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サイト開設十周年カウントダウン企画・八月
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/08/03 22:23 |
投稿者 | : naibao |
参照先 | : |
ののさま
甘酸ですか?酢メインですか
ありがとうございます。
というか、褒められすぎて少し怖いです。
今思う中学生の恋愛って、結構甘酸っぱいですよね
・・・というか甘酸っぱくあってほしいっていう、願望でしょうか。
もう、私の萌ポイントそこなんです。
そこらへん感じていただいてとてもうれしいです。
こちらこそ、これからもよろしくおねがいします!
JUNさま
身に余るほどのお褒めの言葉恐縮です。
というか、「静謐」が読めませんでした(汗
実は、国語が苦手な人間です・・・
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
うちのシンジくんは肌の色が透けたシャツよりも、レイの首筋を伝う水滴にドキドキしてしまうんです。
きっと性癖の違いです。
本当のLRSもなにも、そこはお好みかと・・・
JUNさんの甘々な二人も、とても好きですよ。
長い作品ですか・・蛇足が多くなる気がしてうまくまとまるかどうか。
何事も挑戦でしょうかね!やってみやす。
甘酸ですか?酢メインですか
ありがとうございます。
というか、褒められすぎて少し怖いです。
今思う中学生の恋愛って、結構甘酸っぱいですよね
・・・というか甘酸っぱくあってほしいっていう、願望でしょうか。
もう、私の萌ポイントそこなんです。
そこらへん感じていただいてとてもうれしいです。
こちらこそ、これからもよろしくおねがいします!
JUNさま
身に余るほどのお褒めの言葉恐縮です。
というか、「静謐」が読めませんでした(汗
実は、国語が苦手な人間です・・・
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
うちのシンジくんは肌の色が透けたシャツよりも、レイの首筋を伝う水滴にドキドキしてしまうんです。
きっと性癖の違いです。
本当のLRSもなにも、そこはお好みかと・・・
JUNさんの甘々な二人も、とても好きですよ。
長い作品ですか・・蛇足が多くなる気がしてうまくまとまるかどうか。
何事も挑戦でしょうかね!やってみやす。
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/08/03 15:52 |
投稿者 | : JUN |
参照先 | : |
■naibaoさん
初めまして。とりあえず、
>エヴァと出会ったのは、2年ほど前で
私より早いわけでw私が一年半くらいか前、です。
作品ですが、本当に初めて書いたのかと疑いたくなります。うらやましい。とても。
こういう温度のFFはやっぱりシンジ×レイだからだとも思いますので、その辺踏まえてとても好きです。特に自分はこういうのが描けない人種なので(滝汗)
絶対自分なら肌の色が透けたシャツにドキドキしてしまうシンジを書いてしまうでしょうし。きっとこれが本当のLRSなのだろうな、と。
落ち着いた静謐な文章は、何故か老練さを感じます。シーンとかと合っていてとてもいいかと。
ののさんもおっしゃってますが、長い作品も読んでみたいな、とおねだりだけしておきます(笑)
これからもよろしくお願いします。
初めまして。とりあえず、
>エヴァと出会ったのは、2年ほど前で
私より早いわけでw私が一年半くらいか前、です。
作品ですが、本当に初めて書いたのかと疑いたくなります。うらやましい。とても。
こういう温度のFFはやっぱりシンジ×レイだからだとも思いますので、その辺踏まえてとても好きです。特に自分はこういうのが描けない人種なので(滝汗)
絶対自分なら肌の色が透けたシャツにドキドキしてしまうシンジを書いてしまうでしょうし。きっとこれが本当のLRSなのだろうな、と。
落ち着いた静謐な文章は、何故か老練さを感じます。シーンとかと合っていてとてもいいかと。
ののさんもおっしゃってますが、長い作品も読んでみたいな、とおねだりだけしておきます(笑)
これからもよろしくお願いします。
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/08/03 00:09 |
投稿者 | : のの |
参照先 | : |
はじめまして、nabioさん。
キャリアだけならトップを走る男です。イエーイ!
ののといいます。ここ数年は開店休業に近いですが。
まずは投下ありがとうございます。僕がお礼を言うのもなんですけど、やっぱりご新規さんは常連にも嬉しいモノです。
で、肝心の投下SSですが。
うん、いいじゃないですか!味好み(俺好み)です。
雨の中の二人という設定が大好きというのもありますが、文章の佇まいも合っていていいですね。
>想像以上に近くに彼女の息遣いを感じて居心地がわるい。
ココ!
こういうさじ加減が大好きなんです。甘酸系です。酢メインの甘酢。
褒めてばっかりですけど、ほんとにいいと思いますよ。
もう少し長い尺のも読んでみたいと思いました。
これからもよろしくです。
キャリアだけならトップを走る男です。イエーイ!
ののといいます。ここ数年は開店休業に近いですが。
まずは投下ありがとうございます。僕がお礼を言うのもなんですけど、やっぱりご新規さんは常連にも嬉しいモノです。
で、肝心の投下SSですが。
うん、いいじゃないですか!味好み(俺好み)です。
雨の中の二人という設定が大好きというのもありますが、文章の佇まいも合っていていいですね。
>想像以上に近くに彼女の息遣いを感じて居心地がわるい。
ココ!
