Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.29 ) |
- 日時: 2014/02/04 00:04
- 名前: 何処 ID:3EK9Sboe8hg
- 【−疑惑(後編)−】
《GLIDE》http://www.youtube.com/watch?v=3EK9Sboe8hg&sns=em
「ええっとお、確かここに…有った有ったっとぉ。次は…」
どうやら徹夜明けらしい青い顔色の女が赤い目を瞬かせブツブツ呟きながら私の研究室で資料を漁っている。 その観素暮等しい姿に思わず嘆息し、私はミサトに声を掛けた。
「しかし酷い有り様ね、髪クシャクシャよ?シャワー位浴びてきたら?」
「ん〜?…いちおー浴びて来たぁ…無いわー…やっぱこれか…でも計算式が〜…あれ?やっぱ違う…かな?試すか…あれ〜?」
…この状態のミサトには最早何を言っても無駄だ。学生の頃からの長い付き合い、骨身に染みる程知っている。 だが同じ女として身嗜みに一言有るのは構わないだろうと愚痴めいた忠告を溢す。
「せめてブローぐらいしなさいよ全く…珈琲飲む?」
「のむーさんくー。」
「じゃあ…あら?終わっちゃった。少し待ってて今から淹れるわ」
「りょーかいー。」
買い置きの缶から挽いた豆を掬い、ペーパーネルを敷いたドリッパーに載せて安物のコーヒーメーカーにセット 室内を満たす湯の沸く音と珈琲の香り、ミサトの資料を漁る音… 大学時代一緒にレポートを書くミサトと完徹の朝飲んだ自販機製の真っ黒い液体が注がれた紙コップが手中のマグカップと重なる…ふと蘇る懐かしい記憶。
思えば長い付き合いだ。 誰とでも仲良くなれる彼女は直ぐに大学の人気者となり、人見知り気味の私には眩しく見えて。 そんな彼女が何故私と蔓む様になったのか未だ良く判らない…良く説明出来ないが敢えて言うなら‘午が合った’と言う事なのだろう。 葛城博士の娘とは知らなかったが確かにその才知は際立っていた。
…男作った時は流石に驚いたが…
ま、二人が別れて私は貴重な才能が潰れずに済んだと内心安堵していた…あの男には悪いが。 だから大学卒業後彼女が外人部隊の軍人になったと風の噂に聞いた時は驚き悲しんだものだ。
…それがまさかヘッドハンティングされてネルフの作戦部長とは…
そんな事を思い出しながらふと見れば既に珈琲が出来上がっていた。 マグカップに注ぎ、振り向いて四歩、書籍やレポートの山の間に挟まって何やら調べ物をしている彼女の手元にマグカップを置いた。
「あー、良い香り…」
しみじみと呟き、ミサトは書類から目を離さず片手で持ったマグカップに口を付ける。
「溢さないでよね。で、何調べてるの?」
「う〜ん…こないだの第三使徒戦でN2使ったでしょ?あのデータから励起した次元多層湾曲空間を物理突破するのに必要なエネルギー係数を」
「ATフィールドを物理突破?貴女そんな低能だったの?」
「言うわねリツコ…ま、戦車砲弾が効果無かった時点で諦めなさいって事よねー。」
「当たり前でしょ?そもそも励起して無い状態で3MJ相当の威力で1000mmの均質鋼板軽く抜ける代物を弾くのよ?それよりエヴァのATフィールド中和時点で有効打与える算段した方が良くない?」
「な事わーってるわよ、立場上そうもいかないのが作戦部長の…っと有った有った。」
「でもおかしいわね…マギにデータ無かった?」
「今や第4使徒の解析で端末が満杯なの知ってるでしょ?」
…そうだった。
「マギへの作戦部直通回線も手一杯、戦術課専用回線だってエヴァの修復関連で当分無理、空き回線に優先権限で予約入れても1週間待ち…にしても意外ねー。」
マグカップ片手にレポートの山から拾い上げたデータを端末に打ち込みながらミサトが言った台詞に私は眉を潜めて聞き返した。
「意外?何がかしら?」
「私てっきりリツコが喜び勇み端末嚼りついてるかと…」
内心の動揺を押し隠し、私は弁解がましい台詞を尤もらしく語る。
「そもそも私は脳機能生態物理学と電子工学が専門よ、餅は餅屋…折角専門家が居るのだから彼等に給料分働いて貰うわ。」
