出来れば…メガラニカ防衛軍のドローン兵器『グリフォン』にも対抗出来ましょう…」
メガラニカ南方海戦で太平帝国軍艦隊を撃退させたドローン兵器の正体はグリフォンと判明する。本機は南方海戦で太平帝国海軍部隊が鹵獲したグリフォンを研究…。設計された機体でありメガラニカ防衛軍のグリフォンに対抗出来る戦闘用ドローン兵器として提案されたのである。
「ケルベロス…試作機の完成を見届けるか…」
二枚目の設計図を直視する。
「ん?此奴は…」
「二枚目の新型兵器は超砲撃型戦艦…『アプセラス』です…」
「超砲撃型戦艦…アプセラス?」
正式名は超砲撃型戦艦アプセラスであり海軍直属の開発部が提案したのである。今現在では完全に過去の遺産である超弩級戦艦であるがアプセラスは最先端の科学技術と過去のロストテクノロジーを結集…。現代型大艦巨砲主義の象徴である。艦体の全長は三百メートルサイズと巨体であり全幅は五十メートルサイズ…。全備総重量は前代未聞の推定七十万トンクラスの超弩級戦艦である。
「今時大艦巨砲主義なんて…時代錯誤だろ…」
ブラッドフォードは時代錯誤であると感じるが…。
「戦艦アプセラスは現在開発中の超大型電磁投射砲を搭載する予定なのです…」
「電磁投射砲か…」
電磁投射砲は現在太平帝国軍が開発中の実弾電磁兵器である。高額のミサイルよりも安価であり高威力を発揮出来ると期待される。
「海軍開発部の大計画では戦艦アプセラスの装甲は『エターナルメタル』を使用するとの情報です…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは月面で採掘された不朽性の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスも安価ですからね♪」
「であれば建造を急行するべきだな…」
直後である。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で会議室に入室したのである。
「緊急事態だと?一体何事だ?」
ブラッドフォードが問い掛けると通信兵はビクビクした様子で…。
「南方のメティス諸島…メティス基地が敵軍の攻勢で占拠…基地を防衛する守備隊は必死に交戦しましたが…守備隊は玉砕したとの情報です…」
「なっ!?メティス基地の守備隊が…玉砕だと!?守備隊は全滅したのか!?」
ルーヴェルハルトは驚愕したのである。
「残念ですが…」
メティス基地とは強固の大規模要塞が構築された本土防衛用の第二防衛ライン…。推計三万人もの太平帝国陸軍守備隊が配置されたが本日未明にメガラニカ防衛軍の強襲で全滅したのである。
「メティス基地が陥落したか…恐らく今度の攻撃目標は最終防衛ラインの…パシフィスゾーン基地だな…」
パシフィスゾーン基地とは最南端に位置する離島…。パシフィスゾーン本島を防衛する太平帝国軍守備隊の本拠地である。太平帝国本土を防衛する最重要防衛拠点であるものの…。推計八十万人もの民間人も安住する。ルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「大総統…即刻パシフィスゾーン本島に援軍を派遣させますか?」
「援軍は不要だ…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの返答にルーヴェルハルトと通信兵は絶句したのである。
「本気ですか!?大総統!?」
「私は本気だよ…ルーヴェルハルト…」
「如何して援軍を派遣しないのですか!?パシフィスゾーンが陥落すれば…今度は本土が攻撃対象なのですよ!?」
ブラッドフォードは再度無表情で返答する。
「パシフィスゾーンの守備隊には陽動作戦に利用する…」
「陽動作戦ですと?」
「味方の戦闘機に特殊弾頭を搭載…パシフィスゾーンに侵攻中のメガラニカ防衛軍を特殊弾頭ミサイルで殲滅する…」
パシフィスゾーン基地は陸海軍の大部隊が駐屯…。基地内の兵力も推計十四万人であり基地を陥落させるには相当数の部隊が必要である。パシフィスゾーンを攻防する両軍に特殊弾頭ミサイルで攻撃…。当然として味方の部隊は全滅するが敵軍の侵攻を阻止するには非常に好都合である。
「特殊弾頭ミサイルですと!?パシフィスゾーンに特殊弾頭なんて使用すれば味方の守備隊は勿論…大勢の民間人にも被害が…」
特殊弾頭ミサイルは所謂核兵器の一種であり一発のミサイルで十数キロメートルもの広範囲を焦土化させられる。非人道的でありイエスマンのルーヴェルハルトも特殊弾頭ミサイルの使用には躊躇する。
「今更何を躊躇するのだ?ルーヴェルハルト…特殊弾頭なら二年前の大戦争で無尽蔵に使用しただろ…」
小規模国家であった太平帝国が世界最終戦争で勝利出来たのは特殊弾頭ミサイルの多用である。
「特殊弾道ミサイルで敵味方諸共…殲滅されるのですか?」
「最早多少の犠牲は止むを得ない…」
ルーヴェルハルトの問い掛けにブラッドフォードは即答する。
「特殊弾頭は極秘だぞ…兎にも角にもパシフィスゾーンの守備隊には本島の防衛を徹底させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは不本意であるが…。ブラッドフォードの作戦に承諾したのである。

第三話

攻防戦

五月二十七日早朝…。メガラニカ防衛軍の大艦隊が太平帝国最終防衛区域パシフィスゾーンへと進行を開始したのである。同時刻…。パシフィスゾーン基地総司令部では拠点防衛用のスーパーレーダーが反応したのである。
「一体何事だ!?」
パシフィスゾーン基地陸軍総司令官【ウィグノール】が偵察員に問い掛ける。
「スーパーレーダーが反応しました!」
即座に立体映像のホログラムで領海を確認する。ホログラムには数十隻もの艦艇が確認出来る。
「此奴はメガラニカ防衛軍の大艦隊だな…パシフィスゾーンを攻略するみたいだ…」
「如何しましょう…総司令官…」
「即刻防衛戦を開始する!各員は戦闘配置だ!パシフィスゾーンは徹底的に死守しろ!」
ウィグノールは各員に防衛戦を指示したのである。
「はっ!」
パシフィスゾーンは本土防衛の最終防衛ラインでありパシフィスゾーンが陥落すれば本土が攻撃される。
「通信兵…本土にも援軍の要請を伝達しろ…」
「はっ!」
通信兵は即座に総本部に通達したのである。三十分後…。メガラニカ防衛軍の大艦隊がパシフィスゾーンの防衛区域へと到達したのである。
「総司令官…メガラニカ防衛軍の大艦隊が防衛区域に到達しました…」
「防衛戦を開始するか…」
ウィグノールの攻撃開始の合図と同時に海面上からは百二十隻ものミサイル警備艇…。滑走路からは百三十機もの戦闘爆撃機が飛来したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍の大艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦レヴィアタンはスーパーレーダーで太平帝国軍のミサイル警備艇と戦闘爆撃機を確認する。
「艦長…敵部隊を確認しました…」
レヴィアタンの艦長はメガラニカ南方海戦で活躍したウィンフィールドである。
「即刻ホログラムを作動させろ…」
乗組員は艦内のホログラムを作動させる。するとホログラムには百隻以上のミサイル警備艇と戦闘爆撃機が立体映像として映写される。
「敵部隊は旧型の兵器ばかりか…」
「如何されますか?」
乗組員の問い掛けにウィンフィールドは即答する。
「即刻迎撃せよ…ドローン兵器を発進させろ…」
「承知しました…」
旗艦のレヴィアタンから二十八機のグリフォン型ドローン兵器が発進する。レヴィアタンは全長二百四十メートルサイズ…。全幅三十メートルサイズの大型艦であり満載排水量は推定五万トンである。ミサイル戦闘艦としての機能は勿論…。航空機の母艦としても使用出来る。所謂現代型の航空戦艦である。艦載機はドローン兵器であり合計五十機以上搭載出来る。旗艦のレヴィアタンは勿論…。レヴィアタン級航空大型ミサイル戦闘艦六隻と最新鋭のドローン空母艦隊から合計四百機以上ものグリフォン型ドローン兵器が発進したのである。ドローン部隊が発進してより十五分後…。最前線のパシフィスゾーン防衛部隊と遭遇したのである。両軍が遭遇した直後に戦闘が開始され…。パシフィスゾーン防衛部隊はミサイル警備艇と戦闘爆撃機による対空ミサイル攻撃で十四機のドローンを撃墜したのである。ドローン撃墜に防衛部隊の将兵達は戦意が向上するも…。相手は新型のドローン兵器であり二分も経過すればドローンの反撃で八十三隻のミサイル警備艇が撃沈され七十六機の戦闘爆撃機が一瞬で撃墜されたのである。旗艦レヴィアタンの乗組員達は艦橋から戦況を確認する。
「艦長…味方の優勢です…」
「上出来だな…」
厳格の軍人であるウィンフィールドだが…。ドローン部隊の大戦果に上出来と判断したのである。
「ドローン部隊には攻撃を続行させろ…パシフィスゾーンを防衛する陸上部隊に空爆を仕掛けるのだ…」
ドローン部隊の攻撃の続行を指示する。
「承知しました!」
するとウィンフィールドは恐る恐る…。
「非戦闘員への被害は最小限に努力せよ…」
「承知です…」
ドローン部隊の猛反撃からパシフィスゾーン防衛部隊は総崩れ…。海上の防衛網は簡単に突破されたのである。
「総司令官…海上の防衛部隊が壊滅…敵軍に突破されました…」
通信兵の報告にパシフィスゾーン総司令部は混乱する。
「ドローン部隊を使用したか…」
総司令官のウィグノールは一瞬沈黙するも…。
「守備隊に伝播せよ…陸上の防衛戦を開始すると!」
「承知しました…」
基地内の将兵達は承諾したのである。
「非戦闘員は緊急用シェルターに避難させろ…」
陸上の防衛部隊は即座に行動を開始する。緊急警報システムが作動され…。民間人は即座に各地域の地下壕に設置された避難用の緊急用シェルターへと移動したのである。民間人の避難終了から三分後…。メガラニカ防衛軍のドローン部隊がパシフィスゾーン領空へと到達する。
「メガラニカ防衛軍のドローンだ!」
「海上の防衛部隊は全滅したのか?」
「兎にも角にも迎撃するぞ!」
陸上の守備隊は迎撃を開始…。上空のドローンを目標に攻撃したのである。数千発もの機関砲と対空ミサイルが上空に炸裂する。守備隊の攻撃で二十二機のドローンを撃墜するも…。ドローンの空爆で三十六両の戦闘車が破壊され百三十七人の将兵が戦死する。三分間の空爆で陸上部隊の八割が壊滅したのである。
「陸上部隊の八割が壊滅しました…」
守備隊の劣勢に総司令部は混乱する。
「なっ!?八割も!?」
「全滅だな…」
「ドローンの空爆で守備隊の八割が壊滅したのか!?」
総司令部の将兵達は予想外の事態に恐怖したのである。直後…。スーパーレーダーが反応する。
「スーパーレーダーが反応したぞ…今度は何事だ?」
ホログラムを作動させるとメガラニカ防衛軍の大艦隊が映写される。
「敵軍の大艦隊だぞ…パシフィスゾーンの領海に到達したのか!?」
メガラニカ防衛軍の大艦隊は航空大型ミサイル戦闘艦が七隻と正規空母四隻…。ミサイル巡洋艦が十三隻と三十一隻の防空駆逐艦が確認出来る。後方には上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦が十八隻…。補助用の魚雷艇が十五隻確認出来る。メガラニカ防衛軍はドローンの投入で海上の防衛部隊を撃退…。メガラニカ防衛軍艦隊はノーダメージでパシフィスゾーンの領海へと到達出来たのである。
「本土から援軍は出動したのか!?」
ウィグノールは再度通信兵に問い掛ける。
「無線では…本土から潜水艦が一隻出動したと…」
「はっ?」
ウィグノールは絶句する。
「こんな状況で援軍が潜水艦一隻だと!?何故海軍の主力艦隊を出動させない!?」
「主力艦隊は本土を防衛するのが手一杯であると…」
現実問題…。メガラニカ南方海戦の大敗北から太平帝国軍主力艦隊は艦隊の再建に手一杯であり主力の大艦隊は派遣出来なかったのである。
「畜生が…」
通信兵の報告にウィグノールはピリピリする。
(パシフィスゾーンは陥落しろと?総本部は本土での戦闘を決断したのか?)
総本部の意向に疑問視するが…。ウィグノールは決断したのである。
「総員…本土からの援軍は期待出来ないが…精一杯パシフィスゾーンを死守するぞ!」
「はっ!承知しました…」
絶望的状況下であるが守備隊の将兵達は一致団結…。残存部隊による徹底抗戦を決意したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍大艦隊は上陸作戦を開始したのである。十八隻の大型輸送艦から三十六隻の上陸用舟艇が出動…。陸上部隊によるパシフィスゾーン上陸作戦が開始されたのである。上陸部隊の戦力は主力戦車五十二両…。装甲車と軽量の戦闘車が六十四両投入される。二万人の海兵隊が上陸したのである。今回の上陸作戦では最新型の地上用ドローンである無人小型戦車を五機投入…。試作段階であるが実験目的で無人小型戦車が実戦配備されたのである。
「メガラニカ防衛軍の上陸部隊です…」
最前線に位置する陸軍の残存部隊が無傷のトーチカから恐る恐る…。上陸中の敵部隊を確認する。
「俺達は一先ず撤収するぞ…反撃は本隊と合流してからだ…」
最前線の残存部隊は総司令部へと撤収したのである。
メンテ
宇宙大動乱 ( No.70 )
日時: 2021/09/03 08:24
名前: 月影桜花姫

ジャンル
スペースオペラ

世界観
宇宙文明

登場人物
大銀河帝国軍
【ブラッドフォード】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦692年7月16日
星座:牡牛座
実年齢:30歳
所属:大銀河帝国軍
役職:大総統
階級:総帥
性別:男性
身長:168cm
体重:68kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:冷静沈着、合理主義、強硬
趣味:ライフル射撃

【ストライダー】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦674年3月22日
星座:牡羊座
実年齢:48歳
所属:大銀河帝国軍
役職:副総統
階級:大将
性別:男性
身長:199cm
体重:88kg
血液型:B型
一人称:私
性格:適当、面倒臭がり
趣味:プラモデル作成、設計

【ホムンクルス】
種別:クローン人間
所属:大銀河帝国軍
生産数:700万人〜7億人

タイラントキラー
【ウィグノール】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦678年9月28日
星座:天秤座
実年齢:44歳
所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー
役職:総帥
階級:中将
性別:男性
身長:200cm
体重:89kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:生真面目
趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム

【ウェンフィールド】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦700年8月17日
星座:獅子座
実年齢:22歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大佐
性別:男性
身長:176cm
体重:76kg
血液型:O型
一人称:私
性格:誠実
趣味:ホラーゲーム

ホープセイバーズ
【ルーヴェルハルト】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦668年4月25日
星座:牡牛座
実年齢:54歳
所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ
役職:総帥
階級:少将
性別:男性
身長:198cm
体重:87kg
血液型:A型
一人称:私
性格:穏和、野心的
趣味:宇宙旅行

登場国家
『大銀河帝国』
成立日:宇宙新暦376年7月4日
総人口:900億人

自治領
『ユートピアサイド』
統治勢力:大銀河帝国軍
総人口:70億人

『エデンプラネット』
統治勢力:タイラントキラー
総人口:50億人

『ホープエリア』
統治勢力:ホープセイバーズ
総人口:20億人

登場兵器
大銀河帝国軍
『アルセイス』
諸元
正式名:上級大将専用宇宙戦艦アルセイス
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:7隻
起工日:宇宙新暦722年3月27日
進宙日:宇宙新暦722年4月24日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:400m
全幅:220m
全高:80m
総重量:70万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:300人〜800人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:8基
光子魚雷発射機:2基
多目的ミサイル発射機:12基
艦載機:4機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:750mm
甲板装甲:550mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スレイプニル』
諸元
正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル
所属:大銀河帝国軍
建造所:プルトロン軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:18隻
起工日:宇宙新暦722年4月29日
進宙日:宇宙新暦722年5月26日
就役日:宇宙新暦722年5月30日
全長:990m
全幅:860m
全高:140m
総重量:950万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:6基
50mm対空パルスレーザー機関砲:80基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:800mm
甲板装甲:720mm
装甲材質:貴金属
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『セイバードラゴン』
諸元
正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:2万隻
起工日:宇宙新暦652年4月22日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:800m
全幅:600m
全高:120m
総重量:500万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:320人
輸送要員:2万人〜4万人
兵装
800mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:8基
多目的ミサイル発射機:20基
艦載機:90機
装甲
主砲装甲:750mm
舷側装甲:500mm
甲板装甲:460mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『バジリスク』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦バジリスク
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:6万隻〜8万隻
起工日:宇宙新暦722年3月26日
進宙日:宇宙新暦722年4月12日
就役日:宇宙新暦722年4月15日
全長:200m
全幅:140m
全高:40m
総重量:5万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
300mm高エネルギー連装砲:3基
50mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:1機〜2機※無人機
装甲
主砲装甲:440mm
舷側装甲:250mm
甲板装甲:130mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『アスピドケロン』
諸元
正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン
所属:大銀河帝国軍
建造所:メティス軍事工場
艦種:宇宙駆逐艦
同型艦:9万隻〜15万隻
起工日:宇宙新暦722年5月14日
進宙日:宇宙新暦722年5月26日
就役日:宇宙新暦722年6月4日
全長:180m
全幅:150m
全高:40m
総重量:4万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
250mm高エネルギー連装砲:4基
40mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:2機※無人機
装甲
主砲装甲:370mm
舷側装甲:240mm
甲板装甲:230mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースバード』
諸元
機種:宇宙戦闘機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦699年12月24日
生産数:8万機
運用開始:宇宙新暦700年6月2日
全長:17m
全幅:16m
全高:6m
総重量:14t
全速力:マッハ15
搭乗員:1人
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置

『セイバードローン』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年4月26日
生産数:780万機
運用開始:宇宙新暦722年5月12日
全長:15m
全幅:14m
全高:4m
総重量:12t
全速力:マッハ15〜超光速
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

『ケルベロス』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年6月30日
生産数:400万機
運用開始:宇宙新暦722年7月15日
全長:16m
全幅:12m
全高:5m
総重量:20t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

タイラントキラー
『サラマンダー』
諸元
正式名:宇宙戦艦サラマンダー
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:750隻
起工日:宇宙新暦628年1月24日
進宙日:宇宙新暦630年5月25日
就役日:宇宙新暦650年7月30日
全長:780m
全幅:540m
全高:90m
総重量:300万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:280人
輸送要員:2万人〜3万人
兵装
550mm高エネルギー連装砲:8基
40mm対空パルスレーザー機関砲:38基
光子魚雷発射機:4基
多目的ミサイル発射機:16基
艦載機:150機
装甲
主砲装甲:650mm
舷側装甲:480mm
甲板装甲:240mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『レヴィアタン』
諸元
正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:560隻
起工日:宇宙新暦718年3月29日
進宙日:宇宙新暦719年4月13日
就役日:宇宙新暦719年7月12日
全長:960m
全幅:530m
全高:120m
総重量:620万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:20人
輸送要員:4万人〜6万人
兵装
320mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:44基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:480mm
舷側装甲:340mm
甲板装甲:190mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『シーサーペント』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:4万隻
起工日:宇宙新暦720年1月27日
進宙日:宇宙新暦720年2月28日
就役日:宇宙新暦720年4月24日
全長:250m
全幅:180m
全高:50m
総重量:6万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
280mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:14基
光子魚雷発射機:4基
艦載機:2機〜4機※無人機
装甲
主砲装甲:470mm
舷側装甲:290mm
甲板装甲:150mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースドローン』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦720年2月27日
生産数:500万機
運用開始:宇宙新暦720年11月29日
全長:14m
全幅:12m
全高:3m
総重量:12t
全速力:マッハ14〜超光速
武装
20mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置

『ホワイトピクシー』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦721年3月12日
生産数:2万機
運用開始:宇宙新暦721年3月15日
全長:18m
全幅:16m
全高:6m
総重量:15t
全速力:マッハ20〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:6基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

ホープセイバーズ
『リトルヴィーナス』
諸元
正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:14隻
起工日:宇宙新暦652年4月25日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:850m
全幅:650m
全高:200m
総重量:600万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基
450mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:120機〜140機※無人機
装甲
主砲装甲:950mm
舷側装甲:580mm
甲板装甲:560mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『フェンリル』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦デュラハン
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:4万隻〜5万隻
起工日:宇宙新暦720年11月26日
進宙日:宇宙新暦721年12月30日
就役日:宇宙新暦721年2月24日
全長:350m
全幅:280m
全高:65m
総重量:7万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
450mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:16基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:5機※無人機
装甲
主砲装甲:680mm
舷側装甲:420mm
甲板装甲:270mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『ハイパードローン』
諸元
機種:無人機
所属:ホープセイバーズ
初飛行:宇宙新暦721年4月15日
生産数:900万機
運用開始:宇宙新暦721年5月30日
全長:12m
全幅:8m
全高:4m
総重量:8t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

作中用語
『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器
『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル
『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器
『メティス基地』小惑星
『プルトロン基地』人工惑星
『メタリックアイ』小惑星
『エターナルメタル』特殊超合金
『スーパーリアクター』無限動力炉
『ハイパーリアクター』新型無限動力炉

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。大銀河帝国軍にも宇宙用の偵察型ドローンは使用されるが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で見物しませんか?」
「承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させられますよ♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵軍を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセイス』だ…」
「えっ…アルセイスって…」
ストライダーはハッとする。
「アルセイスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アルセイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望すのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアルセイスと改名される。
「此奴の性能は?」
アルセイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり主砲…。超弩級波動砲『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

猛反撃

三日後…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセイスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。
「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アルセイスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…新型宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アルセイスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装はアルセイスと同様に主砲のケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアルセイス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアルセイスの艦内ホログラムから空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…ドローン部隊には後方の敵艦への攻撃を継続させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…敵対勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
メンテ
妖怪奇譚※仮名 ( No.71 )
日時: 2021/09/03 08:49
名前: 月影桜花姫

第一話

真夜中

太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が荒神山に出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟同然であり人間は誰一人として荒神山へは近寄れない。
「何やら無数の妖気が感じられる…」
(如何やら今回の相手も大群だな…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。
「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「妖怪よ…成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。
「大群だな…」
無数の食人餓鬼はふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」
総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度の相手は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。肉塊の怪物は巨体の人型であるが…。全身の体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は食人餓鬼の親玉…【百鬼食人餓鬼】か…」
百鬼食人餓鬼は通常の食人餓鬼の集合体であり食人餓鬼の親玉である。
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
(戻ろうか…)
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。
「えっ…」
今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(彼女は…人間の女性?)
背後の女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…発動!」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
「月影桃子姫様とは…伝説の巫女の?」
月影桃子姫とは人間の巫女であり強大なる霊力で多種多様の妖怪を征伐…。伝説の巫女として有名である。とある大妖怪との戦闘により失踪…。今現在では彼女の行方は不明である。
「勿論♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した異例の集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行し続けても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんてあんたは大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」
揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。
「あんた…私に殺されたいみたいね…」
「私に用事かしら?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかも知れないわね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気か!?)
突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「三蔵郎様♪」
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」
「勿論よ♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達の霊魂が妖怪化した化身…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。海難入道と遭遇した人間は溺死するのが通例である。
「漁船を襲撃したのが水難妖怪の海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは妖怪を退治するなんて…」
漁師達は呆れ果てる。
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪なのよ♪」
「あんたが妖怪だって?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「なっ!?俺達の漁船が…」
「桜餅に!?如何してこんな…」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。
「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは…本当に妖怪なのか?」
「勿論♪私は正真正銘妖怪なのよ♪」
問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間達は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。
「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」
三蔵郎は驚愕する。
「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」
桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。
「海難入道は?」
海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。
(こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…)
すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。
「妖気!?」
(ひょっとして海難入道の妖気かしら?)
接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。
「何かしら?」
巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。
(巨大真蛸…)
「海難入道だわ…」
海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。
「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」
海難入道は人語で発言したのである。
「私は変化の妖術で人魚にも変化出来るからね♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」
海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり自身が空腹であれば相手が妖怪であっても捕食する。
「空腹ね…私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」
「はっ?」
桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。
「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は皆無であるぞ…」
海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。
「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」
「人間に加勢したから何よ?私は鬱陶しい邪魔者を仕留めただけなのよね♪」
桜花姫は笑顔で反論したのである。
「貴様…気に入らないな…」
「気に入らないなら如何するのかしら♪」
「妖怪の面汚しである貴様は死滅しろ…」
海難入道は即座に巨大触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」
「今度は私の出番ね♪」
桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。
「あんたこそ死滅しなさい♪」
両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。
「直撃♪直撃♪」
雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。
「えっ?」
「残念だったな…桜花姫よ…」
桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。
「妖力を吸収するなんて…」
普段は冷静の桜花姫であるが…。海難入道の吸収能力に一瞬動揺する。
(海難入道には妖術が通用しないのかしら…)
「不思議そうな表情だな…桜花姫…俺はあらゆる妖力を吸収出来…妖術を無力化出来るのだ…」
海難入道の最強の特殊能力である吸収能力は自身の肉体に接触した多種多様の妖力を吸収出来…。あらゆる妖術を無力化出来る。基本的に妖力を駆使した攻撃法では海難入道は仕留められない。
「貴様程度の妖術では俺を仕留められない!」
(妖術が通用しないなんて…此奴は意外と厄介だわ…)
あらゆる魑魅魍魎の集合体である桜花姫でも…。妖力を吸収する妖怪を仕留めるのは非常に困難である。
(出直そうかな?)
恐る恐る後退りする。後退りする桜花姫に…。
「先程の威勢は如何した?俺に恐怖したか?」
「別に…」
問い掛けられた桜花姫は無表情で返答する。
「貴様は妖力だけなら大妖怪に匹敵するな…是非とも貴様を捕食したい…」
「私を捕食ですって?」
「あらゆる妖怪の集合体である貴様を食い殺せば…俺は大妖怪の領域に到達出来るからな♪」
豪語する海難入道に桜花姫は笑顔で…。
「私を捕食なんて…あんた程度の妖怪に出来るかしら♪」
桜花姫は笑顔で挑発したのである。
「貴様…本当に食い殺されたいらしいな…」
「食い殺せるのであれば私を食い殺しなさいよ♪」
桜花姫は再度挑発する。
「妖怪の小娘風情が…貴様は本当に気に入らない小娘だな…」
すると蛸足の巨大触手で桜花姫を拘束したのである。
「えっ?」
「貴様を食い殺す!」
一口で桜花姫を捕食…。口内で彼女を咀嚼したのである。
「所詮桜花姫はこんな程度の妖怪だ…」
すると直後…。桜花姫を捕食した影響からか先程よりも妖力が急上昇したのである。
「俺の妖力が増大化したぞ!」
妖力のみなら今現在の海難入道は大妖怪に匹敵…。海難入道は強大化した自身の妖力に大喜びしたのである。
「今日から俺も大妖怪の仲間入りだな♪」
すると直後…。
「ん?」
海難入道の全身が白煙に覆い包まれ…。二町規模の巨大さである海難入道の肉体が消滅したのである。すると白煙の内部から海難入道によって食い殺された桜花姫が出現…。彼女は無傷であり平気そうな様子だったのである。
「海難入道を仕留めたし♪」
(陸地に戻りましょう♪)
桜花姫は再度瞬間移動の妖術を駆使…。海岸の砂浜へと戻ったのである。
「なっ!?桜花姫様!?」
三蔵郎と合流する。
「三蔵郎様♪妖怪は無事征伐したわ♪」
「海難入道を征伐されたみたいですね…一瞬桜花姫様の妖気が消滅したので食い殺されたのかと…」
「一度海難入道に捕食されちゃったけれどね♪」
桜花姫は一時的に海難入道に捕食されたものの…。体内の胃袋から海難入道の肉体と同化したのである。
「反対に私が海難入道を捕食したのよ♪」
「えっ…捕食ですと?」
今現在海難入道は桜花姫の肉体の一部に変化する。
「兎にも角にも…海難入道は仕留めたから南国の海域は安全よ♪」
「事件は無事解決したので一件落着ですね…」
三蔵郎も一安心したのである。
「事件も解決したし♪戻りましょう♪」
「解散しますかね…」
桜花姫と三蔵郎は解散…。二人は村里へと戻ったのである。

第三話

強襲

南国での海難入道との大海戦から六日後の真夜中…。桜花姫は暇潰しに北国の村里にて散歩したのである。
「退屈ね…」
時間帯は深夜であり村人達は確認出来ない。
「妖怪でも出現しないかしら?」
基本的に多数の百鬼夜行が活動するのは真夜中であり日中に出現するのは中級以上の妖怪である。
「戻ろうかな?」
戻ろうかと思いきや…。
「ん!?」
突如として周囲より無数の気配を感じる。
(気配だわ…)
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒し始める。
(無数の妖気みたいね…)
「妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり無数の妖怪達が自身に接近するのを察知する。
「何が出現するのかしら?」
すると直後である。
「食人餓鬼だわ…」
周囲の地面より数十体もの食人餓鬼が出現…。周囲を包囲されたのである。
(敵意も感じられるわね…)
突如として出現した食人餓鬼であるが…。
「如何やらあんた達…私が気に入らないみたいね♪」
本来食人餓鬼は同種の妖怪には手出ししない性質なのだが…。桜花姫を敵対視した様子だったのである。直後…。食人餓鬼の大群は桜花姫に殺到する。
「はぁ…あんた達は命知らずね…」
桜花姫は呆れ果てるものの…。
「死滅しなさい♪」
メンテ
宇宙大動乱 ( No.72 )
日時: 2021/09/03 22:33
名前: 月影桜花姫

ジャンル
スペースオペラ

世界観
宇宙文明

登場人物
大銀河帝国軍
【ブラッドフォード】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦692年7月16日
星座:牡牛座
実年齢:30歳
所属:大銀河帝国軍
役職:大総統
階級:総帥
性別:男性
身長:168cm
体重:68kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:冷静沈着、合理主義、強硬
趣味:ライフル射撃

【ストライダー】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦674年3月22日
星座:牡羊座
実年齢:48歳
所属:大銀河帝国軍
役職:副総統
階級:大将
性別:男性
身長:199cm
体重:88kg
血液型:B型
一人称:私
性格:適当、面倒臭がり
趣味:プラモデル作成、設計

【ホムンクルス】
種別:クローン人間
所属:大銀河帝国軍
生産数:700万人〜7億人

タイラントキラー
【ウィグノール】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦678年9月28日
星座:天秤座
実年齢:44歳
所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー
役職:総帥
階級:中将
性別:男性
身長:200cm
体重:89kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:生真面目
趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム

【ウェンフィールド】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦700年8月17日
星座:獅子座
実年齢:22歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大佐
性別:男性
身長:176cm
体重:76kg
血液型:O型
一人称:私
性格:誠実
趣味:ホラーゲーム

ホープセイバーズ
【ルーヴェルハルト】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦668年4月25日
星座:牡牛座
実年齢:54歳
所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ
役職:総帥
階級:少将
性別:男性
身長:198cm
体重:87kg
血液型:A型
一人称:私
性格:穏和、野心的
趣味:宇宙旅行

登場国家
『大銀河帝国』
成立日:宇宙新暦376年7月4日
総人口:900億人

自治領
『ユートピアサイド』
統治勢力:大銀河帝国軍
総人口:70億人

『エデンプラネット』
統治勢力:タイラントキラー
総人口:50億人

『ホープエリア』
統治勢力:ホープセイバーズ
総人口:20億人

登場兵器
大銀河帝国軍
『アルセイス』
諸元
正式名:上級大将専用宇宙戦艦アルセイス
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:7隻
起工日:宇宙新暦722年3月27日
進宙日:宇宙新暦722年4月24日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:400m
全幅:220m
全高:80m
総重量:70万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:300人〜800人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:8基
光子魚雷発射機:2基
多目的ミサイル発射機:12基
艦載機:4機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:750mm
甲板装甲:550mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スレイプニル』
諸元
正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル
所属:大銀河帝国軍
建造所:プルトロン軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:18隻
起工日:宇宙新暦722年4月29日
進宙日:宇宙新暦722年5月26日
就役日:宇宙新暦722年5月30日
全長:990m
全幅:860m
全高:140m
総重量:950万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:6基
50mm対空パルスレーザー機関砲:80基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:800mm
甲板装甲:720mm
装甲材質:貴金属
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『セイバードラゴン』
諸元
正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:2万隻
起工日:宇宙新暦652年4月22日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:800m
全幅:600m
全高:120m
総重量:500万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:320人
輸送要員:2万人〜4万人
兵装
800mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:8基
多目的ミサイル発射機:20基
艦載機:90機
装甲
主砲装甲:750mm
舷側装甲:500mm
甲板装甲:460mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『バジリスク』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦バジリスク
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:6万隻〜8万隻
起工日:宇宙新暦722年3月26日
進宙日:宇宙新暦722年4月12日
就役日:宇宙新暦722年4月15日
全長:200m
全幅:140m
全高:40m
総重量:5万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
300mm高エネルギー連装砲:3基
50mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:1機〜2機※無人機
装甲
主砲装甲:440mm
舷側装甲:250mm
甲板装甲:130mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『アスピドケロン』
諸元
正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン
所属:大銀河帝国軍
建造所:メティス軍事工場
艦種:宇宙駆逐艦
同型艦:9万隻〜15万隻
起工日:宇宙新暦722年5月14日
進宙日:宇宙新暦722年5月26日
就役日:宇宙新暦722年6月4日
全長:180m
全幅:150m
全高:40m
総重量:4万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
250mm高エネルギー連装砲:4基
40mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:2機※無人機
装甲
主砲装甲:370mm
舷側装甲:240mm
甲板装甲:230mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースバード』
諸元
機種:宇宙戦闘機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦699年12月24日
生産数:8万機
運用開始:宇宙新暦700年6月2日
全長:17m
全幅:16m
全高:6m
総重量:14t
全速力:マッハ15
搭乗員:1人
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置

『セイバードローン』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年4月26日
生産数:780万機
運用開始:宇宙新暦722年5月12日
全長:15m
全幅:14m
全高:4m
総重量:12t
全速力:マッハ15〜超光速
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

『ケルベロス』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年6月30日
生産数:400万機
運用開始:宇宙新暦722年7月15日
全長:16m
全幅:12m
全高:5m
総重量:20t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

タイラントキラー
『サラマンダー』
諸元
正式名:宇宙戦艦サラマンダー
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:750隻
起工日:宇宙新暦628年1月24日
進宙日:宇宙新暦630年5月25日
就役日:宇宙新暦650年7月30日
全長:780m
全幅:540m
全高:90m
総重量:300万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:280人
輸送要員:2万人〜3万人
兵装
550mm高エネルギー連装砲:8基
40mm対空パルスレーザー機関砲:38基
光子魚雷発射機:4基
多目的ミサイル発射機:16基
艦載機:150機
装甲
主砲装甲:650mm
舷側装甲:480mm
甲板装甲:240mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『レヴィアタン』
諸元
正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:560隻
起工日:宇宙新暦718年3月29日
進宙日:宇宙新暦719年4月13日
就役日:宇宙新暦719年7月12日
全長:960m
全幅:530m
全高:120m
総重量:620万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:20人
輸送要員:4万人〜6万人
兵装
320mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:44基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:480mm
舷側装甲:340mm
甲板装甲:190mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『シーサーペント』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:4万隻
起工日:宇宙新暦720年1月27日
進宙日:宇宙新暦720年2月28日
就役日:宇宙新暦720年4月24日
全長:250m
全幅:180m
全高:50m
総重量:6万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
280mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:14基
光子魚雷発射機:4基
艦載機:2機〜4機※無人機
装甲
主砲装甲:470mm
舷側装甲:290mm
甲板装甲:150mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースドローン』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦720年2月27日
生産数:500万機
運用開始:宇宙新暦720年11月29日
全長:14m
全幅:12m
全高:3m
総重量:12t
全速力:マッハ14〜超光速
武装
20mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置

『ホワイトピクシー』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦721年3月12日
生産数:2万機
運用開始:宇宙新暦721年3月15日
全長:18m
全幅:16m
全高:6m
総重量:15t
全速力:マッハ20〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:6基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

ホープセイバーズ
『リトルヴィーナス』
諸元
正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:14隻
起工日:宇宙新暦652年4月25日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:850m
全幅:650m
全高:200m
総重量:600万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基
450mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:120機〜140機※無人機
装甲
主砲装甲:950mm
舷側装甲:580mm
甲板装甲:560mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『フェンリル』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦デュラハン
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:4万隻〜5万隻
起工日:宇宙新暦720年11月26日
進宙日:宇宙新暦721年12月30日
就役日:宇宙新暦721年2月24日
全長:350m
全幅:280m
全高:65m
総重量:7万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
450mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:16基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:5機※無人機
装甲
主砲装甲:680mm
舷側装甲:420mm
甲板装甲:270mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『ハイパードローン』
諸元
機種:無人機
所属:ホープセイバーズ
初飛行:宇宙新暦721年4月15日
生産数:900万機
運用開始:宇宙新暦721年5月30日
全長:12m
全幅:8m
全高:4m
総重量:8t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

作中用語
『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器
『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル
『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器
『メティス基地』小惑星
『プルトロン基地』人工惑星
『メタリックアイ』小惑星
『エターナルメタル』特殊超合金
『スーパーリアクター』無限動力炉
『ハイパーリアクター』新型無限動力炉

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。大銀河帝国軍にも宇宙用の偵察型ドローンは使用されるが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵軍を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセイス』だ…」
「えっ…アルセイスって…」
ストライダーはハッとする。
「アルセイスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アルセイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望すのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアルセイスと改名される。
「此奴の性能は?」
アルセイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり主砲…。超弩級波動砲『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

猛反撃

三日後…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセイスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。
「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アルセイスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…新型宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アルセイスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装はアルセイスと同様に主砲のケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアルセイス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアルセイスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」
「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…敵対勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
メンテ
桜花姫 ( No.73 )
日時: 2021/09/03 22:33
名前: 月影桜花姫

第一話

真夜中

太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が荒神山に出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟同然であり人間は誰一人として荒神山へは近寄れない。
「何やら無数の妖気が感じられる…」
(如何やら今回の相手も大群だな…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。
「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「妖怪よ…成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。
「大群だな…」
無数の食人餓鬼はふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」
総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度の相手は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。肉塊の怪物は巨体の人型であるが…。全身の体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は食人餓鬼の親玉…【百鬼食人餓鬼】か…」
百鬼食人餓鬼は通常の食人餓鬼の集合体であり食人餓鬼の親玉である。
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
(戻ろうか…)
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。
「えっ…」
今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(彼女は…人間の女性?)
背後の女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…発動!」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
「月影桃子姫様とは…伝説の巫女の?」
月影桃子姫とは人間の巫女であり強大なる霊力で多種多様の妖怪を征伐…。伝説の巫女として有名である。とある大妖怪との戦闘により失踪…。今現在では彼女の行方は不明である。
「勿論♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した異例の集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行し続けても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんてあんたは大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」
揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。
「あんた…私に殺されたいみたいね…」
「私に用事かしら?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかも知れないわね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気か!?)
突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「三蔵郎様♪」
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」
「勿論よ♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達の霊魂が妖怪化した化身…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。海難入道と遭遇した人間は溺死するのが通例である。
「漁船を襲撃したのが水難妖怪の海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは妖怪を退治するなんて…」
漁師達は呆れ果てる。
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪なのよ♪」
「あんたが妖怪だって?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「なっ!?俺達の漁船が…」
「桜餅に!?如何してこんな…」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。
「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは…本当に妖怪なのか?」
「勿論♪私は正真正銘妖怪なのよ♪」
問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間達は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。
「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」
三蔵郎は驚愕する。
「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」
桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。
「海難入道は?」
海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。
(こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…)
すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。
「妖気!?」
(ひょっとして海難入道の妖気かしら?)
接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。
「何かしら?」
巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。
(巨大真蛸…)
「海難入道だわ…」
海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。
「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」
海難入道は人語で発言したのである。
「私は変化の妖術で人魚にも変化出来るからね♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」
海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり自身が空腹であれば相手が妖怪であっても捕食する。
「空腹ね…私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」
「はっ?」
桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。
「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は皆無であるぞ…」
海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。
「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」
「人間に加勢したから何よ?私は鬱陶しい邪魔者を仕留めただけなのよね♪」
桜花姫は笑顔で反論したのである。
「貴様…気に入らないな…」
「気に入らないなら如何するのかしら♪」
「妖怪の面汚しである貴様は死滅しろ…」
海難入道は即座に巨大触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」
「今度は私の出番ね♪」
桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。
「あんたこそ死滅しなさい♪」
両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。
「直撃♪直撃♪」
雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。
「えっ?」
「残念だったな…桜花姫よ…」
桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。
「妖力を吸収するなんて…」
普段は冷静の桜花姫であるが…。海難入道の吸収能力に一瞬動揺する。
(海難入道には妖術が通用しないのかしら…)
「不思議そうな表情だな…桜花姫…俺はあらゆる妖力を吸収出来…妖術を無力化出来るのだ…」
海難入道の最強の特殊能力である吸収能力は自身の肉体に接触した多種多様の妖力を吸収出来…。あらゆる妖術を無力化出来る。基本的に妖力を駆使した攻撃法では海難入道は仕留められない。
「貴様程度の妖術では俺を仕留められない!」
(妖術が通用しないなんて…此奴は意外と厄介だわ…)
あらゆる魑魅魍魎の集合体である桜花姫でも…。妖力を吸収する妖怪を仕留めるのは非常に困難である。
(出直そうかな?)
恐る恐る後退りする。後退りする桜花姫に…。
「先程の威勢は如何した?俺に恐怖したか?」
「別に…」
問い掛けられた桜花姫は無表情で返答する。
「貴様は妖力だけなら大妖怪に匹敵するな…是非とも貴様を捕食したい…」
「私を捕食ですって?」
「あらゆる妖怪の集合体である貴様を食い殺せば…俺は大妖怪の領域に到達出来るからな♪」
豪語する海難入道に桜花姫は笑顔で…。
「私を捕食なんて…あんた程度の妖怪に出来るかしら♪」
桜花姫は笑顔で挑発したのである。
「貴様…本当に食い殺されたいらしいな…」
「食い殺せるのであれば私を食い殺しなさいよ♪」
桜花姫は再度挑発する。
「妖怪の小娘風情が…貴様は本当に気に入らない小娘だな…」
すると蛸足の巨大触手で桜花姫を拘束したのである。
「えっ?」
「貴様を食い殺す!」
一口で桜花姫を捕食…。口内で彼女を咀嚼したのである。
「所詮桜花姫はこんな程度の妖怪だ…」
すると直後…。桜花姫を捕食した影響からか先程よりも妖力が急上昇したのである。
「俺の妖力が増大化したぞ!」
妖力のみなら今現在の海難入道は大妖怪に匹敵…。海難入道は強大化した自身の妖力に大喜びしたのである。
「今日から俺も大妖怪の仲間入りだな♪」
すると直後…。
「ん?」
海難入道の全身が白煙に覆い包まれ…。二町規模の巨大さである海難入道の肉体が消滅したのである。すると白煙の内部から海難入道によって食い殺された桜花姫が出現…。彼女は無傷であり平気そうな様子だったのである。
「海難入道を仕留めたし♪」
(陸地に戻りましょう♪)
桜花姫は再度瞬間移動の妖術を駆使…。海岸の砂浜へと戻ったのである。
「なっ!?桜花姫様!?」
三蔵郎と合流する。
「三蔵郎様♪妖怪は無事征伐したわ♪」
「海難入道を征伐されたみたいですね…一瞬桜花姫様の妖気が消滅したので食い殺されたのかと…」
「一度海難入道に捕食されちゃったけれどね♪」
桜花姫は一時的に海難入道に捕食されたものの…。体内の胃袋から海難入道の肉体と同化したのである。
「反対に私が海難入道を捕食したのよ♪」
「えっ…捕食ですと?」
今現在海難入道は桜花姫の肉体の一部に変化する。
「兎にも角にも…海難入道は仕留めたから南国の海域は安全よ♪」
「事件は無事解決したので一件落着ですね…」
三蔵郎も一安心したのである。
「事件も解決したし♪戻りましょう♪」
「解散しますかね…」
桜花姫と三蔵郎は解散…。二人は村里へと戻ったのである。

第三話

強襲

南国での海難入道との大海戦から六日後の真夜中…。桜花姫は暇潰しに北国の村里にて散歩したのである。
「退屈ね…」
時間帯は深夜であり村人達は確認出来ない。
「妖怪でも出現しないかしら?」
基本的に多数の百鬼夜行が活動するのは真夜中であり日中に出現するのは中級以上の妖怪である。
「戻ろうかな?」
戻ろうかと思いきや…。
「ん!?」
突如として周囲より無数の気配を感じる。
(気配だわ…)
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒し始める。
(無数の妖気みたいね…)
「妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり無数の妖怪達が自身に接近するのを察知する。
「何が出現するのかしら?」
すると直後である。
「食人餓鬼だわ…」
周囲の地面より数十体もの食人餓鬼が出現…。周囲を包囲されたのである。
(敵意も感じられるわね…)
突如として出現した食人餓鬼であるが…。
「如何やらあんた達…私が気に入らないみたいね♪」
本来食人餓鬼は同種の妖怪には手出ししない性質なのだが…。桜花姫を敵対視した様子だったのである。直後…。食人餓鬼の大群は桜花姫に殺到する。
「はぁ…あんた達は命知らずね…」
桜花姫は呆れ果てるものの…。
「死滅しなさい♪」
念力の妖術を発動する。すると食人餓鬼の全身が肥大化…。破裂したのである。桜花姫の地面周辺には無数の鮮血やら肉片が散乱する。
(変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
「桜餅に変化しなさい♪」
今度は変化の妖術を発動すると周辺の肉片が小皿に配置された桜餅に変化したのである。
(変化の妖術成功♪)
「桜餅に変化したわね♪」
桜花姫は大喜びするなり…。無我夢中に桜餅を頬張り始める。数分後…。数百個もの桜餅を頬張ったのである。
「満足♪満足♪消耗しちゃった妖力も回復出来たわね♪」
戻ろうかと思いきや…。
「今度も無数の妖気を感じるわ…」
周囲より無数の妖気を察知する。
「今度も大群ね…」
すると周囲より数十体から数百体もの食人餓鬼の大群が出現…。今度は五体の百鬼食人餓鬼も確認出来る。
「先程よりも大群だわ…」
(今度は百鬼食人餓鬼も出現するなんてね…)
百鬼食人餓鬼と食人餓鬼の大群に包囲される。
「鬱陶しい奴等ね…」
面倒臭いと感じるのか体内の妖力を急上昇…。天空が黒雲により覆い包まれる。
「死滅しなさい♪」
落雷の妖術を発動…。黒雲から落雷が発生したのである。落雷が地面に直撃すると地面が抉られ…。周囲の食人餓鬼と百鬼食人餓鬼を一掃させる。
「所詮は雑魚妖怪ね♪大妖怪に相当する私に挑戦するなんて無謀なのよ♪」
夜空の満月を眺望するなり…。
「西国に戻ろうかしら…」
直後である。
「えっ?」
突如として不吉の気配を感じる。
(何かしら?)
「妖気?」
不吉の妖気が一歩ずつ接近する。
(妖気なのは確実だけど…)
普段は冷静沈着の桜花姫であるが…。不吉の妖気に戦慄したのである。
(妖気は妖気でも…此奴は大妖怪の妖気ね…)
不吉の妖気は大妖怪の妖気であり桜花姫は警戒する。
(一体何が出現するのかしら?)
すると背後より…。
「貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫か…」
「えっ!?」
桜花姫は警戒した様子で背後を直視したのである。
「あんたは…」
彼女の背後に佇立するのは大陸風の甲冑を装備した小柄の武人であり桜花姫を凝視する。
「私は…【夜叉丸】…大妖怪の一人だ…」
夜叉丸とは武人の妖怪であり外見は小柄の青年である。絶大なる妖力により北国一帯を支配する大妖怪であり人間達は勿論…。数多の妖怪達が彼を畏怖する。
「大妖怪夜叉丸…こんな場所であんたと遭遇するなんてね…」
桜花姫は畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。
メンテ
宇宙大艦隊 ( No.74 )
日時: 2021/09/04 11:24
名前: 月影桜花姫

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。大銀河帝国軍にも宇宙用の偵察型ドローンは使用されるが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセイス』だ…」
「えっ…アルセイスって…」
ストライダーはハッとする。
「アルセイスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アルセイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望すのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアルセイスと改名される。
「此奴の性能は?」
アルセイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり主砲…。超弩級波動砲『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセイスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。
「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アルセイスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アルセイスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装はアルセイスと同様に主砲のケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアルセイス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアルセイスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」
「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。メタリックアイは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…メタリックアイを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事メタリックアイを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

無事メタリックアイを制圧した大銀河帝国軍はメタリックアイで放置された三十四隻の宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。メタリックアイ制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪メタリックアイ制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
メタリックアイ制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「余程死にたいらしいな…奴等…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは旗艦のアルセイスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アルセイスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
すると艦内のスペースレーダーが反応する。
「スペースレーダーが反応しました…」
「敵軍か?」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
メンテ
宇宙大動乱 ( No.75 )
日時: 2021/09/05 19:43
名前: 月影桜花姫

ジャンル
スペースオペラ

世界観
宇宙文明

登場人物
大銀河帝国軍
【ブラッドフォード】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦692年7月16日
星座:牡牛座
実年齢:30歳
所属:大銀河帝国軍
役職:大総統
階級:総帥
性別:男性
身長:168cm
体重:68kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:冷静沈着、合理主義、強硬
趣味:ライフル射撃

【ストライダー】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦674年3月22日
星座:牡羊座
実年齢:48歳
所属:大銀河帝国軍
役職:副総統
階級:大将
性別:男性
身長:199cm
体重:88kg
血液型:B型
一人称:私
性格:適当、面倒臭がり
趣味:プラモデル作成、設計

【ホムンクルス】
種別:クローン人間
所属:大銀河帝国軍
生産数:700万人〜7億人

タイラントキラー
【ウィグノール】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦678年9月28日
星座:天秤座
実年齢:44歳
所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー
役職:総帥
階級:中将
性別:男性
身長:200cm
体重:89kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:生真面目
趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム

【ウェンフィールド】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦700年8月17日
星座:獅子座
実年齢:22歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大佐
性別:男性
身長:176cm
体重:76kg
血液型:O型
一人称:私
性格:誠実
趣味:ホラーゲーム

ホープセイバーズ
【ルーヴェルハルト】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦668年4月25日
星座:牡牛座
実年齢:54歳
所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ
役職:総帥
階級:少将
性別:男性
身長:198cm
体重:87kg
血液型:A型
一人称:私
性格:穏和、野心的
趣味:宇宙旅行

登場国家
『大銀河帝国』
成立日:宇宙新暦376年7月4日
総人口:900億人

自治領
『ユートピアサイド』
統治勢力:大銀河帝国軍
総人口:70億人

『エデンプラネット』
統治勢力:タイラントキラー
総人口:50億人

『ホープエリア』
統治勢力:ホープセイバーズ
総人口:20億人

登場兵器
大銀河帝国軍
『アルセイス』
諸元
正式名:上級大将専用宇宙戦艦アルセイス
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:7隻
起工日:宇宙新暦722年3月27日
進宙日:宇宙新暦722年4月24日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:400m
全幅:220m
全高:80m
総重量:70万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:300人〜800人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:8基
光子魚雷発射機:2基
多目的ミサイル発射機:12基
艦載機:4機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:750mm
甲板装甲:550mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スレイプニル』
諸元
正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル
所属:大銀河帝国軍
建造所:プルトロン軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:18隻
起工日:宇宙新暦722年4月29日
進宙日:宇宙新暦722年5月26日
就役日:宇宙新暦722年5月30日
全長:990m
全幅:860m
全高:140m
総重量:950万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:6基
50mm対空パルスレーザー機関砲:80基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:800mm
甲板装甲:720mm
装甲材質:貴金属
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『セイバードラゴン』
諸元
正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:2万隻
起工日:宇宙新暦652年4月22日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:800m
全幅:600m
全高:120m
総重量:500万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:320人
輸送要員:2万人〜4万人
兵装
800mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:8基
多目的ミサイル発射機:20基
艦載機:90機
装甲
主砲装甲:750mm
舷側装甲:500mm
甲板装甲:460mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『バジリスク』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦バジリスク
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:6万隻〜8万隻
起工日:宇宙新暦722年3月26日
進宙日:宇宙新暦722年4月12日
就役日:宇宙新暦722年4月15日
全長:200m
全幅:140m
全高:40m
総重量:5万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
300mm高エネルギー連装砲:3基
50mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:1機〜2機※無人機
装甲
主砲装甲:440mm
舷側装甲:250mm
甲板装甲:130mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『アスピドケロン』
諸元
正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン
所属:大銀河帝国軍
建造所:メティス軍事工場
艦種:宇宙駆逐艦
同型艦:9万隻〜15万隻
起工日:宇宙新暦722年5月14日
進宙日:宇宙新暦722年5月22日
就役日:宇宙新暦722年6月4日
全長:180m
全幅:150m
全高:40m
総重量:4万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
250mm高エネルギー連装砲:4基
40mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:2機※無人機
装甲
主砲装甲:370mm
舷側装甲:240mm
甲板装甲:230mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースバード』
諸元
機種:宇宙戦闘機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦699年12月24日
生産数:8万機
運用開始:宇宙新暦700年6月2日
全長:17m
全幅:16m
全高:6m
総重量:14t
全速力:マッハ15
搭乗員:1人
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置

『セイバードローン』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年4月26日
生産数:140万機
運用開始:宇宙新暦722年5月12日
全長:15m
全幅:14m
全高:4m
総重量:12t
全速力:マッハ15〜超光速
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

『ケルベロス』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年6月30日
生産数:78万機
運用開始:宇宙新暦722年7月15日
全長:16m
全幅:12m
全高:5m
総重量:20t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

タイラントキラー
『サラマンダー』
諸元
正式名:宇宙戦艦サラマンダー
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:750隻
起工日:宇宙新暦628年1月24日
進宙日:宇宙新暦630年5月25日
就役日:宇宙新暦650年7月30日
全長:780m
全幅:540m
全高:90m
総重量:300万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:280人
輸送要員:2万人〜3万人
兵装
550mm高エネルギー連装砲:8基
40mm対空パルスレーザー機関砲:38基
光子魚雷発射機:4基
多目的ミサイル発射機:16基
艦載機:150機
装甲
主砲装甲:650mm
舷側装甲:480mm
甲板装甲:240mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『レヴィアタン』
諸元
正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:560隻
起工日:宇宙新暦722年1月22日
進宙日:宇宙新暦722年2月13日
就役日:宇宙新暦722年2月24日
全長:960m
全幅:530m
全高:120m
総重量:620万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:20人
輸送要員:4万人〜6万人
兵装
320mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:44基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:480mm
舷側装甲:340mm
甲板装甲:190mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『シーサーペント』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:4万隻
起工日:宇宙新暦722年2月28日
進宙日:宇宙新暦722年3月14日
就役日:宇宙新暦722年3月20日
全長:250m
全幅:180m
全高:50m
総重量:6万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
280mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:14基
光子魚雷発射機:4基
艦載機:2機〜4機※無人機
装甲
主砲装甲:470mm
舷側装甲:290mm
甲板装甲:150mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースドローン』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年2月27日
生産数:50万機
運用開始:宇宙新暦722年3月12日
全長:14m
全幅:12m
全高:3m
総重量:12t
全速力:マッハ14〜超光速
武装
20mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置

『ホワイトピクシー』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年4月28日
生産数:700機
運用開始:宇宙新暦722年5月2日
全長:18m
全幅:16m
全高:6m
総重量:15t
全速力:マッハ20〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:6基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

ホープセイバーズ
『リトルヴィーナス』
諸元
正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:14隻
起工日:宇宙新暦722年5月27日
進宙日:宇宙新暦722年6月4日
就役日:宇宙新暦722年6月10日
全長:850m
全幅:650m
全高:200m
総重量:600万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基
450mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:120機〜140機※無人機
装甲
主砲装甲:950mm
舷側装甲:580mm
甲板装甲:560mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『フェンリル』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦デュラハン
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:400隻〜500隻
起工日:宇宙新暦722年5月26日
進宙日:宇宙新暦722年6月3日
就役日:宇宙新暦722年6月9日
全長:350m
全幅:280m
全高:65m
総重量:7万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
450mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:16基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:5機※無人機
装甲
主砲装甲:680mm
舷側装甲:420mm
甲板装甲:270mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『ハイパードローン』
諸元
機種:無人機
所属:ホープセイバーズ
初飛行:宇宙新暦722年5月30日
生産数:90万機
運用開始:宇宙新暦722年6月13日
全長:12m
全幅:8m
全高:4m
総重量:8t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

作中用語
『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器
『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル
『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器
『メティス基地』小惑星
『プルトロン基地』人工惑星
『メタリックアイ』小惑星
『エターナルメタル』特殊超合金
『スーパーリアクター』無限動力炉
『ハイパーリアクター』新型無限動力炉
メンテ
宇宙大動乱 ( No.76 )
日時: 2021/09/07 11:36
名前: 月影桜花姫

ジャンル
スペースオペラ

世界観
宇宙文明

登場人物
大銀河帝国軍
【ブラッドフォード】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦692年7月16日
星座:牡牛座
実年齢:30歳
所属:大銀河帝国軍
役職:大総統
階級:総帥
性別:男性
身長:168cm
体重:68kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:冷静沈着、合理主義、強硬
趣味:ライフル射撃

【ストライダー】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦674年3月22日
星座:牡羊座
実年齢:48歳
所属:大銀河帝国軍
役職:副総統
階級:大将
性別:男性
身長:199cm
体重:88kg
血液型:B型
一人称:私
性格:適当、面倒臭がり
趣味:プラモデル作成、設計

【ホムンクルス】
種別:クローン人間
所属:大銀河帝国軍
生産数:700万人〜7億人

タイラントキラー
【ウィグノール】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦678年9月28日
星座:天秤座
実年齢:44歳
所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー
役職:総帥
階級:中将
性別:男性
身長:200cm
体重:89kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:生真面目
趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム

【ウェンフィールド】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦700年8月17日
星座:獅子座
実年齢:22歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大佐
性別:男性
身長:176cm
体重:76kg
血液型:O型
一人称:私
性格:誠実
趣味:ホラーゲーム

ホープセイバーズ
【ルーヴェルハルト】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦668年5月7日
星座:牡牛座
実年齢:54歳
所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ
役職:総帥
階級:少将
性別:男性
身長:198cm
体重:87kg
血液型:A型
一人称:私
性格:穏和、野心的
趣味:宇宙旅行

