「綾波レイの幸せ」掲示板 四人目/小説を語る掲示板・ネタバレあり注意
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fld_nor.gif サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
投稿日 : 2010/11/02 04:40
投稿者 tamb
参照先
月々のお題に沿って適当に書いて投下して頂こうという安易な企画です。作品に対するものは
もちろん、企画全体に対する質問や感想等もこのスレにどうぞ。詳細はこちらをご覧下さい。
http://ayasachi.sweet-tone.net/kikaku/10y_anv_cd/10y_anv_cd.htm

今月のお題は

・息も絶え絶え
・こんにちは、使徒です。いつもお世話になってます。
・雨を見たかい

です。
八月~十月の企画及び1111111ヒット記念企画も鋭意継続中です。

お題の困難さに拍車がかかってますが、頑張ってください。私も頑張ります。
では、どうぞ。
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123>
件名 Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
投稿日 : 2011/05/28 10:35
投稿者 calu
参照先
■tambさん
>既に無意味なのか難解なのかすら判然としない(笑)。
無意味です(笑)。単にタン塩さんの作品に反応しただけでして(爆)。
>レイの買うギターの方が高額なのはなぜだ!
「決済するの、碇くんの口座だもの」

■タン塩さん
>綾波さんはギブソン党なのか!?
あい。出ないっすかねー、カスタムショップから白カスのレイギター。
白いからイメージはぴったりだと思うんですが。買えないだろうけど(笑)。
>まさかcaluさんは白カスを!?
VOSを物色しようとした時には既に完売ですた…。

■tomoさん
読んでいただき有難うございました!
ギターの世界にようこそ、なんて。なんとも特殊な世界ではありますが、
綾波さんも少しづつ機材をシンジくんに内緒で買い揃えているらしいので、
またこのシリーズで投下したいです。タン塩さんの作品をトリガーにして(爆)。
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件名 Re: サイト開設十周年カウントダ
投稿日 : 2011/05/21 20:18
投稿者 タン塩
参照先
tomoさんありがとうございます。そもそも発表するつもりじゃなかったんですが、
某tambさんが「いいから載せろ」とご無体な命令を(笑)

という訳でロリー・ギャラガーの動画を。この動画は伝説のアイリッシュツアー
1974ですね。冒頭の観客の盛り上がりがハンパないですが、その背景を最近知り
ました。
当時のアイルランドは北アイルランド問題でテロが相次ぎ、経済もガタガタで失
業率がすごく、職のない若者が街頭で暴動を起こす状況でした。
ロリーのベルファストでのライヴ当日に同時多発爆弾テロが起きて大騒ぎになり、
交通もマヒしたためライヴ中止の話が出たが、夕方になるとチケットを持った若
者達がライヴ会場を取り囲んで騒ぎ始めたため、中止すると暴動が起きるかもし
れないということでライヴが決行されました。この動画の観客の熱さはそういう
背景のある、いわば切羽詰まった熱さなんですね。ロリーのファン層は、失業し
た若者層そのものですから。そして、そんなファンを前にして男臭さムンムンの
ロリー。たまんねっす。

『いれずみの女』
http://www.youtube.com/watch?v=rDNP-NEe2C8
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件名 Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
投稿日 : 2011/05/19 17:46
投稿者 tomo
参照先
■ギターの話

 tambさん,caluさん,タン塩さんのお話がディープすぎてついていけない(笑)
 でも,tambさんが紹介してくださった映画の映像はすごく面白かったです。

 ギターバトルというのをはじめてみたんですけど,映画の演出がちゃんとしているから,見ていて意味がわかる。
 最初の小手調べのような掛け合い,その後,悪魔の手先と踊り子のお姉さんの共演,それに対応するかのように,主人公と老人の二人組。
 そして,圧倒的な力を見せつけられて負けそうになる主人公とそれを覆す見事な最後。

 シーケンスがしっかりしているから(たとえば老人の演技で主人公が不利になっていることが分かる),ギターについてそれほど詳しくなくともちゃんと意味がわかる。すごいなって思いました。
 