「…それ、本当〜?」
疑わしい声を上げるミサトが頭を上げないのを幸いに、固い表情のまま意識して柔らかい口調をゆっくり絞り出す。
「と、建前ではね…まぁ、立場上仕方無いけど。正直もし私が只の研究者だったならこんな宝物を前にして落ち着いてなんていられないわ。」
「やっぱね〜。」
「当然でしょ?未知の存在が目の前に有るのよ、それこそ全て放り投げてでも研究に一枚噛もうとしていたわ。ま、一枚噛もうものならミサトの言う様に間違い無く端末に張り付いて離れなかったでしょうけどね…今端末使用してる彼等みたいに。」
「ふーん…でもやっぱ意外だわ、あんたはもっとこーゆーのに食い付くかと…」
「管理職の憂鬱よ。科学技術部門統括首席研究員としては自分の研究だけ専念する訳にはいかないの…貴女と一緒よ、目の前の仕事の進行、人事管理と人材育成、仕事は山となり誰かに投げたくとも専任者選任だけで一悶着。もう頭痛いわ…」
「はぁ、仕事は何処も一緒か。任せる仕事は任せないと育たないし任せっぱなしにはいかないし身体は一つだし…やってられないわよ全く!」
不意の怒号に目を向ければ私の目の前には長髪の草臥れ果てた女が1人で吠えている。
「あ、切れた。」
不意にノートパソコンから両手を離し天を仰ぎ全身をを戦慄かせながら怨嗟の声を上げるミサト
「仕事は溜まる目処は付かないあーもーあーもー! 何で作戦部の回線まで占拠されんのよ!何で兵器開発の進行状況であたしが搾られるのよ!大体予算予算言って今まで開発申請却下してたの誰よ! そもそも部外者で初心者の子供にパイロットやらせてんのにあたしの教育に問題有るとかパイロットの義務だ責任感だの今更何ほざいてんのよ今正に素人へ端から教えてる最中なのに急にプロになれる訳無いじゃない馬っ鹿じゃないのならあんたがシンちゃんの代わりに乗りなさいよ! 大体このご時世に手書きで報告書寄越せとかあたしゃいつの時代に生きてんのよ!馬鹿なの?本気で馬鹿なの?それともパワハラ?パワハラね!?機密保持に名を借りた新たな嫌がらせなのね!!死ぬの?てかあたし死ぬの?あたしに死ねって言うのね!?死ねって言うのねー――っっ!!…ゼハーゼハー…」
一頻り吠えて息を切らした女に内心同調し同情しながら私は彼女に声を掛ける。
「…落ち着いた?珈琲溢さなかった事は誉めてあげる。」
「…ありがと、少し落ち着いたかも。でもさー、も・本っっ当どうにかして欲しいわよー。いっそ難しい事考えないで全部N2の10連コンボで一気にケリ付けたい位だわーマジ!」
「…気持ちは判るけどね。」
…釣られて私もつい本音が零れた。
「ゔ〜…リツコマジで戦略級N2爆弾ここで量産しない〜?」
「また無茶な事を…N2は云わば閉じた空間内でSSを対消滅反応させる代物、確かに対消滅反応自体で放射能汚染は発生しないけど、プラズマ化した外郭構成素材や大気は輻射熱と共に各種放射線や中性子を周辺に撒き散らすし放射化した物質による残留放射線は僅かながらも確実に発生するわ。つまり無制限に使用出来ない以上量産してもどうかしらね?」
「…そもそも第3使徒だって中性子とプラズマの輻射熱線で表層溶融しただけでN2の爆発衝撃波は殆ど無効化してたしねー、有効被害範囲内が約350万hPa/m2だから…」
「瞬間圧力m2辺り約35t。その圧力と熱量をして存在を維持する脅威の存在、それが使徒よ。」
「使徒を周辺空間ごと巨大圧力鍋型電子レンジに放り込んでみましたー、でも未だ生きてましたー、ははっ、どうしろってのよ一体…」
「そうね、まさか視認出来る程のATフィールド励起するとは誰も想定して無かったわ…逆説的に言えばそれでもダメージは与えられた訳ね。やっぱりミサトの言う通りN2連打が一番効果的かしら。」
「まー最後の手段はそれねー。一応人の作った兵器でダメージが与えられたんだから全く手が無いって訳じゃ無い筈…と思わなきゃやってられないわよ。っと演算終了…うげ」
話しながら傍らのノートパソコンに何やら入力していたミサトが急に変な声で呻いた。
