Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.45 ) |
- 日時: 2014/05/28 18:11
- 名前: 何処 ID:6ZzJmYCaB28
- 【−月光W−】
さっきから私は只天井を見上げている。
片手には一口分しか減っていないすっかり冷め切ってしまった珈琲入りのマグカップ、反対側の手には火のついてないメンソールが一本指先に挟まったまま。
ふと視線を下ろせば卓上には積み上がる書類の束と吹かした煙草の吸殻が山になった灰皿が鎮座している。 溜め息一つ
仕事を片付ける気にもなれず、さりとて椅子から重い腰を上げる気にもならず再び天井を見上げる。
ここ数日、私はレイに会いに行っていない。 彼女の衰弱は激しく、現在も入院中だ。 荷電粒子の直撃により外装全般に交換が必要な程ダメージを受けた機体に搭乗していたのだ、当然だろう。
想像してみれば良い、何しろ大気圏往復機を利用したシールドすら焼き崩す程の熱量に直撃されたのだ。
…それにしても私達は何と言う非道な行為をうら若い少女に強いたのだろう。 幾ら射撃体勢の初号機が無防備だからとしてもあの荷電粒子の奔流を機体を盾に防がせるなど、どう考えても危険を通り越して無謀極まり無い行為。
そして私達…ネルフは一人の少女にそんな事を命令し、実行を強いた。 悪虐非道の謗りを受けて然るべきだろう。
他に手立ても無く作戦としてやむを得なかったとは言え、命令内容の辛辣さ、非情さに変わりは無い。
状況的には言わばエヴァをいきなり太陽表層に2分間直接立たせた様な物だ。 幾らATフィールドに守られたエヴァに耐熱盾を持たせ、更にその機体最深部に位置する乗員保護機構満載のエントリープラグ内だったとしても安全な筈が無い。
現に応急的な対策として追加装備したプラグ内緊急冷却装置など気休めにもならなかった。 搭乗員保護機構は簡単に容量を越えLCLは熱湯に近い程の温水と化していて。
シンジ君の救出が後少し遅れていれば彼女は良くて半年程の入院を余儀無くされる事になっていたかも知れない。
…実際にはそうはならなかったが。
低温火傷の恐れと感染症防止の為ICUに入れられてはいるが、今の所彼女の意識ははっきりしているし特に面会謝絶と言う訳でも無い。
…しかし私は見舞いにすら行かなかった。
見舞いはおろか本来なら上司…否、彼女の管理責任者としての義務である面談すらマヤに丸投げしている現状は決して褒められた物ではない。 寧ろ非難されて然るべきだ。
そう頭では理解していても私はレイと会う気にはなれず、最低限の接触すら図ろうともせずに…寧ろ避けていた。
そう、避けていたのだ。
…
…白状しよう、私は彼女…綾波レイと言う存在に怖れを抱いているのだ。
はっきり言えば彼女と言う存在…現実を受け止めきれず半ば逃避している。 其程に…真実は重く、苦く、そして…
恐ろしかった。
―――
「…このネルフにはエヴァンゲリオン初号機以外のインフィニティが存在する、それは君や私の側に居る。」
「!」
「…レイだ。」
その司令の発言を私は直ぐには理解出来なかった。
レイが…半使徒?
瞬き二つ程の時間経過の後、司令の発言が示す意味を漸く理解する。 だが私の知識と理性、そして感情がその情報を否定した。
当たり前だ、何故なら私は知っているのだから。
彼女の健康管理や精神分析、肉体調整を長く担当する私の知る限り彼女は精神的、肉体的にも…具体的に言うならば肉体構成物質的にも遺伝子情報的にも間違い無く人間だ。
そう、彼女は紛れも無く人間だ。
数多幾多の検査結果を熟知し、私自らも幾度と無くこの手で測定し分析している。 繰り返すが彼女・綾波レイは間違い無く人間だ。
確かにレイはその佇まいや言動に浮世離れした面を持ち、それを宜しからざると見て“無機質”、或いは“非人間的”と評する向きの職員が少なからず居るのは事実だ。 だが彼女のそんな一面は決して非人間的な物では無い。理由がある。
それは幼少期からここネルフで司令以外は身寄りも無く唯一人孤独に暮らし育った故のやむを得ない環境適応の結果なのだ。 以前心理学者とカウンセラーを交えてレイに行った精神分析は集団から孤立化した体験…疎外感こそが今現在彼女の晒す態度の理由と診断した。
私に言わせればこれは環境の病だ。
最も多感な筈の幼少期を彼女は同世代との交流すら無いこの地底都市に唯一人で生き、只独りで暮らしていた。
思えば哀れな娘だ。 同年代の子供達が親の愛情に守られ仲間と遊び、人としての社会性を学んでいる頃、この少女は科学者と機械に囲まれて孤独な日々を過ごしていたのだから。
そしてその未だ幼い少女に対し、司令は各方面から招集した各分野の専門家によってそれこそ大人顔負けな程の英才教育を施させていた。 その様子たるや、それはもう傍目にはまるで虐待の様な訓練と教育を受けさせていたのだ。
公園や遊園地代わりのジムでのトレーニング、玩具や絵本の代わりに与えられたのはテキストや専門書。 分刻みのスケジュールに従う少女の様子はまるで何かに追われているようで。
後にセカンドチルドレンが見出されるまでは彼女だけが唯一のエヴァンゲリオン搭乗適格者であった事を差し引いてもその教育内容は厳し…否、過酷とも言える程だった。
基礎的な対人交流や情操教育も無いままひたすらエヴァのパイロットとしてのエキスパート専門教育と訓練、そしてそれらの合間を縫って行われるシンクロ試験。 まるで兵士…否、機械の様な扱いの中、組織の命ずるままスケジュールに追われていたあの少女に果して年齢に見合う全うな人格形成を期待出来たのだろうか?