 ……あ,作品の感想じゃなくなってる。
 すいません(爆)
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件名 Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
投稿日 : 2011/05/15 14:39
投稿者 タン塩
参照先
■caluさん
ランディ白カスで来たか!綾波さんはギブソン党なのか!?
ちなみにムスでなくデュオソニを買ったのは、まさにチューニングの問題です。
なんせムスのダイナミック・ビブラートは、チョーキングだけで狂うという噂の
ある危険な奴です。一方デュオソニはチューニングは問題なし。チューニングが
狂わなくて値段が安いと来ればデュオソニ買うでしょう(笑)ちなみにファイア
バードもギャラガーストラトも持ってない!まさかcaluさんは白カスを!?

■tambさん
ドサ健や坊や哲や哭きの竜!あんた、背中が煤けてるぜ……
しかしクロスロード(映画)。いかがなものか的な意見多発の問題作。ヴァイが出
ると聞いて見に行って悶絶とか、あんなR&B臭いウィリーブラウンがあるかとか
多方面からのツッコミに曝されましたな。

というわけでウィリーブラウン。
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件名 Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
投稿日 : 2011/05/12 19:04
投稿者 tamb
参照先
■息も絶え絶え/タン塩
( No.18 )

 ジョニーウィンター萌えの綾波さんというネタはちょっと前にリークがあって、確か煽った
ような覚えがある。で、そのネタがここに結実。この無意味さが実にいい(笑)。

 いわゆる麻雀漫画(劇画)というものがある。これにはヤクザ同士の抗争の決着を麻雀でつ
けるという物で、なぜ麻雀で決着がつくのかは謎に満ちているが、一定程度以下の抗争であれ
ばやたらと血で血を洗うよりは遺恨を残さないというヤクザの智恵なのであろうと思われる。
いずれにせよ異常に麻雀の強い構成員というのもそうそういるわけはないので、健とか哲とか
竜とかそういう才能を代打ちとして雇って戦うわけだ。

 ジョニーとロリーのどちらが漢かという論争の決着をギターバトルでつけるというのは、上
記のような抗争を麻雀でつけるというよりははるかに分かりやすく必然性もある。だが途中か
ら違うバトルになるというのはヤクザが抗争の決着を麻雀でつけるよりもはるかに深い断絶が
あると言わねばならない(笑)。その違うバトルがどのようなバトルなのかにもよるが、恐らく
ギターは置かねばならぬであろうし。
 私の経験だと、アマチュアがギターバトルを行った場合、演奏技術やフレーズというよりも
音量勝負に向かう傾向がある(笑)。音がでかい方が勝ちである。レイとシンジのバトルもその
方向に向かったとすると、近隣から苦情がきたという可能性は想像に難くなく、それがギター
を置いたきっかけになった可能性はある。繰り返しになるがその違うバトルがどのようなバト
ルかにもよるのだが、バトルである以上それなりの音声は発せられた可能性は否定できず、そ
れはそれで近隣にとっては迷惑な話ではある。そういやドクター秩父山にそんなバトルのネタ
があったなと不意に思い出した。

 話をギターバトルに戻すが、前にもちょっと書いたような覚えがあるがギターバトルという
とクロスロードという映画を思い出す。映画のネタバレをどこまで書いていいのかは悩ましい
が、終盤で主人公が悪魔の手先とギター対決をするわけだ。この悪魔の手先を演じているのが
なんとスティーヴ・ヴァイである。スティーヴ・ヴァイ、ルックスがいかにも悪魔っぽいのも
素晴らしいが、演技力も実に素晴らしい。普通の演技も素晴らしいが、ギターを下手に弾くと
いう技術も驚異的なものがある。これには感動した。本当に弾けないように見える(笑)。
 ちなみに主人公の少年はラルフ・マッチオという『ベスト・キッド』という映画の少年なん
だが、そんな超絶ギターテクを持ってるはずもなく、実際のギター演奏は大部分は音楽監督で
あるライ・クーダーが弾いている。ギターバトル部分もライ・クーダーが弾いてると思ってた
んだが、最後の部分はスティーヴ・ヴァイが弾いてるとwikiに書いてあった。いずれにせよ、
少年の当て振りの技術も素晴らしい。
 ここまで書いたのでアドレスも書いてしまおう(笑)。今さらなんだけどネタバレなんでよろ
しくね。パガニーニ最強、ネオクラシカルメタル無敵である。
http://www.youtube.com/watch?v=qs9Nc5QHkL0

