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親父補完委員会((笑))【ゲンドウ
日時: 2011/10/25 23:53
名前: 何処

【ゲンドウ・心の向こう側−残渣−】


夢を見た。


懐かしい夢だった。


夢と言うより思い出か。

…否、夢物語の様な思い出だから夢かも知れない。

あれは何度目の事だったか、私が妻と映画館へ行った時の夢だ。

夢の中私は妻と映画を見ている。
妻と二人、ポップコーン片手に益躰も無い…いや、他愛ないストーリーを眺める。

隣には空虚な在り来たりの子供騙しを楽しむ妻。幸せに満ち日々の暮らしに充足した日常に育った女…

私は何故ここに…この女の隣に居るのだろう。

…自ら望んだ筈の存在になり居場所を得ながら、苛立ちを抑えられずに居心地の悪い椅子の上に身動ぎして一人背を伸ばす。

ふと掌を眺める。

何時でもこの掌が私を現実へ…過去へと引き戻す。
…あの地獄こそが私の現実だったから。

治療の甲斐無く倒れ行く飢えた難民、痩せ衰えこの手の内で息絶える子供、意味無く撃たれる市民、僅かな水と食糧の為身を売り盗み奪い殺し合う民衆、それを助長する狂信者共…

只一欠片の食糧が、只一錠の薬品が、只一本の注射が無いだけで目の前の死を避けられぬ人々を一体何人看取ったのだろう。

僅かな食糧の為子を売る親、援助物資を横流しする役人、薬品の注文書を書き換える上司、援助額を水増しする政府、支援の成果を吹聴する団体、これを機会に領土を狙う隣国、子供達を兵士に徴収する軍隊、利権に群がる企業…人間不信にもなろう。

…だが、私は彼等を笑えまい。自らの幸せこそが一番だと知った今となれば。

この手に残る死の感触を、私は忘れる事無く生きて来た…ユイの手を取るまで。
…良いのだろうか、このまま流されて…
今の私は…


気が付けば既に映画は終わっていた。
立ち去る人々を見送りながら私は座り心地の悪い椅子に沈んだまま。
その時、妻が私の耳許に囁いた。

妻は告げた…彼女が母になる事を。

その瞬間、私の掌は過去を取り落とした。

気が付けば、周囲の目も忘れ私の手は今を…妻ともう一人…二人かもしれないが…抱き上げていた。


▲▽▲



「夢か…」

仮眠室のベッドに靴も脱がず倒れこんだ姿のまま、一人呟く。
私を眠りから引き戻した原因…枕元の携帯端末機が呼んでいる…

身を起こし眼鏡を掛け携帯端末を開く

「…私だ。」

『お早うございます司令、現在06:07です、申し訳ございません指定時間より二分遅くなりました。』

「…構わん。誤差範囲内だ。本日のスケジュールは予定通りだな?」

「は。メインの零号機起動試験は1045予定変わらず。レイの体調も万全です。」

「…ご苦労…1015にはそちらに向かう、準備を頼む。」

「は。」


…一瞬、ユイと赤木君がだぶって見えた。

端末を切り、頭を振りながらシャワーを浴びる為浴室へ向かう。

「…男ならシンジ、女ならレイ…か…」

無意識に私は呟いていた。
…つい力が入った様だ。浴室の扉が音を立てた


△▼△


「レイ!?」

気が付いた時にはもう射出されたエントリープラグへ走り出していた。

非常口開閉ハンドルに手を伸ばす…余りの熱さに手を放しかけ、再びハンドルを握る。

掌が、焼ける。

苦痛が、襲う。


やっと開けたプラグの中…レイは生きていた。

一瞬、掌の痛みを、思い出を忘れた。



…眼鏡を無くした事に気付いたのは暫く後だった。



初音ミク 【VOiCE】

http://www.youtube.com/watch?v=yvTZnxm7u-I&sns=em

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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.28 )
日時: 2014/02/01 15:16
名前: 何処

シンジが、使徒を倒した。

それは良い、だが、同時にシンジは稼働中の初号機に救難の為とは言え一般人を…それもよりにもよってシンジと同学年の少年を…乗せてしまった。

…まずい事になった…



【−疑惑(中編-3-)−】



執務室には私と冬月の2人だけ、私達は机を挟み向かい合っている。


「碇…どうする?」


執務机の前に立った冬月が眉間に皺を寄せて問い掛けて来た。


「委員会にはそのまま報告する、救難の為やむを得ないパイロットの判断だったとな。」

「だが碇、機密兵器に一般人を乗せた事だけでも老人達は煩かろう、ここぞとばかりに大騒ぎするぞ?それに…」


冬月の台詞を遮り、椅子に座り直しながら話を継いで語る。


「ああ、だがそちらは大丈夫だ。幸いシンクロ率の記録情報はシンジの物だけ、提出記録の内2人を載せた時点からのエントリープラグ内情報は戦闘被害による機器故障で未記録とする。」

「…うむ、それしかあるまい。レコーダーもアンビリカルケーブル切断衝撃による機器故障として処理しよう。後は…」


再び冬月の台詞を継いで私は答える


「赤木君には私から命令する。彼女の事だ、恐らくもう気付いて対処している筈、併せて彼女のIDをAA級に格上げする。」

「うむ、頃合いだな。何時までも隠す訳にはいかん、では技術陣への箝口令は通常の対処で行おう。未だ我々の計画は…」

「そうだ、例え老人達が気付いているにせよ未だ秘匿しなければならない。」


私の台詞に頷く冬月


「碇、では老人達への説明は頼んだぞ。儂は保安警備陣とセキュリティ強化の打ち合わせをしてくる。」

「頼む。」


踵を返し出口に向かう冬月が、ふと足を止め何かを思い出したかのように背を向けたまま問い掛けてきた。


「処で碇、例の…」

「ああ、奴は恐らくインフィニティだ。」


冬月の背中に答える。
足を止め背を向けたまま再び冬月が問う。


「やはり…しかし碇、取り込まれてインフィニティ化したした存在は…」

「ああ、南極でアダム化して死んだ調査隊員と旧東京のリリスに同化された犠牲者以外には居ない事になっている…公式には。」

「南極調査隊か…その娘が対使徒戦の第一線で奮闘中とは因果な物だ。」

「真のインパクト発生を阻止したあの献身、葛城教授には感謝せねば。」

「全くだな。しかし碇…」


冬月の台詞を遮り端的に答える。


「南極の犠牲者達は全員死亡、記録上旧東京の犠牲者達はサンプルを除き全員が処理されている。それは間違い無い筈だ。」

「では…」

「恐らく老人達の火遊びの結果だろう。最悪の場合裏死海文書の記述に無い使徒の出現も考えられる。」

「とすれば碇…」

「記述は守らねばならん。もし記述より外れた存在が現れれば使者が動くだろう。」

「まずいな…」

「ああ。それが使者に隠匿できるならそれに越した事は無い。だがその前にある程度の目処はつけておきたい。一段階計画を進める。」


私の答えは冬月の予想通りだったのだろう。背を向けたまま頷きながら冬月は確かめる様に一つだけ問い掛けてきた。


「良いんだな?」

「今更だ。これから新たにエヴァンゲリオンを建造しようにも人造人間の素体は既に使い果たしている、遺産やサンプルを使う訳にもいかない。」

「うむ。レイかセカンドを使うにも今からでは時間が足りん。量産型とて果たして間に合うかどうか判らんとなれば…」

「必要となれば仮設機体も駆り出す。マルドゥクに登録された中から適当な者を拾う必要も有るかもしれない。」

「そうだな…となれば一刻も早くダミープラグを完成させねばならん。レイの覚醒もそうだが…」

「ああ。アダムと共にセカンドもこの際ここに呼ぶ。」

「…儂等は地獄行きだな。」


自嘲する冬月


「構わん。判っている筈だ冬月、人類存続の為には手段を選ぶ事は出来ない。それに寧ろ私達だけで片が付くなら稀幸だ。」

「うむ、儂等だけなら構わんな。使徒の母体と化した犠牲者達の為にも…」

プシュン

「…子供達に罪業を課すごとき事態は避けねばな…」

プシュン


冬月が一歩踏み出し、自動ドアの向こうへ消える寸前に呟いた台詞は私以外誰も居ない執務室にいつまでも残った。


―――


無闇に広い部屋の中心、一卓の執務机に座る男と、向かいに立つ女


「…では君の方で既に処置したのだな?」

「は、データは既にマスキングし、B級機密指定を掛けました。」

「的確な判断だ。」

「それと同時に戦闘記録内の該当箇所は戦闘行動に伴う通信不良で幾つかデータの欠損が見られ全体にかなりノイズが入り、部分的に裁ち切れがありました。ですが敢えて修復は行わずそのままにしてあります。」