登場国家
『大銀河帝国』
成立日:宇宙新暦376年7月4日
総人口:900億人

自治領
『ユートピアサイド』
統治勢力:大銀河帝国軍
総人口:70億人

『エデンプラネット』
統治勢力:タイラントキラー
総人口:50億人

『ホープエリア』
統治勢力:ホープセイバーズ
総人口:20億人

登場兵器
大銀河帝国軍
『アプセラス』
諸元
正式名:上級大将専用宇宙戦艦アプセラス
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:7隻
起工日:宇宙新暦722年3月27日
進宙日:宇宙新暦722年4月24日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:400m
全幅:220m
全高:80m
総重量:70万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:300人〜800人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:8基
光子魚雷発射機:2基
多目的ミサイル発射機:12基
艦載機:4機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:750mm
甲板装甲:550mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スレイプニル』
諸元
正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル
所属:大銀河帝国軍
建造所:プルトロン軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:18隻
起工日:宇宙新暦722年3月29日
進宙日:宇宙新暦722年4月26日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:990m
全幅:860m
全高:140m
総重量:950万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:6基
50mm対空パルスレーザー機関砲:80基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:800mm
甲板装甲:720mm
装甲材質:貴金属
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『セイバードラゴン』
諸元
正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:2万隻〜3万隻
起工日:宇宙新暦652年4月22日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:800m
全幅:600m
全高:120m
総重量:500万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:320人
輸送要員:2万人〜4万人
兵装
800mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:8基
多目的ミサイル発射機:20基
艦載機:90機
装甲
主砲装甲:750mm
舷側装甲:550mm
甲板装甲:460mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『バジリスク』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦バジリスク
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:6万隻〜8万隻
起工日:宇宙新暦722年3月26日
進宙日:宇宙新暦722年4月12日
就役日:宇宙新暦722年4月15日
全長:200m
全幅:140m
全高:40m
総重量:5万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
300mm高エネルギー連装砲:3基
50mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:1機〜2機※無人機
装甲
主砲装甲:440mm
舷側装甲:250mm
甲板装甲:130mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『アスピドケロン』
諸元
正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン
所属:大銀河帝国軍
建造所:メティス軍事工場
艦種:宇宙駆逐艦
同型艦:9万隻〜15万隻
起工日:宇宙新暦722年5月14日
進宙日:宇宙新暦722年5月22日
就役日:宇宙新暦722年6月4日
全長:180m
全幅:150m
全高:40m
総重量:4万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
250mm高エネルギー連装砲:4基
40mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:2機※無人機
装甲
主砲装甲:370mm
舷側装甲:240mm
甲板装甲:230mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースバード』
諸元
機種:宇宙戦闘機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦699年12月24日
生産数:8万機
運用開始:宇宙新暦700年6月2日
全長:17m
全幅:16m
全高:6m
総重量:14t
全速力:マッハ15
搭乗員:1人
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置

『セイバードローン』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年4月26日
生産数:140万機
運用開始:宇宙新暦722年5月12日
全長:15m
全幅:14m
全高:4m
総重量:12t
全速力:マッハ15〜超光速
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

『ケルベロス』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年6月30日
生産数:78万機
運用開始:宇宙新暦722年7月15日
全長:16m
全幅:12m
全高:5m
総重量:20t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

タイラントキラー
『サラマンダー』
諸元
正式名:宇宙戦艦サラマンダー
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:600隻〜700隻
起工日:宇宙新暦628年1月24日
進宙日:宇宙新暦630年5月25日
就役日:宇宙新暦650年7月30日
全長:780m
全幅:540m
全高:90m
総重量:300万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:280人
輸送要員:2万人〜3万人
兵装
750mm高エネルギー連装砲:8基
40mm対空パルスレーザー機関砲:38基
光子魚雷発射機:4基
多目的ミサイル発射機:16基
艦載機:150機
装甲
主砲装甲:650mm
舷側装甲:480mm
甲板装甲:240mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『レヴィアタン』
諸元
正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:500隻〜600隻
起工日:宇宙新暦722年1月22日
進宙日:宇宙新暦722年2月13日
就役日:宇宙新暦722年2月24日
全長:960m
全幅:530m
全高:120m
総重量:620万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:20人
輸送要員:4万人〜6万人
兵装
320mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:44基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:480mm
舷側装甲:340mm
甲板装甲:190mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『シーサーペント』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:3万隻〜4万隻
起工日:宇宙新暦722年2月28日
進宙日:宇宙新暦722年3月14日
就役日:宇宙新暦722年3月20日
全長:250m
全幅:180m
全高:50m
総重量:6万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
280mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:14基
光子魚雷発射機:4基
艦載機:2機〜4機※無人機
装甲
主砲装甲:470mm
舷側装甲:290mm
甲板装甲:150mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースドローン』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年2月27日
生産数:50万機
運用開始:宇宙新暦722年3月12日
全長:14m
全幅:12m
全高:3m
総重量:12t
全速力:マッハ14〜超光速
武装
20mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置

『ホワイトピクシー』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年4月28日
生産数:700機
運用開始:宇宙新暦722年5月2日
全長:18m
全幅:16m
全高:6m
総重量:15t
全速力:マッハ20〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:6基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

ホープセイバーズ
『リトルヴィーナス』
諸元
正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:14隻
起工日:宇宙新暦722年5月27日
進宙日:宇宙新暦722年6月4日
就役日:宇宙新暦722年6月10日
全長:850m
全幅:650m
全高:200m
総重量:600万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基
450mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:120機〜140機※無人機
装甲
主砲装甲:950mm
舷側装甲:580mm
甲板装甲:560mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『フェンリル』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦デュラハン
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:400隻〜500隻
起工日:宇宙新暦722年5月26日
進宙日:宇宙新暦722年6月3日
就役日:宇宙新暦722年6月9日
全長:350m
全幅:280m
全高:65m
総重量:7万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
450mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:16基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:5機※無人機
装甲
主砲装甲:680mm
舷側装甲:420mm
甲板装甲:270mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『ハイパードローン』
諸元
機種:無人機
所属:ホープセイバーズ
初飛行:宇宙新暦722年5月30日
生産数:90万機
運用開始:宇宙新暦722年6月13日
全長:12m
全幅:8m
全高:4m
総重量:8t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

作中用語
『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器
『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル
『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器
『メティス基地』小惑星
『プルトロン基地』人工惑星
『メタリックアイ』小惑星
『エターナルメタル』特殊超合金
『スーパーリアクター』無限動力炉
『ハイパーリアクター』新型無限動力炉

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」
「えっ…アプセラスって…」
ストライダーはハッとする。
「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望すのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。
「此奴の性能は?」
アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり主砲…。超弩級波動砲『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。
「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装はアプセラスと同様に主砲のケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」
「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。メタリックアイは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…メタリックアイを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事メタリックアイを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

無事メタリックアイを制圧した大銀河帝国軍はメタリックアイで放置された三十四隻の宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。メタリックアイ制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪メタリックアイ制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
メタリックアイ制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「余程死にたいらしいな…奴等…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは旗艦のアプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河戦争により崩壊…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私は大満足です♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だが大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国です…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…」
メンテ
宇宙大動乱 ( No.77 )
日時: 2021/09/07 15:57
名前: 月影桜花姫

ジャンル
スペースオペラ

世界観
宇宙文明

登場人物
大銀河帝国軍
【ブラッドフォード】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦692年7月16日
星座:牡牛座
実年齢:30歳
所属:大銀河帝国軍
役職:大総統
階級:総帥
性別:男性
身長:168cm
体重:68kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:冷静沈着、合理主義、強硬
趣味:ライフル射撃

【ストライダー】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦674年3月22日
星座:牡羊座
実年齢:48歳
所属:大銀河帝国軍
役職:副総統
階級:大将
性別:男性
身長:199cm
体重:88kg
血液型:B型
一人称:私
性格:適当、面倒臭がり
趣味:プラモデル作成、設計

【ホムンクルス】
種別:クローン人間
所属:大銀河帝国軍
生産数:700万人〜7億人

タイラントキラー
【ウィグノール】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦678年9月28日
星座:天秤座
実年齢:44歳
所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー
役職:総帥
階級:中将
性別:男性
身長:200cm
体重:89kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:生真面目
趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム

【ウェンフィールド】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦700年8月17日
星座:獅子座
実年齢:22歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大佐
性別:男性
身長:176cm
体重:76kg
血液型:O型
一人称:私
性格:誠実
趣味:ホラーゲーム

ホープセイバーズ
【ルーヴェルハルト】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦668年5月7日
星座:牡牛座
実年齢:54歳
所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ
役職:総帥
階級:少将
性別:男性
身長:198cm
体重:87kg
血液型:A型
一人称:私
性格:穏和、野心的
趣味:宇宙旅行

登場国家
『大銀河帝国』
成立日:宇宙新暦376年7月4日
総人口:900億人

自治領
『ユートピアサイド』
統治勢力:大銀河帝国軍
総人口:70億人

『エデンプラネット』
統治勢力:タイラントキラー
総人口:50億人

『ホープエリア』
統治勢力:ホープセイバーズ
総人口:20億人

登場兵器
大銀河帝国軍
『アプセラス』
諸元
正式名:上級大将専用宇宙戦艦アプセラス
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:7隻
起工日:宇宙新暦722年3月27日
進宙日:宇宙新暦722年4月24日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:400m
全幅:220m
全高:80m
総重量:70万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:300人〜800人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:8基
光子魚雷発射機:2基
多目的ミサイル発射機:12基
艦載機:4機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:750mm
甲板装甲:550mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スレイプニル』
諸元
正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル
所属:大銀河帝国軍
建造所:プルトロン軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:18隻
起工日:宇宙新暦722年3月29日
進宙日:宇宙新暦722年4月26日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:990m
全幅:860m
全高:140m
総重量:950万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:6基
50mm対空パルスレーザー機関砲:80基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:800mm
甲板装甲:720mm
装甲材質:貴金属
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『セイバードラゴン』
諸元
正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:2万隻〜3万隻
起工日:宇宙新暦652年4月22日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:800m
全幅:600m
全高:120m
総重量:500万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:320人
輸送要員:2万人〜4万人
兵装
800mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:8基
多目的ミサイル発射機:20基
艦載機:90機
装甲
主砲装甲:750mm
舷側装甲:550mm
甲板装甲:460mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『バジリスク』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦バジリスク
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:6万隻〜8万隻
起工日:宇宙新暦722年3月26日
進宙日:宇宙新暦722年4月12日
就役日:宇宙新暦722年4月15日
全長:200m
全幅:140m
全高:40m
総重量:5万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
300mm高エネルギー連装砲:3基
50mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:1機〜2機※無人機
装甲
主砲装甲:440mm
舷側装甲:250mm
甲板装甲:130mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『アスピドケロン』
諸元
正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン
所属:大銀河帝国軍
建造所:メティス軍事工場
艦種:宇宙駆逐艦
同型艦:9万隻〜15万隻
起工日:宇宙新暦722年5月14日
進宙日:宇宙新暦722年5月22日
就役日:宇宙新暦722年6月4日
全長:180m
全幅:150m
全高:40m
総重量:4万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
250mm高エネルギー連装砲:4基
40mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:2機※無人機
装甲
主砲装甲:370mm
舷側装甲:240mm
甲板装甲:230mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースバード』
諸元
機種:宇宙戦闘機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦699年12月24日
生産数:8万機
運用開始:宇宙新暦700年6月2日
全長:17m
全幅:16m
全高:6m
総重量:14t
全速力:マッハ15
搭乗員:1人
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置

『セイバードローン』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年4月26日
生産数:140万機
運用開始:宇宙新暦722年5月12日
全長:15m
全幅:14m
全高:4m
総重量:12t
全速力:マッハ15〜超光速
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

『ケルベロス』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年6月30日
生産数:78万機
運用開始:宇宙新暦722年7月15日
全長:16m
全幅:12m
全高:5m
総重量:20t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

タイラントキラー
『サラマンダー』
諸元
正式名:宇宙戦艦サラマンダー
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:600隻〜700隻
起工日:宇宙新暦628年1月24日
進宙日:宇宙新暦630年5月25日
就役日:宇宙新暦650年7月30日
全長:780m
全幅:540m
全高:90m
総重量:300万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:280人
輸送要員:2万人〜3万人
兵装
750mm高エネルギー連装砲:8基
40mm対空パルスレーザー機関砲:38基
光子魚雷発射機:4基
多目的ミサイル発射機:16基
艦載機:150機
装甲
主砲装甲:650mm
舷側装甲:480mm
甲板装甲:240mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『レヴィアタン』
諸元
正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:500隻〜600隻
起工日:宇宙新暦722年1月22日
進宙日:宇宙新暦722年2月13日
就役日:宇宙新暦722年2月24日
全長:960m
全幅:530m
全高:120m
総重量:620万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:20人
輸送要員:4万人〜6万人
兵装
320mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:44基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:480mm
舷側装甲:340mm
甲板装甲:190mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『シーサーペント』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:3万隻〜4万隻
起工日:宇宙新暦722年2月28日
進宙日:宇宙新暦722年3月14日
就役日:宇宙新暦722年3月20日
全長:250m
全幅:180m
全高:50m
総重量:6万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
280mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:14基
光子魚雷発射機:4基
艦載機:2機〜4機※無人機
装甲
主砲装甲:470mm
舷側装甲:290mm
甲板装甲:150mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースドローン』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年2月27日
生産数:50万機
運用開始:宇宙新暦722年3月12日
全長:14m
全幅:12m
全高:3m
総重量:12t
全速力:マッハ14〜超光速
武装
20mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置

『ホワイトピクシー』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年4月28日
生産数:700機
運用開始:宇宙新暦722年5月2日
全長:18m
全幅:16m
全高:6m
総重量:15t
全速力:マッハ20〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:6基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

ホープセイバーズ
『リトルヴィーナス』
諸元
正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:14隻
起工日:宇宙新暦722年5月27日
進宙日:宇宙新暦722年6月4日
就役日:宇宙新暦722年6月10日
全長:850m
全幅:650m
全高:200m
総重量:600万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基
450mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:120機〜140機※無人機
装甲
主砲装甲:950mm
舷側装甲:580mm
甲板装甲:560mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『フェンリル』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦デュラハン
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:400隻〜500隻
起工日:宇宙新暦722年5月26日
進宙日:宇宙新暦722年6月3日
就役日:宇宙新暦722年6月9日
全長:350m
全幅:280m
全高:65m
総重量:7万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
450mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:16基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:5機※無人機
装甲
主砲装甲:680mm
舷側装甲:420mm
甲板装甲:270mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『ハイパードローン』
諸元
機種:無人機
所属:ホープセイバーズ
初飛行:宇宙新暦722年5月30日
生産数:90万機
運用開始:宇宙新暦722年6月13日
全長:12m
全幅:8m
全高:4m
総重量:8t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

作中用語
『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器
『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル
『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器
『メティス基地』小惑星
『プルトロン基地』人工惑星
『メタリックアイ』小惑星
『エターナルメタル』特殊超合金
『スーパーリアクター』無限動力炉
『ハイパーリアクター』新型無限動力炉

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」
「えっ…アプセラスって…」
ストライダーはハッとする。
「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望するのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。
「此奴の性能は?」
アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。
「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アプセラスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」
「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。メタリックアイは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…メタリックアイを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事メタリックアイを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

無事メタリックアイを制圧した大銀河帝国軍はメタリックアイで放置された三十四隻の宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。メタリックアイ制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪メタリックアイ制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
メタリックアイ制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは旗艦のアプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河戦争により崩壊…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私は大満足です♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だが大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国です…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」
「困難なのは承知だ…」
メンテ
宇宙大動乱 ( No.78 )
日時: 2021/09/08 10:30
名前: 月影桜花姫

ジャンル
スペースオペラ

世界観
宇宙文明

登場人物
大銀河帝国軍
【ブラッドフォード】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦692年7月16日
星座:牡牛座
実年齢:30歳
所属:大銀河帝国軍
役職:大総統
階級:総帥
性別:男性
身長:168cm
体重:68kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:冷静沈着、合理主義、強硬
趣味:ライフル射撃

【ストライダー】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦674年3月22日
星座:牡羊座
実年齢:48歳
所属:大銀河帝国軍
役職:副総統
階級:大将
性別:男性
身長:199cm
体重:88kg
血液型:B型
一人称:私
性格:適当、面倒臭がり
趣味:プラモデル作成、設計

【ホムンクルス】
種別:クローン人間
所属:大銀河帝国軍
生産数:700万人〜7億人

タイラントキラー
【ウィグノール】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦678年9月28日
星座:天秤座
実年齢:44歳
所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー
役職:総帥
階級:中将
性別:男性
身長:200cm
体重:89kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:生真面目
趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム

【ウェンフィールド】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦700年8月17日
星座:獅子座
実年齢:22歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大佐
性別:男性
身長:176cm
体重:76kg
血液型:O型
一人称:私
性格:誠実
趣味:ホラーゲーム

ホープセイバーズ
【ルーヴェルハルト】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦668年5月7日
星座:牡牛座
実年齢:54歳
所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ
役職:総帥
階級:少将
性別:男性
身長:198cm
体重:87kg
血液型:A型
一人称:私
性格:穏和、野心的
趣味:宇宙旅行

登場国家
『大銀河帝国』
成立日:宇宙新暦376年7月4日
総人口:900億人

自治領
『ユートピアサイド』
統治勢力:大銀河帝国軍
総人口:70億人

『エデンプラネット』
統治勢力:タイラントキラー
総人口:50億人

『ホープエリア』
統治勢力:ホープセイバーズ
総人口:20億人

登場兵器
大銀河帝国軍
『アルセウイス』
諸元
正式名:上級大将専用宇宙戦艦アルセウイス
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:7隻
起工日:宇宙新暦722年3月27日
進宙日:宇宙新暦722年4月24日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:400m
全幅:220m
全高:80m
総重量:70万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:300人〜800人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:8基
光子魚雷発射機:2基
多目的ミサイル発射機:12基
艦載機:4機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:750mm
甲板装甲:550mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スレイプニル』
諸元
正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル
所属:大銀河帝国軍
建造所:プルトロン軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:18隻
起工日:宇宙新暦722年3月29日
進宙日:宇宙新暦722年4月26日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:990m
全幅:860m
全高:140m
総重量:950万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:6基
50mm対空パルスレーザー機関砲:80基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:800mm
甲板装甲:720mm
装甲材質:貴金属
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『セイバードラゴン』
諸元
正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:2万隻〜3万隻
起工日:宇宙新暦652年4月22日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:800m
全幅:600m
全高:120m
総重量:500万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:320人
輸送要員:2万人〜4万人
兵装
800mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:8基
多目的ミサイル発射機:20基
艦載機:90機
装甲
主砲装甲:750mm
舷側装甲:550mm
甲板装甲:460mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『バジリスク』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦バジリスク
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:6万隻〜8万隻
起工日:宇宙新暦722年3月26日
進宙日:宇宙新暦722年4月12日
就役日:宇宙新暦722年4月15日
全長:200m
全幅:140m
全高:40m
総重量:5万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
300mm高エネルギー連装砲:3基
50mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:1機〜2機※無人機
装甲
主砲装甲:440mm
舷側装甲:250mm
甲板装甲:130mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『アスピドケロン』
諸元
正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン
所属:大銀河帝国軍
建造所:メティス軍事工場
艦種:宇宙駆逐艦
同型艦:9万隻〜15万隻
起工日:宇宙新暦722年5月14日
進宙日:宇宙新暦722年5月22日
就役日:宇宙新暦722年6月4日
全長:180m
全幅:150m
全高:40m
総重量:4万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
250mm高エネルギー連装砲:4基
40mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:2機※無人機
装甲
主砲装甲:370mm
舷側装甲:240mm
甲板装甲:230mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースバード』
諸元
機種:宇宙戦闘機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦699年12月24日
生産数:8万機
運用開始:宇宙新暦700年6月2日
全長:17m
全幅:16m
全高:6m
総重量:14t
全速力:マッハ15
搭乗員:1人
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置

『セイバードローン』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年4月26日
生産数:140万機
運用開始:宇宙新暦722年5月12日
全長:15m
全幅:14m
全高:4m
総重量:12t
全速力:マッハ15〜超光速
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

『ケルベロス』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年6月30日
生産数:78万機
運用開始:宇宙新暦722年7月15日
全長:16m
全幅:12m
全高:5m
総重量:20t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

タイラントキラー
『サラマンダー』
諸元
正式名:宇宙戦艦サラマンダー
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:600隻〜700隻
起工日:宇宙新暦628年1月24日
進宙日:宇宙新暦630年5月25日
就役日:宇宙新暦650年7月30日
全長:780m
全幅:540m
全高:90m
総重量:300万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:280人
輸送要員:2万人〜3万人
兵装
750mm高エネルギー連装砲:8基
40mm対空パルスレーザー機関砲:38基
光子魚雷発射機:4基
多目的ミサイル発射機:16基
艦載機:150機
装甲
主砲装甲:650mm
舷側装甲:480mm
甲板装甲:240mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能

『レヴィアタン』
諸元
正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:500隻〜600隻
起工日:宇宙新暦722年1月22日
進宙日:宇宙新暦722年2月13日
就役日:宇宙新暦722年2月24日
全長:960m
全幅:530m
全高:120m
総重量:620万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:20人
輸送要員:4万人〜6万人
兵装
320mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:44基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:480mm
舷側装甲:340mm
甲板装甲:190mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『シーサーペント』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:3万隻〜4万隻
起工日:宇宙新暦722年2月28日
進宙日:宇宙新暦722年3月14日
就役日:宇宙新暦722年3月20日
全長:250m
全幅:180m
全高:50m
総重量:6万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
280mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:14基
光子魚雷発射機:4基
艦載機:2機〜4機※無人機
装甲
主砲装甲:470mm
舷側装甲:290mm
甲板装甲:150mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースドローン』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年2月27日
生産数:50万機
運用開始:宇宙新暦722年3月12日
全長:14m
全幅:12m
全高:3m
総重量:12t
全速力:マッハ14〜超光速
武装
20mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置

『ホワイトピクシー』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年4月28日
生産数:700機
運用開始:宇宙新暦722年5月2日
全長:18m
全幅:16m
全高:6m
総重量:15t
全速力:マッハ20〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:6基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

ホープセイバーズ
『リトルヴィーナス』
諸元
正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:14隻
起工日:宇宙新暦722年5月27日
進宙日:宇宙新暦722年6月4日
就役日:宇宙新暦722年6月10日
全長:850m
全幅:650m
全高:200m
総重量:600万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基
450mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:120機〜140機※無人機
装甲
主砲装甲:950mm
舷側装甲:580mm
甲板装甲:560mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『フェンリル』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦デュラハン
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:400隻〜500隻
起工日:宇宙新暦722年5月26日
進宙日:宇宙新暦722年6月3日
就役日:宇宙新暦722年6月9日
全長:350m
全幅:280m
全高:65m
総重量:7万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
450mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:16基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:5機※無人機
装甲
主砲装甲:680mm
舷側装甲:420mm
甲板装甲:270mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
シールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『ハイパードローン』
諸元
機種:無人機
所属:ホープセイバーズ
初飛行:宇宙新暦722年5月30日
生産数:90万機
運用開始:宇宙新暦722年6月13日
全長:12m
全幅:8m
全高:4m
総重量:8t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
シールド装置
シールドジャミング装置
ステルス機能

作中用語
『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器
『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル
『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器
『メティス基地』小惑星
『プルトロン基地』人工惑星
『メタリックアイ』小惑星
『エターナルメタル』特殊超合金
『スーパーリアクター』無限動力炉
『ハイパーリアクター』新型無限動力炉

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…即刻脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセウイス』だ…」
「えっ…アルセウイスって…」
ストライダーはハッとする。
「アルセウイスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アルセウイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望するのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアルセウイスと改名される。
「此奴の性能は?」
アルセウイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセウイスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。
「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アルセウイスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アルセウイスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アルセウイスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアルセウイス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアルセウイスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」
「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。メタリックアイは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…メタリックアイを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事メタリックアイを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

タイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインであるメタリックアイを無事制圧した大銀河帝国軍はメタリックアイで放置された三十四隻の大型宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。メタリックアイ制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪メタリックアイ制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
メタリックアイ制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは旗艦のアルセウイスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アルセウイスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アルセウイス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河戦争により崩壊…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵だった…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも…貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私の心情は救済されました♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だが大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国です…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」
「困難なのは承知だ…」
メンテ
ホムンクルス事変 ( No.79 )
日時: 2021/09/08 22:22
名前: 月影桜花姫

第一話

潜入

世界暦七百二十二年四月四日の出来事である。国連軍特殊調査隊に所属する二人の隊員が高速調査艇に乗艇…。とある大南海に位置する孤島へと直行したのである。
「隊長…折角全世界が統一されたのに物騒ですね…」
世界各国は三年前に一国へと統一化…。現存する全世界の軍事組織は国連軍に統合化されたのである。
「仕方ないよ…所詮世界が統一されてもテロは撲滅されないからな…」
すると若齢の隊員が再度問い掛ける。
「今回の任務ですが…南方の孤島に潜伏するテロ組織の基地内の調査だけでしたよね?」
「勿論だ…」
若齢の隊員は不安視したのか恐る恐る…。
「間違っても…戦闘は…」
「最悪の場合戦闘は回避出来ないぞ…【ウィグノール】…」
「えっ…」
ウィグノールは新米の隊員であり当然として実戦経験は皆無である。
(実戦なんて…)
ハラハラする。新米の彼にとって実戦は不安であり極度に緊張したのである。
「相手が相手だからな…」
「ですが【ルーヴェルハルト】隊長…俺は実戦経験が…」
「緊張するのは同感だが…今回の任務が成功すれば俺達は政府から特別ボーナスが支給されるのだぞ…」
「えっ!?特別ボーナスですか♪」
(任務を達成しなくては!)
特別ボーナスの一言に反応したのかウィグノールは態度が大幅に変化する。
(此奴は…単純だな…)
ルーヴェルハルトは内心単純であると感じる。
「隊長♪即刻任務を達成して♪特別ボーナスをゲットしましょうね♪」
「はぁ…」
ルーヴェルハルトは呆れ果てる。数分後…。
「隊長!十数キロメートルの長距離より小規模の孤島を発見しました…ひょっとして…」
「恐らく目的地だろうな…」
肉眼でも孤島を直視出来る。
「全速力で孤島に直行するぞ…」
ルーヴェルハルトは猛スピードで高速調査艇を高加速化…。全速力で驀進したのである。三十分後…。彼等は無事に孤島へと到達する。
メンテ
ホムンクルス事変 ( No.80 )
日時: 2021/09/09 18:00
名前: 月影桜花姫

第一話

潜入

世界暦七百二十二年四月四日の出来事である。国連軍特殊調査隊に所属する二人の隊員が高速調査艇に乗艇…。とある大南海に位置する孤島サウスアイランドへと直行したのである。
「隊長…折角全世界が統一されたのに物騒ですね…」
世界各国は三年前に一国へと統一化…。現存する全世界の軍事組織は国連軍に統合化されたのである。
「仕方ないよ…所詮世界が統一されてもテロは撲滅されないからな…」
すると若齢の隊員が再度問い掛ける。
「今回の任務ですが…サウスアイランドに潜伏するテロ組織の秘密基地の調査だけでしたよね?」
「勿論だ…」
若齢の隊員は不安視したのか恐る恐る…。
「間違っても…戦闘は…」
「最悪の場合戦闘は回避出来ないぞ…【ウィグノール】…」
「えっ…」
ウィグノールは新米の隊員であり当然として実戦経験は皆無である。
(実戦なんて…)
ハラハラする。新米の彼にとって実戦は不安であり極度に緊張したのである。
「相手が相手だからな…」
「ですが【ルーヴェルハルト】隊長…俺は実戦経験が…」
「緊張するのは同感だが…今回の任務が成功すれば俺達は政府から特別ボーナスが支給されるのだぞ…」
「えっ!?特別ボーナスですか♪」
(任務を達成しなくては!)
特別ボーナスの一言に反応したのかウィグノールは態度が大幅に変化する。
(此奴は…単純だな…)
ルーヴェルハルトは内心単純であると感じる。
「隊長♪即刻任務を達成して♪特別ボーナスをゲットしましょうね♪」
「はぁ…」
ルーヴェルハルトは呆れ果てる。数分後…。
「隊長!十数キロメートルの長距離より小規模の孤島を発見しました…ひょっとしてサウスアイランドでしょうか?」
「恐らく目的地だろうな…」
肉眼でも南方の孤島を直視出来る位置へと到達する。
「全速力でサウスアイランドに直行するぞ…」
ルーヴェルハルトは猛スピードで高速調査艇を高加速化…。全速力で驀進したのである。三十分後…。彼等は無事にサウスアイランドへと到達する。
「人気は感じられませんね…無人島みたいですよ…」
サウスアイランドは全体的に人気が皆無であり無人島みたいな雰囲気だったのである。二人は護身用の装備品を所持…。警戒した様子で恐る恐る孤島へと上陸する。
「こんな場所にテロ組織の秘密基地が存在するのでしょうか?」
「現段階では不明瞭だが…秘密基地が存在しないとも断言出来ないからな…」
ルーヴェルハルトはサウスアイランドに何も無ければ再度出直そうと思考したのである。二人は恐る恐る無人の獣道へと潜入…。周囲の自然林を警戒したのである。
「隊長…不吉ですね…幽霊が出現しそうな雰囲気ですよ…」
ウィグノールは畏怖したのかブルブルと身震いし始める。
「貴様は子供か?幽霊なんて存在するかよ…」
ウィグノールの様子に再度呆れ果てる。すると移動中…。
「ウィグノール?」
「えっ?如何されましたか?隊長?」
ルーヴェルハルトは恐る恐る特定の地面を指差したのである。
「なっ!?」
ルーヴェルハルトが指差した地面の方向には直径二メートルサイズの合金製の大型ハッチが確認出来る。
「此奴はシェルターか…」
「核シェルターのハッチみたいですね…」
ウィグノールは恐る恐る大型ハッチに接触したのである。
「ひょっとしてテロ組織の秘密基地とは地下施設なのでしょうね…」
「であれば此奴で…」
ルーヴェルハルトは護身用の『レーザーライフル』を所持する。レーザーライフルとは近年国連軍が開発した新型光学兵器であり基本装備として各部隊に配備されたのである。
「レーザーライフルで直接ハッチを破壊する…」
「えっ?レーザーライフルを使用するのですか?」
(隊長…強引だな…)
強引であると感じる。ルーヴェルハルトはレーザーライフルを射出…。すると合金製のハッチは一筋の光線により簡単に破壊されたのである。
「えっ…」
レーザーライフルの威力にウィグノールは絶句する。ハッチはレーザーライフルにより破壊され…。スッポリと円形の風穴が形作られる。
「潜入するぞ…」
二人は警戒した様子で内部に潜入すると目前には昇降機が確認出来る。
「昇降機だな…」
昇降機は大人二人分のサイズでありルーヴェルハルトとウィグノールは恐る恐る昇降機に佇立する。直後…。
「ん?」
昇降機は自動で作動…。地下へと昇降したのである。するとウィグノールが恐る恐る…。
「隊長…テロ組織の施設としては…設備が非常に高度ですよね…」
内部は非常に近未来的であり本当にテロ組織の施設なのか疑問視したのである。すると直後…。
「なっ!?」
「えっ!?」
突如として二人の目前よりホログラム装置が作動され黒服の男性の姿形が映写されたのである。
「貴様は一体何者だ?」
ルーヴェルハルトがホログラムの男性に問い掛けると男性は即答する。
「私は『太平帝国軍』の総帥…【アルバード】です…」
「えっ?太平帝国って…」
「第二次世界戦争で滅亡した旧帝国だったな…」
太平帝国とは近代に存在した大帝国である。強大なる軍事力を保有した超大国であったが…。七十年前に勃発した第二次世界戦争で連合軍の攻勢により滅亡したのである。
「アルバードだったか?貴様は負け犬である太平帝国の残党を自称する異端者か?」
ルーヴェルハルトの問い掛けにアルバードは即答する。
「私が異端者ですか…私は列記とした太平帝国の後継者なのです…」
メンテ
ホムンクルス事変 ( No.81 )
日時: 2021/09/09 22:17
名前: 月影桜花姫

第一話

潜入

世界暦七百二十二年四月四日の出来事である。国連軍特殊調査隊に所属する二人の隊員達が高速調査艇に乗艇…。とある大南海に位置する孤島サウスアイランドへと直行したのである。
「隊長…折角全世界が統一されたのに物騒ですね…」
世界各国は三年前の世界暦七百十九年七月四日に一国へと統一化…。現存する全世界の軍事組織は国連軍に統合化されたのである。
「仕方ないぜ…所詮世界が統一されてもテロ事件は撲滅されないからな…」
すると若齢の隊員が再度問い掛ける。
「今回の任務ですが…サウスアイランドに潜伏するテロ組織の秘密基地の調査だけでしたよね?」
「勿論だ…」
若齢の隊員は不安視したのか恐る恐る…。
「間違っても…戦闘は…」
「最悪の場合戦闘は回避出来ないぞ…【ウィグノール】…」
「えっ…」
ウィグノールは新米の隊員であり当然として実戦経験は皆無である。
(実戦なんて…)
ハラハラする。新米の彼にとって実戦は不安であり極度に緊張したのである。
「相手が相手だからな…」
「ですが【ルーヴェルハルト】隊長…俺は実戦経験が…」
「緊張するのは同感だが…今回の任務が成功すれば俺達は政府から特別ボーナスが支給されるのだぞ…」
「えっ!?特別ボーナスですか♪」
(任務を達成しなくては!)
特別ボーナスの一言に反応したのかウィグノールは態度が大幅に変化する。
(此奴は…単純だな…)
ルーヴェルハルトは内心単純であると感じる。
「隊長♪即刻任務を達成して♪特別ボーナスをゲットしましょうね♪」
「はぁ…」
ルーヴェルハルトは呆れ果てる。数分後…。
「隊長!十数キロメートルの長距離より小規模の孤島を発見しました…ひょっとしてサウスアイランドでしょうか?」
「恐らく目的地だろうな…」
肉眼でも南方の孤島を直視出来る位置へと到達する。
「全速力でサウスアイランドに直行するぞ…」
ルーヴェルハルトは猛スピードで高速調査艇を高加速化…。全速力で驀進したのである。三十分後…。彼等は無事にサウスアイランドへと到達する。
「人気は感じられませんね…無人島みたいですよ…」
サウスアイランドは全体的に人気が皆無であり無人島みたいな雰囲気だったのである。二人は護身用の装備品を所持…。警戒した様子で恐る恐る孤島へと上陸する。
「こんな場所にテロ組織の秘密基地が存在するのでしょうか?」
「現段階では不明瞭だが…秘密基地が存在しないとも断言出来ないからな…」
ルーヴェルハルトはサウスアイランドに何も無ければ再度出直そうと思考したのである。二人は恐る恐る無人の獣道へと潜入…。周囲の自然林を警戒したのである。
「隊長…不吉ですね…幽霊が出現しそうな雰囲気ですよ…」
ウィグノールは畏怖したのかブルブルと身震いし始める。
「貴様は子供か?幽霊なんて存在するかよ…」
ウィグノールの様子に再度呆れ果てる。すると移動中…。
「ウィグノール?」
「えっ?如何されましたか?隊長?」
ルーヴェルハルトは恐る恐る特定の地面を指差したのである。
「なっ!?」
ルーヴェルハルトが指差した地面の方向には直径二メートルサイズの合金製の大型ハッチが確認出来る。
「此奴はシェルターか…」
「核シェルターのハッチみたいですね…」
ウィグノールは恐る恐る大型ハッチに接触したのである。
「ひょっとしてテロ組織の秘密基地とは地下施設なのでしょうね…」
「であれば此奴で…」
ルーヴェルハルトは護身用の『レーザーライフル』を所持する。レーザーライフルとは近年国連軍が開発した新型光学兵器であり基本装備として各部隊に配備されたのである。
「レーザーライフルで直接ハッチを破壊する…」
「えっ?レーザーライフルを使用するのですか?」
(隊長…強引だな…)
強引であると感じる。ルーヴェルハルトはレーザーライフルを射出…。すると合金製のハッチは一筋の光線により簡単に破壊されたのである。
「えっ…」
レーザーライフルの威力にウィグノールは絶句する。ハッチはレーザーライフルにより破壊され…。スッポリと円形の風穴が形作られる。
「潜入するぞ…」
二人は警戒した様子で内部に潜入すると目前には昇降機が確認出来る。
「昇降機だな…」
昇降機は大人二人分のサイズでありルーヴェルハルトとウィグノールは恐る恐る昇降機に佇立する。直後…。
「ん?」
昇降機は自動で作動…。地下へと昇降したのである。するとウィグノールが恐る恐る…。
「隊長…テロ組織の施設としては…設備が非常にハイテクノロジーですよね…」
内部は非常に近未来的であり本当にテロ組織の施設なのか疑問視する。すると直後である。
「なっ!?」
「えっ!?」
突如として二人の目前より最新式のホログラム装置が作動され…。黒服の男性の姿形が映写されたのである。
「貴様は一体何者だ?」
ルーヴェルハルトがホログラムの男性に問い掛けると男性は即答する。
「私は『太平帝国軍』の総帥…【アルバード】です…」
太平帝国の一言に二人はハッとしたのである。
「えっ?太平帝国って…」
太平帝国とは近代に存在した大帝国…。強大なる軍事力と経済力を所持した超大国だったのである。
「第二次世界戦争で滅亡した旧帝国だったな…」
七十年前に勃発した第二次世界戦争で連合国軍の攻勢により敗北…。滅亡したのである。
「アルバードだったか?貴様は負け犬である太平帝国の残党を自称する異端者か?」
ルーヴェルハルトの問い掛けにアルバードは即答する。
「私が異端者ですか…私は列記とした太平帝国の後継者なのです…」
「何が太平帝国の後継者だ!貴様みたいなテロリストは即刻俺達が拘束する!」
ルーヴェルハルトは強気で発言したのである。
「太平帝国の後継者である私がテロリストですか…ですが今後の時代は私と貴方達愚民の立場が逆転するでしょう…」
「俺達と貴様の立場が逆転だと?貴様は一体何が主張したい?」
アルバードは一瞬沈黙するなり…。
「本日は旧帝国を滅亡させた連合国…国際連合の終焉なのです…」
「国際連合の終焉!?」
アルバードの発言に二人はビクッと反応する。
「国際連合の終焉って…」
「何が国際連合の終焉だ!負け犬風情がふざけるな!」
ルーヴェルハルトは只管に強気で反論したのである。
「ですが国際連合の終焉って一体何が?」
ウィグノールは不安がる。
「ウィグノール…此奴の発言は単なる妄言だ…気にするな!」
ルーヴェルハルトは気にするなと発言するものの…。ハイテクノロジーを直視するとアルバードの発言は本当かも知れないと思考したのである。
「貴方達は服装から判断して…国連軍の将兵ですね?」
「俺達は特殊調査隊だ…」
「特殊調査隊ですか?好都合です…ゲームを開始しましょう♪」
「えっ…ゲームって…」
ウィグノールは困惑する。
「何がゲームだ…ふざけやがって…」
「何方にせよ…貴方達はゲームに参加しなければ太平帝国軍の秘密基地からは脱出出来ません…秘密基地から脱出したければゲームに参加するべきです…」
すると直後…。
「えっ?」
「昇降機が停止したぞ…」
昇降機が最下層へと到達するなり停止したのである。
「如何やら昇降機が最下層に到達したみたいですね…」
目前には鉄扉が確認出来る。
「ゲートが開放された瞬間にゲームが開始されます…私の部下達が国連軍の将兵である貴方達に急襲するでしょう…」
「部下達だと?ひょっとして殺し合いのゲームか?」
「勿論です…正真正銘リアル殺人ゲームです…」
ルーヴェルハルトの質問にアルバードは即答する。
(人間のゴミクズが…何がリアル殺人ゲームだ…)
ルーヴェルハルトは内心腹立たしくなる。
「早速殺人ゲームの開始です…」
目前の鉄扉が自動的に開放されたのである。
「隊長…ゲートが開放されました…」
ウィグノールは只管にビクビクする。
メンテ
ホムンクルス事変 ( No.82 )
日時: 2021/09/10 21:19
名前: 月影桜花姫

文字数30000字以上

ジャンル
バイオパンク

世界観
近未来型パラレルワールド

【ルーヴェルハルト】
【ウィグノール】
【ホムンクルス】
『アスピドケロン』
超砲撃型戦艦
『ケルベロス』
戦闘用ドローン
『ジャガーノート』
無人戦闘車

第一話

潜入

世界暦七百二十二年四月四日の出来事である。国連軍特殊調査隊に所属する二人の隊員達が高速調査艇に乗艇…。とある大南海に位置する孤島サウスアイランドへと直行したのである。
「隊長…折角全世界が統一されたのに物騒ですね…」
世界各国は三年前の世界暦七百十九年七月四日に一国へと統一化…。現存する全世界の軍事組織は国連軍に統合化されたのである。
「仕方ないぜ…所詮世界が統一されてもテロ事件は撲滅されないからな…」
すると若齢の隊員が再度問い掛ける。
「今回の任務ですが…サウスアイランドに潜伏するテロ組織の秘密基地の調査だけでしたよね?」
「勿論だ…」
若齢の隊員は不安視したのか恐る恐る…。
「間違っても…戦闘は…」
「最悪の場合戦闘は回避出来ないぞ…【ウィグノール】…」
「えっ…」
ウィグノールは新米の隊員であり当然として実戦経験は皆無である。
(実戦なんて…)
ハラハラする。新米の彼にとって実戦は不安であり極度に緊張したのである。
「相手が相手だからな…」
「ですが【ルーヴェルハルト】隊長…俺は実戦経験が…」
「緊張するのは同感だが…今回の任務が成功すれば俺達は政府から特別ボーナスが支給されるのだぞ…」
「えっ!?特別ボーナスですか♪」
(任務を達成しなくては!)
特別ボーナスの一言に反応したのかウィグノールは態度が大幅に変化する。
(此奴は…単純だな…)
ルーヴェルハルトは内心単純であると感じる。
「隊長♪即刻任務を達成して♪特別ボーナスをゲットしましょうね♪」
「はぁ…」
ルーヴェルハルトは呆れ果てる。数分後…。
「隊長!十数キロメートルの長距離より小規模の孤島を発見しました…ひょっとしてサウスアイランドでしょうか?」
「恐らく目的地だろうな…」
肉眼でも南方の孤島を直視出来る位置へと到達する。
「全速力でサウスアイランドに直行するぞ…」
ルーヴェルハルトは猛スピードで高速調査艇を高加速化…。全速力で驀進したのである。三十分後…。彼等は無事にサウスアイランドへと到達する。
「人気は感じられませんね…無人島みたいですよ…」
サウスアイランドは全体的に人気が皆無であり無人島みたいな雰囲気だったのである。二人は護身用の装備品を所持…。警戒した様子で恐る恐る孤島へと上陸する。
「こんな場所にテロ組織の秘密基地が存在するのでしょうか?」
「現段階では不明瞭だが…秘密基地が存在しないとも断言出来ないからな…」
ルーヴェルハルトはサウスアイランドに何も無ければ再度出直そうと思考したのである。二人は恐る恐る無人の獣道へと潜入…。周囲の自然林を警戒したのである。
「隊長…不吉ですね…幽霊が出現しそうな雰囲気ですよ…」
ウィグノールは畏怖したのかブルブルと身震いし始める。
「貴様は子供か?幽霊なんて存在するかよ…」
ウィグノールの様子に再度呆れ果てる。すると移動中…。
「ウィグノール?」
「えっ?如何されましたか?隊長?」
ルーヴェルハルトは恐る恐る特定の地面を指差したのである。
「なっ!?」
ルーヴェルハルトが指差した地面の方向には直径二メートルサイズの合金製の大型ハッチが確認出来る。
「此奴はシェルターか…」
「核シェルターのハッチみたいですね…」
ウィグノールは恐る恐る大型ハッチに接触したのである。
「ひょっとしてテロ組織の秘密基地とは地下施設なのでしょうね…」
「であれば此奴で…」
ルーヴェルハルトは護身用の『レーザーライフル』を所持する。レーザーライフルとは近年国連軍が開発した新型光学兵器であり基本装備として各部隊に配備されたのである。
「レーザーライフルで直接ハッチを破壊する…」
「えっ?レーザーライフルを使用するのですか?」
(隊長…強引だな…)
強引であると感じる。ルーヴェルハルトはレーザーライフルを射出…。すると合金製のハッチは一筋の光線により簡単に破壊されたのである。
「えっ…」
レーザーライフルの威力にウィグノールは絶句する。ハッチはレーザーライフルにより破壊され…。スッポリと円形の風穴が形作られる。
「潜入するぞ…」
二人は警戒した様子で内部に潜入すると目前には昇降機が確認出来る。
「昇降機だな…」
昇降機は大人二人分のサイズでありルーヴェルハルトとウィグノールは恐る恐る昇降機に佇立する。直後…。
「ん?」
昇降機は自動で作動…。地下へと昇降したのである。するとウィグノールが恐る恐る…。
「隊長…テロ組織の施設としては…設備が非常にハイテクノロジーですよね…」
内部は非常に近未来的であり本当にテロ組織の施設なのか疑問視する。すると直後である。
「なっ!?」
「えっ!?」
突如として二人の目前より最新式のホログラム装置が作動され…。黒服の男性の姿形が映写されたのである。
「貴様は一体何者だ?」
ルーヴェルハルトがホログラムの男性に問い掛けると男性は即答する。
「私は『太平帝国軍』の総帥…【アルバード】です…」
太平帝国の一言に二人はハッとしたのである。
「えっ?太平帝国って…」
太平帝国とは近代に存在した大帝国…。強大なる軍事力と経済力を所持した超大国だったのである。
「第二次世界戦争で滅亡した旧帝国だったな…」
七十年前に勃発した第二次世界戦争で連合国軍の攻勢により敗北…。滅亡したのである。
「アルバードだったか?貴様は負け犬である太平帝国の残党を自称する異端者か?」
ルーヴェルハルトの問い掛けにアルバードは即答する。
「私が異端者ですか…私は列記とした太平帝国の後継者なのです…」
「何が太平帝国の後継者だ!貴様みたいなテロリストは即刻俺達が拘束する!」
ルーヴェルハルトは強気で発言したのである。
「太平帝国の後継者である私がテロリストですか…ですが今後の時代は私と貴方達愚民の立場が逆転するでしょう…」
「俺達と貴様の立場が逆転だと?貴様は一体何が主張したい?」
アルバードは一瞬沈黙するなり…。
「本日は旧帝国を滅亡させた連合国…国際連合の終焉なのです…」
「国際連合の終焉!?」
アルバードの発言に二人はビクッと反応する。
「国際連合の終焉って…」
「何が国際連合の終焉だ!負け犬風情がふざけるな!」
ルーヴェルハルトは只管に強気で反論したのである。
「ですが国際連合の終焉って一体何が?」
ウィグノールは不安がる。
「ウィグノール…此奴の発言は単なる妄言だ…気にするな!」
ルーヴェルハルトは気にするなと発言するものの…。ハイテクノロジーを直視するとアルバードの発言は本当かも知れないと思考したのである。
「貴方達は服装から判断して…国連軍の将兵ですね?」
「俺達は特殊調査隊だ…」
「特殊調査隊ですか?好都合です…ゲームを開始しましょう♪」
「えっ…ゲームって…」
ウィグノールは困惑する。
「何がゲームだ…ふざけやがって…」
「何方にせよ…貴方達はゲームに参加しなければ太平帝国軍の秘密基地からは脱出出来ません…秘密基地から脱出したければゲームに参加するべきです…」
すると直後…。
「えっ?」
「昇降機が停止したぞ…」
昇降機が最下層へと到達するなり停止したのである。
「如何やら昇降機が最下層に到達したみたいですね…」
目前には鉄扉が確認出来る。
「ゲートが開放された瞬間にゲームが開始されます…私の部下達が国連軍の将兵である貴方達に急襲するでしょう…」
「部下達だと?ひょっとして殺し合いのゲームか?」
「勿論です…正真正銘リアル殺人ゲームです…」
ルーヴェルハルトの質問にアルバードは即答する。
(人間のゴミクズが…何がリアル殺人ゲームだ…)
ルーヴェルハルトは内心腹立たしくなる。
「早速殺人ゲームの開始です…貴方達の奮闘を期待しましょう…」
目前の鉄扉が自動的に開放されたのである。
「隊長…ゲートが開放されました…」
ウィグノールは只管にビクビクする。直後…。小銃とヘルメットを装着した兵士達と対峙する。
「隊長…如何しますか?」
問い掛けられたルーヴェルハルトはレーザーライフルを照準するなり…。
「こんな場所で打っ殺されるなら…大暴れするさ!」
ルーヴェルハルトは目前に兵士達にレーザーライフルを射出したのである。レーザーライフルの光弾に直撃した兵士はバタッと横たわる。すると敵兵達も反撃を開始する。敵兵も光学兵器で応戦…。銃口からは蛍光色の光弾が射出される。
「ウィグノール!匍匐しろ!」
「はっ!」
彼等は即座に匍匐…。危機一髪攻撃を回避したのである。
(奴等の武器…『プラズマライフル』か?)
プラズマライフルとは近年国連軍が新開発した光学兵器の一種であり今現在では一部の部隊でしか使用出来ない。
(如何して奴等がこんな高額の兵器を?)
疑問に感じる。
「隊長!反撃しましょう!」
ウィグノールも護身用のレーザーライフルで敵兵の足部を狙撃…。三人の敵兵を仕留める。
「見事だな♪ウィグノール♪兵士らしいぞ…」
「隊長…」
ウィグノールは内心大喜びする。ルーヴェルハルトも匍匐した状態で再度攻撃…。四人の敵兵を仕留めたのである。すると敵兵は一時的に退散…。ルーヴェルハルトとウィグノールは一度の戦闘で十三人の敵兵を仕留めたのである。
「はぁ…はぁ…撃退出来ましたね…隊長…」
「油断は出来ない…」
「ですがこんな戦闘に何度も遭遇するのでしょうか?」
「テロ組織の秘密基地だ…恐らくな…」
すると直後…。再度ホログラム装置が作動されアルバードの姿形が映写される。
「見事でしたよ…貴方達二人で私の精鋭を撃退するなんて…」
ルーヴェルハルトは睥睨するなり…。
「貴様は何が目的だ!?白状しろ!」
ルーヴェルハルトの問い掛けにアルバードは小声で返答する。
「私の目的ですか…第二次世界戦争で滅亡した太平帝国の…再興ですよ…」
「太平帝国の再興だと?」
メンテ
桜花姫※妖怪奇譚 ( No.83 )
日時: 2021/09/11 20:00
名前: 月影桜花姫

第一話

真夜中

太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が荒神山に出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟同然であり人間は誰一人として荒神山へは近寄れない。
「何やら無数の妖気が感じられる…」
(如何やら今回の相手も大群だな…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。
「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「妖怪よ…成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。
「大群だな…」
無数の食人餓鬼はふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」
総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度の相手は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。肉塊の怪物は巨体の人型であるが…。全身の体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は食人餓鬼の親玉…【百鬼食人餓鬼】か…」
百鬼食人餓鬼は通常の食人餓鬼の集合体であり食人餓鬼の親玉である。
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
(戻ろうか…)
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。
「えっ…」
今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(彼女は…人間の女性?)
背後の女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…発動!」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
「月影桃子姫様とは…伝説の巫女の?」
月影桃子姫とは人間の巫女であり強大なる霊力で多種多様の妖怪を征伐…。伝説の巫女として有名である。とある大妖怪との戦闘により失踪…。今現在では彼女の行方は不明である。
「勿論♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した異例の集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行し続けても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんてあんたは大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」
揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。
「あんた…私に殺されたいみたいね…」
「私に用事かしら?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかも知れないわね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気か!?)
突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「三蔵郎様♪」
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」
「勿論よ♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達の霊魂が妖怪化した化身…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。海難入道と遭遇した人間は溺死するのが通例である。
「漁船を襲撃したのが水難妖怪の海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは妖怪を退治するなんて…」
漁師達は呆れ果てる。
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪なのよ♪」
「あんたが妖怪だって?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「なっ!?俺達の漁船が…」
「桜餅に!?如何してこんな…」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。
「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは…本当に妖怪なのか?」
「勿論♪私は正真正銘妖怪なのよ♪」
問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間達は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。
「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」
三蔵郎は驚愕する。
「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」
桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。
「海難入道は?」
海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。
(こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…)
すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。
「妖気!?」
(ひょっとして海難入道の妖気かしら?)
接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。
「何かしら?」
巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。
(巨大真蛸…)
「海難入道だわ…」
海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。
「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」
海難入道は人語で発言したのである。
「私は変化の妖術で人魚にも変化出来るからね♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」
海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり自身が空腹であれば相手が妖怪であっても捕食する。
「空腹ね…私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」
「はっ?」
桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。
「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は皆無であるぞ…」
海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。
「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」
「人間に加勢したから何よ?私は鬱陶しい邪魔者を仕留めただけなのよね♪」
桜花姫は笑顔で反論したのである。
「貴様…気に入らないな…」
「気に入らないなら如何するのかしら♪」
「妖怪の面汚しである貴様は死滅しろ…」
海難入道は即座に巨大触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」
「今度は私の出番ね♪」
桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。
「あんたこそ死滅しなさい♪」
両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。
「直撃♪直撃♪」
雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。
「えっ?」
「残念だったな…桜花姫よ…」
桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。
「妖力を吸収するなんて…」
普段は冷静の桜花姫であるが…。海難入道の吸収能力に一瞬動揺する。
(海難入道には妖術が通用しないのかしら…)
「不思議そうな表情だな…桜花姫…俺はあらゆる妖力を吸収出来…妖術を無力化出来るのだ…」
海難入道の最強の特殊能力である吸収能力は自身の肉体に接触した多種多様の妖力を吸収出来…。あらゆる妖術を無力化出来る。基本的に妖力を駆使した攻撃法では海難入道は仕留められない。
「貴様程度の妖術では俺を仕留められない!」
(妖術が通用しないなんて…此奴は意外と厄介だわ…)
あらゆる魑魅魍魎の集合体である桜花姫でも…。妖力を吸収する妖怪を仕留めるのは非常に困難である。
(出直そうかな?)
恐る恐る後退りする。後退りする桜花姫に…。
「先程の威勢は如何した?俺に恐怖したか?」
「別に…」
問い掛けられた桜花姫は無表情で返答する。
「貴様は妖力だけなら大妖怪に匹敵するな…是非とも貴様を捕食したい…」
「私を捕食ですって?」
「あらゆる妖怪の集合体である貴様を食い殺せば…俺は大妖怪の領域に到達出来るからな♪」
豪語する海難入道に桜花姫は笑顔で…。
「私を捕食なんて…あんた程度の妖怪に出来るかしら♪」
桜花姫は笑顔で挑発したのである。
「貴様…本当に食い殺されたいらしいな…」
「食い殺せるのであれば私を食い殺しなさいよ♪」
桜花姫は再度挑発する。
「妖怪の小娘風情が…貴様は本当に気に入らない小娘だな…」
すると蛸足の巨大触手で桜花姫を拘束したのである。
「えっ?」
「貴様を食い殺す!」
一口で桜花姫を捕食…。口内で彼女を咀嚼したのである。
「所詮桜花姫はこんな程度の妖怪だ…」
すると直後…。桜花姫を捕食した影響からか先程よりも妖力が急上昇したのである。
「俺の妖力が増大化したぞ!」
妖力のみなら今現在の海難入道は大妖怪に匹敵…。海難入道は強大化した自身の妖力に大喜びしたのである。
「今日から俺も大妖怪の仲間入りだな♪」
すると直後…。
「ん?」
海難入道の全身が白煙に覆い包まれ…。二町規模の巨大さである海難入道の肉体が消滅したのである。すると白煙の内部から海難入道によって食い殺された桜花姫が出現…。彼女は無傷であり平気そうな様子だったのである。
「海難入道を仕留めたし♪」
(陸地に戻りましょう♪)
桜花姫は再度瞬間移動の妖術を駆使…。海岸の砂浜へと戻ったのである。
「なっ!?桜花姫様!?」
三蔵郎と合流する。
「三蔵郎様♪妖怪は無事征伐したわ♪」
「海難入道を征伐されたみたいですね…一瞬桜花姫様の妖気が消滅したので食い殺されたのかと…」
「一度海難入道に捕食されちゃったけれどね♪」
桜花姫は一時的に海難入道に捕食されたものの…。体内の胃袋から海難入道の肉体と同化したのである。
「反対に私が海難入道を捕食したのよ♪」
「えっ…捕食ですと?」
今現在海難入道は桜花姫の肉体の一部に変化する。
「兎にも角にも…海難入道は仕留めたから南国の海域は安全よ♪」
「事件は無事解決したので一件落着ですね…」
三蔵郎も一安心したのである。
「事件も解決したし♪戻りましょう♪」
「解散しますかね…」
桜花姫と三蔵郎は解散…。二人は村里へと戻ったのである。

第三話

強襲

南国での海難入道との大海戦から六日後の真夜中…。桜花姫は暇潰しに北国の村里にて散歩したのである。
「退屈ね…」
時間帯は深夜であり村人達は確認出来ない。
「妖怪でも出現しないかしら?」
基本的に多数の百鬼夜行が活動するのは真夜中であり日中に出現するのは中級以上の妖怪である。
「戻ろうかな?」
戻ろうかと思いきや…。
「ん!?」
突如として周囲より無数の気配を感じる。
(気配だわ…)
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒し始める。
(無数の妖気みたいね…)
「妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり無数の妖怪達が自身に接近するのを察知する。
「何が出現するのかしら?」
すると直後である。
「食人餓鬼だわ…」
周囲の地面より数十体もの食人餓鬼が出現…。周囲を包囲されたのである。
(敵意も感じられるわね…)
突如として出現した食人餓鬼であるが…。
「如何やらあんた達…私が気に入らないみたいね♪」
本来食人餓鬼は同種の妖怪には手出ししない性質なのだが…。桜花姫を敵対視した様子だったのである。直後…。食人餓鬼の大群は桜花姫に殺到する。
「はぁ…あんた達は命知らずね…」
桜花姫は呆れ果てるものの…。
「死滅しなさい♪」
念力の妖術を発動する。すると食人餓鬼の全身が肥大化…。破裂したのである。桜花姫の地面周辺には無数の鮮血やら肉片が散乱する。
(変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
「桜餅に変化しなさい♪」
今度は変化の妖術を発動すると周辺の肉片が小皿に配置された桜餅に変化したのである。
(変化の妖術成功♪)
「桜餅に変化したわね♪」
桜花姫は大喜びするなり…。無我夢中に桜餅を頬張り始める。数分後…。数百個もの桜餅を頬張ったのである。
「満足♪満足♪消耗しちゃった妖力も回復出来たわね♪」
戻ろうかと思いきや…。
「今度も無数の妖気を感じるわ…」
周囲より無数の妖気を察知する。
「今度も大群ね…」
すると周囲より数十体から数百体もの食人餓鬼の大群が出現…。今度は五体の百鬼食人餓鬼も確認出来る。
「先程よりも大群だわ…」
(今度は百鬼食人餓鬼も出現するなんてね…)
百鬼食人餓鬼と食人餓鬼の大群に包囲される。
「鬱陶しい奴等ね…」
面倒臭いと感じるのか体内の妖力を急上昇…。天空が黒雲により覆い包まれる。
「死滅しなさい♪」
落雷の妖術を発動…。黒雲から落雷が発生したのである。落雷が地面に直撃すると地面が抉られ…。周囲の食人餓鬼と百鬼食人餓鬼を一掃させる。
「所詮は雑魚妖怪ね♪大妖怪に相当する私に挑戦するなんて無謀なのよ♪」
夜空の満月を眺望するなり…。
「西国に戻ろうかしら…」
直後である。
「えっ?」
突如として不吉の気配を感じる。
(何かしら?)
「妖気?」
不吉の妖気が一歩ずつ接近する。
(妖気なのは確実だけど…)
普段は冷静沈着の桜花姫であるが…。不吉の妖気に戦慄したのである。
(妖気は妖気でも…此奴は大妖怪の妖気ね…)
不吉の妖気は大妖怪の妖気であり桜花姫は警戒する。
(一体何が出現するのかしら?)
すると背後より…。
「貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫か…」
「えっ!?」
桜花姫は警戒した様子で背後を直視したのである。
「あんたは…」
彼女の背後に佇立するのは大陸風の甲冑を装備した小柄の武人であり桜花姫を凝視する。
「私は…【夜叉王】…大妖怪の一人だ…」
夜叉王とは大陸出身の妖怪であり外見は小柄の美青年である。絶大なる妖力により北国一帯を支配する大妖怪であり大勢の村人達は勿論…。数多の妖怪達が大妖怪である彼を畏怖する。
「大妖怪夜叉王…こんな場所であんたと遭遇するなんてね…」
桜花姫は畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。
(如何して大陸の大妖怪がこんな場所に…)
すると夜叉王は後退りする桜花姫を直視するなり…。
「貴様…恐怖心か?近頃の噂話では人間に味方して…多数の妖怪達を仕留めたらしいが…」
メンテ
メガラニカ大事変 ( No.84 )
日時: 2021/09/11 20:00
名前: 月影桜花姫