ちなみにジョニーウィンター、去る4月13~15日に来日公演があった。なんと初来日である。
http://www.barks.jp/news/?id=1000069058


■息も絶え絶え - Thrill -/calu
( No.19 )

 既に無意味なのか難解なのかすら判然としない(笑)。
 今もあるのかどうか良くわからんけど、俗に百貨店と呼ばれていた楽器屋が御茶ノ水にあっ
た。たぶん須賀楽器、もしかすると三鷹商店なんだがよくわからん。で、そこにあったムスタ
ングをCharが買ったという話があった。その話が本当だとしたら私はそのムスタングを楽器屋
で見ている。色はチェリーだったかキャンディアップルレッドだったか。値段は5~6万だった
ような気がする。少なくとも10万は切れてた。私としてはそのイメージが強いので30万は高す
ぎると思うのだよ(笑)。

> 「黄ばみ具合じゃムスタングも負けないよ! チューニングなんて全然合わないんだ!」

 うけた(笑)。昔、先輩が持ってたパールホワイトだかの楽器が黄ばんでるような気がしたの
で、この楽器、黄ばんでませんかと言ったら、これはこういう色だと力説されたことがあった。
 そして一部マニアには、このギターチューニングあわねえんだよなと嬉しそうに言う奴が実
在する。
 アンプの話は……まあいいやw

 音の抜ける楽器はいい楽器だというのが定説というか当然なんだが、何でもかんでもスコー
ンスコーンと抜ければいいというものでもない。やかましくてしょうがない(笑)。

 ランディローズでもジョニーウィンターでもなんでもいいんだが、とにかく金銭感覚を何と
かしろ(笑)。それからタン塩さんもcaluさんも、レイの買うギターの方が高額なのはなぜだ!

> 最強のメタルガールを目指すんなら

 目指してるのか!?
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件名 Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
投稿日 : 2011/05/12 01:04
投稿者 calu
参照先
 

               ■□  息も絶え絶え - Thrill -  ■□
 
 
「碇くん、またやってしまったわ」
「ど、どうしたんだよ、綾波……ま、またATフィールドで父さんを打っちゃったの!?」
「違うわ。ギターを買ったの」
「そ、そう。それなら良かった…じゃなくって! こないだファイアバードを買ったばかりじゃないか!」
「必要なんだもの」
「で、でも、また高かったんじゃないの?」
「そんなこと無い。あのランディ・ローズの74年レスポールカスタムが、たった六十万円だったもの」
「た、高いよ!」
「問題無いわ。ネルフカード使えたもの。一回払いで」
「ええっ!? 来月、落ちるかなぁ? 実はさ、僕も今日さ、本部からの帰り道に、その…やっちゃったんだ」
「人でも刺したの?」

 ちがうよ、これ、と足元に置いていたブラウンのハードケースを上がり框に置くと、シンジは宝箱を見つけ
た子供のように表情を輝かせケースを開けた。

「67年のフェンダームスタングなんだ。昔チャーが使ってたのと同じものなんだけど、三十万円で安かった
んだ」
「無駄遣いだわ」
「ど、どうしてさ? 必要だったんだから仕方がないじゃないか!?」
「嘘。碇くん、こないだストラト買ったばかり」
「違うんだよ。こいつのフェイズアウトサウンドじゃないとダメな曲も、その、あるんだ」
「シングルコイルの音、良くわからない」
「音像がデカいだけのハムバッカーとは違うよ」
「音だけじゃない。とても奇麗なの。見て、このランディローズホワイト」
「黄ばみ具合じゃムスタングも負けないよ! チューニングなんて全然合わないんだ!」
「碇くん、酷い。わたしのギター黄ばんでなんかない。チューニングも狂わないもの」
「…やっぱり決着をつけるしかないんだね、綾波」
「ギター・バトルなら受けて立つわ」
「じゃあ、僕は『スモーキー』。綾波は?」
「『クレイジートレイン』。じゃ、お先に。碇くん、アンプはこれで行くわ」

