Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.6 ) |
- 日時: 2010/10/10 20:40
- 名前: 何処 ID:FM2r6obVKGM
- 汝狭き門より入れ。
そは天国の門也。
【Knockin'On Heaven's Door】
プシッ!
「「かんぱーい!!」」
「アスカ、はい小鉢と蓮華。」 「ダ〜ンケ〜…あ、それもう良さそうね。」 「はふはふ…美味し…」 「…うん、昆布だしで正解だったわ。」 「フーフー…ねえ、おじやとうどん、締めはどっちにしようかしら…」 「アチアチ…早い、早いわよレイ、先ずは食べてから。」
安アパートの一室。 うら若き乙女二人は炬燵で鍋なぞをつついていたりする。 ファンヒーターの微かな唸りと鍋の煮える音、彼女達の嬌声に部屋は一段と明るい。
「…にしてもやっぱ日本はいいわ〜、夜中のコンビニにレイプの心配無しに買い物行けるし食べ物は美味しーし。ゴクリ」 「ゴクン、モハビでの三ヶ月ご苦労様。向こうはどうだった?」 「あの調子だと半年は向こうで留めさせたかったみたいね。やる事やって帰ろうとしたら引き止め工作が凄かったわ。」 「大変ね…」 「全くそれならそれらしい待遇しなさいっての!冷凍ピザとホットドッグとコーヒーとコーラで丸一ヶ月砂漠のど真ん中よ!ゴキュッ!」 「…胸焼けしそう…」 「…で、一段落して町に出てチャイナレストランに入ったら…」 「入ったら?」 「烏龍麺ての頼んだら出てきたわよ…何故かキツネうどんが。」 「ぶっ!?」
乙女達は楽し気に話し続ける。
「ゴキュ…あ、終わっちゃった。」 「ゴク…私も…どうする?もう一本空ける?」 「んーと…エビチュなら確かその袋に後二本…」 「ええと…あ、アスカこれ!?」 「んふー、レイも好きでしょー純米吟醸。ゼミのコンパで一升瓶抱えてたもんねー」 「あ、あれは教授が無理矢理…」 「あら?要らないの?」
「…頂くわ…」
お銚子にお猪口が鍋の脇に急遽並べられる。
「じゃ、改めて」 「乾杯。」
チン♪
「いいわね〜、鍋におこたに日本酒、素晴らしいわ…白菜追加っと。」 「最高…あ、ソーセージ入れる?なら私も竹輪入れよ。」 「むー…段々普通の鍋から闇鍋テイストなちゃんこ鍋に…」 「なら大根と蒟蒻入れて関東炊きに…」 「あ、キムチは止めて。あたし辛いの苦手。」 「美味しいのに…」 「けど口臭がね。にしてもシンジ、今度は松代だって?」 「教授のお供。アスカが折角アメリカから帰って来たのに全く碇君は…」 「ほほう、同棲相手が居なくて寂しいと。」 「アアアスカ!?なな何言ってるのよ!いいい碇君はたまに泊まりに来るだけで…」 「週に五日も泊まってたら普通同棲って言うのよ。」「四日よ!あ…」 「はいはいご馳走様。ま、薄情な男は放っといて女同士旧交を暖めましょ!」 「賛成!」
二人の箸は快調に鍋の具を減らして行く。
「アスカはお箸使うの上手よね。私不器用だから未だ碇君に笑われるの。」 「あったり前よ!この天才に不可能は無いわ!…なんてね、実は冬月さんの特訓の賜物よ。」 「副司令の?」 「そ。現都知事にお茶とお花まで手解き受けたなんて私ぐらいかもね。ん?もう一杯如何?」 「頂くわ…渚君は帰って来ないの?」 「あー、今アフリカへ旅行中。あいつの昔の男がストーカーになって新しい彼女と揉めててね、ドロドロ三角関係が鬱陶しくて逃げたみたいよ。」
「…要約すると新しいスポンサーと昔のスポンサーが契約で揉めてる中、アフリカのレースに見切り参加って事ね…はいご返盃。」 「良く出来ました。直ぐバレるわね、おっとと…さあて粗方食べちゃったし、締めは…」 「そうね…じゃ、今回は…」
「「うどん!」」
「良かった〜、碇君とだと大抵おじやなのよね…」 「あ、成る程。」 「おじやも美味しいけど毎回はね〜」 「確かに。」
うどん玉を鍋に投入しながら金の髪を揺らし相槌を打つ。
「レイ、七味取って」 「はい。あ、薬味のネギもいる?」
締めのうどんに舌鼓を打ち、鍋を空にして彼女達は小休止の体勢を整える。
「…ご馳走様…」 「…お腹一杯…」
「…アスカ、明日は雪らしいわ。二十年ぶりですって。」 「うぇ〜、最悪…」 「そう言えば雪って私見た事無いわ…」 「あんまり有難い物じゃ無いわよ。寒いし冷たいし濡れるし滑るし…それにしてもおコタはいいわ〜…」
「“日本の文化の極みだね”なんて言わないでよね…」 「しまった読まれてたか。」