第一話

開戦

世界暦五百二十二年五月十七日午前八時未明の出来事である。世界最終戦争唯一の戦勝国『太平帝国』は戦前でこそ小規模国家であったが世界最終戦争の快進撃から勢力を拡大化…。終戦後は超大国としての地位と資源を牛耳ったのである。世界最終戦争の大勝利によって全世界の秩序と覇権を獲得した太平帝国であるが…。太平帝国の圧政に反対する一部の国連軍残存勢力と各地の反政府勢力が大南海に位置する孤島にて合流したのである。彼等によって大南海の孤島は自治領『メガラニカ自由区』と命名され覇権国家である太平帝国の支配圏から逃亡した移民者達が亡命…。メガラニカ自由区樹立から一年が経過すると領内の総人口は推計五十万人規模に増大化したのである。メガラニカ自由区の勢力拡大を危惧した太平帝国はメガラニカ自由区に宣戦布告…。翌日には大規模艦隊を派遣させ南方のメガラニカ自由区本土を攻撃目標に直進したのである。太平帝国海軍主力艦隊旗艦…。戦闘航空母艦セイバードラゴンには太平帝国国家元首であり総軍の最高指導者である大総統【ブラッドフォード】が総司令官として乗艦する。
「大総統!徹底的にメガラニカ自由区を撃滅しましょう!」
「当然だ【ルーヴェルハルト】…新世界の統治国である太平帝国に反抗するのが最大の愚行であるか…奴等には徹底的に理解させなければ…」
ルーヴェルハルトは副総統であり大総統のブラッドフォードにとって最高の右腕である。今回は旗艦セイバードラゴンの副艦長として抜擢される。今回のメガラニカ自由区本土攻略作戦ではセイバードラゴン級大型戦闘航空母艦が五隻投入され…。護衛艦隊にはミサイル巡洋艦十六隻…。二十四隻の防空駆逐艦が出撃する。補助用の魚雷艇二十九隻と八百人以上の上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦十七隻が後方にて航行したのである。
「メガラニカ自由区の領海へは推定二時間で到達する予定です…」
「全軍を警戒態勢に移行させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは通信機にて各艦の乗組員達に警戒態勢を指示する。
「全軍…警戒態勢に移行せよ…」
すると各艦隊の戦闘要員達は戦闘配置に移動したのである。戦闘要員達が戦闘配置に移動してより三分後…。旗艦セイバードラゴンの艦橋に設置された最新型スーパーレーダーが反応したのである。
「本艦のスーパーレーダーが反応しました!」
スーパーレーダーは太平帝国海軍が開発した最新式の電波探知機であり地球全体を正確に索敵出来る。太平帝国軍では艦艇のみならず艦載機にも搭載され今現在太平帝国海軍と互角に交戦出来る国家は存在しない。
「何事だ?」
ブラッドフォードは偵察員に問い掛ける。
「南方…三百キロメートルの遠海より艦隊らしき艦影を無数確認…総数は推計四十隻程度です…」
スーパーレーダーには推計四十個もの光点が点滅したのである。
「ステルス機能を搭載させた艦艇か…」
すると直後…。
「無数の飛翔体が味方艦隊に接近中です!」
四十個の対象物である光点から数百個もの微小の光点が超音速で飛来するのを確認する。
「此奴は対艦ミサイル攻撃だ…迎撃態勢に移行しろ!」
ブラッドフォードは即座に迎撃を命令したのである。数秒後…。二十キロメートルの長距離より数百発もの飛翔体が味方艦隊に接近するのを確認する。
「各艦艇!飛翔体を迎撃せよ!」
各艦艇の迎撃システムが作動したのである。近年太平帝国海軍の各艦艇には対空戦闘用に開発された小型の全自動型パルスレーザー対空砲を設置…。超音速で飛来するミサイル迎撃に期待されたのである。数秒後各艦のパルスレーザー対空砲が炸裂…。蛍光色の光弾が各艦に接近する大型対艦ミサイルを迎撃したのである。全自動化によって大型対艦ミサイルは全弾迎撃…。敵艦から発射された大型対艦ミサイルは味方艦隊には一発も命中しなかったのである。通信兵が即座に報告する。
「通信です…敵軍の大型対艦ミサイルは全弾迎撃されました!味方艦隊への損害は皆無です!」
「最先端の科学技術の結晶である太平帝国海軍に旧型の対艦ミサイルで攻撃するとは…奴等は時代錯誤ですな♪」
ルーヴェルハルトは笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…所詮奴等は烏合の衆だ…」
総司令官のブラッドフォードも勝利を確信する。太平帝国軍の大艦隊はメガラニカ自由区近海へと直進したのである。十数分後…。メガラニカ自由区の防衛艦隊と遭遇したのである。ルーヴェルハルトはブリッジ正面の窓側にて恐る恐る双眼鏡を所持…。真正面の敵軍の中規模艦隊を確認する。
「大総統…敵軍の防衛艦隊です…」
メガラニカ自由区の防衛艦隊はミサイル巡洋艦八隻…。十九隻のミサイル駆逐艦と三十二隻の魚雷艇が確認出来る。
「中規模艦隊か…総攻撃せよ…」
ブラッドフォードは即刻中規模艦隊に対する総攻撃を指示…。各艦の大型対艦ミサイルと機関砲が炸裂する。太平帝国軍の先制攻撃によりメガラニカ防衛艦隊は二隻の大型ミサイル巡洋艦と六隻のミサイル駆逐艦が大型対艦ミサイルで撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。海面上には九百人以上の乗組員達が吹っ飛ばされる。
「味方艦隊の圧倒的優勢です!」
旗艦セイバードラゴンのブリッジでは乗組員達が沈没する敵艦を眺望する。
「太平帝国軍の圧勝は確実だな…」
「奴等は腐敗した国民主権勢力の残党だ…所詮メガラニカ自由区なんて…」
乗組員達は太平帝国軍の優勢に安堵したのである。同時刻…。メガラニカ自由区防衛艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦リトルヴィーナス艦内では味方艦隊の劣勢に騒然とする。
「多勢に無勢だ…こんな状態では防衛艦隊は全滅するぞ!」
「畜生…防衛艦隊が全滅すれば…太平帝国軍の本土上陸も時間の問題だ…」
乗組員達は騒然とするのだが…。艦長の【ウィンフィールド】は沈黙した様子であり冷静だったのである。乗組員の一人が恐る恐る…。
「ウィンフィールド艦長…如何されましょうか?こんなにも劣勢では味方の防衛艦隊は全滅しますよ…」
「狼狽えるな…」
ウィンフィールドは騒然とする周囲の乗組員達を制止させる。
「ですが艦長…今現在の戦況はメガラニカ防衛軍が圧倒的に不利ですよ…」
ウィンフィールドは沈黙した様子で腕時計を確認する。
「時間だな…」
周囲の乗組員達はハッとした表情で…。
「えっ…何が時間なのですか!?」
一人の乗組員が恐る恐るウィンフィールドに問い掛ける。
「作戦を開始する…」
ウィンフィールドは通信兵を直視するなり…。
「通信兵…即刻独立機動部隊に通信させるのだ…出撃の命令を…」
「はっ!」
周囲の者達はポカンとする。
「一体何を開始するのか?」
同時刻…。メガラニカ自由区西方地帯の軍港にて三隻の中型空母が出撃したのである。中型空母にはとある新型兵器が多数搭載される。西方地帯から独立機動部隊が出撃を開始してより五分後…。メガラニカ自由区南方地帯の防衛艦隊は壊滅状態であり撤退を余儀無くされる。壊滅寸前の防衛艦隊の光景に太平帝国軍総司令官のブラッドフォードは航空部隊の出撃を命令する。
「航空部隊を出撃させろ…メガラニカ自由区の南方地帯全域を空爆せよ…場合によっては非戦闘員への攻撃も許可する…徹底的に奴等を蹴散らせるのだ…」
「はっ!」
ブラッドフォードが命令すると五隻の大型戦闘航空母艦から推計三百機もの戦闘爆撃機が出撃したのである。航空部隊はメガラニカ自由区の南方地帯領空へと進入…。地上への空爆を開始したのである。南方地帯を防衛する地上部隊は必死に太平帝国軍の航空部隊を迎撃するも…。相手は超音速で飛行する戦闘爆撃機であり対空砲は通用せず対空ミサイルで攻撃しても機体に搭載されたパルスレーザーで簡単に無力化されたのである。攻撃開始から三分間が経過すると南方地帯の地上部隊は九割が壊滅…。数千人もの民間人が死傷したのである。旗艦セイバードラゴンではブリッジの乗組員達がモニターで戦況の映像を注視する。
「大総統♪太平帝国軍の圧倒的優勢です♪南方地帯の守備隊は壊滅状態ですよ…」
副艦長のルーヴェルハルトが笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…」
ブラッドフォードは現状であれば上陸作戦が可能であると判断…。
「敵軍は相当疲弊した状態だ…味方の上陸部隊に伝播させろ!」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは即座に各輸送艦に伝達する。上陸作戦を開始する直前…。スーパーレーダーが反応したのである。
「スーパーレーダーが反応しました!」
特殊無線技士がブラッドフォードに報告する。
「今度は何事だ!?」
ブラッドフォードが特殊無線技士に問い掛ける。
「西方の海域より無数の移動物体が出現…超音速で此方に急接近中です…」
「移動物体だと?敵機か?」
ブラッドフォードはモニターを作動させる。するとモニターの画面には無数の飛行物体が映写される。
「此奴は…」
飛行物体は軍用機の形状だが従来型の航空機とは異質的であり新型機であると認識する。
「大総統…敵軍の新型機でしょうか?」
「ひょっとすると無人兵器の戦闘用ドローンかも知れないな…」
「戦闘用ドローンですと?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「敵部隊の航空攻撃に警戒せよ…再度迎撃態勢に移行しろ…作戦中の航空部隊にもドローンの迎撃を急行させるのだ…」
「承知しました…大総統…」
戦闘艦隊と各輸送艦隊は上陸作戦を一時中止させ対空戦闘に移行する。数百機ものドローンが肉眼でも視認出来る位置へと到達…。
「大総統…敵軍のドローンです…」
「ドローンを撃墜せよ!味方艦隊には接近させるな!」
ブラッドフォードの命令と同時に各艦艇は対空戦闘を開始する。対空ミサイルと対空パルスレーザーが西方の上空にて炸裂したのである。対空パルスレーザーがドローンに直撃するのだが…。ドローンの機体内部には高エネルギー兵器を無力化する電磁防壁発生装置により対空パルスレーザーが無力化されたのである。旗艦セイバードラゴンのブリッジでは双眼鏡で副艦長のルーヴェルハルトが上空を直視する。
「なっ!?シールドでしょうか!?」
「シールドだと?」
「ドローンは高エネルギーのシールドで対空パルスレーザーを無力化しました…ひょっとして奴等…」
「電磁防壁だな…ドローンの機体に光学兵器を無力化するシールド装置を装備したのだな…」
電磁防壁発生装置とは高エネルギー兵器を無力化する補助装置である。近年では太平帝国軍にも同類の補助装置は保有するものの…。艦船用の大型装置であり小型航空機に搭載出来る小型の装置は開発中である。
「如何やら奴等…電磁防壁発生装置の小型化に成功したみたいだな…」
ドローン関連の科学技術ではメガラニカ自由区が太平帝国よりも数段階上回る。人員不足であり少数精鋭のメガラニカ防衛軍にとって無人兵器のドローンは最大の戦力であり戦闘に特化されたドローン兵器が多数開発される。一方の太平帝国軍にもドローン兵器は多数配備されるものの…。基本的に偵察用の警戒型ドローンであり戦闘に特化された戦闘用ドローンは試作機のみである。
「艦長…上空より敵機が接近中です!」
対空パルスレーザーの弾幕が太平帝国軍の艦隊周囲に炸裂するのだが…。ドローンは機体のシールド装置でパルスレーザーを潜り抜け味方艦隊の上空間近へと到達する。ドローンは即座に低空飛行…。高速航空魚雷を投下したのである。副艦長のルーヴェルハルトはドローンの高速航空魚雷を投下した瞬間を直視する。
「大総統!敵機は航空魚雷を投下しました…」
「航空魚雷だと?大昔の大戦か?」
本来パルスレーザーはミサイルやら敵機の迎撃を想定して開発された高エネルギー兵器であり水中の魚雷を迎撃するのは不可能である。
「大昔の大戦だな…」
太平帝国軍では魚雷は潜水艦と魚雷艇のみ搭載…。今現在航空魚雷は皆無である。
「艦長!右舷より魚雷が接近中です!」
特殊無線技士が報告する。
「即刻回避だ!」
ブラッドフォードは即座に回避を指示したのである。乗組員達の迅速の対応により旗艦セイバードラゴンは敵機の魚雷攻撃を回避する。旗艦セイバードラゴンの乗組員達はホッとするも…。直後である。対空戦闘中の一隻のミサイル巡洋艦と二隻の防空駆逐艦がドローンの魚雷攻撃により爆散…。轟沈したのである。
「大総統…戦闘中のミサイル巡洋艦ヘルフィッシュと二隻の防空駆逐艦が敵機の魚雷攻撃で撃沈されました…」
メガラニカ防衛軍のドローン兵器は潜水艦に搭載された大型魚雷であり大型艦をも撃沈出来る。今度は輸送艦五隻と魚雷艇八隻がドローンの魚雷攻撃で沈没…。輸送艦六隻と魚雷艇四隻が大破したのである。撃沈された輸送艦からは二千人以上の将兵が海面上に吹っ飛ばされる。作戦中だった航空部隊が味方艦隊上空に帰還…。ドローンを迎撃するもドローンの速度は戦闘爆撃機よりも高速であり反対に味方の戦闘爆撃機が反撃される。二分間の空戦で百八十機もの味方戦闘機が撃墜され…。百人以上のパイロットが戦死したのである。一方のドローン部隊も艦艇と艦載機の対空ミサイルにより三十四機撃墜される。副総統のルーヴェルハルトは上空の光景を直視するなり…。
「大総統…太平帝国軍の劣勢です…」
形勢は完全に逆転したのである。ブラッドフォードは沈黙した様子であるが…。自軍の劣勢に苛立ったのかピリピリし始める。すると直後…。主力の戦闘航空母艦にも被害が出始める。二隻の戦闘航空母艦はドローンの自爆攻撃によって飛行甲板が破壊され…。大破したのである。旗艦セイバードラゴンの同型艦であるレヴィアタンはドローンの魚雷攻撃で艦内の弾薬庫に引火…。一瞬で爆沈する。
「同型艦のレヴィアタンが撃沈されました!」
同型艦のレヴィアタンが爆沈したと同時に艦内の四十八機の艦載機は勿論…。五百人以上の乗組員達が一瞬で吹っ飛ばされる。旗艦セイバードラゴンの周辺海面上には無数の鉄屑やら乗組員達の死骸がプカプカと浮上する。艦隊の損害からルーヴェルハルトはブラッドフォードに撤退を要請したのである。
「大総統!現状では太平帝国軍が圧倒的に不利です!即刻撤退しなければ…味方の艦隊が全滅しますよ!」
撤退を要請するルーヴェルハルトにブラッドフォードはギロッと睥睨する。
「撤退だと?主力の戦闘航空母艦二隻は健在だ…ドローンは実弾の対空ミサイルで対応しろ…」
実際問題ドローンのシールド装置は対空パルスレーザーによる高エネルギー兵器は無力化出来る反面…。実弾兵器は無力化出来ない。
「ですが対空ミサイルのみでは…本数が…」
ドローンに実弾である対空ミサイルは通用するが…。ドローンに命中させるのは非常に困難であり発射された大半がドローンの機関砲で迎撃される。直後…。
「飛行甲板上空より敵機です!直上に急降下します!」
特殊無線技士が報告する。
「敵機だと?」
数秒後…。急降下したドローンは甲板の直上に対艦ミサイルを発射したのである。直後である。ドンッと艦内全体に爆発音が響き渡り…。旗艦セイバードラゴンの艦体全体がグラッと揺れ動いたのである。
「ぐっ!」
艦体が揺れ動いた衝撃にブラッドフォードは横たわる。
「大総統!大丈夫ですか!?」
副艦長のルーヴェルハルトは横たわったブラッドフォードに近寄る。
「私は大丈夫だ…本艦の被害状況は?」
先程のドローンの攻撃により旗艦セイバードラゴンの損傷は飛行甲板が大破…。艦内に収納された十八機の艦載機も破壊されたのである。反面…。飛行甲板以外の設備は健在だったのである。
「母艦としての機能は完全に阻害されたな…」
「飛行甲板は使用出来ませんが…旗艦としての機能は健在です…」
「であればダメージコントロールを急行せよ…」
乗組員達が飛行甲板を修理する最中…。三隻の大型輸送艦と六隻の防空駆逐艦がドローンと潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されたのである。予想外の大損害にブラッドフォードは撤退を余儀無くされる。
(戦闘を続行し続ければ太平帝国軍の大艦隊でも確実に全滅するな…)
味方艦隊の全滅を危惧したブラッドフォードは不本意であるが…。撤退を決断する。艦内の通信機を所持するなり…。
「全軍に伝播する…戦闘続行は不可能だ…撤退を開始せよ…」
ブラッドフォードの判断に誰しもが反対しなかったのである。撤退を開始した太平帝国軍の艦隊にメガラニカ防衛軍のドローンは攻撃を停止…。本土へと戻ったのである。今回の大海戦で太平帝国軍は大型艦の戦闘航空母艦一隻とミサイル巡洋艦一隻…。小型艦の防空駆逐艦八隻と魚雷艇十二隻が撃沈される。損傷では三隻の戦闘航空母艦と二隻のミサイル巡洋艦が大破…。防空駆逐艦四隻と魚雷艇五隻が大破する。陸軍の上陸部隊は大型輸送艦が八隻撃沈され…。七隻の輸送艦が大破したのである。航空部隊は二百十九機の戦闘爆撃機を喪失…。五十四機の機体が損傷する。人的損害では合計六千九百四十二人が戦死…。合計三千五百六十一人が負傷したのである。一方のメガラニカ防衛軍はミライル駆逐艦二隻とミサイル駆逐艦六隻が撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。陸軍の守備隊は五十八両の戦闘車両が破壊…。空軍は五十六機のドローンが撃墜される。人的被害では合計二千三百六十五人が戦死…。合計三千四百七十八人が負傷する。民間人への被害は合計三千五百八十九人が死亡…。合計四千七百三十二人が負傷したのである。今回の戦闘はメガラニカ南方海戦と命名される。今回の大敗北以降…。太平帝国の権威が失墜したのである。

第二話

大艦巨砲主義

メガラニカ南方海戦の大敗北以降…。メガラニカ自由区の猛反撃が開始されたのである。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の大量投入と国内の反政府勢力の協力により太平帝国の領土の約半分を攻略…。占領したのである。メガラニカ南方海戦から一週間後の五月二十四日…。各自治領の戦闘で推計九百万人もの民間人が死亡したのである。同日…。太平帝国首都イーストサイドの大総統官邸会議室では大総統のブラッドフォードとルーヴェルハルトが対談する。
「大総統…一週間の短期間で太平帝国の統治領の約半分がメガラニカ防衛軍の猛反撃により占拠されました…太平帝国軍は劣勢の状態です…」
「一週間で領土の約半分が奴等に占拠させるなんて…ドローン兵器の威力を見縊らなければ…こんな状態には…」
ブラッドフォードは後悔したのである。後悔するブラッドフォードにルーヴェルハルトは前向きな姿勢で…。
「ですが大総統!今現在でこそ劣勢ですが…今迄の戦闘でメガラニカ自由区は太平帝国以上に消耗した状態です!」
今現在のメガラニカ自由区と太平帝国の国力は一対十八でありメガラニカ自由区は圧倒的に不利である。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の有効活用から各地の戦場で圧倒的物量の太平帝国軍を圧倒する。メガラニカ防衛軍の快進撃により太平帝国は領土の約半分を占拠されたものの…。短期間で戦線を拡大させたメガラニカ防衛軍は国力が貧弱であり兵站の遅滞から膠着し始める。
「メガラニカ防衛軍は膠着状態ですからね!劣勢を挽回出来る絶好のチャンスですよ!」
するとブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。
「訓練中の【ホムンクルス】だが…正規軍の将兵として実戦に配属出来るのか?」
「訓練中のホムンクルスの将兵達ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から研究…。開発されたクローン人間達の総称である。度重なる戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。世界最終戦争以前の太平帝国は小規模の新興国であり人員不足の観点からクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。通常クローン人間の開発は倫理的問題点から民主主義の国家では法律で禁止されるのが通例であるが…。人権を尊重しない独裁政治の太平帝国ではクローン人間の開発も容易に実現出来るのである。今現在は推計三百万人ものホムンクルスが大量生産され…。正規軍の将兵として実戦に参加出来そうなホムンクルスは推計二十万人である。
「彼等が正規軍の将兵として実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。太平帝国軍はホムンクルスと人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が直接戦闘しなくても…ホムンクルスの将兵を最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
近日では太平帝国の劣勢から脱走兵やらメガラニカ防衛軍に加勢する勢力が続出…。両勢力の力関係は完全に逆転し始める。人員確保が難化し続ける太平帝国軍にとってホムンクルス将兵の投入は非常に好都合だったのである。
「本題ですが…開発部が新型兵器を提案しました…」
開発部が提案した数種類の新型兵器の設計図をブラッドフォードに提出する。
「戦闘用ドローン…『ケルベロス』だと?」
「ケルベロスは…」
ケルベロスとは太平帝国軍が開発した無人戦闘機である。従来型の有人戦闘機よりは一回り小型であるがマッハ八以上の最高速度を発揮出来…。機体底部には対地対艦武装は大型ミサイルを搭載する。対空装備は対空プラズマレーザーと実弾の対空機関砲を搭載…。
「ケルベロスが量産化に成功出来れば…メガラニカ防衛軍のドローン兵器『グリフォン』にも対抗出来ましょう…」
メガラニカ南方海戦で太平帝国軍艦隊を撃退させたドローン兵器の正体はグリフォンと判明する。本機は南方海戦で太平帝国海軍部隊が鹵獲したグリフォンを研究…。設計された機体でありメガラニカ防衛軍のグリフォンに対抗出来る戦闘用ドローン兵器として提案されたのである。
「ケルベロス…試作機の完成を見届けるか…」
二枚目の設計図を直視する。
「ん?此奴は…」
「二枚目の新型兵器は超砲撃型戦艦…『アプセラス』です…」
「超砲撃型戦艦…アプセラス?」
正式名は超砲撃型戦艦アプセラスであり海軍直属の開発部が提案したのである。今現在では完全に過去の遺産である超弩級戦艦であるが戦艦アプセラスは最先端の科学技術と過去のロストテクノロジーを結集…。現代型大艦巨砲主義の象徴である。艦体の全長は三百メートルサイズと巨体であり全幅は五十メートルサイズ…。全備総重量は前代未聞の推定七十万トンクラスの超弩級戦艦である。
「今時大艦巨砲主義なんて…時代錯誤だろ…」
ブラッドフォードは時代錯誤であると感じるのだが…。
「戦艦アプセラスは現在開発中の超大型電磁投射砲を搭載する予定なのです…所謂実験試作型の試験戦艦ですね…」
「電磁投射砲か…」
電磁投射砲は現在太平帝国軍が開発中の実弾電磁兵器である。高額のミサイルよりも安価であり高威力を発揮出来ると期待される。
「海軍開発部の大計画では戦艦アプセラスの装甲は『エターナルメタル』を使用するとの情報です…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは月面で採掘された不朽性の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスも非常に安価ですからね♪」
「であれば建造を急行するべきだな…」
直後である。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で会議室に入室したのである。
「緊急事態だと?一体何事だ?」
ブラッドフォードが問い掛けると通信兵はビクビクした様子で…。
「南方のメティス諸島…メティス基地が敵軍の攻勢で占拠…基地を防衛する守備隊は必死に交戦しましたが…守備隊は玉砕したとの情報です…」
「なっ!?メティス基地の守備隊が…玉砕だと!?守備隊は全滅したのか!?」
ルーヴェルハルトは驚愕したのである。
「残念ですが…」
メティス基地とは強固の大規模要塞が構築された本土防衛用の第二防衛ライン…。推計三万人もの太平帝国陸軍守備隊が配置されたが本日未明にメガラニカ防衛軍の強襲で全滅したのである。
「メティス基地が陥落したか…恐らく今度の攻撃目標は最終防衛ラインの…パシフィスゾーン基地だな…」
パシフィスゾーン基地とは最南端に位置する離島…。パシフィスゾーン本島を防衛する太平帝国軍守備隊の本拠地である。太平帝国本土を防衛する最重要防衛拠点であるものの…。推計八十万人もの民間人も安住する。ルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「大総統…即刻パシフィスゾーン本島に援軍を派遣させますか?」
「援軍は不要だ…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの返答にルーヴェルハルトと通信兵は絶句したのである。
「本気ですか!?大総統!?」
「私は本気だよ…ルーヴェルハルト…」
「如何して援軍を派遣しないのですか!?パシフィスゾーンが陥落すれば…今度は本土が攻撃対象なのですよ!?」
ブラッドフォードは再度無表情で返答する。
「パシフィスゾーンの守備隊には陽動作戦に利用する…」
「陽動作戦ですと?」
「味方の戦闘機に特殊弾頭を搭載…パシフィスゾーンに侵攻中のメガラニカ防衛軍を特殊弾頭ミサイルで殲滅する…」
パシフィスゾーン基地は陸海軍の大部隊が駐屯…。基地内の兵力も推計十四万人であり基地を陥落させるには相当数の部隊が必要である。パシフィスゾーンを攻防する両軍に特殊弾頭ミサイルで攻撃…。当然として味方の部隊は全滅するが敵軍の侵攻を阻止するには非常に好都合である。
「特殊弾頭ミサイルですと!?パシフィスゾーンに特殊弾頭なんて使用すれば味方の守備隊は勿論…大勢の民間人にも被害が…」
特殊弾頭ミサイルは所謂核兵器の一種であり一発のミサイルで十数キロメートルもの広範囲を焦土化させられる。非人道的でありイエスマンのルーヴェルハルトも特殊弾頭ミサイルの使用には躊躇する。
「今更何を躊躇するのだ?ルーヴェルハルト…特殊弾頭なら二年前の大戦争で無尽蔵に使用しただろ…」
小規模国家であった太平帝国が世界最終戦争で勝利出来たのは特殊弾頭ミサイルの多用である。
「特殊弾道ミサイルで敵味方諸共…殲滅されるのですか?」
「最早多少の犠牲は止むを得ない…」
ルーヴェルハルトの問い掛けにブラッドフォードは即答する。
「特殊弾頭は極秘だぞ…兎にも角にもパシフィスゾーンの守備隊には本島の防衛を徹底させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは不本意であるが…。ブラッドフォードの作戦に承諾したのである。

第三話

攻防戦

五月二十七日早朝…。メガラニカ防衛軍の大艦隊が太平帝国最終防衛区域パシフィスゾーンへと進行を開始したのである。同時刻…。パシフィスゾーン基地総司令部では拠点防衛用のスーパーレーダーが反応したのである。
「一体何事だ!?」
パシフィスゾーン基地陸軍総司令官【ウィグノール】が偵察員に問い掛ける。
「スーパーレーダーが反応しました!」
即座に立体映像のホログラムで領海を確認する。ホログラムには数十隻もの艦艇が確認出来る。
「此奴はメガラニカ防衛軍の大艦隊だな…パシフィスゾーンを攻略するみたいだ…」
「如何しましょう…総司令官…」
「即刻防衛戦を開始する!各員は戦闘配置だ!パシフィスゾーンは徹底的に死守しろ!」
ウィグノールは各員に防衛戦を指示したのである。
「はっ!」
パシフィスゾーンは本土防衛の最終防衛ラインでありパシフィスゾーンが陥落すれば本土が攻撃される。
「通信兵…本土にも援軍の要請を伝達しろ…」
「はっ!」
通信兵は即座に総本部に通達したのである。三十分後…。メガラニカ防衛軍の大艦隊がパシフィスゾーンの防衛区域へと到達したのである。
「総司令官…メガラニカ防衛軍の大艦隊が防衛区域に到達しました…」
「防衛戦を開始するか…」
ウィグノールの攻撃開始の合図と同時に海面上からは百二十隻ものミサイル警備艇…。滑走路からは百三十機もの戦闘爆撃機が飛来したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍の大艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦レヴィアタンはスーパーレーダーで太平帝国軍のミサイル警備艇と戦闘爆撃機を確認する。
「艦長…敵部隊を確認しました…」
旗艦レヴィアタンの艦長はメガラニカ南方海戦で活躍したウィンフィールドである。
「即刻ホログラムを作動させろ…」
乗組員は艦内のホログラム装置を作動させる。するとホログラムには百隻以上のミサイル警備艇と戦闘爆撃機が立体映像として映写される。
「敵部隊は旧型の兵器ばかりか…」
「如何されますか?」
乗組員の問い掛けにウィンフィールドは即答する。
「即刻迎撃せよ…母艦からはドローン兵器を発進させろ…」
「承知しました…」
旗艦のレヴィアタンから二十八機のグリフォン型ドローン兵器が発進する。旗艦レヴィアタンは全長二百四十メートルサイズ…。全幅三十メートルサイズの大型艦であり満載排水量は推定五万トンである。ミサイル戦闘艦としての機能は勿論…。航空機用の母艦としても使用出来る。所謂現代型の航空戦艦である。艦載機はドローン兵器であり合計五十機以上搭載出来る。旗艦のレヴィアタンは勿論…。レヴィアタン級航空大型ミサイル戦闘艦六隻と最新鋭のドローン空母艦隊から合計四百機以上ものグリフォン型ドローン兵器が発進したのである。ドローン部隊が発進してより十五分後…。最前線のパシフィスゾーン防衛部隊と遭遇したのである。両軍が遭遇した直後に戦闘が開始され…。パシフィスゾーン防衛部隊はミサイル警備艇と戦闘爆撃機による対空ミサイル攻撃で十四機のドローンを撃墜したのである。ドローン撃墜に防衛部隊の将兵達は戦意が向上するも…。相手は新型のドローン兵器であり二分も経過すればドローンの反撃で八十三隻のミサイル警備艇が撃沈され七十六機の戦闘爆撃機が一瞬で撃墜されたのである。旗艦レヴィアタンの乗組員達は艦橋から戦況を確認する。
「艦長…味方の優勢です…」
「上出来だな…」
厳格の軍人であるウィンフィールドだが…。ドローン部隊の大戦果に上出来と判断したのである。
「ドローン部隊には攻撃を続行させろ…パシフィスゾーンを防衛する陸上部隊に空爆を仕掛けるのだ…」
ドローン部隊の攻撃の続行を指示する。
「承知しました!」
するとウィンフィールドは恐る恐る…。
「当然として無関係の非戦闘員への被害は最小限に努力せよ…」
「承知です…」
ドローン部隊の猛反撃からパシフィスゾーン防衛部隊は総崩れ…。海上の防衛網は簡単に突破されたのである。
「総司令官…海上の防衛部隊が壊滅…敵軍に突破されました…」
通信兵の報告にパシフィスゾーン総司令部は混乱する。
「海上の防衛部隊が壊滅だと…」
「敵軍はドローン部隊を使用したのか…」
総司令官のウィグノールは一瞬沈黙するも…。
「地上の守備隊に伝播せよ…陸上の防衛戦を開始すると!」
「承知しました…」
基地内の将兵達は承諾したのである。
「非戦闘員は緊急用シェルターに避難させろ…」
陸上の防衛部隊は即座に行動を開始する。緊急警報システムが作動され…。民間人は即座に各地域の地下壕に設置された避難用の緊急用シェルターへと移動したのである。民間人の避難終了から三分後…。メガラニカ防衛軍のドローン部隊がパシフィスゾーン領空へと到達する。
「メガラニカ防衛軍のドローンだ!」
「海上の防衛部隊は全滅したのか?」
「兎にも角にも敵機を迎撃するぞ!」
陸上の守備隊は迎撃を開始…。上空のドローンを目標に攻撃したのである。数千発もの機関砲と対空ミサイルが上空に炸裂する。守備隊の攻撃で二十二機のドローンを撃墜するも…。ドローンの空爆で三十六両の戦闘車が破壊され百三十七人の将兵が戦死する。三分間の空爆で陸上部隊の八割が壊滅したのである。
「陸上部隊の八割が壊滅しました…」
守備隊の劣勢に総司令部は混乱する。
「なっ!?八割も!?」
「全滅だな…」
「ドローンの空爆で守備隊の八割が壊滅したのか!?」
総司令部の将兵達は予想外の事態に恐怖したのである。直後…。スーパーレーダーが反応する。
「スーパーレーダーが反応したぞ…今度は何事だ?」
ホログラムを作動させるとメガラニカ防衛軍の大艦隊が映写される。
「敵軍の大艦隊だぞ…パシフィスゾーンの領海に到達したのか!?」
メガラニカ防衛軍の大艦隊は航空大型ミサイル戦闘艦が七隻と正規空母四隻…。ミサイル巡洋艦が十三隻と三十一隻の防空駆逐艦が確認出来る。後方には上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦が十八隻…。補助用の魚雷艇が十五隻確認出来る。メガラニカ防衛軍はドローンの投入で海上の防衛部隊を撃退…。メガラニカ防衛軍艦隊はノーダメージでパシフィスゾーンの領海へと到達出来たのである。
「本土から援軍は出動したのか!?」
ウィグノールは再度通信兵に問い掛ける。
「無線では…本土から味方の潜水艦が一隻…出撃したとの情報です…」
「はっ?」
ウィグノールは絶句する。
「こんな状況で援軍が潜水艦一隻だと!?何故海軍の主力艦隊を出動させない!?」
「主力艦隊は本土を防衛するのが手一杯であると…」
現実問題…。メガラニカ南方海戦の大敗北から太平帝国軍主力艦隊は艦隊の再建に手一杯であり主力の大艦隊は派遣出来なかったのである。
「畜生が…」
通信兵の報告にウィグノールはピリピリする。
(パシフィスゾーンは陥落しろと?総本部は本土での戦闘を決断したのか?)
総本部の意向に疑問視するが…。ウィグノールは決断したのである。
「総員…本土からの援軍は期待出来ないが…精一杯パシフィスゾーンを死守するぞ!」
「はっ!承知しました…」
絶望的状況下であるが守備隊の将兵達は一致団結…。残存部隊による徹底抗戦を決意したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍大艦隊は上陸作戦を開始したのである。十八隻の大型輸送艦から三十六隻の上陸用舟艇が出動…。陸上部隊によるパシフィスゾーン上陸作戦が開始されたのである。上陸部隊の戦力は主力戦車五十二両…。装甲車と軽量の戦闘車が六十四両投入される。二万人の海兵隊が上陸したのである。今回の上陸作戦では最新型の地上用ドローンである無人小型戦車を五機投入…。試作段階であるが実験目的で無人小型戦車が実戦配備されたのである。
「奴等…メガラニカ防衛軍の上陸部隊です…」
最前線に位置する陸軍の残存部隊が無傷のトーチカから恐る恐る…。上陸中の敵部隊を確認する。
「俺達は一先ず撤収するぞ…敵軍への反撃は本隊と合流してからだ…」
「はっ!」
最前線の残存部隊は総司令部へと撤収したのである。メガラニカ防衛軍上陸部隊は無傷で上陸地点を制圧…。後方支援部隊も上陸地点への上陸を開始したのである。同時刻…。太平帝国南方地帯軍港から出航した新型潜水艦アスピドケロンは国家元首であるブラッドフォードが艦長として乗艦したのである。
「航海は順調そうだな…」
アスピドケロンは順調に深度七百メートルの海中を潜航し続ける。
「パシフィスゾーンの戦況は?」
ブラッドフォードは乗組員に問い掛けるとホログラム装置を作動…。地形の様子を小型立体映像で映写させたのである。
「現状では太平帝国軍の劣勢ですね…」
「好都合だ…最低でも敵部隊の五割程度は中心地に侵攻させたい…」
同時刻…。陸地の残存部隊は必死に応戦するも最新兵器を多数投入するメガラニカ防衛軍の侵攻を阻止するのは実質不可能であり後退したのである。最早パシフィスゾーンは本拠地に残存した部隊以外は壊滅…。パシフィスゾーンが陥落するのは時間の問題でありメガラニカ防衛軍の勝利は目前だったのである。
メンテ
桜花姫※ ( No.85 )
日時: 2021/09/12 17:58
名前: 月影桜花姫

第一話

真夜中

太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。
「荒神山か…」
荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が荒神山に出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟同然であり人間は誰一人として荒神山へは近寄れない。
「何やら無数の妖気が感じられる…」
(如何やら今回の相手も大群だな…)
僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。
「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」
周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。
「荒神山の頂上だな…」
天辺からは南国の村里が眺望出来る。
「絶妙の景色だ…」
(即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…)
直後である。
「ん!?」
(気配だ…)
突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。
(此奴は妖気か?)
「如何やら大群みたいだな…」
姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。
(人影みたいだな…)
体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。
「人間では無さそうだな…」
周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。
(此奴は…)
人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。
「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」
人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。
「食人餓鬼が出現するとは…」
(相手が食人餓鬼程度なら…)
三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。
「妖怪よ…成仏せよ…」
焼死した食人餓鬼に合掌する。
「安心は出来ないな…」
今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。
「大群だな…」
無数の食人餓鬼はふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。
「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」
総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。
「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」
再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。
「今度の相手は…」
(食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…)
恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。肉塊の怪物は巨体の人型であるが…。全身の体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。
「此奴は食人餓鬼の親玉…【百鬼食人餓鬼】か…」
百鬼食人餓鬼は通常の食人餓鬼の集合体であり食人餓鬼の親玉である。
(厄介なのが出現したな…)
体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。
「熱風!?」
三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。
(絶大なる妖力だな…)
熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。
(予想以上に強力だな…)
「一か八か…」
直後…。黒雲が天空を覆い包む。
「死滅せよ!」
黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。
「はぁ…はぁ…」
先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。
「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」
(戻ろうか…)
一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。
「なっ!?」
(複数の妖気か!?)
すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。
「百鬼食人餓鬼か…」
(三体も出現するなんて…)
最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。
(不本意だが…撤退しなければ…)
撤退する直前…。
「えっ…」
今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。
「今度は別の妖気だ…」
(百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?)
不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。
(遭遇すれば…私は確実に殺される…)
「即刻退散しなければ…」
退散する寸前…。
「えっ…」
三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。
(彼女は…人間の女性?)
背後の女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
(彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…)
女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。
「氷結の妖術…発動!」
女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。
「所詮は雑魚ね…」
すると女性は三蔵郎を凝視し始める。
「なっ!?」
三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。
「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」
女性は笑顔で名前を名乗る。
「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」
桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。
「貴女様は妖怪でしたか…」
桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。
(姿形のみなら人間の小町娘ですが…)
三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。
(彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…)
可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。
「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」
「えっ…」
(人間を…殺さないって!?)
本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。
(摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?)
桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。
(一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?)
すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。
「あんた…不思議そうな表情ね♪」
「えっ!?」
桜花姫は説明する。
「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」
「特殊ですと?」
「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」
「月影桃子姫様とは…伝説の巫女の?」
月影桃子姫とは人間の巫女であり強大なる霊力で多種多様の妖怪を征伐…。伝説の巫女として有名である。とある大妖怪との戦闘により失踪…。今現在では彼女の行方は不明である。
「勿論♪」
桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した異例の集合体である。
「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」
(彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…)
三蔵郎は再度桜花姫に質問する。
「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」
(気紛れだったか…)
理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。
「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」
桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。
「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行し続けても不可能でしょう…」
「私が大妖怪なんてあんたは大袈裟ね♪」
(私が大妖怪ですって♪)
桜花姫は内心大喜びする。
「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」
すると桜花姫は恐る恐る…。
「あんたの名前は?」
「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」
自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。
「私も西国に戻ろうかしら…」
桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。
「露天風呂で入浴しましょう♪」
田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。
「露天風呂だ♪」
天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。
(折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。
「変化の妖術…発動!」
変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。
「入浴するわよ♪」
巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。
「極楽♪極楽♪」
彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。
(妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?)
直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。
「えっ?」
(気配だわ…)
何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。
(妖気かしら?)
「如何やら妖怪みたいね…」
気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。
「誰かと思いきや…」
露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。
「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」
「桜花姫…入浴中だったのね…」
彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。
「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」
「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」
粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。
「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」
「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」
桜花姫は笑顔で謝罪する。
「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」
揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。
「あんた…私に殺されたいみたいね…」
「私に用事かしら?」
桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。
「大変なの…桜花姫…」
「何が大変なのよ?」
雪女郎に恐る恐る問い掛ける。
「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」
「問題だったかしら?」
「大問題よ!」
桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。
「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」
噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。
「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」
雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。
「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」
桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。
(桜花姫…)
「あんたは本当に気楽ね…」
桜花姫の様子に呆れ果てる。
「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかも知れないわね…」
以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。
「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」
「桜花姫…」
断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。
「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」
雪女郎は自宅へと戻ったのである。
「面白くなったわね♪」
内心大喜びする。

第二話

大海戦

南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。
「東国だわ…」
東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。
「桜花姫様?如何してこんな場所に?」
三蔵郎は小声で問い掛ける。
「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」
三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。
「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」
警戒する三蔵郎に問い掛ける。
「あんた…私を信用出来ないの?」
「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」
実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。
「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」
「えっ!?毛嫌いですと!?」
三蔵郎は驚愕したのである。
「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」
「一匹狼って…」
(同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?)
平気そうな彼女に不思議がる。
(月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…)
すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。
(彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?)
桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。
「ん!?」
(別の妖気か!?)
突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。
「えっ?」
桜花姫も妖気に反応したのである。
「三蔵郎様も察知したみたいね…」
「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」
突如として南国の海域より妖気を察知する。
「南国に妖怪が出現したのね♪」
「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」
妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。
「面白そうね♪私の出番かしら♪」
「私は即刻妖怪を退治しなくては…」
三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。
「えっ!?三蔵郎様!?」
桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。
「はぁ…はぁ…」
(三蔵郎様を見失っちゃったわ…)
桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。
「仕方ないわね…」
(妖術を使用しちゃいましょう♪)
桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。
「三蔵郎様♪」
「うわっ!桜花姫様!?」
突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。
「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」
「勿論よ♪」
すると桜花姫は笑顔で…。
「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」
「仕方ないですね…」
三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。
「到着したわね♪」
「ですが妖怪は?」
海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。
「如何されましたか?」
「法師様ですか…」
「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」
「妖怪ですと?」
「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」
数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。
「一瞬妖怪に殺されるかと…」
「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」
すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。
「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」
「海難入道ですか?」
海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達の霊魂が妖怪化した化身…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。海難入道と遭遇した人間は溺死するのが通例である。
「漁船を襲撃したのが水難妖怪の海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」
三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。
「海難入道は私が仕留めるわ♪」
「えっ…桜花姫様?」
桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。
「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」
「人間のあんたでは妖怪を退治するなんて…」
漁師達は呆れ果てる。
「私が人間ですって♪」
桜花姫は笑顔で…。
「私は正真正銘…妖怪なのよ♪」
「あんたが妖怪だって?」
「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」
自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。
「仕方ないわね…」
桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。
「桜餅に変化しなさい♪」
変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。
「なっ!?俺達の漁船が…」
「桜餅に!?如何してこんな…」
変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。
「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」
漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。
「あんたは…本当に妖怪なのか?」
「勿論♪私は正真正銘妖怪なのよ♪」
問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。
「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。
「逃げちゃったわ…」
「当然の反応でしょうね…」
現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間達は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。
「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」
再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。
「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」
三蔵郎は驚愕する。
「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」
桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。
「海難入道は?」
海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。
(こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…)
すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。
「妖気!?」
(ひょっとして海難入道の妖気かしら?)
接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。
「何かしら?」
巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。
(巨大真蛸…)
「海難入道だわ…」
海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。
「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」
海難入道は人語で発言したのである。
「私は変化の妖術で人魚にも変化出来るからね♪」
桜花姫は笑顔で返答する。
「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」
海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり自身が空腹であれば相手が妖怪であっても捕食する。
「空腹ね…私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」
「はっ?」
桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。
「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は皆無であるぞ…」
海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。
「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」
「人間に加勢したから何よ?私は鬱陶しい邪魔者を仕留めただけなのよね♪」
桜花姫は笑顔で反論したのである。
「貴様…気に入らないな…」
「気に入らないなら如何するのかしら♪」
「当然として妖怪の面汚しである貴様を食い殺す…」
海難入道は即座に巨大触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。
「危機一髪だったわね♪」
「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」
「今度は私の出番ね♪」
桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。
「あんたこそ死滅しなさい♪」
両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。
「直撃♪直撃♪」
雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。
「えっ?」
「残念だったな…桜花姫よ…」
桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。
「妖力を吸収するなんて…」
普段は冷静の桜花姫であるが…。海難入道の吸収能力に一瞬動揺する。
(海難入道には妖術が通用しないのかしら…)
「不思議そうな表情だな…桜花姫…俺の肉体はあらゆる妖力を吸収出来…妖術を無力化出来るのだ…」
海難入道の最強の特殊能力である吸収能力は自身の肉体に接触した多種多様の妖力を吸収出来…。あらゆる妖術を無力化出来る。基本的に妖力を駆使した攻撃法では海難入道は仕留められない。
「貴様があらゆる妖術を扱おうとも…貴様程度の妖術では俺を仕留められない!」
(妖術が通用しないなんて…此奴は意外と厄介だわ…)
あらゆる魑魅魍魎の集合体である桜花姫でも…。妖力を吸収する妖怪を仕留めるのは非常に困難である。
(出直そうかな?)
恐る恐る後退りする。後退りする桜花姫に…。
「先程の威勢は如何した?俺に恐怖したか?」
「別に…」
問い掛けられた桜花姫は無表情で返答する。
「貴様は妖力だけなら大妖怪に匹敵するな…是非とも貴様を捕食したい…」
「私を捕食ですって?」
「あらゆる妖怪の集合体である貴様を食い殺せば…俺は妖怪から大妖怪の領域に到達出来るからな♪」
豪語する海難入道に桜花姫は笑顔で…。
「私を捕食なんて…あんた程度の妖怪に出来るかしら♪」
桜花姫は笑顔で挑発したのである。
「貴様…本当に食い殺されたいらしいな…」
「食い殺せるのであれば私を食い殺しなさいよ♪」
桜花姫は再度挑発する。
「妖怪の小娘風情が…貴様は本当に気に入らない小娘だな…」
すると蛸足の巨大触手で桜花姫を拘束したのである。
「えっ?」
「貴様を食い殺す!」
一口で桜花姫を捕食…。口内で彼女を咀嚼したのである。
「所詮桜花姫はこんな程度の妖怪だ…」
すると直後…。桜花姫を捕食した影響からか先程よりも妖力が急上昇したのである。
「俺の妖力が増大化したぞ!」
妖力のみなら今現在の海難入道は大妖怪に匹敵…。海難入道は強大化した自身の妖力に大喜びしたのである。
「今日から俺も大妖怪の仲間入りだな♪」
すると直後…。
「ん?」
海難入道の全身が白煙に覆い包まれ…。推定二町規模の巨大さである海難入道の肉体が消滅したのである。すると白煙の内部から海難入道によって食い殺された桜花姫が出現…。彼女は無傷であり平気そうな様子だったのである。
「海難入道を仕留めたし♪」
(陸地に戻りましょう♪)
桜花姫は再度瞬間移動の妖術を駆使…。海岸の砂浜へと戻ったのである。
「なっ!?桜花姫様!?」
三蔵郎と合流する。
「三蔵郎様♪妖怪は無事征伐したわ♪」
「海難入道を征伐されたみたいですね…一瞬桜花姫様の妖気が消滅したので食い殺されたのかと…」
「一度海難入道に捕食されちゃったけれどね♪」
桜花姫は一時的に海難入道に捕食されたものの…。体内の胃袋から海難入道の肉体と同化したのである。
「反対に私が海難入道を捕食したのよ♪」
「えっ…捕食ですと?」
今現在海難入道は桜花姫の肉体の一部に変化する。
「兎にも角にも…海難入道は仕留めたから南国の海域は安全よ♪」
「事件は無事解決したので一件落着ですね…」
三蔵郎も一安心したのである。
「事件も解決出来たし♪戻りましょう♪」
「解散しますかね…」
桜花姫と三蔵郎は解散…。二人は村里へと戻ったのである。

第三話

強襲

南国での海難入道との大海戦から六日後の真夜中…。桜花姫は暇潰しに北国の村里にて散歩したのである。
「退屈ね…」
時間帯は深夜であり村人達は確認出来ない。
「妖怪でも出現しないかしら?」
基本的に多数の百鬼夜行が活動するのは真夜中であり日中に出現するのは中級以上の妖怪である。
「戻ろうかな?」
戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
突如として周囲より無数の気配を感じる。
(気配だわ…)
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒し始める。
(無数の妖気みたいね…)
「妖怪の大群みたいね…」
気配の正体は妖気であり無数の妖怪達が自身に接近するのを察知する。
「今回は何が出現するのかしら?」
すると直後である。
「食人餓鬼だわ…」
周囲の地面より数十体もの食人餓鬼が出現…。周囲を包囲されたのである。
(敵意も感じられるわね…)
突如として出現した食人餓鬼であるが…。ふら付いた身動きで桜花姫に近寄る。
「如何やらあんた達…私が気に入らないみたいね♪」
本来食人餓鬼は同種の妖怪には手出ししない性質なのだが…。桜花姫を敵対視した様子だったのである。直後…。食人餓鬼の大群は桜花姫に殺到する。
「はぁ…あんた達は命知らずね…」
桜花姫は呆れ果てるものの…。
「相手するわ…死滅しなさい♪」
念力の妖術を発動する。すると食人餓鬼の全身が肥大化…。破裂したのである。桜花姫の地面周辺には無数の鮮血やら肉片が散乱する。
(折角だから変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪)
「桜餅に変化しなさい♪」
今度は変化の妖術を発動すると周辺の肉片が小皿に配置された桜餅に変化したのである。
(変化の妖術成功♪)
「桜餅に変化したわね♪」
桜花姫は大喜びするなり…。無我夢中に桜餅を頬張り始める。数分後…。数百個もの桜餅を頬張ったのである。
「満足♪満足♪消耗しちゃった妖力も回復出来たわね♪」
戻ろうかと思いきや…。
「今度も無数の妖気を感じるわ…」
周囲より無数の妖気を察知する。
「今度も大群ね…」
すると周囲より数十体から数百体もの食人餓鬼の大群が出現…。今度は五体の百鬼食人餓鬼も確認出来る。
「先程よりも大群だわ…」
(今度は百鬼食人餓鬼も出現するなんてね…)
百鬼食人餓鬼と食人餓鬼の大群に包囲される。
「鬱陶しい奴等ね…」
面倒臭いと感じるのか体内の妖力を急上昇…。天空が黒雲により覆い包まれる。
「死滅しなさい♪」
落雷の妖術を発動…。黒雲から落雷が発生したのである。落雷が地面に直撃すると地面が抉られ…。周囲の食人餓鬼と百鬼食人餓鬼を一掃させる。
「所詮は雑魚妖怪ね♪大妖怪に相当する私に挑戦するなんて無謀なのよ♪」
夜空の満月を眺望するなり…。
「西国に戻ろうかしら…」
直後である。
「えっ?」
突如として不吉の気配を感じる。
(何かしら?)
「妖気?」
不吉の妖気が一歩ずつ接近する。
(妖気なのは確実だけど…)
普段は冷静沈着の桜花姫であるが…。不吉の妖気に戦慄したのである。
(妖気は妖気でも…此奴は大妖怪の妖気ね…)
不吉の妖気は大妖怪の妖気であり桜花姫は警戒する。
(一体何が出現するのかしら?)
すると背後より…。
「貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫か…」
「えっ!?」
桜花姫は警戒した様子で背後を直視したのである。
「あんたは…」
彼女の背後に佇立するのは大陸風の甲冑を装備した小柄の武人であり桜花姫を凝視する。
「私は…【夜叉王】…大妖怪の一人だ…」
夜叉王とは大陸出身の武神妖怪であり外見は小柄の美青年である。絶大なる妖力により北国一帯を支配する大妖怪であり大勢の村人達は勿論…。数多の妖怪達が大妖怪である彼を畏怖する。
「夜叉王…こんな場所で大妖怪のあんたと遭遇するなんてね…」
桜花姫は畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。
(如何して大陸の大妖怪がこんな場所に…)
すると夜叉王は後退りする桜花姫を直視するなり…。
「貴様…私に対する恐怖心か?近頃の噂話では貴様は人間に加勢して…多数の妖怪達を仕留めたらしいな…」
「人間に加勢したから何よ?私が気に入らない妖怪を仕留めるのは勝手でしょう…」
(此奴…)
桜花姫の挑発的態度に苛立ったのか彼女に睥睨する。
「妖怪の小娘風情が…貴様は妖怪の面汚しだ…」
夜叉王は妖刀を抜刀したのである。
「妖刀かしら?」
「妖怪の面汚しである貴様は私が徹底的に征伐する…」
すると夜叉王は神速の身動きで桜花姫の目前に接近…。一瞬で桜花姫の目前へと移動したのである。
「えっ?」
「貴様を斬殺する…」
夜叉王は妖刀の一振りにより桜花姫を一刀両断…。彼女の肉体は上半身と下半身に両断されたのである。
「他愛無いな…」
(妖怪は妖怪でも…所詮は雑魚妖怪達の肉塊だな…)
両断された桜花姫の肉体であるが…。
「ん?」
上半身と下半身から白煙が発生すると一瞬で消滅したのである。
「此奴は分身体か?」
すると夜叉王の背後より…。
「危機一髪だったわ…」
「貴様…分身の妖術で私の攻撃を回避したみたいだな…」
メンテ
桜花姫 ( No.86 )
日時: 2021/09/12 18:03
名前: 月影桜花姫

ジャンル
純和風ファンタジー
ホラー
アクション

世界観
純和風異世界

登場人物
【月影桜花姫】
出身地:西国
誕生日:天地暦9992年4月7日
星座:牡羊座
実年齢:30歳
人間換算:15歳
種族:妖怪
性別:女性
身分:非人
職業:無職
身長:150cm
人魚形態:249cm
胸囲:100cm
胴囲:60cm
腰囲:90cm
体重:56kg
血液型:A型
一人称:私
性格:食いしん坊、強欲、人懐っこい、好奇心旺盛
好物:桜餅、飴玉、餡蜜、小倉汁粉、和菓子全般、麦茶
苦手:酢物全般、酒類全般、煮物、人参、大根、冬瓜
趣味:戦闘、四六時中間食、昼寝、温泉巡り、夜遊び

【三蔵郎】
出身地:東国
誕生日:天地暦9968年8月15日
星座:獅子座
年齢:54歳
種族:人間
性別:男性
身分:僧侶
職業:住職
身長:168cm
体重:68kg
血液型:B型
一人称:私
性格:穏和、生真面目、心配性、助平
好物:鍋物、天丼、鰻丼、緑茶、薩摩芋
苦手:玉葱、生魚、生肉
趣味:山登り、料理、仏像彫刻、野宿

【雪女郎】
出身地:北国
誕生日:天地暦9994年12月25日
星座:山羊座
実年齢:28歳
人間換算:14歳
種族:妖怪
性別:女性
身分:非人
職業:無職
身長:149cm
胸囲:99cm
胴囲:59cm
腰囲:89cm
体重:55kg
血液型:O型
一人称:私
性格:心配性、几帳面
好物:氷菓子、かき氷、水餅、梅酒
苦手:鍋物、唐辛子、牡蠣、燗酒
趣味:晩酌、雪合戦、夜遊び

【月影桃子姫】
出身地:西国
誕生日:天地暦9977年4月7日
没年月日:天地暦9992年4月7日
星座:牡羊座
享年:15歳
種族:人間
性別:女性
身分:村民
職業:巫女
身長:148cm
胸囲:98cm
胴囲:58cm
腰囲:88cm
体重:54kg
血液型:A型
一人称:私
性格:鈍感、無頓着、のんびり屋、気長、無欲、頑固
好物:桜餅、牡丹餅、柏餅、三色団子、白桃、麦茶、海老天
苦手:煮物、酒類全般、寿司
趣味:温泉巡り、昼寝、森林浴

【月影鬼殺丸】
出身地:南国
誕生日:天地暦9976年7月16日
没年月日:天地暦9994年9月2日※妖怪化
星座:蟹座
享年:18歳
人間換算:18歳
種族:人間〜大妖怪※死後
性別:男性
身分:武士
職業:兵卒、殺し屋
身長:169cm
体重:69kg
血液型:B型
一人称:私、俺
性格:負けず嫌い、執念深い
好物:猪肉、鶏肉、鴨鍋
苦手:黒糖、甘酢、甘酒、毛蟹
趣味:戦闘

【夜叉王】
出身地:大陸
誕生日:不明
星座:不明
実年齢:300歳以上
人間換算:20歳
種族:大妖怪
性別:男性
身分:武士
職業:総大将
身長:170cm
体重:70kg
血液型:AB型
一人称:私、俺
性格:獰猛、冷酷、無慈悲
好物:獣肉全般
苦手:菓子類全般
趣味:殺戮、人殺し

【食人餓鬼】
種族:妖怪
身長:90cm〜120cm
体重:30kg〜40kg

【百鬼食人餓鬼】
種族:妖怪
身長:190cm〜220cm
体重:90kg〜120kg

【海難入道】
種族:妖怪
全長:180m
体重:900t

【小面蜘蛛】
種族:妖怪
体長:160cm
体重:60kg

登場国家
『太平神国』
総人口:500万人
メンテ
宇宙大動乱 ( No.87 )
日時: 2021/09/12 19:31
名前: 月影桜花姫

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく機影の正体は宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…即刻脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「本拠地の防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセウイス』だ…」
「えっ…アルセウイスって…」
ストライダーはハッとする。
「アルセウイスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アルセウイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望するのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアルセウイスと改名される。
「此奴の性能は?」
アルセウイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセウイスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。
「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アルセウイスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アルセウイスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アルセウイスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアルセウイス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアルセウイスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」
「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。メタリックアイは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…メタリックアイを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事メタリックアイを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

タイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインであるメタリックアイを無事制圧した大銀河帝国軍はメタリックアイで放置された三十四隻の大型宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。メタリックアイ制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪メタリックアイ制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
メタリックアイ制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは旗艦のアルセウイスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アルセウイスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アルセウイス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…奴等は正気ですか?」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある地上の大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河全面戦争により敗北…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。大銀河共和国軍に勝利した大銀河革命軍は大銀河帝国の常備軍…。大銀河帝国軍へと改編されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵だった…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも…貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私の心情は救済されました♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だが大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国です…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」
「困難なのは承知だ…」
メンテ
宇宙大動乱 ( No.88 )
日時: 2021/09/13 20:13
名前: 月影桜花姫

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はエネルギーエネルギーシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はエネルギーエネルギーシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。エネルギーエネルギーシールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のエネルギーエネルギーシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するエネルギーエネルギーシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはエネルギーエネルギーシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
エネルギーエネルギーシールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたエネルギーエネルギーシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく機影の正体は宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型エネルギーエネルギーシールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型エネルギーエネルギーシールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するエネルギーエネルギーシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はエネルギーエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はエネルギーエネルギーシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとエネルギーエネルギーシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。エネルギーエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のエネルギーエネルギーシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのエネルギーエネルギーシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…即刻脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「本拠地の防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『トレジャーホール』に接近中との情報です…」
小惑星トレジャーホールとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星トレジャーホールに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。トレジャーホールの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」
「えっ…アプセラスって…」
ストライダーはハッとする。
「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望するのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。
「此奴の性能は?」
アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星トレジャーホールを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星トレジャーホールを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星トレジャーホールの宙域へと到達する。
「トレジャーホールの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「トレジャーホールを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のトレジャーホールのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるトレジャーホールを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがトレジャーホールの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型エネルギーエネルギーシールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「エネルギーエネルギーシールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はエネルギーエネルギーシールドジャミング装置が搭載され…。エネルギーエネルギーシールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アプセラスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはエネルギーエネルギーシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」
「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。トレジャーホールが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
トレジャーホール防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でトレジャーホール防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。トレジャーホールは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…トレジャーホールを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事トレジャーホールを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

タイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインであるトレジャーホールを無事制圧した大銀河帝国軍はトレジャーホールで放置された三十四隻の大型宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。トレジャーホール制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪トレジャーホール制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
トレジャーホール制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは旗艦のアプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…奴等は正気ですか?」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある地上の大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河全面戦争により敗北…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。大銀河共和国軍に勝利した大銀河革命軍は大銀河帝国の常備軍…。大銀河帝国軍へと改編されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」
数秒後…。
「全軍…敵軍宇宙艦隊に砲撃せよ!」
砲撃の合図と同時に大銀河帝国軍宇宙艦隊の総攻撃が開始される。同時刻…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊は旗艦である改良型サラマンダー級宇宙戦艦には次期総帥のウィンフィールドが乗艦する。
「艦長!大銀河帝国軍が総攻撃を開始しました!」
「全軍に伝達せよ!此方も応戦する!」
ウィンフィールドは応戦を指示したのである。直後…。一光年の宙域より発射された数千万発もの高エネルギーの光弾が味方宇宙艦隊に到達したのである。各艦に多数の光弾が命中するものの…。大型艦はエネルギーエネルギーシールド装置により光弾を無力化したのである。一方小型艦艇は簡単に撃沈され…。一度の総攻撃で推計三千隻もの小型艦艇が轟沈したのである。轟沈した小型艦艇は宇宙の藻屑へと変化…。数千人もの将兵が宇宙空間に吹っ飛ばされたのである。凄惨なる光景にウィンフィールドは落涙するものの…。
「彼等の犠牲を無駄にするな…即刻反撃しろ!」
タイラントキラー宇宙艦隊も反撃を開始したのである。各艦艇による高エネルギー砲塔の艦砲射撃…。実弾兵器である光子魚雷と多目的ミサイルを発射したのである。
「ドローン兵器も発進させろ!」
各航空母艦からはスペースドローンは勿論…。スペースドローンの後継機『ホワイトピクシー』が飛来したのである。各機体はワープ機能を作動…。数秒後には二万機以上のドローン兵器が大銀河帝国軍宇宙艦隊の宙域へと到達したのである。
「ひっ!ドローン兵器です!」
突如として出現したドローン兵器に大銀河帝国軍は一時的に畏怖する。
「狼狽えるな…ドローン兵器を撃墜せよ…」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵だった…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも…貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私の心情は救済されました♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だが大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国です…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」
「困難なのは承知だ…」
メンテ
宇宙大動乱 ( No.89 )
日時: 2021/09/13 21:08
名前: 月影桜花姫

ジャンル
スペースオペラ

世界観
宇宙文明

登場人物
大銀河帝国軍
【ブラッドフォード】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦692年7月16日
星座:牡牛座
実年齢:30歳
所属:大銀河帝国軍
役職:大総統
階級:総帥
性別:男性
身長:168cm
体重:68kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:冷静沈着、合理主義、強硬
趣味:ライフル射撃

【ストライダー】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦674年3月22日
星座:牡羊座
実年齢:48歳
所属:大銀河帝国軍
役職:副総統
階級:大将
性別:男性
身長:199cm
体重:88kg
血液型:B型
一人称:私
性格:適当、面倒臭がり
趣味:プラモデル作成、設計

【ホムンクルス】
種別:クローン人間
所属:大銀河帝国軍
生産数:700万人〜7億人

タイラントキラー
【ウィグノール】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦678年9月28日
星座:天秤座
実年齢:44歳
所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー
役職:総帥
階級:中将
性別:男性
身長:200cm
体重:89kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:生真面目
趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム

【ウェンフィールド】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦700年8月17日
星座:獅子座
実年齢:22歳
所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ
役職:職業軍人
階級:大佐
性別:男性
身長:176cm
体重:76kg
血液型:O型
一人称:私
性格:誠実
趣味:ホラーゲーム

ホープセイバーズ
【ルーヴェルハルト】
出身地:大銀河帝国
誕生日:宇宙新暦668年5月7日
星座:牡牛座
実年齢:54歳
所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ
役職:総帥
階級:少将
性別:男性
身長:198cm
体重:87kg
血液型:A型
一人称:私
性格:穏和、野心的
趣味:宇宙旅行

登場国家
『大銀河帝国』
成立日:宇宙新暦376年7月4日
総人口:900億人

自治領
『ユートピアサイド』
統治勢力:大銀河帝国軍
総人口:70億人

『エデンプラネット』
統治勢力:タイラントキラー
総人口:50億人

『ホープエリア』
統治勢力:ホープセイバーズ
総人口:20億人

登場兵器
大銀河帝国軍
『アプセラス』
諸元
正式名:上級大将専用宇宙戦艦アプセラス
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:7隻
起工日:宇宙新暦722年3月27日
進宙日:宇宙新暦722年4月24日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:400m
全幅:220m
全高:80m
総重量:70万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:300人〜800人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:8基
光子魚雷発射機:2基
多目的ミサイル発射機:12基
艦載機:4機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:750mm
甲板装甲:550mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スレイプニル』
諸元
正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル
所属:大銀河帝国軍
建造所:プルトロン軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:18隻
起工日:宇宙新暦722年3月29日
進宙日:宇宙新暦722年4月26日
就役日:宇宙新暦722年4月30日
全長:990m
全幅:860m
全高:140m
総重量:950万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基
600mm高エネルギー連装砲:6基
50mm対空パルスレーザー機関砲:80基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:990mm
舷側装甲:800mm
甲板装甲:720mm
装甲材質:貴金属
動力炉:ハイパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『セイバードラゴン』
諸元
正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:2万隻〜3万隻
起工日:宇宙新暦652年4月22日
進宙日:宇宙新暦654年9月19日
就役日:宇宙新暦654年12月27日
全長:800m
全幅:600m
全高:120m
総重量:500万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:320人
輸送要員:2万人〜4万人
兵装
800mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:8基
多目的ミサイル発射機:20基
艦載機:90機
装甲
主砲装甲:750mm
舷側装甲:550mm
甲板装甲:460mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能※改良型

『バジリスク』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦バジリスク
所属:大銀河帝国軍
建造所:ユートピアサイド軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:6万隻〜8万隻
起工日:宇宙新暦722年3月26日
進宙日:宇宙新暦722年4月12日
就役日:宇宙新暦722年4月15日
全長:200m
全幅:140m
全高:40m
総重量:5万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
300mm高エネルギー連装砲:3基
50mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:1機〜2機※無人機
装甲
主砲装甲:440mm
舷側装甲:250mm
甲板装甲:130mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『アスピドケロン』
諸元
正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン
所属:大銀河帝国軍
建造所:メティス軍事工場
艦種:宇宙駆逐艦
同型艦:9万隻〜15万隻
起工日:宇宙新暦722年5月14日
進宙日:宇宙新暦722年5月22日
就役日:宇宙新暦722年6月4日
全長:180m
全幅:150m
全高:40m
総重量:4万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
250mm高エネルギー連装砲:4基
40mm対空パルスレーザー機関砲:12基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:2機※無人機
装甲
主砲装甲:370mm
舷側装甲:240mm
甲板装甲:230mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースバード』
諸元
機種:宇宙戦闘機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦699年12月24日
生産数:8万機
運用開始:宇宙新暦700年6月2日
全長:17m
全幅:16m
全高:6m
総重量:14t
全速力:マッハ15
搭乗員:1人
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置

『セイバードローン』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年4月26日
生産数:140万機
運用開始:宇宙新暦722年5月12日
全長:15m
全幅:14m
全高:4m
総重量:12t
全速力:マッハ15〜超光速
武装
30mm対空用パルスレーザー:2基
光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
エネルギーシールドジャミング装置
ステルス機能

『ケルベロス』
諸元
機種:無人機
所属:大銀河帝国軍
初飛行:宇宙新暦722年6月30日
生産数:78万機
運用開始:宇宙新暦722年7月15日
全長:16m
全幅:12m
全高:5m
総重量:20t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:4基
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
エネルギーシールドジャミング装置
ステルス機能

タイラントキラー
『サラマンダー』
諸元
正式名:宇宙戦艦サラマンダー
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:600隻〜700隻
起工日:宇宙新暦628年1月24日
進宙日:宇宙新暦630年5月25日
就役日:宇宙新暦650年7月30日
全長:780m
全幅:540m
全高:90m
総重量:300万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:280人
輸送要員:2万人〜3万人
兵装
750mm高エネルギー連装砲:8基
40mm対空パルスレーザー機関砲:38基
光子魚雷発射機:4基
多目的ミサイル発射機:16基
艦載機:150機
装甲
主砲装甲:650mm
舷側装甲:480mm
甲板装甲:240mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能※改良型

『レヴィアタン』
諸元
正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙空母
同型艦:500隻〜600隻
起工日:宇宙新暦722年1月22日
進宙日:宇宙新暦722年2月13日
就役日:宇宙新暦722年2月24日
全長:960m
全幅:530m
全高:120m
総重量:620万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:20人
輸送要員:4万人〜6万人
兵装
320mm高エネルギー連装砲:2基
50mm対空パルスレーザー機関砲:44基
艦載機:400機※無人機
装甲
主砲装甲:480mm
舷側装甲:340mm
甲板装甲:190mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『シーサーペント』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント
所属:タイラントキラー
建造所:エデンプラネット軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:3万隻〜4万隻
起工日:宇宙新暦722年2月28日
進宙日:宇宙新暦722年3月14日
就役日:宇宙新暦722年3月20日
全長:250m
全幅:180m
全高:50m
総重量:6万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
280mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:14基
光子魚雷発射機:4基
艦載機:2機〜4機※無人機
装甲
主砲装甲:470mm
舷側装甲:290mm
甲板装甲:150mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『スペースドローン』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年2月27日
生産数:50万機
運用開始:宇宙新暦722年3月12日
全長:14m
全幅:12m
全高:3m
総重量:12t
全速力:マッハ14〜超光速
武装
20mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
エネルギーシールドジャミング装置

『ホワイトピクシー』
諸元
機種:無人機
所属:タイラントキラー
初飛行:宇宙新暦722年4月28日
生産数:700機
運用開始:宇宙新暦722年5月2日
全長:18m
全幅:16m
全高:6m
総重量:15t
全速力:マッハ20〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
多目的ミサイル〜光子魚雷:6基
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
エネルギーシールドジャミング装置
ステルス機能

ホープセイバーズ
『リトルヴィーナス』
諸元
正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙戦艦
同型艦:14隻
起工日:宇宙新暦722年5月27日
進宙日:宇宙新暦722年6月4日
就役日:宇宙新暦722年6月10日
全長:850m
全幅:650m
全高:200m
総重量:600万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
輸送要員:5万人〜8万人
兵装
990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基
450mm高エネルギー連装砲:8基
50mm対空パルスレーザー機関砲:40基
光子魚雷発射機:12基
多目的ミサイル発射機:30基
艦載機:120機〜140機※無人機
装甲
主砲装甲:950mm
舷側装甲:580mm
甲板装甲:560mm
装甲材質:エターナルメタル
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『フェンリル』
諸元
正式名:宇宙巡洋艦デュラハン
所属:ホープセイバーズ
建造所:ホープエリア軍事工場
艦種:宇宙巡洋艦
同型艦:400隻〜500隻
起工日:宇宙新暦722年5月26日
進宙日:宇宙新暦722年6月3日
就役日:宇宙新暦722年6月9日
全長:350m
全幅:280m
全高:65m
総重量:7万t
全速力:超光速※ワープ機能
全出力:測定不能
航続距離:無限光年
乗組員:1人〜3人
兵装
450mm高エネルギー連装砲:4基
50mm対空パルスレーザー機関砲:16基
光子魚雷発射機:2基
艦載機:5機※無人機
装甲
主砲装甲:680mm
舷側装甲:420mm
甲板装甲:270mm
装甲材質:貴金属
動力炉:スーパーリアクター
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
ワープ機能
ステルス機能

『ハイパードローン』
諸元
機種:無人機
所属:ホープセイバーズ
初飛行:宇宙新暦722年5月30日
生産数:90万機
運用開始:宇宙新暦722年6月13日
全長:12m
全幅:8m
全高:4m
総重量:8t
全速力:マッハ22〜超光速
武装
50mm対空用パルスレーザー:2基
新型光子魚雷:2基
設備
スーパーレーダー
エネルギーシールド装置
エネルギーシールドジャミング装置
ステルス機能

作中用語
『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器
『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル
『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器
『メティス基地』小惑星
『プルトロン基地』人工惑星
『トレジャーホール』小惑星
『エターナルメタル』特殊超合金
『スーパーリアクター』無限動力炉
『ハイパーリアクター』新型無限動力炉
メンテ
宇宙大動乱 ( No.90 )
日時: 2021/09/13 21:09
名前: 月影桜花姫

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はエネルギーエネルギーシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はエネルギーエネルギーシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。エネルギーエネルギーシールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のエネルギーエネルギーシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するエネルギーエネルギーシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはエネルギーエネルギーシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
エネルギーエネルギーシールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたエネルギーエネルギーシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく機影の正体は宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型エネルギーエネルギーシールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型エネルギーエネルギーシールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するエネルギーエネルギーシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はエネルギーエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はエネルギーエネルギーシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとエネルギーエネルギーシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。エネルギーエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のエネルギーエネルギーシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのエネルギーエネルギーシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…即刻脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「本拠地の防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『トレジャーホール』に接近中との情報です…」
小惑星トレジャーホールとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星トレジャーホールに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。トレジャーホールの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ隊活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを攻略目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」
「えっ…アプセラスって…」
ストライダーはハッとする。
「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望するのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。
「此奴の性能は?」
アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星トレジャーホールを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星トレジャーホールを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星トレジャーホールの宙域へと到達する。
「トレジャーホールの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「トレジャーホールを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のトレジャーホールのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるトレジャーホールを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがトレジャーホールの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型エネルギーエネルギーシールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「エネルギーエネルギーシールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はエネルギーエネルギーシールドジャミング装置が搭載され…。エネルギーエネルギーシールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アプセラスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはエネルギーエネルギーシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」
「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。トレジャーホールが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
トレジャーホール防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でトレジャーホール防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。トレジャーホールは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…トレジャーホールを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事トレジャーホールを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

タイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインであるトレジャーホールを無事制圧した大銀河帝国軍はトレジャーホールで放置された三十四隻の大型宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。トレジャーホール制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪トレジャーホール制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
トレジャーホール制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは旗艦のアプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…奴等は正気ですか?」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある地上の大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河全面戦争により敗北…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。大銀河共和国軍に勝利した大銀河革命軍は大銀河帝国の常備軍…。大銀河帝国軍へと改編されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」
数秒後…。
「全軍…敵軍宇宙艦隊に砲撃せよ!」
砲撃の合図と同時に大銀河帝国軍宇宙艦隊の総攻撃が開始される。同時刻…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊は旗艦である改良型サラマンダー級宇宙戦艦には次期総帥のウィンフィールドが乗艦する。
「艦長!大銀河帝国軍が総攻撃を開始しました!」
「全軍に伝達せよ!此方も応戦する!」
ウィンフィールドは応戦を指示したのである。直後…。一光年の宙域より発射された数千万発もの高エネルギーの光弾が味方宇宙艦隊に到達したのである。各艦に多数の光弾が命中するものの…。大型艦はエネルギーエネルギーシールド装置により光弾を無力化したのである。一方小型艦艇は簡単に撃沈され…。一度の総攻撃で推計三千隻もの小型艦艇が轟沈したのである。轟沈した小型艦艇は宇宙の藻屑へと変化…。数千人もの将兵が宇宙空間に吹っ飛ばされたのである。凄惨なる光景にウィンフィールドは落涙するものの…。
「彼等の犠牲を無駄にするな…即刻反撃しろ!」
タイラントキラー宇宙艦隊も反撃を開始したのである。各艦艇による高エネルギー砲塔の艦砲射撃…。実弾兵器である光子魚雷と多目的ミサイルを発射したのである。
「ドローン兵器も発進させろ!」
各航空母艦からはスペースドローンは勿論…。スペースドローンの後継機『ホワイトピクシー』が飛来したのである。各機体はワープ機能を作動…。数秒後には二万機以上のドローン兵器が大銀河帝国軍宇宙艦隊の宙域へと到達したのである。
「ひっ!ドローン兵器です!」
突如として出現したドローン兵器に大銀河帝国軍は一時的に畏怖する。
「狼狽えるな…ドローン兵器を撃墜せよ…」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵だった…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも…貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私の心情は救済されました♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だがホープエリアに大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に大銀河帝国からの独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国全勢力ですよ…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」
「困難なのは承知だ…相手はブラッドフォードだからな…」
メンテ
メテオマン ( No.91 )
日時: 2021/09/13 21:37
名前: 月影桜花姫

【メテオマン】
身長:170cm〜340m
体重:70kg〜14万t
飛行速度:マッハ15以上

【ダークオクタルス】
全長:600m
体重:120万t

【サラマンダー】
身長:20m
全長:80m
体重:2万t

【アンダーサウルス】
身長:90m
全長:180m
体重:9万t

【メタルベルセルク】
全高:1.7m
重量:1.7t
飛行速度:マッハ15以上
所属:レムリア解放軍

【スコーピオン】
身長:30m
全長:150m
体重:3万t

【ケルベロス】
身長:80m
全長:240m
体重:8万t

【メタルタロース】
全高:380m
重量:38万t

【キングダークネス】
身長:4m〜400m
体重:4t〜400万t

レムリア解放軍
【シークハイル】
【ルーヴェルハルト】
『アクアベース』汎用型戦艦

民間人
【クリスティーヌ】
【ウィグノール】

第一話

宇宙害獣

銀河系の外界ではとある一人の異星人が宇宙の警察官を自称するなり…。宇宙全域に出現する宇宙害獣を討伐したのである。
「今日も多忙だな…」
彼こそは自称宇宙警察の【メテオマン】…。多種多様の超能力と絶大なるスーパーパワースーパーパワーで宇宙に蔓延する多数の宇宙害獣を撃破したのである。
「休憩が必要だな…」
長期戦の疲労により近辺の惑星で一休みする。メテオマンはあらゆる環境でも適応出来る万能体質であり宇宙空間でも生身で飛行出来る。休憩したメテオマンであるが…。高エネルギーを感知したのである。
「高エネルギーを感じるぞ…」
気になったメテオマンは再度宇宙空間へと飛行…。高エネルギーの感じる場所へと急行する。場所は二万光年に位置する宙域であり地球に酷似する海洋惑星を発見したのである。
(海洋惑星か?)
メテオマンは海洋惑星へと到達すると上空にて地上の青海原を眺望する。
「高エネルギーは…」
すると直後…。とある無人島らしき陸地にて鋼鉄の物体を発見したのである。
(一体何だろう?)
メテオマンは即座に鋼鉄の物体へと移動する。
「なっ!?宇宙船!?」
鋼鉄の物体の正体とは全長二百メートルサイズの大型宇宙船であり表面はボロボロだったのである。
「墜落したのか?」
宇宙船は墜落したのだと推測される。
「一体如何してこんな無人の惑星に有人型宇宙船が…」
(調査が必要だな…)
恐る恐る宇宙船の船内を潜入…。調査したのである。宇宙船の船内には生活必需品である家具が確認され客室にはベッドルームやらリビングルームが確認出来る。
「宇宙の豪華客船か…」
宇宙船の正体は宇宙用の豪華客船だったのである。
「乗客は…」
乗組員は勿論…。乗客は誰一人として確認出来ない。
「乗組員と乗客は無事に脱出したのか?」
すると直後である。
「なっ!」
船内がグラグラッと振動し始める。
(一体何が…)
数秒後…。真後ろの鉄扉が破壊されワーム型の巨大生命体がメテオマンに吸収したのである。
「背後か!?」
メテオマンは即座に背後を見向くと左手より蛍光色の高エネルギー光弾を射出…。ワーム型巨大生命体に直撃させたのである。メテオマンの高エネルギー光弾が口部に直撃すると口部は簡単に破壊され…。巨大生命体は撃退されたのである。
「撃退したが…先程の巨大生命体は一体?」
(此奴は宇宙害獣の一体か?)
先程のワーム型巨大生命体が宇宙害獣なのかは不明だが気になったメテオマンは即座に宇宙船から脱出する。
「巨大生命体は?」
宇宙船の甲板から周囲を警戒するのだが巨大生命体は確認出来ない。
「逃げられたか…」
落胆したメテオマンであったが…。突如として宇宙船の周囲より八体のワーム型巨大生命体が出現したのである。
「なっ!?巨大生命体が…八体も出現するなんて…」
先程出現したワーム型の巨大生命体でありメテオマンは驚愕する。
「巨大生命体が八体同時に出現するとは…」
(八体の巨大生命体を同時に相手するのは…私でも簡単には仕留められないな…)
すると巨大生命体は口先より高エネルギーの光弾を発射したのである。
「なっ!?」
(攻撃か!?)
メテオマンは飛行により即座に回避…。攻撃には回避するも巨大生命体の八体同時攻撃により宇宙船はバラバラに破壊されたのである。
「宇宙船が簡単に破壊されるとは…」
海面上には無数の金属類の破片が飛散する。
メンテ
アルセイス ( No.92 )
日時: 2021/09/15 15:26
名前: 月影桜花姫

第一話

実験室

世界暦八百七年五月十四日の出来事である。超大国『レムリア共和国』イーストサイドの無人化したスラム街にて三人組の女学生達が潜入する。彼女達は恐る恐る荒廃した商店街へと潜入するなり…。
「アンデッドとか…出現しそうだね…」
気弱の女学生がボソッと発言する。すると小柄の女学生が笑顔で返答したのである。
「勿論心霊スポットだからね♪面白そうな場所でしょう♪」
「人気が感じられないわ…」
数年前は数人の貧困者達が生活したのだが…。今現在では正真正銘ゴーストタウンであり生活者は誰一人として確認出来ない。
「噂話では住民達は自殺したとか…」
「えっ…」
彼女達は戦慄したのかゾッとする。
「自殺した貧困者のアンデッドとか出くわしちゃうかも知れないわね♪」
金髪の女学生が揶揄したのである。
「【クリスティーヌ】!」
クリスティーヌとは小柄の女学生でありスカイブルーの碧眼と金髪のツインテール…。エメラルドのピアスが特徴的である。女学園ではマドンナ的ポジションでありクラスメートのリーダー的ポジションとして暗躍する。彼女達はヘラヘラするクリスティーヌをギロッと凝視するなり…。ピリピリしたのである。
「冗談だって♪冗談♪あんた達は冗談も理解出来ないの?」
「クリスティーヌ…私達を不安がらせないでよね…」
「御免なさいね♪」
「目的地は?」
「墓場の地下壕よ♪」
「墓場の地下壕?」
「墓場の地下壕は近頃アンデッドが出現するらしいのよね♪」
「墓場の地下壕って…あんたも悪趣味ね…」
近年…。イーストサイドの墓場では無数のアンデッドが出現するとの噂話が各地で頻発したのである。クリスティーヌの発言に女学生達はビクビクする。
「ビクビクしなくても大丈夫よ♪」
「何が大丈夫なのよ?」
「目的地に到達すれば…理解出来るからね♪」
クリスティーヌは笑顔で発言したのである。彼女達は不思議がるものの…。沈黙した様子で目的地である墓場の地下壕通用口へと到達する。するとクリスティーヌはヘラヘラした様子で…。
「【アルセイス】♪到着したわよ♪」
地下壕通行口の左側に隣接する墓石の片隅より非常に小柄の女学生がソワソワした様子で彼女達に近寄る。
「誰かと思いきや…」
「アルセイスだったの?」
アルセイスとは茶髪のストレートロングが特徴的の女学生であり両目は赤色のレッドアイ…。学生服はロングスカートである。茶髪の頭髪には三日月型のヘアアクセサリーと耳朶には金剛石のイヤリングが確認出来る。体格的には小柄であるものの…。スタイルは非常に抜群であり巨乳の乳房が非常に魅力的である。
「誰かと思いきや…弱虫のアルセイスじゃない…」
「如何してアルセイスがこんなスラム街に?」
アルセイスは人一倍気弱の性格であるものの…。異質的雰囲気からか女学園のクラスメート達からは弱虫と揶揄される。こんなアルセイスをクリスティーヌは人一倍気に入らなかったのか誰よりも彼女を毛嫌いしたのである。クリスティーヌは悪友達にヒソヒソするなり…。
「墓場の地下壕にアンデッドが出現するか如何なのか…アルセイスに確認させるのよ♪」
「アルセイスに?大丈夫なの?」
「アルセイスは人一倍弱虫だから一目散に逃走しそうだけどね?」
「正直アンデッドなんて噂話でしょうし♪何よりもアルセイスの醜態を観察出来るからね♪最高でしょう♪」
「醜態って♪面白いけどクリスティーヌって本当に悪趣味ね…」
クリスティーヌがイーストサイドのスラム街に訪問した本当の目的とはアルセイスを揶揄したいからでありアンデッドが出現するか如何なのかは彼女にとっては問題外だったのである。
「私にとってアルセイスは人一倍鬱陶しくて目障りだったからね♪」
ビクビクした女学生達は内心ホッとしたのか一安心する。
「アルセイスだけが地下壕を確認するなら…一安心だね♪」
クリスティーヌはスタスタとアルセイスに近寄るなり…。
「アルセイス♪」
「えっ?」
アルセイスはソワソワした様子でクリスティーヌを直視する。
「あんたは地下壕でアンデッドが出現するか如何なのかを確認しなさい♪勿論アルセイスに拒否権は無いからね♪」
「えっ…」
アルセイスはビクビクするなり全身が膠着化したのである。
「はっ?何よ?今更反抗期かしら♪」
クリスティーヌはアルセイスの様子に苛立ったのかピリピリする。
「あんたが地下壕を確認しないなら…あんたのヌード写真を学内に♪」
アルセイスはビクッと反応するなり…。恐る恐る地下壕へと潜入したのである。
「最初から素直に服従するのね♪」
すると高身長の女学生が恐る恐るクリスティーヌに発言する。
「クリスティーヌ?本当にアルセイスだけで大丈夫なのかしら?彼女が本物のアンデッドにでも出くわしちゃったら…如何するのよ?」
クリスティーヌは即答したのである。
「あんた達は極度の心配性なのね?大丈夫だって♪アンデッドなんて所詮噂話でしょうに♪アンデッドが本当に実在したとしてもアルセイスは人一倍弱虫だから一目散に逃走するわよ♪」
「アルセイスは鬱陶しいけどさ…今回の出来事が表面化しちゃったら退学は確実よ…最悪私達は逮捕されるかも知れないし…」
「逮捕って…大袈裟ね…」
(えっ…逮捕…)
ヘラヘラするクリスティーヌであるものの…。逮捕の一言により一瞬ビクッと身震いしたのである。
「あんた達は本当に大袈裟ね!大丈夫だって…アルセイスが戻ったらちゃんと忠告するし♪彼女は人一倍弱虫だから誰にも喋れないよ♪」
クリスティーヌは苦笑いするものの…。内心では人一倍不安だったのである。数分間が経過するものの…。
「アルセイス…戻らないね…大丈夫かしら?」
「アルセイスなら大丈夫よ!大丈夫だって…」
(アルセイス…如何して戻らないのよ…戻りなさいよ!あんたが無事に戻らなかったら私達は…)
一瞬後悔したのである。すると背後から胸苦しい気配を感じる。
(えっ?胸騒ぎが…一体何かしら?)
背後を確認したいのだが…。極度の戦慄からか身動き出来ない。
「きゃっ!」
「ぐっ!」
二人の悪友達の悲鳴がクリスティーヌの耳元に響き渡る。
(背後では一体何が?)
クリスティーヌは恐る恐る背後を直視…。背後の光景に戦慄したのである。
「えっ…」
(何よ…一体…)
クリスティーヌの背後には血塗れの横たわった二人の悪友達と中心部には鉄仮面と鉄棒を装備した灰白色の迷彩服の巨漢が佇立する。
「誰よ…あんたは…」
鉄仮面の巨漢はスタスタと近寄るなり鉄棒で打撃するものの…。クリスティーヌは咄嗟に回避するなり一目散に逃走したのである。鉄仮面の巨漢は逃走するクリスティーヌを凝視するのだが…。即座に地下壕へと進入する。同時刻…。地下壕へと潜入したアルセイスは外部から彼女達の絶叫に気味悪がる。
「えっ?悲鳴だわ…」
(外部では一体何が…)
一瞬戻ろうか困惑するのだがクリスティーヌに揶揄されたくなったのか地下壕の内部を探索する。すると地下壕の奥底より鉄扉が確認出来る。
(鉄扉だわ…地下室かしら?)
恐る恐る鉄扉へと接近するなり接触する。
「地下壕にこんな代物が…」
背後よりスタスタと人気を感じる。
「誰かが…」
何者かによる跫音によりアルセイスは戦慄するなり…。右側に確認出来る岩陰にて雲隠れしたのである。すると鉄仮面を装着した軍人風の巨漢が鉄扉に近寄るなり左側のスイッチを作動させる。すると鉄扉が自動的に開放されたのである。鉄仮面の巨漢は周囲を警戒するものの…。即座に地下室へと進入したのである。
「兵隊さんかしら?」
気になったアルセイスは恐る恐る鉄扉へと近寄る。
「一体何かしら?」
即座に左側のスイッチを再作動するなり…。恐る恐る地下室へと潜入する。地下室は非常に近未来的であり室内全体が機械式だったのである。
(研究所みたいね…)
人気は感じられなかったのか彼女は一安心…。室内を探索する。すると密室へと入室したのである。密室は暗闇であったものの…。彼女が密室に入室すると室内のシーリングライトが自動的に作動したのである。密室には大量の水槽と切断された人間の手足やら生首は勿論…。摘出された無数の脳味噌やら内臓が確認出来る。
「きゃっ!」
アルセイスは人間の手足と内臓を凝視するなり驚愕したのである。
「えっ…本物なのかしら?」
(人間の…臓器だよね?)
アルセイスは極度に気味悪がるものの…。恐る恐る水槽の内臓やら切断された手足を凝視する。
(如何してこんなにも人間の手足とか内臓が…)
アルセイスは戦慄したのか自宅に戻りたくなる。
「即刻戻らないと…」
(パパもママも心配するわよね…)
墓場に戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
(誰かしら?)
背後より何者かがアルセイスの背中に鈍器で打撃する。
「ぎゃっ!」
彼女はグッタリと横たわったのである。数分後…。密室にて小柄の美青年が入室する。小柄の美青年は銀髪の頭髪とスカイブルーの碧眼が特徴的である。
「【ルーヴェルハルト】補佐官?何事ですか?」
「【ブラッドフォード】総帥…侵入者です…」
ブラッドフォードは気絶したアルセイスを凝視するなり…。
「彼女は…女学生でしょうか?」
(彼女は絶世の女神様を想念させる雰囲気ですな♪)
ブラッドフォードは彼女に見惚れる。
「彼女は部外者ですからね…私が仕留めました…」
「こんな女学生を相手に随分乱暴ですね…ルーヴェルハルト補佐官は…」
「私達のシークレットベースが世間で露呈されると非常に不都合でしたからね…相手が女学生でも仕留めなければ厄介でしょう…」
「彼女は殺害したのですか?」
ブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。
「気絶させました…彼女を殺害しましょうか?」
「彼女を殺害するのは非常に勿体無いですよ…」
「勿体無いと?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「彼女を実験体に適用するのが好都合かと♪」
「彼女を実験体に利用するのですか?」
「彼女は絶世の美少女ですからね♪是非とも彼女を実験体として役立てるのが適切でしょう♪」
ブラッドフォードとルーヴェルハルトは即刻気絶したアルセイスを恐る恐る実験室へと連行したのである。するとブラッドフォードは恐る恐ルーヴェルハルトに問い掛ける。
「外部の薄汚い女学生達は如何されましたか?」
「二人の女学生は撲殺しましたが…金髪の女学生は見逃しました…」
「見逃したって?非常に不都合ですね…」
ブラッドフォードは困惑したのである。
「生憎ですが…金髪の女学生は非常に機敏でしたからね…」
「機敏でしたか…」
ルーヴェルハルトの屁理屈に内心苛立ったものの…。ブラッドフォードは無表情で反応したのである。
「ですが一人の不良少女がシークレットベースの居場所を告発したとしても武装警察隊は出動しないでしょうからね♪」
武装警察隊とはレムリア共和国の防衛組織であり屈強の警察力と国防力の両方を保有化する。正式名はレムリア共和国武装警察隊である。楽観視すルーヴェルハルトであるものの…。ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。
「承知しました…」
(ブラッドフォード総帥…)
無表情のブラッドフォードにルーヴェルハルトは一瞬ビクッと身震いする。ブラッドフォードは実験用の注射器を所持したのである。
「彼女に純血の魔女の血液を注入させますね…」
恐る恐るアルセイスの左手の手首に魔女の血液を注入させる。
「ブラッドフォード総帥…今回は大丈夫でしょうか…」
ブラッドフォードとルーヴェルハルトはビクビクしたのである。数秒後…。
「彼女は…破裂しませんね…」
ブラッドフォードは一安心したのか深呼吸したのである。
「如何やら彼女の肉体は魔女の血液と適合したみたいですね…」
ルーヴェルハルトも一安心したのかホッとする。
「肉体が破裂しなかったですからね…」
魔女の血液を注入された人間は数秒後全身の肉体が肥大化した状態で破裂…。実験台に利用された人間は誰しもが変死したのである。今回はアルセイスに魔女の血液を注入するが…。アルセイスの肉体は破裂しなかったのであルーヴェルハルトは即座にアルセイスの心拍数を測定する。
「彼女の心拍数は正常値です!」
「如何やら彼女は唯一の成功例ですね!」
ブラッドフォードとルーヴェルハルトは大喜びしたのである。
「不老長寿も現実化しますな♪」
ブラッドフォードは再度注射器を所持すると恐る恐るアルセイスの血液を採血する。
「不老長寿の実現は勿論ですが…何よりも屈強なる戦闘員達の育成化にも役立てるでしょうね♪」
「ルーヴェルハルト補佐官…私達は即刻総本部に戻りましょう…」
「えっ?総本部ですと?」
「シークレットベースが部外者に熟知されましたからね…本日よりシークレットベースは閉鎖させましょう…」
「えっ!?閉鎖ですと!?」
ルーヴェルハルトは驚愕したのである。
「魔女の実験体から血液を入手出来ましたし…何よりも部外者に私達の居場所を熟知されたのでは非常に厄介ですからね…」
ルーヴェルハルトは謝罪する。
「私が部外者を見逃さなければ…」
ブラッドフォードは笑顔で発言したのである。
「ルーヴェルハルト補佐官♪気にしなくても大丈夫ですよ♪」
「ブラッドフォード総帥…」
ルーヴェルハルトはホッとしたのか一安心する。
「魔女の実験体は如何されますか?」
「彼女は外部の墓場にでも熟眠させましょう…」
ブラッドフォードとルーヴェルハルトは気絶したアルセイスを墓場にて処分するなり即刻シークレットベースから脱出したのであルーヴェルハルトは撲殺した二人の女学生達を凝視するなり…。
「ブラッドフォード総帥?二人組の女学生は如何しましょうか?」
「武装警察隊に察知されては傍迷惑ですからね…彼女達は総本部の焼却炉で焼却処分しましょう…」
「隠蔽ですね…」
彼等はシークレットベースに配備されたスカイカーのトランクに撲殺した女学生達を留置させる。
「脱出しましょうか…ルーヴェルハルト補佐官…」
「勿論ですとも…」
ブラッドフォードとルーヴェルハルトが地下壕のシークレットベースから脱出してより数分後…。アルセイスは恐る恐る目覚める。
「えっ?私は一体?」
アルセイスはハッとしたのか周辺を警戒する。地下壕の通行口には血痕が確認出来る。
「きゃっ!」
血痕を凝視するなりアルセイスは戦慄したのである。
(如何してこんなにも血痕が…一体何が?)
「誰か出血したのかしら?」
アルセイスは戦慄するものの…。
「戻らないとパパとママが心配するし…」
地下壕の通行口の血痕が非常に気になるものの時間帯は夕方でありアルセイスは一目散に自宅へと戻ったのである。
「お帰りなさい♪アルセイス♪」
母親の【ソフィリア】が笑顔で彼女を出迎える。
「ママ…」
アルセイスは無表情でソフィリアを凝視する。
「如何しちゃったのよ?アルセイス?大丈夫かしら?」
ソフィリアの質問にアルセイスは無表情で即答したのである。
「別に…何も…」
ソフィリアは恐る恐る問い掛ける。
「最近女学園は如何なのよ?」
アルセイスは数秒後…。ボソッと返答する。
「別に…何も無いけど…」
アルセイスは即座に自室へと戻ったのである。翌朝…。アルセイスはリビングルームへと入室するなり母親のソフィリアと父親の【ウィグノール】に挨拶する。
「パパ…ママ…お早う…」
「アルセイスか…お早う♪」
「お早う♪アルセイス♪」
ソフィリアとウィグノールは笑顔でアルセイスに挨拶したのである。ソフィリアは彼女に朝食を用意する。モーニングメニューはハムエッグとアルセイスの大好きなメロンパンである。
「私の大好きなメロンパンだね♪」
アルセイスは笑顔でメロンパンをペロリと平らげる。
「メロンパンを一瞬で平らげるなんてね…」
ソフィリアは苦笑いする。するとウィグノールは新聞紙を黙読するなり…。
「近頃は物騒だな…」
「物騒って何が物騒なの?」
問い掛けるアルセイスにウィグノールは即答する。
「レムリア解放軍って名乗るテログループだよ…」
「レムリア解放軍ですって?」
「レムリア解放軍って…世界一の大富豪って噂話のブラッドフォードの私兵集団だったわよね…」
「ブラッドフォード?大富豪?」
レムリア解放軍とは世界一の資産家である大富豪ブラッドフォードが独自の財力によって武装化した過激派のテログループである。長期化した不景気の悪影響からか総人員は日に日に拡大化…。国全体を牛耳るレムリア共和国武装警察隊総本部もブラッドフォードのレムリア解放軍には警戒中である。
「最近武装警察隊の兵隊さんが田舎町もパトロールするのはテログループの活動が頻発したからなのね…」
「武装警察隊も大変だよな…」
するとアルセイスは新聞紙に注目する。新聞紙には昨晩レムリア解放軍所属の工作員によるウエストサイド武装警察隊総司令部銃撃戦が記載されたのである。
「昨晩もね…」
「ウエストサイドの武装警察隊総司令部もレムリア解放軍の工作員に襲撃されたらしいからな…」
近頃はブラッドフォードのレムリア解放軍によるテロリズムが各区域内で頻発…。レムリア共和国全域を震撼させたのである。
「武装警察隊の総司令部が?」
「総司令部は無事だったらしいが…テログループの襲撃で数人の警備兵が殉職しちまったらしい…」
「武装警察隊の兵隊さんも人間だからね…兵隊さんの家族は悲痛よね…」
ソフィリアはアルセイスを凝視するなり…。
「アルセイスはテログループなんかに殺されないでよ…アルセイスが殺されちゃったら私達は…」
「俺達にとってアルセイスは唯一の愛娘…宝物だからな♪」
「パパ…ママ…」
アルセイスは赤面する。
「私なら大丈夫だよ♪」
ハムエッグをペロリと平らげるなり一目散に女学園へと通学する。
「クリスティーヌちゃんは?」
無事女学園へと通学するものの教室にはクリスティーヌは勿論…。悪友の二人組は欠席したのである。クリスティーヌは極度の精神病により長期間の入院…。悪友の二人組は武装警察隊が居場所を捜索するのだが結局今現在も彼女達の居場所は不明である。こんなにも物騒であったものの…。アルセイスは内心ホッとしたのである。

第二話

閃光

問題児のクリスティーヌが入院してより三日後の五月十七日の早朝…。
「はぁ…ズキズキするわ…」
(頭痛かしら…)
アルセイスは早朝から頭痛が頻発したのである。アルセイスはリビングルームのソファーベッドにて極度の頭痛によりグッタリと横たわる。すると早朝からグッタリするアルセイスを心配したのか母親のソフィリアが恐る恐る彼女に近寄る。
「アルセイス?大丈夫?」
「頭痛かしら…早朝からズキズキするの…」
ソフィリアは体温計で恐る恐るアルセイスの体温を測定する。数秒後…。体温計がピピッと電子音が反応したのである。
「微熱みたいね…」
「えっ…微熱?」
「今日は欠席しなさい…女学園には私が連絡するから…」
「ベッドで睡眠するよ…」
アルセイスはフラフラした状態で自室のベッドにてグッタリと横たわる。父親のウィグノールが起床するなり…。リビングルームに入室する。
「お早う♪ソフィリア♪」
ウィグノールは笑顔で挨拶したのである。
「お早う…ウィグノール…アルセイスが微熱みたいなの…」
「えっ?アルセイスが微熱なのか…心配だな…」
「一日だけど欠席させるわね…」
「微熱でも悪化すると大変だからな…今日は仕方ないな…」
ソフィリアもウィグノールも微熱のアルセイスを心配する。朝食後…。ウィグノールはアルセイスの自室のドアをノックするなり恐る恐る入室したのである。
「お早う…アルセイス…」
「パパ…お早う…」
「微熱みたいだな…大丈夫なのか?」
アルセイスは苦笑いするなり返答する。
「大丈夫よ…頭痛だけだからね…心配させちゃって御免なさいね…パパ…」
「気にするな♪」
するとウィグノールは笑顔で…。
「本日はアルセイスの誕生日だったな♪アルセイスも十五歳とは…アルセイスの大好きなショートケーキとプレゼントを用意しないと♪」
「パパ♪」
「俺は出勤するが…アルセイスは睡眠しろよ♪微熱でも油断大敵だからな…」
「勿論よ♪」
ウィグノールは職場へと出勤したのである。すると母親のソフィリアがドアをノックするなり入室する。
「アルセイス♪」
「何よ…ママ?」
数秒後…。
「ハッピーバースデー♪アルセイス♪」
「ママ♪」
「誕生日だったわね♪アルセイス♪」
「御免なさいねママ…今日は私の誕生日なのに微熱なんてね…正直災難よ…」
アルセイスは苦笑いしたのである。
「誕生日パーティーは後日にでも♪」
「微熱だしね…」
「フルーツポンチでも如何かしら?」
「用意して…」
ソフィリアはキッチンルームにてフルーツポンチを用意する。同時刻…。ウエストサイドのレムリア解放軍総本部ではとある新型巨大兵器の秘密実験が発動されたのである。とある新型巨大兵器とはレムリア解放軍が異国の民間型軍事会社との協力により開発された通称『ケラウノス』…。正式名は超弩級サテライトキャノンである。人工衛星型のデザインであり成層圏で使用される。高エネルギーの閃光を射出させる高エネルギー巨大衛星兵器であり殺傷力のみなら特殊弾道をも上回ると推測されたのである。通常は光学迷彩装置によって武装警察隊のスペースレーダーでは察知出来ない。補佐官のルーヴェルハルトが総司令部専用室へと入室する。
「ブラッドフォード総帥!ケラウノスの発射準備が完了しました!」
「完了したのですね…」
ブラッドフォードは室内に設置されたホログラムで成層圏のケラウノスを確認したのである。
「イーストサイドの成層圏には障害物は無さそうですね…」
するとルーヴェルハルトが恐る恐るボソッと発言する。
「ですがブラッドフォード総帥…無関係の非戦闘員を標的に…こんな代物を使用されるのですか?非人道的かと…」
ルーヴェルハルトは非常に不安がる。
「ルーヴェルハルト補佐官…今更如何されたのですか?」
「私達がレムリア共和国全土を牛耳るにはケラウノスが必要不可欠なのです…イーストサイドの住民達にはモルモットとして活用しなくては…」
ブラッドフォードの目力によりルーヴェルハルトは圧倒される。
「私がシグナルを発動します…私がシグナルを発動させたら即刻ケラウノスを射出するのです…」
「承知しました…ブラッドフォード総帥…」
数秒後…。ブラッドフォードがシグナルを発動する。
「ケラウノスを射出せよ…標的はイーストサイド…」
ルーヴェルハルトは恐る恐る成層圏のケラウノスを発射させる。するとケラウノスの砲口に粒子状の高エネルギーが収縮されたのである。直後…。高出力の高エネルギーがイーストサイドに射出されたのである。成層圏から射出された高エネルギーはイーストサイド全域にてピカッと蛍光色の蛍光体を炸裂させる。
「えっ?一体何かしら…」
自宅にて熟睡中であったアルセイスは蛍光色の蛍光体に接触…。
「きゃっ!」
全身の皮膚から出血するなり全身がブクブクッと肥大化したのである。数秒後…。
「ぎゃっ!」
肥大化したアルセイスの全身がパンッと破裂したのである。室内全域に無数の肉片浄血が散乱する。イーストサイドの居住民達は全身が破裂…。イーストサイドの各地域にて粉砕された人間達の無数の血肉が散乱したのである。レムリア解放軍総本部から偵察用のドローンが出動するなりゴーストタウンへと変化したイーストサイド上空を確認する。ブラッドフォードとルーヴェルハルトはドローンの監視用カメラでイーストサイドの様子を観察したのである。
「ブラッドフォード総帥…イーストサイド全域はゴーストタウンですね…」
ルーヴェルハルトは極度の恐怖心によって全身がプルプルするなりイーストサイドの惨劇に戦慄する。イーストサイドの惨劇を凝視してもブラッドフォードは失笑したのである。
「ケラウノスは人体のみを死滅させる…非常に合理的でしょう!レムリア解放軍は容易にイーストサイドを占拠出来るのですから…」
建造物は勿論…。動植物にはケラウノスの悪影響は皆無であり事実上人間のみを死滅させたのである。
「ケラウノスから炸裂した素粒子はナノレベルで透過します…密閉された地下豪でも絶体絶命でしょう…」
地下室は勿論…。地下鉄の人間達もケラウノスから炸裂したナノレベルの素粒子により死滅させる。レムリア解放軍のデモンストレーションによってイーストサイドは事実上全滅…。推計四百万人の住民が死滅したのである。偵察用ドローンがイーストサイド全域を偵察するものの…。生存者は誰一人として確認されなかったのである。偵察用ドローンが退却してより数分後…。アルセイスの自室にて破裂した無数の肉片が融合化するなり女性の肉体を形作る。融合化した無数の肉片が女性の肉体へと変化したのである。
(私は一体…)
アルセイスは恐る恐る目覚める。全裸状態でありベッドには血塗れのネグリジェが確認出来る。
「如何して私のベッドが血塗れなのよ…」
恐る恐る血塗れの室内全域を凝視したのである。
「えっ…」
(如何してこんな…)
アルセイスは非常に気味悪がる。アルセイスは自室の窓側から恐る恐る外部の様子を見据えるなり…。
「きゃっ!」
外部の道路上には無数の肉片やら血肉が散乱する。
「一体何が…」
アルセイスはハッとしたのである。
「ママは!?」
アルセイスは恐る恐るリビングルームへと移動する。リビングルームには血塗れのソフィリアの洋服は勿論…。無数の肉片やら血肉が室内全体に散乱したのである。
「ママ…ママなの…」
肉片を凝視するとピカリと純金のイヤリングが確認出来る。
「ママのイヤリングだわ…」
アルセイスは極度のショッキングにより脳内が可笑しくなる。
「如何してこんな…ママは!?私のママは!?」
アルセイスは全裸の状態であったものの…。自宅から全力疾走する。リビングルームに散乱した血肉がソフィリアであると認識した彼女は極度の戦慄と悲痛さにより涙腺から涙が零れ落ちる。精神的にも肉体的にも疲弊したのか大都市部の道路上にてグッタリと横たわる。
「私は如何すれば…」
すると父親のウィグノールが気になったのかハッとする。
「パパは!?」
周辺は血塗れの洋服やら肉片ばかりで列記とした生存者は誰一人として確認出来ない。
「如何して人間が私だけ…」
(パパは一体…)
アルセイスはウィグノールの勤務先へと疾走する。ウィグノールの職場は自宅から比較的近距離であり数分間で到達する近距離である。数分後…。ウィグノールの勤務先へと到達したのである。
「パパの勤務先だわ…」
ウィグノールの勤務先は超高層型のタワービルであるものの…。誰一人として人気が感じられない。
(アンデッドが出現しそうだわ…)
彼女は恐る恐るタワービルへと潜入したのである。室内には無数の肉片が散乱した状態であり誰一人として生存者は確認出来ない。するとピカリと発光した物体と血塗れのスーツを気になったのかアルセイスは恐る恐る確認するなり…。
「誰のかしら?」
物体を凝視したのである。
「結婚指輪!?」
物体は結婚指輪でありアルセイスは婚約指輪を認識した直後…。
「ひょっとしてパパの婚約指輪かしら…」
彼女はドキドキするなり血塗れのスーツに接触するなりネームプレートを確認する。
「ウィグノール…パパのネームプレートだわ…」
ネームプレートの名称は父親のウィグノールでありアルセイスは絶望したのである。
「パパもママも…如何して私ばかり…」
涙腺から涙が零れ落ちる。アルセイスは無意識的に出歩くなり…。イーストサイドの海岸へと到達する。
「海岸だわ…」
防波堤を注目したのである。
「防波堤…」
(防波堤は幼児期にパパとママと一緒に海面上を眺望したのよね…)
ソフィリアとウィグノールの笑顔を想念するなり極度の悲痛を感じる。
「パパ…ママ…」
無意識的に防波堤へと移動したのである。
「如何して私は防波堤なんかに…」
数分後…。防波堤へと到達する。海面上を直視するなり…。
「私も…パパとママと一緒に…」
彼女はフワッと海面上へと落下したのである。同時刻…。武装警察隊所属の警備艇がイーストサイド近海をパトロールする。警備艇はケラウノスの射程圏外であり影響は皆無だったのである。警備艇の乗組員達はイーストサイド上空の光柱を気味悪がる。四人の乗組員達がヒソヒソと対談するものの一人の乗組員はイーストサイド近海をパトロールする。
(鬱陶しい奴等だな…パトロール中なのに…)
武装警察員の【ストライダー】であり武装警察隊では一匹狼と揶揄される。非常に生真面目であり任務は確実に遂行させるのが彼にとってのモットーである。ヒソヒソと対談し続ける乗組員達に苛立ったのかピリピリする。すると直後である。遠方の海面上より女性らしき物体を直視する。
「なっ!?」
(女性なのか?)
ストライダーは即座に警備艇を急停止させる。
「ん?ストライダー…何事かな?」
「如何して警備艇を急停止させた?」
乗組員達はストライダーの目線を直視するなり…。
「うわっ!」
「彼奴は水死体なのか!?」
彼等は驚愕したのである。
「貴様達…談笑しないで女性を救出しろ…」
ストライダーの目力に圧倒されたのか彼等は女性を救出する。
「女の子みたいだな…」
女性は小柄の美少女であり全裸だったのである。彼女の両目は瞑目した状態であるものの…。突発的に深呼吸したのである。
「生存者だったのか…」
彼等は少女の様子に一安心する。すると少女は両目が開眼するなり恐る恐る周囲を警戒した様子で警備艇の乗組員達を凝視したのである。ストライダーは恐る恐る少女に名前を問い掛ける。
「貴様の…名前は?」
「私は…アルセイス…レムリア女学園の…女学生です…」
「あんたは女学生だったのか…」
アルセイスは無事に救出されたものの…。彼女は精神的に可笑しくなりサウスサイドの精神科にて入院したのである。翌日…。ウエストサイドのレムリア解放軍総本部からイーストサイド突撃隊が出動するなり電撃的にゴーストタウンのイーストサイドへと進軍したのである。イーストサイドは武装警察隊の駐留地であり今回のケラウノス発射によって武装警察隊駐留軍は全滅…。レムリア解放軍はノーダメージでイーストサイド全域を攻略出来たのである。イーストサイドが占拠されてよりレムリア解放軍の快進撃が本格化する。今回の大事件は五月十七日事件と呼称されたのである。五月十七日事件の後日…。ウエストサイドのレムリア解放軍総本部にてローブの人物が訪問したのである。ローブの人物がコンッとブラッドフォードの専用室の鉄扉をノックする。
「失礼する…」
「誰かと思いきや…ハイドマンでしたか…」
「如何やら俺の提供したケラウノスでイーストサイドは死滅したみたいだな…」
「ケラウノスの殺傷力は予想外でしたよ…是非ともハイドマンには感謝しなければ♪」
ハイドマンとは極悪非道の武器商人であり彼自身の詳細を熟知するのは契約者のブラッドフォードと補佐官のルーヴェルハルトのみである。もちろんハイドマンは偽名でありブラッドフォードとルーヴェルハルトのみがハイドマンの本名と正体を熟知する。
「武装警察隊もパニック状態だからな♪ブラッドフォードにとっても好都合だろ…」
今回の五月十七日事件により武装警察隊は混乱の状態である。自国内の経済的ダメージも莫大であり物流も一時的にストップ…。国全体が混乱したのである。
「所詮武装警察隊の首脳陣も無能で無責任だからな…」
「ですがハイドマンからこんなにも無尽蔵の新型兵器を提供されましたが…私は負担金を提供しなくても大丈夫なのでしょうか?」
ハイドマンは即答する。
「安心しろ…負担金は不要だ…俺は腐敗した武装警察隊総本部を徹底的に破滅させたかったからな…」
「私達は是非とも武装警察隊総本部を失脚させますよ♪」
「俺はあんたを見届けるよ♪レムリア共和国の主導権を掌握しろよ♪」
「勿論ですとも♪」
ブラッドフォードは笑顔で返答したのである。
「本来私の血族は王族ですからね…」
「あんたは王族の末裔だったのか?」
「勿論ですとも♪私は王政復古によって君主制のレムリア王国を復活させたいのですから…」
三百年前のレムリア共和国は君主制のレムリア王国であったが…。大勢の民衆達と逆賊の軍人達によって組織された義勇軍によりレムリア王国は事実上滅亡する。民衆達を圧制した王族達は過半数が自国民により処刑され…。ブラッドフォードは唯一国外へと亡命した王族の末裔だったのである。
「今現在のレムリア共和国の国民性なら…あんたみたいな独裁者が必要不可欠なのかも知れないな…誰一人として歴史学と政治学には無関心だからな…」
「所詮は愚民ですからね…レムリア共和国をリニューアルしなくては…」
ブラッドフォードは内心ワクワクする。ハイドマンは恐る恐る発言したのである。
「心配なのは…実験体の小娘だな…」
「実験体の小娘ですと?」
「不老長寿の戦闘員育成化プランで実際体に利用した小娘だよ…」
「彼女ですか…彼女が如何されたのですか?」
「事件当日だが…あんたが実際体に利用した小娘がイーストサイド近海で武装警察隊に救出されたぞ…」
「なっ!?救出ですと!?」
ハイドマンの発言にブラッドフォードは驚愕する。
「彼女はイーストサイドの居住者ですよね?ケラウノスを照射されても生還したのでしょうか…」
純血の魔女の血液に適合した人間はケラウノスでも殺せなかったのである。今回の事例で判明する。
「魔女の生命力は予想外だな…」
「ですが本当に彼女だったのですか?偵察用のドローンでは誰一人として生存者は確認出来ませんでしたが…」
ブラッドフォードは疑問視したのである。
「近海では全裸の状態だったらしいからな…ケラウノスに直撃したのは確実だな…」
ハイドマンは恐る恐る…。
「ひょっとするとケラウノスに照射された直後だが…」
「直後に?」
「バラバラの肉体が元通りに戻ったのかも知れない…」
「純血の魔女の血液ですからね…肉体がバラバラに粉砕されても元通りに戻りそうですね…」
(如何やら彼女は無事みたいですね♪)
不思議がるブラッドフォードであるが内心ホッとしたのである。
「ん?」
(ブラッドフォードの様子が可笑しいな…)
ハイドマンはブラッドフォードの様子に一瞬不思議がるものの…。ソッとしたのである。するとハイドマンは恐る恐るブラッドフォードに警告する。
「警告するぞ…ブラッドフォード…」
「警告ですか?」
ハイドマンは一息するなり…。
「実験体の小娘は要注意だからな…」
「要注意って…如何してハイドマンは彼女を警戒するのですか?」
問い掛けられたハイドマンは恐る恐る返答する。
「復讐されるかも知れないからな…今回のケラウノスの攻撃によって四百万人以上の人間達を虐殺した…彼女の家族だって同条件だろう…」
「ですが彼女は女学生ですし…魔女の実験体だったとしても私に復讐するなんて出来るのでしょうか?」
「レムリア解放軍のノータリンが情報を漏洩しなければ大丈夫だろうが…」
ブラッドフォードはピクッと反応したのである。事実…。彼にとって信頼出来る人間は唯一補佐官のルーヴェルハルトのみでありレムリア解放軍の志願兵には誰一人として信用出来なかったのである。
「今現在彼女の所在は?」
「彼女ならサウスサイドの精神科で入院中らしいが…」
「サウスサイドでしたか…」
今現在サウスサイドにはレムリア解放軍の工作員は皆無でありブラッドフォードは一安心する。
「サウスサイドには武装警察隊の革命派が配備中だからな…彼等が小娘に接触したら非常に厄介ですね…」
革命派とはレムリア共和国武装警察隊所属であるものの…。武装警察隊総本部を陥落させたい過激派勢力である。ブラッドフォードのレムリア解放軍とは利害が一致…。彼等とは事実上協力関係である。
「正直彼等も信用出来ませんね…」
「奴等も信用出来ないなら…実験体の小娘を暗殺するか?」
ハイドマンは恐る恐るボソッと発言したのである。
「暗殺って…」
暗殺の一言によりブラッドフォードはビクッと反応する。
「ん?彼女を暗殺したら…ブラッドフォードにとって不都合でも?」
「失礼…ですが今現在国全体が混乱中ですし…サウスサイドで暗殺事件を頻発させれば私達にとっても不都合でしょう…」
現段階でも戦力的には武装警察隊が数倍上回る。こんな状態からサウスサイドでテロ事件を頻発させれば敗走するのは確実である。
「現段階では軍備を増強化させましょう…」
「軍備を増強化させたいなら自国内だけではなく…他国の軍需産業にも協力させなければ…」
レムリア共和国は歴史的に他国でも不信感が根強い。レムリア共和国の武装警察隊総本部を陥落させるなら他国の軍需産業も大喜びで協力するのではと想定する。
「海外の軍需産業には俺が説得する…あんたは自身の財力でレムリア解放軍の軍備を増強化しろ…」
「承知しました…」
レムリア解放軍の軍備の増強化が推進される。