こういうさじ加減が大好きなんです。甘酸系です。酢メインの甘酢。
褒めてばっかりですけど、ほんとにいいと思いますよ。
もう少し長い尺のも読んでみたいと思いました。
これからもよろしくです。
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/08/02 23:12 |
投稿者 | : naibao |
参照先 | : |
tambさま
このスレをご覧のみなさま
はじめましてnaibaoと申します。
いつも楽しませていただいている作家さんたちの中に投稿するにあたり
緊張して挨拶が抜けてしまいました。
naibaoと申します。
エヴァと出会ったのは、2年ほど前で、こちらのほとんどのみなさまに比べればにわかです。
一時は熱が覚めた時期もありましたが、破をきっかけに再び盛り上がってしまっています。
こちらの作品はほとんど拝見致しました。
そのうちに自分でも何か書いてみたいという思いが大きくなった矢先(?)にこちらの10周年企画を知りました。
初めての挑戦で試行錯誤しつつなんとか1本書き上げました。
実際やると、ぽんぽん(と言ったら怒られそうですが)素晴らしい作品を生み出される作家さんの凄さを改めて感じました。
10周年(カウントダウン段階ですが)おめでとうございます。
これからも末永くこちらのサイトが続くことを祈りまして挨拶と致します。
ええと、カタイ挨拶になりましたが
どうぞよろしくお願いいたします。
このスレをご覧のみなさま
はじめましてnaibaoと申します。
いつも楽しませていただいている作家さんたちの中に投稿するにあたり
緊張して挨拶が抜けてしまいました。
naibaoと申します。
エヴァと出会ったのは、2年ほど前で、こちらのほとんどのみなさまに比べればにわかです。
一時は熱が覚めた時期もありましたが、破をきっかけに再び盛り上がってしまっています。
こちらの作品はほとんど拝見致しました。
そのうちに自分でも何か書いてみたいという思いが大きくなった矢先(?)にこちらの10周年企画を知りました。
初めての挑戦で試行錯誤しつつなんとか1本書き上げました。
実際やると、ぽんぽん(と言ったら怒られそうですが)素晴らしい作品を生み出される作家さんの凄さを改めて感じました。
10周年(カウントダウン段階ですが)おめでとうございます。
これからも末永くこちらのサイトが続くことを祈りまして挨拶と致します。
ええと、カタイ挨拶になりましたが
どうぞよろしくお願いいたします。
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/08/02 15:07 |
投稿者 | : naibao |
参照先 | : |
今までロムってましたが、勇気を振り絞って投稿いたします。
生まれて初めて書いたので、いろいろ不安です。アドバイスいただけたら死ぬほど嬉しいです。
並んで歩く
2人を包むのは
2人で使うには少し手狭な折り畳み傘と
重力に逆らうことのない水の音
■■■僕に、降る、雨■■■
彼女は真っ直ぐだった。
いつもどおり、制服で
いつもどおり、左手に鞄を提げて
いつもどおり、真っ直ぐ正面を見据えて
いつもどおり、歩調を保ったまま
凛としていた。
傘もささずに、雨なんてまるで気にかけていないようだ。
それでも、雨は彼女の身体を濡らす。
声をかけるべきではない気がした。
彼女の透明な空気を僕が壊してしまいそうで。
そうしている間にも彼女の身体は容赦なく雨で濡らされていく。
制服の白いカッターシャツが水を含んで、肩から肌の色が透けて見える。
ついに僕は体中の勇気の欠片をかき集めて、やっとこさ彼女の名前を絞り出した。
想像以上に近くに彼女の息遣いを感じて居心地がわるい。
だからといって離れすぎると彼女に雨露がかかってしまう。
少しだけ左側に傘を傾けた。
触れあうかどうか、微妙な距離を保って歩く僕たち。
僕の左側には彼女の右側の輪郭。
蒼銀の毛先から雫が真っ白な首筋に伝い、制服のカッターシャツに吸い込まれていった。
――雨、
ふいに発せられた声にどきりとした。
―――あがったわ
いつのまにか雨音がセミの声へと変わっていた。
蝉時雨がいつもよりも耳にさわる。
彼女の体温が消えた僕の左側がじんわりと熱を持った。
生まれて初めて書いたので、いろいろ不安です。アドバイスいただけたら死ぬほど嬉しいです。
並んで歩く
2人を包むのは
2人で使うには少し手狭な折り畳み傘と
重力に逆らうことのない水の音
■■■僕に、降る、雨■■■
彼女は真っ直ぐだった。
いつもどおり、制服で
いつもどおり、左手に鞄を提げて
いつもどおり、真っ直ぐ正面を見据えて
いつもどおり、歩調を保ったまま
凛としていた。
傘もささずに、雨なんてまるで気にかけていないようだ。
それでも、雨は彼女の身体を濡らす。
声をかけるべきではない気がした。
彼女の透明な空気を僕が壊してしまいそうで。
そうしている間にも彼女の身体は容赦なく雨で濡らされていく。
制服の白いカッターシャツが水を含んで、肩から肌の色が透けて見える。
ついに僕は体中の勇気の欠片をかき集めて、やっとこさ彼女の名前を絞り出した。
想像以上に近くに彼女の息遣いを感じて居心地がわるい。
だからといって離れすぎると彼女に雨露がかかってしまう。
少しだけ左側に傘を傾けた。
触れあうかどうか、微妙な距離を保って歩く僕たち。
僕の左側には彼女の右側の輪郭。
蒼銀の毛先から雫が真っ白な首筋に伝い、制服のカッターシャツに吸い込まれていった。
――雨、
ふいに発せられた声にどきりとした。
―――あがったわ
いつのまにか雨音がセミの声へと変わっていた。
