Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.33 ) |
- 日時: 2014/03/08 21:41
- 名前: 何処 ID:pl7JMD89Zp8
- 【外伝−大人のお仕事(或いは通常営業)−その2−】
《Nostalogic》 http://www.youtube.com/watch?v=pl7JMD89Zp8&sns=em
「どうだ?」
背後から不意に掛けられた冬月の声に、書類から目を離す事無く振り向きもせず応える。
「驚きだ。SS機関利用浮遊装置…想定内とは言えまさかここまで開発が進んでいるとは。」
「ほう?」
冬月がこんな反応を示す時は、よほど興味が有る事を表している。 その好奇心に態々答えてやる必要は無い、本来冬月はこの程度の資料ならその閲覧権限で内容を幾らでも知り得る。
彼の立場なら調べたければ自分で調べれば良い… だが、私には冬月にその時間を使わせるのが無駄と思えた。 読みかけの資料から大まかに概要を説明する。
「理論的にはほぼ完璧に近いだろう…SS機関が完成すればこの装置によって航空業界はおろか船舶鉄道関連、宇宙開発まで正しく革命が起きる。」
「完成すれば…か。」
皮肉めいた冬月の台詞に鼻で笑い同意を示す。 書類を置き眼鏡を拭いて掛け直し、椅子を回し背後へ向き直る。
「ああ、SS機関が“完成すれば”だ。何しろ死体とは言えSS機関を持った存在…使徒のサンプルが手に入ったのだ、甘い夢見がちな民衆や世界中の研究者達はさぞ期待に胸を膨らましている事だろう。」
私の発言を皮肉と取ったのか、冬月は私を見下ろしながら鼻を鳴らした。
「ふん、白々しいな。それより碇、彼女が来たらしいな?」
…どうやら冬月は今の資料の中身よりそちらに関心があったようだ。
「ああ、これがその置き土産の一つだ…相変わらずだった。」
「ほう?すると後の土産は何だ?」
冬月らしいひねくれた台詞、大筋は予想済みの筈だ。
判りきった何時ものやり取り、簡潔な台詞を意味を知りつつ問いかえす冬月と省略しすぎた台詞を継ぎ足す私。
何時も通りのやり取りだ、答えなど冬月は求めていない、私が答えなければ問い返さないだろう。 言わば下らない言葉遊び。
それと知りつつ答えるあたり、これも私と冬月なりの息抜きなのだろう。
「予想の裏が取れた。 やはりネブカトネザルの鍵は委員会で隠匿している。既に鎗に変えられているそうだ。」
「…やはりそうか…」
「朗報もある、老人達は鍵をロンギヌスと呼んでいるらしい。」
「ふ…やむを得まい、それはそうと例の未登録存在だが。」
「向こうでは議長自ら火消しして廻った様だ。未だ他の委員達には伝わってはいない。」
「議長の面目躍如と言った所か。で、どう見る碇?委員の一部の独走かUNの火遊びか。」
そう考えるのが妥当ではある。 だが、確定では無い…可能性は幾らでも有る、先入観に囚われてはならぬと自戒も込め問いに答える。
「それならば対処のしようも有る。 だが最悪裏死海文書の開示されぬ内容か、或いは未発見の部分と言う可能性も捨てきれない。」
「ぬう…その可能性が有ったか…」
冬月の反応は正直だ。 素直に可能性を受け止める包容力、理知的かつ冷静な判断力、決して立場や自己のエゴに惑わされない価値観。 相変わらず冬月は冬月先生のままだと言う事実に私は満足し、言葉を継ぐ。
「幸い議長の話では未だ覚醒はしていない、恐らくこちらで対処する事になるだろう。それより…」
一度言葉を切り、椅子に座ったまま背を伸ばす。
「予定を早めアレに撤収を掛ける。」
「良いのか碇?」
私の決断が余程意外だったのか、冬月は問い返して来た。
「あそこの現状もほぼ確認出来、得るべき物も得た。成果として充分。 それにアレが潜入して3年、そろそろ違和感を持つ者が出て来る頃だ。」
「だが未だ大丈夫なのだろう?」
珍しく冬月が甘い事を言い出したので、私の意図を説明する事にする。
「“だからこそ”だ冬月。 我々のジョーカー…エルダーの存在は隠匿しなければならない。 寧ろ3年は長過ぎた、幾ら重要機密で保護しようとも万が一詳しく調査されれば…」
「…確かに不味いな、あそこで唯一の適格者の身元が虚偽だらけとなれば…で、どうする?」
「記述によれば第5使徒殲滅後に第6使徒が北極圏に現れる、その進路をペタニアベースに誘導する。」
冬月の顔色が変わる
「…潰す気か?」
「ああ、記述の解釈を変えるには彼処は最適だ。」
「成る程、解釈変更か…確かに使徒迎撃戦闘の結果壊滅となれば解釈の範囲内…ならば老人達も納得するか。」
「アレは戦場のどさくさに紛れて脱出させる。 今まで使徒迎撃設備の整備費を食い物にしたツケだ、さぞ現場は混乱するだろう。 それに…戦闘による行方不明は良く有る事だ。」
「搭乗員は脱出に失敗…と言った筋書きだな。」
「ああ、『査察官を連絡員として寄越す、指示に従え』と言っておいた。」
冬月の額に皺が寄る
「査察監察官…彼も使うのか?確かに適任かも知れんが…しかし碇、問題はトリプルが果してどれ程信頼出来るかだが…どう見る?」
「彼の立場を知った上で使うならばその事自体は問題にならない、寧ろ下手な味方より余程信頼出来るさ…此方が有力な内は裏切らないからな。」
