このスレッドはロックされています。記事の閲覧のみとなります。
ホームに戻る > スレッド一覧 > 記事閲覧
[563] サイト開設十周年カウントダウン企画・九月
日時: 2010/09/02 05:15
名前: tamb

月々のお題に沿って適当に書いて投下して頂こうという安易な企画です。作品に対するものは
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm

今月のお題は

・ごはんがおいしすぎて
・空の高さは
・Higher

です。
八月の企画、1111111ヒット記念企画も鋭意継続中、十月中には、インフォシークiswebライト
のサービス終了に伴う雑談掲示板「新・「綾波レイの幸せ」掲示板 二人目」移転記念企画も
ありますので(あるのか?)そちらもよろしくお願いします。

では、どうぞ。
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・九月 ( No.10 )
日時: 2010/09/20 17:20
名前: JUN

 中学三年生になると、私も少しずつ高校受験を考えるようになった。私は勉強が得意なほうだし、
分野によっては大卒のセカンドを抜くことも可能だったりする。優等生なのだ、ふふん。
 碇くんは苦手でない、という程度。しかし音楽や家庭科、特に家庭科はクラスの中で群を抜いてい
て、張り合えるのは洞木さんくらい。本人はあまり嬉しそうではなかったけれど、碇くんの作るご飯
はおいしい。それでいいと思う。でも、男の子が料理上手を褒められるのは複雑なのかもしれない。
私も、凛としてて格好なんて言われると、少し複雑。それこそ碇くんに言って欲しい。でも、きっと
他の女の子がそんなことを碇くんに言っていたら嫉妬してしまうだろう。……言わないでいい。
 話がそれた。つまり受験の話。優等生な私は(セカンドの皮肉もあながち的外れはなかった)碇く
んに勉強を教えることになった。葛城さんとの話し合いの末手に入れた至高のポジションだ。

 碇くんに勉強を教えて、同じ高校に行って、ついでに私も――

「何かを教わってしまうの…………(ぽぽぽんっ)」
「あの……綾波さん?早く教えて欲しいっていうか」


 ……いけない。またトリップしていたようだ。


ごはんがおいしすぎてvol.2



毎日こんな調子だから、進行はよくない。時間はたっぷりあるという私たちの間にある共通の慢心も
少なからず影響しているのだろう。でも努力はしてるのだ。
「えっと、だからx軸とy軸の切片を出すわけで……」
「二つを同時に出そうとしてはいけない。まずy切片を出して、そこからさっき出した傾きを利用し
て……」
「あ、そうか。傾きが2でy切片が−6だから、x切片は……3か」
「そう。三角形の底辺の長さがそれで求められるから……」
「あ!分かったよ綾波、そういうことか」
 そう、こんな感じで巧く進むのだ。……最初の方は。

「ありがとう綾波。お陰で分かったよ」
 碇くんが微笑みながら言う。顔が紅潮しているのが自分でも分かる。褒められると嬉しい。でもち
ょっと恥ずかしい。

 そんな恥ずかしさを誤魔化すために、私がいつもすること。
「じゃ……ご褒美」
 目を閉じて、顎を突き出す。葛城さんから教わった、おねだりのポーズ。碇くんはこうするといつ
もお願いを聞いてくれる。
 躊躇う時間がしばし続いた後、碇くんはその細い腕で優しく私を抱き寄せてくれた。

「んぅ……」

 優しく触れ合うだけのキス。しっとりと濡れていたのは碇くんの唇か私のか、それとも両方か、そ
んなことは分からない。どうでもいいとも思う。受験勉強のことは今となっては忘却の彼方。さっき
まで解いていた一次関数も、次に解く連立方程式のことも、どうでもよくなる。
 キスをするとき、私が目を瞑らないことはない。視界を遮った方が、より沢山碇くんを感じること
が出来るから。
 部屋の中で二人きり。葛城さんは暫く帰ってこない。だからこうして唇を重ねる時、私はほんの少
しだけ不安になる。碇くんとそうなるのが嫌なんじゃない。ただ、僅かに怖いだけ。
 でも、碇くんが望むなら、私はいつでもいい。――それは私の願いでもあるのだから。そのために
碇くんが辛くなるくらいなら、碇くんの好きにして欲しかった。

 碇くんが唇を離す。それが終わってから、私も目を開く。碇くんは切なげに眸を潤ませて私を見て
いた。多分、私も同じような顔をしているのだろう。
「綾波」
 碇くんはそっと微笑んで、私の名を呼んだ。私の肩に回した腕はそのままに。
「いかりくん……」
 腕に力を込める。碇くんが苦しくない程度に。どこにも行かないように。
「大好き、だよ」
 耳元でそんなことを囁かれると、私はいよいよどうしようもなくなる。家庭教師のことなんか忘れ
て、碇くんの肩口に顔を埋める。碇くんの匂い、碇くんの温もり、碇くんの――
「大好き、碇くん…………!」
 碇くんがくすりと私の耳元で笑い、
「ごはんに、しよっか」
「うんっ……」


 碇くんが料理を作ってくれる。未来のお嫁さんたる私としてはちょっと悔しい。でも碇くんの方が
上手なのだから、私はお手伝いをするだけ。その内私も作れるようになりたい。お味噌汁は作れる。それでも碇くんのお味噌汁の方がおいしいし、私もわざわざしょっぱいお味噌汁を食べようとは思わ
ない。
「なんにしよう。炒飯、とかでいいかな」
「うん」