蝉時雨がいつもよりも耳にさわる。
彼女の体温が消えた僕の左側がじんわりと熱を持った。
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/08/01 23:29 |
投稿者 | : JUN |
参照先 | : |
「やられたわ」
そう言ったレイの口調は、どこか楽しげですらあった。後頭部に当てられた銃口が、かえってその場の
空気を和らげているようにすら見えた。
辺りを包む蝉時雨が、レイの鼓膜を震わせていた。
蝉時雨
「迂闊だったね」
「そうね」
そう言った後、
「まったく――迂闊だったと言わざるを得ないわ。碇くんに背中を取られるなんて」
「僕も強くなった、ってことじゃない?」
「かもしれないわ。今となっては、あまり――」
ふふ、と押し殺したような笑い声を上げ、
「……関係ないけど」
「そうとも限らない」
「――え?」
レイが疑問の声を上げると、シンジはふっと笑った。
「綾波も知っての通り、今の綾波の運命は、僕が握っている。それ相応のペナルティが、綾波を待ってる。分かるね」
「……ええ」
後頭部に突きつけられたそれを急に意識する。僅かな恐怖を感じた。
「でも、それは綾波にとって歓迎できることじゃない。だから――チャンスをあげる」
「チャンス?」
「そうだ。綾波は、アスカとパートナーを組んでるね」
「……っ、まさか……」
「そう。綾波に――」
背後のシンジはレイの耳元に唇を寄せ、囁いた。
「アスカを、裏切って欲しい」
「な……」
「悪い話じゃない。綾波は最悪の結果を避けられる。僕も――復讐が可能になる」
「復讐?」
「……さっき、カヲル君をロストした」
レイがはっと息を呑む。暫しの沈黙の後、
「そう。アスカが、渚君を……」
「そうだ。だから綾波、これは取引になる。正直、僕一人でアスカをやれる可能性は五分。綾波の協力が
あれば、十中八九成功する。だから――」
「断るわ」
シンジの言葉を遮り、レイは言った。
「私には、アスカを裏切ることなんて、できないもの」
「……そっか。残念だよ――とてもね。でも、これでよかったのかもしれないね」
「そうね。正直、碇くんと別の道を選んだ時から、こうなる気がしてた」
「避けられなかった……ってことかな」
「そう、ね」
「最後に……一つだけ教えて」
「なんだい?」
「私はずっと、碇くんの気配には注意を払っていた。渚君ならともかく、碇くんの気配は、絶対に察知す
る自信があった。でも、気づいたら碇くんは私の後ろに立っていた。あり得ない、とまでは言わないけれ
ど、不自然だわ。どうして……?」
「それは――この、蝉の声だよ」
「蝉?」
「そうだ。この蝉の声が、僕の気配を隠してくれた。木の上で待ち伏せしていても、綾波は気づかなかっ
た。綾波がこの木の下に来た瞬間に、背後に飛び降りる。難しいことじゃない。音を立てずに飛び降りる
くらいの訓練は受けてるからね」
「……そう、そういうこと」
「他に訊きたいことは?」
「ないわ」
「そう。じゃあ――」
「ええ」
夏の日差しに不釣合いな引き金を引く音が、蝉時雨の中静かに響き渡った。
「ファーストを、ロストしました」
「そう。多分、シンジ君ね……」
落ち着いたマヤの声に、ミサトもコーヒーをすすりながら静かに答えた。
「これで、アスカとシンジ君の一騎打ちね」
「そうね」
リツコは皮肉めいた笑みを浮かべ、ミサトに言った。
「けれど、きっと説得しようとしたでしょうね」
「……多分ね。レイがシンジ君に接触してからロストするまで、不自然なくらい時間があった。シンジ君
のことだから、恐らく――」
「寝返り……かしらね」
「多分、そうでしょうね。渚君を倒したと、アスカから報告があった。シンジ君としてはなんとしてもア
スカを倒したいところでしょう。そこでレイに接触。味方につければ、これ以上有効な策はない」
「けれど、レイは受け入れなかった」
「そうね。でも昔のレイなら、恐らく――いえ、ないわね」
「聞かなかったでしょうね」
「そうね。任務の遂行が第一だろうから。今回は友情を取った形」
いつの間にかリツコは煙草に火をつけており、紫煙を吐き出しながらマヤの横に行き、パソコンの画面
に目をやる。
「泣かせる話じゃない。けど、私に言わせれば愚かとしか言いようがないわね。寝返っていれば、最悪の
結果だけは避けられたわ。作戦部長様は、どう考えるのかしら?」
首をこきこきと鳴らしながら、ミサトはアンニュイな笑みを浮かべた。
「悔しいけど、今回ばかりはリツコと同意見ね。折角のチャンス、感情に流されずにいればあるいは、ペ
ナルティを避け、巧く渡っても行けた。軍人としてはあり得ないレベルね」
「あなたがそれを言うのかしら」
「うるさいわね。過ぎたことよ」
「さて……あとは」
「そう。アスカか……シンジ君か」
「結果次第で、今日の一杯の味が決まるわね」
「ま、そうなるわね……」
リツコの吐き出した紫煙はいつまでも、天井にわだかまっていた。
「く、く、悔しい……!バカシンジなんかに……」
「悪いねアスカ。今回ばかりは」
「全く、アスカにやられた時は終わったと思ったよ。でも、シンジ君があだ討ちをしてくれたからね」
「碇くん、今回は強かったわ。あの交渉は魅力的だった。腹黒かったけど」
「だってね、ずっと負けっぱなしだったから、たまには鼻をあかしたくなって。結局綾波は乗ってこなか
ったけど」
「当たり前でしょ!レイはアンタなんかの取引には乗らないわ」
「うーん、残念だなあ。ま、それでも……分かってるよね」
「分かってるわ」
「分かってるわよ。全く、次は見てなさいよ!」
「アスカもたじたじだね。それじゃ……」
カヲルとシンジは声をそろえて、