「ご苦労。」

「それと司令、一つ質問が在ります。」

「…あの少年達の事だな?」

「はい。確率的に有り得ません、まさかあのふ…」「少し待て」「…?」


男の微かな動きに反応したのだろう、装甲シャッターが重々しい音を発てながら執務室の外周を覆い出す。


「こ、これは一体…」

「…」


珍しく慌てた様子の女に男は何時もの姿勢のまま沈黙で答える。
全てのシャッターが落ち辺りを暗闇が満たすと同時に床に描かれた生命の樹の図柄が発光する。


「S級機密指定特別会議場…委員会との中継会議は此所で行われている。」

「こ…ここが…」

「これから君に話す事は第一級の特秘事項だ。大袈裟に見えるだろうが万が一の場合も有る、気を遣うのに越した事は無い。」

「!?」

「これはAA級情報開示ID証、私の権限で委員会の承認無しに発行出来る最上級のID証。」


男が懐から取り出した一枚の樹脂片を示す。
女の表情に衝撃が走る


「それは…」

「ああ、君の質問に対する答えの鍵だ。」

「…」


手の樹脂片を卓上に置き、男は語り続ける。


「…質問に答える前に君には機密保持の為宣誓と確約書への記名をして貰う。」
「そ…それ程の…」


女の顔に再び緊張が走る


「今なら一切を忘れる条件で君を解放出来る。だがもし君があくまで疑問の解を求めるのなら…相応の責務を背負って貰う事になる。どちらかを選べ。」

「………」

「………」


暫しの沈黙、と、女の手が卓上の樹脂片へと伸びる。


「…ネルフ科学技術局局長兼技術開発部総括首席研究員赤木リツコ、機密保持宣誓を行います。」

「…判った。では書類に記名する前にこれを見て貰おう。」


男の台詞と共に装甲シャッターの一面がモニターと化し、画像を投影し始める…



http://www.youtube.com/watch?v=rPTFEo_b_Gk&sns=em


―――


「…お帰りなさい。」

「…ただいま…」


ミーンミーンミーンミー――ンミー―ー・・・・・・…

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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.29 )
日時: 2014/02/04 00:04
名前: 何処

【−疑惑(後編)−】
《GLIDE》http://www.youtube.com/watch?v=3EK9Sboe8hg&sns=em


「ええっとお、確かここに…有った有ったっとぉ。次は…」


どうやら徹夜明けらしい青い顔色の女が赤い目を瞬かせブツブツ呟きながら私の研究室で資料を漁っている。
その観素暮等しい姿に思わず嘆息し、私はミサトに声を掛けた。


「しかし酷い有り様ね、髪クシャクシャよ?シャワー位浴びてきたら?」

「ん〜?…いちおー浴びて来たぁ…無いわー…やっぱこれか…でも計算式が〜…あれ?やっぱ違う…かな?試すか…あれ〜?」


…この状態のミサトには最早何を言っても無駄だ。学生の頃からの長い付き合い、骨身に染みる程知っている。
だが同じ女として身嗜みに一言有るのは構わないだろうと愚痴めいた忠告を溢す。


「せめてブローぐらいしなさいよ全く…珈琲飲む?」

「のむーさんくー。」

「じゃあ…あら?終わっちゃった。少し待ってて今から淹れるわ」

「りょーかいー。」


買い置きの缶から挽いた豆を掬い、ペーパーネルを敷いたドリッパーに載せて安物のコーヒーメーカーにセット
室内を満たす湯の沸く音と珈琲の香り、ミサトの資料を漁る音…
大学時代一緒にレポートを書くミサトと完徹の朝飲んだ自販機製の真っ黒い液体が注がれた紙コップが手中のマグカップと重なる…ふと蘇る懐かしい記憶。

思えば長い付き合いだ。
誰とでも仲良くなれる彼女は直ぐに大学の人気者となり、人見知り気味の私には眩しく見えて。
そんな彼女が何故私と蔓む様になったのか未だ良く判らない…良く説明出来ないが敢えて言うなら‘午が合った’と言う事なのだろう。
葛城博士の娘とは知らなかったが確かにその才知は際立っていた。


…男作った時は流石に驚いたが…

ま、二人が別れて私は貴重な才能が潰れずに済んだと内心安堵していた…あの男には悪いが。
だから大学卒業後彼女が外人部隊の軍人になったと風の噂に聞いた時は驚き悲しんだものだ。

…それがまさかヘッドハンティングされてネルフの作戦部長とは…

そんな事を思い出しながらふと見れば既に珈琲が出来上がっていた。
マグカップに注ぎ、振り向いて四歩、書籍やレポートの山の間に挟まって何やら調べ物をしている彼女の手元にマグカップを置いた。


「あー、良い香り…」


しみじみと呟き、ミサトは書類から目を離さず片手で持ったマグカップに口を付ける。


「溢さないでよね。で、何調べてるの?」

「う〜ん…こないだの第三使徒戦でN2使ったでしょ?あのデータから励起した次元多層湾曲空間を物理突破するのに必要なエネルギー係数を」

「ATフィールドを物理突破?貴女そんな低能だったの?」

「言うわねリツコ…ま、戦車砲弾が効果無かった時点で諦めなさいって事よねー。」

「当たり前でしょ?そもそも励起して無い状態で3MJ相当の威力で1000mmの均質鋼板軽く抜ける代物を弾くのよ?それよりエヴァのATフィールド中和時点で有効打与える算段した方が良くない?」

「な事わーってるわよ、立場上そうもいかないのが作戦部長の…っと有った有った。」

「でもおかしいわね…マギにデータ無かった?」

「今や第4使徒の解析で端末が満杯なの知ってるでしょ?」


…そうだった。


「マギへの作戦部直通回線も手一杯、戦術課専用回線だってエヴァの修復関連で当分無理、空き回線に優先権限で予約入れても1週間待ち…にしても意外ねー。」


マグカップ片手にレポートの山から拾い上げたデータを端末に打ち込みながらミサトが言った台詞に私は眉を潜めて聞き返した。


「意外?何がかしら?」

「私てっきりリツコが喜び勇み端末嚼りついてるかと…」


内心の動揺を押し隠し、私は弁解がましい台詞を尤もらしく語る。


「そもそも私は脳機能生態物理学と電子工学が専門よ、餅は餅屋…折角専門家が居るのだから彼等に給料分働いて貰うわ。」

「…それ、本当〜?」


疑わしい声を上げるミサトが頭を上げないのを幸いに、固い表情のまま意識して柔らかい口調をゆっくり絞り出す。


「と、建前ではね…まぁ、立場上仕方無いけど。正直もし私が只の研究者だったならこんな宝物を前にして落ち着いてなんていられないわ。」

「やっぱね〜。」

「当然でしょ?未知の存在が目の前に有るのよ、それこそ全て放り投げてでも研究に一枚噛もうとしていたわ。ま、一枚噛もうものならミサトの言う様に間違い無く端末に張り付いて離れなかったでしょうけどね…今端末使用してる彼等みたいに。」

「ふーん…でもやっぱ意外だわ、あんたはもっとこーゆーのに食い付くかと…」

「管理職の憂鬱よ。科学技術部門統括首席研究員としては自分の研究だけ専念する訳にはいかないの…貴女と一緒よ、目の前の仕事の進行、人事管理と人材育成、仕事は山となり誰かに投げたくとも専任者選任だけで一悶着。もう頭痛いわ…」

「はぁ、仕事は何処も一緒か。任せる仕事は任せないと育たないし任せっぱなしにはいかないし身体は一つだし…やってられないわよ全く!」


不意の怒号に目を向ければ私の目の前には長髪の草臥れ果てた女が1人で吠えている。


「あ、切れた。」


不意にノートパソコンから両手を離し天を仰ぎ全身をを戦慄かせながら怨嗟の声を上げるミサト


「仕事は溜まる目処は付かないあーもーあーもー!
何で作戦部の回線まで占拠されんのよ!何で兵器開発の進行状況であたしが搾られるのよ!大体予算予算言って今まで開発申請却下してたの誰よ!
そもそも部外者で初心者の子供にパイロットやらせてんのにあたしの教育に問題有るとかパイロットの義務だ責任感だの今更何ほざいてんのよ今正に素人へ端から教えてる最中なのに急にプロになれる訳無いじゃない馬っ鹿じゃないのならあんたがシンちゃんの代わりに乗りなさいよ!
大体このご時世に手書きで報告書寄越せとかあたしゃいつの時代に生きてんのよ!馬鹿なの?本気で馬鹿なの?それともパワハラ?パワハラね!?機密保持に名を借りた新たな嫌がらせなのね!!死ぬの?てかあたし死ぬの?あたしに死ねって言うのね!?死ねって言うのねー――っっ!!…ゼハーゼハー…」


一頻り吠えて息を切らした女に内心同調し同情しながら私は彼女に声を掛ける。


「…落ち着いた?珈琲溢さなかった事は誉めてあげる。」

「…ありがと、少し落ち着いたかも。でもさー、も・本っっ当どうにかして欲しいわよー。いっそ難しい事考えないで全部N2の10連コンボで一気にケリ付けたい位だわーマジ!」

「…気持ちは判るけどね。」


…釣られて私もつい本音が零れた。


「ゔ〜…リツコマジで戦略級N2爆弾ここで量産しない〜?」

「また無茶な事を…N2は云わば閉じた空間内でSSを対消滅反応させる代物、確かに対消滅反応自体で放射能汚染は発生しないけど、プラズマ化した外郭構成素材や大気は輻射熱と共に各種放射線や中性子を周辺に撒き散らすし放射化した物質による残留放射線は僅かながらも確実に発生するわ。つまり無制限に使用出来ない以上量産してもどうかしらね?」

「…そもそも第3使徒だって中性子とプラズマの輻射熱線で表層溶融しただけでN2の爆発衝撃波は殆ど無効化してたしねー、有効被害範囲内が約350万hPa/m2だから…」

「瞬間圧力m2辺り約35t。その圧力と熱量をして存在を維持する脅威の存在、それが使徒よ。」

「使徒を周辺空間ごと巨大圧力鍋型電子レンジに放り込んでみましたー、でも未だ生きてましたー、ははっ、どうしろってのよ一体…」

「そうね、まさか視認出来る程のATフィールド励起するとは誰も想定して無かったわ…逆説的に言えばそれでもダメージは与えられた訳ね。やっぱりミサトの言う通りN2連打が一番効果的かしら。」

