このスレッドはロックされています。記事の閲覧のみとなります。
ホームに戻る > スレッド一覧 > 記事閲覧
[563] サイト開設十周年カウントダウン企画・九月
日時: 2010/09/02 05:15
名前: tamb

月々のお題に沿って適当に書いて投下して頂こうという安易な企画です。作品に対するものは
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm

今月のお題は

・ごはんがおいしすぎて
・空の高さは
・Higher

です。
八月の企画、1111111ヒット記念企画も鋭意継続中、十月中には、インフォシークiswebライト
のサービス終了に伴う雑談掲示板「新・「綾波レイの幸せ」掲示板 二人目」移転記念企画も
ありますので(あるのか?)そちらもよろしくお願いします。

では、どうぞ。
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成

Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・九月 ( No.7 )
日時: 2010/09/17 14:08
名前: のの

 ヤバヤバです。賭けても良いです。

 じゃばじゃばとお酢、かけてもいいです?

 中華には必須、欠かせないです。

 これが夢です。「あなたに必ず食べさせます」。



Day Tripper!!

出張版第4話

「おいしいご飯、その秘訣」



 碇くんには敵わないけど、これでも自炊はきちんとする方だ。
 まだまだ残暑が厳しいので、暑気払いの意味でマーボーナスを作ろうと思い立ったわた
しはご飯を研いで、スーパーに出掛けた。歩いて12分の大型スーパーか、歩いて五分の
個人経営のスーパーか。面倒臭いので近場で済ませる事にしようと思ってサンダルに足を
入れた。台所へ出るだけでも十分暑いので、ドアを開けたら吹き込む熱風は予測できてい
た。実際には熱風とまでは言えない風だったので、まあいいかなと思って階段を下りる。
わたしはよくよく四階に縁のある人間らしく、エレベーターのないアパートの最上階はま
たしても四階だった。おかげで毎日階段の上り下りを強いられている。
 オートロックの入り口をくぐると目の前は公園で、学校帰りの子供たちが遊んでいる。
本当はわたしも皆と遊ぶ予定だったけど、あいにく皆都合が悪くて解散となった。わたし
たちは受験生の身なので、そろそろいよいよ本腰を入れなくてはならない。いつもはふざ
けてばかりいるけど、真面目に考えなければならない時もある。真面目に考えた結果、山
岸さんは市内の看護学科がある女子高、相田君は工業系の専門学校へと進路を決めている。
困った事に、わたしたちは中学でバラバラになってしまう。だから真面目にふざけている
んだ、と思うと夕陽が目に染みた。

 そういえば金曜日は特売日だったことを思い出して進路変更、大型スーパーまで足を伸
ばしてみる事にした。
 携帯電話を開けてみると、気づかない間にメールが入っていた。マナからだった。写真
が添付されていて、開いてみると「ぱちんこ」の文字がひと文字電気が消えていて「ぱん
こ」になっている写真だった。わざわざ丁寧に(使いかけの)パン粉を手にして、行くた
びに見かける部屋着に着替えたマナが看板を指さしている。なんだか気が抜ける。それが
ちょうど良かった。

 スーパーは思っていたより混雑していた。やっぱり特売の力はすごい。しかも飲み物も
大安売りらしくて、レジ近くには色々な種類のペットボトルが並んでいて、二桁で売られ
ているものもあった。
 わたしは、なんとなく気勢をそがれてしまった買い物欲を取り戻そうと茄子を選び、精
肉コーナーへ足を運んだ。未だに得意な分野ではないけれど、ひき肉なら平気。ずらりと
ピンク色が並んでいるのはそれでもあまり気分のいいものではなかった。素早く一番小さ
いサイズの挽肉を選んで立ち去ろうとした。

「あれ、レイ?」
 後ろから声をかけられたので振り返ると、洞木さんが立っていた。わたしと違う点があ
るとすれば、彼女は制服姿だったこと。彼女が鞄の紐を掛け直す仕草に力が入っていたの
を見つけて、わたしは納得した。
「勉強?」
「うん。こんな時間になっちゃったけど」
 わたしにとってはこんな時間、というほど遅くない。それでも彼女にとっては遅くなっ
てしまったのなら、それは彼女が家に帰った後も仕事がある事を意味していることだと理
解し、わたしはひどく曖昧に頷いた。家で誰かの世話を焼く、という感覚はわからない。

「一人暮らしだと大変ね、全部自分でやらなきゃいけないんだから」
「いくらでも手を抜けるもの……きっと、そっちの方が大変」
「まあ、そうかなあ……さすがにお姉ちゃんも色々やってくれるから楽よ。私は、今日は
買い物だけ」
 役割分担、という感覚もわからない。

「……なに作るの?」
「麻婆豆腐だって。ノゾミがいるから、うちのは辛くないのよ、全然」
 どこでも考えることは似たようなものなのかな、と少し笑ってから言った。
「うちは、麻婆茄子」
 わたししかいない家だけど、と口の中で皮肉が出てきそうだったので言葉少なに言うと、
いいわねえ、と彼女は言った。
「山椒を少しだけ入れると、本格的よ」
「そうなの?」
「うん、本場っぽい感じ。行ったことないけど」
 以前、仕事で二時間だけ碇司令に同行して行った上海のことを思い出す。別になにも食
べなかったから、わたしも同じだ。
「……別に、いい。どのみち、使い切れないから」
 それきり、並んで物色するわたしたちの会話は極端に減ってしまった。なんとかしたい
と思うけれど、その気になれない。わたしと彼女では、何を言っても多勢に無勢というか、
帰った家に誰がいるか、という話になってしまいそうだった。