「ゴチになりまーっす!」
「くぅぅ……!」
こうして『第三回“NERVチルドレンチーム対抗ゴチバトル”』は碇・渚チームの初勝利となった。
「なんにしようかな。カヲル君は何がいい?」
「そうだね。折角アスカとレイちゃんが奢ってくれるんだから、ちょっと高いものを……」
「ちょっと!ラーメンじゃないの!?」
「うーん、仕方ないな。じゃあいつものラーメン屋でいいよ。シンジ君は?」
「まあ、いいかな。次も勝てば済む話だし」
「負けないわよ!次は」
「私も……負けない」
「綾波に通用する交渉術を身につけておくよ」
「……乗らないわ」
「どうかな?」
シンジはくすくすと笑った。
「まあ、次は正々堂々、ね」
「そうね」
そう言ったとき、シンジの前にネギラーメンが運ばれてきた。
「ふう、おなか一杯だよ」
「私も」
レイを送っていく道すがら、シンジは言った。
「綾波って、意外とよく食べるよね」
「そう?」
「そうだよ。いつもお昼食べてなかったから、小食だと思ってた」
「そうでもないわ」
「まあいいと思うよ。綾波細いし。これ以上痩せたら大変だもんね。体重いくら?」
「……女の子に聞いちゃ駄目」
「あ、ごめんごめん」
シンジはゆっくりとレイの背後に回り、くびれた腰に腕を回した。
「じゃ、量ってみよう」
「え……きゃっ」
急に抱え上げられ、レイは小さく叫んだ。
「わ、軽い」
「お、下ろして……」
レイがばたばたと暴れると、シンジはそっと下ろした。
「ごめんね、怒った?」
「……怒ってないけど、びっくりした」
「そっか。でも本当に軽かったよ。ダイエットなんかしちゃ駄目だからね」
「でも、最近お腹がぷにぷにするの」
「そうは思わなかったけどな」
「碇くんが美味しいものばっかり作るから」
「そう言ってくれると嬉しいな。ぷにぷにってこの辺?」
「……そのへん。あんまり触らないで。恥ずかしいから」
「…………この辺は?」
「やんっ」
レイがじとっとシンジを睨むと、シンジはまた明るく笑った。
「ぷにぷにしてたよ。初めて触ったときより軟らかいね」
「……ばか」
「さ、行こう?もう真っ暗だよ」
腑に落ちない表情ながら、レイはシンジの手を取った。
夜になると、あれほどうるさかった蝉時雨は去り、代わりに河鹿蛙が鳴き始めていた。
「どのくらいぷにぷにしてるか、後でじっくり確かめてあげるから」
「……せくはらおやぢ」
「ひどいな、それ」
シンジの手は初めて握ったあの時と同じで、とても暖かかった。
そう言ったレイの口調は、どこか楽しげですらあった。後頭部に当てられた銃口が、かえってその場の
空気を和らげているようにすら見えた。
辺りを包む蝉時雨が、レイの鼓膜を震わせていた。
蝉時雨
「迂闊だったね」
「そうね」
そう言った後、
「まったく――迂闊だったと言わざるを得ないわ。碇くんに背中を取られるなんて」
「僕も強くなった、ってことじゃない?」
「かもしれないわ。今となっては、あまり――」
ふふ、と押し殺したような笑い声を上げ、
「……関係ないけど」
「そうとも限らない」
「――え?」
レイが疑問の声を上げると、シンジはふっと笑った。
「綾波も知っての通り、今の綾波の運命は、僕が握っている。それ相応のペナルティが、綾波を待ってる。分かるね」
「……ええ」
後頭部に突きつけられたそれを急に意識する。僅かな恐怖を感じた。
「でも、それは綾波にとって歓迎できることじゃない。だから――チャンスをあげる」
「チャンス?」
「そうだ。綾波は、アスカとパートナーを組んでるね」
「……っ、まさか……」
「そう。綾波に――」
背後のシンジはレイの耳元に唇を寄せ、囁いた。
「アスカを、裏切って欲しい」
「な……」
「悪い話じゃない。綾波は最悪の結果を避けられる。僕も――復讐が可能になる」
「復讐?」
「……さっき、カヲル君をロストした」
レイがはっと息を呑む。暫しの沈黙の後、
「そう。アスカが、渚君を……」
「そうだ。だから綾波、これは取引になる。正直、僕一人でアスカをやれる可能性は五分。綾波の協力が
あれば、十中八九成功する。だから――」
「断るわ」
シンジの言葉を遮り、レイは言った。
「私には、アスカを裏切ることなんて、できないもの」
「……そっか。残念だよ――とてもね。でも、これでよかったのかもしれないね」
「そうね。正直、碇くんと別の道を選んだ時から、こうなる気がしてた」
「避けられなかった……ってことかな」
「そう、ね」
「最後に……一つだけ教えて」
「なんだい?」
「私はずっと、碇くんの気配には注意を払っていた。渚君ならともかく、碇くんの気配は、絶対に察知す
る自信があった。でも、気づいたら碇くんは私の後ろに立っていた。あり得ない、とまでは言わないけれ
ど、不自然だわ。どうして……?」
「それは――この、蝉の声だよ」
「蝉?」
「そうだ。この蝉の声が、僕の気配を隠してくれた。木の上で待ち伏せしていても、綾波は気づかなかっ
た。綾波がこの木の下に来た瞬間に、背後に飛び降りる。難しいことじゃない。音を立てずに飛び降りる
くらいの訓練は受けてるからね」
「……そう、そういうこと」
「他に訊きたいことは?」
「ないわ」
「そう。じゃあ――」
「ええ」
夏の日差しに不釣合いな引き金を引く音が、蝉時雨の中静かに響き渡った。
「ファーストを、ロストしました」
「そう。多分、シンジ君ね……」
落ち着いたマヤの声に、ミサトもコーヒーをすすりながら静かに答えた。
「これで、アスカとシンジ君の一騎打ちね」
「そうね」
リツコは皮肉めいた笑みを浮かべ、ミサトに言った。
「けれど、きっと説得しようとしたでしょうね」
「……多分ね。レイがシンジ君に接触してからロストするまで、不自然なくらい時間があった。シンジ君