「成る程、それもそうか。しかし潰すとは随分思い切ったやり方だな?貴様なら未だ未だ利用するかと思ったが…」
これには苦笑せざるを得まい、口元の歪みをそのままに応じる。
「所詮“鶏肋”だ、見切りは早い方が良い。 それに元々あそこは問題の多い所だった、この際処分する。 老人達も表向きはともかく厄介払いが出来たと内心安堵するだろう。」
「ほう、他人事とは言え随分手厳しいな。」
“笑わせてくれる、私が手厳しいのならアレはどうなる?”と内心呟き、ふと思い出したアレの台詞を冬月に告げてみる。
「アレに言わせれば、 『あそこは倫理無い研究馬鹿連中と非常識書類至上主義者共が強欲無能事無かれ管理職とスクラム組んで大義名分の元好き勝手やってる利権と内紛と虚飾の宮殿』 だそうだ。」
「クックッ…成る程、彼女らしい言い方だ。しかし…成果らしい成果が仮設機体程度でその様とは…」
言い終らぬ内に頭を左右に振りながら訂正する
「否、その程度だから未だに基地名すら仮称なのだったな。 しかし研究室レベルの代物を堂々と仮設機体と呼称するとは…」
「元々が元々だ、既に優良研究者を押さえられているのに背伸びしてろくに身元も調査せず名前だけの連中を採用し、手段を選ばず結果を出そうとしていたからな。 その結果連中の違法…否、犯罪行為まで故意に黙認し散々好き勝手をさせながらロクに結果らしい結果が出せず今更“出来ませんでした”とは言えないだろう。」
「ふ、要は後が無いだけか。しかし施設規模の割に中身の人材が揃いも揃って小物きりとは…」
「所詮は“仮”だからな、だがそれもここまでだ。 今まで大義名分の元、甘い汁を吸いながら本来の目的と掛け離れた自分達の研究の為に費やした予算と人命…そのツケを支払って貰う。」
「噂には聞いていたが…やはり本当だったか。」
「ああ、本来の目的たる次期エヴァンゲリオン開発より付録の方が大切だったようだ。 委員会の目を掻い潜りエヴァンゲリオン関連の技術を盗み出し、極秘の内に独自開発を進め、その開発成果を隠匿していた… このSS機関関連研究資料はその一つだ。」
「…果たしてそれだけかな?」
「察しの通りだ。エヴァは決戦兵器にして人造人間、その技術を違法転用すべくあそこでは人体改造や生体実験を陰に隠れて行っていた、その内容も既に把握している。 幾多の犠牲者達を生みながら虎の威を借りて揉み消して来た連中だ、この際報いを受けて貰おう。」
「自業自得か…!?待て碇…誘導と言ったな?まさか…奪取すると?本気であれを使う気か?」
…使う気は無い、だが…
「不確定要素が増えた今保険は必要だ、切り札は確保しておく。 それに他の素体サンプルと違いこのサンプルは胎児前の幼生、ならば寧ろその方が都合が良い。」
「確かにその通りだが…出来ればあれを実際にお前が使う局面は避けたいものだな。」
内心同意しながら口は綺麗事を垂れ流す。
「希望的観測は止めておけ、最悪に備える事の方が重要だ。 冬月、ロンギヌスの槍が未だ手元に無くネブカトネザルの鍵が既に鎗となっていると判明した以上、我々には保険と対抗する駒が必要だ。」
「そうだな…うむ、槍の回収も急がせよう。聖骸布の準備は?」
「既にトランクに加工済み、連絡員が現地へ持ち込み引渡す手筈だ。身分証も渡す。」
「4thにする気か?」
「場合によっては。 記述に従うなら5機目として使者が来る筈だが…その前にアレを表には出したくは無い、未だジョーカーは温存しておきたい。」
「碇、ジョーカーは確かに協力なカードだがな、その牙は敵味方問わず…」
「判っているさ、要はトリプルと一緒だ。 手駒にしようとすれば火傷する、駒とは違う第三者だと割り切れ。 ジョーカーを切るのに重要な事、それはカードに頼り過ぎない事だ。 冬月、真に必要な物は我が力で勝ち取る物だと忘れるな。」
「うむ、そうだったな。 その為の対使徒迎撃用要塞都市か…しかしこの街が実は対エヴァンゲリオン迎撃用だと…」「冬月」
「…儂も年かな、随分と口が軽くなった。」
「気を付けてくれ。」
「ああ…そう言えばレイだが…」
「レイがどうかしたか?」
「反応を示した。同年代の人間との接触は効果的だったな…お前の計算通りだ。」
「そうか…漸くだな。」
「うむ、漸くヒトに一歩近付いたと言える、態々学校に通わせたりした甲斐があったな。」
「ああ、未だ確実では無いが、恐らくこれで零号機稼働の目処が何とかつく。」
「うむ、本来なら確実に適合する初号機に乗せる筈だったが…。」
「その程度の誤差は許容の範囲内だ、現状では仕方無い。」
「そうだな、貴様の息子の方が初号機に適合するのではやむを得んか… 幾ら技術が進んでも所詮はヒトの技術、やはり母親の意志には逆らえん様だな。」
「いずれにせよダミーが完成するまでの繋ぎだ。 シンクロデータベースさえ出来上がればパイロットの個性まで再現出来る。 そうなれば戦闘はエヴァの自律性に任せられ、チルドレン達を戦場に出さずに済む。」
「起動情報は更新せねばならんがな、最も必要なのはチルドレンのシンクロデータのみ、大した問題ではないか。」
「ああ、チルドレンを定期的にシンクロ試験に参加させ情報を更新・記録する事で済むから問題にはならない。」
「漸くか…否、いよいよだな。」
「…ああ…」
http://www.youtube.com/watch?v=U88MCZNfgy8&sns=em
 |
|