「?何」
「ん〜…見たく無い現実を再確認中…」
「具体的には?」
「要約すると、視認出来る状態に励起し物質化したATフィールドの突破には物理換算でmm2当たり5t以上の瞬間圧力を…」「待ってミサト」
「…単位間違って無いわよ。平均的装甲鋼鈑がmm2辺り120から130kgで抜けるから単純に言えば強度は戦車正面装甲の40倍以上…通常型バンカーバスターが約10MJ、APSFDF砲弾の約3倍の威力で、とすれば…」
「あのね、強化特殊セラミックでも精々2t弱が塑性流動値よ?mm2辺り5t?」
「そ。視認出来る程のATフィールド相手には現存する如何なる物理攻撃も無効って事ね…唯一つを除いて。」
「唯一つ…単分子刃か。」
「現状ATフィールドの物理突破はエヴァの質量を一点に集中出来るプログレッシブナイフ以外は無いわね。」
「それも刃の長さ分だけね。」
「は、これ無理だわ。やっぱエヴァによるATフィールド中和時点でしか物理打撃の効果は見込め無いわね」
「貫通質量弾の直撃跳ね返した時点で判ってたでしょ?並の攻撃で効果出せるなら苦労しないわ。大体何で物理突破なのよ。」
「うちらの現有兵装の中で最高出力を誇る64cmレーザー臼砲、未だに出番が無い理由は何?」
「無効だからよ。」
「そ。レーザーじゃ多重湾曲空間…位相をねじ曲げるATフィールド相手にはそもそも当たらないわ。周辺空間ごと焼き尽くすか空間位相諸共一挙に突き破るしか無いとなればN2か物理衝撃しか…待てよ、ポジトロンならいけるかしら?」
「連続極小対消滅反応による一点突破か。それなら確かに可能性は…無いわね。それだけの規模のポジトロン生成はここの全電力使っても無理、そもそもそれだけのキャパシティ持ったバケモノ加速器や超巨大粒子生成保持器なんて代物製作するのに一体何年かかると思ってるの?」
「はぁ…やっぱ無理か。しゃーない、現状最善策は爆圧で進行遅延と反撃防止を図るって方向で…低予算でかつ現有武装以上の高威力と量産性か、有る物組み合わせて造るとなれば…うわぁ、我ながら呆れた発想だわ。」
「?何思い付いたの?」
「…ジオフロント排水パイプ流用した直径2,5mの成型炸薬弾頭ロケット弾と無反動砲。」
「!?に…よ、良くそんな代物思い付くわね、感心するわ。」
「仕方無いでしょ?それに現状では間に合わないかも知れない新兵器より間に合わせる事が出来る旧式兵器の方が優先されるわ。」
「そう言えば量産型のパレットガン6門、今日納品されるわよ。」
「良かったー、こないだの戦闘で量産試験型壊されたから残数2門じゃ不安だったのよね。これでレイが復帰すれば2機体制で戦える。」
「レイの回復は順調よ…でもシンジ君、帰って来てくれて良かったわね…」
「…うん。」
「…素直には喜べないけどね…」
「…うん。」
「…いつまでも子供に頼ってちゃいけないわよね…」
「…うん。」
「…せめてお膳立ては完璧にしてあげないと…いつかは私達で倒さなきゃね…もう一杯飲む?」
「うん…悠長な事は出来ないけど…」
「…そうね…」
―――
「ありがと、助かったわ。」
プシュン
コツコツコツコツ…
「しっかし我ながら馬鹿馬鹿しい兵器ねこれ…ん?待てよ、確か衛星軌道からの質量兵器迎撃用の…あれなら…」
「あ、葛城さん、こないだのセンサー増設案通りましたよ。」
「え?日向君それマジ!?いやー持つべきは優秀な部下よねー有難う…ってそれ何?」
「え?ああ、赤木博士から頼まれたエヴァの戦闘記録のコピーですけど。」
「エヴァの戦闘記録?何でそんな物…」
「さぁ?昨日依頼されまして。てっきり俺使徒のサンプルに張り付いてるもんだと思ってたんですがそっちには居なくて…あ、研究室在室みたいですね。じゃこれ渡してきます。」
「え?あ、あぁご苦労様。(…どう言う事?)」
―お知らせ― UPに併せ過去投稿中幾つかの箇所訂正しました。 ※例−オーナインシステムの桁→10億から千億に修正(爆)
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