のことだから、恐らく――」
「寝返り……かしらね」
「多分、そうでしょうね。渚君を倒したと、アスカから報告があった。シンジ君としてはなんとしてもア
スカを倒したいところでしょう。そこでレイに接触。味方につければ、これ以上有効な策はない」
「けれど、レイは受け入れなかった」
「そうね。でも昔のレイなら、恐らく――いえ、ないわね」
「聞かなかったでしょうね」
「そうね。任務の遂行が第一だろうから。今回は友情を取った形」
いつの間にかリツコは煙草に火をつけており、紫煙を吐き出しながらマヤの横に行き、パソコンの画面
に目をやる。
「泣かせる話じゃない。けど、私に言わせれば愚かとしか言いようがないわね。寝返っていれば、最悪の
結果だけは避けられたわ。作戦部長様は、どう考えるのかしら?」
首をこきこきと鳴らしながら、ミサトはアンニュイな笑みを浮かべた。
「悔しいけど、今回ばかりはリツコと同意見ね。折角のチャンス、感情に流されずにいればあるいは、ペ
ナルティを避け、巧く渡っても行けた。軍人としてはあり得ないレベルね」
「あなたがそれを言うのかしら」
「うるさいわね。過ぎたことよ」
「さて……あとは」
「そう。アスカか……シンジ君か」
「結果次第で、今日の一杯の味が決まるわね」
「ま、そうなるわね……」
リツコの吐き出した紫煙はいつまでも、天井にわだかまっていた。
「く、く、悔しい……!バカシンジなんかに……」
「悪いねアスカ。今回ばかりは」
「全く、アスカにやられた時は終わったと思ったよ。でも、シンジ君があだ討ちをしてくれたからね」
「碇くん、今回は強かったわ。あの交渉は魅力的だった。腹黒かったけど」
「だってね、ずっと負けっぱなしだったから、たまには鼻をあかしたくなって。結局綾波は乗ってこなか
ったけど」
「当たり前でしょ!レイはアンタなんかの取引には乗らないわ」
「うーん、残念だなあ。ま、それでも……分かってるよね」
「分かってるわ」
「分かってるわよ。全く、次は見てなさいよ!」
「アスカもたじたじだね。それじゃ……」
カヲルとシンジは声をそろえて、
「ゴチになりまーっす!」
「くぅぅ……!」
こうして『第三回“NERVチルドレンチーム対抗ゴチバトル”』は碇・渚チームの初勝利となった。
「なんにしようかな。カヲル君は何がいい?」
「そうだね。折角アスカとレイちゃんが奢ってくれるんだから、ちょっと高いものを……」
「ちょっと!ラーメンじゃないの!?」
「うーん、仕方ないな。じゃあいつものラーメン屋でいいよ。シンジ君は?」
「まあ、いいかな。次も勝てば済む話だし」
「負けないわよ!次は」
「私も……負けない」
「綾波に通用する交渉術を身につけておくよ」
「……乗らないわ」
「どうかな?」
シンジはくすくすと笑った。
「まあ、次は正々堂々、ね」
「そうね」
そう言ったとき、シンジの前にネギラーメンが運ばれてきた。
「ふう、おなか一杯だよ」
「私も」
レイを送っていく道すがら、シンジは言った。
「綾波って、意外とよく食べるよね」
「そう?」
「そうだよ。いつもお昼食べてなかったから、小食だと思ってた」
「そうでもないわ」
「まあいいと思うよ。綾波細いし。これ以上痩せたら大変だもんね。体重いくら?」
「……女の子に聞いちゃ駄目」
「あ、ごめんごめん」
シンジはゆっくりとレイの背後に回り、くびれた腰に腕を回した。
「じゃ、量ってみよう」
「え……きゃっ」
急に抱え上げられ、レイは小さく叫んだ。
「わ、軽い」
「お、下ろして……」
レイがばたばたと暴れると、シンジはそっと下ろした。
「ごめんね、怒った?」
「……怒ってないけど、びっくりした」
「そっか。でも本当に軽かったよ。ダイエットなんかしちゃ駄目だからね」
「でも、最近お腹がぷにぷにするの」
「そうは思わなかったけどな」
「碇くんが美味しいものばっかり作るから」
「そう言ってくれると嬉しいな。ぷにぷにってこの辺?」
「……そのへん。あんまり触らないで。恥ずかしいから」
「…………この辺は?」
「やんっ」
レイがじとっとシンジを睨むと、シンジはまた明るく笑った。
「ぷにぷにしてたよ。初めて触ったときより軟らかいね」
「……ばか」
「さ、行こう?もう真っ暗だよ」
腑に落ちない表情ながら、レイはシンジの手を取った。
夜になると、あれほどうるさかった蝉時雨は去り、代わりに河鹿蛙が鳴き始めていた。
「どのくらいぷにぷにしてるか、後でじっくり確かめてあげるから」
「……せくはらおやぢ」
「ひどいな、それ」
シンジの手は初めて握ったあの時と同じで、とても暖かかった。
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/07/30 21:19 |
投稿者 | : JUN |
参照先 | : |
ふと思いついたままの勢いで書いたので微妙は微妙(^^;)
勘弁してくだせえ
勘弁してくだせえ
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/07/30 18:03 |
投稿者 | : JUN |
参照先 | : |
キス、してください
もしもあなたとの距離が遠いなら、あなたが私のことを見てくれないなら、私があなたの側にいる意味
はない……――
「ねえ、碇くん」
「なに?綾波」
束の間の昼休み、そうレイが声をかけると、シンジは優しく答えた。
「…………」
しかしシンジの思いに反して、なにやらレイは切なげな表情をしている。
「どうしたの?綾波」
「……なんでもない」
言うやいなや立ち去ってしまったレイに、シンジは首を傾げた。
――何かあったのかな?