 気まぐれな風にふわりと捲られたスカートのように、翻ったシーツの下から顔を見せたのは一点の曇りなき
1959RRの純白のヘッド。これも一回払いなの、と清流のようにシンジの耳を過ったレイの言葉に、エド
ヴァルド・ムンクの叫びそのものの形相に顔をモディファイさせたシンジ。その無辜の少年を尻目に、レイの
怒涛のチョーキングビブラートが天地を裂く。

「ちょ、ちょっと待ってよ、綾波!」
「何?」
「その、もう少しストラップを長くしてさ、ギターを立てるように構えた方がカッコいいと思うよ」
「……こう?」
「い、いや、ちょっと後ろからゴメンよ。……こう、こんな感じでさ」
「いい感じだわ」
「うーん、でも、まだ何かが違うんだ、けど……そうだ! スカートが長過ぎるんだ」
「制服なんだもの……あっ、でも、このあいだマリが泊っていったときに忘れていったのがあるわ。あれなら
短い。ちょっと待ってて、碇くん」
「う、うん」



「どう、碇くん?」
「あ、綾波、いい、凄くいいよ。その、とてもカワイイよ」
「でも、何だかスースーするわ」
「それでギターを構えてよ。……そう、ヘッドを立てるように構えて」
「こう?」
「それでさ、少し脚を開くんだ」
「え?」
「こう!」
「ひゃん!」
「あ綾波、もう少しだけ、こう…」
「嫌…碇くん、いや…」
「ああ綾波、ダメだよ、さ、最強のメタルガールを目指すんなら、我慢しなくちゃ。ぼ、僕も我慢してるんだ
からさ」
「何? 我慢って…嫌、碇くんの息…荒い……あ?」
「な、何さ?」
「……鼻血」

=====================================================================================================

 ……ごめんなさい、タン塩さん

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件名 息も絶え絶え
投稿日 : 2011/05/05 13:33
投稿者 タン塩
参照先
「綾波、それ何?」
「とうとう買ったの。ジョニー・ウィンターシグネチャーのファイアバード」
「た、高いんじゃない?」
「たいしたことないわ。たった八十万円」
「十分高いよ!」
「ジョニー・ウィンターのギターなら買わない訳にはいかないの」
「そんなにジョニー・ウィンターが好きなの?」
「ジョニーのソウルが私を揺さぶるの。アルビノでもあれだけ出来るということ
を教えてくれたから」
「綾波のiPodに入ってる曲って…」
「今は『ジョニー・ウィンター・アンド/ライヴ!』がヘビーローテなの。スト
レートなロックンロールも、ディープなブルースも好き」
「でも、八十万も出してギター買わなくても…」
「碇くんこそ、そのギターは何?」
「ロ、ロリー・ギャラガートリビュートのストラトだよ。五十万で安かったんだ」
「無駄遣いだわ」
「何言ってるのさ!ロリーこそ最高のブルースロッカーだよ!」
「もしかして、碇くんのDATには…」
「『ライヴ・イン・アイルランド』だよ。ロリーのアイリッシュ魂が僕を揺さぶ
るのさ。漢の中の漢だよ」
「漢の中の漢はジョニーよ」
「ロリーだよ!」
「ジョニーよ」
「言い争ってても仕方ないよ。ギター・バトルで決着を付けよう」
「望むところよ」


「はぁ、はぁ…」
「だ、大丈夫?綾波。途中から違うバトルになっちゃったけど」
「よかったわ……」
「僕もよかったよ」
「認識が変わったわ。本当の漢の中の漢は、い・か・り・く・ん」
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件名 Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
投稿日 : 2011/04/17 23:51
投稿者 tamb
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 *****雨の日の幸せ*****