「まー最後の手段はそれねー。一応人の作った兵器でダメージが与えられたんだから全く手が無いって訳じゃ無い筈…と思わなきゃやってられないわよ。っと演算終了…うげ」


話しながら傍らのノートパソコンに何やら入力していたミサトが急に変な声で呻いた。


「?何」

「ん〜…見たく無い現実を再確認中…」

「具体的には?」

「要約すると、視認出来る状態に励起し物質化したATフィールドの突破には物理換算でmm2当たり5t以上の瞬間圧力を…」「待ってミサト」

「…単位間違って無いわよ。平均的装甲鋼鈑がmm2辺り120から130kgで抜けるから単純に言えば強度は戦車正面装甲の40倍以上…通常型バンカーバスターが約10MJ、APSFDF砲弾の約3倍の威力で、とすれば…」

「あのね、強化特殊セラミックでも精々2t弱が塑性流動値よ?mm2辺り5t?」

「そ。視認出来る程のATフィールド相手には現存する如何なる物理攻撃も無効って事ね…唯一つを除いて。」

「唯一つ…単分子刃か。」

「現状ATフィールドの物理突破はエヴァの質量を一点に集中出来るプログレッシブナイフ以外は無いわね。」

「それも刃の長さ分だけね。」

「は、これ無理だわ。やっぱエヴァによるATフィールド中和時点でしか物理打撃の効果は見込め無いわね」

「貫通質量弾の直撃跳ね返した時点で判ってたでしょ?並の攻撃で効果出せるなら苦労しないわ。大体何で物理突破なのよ。」

「うちらの現有兵装の中で最高出力を誇る64cmレーザー臼砲、未だに出番が無い理由は何?」

「無効だからよ。」

「そ。レーザーじゃ多重湾曲空間…位相をねじ曲げるATフィールド相手にはそもそも当たらないわ。周辺空間ごと焼き尽くすか空間位相諸共一挙に突き破るしか無いとなればN2か物理衝撃しか…待てよ、ポジトロンならいけるかしら?」

「連続極小対消滅反応による一点突破か。それなら確かに可能性は…無いわね。それだけの規模のポジトロン生成はここの全電力使っても無理、そもそもそれだけのキャパシティ持ったバケモノ加速器や超巨大粒子生成保持器なんて代物製作するのに一体何年かかると思ってるの?」

「はぁ…やっぱ無理か。しゃーない、現状最善策は爆圧で進行遅延と反撃防止を図るって方向で…低予算でかつ現有武装以上の高威力と量産性か、有る物組み合わせて造るとなれば…うわぁ、我ながら呆れた発想だわ。」

「?何思い付いたの?」

「…ジオフロント排水パイプ流用した直径2,5mの成型炸薬弾頭ロケット弾と無反動砲。」

「!?に…よ、良くそんな代物思い付くわね、感心するわ。」

「仕方無いでしょ?それに現状では間に合わないかも知れない新兵器より間に合わせる事が出来る旧式兵器の方が優先されるわ。」

「そう言えば量産型のパレットガン6門、今日納品されるわよ。」

「良かったー、こないだの戦闘で量産試験型壊されたから残数2門じゃ不安だったのよね。これでレイが復帰すれば2機体制で戦える。」

「レイの回復は順調よ…でもシンジ君、帰って来てくれて良かったわね…」

「…うん。」

「…素直には喜べないけどね…」

「…うん。」

「…いつまでも子供に頼ってちゃいけないわよね…」

「…うん。」

「…せめてお膳立ては完璧にしてあげないと…いつかは私達で倒さなきゃね…もう一杯飲む?」

「うん…悠長な事は出来ないけど…」

「…そうね…」



―――



「ありがと、助かったわ。」


プシュン

コツコツコツコツ…


「しっかし我ながら馬鹿馬鹿しい兵器ねこれ…ん?待てよ、確か衛星軌道からの質量兵器迎撃用の…あれなら…」

「あ、葛城さん、こないだのセンサー増設案通りましたよ。」

「え?日向君それマジ!?いやー持つべきは優秀な部下よねー有難う…ってそれ何?」

「え?ああ、赤木博士から頼まれたエヴァの戦闘記録のコピーですけど。」

「エヴァの戦闘記録?何でそんな物…」

「さぁ?昨日依頼されまして。てっきり俺使徒のサンプルに張り付いてるもんだと思ってたんですがそっちには居なくて…あ、研究室在室みたいですね。じゃこれ渡してきます。」

「え?あ、あぁご苦労様。(…どう言う事?)」



―お知らせ―
UPに併せ過去投稿中幾つかの箇所訂正しました。
※例−オーナインシステムの桁→10億から千億に修正(爆)
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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.30 )
日時: 2014/02/16 01:34
名前: tamb

やたらと面白いんだけど、ストレスが溜まるのも事実。こういう話はばーっと一気に読みたいよね。伏線張りまくりだし。
続き待ってます〜。
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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.31 )
日時: 2014/02/17 18:04
名前: 何処

 第二試験場

正式名称では無いが、この巨大空間はこの地の住民にそう呼ばれている。


主照明の落ちた薄暗く人気の無いそこに足音が響く。


時計の秒針を思わせる正確かつ規則的なその足音の向こうには非常灯の仄かな明かりに浮かぶ巨大なシルエット…


ベークライトに固められたオブジェは無言で男を迎え入れた。



【−策謀−】
《HYBRID》
http://www.youtube.com/watch?v=0wrj73Hxk10&sns=em



「…」


振り返る男の見上げる視線の先、巨体な拳の打撃痕が残る監視展望室。


「…未だか…少し早かったようだ…」


呟く男の低い声は意外な程反響し実験場に響いた。


「いや、そうでも無いよ。」


不意に応える声を男は身動ぎ一つせず背中に受け止める。
誰何の必要も無いその声と聞き慣れた口調。


「相変わらず時間に正確だねー。窮屈ぢゃない?」


背後に響くからかう様な若い女の声に、振り向きもせぬ男が低音で応えた。


「時間前に貴様が来た事の方が驚きだ。」

「うわキツ。」

「で、どうだ?」


男の声は実務的な響きと底にある冷徹さを含んでいた。


「ゲンドー君の予想通りだったよ。やっぱ爺さん達はサードインパクトをお望みのようで。」

「ではネブカトネザルの鍵は…」

「やっぱ委員会で隠匿してたわ。お約束通り鎗に姿を替えてたけどね。」

「…やはりそうか…」


もしこの場面の目撃者がいれば、その空気の異様さに引いた事だろう。

一見父子にも見える男と女、お互いの声と口調だけならば年齢に相応しいかもしれない。
だがその雰囲気には情愛は無く、見た目に相応しく無い会話の中身はどこか殺伐さを帯びた単語に満ちている。


「最も爺さん達はアレをロンギヌスと呼んでたからどーもでかい勘違いしてるねありゃ。」

「ふ…やむを得まい、それはそうと…」


振り向く男の手には0,44口径の2インチ銃身、そのまま引き金に力を込め、撃鉄が真鍮の筒を叩く。

閃光と轟音


「ん?どったの?」


男の目の前には前触れ無く現出した赤い壁と、その一点に制止している指先程のメタルコーティングされた鉛の塊。そしてそれをを気にも留めぬ様子の少女が1人


「…下手な身分確認よりこの方が早い。」


男は紫煙を上げた侭のコルトを懐の牛革ケースに戻す。


「相変わらずせっかちだねー、ハゲるよ?てかセンサー切ってあるんだろーね?」

「ここはセンサーから遮蔽されている。お前も知っている筈だ。」

「いや、一応お約束だから。にしても随分物騒な職質ぢゃにゃいかい?」

「インフィニティが出た…未登録の。」

「あ、道理で。向こうでも爺さんが何やら火消ししてた訳だ。」


少女は赤い壁の鉛玉を服の埃の様に人差し指で軽く弾く

硬質な金属音

実験場の壁に穿たれたであろう弾痕を見ようともせず男は語り続ける。


「その様子なら未だ他の委員達には伝わってはいないようだな。」

「まーね。あー見えてキールの爺さん結構遣り手だし。で?見当は…って爺さん達かUN以外居る訳無いね。どーすんの?」

「議長の話によれば未だ覚醒はしていない、それはこちらで対処する。それより…」


一度言葉を切り、男は姿勢を正す。
目前の赤い壁は既に消失し、その視野に存在するのはは1人の少女だけ。


「予定を早める、撤収の準備をしろ。」

「へ?何で?」

「潜入して3年だ。そろそろお前の身分も怪しまれ始めているだろう。」

「えー?ペタニアベースぢゃ唯一のエヴァンゲリオン搭乗員の身分がー?」

「いくら東洋系が年齢不詳に見えるにしてもそろそろ違和感を持つ者が出て来るだろう。
新開発技術による簡易シンクロ実験用の仮設機体とは言え有人稼働に成功した唯一の人間、その身元が虚偽だらけとなれば怪しまれてもやむを得まい。
幾ら重要機密と言え本気で調査されれば粗は出る、その前に撤収だ。」

「おぉ、成る程。ゲンドー君頭良い〜…で、どうすんの?」

「シナリオでは第5使徒殲滅後に第6使徒が北極圏に現れる筈だ、その進路をそちらに誘導する。
仮設機体は使徒迎撃に出撃・戦闘の末ベースの一部を巻き込み自爆、搭乗員は脱出に失敗…」

「って筋書きね。あいよ、ついでにプラントもぶっ壊しておくわ。で、そこからの脱出経路はどーすんの?やっぱ実力行使?」

「後始末する身を考えろ。監査官を連絡員として寄越す、指示に従え。」

「て事は…うわマジであれ使う気?それにあそこのサンプルは胎児前の幼生だよ?」

「構わん、使うかどうかは兎も角不確定要素が増えた今保険は必要だ。
それにネブカトネザルの鍵が既に鎗となっている以上、我々には対抗する駒が必要だ。ならば寧ろその方が都合が良い。」