シンジは心配になった。ややもすればストレスを溜め込みがちになるレイである。何か悩みがあるなら
手伝ってあげたい、とシンジは思った。ましてレイは無二の恋人である。愛しい彼女の悩みは、自分も共
有してあげたかった。
しかし当面の相談はアスカにするのだろう、きっと。昔の仲の悪さからは考えられないほど、今二人は
良好な人間関係を築き上げている。何かあれば、きっと自分にもアクションがある。
その時、シンジの携帯電話が鳴った。
「はい、もしもし」
『もしもし、シンジ君?』
「はい。どうしたんですか、ミサトさん」
『ブッ――ツー、ツー、ツー』
「……切れたし」
悪戯か、だとすればたちが悪い。しかしミサトがそんなことをするとも考えづらいので、きっと充電切
れか何かなのだろう。そう結論付けたシンジが、携帯電話をしまおうとすると、
また電子音が鳴り響いた。
「はい、もしもし」
『もしもし、シンジ君』
「はい。どうしたんですリツコさん、急に。さっきもミサトさんが――」
『ブッ――ツー、ツー、ツー』
「……何なんだよ」
二度目となると、流石に何か作為的なものを疑わざるを得ない。次電話があって同じことになったら怒
ってやろうと軽く心に決めつつ、シンジは自分の席に腰を下ろした。
「ねえ、バカシンジ」
「なんだよ、アスカ」
「何よ、このアタシが話しかけてんのに、その態度。まあいいわ。明日のお弁当、ハンバーグがいい」
「分かった。でも綾波のも作るから、豆腐ハンバーグとかいいかな」
「相変わらずベッタリね~、鬱陶しいくらい。で、なにそれ、美味しいの?」
「多分ね」
「ま、アンタのことだからまずいもんは作んないでしょ。期待しとくわ」
「はいはい」
「ねえ、碇君」
「どうしたの、委員長」
「今週は週番だから、よろしくね。綾波さんと」
「分かった」
「それじゃ」
「うん」
「なあ、センセ」
「なに、トウジ」
「ケンスケがな、新しいゲーム買ったらしいねん。しにいこうや」
「いいね、また予定空けとくよ」
「分かった。ほなな」
「うん」
「なあ、シンジ」
「なに、ケンスケ」
「今度シンジん家で勉強しようぜ」
「珍しいね、ケンスケが勉強なんて…………あ、そういうことか」
「ミサトさんによろしく言っといてよ」
「あの人結構だらしないよ」
「いいさ、そこがまたいいんじゃないか」
「そんなもんかな」
「そうだよ。だから、よろしくな」
「うん、わかった」
「やあ、シンジくん」
「どうしたの?カヲル君」
「いや、それだけ分かればいいよ。また今度ご飯でも食べに行こう」
「あ、うん……」
なんなんだ、今日は。なんだかんだで自分が接点を持つ全てのヒトと話した気分だ。
そんなことを考えていると、また電子音が鳴り響いた。流石にたまりかねたシンジは通話口に向けて怒
鳴った。
「ああもう!うるさい!!」
『ぴゃっ!?』
「えっ」
通話口から聞こえてきたどこか抜けて聞こえる声は、多分――
「マヤさん?」
『え、ええ。ごめんね、シンジ君』
何だ、マヤさんか。彼女なら大歓迎である。シンジ(作者)にとってレイに続く心のオアシスだったり
するのだから。
「すいません。誰かの悪戯と勘違いしまして。何かごようですか?何でも言ってください」
その差はなんだ、と言いたいのは、きっと作者だけではないはずだ。けれどそれは甘んじて受けねばな
らぬ。主人公なのだから。
『あ、あのね……シンジ君』
「はい」
『ご、ごめんなさい!』
ガチャッ
――なんだろう、このフられた感じ
いいさ、僕には綾波がいる。あの綺麗な眼を思うだけでどんな辛いことにも耐えられるさ。
そんなことを考えながら後ろを向くと、ちょうどレイが背後に立っていた。嬉しくなったシンジは声をか
ける。
「ねえ、綾波――」
言いかけて、シンジの声が止まった。様子がおかしい。唇を軽く噛み締め、シンジが大好きな真紅の眸
は心なしか潤んでいる。
「どうしたの?」
「碇くん。私、もうあなたと、いられない……」
長いまつげに縁取られたレイの大きな眸から、大粒の涙がこぼれ落ちる。思いがけないことに、シンジ
は焦った。
「な、何言ってるんだよ綾波!急に」
「だって、私……」
顔を伏せてしまったレイの側に行き、そっとその細い手首を握った。
「どうしたの、綾波。言ってごらん」
「……碇くん、アスカのこと、なんて呼ぶ?」
心持ち顔を上げ、レイが言った。
「え……アスカ、だけど」
「ヒカリさんの、ことは?」
「委員長、だね……」
「葛城三佐は?」
「ミサトさん」
「赤木博士は?」
「リツコさん、かな」
「伊吹ニ尉は?」
「マヤさん」
「渚くんは?」
「カヲル君、って呼ぶね」
大きくしゃくりあげ、レイは最後に言った。
「私の、ことは?」
「……綾波」
「うっ、うっ……」
「だからなんでそこで泣くの?」
「わ、私だけ……あだ名でも、下の名前でもない……うっ」
「へ?」
「他の人は、みんな、違うのに……」
「――それだけ?」
シンジはぽかんと、その場に立ち尽くした。正直慰めてやる気が起きづらいのは何故だろう。
「正直、何が駄目なのか分からないんだけど……」
「うっ、私だけ、他人行儀……私たち、恋人同士なのに…………」
言って崩れ落ちてしまった。流石のシンジも段々良心が痛んでくる。周りの視線が辛い。
「綾波、立って」
膝をついたシンジは、レイの肩を掴んで立ち上がらせる。足に力が入っていないらしく、そのままシン
ジの胸に倒れこんだ。その背中を、シンジはぎゅっと抱き締める。
「……あぅ」
「……馬鹿だよ。綾波は。他人行儀なわけないじゃないか。綾波は、僕の一番大事なひとなんだから……」
「でも、でも……」
「あのね……綾波。呼び方なんて、些細なことなんだよ。心配しないで。それに……」
「そ、それに……?」
「――僕は大好きだよ、綾波っていう名前。すごく、綺麗だから……」
「ほ……ほんとう?」
「うん、漢字も綺麗だし。だから僕は、ずっと君の事を綾波って呼んでるんだよ……」
「碇くん……」
「だから、心配しないで。綾波が、一番だから……」
「うっ、いかりく、ごめんなさ――」
「謝らないで、綾波。心配させた僕が悪いんだ。だから…………一つだけ、綾波の言うこと、何でも聞い
てあげる……」
レイが胸の中からほんの少しだけ顔を上げ、シンジを見た。紅い眸はうるうると揺れ、動揺を物語って
いた。
「だ、だったら……」
「なに?」
「キス、してください……」
「こ、ここで……?」
レイはこく、と首肯した。
「みんなが、見てるけど――」
