Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月 ( No.17 ) |
- 日時: 2011/04/17 23:51
- 名前: tamb
*****雨の日の幸せ*****
雨が降っている。 わたしは部屋の窓からそれを見ている。
たとえば猫たちは、こんな雨の日はどうしているのだろう。 きっとどこかの軒下や東屋、橋の下とかのお気に入りの場所があって、そこで雨を見ながら うずくまったり寝転がったりして、雨止みを待っているのだろう。今の私と同じように。 わたしも猫たちのお気に入りの場所に行って一緒に雨止みを待ちたいけれど、きっと迷惑だ し場所もわからない。 雨止みと綾波――わたしの名前だ――はちょっと似ていると不意に思う。
猫たちは姿を隠しているけれど、カエルやでんでん虫は元気だ。 カエルたちは晴れの日でもそれなりに元気で、夕方にはげこげこと大合唱を始めるけれど、 でんでん虫は何をしているのだろう。やっぱりお気に入りの葉っぱの裏で殻の中にうずくまっ て雨を待っているのだろうか。
雨が降ってくると、わたしは碇くんの差し出してくれる傘の中に入る。濡れた髪を拭いても らって、甘い紅茶を口にする。ぬくもりをもらって、少し冷えた身体が暖かくなる。そこはま るで猫たちの好きな陽だまりのような、暖かな場所。
わたしは碇くんに傘を差し出してあげられているだろうか。
振り向くと、彼はベッドにもたれかかり、読みかけの本をそのままに居眠りをしていた。 ほっぺをつまんで引っ張ってみる。彼のほっぺは柔らかで、びっくりするくらい長く伸びた けれど目は覚まさない。 キスしてみる。 やっぱり起きない。 王子様は白雪姫のキスでは目を覚まさないということがわかった。あるいは碇くんも私も白 雪姫だったり王子様だったりはしないということか。たぶん、その両方だろう。 居眠りを続ける碇くんに毛布をかけ、私もその中に入った。彼の肩に頭を預ける。皮膚が溶 けてしまいそうな安心感に身を委ねた。目を閉じれば今にも眠ってしまいそう。 碇くんのキスで目を覚ましたいけれど、わたしも碇くんも白雪姫でも王子様でもないなら、 やっぱり眠ったままだろう。 気づいたら朝だったでは眠りすぎ、と思いながらわたしは眠りの中に落ちていった。 夢の中でもわたしは碇くんの隣にぴったりくっついている。たぶん。きっと。
雨は止んでいる。
時は春、 日は朝、 朝は七時、 片岡に露みちて、 揚雲雀なのりいで、 蝸牛枝に這ひ、 神、そらに知ろしめす。 すべて世は事も無し。
------- ロバート・ブラウニング「春の朝」/海潮音(訳詩:上田敏)より
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