「はー、さいですか。んじゃ聖骸布の準備は任せた。早目に送って頂戴。」

「トランクに加工して連絡員が持ち込む手筈だ、引渡しは現地で行え…仮設機体の乗り心地はどうだ?」

「んー?ま〜あくまで‘仮設’だしー、例の新技術自体そもそも未完成だしねー、あんなもんじゃない?
それにさ〜、やっぱ自我が残ってる分けっこーキツいわ。話が違うって文句言ってやる。」

「…初号機は地下第2ゲージだ。」

「チッ、冗談通じないやつ。でもあそこの連中の低能っぷりはゲンドウ君も知ってるぢゃん?どーも全体的に造りが荒くってさー。」

「研究室レベルの代物を無理矢理実務に使えば支障が出て当然だろう。」

「んな事連中が考える訳無いぢゃん、連中が欲しいのは対使徒用決戦兵器じゃ無いんだから。」

「ほう?」

「連中にとっちゃエヴァンゲリオンって技術と知識と利権の宝船だしね〜、さもなきゃ兵器って名前の玩具かな?」

「肥大した組織には良く有る話だ…が、流石に問題だな。」

「だよね〜、なんたってあそこは官僚国会の成れの果てが意地で捩じ込んだベースだからさー、中身なんか利権と内紛と虚飾の宮殿だし。」

「昔委員長はUNに顔を立てる為の施設と言っていた。
言わば厄介払い的に設立した経緯があるからな、お陰で割を喰ったダバフベースは未だ未完成だ。」

「月の利権は未だ旨味薄いからねー。でも爺さんも厄介払いとは良く言ったわ、ま〜欲に駈られて集まった倫理無い研究馬鹿連中と非常識書類至上主義者共が強欲無能管理職達とスクラム組んで大義名分の元これでもかと好き勝手やってるからねー。」

「未だ仮設機体しか造れぬ程度でその様か…」

「その程度だからぢゃん。アチシの休暇知った時のあのテンパリっぷりからして、もしアチシが起動成功させてやらなけりゃ適当に見繕った選抜犠牲者で人体改造やら生体実験喜んでやらかしてたねありゃ。」

「散々やらかして後が無いだけだ。知っていると思っていたが。」

「ふー。ホ〜ントつまんねー男だなー、全く君のどこが良かったのやら…で、こっちの方は?」

「見ての通りだ…ロンギヌスの鎗の在処は確認出来回収も決定したが未だ零号機の起動に手間取っている。」

「むう…やっぱまだ覚醒してないか。ヒトの因子強すぎでないかい?」

「否、未だに使徒の力に目覚めぬのは寧ろヒトに遠いからだろう。ヒトとの違和感がシンクロ時に機体が起こす拒絶反応の原因と考えられる。お前がその良い例だ。」

「あちゃー、そこを突かれると痛いんよね〜。そういやさ、チミの息子チンはどう?」

「問題無い。」

「聞くまでも無かったか。ユーロの彼女もそーだけど、ま・2人共未だママが恋しい年代だもんにゃー、当然っちゃあ当然か。じゃあアチシはこれで。」

「やけに早いな。」

「流石にペタニアベースは遠いからねー、それに名目上日本には墓参りついでに寄っただけだしー。
ま、買い物ついでとは言え実際そうだけど。自分の墓参りってのもどうかとは思うけどねー…ってそれはお互い様か。そりでは…」


一度は立ち去ろうとした小柄な人物は振り向き、男に何かを投げ渡す。


「あ、そうそう忘れる所だったわ、ほいコレが例のSS機関利用の物体浮遊装置簡易概念レポートと試作品設計図。んじゃねゲンドー君。」


言うが早いか何処へともなく歩み去る姿を見送りもせず、男も背を向け歩き出す。
その薄く笑みを湛えた口元から低く呟きが漏れた。


「ああ…又…」



―――



握り締めている融けかけた眼鏡、半裸の少女は無機質な部屋に1人。

部屋を出て駆け出した少年の事は既に少女の脳裏に無い。
それより、少女は自分の心の動きに動揺している。


「……一体……」


独り呟く

その姿を電子の目は無機質な瞳に人とは異なる波長で映している。

少女は知らないがこの部屋は無数に設置されたセンサーにより24時間室内をモニタリングされている。少女の反応を全て拾い上げる為に。
今もそうだ。遥か地下深くに存在する自己進化型合議制自律式高密度演算装置群の電子回路へ向け電子信号に変換された情報が発信され続けている。
だが、その信号は毎日ほぼ変わり無く平坦な物だった

…今迄は。


反応値の変わったその電子信号を地下の迷宮深くで受信したMAGIと呼称されている3基の演算装置は、各々がそのプログラムに従い解析、各々の推論を三基の合議により纏め、一つの結論に達した。

曰く 

−怒り、そして戸惑いの感情発現を確認−計画の第1ステージにてステップを1ランク進行−




「…わからない…」




少女は独り呟き

少年は走る

2人を呑み込む戸惑いと言う感情


自分の衝動が、今の少女には理解出来ない。

少女の心に少年が落としたもの

その揺らめきは陽炎の如く儚くも微か

然しその動きは僅かな揺らぎを生み、揺らぎは波へ、波は何れ世界をも呑み込むだろう

宛ら雫一滴が湖に落ちた波紋の様に少女の心の中で静かに延び拡がり続け

斯くして世界は変わりだす。

然れども刻は変革を待つ事無く

時計の歯車は停まる事無く、針は盤面を周り続けている。

次の使徒出現迄、後僅か。


《HYBRID》
http://www.youtube.com/watch?v=gjm2daVepIM&sns=em
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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.32 )
日時: 2014/02/26 21:47
名前: 何処

【外伝−大人のお仕事(或いは通常営業)−その1−】

《ぼくらの16bit戦争》
http://www.youtube.com/watch?v=GvYf8qdr0s8&sns=em


平日の真っ昼間、シンジ君の現場教育と気分転換を兼ねてリツコと3人で第四使徒解析現場へ見学に行った。

彼に必要なのは自信、それと私達に必要とされている事実と向き合う勇気。
自分の成果をその目で確認させ、その身で実感して貰う。
…などと偉そうな御託並べ立て申請許可をもぎ取ったものの、その実態は只のガス抜きだ。私とシンジ君の。

何しろ養育義務放り出して仕事にのめり込んでろくに面倒見なかったツケで一度は彼がエヴァから降りる事を認めてしまった負い目がある。
ペンペンの世話から家事一切まで彼に任せてひたすら仕事に…
…認めよう。私は仕事に逃げていた。

親愛の情を必要以上に持てば辛くなるのは昔の男で散々やらかした挙げ句身に染みていた筈だったのに。
私はシンジ君を…見るのが怖かったのだ。

人類の希望なんて凡そ覚えも着かないだろう、どこにでも居そうな14歳の少年にその大きすぎる存在…エヴァンゲリオンを委ねざるを得ない。
そんな事態でなければ私は何の感傷も躊躇いも無く壱現場指揮官として彼に対しても振る舞っていられただろう。

それが一番楽だからだ。

普段はともかく、いざと言う時の冷徹さ、冷静さを保ち命令を下す為には配下との完璧な信頼か、或いは完全な割り切りが必要だ。

そんな大人の対応を当然と受け止め、自我に惑わされず命令が無くとも目前の現実に対処出来るプロフェッショナル。
それこそが対使徒決戦兵器たるエヴァの搭乗員に求められる資質だろう…本来なら。

そう、レイの様に端からエヴァンゲリオンパイロットとして訓練された相手ならば、実務的な遣り取りだけで済む。


だけれども私は彼を引き取ってしまった。


重なってしまったからだ。
大人の事情を振り翳し私達大人の都合で振り回される少年の姿が、昔の私と。
そして…

案の定、私は彼を恐れてしまった。

一緒に暮らして漸く判った。今更乍だが。
彼は私の憐憫感傷や贖罪意識の解消相手でも幼いだけの子供でも物分かりの悪い餓鬼でも大人の都合で振り回されるだけの道具でも無い、
極普通の在りふれた只の思春期の少年だ。

その普通さが私を恐れ怯えさせた。

稀に見せる彼の屈託無い笑顔は私の良心を刺激し
彼の拗ねた表情は私に罪悪感を与え
彼の寂しげな表情に私は過去の自分を重ね
彼の無気力に遠くを見る姿に所詮他人だと思い知らされ
彼の真剣な表情に期待と信頼を無責任に寄せている自分を嫌悪し
それでも彼に頼らざるを得ない己に絶望しながら

…大人の無責任を、いいえ私の罪を彼の姿に見出して

私は彼に恐怖した。

だから

彼が彼自身の決断でエヴァを降りると決めたと知って私は安堵したのだ。

無責任にも私は彼に責任を負わせずに済み、私自身彼の上司としての責務から解放される…その事だけしか思わなかった。

昔に戻るだけ、一人の部屋、ペンペンとの暮らしに帰る…

パイロットが居なくなると言う重大性すら些細な事だった。
寧ろ彼が自ら決断を下せた事を喜んでいた。

何故か至極あっさり彼の解任が決まり、私自身も身辺整理を始めた。
パイロットを引き留めもせず辞めさせた人間が責任を問われる事は間違い無いだろうから。
幸か不幸か仕事に没頭していたお陰で引き継ぎも至極簡単に済みそうだった…皮肉な事に。