「みんなが見てる方がいい……碇くんがどこにも行かないように、私以外の女の人、見てほしくないから……」
背中に強い視線を感じる。殺気、と言ってもいい。綾波ファンはアスカファンに並んで多いのだ。今で
も時折告白されていると聞く。無論全て断っているとも聞くが。
「誰にも、取られたくないから……!」
「……分かった、キス、するよ。目を閉じて、綾波」
レイがゆっくりと目を閉じて顎を突き出すと、シンジはレイの頭を抱き寄せた。シンジの方が背が高い。
レイはほんの少しだけ背伸びをした。
背後から、あぁ、と脱力したような声が漏れるが、シンジの耳には入っていなかった。どうでもよかっ
た。ほんのりと暖かい彼女の唇はしっとりと濡れていて、色気にも似たものを備え始めていた。
「んん……」
レイの口から甘く、押し殺したような声が漏れる。レイが満足して唇を離すまで、シンジはずっと彼女
の頭を抱きかかえつづけた。
「満足、した?」
「……すごく。私、幸せ」
シンジが腕に籠めた力を少し緩めると、レイがまた崩れ落ちそうになった。
「あ、綾波?」
「……ごめんなさい。力が、はいらな……」
「無理しないで、綾波」
シンジは一瞬悪戯っぽく微笑み、レイの膝に腕を回すと、そのまま抱きかかえた。
「きゃっ」
「軽いね、綾波」
お姫様抱っこをされたレイは、顔を真っ赤にした。
「碇くん、恥ずかし……」
「なにが?」
「こ、こんなの……」
シンジは優しくレイを見つめた後、耳元でそっと囁く。
「かわいいよ、綾波…………綾波が言ったんだよ。自分だけを見て欲しいって」
「で、でも……」
「……そうだ、綾波。呼び方が不安って言ったね」
「うん……」
「心配しなくても、いつか綾波のことを名前で呼ぶようになるよ……」
「え……?」
「だって、綾波は……」
少し深めにレイを抱きかかえ、シンジは言った。
「僕の、将来のお嫁さんだからね……」
「ほんとう……?」
「本当だよ」
もう一度だけ口付け、シンジはそのまま言った。
「愛してるよ…………レイ」
「いか――シンジ、大好き…………!」
「もー帰れよあんた等……」
アスカの声は、どこまでも説得力を帯びて、教室に響いた。
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/07/28 18:32 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
上の書き込みはyo1さんがフライングで投下した作品をtambが転載したものです。
当該スレは削除してありますが、せっかくなのでレスも転載して晒しておきます(笑)。
-------ここから-------
ごめんなさい ( No.1 )
日時: 2010/07/27 13:47
名前: yo1
ごめんなさい><
ごめんなさい><
間違って、ここに投稿しちゃった;;
8月のお題です・・・
Re: 蝉時雨 ( No.2 )
日時: 2010/07/27 15:46
名前: tamb
> スレは毎月一日前後に立てます。スレが立つのを待って投下して下さい。
って書いてあるじゃねぇか!(爆)
というわけで、要項の該当個所を赤字太字にしてみましたw
作品はスレ立て後に該当スレに移動し、このスレは削除いたします。スレ立ては明日くらい。
そんなことでよろしく。
-------ここまで-------
当該スレは削除してありますが、せっかくなのでレスも転載して晒しておきます(笑)。
-------ここから-------
ごめんなさい ( No.1 )
日時: 2010/07/27 13:47
名前: yo1
ごめんなさい><
ごめんなさい><
間違って、ここに投稿しちゃった;;
8月のお題です・・・
Re: 蝉時雨 ( No.2 )
日時: 2010/07/27 15:46
名前: tamb
> スレは毎月一日前後に立てます。スレが立つのを待って投下して下さい。
って書いてあるじゃねぇか!(爆)
というわけで、要項の該当個所を赤字太字にしてみましたw
作品はスレ立て後に該当スレに移動し、このスレは削除いたします。スレ立ては明日くらい。
そんなことでよろしく。
-------ここまで-------
件名 | : Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・八月 |
投稿日 | : 2010/07/28 18:31 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
日時: 2010/07/27 12:07
名前: yo1
蝉時雨
作:yo1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今年も夏が来た…
巡る時に思い出は色あせ、何時かは忘れてしまう…
忘れられた思い出は、どこに行ってしまうのだろう…
今年も夏が来た…
また君に会える季節が来た…
僕は永遠に忘れない、君の事だけは…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「綾波、麦茶でいいかな?」
シンジの問いに、レイはコクンと頷いた。
和室の中央に置かれた円卓、向かい合わせに座布団が置かれ、窓を背にした方にレイが座っていた。開けた窓から入る風で、少しでも涼しい様にと、シンジが気をつかったのだ。純白のワンピースを着たレイの後ろに、夏の青空が見えている。時折入る風が、レイの美しい蒼い髪を揺らした。
シンジが麦茶を準備して運んでくるのを、レイは微笑みながら眺めている。
「お待たせ」
レイの前に冷えたグラスを置くと、「よいしょ」っと、シンジは自分の座布団に座った。すると、レイがクスクスと笑う。
「ん?どうしたの?」
「碇君、まるでオジサンみたいよ」
「えー!酷いなー 綾波」
レイは、またクスクスと笑う。
シンジは、頬っぺたを膨らますと、怒ったふりをした。
「怒ってる碇君も素敵よ」そう言って、レイは麦茶を一口飲んだ。
「もー!からかわないでよ~」そう言って、シンジは楽しそうに笑った。
暫く無言で見つめ合う二人。窓は大きく開けてあるのに、とても静かだった。
「綾波…とても綺麗だよ」
シンジが頬を染めて言った。
「ありがとう…碇君…」
レイも頬をピンクに染めて、嬉しそうに目を細めた。
二人一緒に麦茶を一口飲むと、シンジが話し始めた。
「昨日トウジから聞いたんだけど、洞木さんにプロポーズしたらしいよ」