第三話

夜襲

五月十七日事件から一年後の出来事である。勢力を拡大化させたブラッドフォードのレムリア解放軍は世界各国に宣戦布告…。第二次世界戦争が勃発したのである。レムリア解放軍は大量生産したケラウノスにより世界各地の大都市部を総攻撃…。推計五十億人以上の人間達が死滅したのである。世界各地の大都市部は荒廃…。ゴーストタウンへと変化する。第二次世界戦争はケラウノスの大量投入によるレムリア解放軍の圧倒的勝利に終結…。レムリア共和国を除外する各国は弱体化したのである。事実上全世界の覇権を牛耳った大富豪のブラッドフォードであるが…。レムリア共和国国内にはブラッドフォードに抵抗する勢力が各地で活動したのである。第二次世界戦争が終結してからもレムリア共和国国内ではレムリア解放軍とレムリア共和国武装警察隊の内戦が頻発する。大量破壊兵器ケラウノスによる五月十七日事件から十五年後…。国全体が内戦状態であり大勢の国民達がレムリア解放軍の襲撃に戦慄したのである。サウスサイドのとある教会堂にて一人の修道女が教会堂を清掃する。
「着実に清掃しないと神父様に怒号されるからね♪」
修道女はルンルンした気分で教会堂を清掃したのである。一時間後…。
「終了♪終了♪」
清掃が終了する。時間帯は真夜中であり教会堂は彼女のみである。
「真夜中かしら…」
彼女は事務室へと移動するなり日程表を確認する。
「明後日は定休日だけれども…」
(近頃はテロ事件で物騒だからね…旅行も出来ないわよね…)
不機嫌であるものの…。修道女は自宅へと戻ったのである。彼女は両親との家族写真を凝視するなり涙腺から涙が零れ落ちる。
「パパ…ママ…」
(私のパパとママは…)
彼女の両親は十五年前の五月十七日事件にて死去したのである。結局両親の遺体は区別出来なかったものの…。イーストサイドでは生存者は皆無であり彼女の両親は即死と断定される。彼女にとって五月十七日事件は修道女として活動する人生最大の契機だったのである。
「今現在私に出来るのは…」
(十五年前の五月十七日事件で死去された犠牲者達のレクイエムよね…)
すると腹部がググっと響き渡る。
「空腹かしら…」
(出勤中は何も食事しなかったからね…)
彼女は冷蔵庫からハンバーグステーキとロゼワインを用意する。数分間で平らげる。
(食事したし…入浴しないとね…)
即座に入浴したのである。入浴してから彼女は即座に睡眠する。翌朝の早朝…。彼女は出勤したのである。すると教会堂にて神父と対面するなり挨拶する。
「お早う御座います…神父様…」
「お早う御座います…クリスティーヌさん…」
修道女とはアルセイスと同級生であったクリスティーヌであり精神科に退院後…。今迄のアルセイスに対する悪行と両親の死別によって修道女の勉学をスタートしたのである。
「如何されたのですか?神父様?」
神父は戦慄した表情で…。
「今現在は各地で内戦が継続中ですが…近頃は何者かによって資産家達が暗殺される連続殺人事件が頻発しましたからね…」
各地でレムリア解放軍と武装警察隊との内戦は継続中であるものの…。レムリア解放軍に関係する資産家達が何者かによって暗殺される連続殺人事件も頻発したのである。
「暗殺ですって?誰が彼等を…」
「武装警察隊も調査中ですが…殺人犯が誰なのかは不明みたいです…」
(一体誰かしら?)
クリスティーヌは気になる。
「正直私は心苦しいのです…如何して人間達は殺し合うのでしょうか?」
神父がクリスティーヌに問い掛ける。問い掛けられたクリスティーヌは一瞬ビクッと反応するものの…。恐る恐る返答したのである。
「所詮人間は強欲だからでは?今迄の歴史学でも人類史は戦乱の時代ばかり…欲深い人間が指導者だったから殺し合うのでしょうかね?貧困とかも戦乱の原因かしら…正直私には何が何やらサッパリですが…」
クリスティーヌは非常にビクビクするものの…。神父は微笑む。
「クリスティーヌさん…感謝しますよ♪クリスティーヌさんは誰よりも人格者ですからね!是非とも荒廃した世界にピースワールドを実現させましょう♪」
(私みたいな陰湿人間が人格者って…神父様は大袈裟ね…)
クリスティーヌは苦笑いする。真夜中…。クリスティーヌは着実に教会堂を清掃したのである。
「清掃したら…即刻戻りましょう…」
ルンルンした気分で清掃するものの…。直後である。
「きゃっ!」
近辺から爆発音が響き渡る。
「爆発音かしら!?」
(ひょっとして内戦かしら!?)
クリスティーヌは戦慄したのか全身がガクガクして身動き出来なくなる。すると外部から大勢の住民達の悲鳴が響き渡ったのである。
(外部では一体何が…)
クリスティーヌは一歩ずつドアに近寄るなり…。恐る恐る外部を直視する。直後…。彼女は戦慄したのである。
「如何してこんな…」
近辺の建造物が火災により燃焼する。
(私も…)
すると燃焼する建造物のドアより火達磨の人間が出現したのである。
「何よ…」
(ゴースト!?)
最早老若男女の区別は不可能でありズルズルと教会堂のドアへと近寄る。戦慄したクリスティーヌは即座にドアをロックするなり教会堂の隅っこへと移動したのである。
「私は如何すれば…」
突然…。何者かによって左側のステンドグラスが粉砕される。
「きゃっ!誰よ!?」
ステンドグラスを粉砕したのはバズーカ砲らしき装備品を武装した大柄の兵隊であり灰白色の迷彩服…。ヘルメットは非常に近未来的である。
「武装警察隊かしら?」
「武装警察隊だと?人違いだな…俺はレムリア解放軍のレジスタンスだよ♪」
「レムリア解放軍ですって!?」
彼女はレムリア解放軍に反応する。
(レムリア解放軍って…第二次世界戦争を勃発させた奴等ね…)
「あんたはテロリストね!?」
「なっ!?テロリストだと!?貴様…」
敵兵はカチンとしたのかクリスティーヌに近寄るなり…。
「薄汚い修道女が…死滅しやがれ!」
バズーカ砲をクリスティーヌの顔面に密着させる。
(私…殺されちゃうのね…)
クリスティーヌは覚悟する。すると突然…。右側のステンドグラスが何者かによって粉砕されたのである。
「なっ!?」
「今度は誰かしら!?」
背後の人物に敵兵は勿論…。クリスティーヌも反応する。
(ひょっとして女性かしら?)
周囲は真夜中であり人物が何者なのかは不明であったものの…。シルエットから小柄の女性であると認識したのである。彼女の左手には銀色の刀剣が確認出来る。
「貴様は一体何者だ?」
すると小柄の女性が発言する。
「レジスタンスの兵隊さんが…修道女の女性を相手に手出しするなんてね…本当に外道だわ…」
彼女の発言に敵兵はピリピリしたのである。
「誰かと思いきや小娘か…如何やら貴様も打っ殺されたいらしいな…」
「出来るかしら?テロリストの分際で…」
「テロリストだと?」
小柄の女性は超音速のハイスピードで敵兵の背後に急接近するなり…。敵兵の背中にポンッと接触したのである。
「なっ!?貴様一瞬で!?」
「えっ!?一体何が!?」
敵兵とクリスティーヌは彼女のハイスピードを直視…。驚愕したのである。
「貴様…怪物なのか!?」
「私を怪物なんて…失礼しちゃうわね…私は普通の人間よ…」
刀剣で敵兵を斬撃…。瞬殺したのである。
「ぐっ!」
斬殺された敵兵はグッタリと横たわる。戦慄するクリスティーヌであるもの…。小柄の女性を凝視した直後である。
「えっ…あんたって…」
彼女にとって非常に衝撃的であり全身がプルプルと身震いする。
「ひょっとしてアルセイス…アルセイスなの!?」
赤色のロングドレスと茶髪のストレートロングと金剛石のイヤリング…。赤色の口紅と紅色のレッドアイズから彼女が同年齢のアルセイスであると再認識したのである。クリスティーヌにとっては非常にギスギスした雰囲気であったものの…。アルセイスは笑顔で微笑む。
「久し振りね♪クリスティーヌちゃん♪大丈夫?」
笑顔のアルセイスに一安心したのかクリスティーヌは内心ホッとしたのである。
(アルセイス…)
すると涙腺から涙が零れ落ちる。
「アルセイス…私は女学園時代に…あんたを…本当に御免なさいね…」
「クリスティーヌちゃん…気にしないで♪」
アルセイスは特段気にならなかった様子である。
「所詮大昔の出来事だし…」
「アルセイス…」
(アルセイスは人一倍大らかなのね…)
クリスティーヌは大らかなアルセイスに感心する。
(アルセイスの先程の身動きは人外だったわ…女学園時代では勉学は勿論…運動さえも人一倍苦手だった彼女が如何して?)
クリスティーヌは恐る恐るアルセイスに問い掛ける。
「先程のアルセイスの身動きは常人とは桁違いだったけど…ひょっとしてあんたはドーピングしたの?」
「ドーピングって…」
ドーピングの一言にアルセイスはプスッと苦笑いする。
「正直私にも何が何やらサッパリなのよ♪」
アルセイス自身も如何してこんなにも規格外にパワーアップしたのか正直不明だったのである。
「五月十七日事件の数日後かしら?全身の違和感を自覚し始めたのよね…」
「違和感ですって?」
「外傷が一瞬で治癒するとか…超音速で移動出来るとか…」
非常に曖昧であり正直クリスティーヌは理解出来ない。
「五月十七日事件って…イーストサイドに在住した人間達は無数の肉片と血液に変化したみたいだけど…事件当日アルセイスは?」
アルセイスは即答する。
「当日の私は自宅で休眠中だったのよ…事件当日は体調不良で女学園を欠席しちゃったからね…」
クリスティーヌは驚愕したのである。
「欠席ですって!?」
(アルセイスはイーストサイドで…如何してアルセイスだけが無事なのかしら?)
世間ではイーストサイドの住民達は全滅したとの認識であったが…。如何してアルセイスのみが無事だったのかクリスティーヌは非常に不思議がる。クリスティーヌは恐る恐る質問したのである。
「如何してアルセイスは無事だったの?」
アルセイスは非常に困惑する。
「御免なさい…正直私にも…」
「返答出来なかったら…返答しなくても大丈夫だからね…気にしないで…」
クリスティーヌは無理強いしなかったのである。
「御免なさいね…クリスティーヌちゃん…」
するとアルセイスの表情が険悪化する。
「本題だけどね…私は奴等に復讐するの…」
「えっ?奴等に復讐?」
アルセイスは一息するなり…。
「五月十七日事件はね…レムリア解放軍のテロリスト達は勿論…武装警察隊の革命派の陰謀らしいのよ…」
「えっ…武装警察隊の革命派ですって!?」
クリスティーヌはゾッとする。
「全世界の覇権を牛耳りたいブラッドフォードのレムリア解放軍と…レムリア共和国を牛耳る武装警察隊総本部を陥落させたい武装警察隊の革命派がレムリア解放軍に寝返って…両勢力は一致団結…密集地のイーストサイドをケラウノスって大量破壊兵器で殺戮したのよ…奴等にとって五月十七日事件は単なるデモンストレーションだったのよ…」
「デモンストレーションですって…」
「結局私のパパとママは…奴等のデモンストレーションによって虐殺されたのよ…」
「彼等のデモンストレーションで…アルセイスのパパとママが?」
クリスティーヌは混乱したのである。
「如何してアルセイスが武装警察隊の裏事情を?」
イーストサイド海域にて漂流中だったアルセイスは武装警察隊に救出されてよりサウスサイドの武装警察隊駐屯地にて保全される。駐屯地の密室にて革命派らしき武装警察員達が悪巧みする場面を目撃…。彼等の裏事情を入手したのである。
「私はレムリア解放軍に関係する武装警察隊の革命派と…資産家達の暗殺を決意したのよ…」
クリスティーヌはピクッと反応する。
「ひょっとして最近噂話の暗殺者って…アルセイスだったの!?」
アルセイスは真顔で即答したのである。
「勿論私よ…パパとママを惨たらしく殺した関係者とテロリスト達を私が徹底的に全滅させるの!」
(アルセイス…)
普段は人一倍大人しそうなアルセイスのイメージが大幅に変化する。するとクリスティーヌがボソッと一言…。
「アルセイスも…パパとママが殺されちゃったのね…」
「ひょっとしてクリスティーヌちゃんも?」
「私もパパとママがイーストサイドで殺されたのよ…私が修道女として活動し始めたのはパパとママの死去が契機だからね…勿論女学園時代に悪友達と一緒にアルセイスを揶揄したのも一因だけれども…」
「クリスティーヌちゃん…」
「こんな私に唯一出来るのは…五月十七日事件で死去された犠牲者達のレクイエムかしらね…」
「クリスティーヌちゃんは私とは真逆だね…えっ!?」
「アルセイス?」
アルセイスは警戒するなり周囲をキョロキョロさせる。警戒するアルセイスにクリスティーヌは非常に不安がる。
「レムリア解放軍の軍勢がサウスサイドに進行中だからね…奴等によってサウスサイドが占拠されるのは時間の問題だわ…」
「サウスサイドも!?」
サウスサイドは唯一の安全地帯として有名であったが本日の真夜中よりレムリア解放軍の軍勢が侵入する。
「勿論…」
レムリアは先程仕留めた敵兵のバズーカ砲をクリスティーヌに手渡したのである。
「私に!?」
「護身用よ…」
「バズーカ砲って…随分物騒ね…」
クリスティーヌはハンドガンの使用も未経験であり内心戦慄する。
「私はハンドガンでさえも未経験なのよ…バズーカ砲なんて…」
「大丈夫よ…『レーザーライフル』だから…」
「レーザーライフル?」
レーザーライフルとは別名光線小銃であり高火力の対人レーザーエネルギーを射出する携帯型高エネルギー兵器である。使用法は非常に単純であり非戦闘員でも容易に扱える。
「クリスティーヌちゃん…早速サウスサイドから脱出しましょう…」
クリスティーヌはビクビクした様子でアルセイスの背中に密着するなり…。恐る恐る教会堂から脱出したのである。レムリア解放軍の総攻撃によってサウスサイド全域が主戦場であり住民達は混乱する。武装警察隊の猛反撃により両陣営の死骸が散乱したのである。今迄平穏だったサウスサイドの変化にクリスティーヌは愕然とする。
「ひょっとしてサウスサイドなの…」
道路上には肉片やら血液が散乱したのである。
「きゃっ!」
遠方からは無数の爆発音が響き渡る。
「クリスティーヌちゃん…サウスサイドから脱出するの…最早サウスサイドは主戦場なのよ…」
不本意であるが…。
「アルセイス…承知したわ…」
すると彼女達が通過中の道路上から隣接する超高層型タワービル屋上より強烈なる殺気を感じる。
「えっ!?」
「アルセイス?」
アルセイスの表情が険悪化する。クリスティーヌはアルセイスの表情を直視するなり戦慄する。
(タワービルから殺気を感じるわ…)
アルセイスは超高層型タワービルの屋上から蛍光色の発光体を直視するなり…。超音速で回避する。
「えっ!?一体何が!?」
(アルセイスは!?)
クリスティーヌはハッとした表情であり何が発生したのか理解出来なかったのである。アルセイスは超音速で超高層型タワービル屋上へと移動するなり…。数秒間で到達する。タワービルの屋上には一人の狙撃兵が大型のレーザーライフルで道路上の歩行者達を狙撃したのである。狙撃兵は道路上の様子に無我夢中であり背後のアルセイスの存在には気付かない。
「畜生!ターゲットを見失っちまうとは!」
アルセイスは狙撃兵の背中をポンッと接触する。
「はっ?」
「御免あそばせ♪」
アルセイスは笑顔で挨拶したのである。
「なっ!?貴様一体!?」
狙撃兵は一瞬で超高層型タワービルの屋上へと移動したアルセイスに驚愕する。
「グッドナイト♪」
彼女は笑顔で挨拶するものの狙撃兵を斬撃…。
「ぐっ!」
瞬殺する。
「即刻戻らないとクリスティーヌちゃんが心配するわよね…」
アルセイスは一瞬で超高層型タワービルの屋上から道路上へと戻ったのである。
「クリスティーヌちゃん…」
「アルセイス!?」
「邪魔者は排除したわ…」
クリスティーヌはボソッと本音を発言する。
「女学園時代の弱虫だったアルセイスとは別人ね…」
「クリスティーヌちゃん…」
アルセイスは反応に困惑したのか苦笑いしたのである。

第四話

出撃

同時刻…。ウエストサイドのレムリア解放軍総本部では補佐官のルーヴェルハルトが総司令官のブラッドフォードの専用室へと入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード総帥…」
「誰かと思いきや…ルーヴェルハルト補佐官でしたか…一体如何されましたか?」
「サウスサイドですが…数時間で陥落するでしょう…」
「武装警察隊も弱体化しましたね♪」
ブラッドフォードは満足気の表情でニヤリとする。
「ですが気になるのは…」
「何が気になるのですか?」
「サウスサイドの武装警察隊は非常に手薄でして…現時点では彼等の目立った活動は皆無なのです…」
「ひょっとするとノースサイドの武装警察隊総本部に全軍を撤収中なのでしょう…本来なら即刻ケラウノスでノースサイド諸共武装警察隊総本部を死滅させるのが非常に合理的なのですが…」
「ケラウノスですと!?」
ブラッドフォードのケラウノスの一言にルーヴェルハルトはビクッと反応したのである。極度の戦慄により全身がプルプルする。
「大丈夫ですか?ルーヴェルハルト補佐官?」
「失礼しました…」
五月十七日事件は勿論…。第二次世界戦争の惨劇は当事者のルーヴェルハルトにとってもトラウマであり出来れば使用したくないのが本音である。
「ノースサイドには武装警察隊の革命派が潜伏中ですからね…」
ルーヴェルハルトは一安心したのか内心ホッとする。
「武装警察隊とは別問題なのですが…」
「別問題ですって?」
ルーヴェルハルトは恐る恐る室内のホログラムを作動させる。
「彼女は…」
ホログラムにはアルセイスが狙撃兵を斬殺する場面だったのである。
「上空より偵察用のドローンが彼女をキャッチしました…」
ブラッドフォードはピクッと反応する。
(ひょっとして彼女は…)
「実験体の…」
「予想外でしたよ…魔女の血液で常人だった彼女が十五年間でこんなにもパワーアップするなんて…」
「ですが所詮超人化した小娘一人が奮闘したとしてもレムリア解放軍を全滅させるなんて現実的に不可能でしょう…」
ブラッドフォードは余裕の様子であるものの…。ルーヴェルハルトは非常に不安視する。
「ルーヴェルハルト補佐官…空中母艦『スカイベース』を出動させましょう…」
「スカイベースですと!?」
スカイベースとは超弩級空中母艦でありレムリア解放軍の空中拠点型の無人機搭載型空中空母…。ブラッドフォードの財力と科学技術力を融合化させた象徴である。全長は百八十メートル…。全幅は百四十メートルと規格外のサイズであり六十機から二百機程度の艦載機を搭載出来る。兵装は対空用の垂直型ミサイル発射機を四基…。動力炉は最新式のスーパーリアクターでありエネルギー源を補給しなくとも無限に飛行し続けられる。基本的に上空の本拠地として活用されるものの…。海面上の大型水上艦としても活用出来る。本艦の装甲に使用された原材料は特殊超合金『エターナルメタル』であり核爆発をも無力化させる不沈空母である。エターナルメタルとはイーストサイド海底下にて採掘された不朽性のレアメタルであり硬質さのみなら金剛石をも上回る。大量のエターナルメタルが戦闘用に利用されたものの…。近年では民間型の各メーカーでも普及中である。ブラッドフォードがイーストサイドを占拠したのも大量のエターナルメタルを確保したかったからである。
「突撃隊によるノースサイドの武装警察隊総本部を総攻撃…本日でレムリア共和国全域を占拠するのです!」
「承知しました…ブラッドフォード総帥…」
ルーヴェルハルトは敬礼するなり恐る恐る退室する。
「ブラッドフォード総帥は本気だな…」
(世界一の資産家が今夜で全世界を牛耳るかも知れないな…レムリア王国が復活するか?)
ルーヴェルハルトは地下壕の格納庫へと移動するなり超弩級空中母艦…。スカイベースを直視したのである。
「一個人の資産家の財力だけで…こんな規格外の代物が建造出来るなんて…」
スカイベースを直視したルーヴェルハルトは驚愕する。

第五話

暴徒達
同時刻…。移動中だったアルセイスとクリスティーヌは無人化したショッピングモールへと潜入したのである。
「休憩しましょう…クリスティーヌちゃん…」
彼女達はショッピングモールで一休みする。
「先程からレムリア解放軍の敵兵と遭遇しないわね…ひょっとして武装警察隊が片付けちゃったのかしら?」
「サウスサイドに配備された武装警察隊は予備隊ばかりよ…」
事実…。サウスサイドに配備された武装警察隊は訓練未経験の予備隊ばかりであり装備品も非常に貧弱である。
「弱腰の予備隊で大勢の志願兵で統率されたレムリア解放軍を撃退するなんて夢物語だわ…何しろ第二次世界戦争で全世界に勝利しちゃった勢力だからね…」
するとアルセイスはポケットから錠剤を入手するなり…。ペットボトルの飲料水で服薬する。
「アルセイス?何を服用したの?」
クリスティーヌは恐る恐る問い掛けたのである。
「単なるラムネよ…気にしないで…」
アルセイスはビクビクした様子で返答する。アルセイスの様子が可笑しいと察知するものの…。
(恐らくアルセイスが服用したのは抗精神病薬ね…)
クリスティーヌはアルセイスに詮索しなかったのである。するとアルセイスがボソッと発言する。
「十年前の五月十七日事件から私は…イーストサイドで死滅した犠牲者達のゴーストが私に殺到するのよ…」
「ゴーストですって?」
「私はね…」
アルセイスは幼少期から誰よりも霊能力が非常に根強く超常現象には人一倍敏感である。五月十七日事件から数日後…。彼女は無数のゴーストと遭遇しては抗精神病薬を服用し続ける毎日だったのである。複数の抗精神病薬を服用しても血液を直視する場面に遭遇すると五月十七日事件のトラウマが再現化される。
「あんたも大変なのね…」
するとクリスティーヌの携帯式ホログラムがブルブルと反応したのである。
「えっ?何かしら?」
ポケットから携帯式ホログラムを入手するなり…。
「何よ…」
彼女達はゾッとしたのである。ホログラムの画面には十二月二十五日の首謀者であるブラッドフォードの立体映像が立体的に映写される。
「誰かと思いきや…ブラッドフォード!?」
アルセイスはホログラムに映写されたブラッドフォードを直視するなりピリピリする。同時刻…。レムリア解放軍はサウスサイドの通信社を占拠するなりスカイベース艦内からレムリア共和国全域にてホログラムによるブラッドフォードの演説を生放送で配信したのである。
「レムリア共和国の全国民に伝播します…私はレムリア解放軍総帥のブラッドフォード…世界一の大富豪です!今回私が不本意にもレムリア共和国全域を混乱させたのは生活困窮者達を圧制し続ける武装警察隊総本部を撃滅したいからなのです…私が無事にレムリア共和国の主導権を掌握すればレムリア共和国の全国民の生活を保障しますから!是非とも私に協力して下さい!私と一緒にノースサイドの武装警察隊総本部を殲滅しましょう!」
するとプチッと配信が遮断される。先程のブラッドフォードの演説にアルセイスがボソッと一言…。
「所詮テロリストの分際で何が全国民の生活を保障するよ…私のパパとママを惨殺した極悪非道の殺人鬼が…」
無表情だったアルセイスの表情が鬼神の表情へと変化する。
「アルセイス!?」
クリスティーヌはアルセイスの表情を直視するなり戦慄したのである。
「アルセイス…」
「何よ…クリスティーヌちゃん?」
クリスティーヌはビクビクした表情で…。
「ジュースでも如何かなって?私が購入するから…」
クリスティーヌは即座にフードコートの自販機へと移動する。
「クリスティーヌちゃん…随分ビクビクした様子だったけれども…」
(何にビクビクしたのかしら?)
アルセイスは理解出来なかった様子である。同時刻…。クリスティーヌは自販機にてグレープジュースとオレンジジュースを購入する。戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
(こんな場所に親子かしら?)
フードコートにて幼女を抱き抱える女性が気になったのかクリスティーヌは恐る恐る近寄る。
「大丈夫ですか?私達と一緒に脱出しませんか?」
女性の様子は非常に不可解でありクリスティーヌが近寄ってもテーブルを凝視し続ける状態で恐る恐る問い掛けるクリスティーヌには無関心である。クリスティーヌはムッとするものの恐る恐る幼女を直視するなり…。彼女は戦慄したのである。
「きゃっ!」
(下半身が…)
幼女を凝視すると下半身が消失した状態であり女性の足場にはポトポトと鮮血が流れ出る。すると女性が無表情でクリスティーヌを凝視したのである。
「如何して…私の愛娘は目覚めないの?」
無表情だった女性は涙腺から涙が零れ落ちる。
「如何して目覚めないのよ…」
クリスティーヌは恐る恐る返答する。
「如何してって…あんたの愛娘は下半身が…」
すると直後…。
「あんたが…あんたが私の愛娘を殺したのね!?」
「えっ!?私は何も!」
豹変した女性に戦慄する。
(えっ!?此奴…サイコパス!?)
女性は右手にテーブルナイフを所持…。
「あんたが…あんたが私の…」
スタスタとクリスティーヌに近寄る。クリスティーヌは一歩ずつ後退りする。
(畜生…如何すれば…)
クリスティーヌは恐怖心により全身がプルプルしたのである。
「死になさい!」
テーブルナイフでクリスティーヌを斬撃する寸前である。
「クリスティーヌちゃん!」
猛スピードでアルセイスが殺到するなり…。即座に刀剣で女性の所持するテーブルナイフを屈折させる。
「あんた!クリスティーヌちゃんに何するのよ!?」
「アルセイス!?」
女性はアルセイスの目力により後退りしたのである。
「彼女は…私の愛娘を…」
アルセイスは反論する。
「彼女は無関係よ…あんたの愛娘が誰に殺されたのかは不明だけどね…無関係のクリスティーヌちゃんに手出しするなら…私は手加減しないからね…」
「アルセイス…」
(アルセイスが恋人だったら見惚れるかも♪)
クリスティーヌは一瞬アルセイスに見惚れる。女性は涙腺から涙が零れ落ちる。
「御免なさい!御免なさいね…」
女性はクリスティーヌに謝罪したのである。
「私は…別に…」
クリスティーヌは困惑する。数分後…。女性は平常心に戻ったのである。
「私の愛娘は…テログループに殺されたのよ…」
「テログループですって?」
「ブラッドフォードのレムリア解放軍ね…」
「私は…」
女性は逃走中にてレムリア解放軍の兵士達に拘束され…。親子諸共暴行されたのである。彼等は面白がった様子であり全身を暴行された愛娘にレーザーライフルで下半身を狙撃…。愛娘を即死させたのである。目前にて愛娘を惨殺された悲痛さから…。自暴自棄によって部外者であるクリスティーヌに斬撃しそうになったのである。
「レムリア解放軍は極悪非道ね…」
「本当に御免なさいね…私は…」
女性はクリスティーヌに謝罪する。クリスティーヌは笑顔で返答したのである。
「気にしないで下さい♪娘さんが亡くなられたのは大変心苦しいかも知れませんが…即刻避難所に避難して下さい…天国の娘さんも母親である貴女様の無事を希望されますよ…」
女性の顔色が変化する。
「感謝しますね…」
クリスティーヌは一安心したのかホッとしたのである。すると無口だったアルセイスが発言する。
「私達は移動するわね…」
「移動ですって?目的地は?」
女性は恐る恐る質問したのである。アルセイスは即答する。
「ノースサイドよ…武装警察隊総本部にブラッドフォードのレムリア解放軍が進行中らしいから…」
すると女性はポケットからスカイカーのスマートエントリーを入手するなりアルセイスに手渡したのである。
「何かしら?」
「私のスカイカーのスマートエントリーです…役立つかなと…」
クリスティーヌが恐る恐る…。
「スマートエントリーって…貴女様のスカイカーですよね!?私達が乗車しても大丈夫なのですか?」
女性は即答する。
「大丈夫ですよ♪私は一人なのでスカイカーは不要です…」
「であれば頂戴するわね…」
「私も出来るなら協力したいけれども…私では足手纏いですからね…」
「承知したわ…あんたのスカイカーは?」
「ショッピングモールの駐車場よ…銀色のスカイカーよ…」
「感謝するわ♪クリスティーヌちゃん!早速移動しましょう!」
「勿論よ!」
彼女達は即刻ショッピングモールの駐車場へと移動する。アルセイスは銀色のスカイカーへと近寄るなりスマートエントリーを作動させる。数秒後…。ピカッとスカイカーのヘッドライトが点滅したのである。
「彼女のスカイカーね♪人騒がせな母親だったけれど…彼女に遭遇してラッキーだったわね♪」
「ラッキーなのかな?」
クリスティーヌは苦笑いする。するとアルセイスはボソッとクリスティーヌに質問したのである。
「クリスティーヌちゃんはスカイカーの運転免許証は?」
「私が無免許だとでも?」
クリスティーヌは断言する。アルセイスは笑顔でクリスティーヌにスマートエントリーを手渡したのである。
「何よ…アルセイス?」
「私は無免許だから…運転してよ♪」
「はっ?あんたは無免許だったの!?」
クリスティーヌはポカンとした表情で呆れ果てる。
「御免あそばせ♪」
アルセイスは笑顔で謝罪したのである。
(仕方ないわね…)
「承知したわ…私が運転するから…」
クリスティーヌは承諾したのである。すると近辺からガヤガヤと人間達の怒号が響き渡る。
「えっ?何かしら?」
気になったアルセイスは怒号の響き渡る現場へと移動したのである。
「アルセイス!?」
(彼女は本当にマイペースね…)
クリスティーヌはマイペースのアルセイスに困惑するものの…。恐る恐るアルセイスに追尾する。近辺の道路上には横たわった一人の武装警察員に暴徒化した五人組の青少年達がサンドバッグしたのである。
「愚連隊かしら?」
武装警察員は全身血塗れであり即死した状態であるものの…。青少年達は面白がった様子で横たわる武装警察員を暴行し続ける。残虐非道の彼等にクリスティーヌは勿論…。アルセイスもハッとした表情で愕然とする。クリスティーヌは恐る恐る…。
「あんた達!大勢で暴行するなんて下劣だわ…」
彼等はギロッとした目力でクリスティーヌを睥睨する。
「部外者は口出しするな!姉ちゃんも殺されたいか?」
「俺達はレムリア共和国のレジスタンスだからな!全国民を圧制する武装警察隊を撃退するのがレジスタンスである俺達の任務なのさ♪」
「俺達の任務を妨害するなら姉ちゃん達も惨殺するよ…」
アルセイスは一息するなり…。
「何が任務よ…あんた達はブラッドフォードの演説にマインドコントロールされたのね…気の毒に…」
ブラッドフォードの演説によって武装警察隊を敵対視する人間が続出したのである。暴力団は勿論…。失業者やら生活困窮者達も武装化するなり暴徒化したのである。最早レムリア共和国全域が無警察状態であり国全体がスラム化する。アルセイスとクリスティーヌは暴徒化した青少年達に包囲される。
(畜生…如何すれば…)
クリスティーヌは戦慄したのか隣接するアルセイスに密着したのである。
「茶髪の姉ちゃんは大人しそうで可愛らしいな♪」
彼等はアルセイスに見惚れるものの…。アルセイスは無表情で断言する。
「あんた達みたいな愚連隊はノーサンキューだわ…」
即座に抜刀したのである。
(こんな雑魚なら数人相手でも楽勝ね…)
「私に斬殺されたいのは誰かしら?」
強気のアルセイスに彼等はポカンとする。
「一人で俺達を斬殺するのか?」
「俺達を軽蔑しやがって…姉ちゃん一人で何が出来る?」
「多勢に無勢だよ♪装備品も刀剣だけだし…」
彼等の装備品は旧型のハンドガンやら軍事用のクロスボウである。刀剣のみでは圧倒的に不利であるが…。アルセイスは余裕の様子であり平常心である。
「あんた達を瞬殺する…」
「俺達を瞬殺するって…寝惚けやがったか?」
彼等は余裕の様子であるものの…。直後である。アルセイスは超音速で移動するなり愚連隊の一人を斬撃…。頭首を斬首したのである。一瞬の出来事により愚連隊の四人は勿論…。クリスティーヌも愕然とする。
「ひっ!」
「本当に瞬殺しやがった…」
「人間のスピードなのか…」
先程は余裕だった愚連隊であるがアルセイスの超人化したハイスピードを直視するなり戦慄したのである。
「私は有言実行だからね…今度は誰が私に殺されたいのかしら?」
無表情のアルセイスに四人はプルプルする。恐る恐るハンドガンで彼女に射撃するもののピキンと弾丸を一刀両断…。
「弾丸が…」
「斬鉄剣かよ…」
「私の刀剣はエターナルメタルなのよ…大抵の金属は簡単に両断出来るわ…」
アルセイスの刀剣はエターナルメタルで製造された代物であり正真正銘斬鉄剣である。あらゆる物体を切断出来る。
「あんたは…人間なのか!?」
アルセイスは即答する。
「勿論私は人間よ…」
「うわっ!殺されちまうよ!」
アルセイスの目力に戦慄したのか彼等は一目散に逃走したのである。
「所詮はヘタレだわ…」
「撃退出来たわね…アルセイス♪」
クリスティーヌは一安心したのかホッとする。するとアルセイスはポケットからペットボトルの飲料水と抗精神病薬を入手するなり服用したのである。
「アルセイス…大丈夫?」
「御免なさい…」
アルセイスは無表情であるものの…。全身がプルプルする。
(アルセイスも戦慄したのね…)
「クリスティーヌちゃん…早速ノースサイドに移動しましょう…」
「承知したわ…」
彼女達はショッピングモールの駐車場へと戻ったのである。スマートエントリーを作動させるなりスカイカーへと乗車する。クリスティーヌは運転席…。アルセイスは助手席に乗車するなりシートベルトを着用する。
「移動するわよ…」
スカイカーは目的地のノースサイドへと直行したのである。
メンテ
アルセイス ( No.93 )
日時: 2021/09/15 15:27
名前: 月影桜花姫

第七話

ノースサイド
同時刻…。ノースサイドの武装警察隊総本部ではレムリア解放軍のサウスサイド総攻撃に混乱する。総司令部にて武装警察隊の通信兵が入室する。
「ストライダー本部長!大変です!」
ストライダーとは十年前にイーストサイドの海域にて漂流中のアルセイスを救出した武装警察員である。数多くの功績により武装警察員から武装警察隊総本部の本部長へと昇級する。
「何事だ?」
「ノースサイド上空よりレムリア解放軍の巨大空中空母が到達しました!」
「巨大空中空母だと?即刻迎撃しろ…」
通信兵は困惑した様子で発言する。
「上空の空中母艦は迎撃したいのですが…陸地にはレムリア解放軍の突撃隊が進撃中です…」
(畜生が…俺は一体如何すれば…)
ストライダーは困惑したのである。
「非戦闘員は避難させたか?」
通信兵はストライダーの問い掛けに即答する。
「大丈夫です…非戦闘員の避難は無事完了しました!」
「上出来だ…」
一安心したのかホッとする。
「武装警察隊本隊を出動させろ!陸地の敵兵を総攻撃せよ!」
「承知しました!」
同時刻…。スカイカーでノースサイドに進行中のアルセイスとクリスティーヌはノースサイドの区域内へと到達したのである。彼女達は上空の超弩級空中母艦を直視するなり…。
「えっ?何かしら?」
「母艦っぽいわね…」
「空中のタンカーかしら…」
レムリア解放軍がノースサイドに到達したのであると再認識する。彼女達は駐車場にてスカイカーを駐車させる。
「レムリア解放軍の敵兵と遭遇したら即刻仕留めましょう…」
「承知したわ…」
クリスティーヌは護身用にレーザーライフルを所持する。
「ケルベロスよ!」
上空から十数機のケルベロスが急降下するなり武装警察隊の駐屯地を爆撃したのである。各区域内から無数の爆発音が響き渡る。
「主戦場だわ…」
するとアルセイスは殺気を感じる。
「殺気!?誰かしら?」
駐車場に一人の敵兵が進入する。敵兵の装備品はレーザーライフルである。ヘルメットのデザインからレムリア解放軍であると再認識する。
「レムリア解放軍だわ!」
「ん?」
敵兵は彼女達に気付いたのである。
「二人組の小娘と遭遇するとは…俺はラッキーだな♪」
「気付かれたわ…」
「アルセイス…如何するのよ!?」
クリスティーヌは非常に動揺する。敵兵は余裕の様子であり一歩ずつ彼女達に近寄る。
「死滅しな♪小娘♪」
レーザーライフルでアルセイスに狙撃するもののアルセイスは即座に刀剣を抜刀するなり…。刀剣でレーザーライフルから射出された蛍光色の発光体を無力化したのである。
「刀剣でレーザーライフルを無力化しやがるとは…」
「私の刀剣はエターナルメタルだからね…」
アルセイスは超音速で敵兵の背後へと移動する。
「なっ!?貴様!?一瞬で…」
敵兵はアルセイスのハイスピードに戦慄したのである。
「あんたを瞬殺するわ…」
アルセイスは敵兵を斬殺…。瞬殺する。
「クリスティーヌちゃん…即刻武装警備隊総本部に移動しましょう…上空の空中母艦も気になるけど…陸地の敵兵を殲滅しないと…」
「承知したわ…」
彼女達は駐車場から脱出したのである。すると駐車場に隣接する敷地にて瀕死状態の敵兵と遭遇する。
「ぐっ!」
「レムリア解放軍の敵兵だわ!?」
クリスティーヌは恐る恐る近寄る。
「クリスティーヌちゃん?」
「大怪我したのね…」
敵兵は全身が血塗れであり失血死しても可笑しくない状態だったのである。
「姉ちゃんよ…即刻俺を病院に…」
アルセイスは表情が険悪化するなりギロっと睥睨する。
「殺しちゃいましょう…テロリストだし…」
クリスティーヌはアルセイスの発言に戦慄したのである。
「えっ!?アルセイス!?」
「所詮テロリストなのよ…テロリストは殺さないと…」
クリスティーヌは彼女の発言に納得出来ない。
「テロリストでも人間よ…こんなにも衰弱化した状態で放置するのは…私には出来ないよ…」
「パパとママを殺した奴等だよ…クリスティーヌちゃんだってパパとママを殺されたのよね?」
「アルセイス…」
クリスティーヌはアルセイスの発言に困惑する。
(私には何も出来ないのね…)
アルセイスは内心ピリピリするものの…。刀剣で左手の手首をリストカットしたのである。
(えっ!?)
「アルセイス!?一体何を!?」
クリスティーヌはアルセイスのリストカットに驚愕する。アルセイスは手首から出血した血液を敵兵の外傷に注入したのである。直後…。敵兵の外傷が一瞬で治癒したのである。アルセイスの手首も元通りに治癒される。
「魔法みたいだわ…」
クリスティーヌは勿論…。敵兵も外傷の治癒に愕然とする。
「外傷が…一瞬で…」
「私の血液は治療薬にも利用出来るみたいだからね…」
「如何してこんな超能力を…あんたは一体何者なのよ?」
摩訶不思議の超常現象にクリスティーヌは非常に興味深くなる。
「アルセイスは本当に魔法使いみたいね…」
「魔法使いって…」
アルセイスは魔法使いの一言に一瞬苛立ったものの…。沈黙したのである。
「私にも正直何が何やらサッパリだけどね…」
五月十七日事件後…。彼女は大怪我しても一瞬で治癒する肉体へと変化したのである。何よりも驚愕したのは癌腫によって衰弱化した愛犬がアルセイスの血液に接触…。体内の癌腫が一瞬で消滅したのである。すると敵兵がアルセイスに一礼する。
「茶髪の姉ちゃんよ…感謝するよ♪」
アルセイスは無表情で…。
「勘違いしないでよね…私があんたの外傷を治癒したのは気紛れだから…感謝するなら修道女のクリスティーヌちゃんに感謝するのね!」
(アルセイス…ツンデレっぽいわね…)
クリスティーヌはアルセイスの反応に苦笑いしたのである。するとアルセイスは敵兵に質問する。
「あんた達の総大将の居場所は?」
「ブラッドフォード総帥か?ブラッドフォード総帥なら今頃スカイベースのブリッジだよ…」
「スカイベースって?」
「上空の空中母艦だよ…」
彼女達は上空のスカイベースを凝視したのである。
「上空の空中母艦にブラッドフォードがね…」
敵兵は恐る恐るアルセイスに問い掛ける。
「如何して茶髪の姉ちゃんはブラッドフォード総帥に?」
アルセイスは即答したのである。
「私はブラッドフォードに復讐したいの…私のパパとママはあんた達レムリア解放軍のケラウノスで殺されたからね…」
「ケラウノスか…」
敵兵はピクッと反応する。
「俺はブラッドフォード総帥に忠誠心なんて皆無だが…ブラッドフォード総帥に対面したとしてもブラッドフォード総帥は誰にも殺せないぜ…魔法使いのあんたでも…」
「殺せないって?」
「実際にブラッドフォード総帥を直視すれば驚愕するだろうよ♪」
彼女達は敵兵の発言に疑問視するものの…。
「私自身で確認するわ…あんたは如何するの?」
「俺は即刻逃走するよ…今更レムリア解放軍へは戻りたくないからな…」
「如何して戻りたくないのよ…」
アルセイスの質問に敵兵は即答する。
「俺は戦友に裏切られちまったからよ…」
レムリア解放軍は大勢の無頼漢達によって組織されたエゴイストのグループであり仲間内の内輪揉めは勿論…。脱走兵の続出は頻繁である。
「所詮レムリア解放軍のメンバーは過半数がエゴイストだからな…雇用主のブラッドフォード総帥でさえも金蔓としか認識しない破落戸ばかりだ…」
「金蔓って…」
「あんたも大変そうね…」
アルセイスも苦笑いする…。
「あんた達もスカイベース上空に到達するのは正直困難だが…精一杯頑張れよ…」
敵兵は逃走したのである。すると突然…。逃亡中の敵兵が両手で頭部を接触した直後である。敵兵の頭部がパンっと破裂する。
「きゃっ!」
「えっ!?一体何が!?」
先程敵兵と接触した直後の出来事であり彼女達は戦慄したのである。
「如何して兵隊さんの頭部が…」
地面には敵兵の脳味噌が散乱する。
「私にも何が何やら…」
アルセイスはポケットからペットボトルの飲料水と抗精神病薬を入手するなり服用したのである。
「クリスティーヌちゃん…私達は超特急で武装警察隊総本部に移動しましょう!武装警察隊の有人機を強奪するわよ…」
アルセイスの発言にクリスティーヌはビクッと反応する。
「強奪ですって!?」
「上空のスカイベースに到達するには有人機が必要不可欠だからね♪」
「武装警察隊の総本部よ!私達みたいな民間人が容易に潜入出来るかしら?」
クリスティーヌは不安視するものの…。
「武装警察隊総本部も攻防戦に必死よ♪レムリア解放軍と戦闘中だから容易に潜入出来るわ♪」
(こんな状況下でも…誰かの所有物を強奪するのは…)
クリスティーヌは不本意であるが承諾する。彼女達は武装警察隊総本部へと直行したのである。すると中心街にて暴徒化した数人の武装警察隊と遭遇する。彼等は友軍の武装警察員を殺害したのである。
「仲間内で…」
「ひょっとすると奴等は武装警察隊の革命派かも…」
彼等はアルセイスとクリスティーヌに気付くなり…。
「姉ちゃん達か…暇潰しに姉ちゃん達も殺そうかな?」
アルセイスは恐る恐る問い掛ける。
「如何してあんた達は仲間内で殺し合いなんか?あんた達が本来討伐するべき相手はレムリア解放軍でしょう?」
彼等は即答したのである。
「俺達はレムリア解放軍に寝返ったのさ♪」
「今更弱体化しちまった武装警察隊に貢献しても無意味だし…」
最早国全体が内戦状態であり敵味方の識別が出来なくなる。
「アルセイス…こんな現状では武装警察隊も信用出来ないわね…」
「こんな状態では両勢力とも共倒れだわ…」
アルセイスは即座に抜刀する。
「あんた達を瞬殺する…」
「刀剣で何が出来る?」
彼等は余裕の様子であるものの…。アルセイスは超音速で移動するなり彼等の背後から斬撃する。
「うわっ!」
「ぐっ!」
一瞬で二人の武装警察員を瞬殺したのである。
「ひっ!」
アルセイスに戦慄した武装警察員達は一目散に逃走する。
「片付いたわね…」
すると近辺より爆発音が響き渡る。
「爆発音だわ…」
「爆撃かしら?」
彼女達の背後より近未来型の重戦車が出現する。
「重戦車?」
「レムリア解放軍の代物ね…」
重戦車の正式名はロボット型試作重戦車『ジャガーノート』でありレーザーキャノン搭載型の無人型重戦車である。タンク型の履帯によって不整地でも容易に走破出来る。車体の動力炉は超小型化されたスーパーリアクターであり燃料油は不要である。
「レムリア解放軍は無人兵器ばかりね…」
ジャガーノートに搭載された人工知能がアルセイスとクリスティーヌを確認するなり戦車砲を照準させる。
「標的ヲ確認シマシタ…即刻殲滅シマス…」
アルセイスは恐る恐るクリスティーヌに合図する。
「クリスティーヌちゃん!撤退しましょう!」
「撤退ですって!?」
「相手は重戦車だからね…装甲もエターナルメタルだから私の刀剣でも斬撃出来ないわ…」
ジャガーノートは戦車砲のレーザーキャノンでアルセイスに砲撃するものの…。アルセイスは即座に超音速で砲撃を回避する。ジャガーノートの砲撃によりコンクリートの地面が抉れる。
「クリスティーヌちゃん!」
「アルセイス!?」
アルセイスはクリスティーヌの背後へと移動したのである。クリスティーヌの左手に接触すると即座に撤退…。彼女達は全力疾走したのである。数分後…。無人化した商店街へと到達する。
「商店街かしら…」
「危機一髪だったわね…」
周囲を警戒するものの…。人気は感じられない。
「人気は無さそうね…」
「無人機に襲撃されたら厄介よ…」
すると近辺より無数の爆発音が響き渡る。
「きゃっ!」
「爆発音だわ…」
彼女達は恐る恐る商店街から脱出する。するとアルセイスは笑顔で…。
「ラッキーだったわね♪」
幸運にも彼女達は武装警察隊総本部の近辺に到達したのである。
「目的地も間近よ♪」
「目的地が間近でも…無人機の襲撃が…」
上空には十数機ものケルベロスが武装警察隊総本部を爆撃…。武装警察隊総本部周辺には大勢の敵兵達が包囲する。外部から武装警察隊総本部に近寄るのは非常に困難である。
「中世期の攻城戦みたいね…」
「私でも奴等全員を仕留めるのは正直困難だわ…」
すると背後より先程遭遇したロボット型試作重戦車…。ジャガーノートが彼女達を追撃する。
「標的ヲ再確認…標的ヲ再確認…即刻殲滅シマス…」
「ロボットよ!」
戦慄したクリスティーヌはジャガーノートを直視するなりアルセイスの背後に密着したのである。絶望的状況下であるもののアルセイスは笑顔で…。
「好都合だわ♪」
「何が好都合なのよ…」
「此奴を利用するのよ♪」
するとアルセイスは超音速で疾走するなりジャガーノートの砲塔の背後に密着したのである。
「コントロール不能…コントロール不能…」
ジャガーノートの砲塔はグルグルと回転するものの…。アルセイスは力強く密着した状態である。グニャグニャと走行するなりレーザーキャノンを乱射する。
「うわっ!ジャガーノートだと!?」
「誤作動しやがったのかよ!?」
武装警察隊総本部を包囲した敵兵達は背後の異常音に気付くなりパニック化したのである。ジャガーノートの戦車砲の乱射によって十数人の敵兵を爆死…。数人を轢死させる。ジャガーノートの暴走によってレムリア解放軍の突撃隊は総崩れ…。武装警察隊総本部を包囲した敵兵達は撤退したのである。
「緊急停止装置…発動シマス…」
ジャガーノートは緊急停止装置を自動で作動させるなり全機能を遮断…。スリープモードにより停車したのである。アルセイスは恐る恐る地面に着地する。
「単独で敵軍を撤退させるなんて…アルセイスは本当に命知らずね♪」
「余裕よ♪」
アルセイスは笑顔で返答したのである。
「外部の敵兵は撤退させたけれど…内部に潜入したレムリア解放軍を蹴散らさないと…」
アルセイスは再度抜刀する。彼女達は恐る恐る武装警察隊総本部に潜入したのである。内部では武装警察隊の守備隊とレムリア解放軍の銃撃戦により無数の肉片やら血液が室内全域に散乱する。アルセイスは恐る恐る敵兵達に近寄るなり…。
「御免あそばせ♪」
笑顔で挨拶したのである。
「なっ!?貴様は…」
アルセイスはレムリア解放軍の背後より五人の敵兵を斬殺したのである。彼女達の存在に気付いた守備隊は恐る恐る彼女達に近寄る。
「貴様達は…」
アルセイスの刀剣を直視するなり…。
「貴様は敵兵を斬撃したのか?」
「彼女が武装警察隊総本部を包囲する敵兵を撤退させたのよ…彼女に感謝するのね…」
クリスティーヌの発言に守備隊はハッとする。
「内部の敵軍が少人数だったのは…外部の敵兵を撤退させたからか…」
「彼女が一人で…」
彼等はアルセイスに一礼したのである。
「貴女様の…孤軍奮闘を感謝します…」
クリスティーヌはボソッと発言する。
「武装警察隊も弱体化したわね…」
「クリスティーヌちゃん…」
アルセイスは苦笑いするものの…。武装警察員達はクリスティーヌに反論しなかったのである。するとアルセイスは恐る恐る問い掛ける。
「あんた達の総大将は?」
「ストライダー本部長ですかね?ストライダー本部長なら守備隊と一緒に地下豪に避難しました…」
「ストライダー本部長に対面させてよ…」
「本部長と対面ですと?」
彼等は一瞬困惑するものの…。
「承知しました…」
アルセイスとクリスティーヌを地下豪へと案内する。地下豪には本部長のストライダーと三人の守備隊が彼を防備する。
「ん?貴様達は?」
クリスティーヌはストライダーを直視するなり表情が赤面したのである。
(ストライダー本部長って意外と男前なのね♪)
クリスティーヌの様子にアルセイスは微笑む。
(クリスティーヌちゃん…ストライダー本部長に見惚れちゃったのね♪)
すると武装警察員の一人がストライダーに報告したのである。
「ストライダー本部長…彼女達の奮闘によってレムリア解放軍の突撃隊を撃退出来ました…」
「奴等を撃退したのか!?」
ストライダーは驚愕する。アルセイスを直視するなり…。
「貴様は…」
「私はアルセイスです…」
「アルセイスだったか!」
ストライダーは大喜びする。
「アルセイス?知人なの?」
「ストライダー本部長は十年前の五月十七日事件で漂流中の私を救出して下さった恩人なのよ♪」
「アルセイスも大変だったな…」
アルセイスは今迄の経緯を一部始終ストライダーに告白したのである。
「ブラッドフォードが上空の空中母艦に…」
「私達に武装警察隊の有人機をレンタル出来ないかしら?」
ストライダーは恐る恐る返答する。
「武装警察隊総本部の格納庫に俺の専用機が整備中だが…滑走路上空にはレムリア解放軍のドローンが爆撃中だからな…」
ストライダーは非常に困惑するものの…。
「滑走路のドローンさえ撃退出来れば…」
すると無口だったストライダーが発言する。
「サイバーライフルで滑走路のドローンを撃墜出来ないかしら?」
「サイバーライフルですって?」
サイバーライフルとはレムリア解放軍のケルベロスを対処出来る唯一のドローン対策兵器であり特殊性電磁波を射出するショットガンである。人間やら動植物には無害であるものの電磁波に接触したドローンは全機能を停止…。機体を無力化出来る。
「サイバーライフルは試作品だからな…サイバーライフルはドローンを無力化出来るが単独で無数の無人機を撃墜するのは…」
クリスティーヌは笑顔で…。
「ストライダー本部長♪アルセイスだったら出来るわよ♪こんなヘタレの私が今迄生存出来たのは彼女が粉骨砕身したからなのよ…アルセイスの屈強さは常人を超越するわ♪彼女は百人力だからね!」
クリスティーヌは断言する。
「アルセイスが百人力とは…承知した…」
ストライダーは承諾…。地下壕のシークレットエリアから試作型のサイバーライフルをアルセイスに手渡したのである。
「私が外部の無人機を蹴散らせるわね…」
アルセイスは滑走路へと移動する。滑走路には十六機のケルベロスが配備された状態でありレムリア解放軍の守備隊が武装警察隊の滑走路を占拠したのである。
「滑走路は奴等に占拠されたのね…」
(好都合だわ♪)
アルセイスは右手に刀剣を抜刀…。左手にはサイバーライフルを所持するなり超音速でレムリア解放軍の防衛網に突入する。
「なっ!?敵襲?」
「ぐっ!」
アルセイスは一瞬で四人の敵兵を仕留める。停止中のケルベロスにサイバーライフルを作動させたのである。するとサイバーライフルの特殊性電磁波によりケルベロスの全機能を妨害…。無力化したのである。
「小娘はモンスターなのか!?」
アルセイスのハイスピードを直視した敵兵達は彼女に戦慄する。
「モンスターなんて失礼しちゃうわね…」
アルセイスは逃走する敵兵も斬殺したのである。停止中の十五機のケルベロスをサイバーライフルで無力化させる。
「畜生が…」
隠密中の敵兵がリモートコントローラーでケルベロスを操作するものの…。各機体が作動しない。
「コントロール不能…コントロール不能…コントロール不能…」
「故障なのか!?」
すると誰かが背中をポンッと接触する。
「なっ!?貴様は!?」
「残念ね♪」
アルセイスを直視するなり敵兵は戦慄したのである。
「あんた達のドローンは無力化したわ♪」
「無力化だと!?」
「グッドナイト♪」
アルセイスは敵兵を斬撃する。
「ぎゃっ!」
滑走路に待機中のケルベロスとレムリア解放軍を全滅させたアルセイスは地下豪へと戻ったのである。
「アルセイスだわ!」
「アルセイス!無事に戻れたか!」
クリスティーヌとウィズラエルは一安心したのかホッとする。
「滑走路は無事に奪還したわ♪」
「単独で滑走路を制圧するとは…アルセイスは本当に百人力だな…」
ウィズラエルは驚愕したのである。
「であれば奴等に猛反撃出来ますね!ストライダー本部長!」
「俺達でレムリア解放軍を撃滅しましょう!」
「早速航空隊を再編制して上空の敵艦を撃沈するのです!」
武装警察員達は意気投合により団結するものの…。
「折角だけど…今回は私達だけで敵陣を攻略させてよ…私は個人的にブラッドフォードに復讐したいの…」
アルセイスの発言に武装警察員達は猛反対する。
「俺達はレムリア解放軍の猛攻撃によって一方的に圧倒されたのです…奴等に仕返ししなければ!」
「民間人の役目は終了しました…レムリア解放軍は俺達が撃滅しますよ!」
「ストライダー本部長!即刻航空隊を再編制して…」
ストライダーは一息するなり…。
「俺はアルセイスを信頼する…精一杯ブラッドフォードに復讐しな…」
「ストライダー本部長…」
すると武装警察員達はストライダーに猛反発する。
「如何してなのですか!?ストライダー本部長!」
「俺達を信用出来ないのですか!?」
「奴等に猛反撃する絶好のチャンスですよ!即刻各部隊を再編制して…」
「好い加減にしろ!貴様達!」
ストライダーの怒号に一同は一瞬で沈黙したのである。
「貴様達が敵軍の親玉を仕留めたいのも理解出来るが…貴様達は陸地の残党達を殲滅…拘束せよ…奴等は非戦闘員を襲撃するかも知れないからな…貴様達は極悪非道のテロリスト達から全国民を防備せよ!」
「承知しました!ストライダー本部長!」
彼等は即刻退室するなり任務に没頭する。
「アルセイスと…相方は誰だっけ?」
「私は修道女のクリスティーヌです♪」
クリスティーヌは笑顔で名前を名乗る。
「クリスティーヌか…ブラッドフォードを仕留めよ…」
ウィズラエルは専用機用のスマートエントリーをアルセイスに手渡したのである。
「無事に戻れよ…アルセイス…クリスティーヌ…」
「勿論よ…」
アルセイスとクリスティーヌは地下壕から退室するなり滑走路の格納庫へと移動する。格納庫にはウィズラエルの専用機が確認出来る。
「新品だわ…ウィズラエル本部長の専用機ね…」
するとアルセイスは笑顔でクリスティーヌに専用機用のスマートエントリーを手渡したのである。
「スカイカーを運転出来るなら大丈夫よね♪クリスティーヌちゃん♪」
「アルセイス…」
クリスティーヌは苦笑いするなり…。
「承知したわ…」
彼女達は恐る恐るストライダーの専用機に乗機したのである。コックピットにはクリスティーヌ…。アルセイスは客席にてシートベルトする。
(こんな飛行機を操縦出来るなんてね♪)
クリスティーヌは内心ワクワクしたのである。数秒後…。専用機が滑走路へと高加速化するなり上空へと急上昇する。

