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[573] サイト開設十周年カウントダウン企画・十月
日時: 2010/09/30 03:10
名前: tamb

月々のお題に沿って適当に書いて投下して頂こうという安易な企画です。作品に対するものは
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm

今月のお題は

・一番大切なこと
・わたしのお尻は喋らない
・Knockin' On Heaven's Door

です。
八月の企画、九月の企画、1111111ヒット記念企画も鋭意継続中です(これ、ずっと書くのだ
ろうか 。八月九月十月十一月十二月一月……)。

今月中には、インフォシークiswebライトのサービス終了に伴う雑談掲示板「新・「綾波レイ
の幸せ」掲示板 二人目」移転記念企画もありますので(あるのか?)そちらもよろしくお願
いします。

では、どうぞ。

以上、ほぼコピペ(爆)。
メンテ

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Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十月 ( No.8 )
日時: 2010/10/20 22:21
名前: JUN

Knockin' On Heaven's Door


「天国って、どんなのかな……」
 寂しそうに言うシンジに、レイは困ったような顔をした。
「分からないわ、そんなこと」
「いいところだといいね」
「悪いところなら地獄じゃない?」
「あ、そっか」
 くっくっく、とシンジが喉を鳴らすと、レイもつられてくすりと笑った。
「そういえば」
 シンジが言った。
「あの紅い海は、もしかしたら天国だったのかもしれないね」
 レイは怪訝な顔をした。シンジは紅い海から戻ってきたことを、一種の誇りにしていたからだ。もしあの時決意していなければ、今の幸せはなかっただろう、と。
「どうしてそう思うの?」
「うん……僕だってあそこにずっといたいとは思わないけどさ、でも絶対に苦しむことがないっていうのは、ある意味天国だったのかもしれない。今考えても、仕方のないことだけど」
 レイは曖昧に頷いた。それは、あの時のシンジの願いでもあったことを、レイは知っている。或いはやはり未練があるのかもしれない、とレイは考えた。
「でも、私はあそこが天国だとは思わないわ」
「ん?」
 ストレートで淹れた紅茶を差し出すと、シンジはありがとう、と言って口に含んだ。淡いグリーンのソファに腰を下ろす。並んで座れるソファが欲しい、と言うのが、レイの唯一の希望だった。
「私は、シンジさんの望みどおりにあの世界を作った。でも、あそこにいたシンジさんは――なんていうか、すごく虚ろな眼をしてたから。どんなに苦しまない世界だって、楽しみがなかったらつまらないわ」
 シンジは紅茶をすすりながら、その言葉に耳を傾けていた。優しい紅茶の香りが心を癒す。レイお気に入りのアールグレイだ。
「僕も、そう思うよ。あの世界はつまらない。こうして生きているだけでも、色んな発見があるもんね。レイが意外と辛いものが好き、とかね」
「意外?」
「まあね。他にも色々あるけど。今だって、あの頃のレイならきっと、楽しみがなきゃつまらない、なんて言わないだろうし」
「シンジさんに、楽しいこと一杯教えてもらったわ」
「そうかな。でも、僕だってレイに色んな物をもらったよ。僕はレイの隣でこうしているだけで、すごく安心するよ」
 少し遠慮がちに、シンジはレイを抱き寄せた。ほとんど抵抗なく、レイがシンジのほうへ沈みこむ。
「わたしも、こうしていると……安心する。一緒に買い物したり、膝枕をしてもらったり、そんなことをしてる時が、私の天国だと思うわ」
「だったら、きっとね」
 シンジは嬉しそうに微笑みながら、レイの頬をそっと撫でた。
「天国は死んだ後だけじゃないのかも。今生きてる時にも多分、天国はあるんじゃないかな。そもそも死んだ後がどうかなんて、死んだ後じゃなきゃ分からないし」
「そうね。死んでみなきゃ」
「でも、勝手に死んじゃ、やだよ?」
 シンジは悪戯っぽく笑った。しかしその軽い口調とは裏腹に、眸は真剣だった。
「分かってる。でも、もし死んだ後の世界があったら、どうするの?」
 レイも悪戯っぽく聞き返すと、シンジは唸った。
「そうだな。味噌汁作って待っててよ。僕が来るのを」
「お味噌は?」
「もちろん、合わせ味噌。豆腐は絹ごしだよ」
「もし、シンジさんが先に死んだら?」
「そしたら、僕が味噌汁作って待ってるよ。レイの好きな白味噌」
「最近食べてないわ」
「そうだね。今夜作ろうか。初めて食べたときのレイの顔、面白かったな。お味噌汁が甘い……って。辛党なのに、そこだけは甘党なんだね。中学校の頃から変わらないよ」
 レイはぷう、と頬を膨らませた。本人は無意識的なのだろうが、どこまでも悪戯心を刺激する顔だ。
「子ども扱いしないで」
「分かってるよ」
 シンジは笑いながら、レイのお腹の辺りを撫でた。どこまでも、慈しむように。
「なに?」
「そろそろ……赤ちゃんが欲しいな」
 レイの顔がさあっ、と紅く染まった。誤魔化すようにシンジの胸に顔をこすりつけ、
「いつでも……どうぞ」
「ん?」
「二回は言わないわ」
 シンジは何も言わずに笑顔を見せ、レイの耳元で囁いた。
「三人で、あったかい家にしようね。産まれてくる子供が天国に思えるような、そんな家に」
「うん」
「部活とかから帰ってきた子供が、この家の玄関を開ける時に、天国の扉をノックしたみたいに思えるように、僕、頑張るから」
「わたしも……頑張る」
「うん、一緒に頑張ろうね。僕ももっと一杯稼げるようにするから」
「お願い……」


 いっそう強くレイを抱く腕に力をこめ、シンジはゆっくりレイをソファに横たえた。





 やっと手に入れたこの空間を、僕はなにより大事にしたいから。
 僕の全てを賭けて、君を、この場所を護るから。
 僕にとってたった一つの、この天国を。

 帰って来た時きっと笑顔で入ってこれるような天国の扉を、これからずっと護っていくから。


                   FIN
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