「そう…ヒカリさん、喜んだでしょうね、二人には、幸せになってほしいわ」
「うん、そうだね。トウジの奴、凄く緊張したって言ってよ」
レイがクスリと笑った。
「ケンスケはさ、未だに軍艦とか追いかけてるんだよ」
「そう」
「だからね、いっその事、入隊したらって言ったらね、『趣味は仕事にしたくない』って、言うんだ」
「相田君らしいわね」
「そうだね」
シンジとレイは、視線を合わせると、楽しそうに笑った。
「碇君、笑ったら、相田君に失礼よ、ふふ」
「あはは、綾波だって笑ってるじゃないか」
レイは目じりの笑い涙を拭くと、澄ました表情で「笑ってないわ」と言って、また笑った。
「アスカは、ドイツの研究所で頑張ってるみたいだよ、時々メールくれるんだ」
「そう、惣流さんなら、きっと成功すると思うわ」
「そうだね、アスカは頭がいいから、何時か凄い発見とかして有名になるかもね」
「そうね、楽しみね」
苦しい時期を、共に戦った三人は、かたい絆で結ばれていた。どんなに遠く離れて会えなくとも、心は繋がっている。永遠の絆…
グラスの氷が、カランと音を立てた。
シンジとレイは、時を忘れて、おしゃべりを楽しんだ。
気が付くと、窓から見えていた青空は、夕焼けに変わっていた。
「碇君…もう…時間だわ」
「………」
シンジは、俯いて何も言えなくなった。
「碇君…顔を見せて…わたし、碇君の笑顔が好きよ…」
シンジは、両手を握り締め、気力を振り絞って顔を上げ、この時のために練習してきた、最高の笑顔をレイに見せた。
「…ありがとう…碇君…」
「…綾波…」
レイは、優しく微笑むと、少しかすれた声で言った。
「…碇君…さよなら…」
シンジの肩が震え始め、我慢していた涙が頬を流れ落ちた。
「…さよなら…なんて…悲しいこと…言う…なよ…」
今まで座っていた所にレイの姿は無く、空になったグラスの前に置かれた、小さな写真たての中で、蒼い髪の少女が笑っていた。何時の間に鳴き出したのか、ヒグラシの鳴き声が蝉時雨となり、一人残されたシンジを包んだ。シンジは泣いた、声を上げて泣いた。年に一度だけ…そう、一度だけ会いに来てくれる彼女を思い泣いた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前: yo1
蝉時雨
作:yo1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
今年も夏が来た…
巡る時に思い出は色あせ、何時かは忘れてしまう…
忘れられた思い出は、どこに行ってしまうのだろう…
今年も夏が来た…
また君に会える季節が来た…
僕は永遠に忘れない、君の事だけは…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「綾波、麦茶でいいかな?」
シンジの問いに、レイはコクンと頷いた。
和室の中央に置かれた円卓、向かい合わせに座布団が置かれ、窓を背にした方にレイが座っていた。開けた窓から入る風で、少しでも涼しい様にと、シンジが気をつかったのだ。純白のワンピースを着たレイの後ろに、夏の青空が見えている。時折入る風が、レイの美しい蒼い髪を揺らした。
シンジが麦茶を準備して運んでくるのを、レイは微笑みながら眺めている。
「お待たせ」
レイの前に冷えたグラスを置くと、「よいしょ」っと、シンジは自分の座布団に座った。すると、レイがクスクスと笑う。
「ん?どうしたの?」
「碇君、まるでオジサンみたいよ」
「えー!酷いなー 綾波」
レイは、またクスクスと笑う。
シンジは、頬っぺたを膨らますと、怒ったふりをした。
「怒ってる碇君も素敵よ」そう言って、レイは麦茶を一口飲んだ。
「もー!からかわないでよ~」そう言って、シンジは楽しそうに笑った。
暫く無言で見つめ合う二人。窓は大きく開けてあるのに、とても静かだった。
「綾波…とても綺麗だよ」
シンジが頬を染めて言った。
「ありがとう…碇君…」
レイも頬をピンクに染めて、嬉しそうに目を細めた。
二人一緒に麦茶を一口飲むと、シンジが話し始めた。
「昨日トウジから聞いたんだけど、洞木さんにプロポーズしたらしいよ」
「そう…ヒカリさん、喜んだでしょうね、二人には、幸せになってほしいわ」
「うん、そうだね。トウジの奴、凄く緊張したって言ってよ」
レイがクスリと笑った。
「ケンスケはさ、未だに軍艦とか追いかけてるんだよ」
「そう」
「だからね、いっその事、入隊したらって言ったらね、『趣味は仕事にしたくない』って、言うんだ」
「相田君らしいわね」
「そうだね」
シンジとレイは、視線を合わせると、楽しそうに笑った。
「碇君、笑ったら、相田君に失礼よ、ふふ」
「あはは、綾波だって笑ってるじゃないか」
レイは目じりの笑い涙を拭くと、澄ました表情で「笑ってないわ」と言って、また笑った。
「アスカは、ドイツの研究所で頑張ってるみたいだよ、時々メールくれるんだ」
「そう、惣流さんなら、きっと成功すると思うわ」
「そうだね、アスカは頭がいいから、何時か凄い発見とかして有名になるかもね」
「そうね、楽しみね」
苦しい時期を、共に戦った三人は、かたい絆で結ばれていた。どんなに遠く離れて会えなくとも、心は繋がっている。永遠の絆…
グラスの氷が、カランと音を立てた。
シンジとレイは、時を忘れて、おしゃべりを楽しんだ。
気が付くと、窓から見えていた青空は、夕焼けに変わっていた。
「碇君…もう…時間だわ」
「………」
シンジは、俯いて何も言えなくなった。
「碇君…顔を見せて…わたし、碇君の笑顔が好きよ…」
シンジは、両手を握り締め、気力を振り絞って顔を上げ、この時のために練習してきた、最高の笑顔をレイに見せた。
「…ありがとう…碇君…」
「…綾波…」
レイは、優しく微笑むと、少しかすれた声で言った。
「…碇君…さよなら…」
シンジの肩が震え始め、我慢していた涙が頬を流れ落ちた。
「…さよなら…なんて…悲しいこと…言う…なよ…」
今まで座っていた所にレイの姿は無く、空になったグラスの前に置かれた、小さな写真たての中で、蒼い髪の少女が笑っていた。何時の間に鳴き出したのか、ヒグラシの鳴き声が蝉時雨となり、一人残されたシンジを包んだ。シンジは泣いた、声を上げて泣いた。年に一度だけ…そう、一度だけ会いに来てくれる彼女を思い泣いた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm
今月のお題は
・蝉時雨
・キスしてください
です。では、どうぞ。