最終話

大動乱時代
同時刻…。スカイベース艦内では突撃隊の悪戦苦闘に混乱したのである。
「ブラッドフォード総帥…突撃隊が武装警察隊の猛反撃で圧倒されました…武装警察隊総本部の滑走路を占拠したケルベロスも全機…機能停止状態です…」
「ルーヴェルハルト補佐官…」
アルバードの目力に戦慄する。
「突撃隊がこんな状態では武装警察隊総本部は陥落出来ませんな…」
全身をプルプルさせるなり…。
「最早ケラウノスで敵味方諸共ノースサイド全域を無人化させなければ…」
「ですがアルバード総帥…こんな状況下でケルベロスを使用すればノースサイドは勿論…スカイベース艦内も…」
ブラッドフォードは笑顔で発言する。
「心配しなくても大丈夫ですよ♪ルーヴェルハルト補佐官…本艦にはケラウノスを無力化させる特殊エネルギーシールド装置が搭載されたのです…」
スカイベースはケラウノスを無力化させる特殊エネルギーシールド装置の搭載により成層圏からケラウノスを照射したとしてもスカイベース艦内の人間にはケラウノスの影響は皆無である。
「私達は無事ですからね…」
ルーヴェルハルトは内心ホッとしたのか一安心する。すると地球上全域を観測出来るスーパーレーダーがピピッと反応したのである。
「ブラッドフォード総帥!スーパーレーダーが反応しました!」
通信兵の報告にブラッドフォードとルーヴェルハルトが反応する。
「何事ですか?」
「敵機です!本艦に急接近中です!」
「武装警察隊ですかね?」
ルーヴェルハルトは艦内のホログラムで確認したのである。
「非武装です…如何やら民間機かと…」
「民間機が単機でスカイベースに急接近するなんて…」
ブラッドフォードは困惑するものの…。
「早速ケルベロスを出撃させるのです!折角なので民間機が相手なら小型ケラウノス搭載型のケルベロスで迎撃させましょう♪」
スカイベースには超小型化されたケラウノス搭載型のケルベロスを数機搭載する。スカイベースの飛行甲板より四機のケルベロスが出撃したのである。同時刻…。
「えっ?何かしら?」
クリスティーヌは上空のスカイベースから四機の艦載機が出撃する場面を直視する。
「ひょっとして艦載機かしら?」
「ケルベロスだわ!」
四機の艦載機が専用機に殺到したのである。
「敵機ヲ確認…撃墜シマス…」
ケルベロスの底部に搭載された砲塔から虹色の発光体を射出する。
「敵機の砲撃だわ!」
クリスティーヌは即座に虹色の発光体を回避したのである。
「虹色の発光体だわ…一体何かしら?」
アルセイスは窓側から恐る恐る虹色の発光体を直視するなり…。
(虹色の発光体…)
「ひょっとしてケラウノス?」
「ケラウノスって…五月十七日事件の…」
彼女達は戦慄したのである。
「クリスティーヌちゃん!ケラウノスがコックピットに照射されたら絶体絶命よ!確実に回避して!」
「承知したわ!」
背後からもケラウノスを射出するものの…。クリスティーヌは着実にケラウノスの狙撃を回避したのである。すると四機のケルベロスが光学迷彩システムを作動させる。
(厄介だわ…透明化するなんて…)
クリスティーヌは防空用スペースレーダーで確認するものの…。ケルベロスは確認出来ない。
(畜生…ステルスモードなのね…)
「アルセイス?ケルベロスはステルスモードみたいなのよ…ケルベロスの居場所を察知出来ないかしら?」
アルセイスは困惑するものの…。両目を瞑目させる。
(風音を利用して…)
機内は密閉された状態であり風音を感じられない。
(畜生…風音が利用出来ないわ…私は如何すれば…)
アルセイスは混乱する。パニックによりポケットの抗精神病薬を服薬したいが手首がプルプルしたのか入手出来ない。
「アルセイス!?大丈夫なの!?」
「殺されちゃう…」
「えっ…」
彼女はパニック状態であり脳内が狂乱する。
「私達は…殺される…殺されるのよ…」
「如何しちゃったのよ!?アルセイス!?確りしてよ!」
クリスティーヌは精神的に可笑しくなったアルセイスに困惑したのである。するとコックピットの真正面より一機のケルベロスが光学迷彩システムを解除…。専用機に殺到したのである。
「きゃっ!敵機が!」
衝突するかと思いきや…。ケルベロスは底部に搭載された捕獲用のアンカーで専用機を鹵獲したのである。
「如何して?私達を殺さないの?」
クリスティーヌは混乱する。
「敵機ヲ鹵獲シマシタ…即刻母艦ニ連行シマス…」
専用機を鹵獲したケルベロスは専用機諸共スカイベースの飛行甲板へと着艦する。
(如何してケルベロスは私達を殺さなかったのかしら?)
クリスティーヌは疑問視したのである。無事に飛行甲板へと着艦したものの…。アルセイスは脳内が狂乱した状態でありクリスティーヌは嫌気を感じる。
(鬱陶しいわね…)
クリスティーヌは恐る恐る客席へと移動したのである。
「私達は殺される…私達は殺される…」
「アルセイス?」
アルセイスは無表情でクリスティーヌを凝視する。
「何よ…クリスティーヌちゃん?」
謝罪するなり…。
「御免なさい!」
クリスティーヌは力一杯彼女の腹部を殴打したのである。
「ぐっ!」
アルセイスはグッタリと横たわる。
「アルセイスを沈黙させないと私自身が可笑しくなりそうだわ…」
すると数秒後…。アルセイスは恐る恐る目覚める。
「私は…今迄何を?」
「平常心に戻ったかしら?」
アルセイスは挙動不審みたいにキョロキョロしたのである。
「アルセイス…あんたは人騒がせだね…」
「御免なさいね…クリスティーヌちゃん…私自身パニック状態だったのよ…本当に殺されるかと…」
「パニックなのは私も一緒よ…あんたは抗精神病薬でも服用しなさい…」
アルセイスは再度ペットボトルの飲料水と抗精神病薬を服用する。
「アルセイス…ブラッドフォードに復讐するのよね?」
「勿論よ…」
アルセイスは即答したのである。即座に刀剣を所持する。
「私も…アルセイスに協力するよ♪」
(大変だったけれども…アルセイスには大助かりだからね…)
クリスティーヌは護身用にレーザーライフルを所持したのである。彼女達は警戒するなり恐る恐る専用機の機内から脱出する。スカイベースの飛行甲板には人気は皆無であり専用機と四機のケルベロスのみが確認出来る。
「人気は感じられないわね…」
彼女達は甲板に設置されたハッチへと近寄る。
「艦内に潜入出来そうね…」
ハッチを作動させたのである。彼女達は恐る恐る艦内へと潜入する。不可解にも艦内では人気が感じられない。
「艦内でも人気が感じられないわ…」
同時刻…。スカイベースのブリッジでは総司令官のブラッドフォードが監視用ホログラムにて移動中のアルセイスとクリスティーヌを観察する。
「如何やら彼女達は無事艦内に潜入したみたいですね…」
ルーヴェルハルトはホログラムのクリスティーヌを直視するなり…。
「金髪の女性は…私が十年前にイーストサイドのシークレットエリアで見逃した女学生っぽいですね…」
ルーヴェルハルトがボソッと発言したのである。
「ですが如何してブラッドフォード総帥は民間機の撃墜を断念されたのですか?奴等を仕留める絶好のチャンスだったのでは?」
ブラッドフォードはルーヴェルハルトの質問に即答する。
「茶髪の女性は非戦闘員なのに…単独で大勢の戦友達を殺害しました…本来なら処刑するのが妥当ですが…彼女の屈強さなら戦力的にも百人力でしょう…何よりも…」
一息するなり…。
「彼女は原因不明の難病で死去した私の恋人に酷似するのです…」
「彼女が…ブラッドフォード総帥の恋人に酷似するのですか?」
ブラッドフォードの予想外の返答に驚愕する。十年前にブラッドフォードがアルセイスを実験体として利用したのは戦闘員の育成化は勿論であるが…。半永久的に若齢の肉体を維持させたかったのである。数秒後…。
「ブラッドフォード総帥!侵入者です!」
通信兵がビクビクした様子でブラッドフォードに報告したのである。するとブリッジの鉄扉から二人の女性が出現する。
「貴様達は!?」
七人の乗組員達はアルセイスとクリスティーヌを包囲したのである。
「雑魚が…」
アルセイスは目力によって威嚇する。
「ひっ!」
すると彼等はアルセイスの目力に圧倒されたのか一歩ずつ後退りしたのである。
「ブラッドフォード…」
アルセイスはブラッドフォードを睥睨するなり…。
「ブラッドフォード…私はあんたを…」
アルセイスは目力によりブラッドフォードに威嚇するものの…。ブラッドフォードは無表情の様子である。ブラッドフォードの様子にクリスティーヌは一瞬戦慄する。
「此奴は一体何者なの!?ブラッドフォードはロボットみたいだわ…」
クリスティーヌの失言にルーヴェルハルトはピリピリしたのである。
「貴様!ブラッドフォード総帥を侮辱するな!殺されたいか!?」
「ひゃっ!」
ルーヴェルハルトを直視したクリスティーヌは後退りする。
「えっ?ひょっとしてあんたは…イーストサイドの心霊スポットで遭遇した兵隊さんかしら?」
クリスティーヌはハッとしたのである。クリスティーヌの発言にルーヴェルハルトもピクッと反応する。
「貴様だったのか…十年前は人一倍意地汚い女学生っぽかったが…雰囲気が随分変化しやがったな…」
「誰が意地汚いよ!」
クリスティーヌはルーヴェルハルトの発言にムスッとしたのである。するとアルセイスは恐る恐るブラッドフォードに問い掛ける。
「ブラッドフォード…如何してあんたは無人機のケルベロスで私達を殺さなかったのよ?専用機諸共鹵獲するなんて…私達を殺せる絶好のチャンスだったのに…」
「鹵獲したのはスーパーレーダーで専用機の客室で貴女様を確認したからなのです…」
スーパーレーダーは有人機と無人機を識別出来るだけではなく内部のパイロットが何者なのかも正確に特定出来る。
「私が…」
「貴女様は誰よりも絶世の女神様を想念させる女性です…病死した私の恋人に酷似する…私は貴女様を殺したくない…」
ブラッドフォードはアルセイスを殺したくないと断言するものの彼女は無表情で…。
「あんたが私を殺したくなくても…私はブラッドフォード…あんたを殺したい…私のパパとママを殺したあんたを…」
ブラッドフォードは恐る恐る返答する。
「私が貴女様の両親を?」
「あんたが十年前にケラウノスでイーストサイドの人間達を死滅させたのよね?」
ルーヴェルハルトがピクッと反応したのである。
「貴様!?如何してケラウノスの存在を!?」
ケラウノスは事実上極秘でありケラウノスの存在を熟知するのはブラッドフォードとルーヴェルハルトは勿論…。関係者である上級兵士と武装警察隊の革命派のみである。ケラウノスの存在を熟知するアルセイスに驚愕する。
「誰が貴様に漏洩しやがった!?」
「武装警察隊の革命派の奴等から盗み聞きしたのよ…」
アルセイスは即答したのである。アルセイスは一息するなり…。
「結局は彼等も役立たずの手駒でしたね…」
するとブラッドフォードは窓側上空を直視する。
「本日でノースサイドの人間達は全滅…レムリア共和国の主導権は私が掌握して…レムリア王国は再興されるでしょう…」
「如何するのよ!?」
クリスティーヌはビクビクしたのである。
「無論ケラウノスを照射します…」
「ケラウノスなんて照射させたら…私達は勿論!あんた達だって…」
「極度の心配性ですね…スカイベースにはケラウノスを無力化させる特殊エネルギーシールド装置が搭載されたので本艦は大丈夫ですよ…」
「大丈夫なのね…」
クリスティーヌはホッとしたのか一安心する。するとアルセイスが恐る恐るブラッドフォードに再度問い掛けたのである。
「私を超人化させたのは…あんたなの?」
「何を質問するかと思いきや…」
ブラッドフォードは笑顔で即答する。
「勿論私ですよ♪イーストサイドの地下豪で気絶した貴女様を実験体として利用したのです…」
「地下豪って…墓場の?」
「無論です…墓場の地下豪は私達レムリア解放軍のシークレットベースだったのです…」
「シークレットベースですって!?イーストサイドの心霊スポットの正体はあんた達の実験場だったのね!」
クリスティーヌも反応したのである。
「シークレットベースで貴女様を実験体として利用しました…純血の魔女の血液で貴女様を不老長寿の肉体に変化させたのです…」
「魔女の血液?如何してアルセイスに魔女の血液なんかを?」
クリスティーヌの質問にアルセイスは即答する。
「不老長寿の戦闘員育成化プランですよ…今迄大勢の実験体を利用しましたが…実験体は全員が即死…純血の魔女の血液を注入された人間は肉体が破裂したのです…結局誰一人として適合出来なかった…」
「肉体が破裂って…」
ブラッドフォードの説明にクリスティーヌは気味悪くなる。
「アルセイスさん…彼女こそが唯一の成功例なのですよ…」
「私が唯一の…成功例?」
「アルセイスの外傷が数秒間で治癒するのは…魔女の血液が影響したのね…」
「ですが採血したアルセイスさんの血液でも不老長寿の戦闘員育成化プランは失敗したのです…」
「失敗ですって!?」
アルセイスは純血の魔女の血液と適合出来たものの…。アルセイスの血液を各戦闘員に注入するものの全員の肉体が破裂したのである。結果的に不老長寿の戦闘員育成化プランは白紙化される。
「結果的に不老長寿の戦闘員育成化プランは断念しました…」
「あんたは今迄何人の人間を実験体に利用したのよ…残虐非道だわ…」
アルセイスに残虐非道と発言されたものの…。ブラッドフォードは無表情で返答する。
「私がレムリア共和国の主導権を掌握するには必要不可欠でしたからね…結果的に断念しましたが…」
アルセイスは一息するなり…。
「最後の質問だけどね…あんたは如何して私達の故郷…イーストサイドにケラウノスを照射したのよ…あんたのケラウノスで私達のパパとママは…」
ブラッドフォードは無表情で返答する。
「イーストサイドの海底下には大量のエターナルメタルが採掘出来ますし…大量の新型兵器を製造出来る製造所も入手出来ますからね…」
ブラッドフォードにとってイーストサイドの占拠は一石二鳥だったのである。
「私達にとってイーストサイドは宝島でしたからね…ノーダメージで攻略したかったのですよ…ですが何よりも…」
「何よ?」
無表情だったブラッドフォードの表情が険悪化する。
「イーストサイドには…私の大嫌いな富裕層の密集地でしたらかね!彼等によって大勢の貧困者達が続出したのです!」
「富裕層が大嫌いって…あんたなんて世界一の大富豪でしょう?」
アルセイスに反論されたブラッドフォードであるが…。
「私は世界一の大富豪だからこそ堕落したレムリア共和国の主導権を掌握したいのです!私がレムリア共和国の主導権を掌握出来れば全国民に最低限の生活を保障しますよ…」
ブラッドフォードは断言したのである。
「パパとママ達を虐殺した殺人鬼の分際で…何が全国民の生活を保障するよ…所詮世界一富裕層のあんたは武力と財力でレムリア共和国の主導権を掌握したいだけよ!」
ルーヴェルハルトはアルセイスの発言に苛立つなり…。
「小娘が!ブラッドフォード総帥に侮辱するとは!」
「ルーヴェルハルト補佐官…平常心ですよ…」
ブラッドフォードはピリピリするルーヴェルハルトを制止させる。
「ですがブラッドフォード総帥…」
するとブラッドフォードは軍服のポケットからリモートコントローラーを入手したのである。
「面談会は終了しました…早速ケラウノスを作動させますかね…」
(ケラウノスを!?)
戦慄したアルセイスは即座に超音速でブラッドフォードの背後へと移動するなり…。
「ケラウノスは作動させないわよ!」
ブラッドフォードの背中をバッサリと斬撃したのである。
「ブラッドフォード総帥!?貴様!」
ルーヴェルハルトはアルセイスに狙撃する直前…。アルセイスは即座にクリスティーヌの佇立する位置へと戻ったのである。
「アルセイス!?大丈夫!?」
心配するクリスティーヌにアルセイスは返答する。
「大丈夫よ…クリスティーヌちゃん…」
背後から斬撃されたブラッドフォードはガクッとするものの…。ブラッドフォードの表情は無表情であり佇立した状態で身動きしなくなる。ブラッドフォードの不自然さにクリスティーヌは気味悪がる。
「斬撃されたのに…如何してブラッドフォードは何も反応しないのよ?」
「私にも何が何やらサッパリだけどね…手応えは感じられなかったわ…」
刀剣を直視すると流血は皆無である。
「ブラッドフォードは一体何者なのよ…本当に人間なの!?」
すると背中を斬撃されたブラッドフォードは無表情でアルセイスを凝視する。
「誰であっても私は殺せません…魔女の血液と適合出来たアルセイスさんでも…」
ブラッドフォードの右腕から蛍光色の発光体が照射されたのである。
「クリスティーヌちゃん!」
アルセイスはクリスティーヌに接触…。超音速でクリスティーヌと一緒に左側へと移動したのである。
「狙撃を回避しましたか…」
彼女達はブラッドフォードの右腕を直視するなり驚愕する。
「義手かしら?」
「ブラッドフォードの正体って…本当にロボットだったの!?」
ブラッドフォードは無表情で即答したのである。
「ロボットデスト?私ハ…サイボーグ…最早生身ノ肉体ハ脳細胞ノミデスヨ…」
ブラッドフォードの正体とは全身がエターナルメタルで製造された正真正銘サイボーグの肉体であり体内には最新式の超小型スーパーリアクターを内蔵する。
「サイボーグね…あんたが流血しなかったのも納得だわ…」
(ブラッドフォードが誰にも殺せないって理由は…彼自身がサイボーグだったからね…用意周到ね…)
アルセイスはブラッドフォードが誰にも殺せない理由を熟知する。するとクリスティーヌがプルプルするなり…。
(相手がサイボーグなら…ヘタレの私でも!)
彼女はレーザーライフルでブラッドフォードを狙撃したのである。蛍光色の発光体がブラッドフォードに直撃…。ブラッドフォードの人工性の皮膚を燃焼させられたが本体であるエターナルメタルのエンドスケルトンはノーダメージだったのである。
「畜生…本体はビクともしないのね…」
「私ハ不老不死ノ肉体デスカラ…レーザーライフルハ通用シマセン…」
右腕の砲口に高エネルギーを収縮させる。
「同行者ハ不必要デス…同行者デアル貴女ハ即刻死滅シナサイ…」
「えっ…」
内蔵されたレーザーキャノンでクリスティーヌに狙撃する寸前…。
「クリスティーヌちゃん!」
アルセイスが即座にクリスティーヌの真正面へと移動したのである。ブラッドフォードのレーザーキャノンを刀剣でガードするものの…。ブラッドフォードに内蔵されたレーザーキャノンはジャガーノートに匹敵する威力でありアルセイスとクリスティーヌは背後の鉄壁にて吹っ飛ばされたのである。
「きゃっ!」
「ぐっ!」
彼女達は衝撃波により横たわる。アルセイスは負傷するものの…。即座に治癒したのである。
「クリスティーヌちゃん!?」
「彼女ハ気絶シマシタカ…」
クリスティーヌは衝撃波により気絶した状態であり口先から吐血する。
(気絶したのね…)
するとブラッドフォードが横たわる彼女達に近寄る。彼が移動するとガシャンガシャンと機械音が響き渡る。
(クリスティーヌちゃんが殺される!)
アルセイスでもサイボーグのブラッドフォードを相手に徹底抗戦は非常に困難である。力一杯クリスティーヌを背負った状態からブリッジから逃走する。ブリッジから無事脱出するものの…。クリスティーヌを背負ってからの逃走は非常に困難だったのである。艦内通用口のハッチへと到達するものの…。艦内のハッチはロックされた状態であり脱出出来なくなる。
「如何してロックされたのよ!?」
(畜生…如何すれば…)
クリスティーヌの装備品であるレーザーライフルで艦内のハッチを狙撃するもハッチはビクともしない。
「エターナルメタルかしら…レーザーライフルではビクともしないわ…」
すると背後よりガシャンガシャンと機械音が響き渡る。アルセイスは恐る恐る背後を警戒するなり…。
(ブラッドフォードだわ…)
「アルセイスサン…鬼ゴッコハ終了シマシタ…」
アルセイスは一歩ずつ後退りする。するとハッとしたのである。
「ン?」
アルセイスはポケットからサイバーライフルを入手する。
「玩具ノショットガンデスカ…私ノ装甲ハエターナルメタルナノデス…私ニ玩具ノショットガンハ通用シマセンヨ…」
余裕のブラッドフォードであるがアルセイスは無表情で…。
「ショットガンはショットガンでも…サイバーライフルなら如何かしら?」
サイバーライフルの銃口をブラッドフォードの胸部中心部に接触させる。
「サイバーライフルデスト?」
「一か八か…」
アルセイスは恐る恐るサイバーライフルを作動させたのである。するとブラッドフォードの体内の全機能が停止…。身動き出来なくなる。
「グッ!全身ガ…身動キ出来ナクナルナンテ…」
アルセイスは内心ホッとする。
「サイバーライフルは武装警察隊が開発したドローンをスリープ出来るアイテムらしいけど…サイボーグであるブラッドフォードにも通用したみたいね…」
サイボーグのブラッドフォードは不老不死の肉体であるものの…。機械類を無力化させるサイバーライフルは想定外であり体内の全機能をスリープモードに強制させられたのである。
「思う存分あんたを殺せないのが残念だわ…」
するとブラッドフォードの背後よりスタスタと何者かが近寄る。
「えっ?誰かしら?」
「ブラッドフォード総帥…」
ブラッドフォードの背後の人物とは補佐官のルーヴェルハルトである。
「誰カト思イキヤ…ルーヴェルハルト補佐官デシタカ…ルーヴェルハルト補佐官…即刻アルセイスサント同行者ノクリスティーヌヲ拘束スルノデス…私ノ体内ノシステムガ故障シマシタ…即刻整備員ヲ…」
するとルーヴェルハルトの表情が豹変する。
「鬱陶しい…」
「ナッ!?」
豹変したルーヴェルハルトの発言にブラッドフォードは勿論…。アルセイスも驚愕する。
「如何してよ…」
「ルーヴェルハルト補佐官…一体如何サレタノデスカ?冗談デスヨネ?」
動揺するブラッドフォードに失笑したのである。
「俺は誰よりも…ブラッドフォード…あんたを殺したかった!何が王族の末裔だよ!所詮あんたの主目的である王政復古なんて…夢物語だからな♪俺があんたの野望を粉砕するから覚悟しろ…」
ルーヴェルハルトの発言にピクッと反応する。
「ルーヴェルハルト補佐官…ルーヴェルハルト…貴様!」
「本日より俺があんたのレムリア解放軍を牛耳るからよ♪安心しろ…」
「一体何が?如何して仲間内で内輪揉めを…」
アルセイスは混乱したのである。
「ブラッドフォード…あんたはエターナルメタルの完全無欠のサイボーグだが…」
ブラッドフォードはポケットからハンドガンらしきアイテムを入手したのである。
「貴様!?」
ブラッドフォードはルーヴェルハルトのアイテムを直視するなり戦慄する。
「携帯式の超小型ケラウノスだよ♪あんたの脳味噌を狙撃すればサイボーグのあんたでも確実に殺せる…」
ルーヴェルハルトのアイテムは超小型化された携帯式のケラウノスである。
「貴様…恩人ノ私ヲ裏切ルノカ…」
「金蔓が…何が恩人だよ!」
ブラッドフォードにとって補佐官であるルーヴェルハルトはブラッドフォードの右腕であり軍内部では誰よりも信頼出来る側近であったが…。ルーヴェルハルトの本性に愕然とする。ルーヴェルハルトはケラウノスの銃口をブラッドフォードの後頭部に密着させたのである。
「アルセイス…死にたくなかったら回避しろ…」
アルセイスは即座に左側へと移動する。
「死滅しろ…ブラッドフォード総帥…」
「ルーヴェルハルト!貴様!」
ルーヴェルハルトは携帯式のケラウノスを作動させたのである。するとケラウノスの銃口から虹色の発光体が射出される。虹色の発光体はブラッドフォードの後頭部を貫通…。ブラッドフォードの頭部からドロドロと血液が流血する。
「ブラッドフォードは?」
アルセイスは恐る恐るブラッドフォードの頭部にコンッと接触したのである。
「安心しろ…ブラッドフォードはケラウノスで即死したよ…」
「あんたは…如何して恩人のブラッドフォードを裏切ったのよ?ブラッドフォードは極悪非道だけど…あんた達の恩人でしょう?」
アルセイスはルーヴェルハルトに問い掛ける。
「本来私はブラッドフォードに忠誠心なんて皆無だからな…私は私自身でレムリア共和国を牛耳る…」
ルーヴェルハルトの主目的とはレムリア共和国の主導権掌握でありブラッドフォードの存在は目の上のたん瘤であり目障りだったのである。ルーヴェルハルトは微笑むなりアルセイスに一礼する。
「貴様には感謝するよ♪アルセイス♪あんたがサイバーライフルを使用しなければブラッドフォードは殺せなかったからな…」
アルセイスは無表情で…。
「勘違いしないでよね!本来私がブラッドフォードに復讐したかったのに…」
ルーヴェルハルトは笑顔で質問する。
「ツンデレみたいだな…アルセイスちゃんよ♪表向きはブラッドフォードの協力者である俺にも復讐したいか?」
アルセイスは困惑するものの…。
「本来私達のターゲットはブラッドフォードだけよ…勿論あんたが私とクリスティーヌちゃんに手出しするなら手加減しないけどね…」
「あんたは本当に十年前とは別人だな…」
「十年前ですって?」
「シークレットベース…イーストサイドの墓場の地下壕であんたを気絶させたのは俺だよ…」
アルセイスはハッと反応したのである。
「あんただったのね…」
シークレットベースでの出来事を想起する。
「あんたが地下壕で遭遇した兵隊さんだったとはね…」
「奇遇だな♪」
するとルーヴェルハルトの表情が険悪化するなり…。
「アルセイスよ…あんたの本当の復讐相手は…ハイドマンだよ…」
「ハイドマンですって?誰なのよ?」
アルセイスは混乱したのである。
「ハイドマンって名前は通称名だからな…レムリア共和国武装警察隊総本部のストライダーだよ…」
「ストライダーって…ストライダー本部長!?」
ルーヴェルハルトは即答する。
「勿論…」
「ストライダー本部長が…私の復讐相手ですって?」
アルセイスはポカンとした反応であり理解出来ない。
「突然だから信用出来ないかも知れないが…レムリア解放軍に大量の新型兵器を提供したのは彼だよ…」
「如何してストライダー本部長があんた達に高額の新型兵器を提供するのよ!?」
「ストライダーはレムリア共和国武装警察隊総本部の総司令官であり…極悪非道の武器商人だからな…如何して彼が私達に高性能型の新兵器を大量に提供したのかは不明だが…」
「不明なのね…」
「ストライダーとの密約だからな…事実を熟知したければストライダー本人に接触するのが得策だよ…」
アルセイスは本当なのか如何なのかを確認したくなる。
「艦内から脱出したければ脱出しろ…」
「大丈夫なの?背後から狙撃しないでよ…」
アルセイスは非常に不安がる。
「俺を信用しろ…あんたはブラッドフォード暗殺の協力者だからな♪ケラウノスも作戦中のケルベロスもスリープさせたから安心しろ…」
ブラッドフォードが逃走中のアルセイスを追撃中に艦内の制御用メインコントローラーをシャットダウン…。成層圏のケラウノスとレムリア共和国上空作戦中のケルベロスとジャガーノートをスリープさせる。
「精一杯頑張れよ…アルセイス…」
ルーヴェルハルトはブリッジへと戻ったのである。すると数秒後…。気絶したクリスティーヌがピクッと目覚める。
「えっ?私は一体何を?」
「クリスティーヌちゃん?大丈夫?」
「アルセイス?」
クリスティーヌはハッとするなり…。
「ブラッドフォードは!?」
通路の中心部に佇立するブラッドフォードのエンドスケルトンを直視するなり戦慄したのである。
「きゃっ!」
「クリスティーヌちゃん…大丈夫よ…ブラッドフォードは殺されたの…」
「殺されたって?誰に?」
「彼を殺したのはルーヴェルハルト補佐官よ…」
アルセイスは先程の出来事を一部始終クリスティーヌに告白する。
「ルーヴェルハルト補佐官がね…ストライダー本部長がブラッドフォードに大量の新兵器を提供したなんて本当なの?」
「彼に確認したいの…クリスティーヌちゃん!即刻武装警察隊総本部に戻りましょう!」
「承知したわ…」
彼女達は艦内から脱出するなりスカイベースの飛行甲板に着陸したストライダー専用機で武装警察隊総本部へと戻ったのである。数分後…。ストライダー専用機は無事に武装警察隊総本部の滑走路へと着陸したのである。
「無事に戻れたわね…」
「アルセイス?如何するの?」
「クリスティーヌちゃん…ストライダー本部長とは私が一人で対面するわ…場合によってはストライダー本部長を…」
「アルセイス…」
不本意であるものの…。承諾する。
「無事解決したら…エントランスで合流しましょう…」
「承知したわ…」
アルセイスは覚悟するなり…。恐る恐る武装警察隊総本部へと潜入する。不自然にも室内は沈黙した状態であり人気は感じられない。
「人気が感じられないわ…」
総司令部へと到達する。アルセイスは鉄扉をノックするなり恐る恐る入室したのである。室内の中心部にはストライダーが佇立する。
「アルセイスだったか!」
ストライダーは笑顔で出迎える。
「無事に戻れたみたいだな♪念願のブラッドフォードには復讐出来たのか?」
ストライダーは笑顔で出迎えるものの…。アルセイスは無表情でありストライダーは困惑する。
「不機嫌そうだな…アルセイス…大丈夫か?」
「ストライダー本部長…」
無表情だったアルセイスの表情が険悪化するなり…。恐る恐るストライダーに問い掛ける。
「ストライダー本部長が武器商人で…ブラッドフォードに大量の新型兵器を提供したのは本当ですか?」
するとストライダーはピクッと反応したのである。
「突然何を!?俺がテロリストのブラッドフォードに新型兵器を提供するなんて…アルセイスは冗談が稚拙だな♪」
ストライダーは必死に誤魔化したものの…。アルセイスに誤魔化しは通用しない。アルセイスはジーッとストライダーを睥睨する。
「畜生が…」
(此奴には誤魔化しは通用しないな…)
ストライダーは白状したのである。
「俺だよ…俺がレムリア解放軍に大量の新型兵器を提供したのさ…」
「本当に売国奴だったのね…如何してあんたはテログループなんかに!?」
ストライダーは無表情で…。
「俺は武装警察隊総本部を見限ったのさ…」
「見限ったって…」
「レムリア共和国を牛耳る武装警察隊総本部の奴等は誰しもが無能で無責任…汚職は無論…総本部の首脳陣はこんな奴等ばかりだからな…俺も出来るなら自力で改善させたかったが…ぐっ!」
「ストライダー本部長!?」
するとストライダーは吐血したのである。
「俺は幼少期から…病弱だからな…何方にせよ長生きは出来ない…」
ストライダーの表情が険悪化する。
「俺は自国内の軍需産業は勿論…多種多様の海外の軍需産業と密談して…自国内だけでは開発出来ない近未来型の新型兵器を製造して…必要悪であるレムリア解放軍に大量の新型兵器を提供したのさ…」
「ひょっとしてケラウノスも?」
ストライダーは即答したのである。
「勿論だ…戦略兵器であるケラウノスでイーストサイドに照射させたのも提案者は俺だからな…イーストサイドは武装警察隊の兵器製造所であり…何よりも大量のエターナルメタルが採掘出来るからな…」
「結局あんたはブラッドフォードのスパイだったの?」
「武装警察隊の奴等にとってはスパイっぽいな…レムリア解放軍の主導権掌握に協力したのは事実だからな…」
一息するなり…。
「何よりも国民達も総本部の奴等と同様に無能で無責任…弱者への差別は常識化…殺されて当然だろ…」
ストライダーはレムリア共和国の人間達に憎悪する。大勢の人間達に不幸を拡散させたかったのである。
「所詮あんたもブラッドフォードと一緒ね…異端者だわ…」
「俺が異端者ね…如何するアルセイスちゃんよ?俺に復讐したいか?俺を打っ殺したければ思う存分打っ殺せよ…所詮俺は長生きしたくても長生き出来ない肉体だからな…」
アルセイスは反論する。
「何が復讐よ…あんたみたいな病弱の売国奴に復讐したって無益だわ…衰弱死するのね…」
すると突然…。ストライダーの通信機がピピッと反応したのである。
「ん?」
「何かしら?」
通信機を作動させるとホログラムが映写される。
「大胆不敵だな…」
「何よ…」
ストライダーは勿論…。アルセイスもゾッとする。ホログラムに映写されたのはレムリア解放軍の敵兵であり左手には殺害したルーヴェルハルトの生首を見せびらかしたのである。
「ルーヴェルハルト…補佐員だわ…」
「レムリア解放軍のサブリーダーが殺されちまったか…」
ホログラムの敵兵が発言する。
「俺達の金蔓を殺しやがって!金蔓が殺されちまったのは残念だったが…俺達は新政府軍を組織した!金輪際俺達新政府軍がレムリア共和国を牛耳るからよ♪覚悟しろよ♪愚民達…」
プチッと配信が遮断されたのである。
「何が新政府軍よ…」
「如何やらレムリア解放軍も総崩れらしいな…武装警察隊も分裂状態…結果的に両陣営とも共倒れしちまったか…」
「分裂ですって…」
最早レムリア共和国は内戦の泥沼化によって無政府化した状態であり各区域内では暴徒化した無数のテログループが衝突…。殺し合ったのである。レムリア共和国全域が弱肉強食の大動乱時代へと突入する。
「最早レムリア共和国全域が暴徒化しちまったからな…こんなにも泥沼化した状態では武装警察隊でも鎮圧出来ない…」
アルセイスは抜刀したのである。
「レムリア共和国全域が暴徒化しちゃったから何よ?愚民達が私達に手出しするなら…私は猛反撃するから…」
ストライダーはニヤリと微笑むなり…。
「今現在のアルセイスだったら…大丈夫かも知れないな♪」
するとストライダーは恐る恐る軍服のポケットから護身用のハンドガンを所持したのである。
「ハンドガンかしら?」
「アルセイス…精一杯長生きしろよ…」
アルセイスは即答する。
「勿論よ…」
アルセイスは総司令部から退室したのである。すると数秒後…。バンッとハンドガンの実弾による銃声が響き渡る。
「ストライダー本部長…」
アルセイスは沈黙した様子でありエントランスにてクリスティーヌと無事再合流したのである。
「アルセイス!?」
「クリスティーヌちゃん…」
クリスティーヌは恐る恐る…。
「ストライダー本部長は?」
クリスティーヌに問い掛けられたアルセイスは無表情で即答する。
「私が殺したわ…」
「本当に復讐したのね…」
(ストライダー本部長は自殺だけどね…)
アルセイスは険悪化した表情で発言したのである。
「クリスティーヌちゃん…最早国全体の内戦が泥沼化しちゃったみたい…」
「泥沼化ですって?」
「レムリア共和国は無政府化しちゃったのよ…国内全域が主戦場なのよ…」
「無政府化って…レムリア共和国の全国民が敵対者って意味なのよね…」
普段の彼女であれば人一倍絶望視するものの…。クリスティーヌは平常心だったのである。アルセイスは断言する。
「クリスティーヌちゃん…今後は大変かも知れないけれど…私達でレムリア共和国を再復興させましょう…」
クリスティーヌは一息するなり…。
「アルセイス…こんな私でもあんたと一緒だったら大丈夫かも知れないわ♪勿論私も精一杯協力するからね!」
クリスティーヌは笑顔で断言したのである。
「感謝するわね…クリスティーヌちゃん♪」
彼女達は一致団結…。前代未聞の大動乱時代へと突入したレムリア共和国の再復興を決意したのである。
完結
メンテ
メガラニカ大事変 ( No.94 )
日時: 2021/09/16 17:32
名前: 月影桜花姫

第一話

開戦

世界最終戦争終戦後の出来事である。世界最終戦争唯一の戦勝国『太平帝国』は戦前でこそ小規模国家であったが世界最終戦争の快進撃から勢力を拡大化…。終戦後は超大国としての地位と資源を牛耳ったのである。世界最終戦争の大勝利によって全世界の秩序と覇権を獲得した太平帝国であるが…。太平帝国の圧政に反対する一部の国連軍残存勢力と各地の反政府勢力が大南海に位置する孤島にて合流したのである。彼等によって大南海の孤島は自治領『メガラニカ自由区』と命名され覇権国家である太平帝国の支配圏から逃亡した移民者達が亡命…。メガラニカ自由区樹立から一年が経過すると領内の総人口は推計五十万人規模に増大化したのである。メガラニカ自由区の勢力拡大を危惧した太平帝国は世界暦五百二十二年七月十六日に宣戦布告…。翌日の七月十七日には大規模艦隊を派遣させ南方のメガラニカ自由区本土を攻撃目標に直進したのである。太平帝国海軍主力艦隊旗艦…。戦闘航空母艦セイバードラゴンには太平帝国国家元首であり総軍の最高指導者である大総統【ブラッドフォード】が総司令官として乗艦する。
「大総統!徹底的にメガラニカ自由区を撃滅しましょう!」
「当然だ【ルーヴェルハルト】…新世界の統治国である太平帝国に反抗するのが最大の愚行であるか…奴等には徹底的に理解させなければ…」
ルーヴェルハルトは副総統であり大総統のブラッドフォードにとって最高の右腕である。今回は旗艦セイバードラゴンの副艦長として抜擢される。今回のメガラニカ自由区本土攻略作戦ではセイバードラゴン級大型戦闘航空母艦が五隻投入され…。護衛艦隊にはミサイル巡洋艦十六隻…。二十四隻の防空駆逐艦が出撃する。補助用の魚雷艇二十九隻と八百人以上の上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦十七隻が後方にて航行したのである。
「メガラニカ自由区の領海へは推定二時間で到達する予定です…」
「全軍を警戒態勢に移行させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは通信機にて各艦の乗組員達に警戒態勢を指示する。
「全軍…警戒態勢に移行せよ…」
すると各艦隊の戦闘要員達は戦闘配置に移動したのである。戦闘要員達が戦闘配置に移動してより三分後…。旗艦セイバードラゴンの艦橋に設置された最新型スーパーレーダーが反応したのである。
「本艦のスーパーレーダーが反応しました!」
スーパーレーダーは太平帝国海軍が開発した最新式の電波探知機であり地球全体を正確に索敵出来る。太平帝国軍では艦艇のみならず艦載機にも搭載され今現在太平帝国海軍と互角に交戦出来る国家は存在しない。
「何事だ?」
ブラッドフォードは偵察員に問い掛ける。
「南方…三百キロメートルの遠海より艦隊らしき艦影を無数確認…総数は推計四十隻程度です…」
スーパーレーダーには推計四十個もの光点が点滅したのである。
「ステルス機能を搭載させた艦艇か…」
すると直後…。
「無数の飛翔体が味方艦隊に接近中です!」
四十個の対象物である光点から数百個もの微小の光点が超音速で飛来するのを確認する。
「此奴は対艦ミサイル攻撃だ…迎撃態勢に移行しろ!」
ブラッドフォードは即座に迎撃を命令したのである。数秒後…。二十キロメートルの長距離より数百発もの飛翔体が味方艦隊に接近するのを確認する。
「各艦艇!飛翔体を迎撃せよ!」
各艦艇の迎撃システムが作動したのである。近年太平帝国海軍の各艦艇には対空戦闘用に開発された小型の全自動型パルスレーザー対空砲を設置…。超音速で飛来するミサイル迎撃に期待されたのである。数秒後各艦のパルスレーザー対空砲が炸裂…。蛍光色の光弾が各艦に接近する大型対艦ミサイルを迎撃したのである。全自動化によって大型対艦ミサイルは全弾迎撃…。敵艦から発射された大型対艦ミサイルは味方艦隊には一発も命中しなかったのである。通信兵が即座に報告する。
「通信です…敵軍の大型対艦ミサイルは全弾迎撃されました!味方艦隊への損害は皆無です!」
「最先端の科学技術の結晶である太平帝国海軍に旧型の対艦ミサイルで攻撃するとは…奴等は時代錯誤ですな♪」
ルーヴェルハルトは笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…所詮奴等は烏合の衆だ…」
総司令官のブラッドフォードも勝利を確信する。太平帝国軍の大艦隊はメガラニカ自由区近海へと直進したのである。十数分後…。メガラニカ自由区の防衛艦隊と遭遇したのである。ルーヴェルハルトはブリッジ正面の窓側にて恐る恐る双眼鏡を所持…。真正面の敵軍の中規模艦隊を確認する。
「大総統…敵軍の防衛艦隊です…」
メガラニカ自由区の防衛艦隊はミサイル巡洋艦八隻…。十九隻のミサイル駆逐艦と三十二隻の魚雷艇が確認出来る。
「中規模艦隊か…総攻撃せよ…」
ブラッドフォードは即刻中規模艦隊に対する総攻撃を指示…。各艦の大型対艦ミサイルと機関砲が炸裂する。太平帝国軍の先制攻撃によりメガラニカ防衛艦隊は二隻の大型ミサイル巡洋艦と六隻のミサイル駆逐艦が大型対艦ミサイルで撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。海面上には九百人以上の乗組員達が吹っ飛ばされる。
「味方艦隊の圧倒的優勢です!」
旗艦セイバードラゴンのブリッジでは乗組員達が沈没する敵艦を眺望する。
「太平帝国軍の圧勝は確実だな…」
「奴等は腐敗した国民主権勢力の残党だ…所詮メガラニカ自由区なんて…」
乗組員達は太平帝国軍の優勢に安堵したのである。同時刻…。メガラニカ自由区防衛艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦リトルヴィーナス艦内では味方艦隊の劣勢に騒然とする。
「多勢に無勢だ…こんな状態では防衛艦隊は全滅するぞ!」
「畜生…防衛艦隊が全滅すれば…太平帝国軍の本土上陸も時間の問題だ…」
乗組員達は騒然とするのだが…。艦長の【ウィンフィールド】は沈黙した様子であり冷静だったのである。乗組員の一人が恐る恐る…。
「ウィンフィールド艦長…如何されましょうか?こんなにも劣勢では味方の防衛艦隊は全滅しますよ…」
「狼狽えるな…」
ウィンフィールドは騒然とする周囲の乗組員達を制止させる。
「ですが艦長…今現在の戦況はメガラニカ防衛軍が圧倒的に不利ですよ…」
ウィンフィールドは沈黙した様子で腕時計を確認する。
「時間だな…」
周囲の乗組員達はハッとした表情で…。
「えっ…何が時間なのですか!?」
一人の乗組員が恐る恐るウィンフィールドに問い掛ける。
「作戦を開始する…」
ウィンフィールドは通信兵を直視するなり…。
「通信兵…即刻独立機動部隊に通信させるのだ…出撃の命令を…」
「はっ!」
周囲の者達はポカンとする。
「一体何を開始するのか?」
同時刻…。メガラニカ自由区西方地帯の軍港にて三隻の中型空母が出撃したのである。中型空母にはとある新型兵器が多数搭載される。西方地帯から独立機動部隊が出撃を開始してより五分後…。メガラニカ自由区南方地帯の防衛艦隊は壊滅状態であり撤退を余儀無くされる。壊滅寸前の防衛艦隊の光景に太平帝国軍総司令官のブラッドフォードは航空部隊の出撃を命令する。
「航空部隊を出撃させろ…メガラニカ自由区の南方地帯全域を空爆せよ…場合によっては非戦闘員への攻撃も許可する…徹底的に奴等を蹴散らせるのだ…」
「はっ!」
ブラッドフォードが命令すると五隻の大型戦闘航空母艦から推計三百機もの戦闘爆撃機が出撃したのである。航空部隊はメガラニカ自由区の南方地帯領空へと進入…。地上への空爆を開始したのである。南方地帯を防衛する地上部隊は必死に太平帝国軍の航空部隊を迎撃するも…。相手は超音速で飛行する戦闘爆撃機であり対空砲は通用せず対空ミサイルで攻撃しても機体に搭載されたパルスレーザーで簡単に無力化されたのである。攻撃開始から三分間が経過すると南方地帯の地上部隊は九割が壊滅…。数千人もの民間人が死傷したのである。旗艦セイバードラゴンではブリッジの乗組員達がモニターで戦況の映像を注視する。
「大総統♪太平帝国軍の圧倒的優勢です♪南方地帯の守備隊は壊滅状態ですよ…」
副艦長のルーヴェルハルトが笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…」
ブラッドフォードは現状であれば上陸作戦が可能であると判断…。
「敵軍は相当疲弊した状態だ…味方の上陸部隊に伝播させろ!」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは即座に各輸送艦に伝達する。上陸作戦を開始する直前…。スーパーレーダーが反応したのである。
「スーパーレーダーが反応しました!」
特殊無線技士がブラッドフォードに報告する。
「今度は何事だ!?」
ブラッドフォードが特殊無線技士に問い掛ける。
「西方の海域より無数の移動物体が出現…超音速で此方に急接近中です…」
「移動物体だと?敵機か?」
ブラッドフォードはモニターを作動させる。するとモニターの画面には無数の飛行物体が映写される。
「此奴は…」
飛行物体は軍用機の形状だが従来型の航空機とは異質的であり新型機であると認識する。
「大総統…敵軍の新型機でしょうか?」
「ひょっとすると無人兵器の戦闘用ドローンかも知れないな…」
「戦闘用ドローンですと?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「敵部隊の航空攻撃に警戒せよ…再度迎撃態勢に移行しろ…作戦中の航空部隊にもドローンの迎撃を急行させるのだ…」
「承知しました…大総統…」
戦闘艦隊と各輸送艦隊は上陸作戦を一時中止させ対空戦闘に移行する。数百機ものドローンが肉眼でも視認出来る位置へと到達…。
「大総統…敵軍のドローンです…」
「ドローンを撃墜せよ!味方艦隊には接近させるな!」
ブラッドフォードの命令と同時に各艦艇は対空戦闘を開始する。対空ミサイルと対空パルスレーザーが西方の上空にて炸裂したのである。対空パルスレーザーがドローンに直撃するのだが…。ドローンの機体内部には高エネルギー兵器を無力化する電磁防壁発生装置により対空パルスレーザーが無力化されたのである。旗艦セイバードラゴンのブリッジでは双眼鏡で副艦長のルーヴェルハルトが上空を直視する。
「なっ!?シールドでしょうか!?」
「シールドだと?」
「ドローンは高エネルギーのシールドで対空パルスレーザーを無力化しました…ひょっとして奴等…」
「電磁防壁だな…ドローンの機体に光学兵器を無力化するシールド装置を装備したのだな…」
電磁防壁発生装置とは高エネルギー兵器を無力化する補助装置である。近年では太平帝国軍にも同類の補助装置は保有するものの…。艦船用の大型装置であり小型航空機に搭載出来る小型の装置は開発中である。
「如何やら奴等…電磁防壁発生装置の小型化に成功したみたいだな…」
ドローン関連の科学技術ではメガラニカ自由区が太平帝国よりも数段階上回る。人員不足であり少数精鋭のメガラニカ防衛軍にとって無人兵器のドローンは最大の戦力であり戦闘に特化されたドローン兵器が多数開発される。一方の太平帝国軍にもドローン兵器は多数配備されるものの…。基本的に偵察用の警戒型ドローンであり戦闘に特化された戦闘用ドローンは試作機のみである。
「艦長…上空より敵機が接近中です!」
対空パルスレーザーの弾幕が太平帝国軍の艦隊周囲に炸裂するのだが…。ドローンは機体のシールド装置でパルスレーザーを潜り抜け味方艦隊の上空間近へと到達する。ドローンは即座に低空飛行…。高速航空魚雷を投下したのである。副艦長のルーヴェルハルトはドローンの高速航空魚雷を投下した瞬間を直視する。
「大総統!敵機は航空魚雷を投下しました…」
「航空魚雷だと?大昔の大戦か?」
本来パルスレーザーはミサイルやら敵機の迎撃を想定して開発された高エネルギー兵器であり水中の魚雷を迎撃するのは不可能である。
「大昔の大戦だな…」
太平帝国軍では魚雷は潜水艦と魚雷艇のみ搭載…。今現在航空魚雷は皆無である。
「艦長!右舷より魚雷が接近中です!」
特殊無線技士が報告する。
「即刻回避だ!」
ブラッドフォードは即座に回避を指示したのである。乗組員達の迅速の対応により旗艦セイバードラゴンは敵機の魚雷攻撃を回避する。旗艦セイバードラゴンの乗組員達はホッとするも…。直後である。対空戦闘中の一隻のミサイル巡洋艦と二隻の防空駆逐艦がドローンの魚雷攻撃により爆散…。轟沈したのである。
「大総統…戦闘中のミサイル巡洋艦ヘルフィッシュと二隻の防空駆逐艦が敵機の魚雷攻撃で撃沈されました…」
メガラニカ防衛軍のドローン兵器は潜水艦に搭載された大型魚雷であり大型艦をも撃沈出来る。今度は輸送艦五隻と魚雷艇八隻がドローンの魚雷攻撃で沈没…。輸送艦六隻と魚雷艇四隻が大破したのである。撃沈された輸送艦からは二千人以上の将兵が海面上に吹っ飛ばされる。作戦中だった航空部隊が味方艦隊上空に帰還…。ドローンを迎撃するもドローンの速度は戦闘爆撃機よりも高速であり反対に味方の戦闘爆撃機が反撃される。二分間の空戦で百八十機もの味方戦闘機が撃墜され…。百人以上のパイロットが戦死したのである。一方のドローン部隊も艦艇と艦載機の対空ミサイルにより三十四機撃墜される。副総統のルーヴェルハルトは上空の光景を直視するなり…。
「大総統…太平帝国軍の劣勢です…」
形勢は完全に逆転したのである。ブラッドフォードは沈黙した様子であるが…。自軍の劣勢に苛立ったのかピリピリし始める。すると直後…。主力の戦闘航空母艦にも被害が出始める。二隻の戦闘航空母艦はドローンの自爆攻撃によって飛行甲板が破壊され…。大破したのである。旗艦セイバードラゴンの同型艦であるレヴィアタンはドローンの魚雷攻撃で艦内の弾薬庫に引火…。一瞬で爆沈する。
「同型艦のレヴィアタンが撃沈されました!」
同型艦のレヴィアタンが爆沈したと同時に艦内の四十八機の艦載機は勿論…。五百人以上の乗組員達が一瞬で吹っ飛ばされる。旗艦セイバードラゴンの周辺海面上には無数の鉄屑やら乗組員達の死骸がプカプカと浮上する。艦隊の損害からルーヴェルハルトはブラッドフォードに撤退を要請したのである。
「大総統!現状では太平帝国軍が圧倒的に不利です!即刻撤退しなければ…味方の艦隊が全滅しますよ!」
撤退を要請するルーヴェルハルトにブラッドフォードはギロッと睥睨する。
「撤退だと?主力の戦闘航空母艦二隻は健在だ…ドローンは実弾の対空ミサイルで対応しろ…」
実際問題ドローンのシールド装置は対空パルスレーザーによる高エネルギー兵器は無力化出来る反面…。実弾兵器は無力化出来ない。
「ですが対空ミサイルのみでは…本数が…」
ドローンに実弾である対空ミサイルは通用するが…。ドローンに命中させるのは非常に困難であり発射された大半がドローンの機関砲で迎撃される。直後…。
「飛行甲板上空より敵機です!直上に急降下します!」
特殊無線技士が報告する。
「敵機だと?」
数秒後…。急降下したドローンは甲板の直上に対艦ミサイルを発射したのである。直後である。ドンッと艦内全体に爆発音が響き渡り…。旗艦セイバードラゴンの艦体全体がグラッと揺れ動いたのである。
「ぐっ!」
艦体が揺れ動いた衝撃にブラッドフォードは横たわる。
「大総統!大丈夫ですか!?」
副艦長のルーヴェルハルトは横たわったブラッドフォードに近寄る。
「私は大丈夫だ…本艦の被害状況は?」
先程のドローンの攻撃により旗艦セイバードラゴンの損傷は飛行甲板が大破…。艦内に収納された十八機の艦載機も破壊されたのである。反面…。飛行甲板以外の設備は健在だったのである。
「母艦としての機能は完全に阻害されたな…」
「飛行甲板は使用出来ませんが…旗艦としての機能は健在です…」
「であればダメージコントロールを急行せよ…」
乗組員達が飛行甲板を修理する最中…。三隻の大型輸送艦と六隻の防空駆逐艦がドローンと潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されたのである。予想外の大損害にブラッドフォードは撤退を余儀無くされる。
(戦闘を続行し続ければ太平帝国軍の大艦隊でも確実に全滅するな…)
味方艦隊の全滅を危惧したブラッドフォードは不本意であるが…。撤退を決断する。艦内の通信機を所持するなり…。
「全軍に伝播する…戦闘続行は不可能だ…撤退を開始せよ…」
ブラッドフォードの判断に誰しもが反対しなかったのである。撤退を開始した太平帝国軍の艦隊にメガラニカ防衛軍のドローンは攻撃を停止…。本土へと戻ったのである。今回の大海戦で太平帝国軍は大型艦の戦闘航空母艦一隻とミサイル巡洋艦一隻…。小型艦の防空駆逐艦八隻と魚雷艇十二隻が撃沈される。損傷では三隻の戦闘航空母艦と二隻のミサイル巡洋艦が大破…。防空駆逐艦四隻と魚雷艇五隻が大破する。陸軍の上陸部隊は大型輸送艦が八隻撃沈され…。七隻の輸送艦が大破したのである。航空部隊は二百十九機の戦闘爆撃機を喪失…。五十四機の機体が損傷する。人的損害では合計六千九百四十二人が戦死…。合計三千五百六十一人が負傷したのである。一方のメガラニカ防衛軍はミライル駆逐艦二隻とミサイル駆逐艦六隻が撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。陸軍の守備隊は五十八両の戦闘車両が破壊…。空軍は五十六機のドローンが撃墜される。人的被害では合計二千三百六十五人が戦死…。合計三千四百七十八人が負傷する。民間人への被害は合計三千五百八十九人が死亡…。合計四千七百三十二人が負傷したのである。今回の戦闘はメガラニカ南方海戦と命名される。今回の大敗北以降…。太平帝国の権威が失墜したのである。

第二話

大艦巨砲主義

メガラニカ南方海戦の大敗北以降…。メガラニカ自由区の猛反撃が開始されたのである。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の大量投入と国内の反政府勢力の協力により太平帝国の領土の約半分を攻略…。占領したのである。メガラニカ南方海戦から一週間後の五月二十四日…。各自治領の戦闘で推計九百万人もの民間人が死亡したのである。同日…。太平帝国首都イーストサイドの大総統官邸会議室では大総統のブラッドフォードとルーヴェルハルトが対談する。
「大総統…一週間の短期間で太平帝国の統治領の約半分がメガラニカ防衛軍の猛反撃により占拠されました…太平帝国軍は劣勢の状態です…」
「一週間で領土の約半分が奴等に占拠させるなんて…ドローン兵器の威力を見縊らなければ…こんな状態には…」
ブラッドフォードは後悔したのである。後悔するブラッドフォードにルーヴェルハルトは前向きな姿勢で…。
「ですが大総統!今現在でこそ劣勢ですが…今迄の戦闘でメガラニカ自由区は太平帝国以上に消耗した状態です!」
今現在のメガラニカ自由区と太平帝国の国力は一対十八でありメガラニカ自由区は圧倒的に不利である。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の有効活用から各地の戦場で圧倒的物量の太平帝国軍を圧倒する。メガラニカ防衛軍の快進撃により太平帝国は領土の約半分を占拠されたものの…。短期間で戦線を拡大させたメガラニカ防衛軍は国力が貧弱であり兵站の遅滞から膠着し始める。
「メガラニカ防衛軍は膠着状態ですからね!劣勢を挽回出来る絶好のチャンスですよ!」
するとブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。
「訓練中の【ホムンクルス】だが…正規軍の将兵として実戦に配属出来るのか?」
「訓練中のホムンクルスの将兵達ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から研究…。開発されたクローン人間達の総称である。度重なる戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。世界最終戦争以前の太平帝国は小規模の新興国であり人員不足の観点からクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。通常クローン人間の開発は倫理的問題点から民主主義の国家では法律で禁止されるのが通例であるが…。人権を尊重しない独裁政治の太平帝国ではクローン人間の開発も容易に実現出来るのである。今現在は推計三百万人ものホムンクルスが大量生産され…。正規軍の将兵として実戦に参加出来そうなホムンクルスは推計二十万人である。
「彼等が正規軍の将兵として実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。太平帝国軍はホムンクルスと人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が直接戦闘しなくても…ホムンクルスの将兵を最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
近日では太平帝国の劣勢から脱走兵やらメガラニカ防衛軍に加勢する勢力が続出…。両勢力の力関係は完全に逆転し始める。人員確保が難化し続ける太平帝国軍にとってホムンクルス将兵の投入は非常に好都合だったのである。
「本題ですが…開発部が新型兵器を提案しました…」
開発部が提案した数種類の新型兵器の設計図をブラッドフォードに提出する。
「戦闘用ドローン…『ケルベロス』だと?」
「ケルベロスは…」
ケルベロスとは太平帝国軍が開発した無人戦闘機である。従来型の有人戦闘機よりは一回り小型であるがマッハ八以上の最高速度を発揮出来…。機体底部には対地対艦武装は大型ミサイルを搭載する。対空装備は対空プラズマレーザーと実弾の対空機関砲を搭載…。
「ケルベロスが量産化に成功出来れば…メガラニカ防衛軍のドローン兵器『グリフォン』にも対抗出来ましょう…」
メガラニカ南方海戦で太平帝国軍艦隊を撃退させたドローン兵器の正体はグリフォンと判明する。本機は南方海戦で太平帝国海軍部隊が鹵獲したグリフォンを研究…。設計された機体でありメガラニカ防衛軍のグリフォンに対抗出来る戦闘用ドローン兵器として提案されたのである。
「ケルベロス…試作機の完成を見届けるか…」
二枚目の設計図を直視する。
「ん?此奴は…」
「二枚目の新型兵器は超砲撃型戦艦…『アプセラス』です…」
「超砲撃型戦艦…アプセラス?」
正式名は超砲撃型戦艦アプセラスであり海軍直属の開発部が提案したのである。今現在では完全に過去の遺産である超弩級戦艦であるが戦艦アプセラスは最先端の科学技術と過去のロストテクノロジーを結集…。現代型大艦巨砲主義の象徴である。艦体の全長は三百メートルサイズと巨体であり全幅は五十メートルサイズ…。全備総重量は前代未聞の推定七十万トンクラスの超弩級戦艦である。
「今時大艦巨砲主義なんて…時代錯誤だろ…」
ブラッドフォードは時代錯誤であると感じるのだが…。
「戦艦アプセラスは現在開発中の超大型電磁投射砲を搭載する予定なのです…所謂実験試作型の試験戦艦ですね…」
「電磁投射砲か…」
電磁投射砲は現在太平帝国軍が開発中の実弾電磁兵器である。高額のミサイルよりも安価であり高威力を発揮出来ると期待される。
「海軍開発部の大計画では戦艦アプセラスの装甲は『エターナルメタル』を使用するとの情報です…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは月面で採掘された不朽性の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスも非常に安価ですからね♪」
「であれば建造を急行するべきだな…」
直後である。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で会議室に入室したのである。
「緊急事態だと?一体何事だ?」
ブラッドフォードが問い掛けると通信兵はビクビクした様子で…。
「南方のメティス諸島…メティス基地が敵軍の攻勢で占拠…基地を防衛する守備隊は必死に交戦しましたが…守備隊は玉砕したとの情報です…」
「なっ!?メティス基地の守備隊が…玉砕だと!?守備隊は全滅したのか!?」
ルーヴェルハルトは驚愕したのである。
「残念ですが…」
メティス基地とは強固の大規模要塞が構築された本土防衛用の第二防衛ライン…。推計三万人もの太平帝国陸軍守備隊が配置されたが本日未明にメガラニカ防衛軍の強襲で全滅したのである。
「メティス基地が陥落したか…恐らく今度の攻撃目標は最終防衛ラインの…パシフィスゾーン基地だな…」
パシフィスゾーン基地とは最南端に位置する離島…。パシフィスゾーン本島を防衛する太平帝国軍守備隊の本拠地である。太平帝国本土を防衛する最重要防衛拠点であるものの…。推計八十万人もの民間人も安住する。ルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「大総統…即刻パシフィスゾーン本島に援軍を派遣させますか?」
「援軍は不要だ…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの返答にルーヴェルハルトと通信兵は絶句したのである。
「本気ですか!?大総統!?」
「私は本気だよ…ルーヴェルハルト…」
「如何して援軍を派遣しないのですか!?パシフィスゾーンが陥落すれば…今度は本土が攻撃対象なのですよ!?」
ブラッドフォードは再度無表情で返答する。
「パシフィスゾーンの守備隊には陽動作戦に利用する…」
「陽動作戦ですと?」
「味方の戦闘機に特殊弾頭を搭載…パシフィスゾーンに侵攻中のメガラニカ防衛軍を特殊弾頭ミサイルで殲滅する…」
パシフィスゾーン基地は陸海軍の大部隊が駐屯…。基地内の兵力も推計十四万人であり基地を陥落させるには相当数の部隊が必要である。パシフィスゾーンを攻防する両軍に特殊弾頭ミサイルで攻撃…。当然として味方の部隊は全滅するが敵軍の侵攻を阻止するには非常に好都合である。
「特殊弾頭ミサイルですと!?パシフィスゾーンに特殊弾頭なんて使用すれば味方の守備隊は勿論…大勢の民間人にも被害が…」
特殊弾頭ミサイルは所謂核兵器の一種であり一発のミサイルで十数キロメートルもの広範囲を焦土化させられる。非人道的でありイエスマンのルーヴェルハルトも特殊弾頭ミサイルの使用には躊躇する。
「今更何を躊躇するのだ?ルーヴェルハルト…特殊弾頭なら二年前の大戦争で無尽蔵に使用しただろ…」
小規模国家であった太平帝国が世界最終戦争で勝利出来たのは特殊弾頭ミサイルの多用である。
「特殊弾道ミサイルで敵味方諸共…殲滅されるのですか?」
「最早多少の犠牲は止むを得ない…」
ルーヴェルハルトの問い掛けにブラッドフォードは即答する。
「特殊弾頭は極秘だぞ…兎にも角にもパシフィスゾーンの守備隊には本島の防衛を徹底させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは不本意であるが…。ブラッドフォードの作戦に承諾したのである。