最後に、なんとなく1リットルのパイナップルジュースをかごに入れてみた。洞木さん
は気遣ってくれたのか、いいなあ、と言ってその隣のりんごジュースを籠に入れた。結
構重くなるよね。そうね。やっぱり短いセンテンス。
洞木さんの鞄はいかにも重そうだった。受験勉強用の参考書が入ってるのかな、と思っ
た時、頭の後ろで閃きが起きて思わず声に出していた。

「鈴原君と勉強してたの?」
「え、えぇ!?」
 あ、やっぱり。
「な、なんで?」
「それは承認した、ということでいいの?」
「うぁー…………まだ、皆には言わないでよ?」
「もちろん。口はかたいから大丈夫」
 二人きりで話したことは、なんとなく皆には言いづらい。
「鈴原が……やっぱり皆と同じ学校行けるだけの努力するって言うから、協力することに
なっちゃって……」
「それは協力を要請されたの?それとも申し出たの?」
 後学のために是非知りたいの、とまではさすがに言えない。今日のわたしはミステリア
スなんです。
「う、うーん……まあそんな細部は、いいじゃない!」
 と言ってレジに並んでしまった洞木さんを慌てて追いかけようとしたけど、なにしろ混
雑しているので先に入られてしまい、別のレジに並んで会計を済ませた。一足早く袋詰め
をせっせと行う洞木さんの隣に籠を置く。
「ねえ、どうなの?」
「だから、そんな細かいところ、憶えてないよ」
「嘘ね」
 ディティールこそ萌え、もとい肝要なところなのだから気になるのは当然のこと。
「最初に言ったのは……私から、だけど」
 やるなお主!
 今度是非詳細を聞かせてね、という話を一方的にして、ちっとも首を振らない洞木さん
と別れた。夕陽はすっかり自己主張を弱めて、青い空が暗さをもち始めていた。
「……帰らなくちゃ」
 誰も待っていない家路を急ぎたくなかった。友達と話していた私でなくなってしまう。
気がつけば下を向いて歩いていた。家の目の前の公園から子供の声は聞こえなくなってい
た。誰もいない公園なんて一番見たくないものだと思って、意図的に眼を伏せ続けている
と、ブランコを漕ぐ音だけは聞こえていた。おかしいなと思った瞬間だった。
「おーい、レイー!」
 今度こそ声をかけられてびっくりして、公園を振り向くと、ブランコを凄い角度になる
まで漕いでいるマナと、柵に腰をかけている「無駄に足の長い男」渚カヲルのシルエット
を見つけた。
 思わず小走りに寄ると、立ち漕ぎのブランコを飛び出したマナが両手の親指を立てて、
「遊びにきました!いただきます!」
「お腹空いたよ、妹よ」
「……なにがどうなってるの?」
「いや、マナから連絡を受けてね、外食に飽きたからたまにはレイの家でご飯を食べよう
という話になったんだよ」
 「いつでもどこでも解説役」渚カヲルが肩を竦めながら寄ってきた。大きなビニール袋
を下げている。
「レイのご飯はおいしいからねえ……今日の晩御飯は?」
「……麻婆茄子。一人分の」
「なるほどね……じゃあ良し!」
「なんでそうなるの」
「そりゃ呑むに決まってるからじゃないか。いつからそんなに回転の悪い妹になってしま
ったんだい。なんてことだ、残念至極だ。ちなみに僕は麻婆茄子より味噌炒めが好きだ。
あれにお酢をかけて食べると、他にはお酒しか要らなくなる」
 がしゃりとビニール袋を軽く上げてみせる。よく見るとビールとワインが満載だった。
「……でも、ご飯の準備しちゃったわ」
「シメにいただきやすよお、大丈夫っすよ」
 すでにヨッパライにしか聞こえないマナはわたしのポケットを勝手にまさぐって鍵を出
し、さっさとアパートに向かってしまった。苦笑を浮かべた渚カヲルに、思わず訊ねた。
「いきなり、なに?」
「さあ……まあ正直僕もいきなり呼ばれた身でね。いや、呼ばれた瞬間酒屋が頭に浮かん
だ自分を否定はしないが」
 彼はまた肩を竦めた。彼もマナの後を追って歩き出すので、突然騒乱確定になった戸惑
いを処理するのに精一杯のわたしは一歩遅れて歩く格好になった。
 下げかけた顔を上げると、暖かそうな赤い眼がわたしを見つめていた。
「いつもはすぐにメールを返すのに返さなかった、帰り際に淋しそうな顔をした女の子で
もいたんじゃないかな」
 何度かまばたきをして、早くも外階段を小走りで駆け上がっているマナを見上げた。
「……味噌炒めでいいのね」
「話がわかる妹を持って幸せだよ。
ま、固いことを言うところが玉に瑕だけど、と言い、彼がわたしの肩を叩いた。
 四階に辿り着いたマナの呼ぶ声が聞こえて、柵から顔を出して四階を見上げると、同じ
く顔を出していたマナと目があった。彼女は満面の笑みで親指を立てて見せたので、わた
しの眼はまた夕陽に沁みてしまった。
メンテ

Page: 1 | 2 | 3 | 4 | 全部表示 スレッド一覧 新規スレッド作成