「さて、部屋の空気入れ替えましょ。一酸化炭素中毒は嫌だし。」 「寂しく女二人で天国の門ノックしたくは無いわよねー。」 「確かに。…きゃっ!?寒っ!」 「ブルッ…うえ〜、五年前まで今の時期も蝉鳴いてたのに変わり過ぎよ全く…」 「本当…あら?これって…」
開け放たれた窓の向こう、白い句読点が夜空を舞う。
「雪ね…初雪よ…」 「綺麗…」 「…本当…」
「…雪嫌いじゃなかった?」 「…ドイツの雪はね。いい思い出少ないし…でもこの雪は好き…何か優しくって…」
「…雪見酒しましょ?はい半纏。碇君のだから大きいかも。」 「…ありがと…」
…深…
「…静かね…」
「雪が音を吸収するのよ…」
「…」
「…」
「私…この世界に生きて良かった…」
「…今、この時…一番大切な事…」
「一期一会…本当にそうね…」
窓から目を逸らし、乙女達はお互いを見つめる。
「綾波レイ、貴女に会えて良かったわ。」 「どういたしまして、惣流・アスカ・ラングレーさん。」
「では改めて」「初雪を祝して」
「「乾杯」」
チン♪
ちらちらと降る雪が部屋明かりに銀の輝きを散らす。乙女達はうっとりとその景色を眺めやり、杯を舐める。
“Knock,Knock”
「ん?」 「誰かしらこんな時間に…はーい」
帰って来た声は…
「あ、開けて〜!手が塞がっててインターホン押せないんだ〜!」 「碇君!?」「シンジ!?」
ドタドタガチャガチャ!
「せ、狭い…レイさては太ったわね?そのヒップが物語っているわ!」 「私のお尻は喋らないわ。アスカこそ胸もお尻も成長して…少し頂戴。」 「バカ言ってないで早く開けなさいよレイ!」
ガチャン!バタン!
「碇君!」「シンジ!」 「ふひー、綾波ただいま〜。アスカいらっしゃ〜い。あ、これお土産。」 「お、重い…」 「碇君未だ松代じゃなかったの?」 「ネルフから緊急呼び出しでVTOLで帰って来た…新型又故障してさ。早く入れてくれない?寒くって…」 「あ、ごめんなさい!アスカ、私これ居間に持って行くわ!」 「この玄関に大人三人は狭いわよね〜。今換気で窓開けてたから寒いでしょ?」 「表の寒さからすれば天国だね。この玄関は僕には宛ら天国の門だよ。」
◇◇◇
「碇君ご飯は?」 「ネルフ食堂で食べて来た…懐かしのA定食。」 「あ、懐かしい!」 「…私が初めて食べたお肉、A定食のサラダのハムなのよね…」 「げ、向こうが透けて見えるアレ!?」 「そう。何だか今にして思えば損した気分…」 「あんた今でもお肉苦手でしょうが。しっかしシンジ何をこんなに買い込んで来たのよ?」 「“デザートは別腹”との以前のお二人様の御発言を考慮いたしました。糖分と乳脂肪の冷却固形化物質も入ってるよ…高カロリーの。」 「碇君…意地悪。」 「ふっ、甘いわねシンジ、女の子がアイスクリーム前に止まるとでも…あ、アイスヴァインよこれ!?」 「そう、セカンドインパクト後初めて出来た氷結ワイン、一寸奮発して買って来た。」 「アイスバイン?脛肉じゃなかった?」 「ノインノイン!アイスヴァインよアイスヴァイン!木に実らせたままで凍結させた葡萄で作ったワイン!希腐ワインより私好きなのよ!」 「…でもさ、大体こうやっていいお酒を用意すると…」 「…言わないで碇君…」 「大丈夫よ、それは無いわ。だって…」
“♪フンフンフン♪”
「え?嘘…」「あ、やっぱり…」「頭痛い…」
「雪見酒か…いいねぇ…」
「カヲル君…ATフィールドで浮遊して窓から来ないでよ…」 「…絶対来ると思った…」 「…又クラッシュリタイヤ?」 「いいや、クーデター騒ぎで中止になってね。ほら、向こう土産のブブセラとお面、それに…」
「いいから中入りなさいよ。真空でも平気なあんたと違って私達は繊細なんですからね!」 「もうご飯食べちゃったから渚君の分は無いわよ?」 「ん?鍋だったのかい?いいねぇ…」 「“日本の食文化の極みだよ”なんて言わないでよねカヲル君…」
「クッ!?まさかシンジ君から突っ込みが入るとは…」
「碇君…ナイス。」
「「「ブハッ!?!!」」」
「…?」
部屋は新たな客を迎え不夜城の趣だ。朝まで四人は笑い、話し、怒り、泣き、そして又笑うのだ。
降り続く微かな雪は僅かに積もる。だが朝日と共にその跡を残す事無く消えるだろう。しかし四人の心にこの雪は永く消える事は無い筈。
暦より一足早く今宵此処は聖夜。 地上に現出した小さな楽園を踊りながら音も無くノックする結晶だけがそれを知っていた。
fen
ED【Packeagd】歌・初音ミク
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