第三話

攻防戦

七月二十七日早朝…。メガラニカ防衛軍の大艦隊が太平帝国最終防衛区域パシフィスゾーンへと進行を開始したのである。同時刻…。パシフィスゾーン基地総司令部では拠点防衛用のスーパーレーダーが反応したのである。
「一体何事だ!?」
パシフィスゾーン基地陸軍総司令官【ウィグノール】が偵察員に問い掛ける。
「スーパーレーダーが反応しました!」
即座に立体映像のホログラムで領海を確認する。ホログラムには数十隻もの艦艇が確認出来る。
「此奴はメガラニカ防衛軍の大艦隊だな…パシフィスゾーンを攻略するみたいだ…」
「如何しましょう…総司令官…」
「即刻防衛戦を開始する!各員は戦闘配置だ!パシフィスゾーンは徹底的に死守しろ!」
ウィグノールは各員に防衛戦を指示したのである。
「はっ!」
パシフィスゾーンは本土防衛の最終防衛ラインでありパシフィスゾーンが陥落すれば本土が攻撃される。
「通信兵…本土にも援軍の要請を伝達しろ…」
「はっ!」
通信兵は即座に総本部に通達したのである。三十分後…。メガラニカ防衛軍の大艦隊がパシフィスゾーンの防衛区域へと到達したのである。
「総司令官…メガラニカ防衛軍の大艦隊が防衛区域に到達しました…」
「防衛戦を開始するか…」
ウィグノールの攻撃開始の合図と同時に海面上からは百二十隻ものミサイル警備艇…。滑走路からは百三十機もの戦闘爆撃機が飛来したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍の大艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦レヴィアタンはスーパーレーダーで太平帝国軍のミサイル警備艇と戦闘爆撃機を確認する。
「艦長…敵部隊を確認しました…」
旗艦レヴィアタンの艦長はメガラニカ南方海戦で活躍したウィンフィールドである。
「即刻ホログラムを作動させろ…」
乗組員は艦内のホログラム装置を作動させる。するとホログラムには百隻以上のミサイル警備艇と戦闘爆撃機が立体映像として映写される。
「敵部隊は旧型の兵器ばかりか…」
「如何されますか?」
乗組員の問い掛けにウィンフィールドは即答する。
「即刻迎撃せよ…母艦からはドローン兵器を発進させろ…」
「承知しました…」
旗艦のレヴィアタンから二十八機のグリフォン型ドローン兵器が発進する。旗艦レヴィアタンは全長二百四十メートルサイズ…。全幅三十メートルサイズの大型艦であり満載排水量は推定五万トンである。ミサイル戦闘艦としての機能は勿論…。航空機用の母艦としても使用出来る。所謂現代型の航空戦艦である。艦載機はドローン兵器であり合計五十機以上搭載出来る。旗艦のレヴィアタンは勿論…。レヴィアタン級航空大型ミサイル戦闘艦六隻と最新鋭のドローン空母艦隊から合計四百機以上ものグリフォン型ドローン兵器が発進したのである。ドローン部隊が発進してより十五分後…。最前線のパシフィスゾーン防衛部隊と遭遇したのである。両軍が遭遇した直後に戦闘が開始され…。パシフィスゾーン防衛部隊はミサイル警備艇と戦闘爆撃機による対空ミサイル攻撃で十四機のドローンを撃墜したのである。ドローン撃墜に防衛部隊の将兵達は戦意が向上するも…。相手は新型のドローン兵器であり二分も経過すればドローンの反撃で八十三隻のミサイル警備艇が撃沈され七十六機の戦闘爆撃機が一瞬で撃墜されたのである。旗艦レヴィアタンの乗組員達は艦橋から戦況を確認する。
「艦長…味方の優勢です…」
「上出来だな…」
厳格の軍人であるウィンフィールドだが…。ドローン部隊の大戦果に上出来と判断したのである。
「ドローン部隊には攻撃を続行させろ…パシフィスゾーンを防衛する陸上部隊に空爆を仕掛けるのだ…」
ドローン部隊の攻撃の続行を指示する。
「承知しました!」
するとウィンフィールドは恐る恐る…。
「当然として無関係の非戦闘員への被害は最小限に努力せよ…」
「承知です…」
ドローン部隊の猛反撃からパシフィスゾーン防衛部隊は総崩れ…。海上の防衛網は簡単に突破されたのである。
「総司令官…海上の防衛部隊が壊滅…敵軍に突破されました…」
通信兵の報告にパシフィスゾーン総司令部は混乱する。
「海上の防衛部隊が壊滅だと…」
「敵軍はドローン部隊を使用したのか…」
総司令官のウィグノールは一瞬沈黙するも…。
「地上の守備隊に伝播せよ…陸上の防衛戦を開始すると!」
「承知しました…」
基地内の将兵達は承諾したのである。
「非戦闘員は緊急用シェルターに避難させろ…」
陸上の防衛部隊は即座に行動を開始する。緊急警報システムが作動され…。民間人は即座に各地域の地下壕に設置された避難用の緊急用シェルターへと移動したのである。民間人の避難終了から三分後…。メガラニカ防衛軍のドローン部隊がパシフィスゾーン領空へと到達する。
「メガラニカ防衛軍のドローンだ!」
「海上の防衛部隊は全滅したのか?」
「兎にも角にも敵機を迎撃するぞ!」
陸上の守備隊は迎撃を開始…。上空のドローンを目標に攻撃したのである。数千発もの機関砲と対空ミサイルが上空に炸裂する。守備隊の攻撃で二十二機のドローンを撃墜するも…。ドローンの空爆で三十六両の戦闘車が破壊され百三十七人の将兵が戦死する。三分間の空爆で陸上部隊の八割が壊滅したのである。
「陸上部隊の八割が壊滅しました…」
守備隊の劣勢に総司令部は混乱する。
「なっ!?八割も!?」
「全滅だな…」
「ドローンの空爆で守備隊の八割が壊滅したのか!?」
総司令部の将兵達は予想外の事態に恐怖したのである。直後…。スーパーレーダーが反応する。
「スーパーレーダーが反応したぞ…今度は何事だ?」
ホログラムを作動させるとメガラニカ防衛軍の大艦隊が映写される。
「敵軍の大艦隊だぞ…パシフィスゾーンの領海に到達したのか!?」
メガラニカ防衛軍の大艦隊は航空大型ミサイル戦闘艦が七隻と正規空母四隻…。ミサイル巡洋艦が十三隻と三十一隻の防空駆逐艦が確認出来る。後方には上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦が十八隻…。補助用の魚雷艇が十五隻確認出来る。メガラニカ防衛軍はドローンの投入で海上の防衛部隊を撃退…。メガラニカ防衛軍艦隊はノーダメージでパシフィスゾーンの領海へと到達出来たのである。
「本土から援軍は出動したのか!?」
ウィグノールは再度通信兵に問い掛ける。
「無線では…本土から味方の潜水艦が一隻…出撃したとの情報です…」
「はっ?」
ウィグノールは絶句する。
「こんな状況で援軍が潜水艦一隻だと!?何故海軍の主力艦隊を出動させない!?」
「主力艦隊は本土を防衛するのが手一杯であると…」
現実問題…。メガラニカ南方海戦の大敗北から太平帝国軍主力艦隊は艦隊の再建に手一杯であり主力の大艦隊は派遣出来なかったのである。
「畜生が…」
通信兵の報告にウィグノールはピリピリする。
(パシフィスゾーンは陥落しろと?総本部は本土での戦闘を決断したのか?)
総本部の意向に疑問視するが…。ウィグノールは決断したのである。
「総員…本土からの援軍は期待出来ないが…精一杯パシフィスゾーンを死守するぞ!」
「はっ!承知しました…」
絶望的状況下であるが守備隊の将兵達は一致団結…。残存部隊による徹底抗戦を決意したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍大艦隊は上陸作戦を開始したのである。十八隻の大型輸送艦から三十六隻の上陸用舟艇が出動…。陸上部隊によるパシフィスゾーン上陸作戦が開始されたのである。上陸部隊の戦力は主力戦車五十二両…。装甲車と軽量の戦闘車が六十四両投入される。二万人の海兵隊が上陸したのである。今回の上陸作戦では最新型の地上用ドローンである無人小型戦車を五機投入…。試作段階であるが実験目的で無人小型戦車が実戦配備されたのである。
「奴等…メガラニカ防衛軍の上陸部隊です…」
最前線に位置する陸軍の残存部隊が無傷のトーチカから恐る恐る…。上陸中の敵部隊を確認する。
「俺達は一先ず撤収するぞ…敵軍への反撃は本隊と合流してからだ…」
「はっ!」
最前線の残存部隊は総司令部へと撤収したのである。メガラニカ防衛軍上陸部隊は無傷で上陸地点を制圧…。後方支援部隊も上陸地点への上陸を開始したのである。同時刻…。太平帝国南方地帯軍港から出航した新型潜水艦アスピドケロンは国家元首であるブラッドフォードが艦長として乗艦したのである。
「航海は順調そうだな…」
アスピドケロンは順調に深度七百メートルの海中を潜航し続ける。
「パシフィスゾーンの戦況は?」
ブラッドフォードは乗組員に問い掛けるとホログラム装置を作動…。地形の様子を小型立体映像で映写させたのである。
「現状では太平帝国軍の劣勢ですね…」
「好都合だ…最低でも敵部隊の五割程度は中心地に侵攻させたい…」
同時刻…。陸地の残存部隊は必死に応戦するも最新兵器を多数投入するメガラニカ防衛軍の侵攻を阻止するのは実質不可能であり後退したのである。最早パシフィスゾーンは本拠地に残存した部隊以外は壊滅…。パシフィスゾーンが陥落するのは時間の問題でありメガラニカ防衛軍の勝利は目前だったのである。
メンテ
メガラニカ大事変 ( No.95 )
日時: 2021/09/16 22:16
名前: 月影桜花姫

第一話

開戦

世界最終戦争終戦後の出来事である。世界最終戦争唯一の戦勝国『太平帝国』は戦前でこそ小規模国家であったが世界最終戦争の快進撃から勢力を拡大化…。終戦後は超大国としての地位と資源を牛耳ったのである。世界最終戦争の大勝利によって全世界の秩序と覇権を獲得した太平帝国であるが…。太平帝国の圧政に反対する一部の国連軍残存勢力と各地の反政府勢力が大南海に位置する孤島にて合流したのである。彼等によって大南海の孤島は自治領『メガラニカ自由区』と命名され覇権国家である太平帝国の支配圏から逃亡した移民者達が亡命…。メガラニカ自由区樹立から一年が経過すると領内の総人口は推計五十万人規模に増大化したのである。メガラニカ自由区の勢力拡大を危惧した太平帝国は世界暦五百二十二年七月十六日に宣戦布告…。翌日の七月十七日には大規模艦隊を派遣させ南方のメガラニカ自由区本土を攻撃目標に直進したのである。太平帝国海軍主力艦隊旗艦…。戦闘航空母艦セイバードラゴンには太平帝国国家元首であり総軍の最高指導者である大総統【ブラッドフォード】が総司令官として乗艦する。
「大総統!徹底的にメガラニカ自由区を撃滅しましょう!」
「当然だ【ルーヴェルハルト】…新世界の統治国である太平帝国に反抗するのが最大の愚行であるか…奴等には徹底的に理解させなければ…」
ルーヴェルハルトは副総統であり大総統のブラッドフォードにとって最高の右腕である。今回は旗艦セイバードラゴンの副艦長として抜擢される。今回のメガラニカ自由区本土攻略作戦ではセイバードラゴン級大型戦闘航空母艦が五隻投入され…。護衛艦隊にはミサイル巡洋艦十六隻…。二十四隻の防空駆逐艦が出撃する。補助用の魚雷艇二十九隻と八百人以上の上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦十七隻が後方にて航行したのである。
「メガラニカ自由区の領海へは推定二時間で到達する予定です…」
「全軍を警戒態勢に移行させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは通信機にて各艦の乗組員達に警戒態勢を指示する。
「全軍…警戒態勢に移行せよ…」
すると各艦隊の戦闘要員達は戦闘配置に移動したのである。戦闘要員達が戦闘配置に移動してより三分後…。旗艦セイバードラゴンの艦橋に設置された最新型スーパーレーダーが反応したのである。
「本艦のスーパーレーダーが反応しました!」
スーパーレーダーは太平帝国海軍が開発した最新式の電波探知機であり地球全体を正確に索敵出来る。太平帝国軍では艦艇のみならず艦載機にも搭載され今現在太平帝国海軍と互角に交戦出来る国家は存在しない。
「何事だ?」
ブラッドフォードは偵察員に問い掛ける。
「南方…三百キロメートルの遠海より艦隊らしき艦影を無数確認…総数は推計四十隻程度です…」
スーパーレーダーには推計四十個もの光点が点滅したのである。
「ステルス機能を搭載させた艦艇か…」
すると直後…。
「無数の飛翔体が味方艦隊に接近中です!」
四十個の対象物である光点から数百個もの微小の光点が超音速で飛来するのを確認する。
「此奴は対艦ミサイル攻撃だ…迎撃態勢に移行しろ!」
ブラッドフォードは即座に迎撃を命令したのである。数秒後…。二十キロメートルの長距離より数百発もの飛翔体が味方艦隊に接近するのを確認する。
「各艦艇!飛翔体を迎撃せよ!」
各艦艇の迎撃システムが作動したのである。近年太平帝国海軍の各艦艇には対空戦闘用に開発された小型の全自動型パルスレーザー対空砲を設置…。超音速で飛来するミサイル迎撃に期待されたのである。数秒後各艦のパルスレーザー対空砲が炸裂…。蛍光色の光弾が各艦に接近する大型対艦ミサイルを迎撃したのである。全自動化によって大型対艦ミサイルは全弾迎撃…。敵艦から発射された大型対艦ミサイルは味方艦隊には一発も命中しなかったのである。通信兵が即座に報告する。
「通信です…敵軍の大型対艦ミサイルは全弾迎撃されました!味方艦隊への損害は皆無です!」
「最先端の科学技術の結晶である太平帝国海軍に旧型の対艦ミサイルで攻撃するとは…奴等は時代錯誤ですな♪」
ルーヴェルハルトは笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…所詮奴等は烏合の衆だ…」
総司令官のブラッドフォードも勝利を確信する。太平帝国軍の大艦隊はメガラニカ自由区近海へと直進したのである。十数分後…。メガラニカ自由区の防衛艦隊と遭遇したのである。ルーヴェルハルトはブリッジ正面の窓側にて恐る恐る双眼鏡を所持…。真正面の敵軍の中規模艦隊を確認する。
「大総統…敵軍の防衛艦隊です…」
メガラニカ自由区の防衛艦隊はミサイル巡洋艦八隻…。十九隻のミサイル駆逐艦と三十二隻の魚雷艇が確認出来る。
「中規模艦隊か…総攻撃せよ…」
ブラッドフォードは即刻中規模艦隊に対する総攻撃を指示…。各艦の大型対艦ミサイルと機関砲が炸裂する。太平帝国軍の先制攻撃によりメガラニカ防衛艦隊は二隻の大型ミサイル巡洋艦と六隻のミサイル駆逐艦が大型対艦ミサイルで撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。海面上には九百人以上の乗組員達が吹っ飛ばされる。
「味方艦隊の圧倒的優勢です!」
旗艦セイバードラゴンのブリッジでは乗組員達が沈没する敵艦を眺望する。
「太平帝国軍の圧勝は確実だな…」
「奴等は腐敗した国民主権勢力の残党だ…所詮メガラニカ自由区なんて…」
乗組員達は太平帝国軍の優勢に安堵したのである。同時刻…。メガラニカ自由区防衛艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦リトルヴィーナス艦内では味方艦隊の劣勢に騒然とする。
「多勢に無勢だ…こんな状態では防衛艦隊は全滅するぞ!」
「畜生…防衛艦隊が全滅すれば…太平帝国軍の本土上陸も時間の問題だ…」
乗組員達は騒然とするのだが…。艦長の【ウィンフィールド】は沈黙した様子であり冷静だったのである。乗組員の一人が恐る恐る…。
「ウィンフィールド艦長…如何されましょうか?こんなにも劣勢では味方の防衛艦隊は全滅しますよ…」
「狼狽えるな…」
ウィンフィールドは騒然とする周囲の乗組員達を制止させる。
「ですが艦長…今現在の戦況はメガラニカ防衛軍が圧倒的に不利ですよ…」
ウィンフィールドは沈黙した様子で腕時計を確認する。
「時間だな…」
周囲の乗組員達はハッとした表情で…。
「えっ…何が時間なのですか!?」
一人の乗組員が恐る恐るウィンフィールドに問い掛ける。
「作戦を開始する…」
ウィンフィールドは通信兵を直視するなり…。
「通信兵…即刻独立機動部隊に通信させるのだ…出撃の命令を…」
「はっ!」
周囲の者達はポカンとする。
「一体何を開始するのか?」
同時刻…。メガラニカ自由区西方地帯の軍港にて三隻の中型空母が出撃したのである。中型空母にはとある新型兵器が多数搭載される。西方地帯から独立機動部隊が出撃を開始してより五分後…。メガラニカ自由区南方地帯の防衛艦隊は壊滅状態であり撤退を余儀無くされる。壊滅寸前の防衛艦隊の光景に太平帝国軍総司令官のブラッドフォードは航空部隊の出撃を命令する。
「航空部隊を出撃させろ…メガラニカ自由区の南方地帯全域を空爆せよ…場合によっては非戦闘員への攻撃も許可する…徹底的に奴等を蹴散らせるのだ…」
「はっ!」
ブラッドフォードが命令すると五隻の大型戦闘航空母艦から推計三百機もの戦闘爆撃機が出撃したのである。航空部隊はメガラニカ自由区の南方地帯領空へと進入…。地上への空爆を開始したのである。南方地帯を防衛する地上部隊は必死に太平帝国軍の航空部隊を迎撃するも…。相手は超音速で飛行する戦闘爆撃機であり対空砲は通用せず対空ミサイルで攻撃しても機体に搭載されたパルスレーザーで簡単に無力化されたのである。攻撃開始から三分間が経過すると南方地帯の地上部隊は九割が壊滅…。数千人もの民間人が死傷したのである。旗艦セイバードラゴンではブリッジの乗組員達がモニターで戦況の映像を注視する。
「大総統♪太平帝国軍の圧倒的優勢です♪南方地帯の守備隊は壊滅状態ですよ…」
副艦長のルーヴェルハルトが笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…」
ブラッドフォードは現状であれば上陸作戦が可能であると判断…。
「敵軍は相当疲弊した状態だ…味方の上陸部隊に伝播させろ!」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは即座に各輸送艦に伝達する。上陸作戦を開始する直前…。スーパーレーダーが反応したのである。
「スーパーレーダーが反応しました!」
特殊無線技士がブラッドフォードに報告する。
「今度は何事だ!?」
ブラッドフォードが特殊無線技士に問い掛ける。
「西方の海域より無数の移動物体が出現…超音速で此方に急接近中です…」
「移動物体だと?敵機か?」
ブラッドフォードはモニターを作動させる。するとモニターの画面には無数の飛行物体が映写される。
「此奴は…」
飛行物体は軍用機の形状だが従来型の航空機とは異質的であり新型機であると認識する。
「大総統…敵軍の新型機でしょうか?」
「ひょっとすると無人兵器の戦闘用ドローンかも知れないな…」
「戦闘用ドローンですと?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「敵部隊の航空攻撃に警戒せよ…再度迎撃態勢に移行しろ…作戦中の航空部隊にもドローンの迎撃を急行させるのだ…」
「承知しました…大総統…」
戦闘艦隊と各輸送艦隊は上陸作戦を一時中止させ対空戦闘に移行する。数百機ものドローンが肉眼でも視認出来る位置へと到達…。
「大総統…敵軍のドローンです…」
「ドローンを撃墜せよ!味方艦隊には接近させるな!」
ブラッドフォードの命令と同時に各艦艇は対空戦闘を開始する。対空ミサイルと対空パルスレーザーが西方の上空にて炸裂したのである。対空パルスレーザーがドローンに直撃するのだが…。ドローンの機体内部には高エネルギー兵器を無力化する電磁防壁発生装置により対空パルスレーザーが無力化されたのである。旗艦セイバードラゴンのブリッジでは双眼鏡で副艦長のルーヴェルハルトが上空を直視する。
「なっ!?シールドでしょうか!?」
「シールドだと?」
「ドローンは高エネルギーのシールドで対空パルスレーザーを無力化しました…ひょっとして奴等…」
「電磁防壁だな…ドローンの機体に光学兵器を無力化するシールド装置を装備したのだな…」
電磁防壁発生装置とは高エネルギー兵器を無力化する補助装置である。近年では太平帝国軍にも同類の補助装置は保有するものの…。艦船用の大型装置であり小型航空機に搭載出来る小型の装置は開発中である。
「如何やら奴等…電磁防壁発生装置の小型化に成功したみたいだな…」
ドローン関連の科学技術ではメガラニカ自由区が太平帝国よりも数段階上回る。人員不足であり少数精鋭のメガラニカ防衛軍にとって無人兵器のドローンは最大の戦力であり戦闘に特化されたドローン兵器が多数開発される。一方の太平帝国軍にもドローン兵器は多数配備されるものの…。基本的に偵察用の警戒型ドローンであり戦闘に特化された戦闘用ドローンは試作機のみである。
「艦長…上空より敵機が接近中です!」
対空パルスレーザーの弾幕が太平帝国軍の艦隊周囲に炸裂するのだが…。ドローンは機体のシールド装置でパルスレーザーを潜り抜け味方艦隊の上空間近へと到達する。ドローンは即座に低空飛行…。高速航空魚雷を投下したのである。副艦長のルーヴェルハルトはドローンの高速航空魚雷を投下した瞬間を直視する。
「大総統!敵機は航空魚雷を投下しました…」
「航空魚雷だと?大昔の大戦か?」
本来パルスレーザーはミサイルやら敵機の迎撃を想定して開発された高エネルギー兵器であり水中の魚雷を迎撃するのは不可能である。
「大昔の大戦だな…」
太平帝国軍では魚雷は潜水艦と魚雷艇のみ搭載…。今現在航空魚雷は皆無である。
「艦長!右舷より魚雷が接近中です!」
特殊無線技士が報告する。
「即刻回避だ!」
ブラッドフォードは即座に回避を指示したのである。乗組員達の迅速の対応により旗艦セイバードラゴンは敵機の魚雷攻撃を回避する。旗艦セイバードラゴンの乗組員達はホッとするも…。直後である。対空戦闘中の一隻のミサイル巡洋艦と二隻の防空駆逐艦がドローンの魚雷攻撃により爆散…。轟沈したのである。
「大総統…戦闘中のミサイル巡洋艦ヘルフィッシュと二隻の防空駆逐艦が敵機の魚雷攻撃で撃沈されました…」
メガラニカ防衛軍のドローン兵器は潜水艦に搭載された大型魚雷であり大型艦をも撃沈出来る。今度は輸送艦五隻と魚雷艇八隻がドローンの魚雷攻撃で沈没…。輸送艦六隻と魚雷艇四隻が大破したのである。撃沈された輸送艦からは二千人以上の将兵が海面上に吹っ飛ばされる。作戦中だった航空部隊が味方艦隊上空に帰還…。ドローンを迎撃するもドローンの速度は戦闘爆撃機よりも高速であり反対に味方の戦闘爆撃機が反撃される。二分間の空戦で百八十機もの味方戦闘機が撃墜され…。百人以上のパイロットが戦死したのである。一方のドローン部隊も艦艇と艦載機の対空ミサイルにより三十四機撃墜される。副総統のルーヴェルハルトは上空の光景を直視するなり…。
「大総統…太平帝国軍の劣勢です…」
形勢は完全に逆転したのである。ブラッドフォードは沈黙した様子であるが…。自軍の劣勢に苛立ったのかピリピリし始める。すると直後…。主力の戦闘航空母艦にも被害が出始める。二隻の戦闘航空母艦はドローンの自爆攻撃によって飛行甲板が破壊され…。大破したのである。旗艦セイバードラゴンの同型艦であるレヴィアタンはドローンの魚雷攻撃で艦内の弾薬庫に引火…。一瞬で爆沈する。
「同型艦のレヴィアタンが撃沈されました!」
同型艦のレヴィアタンが爆沈したと同時に艦内の四十八機の艦載機は勿論…。五百人以上の乗組員達が一瞬で吹っ飛ばされる。旗艦セイバードラゴンの周辺海面上には無数の鉄屑やら乗組員達の死骸がプカプカと浮上する。艦隊の損害からルーヴェルハルトはブラッドフォードに撤退を要請したのである。
「大総統!現状では太平帝国軍が圧倒的に不利です!即刻撤退しなければ…味方の艦隊が全滅しますよ!」
撤退を要請するルーヴェルハルトにブラッドフォードはギロッと睥睨する。
「撤退だと?主力の戦闘航空母艦二隻は健在だ…ドローンは実弾の対空ミサイルで対応しろ…」
実際問題ドローンのシールド装置は対空パルスレーザーによる高エネルギー兵器は無力化出来る反面…。実弾兵器は無力化出来ない。
「ですが対空ミサイルのみでは…本数が…」
ドローンに実弾である対空ミサイルは通用するが…。ドローンに命中させるのは非常に困難であり発射された大半がドローンの機関砲で迎撃される。直後…。
「飛行甲板上空より敵機です!直上に急降下します!」
特殊無線技士が報告する。
「敵機だと?」
数秒後…。急降下したドローンは甲板の直上に対艦ミサイルを発射したのである。直後である。ドンッと艦内全体に爆発音が響き渡り…。旗艦セイバードラゴンの艦体全体がグラッと揺れ動いたのである。
「ぐっ!」
艦体が揺れ動いた衝撃にブラッドフォードは横たわる。
「大総統!大丈夫ですか!?」
副艦長のルーヴェルハルトは横たわったブラッドフォードに近寄る。
「私は大丈夫だ…本艦の被害状況は?」
先程のドローンの攻撃により旗艦セイバードラゴンの損傷は飛行甲板が大破…。艦内に収納された十八機の艦載機も破壊されたのである。反面…。飛行甲板以外の設備は健在だったのである。
「母艦としての機能は完全に阻害されたな…」
「飛行甲板は使用出来ませんが…旗艦としての機能は健在です…」
「であればダメージコントロールを急行せよ…」
乗組員達が飛行甲板を修理する最中…。三隻の大型輸送艦と六隻の防空駆逐艦がドローンと潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されたのである。予想外の大損害にブラッドフォードは撤退を余儀無くされる。
(戦闘を続行し続ければ太平帝国軍の大艦隊でも確実に全滅するな…)
味方艦隊の全滅を危惧したブラッドフォードは不本意であるが…。撤退を決断する。艦内の通信機を所持するなり…。
「全軍に伝播する…戦闘続行は不可能だ…撤退を開始せよ…」
ブラッドフォードの判断に誰しもが反対しなかったのである。撤退を開始した太平帝国軍の艦隊にメガラニカ防衛軍のドローンは攻撃を停止…。本土へと戻ったのである。今回の大海戦で太平帝国軍は大型艦の戦闘航空母艦一隻とミサイル巡洋艦一隻…。小型艦の防空駆逐艦八隻と魚雷艇十二隻が撃沈される。損傷では三隻の戦闘航空母艦と二隻のミサイル巡洋艦が大破…。防空駆逐艦四隻と魚雷艇五隻が大破する。陸軍の上陸部隊は大型輸送艦が八隻撃沈され…。七隻の輸送艦が大破したのである。航空部隊は二百十九機の戦闘爆撃機を喪失…。五十四機の機体が損傷する。人的損害では合計六千九百四十二人が戦死…。合計三千五百六十一人が負傷したのである。一方のメガラニカ防衛軍はミライル駆逐艦二隻とミサイル駆逐艦六隻が撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。陸軍の守備隊は五十八両の戦闘車両が破壊…。空軍は五十六機のドローンが撃墜される。人的被害では合計二千三百六十五人が戦死…。合計三千四百七十八人が負傷する。民間人への被害は合計三千五百八十九人が死亡…。合計四千七百三十二人が負傷したのである。今回の戦闘はメガラニカ南方海戦と命名される。今回の大敗北以降…。太平帝国の権威が失墜したのである。

第二話

大艦巨砲主義

メガラニカ南方海戦の大敗北以降…。メガラニカ自由区の猛反撃が開始されたのである。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の大量投入と国内の反政府勢力の協力により太平帝国の領土の約半分を攻略…。占領したのである。メガラニカ南方海戦から一週間後の五月二十四日…。各自治領の戦闘で推計九百万人もの民間人が死亡したのである。同日…。太平帝国首都イーストサイドの大総統官邸会議室では大総統のブラッドフォードとルーヴェルハルトが対談する。
「大総統…一週間の短期間で太平帝国の統治領の約半分がメガラニカ防衛軍の猛反撃により占拠されました…太平帝国軍は劣勢の状態です…」
「一週間で領土の約半分が奴等に占拠させるなんて…ドローン兵器の威力を見縊らなければ…こんな状態には…」
ブラッドフォードは後悔したのである。後悔するブラッドフォードにルーヴェルハルトは前向きな姿勢で…。
「ですが大総統!今現在でこそ劣勢ですが…今迄の戦闘でメガラニカ自由区は太平帝国以上に消耗した状態です!」
今現在のメガラニカ自由区と太平帝国の国力は一対十八でありメガラニカ自由区は圧倒的に不利である。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の有効活用から各地の戦場で圧倒的物量の太平帝国軍を圧倒する。メガラニカ防衛軍の快進撃により太平帝国は領土の約半分を占拠されたものの…。短期間で戦線を拡大させたメガラニカ防衛軍は国力が貧弱であり兵站の遅滞から膠着し始める。
「メガラニカ防衛軍は膠着状態ですからね!劣勢を挽回出来る絶好のチャンスですよ!」
するとブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。
「訓練中の【ホムンクルス】だが…正規軍の将兵として実戦に配属出来るのか?」
「訓練中のホムンクルスの将兵達ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から研究…。開発されたクローン人間達の総称である。度重なる戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。世界最終戦争以前の太平帝国は小規模の新興国であり人員不足の観点からクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。通常クローン人間の開発は倫理的問題点から民主主義の国家では法律で禁止されるのが通例であるが…。人権を尊重しない独裁政治の太平帝国ではクローン人間の開発も容易に実現出来るのである。今現在は推計三百万人ものホムンクルスが大量生産され…。正規軍の将兵として実戦に参加出来そうなホムンクルスは推計二十万人である。
「彼等が正規軍の将兵として実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。太平帝国軍はホムンクルスと人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が直接戦闘しなくても…ホムンクルスの将兵を最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
近日では太平帝国の劣勢から脱走兵やらメガラニカ防衛軍に加勢する勢力が続出…。両勢力の力関係は完全に逆転し始める。人員確保が難化し続ける太平帝国軍にとってホムンクルス将兵の投入は非常に好都合だったのである。
「本題ですが…開発部が新型兵器を提案しました…」
開発部が提案した数種類の新型兵器の設計図をブラッドフォードに提出する。
「戦闘用ドローン…『ケルベロス』だと?」
「ケルベロスは…」
ケルベロスとは太平帝国軍が開発した無人戦闘機である。従来型の有人戦闘機よりは一回り小型であるがマッハ八以上の最高速度を発揮出来…。機体底部には対地対艦武装は大型ミサイルを搭載する。対空装備は対空プラズマレーザー機関砲と実弾の対空機関砲を両方搭載…。
「ケルベロスが量産化に成功出来れば…メガラニカ防衛軍のドローン兵器『グリフォン』にも対抗出来ましょう…」
メガラニカ南方海戦で太平帝国軍艦隊を撃退させたドローン兵器の正体はグリフォンと判明する。本機は南方海戦で太平帝国海軍部隊が鹵獲したグリフォンを研究…。設計された機体でありメガラニカ防衛軍のグリフォンに対抗出来る戦闘用ドローン兵器として提案されたのである。
「ケルベロス…試作機の完成を見届けるか…」
二枚目の設計図を直視する。
「ん?此奴は…」
「二枚目の新型兵器は超砲撃型戦艦…『アプセラス』です…」
「超砲撃型戦艦…アプセラス?」
正式名は超砲撃型戦艦アプセラスであり海軍直属の開発部が提案したのである。今現在では完全に過去の遺産である超弩級戦艦であるが戦艦アプセラスは最先端の科学技術と過去のロストテクノロジーを結集…。現代型大艦巨砲主義の象徴である。艦体の全長は三百メートルサイズと巨体であり全幅は五十メートルサイズ…。全備総重量は前代未聞の推定七十万トンクラスの超弩級戦艦である。
「今時大艦巨砲主義なんて…時代錯誤だろ…」
ブラッドフォードは時代錯誤であると感じるのだが…。
「戦艦アプセラスは現在開発中の超大型電磁投射砲を搭載する予定なのです…所謂実験試作型の試験戦艦ですね…」
「電磁投射砲か…」
電磁投射砲は現在太平帝国軍が開発中の実弾電磁兵器である。高額のミサイルよりも安価であり高威力を発揮出来ると期待される。
「海軍開発部の大計画では戦艦アプセラスの装甲は『エターナルメタル』を使用するとの情報です…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは月面で採掘された不朽性の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスも非常に安価ですからね♪」
「であれば建造を急行するべきだな…」
直後である。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で会議室に入室したのである。
「緊急事態だと?一体何事だ?」
ブラッドフォードが問い掛けると通信兵はビクビクした様子で…。
「南方のメティス諸島…メティス基地が敵軍の攻勢で占拠…基地を防衛する守備隊は必死に交戦しましたが…守備隊は玉砕したとの情報です…」
「なっ!?メティス基地の守備隊が…玉砕だと!?守備隊は全滅したのか!?」
ルーヴェルハルトは驚愕したのである。
「残念ですが…」
メティス基地とは強固の大規模要塞が構築された本土防衛用の第二防衛ライン…。推計三万人もの太平帝国陸軍守備隊が配置されたが本日未明にメガラニカ防衛軍の強襲で全滅したのである。
「メティス基地が陥落したか…恐らく今度の攻撃目標は最終防衛ラインの…パシフィスアイランド基地だな…」
パシフィスアイランド基地とは最南端に位置する離島…。パシフィスアイランド本島を防衛する太平帝国軍守備隊の本拠地である。太平帝国本土を防衛する最重要防衛拠点であるものの…。推計八十万人もの民間人も安住する。ルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「大総統…即刻パシフィスアイランド本島に援軍を派遣させますか?」
「援軍は不要だ…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの返答にルーヴェルハルトと通信兵は絶句したのである。
「本気ですか!?大総統!?」
「私は本気だよ…ルーヴェルハルト…」
「如何して援軍を派遣しないのですか!?パシフィスアイランドが陥落すれば…今度は本土が攻撃対象なのですよ!?」
ブラッドフォードは再度無表情で返答する。
「パシフィスアイランドの守備隊には陽動作戦に利用する…」
「陽動作戦ですと?」
「味方の戦闘機に特殊弾頭を搭載…パシフィスアイランドに侵攻中のメガラニカ防衛軍を特殊弾頭ミサイルで殲滅する…」
パシフィスアイランド基地は陸海軍の大部隊が駐屯…。基地内の兵力も推計十四万人であり基地を陥落させるには相当数の部隊が必要である。パシフィスアイランドを攻防する両軍に特殊弾頭ミサイルで攻撃…。当然として味方の部隊は全滅するが敵軍の侵攻を阻止するには非常に好都合である。
「特殊弾頭ミサイルですと!?パシフィスアイランドに特殊弾頭なんて使用すれば味方の守備隊は勿論…大勢の民間人にも被害が…」
特殊弾頭ミサイルは所謂核兵器の一種であり一発のミサイルで十数キロメートルもの広範囲を焦土化させられる。非人道的でありイエスマンのルーヴェルハルトも特殊弾頭ミサイルの使用には躊躇する。
「今更何を躊躇するのだ?ルーヴェルハルト…特殊弾頭なら二年前の大戦争で無尽蔵に使用しただろ…」
小規模国家であった太平帝国が世界最終戦争で勝利出来たのは特殊弾頭ミサイルの多用である。
「特殊弾道ミサイルで敵味方諸共…殲滅されるのですか?」
「最早多少の犠牲は止むを得ない…」
ルーヴェルハルトの問い掛けにブラッドフォードは即答する。
「特殊弾頭は極秘だぞ…兎にも角にもパシフィスアイランドの守備隊には本島の防衛を徹底させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは不本意であるが…。ブラッドフォードの提案する殲滅作戦に承諾したのである。

第三話

攻防戦

七月二十七日早朝…。メガラニカ防衛軍の大艦隊が太平帝国最終防衛区域パシフィスアイランドへと進行を開始したのである。同時刻…。パシフィスアイランド基地総司令部では拠点防衛用のスーパーレーダーが反応したのである。
「一体何事だ!?」
パシフィスアイランド基地陸軍総司令官【ウィグノール】が偵察員に問い掛ける。
「スーパーレーダーが反応しました!」
即座に立体映像のホログラムで領海を確認する。ホログラムには数十隻もの艦艇が確認出来る。
「此奴はメガラニカ防衛軍の大艦隊だな…総力戦でパシフィスアイランドを攻略するみたいだ…」
「如何しましょう…総司令官…」
「即刻防衛戦を開始する!各戦闘員は戦闘配置だ!パシフィスアイランドは徹底的に死守しろ!」
ウィグノールは各員に防衛戦を指示したのである。
「はっ!」
パシフィスアイランドは本土防衛の最終防衛ラインでありパシフィスアイランドが陥落すれば本土が攻撃される。
「通信兵…本土にも援軍の要請を伝達しろ…」
「はっ!」
通信兵は即座に総本部に通達したのである。三十分後…。メガラニカ防衛軍の大艦隊がパシフィスアイランドの防衛区域へと到達したのである。
「総司令官…メガラニカ防衛軍の大艦隊が防衛区域に到達しました…」
「防衛戦を開始するか…」
ウィグノールの攻撃開始の合図と同時に海面上からは百二十隻ものミサイル警備艇…。滑走路からは百三十機もの戦闘爆撃機が飛来したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍の大艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦レヴィアタンはスーパーレーダーで太平帝国軍のミサイル警備艇と戦闘爆撃機を確認する。
「艦長…敵部隊を確認しました…」
旗艦レヴィアタンの艦長はメガラニカ南方海戦で活躍したウィンフィールドである。
「即刻ホログラムを作動させろ…」
乗組員は艦内のホログラム装置を作動させる。するとホログラムには百隻以上のミサイル警備艇と戦闘爆撃機が立体映像として映写される。
「敵部隊は旧型の兵器ばかりか…」
「如何されますか?」
乗組員の問い掛けにウィンフィールドは即答する。
「即刻迎撃せよ…母艦からはドローン兵器を発進させろ…」
「承知しました…」
旗艦のレヴィアタンから二十八機のグリフォン型ドローン兵器が発進する。旗艦レヴィアタンは全長二百四十メートルサイズ…。全幅三十メートルサイズの大型艦であり満載排水量は推定五万トンである。ミサイル戦闘艦としての機能は勿論…。航空機用の母艦としても使用出来る。所謂現代型の航空戦艦である。艦載機はドローン兵器であり合計五十機以上搭載出来る。旗艦のレヴィアタンは勿論…。レヴィアタン級航空大型ミサイル戦闘艦六隻と最新鋭のドローン空母艦隊から合計四百機以上ものグリフォン型ドローン兵器が発進したのである。ドローン部隊が発進してより十五分後…。最前線のパシフィスアイランド防衛部隊と遭遇したのである。両軍が遭遇した直後に戦闘が開始され…。パシフィスアイランド防衛部隊はミサイル警備艇と戦闘爆撃機による対空ミサイル攻撃で十四機のドローンを撃墜したのである。ドローン撃墜に防衛部隊の将兵達は戦意が向上するも…。相手は新型のドローン兵器であり二分も経過すればドローンの反撃で八十三隻のミサイル警備艇が撃沈され七十六機の戦闘爆撃機が一瞬で撃墜されたのである。旗艦レヴィアタンの乗組員達は艦橋から戦況を確認する。
「艦長…味方の優勢です…」
「上出来だな…」
厳格の軍人であるウィンフィールドだが…。ドローン部隊の大戦果に上出来と判断したのである。
「ドローン部隊には攻撃を続行させろ…パシフィスアイランドを防衛する陸上部隊に空爆を仕掛けるのだ…」
ドローン部隊の攻撃の続行を指示する。
「承知しました!」
するとウィンフィールドは恐る恐る…。
「当然として無関係の非戦闘員への被害は最小限に努力せよ…」
「承知です…」
ドローン部隊の猛反撃からパシフィスアイランド防衛部隊は総崩れ…。海上の防衛網は簡単に突破されたのである。
「総司令官…海上の防衛部隊が壊滅…敵軍に突破されました…」
通信兵の報告にパシフィスアイランド総司令部は混乱する。
「海上の防衛部隊が壊滅だと…」
「敵軍はドローン部隊を使用したのか…」
総司令官のウィグノールは一瞬沈黙するも…。
「地上の守備隊に伝播せよ…陸上の防衛戦を開始すると!」
「承知しました…」
基地内の将兵達は承諾したのである。
「非戦闘員は緊急用シェルターに避難させろ…」
陸上の防衛部隊は即座に行動を開始する。緊急警報システムが作動され…。民間人は即座に各地域の地下壕に設置された避難用の緊急用シェルターへと移動したのである。民間人の避難終了から三分後…。メガラニカ防衛軍のドローン部隊がパシフィスアイランド領空へと到達する。
「メガラニカ防衛軍のドローンだ!」
「海上の防衛部隊は全滅したのか?」
「兎にも角にも敵機を迎撃するぞ!」
陸上の守備隊は迎撃を開始…。上空のドローンを目標に攻撃したのである。数千発もの機関砲と対空ミサイルが上空に炸裂する。守備隊の攻撃で二十二機のドローンを撃墜するも…。ドローンの空爆で三十六両の戦闘車が破壊され百三十七人の将兵が戦死する。三分間の空爆で陸上部隊の八割が壊滅したのである。
「陸上部隊の八割が壊滅しました…」
守備隊の劣勢に総司令部は混乱する。
「なっ!?八割も!?」
「全滅だな…」
「ドローンの空爆で守備隊の八割が壊滅したのか!?」
総司令部の将兵達は予想外の事態に恐怖したのである。直後…。スーパーレーダーが反応する。
「スーパーレーダーが反応したぞ…今度は何事だ?」
ホログラムを作動させるとメガラニカ防衛軍の大艦隊が映写される。
「敵軍の大艦隊だぞ…パシフィスアイランドの領海に到達したのか!?」
メガラニカ防衛軍の大艦隊は航空大型ミサイル戦闘艦が七隻と正規空母四隻…。ミサイル巡洋艦が十三隻と三十一隻の防空駆逐艦が確認出来る。後方には上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦が十八隻…。補助用の魚雷艇が十五隻確認出来る。メガラニカ防衛軍はドローンの投入で海上の防衛部隊を撃退…。メガラニカ防衛軍艦隊はノーダメージでパシフィスアイランドの領海へと到達出来たのである。
「本土から援軍は出動したのか!?」
ウィグノールは再度通信兵に問い掛ける。
「無線では…本土から味方の潜水艦が一隻…出撃したとの情報です…」
「はっ?」
ウィグノールは絶句する。
「こんな状況で援軍が潜水艦一隻だと!?何故海軍の主力艦隊を出動させない!?」
「主力艦隊は本土を防衛するのが手一杯であると…」
現実問題…。メガラニカ南方海戦の大敗北から太平帝国軍主力艦隊は艦隊の再建に手一杯であり主力の大艦隊は派遣出来なかったのである。
「畜生が…」
通信兵の報告にウィグノールはピリピリする。
(パシフィスアイランドは陥落しろと?総本部は本土での戦闘を決断したのか?)
総本部の意向に疑問視するが…。ウィグノールは決断したのである。
「総員…太平帝国本土からの援軍は期待出来ないが…精一杯パシフィスアイランドを死守するぞ!」
「はっ!承知しました…」
絶望的状況下であるが守備隊の将兵達は一致団結…。残存部隊による徹底抗戦を決意したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍大艦隊は上陸作戦を開始したのである。十八隻の大型輸送艦から三十六隻の上陸用舟艇が出動…。陸上部隊によるパシフィスアイランド上陸作戦が開始されたのである。上陸部隊の戦力は主力戦車五十二両…。装甲車と軽量の戦闘車が六十四両投入される。二万人の海兵隊が上陸したのである。今回の上陸作戦では最新型の地上用ドローンである無人小型戦車を五機投入…。試作段階であるが実験目的で無人小型戦車が実戦配備されたのである。
「奴等…メガラニカ防衛軍の上陸部隊です…」
最前線に位置する陸軍の残存部隊が無傷のトーチカから恐る恐る…。上陸中の敵部隊を確認する。
「俺達は一先ず撤収するぞ…敵軍への反撃は本隊と合流してからだ…」
「はっ!」
最前線の残存部隊は総司令部へと撤収したのである。メガラニカ防衛軍上陸部隊は無傷で上陸地点を制圧…。後方支援部隊も上陸地点への上陸を開始したのである。同時刻…。太平帝国南方地帯軍港から出航した新型潜水艦アスピドケロンは国家元首であるブラッドフォードが艦長として乗艦したのである。
「航海は順調そうだな…」
アスピドケロンは順調に深度七百メートルの海底下を潜航し続ける。
「パシフィスアイランドの戦況は?」
ブラッドフォードは乗組員に問い掛けるとホログラム装置を作動…。地形の様子を小型立体映像で映写させたのである。
「現状では太平帝国軍の劣勢ですね…」
「好都合だ…最低でも敵部隊の五割程度は中心地に侵攻させたい…」
同時刻…。陸地の残存部隊は必死に応戦するも最新兵器を多数投入するメガラニカ防衛軍の侵攻を阻止するのは実質不可能であり後退したのである。最早パシフィスアイランドは本拠地に残存した守備隊以外は壊滅…。パシフィスアイランドが陥落するのは時間の問題でありメガラニカ防衛軍の勝利は目前だったのである。
メンテ
メガラニカ大事変 ( No.96 )
日時: 2021/09/17 19:41
名前: 月影桜花姫

第一話

開戦

世界最終戦争終戦後の出来事である。世界最終戦争唯一の戦勝国『太平帝国』は戦前でこそ小規模国家であったが世界最終戦争の快進撃から勢力を拡大化…。終戦後は超大国としての地位と資源を牛耳ったのである。世界最終戦争の大勝利によって全世界の秩序と覇権を獲得した太平帝国であるが…。太平帝国の圧政に反対する一部の国連軍残存勢力と各地の反政府勢力が大南海に位置する孤島にて合流したのである。彼等によって大南海の孤島は自治領『メガラニカ自由区』と命名され覇権国家である太平帝国の支配圏から逃亡した移民者達が亡命…。メガラニカ自由区樹立から一年が経過すると領内の総人口は推計五十万人規模に増大化したのである。メガラニカ自由区の勢力拡大を危惧した太平帝国は世界暦五百二十二年七月十六日に宣戦布告…。翌日の七月十七日には大規模艦隊を派遣させ南方のメガラニカ自由区本土を攻撃目標に直進したのである。太平帝国海軍主力艦隊旗艦…。戦闘航空母艦セイバードラゴンには太平帝国国家元首であり総軍の最高指導者である大総統【ブラッドフォード】が総司令官として乗艦する。
「大総統!徹底的にメガラニカ自由区を撃滅しましょう!」
「当然だ【ルーヴェルハルト】…新世界の統治国である太平帝国に反抗するのが最大の愚行であるか…奴等には徹底的に理解させなければ…」
ルーヴェルハルトは副総統であり大総統のブラッドフォードにとって最高の右腕である。今回は旗艦セイバードラゴンの副艦長として抜擢される。今回のメガラニカ自由区本土攻略作戦ではセイバードラゴン級大型戦闘航空母艦が五隻投入され…。護衛艦隊にはミサイル巡洋艦十六隻…。二十四隻の防空駆逐艦が出撃する。補助用の魚雷艇二十九隻と八百人以上の上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦十七隻が後方にて航行したのである。
「メガラニカ自由区の領海へは推定二時間で到達する予定です…」
「全軍を警戒態勢に移行させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは通信機にて各艦の乗組員達に警戒態勢を指示する。
「全軍…警戒態勢に移行せよ…」
すると各艦隊の戦闘要員達は戦闘配置に移動したのである。戦闘要員達が戦闘配置に移動してより三分後…。旗艦セイバードラゴンの艦橋に設置された最新型スーパーレーダーが反応したのである。
「本艦のスーパーレーダーが反応しました!」
スーパーレーダーは太平帝国海軍が開発した最新式の電波探知機であり地球全体を正確に索敵出来る。太平帝国軍では艦艇のみならず艦載機にも搭載され今現在太平帝国海軍と互角に交戦出来る国家は存在しない。
「何事だ?」
ブラッドフォードは偵察員に問い掛ける。
「南方…三百キロメートルの遠海より艦隊らしき艦影を無数確認…総数は推計四十隻程度です…」
スーパーレーダーには推計四十個もの光点が点滅したのである。
「ステルス機能を搭載させた艦艇か…」
すると直後…。
「無数の飛翔体が味方艦隊に接近中です!」
四十個の対象物である光点から数百個もの微小の光点が超音速で飛来するのを確認する。
「此奴は対艦ミサイル攻撃だ…迎撃態勢に移行しろ!」
ブラッドフォードは即座に迎撃を命令したのである。数秒後…。二十キロメートルの長距離より数百発もの飛翔体が味方艦隊に接近するのを確認する。
「各艦艇!飛翔体を迎撃せよ!」
各艦艇の迎撃システムが作動したのである。近年太平帝国海軍の各艦艇には対空戦闘用に開発された小型の全自動型パルスレーザー対空砲を設置…。超音速で飛来するミサイル迎撃に期待されたのである。数秒後各艦のパルスレーザー対空砲が炸裂…。蛍光色の光弾が各艦に接近する大型対艦ミサイルを迎撃したのである。全自動化によって大型対艦ミサイルは全弾迎撃…。敵艦から発射された大型対艦ミサイルは味方艦隊には一発も命中しなかったのである。通信兵が即座に報告する。
「通信です…敵軍の大型対艦ミサイルは全弾迎撃されました!味方艦隊への損害は皆無です!」
「最先端の科学技術の結晶である太平帝国海軍に旧型の対艦ミサイルで攻撃するとは…奴等は時代錯誤ですな♪」
ルーヴェルハルトは笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…所詮奴等は烏合の衆だ…」
総司令官のブラッドフォードも勝利を確信する。太平帝国軍の大艦隊はメガラニカ自由区近海へと直進したのである。十数分後…。メガラニカ自由区の防衛艦隊と遭遇したのである。ルーヴェルハルトはブリッジ正面の窓側にて恐る恐る双眼鏡を所持…。真正面の敵軍の中規模艦隊を確認する。
「大総統…敵軍の防衛艦隊です…」
メガラニカ自由区の防衛艦隊はミサイル巡洋艦八隻…。十九隻のミサイル駆逐艦と三十二隻の魚雷艇が確認出来る。
「中規模艦隊か…総攻撃せよ…」
ブラッドフォードは即刻中規模艦隊に対する総攻撃を指示…。各艦の大型対艦ミサイルと機関砲が炸裂する。太平帝国軍の先制攻撃によりメガラニカ防衛艦隊は二隻の大型ミサイル巡洋艦と六隻のミサイル駆逐艦が大型対艦ミサイルで撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。海面上には九百人以上の乗組員達が吹っ飛ばされる。
「味方艦隊の圧倒的優勢です!」
旗艦セイバードラゴンのブリッジでは乗組員達が沈没する敵艦を眺望する。
「太平帝国軍の圧勝は確実だな…」
「奴等は腐敗した国民主権勢力の残党だ…所詮メガラニカ自由区なんて…」
乗組員達は太平帝国軍の優勢に安堵したのである。同時刻…。メガラニカ自由区防衛艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦リトルヴィーナス艦内では味方艦隊の劣勢に騒然とする。
「多勢に無勢だ…こんな状態では防衛艦隊は全滅するぞ!」
「畜生…防衛艦隊が全滅すれば…太平帝国軍の本土上陸も時間の問題だ…」
乗組員達は騒然とするのだが…。艦長の【ウィンフィールド】は沈黙した様子であり冷静だったのである。乗組員の一人が恐る恐る…。
「ウィンフィールド艦長…如何されましょうか?こんなにも劣勢では味方の防衛艦隊は全滅しますよ…」
「狼狽えるな…」
ウィンフィールドは騒然とする周囲の乗組員達を制止させる。
「ですが艦長…今現在の戦況はメガラニカ防衛軍が圧倒的に不利ですよ…」
ウィンフィールドは沈黙した様子で腕時計を確認する。
「時間だな…」
周囲の乗組員達はハッとした表情で…。
「えっ…何が時間なのですか!?」
一人の乗組員が恐る恐るウィンフィールドに問い掛ける。
「作戦を開始する…」
ウィンフィールドは通信兵を直視するなり…。
「通信兵…即刻独立機動部隊に通信させるのだ…出撃の命令を…」
「はっ!」
周囲の者達はポカンとする。
「一体何を開始するのか?」
同時刻…。メガラニカ自由区西方地帯の軍港にて三隻の中型空母が出撃したのである。中型空母にはとある新型兵器が多数搭載される。西方地帯から独立機動部隊が出撃を開始してより五分後…。メガラニカ自由区南方地帯の防衛艦隊は壊滅状態であり撤退を余儀無くされる。壊滅寸前の防衛艦隊の光景に太平帝国軍総司令官のブラッドフォードは航空部隊の出撃を命令する。
「航空部隊を出撃させろ…メガラニカ自由区の南方地帯全域を空爆せよ…場合によっては非戦闘員への攻撃も許可する…徹底的に奴等を蹴散らせるのだ…」
「はっ!」
ブラッドフォードが命令すると五隻の大型戦闘航空母艦から推計三百機もの戦闘爆撃機が出撃したのである。航空部隊はメガラニカ自由区の南方地帯領空へと進入…。地上への空爆を開始したのである。南方地帯を防衛する地上部隊は必死に太平帝国軍の航空部隊を迎撃するも…。相手は超音速で飛行する戦闘爆撃機であり対空砲は通用せず対空ミサイルで攻撃しても機体に搭載されたパルスレーザーで簡単に無力化されたのである。攻撃開始から三分間が経過すると南方地帯の地上部隊は九割が壊滅…。数千人もの民間人が死傷したのである。旗艦セイバードラゴンではブリッジの乗組員達がモニターで戦況の映像を注視する。
「大総統♪太平帝国軍の圧倒的優勢です♪南方地帯の守備隊は壊滅状態ですよ…」
副艦長のルーヴェルハルトが笑顔で発言したのである。
「当然の結果だな…」
ブラッドフォードは現状であれば上陸作戦が可能であると判断…。
「敵軍は相当疲弊した状態だ…味方の上陸部隊に伝播させろ!」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは即座に各輸送艦に伝達する。上陸作戦を開始する直前…。スーパーレーダーが反応したのである。
「スーパーレーダーが反応しました!」
特殊無線技士がブラッドフォードに報告する。
「今度は何事だ!?」
ブラッドフォードが特殊無線技士に問い掛ける。
「西方の海域より無数の移動物体が出現…超音速で此方に急接近中です…」
「移動物体だと?敵機か?」
ブラッドフォードはモニターを作動させる。するとモニターの画面には無数の飛行物体が映写される。
「此奴は…」
飛行物体は軍用機の形状だが従来型の航空機とは異質的であり新型機であると認識する。
「大総統…敵軍の新型機でしょうか?」
「ひょっとすると無人兵器の戦闘用ドローンかも知れないな…」
「戦闘用ドローンですと?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「敵部隊の航空攻撃に警戒せよ…再度迎撃態勢に移行しろ…作戦中の航空部隊にもドローンの迎撃を急行させるのだ…」
「承知しました…大総統…」
戦闘艦隊と各輸送艦隊は上陸作戦を一時中止させ対空戦闘に移行する。数百機ものドローンが肉眼でも視認出来る位置へと到達…。
「大総統…敵軍のドローンです…」
「ドローンを撃墜せよ!味方艦隊には接近させるな!」
ブラッドフォードの命令と同時に各艦艇は対空戦闘を開始する。対空ミサイルと対空パルスレーザーが西方の上空にて炸裂したのである。対空パルスレーザーがドローンに直撃するのだが…。ドローンの機体内部には高エネルギー兵器を無力化する電磁防壁発生装置により対空パルスレーザーが無力化されたのである。旗艦セイバードラゴンのブリッジでは双眼鏡で副艦長のルーヴェルハルトが上空を直視する。
「なっ!?シールドでしょうか!?」
「シールドだと?」
「ドローンは高エネルギーのシールドで対空パルスレーザーを無力化しました…ひょっとして奴等…」
「電磁防壁だな…ドローンの機体に光学兵器を無力化するシールド装置を装備したのだな…」
電磁防壁発生装置とは高エネルギー兵器を無力化する補助装置である。近年では太平帝国軍にも同類の補助装置は保有するものの…。艦船用の大型装置であり小型航空機に搭載出来る小型の装置は開発中である。
「如何やら奴等…電磁防壁発生装置の小型化に成功したみたいだな…」
ドローン関連の科学技術ではメガラニカ自由区が太平帝国よりも数段階上回る。人員不足であり少数精鋭のメガラニカ防衛軍にとって無人兵器のドローンは最大の戦力であり戦闘に特化されたドローン兵器が多数開発される。一方の太平帝国軍にもドローン兵器は多数配備されるものの…。基本的に偵察用の警戒型ドローンであり戦闘に特化された戦闘用ドローンは試作機のみである。
「艦長…上空より敵機が接近中です!」
対空パルスレーザーの弾幕が太平帝国軍の艦隊周囲に炸裂するのだが…。ドローンは機体のシールド装置でパルスレーザーを潜り抜け味方艦隊の上空間近へと到達する。ドローンは即座に低空飛行…。高速航空魚雷を投下したのである。副艦長のルーヴェルハルトはドローンの高速航空魚雷を投下した瞬間を直視する。
「大総統!敵機は航空魚雷を投下しました…」
「航空魚雷だと?大昔の大戦か?」
本来パルスレーザーはミサイルやら敵機の迎撃を想定して開発された高エネルギー兵器であり水中の魚雷を迎撃するのは不可能である。
「大昔の大戦だな…」
太平帝国軍では魚雷は潜水艦と魚雷艇のみ搭載…。今現在航空魚雷は皆無である。
「艦長!右舷より魚雷が接近中です!」
特殊無線技士が報告する。
「即刻回避だ!」
ブラッドフォードは即座に回避を指示したのである。乗組員達の迅速の対応により旗艦セイバードラゴンは敵機の魚雷攻撃を回避する。旗艦セイバードラゴンの乗組員達はホッとするも…。直後である。対空戦闘中の一隻のミサイル巡洋艦と二隻の防空駆逐艦がドローンの魚雷攻撃により爆散…。轟沈したのである。
「大総統…戦闘中のミサイル巡洋艦ヘルフィッシュと二隻の防空駆逐艦が敵機の魚雷攻撃で撃沈されました…」
メガラニカ防衛軍のドローン兵器は潜水艦に搭載された大型魚雷であり大型艦をも撃沈出来る。今度は輸送艦五隻と魚雷艇八隻がドローンの魚雷攻撃で沈没…。輸送艦六隻と魚雷艇四隻が大破したのである。撃沈された輸送艦からは二千人以上の将兵が海面上に吹っ飛ばされる。作戦中だった航空部隊が味方艦隊上空に帰還…。ドローンを迎撃するもドローンの速度は戦闘爆撃機よりも高速であり反対に味方の戦闘爆撃機が反撃される。二分間の空戦で百八十機もの味方戦闘機が撃墜され…。百人以上のパイロットが戦死したのである。一方のドローン部隊も艦艇と艦載機の対空ミサイルにより三十四機撃墜される。副総統のルーヴェルハルトは上空の光景を直視するなり…。
「大総統…太平帝国軍の劣勢です…」
形勢は完全に逆転したのである。ブラッドフォードは沈黙した様子であるが…。自軍の劣勢に苛立ったのかピリピリし始める。すると直後…。主力の戦闘航空母艦にも被害が出始める。二隻の戦闘航空母艦はドローンの自爆攻撃によって飛行甲板が破壊され…。大破したのである。旗艦セイバードラゴンの同型艦であるレヴィアタンはドローンの魚雷攻撃で艦内の弾薬庫に引火…。一瞬で爆沈する。
「同型艦のレヴィアタンが撃沈されました!」
同型艦のレヴィアタンが爆沈したと同時に艦内の四十八機の艦載機は勿論…。五百人以上の乗組員達が一瞬で吹っ飛ばされる。旗艦セイバードラゴンの周辺海面上には無数の鉄屑やら乗組員達の死骸がプカプカと浮上する。艦隊の損害からルーヴェルハルトはブラッドフォードに撤退を要請したのである。
「大総統!現状では太平帝国軍が圧倒的に不利です!即刻撤退しなければ…味方の艦隊が全滅しますよ!」
撤退を要請するルーヴェルハルトにブラッドフォードはギロッと睥睨する。
「撤退だと?主力の戦闘航空母艦二隻は健在だ…ドローンは実弾の対空ミサイルで対応しろ…」
実際問題ドローンのシールド装置は対空パルスレーザーによる高エネルギー兵器は無力化出来る反面…。実弾兵器は無力化出来ない。
「ですが対空ミサイルのみでは…本数が…」
ドローンに実弾である対空ミサイルは通用するが…。ドローンに命中させるのは非常に困難であり発射された大半がドローンの機関砲で迎撃される。直後…。
「飛行甲板上空より敵機です!直上に急降下します!」
特殊無線技士が報告する。
「敵機だと?」
数秒後…。急降下したドローンは甲板の直上に対艦ミサイルを発射したのである。直後である。ドンッと艦内全体に爆発音が響き渡り…。旗艦セイバードラゴンの艦体全体がグラッと揺れ動いたのである。
「ぐっ!」
艦体が揺れ動いた衝撃にブラッドフォードは横たわる。
「大総統!大丈夫ですか!?」
副艦長のルーヴェルハルトは横たわったブラッドフォードに近寄る。
「私は大丈夫だ…本艦の被害状況は?」
先程のドローンの攻撃により旗艦セイバードラゴンの損傷は飛行甲板が大破…。艦内に収納された十八機の艦載機も破壊されたのである。反面…。飛行甲板以外の設備は健在だったのである。
「母艦としての機能は完全に阻害されたな…」
「飛行甲板は使用出来ませんが…旗艦としての機能は健在です…」
「であればダメージコントロールを急行せよ…」
乗組員達が飛行甲板を修理する最中…。三隻の大型輸送艦と六隻の防空駆逐艦がドローンと潜水艦の魚雷攻撃で撃沈されたのである。予想外の大損害にブラッドフォードは撤退を余儀無くされる。
(戦闘を続行し続ければ太平帝国軍の大艦隊でも確実に全滅するな…)
味方艦隊の全滅を危惧したブラッドフォードは不本意であるが…。撤退を決断する。艦内の通信機を所持するなり…。
「全軍に伝播する…戦闘続行は不可能だ…撤退を開始せよ…」
ブラッドフォードの判断に誰しもが反対しなかったのである。撤退を開始した太平帝国軍の艦隊にメガラニカ防衛軍のドローンは攻撃を停止…。本土へと戻ったのである。今回の大海戦で太平帝国軍は大型艦の戦闘航空母艦一隻とミサイル巡洋艦一隻…。小型艦の防空駆逐艦八隻と魚雷艇十二隻が撃沈される。損傷では三隻の戦闘航空母艦と二隻のミサイル巡洋艦が大破…。防空駆逐艦四隻と魚雷艇五隻が大破する。陸軍の上陸部隊は大型輸送艦が八隻撃沈され…。七隻の輸送艦が大破したのである。航空部隊は二百十九機の戦闘爆撃機を喪失…。五十四機の機体が損傷する。人的損害では合計六千九百四十二人が戦死…。合計三千五百六十一人が負傷したのである。一方のメガラニカ防衛軍はミライル駆逐艦二隻とミサイル駆逐艦六隻が撃沈され…。五隻のミサイル巡洋艦と十二隻のミサイル駆逐艦が大破したのである。陸軍の守備隊は五十八両の戦闘車両が破壊…。空軍は五十六機のドローンが撃墜される。人的被害では合計二千三百六十五人が戦死…。合計三千四百七十八人が負傷する。民間人への被害は合計三千五百八十九人が死亡…。合計四千七百三十二人が負傷したのである。今回の戦闘はメガラニカ南方海戦と命名される。今回の大敗北以降…。太平帝国の権威が失墜したのである。