そして彼が第三新東京を去る日

私はやはり寂しかったのだろう。
気付けば仕事を人に押し付け駅へ彼を送りに自ら向かっていて

そして…彼は。


―――


「あーっ疲れた〜!しっかしリツコも意外と冷静で面白く無かったわねー、もう一寸興奮してるかと思ったのにな〜。」

「…人間に近い…使徒が?」

「ん?どったのシンジ君?」

「え?あ、いや何でも…あ、僕これからシミュレーター訓練ですんでここで…」
「え?今日だっけ?」

「その…どうせ来たなら今日やって明日休ませて貰おうかと…」

「お〜、シンジ君も要領良くなったわねー。」

「ミサトさん見習ってますから。」

「…それ、どう言う意味〜?」

「良い意味ですよ。多分。じゃこれで。」

プシュン

「ちょ!…やっぱ親子ねー、稀に見せるあーゆー可愛げの無い所は。ん?あそこで珈琲飲んでサボってるのは…丁度良いわ。」

カッカッカッカッ

「ねー日向君、ちょっちいいかしら?」

「?はい、何ですか葛城さん?」

「君確か今度予備自衛官訓練で向こうに行く筈よね?」

「はぁ、申請通り相模原です。古巣の実験中隊で航空適性検査を3日程の予定ですけど。
何しろ機種転換訓練の後全翼大型機では暫く飛んで無いもんですからね、正直ここのシミュレーターだけじゃ不安ですから勘を取り戻さないと。」

「あらぁ?元戦術教導隊首席操縦士が随分とご謙遜ねぇ?」

「何しろ“元”ですから。
そりゃ今の機体はほぼ電子制御でオートパイロット使えば手離しでも航路選択から離発着だって勝手にしてくれますけど、幾ら自動化が進んでもやっぱりいざと言う時に物を言うのは自分の腕ですからね。
全翼機、しかもエヴァキャリヤーなんてデカブツをぶっつけ本番で飛ばすなんて羽目になったら流石に怖いですから…で、それが何か?」

「いや、その古巣に用件があるのよ。
あそこで開発中の陽電子砲の話…知ってるわよね?」

「陽電…あぁ、あれですか?衛星軌道からの質量兵器迎撃用の?あれなら確か技研本部に放置してある筈ですよ?」

「放置ぃ?」

「まあ設計値上での威力だけなら折紙付きなんですが。
そもそもその威力発揮する相手も無いわ演習場は無いわ燃費は悪いわ何よりでか過ぎってのが問題で。」

「そんなに大きいの?」

「ええ。確かあれ文部科学省主導で開発してたスーパーソレノイド研究用の粒子加速機が原型でしてね。
セカンドインパクト後の緊縮予算でお約束の財源不足、製作途中で工事止まってた奴を技研で引き取ったんですよ。
ついでに同じ理由でやっぱりそのまま放置されてた核融合試験研究用のプラズマ保持装置も徴発転用して試作したもんですからまあ無駄に出力容量デカイ上に重量も半端無いし、図体もこれがまたやたらバカデカイんですよ。」

「ほ〜…しかしよく知ってるわね〜、感心するわ。
ん?でも一応あれ機密指定じゃなかった?」

「一応は。とは言え砲身長だけで50m超の代物なんか隠匿の仕様が無いですし、そもそもあれが機密なのは別口の理由が大きいですから。」

「別口ぃ〜?」

「ええ、大々的に予算取って当初は華々しく試射で護衛艦撃沈なんて画は流しましたけど…
あまり大きな声では言えませんが、私が現役自衛官当時から口の悪い奴は面子の為の予算無駄使いとか開発局の道楽だとかこき下ろしてましたよ。
酷いのになればやれ自決用自滅兵器だの波動砲だの自衛三大馬鹿兵器その1だのと散々言ってましたね。」

「何その3馬鹿兵器って。」

「その名の通り馬鹿馬鹿しい兵器ですよ。
この場だけの話ですがね、予算取る為にでっち上げた計画が何故かすんなり通って担当者が首を捻ったって代物ばかりです。
誰が考えたか知らないけどよくもまぁこんなの考えたと呆れ飛び越えて感心しますよ?」

「ここ(ネルフ)来て初めてエヴァンゲリオン見た時から大概の事は驚きゃしないわ。…で、どんな馬鹿兵器よ?」

「机上プランだけでしたけど陸上巡洋艦、研究予算は付いたけどそれだけだった原子力駆動ロボット、それと今話に出た陽電子砲…仮制式名称“隕石迎撃用ポジトロンキャノン”で3馬鹿です。」

「…一つ質問。前の2つは名前聞いただけでおおよそ見当付くんでまぁ判るけど…何でポジトロンキャノンも馬鹿なの?」

「それが…何しろ初期計画では原爆カートリッジ使ってプラズマ弾体発射する代物でしたから。
流石に諦めて陽電子砲に変更したんですが普通の給電方式だと容量不足だからってやっぱり当初は原爆カートリッジ使用前提でしたからね。」

「原爆ぅ!?」

「馬鹿兵器でしょ?一射撃ごとに一発使うぐらいなら端からミサイル積んで使えよって話ですよ。
そもそも何処で使えって言うんですかこんなの、試験場だって手狭なのに静止衛星軌道射程の兵器なんか全力射撃実施出来ます?
そもそも演習場一つ取っても何処で撃つって話ですよ。
まさか富士や矢臼別?あそこで原爆使えますか?
それとも演習場代わりにネバタやタクラマカンまで持って行って衛星軌道の標的撃ちます?」

「あ…頭痛い…それ何処に設置して運用するつもりだったのよ一体。」

「だから馬鹿兵器なんですって。
隕石迎撃用って事で開発予算取って有り合わせの物組合わせてそれっぽいの作って見ただけです。
一応北アルプスに基地造る計画は有りましたけど、仮に設置したとしてそもそも固定砲台で射角制限有るのにその有効射程内にそうそう隕石なり質量兵器が落ちて来ますか?
要するに“国防の面子に懸けてネルフに対抗しようと勢いで作ってはみたものの実際問題撃てない代物が出来ました”って事らしいですよ。」

「…呆れたわ…ネルフも大概非常識だけど勝るとも劣らぬわねそれ…」

「そもそもが民製品流用の急造品ですからね、無駄に馬鹿でかくてやたら重い上取り回しも最悪、電源の関係から仮設置も移送も困難、その上試験だって電源確保に四苦八苦。
もし核カートリッジ使わずに撃とうとすれば日本の総発電量の半分以上の電力喰いますからねぇ?
外部電源で1/10出力試射した時なんか標的艦貫いた挙げ句離島の山腹大穴空けて山火事起こしたり付近停電しちゃったりで近隣自治体から大目玉喰らったって話ですし。」

「…訂正、未だネルフの方がマシね。」

「て事で既存電源での実験だと制約厳しい上に容量限界有るし、ろくに試射なんか出来ないじゃないですか。
試験すらろくに出来ないわ面子があるから今更放棄も出来ずそもそも解体するにも予算は無い。
で、結局只の粒子加速実験装置として普段は文部科学省にレンタル中…最も加速機自体向こうに自前のが出来たもんで目下の処開店休業中だそうで。」

「開店休業でも役に立ったならいいんぢゃなーい?まぁそこらは法と権利の関係で民需転用しようが無いウチ(ネルフ)よりは未だマシって事だわ。」

「とは言え予算の割に合わないのは事実ですし。
ろくに撃てない役立たずの馬鹿大砲って事で技研本部の研究者までピラミッド・万里の長城・戦艦大和に次ぐ第4の無駄と言ってましたからね。
そこらの自治体と一緒で上層部の面子立てる為だけのお高い美術品ですよ。」

「んー…まー新技術検証目的と割り切ればそうそう無駄じゃ無いかもよ?
そもそも陽電子砲自体未だに未完成な技術だしねー、そんなもんじゃない?…そっか、面子だけの問題か…」

「どうかしました?」

「ん?いーや何でも無いわよ、いい話聞かせて貰えて為になったわ。」

「え?只の雑談でしたけど…」

「いいえ、けっこー参考になった、ありがとね日向君助かったわ。
じゃああたしこれから次期迎撃作戦会議なんでお先。」

カツカツカッカッカッカッ…

「…?」




http://www.youtube.com/watch?v=nFnstsJPD5g&sns=em


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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.33 )
日時: 2014/03/08 21:41
名前: 何処

【外伝−大人のお仕事(或いは通常営業)−その2−】
《Nostalogic》
http://www.youtube.com/watch?v=pl7JMD89Zp8&sns=em



「どうだ?」


背後から不意に掛けられた冬月の声に、書類から目を離す事無く振り向きもせず応える。


「驚きだ。SS機関利用浮遊装置…想定内とは言えまさかここまで開発が進んでいるとは。」

「ほう?」


冬月がこんな反応を示す時は、よほど興味が有る事を表している。
その好奇心に態々答えてやる必要は無い、本来冬月はこの程度の資料ならその閲覧権限で内容を幾らでも知り得る。

彼の立場なら調べたければ自分で調べれば良い…
だが、私には冬月にその時間を使わせるのが無駄と思えた。
読みかけの資料から大まかに概要を説明する。


「理論的にはほぼ完璧に近いだろう…SS機関が完成すればこの装置によって航空業界はおろか船舶鉄道関連、宇宙開発まで正しく革命が起きる。」

「完成すれば…か。」


皮肉めいた冬月の台詞に鼻で笑い同意を示す。
書類を置き眼鏡を拭いて掛け直し、椅子を回し背後へ向き直る。


「ああ、SS機関が“完成すれば”だ。何しろ死体とは言えSS機関を持った存在…使徒のサンプルが手に入ったのだ、甘い夢見がちな民衆や世界中の研究者達はさぞ期待に胸を膨らましている事だろう。」


