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[523] 1111111ヒット記念企画
日時: 2010/05/14 20:26
名前: tamb

 というわけで、このスレは1111111ヒット記念ぷち企画ということで、1111111ヒットにか
こつけて何か適当に書いてみませんかというスレでございます。

 お題は「1111111」から連想されるものなら何でもOK。単に1でも問題なし。綾波レイが7人
行進して来るでもOK(笑)。とにかく何でもOK。

 サイズ等の制限は基本的になし。それこそ100文字でもOK。ただし読むのに五時間とかかか
るような大長編はご遠慮ください(笑)。あと連載もダメ。書き上げて一気に投下してください。
ゲンレイもダメ(笑)。18禁もアウトです。

 感想とかの反応もこのスレで。結果的に割り込みになっても気にしなくてOK。

 一見さん歓迎です。お気楽にどうぞー。もちろん常連さんも歓迎。

 これはという名作が出てきたらサルベージも考えます。異常な盛り上がりを見せたら通常企
画に変更もありえるかも!

 締め切りは、そうだな、2000000ヒットまでかな。一日平均350くらいだから……ま、そのく
らい先です(笑)。

 こんなもんかな? 何か質問とかあればこのスレでお願いします。

 というわけでよろしくお願いします。盛り上げましょう。私もこれから考えます。

 最後に、提案してくださった名も無きROM氏に感謝を。

-------------------------
締め切り修正します。2000000ヒットまでだと長すぎるんで、10周年記念企画発動までに変更です。
ま、だいぶ先ですよね(笑)。
メンテ

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Re: 1111111ヒット記念企画 ( No.43 )
日時: 2010/06/14 20:43
名前: JUN

【七つ目の絆創膏】

「っ、痛……」
 つう、と人差し指の第一関節から真っ赤な鮮血が一筋流れる。またやってしまった。そろそろ絆創膏を巻いてもらうのも申し訳ない気がする。この傷で七つ目。絆創膏は既にそれぞれの指に一枚ずつ。手首にも一枚。鍋の縁に当てて火傷。情けない気分でいっぱいになる。この程度で彼に美味しい味噌汁を食べてもらおうなどと、お笑い種も甚だしい。
 けれど、やめるわけにはいかなかった。彼と、そして彼の父親。親子としては最悪の関係性たる彼らに和解してもらうには、きっと料理が一番。
 残った具材をなんとか、食べられる大きさまで刻み鍋に入れて一煮立ち。見た目は少なくとも味噌汁である。匙にすくって一口飲んでみる。
 
 しょっぱい。それに、出汁の味が全くしない。焦げた味がする。

 これではだめ。彼に飲ませられない。鍋一杯の味噌汁を見つめ、レイは重いため息を吐いた。また失敗。

 けれどいくら美味しくないからといって捨てるのも躊躇われる。アスカの言葉が頭をよぎった。しょっぱくても飲めないレベルではない。アパートの周りには野良猫も沢山いる。

 塩辛い味噌汁に顔をしかめながら、レイはどうしたら上達できるか、ただただそれだけを考えていた。彼は、どうだったのだろう。彼もこんな風に失敗したのだろうか。
 何故だか、それはあり得ないように思えた。彼は最初から料理が出来て、美味しい味噌汁を作れたように思えた。そちらの方がよほどあり得ない筈だが、レイにはそう思えた。
 いつの間にか、血は固まっていた。表面のざらついた、小さな醜いかさぶたになっていた。このまま放っておいても問題ないように思えたが、やはり消毒はしておいた。絆創膏は明日にでもリツコに貼ってもらおう。
 灰色の陰鬱な部屋の中で、レイは惨めな気分を噛み締めていた。部屋に漂う焦げ臭いにおい。シンクに大量に溜まった、洗われていない食器。鋭い痛みを放ち続ける左手。
 その全てが一体となって、自分にどうしようもない無力感を覚えさせた。彼は自分にたくさんの事をしてくれたのに、自分は彼に何もしてあげられていない。包丁一つ使えない自分に唖然とした。今まで自分は本当に何もしていなかったのだなと、改めて思った。
 
 けれど今は、もう人形じゃないから。

ベッドの中で、レイは決意した。明日は、明日こそは……




目が覚める。頭が重い。一瞬身体に異常をきたしたのかと緊張したが、すぐに思い当たった。どうも風邪らしい。
自分の格好を思い出していると、裸の上にワイシャツを羽織っただけだ。いくら常夏の世界とはいえ、身体にはよくないだろう。
今日の学校は休もう、レイは思った。彼に会えないのが残念だけど、伝染すのはもっと不本意。
 そう結論付けるとレイはさっさと布団をかぶり、眠りについた。







