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[563] サイト開設十周年カウントダウン企画・九月
日時: 2010/09/02 05:15
名前: tamb

月々のお題に沿って適当に書いて投下して頂こうという安易な企画です。作品に対するものは
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm

今月のお題は

・ごはんがおいしすぎて
・空の高さは
・Higher

です。
八月の企画、1111111ヒット記念企画も鋭意継続中、十月中には、インフォシークiswebライト
のサービス終了に伴う雑談掲示板「新・「綾波レイの幸せ」掲示板 二人目」移転記念企画も
ありますので(あるのか?)そちらもよろしくお願いします。

では、どうぞ。
メンテ

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Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.22 )
日時: 2010/10/31 23:10
名前: 何処 ID:4SyGgU9qKQc

父さん

僕はやはり父さんの息子だった。
あの赤い海が消えてもう五年が過ぎた。
僕は貴方と同じ道を歩もうとしている…

『何故だ!父さんは成功したんだ!なのに何故僕に出来ない!』

LCL水槽に拳を打ち付ける。

『諦めない…諦めるもんか…』

傍らに立つ金髪の少女は僕の白衣の裾を握りその蒼い眼で僕を見上げていた。



【彼方へ】



僕が彼女と再会するにはそれから八年を要した

『碇博士…ついに…』

『ああ…』

LCLに浮かぶ彼女はあの時そのままの姿…涙に霞む視界、懸命に眼を凝らし僕は彼女を見る。

『おめでとうございます、碇博士!』

隣に立つ助手も涙声だ。見ればその蒼い瞳も涙に濡れている。

『馬鹿、泣くのは俺だろうが!なんでお前が泣くんだよ!』

ショートカットの金髪を僕はくしゃくしゃに撫でる。
『だ、だって…。』

あの傍らにいた少女は今や僕の欠かせぬ研究のパートナーだ。涙を拭き彼女は改めた口調で私に告げた。

『では碇博士…彼女を目覚めさせて下さい。記憶転写は既に』

Beeep!Beeep!Beeep!Beeep!

『何!?一体何が起きたの!?』

『どう言う事だ!』

『碇博士!あ、あれを!?』

『そんな…』

僕の目の前で少女はLCLと化して行く。あの日の母の様に。

イカリクン・・・イカリクン・・・イカリクン・・・

『嘘…』

『綾波!?綾波ー!』

綾波は…消えてしまった。僕は…やはり人を愛するべきでは無いのか?

…こうして綾波レイの肉体再構成は失敗した。再度の実験でも人工合成した遺伝子から製作した肉体はLCLから出ると肉片と化した。
ATフィールドが脆弱なのか…やはりオリジナルの細胞から遺伝子を…だが何処に?

◇◇◇

あの赤い世界、僕は護られる事から抜け出し、追い求めた存在に拒絶され、それでも生きて…世界は甦ってしまった。

未だに僕の悪夢に現れるLCLの中に無数に浮かんだ綾波、エヴァを…僕を求めたあの巨大な存在を。
僕は怯えた。あの時綾波は恐怖の存在だった。あの赤い世界で僕を見詰める水平線彼方の綾波も、僕と一つになった綾波も、僕は恐れていた。

だから、僕は一つになる事を拒絶したのかも知れない。

そして甦った世界、その中へ帰還した僕は孤独だった。
そして漸く気付いたんだ…綾波への恐れは、愛情の裏返しだったって事に。

アスカ…君の言う通りだったよ。僕は君に逃げていたんだ。

…もう…逃げない…

そして、僕は狂気に身を委ねた…父親と同じ様に。

だが結果はこれだ。漸く僕はレイを手に入れ…又失った。


◇◇◇


あの日からもう十年…


『…アスカ、弐号機の残骸から君の母親の記憶のサルベージは終わった。クローニング体も完全な状態だ。目覚めた時には君が求めたママが待っている…君への贖罪だ、受け取ってくれ。』

