Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・九月 ( No.2 ) |
- 日時: 2010/09/02 21:09
- 名前: JUN
空の高さはvol.1
肌寒い、とレイは思った。こんなことは初めてだ。レイが思った通りのことを言うと、シンジは笑 った。 「秋、って言うんだよ」 「あき?」 「そうだよ。セカンドインパクト前あった四季だね。僕も初めてだけど、悪くないと思うよ」 これからもっと寒くなるよ、とシンジは言った。 「もっと?」 「うん、ミサトさんが言ってた。次に冬が来て、川が凍りつくんだって」 そんなの耐えられない。 「わたしも凍っちゃうわ」 「ん、そうかもね……」 つないだ手はそのままに、シンジは立ち止まった。 「碇くん?」 「そしたら……僕が暖めてあげる。こうして……」 ふわり、とシンジがレイを包み込んだ。シンジの匂いに、心が落ち着く。 「あったかい……」 よかった、とシンジが言い、より一層強くレイを抱き締める。火のそれとは全く違う、人の温もり。碇くんの、温もり……
「そういえばね、綾波」 「なぁに……?」 答えるレイの声は、どこかふわふわとして捉えどころがない。シンジはくすりと笑った。 「昔の人はね、秋のことを“天高く馬肥ゆる秋”って言ったんだって」 「うまこゆる……?」 「秋ってね、空が澄んでて、涼しくて食欲も出るから、馬とかも太っちゃうんだって」 「天が……高いの?」 「うーん、不思議な言い方だよね。でも空ってさ、曇りがなくて綺麗に見えると、宇宙の果てまで広がってるような気がしない?」 「ん……」 分かるような、分からないような。碇くんは、たまに難しいことを言う。でも、 「碇くんが言うこと、私にはよく分からないけど、でも――」 シンジの背に回した腕に力をこめ、レイは言った。 「碇くんに出会ってから、私の世界は変わった。何の色もなかった世界に、色をつけてくれた。空が高くなったのも、きっと碇くんの……」 「綾波……」 声を詰まらせるレイに、シンジはたまらなく愛しい気持ちになる。 「僕も綾波に会えてよかった。いつだって、君は僕を護ってくれてた。でもね」 じっとレイを見つめ、シンジは笑った。 「これからは、僕が綾波を護るよ。僕意気地なしだから、ちゃんと護ってあげられないかもしれない けど……」 「そんなことない。碇くんは言ってくれたもの。私、いつまでだって憶えてる……」 レイも笑った。美しかった。 「綾波は綾波しかいない、って……」 「そうだった、ね……」 そっとレイの背中をさする。それだけで熱い篭った息を漏らしてしまうレイが、やはり愛しかった。 「大好きだよ、綾波……」 「わたしも…………大好き」
△▼▲▽
「ねえ、いつ出るのよ?」 「うーん、シンジ君も気障だねえ……」 「……あんたが言うなら、きっとそうなんでしょうね」 「アスカ、君も言うようになったね」 「そお?アンタだって最近結構酷いわよ、カヲル」 「そんなことはいいんだよ、いつ出る?」 「ここが通学路じゃなかったらねえ……」 「自覚がないね。あ、アスカ、見てみなよ」 「え、ちょっと、嘘でしょ……?」 「……逸材だね、シンジ君は」 「あいつら結婚でもしたら、子供の将来が心配だわね……」 「全く、好意に値するよ………………はあ、シンジ君は……………………」 熱い口付けを交わしつつ抱き合うシンジとレイを眺めながら、二人は鉛より重い溜息を吐いた。
おしまい
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