 ――なみ……あ……なみ…………あやなみ…………綾波……

 どこか遠くから、声が聞こえた。夢と現実の境がつかないが、自分は夢を見たことが無いから、多分現実なのだろう。重い頭を我慢して目を開くと、彼が自分を見下ろしていた。
「いかり……くん……」
「大丈夫?綾波」
 レイは布団の中でこく、と首肯した。
「すごい熱だ……」
 そう言いながら彼がレイの額の上にそっと自分の手のひらを乗せた。その動きに余計顔が熱くなるのを感じた。顔が赤いのを気づかれないか不安になったが、自分は風邪だということに気づいて安心した。
「何か食べた?」
「……食べてない」
「だろうね」
 その口調は呆れたようなものでもあり、面白がっているようでもあった。
「綾波は、もっと自分の身体を大事にしなきゃ駄目だ。昨日だって、あれ、何時まで作ってたの?」
 そう言って昨日の残骸を指差した彼に、レイは狼狽した。だめ、見てはだめ。
「だめ、見ちゃ……だめ…………」
 弱々しくレイがベッドの中から左手を伸ばす。シンジは両手でその手をそっと握った。
「……ごめんね、もう見ちゃったんだ。その……僕の自惚れじゃなかったら、あれ、僕に、だよね?」
 レイはまたも小さく頷く。
「碇くんと碇司令に、なかよく……なって、ほし、くて…………」
「喋らないで、綾波」
 シンジが濡れたタオルをレイの額に乗せる。レイはほうっと息を吐いた。
「こんなになるまで、がんばってくれたんだね……」
 何のことか分からず、レイがそちらに目を向けると、シンジが愛しげに、レイの左手を撫でていた。
「それは……」
「せっかくの綺麗な指が、台無しだね……」
 恥ずかしい。料理も出来ない女の子だと思われる。
「だって、私、お料理、したことない……」
「分かってるよ。でもね、綾波」
 ぴりっと、昨日怪我した人差し指に痛みが走った。レイが身体を硬くすると、直後指が温かい粘膜に包まれている感触がした――シンジが、レイの人差し指をくわえていた。かさぶたの上を舌がそっとなぞる。
「だめ、碇くん、汚い……」
「汚くなんて無いよ、それに、僕はね」
 どこから取り出したのか、彼はレイの手に丁寧に絆創膏を巻きつけていた。
「僕は、そんな綾波の指が大好きだよ。僕のために頑張ってくれた、この指がね……」
 無意識のうちに、涙が溢れてくる。どうしようもなかった。止められなかった。そんなレイを見てシンジはまた微笑んで、軽く人差し指を曲げてそっとレイの涙を拭った。
「教えてあげるよ。もう怪我しないように。一緒に、世界一美味しい味噌汁を作ろう。父さんもきっと、喜んでくれるよ」
「うん、うん…………」
 彼の優しさが、嬉しかった。風邪の熱も手伝って、頭がぼうっとした。自分がずっと見たかった笑顔は、この笑顔だ。
「風邪、辛い?」
 一変して、シンジが心配そうな顔をする。レイはかぶりをふった。
「大丈夫。碇くんがいて……こほっ…………くれるから」
「大丈夫じゃないね、咳まで出てる。早く治さなきゃ」
「うん……」
「……綾波。知ってる?」
「なに、を……?」
「風邪ってさ、誰かに伝染すと、早く治るんだよ」
「――え?」
 言うが早いが、彼の顔が、自分のそれと重なった。一瞬何をされているのか分からなくなる。やっとその行為の意味を知ったとき、レイの眸からもう一度、涙が溢れた。彼が、自分に……
 レイはそれに応えた。弱々しく彼の首に手を回し、そっと抱き寄せる。熱に浮かされてるというのも原因の一つではあったが、それでもこれは、自分の願って止まなかったことだ。彼の唇のほのかな温かさが、不思議な眠気を誘った。
「分かった、伝染して、あげる……」
 首に回した腕に力を入れると、彼は勢いよくレイの上に倒れこんだ。シンジの体重が少し息苦しかったが、嫌ではなかった。
「綾波、こんなに薄着してちゃ、だめじゃないか……風邪ひいても、自業自得だよ」
「なら、碇くんも……自業自得……」
 シンジはふっと笑みをこぼした。
「そうだね、僕も、ばかだね……」
 いつの間にか、彼の呼吸は眠っている人のそれへと変化していた。たまらなく愛しい気持ちになり、レイは彼の背中をそっとさすった。明日も休もう。彼のために、お粥を作ってあげよう。そしてもう一回、伝染してもらおう。
 自分の左手を見てみる。彼の貼った絆創膏が、輝いて見えた。
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