 雨が降っている。
 わたしは部屋の窓からそれを見ている。

 たとえば猫たちは、こんな雨の日はどうしているのだろう。
 きっとどこかの軒下や東屋、橋の下とかのお気に入りの場所があって、そこで雨を見ながら
うずくまったり寝転がったりして、雨止みを待っているのだろう。今の私と同じように。
 わたしも猫たちのお気に入りの場所に行って一緒に雨止みを待ちたいけれど、きっと迷惑だ
し場所もわからない。
 雨止みと綾波――わたしの名前だ――はちょっと似ていると不意に思う。

 猫たちは姿を隠しているけれど、カエルやでんでん虫は元気だ。
 カエルたちは晴れの日でもそれなりに元気で、夕方にはげこげこと大合唱を始めるけれど、
でんでん虫は何をしているのだろう。やっぱりお気に入りの葉っぱの裏で殻の中にうずくまっ
て雨を待っているのだろうか。

 雨が降ってくると、わたしは碇くんの差し出してくれる傘の中に入る。濡れた髪を拭いても
らって、甘い紅茶を口にする。ぬくもりをもらって、少し冷えた身体が暖かくなる。そこはま
るで猫たちの好きな陽だまりのような、暖かな場所。

 わたしは碇くんに傘を差し出してあげられているだろうか。

 振り向くと、彼はベッドにもたれかかり、読みかけの本をそのままに居眠りをしていた。
 ほっぺをつまんで引っ張ってみる。彼のほっぺは柔らかで、びっくりするくらい長く伸びた
けれど目は覚まさない。
 キスしてみる。
 やっぱり起きない。
 王子様は白雪姫のキスでは目を覚まさないということがわかった。あるいは碇くんも私も白
雪姫だったり王子様だったりはしないということか。たぶん、その両方だろう。
 居眠りを続ける碇くんに毛布をかけ、私もその中に入った。彼の肩に頭を預ける。皮膚が溶
けてしまいそうな安心感に身を委ねた。目を閉じれば今にも眠ってしまいそう。
 碇くんのキスで目を覚ましたいけれど、わたしも碇くんも白雪姫でも王子様でもないなら、
やっぱり眠ったままだろう。
 気づいたら朝だったでは眠りすぎ、と思いながらわたしは眠りの中に落ちていった。
 夢の中でもわたしは碇くんの隣にぴったりくっついている。たぶん。きっと。

 雨は止んでいる。



   時は春、
   日は朝、
   朝は七時、
   片岡に露みちて、
   揚雲雀なのりいで、
   蝸牛枝に這ひ、
   神、そらに知ろしめす。
   すべて世は事も無し。

-------
ロバート・ブラウニング「春の朝」/海潮音(訳詩:上田敏)より
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件名 Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
投稿日 : 2010/12/04 08:37
投稿者 tamb
参照先
■雨を見たかい-S-/何処
( No.15 )

 裏バージョンは表バージョンに優ることはない、ってな話がありますが、これもその頚木か
らは逃れられない。同じ話だからね。でもこっちを先に読んだらこっちの方がいいって思った
かも。そのくらいには良く書けた話。

> ウインカーとワイパー間違える

 良くある話だw

 はるか昔、女の子と車で走っていて夜になって、海を見よう、と言ったら、真っ黒だよ、と
言われたことを不意に思い出した。

> I Sing For You

 展開に無理があるのではなかろうか(^^;)。
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件名 Re: サイト開設十周年カウントダウン企画・十一月
投稿日 : 2010/11/26 00:02
投稿者 何処
参照先
ジオフロントを出ると外は雨だった。


【雨を見たかい-S-】


「うわぁ本当だ、雨…」

僕は思わず驚きを口に出していた。

「綾波良く判ったね…外が雨だなんて…」

運転席の彼女は軽く微笑み車を加速させた。
青い車体は豪雨の中を駆けて行く。

僕達はここ数日ジオフロントに籠りきりだった。
漸く一段落したマギ-2ndの調整作業。激務から解放され、明日は二人揃って公休日。残業も奇跡的に一時間で済み久々の解放感に僕も綾波も浮かれていた。