私の発言を皮肉と取ったのか、冬月は私を見下ろしながら鼻を鳴らした。


「ふん、白々しいな。それより碇、彼女が来たらしいな?」


…どうやら冬月は今の資料の中身よりそちらに関心があったようだ。


「ああ、これがその置き土産の一つだ…相変わらずだった。」

「ほう?すると後の土産は何だ?」


冬月らしいひねくれた台詞、大筋は予想済みの筈だ。

判りきった何時ものやり取り、簡潔な台詞を意味を知りつつ問いかえす冬月と省略しすぎた台詞を継ぎ足す私。

何時も通りのやり取りだ、答えなど冬月は求めていない、私が答えなければ問い返さないだろう。
言わば下らない言葉遊び。

それと知りつつ答えるあたり、これも私と冬月なりの息抜きなのだろう。


「予想の裏が取れた。
やはりネブカトネザルの鍵は委員会で隠匿している。既に鎗に変えられているそうだ。」

「…やはりそうか…」

「朗報もある、老人達は鍵をロンギヌスと呼んでいるらしい。」

「ふ…やむを得まい、それはそうと例の未登録存在だが。」

「向こうでは議長自ら火消しして廻った様だ。未だ他の委員達には伝わってはいない。」

「議長の面目躍如と言った所か。で、どう見る碇?委員の一部の独走かUNの火遊びか。」


そう考えるのが妥当ではある。
だが、確定では無い…可能性は幾らでも有る、先入観に囚われてはならぬと自戒も込め問いに答える。


「それならば対処のしようも有る。
だが最悪裏死海文書の開示されぬ内容か、或いは未発見の部分と言う可能性も捨てきれない。」

「ぬう…その可能性が有ったか…」


冬月の反応は正直だ。
素直に可能性を受け止める包容力、理知的かつ冷静な判断力、決して立場や自己のエゴに惑わされない価値観。
相変わらず冬月は冬月先生のままだと言う事実に私は満足し、言葉を継ぐ。


「幸い議長の話では未だ覚醒はしていない、恐らくこちらで対処する事になるだろう。それより…」


一度言葉を切り、椅子に座ったまま背を伸ばす。


「予定を早めアレに撤収を掛ける。」

「良いのか碇?」


私の決断が余程意外だったのか、冬月は問い返して来た。


「あそこの現状もほぼ確認出来、得るべき物も得た。成果として充分。
それにアレが潜入して3年、そろそろ違和感を持つ者が出て来る頃だ。」

「だが未だ大丈夫なのだろう?」


珍しく冬月が甘い事を言い出したので、私の意図を説明する事にする。


「“だからこそ”だ冬月。
我々のジョーカー…エルダーの存在は隠匿しなければならない。
寧ろ3年は長過ぎた、幾ら重要機密で保護しようとも万が一詳しく調査されれば…」

「…確かに不味いな、あそこで唯一の適格者の身元が虚偽だらけとなれば…で、どうする?」

「記述によれば第5使徒殲滅後に第6使徒が北極圏に現れる、その進路をペタニアベースに誘導する。」


冬月の顔色が変わる


「…潰す気か?」

「ああ、記述の解釈を変えるには彼処は最適だ。」

「成る程、解釈変更か…確かに使徒迎撃戦闘の結果壊滅となれば解釈の範囲内…ならば老人達も納得するか。」

「アレは戦場のどさくさに紛れて脱出させる。
今まで使徒迎撃設備の整備費を食い物にしたツケだ、さぞ現場は混乱するだろう。
それに…戦闘による行方不明は良く有る事だ。」

「搭乗員は脱出に失敗…と言った筋書きだな。」

「ああ、『査察官を連絡員として寄越す、指示に従え』と言っておいた。」


冬月の額に皺が寄る


「査察監察官…彼も使うのか?確かに適任かも知れんが…しかし碇、問題はトリプルが果してどれ程信頼出来るかだが…どう見る?」

「彼の立場を知った上で使うならばその事自体は問題にならない、寧ろ下手な味方より余程信頼出来るさ…此方が有力な内は裏切らないからな。」

「成る程、それもそうか。しかし潰すとは随分思い切ったやり方だな?貴様なら未だ未だ利用するかと思ったが…」


これには苦笑せざるを得まい、口元の歪みをそのままに応じる。


「所詮“鶏肋”だ、見切りは早い方が良い。
それに元々あそこは問題の多い所だった、この際処分する。
老人達も表向きはともかく厄介払いが出来たと内心安堵するだろう。」

「ほう、他人事とは言え随分手厳しいな。」


“笑わせてくれる、私が手厳しいのならアレはどうなる?”と内心呟き、ふと思い出したアレの台詞を冬月に告げてみる。


「アレに言わせれば、
『あそこは倫理無い研究馬鹿連中と非常識書類至上主義者共が強欲無能事無かれ管理職とスクラム組んで大義名分の元好き勝手やってる利権と内紛と虚飾の宮殿』
だそうだ。」

「クックッ…成る程、彼女らしい言い方だ。しかし…成果らしい成果が仮設機体程度でその様とは…」


言い終らぬ内に頭を左右に振りながら訂正する


「否、その程度だから未だに基地名すら仮称なのだったな。
しかし研究室レベルの代物を堂々と仮設機体と呼称するとは…」

「元々が元々だ、既に優良研究者を押さえられているのに背伸びしてろくに身元も調査せず名前だけの連中を採用し、手段を選ばず結果を出そうとしていたからな。
その結果連中の違法…否、犯罪行為まで故意に黙認し散々好き勝手をさせながらロクに結果らしい結果が出せず今更“出来ませんでした”とは言えないだろう。」

「ふ、要は後が無いだけか。しかし施設規模の割に中身の人材が揃いも揃って小物きりとは…」

「所詮は“仮”だからな、だがそれもここまでだ。
今まで大義名分の元、甘い汁を吸いながら本来の目的と掛け離れた自分達の研究の為に費やした予算と人命…そのツケを支払って貰う。」

「噂には聞いていたが…やはり本当だったか。」

「ああ、本来の目的たる次期エヴァンゲリオン開発より付録の方が大切だったようだ。
委員会の目を掻い潜りエヴァンゲリオン関連の技術を盗み出し、極秘の内に独自開発を進め、その開発成果を隠匿していた…
このSS機関関連研究資料はその一つだ。」

「…果たしてそれだけかな?」

「察しの通りだ。エヴァは決戦兵器にして人造人間、その技術を違法転用すべくあそこでは人体改造や生体実験を陰に隠れて行っていた、その内容も既に把握している。
幾多の犠牲者達を生みながら虎の威を借りて揉み消して来た連中だ、この際報いを受けて貰おう。」

「自業自得か…!?待て碇…誘導と言ったな?まさか…奪取すると?本気であれを使う気か?」


…使う気は無い、だが…


「不確定要素が増えた今保険は必要だ、切り札は確保しておく。
それに他の素体サンプルと違いこのサンプルは胎児前の幼生、ならば寧ろその方が都合が良い。」

「確かにその通りだが…出来ればあれを実際にお前が使う局面は避けたいものだな。」


内心同意しながら口は綺麗事を垂れ流す。


「希望的観測は止めておけ、最悪に備える事の方が重要だ。
冬月、ロンギヌスの槍が未だ手元に無くネブカトネザルの鍵が既に鎗となっていると判明した以上、我々には保険と対抗する駒が必要だ。」

「そうだな…うむ、槍の回収も急がせよう。聖骸布の準備は?」

「既にトランクに加工済み、連絡員が現地へ持ち込み引渡す手筈だ。身分証も渡す。」

「4thにする気か?」

「場合によっては。
記述に従うなら5機目として使者が来る筈だが…その前にアレを表には出したくは無い、未だジョーカーは温存しておきたい。」

「碇、ジョーカーは確かに協力なカードだがな、その牙は敵味方問わず…」

「判っているさ、要はトリプルと一緒だ。
手駒にしようとすれば火傷する、駒とは違う第三者だと割り切れ。
ジョーカーを切るのに重要な事、それはカードに頼り過ぎない事だ。
冬月、真に必要な物は我が力で勝ち取る物だと忘れるな。」

「うむ、そうだったな。
その為の対使徒迎撃用要塞都市か…しかしこの街が実は対エヴァンゲリオン迎撃用だと…」「冬月」



「…儂も年かな、随分と口が軽くなった。」

「気を付けてくれ。」

「ああ…そう言えばレイだが…」

「レイがどうかしたか?」

「反応を示した。同年代の人間との接触は効果的だったな…お前の計算通りだ。」

「そうか…漸くだな。」

「うむ、漸くヒトに一歩近付いたと言える、態々学校に通わせたりした甲斐があったな。」

「ああ、未だ確実では無いが、恐らくこれで零号機稼働の目処が何とかつく。」

「うむ、本来なら確実に適合する初号機に乗せる筈だったが…。」

「その程度の誤差は許容の範囲内だ、現状では仕方無い。」

「そうだな、貴様の息子の方が初号機に適合するのではやむを得んか…
幾ら技術が進んでも所詮はヒトの技術、やはり母親の意志には逆らえん様だな。」

「いずれにせよダミーが完成するまでの繋ぎだ。
シンクロデータベースさえ出来上がればパイロットの個性まで再現出来る。
そうなれば戦闘はエヴァの自律性に任せられ、チルドレン達を戦場に出さずに済む。」

「起動情報は更新せねばならんがな、最も必要なのはチルドレンのシンクロデータのみ、大した問題ではないか。」

「ああ、チルドレンを定期的にシンクロ試験に参加させ情報を更新・記録する事で済むから問題にはならない。」


「漸くか…否、いよいよだな。」

「…ああ…」




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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.34 )
日時: 2014/03/09 17:07
名前: 何処