冷凍睡眠装置のカプセルに僕は語りかける。

『…そして、僕は僕を求めた、在りの儘の僕を必要としてくれた彼女を呼び戻す…』

傍らのLCL水槽を見上げ、僕の頭上を漂う無数の少女達を眺める。

『…エントリープラグの中にまさか君がいたなんてね…例え脳の一部だって、君には違い無い。』

ふと微笑み、僕は又カプセルを見る。

『ねえアスカ…君は今度こそ幸せになるんだ…そして僕も彼女を取り戻す…今度こそ。』

霜の降りたカプセルに僕は語り続ける。

『アスカ…僕は今漸く君が解る。君の強さ、弱さ、そして狡さと嫉妬深さの訳が。』

特殊樹脂の透明カバーを擦り霜を落とす。そこに眠る少女の肌は純白。
手袋を外し、そっと指先をその肌に這わせる様にカバーをなぞる。

『君は僕の鏡像だった…だから惹かれ、反発し、憎んだんだ。』

張り付くのも構わず僕は掌を押し付ける。

『ごめん…ごめんよアスカ、僕は君にこんな…』
『こんな事、娘は望んで無いわ。』

背後から掛けられた声は…

『…キヨコさん、貴女は呼んでいませ』『黙って』

彼女の手には銀色の45口径、僕は黙った。

『…』

『…碇博士、私は、私の肉体は確かにキョウコ・惣流・ツェッペリンのクローニング体です。でも私は、私の心はキヨコ・六分儀です!』

『ああ、知っている。だから君はこうしてここにいる。アスカの母親となるのは君の予備のクローニング体だ。キョウコ博士の記憶を』

『違います!私が言いたいのはそんな事じゃありません!』

彼女は…泣いていた。

『判りませんか…貴方はもう五十を過ぎているんですよ?もう綾波さんと結ばれはしない!貴方は、貴方はもう…』

彼女から視線を逸らし、LCL水槽を仰ぎ見て僕は語る。

『…この年になって俺はやっと父親の…父さんの願いが解る。』

『…え?』

『「有り難う」…只その一言を伝えたかったんだ…』
『そんな…』

『その銃を仕舞ってくれ。彼女が怖がる。』

僕はプラントに浮かぶ少女から視線を外さす告げた。。

『…条件があります…』

『…何だい?』

『条件は二つ…キョウコの復活はこの娘の、アスカの意識が回復した後、本人の意思で決めさせて下さい。』

『…もう一つは?』

『お願いを聞いて下さるんですか?どちらか一つだけでは私は許しません。二つとも聞いて頂けなければプラントごと爆破しますよ。』

『爆破?まさか…いや、君なら簡単か。判った。言う通りにしよう。』

『もう一つは…この娘達には家族が必要です。貴方が父親になって下さい。』

『ああ、それは当然そのつも』『母親も要りますわ。私みたいな母親が。』



鳩が豆鉄砲喰らった表情とは今の僕の顔を言うのだろう。

『…何?』

ギリギリ軋みながら振り返り、何とか絞り出した声は我ながら間抜けで

『ち、一寸まてキヨコ君、ききき君はぼぼぼぼ僕の娘みたいな物でただだ大体歳の差を』
『相変わらず興奮なさると“ボク”なんですね、碇博士。』

…成る程、アスカの母親だ…

『あ、いや、しかしだな、君はこんな僕みたいな過去の遺物と言うか昔の思い出に生きるような』

『シャラーップ!』

『は、はい…』

『碇博士…』

俯いた彼女は低い声で僕に告げる。拳銃の安全装置を解除しながら…勘弁してくれ…

『…私が何故貴方の研究に手を貸したか判ってます?只の探究心だとでも?判りますか?私もあの娘もファザコンなんですよ?』

『あ…う…』

『それにこのままじゃ私ウエディングドレスを三十路過ぎて着なくちゃいけないんです!誰かの過保護な愛情のお蔭で。』

顔を上げ、キッとぼくを睨むアスカ似の表情は固い。

『し、しかしだな…』

『責任、取って、下さい。私の命と、私の恋心と、私の人生の。』

『い、いや、だがな、』
『駄目?“おにいちゃん”』

『ぐっ!』

『パパって呼ばせないで“おにいちゃん”なんて、まるで私ブラコンじゃないですか。この責任も、どうして下さるんです?』

『い、いやだから…』

『だから?』

『あ、あのな、つまり…』

◇◇◇


『し ん じ。』

『い か り 君。』

『碇博士、起きれます?。』


…枕元の眼鏡を手探りで取り上げ、横になったまま僕は視界を確保し、声を掛けた女性陣に挨拶する。

『ああ、おはようアスカ君、レイ君、キョウコ君。』
『あのね…おはようって』
『もうお昼よ、碇君』
『アスカちゃんもレイちゃんも、碇博士は今朝までお仕事だったんですからね、もう少し寝かせて…』

『駄目よママ!キヨコお母さんが帰って来るまでにこのバカ』
『アスカ。』

…キヨコもそうだかキョウコ君も怒ると怖いな…

『…言い直しなさい。』

『…はい。つ、つまりキヨコお母さんが入院先から帰って来るまでにきちんとした生活習慣を碇シンジさんに身につけて頂きたいと』

『グート!』

苦笑しながらやり取りを聞く僕に綾波は耳打ちした。

『碇君、私をこの世界に呼び戻してくれて有り難う。』

僕もお返しに耳打ちする。

『幸せかい?』

『あーっ!?何こそこそ話してんのよあんたは!』

『…内緒。』

『ムキー!ムカつくわねこの女!』『こらっ!アスカ何ですその言葉使いは!』『キャー―ッッ!?マ、ママごめんなさ〜い!』

追い掛けっこする二人を綾波と僕は微笑んで眺める。又綾波が僕に耳打ちした。

『さっきの答え、幸せよ、とっても。もうじき家族も増えるし。ね?碇おとうさん。』

『綾波…有り難う。』

《よくやったな…シンジ》

『『『え?』』』

キョウコさん以外の動きが止まる。

『父さん!?』『『碇司令!?』』

僕らは顔を合わせた。

『今…』『碇司令の声…』『聞こえたわ…』

『…?三人共どうしたの?』

ふと込み上げる何かが、僕の目を焼いた。

有り難う…父さん、それに有り難うみんな、有り難う…

未だだよ、父さん、これからなんだ。

もっと高く…僕は君達をもっと高く連れて行きたい。
今よりも、もっと幸せの彼方へ。

僕の濡れた頬を僅かに空いた窓から来た風が優しく撫でた。


●曜サスペンス劇場風ED
【RIP=RELEASE】歌・巡音ルカ
http://www.youtube.com/watch?v=4SyGgU9qKQc&sns=em
メンテ

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