そうした諸々の事情が偏見を呼び、偏見がその評価に影響し、悪評の流布に寄与しただろう事は言うまでも無い。
…それにしても少し考えてみれば直ぐ解るそんな理屈を無責任にも考えようとすらしない人物の何と多い事か。 加えて言うならば聞こえて来る彼女への噂は偏見と中傷に満ちた何の根拠も無い嘘ばかりだ。
そしてその理由の下らなさには閉口する。
司令以外身寄りの無い事然り 一人暮らしの事然り 年齢に見合わぬ大人びた…否、どこか達観したかのような態度然り 感情表現力の欠如然り 世間知らずな所然り
そして何より彼女が外観に於いてある種の疾病患者と共通する特徴点… (色素減少による銀とも青ともつかぬ髪、瞳孔虹彩の色素欠落による赤い瞳、メラニン生成異常による雪のような肌、etc…) …を持つ故にか、まるで彼女をネルフの実験動物かの様に評する向きまで居る。 …扱いが悪いのは認めるが流石に実験動物は…
…これからチルドレン達の待遇改善を検討しよう…
それはともかく。
レイへの質の悪い噂は止まる様子も無く、遂には“実は彼女はネルフのロボットだ”などと言う根も葉も無い荒唐無稽な与太話まで出る始末。
理不尽にもそんな差別的な扱いを彼女は今の今まで受けてきた。
そして恐ろしい事に、“その扱い”はこのジオフロント本部の一部職員内においても暗黙の内に半ば肯定されていたのだ。
断言する。彼女に非は無い、全く無い。言わば風評被害だ。 責められるべきは保護者である司令であり、私達ネルフである。
ネルフの道具、エヴァンゲリオンの人柱、つまり人類存続の為の計画における犠牲者ファーストチルドレン・綾波レイ。 それが半使徒、インフィニティなど…
インフィニティ?
私は司令の話に感じた違和感の原因に気付いた。
司令は確かブラックボックスの中にはインフィニティが…と言った。 そして司令はレイがインフィニティであるとも言った。
単純に話の流れからすればつまりあのエントリープラグのブラックボックスにはレイが…え?
矛盾だ。あり得ない。何故なら
…レイは今生きている…
私は混乱した。混乱しながらその原因たる司令の発言の矛盾をまくし立てていた。
「ま、待って下さい!レ、レイは生きています!生きてい…」
その時、私はある考えに至り、その発想の意味する所に想像を巡らせ…
その可能性に恐怖した。
「!?ま…まさかレイの血縁者…家族を使用したのでは…」
司令は無言で首を横に振った。 ややあって司令が口を開く
「口で説明するより見た方が早い…これからドグマに降りる、附いてこい。」
言うが早いか席を立ち、扉へと歩き出した司令。 その背中に私は掛ける言葉すら浮かばす唯慌てながら歩み去る姿の後を追うしか無かった。
―――
「こ、これは!?」
「使徒アダム…最初の人間だ。使徒はこのアダムと融合する為にこの第三新東京を目指している…」
「…これが…アダム…南極を壊滅させた使徒がこんな場所に…」
「…と言うのは建前だ。」
「え?」
「ここに封印され存在しているこのモノは…アダムでは無い…」
「で、ではこれは一体…」
「これは旧首都東京を壊滅に追い遣った元凶…使徒リリスだ。」
「!?」
《First》http://www.youtube.com/watch?v=6ZzJmYCaB28&sns=em
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