引き継ぎを終わらせ留守の続いた新居へ帰るべく本部棟から一歩出た時、隣を歩く綾波が傘を用意する様にと言ったのだ。

僕は余程妙な表情をしたらしい。外は雨だと告げた綾波はクスクス笑っていた。

「凄いな、予知能力?」

「内緒。」

綾波は少し得意気に言い、ハンドルを切る。

雨か…

雨の匂いの無いジオフロントはやはりどこか人工的だ。

雨の匂い…これを教えてくれたのは先生だった。


***


『今日は雨か…』

『あめ?』

僕の隣を歩く先生は曇天を眺め呟く。
僕の倍はある楽器ケースを持つ小柄な先生を見上げて僕は聞いたんだ。

『何で判るんですか?』

『匂い。』

『匂い?』

『そう…風に混じる埃や水分が肌触りや匂いで私達に雨の来る事を伝えてくれる。』

『雨の…匂い?…判らないや…』

『判らないんじゃない…どう言う匂いか知らないだけ。』

『え?』

『今、シンジ君は私の話を聞いて雨の匂いや肌触りの感触の存在を知った。が、どんな匂いや感触かは知らない。だから知る事ができない。』

『…?…』

『例えば…チェロも呼吸をしている、雨の日は空気の水分で僅かに音が変わる。知らない人にはチェロの音としか判らない。が、知っている人には明らかに違う。』

『へえ…』

『それに気温が低ければチェロも寒がり、暑ければ暑がる。』

『まるで生き物だ…』

『生きてる。』

『え?』

『楽器も音楽も生きている。奏者は楽器と言うパートナーと音楽と言う生き物を育ててる。』

『生き物…楽器も、音楽も…』


…今になって僕は人に説明する事の難しさに直面し、先生の苦労を思い改めて尊敬する。
先生の音楽教室には色々な年代の生徒が集まっていたが、僕ら子供達へも先生は敬語を使い、疑問を誤魔化さず正しく説明しようとしていた。

…綾波にも先生を紹介したかったな…

そんな事を思いながら視線を左へ。左の席で車と対話する様にハンドルを握りシフトチェンジする綾波の手先は弦を持つ先生の手を連想させる優雅さと激しさを宿して動いている。

…僕は一瞬その姿に見とれた…


***


雨は益々激しく、フロントガラスを水流が覆いワイパーはその存在意義を無くしつつある。
流石に綾波も疲れたのか、僕に休憩の意図を伝えてウインカーを出した。

…たまに僕が運転するとウインカーとワイパー間違えるんだよね…

ファミレスの駐車場へ入り停車。僕は傘を差し助手席から降りた。
青のFRPボディを激しく雨粒が叩き、弾ける散弾が僕の胸に飛ぶ。
運転席側へ周りドアを開ける。車から降り立つ綾波は後ろ手にドアを閉め、僕の傘を持つ右手に腕を絡めた。

毎度の事ながら…女性って何でこんなに華奢でいい匂いで柔らかいんだろう?

二人向き直り車に施錠。綾波の為だ、背広の背中に少し耐えて貰い綾波に傘を傾ける。

…華奢だよな…

彼女をエスコートしながらファミレスへ。パンプスで水溜まりを蹴破る様に早足で進む綾波。
傘を叩く雨音は激しく、綾波はそっと身を寄せて首を傾け頭を凭れ掛けてきた。

…こっそり雨に感謝。


***


熱い珈琲に安堵の吐息。
最初の二口をブラックで楽しみ、熱と苦味が胃から脳に伝わった所でスティックシュガーを一本。
目の前で珈琲に砂糖を入れる蒼銀の髪が微かに揺れる。
彼女と夫婦になってもう二年、彼女が別姓にした理由を僕は知らない。
僕が判っている事は彼女が“綾波”と言う名を選んだという事実だけ。

最も、たかが名前だ。喩え姓を変えなくても何の問題も無い。

だが他人は時として“綾波”姓を名乗る妻に、その外見を絡めて憶測と偏見を交えた好意と言う干渉をしたがる。
けど僕は決めたのだ。彼女を妻に迎えると決めた時に『彼女を守る』と。