 私の意見を確認すると、碇くんは早くも卵を溶き始める。流石に手際がいい。あれよあれよという
間に、美味しそうな炒飯が出来上がった。そこらの中華料理屋で食べるよりよっぽど美味しいだろう。
贔屓目なしでそう思う。

「……いただきます」
「召し上がれ」
 卵で黄金色に輝く炒飯をスプーンですくって一口。碇くんは微笑みながら私が食べるのを見ている。
「美味しい」
「よかった」
 碇くんは嬉しそうに笑って、自分の分を食べ始める。何も言わなかったけれど、ゆっくりと咀嚼す
るその表情は満足げだ。
 無言の食事。でも暖かいその雰囲気は、私が知らなかった新しいもの。――碇くんが教えてくれたこと。
 そんな暖かい時間は、一秒でも多く共有していたい。そのためにいつか二人だけで暮らせる時を、
私はずっと待っている。


 食事が終わると、私は碇くんの隣に座る。碇くんは何も言わずに髪を梳いてくれた。

「甘えんぼさんだね、綾波は」
「ん……」



 また、黙り込む。頭の中がどんどん霞んでいって、何も考えられなくなる。碇くんの匂いがすぐ側
にあって、ここで永遠にこうしていられたら、どんなに素敵なことだろう。

 時計を見てみる。四時半。いつの間にそんなに時間が過ぎていたのだろうかと、少し驚く。碇くん
は気づいているのだろうか。――言わないでおこう。

 そんな静かな空間を、扉の開く音が無粋にも破壊した。


「ただいまあ」




 ぴく、と碇くんの方が動き、玄関の方を顧みる。どうやら少しうとうとしていたらしい。
「あ、おかえりなさいミサトさん」
「ん、ただいま。あれ、遅い昼食ね」
「え、あ、もうこんな時間ですか。済みません、お風呂入れます」
「んーん、大丈夫よ。相変わらずラブラブねえ。二人でうたた寝、ってとこかしら?」
「え、いや、別にそんなでも……」



 碇くんが慌てながら否定する。気持ちは分かるけど、少し不愉快。だから、
「あの、ちょっとうとうとしちゃって、その――――いたたたたたたたたた!!ちょ、綾波……」
「誤解じゃないです」

 わき腹をつねると、碇くんは泣きそうな顔をする。でも私はやめない。からかわれるのは恥ずかし
いけど、決して嫌なわけじゃない。
 葛城さんはくすくすと笑って、私のほうを見る。微笑ましいような、見守るような、そんな表情を
湛えていた。
「ほんと、いいカップルよ、あなたたち。仲良くやんなさい」
「え、あ……はい」
「………………はい」

 葛城さんは満足げに微笑むと、シャワーへ向かう。私たちのほうを一度だけ振り返って、
「そういえば一日中ここにいたらしいけど、勉強は進んだ?」

「……………………」
「………………………………あ」

「あんたら、ねぇ…………」

 葛城さんの額に青筋が浮かんだ。あ、怒られる。








「いーい?一応は家庭教師って名目で来てんだから、そこちゃんとしてもらうわよ」
「……はい」
「いちゃつくなとは言いません。けど、今日一日かかって解いた問題がたったの三問じゃあ、お話にならないわ」
「……はい」
「今後その職務をまっとうできないなら、マヤちゃんに来てもらうわよ。あの子、学歴高いんだから」
「…………それは駄目です」
「じゃ、ちゃんとやること。分かったわね?」
「……はい」
「シンジ君も、分かったわね?」
「はい。済みません」
「はい、よろしい」
 そこで収めておけばよかったと、私はつくづく思う。
「……でも、あれは碇くんがいけないと思うわ」
 私の言葉に、碇くんはむっとした様子で言葉を返した。
「なんでだよ」
「碇くんの作るごはんがおいしすぎるせいで、あんなことになる」
「そんなのないだろ。綾波が誘惑するからいけないんだ!」
「誘惑したって、碇くん最後までしてくれないじゃない!」
「僕なりに我慢してるんだよ!あんなに可愛い綾波見せられて、僕が何もしないとでも思ってる
の!?」
「思ってないわ!押し倒されたって、碇くんが相手ならいいと思ってるのに」
「そんなこといわれるといよいよ我慢できなくなっちゃって――」

「いー加減にしなさい!!」

 葛城さんの鶴の一声に、私たちは我に返った。

「あんたらの痴話喧嘩なんて聞かされるこっちの身にもなりなさい!このバカップルが!黙って勉
強!嫌ならレイは帰りなさい!!」



 しゅん、そんな形容が今の私ほど相応しい女の子はいないだろう。しおしおと碇くんの部屋に入っ
て仲直り。
「……ごめんね綾波。ついむきになって」
「私のほうこそ、ごめんなさい……」
「僕、明日から真面目に勉強するから」
「私も、明日から真面目に教えるから」

 ふんわりと、碇くんは私を抱き締めてくれた。仲直りのしるし。

「明日から、よろしくお願いします、先生」
「……はい」


 何かを教わってしまうのも、そう遠い話ではないかもしれない――


  おしまい




 あとがきという名の言い訳

意味不明です。今まで書いた中でも中々群を抜くぞw
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成