Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.6 ) |
- 日時: 2012/03/25 23:04
- 名前: 何処 ID:ZKOpoMZus4s
【−愚者と道化−】
息子が来る日程が決まった翌日、使徒の活動が確認された。
間の悪さに頭を抱える。こんな日は早く寝るに限るのだが、こんな日に限って赤木君が私の部屋に来た。
「しかし…何時もながら殺風景ですわね。それに又酷い事になってて…いい加減、ハウスキーパーを雇われたら如何です?」
部屋の惨状に溜め息を吐きながら手早く片付けを始める彼女の姿に微かに苛つく。
「構わん。どうせ週に一・二度の睡眠場所だ。」
「そうは行きませんでしょ?これから…」
不意に彼女の声が低く小さくなる。
「…一緒にお暮らしになるんですから…息子さんと…」
その一言に衝撃を受ける。
そうか…シンジが来るのか…
息子を呼び付けながら迂闊にも私はそんな事を全く考慮していなかった。今更…息子と?
驚愕と動揺を圧し殺し表情を変えず彼女に答える
「…施設に入れる。」
「!?はぁっ?な、何を言い出すんですかゲンドウさん!あ、貴方のむ、息子ですのよ!親がいて何故施設に入れる必要があるんです!」
…彼女の素顔を久し振りに見る。実に素直で優しい…主席研究員には不要な感情だが。
真っ赤になり私に食って掛かる微笑ましい少女の姿が重なる…黒子以外は当時の面影の無い彼女だが、内面は相変わらず無垢で繊細で…脆い。
「パイロットとして必要だから呼んだ、それだけだ。」「しかし!」
自分に言い聞かせながら告げた台詞は彼女の納得を得られなかった。
「…私はネルフ総司令だ。個人の都合は」「子供の父親に代わりはありません!引き取るべきです!」
目を逸らしたくなる衝動を堪え正面の瞳を見詰める。
「…アレの意志はどうなる?」
「アレ?…!?息子さんをアレとは何です!それに意志なんか判ります!嫌なら呼ばれてノコノコと来るものですか!」
…行く宛が無いなら、嫌でも行かねばならない。そんな経験を彼女は得ていないのだろう…幸せな事に。
「判った…息子が一緒に暮らしたいのならそれは仕方あるまい。逆に息子が嫌がるなら強要は出来ん。」
「当然です!先ずは掃除からですわ!」
猛烈な勢いで掃除を始めた彼女に圧され、私も部屋を片付け始めた…
◇◆◇
「…レイは、この部屋に来た事があるのですか?」
掌を庇いながらテーブルを布巾で拭っている私に然り気無さを装い流し台の食器を洗いながら彼女が問う。
「無い。必要も無い。レイはエヴァンゲリオンパイロットだ、その為にレイは存在している。」
…ダミーさえ完成すればパイロットは、レイさえも不要なのだ。ダミーさえ…
「…レイに感情は不要だと?」
「レイはパイロットとして必要だ、もしそれが闘いに勝つ為に必要ならば与え、不要なら与えない。それだけだ。」
「!レイは只の道具ですか!」ガチャン!
「痛っ…え?」
彼女の手を有無を言わさず取り、蛇口を開け傷口を洗う。傷の中に硝子片が無い事を確認し、傍らの引き出しから抗生物質軟膏と絆創膏を取り出し、傷口に薬を塗り、絆創膏を貼る。
「あ…あの…」
「…大丈夫だ。この程度なら直ぐ治る。」
彼女の手を離し、再びテーブルを拭こうと背を向け…
…彼女に、裾を掴まれた。
振り向く私の前には、驚きと戸惑いを浮かべた彼女の表情。
その 瞳 が
その 唇 が
ゆっくり と
…
◆◇◆
彼女をベッドに残し、私は一人街へ出た。
一杯の蒸留酒が堪らなく飲みたかった。 燃える酒にこの苦い物を焼き溶かし流し込みたかった。
弱さを、脆さを、苛立ちや怒りを…否、己自身を呪い憎む間抜けさが酒場へ私を駆り立てる。 惰弱な。酒に、女の温もりに、逃げ、頼る…全く以て情け無い逃避。卑怯で、醜悪だ。
…醜悪…か…何を今更…
店に入り、未だ若いマスターにオーダー。一杯の麦酒と煙臭いダブルのロックを一つ。 箱から溢れる流れる様なピアノの旋律、サックスの叫び、句読点はリズミカルに砕ける氷の音…
二つのグラスが目前に並ぶ。
指先でダブルのグラスを傾ければ張っていた肩の力が抜けた。グラスの中氷が鳴る。
一口の琥珀が沁みた。
麦酒を一口。白泡と黒液が唇を湿し、口内を洗い、喉を潤す。
ふと、唇に感じる余韻。
手元のおしぼりで拭えば泡に混じり微かな紅。
「ふ…」
声に出た自嘲、気付けばチェイサー代わりの麦酒を飲み干していた。
レイの表情と、赤木君の表情が重なる。掌が疼く。
…レイに感情は必要だろうか?
出ない答えを棄ててもう一口。 グラスの中で音を立て氷が琥珀に踊る。 舌を転がる液体を咽下すれば、熱い塊が腹に残る。
無知の救い、知の苦悩…か…
曲が変わり、カウンターにはサッチモの世界を讚美するしゃがれ声が流れ出した。
紫煙が漂うカウンターは誰しもが無言で。
半分程のグラスの中身を一息に干す。 消毒液が私を焼灼する。
…今はこれで充分だ。
一枚をコースターの下に挟み店を出る。アルバイトらしい店員が釣りを持ち追いかけて来た。 黙って札だけ受け取りタクシーを停め帰宅の途へ。
車窓の向こうに瞬く街灯りが眩しかった。
◆◆◆
午後の内に帰りついた部屋、ベッドには眠る一人の女。
台所の椅子に座り、目を瞑る。
何処からかユイとシンジの笑い声が聴こえた気がした。
朝は 未だ 遠い
【DingーDong】巡音ルカ http://www.youtube.com/watch?v=ZKOpoMZus4s&sns=em
 |
|