名も、瞳の色も、髪も彼女の持つ個性だ。もし変えるにしてもそれは僕や周りが決める事ではない。
それは“綾波レイ”が自ら選択する事だから。


窓の外を眺める彼女。窓ガラスを滑る水滴に彼女は何を見、何を思うのだろう。
雨の景色…僕は綾波やアスカやミサトさんや先生と見た雨を思い出していた。


***


『何を見てるの?』

唐突に金色の髪の少女が問い掛けた。音楽を聞く気にもならず壁に凭れて座り只ぼんやりしてた僕はやっぱりぼんやりしながら“雨”と一言呟くように彼女に答えた。

何を思ったのか、彼女も僕の隣に腰掛け、窓の外を眺める。

『止まないわね…』『うん…』

隣の体温が気持ち良くて逃げ出したくなる。だけど動く気にもならず僕は只外を眺め…

二人揃って寝転けていたらしい。僕らは頭を凭れ合って寝ていて…ミサトさんに毛布を掛けられた僕らの姿を証拠画像に撮られていてあの後大変だった…


ミサトさんは帰ってこなかった。遺された遺言状には財産の相続人としてアスカ、綾波、僕の三人が指定されていて、僕らが成人した日、アスカはフェラーリ、綾波はもう一台のルノーを受け取り、僕はマンションを相続した。
ミサトさんと最後に見た雨の風景は…


『雨ね…』

『折角の休みに残念でしたね。』

『…ねぇシンジ君…』

『はい?』

『雨の海って見た事ある?』

ミサトさんの顔を見上げながら“否”と首を横に振る。

『…じゃ、今から見に行きましょ!』

『え!?い、今からですかぁ!?』

『そ!思い付いたが吉日よ!』

『…結局自分が行きたいだけじゃ…』『あんか言った?』『いえ何も』

そして僕はミサトさんのドライブに付き合う事になった。着いた海は…

『誰も…居ませんね…』

『そうね…』

車を降りた僕らの前には荒れる海。
鉛色の空、降り頻る雨、波頭は白く砕け灰色の砂浜を洗う…その景色に僕は圧倒された。

『…こんな海、初めて見ました…』

『…私は…何度か…』

…ミサトさんもこんな顔をするんだ…

『…何でここに来たんです?』

『…私が最後に笑った海…だからかな?』

『え?』

『…シンジ君…心から笑うってとても大切な事なの…』

僕は何も言えず、ミサトさんと暫く海を見ていた。

『…帰りましょ。』

『…はい。』

帰りの車内でもミサトさんは無言だった。

…あんな寂しそうな姿を、僕はもう一人しか知らない。
そのもう一人…綾波と雨を最初に見た時…あれはシンクロテストの日だった…


ジオフロント入口前、不意に少女が傘を畳み空を見上げる。

『!?…綾波、何を…』

『…雨に当たっているの…』

目の前に立つ少女は振り向かず告げる。その彫像の様な姿は遠く…美しかった。

『濡れるよ…』

『…これからシンクロテストだから濡れるのは一緒…』

『だ…だけどさ…』

『時間ね…じゃ、行きましょ。』

『あ、ま、待って綾波!?』

歩き出した綾波を慌てて追いかける。

『…何故?』

『何?』

『何で傘を閉じたの?』

『…雨を感じたかったの。』

『だからってわざわざ濡れるなんて…』

『?…良く判らない…雨に当たれば当然濡れるわ…』
『そ、そう言う意味じゃ…はぁ。』

『?』


雨に打たれる綾波を再び見たのは全てが終わり、又始まって一年が過ぎた頃だった。


***


回想に耽る僕に不意に声が掛かる。

「お待たせいたしました、ケーキセットの苺ミルフィールとザッハトルテになります。」

「「あ、ありがとう。」」

僕らは同時に同じ台詞を口にし、思わず顔を見合せた。
その間抜けさに思わず僕と綾波は同時に吹き出してしまい、可愛らしい店員にまで笑われてしまった。

「ご夫婦ですか?」

「ええ、もう二年になります。」

未だ笑いの止まらない僕の代わりに答える彼女。

「いいなぁお二人仲良さそうで。」

「そう?ありがとう。」

未だ少女らしさの残る店員は“私もあんな車で迎えに来て欲しい”と僕を見る。
…僕ペーパードライバーなんだけどな…

夢を壊さぬ様に笑顔で“でも車のローンで大変だから”とそっと話題をすり替える綾波。
その気遣いが又何故か可笑しくて僕は笑いを止められずにいた。
暫く話をして彼女が去り、向き直った綾波は僕がまだ笑っているのを見て不機嫌な様子だ。

「碇君、笑いすぎ。」

「ごめんごめん、何か可笑しくってさ。」

「もう…」

ハムスターみたいに頬を膨らませ綾波は僕のミルフィールから苺を取…あああああああっっっ!?