「!?あ、綾波、あ…そ、その…お…おはよう…」

「…おはよう…」

「…そ、その…こ、このあいだは、あの…」

「?」

「な、何て言うかその、じ、事故とは言えその…ご、ごめん。」

「…何が?」

「え?何がって、だからその…」

「時間だわ。」「え?」

「今日10:00から零号機で行われる実験。私も参加するの。」

「参加?」

「搭乗被検体コードAYー00、綾波レイ…つまり私が乗るわ。」

「え?だって…だ、大丈夫なの?」

「命令だから。もう行かないと、じゃ、さよなら。」「え?あ、綾波?」


プシュン


「…やっぱり怒ってるのかな…怒ってるよね…当然か。
そりゃ怒るよね…はぁ、最悪だよな…最低だ…僕って…」



【外伝−大人のお仕事(或いは通常営業)−その3−】
http://www.youtube.com/watch?v=Y2v0Us1eaew&sns=em



「リツコー?居る〜?」

「あら?珍しい貴女が定時前にここに来てるなん…どうしたのそれ?」

「ん〜?自衛隊開発局技術研究所の公開資料なんだけど…あったあった。これちょっち見てよ。」

「どれ?…あぁ、陽電子砲ね?うち(ネルフ)でポジトロン研究用に借りた事有るわ。」

「へ?借りた?この馬鹿でっかいのを?」

「何考えたのミサト?ここにこれ持ち込んだ訳じゃ無いわよ?ウチの開発局で資料作成するのに職員が技研に行ってデータ収集に試験運転して貰ったのよ。」

「あ、何だ。」

「で、その陽電子砲が何か?」

「いやぁ、こないだからちょっち調べてたんだけどさー、これなら確実にATフィールド突破出来る代物ってのを。」

「呆れた、未だ調べ…まさか…」

「んふ〜♪ええ、総出力で生成した反陽子総量から逆算したんだけど…計算上は視認出来る程励起したATフィールドでも軽く抜けるわこれ。」

「あのね貴女、私達がそれ検討しなかったとでも思ってる訳?」

「あー、その会議議事録も見せて貰ったわ。」

「なら話が早いわ、それ無理だから。そもそも既存電源で総出力発揮出来ない欠陥兵器よそれ?」

「何も総出力発揮しなくても良いのよ、要はATフィールド突破して標的を貫ければ良いんだから。」

「貴女ね…簡単に言ってく…待って、貴女今何て…」

「何って…“、要はATフィールド突破して標的を貫ければ良い”って…」

「…そう言う発想は無かったわ…正直に言うわ、確かにあの陽電子砲なら計算上ATフィールド突破は可能かも知れないわね。但し、運用条件は厳しいわよ?」

「何も大気圏突破して来る100mの隕石総蒸発させるフルスペックが必要な訳じゃ無いわ、最低限必要なスペック発揮出来れば良いのよ。」

「簡単に言ってくれるわね。大体50m越える代物を輸送する手段が問題よ?
分解して船便?それとも専用車両で列作って時速4kmで陸送?何れにせよ現地組立設置なんて悠長な真似相手が付き合ってくれると思う?」

「あ、それは大丈夫。」

「!?だ、大丈夫って…え?」

「ウチの決戦兵器に持たせりゃ良いのよ。」

「!?」

「エヴァの全力稼働は内蔵バッテリーで3分、外装バッテリー装着で+5分、負荷歩行なら消費電力は大体1/4だから約32分ね、
標準歩行速度が時速約120kmだから外装バッテリーパック3連で積めば約一時間の連続行動が可能、つまり途中でバッテリー交換ポイント準備すれば向こうに直接エヴァで取りに行って帰って来れるわ…平均時速100kmで。」

「・・・」

「そうすりゃ検査調整工程はともかくいちいち分解輸送再組立必要無いしその他諸々省略出来るわ、丸ごと抱えて移動すりゃ良いんだから。
それに固定基地や設置用砲台もいらないわね、エヴァに銃として使わせりゃいいのよ。丁度人間がマテリアルライフル…対物狙撃銃扱う感じね。」

「・・・」

「うん、それなら付属機器も大半が不要ね、防爆シールドも射角調整アクチュエーターも要らないか…かなりの軽量化になるわ。
発射地点だってエヴァが保持するから地盤の持つ場所なら固定の為わざわざ大規模事前工事とかしなくても済むから設置も撤去も楽ね、
照準も本体情報とエヴァのメインセンサー情報にマギの補正かけりゃ済む話よ。」

「・・・」

「ん?どったのリツコ?」

「…呆れてるのよ…本当に碌な事思い付かないわね貴女は…」

「誉め言葉と受け取っておくわ。
実際にはそう簡単にはいかないだろうけど、ま・一応検討してみて。」

「…一応検討はしておくわ。」

「さんくー♪やっぱリツコ様は頼りになるわー。んじゃあたし予備計画書書いて来るわね。」

「え?一寸待ちなさいミサト、幾ら何でも気が早過ぎよ!」

「現場じゃ“備えに早過ぎは無い”のよ、使わなきゃ済むに越した事は無いけど所詮無駄だからって準備しないで泣きを見るなんて御免被りますわ〜、んじゃ後宜しく〜♪」

プシュン!

「あ!?ち、一寸待ちなさい!話は未だ…仕方無いわね本当に…
やれやれ、ミサトのペースに合わせると調子が狂うわ、少し気を落ち着けないと…コーヒーでも飲むか。」

コポコポコポ…

「“要はATフィールド突破して標的を貫ければ良い”か…やっぱりミサトのセンスは天才的ね、軍人より研究者になって欲しかったわ。
それに…ここの所空いた時間は本業以外の余計な調べ物に掛かり切りだったし…」

パサッ

「そうね…気分転換がてら検討してみるか…」



―――



「“…定時連絡、エヴァンゲリオンパイロット二名本日欠席。何らかの動きが有る模様、
パイロットの弁によればエヴァンゲリオン稼働に関する何らかの試験ではないかとの事、以上。”」

「“了解、引き続き調査に当たれ。”」

「さて本日のお仕事完了っと…しかしこうして一年も潜入してると危機感薄れるよなー…
本当つくづく思うけど学校生活ってのは…平和っつーか…暇だね〜…」



―――



「…で、一体俺に何をしろと?」

「未登録チルドレンの身柄保護及び現地からの脱出を手助けして欲しい。」

「ほう?それだけですか?」

「それ以外にも有る。君はチルドレンに荷物を渡し、再び荷物を回収してくれ。」

「荷物?」

「『計画の要』だ。」

「計画…まさか人類補完の!?」

「そうだ。あそこに保管中の“南極のサンプル”を回収して欲しい。」

「宜しいんですか?委員会が黙ってませんよ?それにあれは封印から出れば使徒を呼び…そう言う事ですか?」

「話が早くて助かる、あそこの実情は聞いているな?つまり…そう言う事だ。」

「…で、持ち出したサンプルはどちらへ?」

「ここで素体に成長させる。」

「…第三新東京は更に戦場になりますな。」

「覚悟の上だ、寧ろ絶対防衛圏設定にはその方が都合が良い。」

「…完全再生されたら?」

「その為の“仮面”と“槍”だ。既に南極から回収の手筈は整えてある。」

「成る程、既に手は打ってある・と。」

「そちらにサンプルのダミーと聖骸布を加工したトランクを送った、その中ならばサンプルは使徒を呼べない。
輸送時にはそれを使え。」

「了解しました。所で碇司令、こちら(ユーロ)のお姫様はどうします?中々難しいお年頃なんですが…」

「作戦終了後に君はこちら(ネルフ本部)に荷物ごと身を寄せて貰う。
彼女には日本で待っていると伝えておけ、彼女も何れ此方に呼ぶ予定だ。」

「と言うと…弐号機もですね?」

「エヴァンゲリオンの追加配備は既定事項だ。
あれを持って来る以上、これからの使徒迎撃戦闘は厳しさを増す、戦力は多い程良い。」

「で、そっちはいつ頃?」

「君も知っての通り此迄の使徒迎撃戦戦闘記録から判明した改善必要箇所、その改修が現在弐号機に行われている。
改修が済み次第こちらに輸送する様手配中だ。場合に拠っては輸送しながら改修を行うかも知れない。」

「船便ですな?やれやれ、それは長旅になりそうだ。
彼女が癇癪を起こさなければいいが…」

「輸送の際にはこちらからも迎えを出す、何なら顔を見に寄れば良い。
…作戦部長なら君とも彼女とも顔見知りだったか。」

「は!やれやれ、碇司令にはかないませんな、それにしても船旅とはいやはや…
せめてエヴァキャリヤーに空中給油装置が有れば話は早かったんですがね…」

「現在エヴァンゲリオンの国境を越えた航空輸送は条約で禁じられている。」

「そうでした。官僚の事無かれ主義には全く頭が下がりますな。」

「法改正を進めてはいるが未だ時間がかかる、輸送時に間に合わないのは確実だ…君には苦労を掛ける。」

「ふっ、碇司令は相変わらず人を乗せるのがお上手で。
判りました、加持リョウジ査察官、準備が出来次第ペタニアベース特別監察へ特命により参ります。」

「…健闘を祈る。」



《チルドレンレコード》
http://www.youtube.com/watch?v=SqwODClf8Ds&sns=em
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メンテ
Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.35 )
日時: 2014/03/16 00:06
名前: 史燕

今回もおもしろい(interesting)内容で、楽しませていただきました

>「エヴァの全力稼働は内蔵バッテリーで3分、外装バッテリー装着で+5分、負荷歩行なら消費電力は大体1/4だから約32分ね、
>標準歩行速度が時速約120kmだから外装バッテリーパック3連で積めば約一時間の連続行動が可能、つまり途中でバッテリー交換ポイント準備すれば向こうに直接エヴァで取りに行って帰って来れるわ…平均時速100kmで。」

TVでは零号機がパッともって運んでましたけど、よくよく考えたら筑波と箱根って割と遠いですよね。
公式設定は知りませんけど、あんな大きいものですし、こんな風にリツコさんもミサトさんも苦労して考えてああして零号機に運ばせたんでしょうね。
本筋とは関係ないとこですが、ものすごく感心させられました。
考察が深いですね。

メンテ
Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.36 )
日時: 2014/03/16 01:48
名前: tamb

ちょっと目を離した隙にすげえ進んでる(^^;)。

なんかまた伏線張りまくってるような気がするな。しかも割と決定的な。
自分の墓参り、なんてのも気になるし、学校に潜入してる奴もいる。これは誰なんだろう?

