Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・一月 ( No.16 ) |
- 日時: 2011/06/25 07:04
- 名前: tamb
***** Traveling *****
あの時、わたしは十字路に立っていた。 今にして思えば、わたしはあの時、悪魔に出会っていたのだ。
悪魔は人間の魂を欲している。理由はわからない。 そして、悪魔はわたしの魂に目をつけた。ずっと気づかなかったけれど、つまり悪魔はわた しを人間だと思ったということになる。何を根拠にそう思ったのだろうか。
悪魔が魂を奪うための手口は実に緻密で用意周到、まさに悪魔的としか言いようのないもの だった。
わたしが部屋に鍵を掛ける習慣のないことを調べあげ、シャワーを浴びているタイミングを 見計らって勝手に部屋に上がり込み、わたしの裸体をじっくりと観察したあげく不自然に転ん で押し倒す。 わたしを怒らせ、平手打ちにさせる。 笑顔を見せ、手を差し伸べる。 美味しいご飯を食べさせる。 さりげない一言で動揺させる。
悪魔はそれと悟られないように、じっくりとわたしを絡め取っていった。
そして最後に、強引な言葉でわたしを導いた。
その時にはもう他に選択肢などなかった。
わたしは悪魔の差し伸べた手をつかみ、魂を売り渡した。私を虜にした、優しくて、誰より も素敵な悪魔に。
今日もわたしは十字路に立っている。悪魔と待ち合わせで、十字路に立っている。 神様、わたしを助けて。 でもやって来たのは、やっぱり悪魔だった。わたしをきゅんとさせる笑顔を浮かべた悪魔。
「碇くん、それはなに?」
手に持った包みを見てわたしが言う。
「フルーチェ。レモン味だよ。帰ってきたら食べよう」
今すぐ食べたい。学校なんか休んでしまいたい。 やっぱりわたしは悪魔に魂を奪われているのだ。 ならば、悪魔の魂も奪ってしまおう。それがおあいこというものだ。
わたしは眼を閉じ、軽く口唇を閉じて少しだけ上を向いた。
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