…それは無いよ綾波ぃ…


***


あれは高校の夏休み、雨の中買い物に出た僕は公園に佇む蒼銀の髪の少女を見た。
傘も挿さず雨に打たれて空を見上げている。

『綾波!?』

走り寄り傘の外に手を伸ばし、少女の手を掴む。
その冷たさに思わず手を戻しそうになり、なんとか踏み止まって僕は彼女の手を握り続けた。

『冷たい。』

『…雨に濡れるとはそう言う事。』

『…知ってる…』

『…そう…』

…そう、知っている。あの日の僕も雨粒に叩かれながら空を見上げていたから。

雨粒に叩かれながら空を見上げる綾波。
雨粒に叩かれながら空を見上げる僕。

先生は何も言わず僕を見ていた。
僕は何も言えず綾波の手を握っていた。

あの日の少年が呟く
『…僕は…いらない子供なのかな…』

目の前で天を仰ぐ少女が呟く
『…私…人…それとも…』


視界が急に黒くなる。振り返れば先生が傘を差し伸べていた。

僕は綾波に傘を差し伸べていた。驚いた様に振り返る少女に僕はあの日の先生と同じ事を告げる。

『『…そのままでは風邪を引くよ。帰って風呂に入って服を着替えて美味しいご飯を食べよう。』』


『…はい。』
僕は答える
『…はい。』
綾波が答える


先生は僕の手を取り歩き出した。
僕は綾波の腕を握ったまま歩き出した。

この手は錨、僕を停める錨。錨を握り返す僕の腕は錨鎖。
僕の手は錨、引き留める為に掴む君の腕は絆。

先生…
綾波…


***


あの時何故綾波が雨に打たれていたのか、理由は今でも知らない。
けれど、僕は覚えている。あの雨と、僕の手を引く先生の姿と掌の熱さ、雨に打たれてなお美しい少女の姿とその身体の冷たさを。

雨の度思い出す記憶…忘れる事は無いだろう。

「そろそろ行こうか。」
「ええ。」

会計を済ませ外へ。雨脚は弱まったが相変わらず止む気配は無い。
僕らは一本の傘の下に身を寄せ合い車へ歩く。

「子供…未だ作らないで欲しいみたい…託児所の拡張計画が来期まで伸びたみたいで…」

綾波が告げる。

「未だ子供は早いんじゃ無いかな…」

苦笑混じりに答える僕は、言葉を継いだ。

「…出来ちゃえば関係無いけどね。カヲル君の処みたいに。」

あ、綾波がむくれてる。

「…そのせいで私有給消化出来ないのよ?」

それはそうだ。今日の残業だって本来は彼女の領分の筈だったのだ。

「…産休から彼女が帰るまで半年か…」

綾波がふと視線を遠くに向けた。雨煙る景色の向こう側に…
その表情はあの日の綾波と同じ。
…だけど綾波は僕に手を絡めている。その手は僕の錨、君の絆。

「…ねえ碇君、雨は好き?」

不意に綾波が問い掛ける。

「うーん洗濯は乾かないし」「そう言う事じゃ無くて」

わざと言う僕を振り向き睨む綾波。何と言うか…可愛い…

「…今は好きだな。こうして相合い傘が出来るし。」「私も。」

傘の中二人、雨の天幕の下で僕らは太陽に隠れてこっそりキスをした…





…新居への帰宅が次の日になった事は秘密。



【I Sing For You】巡音ルカ
http://www.youtube.com/watch?v=5PEntk2Vld8&sns=em

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