> 自衛三大馬鹿兵器

これは谷甲州の航空宇宙軍史シリーズの外惑星動乱末期を思わせる。といっても誰もわからんか(笑)。

メンテ
Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.37 )
日時: 2014/03/16 13:10
名前: 何処

「…どう?」

「前回…いえ、普段よりβ波には動きがありますが…不思議です、シンクロ率自体は何時もより安定しています。」

「動き?どの程度?」

「動き自体は僅かです、でも…今迄に無い動きですね、まるで…」

「まるで?」

「あ、いえ、単なる連想なんですが何かこう…波自体はかなり小さいんですが、形状が普通の波形に近いように思えまして…」

「普通?一般的な波形って事?」

「は、はい。今迄のデータはまるで…サンプルデータの瞑想中の禅僧みたいに波形が安定してたんですけど…」

「…シンクロ率はどう?」

「安定しています。深度も寧ろ深くなって…
シンジ君もそうなんですけど、精神安定状況より精神活動が活発な時の方がシンクロ深度が深いんですよね。」

「シンジ君の場合はムラが有り過ぎるからあまり参考にはならないわ。
それに現在比較参考になる量のシンクロデータ蓄積は僅か2人分しか無い…現状で結論を出すには未だ早いわ。」

「そうですよね…」

「データが少な過ぎるのよ、仕方無いわ。
何しろエヴァに関する技術的資料は在ってもパイロットに関しては資料作成以前の状況、こうして手探りで情報を蓄積している段階だしね。
ま、これからシンジ君のデータが比較対象になる程収集出来て初めて研究になるんだから今の段階で焦る必要は無いわ、気楽に行きましょう。」

「はい。」

「一寸モニター見せて…うん、この状態なら次回の本起動試験には期待が持てそうね。
『レイ、上がって良いわよ。』」

「…はい…」



【外伝−大人のお仕事(或いは通常営業)−その4−】
《monochrome》GUMI
http://www.youtube.com/watch?v=rH74QDHHxoU&sns=em



「ミサト、居る?」

「あらぁ?珍っしーい、リツコがここ(作戦室)に顔出すなんて。
でも丁度良い所に来たわねー、昨日青葉君に貰った松代土産の杏ジャムで作戦室皆お茶にする所なんだけどリツコもどう?」

「あ、赤木博士いらっしゃい、宜しければ博士も如何ですか?」

「あら日向君、青葉君も居るの?」

「ええ、出資者特権でお呼ばれしましてね。
ほら、これ見て下さい、伊良湖さんが態々スコーン焼いて持って来てくれたんですよ。」

「まぁ美味しそう、それじゃ遠慮無くご相伴…残念、これから会議なの。
要件だけ済ませるわね、はいミサト、昨日の宿題の答え。」


ボスッ


「昨日のって…え!もう出来たのぉ!?」

「“備えに早過ぎは無い”んでしょ?
最もミサトの発想が無ければこう簡単には出来なかったわね、エヴァを重機やトレーラー代わりに使う発想は無かったわ。」

「にしても早過ぎない?リツコあんた一体どんな魔法使ったのよ?」

「マギって魔法使いにお願いしてみたのよ。じゃ、私急ぐからこれで。」


プシュン


「…呆れた、幾らマギ使うってもこれ1日で?」

「?何ですかそれ?」
「あ、伊良湖さん、今赤木博士が来て葛城さんに渡してったんだけど…」
「昨日のって何です葛城さん?」
「書類ですか?データチップじゃ無いんですね?」
「本当だ、赤木博士にしては珍しいな。」
「しかしやたら分厚い封書ですね…」

「ま、書類の方が説明の手間が省けて丁度いいかも…皆一寸見て。前に話した筑波からのエヴァンゲリオン利用した兵器領収輸送計画よ。」


バサバサッ


「リツコが態々プリントアウトしてくれ…ってえっ!申請書まで入っ…これもう署名して日付入れれば申請出来るじゃない!」

「一寸拝見…こりゃ凄い。」

「…しかもこれ、ポジトロンキャノンのエヴァ射撃仕様改修計画や電源確保方法に…」

「こっちは第三新東京周辺の地質調査から見た射撃可能地点図に…うわ、各ポイントごとの有効射程に標高に季節毎の大気情報、死角から安全射角迄載ってるよ。」

「うわぁ…必要予算見積り書に流用可能物品リスト、それの所有者リストまで入ってる…」

「はー…こりゃ書類に関してはうちらの手間殆ど無いですね。」

「葛城さん…これ全部…赤木博士が…1日で?本当に?」

「…本当よ…」「「「「「…」」」」」


「恐るべし…何と言うジョバンニ…」
「…流石専門分野無視万能チート科学者…」
「天才って…凄い…」
「凄い通り越して怖いよ…」
「…ここまで来るともう天才ってより魔女だな。」

「神様仏様リツコ様っ!く〜っっ持つべき者は友人よね〜っ!」

「あの…葛城さん、作戦室から赤木研究室へこれ手土産にせめてのお礼に持って行きましょうか?」

「「「「賛成!」」」」

「あの…俺の分は?」



―――



カチャン、チャリンチャリン…


「いらっしゃい。」

「現像お願いします。」

「あぁ、何時ものだね。良い写真は取れたかい?」

「ええ、清水港にまで足伸ばした甲斐がありましたよ、74改に89改・果ては懐かしの60式まで!」

「ほう、そりゃマニアには堪らないだろうな、おじさんにはさっぱりだが。」

「それだけじゃ無いですよ、なんと寄港したUN所属艦が艦内一般解放!練習艦とは言え何たって最後のアレン・M・サムナー級駆逐艦の乗船機会なんてそうそう無いですから!」

「しかしあそこも町起こしで自衛隊呼ぶとは良くやるねぇ、元はアニメだっけ?そうそう、これ前回の焼き増し分。2千円だね。」

「あ、はい。」

「中身確認してくれ…おや?珍しい。女の子と別に男の子もこんなにかい?」

「ええ、最近は女の子達からも注文が多くって…。あ!それライカの!?」

「おお、やっぱり気付いてくれたか!手に入れるの苦労したよ。見るかい?」

「もちろん!うわぁ、これ寒冷地タイプだ!…」

「どうだ?中々のもんだろ?」

「…すげえ…この重量感…」

「だろ?…視野率98%のファインダーだ、広くて見易いだろ?」

「…はい…」

「…一寸巻いてみな。」


チャキッ


「良い音だろ?」

「ええ…それに…寒冷地タイプだけあってレバーが大きくて…扱い易いですね…」


バシャッ


「…いいですね…」


カシャッバシャッ…カシャッ……バシャッ

カシャッ


バシャッ


「…ありがとうございます…やっぱりライカ良いなー…」


ゴトッ


「…どうだ?」

「んー…欲しいけど…父さんと相談してみないと…」


―――


「監視対象はどうだ?」

「写真屋に入店した。今店長らしき人物と会話中…」

「集音機器は完調だ、録音はクリア。」

「画像は?」

「そこのモニターだ。」

「こっちが向かいのビルからの画像、そっちが…」

「店内の画像は?」

「今切り替える…防犯カメラからハッキングしたのはこれだが。」

「…このカメラ、おかしい。」

「?」

「今監視対象の持っているカメラだ、盗難防止のワイヤーが…位置が違う。」

「?」「どう言う事です?」

「本来これは本体のストラップ掛に付ける物だ、ところがこれは…」

「…本体に繋がってますね、まるで電線…!?」

「尻尾が出たな、副司令に報告する。」

「ああ、ついでにこの部分、アップして解析してくれ…大物が釣れたかも知れない。」

「対象の監視レベル上げないといかん…監視対象の身元も全て洗い直しだな。この店の背後、資金、人物を至急調査…」

「…ああ…」





※史燕様−
毎度感想をお寄せ下さり有難うございます。
筑波−箱根はむっちゃ遠いです。おまけにルート設定だけ見ても人口密集地避けてエヴァの歩行に耐える地盤伝って障害物避けて許可取って…うげ
いくら旧東京壊滅してたってこんな計画立案だけで週どころか軽く月掛かるわ(爆)

※tamb様−
て言うと仮装巡洋艦出さないと駄目っすか?それともイルカとか(笑)

※読者の皆様へこの場をお借りして−
私の駄文に目を通して頂き有難うございます。
仕事の都合もあり、中々時間も取れず御感想に御返事出来ず申し訳ありません。
時間を有効に使う為、それとなるだけ作品内容で感想にお応えしたいので感想へのお礼文も普段省略しているのですが、史燕様始め他の感想を態々書き込んで下さった方々には常々感謝しております。本当に皆様有難う!
改めて感想を下さった皆様、返答のない無礼をどうか平に御容赦ご勘弁下さい。
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