第二話

大艦巨砲主義

メガラニカ南方海戦の大敗北以降…。メガラニカ自由区の猛反撃が開始されたのである。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の大量投入と国内の反政府勢力の協力により太平帝国の領土の約半分を攻略…。占領したのである。メガラニカ南方海戦から一週間後の五月二十四日…。各自治領の戦闘で推計九百万人もの民間人が死亡したのである。同日…。太平帝国首都イーストサイドの大総統官邸会議室では大総統のブラッドフォードとルーヴェルハルトが対談する。
「大総統…一週間の短期間で太平帝国の統治領の約半分がメガラニカ防衛軍の猛反撃により占拠されました…太平帝国軍は劣勢の状態です…」
「一週間で領土の約半分が奴等に占拠させるなんて…ドローン兵器の威力を見縊らなければ…こんな状態には…」
ブラッドフォードは後悔したのである。後悔するブラッドフォードにルーヴェルハルトは前向きな姿勢で…。
「ですが大総統!今現在でこそ劣勢ですが…今迄の戦闘でメガラニカ自由区は太平帝国以上に消耗した状態です!」
今現在のメガラニカ自由区と太平帝国の国力は一対十八でありメガラニカ自由区は圧倒的に不利である。メガラニカ防衛軍はドローン兵器の有効活用から各地の戦場で圧倒的物量の太平帝国軍を圧倒する。メガラニカ防衛軍の快進撃により太平帝国は領土の約半分を占拠されたものの…。短期間で戦線を拡大させたメガラニカ防衛軍は国力が貧弱であり兵站の遅滞から膠着し始める。
「メガラニカ防衛軍は膠着状態ですからね!劣勢を挽回出来る絶好のチャンスですよ!」
するとブラッドフォードは恐る恐る問い掛ける。
「訓練中の【ホムンクルス】だが…正規軍の将兵として実戦に配属出来るのか?」
「訓練中のホムンクルスの将兵達ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から研究…。開発されたクローン人間達の総称である。度重なる戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。世界最終戦争以前の太平帝国は小規模の新興国であり人員不足の観点からクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。通常クローン人間の開発は倫理的問題点から民主主義の国家では法律で禁止されるのが通例であるが…。人権を尊重しない独裁政治の太平帝国ではクローン人間の開発も容易に実現出来るのである。今現在は推計三百万人ものホムンクルスが大量生産され…。正規軍の将兵として実戦に参加出来そうなホムンクルスは推計二十万人である。
「彼等が正規軍の将兵として実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。太平帝国軍はホムンクルスと人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が直接戦闘しなくても…ホムンクルスの将兵を最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
近日では太平帝国の劣勢から脱走兵やらメガラニカ防衛軍に加勢する勢力が続出…。両勢力の力関係は完全に逆転し始める。人員確保が難化し続ける太平帝国軍にとってホムンクルス将兵の投入は非常に好都合だったのである。
「本題ですが…開発部が新型兵器を提案しました…」
開発部が提案した数種類の新型兵器の設計図をブラッドフォードに提出する。
「戦闘用ドローン…『ケルベロス』だと?」
「ケルベロスは…」
ケルベロスとは太平帝国軍が開発した無人戦闘機である。従来型の有人戦闘機よりは一回り小型であるがマッハ八以上の最高速度を発揮出来…。機体底部には対地対艦武装は大型ミサイルを搭載する。対空装備は対空プラズマレーザー機関砲と実弾の対空機関砲を両方搭載…。
「ケルベロスが量産化に成功出来れば…メガラニカ防衛軍のドローン兵器『グリフォン』にも対抗出来ましょう…」
メガラニカ南方海戦で太平帝国軍艦隊を撃退させたドローン兵器の正体はグリフォンと判明する。本機は南方海戦で太平帝国海軍部隊が鹵獲したグリフォンを研究…。設計された機体でありメガラニカ防衛軍のグリフォンに対抗出来る戦闘用ドローン兵器として提案されたのである。
「ケルベロス…試作機の完成を見届けるか…」
二枚目の設計図を直視する。
「ん?此奴は…」
「二枚目の新型兵器は超砲撃型戦艦…『アプセラス』です…」
「超砲撃型戦艦…アプセラス?」
正式名は超砲撃型戦艦アプセラスであり海軍直属の開発部が提案したのである。今現在では完全に過去の遺産である超弩級戦艦であるが戦艦アプセラスは最先端の科学技術と過去のロストテクノロジーを結集…。現代型大艦巨砲主義の象徴である。艦体の全長は三百メートルサイズと巨体であり全幅は五十メートルサイズ…。全備総重量は前代未聞の推定七十万トンクラスの超弩級戦艦である。
「今時大艦巨砲主義なんて…時代錯誤だろ…近代に逆戻りするのか?」
ブラッドフォードは時代錯誤であると感じるのだが…。
「戦艦アプセラスは現在開発中の超大型電磁投射砲を搭載する予定なのです…所謂試験試作型の実験戦艦ですね…」
「電磁投射砲か…」
電磁投射砲は現在太平帝国軍が開発中の実弾電磁兵器である。高額のミサイルよりも安価であり高威力を発揮出来ると期待される。
「海軍開発部の大計画では戦艦アプセラスの装甲は『エターナルメタル』を使用するとの情報です…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは月面で採掘された不朽性の鉄鉱石である。非常に軽量であるが硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスも非常に安価ですからね♪」
「であれば建造を急行するべきだな…」
直後である。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で会議室に入室したのである。
「緊急事態だと?一体何事だ?」
ブラッドフォードが問い掛けると通信兵はビクビクした様子で…。
「南方のメティス諸島…メティス基地が敵軍の攻勢で占拠…基地を防衛する守備隊は必死に交戦しましたが…守備隊は玉砕したとの情報です…」
「なっ!?メティス基地の守備隊が…玉砕だと!?守備隊は全滅したのか!?」
ルーヴェルハルトは驚愕したのである。
「残念ですが…」
メティス基地とは強固の大規模要塞が構築された本土防衛用の第二防衛ライン…。推計三万人もの太平帝国陸軍守備隊が配置されたが本日未明にメガラニカ防衛軍の強襲で全滅したのである。
「メティス基地が陥落したか…恐らく今度の攻撃目標は最終防衛ラインの…パシフィスアイランド基地だな…」
パシフィスアイランド基地とは最南端に位置する離島…。パシフィスアイランド本島を防衛する太平帝国軍守備隊の本拠地である。太平帝国本土を防衛する最重要防衛拠点であるものの…。推計八十万人もの民間人も安住する。ルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「大総統…即刻パシフィスアイランド本島に援軍を派遣させますか?」
「援軍は不要だ…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの返答にルーヴェルハルトと通信兵は絶句したのである。
「本気ですか!?大総統!?」
「私は本気だよ…ルーヴェルハルト…」
「如何して援軍を派遣しないのですか!?パシフィスアイランドが陥落すれば…今度は本土が攻撃対象なのですよ!?」
ブラッドフォードは再度無表情で返答する。
「パシフィスアイランドの守備隊には陽動作戦に利用する…」
「陽動作戦ですと?」
「味方の戦闘機に特殊弾頭を搭載…パシフィスアイランドに侵攻中のメガラニカ防衛軍を特殊弾頭ミサイルで殲滅する…」
パシフィスアイランド基地は陸海軍の大部隊が駐屯…。基地内の兵力も推計十四万人であり基地を陥落させるには相当数の部隊が必要である。パシフィスアイランドを攻防する両軍に特殊弾頭ミサイルで攻撃…。当然として味方の部隊は全滅するが敵軍の侵攻を阻止するには非常に好都合である。
「特殊弾頭ミサイルですと!?パシフィスアイランドに特殊弾頭ミサイルなんて使用すれば味方の守備隊は勿論…大勢の住民達にも被害が…」
特殊弾頭ミサイルは所謂核兵器の一種であり一発の弾道ミサイルで十数キロメートルもの広範囲を焦土化させられる。非人道的でありイエスマンのルーヴェルハルトも特殊弾頭ミサイルの使用には不承する。
「今更何を躊躇するのだ?ルーヴェルハルト…特殊弾頭なら二年前の大戦争で無尽蔵に使用しただろ…」
小規模国家であった太平帝国が世界最終戦争で勝利出来たのは特殊弾頭ミサイルの多用である。
「特殊弾道ミサイルで敵味方諸共…殲滅されるのですか?」
「最早多少の犠牲は止むを得ない…」
ルーヴェルハルトの問い掛けにブラッドフォードは即答する。
「特殊弾頭の使用は極秘だぞ…兎にも角にもパシフィスアイランドの守備隊には本島の防衛を徹底させろ…」
「承知しました…」
ルーヴェルハルトは不本意であるが…。ブラッドフォードの提案する殲滅作戦に承諾したのである。

第三話

攻防戦

世界暦七月二十七日早朝…。メガラニカ防衛軍の大艦隊が太平帝国最終防衛区域パシフィスアイランドへと進行を開始したのである。同時刻…。パシフィスアイランド基地総司令部では拠点防衛用のスーパーレーダーが反応したのである。
「一体何事だ!?」
パシフィスアイランド基地陸軍総司令官【ウィグノール】が偵察員に問い掛ける。
「スーパーレーダーが反応しました!」
即座に立体映像のホログラムで領海を確認する。ホログラムには数十隻もの艦艇が確認出来る。
「此奴はメガラニカ防衛軍の大艦隊だな…総力戦でパシフィスアイランドを攻略するみたいだ…」
「如何しましょう…総司令官…」
「即刻防衛戦を開始する!各戦闘員は戦闘配置だ!パシフィスアイランドは徹底的に死守しろ!」
ウィグノールは各員に防衛戦を指示する。
「はっ!」
パシフィスアイランドは本土防衛の最終防衛ラインでありパシフィスアイランドが陥落すれば本土が攻撃されるのは明白である。
「通信兵…本土にも援軍の要請を伝達しろ…」
「はっ!」
通信兵は即座に総本部に通達…。本土からの援軍を要請したのである。三十分後…。メガラニカ防衛軍の大艦隊がパシフィスアイランドの防衛区域へと到達したのである。
「総司令官…メガラニカ防衛軍の大艦隊が防衛区域に到達しました…」
「防衛戦を開始するか…」
ウィグノールの攻撃開始の合図と同時に海面上からは百二十隻ものミサイル警備艇…。滑走路からは百三十機もの戦闘爆撃機が飛来したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍の大艦隊旗艦である航空大型ミサイル戦闘艦レヴィアタンはスーパーレーダーで太平帝国軍のミサイル警備艇と戦闘爆撃機を確認する。
「艦長…敵部隊を確認しました…」
旗艦レヴィアタンの艦長はメガラニカ南方海戦で活躍したウィンフィールドである。
「即刻ホログラムを作動させろ…」
乗組員は艦内のホログラム装置を作動させる。するとホログラムには百隻以上のミサイル警備艇と戦闘爆撃機が立体映像として映写される。
「敵部隊は旧型の兵器ばかりか…」
「如何されますか?」
乗組員の問い掛けにウィンフィールドは即答する。
「即刻迎撃せよ…母艦からはドローン兵器を発進させろ…」
「承知しました…」
旗艦のレヴィアタンから二十八機のグリフォン型ドローン兵器が発進する。旗艦レヴィアタンは全長二百四十メートルサイズ…。全幅三十メートルサイズの大型艦であり満載排水量は推定五万トンである。ミサイル戦闘艦としての機能は勿論…。航空機用の母艦としても使用出来る。所謂現代型の航空戦艦である。艦載機はドローン兵器であり合計五十機以上搭載出来る。旗艦のレヴィアタンは勿論…。レヴィアタン級航空大型ミサイル戦闘艦六隻と最新鋭のドローン空母艦隊から合計四百機以上ものグリフォン型ドローン兵器が発進したのである。ドローン部隊が発進してより十五分後…。最前線のパシフィスアイランド防衛部隊と遭遇したのである。両軍が遭遇した直後に戦闘が開始され…。パシフィスアイランド防衛部隊はミサイル警備艇と戦闘爆撃機による対空ミサイル攻撃で十四機のドローンを撃墜したのである。ドローン撃墜に防衛部隊の将兵達は戦意が向上するも…。相手は新型のドローン兵器であり二分も経過すればドローンの反撃で八十三隻のミサイル警備艇が撃沈され七十六機の戦闘爆撃機が一瞬で撃墜されたのである。旗艦レヴィアタンの乗組員達は艦橋から戦況を確認する。
「艦長…味方の優勢です…」
「上出来だな…」
厳格の軍人であるウィンフィールドだが…。ドローン部隊の大戦果に上出来と判断したのである。
「ドローン部隊には攻撃を続行させろ…パシフィスアイランドを防衛する陸上部隊に空爆を仕掛けるのだ…」
ドローン部隊の攻撃の続行を指示する。
「承知しました!」
するとウィンフィールドは恐る恐る…。
「当然として無関係の非戦闘員への被害は最小限に努力せよ…」
「承知です…」
ドローン部隊の猛反撃からパシフィスアイランド防衛部隊は総崩れ…。海上の防衛網は簡単に突破されたのである。
「総司令官…海上の防衛部隊が壊滅…敵軍に突破されました…」
通信兵の報告にパシフィスアイランド総司令部は混乱する。
「海上の防衛部隊が壊滅だと…」
「敵軍はドローン部隊を使用したのか…」
総司令官のウィグノールは一瞬沈黙するも…。
「地上の守備隊に伝播せよ…陸上の防衛戦を開始すると!」
「承知しました…」
基地内の将兵達は承諾したのである。
「非戦闘員は緊急用シェルターに避難させろ…」
陸上の防衛部隊は即座に行動を開始する。緊急警報システムが作動され…。住民達は即座に各地域の地下壕に設置された避難用の緊急用防空シェルターへと移動したのである。住民達の避難終了から三分後…。メガラニカ防衛軍のドローン部隊がパシフィスアイランド領空へと到達する。
「メガラニカ防衛軍のドローンだ!」
「海上の防衛部隊は全滅したのか?」
「兎にも角にも上空の敵機を迎撃するぞ!」
陸上の守備隊は迎撃を開始…。上空のドローンを目標に攻撃したのである。数千発もの機関砲と対空ミサイルが上空に炸裂する。守備隊の攻撃で二十二機のドローンを撃墜するも…。ドローンの空爆で三十六両の戦闘車が破壊され百三十七人の将兵が戦死する。三分間の空爆で陸上部隊の八割が壊滅したのである。
「陸上部隊の八割が壊滅しました…」
守備隊の劣勢に総司令部は混乱する。
「なっ!?数分間で八割も!?」
「全滅だな…」
「ドローンの空爆で守備隊の八割が壊滅したのか!?」
総司令部の将兵達は予想外の事態に恐怖したのである。直後…。スーパーレーダーが反応する。
「スーパーレーダーが反応したぞ…今度は何事だ?」
ホログラムを作動させるとメガラニカ防衛軍大艦隊の様子が映写される。
「敵軍の大艦隊だぞ…パシフィスアイランドの領海に到達したのか!?」
メガラニカ防衛軍の大艦隊は航空大型ミサイル戦闘艦が七隻と正規空母四隻…。ミサイル巡洋艦が十三隻と三十一隻の防空駆逐艦が確認出来る。後方には上陸部隊を乗艦させた大型輸送艦が十八隻…。補助用の魚雷艇が十五隻確認出来る。メガラニカ防衛軍はドローンの投入で海上の防衛部隊を撃退…。メガラニカ防衛軍艦隊はノーダメージでパシフィスアイランドの領海へと到達出来たのである。
「本土から援軍は出動したのか!?」
ウィグノールは再度通信兵に問い掛ける。
「無線では…本土から味方の潜水艦が一隻…出撃したとの情報です…」
「はっ?」
ウィグノールは絶句する。
「こんな状況で援軍が潜水艦一隻だけだと!?何故海軍自慢の主力艦隊を出動させない!?」
「主力艦隊は本土を防衛するのが手一杯であると…」
現実問題…。メガラニカ南方海戦の大敗北から太平帝国軍主力艦隊は艦隊の再建に手一杯であり主力の大艦隊は派遣出来なかったのである。
「畜生が…」
通信兵の報告にウィグノールはピリピリする。
(パシフィスアイランドは陥落しろと?総本部は本土での戦闘を決断したのか?)
総本部の意向に疑問視するが…。ウィグノールは決断したのである。
「総員…太平帝国本土からの援軍は期待出来ないが…精一杯パシフィスアイランドを死守するぞ!」
「はっ!承知しました…」
絶望的状況下であるが守備隊の将兵達は一致団結…。残存部隊による徹底抗戦を決意したのである。同時刻…。メガラニカ防衛軍大艦隊は上陸作戦を開始したのである。十八隻の大型輸送艦から三十六隻の上陸用舟艇が出動…。陸上部隊によるパシフィスアイランド上陸作戦が開始されたのである。上陸部隊の戦力は主力戦車五十二両…。装甲車と軽量の戦闘車が六十四両投入される。二万人の海兵隊が上陸したのである。今回の上陸作戦では最新型の地上用ドローンである無人小型戦車を五機投入…。試作段階であるが実験目的で無人小型戦車が実戦配備されたのである。
「奴等…メガラニカ防衛軍の上陸部隊です…」
最前線に位置する陸軍の残存部隊が無傷のトーチカから恐る恐る…。上陸中の敵部隊を確認する。
「俺達は一先ず撤収するぞ…敵軍への反撃は本隊と合流してからだ…」
「はっ!」
最前線の残存部隊は総司令部へと撤収したのである。メガラニカ防衛軍上陸部隊は無傷で上陸地点を制圧…。後方支援部隊も上陸地点への上陸を開始したのである。同時刻…。太平帝国南方地帯軍港から出航した新型ステルス潜水艦アスピドケロンは国家元首であるブラッドフォードが艦長として乗艦したのである。
「航海は順調そうだな…」
アスピドケロンは順調に深度七百メートルの海底下を潜航し続ける。
「パシフィスアイランドの戦況は?」
ブラッドフォードは乗組員に問い掛けるとホログラム装置を作動…。地形の様子を小型立体映像で映写させたのである。
「現状では太平帝国軍の劣勢ですね…」
「好都合だ…最低でも敵部隊の五割程度は中心地に侵攻させたい…」
同時刻…。陸地の残存部隊は必死に応戦するも最新兵器を多数投入するメガラニカ防衛軍の侵攻を阻止するのは実質不可能であり後退したのである。最早パシフィスアイランドは本拠地に残存した守備隊以外は壊滅…。パシフィスアイランドが陥落するのは最早時間の問題でありメガラニカ防衛軍の勝利は目前だったのである。メガラニカ防衛軍主力艦隊旗艦レヴィアタンでは艦長のウェンフィールドが艦内ホログラムで戦場の様子を直視する。
「艦長…味方部隊は優勢です♪夕方にはパシフィスアイランドは陥落するでしょう♪」
部下達は余裕の様子であったが…。
「奇妙だな…」
今回の戦闘でウェンフィールドは不審に感じる。
「彼等にとってパシフィスアイランドは最終防衛ラインなのに…配備された戦力は旧型ばかり…援軍も派遣されないなんて不自然だな…」
パシフィスアイランドに配備された兵器は実質旧型兵器ばかりであり援軍も出撃しなかったのである。
「ひょっとすると…陽動作戦か?」
「陽動作戦ですと?」
直後…。
メンテ
宇宙大動乱 ( No.97 )
日時: 2021/09/17 22:27
名前: 月影桜花姫

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はエネルギーエネルギーシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はエネルギーエネルギーシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…宇宙戦闘用多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。エネルギーエネルギーシールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも宇宙戦闘用多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の宇宙戦闘用多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のエネルギーエネルギーシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するエネルギーエネルギーシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはエネルギーエネルギーシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
エネルギーエネルギーシールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたエネルギーエネルギーシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく機影の正体は宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の宇宙戦闘用多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型エネルギーエネルギーシールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型エネルギーエネルギーシールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するエネルギーエネルギーシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はエネルギーエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はエネルギーエネルギーシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとエネルギーエネルギーシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。エネルギーエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のエネルギーエネルギーシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのエネルギーエネルギーシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…即刻脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「本拠地の防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『トレジャーホール』に接近中との情報です…」
小惑星トレジャーホールとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星トレジャーホールに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。トレジャーホールの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ隊活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを攻略目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの宇宙戦闘用多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラム立体映像で地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河系全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
ホログラム立体映像を再作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…援軍でしょうか?」
「セイバードラゴン級大型宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき巨大物体が確認出来ます…巨大物体は超大型ミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」
「えっ…アプセラスって…」
ストライダーはハッとする。
「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望するのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。
「此奴の性能は?」
アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。宇宙戦闘用多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星トレジャーホールを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン兵器『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星トレジャーホールを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星トレジャーホールの宙域へと到達する。
「トレジャーホールの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「トレジャーホールを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のトレジャーホールのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるトレジャーホールを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがトレジャーホールの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型エネルギーエネルギーシールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「エネルギーエネルギーシールド装置だな…であれば光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。宇宙戦闘用多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はエネルギーエネルギーシールドジャミング装置が搭載され…。エネルギーエネルギーシールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アプセラスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と宇宙戦闘用多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら宇宙戦闘用多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはエネルギーエネルギーシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら宇宙戦闘用多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」
「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。トレジャーホールが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
トレジャーホール防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でトレジャーホール防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。トレジャーホールは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…トレジャーホールを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事トレジャーホールを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。艦載機では三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。艦載機では二百四十八機のスペースドローンが損傷する。人的損害では推計五十三万人もの将兵が死傷したのである。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。十三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が死傷したのである。各兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

タイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインであるトレジャーホールを無事制圧した大銀河帝国軍はトレジャーホールで放置された三十四隻の大型宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。トレジャーホール制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪トレジャーホール制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
トレジャーホール制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは旗艦のアプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…奴等は正気ですか?」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある地上の大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河全面戦争により敗北…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。大銀河共和国軍に勝利した大銀河革命軍は大銀河帝国の常備軍…。大銀河帝国軍へと改編されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」
数秒後…。
「全軍…敵軍宇宙艦隊に砲撃せよ!」
砲撃の合図と同時に大銀河帝国軍宇宙艦隊の総攻撃が開始される。同時刻…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊は旗艦である改良型サラマンダー級宇宙戦艦には次期総帥のウィンフィールドが乗艦する。
「艦長!大銀河帝国軍が総攻撃を開始しました!」
「全軍に伝達せよ!此方も応戦する!」
ウィンフィールドは応戦を指示したのである。直後…。一光年の宙域より発射された数千万発もの高エネルギーの光弾が味方宇宙艦隊に到達したのである。各艦に多数の光弾が命中するものの…。大型艦はエネルギーエネルギーシールド装置により光弾を無力化したのである。一方小型艦艇は簡単に撃沈され…。一度の総攻撃で推計三千隻もの小型艦艇が轟沈したのである。轟沈した小型艦艇は宇宙の藻屑へと変化…。数千人もの将兵が宇宙空間に吹っ飛ばされたのである。凄惨なる光景にウィンフィールドは落涙するものの…。
「彼等の犠牲を無駄にするな…即刻反撃しろ!」
タイラントキラー宇宙艦隊も反撃を開始したのである。各艦艇による高エネルギー砲塔の艦砲射撃…。実弾兵器である光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルを多数発射したのである。
「母艦部隊はドローン兵器を発進させ…敵軍艦隊に突入させろ!」
各航空母艦からはスペースドローンは勿論…。スペースドローンの後継機『ホワイトピクシー』が飛来したのである。各機体はワープ機能を作動…。数秒後には二万機以上のドローン兵器が大銀河帝国軍宇宙艦隊の宙域へと到達したのである。
「ひっ!ドローン兵器です!」
突如として出現したドローン兵器に大銀河帝国軍の将兵達は一時的に畏怖する。
「狼狽えるな…ドローン兵器を撃墜せよ…」
ブラッドフォードはドローンの迎撃を指示すると各艦艇は迎撃を開始したのである。するとブラッドフォードは気になるのかホログラム装置を作動…。スペースドローンの立体映像が映写される。
「えっ?大総統…如何されましたか?」
ブリッジのホムンクルス乗組員が彼に問い掛ける。
「恐らく此奴はタイラントキラーの新型機だな…」
ホワイトピクシーは性能的には大銀河帝国軍のセイバードローンと五分五分である。宇宙艦隊上空では互角の空中戦が展開される。
「味方のセイバードローン諸共…撃墜せよ…」
「味方の軍用機も攻撃するのですか?」
ブラッドフォードの指示にブリッジのホムンクルス乗組員が再度問い掛ける。
「所詮ドローンは自爆兵器だ…破壊されたって何機でも補充出来る…」
資源豊富の大銀河帝国軍にとってドローン兵器とは実質自爆用途の無人特攻兵器である。各機体の機体内部には宇宙戦艦クラスの大型艦をも一撃で撃沈出来る自爆装置が内蔵される。ブラッドフォードの指示に各艦艇は味方のドローン兵器諸共対空パルスレーザー機関砲は勿論…。実弾兵器の光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃したのである。無尽蔵の光弾と実弾攻撃により敵味方のドローン兵器が撃墜される。
「敵軍の宇宙航空戦力が半減したな…」
大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空攻撃によりタイラントキラーの宇宙航空戦力が低下したのである。
「再度敵軍の防衛宇宙艦隊を攻撃…タイラントキラー本拠地エデンプラネットに突入するぞ…」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵だった…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも…貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私の心情は救済されました♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だがホープエリアに大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に大銀河帝国からの独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国全勢力ですよ…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」
「困難なのは承知だ…相手はブラッドフォードだからな…一筋縄では無理だろう…」
メンテ
宇宙 ( No.98 )
日時: 2021/09/17 22:46
名前: 月影桜花姫

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らくタイラントキラーの宇宙艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!タイラントキラーの宇宙艦隊です!総数七万隻前後…大艦隊です!」
「敵軍宇宙艦隊の総数は七万隻前後か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!タイラントキラーの宇宙大艦隊が味方の宇宙艦隊に急接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍宇宙艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の大型宇宙戦闘艦隊を中心に各艦艇が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はエネルギーエネルギーシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はエネルギーエネルギーシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…宇宙戦闘用多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。エネルギーエネルギーシールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも宇宙戦闘用多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の宇宙戦闘用多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のエネルギーエネルギーシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するエネルギーエネルギーシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはエネルギーエネルギーシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
エネルギーエネルギーシールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたエネルギーエネルギーシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく機影の正体は宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の宇宙戦闘用多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型エネルギーエネルギーシールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型エネルギーエネルギーシールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するエネルギーエネルギーシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はエネルギーエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はエネルギーエネルギーシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとエネルギーエネルギーシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。エネルギーエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のエネルギーエネルギーシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのエネルギーエネルギーシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…即刻脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「本拠地の防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『トレジャーホール』に接近中との情報です…」
小惑星トレジャーホールとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星トレジャーホールに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。トレジャーホールの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ隊活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを攻略目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの宇宙戦闘用多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラム立体映像で地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河系全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
ホログラム立体映像を再作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…援軍でしょうか?」
「セイバードラゴン級大型宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき巨大物体が確認出来ます…巨大物体は超大型ミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」
「えっ…アプセラスって…」
ストライダーはハッとする。
「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望するのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。
「此奴の性能は?」
アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百四十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。宇宙戦闘用多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星トレジャーホールを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン兵器『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星トレジャーホールを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星トレジャーホールの宙域へと到達する。
「トレジャーホールの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「トレジャーホールを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のトレジャーホールのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるトレジャーホールを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがトレジャーホールの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型エネルギーエネルギーシールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「エネルギーエネルギーシールド装置だな…であれば光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。宇宙戦闘用多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はエネルギーエネルギーシールドジャミング装置が搭載され…。エネルギーエネルギーシールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アプセラスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と宇宙戦闘用多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「所詮無人機だが…意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「タイラントキラーのドローン部隊は壊滅した…戦闘中のドローン部隊には後方の敵軍宇宙艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら宇宙戦闘用多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはエネルギーエネルギーシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら宇宙戦闘用多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊がタイラントキラー宇宙艦隊を圧倒しました…」
「であれば即刻タイラントキラー宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。トレジャーホールが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
トレジャーホール防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍宇宙艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でトレジャーホール防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。トレジャーホールは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…トレジャーホールを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事トレジャーホールを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。艦載機では三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。艦載機では二百四十八機のスペースドローンが損傷する。人的損害では推計五十三万人もの将兵が死傷したのである。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。十三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が死傷したのである。各兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

タイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインであるトレジャーホールを無事制圧した大銀河帝国軍はトレジャーホールで放置された三十四隻の大型宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。トレジャーホール制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪トレジャーホール制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
トレジャーホール制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは旗艦のアプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「タイラントキラーの宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…奴等は正気ですか?」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある地上の大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河全面戦争により敗北…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。大銀河共和国軍に勝利した大銀河革命軍は大銀河帝国の常備軍…。大銀河帝国軍へと改編されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」
数秒後…。
「全軍…敵軍宇宙艦隊に砲撃せよ!」
砲撃の合図と同時に大銀河帝国軍宇宙艦隊の総攻撃が開始される。同時刻…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊は旗艦である改良型サラマンダー級宇宙戦艦には次期総帥のウィンフィールドが乗艦する。
「艦長!大銀河帝国軍が総攻撃を開始しました!」
「全軍に伝達せよ!此方も応戦する!」
ウィンフィールドは応戦を指示したのである。直後…。一光年の宙域より発射された数千万発もの高エネルギーの光弾が味方宇宙艦隊に到達したのである。各艦に多数の光弾が命中するものの…。大型艦はエネルギーエネルギーシールド装置により光弾を無力化したのである。一方小型艦艇は簡単に撃沈され…。一度の総攻撃で推計三千隻もの小型艦艇が轟沈したのである。轟沈した小型艦艇は宇宙の藻屑へと変化…。数千人もの将兵が宇宙空間に吹っ飛ばされたのである。凄惨なる光景にウィンフィールドは落涙するものの…。
「彼等の犠牲を無駄にするな…即刻反撃しろ!」
タイラントキラー宇宙艦隊も反撃を開始したのである。各艦艇による高エネルギー砲塔の艦砲射撃…。実弾兵器である光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルを多数発射したのである。
「母艦部隊はドローン兵器を発進させ…敵軍艦隊に突入させろ!」
各航空母艦からはスペースドローンは勿論…。スペースドローンの後継機『ホワイトピクシー』が飛来したのである。各機体はワープ機能を作動…。数秒後には二万機以上のドローン兵器が大銀河帝国軍宇宙艦隊の宙域へと到達したのである。
「ひっ!ドローン兵器です!」
突如として出現したドローン兵器に大銀河帝国軍の将兵達は一時的に畏怖する。
「狼狽えるな…ドローン兵器を撃墜せよ…」
ブラッドフォードはドローンの迎撃を指示すると各艦艇は迎撃を開始したのである。するとブラッドフォードは気になるのかホログラム装置を作動…。スペースドローンの立体映像が映写される。
「えっ?大総統…如何されましたか?」
ブリッジのホムンクルス乗組員が彼に問い掛ける。
「恐らく此奴はタイラントキラーの新型機だな…」
ホワイトピクシーは性能的には大銀河帝国軍のセイバードローンと五分五分である。宇宙艦隊上空では互角の空中戦が展開される。
「味方のセイバードローン諸共…撃墜せよ…」
「味方の軍用機も攻撃するのですか?」
ブラッドフォードの指示にブリッジのホムンクルス乗組員が再度問い掛ける。
「所詮ドローンは自爆兵器だ…破壊されたって何機でも補充出来る…」
資源豊富の大銀河帝国軍にとってドローン兵器とは実質自爆用途の無人特攻兵器である。各機体の機体内部には宇宙戦艦クラスの大型艦をも一撃で撃沈出来る自爆装置が内蔵される。ブラッドフォードの指示に各艦艇は味方のドローン兵器諸共対空パルスレーザー機関砲は勿論…。実弾兵器の光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃したのである。無尽蔵の光弾と実弾攻撃により敵味方のドローン兵器が撃墜される。
「タイラントキラーの宇宙航空戦力が半減したな…」
大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空攻撃によりタイラントキラーの宇宙航空戦力が低下したのである。
「再度敵軍の防衛宇宙艦隊を攻撃…タイラントキラー本拠地エデンプラネットに突入するぞ…」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵だった…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも…貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私の心情は救済されました♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だがホープエリアに大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に大銀河帝国からの独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国全勢力ですよ…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」
「困難なのは承知だ…相手はブラッドフォードだからな…一筋縄では無理だろう…」
メンテ
宇宙大動乱 ( No.99 )
日時: 2021/09/18 19:54
名前: 月影桜花姫

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンクラスと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超大型宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全軍に敵軍宇宙艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍宇宙艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの超大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家建国を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦布告を表明する。
「恐らくタイラントキラーの宇宙艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!タイラントキラーの宇宙艦隊です!総数七万隻前後…大艦隊です!」
「敵軍宇宙艦隊の総数は七万隻前後か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!タイラントキラーの宇宙大艦隊が味方の宇宙艦隊に急接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍宇宙艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の大型宇宙戦闘艦隊を中心に各艦艇が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はエネルギーシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はエネルギーシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…宇宙戦闘用多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。エネルギーシールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも宇宙戦闘用多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の宇宙戦闘用多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のエネルギーシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するエネルギーシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはエネルギーシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
エネルギーシールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたエネルギーシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
するとブラッドフォードは小声で発言する。
「奴等の希望する愚衆政治国家実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍宇宙艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
「陽動作戦ですと?」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方宇宙艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影でしょうか…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく機影の正体は宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙主力艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊各艦艇のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方宇宙艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の各艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の宇宙戦闘用多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型エネルギーシールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型エネルギーシールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するエネルギーシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の各艦はエネルギーシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとエネルギーシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。エネルギーシールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のエネルギーシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのエネルギーシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…即刻脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動艦隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンクラスにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙主力艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは不本意であるが撤退を決意したのである。
「戦闘中の全軍に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「本拠地の防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍宇宙主力艦隊は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。一方のタイラントキラーは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の大規模宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「漁夫の利か…であれば一日も早くタイラントキラーの本拠地を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに主力宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され…。最悪味方宇宙艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの主力宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙主力艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙主力艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば宇宙奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『トレジャーホール』に接近中との情報です…」
小惑星トレジャーホールとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の宇宙奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星トレジャーホールに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。トレジャーホールの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ隊活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを攻略目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上防衛部隊と非戦闘員が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上防衛部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上防衛部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上防衛部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの超大型サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上防衛部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上防衛部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の宇宙大艦隊です…地上防衛部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上防衛部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の主力宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上防衛部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。味方の地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「非戦闘員への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上防衛部隊の各基地と周辺区域を攻撃したのである。地上防衛部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの宇宙戦闘用多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラム立体映像で地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上防衛部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河系全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
ホログラム立体映像を再作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…援軍でしょうか?」
「セイバードラゴン級大型宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型宇宙戦艦クラスの超大型ミサイルらしき巨大物体が確認出来ます…巨大物体は超大型ミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードは艦内ホログラムでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはホログラムの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の巨大新型兵器…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の宇宙艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自軍の自爆攻撃によって推計五百万人の地上軍兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。自国民からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」
「えっ…アプセラスって…」
ストライダーはハッとする。
「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望するのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。
「此奴の性能は?」
アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百四十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンクラスの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。宇宙戦闘用多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星トレジャーホールを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン兵器『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星トレジャーホールを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星トレジャーホールの宙域へと到達する。
「トレジャーホールの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「トレジャーホールを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のトレジャーホールのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるトレジャーホールを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがトレジャーホールの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型エネルギーシールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「エネルギーシールド装置だな…であれば光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。宇宙戦闘用多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はエネルギーシールドジャミング装置が搭載され…。エネルギーシールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アプセラスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と宇宙戦闘用多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「所詮無人機だが…意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「タイラントキラーのドローン部隊は壊滅した…戦闘中のドローン部隊には後方の敵軍宇宙艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら宇宙戦闘用多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはエネルギーシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら宇宙戦闘用多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊がタイラントキラー宇宙艦隊を圧倒しました…」
「であれば即刻タイラントキラー宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。トレジャーホールが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
トレジャーホール防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍宇宙艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でトレジャーホール防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。トレジャーホールは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…トレジャーホールを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊は無事トレジャーホールを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。艦載機では三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。艦載機では二百四十八機のスペースドローンが損傷する。人的損害では推計五十三万人もの将兵が死傷したのである。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。十三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が死傷したのである。各兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

タイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインであるトレジャーホールを無事制圧した大銀河帝国軍はトレジャーホールで放置された三十四隻の大型宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。トレジャーホール制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪トレジャーホール制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
トレジャーホール制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を開始すると…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは宇宙主力艦隊旗艦アプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「タイラントキラーの宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…奴等は正気ですか?」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある地上の大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河全面戦争により敗北…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。大銀河共和国軍に勝利した大銀河革命軍は大銀河帝国の常備軍…。大銀河帝国軍へと改編されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」
数秒後…。
「全軍…敵軍宇宙艦隊に砲撃せよ!」
砲撃の合図と同時に大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の総攻撃が開始される。同時刻…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊は旗艦である改良型サラマンダー級宇宙戦艦には次期総帥のウィンフィールドが乗艦する。
「艦長!大銀河帝国軍が総攻撃を開始しました!」
「全軍に伝達せよ!此方も応戦する!」
ウィンフィールドは応戦を指示したのである。直後…。一光年の宙域より発射された数千万発もの高エネルギーの光弾が味方宇宙艦隊に到達したのである。各艦に多数の光弾が命中するものの…。大型艦はエネルギーシールド装置により光弾を無力化したのである。一方小型艦艇は簡単に撃沈され…。一度の総攻撃で推計三千隻もの小型艦艇が轟沈したのである。轟沈した小型艦艇は宇宙の藻屑へと変化…。数千人もの将兵が宇宙空間に吹っ飛ばされたのである。凄惨なる光景にウィンフィールドは落涙するものの…。
「彼等の犠牲を無駄にするな…即刻反撃しろ!」
タイラントキラー宇宙艦隊も反撃を開始したのである。各艦艇による高エネルギー砲塔の艦砲射撃…。実弾兵器である光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルを多数発射したのである。
「母艦部隊はドローン兵器を発進させ…敵軍艦隊に突入させろ!」
各航空母艦からはスペースドローンは勿論…。スペースドローンの後継機『ホワイトピクシー』が飛来したのである。各機体はワープ機能を作動…。数秒後には二万機以上のドローン兵器が大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の宙域へと到達したのである。
「ひっ!ドローン兵器です!」
突如として出現したドローン兵器に大銀河帝国軍の将兵達は一時的に畏怖する。
「狼狽えるな…ドローン兵器を撃墜せよ…」
ブラッドフォードはドローンの迎撃を指示すると各艦艇は迎撃を開始したのである。するとブラッドフォードは気になるのかホログラム装置を作動…。スペースドローンの立体映像が映写される。
「えっ?大総統…如何されましたか?」
ブリッジのホムンクルス乗組員が彼に問い掛ける。
「恐らく此奴はタイラントキラーの新型機だな…」
ホワイトピクシーは性能的には大銀河帝国軍のセイバードローンと五分五分である。宇宙艦隊上空では互角の空中戦が展開される。
「味方のセイバードローン諸共…撃墜せよ…」
「味方の軍用機も攻撃するのですか?」
ブラッドフォードの指示にブリッジのホムンクルス乗組員が再度問い掛ける。
「所詮ドローンは自爆兵器だ…破壊されたって何機でも補充出来る…」
資源豊富の大銀河帝国軍にとってドローン兵器とは実質自爆用途の無人特攻兵器である。各機体の機体内部には宇宙戦艦クラスの大型艦さえも一撃で撃沈出来る自爆装置が内蔵される。ブラッドフォードの指示に各艦艇は味方のドローン兵器諸共対空パルスレーザー機関砲は勿論…。実弾兵器の光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃したのである。無尽蔵の光弾と実弾攻撃により敵味方のドローン兵器が撃墜される。
「味方宇宙艦隊の迎撃でタイラントキラーの宇宙航空戦力が半減したぞ…」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の対空攻撃によりタイラントキラーの宇宙航空戦力が低下したのである。
「再度敵軍の防衛宇宙艦隊を攻撃…タイラントキラー本拠地エデンプラネットに突入するぞ…」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はタイラントキラーのドローン部隊による攻撃を物ともせず迎撃を続行…。エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「敵軍艦隊だ…」
タイラントキラー宇宙艦隊との距離は七十八万キロメートルと近距離であり肉眼でも直視出来る。七十八万キロメートルでも宇宙戦闘では至近距離である。
「タイラントキラー宇宙艦隊を殲滅せよ…」

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵だった…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも…貴方みたいな穏健派の帝国軍人が存在するだけで…私の心情は救済されましたよ♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だがホープエリアに大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に大銀河帝国からの独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国全勢力ですよ…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」
「困難なのは承知だ…相手はブラッドフォードだからな…一筋縄では無理だろう…」
ルーヴェルハルトはポケットから恐る恐る電子設計図を入手する。
「電子設計図ですか?」
ルーヴェルハルトは電子設計図のスイッチを作動…。すると円柱型の物体がホログラムにより映写されたのである。
「なっ!?ひょっとして…」
ウェンフィールドは電子設計図の物体に驚愕する。
「タイラントキラーが開発中だった…最終兵器では!?如何して大銀河帝国軍所属の貴方がタイラントキラーの遺産を?」
「私がタイラントキラーの遺産を所持した理由は…」
大銀河帝国軍がタイラントキラーとの戦時中の出来事である。ルーヴェルハルトは独自の私兵部隊を組織…。私兵部隊をタイラントキラーの兵器研究所に潜入させ一部の科学技術を入手したのである。
「ですがタイラントキラーの兵器研究所が貴方の私兵部隊に潜入されたなんて…驚愕しましたよ…」
「最終兵器の電子設計図を入手したのが私で正解だったな♪こんな代物をブラッドフォードが入手すれば絶対に悪用されるだろう…」
「ですが此奴が完成すれば…銀河系の支配勢力である大銀河帝国だって引っ繰り返せそうですね♪」
タイラントキラーが開発中だった最終兵器の正体は不明であるが…。最終兵器が完成すれば大銀河帝国をも引っ繰り返せる代物である。
「此奴は大銀河帝国軍の最強兵器…ケラウノスをも上回る最強最悪の最終兵器だからな…抑止力として利用出来る!」
メンテ
Re: 新世紀エヴァンゲリオン〔仮名〕※休止中 ( No.100 )
日時: 2021/09/18 23:08
名前: 月影桜花姫

第一話

宇宙艦隊戦闘

太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンクラスと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超大型宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全軍に敵軍宇宙艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍宇宙艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの超大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家建国を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦布告を表明する。
「恐らくタイラントキラーの宇宙艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!タイラントキラーの宇宙艦隊です!総数七万隻前後…大艦隊です!」
「敵軍宇宙艦隊の総数は七万隻前後か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!タイラントキラーの宇宙大艦隊が味方の宇宙艦隊に急接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍宇宙艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の大型宇宙戦闘艦隊を中心に各艦艇が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はエネルギーシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はエネルギーシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…宇宙戦闘用多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。エネルギーシールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも宇宙戦闘用多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の宇宙戦闘用多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のエネルギーシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するエネルギーシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはエネルギーシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
エネルギーシールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたエネルギーシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
するとブラッドフォードは小声で発言する。
「奴等の希望する愚衆政治国家実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍宇宙艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
「陽動作戦ですと?」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方宇宙艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影でしょうか…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく機影の正体は宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙主力艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊各艦艇のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方宇宙艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の各艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の宇宙戦闘用多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型エネルギーシールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型エネルギーシールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するエネルギーシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はエネルギーシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の各艦はエネルギーシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとエネルギーシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。エネルギーシールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のエネルギーシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのエネルギーシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…即刻脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動艦隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンクラスにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙主力艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは不本意であるが撤退を決意したのである。
「戦闘中の全軍に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「本拠地の防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍宇宙主力艦隊は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。一方のタイラントキラーは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の大規模宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊

第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」
「暇潰しには好都合だ…承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?大総統…」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「漁夫の利か…であれば一日も早くタイラントキラーの本拠地を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに主力宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され…。最悪味方宇宙艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの主力宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙主力艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙主力艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば宇宙奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『トレジャーホール』に接近中との情報です…」
小惑星トレジャーホールとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の宇宙奇襲部隊か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「極小規模の小艦隊だな…」
「ウィグノール総帥…如何されますか?」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星トレジャーホールに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。トレジャーホールの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。

第三話

奇襲大作戦

宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ隊活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを攻略目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「援軍は不要ですと?」
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上防衛部隊と非戦闘員が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上防衛部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上防衛部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上防衛部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの超大型サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上防衛部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上防衛部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の宇宙大艦隊です…地上防衛部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上防衛部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の主力宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上防衛部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。味方の地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「非戦闘員への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上防衛部隊の各基地と周辺区域を攻撃したのである。地上防衛部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの宇宙戦闘用多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラム立体映像で地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上防衛部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河系全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
ホログラム立体映像を再作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…援軍でしょうか?」
「セイバードラゴン級大型宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型宇宙戦艦クラスの超大型ミサイルらしき巨大物体が確認出来ます…巨大物体は超大型ミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードは艦内ホログラムでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはホログラムの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の巨大新型兵器…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の宇宙艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自軍の自爆攻撃によって推計五百万人の地上軍兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。自国民からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

新型宇宙戦艦

ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。
「大総統♪こんな場所で一体何を?」
「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」
「新型兵器の見物ですか♪」
副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。
「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」
「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」
艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。
「えっ?改名って…」
ストライダーは困惑したのである。
「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」
「えっ…アプセラスって…」
ストライダーはハッとする。
「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」
「勿論…彼女の名前だ…」
アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。
「大総統が希望するのであれば…」
新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。
「此奴の性能は?」
アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百四十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンクラスの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。宇宙戦闘用多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。
「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」
「エターナルメタルだと?」
エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。
「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」
「であれば好都合だ…」

第五話

制圧作戦

三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。
「全軍に伝達する!今回は小惑星トレジャーホールを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」
今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン兵器『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星トレジャーホールを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星トレジャーホールの宙域へと到達する。
「トレジャーホールの宙域に無事到達出来たな…」
旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。
「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」
「トレジャーホールを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」
タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のトレジャーホールのみである。
(タイラントキラーの資源宝庫であるトレジャーホールを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…)
タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。
「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」
艦内のスペースレーダーがトレジャーホールの防衛宇宙艦隊をキャッチする。
「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」
「推計一万五千隻です…」
「一万五千隻か…」
(敵軍の規模は一個艦隊程度だな…)
敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。
「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」
防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型エネルギーシールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。
「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」
「エネルギーシールド装置だな…であれば光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」
各艦は無数の光子魚雷…。宇宙戦闘用多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はエネルギーシールドジャミング装置が搭載され…。エネルギーシールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。
「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」
部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。
「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」
今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アプセラスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と宇宙戦闘用多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。
「圧倒的だな…」
ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。
「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」
「所詮無人機だが…意外とドローン兵器も役立つな…」
今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。
「タイラントキラーのドローン部隊は壊滅した…戦闘中のドローン部隊には後方の敵軍宇宙艦隊への攻撃を続行させろ…」
「承知しました…」
セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら宇宙戦闘用多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはエネルギーシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら宇宙戦闘用多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。
「ドローン部隊がタイラントキラー宇宙艦隊を圧倒しました…」
「であれば即刻タイラントキラー宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。トレジャーホールが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。
「到達したな…」
トレジャーホール防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。
「ドローン部隊の攻撃で敵軍宇宙艦隊は大分疲弊した様子ですね…」
「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」
ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でトレジャーホール防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。トレジャーホールは無人化したのである。
「敵軍艦隊は撤退を開始しました…トレジャーホールを制圧しましょう…」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊は無事トレジャーホールを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。艦載機では三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。艦載機では二百四十八機のスペースドローンが損傷する。人的損害では推計五十三万人もの将兵が死傷したのである。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。十三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が死傷したのである。各兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。

第六話

殲滅作戦

タイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインであるトレジャーホールを無事制圧した大銀河帝国軍はトレジャーホールで放置された三十四隻の大型宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。トレジャーホール制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。
「大総統♪見事でしたな♪トレジャーホール制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」
トレジャーホール制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。
「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」
最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。
「大総統!緊急事態です!」
通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。
「何事だ?」
通信兵は恐る恐る…。
「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」
「なっ!?戦闘継続だと!?」
ストライダーは驚愕する。
「資源宝庫のトレジャーホールが制圧されたのに…奴等は正気か?」
するとブラッドフォードはボソッと一言…。
「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」
「大総統…如何されましょうか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」
ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。
「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」
「勿論ですとも…大総統…」
ストライダーは即答したのである。
「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を開始すると…」
「はっ!承知しました!」
通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。
「全軍が集結したな…」
ブラッドフォードは宇宙主力艦隊旗艦アプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。
「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」
ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。
「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」
「当然だ…ストライダー…」
直後…。
「各艦…ワープ機能を作動せよ…」
旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」
旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。
「大総統…スペースレーダーが反応しました…」
「タイラントキラーの宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」
「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」
特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。
「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」
度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。
「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…奴等は正気ですか?」
ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。
「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある地上の大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」
大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河全面戦争により敗北…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。大銀河共和国軍に勝利した大銀河革命軍は大銀河帝国の常備軍…。大銀河帝国軍へと改編されたのである。
「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」
数秒後…。
「全軍…敵軍宇宙艦隊に砲撃せよ!」
砲撃の合図と同時に大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の総攻撃が開始される。同時刻…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊は旗艦である改良型サラマンダー級宇宙戦艦には次期総帥のウィンフィールドが乗艦する。
「艦長!大銀河帝国軍が総攻撃を開始しました!」
「全軍に伝達せよ!此方も応戦する!」
ウィンフィールドは応戦を指示したのである。直後…。一光年の宙域より発射された数千万発もの高エネルギーの光弾が味方宇宙艦隊に到達したのである。各艦に多数の光弾が命中するものの…。大型艦はエネルギーシールド装置により光弾を無力化したのである。一方小型艦艇は簡単に撃沈され…。一度の総攻撃で推計三千隻もの小型艦艇が轟沈したのである。轟沈した小型艦艇は宇宙の藻屑へと変化…。数千人もの将兵が宇宙空間に吹っ飛ばされたのである。凄惨なる光景にウィンフィールドは落涙するものの…。
「彼等の犠牲を無駄にするな…即刻反撃しろ!」
タイラントキラー宇宙艦隊も反撃を開始したのである。各艦艇による高エネルギー砲塔の艦砲射撃…。実弾兵器である光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルを多数発射したのである。
「母艦部隊はドローン兵器を発進させ…敵軍艦隊に突入させろ!」
各航空母艦からはスペースドローンは勿論…。スペースドローンの後継機『ホワイトピクシー』が飛来したのである。各機体はワープ機能を作動…。数秒後には二万機以上のドローン兵器が大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の宙域へと到達したのである。
「ひっ!ドローン兵器です!」
突如として出現したドローン兵器に大銀河帝国軍の将兵達は一時的に畏怖する。
「狼狽えるな…ドローン兵器を撃墜せよ…」
ブラッドフォードはドローンの迎撃を指示すると各艦艇は迎撃を開始したのである。するとブラッドフォードは気になるのかホログラム装置を作動…。スペースドローンの立体映像が映写される。
「えっ?大総統…如何されましたか?」
ブリッジのホムンクルス乗組員が彼に問い掛ける。
「恐らく此奴はタイラントキラーの新型機だな…」
ホワイトピクシーは性能的には大銀河帝国軍のセイバードローンと五分五分である。宇宙艦隊上空では互角の空中戦が展開される。
「味方のセイバードローン諸共…撃墜せよ…」
「味方の軍用機も攻撃するのですか?」
ブラッドフォードの指示にブリッジのホムンクルス乗組員が再度問い掛ける。
「所詮ドローンは自爆兵器だ…破壊されたって何機でも補充出来る…」
資源豊富の大銀河帝国軍にとってドローン兵器とは実質自爆用途の無人特攻兵器である。各機体の機体内部には宇宙戦艦クラスの大型艦さえも一撃で撃沈出来る自爆装置が内蔵される。ブラッドフォードの指示に各艦艇は味方のドローン兵器諸共対空パルスレーザー機関砲は勿論…。実弾兵器の光子魚雷と宇宙戦闘用多目的ミサイルで攻撃したのである。無尽蔵の光弾と実弾攻撃により敵味方のドローン兵器が撃墜される。
「味方宇宙艦隊の迎撃でタイラントキラーの宇宙航空戦力が半減したぞ…」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の対空攻撃によりタイラントキラーの宇宙航空戦力が低下したのである。
「再度敵軍の防衛宇宙艦隊を攻撃…タイラントキラー本拠地エデンプラネットに突入するぞ…」
大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はタイラントキラーのドローン部隊による攻撃を物ともせず迎撃を続行…。エデンプラネットの宙域へと到達したのである。
「敵軍艦隊だ…」
タイラントキラー宇宙艦隊との距離は七十八万キロメートルと近距離であり肉眼でも直視出来る。七十八万キロメートルでも広大無辺の宇宙戦闘では至近距離である。
「タイラントキラー宇宙艦隊を殲滅せよ…」
ブラッドフォードの指示と同時に総攻撃が開始される。

第七話

反帝国主義

宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」
(彼奴は目障りだからな…)
ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。
「ホープセイバーズですが…如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは即答する。
「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
「当然の判断ですね…」
同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。
「誰だ?」
すると若齢の将校が入室する。
「失礼します…」
「貴方は…」
「私はタイラントキラー将兵だった…ウィンフィールド…階級は大佐です…」
「ウィンフィールド大佐か…」
両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」
ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。
「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」
ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。
「大銀河帝国にも…貴方みたいな穏健派の帝国軍人が存在するだけで…私の心情は救済されましたよ♪」
ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。
「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」
「今後の方針ですか?」
ルーヴェルハルトは一息するなり…。
「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だがホープエリアに大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」
「宇宙新共和国ですと?」
今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に大銀河帝国からの独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国全勢力ですよ…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」
「困難なのは承知だ…相手はブラッドフォードだからな…一筋縄では無理だろう…」
ルーヴェルハルトはポケットから恐る恐る電子設計図を入手する。
「電子設計図ですか?」
ルーヴェルハルトは電子設計図のスイッチを作動…。すると円柱型の物体がホログラムにより映写されたのである。
「なっ!?ひょっとして…」
ウェンフィールドは電子設計図の物体に驚愕する。
「タイラントキラーが開発中だった…最終兵器では!?如何して大銀河帝国軍所属の貴方がタイラントキラーの遺産を?」
「私がタイラントキラーの遺産を所持した理由は…」
大銀河帝国軍がタイラントキラーとの戦時中の出来事である。ルーヴェルハルトは独自の私兵部隊を組織…。私兵部隊をタイラントキラーの兵器研究所に潜入させ一部の科学技術を入手したのである。
「ですがタイラントキラーの兵器研究所が貴方の私兵部隊に潜入されたなんて…驚愕しましたよ…」
「最終兵器の電子設計図を入手したのが私で正解だったな♪こんな代物をブラッドフォードが入手すれば絶対に悪用されるだろう…」
「ですが此奴が完成すれば…銀河系の支配勢力である大銀河帝国だって引っ繰り返せそうですね♪」
タイラントキラーが開発中だった最終兵器の正体は不明であるが…。最終兵器が完成すれば大銀河帝国をも引っ繰り返せる代物である。
「此奴は大銀河帝国軍の最強兵器…ケラウノスをも上回る最強最悪の最終兵器だからな…抑止力として利用出来る!」
メンテ

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